05/03/08 第6回医業経営の非営利性等に関する検討会議事録           第6回 医業経営の非営利性等に関する検討会 日時    平成17年3月8日(火)10時00分から12時00分 場所    厚生労働省専用第22会議室 出席委員  石井孝宜、品川芳宣、武田隆男、田中 滋、豊田 堯、西澤寛俊、       松原由美、真野俊樹、三上裕司、山崎 學                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから、第6回「医業経営の非営利性等に関する検討会」を開催いたします。 委員の皆様方におかれましてはご多忙中のところ、また花粉が飛び交う中を当検討会に ご出席いただき誠にありがとうございます。今回も、より良い医療法人制度の構築に向 けて、積極的なご意見を頂戴したいと存じます。  委員の出欠状況ですが、本日は川原委員よりご欠席との連絡を受けております。  それでは、議事に入ります。まず、前回の第5回検討会において、資料の説明のみで 議論を先送りにしました資料1−1から資料1−3に沿って、「論点の整理」をめぐっ てご議論いただきます。次に資料2に沿って「剰余金の使途の明確化」、資料3に沿っ て「公益性の確立」、資料4に沿って「効率性の向上」、資料5に沿って「いわゆる出 資額限度法人と課税関係」について、順次、議論をしていただきたいと思います。な お、当初予定をしておりました「透明性の確保」については、ほかの議題についての論 点がたくさんあることから、時間の関係上、次回の議題とさせていただきます。事務局 から資料の確認をお願いいたします。 ○山下指導課長補佐  資料の確認ですが、議事次第、委員名簿、座席表と資料の目次がそれぞれ1枚ずつあ ります。資料1−1、資料1−2、カラーの資料1−3、資料2「剰余金の使途の明確 化」、資料3−1「『公益性』に関する考え方の整理と医療計画による位置づけ」、資 料3−2「公立病院等の経営効率を向上させる方策としての『管理委託』の考え方」、 資料4−1、資料4−2、資料5がお手元にあると思います。不足等ありましたらご指 摘いただければと思います。  併せて、前回、石井委員から指摘のありました公益法人の場合の解散時の残余財産の 帰属先なのですが、現行民法上は財団法人、社団法人も、すべて解散時には「定款又は 寄附行為に定めるところによって帰属すべき者に帰属する」ということになっておりま す。いま現在、内閣官房は公益法人の検討をしておりますが、そこに問い合わせたとこ ろ、一般的な非営利法人については同様に定款又は寄附行為に定めるところに残余財産 が帰属するだろうと。一方で、新しく創設する公益性の高い非営利法人については、そ ういった形ではなくて、具体的にどのようにするのか、法律上定めるのか、まだ決まっ ていないとのことなのですが、基本的に公益性の高い非営利法人は国又は地方公共団 体、若しくはその他の公益法人に帰属させることをどこかの形で義務付けるのではない かということでした。 ○田中座長  石井委員、よろしいですか。 ○石井委員  はい。 ○田中座長  まず、前回からの積み残しである資料1−1から資料1−3に基づく「論点の整理」 について、これは前回説明済みということで、説明なしで、何かご意見はありますか。 ○山崎委員  資料1−1、医療法人の比較の「主な論点の整理」という所で、「医療法人」と「認 定医療法人」というように、言葉を使い分けしていますが例えば1頁に、医療法人の経 営を実質的に担う役員についての役割の分担化、あるいは理事の総数について3分の1 以下にすると書いてあります。これは医療法人全部について、このようにしようという ことなのでしょうか、あるいは認定医療法人に限定してこのようにするということなの でしょうか。 ○山下指導課長補佐  資料1−2で説明いたします。資料1−2は、12月に我々の方で「主な論点の整理」 ということで提示したものを、普通の医療法人と公益性の高い認定医療法人と分けて整 理したものです。そのときに、医療法人全般の話については1頁からの所で書いてあり ます。これはいまの我々の考えではすべての医療法人にというものです。また、それを 含めて公益性の高い、仮に認定医療法人としていますものについては2頁以降、さらに 上乗せでこういった規律などを考えてはどうかというものです。先生からご指摘のあっ た同族を役員全体の3分の1以下とすることについては、いまのところ我々は、すべて の医療法人にという形で論点は提示しておりますが、そのときに現実の医療法人の実態 やその状況を見て、また先生方のご意見を賜れればと思っております。 ○山崎委員  医療法人と言っても、特定があって、特別があって、財団があって、社団があって、 持分のあるのとないのと、一人医師医療法人というように6種類の形態があるわけで す。その形態を全部一括りで、そういうことが可能かどうか、もう1度きちんと検討し ないといけないと思います。 ○山下指導課長補佐  わかりました。そこは確かにすべての形態がありますし、公益性の高いものについて は、いまの特定医療法人の要件の中に同族の役員の排除みたいなことがありますが、い まの医療法人すべてについて、そういった要件があるのかというと、現実にありませ ん。また、別に法人について同族がいけないということが一般的に言われているのかと いうと、そうではないのではないかというのもありますので、その辺を含めて考えたい と思います。 ○田中座長  これはむしろ皆様方の意見を伺うためのたたき台として、あり得る1つの姿を言って います。だから、必ずこれになると言っているわけではなく、かつ一人医師医療法人と いう、また全然別の存在についてこれが当てはまるかどうか、明らかに議論しなければ ならない点だと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○品川委員  資料1−1で、医療法人と社会福祉法人と対比して整理されているのですが、社会福 祉法人の経理が的確に行われているかどうかについて、最近いろいろな事件で疑義を感 じているのです。資料1−1の4頁では、不正な役員報酬の支給はできないという規定 になっておりますが、最近、税務上のいろいろな事件を見ていると、理事長になる人は 然るべく財産を提供しないと、なかなか社会福祉法人の認可が認められない。その資金 は大体銀行から借り入れる。その銀行から借り入れたものは、個人が借り入れているも のですから、個人が返済しなければならない。結局は役員報酬で不正な操作をすること によって返済に充てるということで、そういうやり方というのはとにかく社会福祉法人 を作らなければならないから、当局もその辺はあうんの呼吸でやってくれということを 言っているという話は聞いているのですが、まさかそんなことはないと思うのです。た だ、それが税務上、役員賞与として認定されて、給与所得になるのか、ならないのかと いうことが、いままで法廷で何件も争われているのです。  そういう問題と11頁で「残余財産の帰属」について、先ほど財団・社団についてご説 明があったように、「定款の定めるところに帰属する者に帰属する」という規定があっ て、理事長が提出した私的財産は、定款の定めによってまた理事長の所に戻ってくるの かどうか。いずれにしても、きれいな規定を作ることと、実際、財産を提供して、その 財産を完全に公益のために使ってしまうのか、あるいは何らかの形で提供した所に戻っ てくる仕組みがあるのかどうか、その辺をうまく整理しておかないと、仏つくって何と かではないのですが、形だけ作っても実際個人が財産を提供して、その後何らかの保証 がないと、不正経理を生む温床にもなりかねない。今後、医療法人の問題も形だけきれ いに作っても、本当にそういう財産提供があるかどうかということについて考えておか なければならないかと思うのですが、いま私がいくつか挙げたような社会福祉法人の問 題点については、どのように考えておられるのですか。 ○山下指導課長補佐  まず、11頁の社会福祉法人の残余財産の帰属の話ですが、確かに法律上は残余財産の 帰属というのは、「定款の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。前項の 規定により処分されない財産は、国庫に帰属する」とあります。この残余財産の帰属先 「定款の定めるところ」ですが、この定款というのは社会福祉法人はすべて所轄庁、都 道府県知事の認可を必ず得ないと認められないものです。その所轄庁の認可の際には、 定款には「社会福祉法人のうちから選出されたものに残余財産は帰属する」と定款上必 ず書かないと認可しないという運用になっております。ですから、ある特定の個人に行 かないような形に運用しているものです。 ○品川委員  では、そこは絶対戻らないのですね。 ○山下指導課長補佐  そこは絶対と言われると、どこで担保するのかというと法律にありませんから、通知 と都道府県知事のそういった指導でやっているということです。 ○品川委員  戻る戻らないが、良い悪いということではなくて、戻らないと先ほどの役員報酬で何 かうまく操作しないと、という1つの誘因を与えてしまうことになりかねないのですか ね。 ○山下指導課長補佐  役員の報酬の話も含めて、これは社会福祉法人の例ではなくて医療法人の例なのです が、いわゆる経営ということで、常時、法人の経営をされている方の報酬と、非常勤で 週に1回ぐらい、顧問のような形の経営をしている方と、経営だけではなくて、医療の 診療も含めてやっている方と、それぞれ働き方があるのではないでしょうか。一律、役 員については報酬は無償だというようなことを我々が制度で言うのはいかがなものか。 実際、経営をされている方がどのような形で働いているかというのは、それぞれであ り、報酬もそれに応じたあり方があるのではないかというのが我々の考えです。 ○三上委員  医療法人に対する医療法人会計基準の導入ですが、「透明性の確保」という項目に入 っており、住民に身近な存在とするためということと、財務の透明性を確保するという ことですが、財務の透明性を確保するということは誰に対してか。普通、企業の場合は 株主に対して財務を明らかにする必要があると思うのですが、医療法人の場合は株式で はありませんし、持分のある所については出資者のものという考え方がありますが、住 民に対して公表するというのが透明性というものなのか。本来、医療情報・診療機能と いったものについての情報はオープンにすべきだろうと思いますが、経営内容・財務内 容について、住民にオープンにしなければならないとする考え方というのはどこに根拠 があるのか、ちょっと私はわからないので説明していただけますか。 ○山下指導課長補佐  医療法人の会計基準は会計基準として、法人の財務を誰に公開というか、透明性を求 めるのか。確かに、いまの医療法人というのは都道府県知事と、医療法人に融資をした りする債権者です。その中で、株主みたいな形がいないのでどうなのかというのがあり ますし、また、それは程度によるのだろうと。例えば今回、認定医療法人ということで 考えている公益性の高い医療法人については、論点にもあるとおり税の優遇などという ことを考えたときに、税の優遇を受けるというのは、幅広い人たちから支援をいただい ている形であり、その場合には、公開のあり方というのはおのずとあるだろう。  一方で、そういった支援のような形のものがない場合においては、公開すべき者はお のずと限定されるのだろう。それはまさしくどういう形で優遇されたり、どういう形で 支援を受けているのかということと、説明責任との兼ね合いではないかと思っていま す。そういう面で、確かに論点に出している所については誤解を招きかねない面がある とは思いますので、そこのバランスは考えていかないといけないと思っています。 ○石井委員  たまたまこの文章の中で、会計基準と透明性が1セットになっていますが、医療法人 の会計基準の必要性の議論は財務の透明性という観点だけではありませんので、医療法 人の機能が非常に多様化しているという観点からの必要性、つまり当事者としての必要 性があるということはひとつご理解をいただきたい。この後段の表現に関しては、この 前の検討会のときにいろいろな議論をして、1つの例として株式会社で決算の公告の制 度があります。全国に200万か300万ある株式会社等で、すべての株式会社は本来それを やらなければいけないのですが、現実に200万社について決算公告をご覧になった方はい らっしゃらないはずで、実際機能していないという話を、たしかこの検討会のときにし たのではないかと思うのです。そういう観点からいくと、株式会社ですら、そういうこ とが現実に機能していないことを考えると、先ほどの品川委員のお話ではないのです が、やはり形を作っても現実に機能しないという議論になるのかとは感じます。株式会 社の場合でも、現実にその制度が機能していないという議論は、現実の問題としては認 識しなければいけないのかというように思っております。 ○真野委員  いまのご指摘にもありましたように、公告はそうですが、例えば上場企業などではど こまで出すかというのがあって、透明になっている部分もありますね。ですから、こう いう規制という意味で、ある程度一般の方に公開するというのはあるのではないかと思 いますが、いかがでしょうか。 ○石井委員  まさにそこでありまして、上場企業に関してはという議論になって、200万とか300万 ある株式会社の中で上場企業がいくつあるかというと、極めて少ないわけです。それは 現実的な事業規模、雇用している職員数、債権・債務の額から言って、非常に社会的な 責任が高いのははっきりしていますし、株式を公に募集している、取引をしているとい う観点から、より積極的に透明性を責務として行うようなという議論があります。先ほ ど山崎委員からお話がありましたように、いろいろな医療法人があって、規模もさまざ まで、例えば一人医師医療法人の場合、売上高1億円あるかないかぐらいの、まさに開 業医の先生がお一人でやられているようなケースの場合、議論をするのは現実的には無 理があるのだろうと考えて、実務の世界では整理をしていかざるを得ないかという意見 とご理解いただければと思うのですが。 ○品川委員  いまの関連で、私はたまたま中小企業庁と日本税理士会連合会、それぞれ中小会社の 会計基準の取りまとめ等に当たりました。いま石井委員からご指摘のあった問題につい ては、日本の会社制度は約250万あって約半分が株式会社なのです。株式会社について は、ご指摘のように計算書類は全部公告義務があって、公告義務に反すると100万円の 罰金が科せられる商法違反の問題があるのです。それが非常に形骸化しているというこ とで、平成14年の商法改正で、中小会社に関してはホームページで公告してもいいとい う制度に変えたのです。  商法特例法では120万ほどある株式会社のうち、大会社、中会社、小会社に分けて、 いま大会社が資本金5億円以上、負債200億円以上で、中会社が1億円から5億円まで、 小会社が1億円以下になっているのです。大会社は全部、公認会計士の監査を要すると いうことで、公開会社が3,000で、大会社に属するのは1万もないと思うのです。中会 社を含めて、せいぜい3万ぐらいしかなくて、あとは全部中小会社ですが、中小会社の 場合に、ホームページで全部公告しているかというと、これも非常に限られてくると思 うのです。ただ、中小会社の場合は、現在、銀行等とタイアップして公告したり、ある いは所定の会計基準に基づいて計算書類を作成しないと、融資上制約を受ける。銀行か らの借入れに相当制約を受ける、逆に言うと会計基準を明確にしていると、銀行からの 融資が非常に有利になるという運動を、現在、税理士会、公認会計士協会、中小企業庁 が推し進めて、それなりの成果を与えているというのが実態なのです。だから、今後、 公益性の高い医療法人等がそういう方向に乗るか、乗らないかということについても、 また検討していく必要があるのではないかと考えられます。 ○松原委員  透明性を図るということは非常に賛成なのです。ただ、三上委員がおっしゃいました ように、地域住民に対して何を公表するのか。地域住民がほしいのは、病院がどんな医 療を提供してくれるかということであって、そこの財務諸表が良いとか悪いなどという のは、どちらかと言うとどうでもいいのではないかと思います。透明性を図ることの目 的によって、何を誰に明らかにすべきかというのは変わると思います。そういう意味で は公的保険を使っているところですから、財務諸表は行政に対してきちんと明らかにし ていって、明らかにする方法も、会計準則に則ったものを見せるという方向が必要では ないかと思います。 ○田中座長  いずれにせよ、これは「こうなる」と書いてあるわけではなくて、「そうしてはどう か」と書いてあるので、今日のように、あるいはこれからも皆様方のご意見を伺ってま とめていくことになります。また、何人かの方からご指摘のあった一人医師医療法人 は、ここでの範疇に入らないのではないかと私は個人的に思います。  資料1−1から資料1−3について、ほかに何かありますか。 ○山崎委員  医療法人の会計基準については、病院会計準則とセットで導入しようという経緯があ って、2年前の関係資料を読んだのですが、そのときの資料に、医療法人会計基準につ いては、医療監視の場合のツールとして使うために導入したいということが書いてあり ます。したがって、医療法人会計基準というのは単に透明性の確保ということではなく て、医療監視のツールとして使うということで、制度を導入するということなのでしょ うか。 ○谷口指導課長  私もまだその文書をはっきりとは読んでいませんので、不確かな答えになるかもしれ ませんが、これまでの議論に出ておりますように、いかに法人会計基準を制定しても、 そもそも適用の範囲、レベルなどが一律のものになり得ないだろう。ひょっとしたら、 全然適用されないものがあるかもしれない。そのように考えると、今後、極めて公益性 の高い法人ができるとして、そういったものについて、逆に、本当に潰れてもらっては 困る。そういう視点から見ると、医療監視の場がいいのかどうか知りませんが、医療監 視の中でそういう継続性を担保するためにも見させていただくというのは、場合によっ てはあるのではないかと私自身は考えます。 ○山下指導課長補佐  ですけれども、医療監視ありきで考えているつもりはなく、まず医療法人の会計基準 は何のためにあるのかというと、医療法人を経営している方々が自分たちの法人の中に 病院があったり、訪問看護ステーションがあったり、診療所があったり、それぞれいろ いろな医療施設を持っている。それがどういう状況になっているのか、まず経営者が把 握する。そのための物差しはこうではないかということ、それがまずありきなのだと思 います。我々は医療法人会計基準を導入して、医療監視で全部見ることを目的としてい るという趣旨ではないと思います。 ○田中座長  また戻っていただいても結構ですから、今日はたくさんの論点がありますので、差し 当たり次に移ります。次は資料2の「剰余金の使途の明確化」についての論議をいたし ます。初めに事務局から説明をお願いします。 ○山下指導課長補佐  資料2「医療法人の剰余金の使途の明確化」です。前回も説明いたしました「公益法 人の制度改革に関する有識者会議報告書」の中で、「剰余金」に関しての提言として、 一般的な非営利法人制度については、営利(剰余金の分配)を目的としない団体に一般 的に法人格取得の機会を付与するのだと。営利法人との区別については、社員の権利・ 義務の内容として、出資義務を負わない、利益(剰余金)分配請求権を有しない、残余 財産分配請求権を有しない、法人財産に対する持分を有しない、ということが書かれて います。  併せて、公益性を有する非営利法人制度の判断要件として、公益性の高い非営利法人 については内部留保が過大でないこと、株式保有等を制限することなどが規律として書 かれております。  3頁ですが、一方で我々が12月にお出しした主な論点の整理では、「医療法人の財政 基盤としての剰余金の使途については、医療法に明確に規定することによって、医療法 人の非営利性をより鮮明にするとともに、剰余金はすべて医療に再投資することによっ て地域に還元することとし、特定の個人や団体に帰属させるものではないことを明らか にしてはどうか」と提示しております。  4頁以降は、それについて具体的にどのようなことなのか、頭の整理でまとめたもの です。社団形態については、公益法人の改革の中で社員の権利・義務としては、利益 (剰余金)分配請求権を有しないとされています。  また、医療法人は、医療法第54条で剰余金の配当を禁止しています。裏返して言う と、剰余金の使途は医療の向上に還元するものであって、その具体的な取扱いについて 医療法で定めて、これにしか使ってはいけないということは言っていませんが、それは そもそも医療法人の使命の表れとして、医療の向上に還元していただくというものだろ うということで、その使途の先は医療法人に委ねられているので、これまで特段の基準 は設けておりませんでした。  しかし、規制改革・民間開放推進会議などから、医療法人の剰余金について、必ずし も医療の向上に還元しているとは言えないのではないか、また、事業活動により生じた 収益を、医療法人の運営上適切でない費用や不要な費用に充てているのではないか、と いう指摘があり、医療法人という営利を目的としない性格の法人が、実態上、形骸化し ているのではないかということが指摘されております。  そういったことを踏まえて、従来の「剰余金は配当してはならない」という配当禁止 規定に加えて、剰余金の使途の明確化と不適正な費用負担(利益供与)の禁止という観 点から、それぞれどのようなことを議論していくべきか考えてみました。具体的には、 4頁以降は今は「剰余金の配当禁止」としか書かれてなく、あとは解釈上というか、医 療法人の方々で具体的には設備整備の費用や将来の施設整備に係る費用、また従業員に 対する給与改善の費用に充てられたりしているでしょう。また、配当ではないのです が、事実上利益の分配とみなされる行為として、近隣の土地建物の賃借料と比較して、 著しく高額な賃借料の設定をしている場合、病院の収入に応じた定率の賃借料を設定し ている場合、役員等へ不当な利益を供与している場合などということについては、実態 上、配当類似行為だということでよろしくないと指導しているところです。  5頁は剰余金の実際の会計処理です。会計上では、貸借対照表上、資産と負債資本と 対比しておりますので、基本的に剰余金の出ている右下の資本の場で、資本剰余金と利 益(剰余金)の所については、すべて資産の中に充てられています。この資産というこ とで、どう使われているか。これは会計上、基本的には医療法人のほうで医療に充てら れているのではないかとみなしているし、我々もそう思っているという仕組みです。  2番目に、剰余金の使途の明確化に関する具体的な方策ということでどう考えるの か。仮に、医療法に剰余金の使途はこれしか使ってはいけないという形を明示した場 合、自由な経営、効率的な経営をしている医療法人にとっては、法律でそのような定め があった場合には硬直的な会計・財務状態になって、結果的に法人運営の自主性を阻害 するとともに、医療の効率性が図られない可能性が非常に高いと思っています。このこ とから、我々としても医療法人の運営の自主性を阻害しないよう、ひいては今までどお り医療の効率性を図っていくためには、剰余金の使途の考え方というのは自主的な規律 として、理念的な規定として、明確化の検討を進めるべきではないかと考えておりま す。  具体的には四角の中に例示してありますが、医療法人の剰余金はこういった経費に充 てるものとするということで、例えば医療の質の向上に向けた資源の充実に要する費 用、安定的な財政基盤の確保に要する費用、医療法人の経営の確立に要する費用という ことを書いてはどうか。一方で、適正な費用負担をしていただく、不適切な費用負担を 禁止するということで、医療法上に、例えば「医療法人は、その運営に著しく支障を来 す経費の負担をしてはならない」ということを書いてはどうかと考えております。  6頁ですが、剰余金の使途として3つ例示を挙げましたが、具体的にどういうことを 考えられるのかというものです。これはあくまでも例示なので、厚生労働省はこれしか 使われないと考えているというものではありません。先ほど理念規定で「医療の質の向 上に向けた資源の充実」と書きましたが、これはどういうものかというと、施設の整備 費用、職員関係費用などというものがあるのではないか。これはあくまでこれしか使っ ては駄目だというものではありませんから、ご注意ください。2番目の「安定的な財産 基盤の確保」としてどういうものがあるのかといえば、経営関係の費用、医療法人共助 の費用、社会福祉事業への費用などが考えられるのではないかというものです。  7頁ですが、医療法人の経営の確立についての具体的なものとして、持分のない医療 法人へ移行するための費用やその積立金などが考えられるのではないかというもので す。  一方で、不適正な費用負担はいけないということについての例は、例えば役員、社員 等への根拠のない高額報酬、法人の運営と関連しない不適切な資金貸付けが考えられる のではないか。また、不要な費用負担による実質的な利益分配の禁止として、医療法人 の運営とは全く関係ない費用の支出、社会通念上著しく高額な賃借料や収入に応じた定 率賃借料の支出などが考えられるのではないかと思っております。資料2の説明は以上 です。 ○田中座長  ただいまの説明について、ご意見等ありましたらお願いいたします。 ○品川委員  いまのご説明は、資料5の「出資額限度法人」と非常に密接に関連してくるのです が、ここで剰余金の使途を明確化して、医療法人全体に対して、これ以外剰余金を使え ないということになってしまうと、出資額限度法人を議論する意味がなくなってくると 思うのです。資料2と資料5の関係については、事務方としてはどのようにお考えなの ですか。資料2をギリギリ議論していくと、もう資料5は終わってしまうのです。若干 別な点がありますが、事実上この資料2で提言しているのは、持分をなくしてしまうこ とになりかねない。そうすると、出資額限度法人は議論する意味がなくなる。例えば5 頁以下で、剰余金というのはこれしか使えないのだと。これでいいかと言ってしまう と、もう既に出資額限度法人とか何とかという議論がなくなってしまうのではないか。 あるいは資料2と資料5を一緒に議論しないと、ちょっと問題の解決にならないのでは ないですか。 ○山下指導課長補佐  ちょっと誤解があるようなので言いますと、剰余金の使途をこれしか使えないという ように厚生労働省が決めると、医療法人の効率的な運営を阻害することになるので、時 代錯誤だと思いますので、そういったことをするつもりはありません。ですから、基本 的に一、二、三というのは普通あることについて書いているだけで、これ以上ほかに、 医療法人はこうしたいのに、これだとできないのではないかということを逆に言ってい ただければ、我々は縛るつもりはありません。何が困るかというと、不適正な費用負担 がおかしいということをちゃんとしたいだけであって、逆に医療法人の経営にはこれし かやっては駄目ということを、今回のためにやるつもりではありません。ですから、品 川委員がおっしゃられた出資額限度法人がなくなるということとの関連は、我々は考え ていないのです。 ○品川委員  例えば5頁に例で「運営に必要な(次に掲げる)経費に充てるものとする」というこ とで、「する」と書いてしまうと、これ以外の経費に充ててはいけないというように読 めないですか。そうすると、出資持分に応じた払戻しもできないということを惹起し て、では、資料5に書いてあることは何のために議論するかということになりはしない か。ただ、ここはこういうことが望ましいというのであれば、望ましいということと、 いちばん税務上問題になる出資持分に応じた払戻しについてはどうするかということ は、ここには何も書いていないのですが、例示の範囲から見たら、そもそも払戻しとい うのは考えていないのかと思いますし、普通の医療法人が先ほどの資料1の認定医療法 人とほとんど変わらないようにしていいのかどうかという問題もありますが、その辺は いかがですか。 ○石井委員  私は、7頁の「医療法人の経営の確立」の中の「具体的取扱い」の◆の最初の「持分 のない医療法人への移行のための費用」は、いまの場合の払戻しになると思ったのです が、それとは違うのですか。 ○山下指導課長補佐  それでもいいと思っています。ですから、こう書くと、これはいいのか、これはいい のかというように一つひとつ言われることがあるので、それは我々としては本意ではあ りません。この費用の支出は、例えばここに書いてあるこういうことにあるのだという ことが法人を経営される皆さん方でご納得できるのであれば、それでいいのだろうと思 っています。 ○品川委員  私が言いたいのは、ここに書いてあることが良いとか悪いとかいうのではなくて、資 料2と資料5はドッキングして議論しないと、うまい議論に結び付かないのではないか と、そのように疑問を提起しただけです。 ○田中座長  ここは課税関係の話で、出資額限度法人のあり方論とはまた違う整理なので、あとで 扱います。ところでこれは石井委員に直していただきたいのですが、剰余金を何に使う かについての記載がありますね。バランスシート上で調達した資本を資産の側で何に充 てるかという話と、5頁に書いてあるように経費に充てる決定は次元が違います。後者 は費用化してしまうので、バランスシートからは消えます。つまり会計用語がごっちゃ になっているのではないでしょうか。もし全部費用化してしまえば剰余金は消えますか ら、それこそ出資額限度法人の意味はなくなるのです。しかし、それが資金の使途とし て、資産項目として残る形で何かした場合には貸方の剰余金も残り続けるので、出資額 限度法人の意味がある。会計用語の混乱は厚労省ですからやむを得ないと思いますが、 石井委員はいかがですか。 ○石井委員  私の理解は剰余金の使途を明確化するときに、結果論として出てくる当期の利益があ るのですが、医療法人の場合は税金を払っていますから、税引後の利益になって、それ がそのままバランスシートの利益(剰余金)につながってきて、内部留保化されていき ます。当然、内部留保として留保された利益を使うときの剰余金の使途の明確化という 問題もあるし、先ほどからおっしゃっているのですが、もし適正な費用負担議論をして いくとすれば、収益マイナス費用の、費用の所の毎期毎期の適正性の議論と、2つある ということなのでしょうか。そのようには何となく理解したのですが。 ○田中座長  費用の話と剰余金の使途の話と、2つのことが書いてあるのだと思うのです。 ○石井委員  両方書いてあるのかとは認識したのですが。 ○三上委員  この剰余金の使途の話は、非営利ということに関する定義付けというか、どういう意 味合いを持つのかということをはっきりさせるという話なのでしょう。だから、それを あまり複雑に使途まで細かく決めるということは、本来いままでやってきた非営利法人 の話の中では全く出てこない話で、規制改革・民間開放推進会議は実質利益供与に当た るのではないかということを言われていますが、言い掛かり的にこういう例もある、こ ういう例もあるという形で出されたことであって、実際ここで議論するのは、剰余金を 分配請求できない、配当しないということが、唯一の非営利の定義なのではないか。そ れを例えば家賃が高いとか、社宅を安く貸したとか、実質利益供与に当たるのではない かということは、どちらかというと言い掛かり的なもので、そういったものでこういう ことを細かく決めるというのはどうかという気がするのですが、いかがでしょうか。 ○谷口指導課長  我々はまさにそのとおりという認識を持っているものですから、逆に細かく法律で決 めるというのはいかがなものか。だから、理念的な規定に押さえておいて、例として 「剰余金は、運営に必要な経費に充てるものとする」とか、法的にはそのぐらいにして おいて、あとはギャーギャー言わずに自主的に守っていただくというのが、本来的には 望ましいのではないかという意識を我々は持っているのです。そこはたぶん先生方と違 っていないのではないかと思うのです。 ○田中座長  これを法律に書くという話ではないのですね。 ○谷口指導課長  個別の話を法律に書くつもりはないのです。 ○田中座長  議論の材料ということですね。 ○山崎委員  この場合の剰余金というのは、利益(剰余金)のことなのでしょうか、それとも資本 剰余金を含めて言っているのですか。これは利益(剰余金)の処理についてですよね。 ○石井委員  はい。 ○田中座長  先ほど石井委員がご指摘になったように、毎期の収益と費用との関係で、もし不適切 な費用として使ってしまえば、逆に言えばもともと利益(剰余金)も発生しなくなるは ずです。要は、ストックの概念とフローの概念が2つ混ざって書いてあるので、ちょっ とごっちゃになっている感じがしないでもないのですが、皆さんの議論からそれはクリ アになりました。ストックのほうは三上委員が言われるように、配当禁止が法律上の言 葉で、解釈はここに書いてあるとみなせばいいと思うのです。このペーパーは本当はタ イトルが2つあって、「剰余金の使途の明確化」と「費用の適切性について」なのです ね。 ○山下指導課長補佐  すみません。そうです。 ○品川委員  この剰余金の問題は、確かに抽象的にこういう理念を書くことは、それはそれで構わ ないと思うのですが、結局、退社するときに剰余金をちゃんと分配するのかどうか。そ ういうことを明確にしておかないと、曖昧にしたままでは税務的な問題を解決できない と思うのです。ただ、ここは単なる剰余金の使途の1つの理念を謳うというのであれ ば、別にいまの規定でも大した違いはないわけです。第54条にいう「配当してはならな い」、この「配当」とは何かというのは、確かに一般的には毎事業年度ごとの利益の配 当のことを意味しているのでしょうけれども、税務的には出資額を超えて払い戻した ら、それは配当とみなされるわけです。  そういうことを「剰余金の使途の明確化」の中でどこまできちんと書くのか。あまり きちんと書きすぎると、それが事実上、出資額限度法人になるのか、あるいは持分のな い医療法人になるのかということになりかねない問題があるのです。ここは出資の持分 については何も触わっていないから、それは自由なのでしょうけれども、剰余金につい て、出資者が一切タッチできないような規定が、果たして一般論として良いのかどう か。そこは特に医療法人側で、よく詰めておいたほうがよろしいのではないですか。政 策的にはここに書いてあることに異存もないのですが、これはいままで私がいろいろ議 論してきたことと医療法人側の要求と、だいぶギャップがあるように思えるのですが、 そこはいかがですか。 ○豊田委員  先ほどの会計基準の話にも出てきたわけですが、資料1−1が最初に示されたとき、 認定医療法人制度についての全体を見て、この中で非常に無理があるのは、医療法人の 中には現時点で特定・特別から一人医師医療法人まであるのです。そうすると、いろい ろな人々の話を聞いたり、この資料、またいろいろな意見を聞いていると、これは最初 のときも議論になったと思いますが、認定医療法人制度のグループを2階、それ以外の ものを1階に置いて、いままでの議論の中にいちばん近い形としては、認定医療法人と 残りは全部、出資額限度法人に似たような形になっていくというように読めるわけで す。例えば先ほども議論に出ましたが、医療法人の中にいろいろな種類があります。い ちばん極端な例は、一人医師医療法人といまの特定医療法人は同じ医療法人ではあるわ けです。こういうのを当てはめたときに、果たして現実的に機能するのかどうかという 問題があります。  したがって、確かにこれは個別具体的に詰めていけばいくほど、矛盾が出てくるわけ で、それを伏せて議論すると、先ほど品川委員が言われたとおり、初めから出資額限度 法人は要らない話になります。そういう意見であるとすれば、私どもは到底賛成できな い話なわけです。出資額限度法人はおいても、まずここに一人医師医療法人というのも あると。やはりある程度医療法人の枠組みを決めて、それぞれの法人に対してはどのよ うな形でいくのかという形にしないと、議論が空回りするだけであまり意味がなくなる と思います。ですから、一人医師医療法人に出資額限度法人のようなものを全部当ては めて、果たして機能するかということだし、逆に、まだこれからの議論ですが、認定医 療法人の場合には、先ほどの透明性を高めるために移行すべきだと。ついでに言わせて いただきますと、会計基準は、事務局から説明がありましたとおり、例えば税制の裏付 け、優遇であるとか、補助金などの国のお金を使っている所は、当然それはどのように 使われたか、きちんと開示することは当たり前の話です。そういったグループと一人医 師医療法人とがあると。  いま、できるだけ非営利を高め、公益性を高めていこうという方向で医療法人制度の 改革が議論されているとすれば、それが本当に機能する制度を議論すべきなので、いま までの議論はその辺が逆に行っているのかと。ある程度形を定めて、それに対してはど うするということのほうが、より決めやすいのではないかと考えています。これは議論 の進め方の問題です。個々の問題については、それぞれで違ってきますので。 ○田中座長  いま答えなくても、品川委員の指摘された「剰余金の明確化」で、退社時のことを書 けば出資額限度法人のことになってしまうし、そこを書かなければそれは別の論点だと いうご指摘だったと思いますので、踏まえておいてください。 ○西澤委員  いままでの論点は、「これからの医業経営のあり方に関する検討会」の中で、医療法 人は今後どうしたらいいかと議論し、より非営利性を高めるという方向性が出た中で、 厚労省がそのときの議論を踏まえて作ったものだと思うのです。見方によっては非常に 厳しいことの羅列ですが、一応そのときの議論した内容からするとこういうことではな いかという案だと思います。現実とのギャップはかなり大きいのですが、その中で我々 も、ただこれだと厳しい厳しいと言うだけではなくて、このような前回の報告書に沿っ てやるためには、どのようにしなければならないかということを提供側も真摯に考えて いかなければならないという気がするのです。そういうことでは、単にこれを否定する だけではなく、たたき台として落としどころを一つひとつ決めていく議論が必要かと思 っています。 ○田中座長  これはある意味、極端な双方から出ていますから、全部否定して元へ戻っても仕方が ないので、1条1条、個別にいこうと思います。これはたたき台という形で、やや極端 に出ているのかもしれません。 ○山崎委員  もともと剰余金については、病院を相続するときに、過大な相続税を掛けられていた という経過があって、問題になったわけです。したがって、剰余金についてはある程 度、性格をきちんと位置づけないと、税務との関係で、あまりグレーゾーンを残してお いて税金も掛けるなというのは、相続税逃れみたいに取られるし、剰余金の性格はこう いうものであるというのを整理したほうがいいと思います。 ○田中座長  剰余金の、最後の持主が誰になるかというところで、相続税の話が出てくる。それぞ れ貴重な意見をありがとうございます。ほかによろしいですか。皆さんのおっしゃった ことは、参考になる非常に良い意見を頂戴できたと思います。  次は資料3と資料4を使って、「公益性」と「効率性」、両方について事務局から説 明をお願いします。 ○山下指導課長補佐  今度は頭を切り替えていただいて、公益性とは何ぞやということの整理です。資料3 −1ですが、公益法人制度改革の有識者会議報告書でも、公益性について議論をしてお り、それについて抜粋したので読み上げます。1頁ですが、公益性を有するに相応しい 規律のしっかりした法人の受け皿となる透明性の高い仕組みを構築することが適当。ま た、その公益性の高い事業をやっていただくための法人のガバナンスについては、強化 を通じた自律的な監査・監督機能の充実と情報開示の徹底を通じた社会監視の充実を図 る。また、公益性を有する法人の目的はどういうことか。4番目の○には、積極的に不 特定多数の利益の実現を図ることを基本。また、法人が提供する財・サービスの直接的 な受益者が特定の範囲の者に限られない場合、不特定多数の利益の実現が図られている と考えられるのではないか。また、一方で、受益者が特定の範囲の者に限られる場合で あっても、その受益の効果が広く社会全体や十分に広い範囲に及ぶことを積極的に意図 して事業を行い、その事業を媒介にして社会全体あるいは十分に広い範囲に利益が及ぶ 場合も、不特定多数の利益の実現が図られていると判断することが適当。また、「多数 」という言葉については、必ずしも数の多いことを要件とするのではなく、例えば、ま だ数人の患者しか発見されていない難病の研究、こういったことについても公益性を有 すると考えられる。また、公益性を有する法人が行う公益的な事業については、市場経 済では適切な供給が困難な財・サービスを提供する事業であることを基本とし、公益目 的との関係で、事業による受益の及ぶ範囲が社会的な広がりを有することが適当。  その事業の内容なのですが、具体的な事業を適切に列挙することとし、これに該当す る場合は公益性を有すると判断することが望ましい。さらに、価値観や社会ニーズが多 様化する中、多種多様な公益活動があり得る。このため、いわゆるバスケットクローズ ということを設けて、列挙された事業に該当しない場合であっても、当該規定に基づい て判断主体において特に認めた事業については、公益性を有するものと判断することが 適当。また、公益を本来的目的とする法人である以上、公益的事業の規模は法人の事業 の過半を占めることが必要。  これを踏まえて2頁ですが、「医療法人制度改革の基本的な方向性」、12月にお示し したものについては、住民にとって望ましい医療については、都道府県が作成する医療 計画に位置づけ、その医療を公益性が高い認定医療法人が担うことによって、医療の公 益性を確立することとしてはどうか。  その公益性の高い医療(活動)については、どのように判断するのか、その手続につ いて2頁の後半に書かれています。公益性の高い医療というのは非常に定義が難しいの ですが、我々の原案として、「通常の提供される医療と比較して、継続的な医療の提供 に困難を伴うものであるにもかかわらず、地域住民にとってなくてはならない医療」と 定義してはどうか。その内容については、医療計画に記載すべき医療の内容を規定した 医療法第30条の3第2項各号に掲げる事項を基に、法令に基づいた厚生労働大臣のほう で、例えば告示を定めるということにしてやってはどうか。その告示を作成するに当た っては、当然、パブリックコメントなど国民の幅広い意見を聴き、透明性の高い手続き で定めることとしてはどうか。その内容については、別紙のように具体的に例示しては どうか。  一方で、公益性の高い医療については多種多様であり、都道府県によってさまざまな 違いがあるので、法律に列挙される事項以外に、県で判断したものについて大臣が協議 するといった手続きを設けて、社会ニーズや時代の要請に適切に対応できるようにして はどうか。また、その告示については定期的に見直してはどうか、ということが手続書 に書いてあります。  具体的にどのような内容が公益性の高い医療なのかについては、3頁目です。上は理 念的なもの、下は具体的にどのようなものかということで分けています。通常提供され る医療と比較して、継続的な医療の提供に困難を伴うもの。それでも地域住民にとって なくてはならない医療(活動)はどうなのか。継続的な医療の提供に困難を伴うものと は具体的にどのようなものなのか。☆のように、(1)救命のために常時医療を提供する もの、(2)居住地域や患者の病態の程度にかかわらず等しく医療を提供するもの、(3)医 療従事者に、たとえ危害が及ぶ可能性が高いにもかかわらず提供することが必要な医療 であること、(4)患者や地域の医療機関に対して無償で相談助言や普及啓発を行うもの であること、(5)高度な医療技術などの研究開発や質の高い医療従事者の養成であって 科学技術の進歩に貢献するもの、このようなことが考えられるのではないかと思ってお ります。  具体的には、(1)に該当するものとして休日診療、夜間診療等の救急医療、周産期医 療を含む小児救急医療、(1)と(3)に該当するものとして精神救急医療、(3)に該当する ものとして災害など緊急時に対応する医療があります。また、へき地医療・離島医療、 重症難病患者に対する継続的な医療、すべての感染症に係る患者を診療する医療、AL Sなど継続的な在宅療養を必要とする患者に対する医療や当該患者の療養環境の向上を 図る活動、患者を早期に社会復帰に結びつける医療連携に関する活動、医療安全及び疾 病予防に関する先進的な活動であって、患者や地域の医療機関に対し無償で相談助言や 普及啓発を行う活動、質の高い医療従事者の確保・養成に関する活動、高度な医療技術 を利用した研究開発であって、患者や地域の医療機関に対し当該研究結果情報を無償で 提供する活動、治療との有機的な連携による治験、といった考えが原案としてありま す。ここに「・」と「※」がありますが、※は既に医療法第30条の3第2項、これは医 療計画にこのようなものを記載するようにということがあるのですが、その事項になり ます。  それでは3−2も通して説明いたします。3−2は、論点として、認定医療法人につ いては、自治体病院など経営を積極的に担うようにし、公的医療機関の経営効率を高め ることとしてはどうかということで、具体的には、公立病院等の経営効率を向上させる 方策としての管理委託の考え方を提示しています。現在、医療法ではない他の法律で、 都道府県立病院や市町村立病院の経営委託に関して、大きく3つの法律制度がありま す。1つは「地方独立行政法人制度」、2つ目は「指定管理者制度」、3つ目は「PF I制度」。地方独立行政法人制度は、一括して地方独立行政法人になっていただき、公 立病院の経営をする。地方独立行政法人の役職員には、地方公務員の身分を与えるもの とそうではないものとがあります。  指定管理者制度ですが、設置は自治体が行い、その管理については条例で定めた指定 された管理者に管理委託をするという制度です。PFI制度は、公共施設の建設や維持 管理、運営について、民間資金を活用して整備の促進をする制度です。これらの制度は すべて他法の法律にはありますが、こと病院については、2頁目の検討事項にあるよう に、都道府県立病院又は市町村立病院など自治体病院については、住民に対し透明性の ある経営を実施している認定医療法人が積極的に管理受託できるような何らかの措置を 講じることとしてはどうかということを提示しております。  引き続き、効率性も含めて説明いたします。4−1は見ていただいた上で、議論して いただきたいのです。「医療法人の内部管理体制のイメージ」ということで、医療法人 社団、医療法人財団、提示している認定医療法人の社団型、認定医療法人の財団型とい ろいろな種類がありますが、それぞれの内部管理体制はどのようになるのかというイメ ージです。黒が既にある制度、赤については新しく提示しているもの、そのうち白い◇ は「公益法人制度改革に関する有識者会議」報告書で社団形態のもの、財団形態のもの に対して提示しているもの。赤の◆については、前々回の検討会で新たな論点として提 示したものです。  資料4−2については、評議員会の制度として社会福祉法人、学校法人、既にある特 別・特定の医療法人についての規定です。これは参考資料としてご覧いただければと思 います。 ○田中座長  非営利性のほうは配当禁止や剰余金の話で定義できないことはありませんが、公益性 については大変難しい課題で、何とかたたき台をつくっていただきました。ご苦労様で した。先ほどから述べているように、これはたたき台であって、結論ではありません。 この資料を踏まえ、皆様方のご意見、お考えをお聞かせ願います。これは重要な点です から、是非お願いいたします。 ○山崎委員  従来、行政用語で「政策医療」という言葉がありましたが、これと公益性とはどのよ うにリンクしているのでしょうか。公益性の高い医療の例示は、従来、政策医療と呼ば れているものそのものだと思います。 ○谷口指導課長  十分な答えになるかどうか自信がありませんが、いわゆる政策医療と言われてきたも のは、主として従来の国立病院を中心に展開するようなものを政策医療として、分野別 にいくつか設けました。正直言って、医療法の世界では政策医療という言葉を使ったこ とはたぶん無かったと思います。「的」という意味の使い方はしているかもしれません が、政策医療そのものと、今回のこれについてのリンクというのはあまり考えていない のです。ただ結果として、従来の国立病院などが中心になって進めてきた政策医療が地 域において必要であれば、当然、今後も公益性の高い法人でいろいろとやっていただく ことは想定できると思いますし、そこは地域の裁量に任せてもいいのではないかと考え ております。 ○山下指導課長補佐  付け加えると、前回三上委員や山崎委員から、いままでは国立病院がやっている医療 だから公益性が高い、自治体立病院がやっている医療だから公益性が高いということで 進んできたが、そうではないのではないか。設置主体がどうであれ、やっている医療に 公益性のある、なしを考えるべきではないかという指摘があって、一生懸命考えてつく ったたたき台です。 ○田中座長  主体による差ではなく、やっている医療に公益性がある、なしで、主体の公私とは別 という軸で組み直したということだと思います。 ○三上委員  公益性ということと、公益性の高い医療と2つあって、公益性があるかどうかについ ては、資料1−3にあるように、医療計画に位置づけられた医療の提供自体はすべて公 益性があると見なされるので、診療所から普通の病院まですべて公益的なものを提供し ているといえます。公益性の高い医療というのは、先ほどから出ているように、政策医 療と言われていたものとほぼ一緒です。国立病院だけが政策医療という言葉を使ってい るわけですが、自治体病院についても地方公営企業法の中の病院事業の中に、これと同 じような文言が入っており、このようなものに対して税金を使ってよろしいと書かれて いるわけです。  基本的に、税金の投入の理由は、民間であった場合、そのような医療を継続して提供 することができないからであって、そういったものを公益性の高いものとするというこ とではないでしょうか。ただ、例えば救急などについても、救急病院で十分活躍してい る所もあるわけですから、それで十分採算が取れる場合は公益性の高い医療にならない のかということです。へき地など、どうやってもいまの診療報酬体系や制度上の問題で 不採算であり、民間の場合には財政面が続かなくてできないというものについては、当 然公益性の高いものとみなされ、でも必要だから、国や自治体がお金を出してやる、税 金を使ってやるというのが公益性の高いものということになります。  この中でも、患者が非常に多くて採算が取れる場合も当然あります。また、採算と関 係のない、例えばAIDSなど社会的な問題でやらなければならないものもあります。 いろいろな視点があるわけです。逆に言えば、不採算など、わかりやすい言い方のほう がいいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。 ○田中座長  むしろ、皆さんのご意見を伺って変えていくのだと、これは大事な働きですから。 ○真野委員  いまのことに追加すると、治験の話も比較的いまのベースだと、医師主導の場合はわ かりませんが、一般的な治験では割と採算ベースのような気がします。  もう1つ、ちょっと話が戻りますが、2頁目の◇の下の○の「住民にとって望ましい 」云々について、揚げ足を取るような言い方かもしれませんが、先回から機能のほうが 大事だという議論が出ているのですが、ここの書き方は、「その医療を認定医療法人が 担うことによって、医療の公益性を確立する」となっています。もちろん、国立病院、 公的病院といった設置主体での分け方ではないのですが、またここで設置主体が認定医 療法人であると医療の公益性が確立するという言い方になっています。 ○山下指導課長補佐  正直言って、制度の話で言うと、民間だから公益性の高い医療はできないと勝手に考 えていた節がありました。それをそうではないと。繰り返しになりますが、設置主体に かかわらず、やっている医療で見て行こうと。やっている医療が民間であっても、そう いったことをやっているのであれば、その主体をそういった位置づけとして捉えようと いうことです。開設主体ありきではなく、医療で見ようと。その結果、その主体に公益 性が高いということを区別しようということです。 ○真野委員  ただ、この書き方だとどうでしょうか。順序の問題だけかもしれませんが、認定医療 法人以外が公益性の高いことをやる場合はどのような扱いになるのですか。 ○谷口指導課長  表現の処理は考えなくてはいけないかもしれません。公益性の高い医療をやっていた だくのが認定医療法人だというところから入ると、我々のことも理解していただけるの ではないかと思いますが、文章の整理は少ししたほうがいいかもしれません。 ○武田委員  いまの主体と活動の分離は、はっきりしておいていただきたいと思います。この前、 三上委員が、公益性から国立でないと駄目という意味のことを言われたのですが、それ は別に考えてもらわなければいけないことと、いま議論になっていた、公益性のものが 収益性があってはいけないのかどうか。収益性というか、採算が取れたら公益性ではな いというのはちょっとおかしいと思うので、採算の問題と公益性とは別に考えていただ きたい。認定医療法人は公益性が高いから認定にするというのは当然ですが、すべてが 公益性の活動をしているわけではありませんし、一般の医療法人でも公益性の高いこと はしております。  特に気になったことは、3頁の上の段、(1)の「救命のために常時医療を提供するも のであること」ということで、「救急救命」ではなく、「救急」は外してあることです。 つまり、救急は公益性とはみられないのかどうかということです。ひがんでいるわけで はないのですが、その辺をはっきりしていただきたいと思います。 ○山下指導課長補佐  そのようなつもりはありませんでした。 ○田中座長  最後のことは意識をせず、特段の意味を込めて抜いたわけではないということです ね。 ○山下指導課長補佐  そこまで考えておりませんし、そんな意図はありませんでした。 ○田中座長  そこは単なるミスだと思いますが、何人かの方が指摘されたように、不採算と公益性 とはイコールではない。治験でもそうですし、在宅医療をこれから普及するに当たっ て、不採算で公益だから普及しろと唱えるのはナンセンスな話です。山崎委員も言われ たように、かつて政策医療を、国立病院の不採算性を理由づけるために使ってきた経緯 があるので、何となく政策医療=不採算と繋がってしまいますが、ここで言っているの はあくまでも公益性であって、この中のある部分が採算が取れても、別におかしくない と思いますし、皆様方もそのような意見が多かったようです。  他の観点ではいかがでしょうか。これは重要な点なので、いろいろな角度からの発言 をお願いいたします。 ○品川委員  医療の公益性についていろいろなところで議論をしているのですが、言われているこ とが何か理解しがたいのです。医療の公益性とは、患者が必要なサービスを提供しても らうことであり、それこそが公益性が高いのではないでしょうか。  3頁の「へき地医療・離島医療」のところで、「・」はへき地医療や離島医療の内訳 のつもりで書かれたのですか。 ○山下指導課長補佐  違います。へき地と離島はまた別のものです。 ○品川委員  全く別な話ですか。「※」と「・」とはどのような関係になるのですか。 ○山下指導課長補佐  へき地医療も離島医療も、既に医療法に掲げられているということです。 ○品川委員  この「・」は内訳とは関係ないのですね。 ○山下指導課長補佐  そうです。へき地と離島は別です。 ○品川委員  それについてはわかりました。とにかく、へき地医療や離島医療というのは、どんな 医療行為でも、医者がいないのだからすべて公益性が高いわけですね。私が言いたいの は、このように文字で言うのではなく、例えば我々が病気になって病院に通うと、大き な病院ほど午前の診療が12時までと言ったら、12時1分になったらピシャッと閉めて診 ようとしないのです。ところが、個人病院では10分過ぎても、「わかりました、診まし ょう」と言ってくれるのです。本当の医療の公益性とは一体何かということを患者の立 場で考えると、このような言葉で書いてあることに非常に空虚さを感じるのです。その ような形をつくって、それを認定だ、効率だと言っていれば公益性を提供しているよう に見えますが、国公立の病院がいろいろな弊害をもたらしているのは、本当の公益のサ ービスを提供していないからです。自分たちの立場ばかり強調して、本当の公益性を提 供しないから形骸化してしまうのではありませんか。このような形をつくることもわか らないではありませんが、言葉では飾れない本質を、何かもっときちんと整理できない のかと思います。 ○山下指導課長補佐  天に唾するようですが、品川委員が言われるとおりで、公務員が提供するから公益性 の高い良いサービスだということは、正直言って誤解だろうと思っております。患者の ためにいい医療をするということは当たり前と言ったら怒られるかもしれませんが、当 然やるべきことですから、それをすべて公益性の高いものと位置づけるのか、そうでは なくて、普通のサービスの中でも、あるものを抽出するのかというところだろうと。今 回出したものは、それでも何か抽出すべきものがあるのではないかということで、一生 懸命考えてやってみたという整理です。 ○品川委員  言われていることはよくわかるし、バックには医療サービスの提供をコマーシャルベ ースに乗せようという議論が片方にあるから、いろいろと防波堤を張りたいという気持 もよくわかるのですが、患者の立場から考えたら、医療それ自体が公益であると思いま す。医療サービスの提供自体が。風邪を引いたとき、風邪を引いた人にとっては、医者 がそこにちゃんといて、然るべき時間に診てもらわなければ困るわけです。また、夜中 に目が痛くなったら、なぜ目が痛くなったかということを、病院へ行ったらすぐ診ても らえることが大事なのです。それを「うちは認定医療法人だから、時間外は受け付けま せん」などというのは、公益でも何でもない。単に特権にあぐらをかいているだけでは ないかと言いたいです。  本当の医療とは何かということを考えたら、個人的には株式会社が入ってきて、何を やりたいのだと、儲けのデータなどにはしてもらいたくないというのが本心です。効率 や医療コストの負担など、いろいろな問題があるから一概には言えませんし、本当はこ のようなことはあまり言いたくないのですが、ついちょっと気になってしまい、失礼し ました。 ○石井委員  品川委員が言われたことが、物の本質だと思うのです。先ほどの採算性の有無と公益 性の高さは違うということもその通りで、基本的に今回の認定医療法人をつくった背景 は、患者が必要だと考えて、必要だと評価をした医療が公益性が高いのだと。その判断 ができるように、普通の医療法人とは違ういろいろな形の規制、地域の中での位置づけ や義務づけや報告義務、場合によっては監査責任も負わせて、それは地域の中で評価を するのだと。その地域の中で評価をされる機能を持たせたわけですから、患者が必要と 考えて評価をすることは可能になるわけです。それでOKということであれば、それは まさに高い公益性を持っているということで、話の整理はつくのではないか。その整理 がつけば、一般の救急医療をやって、たまたまそれが採算性があり、それだから公益性 が高い、低いという議論をしなくて済んでしまうので、品川委員が言われた言葉の整理 と、いまの認定医療法人制度の提案の要素は、ピタッと一致しているような気がしま す。  もう1つ、非常に具体的な疑問があるのですが、この要件を前提にして、現在350ほ どある特定・特別が認定に移行し得るケースというのは何件ぐらいあるのかと思うので すが、その辺を考えると、ほぼ無いような気もするのです。この点についてはどうなの でしょうか。もし、非常に特殊な救急医療のみが例示として挙げられてくる可能性があ るならば、いちばん上の※の「休日診療、夜間診療等の救急医療」以外の要素は、現在 の特定・特別では、要素として満たすことが非常にしづらいような気もするのです。そ うすると、ほとんどすべてがいちばん最初の※だけに該当するという話になるのです が。逆にそのような議論はあまりしなくてもよくて、患者が評価するシステムをきちっ とつくったのであれば、品川委員が言われたように、うちはちゃんといろいろなことを 受け入れると、それで評価されたということでいいのではないかという気がします。 ○田中座長  前段のまとめをありがとうございます。後段については、いますぐ調べろと言われて も難しいと思いますが、問題点の指摘ですね。 ○豊田委員  いま、公益性の高い医療ということを言われていますが、医療の公益性は先ほどから 議論に出ているように、医療そのものが公益性がある仕事だと思っております。ここに 書かれている中で、非常に大きな部分が抜けているのではないかと思いますし、先ほど 言った一人医師医療法人のことも含めて関係があるので述べさせていただきます。  例えば、一般の地域では、行政が行うべきいろいろな医療、予防活動があります。例 えば老人の基本健診、乳児健診、予防接種、相談事業、学校保健などといったことは、 一人医師医療法人である、また、法人でない診療所でも、行政から医師会が委託を受け てやっているわけです。まさに、これこそ採算に合わないことを地域のためにやってい るわけです。公益法人というのは、非常に高度な医療、高度な医療と言うが、医療とい うものはもっと地域に根づいた、地域の健康を守るための活動をやっている医療機関で す。そのようなことは大きな問題だと思うので、高度な医療とか先進的な医療というこ とは大事ではありますが、やはり認定医療法人は高度だけやっていればいいみたいな話 ではなくて、基本的なこともきちんとやるのだということを押さえていただきたいと考 えています。 ○田中座長  大変貴重なお話でした。公益性について、もう1つ、4の内部のガバナンスの話につ いてもご意見があればお願いいたします。 ○西澤委員  石井委員との繋がりですが、公益性の高い医療の要件について、2頁目に書いてある とおり、「認定医療法人の事業規模のうち一定の範囲以上を占める」ということですか ら、これ全部をするのではなくて、このうちのどれかをすれば当てはまると、逆に、い まの特定・特別が行きやすいようにしてくれているのだと解釈したのですが、その辺り の厚生労働省の意向はどうなのでしょうか。 ○山下指導課長補佐  今回提示したのは、国立、公立という設置主体にかかわらず、そのようなことを含め て言うと、いまの特定・特別をちょっと置いておいて、医療の中でも公益性の高いもの を抽出することができないかという作業をいたしました。一方、災害医療しかしないよ うな機関が、国立病院も含めてあるのかと考えると、それはさすがに無いのではない か。そうすると、災害医療しかしないといったものにはならないと思うので、そこで 「一定の範囲」と。その範囲については、今後の議論ということです。そのようなロジ ックで作成していったわけです。 ○豊田委員  いろいろ書かれていることについては賛成ですが、簡単な質問をします。厚生労働省 が認定医療法人をつくるに当たり、その母体として特定医療法人、特別医療法人を1つ にして移行することも伺っています。現在、特別・特定医療法人はそれなりの審査を受 け、それなりの要件を満たしてなっているわけですが、さらに何かの条件を加える、ハ ードルをつくる必要があるのか。それとも、今の基準を満たしている所は、自動的にそ れに移行することが前提なのか、教えていただければと思います。 ○山下指導課長補佐  より詳しいことだと思いますが、例えば、いまの特定医療法人になるための要件に、 救急告示の診療所、病院であることというのがあると思います。既に特定・特別になっ ている所も、公益性の高い医療をやっていることを前提に考えていますが、それでは自 動的になのかと言われると、そこはこれから制度を考えていくときに議論していかなけ ればいけないと思います。いま特定や特別になっている所も、少し勘案しながら考えて いかなければいけないとは思っております。 ○豊田委員  重ねて質問しますが、ハードルを高くしていくということではなく、より多くが法人 になってもらうために、要件についてもう少し見直していこうという方向でしょうか。 ○山下指導課長補佐  ハードルの話ですが、いまの特定医療法人の要件には救急以外に、病院であれば40床 以上、診療所であれば15床以上といったさまざまな要件があります。それをもって公益 性が高いと見なされているのだろうと思うのですが、医療を司るものとしての我々の考 えは、40床以上の病院だから公益性があるとか、15床以上の診療所だから公益性がある ということではなく、やはり、行っている医療で見るべきではないかということです。 そのような面で言えば、たとえ39床の病院であっても、へき地で一生懸命公益性が高い 活動をしている、14床の診療所であってもすべての感染症を診ている、ということでは ないかと考えています。 ○田中座長  いずれにしても、これからの皆様のご意見によって変わっていくのだと思います。他 にいかがでしょうか。 ○山崎委員  認定医療法人を普及するという話になると、1つはハードルの問題と、もう1つは法 人税がどのように落ち着くかということだと思います。その辺の税務関係との交渉は、 現在進展しているのですか、していないのでしょうか。 ○山下指導課長補佐  これからしていかなければいけないと思っております。まず、このように考えている という形がないと交渉しづらいものですから、公益性とはこうだとか、非営利はこうし ていくのだ、規律はこうしていくのだ、透明性はこうだということを一つひとつこの場 で議論していただき、固めてから交渉するのだろうと思っています。そのような状況 で、我々もスケジュール感を持ってやらなければいけないと思っております。 ○田中委員  こちらが先で、これが固まると交渉できるということですので、うまく応援をしてい ただきたいと思います。 ○真野委員  議論を蒸し返すようですが、資格というか設置主体ではないかもしれませんが、例え ば認定医療法人に対して、機能以外の部分を言いたいわけです。いま機能面が非常に強 調されていますが、要するに、機能の部分とある程度の外形要件と両方考えないとと思 います。極端なことを言えば、機能だけでいくと、例えば、へき地で一人医師医療法人 でやっている場合は、極めて公益性が高いという話になってしまう可能性があるので、 両軸で、どこかでバランスを取るような形で持っていかざるを得ないのではないかとい う感じがします。 ○山下指導課長補佐  まさに、いま真野委員が言われたとおりで、税の話に関連すると、特定医療法人の要 件には、大ざっぱに言うと、法人の規律と医療の規律の2つがあります。それが税の制 度としてあります。法人の規律というのは、これまでずっと議論している話で、もし、 出口を税の話でいくのであれば、そういったこともきちんとやらなければいけないと。 やっている医療だけでどうのこうのというのは、また別の話ではないかと思っていま す。 ○田中座長  いずれも大変鋭い質問が続いていますが、他にいかがでしょうか。それでは税の話も 出ましたので、最後に資料5で、いわゆる「出資額限度法人」とその課税関係につい て、また品川委員に教えていただかなければいけないテーマですが、こちらの説明をお 願いいたします。 ○山下指導課長補佐  たしか12月10日に、出資額限度法人をどうするのかという指摘が品川委員からもあ り、そのときはまだ煮詰まっていなかったので、事務局としては迷っているとしか答え ておりませんでした。出資額限度法人について議論していただき、基本的に制度化とい うことで、定款変更の場合の課税要件はこうだということは、第3回までの議論でまと めていただきました。  一応整理すると、定款変更の時点においては、出資者の持分である剰余金が、確定的 にどこかに変わったということではないので、その時点では課税関係は生じないのです が、これが発展して、出資者の誰かが亡くなったとか、出資者の誰かが退社した場合に は、それに対して、剰余金の部分が他の出資者にみなし的に贈与されたということで、 みなし贈与の配当課税がされるという整理をしたと思います。  1頁目に戻りますが、一方で、いわゆる「出資額限度法人」を法制化したことで、具 体的に言うと、出資額を超える部分は出資者ではなく、医療法人に帰属するということ について、医療法ほか、関係法令で明確に規定する場合において、法制化時点で、医療 法人と出資者の課税関係はこのようになるのではないかと整理しました。これらの課税 関係は税務当局の意見を聴いたものではなく、あくまで、我々が難しい税法をいろいろ 見て、何となくこうではないかということで整理したものです。  表にしたものを説明しますと、出資額を超える部分が医療法人に対する「債権の免除 」と扱われる場合と、出資額を超える部分が医療法人に対して「無償で譲渡」したと扱 われる場合とがあるだろうと。そうすると、まず取得した側、つまり医療法人側はどの ような課税関係かというと、免除を受けた金額や譲渡を受けた資産の時価が、その時点 で受贈益として位置づけられる。つまり、その年に黒字になれば、その分の法人税30% がかかるということです。  それでは譲渡をした人はどうなるのかということですが、譲渡した人が出資者として 法人であった場合と個人であった場合とに分けます。法人だった場合、債権の免除の場 合は、その時点で、原則として寄附金または法人の貸倒損失として位置づけられるので はないか。また、無償で譲渡した場合は、全部寄附金として扱われるのではないか。個 人の場合、債権の免除の場合には課税の問題は生じないのではないか。無償で譲渡した 場合は、譲渡所得の基因になる資産の移転とみなされるので、みなし譲渡の所得課税が 生じるのではないかと整理しました。これは何か意図があるというわけではなく、どの ように我々が迷っているのか。出資額限度法人を法制化した場合、課税関係があまりよ くわからなかったので迷っていると申し上げたわけです。これで本当に確定したかどう かわかりませんが、一応勉強し、こうではないかということで整理したものです。 ○田中座長  自分で勉強したということで、ご苦労様でした。これについて質問して、絶対に正し い答を得るという保障はないのですが、質問やプロの方々からの見解をお聞きしたいと 存じます。 ○品川委員  1頁の関係で1つ抜けているのは、他の出資者の課税関係です。これは医療法人に上 げたということで、医療法人の法人税だけを整理しているのですが、法人を経由して他 の出資者に対して利益を移転させているという認定がされはしないかということと、出 資者の個人課税関係で、「債権の免除」となっていますが、債権の免除が資産の無償譲 渡と一体になっている場合は、名目が「債権の免除」、要するに、残余財産の請求権を 免除したと言いたいのでしょうが、その場合も資産の譲渡と認定される可能性はあると いうこと、その2点だけ指摘させていただきます。 ○田中座長  こんなことはどうなるのかといったことを、皆様で問題提起しておくのもいいと思い ます。 ○山崎委員  出資額限度法人の標準定款を新たに作ったときに、国税のほうから4項目をクリアし ていないと、法人についてのみなし譲渡課税が生じるかもしれないという例示があった わけです。1つは出資総額の半分以上を同族が出資している場合と、社員の50%以上、 役員の3分の1以上の同族がいる等の場合は、みなし譲渡課税が生じるという話があり ましたが、それとこの話とはどのようにリンクしているのでしょうか。 ○山下指導課長補佐  いま山崎委員が言われたことは、いわゆる「出資額限度法人」の制度化、これは第3 回非営利検討会報告書での整理ですが、医療法人による定款変更の時点では、課税関係 は生じないということがわかりました。委員が言われたことは、それよりさらに発展し て、退社をした場合ですが、いま整理したもので言えば、退社した場合は退社した者に は出資した部分、出資した当時の額しか戻らないのですが、剰余金については残った他 の出資者に対して分配されたことになるので、残った人に対してみなし課税がされる。 課税されない場合の考えられる要件として、たしか4要件が示されたというものです。  一方、今回の話はそうではなく、出資額限度法人を関係法令上位置づけた時点で、ど の出資者も自分の持分は出資した当時の簿価に限られ、それ以上の剰余金は法人のもの になってしまうということにしたわけです。その後、出資者の誰かが退社した場合に は、剰余金は医療法人のものであり、個人のものではありませんから、上の剰余金につ いては、すでになくなって法人にいってしまっているので、退社した人に対する課税は 無いのではないかと思っています。これもこうなのかと言われると、そうだということ は言えないのですが、そうではないのだろうかということで整理しています。 ○三上委員  イメージとしては、法制化した場合、全員が自分の持分を出資額に限ってしまうとい うことですが、同族性が排除されている場合は、法人においても贈与税がかからないか どうかというところが知りたい。そうなると非常に移行しやすいわけです。いまの普通 の医療法人が、突然定款を変えて出資額限度法人になる場合、取得した法人が課税され るのはわかるのですが、現在、3分の1以下の社員とか2分の1以下の出資という形で やっているような場合、みなし贈与がかからない条件になっている場合には、取得した 法人に課税されないような形にはならないのかということが知りたいのではないかと思 います。 ○田中座長  いままでの話で、これこれの条件を満たしていると、退社時や死亡時にも税金がかか らないかもしれないという整理があったが、それをこれにどう引き継ぐかという話で す。それとの連携ですが、そこまではわからない。 ○品川委員  1頁に書かれていることと、いま指摘されている点等については、結局、特定・特別 医療法人をつくったときに、大蔵、国税、厚生省の関係3省庁による覚書が昭和39年に 結ばれて、特定・特別の場合も、持分のある医療法人が持分を放棄して、結果的には形 式上1頁と同じような課税関係が想定できたわけです。放棄した持分は一切個人には還 元しない、もちろん、放棄した出資者にも全く還元しない。また、法人に帰属すると言 っても、その法人は一切それを分配することがなく、医療活動にしか使えないという歯 止めがあって、あのような覚書ができ、本来、みなし課税問題に一応封印をしたわけで す。よって、出資額限度法人を新たな医療法人の1つの形態として医療法で明確にでき るというのであれば、移行時については、財務省、国税庁とよく相談し、昭和39年当時 の覚書と同じような体制をつくる必要があると思います。 ○田中座長  それは先ほどの公益性が高いと事前に認められたものについてはこうだ、そうではな いものについてはこうだとなるのかもしれません。そこは交渉していただかなくてはな りません。 ○豊田委員  その場合、この前は4つの条件が付いたわけですが、この前整理された出資額限度法 人では、この中でそのような整理がされなかったので、国税庁のほうで、このような4 つの条件があれば課税しないという話で、それで終わっています。法制化をするという ことになれば、先ほど来議論がある公益性も含めて、出資額限度法人はどのような医療 を行うか、どのような施設であるかといったことについてきちんと整理をし、法制化す るということが必要だと思います。単に後戻り規制をかけること以上に、内容について も整理をし、そういった形になって初めて、課税当局との話し合いができるのだろうと 思います。再三申し上げますが、出資額限度法人を法制化する形で、是非この検討会で まとめていただきたいと要望いたします。 ○三上委員  法人のあり方と提供する医療というものは、やはり分けたほうがいいのではないか。 運営の形式として法人形態を決めるのはいいのですが、公益性の高いものを何割以上や らなければならないなどといったことをすると、途中で変わることもあります。離島へ 行っていろいろな医療を提供していても、そこに橋が架けられ、人口が増えたりする と、離島でなくなったりとか、いろいろと状況が変わるわけですから、提供する医療を 法人の条件に入れるということは、あまり好ましいことではないような気がするのです が、いかがでしょうか。 ○豊田委員  提供する医療など、そのように規制がないというのは大変結構なことで、望むところ ではありますが、それではなかなか。私どもの出資額限度法人について、40年来ずっと 主張してきたことは、医療法人の経営の安定と永続性です。その中で、最近は非営利や 公益性の問題がクローズアップされていますが、もう1つの大きな問題として、医療法 人の相続税制の問題があります。そういった意味で、やはり永続性というものは税制に 直接関与するものですから、その辺が保障される形を我々が要求するとすれば、我々と しても公益性を高め、非営利性を徹底することが必要だろうというのがいままでの議論 です。したがって、条件がないのは大変歓迎ですが、なかなかそうはいかない。その辺 のところはきちんと踏まえて、いろいろと質問してきたわけです。 ○品川委員  税務上の認定の問題ですから、敢えて申し上げておきたいのですが、去年の個別照会 に対する通達が、なぜ、あのような4つの要件を突きつけられたかというと、定款の変 更だから、定款はどうせ変わるだろうと。変わらない保障としてあのような非同族要件 みたいなものがあれば、そう簡単に定款を変えるわけにはいかない。実質、残余財産は 出資者に戻らないだろうという確実性を重視したから、4つの条件を突きつけられたの だと思うのです。したがって、法律で個人には一切分配はないということが明確化され れば、本当は他の要件は必要がないのです。ただ、交渉の行方で、そうは言っても心配 だからいろいろな要件を付けてくる可能性はあります。もちろん、医療法で定められて も、法律違反というものはどこの場合でもあり得るわけですから、分配しようと思えば できるわけですが、それはまた別の罰則規定を強化すればいいだけの話です。  その証拠に、いまの医療法第54条で配当できないと書いてある。配当できないと書い てあることを盾に取って、国税庁は財産評価基本通達で、医療法人に対して類似法人に 批准方式を適用する場合、配当の批准要素は外しているのです。あの規定自体は昭和59 年にできたのですが、20年にわたって中小会社だって配当していないのに、医療法人だ け批准要素を抜かすのはけしからんと言って、国税庁に対してずっと要求を突きつけて きたのですが、国税庁は頑として、法律にそう書いてあるから認めるわけにはいかない という主張を繰り返してきたわけです。  国税庁の20年間の主張を裏返すと、「残余財産は一切出資者に分配しない」と法律に 明記されると、20年間言ってきた逆な言い方はできないから、出資額だけで財産評価を するということにならざるを得ないわけです。もちろん、理屈はどうにでもつく話だか ら、また新たな理屈が出てくるかもしれませんが、一応いままでの論争からいくと、要 は、法制度の上で後戻りが絶対できないということさえ保障されれば、後の要件という ものは非常に付随的で、それを単に補強するだけです。あるいは、先ほどの第54条の解 釈からいって、私自身、国税庁で担当者をしていた経緯に照らしても、それ以上のこと は言えないと思うのです。  ただ、去年の4つの要件については、これからかなり尾を引かないとは限らないでし ょう。いろいろな理屈を言ってくると思いますが、基本的には、法制上明確にしてくれ るということが非常に大事です。日医も私が担当するようになってから3年間、その主 張をずっとお願いしてきたつもりです。 ○田中座長  前向きの応援をいただいたと理解いたします。そろそろ時間ですが、本日もそれぞれ 活発に、かつ建設的な意見、突き詰めるべき疑問点を提示いただきまして、ありがとう ございました。次回は、本日議論いただいた「論点の整理」、「剰余金の使途の明確化 」、「公益性の確立」、「効率性の向上」、「いわゆる出資額限度法人と課税関係」に ついて、さらに議論を深めていきたいと思います。次回の日程と今後の進め方につい て、事務局から説明をお願いいたします。 ○谷口指導課長  次回以降の日程の関係は、委員の方々に改めてスケジュール等についてご意見を伺っ た上で、「透明性の確保」と「安定した医業経営の実現」と、今日すべて終わったわけ ではありませんので、本日を含め、いままでの議論をベースにして、事務局においてた たき台として「新たな医療法人制度の方向性」といったものをつくらせていただき、そ れを見ていただきながら議論を進めていただければと思っております。できれば、もう 少しイメージを具体的なものにしたほうが、委員の方々の議論も進むのではないかと思 います。できるだけその努力をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○田中座長  本日は以上で終了いたします。お忙しいところご出席いただきまして、誠にありがと うございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 大門 龍生(内線2560) 医療法人係長  伊藤 健一(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194