05/03/08 第10回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会の議事録について         第10回 職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                         日時 平成17年3月8日(火)                            10:00〜                         場所 厚生労働省9階省議室 ○諏訪座長  皆様おはようございます。定刻となりましたので、第10回職業能力開発の今後の在り 方に関する研究会を開催いたします。  前回は、職業能力評価制度の在り方について、ご議論をいただきました。そこで本日 は次の論点に入り、職業能力開発のための相談・情報提供の在り方を中心に、ご議論を いただきたいと思います。また、本日この議論をしますと、一通り論点整理(案)に沿 った議論を行ったということになります。そこで、職業能力開発のための相談・情報提 供の在り方以外の論点についても、後ほど幅広くご議論いただければと思っておりま す。  ではまず事務局から、前回の議論を踏まえ、修正した論点整理(案)などを提出して いただいてありますので、これらについて、ご説明をお願いしたいと思います。 ○総務課長補佐(佐々木)  まず資料Iの論点整理(案)です。7頁の上のほうに、職業能力評価制度に関連して 4点ほど、前回いただいたご意見を反映させていただいております。  本日のご議論、特に職業能力開発を行うに当たっての相談・情報提供の在り方という ことに関しては、これまでにキャリア・コンサルタントの養成について、その資格を取 った人が社会的にどのように活躍するかという姿を早く作っていくことが、大きなポイ ントではないか。教育訓練のためのいろいろなプログラムが提供されていても、その存 在自体知られていないことも多い。ユーザー側の視点に立った情報提供になるような工 夫が必要ではないか。こういったご意見をいただいているところです。  資料IIは、いつものとおりこれまでの意見の概要、論点に沿ってさらに詳細にまとめ たものですので、適宜ご参照いただければと思います。今回の関連するところは、13頁 からになります。  資料IIIの職業能力開発のための相談・情報提供の在り方については、第2回目の会 議に提出していた資料を再度出しているものもありますが、簡単にご説明させていただ きます。  資料IIIの1頁、従業員にキャリア形成を考えてもらう場です。これについては、能 力開発基本調査によるものですが、企業が従業員にキャリア形成を考えてもらう場とし ては、上司との面談が46.8%と、最も高い数値となっております。そのほかには、教育 訓練機会の情報提供を通してとか、自己申告制度、階層別研修、これらが高い割合とな っております。  2頁、社内でキャリアの相談やアドバイスをどの程度受けることができるか、こちら は平成12年の三和総合研究所の調査によるものですが、約3割の労働者の方から、キャ リアの相談やアドバイスを十分受けることができる、あるいはある程度受けることがで きるという回答をいただいております。  3頁、キャリアカウンセリングの導入状況、これは社会経済生産性本部の調査による ものですが、5,000人以上の大企業で約3割がすでにキャリアカウンセリングを導入し ているという回答になっております。ただ、調査対象企業の全体では、すでに導入して いるというのは7.9%、導入予定なしと回答されているのは約6割という状況になって おります。  4頁で、キャリア・コンサルティングの役割を担っている人、こちらは平成12年の職 業能力に関する調査報告書によるものです。キャリア・コンサルティングの役割を担っ ている人は、上司、先輩、同僚というものが、圧倒的に高い比率となっております。一 方で、下の方にありますが、社内のキャリア・コンサルティングの専門家というのが 1.6%、社外の場合は4.5%という状況になっております。  5頁目は、従業員へのキャリアプランの提示機会・施策の具体的内容です。従業員へ のキャリアプランの提示については、上司との定期的なミーティングによって提示する という企業の割合が非常に高い状況になっております。一方で、キャリアカウンセラー などの外部の専門家とのミーティングによって提示するという企業割合は、1%未満と いう状況になっております。  6頁は、従業員に対して求める能力をどのように知らせるかということについてで す。平成14年度の能力開発基本調査によるものですが、これによると、日常の仕事を通 してというのが、6割以上と圧倒的に多い状況になっております。一方で、個人別の教 育訓練計画を通してというのは11.5%で、個々人にそれぞれ知らせるというのは、非常 に低い状況になっております。  資料7頁の入社前にどのような情報が得られたかということについて、これは平成14 年度の能力開発基本調査によるものです。この調査によると、仕事の内容や勤務地とい ったものは8割くらい情報を得られているという回答になっていますが、逆に、採用後 の教育訓練とか社内キャリアといったものは、2割程度という回答状況になっておりま す。  資料の8頁、新卒採用を行った企業の中で、採用前に求職者に提供した情報は何かと いうことです。仕事の内容、賃金、募集職種名に関する情報については、9割以上とい う状況ですが、やはり、下の方になりますが、採用後の教育訓練、採用後の社内キャリ アは、17%とか、9.8%という状況になっております。  資料の9頁は、情報提供・相談機関の内容に対する要望です。これは企業に聞いたも ので、外部教育訓練機関に関する情報や従業員のキャリア形成を支援していくための情 報を提供してほしいと考えている企業がそれぞれ53%、44.7%という状況になっており ます。相談の内容については、外部教育訓練機関の活用方法や教育訓練に関する相談を してほしいと考えている企業が、それぞれ28.7%、28.4%という状況になっておりま す。  資料の10頁からは施策の話になります。キャリア・コンサルタントの養成・活用に向 けた取組ということで、平成14年度以降、官民で5年間で5万人のキャリア・コンサル タントを養成しようと取り組んでいるところです。  資料の11頁にありますが、平成16年10月末までに、キャリア・コンサルタントの養成 数は約2万4,000人という状況になっております。内訳はそこにあるように、圧倒的に 民間機関における養成数が多い状況です。それから、公的機関、職業能力開発大学校な どにおいても、毎年1,000人強、キャリア・コンサルタントの養成を推進しているとこ ろです。民間機関における養成への支援としては、キャリア形成促進助成金、教育訓練 給付制度があります。  キャリア・コンサルタント活用事例ですが、現在、ハローワークや(独)雇用・能力 開発機構の都道府県センターにおいて、キャリア・コンサルタントによる相談を行って いるところです。今、合わせて、約800人くらいのキャリア・コンサルタントを配置し ておりまして、平成16年4月から12月くらいで、約87万件の相談を行っているところで す。アンケートでは9割程度の方から、相談の結果満足しているというご回答をいただ いているところです。  民間機関における活用ということで、養成されたキャリア・コンサルタントについて は、民間職業紹介機関、教育訓練機関、企業の人事部門などで活用を促進していこうと 考えております。  具体的には13頁に、キャリア・コンサルタントの受験・受講動機、属性などの資料を 付けております。受験者の属性は、その他を除けば、企業内の人事・人材開発の担当 者、それから職業紹介・派遣・再就職支援会社の相談担当者、これらの方が、キャリア ・コンサルタントの試験や講座を受験・受講されている。アンケート調査によれば、そ のような状況になっております。  資料の14頁になります。これは、前々回の会議で北浦委員からご質問いただいたもの です。職業能力開発推進者は、職業能力開発促進法第12条に基づいて、事業内の職業能 力開発計画の作成、その実施に関する業務を行って、労働者の職業生活設計に即した自 発的な職業能力開発及び向上に関する相談・指導の業務を行っております。今、7万 3,000人くらいおります。  資料の15頁にどのような人が職業能力開発推進者になっているかの資料を付けてお ります。全国の調査がありませんので、一番数が多いであろう東京都職業能力開発協会 で調べたものをお付けしております。これによると、総務部門、あるいは能力開発部門 の担当の方がなられている割合が高い状況になっております。それから、小規模事業所 などでは、代表取締役の役員が務めることも多い。そういう状況です。職位別では、部 長・部長代理、役員・執行役員・取締役といった方々がなっている割合が、東京都では 高い状況になっております。資料の16頁にありますが、職業能力開発推進者の方たち が、その役割を十分発揮していただけるようにするために、年5回程度、職業能力開発 推進者講習を行っております。  講習の内容は、事業内の職業能力開発計画の作成とか、労働者のキャリア形成支援、 推進者の役割に関する一般的な講習のほかに、導入レベルのキャリア・コンサルティン グの基礎的技法といったものもメニューとして加えているところです。  資料の17頁は、職業能力開発に関する情報の収集、整理及び提供の体制の充実強化で す。具体的なイメージは、資料の18頁に載せておりますが、現在、いろいろなホームペ ージで、例えば教育訓練給付に関する情報や職業訓練のコースに関する情報を提供して おりますが、これらの情報を一括して入手できるようなポータルサイトを作っていこう ということで開発を進めているところです。来年度は、さらにeラーニングに関する情 報なども収集、整理して提供していく方向で作業を行っています。  資料の19頁、国と地方の役割分担です。国では、民間や地方公共団体では実施できな いような訓練や、真に高度な訓練を行っていく。都道府県の方は、地域のニーズに対応 した訓練、逆に言うと、基礎的な内容が中心になろうかと思います。また、国自体が、 離職者訓練をしっかりやっていくということで、平成15年度は11万6,000人に対して実 施しているところです。  そのほか、障害者について、特に重度な方などを中心にして、(独)高齢・障害者雇 用支援機構が運営している2校で訓練が実施されております。障害者に関しては、福祉 施策との連携といった観点から、地域にお願いした方がいいのではないかと、国立の障 害者校11校の運営を県にお願いしている状況です。  21頁には、国と地方の役割分担や官民の役割分担に関する規制改革関係、それから特 殊法人等整理合理化計画でいろいろご指摘いただいたものを付けております。  22頁は、これまでも何回かご意見がありました財源の構成についてです。職業能力開 発行政関係では、雇用勘定、労災勘定、一般会計、それぞれの財源で成り立っておりま す。障害者の職業訓練の関係では、労災勘定からも若干勘定が流れているところです。 職業能力評価の関係は、雇用勘定からです。国際協力の関係は、国際化に対応して現地 に行くという日本人在職者が中心になろうかと思いますが、そういった訓練を行ってい るということで、一部雇用勘定が入っております。  23頁は、国から県への財源の流れです。国から県への交付金ということで、122億円 ほど、能力開発校の運営に関して自由に使える交付金が流れております。これらのほか に、下半分ですが、国からの委託を受けて県が行う訓練として、例えば離職者訓練、日 本版デュアルシステム、障害者への訓練、そのほか、新しいメニューとして、地域の創 業ニーズに対応した訓練機会をお願いする部分とか、就職基礎能力速成講座、母子家庭 の母等の職業訓練などを県に委託して訓練を実施していただいているところです。  24頁の雇用保険制度の概要では、グレーになっている部分が能力開発関係です。教育 訓練給付の平成17年度予定額としては286億円で、平成15年度決算からだいぶ減額され ておりますが、これは、制度の見直しで給付の割合や上限額が大幅に変わっているから です。それから下の方になりますが、能力開発事業の平成17年度予定額は、1,500億円 弱ということになっております。 ○諏訪座長  それではただいまの説明について、ご質問、ご意見等を賜りたいと思いますが、まず 最初に質問等ありましたら、それを出していただいて、その後ご議論をしたいと思いま す。なお、相談と情報提供と言いますが、実は相談はかなり個別的な性格で、情報提供 というのはマスを対象に行う部分があるので、似てはいますが、手法にはかなり違いが あるのではないかということで、それも少し分けて議論できればと思っております。で は最初に、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○山川委員  資料IIIの16頁に、事業内職業能力開発計画というのが出てきます。現在のところ、 事業内職業能力開発計画がどのような位置づけになっているのかという点と、その計画 を厚労省として把握されているかどうか、できれば具体的にどういうことを企業が実際 に定めているのか、もしおわかりでしたらお聞きしたいと思います。 ○総務課長補佐(佐々木)  事業内職業能力開発計画は、職業能力開発促進法第11条に定められておりまして、 「事業主は、計画的な職業能力開発の促進のために、計画を作成するように努めなけれ ばならない」という努力義務となっております。実際どのように作られているか、どの ような内容であるか、全国でどれくらい計画が作られているかなど、具体的には把握し ていない状況です。 ○山川委員  例えば補助金等の交付の際に、他の資料と併せて提出を要求しているとか、そういう 形で把握されるということは、実際上あるのでしょうか。 ○育成支援調査官(木原)  キャリア形成促進助成金という制度ですが、この助成制度の要件として、事業内職業 能力開発計画を作成して、これに基づいて訓練を実施する事業主であるということが要 件としてございます。したがって、こういうことで推進なりを図っているわけで、具体 的に、助成制度としてはわかるのですが、ではそれ以外にどれだけあるかというところ までは把握できていないのが実態です。 ○北浦委員  今の山川委員の話とも関係するのですが、職業能力開発推進者について、2つ質問が あります。1つは、先ほどもあるように、いろいろな役職の方が就いているのですが、 そもそも職業能力開発推進者の具体的業務ということで、役割が規定してありますね。 そうすると、何が望ましいというような形の、設置の考え方があったのかどうか、その 辺を少し教えていただきたいというのが1点です。  2点目は、この職業能力開発推進者は、7万3,000人と大変な数いるわけです。この 7万3,000人に対して、推進者講習というものが行われているわけです。全ての人が受 けることを義務づけるわけにはいかないのかもしれませんが、どの程度なさっていらっ しゃるのか。先ほどの山川委員のお話によると、まさに事業内職業能力開発計画の作成 等というのは、この中で講習を受けることになっていますから、受けたところは多分作 るだろうという理解なので、このようなところで実質的なものを担保しているのではな いかと思うのですが、この講習がどのくらい機能しているのか。この2点について教え ていただきたいと思います。 ○キャリア形成支援室長(半田)  まず、何が望ましいかという点です。私も不勉強で、この辺がどういう考え方で作ら れたかは明確には承知しておりませんが、今の企業内キャリア形成支援企業モデルの検 討などで議論されているところを聞いてまいりますと、こういったものをきちんとワー クさせるためには、やはり上の方の意思が明確になっていないといけないということが 常に言われております。  そういったことから考えると、代表取締役・取締役ということがいいとは必ずしも言 えないかもしれませんが、然るべくその権限を持っている方になっていただくのがよろ しいのではないかと私は考えます。実態においては、大体人事部の課長クラスが多いよ うに感じておりますが、もう少し上でもいいのかなという感じがいたします。  どの程度研修を受けるかについては、もちろん基本的には全ての推進者の方に受けて いただきたいと思っております。大体ここに書いてあるように、本来の推進者の一番大 きな役割である事業内職業能力開発計画の作成等の研修は、大体年間1万人程度、平成 13年度の法改正直後は2万人弱の受講者だったかと記憶しておりますが、それ以降は仮 に延べでいっても3万人程度かと存じます。そういう意味でいくと、まだ7万人の方全 てに受けていただいているという状況ではない。ただ、目標としては、その方々全てを カバーするようにやっていくべきではないかと考えております。 ○諏訪座長  今、職業能力開発推進者に関連して、企業内において能力開発のキーになる人々をど う養成していくか、あるいは、どう公共政策との間のつなぎ役をしてもらうか、キャリ アに関する意識・各種の技法や知識を付けていただくかという問題で少し質問が出てお ります。この点はよろしいですか。 ○上西委員  職業能力開発推進者7万3,604名というのは、どういう形で把握されているのか、登 録なのか、そのあたりのことを教えていただけますか。 ○キャリア形成支援室長(半田)  これは義務ではございませんが、都道府県職業能力開発協会に届け出ていただくよう にお願いしております。そういったところで集計した数字です。 ○諏訪座長  よろしいですか。では、ほかに別のテーマで結構ですから、まずご質問をお願いしま す。 ○佐藤委員  資料IIIの10頁、キャリア・コンサルタントの養成のところです。キャリア・コンサル タントに期待する役割で、例えば、在職者で転職を考えている人とか、実際に離職して 民間なり公共職業紹介所に職業紹介を求めてきた人に対応する場合とか、あとは企業内 でこれからどうしようかという場合、多分、対応する人に求められている提供サービス というのは違うと思うのです。特に企業内を考えると、実際上、上司が主たるキャリア ・コンサルタント的役割を担っているわけで、企業内でキャリア・コンサルタントの資 格を取ってもらうわけです。これは13頁にもありますが、人事の人が直接、あるいは社 員に対応する窓口のようなものを企業内に置くということもあるでしょうが、多くの場 合、上司を教育するということがメインになると思います。企業内で専門のキャリアカ ウンセリングをするセクションにいる人が勉強すべきことと違って、人事の人は直接社 員に接するというよりか、上司がどう部下に対応できるかどうかということの仕組み作 りみたいなものを、ちゃんと勉強した方がいいと思うのです。  キャリア・コンサルタントの教育内容は多分、いろいろなタイプのものが必要なのだ ろうと思うのです。例えば人事にいて、自分が直接キャリア・コンサルティングをしな い人が受けるというと、あまり役に立たないかもしれない。上司にどういうことを教え たらいいかということはすごく大事だと思うのです。今のプログラムというのは1個し かないのでしょうか。1個というか、それぞれ民間がやるのでしょうけれども、枠組み としては、やはり直接本人に向かい合うような人を想定して、プログラムができている のかなということが質問です。  それと、キャリア・コンサルティングを受けたいと言って来た人の場合も、職業紹介 とか派遣のような短期的なマッチングを必要とする人と、もう少し自分の将来を考えて というのと、かなり違うと思うのですが、そこの違いもあるのでしょうか。キャリア・ コンサルティングの基本的なベースは、どういうものを想定して中身ができているのか ということを伺いたいのですが。 ○キャリア形成支援室長(半田)  現在のキャリア・コンサルタントの能力要件の基本的な考え方は、平成13年10月に設 置された研究会が平成14年4月にまとめた結果に基づいております。このとき、キャリ ア・コンサルタントを活用するフィールドというのは、職業紹介の場もありましょう し、能力開発の場もあるでしょうし、企業内部、あるいは教育機関、職業訓練と、いろ いろな分野があるでしょう。その分野については、おっしゃるように、求められる能力 に差があるのではないかという議論はありました。  それからあの研究会では、共通項というのが、最大公約数の部分を明確にしようとい うことで作られています。そういったことで、一応全ての分野をカバーすることになっ ていますが、その最大公約数である部分のために、やや濃淡があることは事実です。そ の結果、平成14年4月の報告書の中でも、今後の課題として、例えば企業内のキャリア ・コンサルタントに求められるもの、職業紹介機関で求められるもの、そういったそれ ぞれの分野に必要な部分は、今後引き続き明らかにしていく必要があるだろうといった ことは書かれてございます。  さらに今度は企業の内部です。企業内部においても、キャリア・コンサルタントの担 う役割はいろいろあるかと思います。おっしゃるように、1対1の社員に対するキャリ ア相談を通じての支援ということもありますが、もう1つキャリア・コンサルタントに 求められている、この平成14年4月の報告書でも明確に書かれております大事な要素 は、こういった組織への働きかけです。つまり、キャリア形成支援体制をきちんと作っ ていくためには、単にキャリア・コンサルタントをポンと配置すればいいというもので はなくて、ちょっと大仰な言い方かもしれませんが、その会社のカルチャーから変えて いくようなことが必要であろうということもございます。これは大学等においても同じ ことです。そういったことで、環境への働きかけということが、キャリア・コンサルタ ントの能力要件に求められております。  そしてその上で、個別の従業員の方を支援するキャリア・コンサルタントに求められ るのは、当然に個別相談の部分が強くなると思いますし、その会社の組織に対してとい うことになってくれば、おっしゃったような人事部門、あるいは経営、マネジメント層 に対して働きかけるということになると、もう少しセミナーといった分野が強くなって くると思います。  キャリア・コンサルタントは、実際に会社の中でどういう所に配置されているかとい うと、大きく2系統に分かれているように感じます。人事部門と一体となっている所 と、人事部門から独立している所ですが、お話を聞いてみると、それぞれにメリット、 デメリットがある。人事部門と一体になっている所は、今度は従業員から見ると、何か 自分の情報が人事にツーツーになっていくのではないかという不安感をもたれる。もち ろん、そういうことはないように内規できちんと定めているはずなのですが、そういう 不安感を持たれて、どうも足が遠のく。その代わり、人事と一体になっていますから、 個別の相談結果に基づいて、それを次の人事政策に反映させることができるということ をおっしゃっていました。  それから、人事から独立している部分では、ちょうど今の裏返しで、従業員の方が気 軽に相談に来てくださる。そういった個別相談という意味では、成果が上がりやすいと いったお話を伺っております。 ○佐藤委員  私は、キャリア・コンサルタントの養成というと、3つくらい考えたほうがいいと思 います。今のお話にあったように、1つは直接働く人と向かい合う場のコンサルタント です。これが2種類に分けられ、先ほどもお話したように、短期的にマッチングを主な 仕事にしている職業紹介とか派遣とか、コーディネーター的な人たちに対するキャリア ・コンサルタント的な教育内容です。もう1つは、企業内で従業員に向かい合う人とか 学校とか、もちろんマッチングもあるのですが、もうちょっと中期的なことも含めて、 コンサルティングをすることが大事な人の育成、その2種類ですね。  もう1つは、人事部とか、教育訓練部門など社内でキャリア・コンサルティングがで きるように、直接社員と向かい合うところや現場の上司の教育内容について仕組み作り をきちっとやっていくようなことができる人の育成。やはりこの3種類を、少し分けて 考えた方がいいのかなと思います。  企業内で個別の相談の窓口を作るのはすごく大事だと思うのですが、このデータを見 ると、やはり上司がキーになると思います。ですから、上司が部下に単に仕事をさせる だけではなく、育成の観点からも仕事を与えることを考えるというようなことを、きち っと組み込むということはすごく大事だと思うのです。どうすれば、そういうことがで きるかを勉強するような仕組みを作っていくことは、今後大事だと思うのです。  今のキャリア・コンサルタントの育成とか教育プログラムには、そういうものがあま りないのではないか。直接1対1に合うようなものを想定しているかと思ったので、伺 ったところです。 ○キャリア形成支援室長(半田)  ただ今申し上げたように、環境への働きかけが十分必要であるということは認識して います。特に、ある大手商社さんでは、先駆的にキャリア相談室などを作って取り組ん でおられましたが、トップもどんどん替わっていきますから、それを理解する方がいら っしゃる間はいいのですが、人が替わると、確かにおっしゃるように後退するという部 分もあるようです。そういった所では、トップやマネジメント層への働きかけが必要だ ということを、痛切にお話になっていました。  そういった部分も、今のキャリア・コンサルタントの能力要件に明確に書かれている わけですが、企業内のキャリア・コンサルタントの在り方なども、検討会をしていると ころですので、委員が今ご指摘のところも踏まえて今後、そこで検討させていただきた いと思います。 ○佐藤委員  16頁の職業能力開発推進者ですが、それぞれ法律ごとに雇用の分野における男女の均 等な機会及び待遇の確保等に関する法律などいろいろな推進者があります、短時間労働 者の雇用管理の改善等に関する法律もあるでしょう。中規模の企業へ行ったら、みんな 同じ人がやっているのです。やはり、そういう状況を考えながら、こういうものを置く ことの意味を、考え直すべきかなという気がしています。これだけではないのですが、 単に書類を出しているだけだろうという人がたくさんいるのです。実際は、同じ人が複 数やっているわけです。それでもこういうものを置くことが、行政と企業との窓口で大 事ということであれば私はいいと思うのですが、やはりこういう仕組み自体をちょっと 見直してもいいかという気はしているのです。企業からすると何か出しておけばいいか なという感じで、逆に言えば負担になっているのかもしれない。ここで議論することか どうか、わかりませんが。 ○諏訪座長  今のは推進者の議論をすると、必ず出てくる意見ですが。 ○黒澤委員  10頁で、キャリア・コンサルタントが800人ということで、以前もこれは伺ったかも しれないのですが、地域的に見ると、どういったところに多く配置されているのです か。どのハローワークがどのくらいキャリア・コンサルタントを配置するというのは、 どういうメカニズムで決められているのでしょうか。  それから、(独)雇用・能力開発機構の方から派遣されたり、相談員の方も含めてキ ャリア・コンサルタントの方々は、最近はほとんど非常勤の方が多いと伺っているので すが、そのあたりの実情について、もうちょっと詳しく教えていただければと思いま す。 ○キャリア形成支援室長(半田)  ここに書いてある800人というのは、全て(独)雇用・能力開発機構の相談員です。 皆さん、2年契約だったと記憶していますが、とにかく時限的な臨時職員です。それ で、270人ほどが都道府県センター、これは(独)雇用能力開発機構の都道府県支部の ようなものですが、そこのキャリア形成支援コーナーに配置されております。これは、 ハローワークにも配置してありますが、基本的に毎年見直しをしていて、やはり大型の 安定所は複数配置、小さい所は1人だけの配置、より小さい所は配置がなくて、大きい 所のキャリア・コンサルタントが巡回してご相談に応じるという体制をとっておりま す。基本的にはそこの人口を勘案して配置しておりますが、さらに加えて前年度の実績 とか、各都道府県労働局のご希望といったものを勘案して、配置を決めているところで す。 ○佐藤委員  相談内容の分類としては、どういうものが多いかはわかりますか。それと、今度職業 安定所の方で始める若年の相談事業は、電話やメールはしているのですか。訪問しか実 施していないのでしょうか。 ○キャリア形成支援室長(半田)  今のところ電話等の相談はしておりません。これは今から考えなければいけないと思 っているのですが、キャリア・コンサルティングで特に1対1のカウンセリングになっ た場合に、信頼関係(ラポール)の構築というのが大前提で、それが電話とメールでい いのかなということが、ちょっと疑問なのです。 ○佐藤委員  ハードルは低くした方がいいのではないですか。 ○キャリア形成支援室長(半田)  ええ、そうです、そう考えていたのです。やはり、まずとっかかりはメールあたりか らということで、そういったことも考えていかなければならないと、今検討していると ころです。  相談内容については、今、私の手元にありませんが、大体の記憶で申し上げると、い かにもということになってしまいますが、キャリア形成支援コーナーなどでは、基本的 に、いわゆるキャリア・コンサルティングのご相談が圧倒的に多く、そのほかに訓練情 報等のご相談もございます。ハローワークでは当然個別の労働者の方が多いですから、 ほとんどがキャリア・コンサルティングに関する問題で、そのうち特に聞かれるのが、 やはり能力開発に関する情報、私はこういうことをやりたいと思っているのだけれど も、どういう能力開発を受けたらいいのだろうかといったものが圧倒的に多いです。 ○諏訪座長  というわけですから、窓口へ行かなければいけない。ところがその窓口は、県に1箇 所の県庁所在地にある、そこしかない。電話相談やeメール相談は、まだ展開されてい ないということでしょうか。  それでは、ご質問が他になければ、議論に入りたいと思います。まずは、先ほどコメ ントとおっしゃったので、廣石委員、どうぞ。 ○廣石委員  先ほど佐藤委員がおっしゃったお話で、企業の管理職・上司の位置づけというのは、 実はあまりこの検討会では議論されてこなかったような気がします。企業の中での大き な形としてのキャリア・コンサルタントの役割分担という意味でしょうか。従業員・労 働者として、一体誰がどのような分担をしているのか。つまり、最初に上司に言ったと きに、上司が自分で判断するのが手に負えないと思ったら、専門家のキャリア・コンサ ルタントへ行きなさいみたいな話になってしまうのか。人事部はどのような形でそれに 対応するのかというようなことからすると、今までの議論で一番手薄だったのは、上司 は一体何をすべきなのか、そして上司のヒューマンスキル、特にカウンセリングスキ ル、コーチングというようなものは、佐藤委員のご質問に回答いただいた内容を聞いて も、各企業にお任せなわけです。ですから、上司にきちんと教育をしている会社はいい かもしれないけれども、そうでない会社は全く放りっぱなしになってしまうし、見当違 いのことを上司がしているかもしれない。もしくは、上司が全くやっていないかもしれ ない。というようなところからすると、企業の管理職のキャリア・コンサルティング機 能ということについて、やはり何らかの形で整理した方がいいのかなという感じをもっ たということです。 ○諏訪座長  大変鋭い、立派なご指摘であると思います。4頁の資料は、昔研究会をしたときの三 和総研に委託しての調査ですが、現状ではキャリア・コンサルティングの役割を担って いるのは、上司、先輩、同僚ですから、これは別にキャリアに関する専門家でも何でも ない。それから、世間一般の就業全般のことを普通知っているわけでもない。となる と、ここで展開されているのは、当該組織内におけるキャリアデザイン、キャリア戦略 に関する相談には、それなりに応じることができるかもしれないけれども、しかしなが ら、個々の人たちの、もう少し広い意味でのキャリアデザインみたいなものには、ほと んど対応できていないということを示しているのだろうと思います。  そして残念なことに、欧米ではもう少し役割があるであろう労働組合なども、この分 野では全くと言っていいほど存在感がないし、外部専門家も存在していない。これが5 年前の調査時点における実態だったわけです。現状でも、そう大きくは変わっていない でしょう。  そこで、個々人に届くキャリア・コンサルティングというと、結局はこうした状況が そう大きく変わっていないわけですから、廣石委員がおっしゃったように、キーパーソ ンが適切に対応できるようにする。そしてそういった仕組みを作ったり、教育をしたり するようなことをどうするか。これは佐藤委員もおっしゃったとおりで、ここら辺が、 現状の情報相談体制におけるいちばん重要な課題のようですね。  ではそれを、公共政策としてどうやるかということが、次の課題になるのですが。 ○北浦委員  今の話ですが、それは、先ほどの職業能力開発推進者の議論につながっていくと思う のです。そこの推進者の役割というのは、これは多分かなり古いと言いますか、職業能 力開発促進法の最初の時点での考え方ですね。今の能力開発の重点は何なのか、そこか らこの推進者の役割をもう一度洗い直していく必要がある。そうすると、先ほど佐藤委 員がおっしゃったように、キャリア・コンサルタントの講習はある。しかし、キャリア ・コンサルティングの講習ではない。だから、今のところ出来上がっているのは、キャ リア・コンサルタントという専門職を作り上げるものであって、コンサルティングをも っと広く普及させるというところまでは行っていない。ところが、個々人のものを全部 政府がやるかというと、これには限界がある。そこでやはり出てくるのは、仕組みとし て作るところを援助するという、そこまでなのだろうと思うのです。ですから、例えば こういう推進者などに書き込んでいく役割、そしてそれに対して援助の手立てを考え る。そういう間接的な形の援助であれば、これは官と民の役割も分かれますし、民間と しての実施体制は残るわけですから、それが1つあります。  もう1つは、併せて考えるのであれば、推進者というのは管理者ですから、経営側に なるわけです。先ほども諏訪座長がおっしゃったように、現状を見ると、労使協議の中 で能力開発を取り入れる所は少しずつ出てきているもののまだ足りないし、キャリアア ップということになるとまだまだ足りないのですが、だんだんと労使協議の中に能力開 発を入れていこうという動きが出てきているわけです。その場合に、例えばほかの法制 とのバランスなどで見てみると、労使協議と能力開発というこの切り口が、今あまり法 的には考えられない。もちろん、そういう労使協議で決めるものなのかというのはある のですが、キャリアという発想法になってくると、限りなく個人、あるいは労働組合、 そういった労働者側の立場を考えないといけませんから、そうするとそこに労使関係的 な要素が入り込んでくるわけです。  その観点から考えたときに、例えば法的にそういう労使協議を担保するようなものを 入れるべきかどうかという、これは議論が分かれますが、何かそういうものを用意して おくことによって、それがまた外環境になって、申し上げたような、例えば上司をしっ かりさせるといった動きが企業の中でできる。そのような形が考えられるのではないか と思います。 ○佐藤委員  廣石委員のおっしゃったことに賛成で、企業内でのキャリア形成を考えると、1つは 上司ですね。今、配属されている職場で業務をすることが第一ですが、同時にそのこと が能力開発のプラスになるという仕組みをどれだけ作れるか。もう1つは、キャリア形 成を考えれば、5、6年で次の職場に移っていく。職場間の異動は業務に必要だからす るということもありますが、特に若いうちは、キャリア形成の観点から異動させるとい うことを考えなければいけないわけです。これをどううまく仕組んでいくか。今まで日 本は、OJTとかキャリア形成がうまくいっていたというけれども、意識的にやってい たわけではなくて、結果的にできていたというだけです。その条件は、もちろんちゃん と研究しなければいけないのですが、これからは意識的にやっていかなければいけな い。  職場でのOJTも、中期的なキャリア形成も、実は人事がやっている部分はすごく少 ないのです。初任配属は人事がするのですが、その後例えば経理に配属されたとする と、課長になるくらいまでは、例えば大手であれば人事は経理部長が、営業なら営業部 長とか、生産管理なら生産管理の本社の部長あたりが異動させていて人事は噛んでいな いのです。課長以上になってくると、人事が多少噛んでくるという形です。ですから、 配属された後、特定の部分が決まってしまうと、あるところまではその部門の中の管理 者が、実はキャリア形成に関わっている。そこのところに、人材育成の観点からの異動 をしてもらうということを仕組んでいかなければいけない。  それを仕組むのは職業能力開発推進者などで、そういう人たちの役割というものをき ちっと明示的に教えてあげて、どういう仕組みを企業内に作ったらいいかという教育を 行政がすることは、すごく大事だなと思っています。 ○山川委員  私も同感です。今の企業内能力開発の話ですと、能力開発を受ける本人がいて、実際 に能力開発の担当と言いますか、実際に行うのはおそらく現場の上司が多くて、それを 人事部などが統括して、かつそれをエンドースするというか、裏づけるのは経営トップ の役割で、かつ労働組合が意見を述べるという各関係者の役割に沿った方針があり得る のではないかと思いますが、おっしゃっているように、上司の役割があまり明確化され ていないということがあります。先ほど、職業能力開発基本計画をお聞きしたのも、そ ういうことがきちんと書かれていれば、トップなり人事部なりが現場の上司における職 務の中身として位置づけるので、上司にとっても1つのインセンティブになるという か、あるいは職務命令の一種になる。命令と言えるかどうかはともかくとして、職務の 一種であれば、それがまた評価の対象にもなってくるという連関があるのではないかと 思います。  上司は、例えば評価の主体として、第1次的な評価もしているし、不満の聞き役でも あるし、能力開発の実際の担当であるということで、なかなか大変なのですが、そうい った役割が、評価はともかくとして、あまりシステム化されていないのではないか。大 企業とかしっかりした企業でしたら、そういうものは持っているとは思うのですが、必 要があれば支援する方向もあるのではないかと思います。 ○諏訪座長  これまで、職業能力開発は企業にお任せという形で、そしてその先はブラックボック スになっていたところがあった。したがって、個々の企業の中でも、能力開発がどのよ うになされているかというのは、必ずしもうまく把握したり、働きかけたりするという ふうにはできない部分がありました。同じように、企業を越えて、個々人にまで手を届 かせるということは、職業能力開発促進法ではなかなかできない。本来の趣旨はそうで あったにもかかわらず、手法は非常に間接的であったと思います。  ところが今度、キャリアの問題をもう少し前へ出して考えていこうとすると、本当に 個々人にうまく届いて、個々の企業の現場にも届いていかないといけない。この仕組み の議論がいま皆さんの中でなされているのだろうと思います。その中で初めてキャリア ・コンサルタントなども適切な役割ができるわけで、この仕組みをどうするか。北浦委 員からは、せっかくある職業能力開発推進者をもうちょっと再編・再活用するという道 もあるのではないかというご意見がありましたし、佐藤委員や廣石委員からは、上司と いうところに届く仕組みをどうするかというご意見もあったわけです。この問題は非常 に重要ですので、他の委員からももう少しご意見をいただけたらと思うのですが。 ○廣石委員  今のお話で、おそらく法政策と企業の連結点をどこかに求めるとするなら、職業能力 開発推進者しかないだろうなという北浦委員のお話に賛成せざるを得ません。と申しま すのは、佐藤委員が言われたように、中堅以下の企業だと、何とか推進者といろいろな ものの推進者を兼ねている。そういった中で、どれだけ実効性が出てくるかなというこ とは、やはり中堅以下の適用ではクエスチョンマークが付いてしまう。ではどうしたら いいかという解決策が見出しにくいのですが、その職業能力開発推進者という者の役割 の再認識という言い方でしか逃げようがないのかなという感じは少ししています。  もう1つ、山川委員から、マネージャーは評価もやるしキャリアも考えなければいけ ないし、そういったことをやるのは大変だというお話がありましたが、逆に言えば上司 の本来の役割は部下のマネジメントなのだと。自分がプレイングマネージャーであれば 楽だけれども、プレイングに逃げないで、本当の部下をマネジメントするのが、マネー ジャーだという認識を植え付けさせる。それが本来の姿だろうとは思います。では、誰 がそれをやるか、やはり職業能力開発推進者という話になってきてしまうとするなら ば、職業能力開発推進者って大変だと、しみじみ思うという感じはいたします。結論が 出ませんが。 ○諏訪座長  なんとなく取っかかりとして職業能力開発推進者が出てきたというのは、よくわかり ます。もう少しご示唆をいただければと思うのですが、いかがですか。 ○佐藤委員  職業能力開発促進法第12条では、職業能力開発推進者の役割を抽象的に書いてあっ て、細かいところは省令とか通達になるのですか。 ○総務課長(妹尾)  そのとおりです。12条に職業能力開発推進者の設置が定めてありますが、12条の中で は職業能力開発推進者の業務として3つ書いてあります。その第1番目には、資料の14 頁で言えば3の具体的業務というのがありますが、この中の上3つぐらいが12条の第1 項に掲げてある職業能力開発推進者の業務です。企業の中の訓練計画を定める、あるい は訓練体系を作る、訓練カリキュラムを作ると、これが職業能力開発推進者の業務の第 1番目に法律で挙がっているものです。従業員への相談・援助が2番目に挙がっていま す。法律の3番目の業務が国あるいは都道府県、中央職業能力開発協会等との連絡業務 です。 ○佐藤委員  これで見ると、企業内のOff−JTの仕組みを整備するのが強い感じですね。 ○総務課長(妹尾)  だから職場でのOJTトレーニングとか、職場間を移動しているようなキャリア形成 と能力開発みたいなところが、少し弱いのかもしれない。教育訓練これだけを見てしま うと、体系を作れとか、あとは個人とのキャリア・カウンセリングがあるのだけれど も、OJTのところ、そこが落ちているというのが問題かもしれないですね。 ○職業能力開発局長(上村)  職業能力開発推進者のやる業務そのものは、その前に何条か事業主がやる業務がわり と具体的に書いてあります。今、総務課長が説明したのは、その具体的な内容ですが、 事業主が構ずべきということがわりと事細かく法律に書いてあるのです。それからさら に、これは枝番で入っているから最近だと思うのですが、10条の4で、国が指針を作る ということになっていまして、その指針の中にはキャリア・コンサルティングの実施だ と入っています。前回の13年の改正ですか、10条の4で、事業主が構ずべき措置に関し て国が指針を作って公表しろと。そういう意味では、確かにこの職業能力開発推進者は いろいろな厚生労働省関係の法令の中では、ほとんど最初に出来た書きぶりかもしれま せんね。我々も参考にして、その他の法律改正をやるときに、大方は組合側から事業主 の取組を明確にしろというような要請を受けて、それぞれのところで体系を書いてきま した。ですからその模範になったような書きぶりですが、内容はそういう意味では見直 されてバージョンアップされてきていると思います。この指針の中では、最近の書きぶ りになっているのではないかと思います。 ○諏訪座長  皆様ご存じのとおりですが、職業能力開発促進法は、基になった職業訓練法が1958年 に出来たときから、かなりOff−JT志向なのですね。企業でやることをやってくだ さいと、それでできないようないろいろな問題に関して、国がお世話をしましょうとい う感じで出てきましたから、当初からある様々な装置は全部このOff−JTとの関 係、あるいは国が企業や業界としてやろうとする施策に対する連絡役とか協力役といっ たような役割で設計されてきたと思います。  それが、その後職業能力開発促進法が大幅に法改正をされて、さらに2001年ですか、 平成13年改正でキャリアという概念(職業生活)が非常に重要な概念として入り込む。 つまり個々人の能力をどうやってアップさせるか。こうしたことになってきますと、い ろいろな装置も少しずつ見直したりをしているのですが、やはり当初からの役割や、枠 組みを引きずっている部分がありますので、今回、我々の研究会では、そうしたものを 全部もう一度見直して、どんなふうに基本から再設計していったら一番うまく新しい時 代に対応できるかという、こんなことで皆様からお知恵を拝借したいということだろう と思います。 ○職業能力開発局長(上村)  それと関係ないのですが、先ほどのコンサルタントの配置のイメージで、どうも全県 1カ所ぐらいのイメージを持たれると誤解があるのです。大型所ですが、大体半分ぐら いには配置されていると。あまり小さい所で利用がない所ではなく、ユーザーの利便を 図りながら配置しているということです。 ○キャリア形成支援室長(半田)  私の説明が皆様の誤解を招いているようですので、もう1回申し上げます。大型の安 定所には複数配置、中型には1名、それ以外の所には巡回で回っているということで、 一応ハローワークはできる限りのカバーをしています。 ○諏訪座長  室長のご説明ではなく、むしろ私のまとめが粗雑で済みませんでした。 ○北浦委員  職業能力開発推進者のところにずいぶん固着してしまうのですが、結構ここにヒント があるという意味で、大いに検討すべきではないかと思ったわけです。先ほどありまし たように、もともとあった意味合いとして、確かに職業訓練の色彩がまだ消えていない というのがあるのですが、生涯能力開発というのが思想的にあったときに、これが生き ていたのだと思いますね。その思想はまだ生きてはいるとは思うのですが、こういうも のは、その時その時の政策課題に応じて、その考え方を普及する、推進するものである から、この設置の根拠があると、こういうふうにならないと民間も納得しないのだろう と思うのです。そういった意味で言うと、職業能力開発推進者を置かなければならない 状況というのは何であるかを、もう一度明確にしないといけない。  すると、今大事なことは、先ほど来のご議論にあったような、まさに個人主導なり、 そういう個人の方に軸足を置いたような能力開発、あるいはキャリア形成という発想法 からもっとこの取組というのを企業に促さないと、大企業はできているのかもしれない けれども、少なくともそれをチェックしながらやっていかなければならない。大企業に なりますと、今度、逆に会社主導になってしまうというのも変ですが、個人主導と言い ながら会社の考え方が強くなってくる。そうすると労使という、もっと集団的な枠組み でチェックしないといけないということもあるかもしれませんし、中小企業の場合に は、そもそもそういったような発想をもたらすことが大事です。  いずれにしてもそういった思想を普及するために要るのだという整理がまず1回ない と、そこから書いていけば、現状に含まれているのかもしれませんが、おそらくそれの 重点の置き所が変わってくるし、その時々によっての政策の取組方にメリハリをつける ということも可能になるのではないか。ここが1つだと思っています。  その時にもう1つあるのは、職業能力開発推進者というのは責任者なのかどうか。安 全衛生などの体系などを見れば、これは責任者・管理者ということになっていくわけ で、本当に内部体制を担保するのであれば、そういう人になっていただきたいというふ うに持っていかないといけない。職業能力開発推進者とあるけれども、本当は責任者的 な立場にするのかどうか。これはしかし法制が少し違いますから難しいのですが、そこ は今後、この実効性を図るにはどうしたらいいか。現実論から見ると、先ほど言ったよ うに、役職が本当にバラバラになって、課長補佐でも確かに立派にやっている方も、属 人的にやっている方もいらっしゃるのですが、たぶん課長が交替したので補佐に譲った とかいうように、結構、惰性で流れて、どんどん担当者まで落ちてしまったというケー スもあるのだと思うのです。ですから、これはどういう人をつけるのかというのも大事 なことで、どういう職業能力開発推進者であるかという思想に関わるので、その辺も含 めて少しランクアップを考えていくことが必要なのではないか。そのような感じがいた します。 ○佐藤委員  今の北浦委員の発言にも関わるのですが、これからは個人主導の能力開発です。従来 は会社主導の能力開発でした。私は、それ自体おかしいというつもりはないのですが、 個人主導の能力開発というと、個人が将来こういうキャリアを目指していて、それに必 要な能力開発をしなさいよ、その機会を会社も行政も提供しますとなると、どうも資格 を取れとか、やはりOff−JTが中心に考えるようになってしまうのです。  それはどういうことかというと、会社の中で仕事を通じての能力開発というのは、仕 事なので、会社主導というのがすごく強い感じがします。私は、個人主導の能力開発と いうと、基本的には職場でやる日々の仕事とか、中長期的にいろいろな仕事を経験し て、会社の業務上の必要で配置すればいいのだというふうになってしまうかなという気 がしています。日々職場でやる仕事が可能な限り、毎日が能力開発だというつもりはな いけれども、1年いれば1年前よりも仕事をやったことが、その人の能力向上にプラス になるという仕事の与え方をしてもらうことがベストですし、3年経って職場を移動し て、5年、6年で見れば、会社の必要性ももちろん考えていたのだけれども、本人の能 力開発の点、あるいはキャリア形成というのはプラスになったとした方がいいわけで す。個人主導と言ったら、そこの部分が薄まってしまうような危惧がある。ですから、 私は今回の中でもきちんと書いていただくといいかなと思っています。  話は飛んでしまうのですが、今度の能力開発の当初の減税も、基本的にはあれはOf f−JTなのです。OJTは計算できないから、Off−JTは見てあげますよという ような減税の仕組みでは、あまり良くないかなという気もしています。 ○北浦委員  今言われたように、確かに用語の問題で、個人主導というのは、ちょっと古いワーデ ィングなので、むしろキャリア支援ということだろうと思いますし、そういった意味で は全く言われているとおりだと思います。私もこれはOff−JTだけになったらまず いと思います。 ○諏訪座長  言葉を換えて言うならば、個人の能力開発、キャリア開発に向けることを巡る組織と 個人のWin-Win関係をどうやって作るのかなのだろうと思いますね。個人がキャリアに 目覚めてしまうと、会社に後足で砂をかけてしまうのではないかと、こう思う部分は熱 心になりませんし、逆に会社の言うことを聞いていたら自分が潰れるという、最近若い 人がよくそういうことを言って転職していくのですが、こういうことですと、これもま た大変悲しいわけです。  こういう新しい良い関係がプラスのスパイラルで展開するためには、どんな仕組みを 作ったらいいか。この法律はその中のどういうことをやるべきか。今、佐藤委員と北浦 委員からの議論の中で、はっきりとしてきているように、Off−JTだけでいいとい うわけでは全くなくて、やはりOff−JTとOJTとの間の適切な連携、組み合わせ が必要である。そのときに、難しいのはともかくOJTに法はどう関わるか、ここがメ チャクチャ難しいのです。Off−JTは当初からやりやすかった。しかしOJTは、 国が余分なことを言ってモデルなんて作ったら、それこそかえってうまくいかなくなる 可能性もあるという大変厄介な部分があります。 ○佐藤委員  スパイラルは、今従業員のキャリア形成支援という枠組みの中で、そこにもOJTな どがありますよという言う方を、まずは考え方として、その中で確かに仕組み作りのと ころのサポートぐらいしかできないかもわかりませんが。 ○諏訪座長  この問題ばかり議論をしているわけにもいきませんので、情報提供、相談という問題 の、もう少し全体についてご議論をいただきたいと思います。先ほどeメール、電話、 eラーニングなど、いろいろなことが部分部分のご議論で出ましたが、まずはこうした マスで対応していく部分と言うのでしょうか。この情報提供について、まずご議論をい ただきたいと思います。 ○上西委員  情報提供ではなくて相談・援助のほうで、先ほどから話が出ているキャリア・コンサ ルタントですが、先ほど佐藤委員も言われたようにキャリア・コンサルティングの資格 はいろいろな人を対象にしているわけですね。既に日々相談・援助に関わっている方で すとか、あるいは人材派遣業界で日々そういうものに関わっている人が研修を受けるこ とは、在職者訓練という意味ですごく意義があると思うのですが、そういう経験の全く ない方がその資格を得て、では専門家として活躍できるかというと、なかなか活躍でき ないという資格を取った人の側の不満があると思うのです。  ただ、一方で雇って活用する側から見ると、その人が本当にそんな能力があるのかわ からないのですね。確かに資格は持っている、その資格を取る過程の中で知識だけでは なくて、傾聴の仕方とか、ロールプレイングとかしているのですよね。しているのだけ れども、した結果としてその人が本当に親身になって話を聴ける人なのかどうかという 個別審査をした上で、オーケーを出しているわけでは多分ない。そこは教えていただき たいと思うのです。  資格を取っています、でも職歴を見るとあまり関係なさそうな職歴ですという人に は、例えばキャリアセンターなり、ジョブカフェなり、そういう所でも任せにくいと思 うのです。一旦その人を臨時職員であれ雇って任せてしまうと、相談・援助は個別的な ものですから、そこでどんな相談・援助をやっているかなかなか見えない。その人が本 当にその資質のある人かどうか検証がしにくいという、すごく難しい問題があるなと思 っています。  資格を与えるときに、一律の資格だから難しいのですが、専門職としての資格であれ ば、もう少し何か、教育実習ではないですが、そういうような仕組みを作るとか、実際 のところ、その人が本当にできるのだということの保証になるようなものが、もう少し 必要なのかなと思ったのです。 ○キャリア形成支援室長(半田)  まず資格の部分で、十分とは申し上げませんが、ただいま上西委員ご指摘のありまし たカウンセリング技法とかそういった面も、試験機関が試験をやって合格者に対して資 格を出すというプロセスにおいては、実技試験も必ず噛ませるようにしています。一応 そこでやっておりますので、誰でも通るというものではないということです。ただ、現 在の養成講座と試験が十分であるかというと、それは確かにまだまだ課題も多くありま す。  そこでいま私どもは、一人前のキャリア・コンサルタント、標準レベルのキャリア・ コンサルタントの能力要件、あるいは能力評価試験を定めておりながら、その上で一人 前と。やや矛盾するところもありますが、医師で言うならば医師試験を通ったばかりで はなくて、本当に患者を診られるような状況になったら医師というイメージですが、そ ういう一人前のキャリア・コンサルタントというものをどうイメージしたらいいのだろ うか、そして、それをどのように育てていったらいいだろうかということを検討してい るところです。  その中では、おそらく標準レベルの試験に合格した人たちに対しまして、少し実践経 験を積む中で実力をつけていただく。キャリア・コンサルタントのインターンシップみ たいな仕組みが必要なのではないだろうかと、いま模索しているところです。以上で す。 ○諏訪座長  よろしいですか。また相談に戻りながら進めてもかまいませんが、情報提供の議論が 足りないものですから、いろいろとご示唆をいただければと思います。 ○北浦委員  情報の問題ですが、総合的職業能力開発情報システムについて先ほどご説明がありま した。17頁、18頁で、大変立派な仕組みではないかなと思うのですが、これは主体とし て誰が運営をするのか。それからこの情報の中身に職業情報とかいろいろありますが、 例えば職業安定機関におけるいろいろな情報提供との関係はどうなっているのか。内容 的には抽象的に書かれているので、何とも読めそうなのですが、民間情報というのは、 どこまでこれの中に含めて考えているのか、この辺、教えていただきたいと思います。 ○基盤整備室長(三上)  今まさしくその辺りも踏まえながら考えている最中というのが実情です。ただ、そも そもこの総合的職業能力開発情報のシステムについては、この18頁にありますように、 様々な能力開発の情報を、1カ所で見られるようにポータル(入口)という形で作って いきたいと考えているところです。スタート地点に今あるということですので、さまざ まなご意見をいただきながら進めてまいりたいと思っているところです。 ○総務課長(妹尾)  少し補足いたしますが、18頁の図の人材ニーズ情報というのは、毎年厚生労働省が人 材ニーズに関する調査をしまして、その結果をデータベースとして運用していこうとい うものです。民間の然るべき情報提供会社のサポートなどを得ることになりますが、厚 生労働省が直接運営する。この18頁の点線で囲ってある部分が、(独)雇用・能力開発 機構なり職業能力開発協会なりが現に運用しているデータベースで、そういうものと連 携をし、リンクをさせていくということです。大体そういう構造になっています。 ○北浦委員  意見の方で申し上げます。まだ検討中ということで、いろいろ検討結果がまたわかれ ば教えていただければと思いますが、2つあります。まずポータルサイトという考え方 を取るのであれば、これは単なるリンク集になってはいけない。ポータルサイトがポー タルである由縁は何かというと、そこは玄関としての機能というファンクションがない といけない。それを何で考えるのか。通例そこのところには、例えば1つは発信機能な のです。積極的にこういう情報がありますよ、こういう所がお勧めですよという発信機 能です。  それからどこの部門を使ったらいいかというとガイダンス機能、何かそういったもの を装置として入れないと、こういうものは単なるリンク集になって、ほとんど使いもの にならなくなってしまう。おそらくこれはテクニカルなのかもしれませんが、ポータル というと非常に自明なので、概して世の中にはポータルが多く、質の悪いものは非常に 多いわけで、そこのところをやはり良くすることを考えていただいたほうがいいのでは ないか。  もう1つは、これまでにも中央職業能力開発協会で情報システム(ADDS)があっ たわけですね。そのときにいろいろやっていて、難しさというのもあったと思うので す。そういう問題点を克服していただきたい。あまり個々には申し上げませんが、それ は議論が必要かなと思っています。一番あるのは、先ほどの基本調査などを見ても、結 局、具体事例や事例情報、ケース情報が欲しいということになるのです。ところがこれ は、なかなか出しにくいという問題が1つあるのと、出しても腐ってしまうのでメンテ ナンスという問題が出てくる。ですから、そういうメンテナンス機能というのがきっち りできるような仕組みを、このポータルの中に入っていくような所に作らなければいけ ない。そうすると、それが結局全部パブリックなものでできればいいのですが、そうで ないとすれば民間機関のもので生きているところをどんどん集めて、それで中身を変え ていくという形をとったほうがいいのではないか、これは感想です。 ○佐藤委員  これもやはり個人対象なのですか。 ○基盤整備室長(三上)  はい。 ○佐藤委員  もう少し企業対象というのは考えないのでしょうか。それと、どうもOff−JTと 教育訓練のコースの紹介みたいな感じがメインなのですが。  先ほど言ったOJTというのはキャリア形成ですが、どんな情報提供をすればいいの か。例えばアパレルの会社が営業マンを育成するときに、入社してから10年の間にこう いう仕事を経験させます、大卒であったら紳士服と婦人服、商品系列を変えていますと か、販売店を変えて育成していますとか、どういう仕事を経験させていますという事例 を紹介するという情報が大事なのです。  私は、キャリア形成やOJTというのは紹介できないものなのだということはないと 思います。営業マンにどういう教育訓練をさせて育てるかというのではなくて、それも 大事なのだけれども、どういう仕事を入社後5年とか10年で経験させていますという事 例を集めて勉強をさせることは、OJTについての事例紹介になる。上司の評価の中に どういうふうに部下育成の項目を入れているとか、人事評価の中に部下育成の要素を入 れているという事例を紹介するということは、例えば上司の部下育成を促進することに なる。それは1例ですが、OJTに関わるような情報を企業に提供することもできるの ではないか。その好事例でいいと思いますが、そのようなことは考えられていないのか ということです。 ○職業能力開発局長(上村)  1つは北浦さんの言った発信機能というのは、例えば今日の新着情報みたいなものだ とか、そういう類がポータルサイトを開くと出ているではないですか。その頁を開いた 人が見たくなるようなものを散りばめたらどうかというのが、言われているイメージで すか。 ○北浦委員  一般にはそうですね。あとメールマガジンを出したりする場合もありますが、そこの ところのサイトのフロントページの所を、どう編集するかという形です。 ○職業能力開発局長(上村)  それから佐藤委員のお話は言われるとおりだと思います。先ほど申し上げました指針 の中に、例えば事業主はその配置その他の雇用管理について配慮する事項というのがあ って、労働者の配置等については、当該労働者の職業生活設計に即した実務経験の機会 の確保に配慮することなどが書いてあるのですね。こういうものを出している以上、実 際にいろいろな企業の状況を把握して、個別具体名を出すのではなくて匿名で了解をも らった上で提供したらどうか。それを他の企業に参考にしてもらう。それは良い話だと 思いますが、どこまでできるかということはございます。 ○佐藤委員  ただ、そのところにコースだけの紹介ではなくて、先ほどの全体の作りの中で、個人 の能力開発支援をするOff−JTプラスOJTということをすると、OJT側の企業 を促進する情報提供があってもいいのではないかということなのです。 ○諏訪座長  それは言葉を換えて言うならば、個人の側から見ると、人の能力の開発というのは、 どういう経路で行われるか。いくつかの類型があろうかと思うのですが、それが個々人 が存外知らない。したがって青い鳥だとか、隣の芝生みたいに余所には何かあるとつい 思っているわけですね。ここでは自分は駄目になる、よそに行ったら良くなると。そう いう場合もあり得るけれども、日々の仕事の蓄積の中から力を付けつつ、ある所で飛躍 したり、他の方向に転換したりとか、こういうことの繰り返しの中で行ったり来たりし ながら、我々の能力というのは徐々に高まっていくものです。  そのような情報だとか、今の企業内における能力開発の機会を、どのような形で与え ているか。仕事をいろいろと幅広く経験するというのもそうですし、易しい仕事から難 しい仕事へ行くというのもそうです。このような情報も広い意味での能力開発情報とし て、どこかで提供していってほしいという皆様のご意見であったと思います。  発信機能で重要なのは、問い合わせがきたときに、これにクイック・レスポンスする ことなのです。お役所のホームページだけではないのですが、一般的に評判が悪いホー ムページはレスポンスが全然ない。大体その問い合わせの場所も書いてないなんていう ようなことがある。つまり、そういうメールがたくさん来られたら困ると懸念している らしいです。それに向けた人材だとか、運用のコストを積算していないものですから ね。こういうホームページというのは人々から見離されてしまいますよという意味だろ うと思います。 ○佐藤委員  作っても、なかなかそこに来てくれないということはあります。例えば先ほどの職業 能力開発推進者などは、もし本人が登録をすれば、新しい新着情報だけのメールマガジ ンが届く。こんな新しいものがあるなら見てみようとならなければいけないから、職業 能力開発推進者はそういうふうにやってみる手はあるかもしれない。登録をすると、何 かの情報が月に1回ぐらいくる。ホームページにアクセスしてください、こんなことが 載っていますよという情報を出すのは簡単だから、こちらから働きかけないと見に来て くれない。それを是非工夫したらいいのではないかと思います。JILのメールマガジ ンは良いですね。あのような能力開発メールマガジンを作って、職業能力開発推進者に 送るというのはいいのではないか。 ○キャリア形成支援室長(半田)  1つには先ほどから企業サイドに対する情報の提供ということがございますが、先ほ ど北浦委員から言われましたADDSは、中央職業能力開発協会と都道府県職業能力開 発協会の間に結ばれて作られているものです。この中で各種の能力開発基本情報だと か、人材育成情報を提供するようになっております。  その点、佐藤委員のご発言に関連しますと、OJTの辺りが指針の中ではちゃんと謳 われていますが、あまり意識されていなかったかなと。あるいは我々も正直申し上げ て、その辺はあまり意識しないで運用していたような部分があります。  ただ今ご指摘がございました職業能力開発推進者へのメール発信、実はこれもう既に やっています。ただ、ややキャリア・コンサルティングに偏している部分があります。 登録数は定かに覚えていませんが、かなりのアクセス数をいただいていると聞いていま す。 ○総務課長(妹尾)  少し補足いたしますが、企業の方に対する情報提供の点ですが、半田室長も申し上げ ましたように、職業能力開発協会がまさにその役割を担っております。中央能力開発協 会と都道府県の能力開発協会は、法律上も定められた組織になっていまして、事業主の 行う職業訓練に関する情報提供を行うのが法律上の業務の1つになっています。現実に 確かに個々の企業に対して、どういう能力開発なり訓練をすればいいかという個別の事 例なりケースのようなものを、冊子とか本という形では結構作って出していると思いま す。今の時代ですから、それをもう少し早くデジタルの形でどう提供できるかというの は、これからの課題かなとは思います。 ○上西委員  この18頁の図を見ていますと、これまで情報提供というイメージは、体系的にきちん と集めて、全部揃ったら出すというような感じがあったと思うのです。そうすると、体 系的に揃うまでに何年もかかってしまう。私もこの中の一部には関わったことがあるの ですが、本当に体系的に揃うかというと、予算やいろいろな制約があって、ある職種に ついては本当に少ない事例しか集まらなくて、これで本当にデータとして正しいのだろ うかというようなものも出てきてしまう。そうすると、こういうものも一方で必要なの でしょうが、先ほど佐藤委員が言われたような好事例をどんどん出していくとか、そう いう情報提供の在り方というのも、すごく大切なのではないかなと思うのです。  少し能力開発とは分野が違うのですが、男女雇用機会均等とファミリーフレンドリー で表彰しているものがありますね。表彰している会社はどういうもので、どういう事例 だろうか調べてみたら、厚生労働省のホームページでは見つからなかったのですが、 「女性と仕事の未来館」のホームページでは、ずっと表彰企業が載っているのです。け れども、事例のところはクリックして出てくるのはごく最近のものだけで古いものは出 てこない。既にこちらで持っている事例を、昔のものにも遡ってどんどん一括した所で 出していくことができれば、新たに集めなくても厚生労働省でやった調査結果からわか るようなことなど、既にたくさんリソースはあるのではないかなと思うのです。 ○諏訪座長  大変有益なご示唆です。あまり新しいことをやろうとすると大変ですから、既存の資 源をもう一度磨き直して、お化粧をし直して、うまく形にしてどんどん。揃わなくても 事例ですからね。 ○佐藤委員  均等とかみたいに、能力開発で誉めてあげる仕組みはあるのですか。人材育成なんと か企業表彰とかというのはあるのですか。 ○能力評価課長(井上)  はい。毎年11月に認定訓練だとか、あるいは技能検定に功労のあった企業や個人を表 彰する制度がございます。 ○佐藤委員  少し狭いのではないですか。 ○能力評課課長(井上)  そうですね。 ○佐藤委員  人材育成なんとか優秀企業とか、企業全体を誉めてあげるようなことをやるのがいい かもわからない。認定訓練だけやるのは、狭いのですよ。 ○能力評価課長(井上)  それは今後の課題として考えていきたいと思っています。 ○佐藤委員  人材育成優秀企業表彰とかいうものでやる方がいいかもしれない。 ○北浦委員  簡単に申し上げますが、レスポンスの話は、諏訪座長が言われたように、非常に重要 だと思うのです。できればと思うのですが、ただ、実際にやってみると苦情処理窓口に なってしまう危険が非常に強いので、それも大事だと考えるか。何かそれで臆してしま う。ここは難しいところで腹の括り方だと思いますが、それも大事な機能であることは 1つです。  もう1点は、今後の課題というか、さらに先なのです。企業の話はいろいろ出たので すが、個人対象では今度、学習の方法という考え方での情報提供の在り方は、結構ニー ズが高いのです。現実に巷にいろいろ出ている情報誌はその部分であって、時間管理術 であったり、いかに勉強するかとか、ノートの取り方などです。そんなものは関係ない と言うかもしれないが、そこが結構、出発点、入口であって、そこから入っていくとい うのが結構多いわけです。それが主婦であると家庭との家事のバランスでどうやるかと いう問題にも繋がっていき非常に重要なので、だんだん考えていったらいいのではない か。これは将来の課題です。 ○基盤整備室長(三上)  いろいろご意見を承りまして、本当にありがとうございます。非常に限られた資金と 資源と、人もこれに対して付けるのか付けないのか、なかなか難しい問題がございま す。ただ、職業能力開発の情報を1つにまとめて対象者に、企業もそうですが、個人に 対して出せるようにして、キャリア形成に役立つような形で作っていきたいと思ってい ますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。 ○廣石委員  先ほど企業に対する情報提供は中央職業能力開発協会と都道府県能力開発協会と伺い ましたが、このポータルと考えているのは、あくまでも個人対象という理解でよろしい のですね。 ○基盤整備室長(三上)  対象者のメインとしては、個人を考えてやっていきたいと思います。当然、その中で 企業に対する部分も入っていいと思いますが、それがメインではないと考えています。 ○廣石委員  そうであるならば、先ほど佐藤委員がまさに言われた、それこそ何を求めているのだ ろう、コースを求めているのだろうか。これからキャリアアップを図りたいと思ってい る個人に、本当に必要な情報というのは何だろうなというところは、案外もっとドロド ロとした部分と言いましょうか、決してコースの話だけではないかもしれませんね。そ の辺をどのように掘り下げてこれに入れ込むのかどうなのか。そうでなければ北浦委員 が言われたようなリンク集に過ぎなくなってしまうような気がするという感想だけ申し 上げておきます。 ○諏訪座長  今議論されているのは、どのような情報を誰に対してどう発信していくかという議論 ですが、eラーニング等を行っていくときに、eラーニングの中身は必ずしも特定の資 格に向けたコースの情報などだけではないのですね。人が勉強をするときには、そもそ もなぜ勉強をしなければいけないのかというモチベーションが高まるような情報。そう するとこのモチベーションを高めるためのeラーニングというのも実はあります。  次にああ、やらなきゃなあという気になったら、どう勉強ってするのだろうか。例え ば講義の聞き方とか、eラーニングの利用の仕方だとか、ノートの取り方とか、時間管 理術だとか、段取りの作り方、こういうものはたくさん『アソシエ』などいろいろなビ ジネス系の雑誌が載せるとよく売れるのだそうです。若い世代はそういうものをすごく 求めているので、こういうような情報もきっと必要なのだろうと思います。  こうした上で、今度は何を勉強していったらいいか。これは個人と資格とのマッチン グとか、自分のキャリアコースとのマッチングです。最後にこういうことで勉強をした ら、勉強をした成果をどう生かすのか。生かすということは、普通は転職だとか昇進と いうことばかり考えるのですが、実は日常の業務執行の中に自分が勉強をしていること をどう生かしていくかと、ここもまた情報発信・提供をしていくことに意義があるよう に思われます。さもないと、普通の多くの資格制度は、資格を取ってもそれを生かして その後、その方面の仕事に就く人はものすごく少ないのですね。キャリア・コンサルタ ントもその1つですが、これ以外でもたくさんあります。自動車の免許を取ってもペー パードライバーになっている人が存外たくさんいるのと同じようなことがありますの で、これらの一連の情報提供が課題なのではないか。つまり広く見てみませんと、実際 に届かない。そうしませんと、具体的に資格か何か取りたいと思っている全体の中で見 ると、少ない人たちだけしかこのページを見に来ないということになりますので、是非 お考えいただければと思います。  情報提供について、これ以外に何かご意見がありますか。 ○山川委員  若干今までの話とも関係があるのですが、先ほどのOJTの話は極めて重要だと思う のです。OJTについて効果が上がっているかどうかがどの程度可視化ができるかとい いますか、企業の方で自分の会社はどういうOJTをやっていて、どういう効果が上が っているのか、あるいはどういう課題があるかをどの程度把握しているのかということ があります。  Off−JTでしたら非常に可視化しやすいのですが、その意味ではキャリア形成と かOJTのやり方も含めて、企業として従業員あるいは求職者というか採用に当たって 応募者に情報提供をすることと、両者はたぶん関連しているのではないかと思います。 うちはこういうキャリア形成の仕方、OJTでやっているということが、採用に当たっ て、あるいは在職中の従業員に明らかになっているような仕組みがあれば、それが可視 化されて、あるいは外部に好事例情報として、それが実際に成果が上がっていれば伝わ っていくであろうということで、企業内情報提供と、あるいは外部への情報提供は、ど うもリンクするのではないか。そのためにはたぶんそういう可視化のための作業を、企 業独自でやっていく必要があるのではないかと思います。 ○上西委員  このポータルサイトの中に是非入れてほしいのが、Q&Aのようなものです。六本木 にある学生職業総合支援センターのサイトにはQ&Aがあって、それを見ると大体就職 活動で悩むようなことに対する標準的な答えがあるのです。そういうものを見るとすご く参考になるのですが、例えば「私はパソコンの技能もないのだけれども、こういうの はどこで身につけられるのでしょう」という質問に対しても、本当はあちこちあるわけ ですが、それぞれの施設で何をやっているかを知らないと、個人はそこにアクセスでき ない。ジョブセンターのこういう所に行けば、こういう講習がありますよとか、ハロー ワークの窓口に行けば相談できますよとか、そういう情報・資源がある場所にたどり着 くためのガイダンスのようなものがあると、すごくいいなと思います。  もう1つは、そういうものを作った場合に、無料でパソコン講習とかいろいろなこと をやっているわけですから、そこに殺到するということも可能性としてはありますね。 そうすると、情報が今は行きわたらないからあまり参加者がいないけれども、情報が行 きわたるようになってたくさん来た場合に、どういう基準で参加を認めるのかというよ うなことも、もしかしたら将来的には作っていく必要があるのかもしれません。また、 わかりやすいサイトを作るために、専門の業者と委託関係を結ぶなど、是非わかりやす さという点にもお金をかけたり工夫したりしてほしいなと思っています。 ○諏訪座長  ほかにいかがですか。情報提供、相談に関してのご意見を一通りいただきました。今 回が論点に関する検討の一応最終回ということだそうなので、お手元に資料I、資料II を広げて、この辺はもう少し議論を足しておいたほうがいいとお気づきのことがありま したら、何なりとご意見をいただきたいと思います。パッと見て、要するに記述がスカ スカの所が足りない部分でしょう。あるいはパッと見てたくさん書いてあるけれども、 どうもあまり当たっていないということもあるかもしれません。 ○黒澤委員  相談の方に戻ってしまうのですがよろしいでしょうか。先ほどから在職者のことがメ インなのですが、離職者について考えてみたいと思います。現在、離職者の方々は公共 職業訓練を受ける場合に、相談というかコンサルティングを受けなくてはいけないこと になっていると思うのですが、現実的に見ますと、例えばこれは2000年の調査でした か、東京都の専門技術校修了生に「自分が受けた訓練科目を選ぶにあたってその訓練に ついて、十分に情報を得られましたか」と設問があったのですが、それに対する評価と して、10ぐらいのスケールのうち上から3段階の評価を答えた人は17%程度しかいない という状況がありました。  自分のお金で勝手にやるというのでしたら、もちろんそういうガイダンスは必要ない かもしれませんが、実際上、やはりその人の適性に合った訓練を受けてもらうというこ との方が、ずっと訓練効果は上がると思いますので、もう少しコンサルの役割を見直し てもいいのではないかという考えがあります。もちろん17年度から、母子家庭の方でし たか、コンサルティングを前提として訓練を選び、訓練を受ける間も、そういったコン サルティングを継続するような形の支援が行われることになったということなので、是 非その効果を検証して、それが大きな効果があるということであれば、全体の離職者に も適応するのがいいのではないかと思ったことが1点です。  ただし、先ほどからキャリア・コンサルタントという資格を持った人の能力はいかほ どなのかというお話がありましたが、キャリア・コンサルタントを条件にしてしまう と、コンサルタントの方々のガイダンスの能力というものがあまりないと、逆に効果が 下がることになりかねない。その部分も問題になり得るとは思うので、能力の部分を担 保していかなければいけない。その際参考になるかなと思うのは、アメリカの方で訓練 を選ぶときに、ガイダンスをどのぐらい突っ込んでやると、訓練効果が一番高まるかと いうような社会実験をやっています。それの結果によると、この訓練をやったらとアド バイスされたときに「ノー」と言える権利を離職者側に持たす形、つまり、ガイダンス はするのだけれども、強制はしないという形のガイダンスをやると、一番効果が高いと いう結果が今のところ出ているという話です。  さらに面白いのは、強制する場合でもしない場合でも、ちょっとでもガイダンスを与 えれば、その労働者・離職者の人たちの選択する訓練の種類とか内容にそれほど違いが ないという結果もあることです。そういう意味においては、少々のガイダンスでも案外 方向づけというのは、うまくいくのではないか、そういう気はしているのですが、その 辺も議論の余地があるのではないかと思います。 ○キャリア形成支援室長(半田)  実は特にハローワークに配置しているキャリア・コンサルタント(正式には能力開発 支援アドバイザー)の名前からもおわかりいただけると思うのですが、本来は今、黒澤 委員からご指摘いただいたように、離職して求職しておられる方々に、より適切な能力 開発に誘導することが1つの重要な役割なのです。  その辺りの原因というのはある程度想像がつくのですが、端的に申し上げれば、人的 な体制、相談時間が十分に取れないといったこともあるのだと思うのです。一応その辺 りはハローワークで十分できなければ、キャリア形成支援コーナーにお出でいただい て、引き続きカバーしていく体制はとっているのですが、まだ十分にワークしていない 部分があるのかもしれません。その辺りは今の制度であるわけなので、この辺りをもう 一度見直しをしてみたいと考えます。 ○佐藤委員  資料Iの論点整理で、1頁の1の(1)の現状の所では、今日議論になったようなO JT、あと上司の教育訓練機能の低下と書かれているのですね。ところが後ろのほう で、それを意識した対応というのはないような感じがするのです。現状はあるのだけれ ども後ろがないので、そこをバランス、両方を睨んだような後ろの書き方、今日出たよ うな書き方にしていただくといいなというのがお願いです。 ○諏訪座長  大変貴重なご示唆です。 ○廣石委員  今の情報提供の話に絡んでいるのですが、ポータルサイトとかいろいろな議論という のは、情報を欲しい人が取りにくるというイメージですよね。ですけれども、本来は情 報を欲していない人間にも、与えなければいけない情報というのはあるのではないだろ うか。例えば世間でよく言うニートという話になるわけですが、そういった人に対し て、どのような伝達をしなければいけないのか。何を伝達をしなければいけないのか、 本当に必要な情報は何なのかというものも本来だったら同時に考えなければいけないの ではないだろうかと思ったところです。 ○北浦委員  総論のところでだいぶ整理されているのですが、やはり全体的に考えなければいけな いのは、官と民の関係だと思うのです。これについては既にもう出されているわけです が、今、官・公共(パブリック)の役割は、いわゆるユニバーサルサービスであるとい う発想法で整理をされているので、それに近いような書き方がここには出ているので す。それでは具体的にどう進めていくのか、もう少し掘り下げていったほうがいいの か。それで少し抜けていると思われるのは、例えば、障害者などは整理されているわけ ですが、いまお話のあったニートなども含めて、そういうものに縁遠い人たちに対して の対策。これが1つあります。  もう1つは、もっと一般的にデバイスという意味で考えると地域なのですね。地域に おける差が非常に大きい。それは中小企業という問題でもある。その辺への働きかけを するような装置というのがパブリックの役割としてもっともっとあるのではないかと私 は思うので、そこのところをもう少し整理する。  1つの考え方として、これは勝手な感想というか意見で、前にも申し上げたのです が、「箱物」というものの限界はどうしても数を作りきれない。それから遠い所が出て くる。そうすると使えない人が出てくる。この限界なのです。今の時代においては、そ こはもう少しソフトに考えていっていいわけです。極端に言うと、しっかりしたコーデ ィネーターが、その地域における資源を活用して訓練を考えるという発想があってもい いのではないか。  一昨日ある県に行ってきたのですが、廃校となった小学校にITの技術者がUターン をして帰って来てそこからまず始めるということでした。こういう話もあっていいのだ ろうと思うのです。ですから、そういうコーディネート型の取組というものを育成す る。中小企業や工業技術指導センターなどというのも、まさにコーディネーターの役割 として機能をしている面がある。また、地域職業訓練センターや地域の職業能力開発促 進センターも、そういうポリテク機能を果たされていると思います。そういうところを もっと強くしていく必要があるのと、それを担えるだけのコーディネーターとしての資 質を向上させるトレーニングが必要だろうということ。  もう1つは地域におけるリソース、どういう資源があり得るのか。誰が何ができるの かというものを把握していくことが重要かなと思っています。そういうことをやってい けば、全部金かかりではない、もう少し安上がりでユニバーサルに取り組めると思うの で、民活的な発想、それを支援するパブリックと、こういう発想になっていいのではな いか。こんな感じがいたしました。 ○山川委員  ごく細かいことですが、能力開発という場合に、開発すべき能力という議論はあるの ですが、また先ほど来出ていますように、能力開発をする能力というのもあるので、能 力開発をする上での資質とか、そのスキルとか、そういうことについても既にどこかに あるかもしれませんが、意識してもいいのではないかと思います。 ○諏訪座長  ほかにいかがでしょうか。それでは論点の中でちょっとまだ足りなかったかもしれな いと思うのは、これまでのフルタイム型で働いている正規雇用型の人の能力開発・キャ リア支援ということだけではなくて、今や3分の1ほどになろうとする非正規型・非典 型で働くような方々だとか、それ以外にもニートだとか、子育て等で仕事から一旦離れ た後の再就職の人たちといったような、これまではあまり能力開発を企業中心でやると 届かなかった様々な部分にも、我々は新たに支援が届くような工夫が必要になってく る。  まさにユニバーサルサービスというのは、そういうことであろうかと思うのですが、 これについての書き込みも必ずしも十分ではなかったかもしれません。これなどさら に、最終的な報告書の検討をする際には、意識的に皆様にもチェックをしていただくこ とにいたしまして、今日は大体時間となりましたから、この辺りで論点整理(案)に沿 っての個別検討は終わりにいたします。  そこで次回以降は、研究会としての報告書をどのように取りまとめていくかというこ とにつきまして、ご議論を進めていただきたいと考えておりますが、よろしゅうござい ますでしょうか。では、事務局からこれまでの議論を踏まえ、報告書を取りまとめるに 当たっての素案を、次回の会議に用意をしていただくことにいたしまして、日程等につ いて、ご説明をお願いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  次回の会議ですが、3月29日(火)10時からの開催を予定しています。場所は今回と 同じ省議室9階を予定していますので、よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  年度も押し迫った3月29日の朝方に研究会を開かせていただきますが、どうぞよろし くお願いをいたします。本日はありがとうございました。