05/03/07 厚生科学審議会感染症分科会感染症部会エイズ・性感染症ワーキンググループ第1回議事録              第1回(平成16年度第1回)            厚生科学審議会感染症分科会感染症部会             エイズ・性感染症ワーキンググループ                        平成17年3月7日(月)                        13:00〜15:00                        厚生労働省共用第8会議室(6F)                   議事次第 1.開会 2.議題     1)後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の改正について     2)後天性免疫不全症候群に対する発生動向調査の見直しについて     3)性感染症に関する特定感染症予防指針の改正について     4)性感染症に対する発生動向調査の見直しについて 5)その他 < 資料 >   資料1 エイズ・性感染症ワーキンググループ名簿   資料2 性感染症の概要について   資料3 性感染症対策について   資料4 性感染症およびHIV感染症に関する「特定感染症予防指針」に       基づく取り組み状況のアンケート結果(概要)   資料5 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直し       検討会の設置について   資料6 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針   資料7 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直しの       考え方   資料8 エイズ・性感染症WG検討方針   資料9 発生届出基準見直し(案) ○事務局(前田)  それでは、ただいまから第1回「(平成16年度第1回)厚生科学審議会感染症分科会 感染症部会エイズ・性感染症ワーキンググループ」を開会いたしたいと思います。  まず、本ワーキンググループの開催に当たりまして、厚生労働省大臣官房審議官の岡 島審議官よりごあいさつを申し上げます。 ○岡島審議官  エイズ・性感染症ワーキンググループの開催に当たりまして、一言ごあいさつ申し上 げます。  本日、お集まりの先生方におかれましては、日ごろから厚生労働行政の推進につきま して格別の御協力をいただきまして、また、本日は大変お忙しい中、本会議に御出席く ださいましてありがとうございます。  さて、後天性免疫不全症候群、いわゆるエイズ・性感染症は、最近特に若い世代の意 識や行動の変化に伴いまして、大きな健康問題の1つとなっております。  特に女性がかかった場合には、母子感染による次世代への影響もある大変重要な問題 であるというふうに私どもは考えております。  厚生労働省といたしましては、エイズ及び性感染症対策を進めていく上での基本方針 としまして、感染症法に基づきまして、エイズの指針を平成11年に策定し、それから性 感染症の指針を平成12年に作成しております。いずれも5年ごとに再検討を加えるとい うことになっておりますので、ちょうどその期限になっているところでございます。  本ワーキンググループにおきましては、この5年間に蓄積された科学的知見や地方公 共団体における調査結果などを基に、今後のエイズ・性感染症対策につきまして御議論 いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局(前田)  それでは、本ワーキンググループの委員の方々を御紹介させていただきます。  資料1に名簿がございますので、名簿の順に沿って御紹介させていただきます。  まず、特定非営利活動法人、ぷれいす東京代表の池上委員でございます。  東京慈恵会医科大学教授の小野寺委員でございます。  社団法人日本家族計画協会常務理事・クリニック所長の北村委員でございます。  国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター長の木村委員でございます。  白井委員については御出席の回答をいただいておりますが、まだちょっと遅れられて いるということでございます。  廣田委員におかれましては、本日御欠席と連絡をいただいてございます。  読売新聞社編集局解説部次長の南委員でございます。  続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。  まず、先ほどごあいさつ申し上げました大臣官房審議官健康・医政担当の岡島審議官 でございます。  また、審議官の右隣りが結核感染症課の牛尾課長でございます。  左隣りが結核感染症課の滝本感染症情報管理室長でございます。  私、結核感染症課の課長補佐の前田でございます。よろしくお願いいたします。  続きまして、お手元に配りました資料の確認をさせていただきます。  資料1が名簿でございます。  資料2が「性感染症の概要」ということでございます。それが3ページから10ページ 目でございます。  資料3が「性感染症対策について」、11ページからでございます。  資料4の「性感染症およびHIV感染症に関する『特定感染症予防指針』に基づく取 り組み状況のアンケート結果 概要」が15ページからでございます。  資料5の「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直し検討会の設置に ついて」が25ページからでございます。  資料6が「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」。  資料7が「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直しの考え方」。  資料8が「エイズ・性感染症WG検討方針」。  最後が「発生届出基準見直し(案)」ということで、75ページからでございます。  合計で86ページという大部でございますが、以上でございます。  あと、本委員会の座長についてでございますが、事務局といたしましては、後ほど説 明いたします「エイズ予防指針見直し検討会」の座長をされておられます木村委員にお 願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○事務局(前田)  では、異議がないということで、後の議事進行につきましては、木村委員よろしくお 願いいたします。 ○木村委員長  今、御指名いただいた木村でございます。こちらはどちらかと言えば、性感染症の方 のワーキンググループに相当するのかなというふうに思っておりまして、小野寺先生な どSTDの専門家の方に座長をしていただいた方が適切かと思い、一応そういうお話を いたしましたけれども、エイズの方の座長をしているということで、引き受けるように というお話でありましたので、座長をさせていただきます。  どうぞよろしくお願いいたします。  エイズとそのほかのSTDは、ともに非常に関連の深い感染症ですので、その対策に ついてもお互いにリンクした形で整合性を取ってやっていく必要があるということで、 このようなエイズ・性感染症ワーキンググループという形になったのかと思います。  それで、今、資料の御説明がございましたけれども、1ページ目に議事次第が載って おりますけれども、本日は後天性免疫不全症候群に関する予防指針の改正について、ま た、同症候群に対する発生動向調査の見直しについて、そして性感染症の予防指針の改 正について、同じくその動向調査の見直しについて、主にこの4つのことを議題として 御議論いただくことになっております。  それでは、まず最初に、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の改正に ついて事務局の方から御説明いただきたいと思います。 ○事務局(前田)  では、事務局から説明をさせていただきます。資料2から説明をさせていただきま す。  資料2が3ページ目でございますが「性感染症の概要」ということで、既に御存じの 点も多かろうと思いますけれども、今回の議論の対象となる疾患ということでございま して、1点目が後天性免疫不全症候群でございます。  五類感染症というのは、感染症の予防日、感染症患者の治療に関する法律、感染症法 に基づく位置づけでございまして、一類から五類、重症度の点で5段階に分けてござい ますが、その中で一番重症度が軽いとされている五類感染症のうち、診断した医師が全 数届け出るという全数把握の疾患でございます。  2番目が「梅毒」でございます。こちらにつきましても後天性免疫不全症候群と同様 に五類感染症で全数把握ということでございまして、梅毒トレポネーマの感染による性 感染症でございます。  3点目が「性器クラミジア感染症」ということで、これは五類感染症の定点把握とな ってございます。これは全国の医療機関のうち、900 程度のサンプルの医療機関から報 告を1週間ごとにいただくというふうな感染症でございまして、クラミジア・トラコマ ーティスによる性感染症でございます。  続きまして4ページ目でございますが「性器ヘルペスウイルス感染症」。こちらは五 類感染症でクラミジアと同様に定点把握でございまして、単純ヘルペスウイルスが感染 し、性器またはその付近に発症したものというものでございます。  5点目が「尖圭コンジローマ」ということで、これも五類感染症の定点把握でヒトパ ピローマウイルスの感染による性器周辺に生じる腫瘍ということでございます。  6点目が「淋菌感染症」で、これも五類感染症の定点把握でございまして、淋菌によ る性感染症という形でございます。  その後は発生動向についてでございます。  5ページ目がHIVとエイズの感染者と患者の報告でございまして、HIVにつきま してもエイズにつきましても同性間性的接触による感染が一番多うございます。  6ページ目でございますが、年齢別内訳ということでございまして、HIVについて は30代が40%、エイズについて30代が34%という推移を示しているところでございま す。  報告地別の内訳ということで、7ページに示してあるところでございます。  8ページ目が「献血におけるHIV抗体陽性件数の推移」ということで増加傾向にご ざいます。  9ページ目からでございますが、こちらはHIV・エイズ以外の性感染症についての 報告数でございますが、定点医療機関数は平成15年で920 まで増えてございます。  そして、淋菌、性器クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマが定点報告、全数 が梅毒ということでございますが、これを一医療機関当たりの報告数に置き直したもの が、次の10ページ目でございます。  一番上が淋菌でございまして、これが一医療機関当たりの報告で申し上げますと、年 間20人ぐらい患者さんが来られていると。  そのうち15歳〜29歳が占めるのが12、13ということで、大体5割か6割程度というこ とでございます。  性器クラミジアにつきましては、一医療機関当たり40半ばぐらいまで報告が来てござ いまして、そのうち30件程度が15歳〜29歳ということでございます。  そして、性器ヘルペスにつきましては、一医療機関当たり年間10件程度、そのうち15 歳〜29歳を占めるのが4件程度ということでございます。  尖圭コンジローマにつきましては、若干増加傾向にございますが、一医療機関当たり 6件程度、そのうち15歳〜29歳が3件か4件程度ということでございます。  梅毒につきましては、全数把握でございますが、若干減少傾向にあるというところで ございます。  資料の3の「性感染症対策について」でございます。こちらにつきましては、一応位 置づけとしては五類感染症として規定しているということでございます。  あと、以前は性病予防法という法律と、あと後天性免疫不全症候群の法律と別々の法 体系でございましたが、平成11年4月から感染症法というのに位置づけられてございま す。 そして、特定感染症予防指針ということで、性病予防法というものがなくなった んですが、感染症法に基づく疾患、これが現在86疾患ございますが、そのうち特に総合 的予防のために施策を推進する必要のある疾患については大臣告示を定めてございます が、その大臣告示が特定感染症予防指針というものでございます。  性感染症の予防指針につきましては、平成12年2月2日に告示されてございまして、 5年と1か月経っているものでございます。  「ウ 発生動向調査」についてでございますが、後天性免疫不全症候群と梅毒は全数 届けで、それ以外の4疾患については定点届けでということで、予算的には発生動向調 査は全体的な予算でございますが、16年度7億9,000 万で、17年度8億4,000 万という ふうな予算でございます。個別の性感染症のみの金額は算出できないものでございま す。  「エ 啓発普及」に関する事業でございますが、800 万円程度の予算を計上している ところでございます。  健康診断の体制でございますが、保健所等が実施してございます、健康診断費につい て特定感染症検査等事業という事業の中で国庫補助を行っているものでございまして、 これもHIVの検査、性感染症の検査、それからB型、C型肝炎の検査も含めまして、 16年度3億2,000 万、17年度3億1,800 万程度というふうな予算でございます。 ○事務局(荒木)  引き続きまして、エイズ対策につきまして疾病対策課の方から概要の方を説明させて いただきます。  「I エイズの現状」。12ページでございますが、現状につきましては書いてあると おりでございます。  特に「(イ)日本の現状」でございますが、先ほどのグラフにもございましたよう に、年々増加しておりまして、現在、累積でございますが、エイズ患者は3,257 件、H IV感染者の方は6,527 件の報告数があるということです。  特徴といたしましては、拡大傾向であるということ。都市部に集中しているというこ と。更には、95%以上は性的接触でございまして、その中でも国内における日本国籍男 性の同性間性的接触による感染が急増しているというのが、先ほどのグラフの説明でご ざいます。 続きまして、次の右の13ページへ移ります。具体的にどのような対策がな されているかということでございますが、11年4月に施行されました感染症法の規定に よりまして、性感染症と同様に、後天性免疫不全症候群につきましても、特定感染症予 防指針という形でつくらせていただいております。  こちらの方、今回御議論いただく指針でございますが、特徴といたしまして、国、地 方自治体、医療関係者・患者組織を含めますNGOがともに連携するということ。あと は、予防と医療に関わります総合的施策につきまして、患者の人権を十分に尊重しつつ 進めていくものということでございます。  更には、感染の可能性が疫学的に懸念される特別の配慮を必要とする個別施策層とい うものを指定しまして、こちらに対してもプラスオンの効果的な施策を行うこととして いるということが明記されているということです。  それ以降につきましては、研究開発、基本的にはこの指針に基づいて施策を行ってい るところでございまして、具体的にいいますと、研究開発、発生の予防及び蔓延防止、 医療の確保・提供等につきまして、記載のとおりの形で進めさせていただいているとこ ろでございます。  簡単でございますが、以上でございます。 ○木村委員長  どうもありがとうございました。HIV感染症と性感染症の概略についてお話しいた だきましたが、これに関連して資料4がございまして、小野寺先生の研究班で行われた 「性感染症およびHIV感染症に関する『特定感染症予防方針』に基づく取り組み状況 のアンケート結果 概要」というところでございますが、これは白井先生の方から御説 明いただけますでしょうか。 ○白井委員  神戸市保健所の白井と申します。このアンケートにつきまして、資料4は24ページま で付けていただかせておりますが、15、16ページで概要を示しております。  8月に全国の自治体127 、保健所576 、地方感染症情報センターを含む地方衛生研究 所に送りまして、有効回答数全体では60%程度でした。  自治体の内訳、それから保健所の設置主体に分けて集計し、指針の見直しに沿って、 実際に1〜7まで一応HIVの後天性免疫不全症候群と大体共通した項目に従って質問 をしております。  原因の究明につきまして、HIV感染症と性感染症についてサーベイランス統計の状 況の把握とか、特に性感染症につきましては、定点で把握している部分がありますの で、それについてお聞きしておりますけれども、性感染症の定点バランスについて、グ ラフに示してありますけれども、自治体の方では、定点バランスについて「わからない 」、それから「バランスが取れていない」、「いいえ」を含めますと、70%が定点バラ ンスについては今の状況はよくないと思っているのではないかと思っております。  またHIV感染症についてですが、またどこかで議論があるとは思うんですけれど も、保健所の63%は年間の報告数がゼロということで、これはその管内の病院からの報 告が医療機関からの報告になっておりますので、特に首都圏と地方というような差が見 られると思っております。  年間の報告数が21件を超えるというある程度数が多いところは、全国でも、5保健 所、13自治体ということで、一部の都市部に集中化しています。  発生の予防、蔓延の防止については、特に啓発につきまして、一般施策として学校、 それから指導者の研修については、8割〜9割実施、特に学校への講師派遣は保健所、 自治体側から行われていたんですけれども、年1〜数回というのが限度です。  それから、個別施策層、若年者、女性、外国人、MSMといったところでの取組みは かなり少ない状況でした。  検査についてですが、HIVの検査は、保健所で99%という回答が得られました。残 りの1%については離島等、特に設定できていないという保健所もありました。  性感染症については、特に梅毒、ウイルス性肝炎、それから性器クラミジアについ て、HIVと同様に血液の抗体検査では梅毒、肝炎が70%、クラミジアが45%という状 況で、淋菌のような尿検体の検査の実施は6%でした。  また、平日昼間ということが多く、これからは夜間、イベント等増えていくとは思い ますけれども、特定日の検査では2割弱というような傾向がありました。  次の16ページには、医療の提供、それから関係機関の連携ということで、特にHIV の医療について、どのような連携を取っているか聞いています。  それから、拠点病院と保健所との連携について、実際は60%以上の保健所が患者さん の発生の報告を得ていないということですので、HIV陽性者の方の紹介、それから他 科との紹介については、30%、20%。それから在宅支援、保健医療と福祉サービスとの 調整というのは1割強というような状況がありまして、ほかは経験がない、わからない という状況がでした。  コンドームについては、性感染症予防指針の方には、コンドームについてかなり詳し く述べてあるんですが、普及のための配付は7割の保健所で実施しているけれど、啓発 イベントや学校の性教育で個別の指導でなく大多数に配るというような状況でした。  関係機関との連携につきましては、性感染症とエイズの対策との連携というのは、自 治体においては感染症予防の対策の中で行われていますので、8〜9割連携して行って おります。  研究につきましては、特に自治体で研究ということはなかなか難しいんですけれど も、厚生労働省の科学研究費による事業、それから自治体独自調査ということも若干あ りました。  人権の尊重については、特にHIVについて聞いておりますけれども、プライバシー 保護のための相談窓口というのは、半数以上、6割の保健所で設置、それから差別防止 のための実際の取組みというのは5割強、これは人権問題の冊子にHIVを入れていた だくとか、そういうことでの取組みが多く、余り具体的には挙げられておりませんでし た。  また、差別事例の具体化というのは、実際にそのような事例について取り組んでいる かと、相談に乗ったかということでは経験がないことが多いということです。  保健所の機能強化について、このアンケートを取りましたときに、保健所の機能強化 というのは一つの中心的なテーマかと思ったんですけれども、表の方に少し詳しく載せ ているんですけれども、エイズまたは性感染症の担当の職員は1人であって、他の業務 とあわせもち、それは兼務であって、性感染症、エイズについて特別それを専門に持っ ているというような職員はいない状況です。  それから、国への要望ということでまとめています。これは自由記載からも拾ってい ますが、発生動向調査の強化、定点やサーベイランスの見直しも含めてということです が、それから自治体の予算の確保、補助金も付けていただいておりますが、自治体独自 の予算では、強化する対策ができないということ。  それから、学校との連携の中で、厚生労働省、文部科学省との統一した指針を国の方 で統一していただかないと、現場ではなかなか対応ができないというようなジレンマを 抱えております。  それから、マスメディアへの働きかけということ。これは自治体ごとにということで はなく、全国的に取り組んでテレビなんかも含めて、マスメディアということは国の方 でやっていただく要望が上がっておりました。  今、感染症予防計画というのが、特に結核の見直しも含めて4月にはつくられるとい うことで都道府県の方で準備していますが、現在の感染症予防計画の中でエイズまたは 性感染症対策に触れているということは、4割弱の自治体でありまして、保健所単位で そういうような項目を入れているところは2割弱というような状況でした。  また、そのような指針を使いながら予防計画に含めているといっても、2割ぐらいは 「見ていない」という状況です。  このような調査の中からHIVと性感染症対策は連携はしておりますけれども、保健 所の発生状況の把握は十分ではなく、地域ごとにいろいろな特性を見ながら対策を考え ていきたいということなんですけれども、なかなか実態把握ができていない状況でし た。  簡単ですけれども、以上です。 ○木村委員長  ありがとうございました。保健所等の取組状況、頑張っているところもあるけれど も、なかなか人材、予算等の問題もかなりあるというような話かと思います。HIVの 方の予防指針の見直しについては、既に2回ほど委員会を開いておりますので、その辺 を含めて、もう少し情報提供ということで資料の5、6、7についてよろしくお願いい たします。 ○事務局(荒木)  では、事務局の方から御説明させていただきます。  資料5ということで25ページからのものでございます。「後天性免疫不全症候群に関 する特定感染症予防指針見直し検討会」ということで、これは厚生労働省の健康局長の 私的検討会という形で、2月から開催させていただいております。  基本的には、今開かれておりますエイズ・性感染症ワーキンググループにおいて検討 されることになっておりますが、より専門的な見地からということでつくらせていただ いております。  こちらの方は開催要領、要項等でございます。後はゆっくり見ていただければよろし いんですが、スケジュール的な話としまして、29ページにお移りいただけますでしょう か。 こちらの方で見直し検討会のスケジュールということで、現在までに第1回目、 第2回目ということで、それぞれのパートを御議論いただいております。  まず、4月下旬、5月初め、あるいは5月ぐらいにはある程度の事務局案という形で とりまとめさせていただきまして、こちらの性感染症ワーキンググループの方でも御議 論をいただく形になると思います。これがスケジュールでございます。  次の30ページに検討会の名簿ということで、木村先生を始めとしまして一部の先生方 には、性感染症ワーキンググループの方でも重なっていらっしゃる先生がございます。  資料6の31ページ以降が原文でございます。現時点におきます、エイズに関する特定 感染症予防指針でございます。  続きまして39ページに資料7と右側に振ってあります。これは横書きになっておりま すが、これはちょっと長い文章になっておりますが、61ページまでございます。  こちらが、今、御説明申し上げました見直し検討会の方で、4つの4段表と申してお りますが、4段表に基づきまして、現行の指針に基づく施策はこういうことをやってお りますということ。  議論の視点としましては、現行の指針においてどういう議論あるいは問題点があるの かという視点。それに対する対応策という形で委員の先生方に御議論いただいていると ころでございます。  見直し検討会の方でも主になってやっていただいておりますが、当然のことながら、 こちらの性感染症ワーキンググループにおきましても、こういう流れであるということ を含めまして、あとは性感染症とエイズというのは、やはり切り離せない部分がござい ますので、御議論いただければと思っております。  簡単ながら以上でございます。 ○木村委員長  ありがとうございました。資料7で39ページから61ページまででしょうか、今、お話 のあった4段表が出ているわけですけれども、4段の一番右端の「対応策」というカラ ムがございますけれども、ここのところで、現在までに議論された範囲内ということで ありますけれども、星印が記載されている文言がございますが、これがこれまでの2回 の検討会で出てきた意見を反映させた対応策ということになっております。ちょっと事 務局に教えていただきたいんですが、これを基にエイズ・性感染症のワーキンググルー プとして付け加えるような意見などがエイズの見直しについてあるかどうかという御議 論をいただくということでよろしいでしょうか。 ○事務局(前田)  位置づけについて、先ほどの説明にも一部ございましたが、27ページの「エイズ予防 指針について」という表が一覧表として非常にわかりやすい形となってございます。  感染症の中の五類感染症ということでございまして、この中にエイズ予防指針と性感 染症予防指針が法律に基づいて定められてございます。  この審議機関といたしましては、厚生科学審議会の感染症分科会の下の感染症部会と いうところが審議する形になってございまして、その感染症部会の下にエイズ・性感染 症ワーキンググループが置かれていると。その下にエイズ予防指針見直し検討会という 形で御議論をいただいているところでございます。  このエイズ予防指針見直し検討会の役割としては、エイズ予防指針見直し案の作成を 行う。その見直し案について、このワーキングで御議論いただいて、それをまた感染症 部会の方に御報告するという位置づけになっているところでございますので、現在まで の進捗状況などについて御意見をいただきましたら、またその意見を見直し検討会に反 映させていくということも考えられるところでございます。 ○木村委員長  ありがとうございます。厚生科学審議会から幾つかの分科会、部会、そしてこのワー キング、その下にエイズの見直しの検討会と、そういう何段構えかの議論を積み重ねて いくというスタイルになっているということでございます。  そうしますと、ここはエイズの方でやってきたことについて、更に広い視野で御意見 をいただくということになります。それをまたエイズの方に持ち帰って議論を深めて、 最終的なものをこのワーキンググループでまとめて感染症部会に持っていくということ になろうかと思います。  最初の議題が後天性免疫不全症候群の予防指針の見直しについてということですの で、先ほどの4段表などを参考にされながら、性感染症及びエイズの予防についてどの ような対策を講じたらよいかということを中心に、自由な御意見をいただきたいと思い ます。  4段表の対応策のところで空欄になっている部分もありますけれども、この空欄のと ころにつきましても御意見をいただけますと、エイズの方の検討会でまた議論できるか と思いますので、空欄のところについても御意見があれば、よろしくお願いいたしま す。  どうぞ。 ○北村委員  座長、意見というのは、今、読んでですか。 ○木村委員長  これについては、この資料を初めてという方もおられると思いますし、今、この場で 難しければ、後ほどファックスあるいはメール等で寄せていただいて、事務局でそれを まとめるという作業をすることになっておりますので、よろしくお願いします。  漠然と御意見といっても難しいかと思うんですが、例えば42ページの「第一 原因の 究明」「第二 個別施策層に対する施策の実施」等がございますけれども、例えばこの 2つの項目について、まずは御意見はありますでしょうか。  エイズの検討会の方では、今までの予防指針がかなり総論的な部分が多かったので、 もう少し具体的な施策なども提言的に盛り込んでいったらいいのではないか。あるいは 自治体の活動といったものをもう少し明確にするような形で指針をつくっていってはど うかというような御意見が出ております。  より具体的な施策というところになりますと、43ページの「第二 発生の予防及びま ん延の防止」の辺りについて性感染症との絡みでいろんな御意見があろうかと思います が、この辺まで含めまして、白井委員どうぞ。 ○白井委員  先ほど早口で申し上げてしまったんですけれども、発生動向調査の強化につきまし て、指針では「地域の情報を把握して」ということで、その中の対象集団も、いろいろ 年齢分布であるとか、性行動の特徴的な個別施策層の分析もすべきだということも書か れてはいるんですが、実際にそこの調査が全くできておりませんし、それは調査ができ ないというか、方法も難しいと思います。  それと、地方衛生研究所の方の回答も得ているんですけれども、実際はHIVの検査 についても抗体検査を実施するぐらいでサーベイランスまでは関わっていないというと ころとか、定点報告についても、むしろ衛生研究所の方では問題点はあるけれども、こ の数をどうやって使うんだというようなジレンマが多いような状況で、それをそのまま でなくこうしたらいいというような方向で書かれてはいるんですけれども、それができ ないということは、保健所ができていないというような評価になるのと、実際はいつま で経っても指針のとおりに対策が行かないということになると思っています。  その辺の意味では、問題がありながらどうやって改善するかというところの、ほかの ワーキンググループでのいろんな議論もあるかと思うんですけれども、定点がこれでい いのかどうかということを、指針の中でも定点をどのように使っていくかということも 見直す必要があるかなと思っております。 ○木村委員長  定点については、特に性感染症の方でどういうふうに決めるべきかと随分議論があっ たと思うんですが、池上委員の方は何かありますか。 ○池上委員  定点についても、某県の担当の方にお会いしましたときに、特定のサンプル病院だけ が熱心に報告されることがあり、出てきた数字だけを公表すると、特定の地域の人だけ が性的に活発ではないかというようなイメージを持たれてしまうと大変困るというよう な意見も伺ったことがあります。  定点の偏りということもあるかもしれませんが、更に報告する人たちが本当にどれぐ らい同じレベルで報告しているのかということもチェックしてみないと、実態の反映と いうことにはなりにくいと思います。  それと、HIVは全数把握ですけれども、5ページの表を見ていただいても、HIV の感染者の新規報告でも患者さんの報告でも感染経路不明というのが、感染者の方は横 ばい、エイズの方は増えています。いろいろな状況があって、情報を聞き取れないとい うことはあるかと思いますが、この不明の多さというのは、もっと何とかならないかと いうこと。  男性同性間の性的接触による感染者あるいは患者さんが増えているというのがありま すが、感染者についていえば私は実はこれは男性同性間で性的接触される方の検査行動 が向上しているという要因もあるかと思います。日本では、現在、妊婦さんのHIV検 査率は91.1%だという間研究班の報告をいただきました。ほとんど全数検査ですね。  つまり、生殖年齢の女性たちで妊娠し得るような性行為がある場合には、かなり検査 を受けて陽性が発見されるわけです。にもかかわらず、日本では女性全体の数は非常に 少なくて男性ばかり、同性間でも、異性間でも増えている。となると、異性間という男 性は、本当に異性間の性的接触で感染したのかという疑問を感じます。  報告するときに、例えば既婚者であるとしたら、自動的に異性間性接触というふうに 届けてしまう場合もあり得るのか、あるいは、自己申告する側も変な目で見られかねな い、回答はしたくないという心理はかなりあるのではないかと思います。やはり届出の 内容をいかに正確にするかを見直したらどうでしょうか。安心して申告できるような体 制とか、正しい回答を引き出す問診とか、そのようなソフト面の整備として不明という 報告をもっと減らしていくべきでしょう。なぜ不明がこんなに多いことについてはきち んと調査した方がいいのかなと感じます。 ○木村委員長  これは多分届け出るドクターの方、あるいは医療機関の方がきちんと確認しずらく て、そのまま報告だけ出したというようなケースが多いんだろうと思います。これはも う少し努力して正確な疫学調査になるようにすべきと思います。  どうぞ。 ○池上委員  1点追加しますと、HIVで迅速検査がかなりの勢いで導入されておりますけれど も、迅速検査になって疑陽性となって要確認のときには、なかなか正確な情報提供やフ ォローが難しいようで、混乱してNGOに来られる方が増えています。陽性の場合医療 機関にもなかなかつながりにくいようで、届出はどうなっているのか不明なこともあり ます。で、やはり検査と同時により正確な報告を出すソフト面というのを是非考えてい ただきたい。 ○木村委員長  ありがとうございました。HIVの方はいろんなレベルで啓発、感染予防、いろいろ 努力はされているんですけれども、先ほど御説明のあったような形で、いまだに増え続 けていますので、その対策、施策というものをもう少し強化していかなければいけな い。あるいは効果の上がるような形のものを工夫していかなければならないという状況 でございますけれども、そのほかにHIVにつきまして御意見はございますでしょう か。  お願いします。 ○北村委員  1つは、総体的な話なんですけれども、白井委員が報告された研究班の報告、私も実 は10年ほど群馬県の県行政に関わっておりまして、国あるいは自分たちの仕事に深く関 わるような調査依頼があったときには大変な緊張感を持って受け止めておりました。  にもかかわらず、62.7%という回収率は、現状こんなものなのか、あるいはこの指針 が現場にあっては必ずしも十分使用されていないという証左なのか、この辺りを一つお 聞きしたいということ。  これは基本的な話でしょうが、世界ではUNADSなどのデータによれば、いわゆる 異性間の感染が7割を占めている。同性間における感染が10%、薬物が5%と示されて いるわけですけれども、我が国がなぜこれほどまでに、とりわけ男性の同性間の感染が 異常に多いのか、あるいは増えているのかという辺りについての、これは事務局サイド かもしれませんが、検討あるいは回答というものがあるようでしたら是非教えていただ きたい。  45ページはHIVを含め、性感染症対策の問題で、今後これからまた議論されるんだ ろうと思いますけれども、低用量ピルが承認されたことに伴って云々というような文言 がエイズ予防指針にございますし、対応策の部分では、コンドームは避妊具としてのみ ならず、性感染症予防に必要であるという点を明確に位置づけるというような記述がご ざいますが、私は本日、この会議に出席するに当たり、指針に関係すると思われる資料 を私なりの意見として用意させていただきましたので、また後ほどごらんいただけたら と思っております。 どう考えても国際的な視野から不足しているのが、コンドームを 使えということに対しては、性感染症予防という意味で全く異存はありませんが、しか し現実にはコンドームが破けてしまう、外れてしまう、それがために私どものところは 既に700 を超える緊急避妊を求めてやって来る人たちが多く、緊急避妊という文言が、 恐らくエイズ予防対策の視点から全く描かれていないという国はないんではないだろう かという感じがしてなりません。コンドームが破けたり外れたり、腟内に落っこってし まったりというようなときに、緊急避妊という方法を72時間以内に、最近では120 時間 以内に服用することによって、妊娠確率を4分の1にまで減らせるという事実が、コン ドームの積極的な使用啓発に役立っているということは、恐らく国際的な視点での常識 だろうと思っております。こういうものを具体的に入れ込むというようなことを、私と しては是非提案したいと思っております。 ○木村委員長  ありがとうございました。これはまたエイズの方の検討委員会の方に持ち帰って御意 見をいただきたいと思います。  そのほかにはいかがでございましょうか。  小野寺委員どうぞ。 ○小野寺委員  今の議論はHIVの方の動向調査に関する議論ですね。要するに性感染症の定点調査 に関する議論ではないですね。 ○木村委員長  はい。 ○小野寺委員  では結構です。 ○木村委員長  STDについては、この後、また議論させていただきたいと思います。  どうぞ。 ○白井委員  簡単に先ほどの回収率のことなんですが、17ページに保健所の方は62.7%、これは内 訳を見ていただきますと、中核市、政令市、指定都市もそうですが、本庁回答分を含む とあるのは、市が保健所を設置していて、一保健所のところは回答が高いということが あります。  それから、21ページには都道府県指定都市の自治体の本庁に送っておるんですが、そ こでは、指定都市100 %、都道府県でも87%という回答がありました。実際の保健所に そのような具体的な意識が薄いということはあるかもしれません。ただ、毎年統廃合が ありまして、その中でHIV、STD対策が、かなり優先順位としては低くなっていく ような危惧はあります。 ○木村委員長  よろしいでしょうか。  どうぞ。 ○事務局(荒木)  事務局からの先ほどのUNADSのお話の件でございます。確かにUNADS全世界 を押し並べて言えば、異性間性的接触によるものも増えているという話でございます。  なぜ我が国にのみ男性間の性的接触が増えているかのかということでございますが、 まず、他国と比べてフェーズが違うのだろうと。すなわち、ほかの先進国及び途上国で エイズが最初に流行している地域においては、やはり核としてはリスクファクターを多 く持つようなグループ、すなわちMSMのグループの方から最初に進行して、それから そういう方々が家庭に持ち帰って異性間性的接触でゼネラル・ポピュレーションの方に 広がったというようなことが言われております。  ですから、例えばアフリカ等におきましては、女性の方の割合が、例えば50%以上と いう形になっておりますので、まずフェーズが違うことで説明がつくのかなということ が一点です。  あとは、IDUが日本において、多分ほかの国々に比べて非常に比率は低いというこ とでございます。ここは多分先ほど池上委員の方からおっしゃられましたように、不明 という感染経路が多いという部分もあると思うんですが、報告されているものとして は、IDUが、そこは幸運ながらとも言うかもしれませんが、非常に低いと。ここは社 会的な情勢というのも考えられるのかなというふうに思います。  簡単ですが、以上です。 ○木村委員長  確かにHIVがどういうグループに入り込むか、その辺りで最初に入り込んだところ で大きく広がるというような経過はあったんだろうと思います。 ○北村委員  ということは、これは今、過渡期であって、そう遠くない次期に異性間による感染が ぐっと増えていく可能性があるという国なんですか、そういう理解をしていいんです か、そうではないんですか。 ○事務局(荒木)  ですから、今、非常にクリティカルな時期なのではないかと思っておりますので、対 策をしっかり取らないといけないと、そういう意味で指針は重要になると思いますの で、よろしくお願いいたします。 ○木村委員長  STDに関連して、若い人たち、高校生などの性的な活動が非常に早まってきている と。経験者の率も非常に増えているということですが、そういうところでHIVの抗体 の検査をしてみると、ほとんど検出されていない。だから、そういうところにまだ入り 込んではいないんだけれども、一旦入り込むと大変な勢いで広がってしまうんではない かという心配はある。  それでは、HIVにつきまして、ほかにありますでしょうか。  どうぞ。 ○池上委員  後天性免疫不全症候群の予防指針ですけれども、私は5年前にこれを作成していると きに、かなり傍聴いたしました。そのときに個別施策層のこととか、取組みとか、突っ 込んだ議論がされたように記憶しています。  指針としてはかなりうまくできていると感じるのですけれども、問題は、指針に盛り 込まれたことがどれぐらい実施されたのかということへのモニタリングの実施は明記さ れているけれども、実際には行われていないことです。そういう中で感染者は増えてい るわけですが、文言をどう直すかというよりも、この指針に書かれていることはどれぐ らい実行されたかその評価はどうなのかということを検討する方が建設的ではないかと いう印象を持ちます。  指針作成当時関わった人たちにも意見を聞いてみましたところ、やはりモニタリング が有名無実だったという反省ができています。今後も、それができないのであれば、指 針をどう見直しても結果的には変わらないだろうと言えるのではないかと思います。 ○木村委員長  私も同感で、エイズの方の検討会で、次の回辺りで機会があれば述べようかと思って いるんですけれども、例えば各自治体で出す施策なり方針、こういったものの中にきち んと数値目標みたいなもの、マニフェストみたいなものを出してもらって、それを毎年 評価していく、あるいはその結果を公開していくというような形で、少し何か圧力があ るような形のものにしないといけないのではないかなと、実効が上がらないんではない かなというふうに思います。  それでは、HIVの予防指針の見直しについて、ほかに御意見がございましたら、後 ほど事務局の方にファックスなりメールなりの方法で御連絡いただきたいと思います。  次の2番目のHIVの方の発生動向調査の見直しについてという議題の方に移らせて いただきます。  まず、事務局の方から説明いただけますでしょうか。 ○事務局(荒木)  御説明申し上げます。  まず、75ページです。こちらが診断基準ということになっております。こちらの方 は、感染症情報センターの先生方からも御意見を伺いつつ、今のところこういう形で修 正してはどうかという案でございます。  基本的には、大きく変わっておりませんで、75ページの横紙の60ページというところ の12番です。指標疾患(Indicator Disease )のところです。従来、非定型抗酸菌症と なっておりましたが、皮膚科の先生の御指摘もありまして、最近はそういう使い方をし ないと、非結核性抗酸菌症と言うということで、そういう文言の修正が1つ。  あと、75ページの右横の60ページの部分の下に下線で引いておりますが、例えば国内 の主な居住地域の報告が望ましいとか、そういうような御意見が出ております。  また、この辺りの御議論をいただくということでございます。  続きまして、79ページの発生届、様式のお話です。先ほど不明例が多いというお話も あったんですが、こちらの方では大きく変わった部分につきましては、79ページの横の 右側の106 ページに「11 推定される感染地域・感染原因・感染経路」という部分がご ざいまして、ここの部分にA、Bというのがあります。「A最近数年間の主な居住地」「B 推定される感染地域」。  1番は日本国内としておりまして、今までは日本国内で終わっていたんですが、日本 国内と海外となっていたんですが、新しい今後の案でございますが、日本国内括弧とし まして、日本国内の、例えばここでは何々県とか、そういう形での居住地のある程度更 に下段階の部分を取るようにしたらどうかという御意見で、様式的にはこうなっており ます。  その他については変わっておりません。  以上でございます。 ○木村委員長  ありがとうございました。この報告は、先ほど池上委員の方から感染経路の不明が余 りにも多過ぎるのではないかというお話がありましたけれども、この様式については何 か御意見はございますか。  この診断基準並びに報告の届けについては、それぞれどこかの委員会で検討されてい るわけですか。 ○事務局(前田)  診断基準と届出様式の見直しにつきましては、86疾患すべてについて来年1月の感染 症の発生動向調査システムの改正に合わせて見直し作業を行っております。 そこの中 でも性感染症の6疾患については御検討いただいておりますが、これはより専門的な観 点から、こちらのワーキンググループでも御意見をいただければ、それを参考にして改 正作業を行っていきたいというふうに考えてございます。 ○木村委員長  では、これについて御意見がございましたらどうぞ。 ○北村委員  この推定される感染経路の中の性行為感染というところで、異性間、同性間、これは 池上委員、バイセクシャルというか、日本人の場合には異性とも関わり、そして同性と も関わるということで日常生活を送らざるを得ないということが少なくないかと思われ ますが、もう一項目、例えばウがあることによって不明という部分なりを多少減らせる ということはないんでしょうか。この場合には、両方とも丸が付くということを可とし ているんですか。 ○木村委員長  今までは、慣例的にバイセクシャルの場合は、同性間性的接触の方に入れていたのか と思うんですが、事務局からお願いします。 ○事務局(荒木)  そうです。異性間と同性間と両方とも丸が付けられた例というのもよくありまして、 そちらに関しては、同性間で整理させて数値的にはそういうふうにしております。 ○北村委員  そうすると、かなり歪んだデータになっている可能性があるということですね。 ○木村委員長  そうですね。少し実際の感染経路とずれがあるかもしれません。  池上委員どうぞ。 ○池上委員  経路の項目を細かくするというのは1つの案だとは思います。けれども、これは推定 される感染経路ですから医師が書き込むわけですね。つまり、医師が受検者と話をしな がら、その情報をインテークして、それで判断していくというわけですよね。  となると、書式の問題というよりむしろやはりそのときのコミュニケーションがキー だと思うんです。例えば、自分がゲイとかバイセクシャルとか、言ったらまずいなとい うような印象を与えたらそういう回答はでにくいわけで、性的なことを安心してしゃべ れるか、しゃべれないかということは、受検者から意識無意識に判定されていると思い ます。  これは、保健所の検査等々でもそうだと思いますが、検査前の相談とか、そういうと きに性的なことがどれぐらいフランクに予防も含めて話せるかということが重要だと思 うんです。  そういう意味では、書式もさることながら、検査・相談・報告に携わる人のトレーニ ング、性的なコミュニケーションをする場合のトレーニングというのがかなり必要では ないかと考えております。 ○木村委員長  報告するドクターの判断が入るわけで、非常に厳密に考える先生は、バイセクシャル の場合どっちからだかわからないじゃないかということで、両方に丸をするかもしれな いし、私たちのところでは、どちらかというと、話を聞きながら、どっちの行為の方が よりリスクの高い行為であったかというようなことをある程度判断して、どちらかに丸 をするというような対応をしている人が多いように思います。その辺は大分ドクターに よって変わるかなと思うんですが、何かこれについて特に御意見はございますでしょう か。 ○北村委員  届出の話ですが、結局2つに丸が付いた場合には、同性間に特定すると、この決め付 けというのは、データとしていかがなんですか。であるとしたらウという項目を入れ て、バイセクシャルの事実をつかんでおくことの方がデータとしての信憑性を高められ るのではないかという感じがします。 ○木村委員長  それでは、検討課題ということで事務局の方で整理していただいて、今までのデータ との連続性ということもあって、どこかでまずければ変えなければいけないので、ま ず、それを変えるかどうかも含めて、また後で議論をしたいと思います。  ほかによろしいでしょうか。  それでは、また思いついた点がございましたら、これも事務局の方にメール等で御連 絡いただきたいと思います。  次の性感染症に関する特定感染症予防指針の改正につきまして、まずは北村先生の方 から、先ほどもちょっとお話がありましたが、新しい資料が出ているようでございます ので、それについて御説明いただきたいと思います。 ○北村委員  ありがとうございます。  この性感染症の予防指針などを拝見しますと、私自身が1992年以降、経口避妊薬低用 量ピルの承認が延び延びになった約九年間の間、実はこの部会に傍聴人としてしばし出 向き、そして議論を聞かせていただいたという立場でございます。  そういう意味で、この場にお招きいただけたことを私としては大変驚きと喜びをもっ て迎えております。  この指針の中に、低用量ピルの問題がさまざま話題になっているものですから、私と しては3つの資料を用意いたしました。1つは低用量経口避妊薬ピルが性感染症の拡大 を招くかということについての私自身収集しました自らのデータも含めてですが、資料 を用意しました。2番目では、若者たちの性の問題を取り上げた論文でございます。  3番目は、残念なことに恐らく世界で唯一緊急避妊法というものが国に存在しない、 あるいは国によって承認されていない国、これはかつての低用量ピルの歴史を思い起こ す事態でございますけれども、緊急避妊について、私の論文を用意させていただきまし た。  今日あわててつくりましたものですから不備があろうかと思いますが、低用量ピルが 性感染症の拡大を招くかというところで、低用量ピルは発売以来5年半近くを経過いた しましたけれども、その服用者総数は33万人から37万人と私は推計しております。  そして、国連が「World Contraceptive Use,2003」というのを出しておりまして、 主要国における15歳〜49歳の女性のオーラル・コントラセプティプ、経口避妊薬の使用 率を見ますと、日本は1.3 %にとどまっております。  これが、我が国におけるHIV・エイズの拡大を抑止したということであるならば、 それに越したことはございません。この議論がピル承認の約九年間の間繰り返されてき たわけです。  しかし、私も驚きをもって次のデータを提示させていただきますが、これは厚生省の 研究班が出したという話でございますけれども、1993年を1とした場合の、エイズ患者 の年次推移を見ますと、G7におけるエイズ患者の動向は、唯一日本がまさに増加の一 途をたどっていると。この辺りについて、事務局は一体どうこの事実をとらえているの か、私は機会があったら是非聞きたいと思って、今日の日を迎えたわけでございます。  このG7だけを見ましても、例えばドイツは58.6%、15歳〜49歳、これは生殖可能年 齢人口といいますけれども、その58.6%の女性がピルを使っている、オランダでは49 %、フランスでは35.6%、しかし、それが結果としてエイズ患者の増加に必ずしもつな がっているとは限らない、むしろピルとの関連というよりも政策によってでしょうけれ ども、減少させる力にもなっていると。この辺りをG7のデータから感じ取っていただ けたらと思っております。  更に、私は、そんな承認の歴史があるものですから、性感染症を拡大させるのではな いだろうかということに対して、非常に神経質に取り組んでまいりましたが、この度、 知り合いの産婦人科医から急遽データをちょうだいいたしまして、実はクラミジア感染 症、従来については690 人の検査が2004年に行われ、19.4%の陽性率が出たという事実 をつかんでおります。  しかし、昨日集計を完了いたしましたが、同じ産婦人科の医院で、ピル服用者の初回 STD検査結果と、1年後の検査結果というものを出してみましたところ、ここにござ いますように、ピル初回処方時の検査結果は、20歳未満については6.9 %が陽性でし た。これはピルを処方するすべての人に検査を進めた結果でございますけれども、そし て結果として治療が完了され、ピル服用1年後に同一世代に検査をしましたところ、 3.4 %、3.5 %、3.0 %と推移するわけでございまして、むしろ経口避妊薬ピルの処方 時点が性感染症の発見に大きく貢献し、更にそこでの治療が完了することによって、ピ ルを使うことが結果として性感染症の拡大を招くということにはならないというエビデ ンスを示させていただいたつもりでございます。  更にコンドームを単独で使うのには無理があるということは、私自身は常々考えてお りまして、先ほどの問題提起になったわけですけれども、妊娠は男性の体には絶対に起 こり得ないことを考えますと、コンドームで避妊も、コンドームで性感染症予防、エイ ズ予防も両方可能というメッセージを何としても変えたい、覆したいという思いがござ います。 10代の人工妊娠中絶率は非常に急増しているということは、次のページのグ ラフからもおわかりいただけますし、私どもの産婦人科グループの調査でも妊娠をした 若者たちに対して、避妊をしていたかと聞くと、腟外射精とコンドームを使ったと答え るのでありまして、彼らは避妊をしていたという自信を持っております。  デュアル・プロテクションという言葉が世界で使われておりますが、二重防御法を普 及させたい。これは避妊という問題については、女性が主体的に取り組める方法、性感 染症予防にはコンドームということでございます。  スウェーデンのデータは大変興味がございまして、1981年にエイズの報告が世界でな された後、スウェーデンでは国民がエイズ予防にコンドームということを選択しまし た。結果として、従来使っていたピルを捨てました。中絶が増え、1987年にWHOと国 際家族連盟はピルは捨てないでくれと、コンドームを使えという、いわゆるデュアル・ プロテクションでございます。ピルが増え、中絶が減るという事態を経験しました。  しかし、そうはいっても、HIV・エイズ予防にはコンドームしかないわけでござい ますから、その辺りの国民の意識を、厚生科学研究、母子保健課所管の研究班で調査結 果からですが、どうもコンドームは、日本では避妊法として手に入れられる可能性が高 いというデータでございます。  どうしても性感染症予防としてのコンドーム使用が十分啓発されていない。更に性感 染症予防にも重要なコンドームを使わない理由などを問いかけますと、使わない方が気 持ちいいなどという、さもありなんような回答がここにございます。  そこでですが、私はコンドームを性感染症予防のために積極的に使わせたい。しか し、それを全うさせるためには、どうしても緊急避妊法というのが必要でございます。  「USE WITHIN 3 DAYS OF OPENING」といいますが、チャックを開けて3日以内と いうのが世界の緊急避妊の使用の仕方でございます。  私のところのデータですが、1月31日までのデータをまとめてまいりましたが、701 人の利用者のうちコンドームにまつわる事例が7割を占めております。  更に今まで、これは国が認めない中、従来のピル時代に中用量ピルを使っていたとい う時代が30年近くあったわけですけれども、その中用量ピルを使った緊急避妊法の事例 を、今、全国で普及させようとしておりますが、既に1,500 施設がこのネットワークに 所属し、この方法を取らせていただいております。悪心が50%、嘔吐が14.9%にも経験 されております。  パーソナルユースという形で、世界で使っておりますレボノルゲストレル単独ピルを 手に入れ、1ショットで投与してみました。悪心が9.5 %に減り、嘔吐は0でした。副 作用なしが88.1%という状況でございます。  そんな中で、何とか性感染症、エイズを拡大させないために、私としては積極的にコ ンドームを使ってほしい。しかし併せて是非こういう部会をとおして、避妊・妊娠とい う問題は極めて深刻な女性のリプロダクティブ・ヘルスに関わる問題ですから、緊急避 妊という方法が同時取られるような、そういうような施策を講じるお力添えいただけた らと思いました。  以下は、私自身が、この会に出席するに当たって、性感染症を半減させるのには一体 どういう対応策が必要なのかという私見を述べたものでございまして、また折に触れて 私の用意しました文献と併せてごらんいただけたらと思っております。貴重な時間をち ょうだいできましたことを感謝しております。 ○木村委員長  大変明快なお話をどうもありがとうございました。  引き続いて事務局の方からお願いできますか。 ○事務局(前田)  では、資料8の63ページからでございます。こちらのテーマは性感染症部分について の検討の方針ということで考えてございますが、検討の必要性、範囲などについてはご ざいますが、予防指針の見直しと発生動向調査の関係でございます。  4番の「性感染症特定指針の改正方針(案)」としてでございますが、平成12年2月 からの5年間に蓄積されました厚生科学研究等の研究成果により、科学的知見に基づい た改正を行いたいというのが1点目でございます。  あと、先ほど御発表がございました、都道府県等に対する性感染症対策アンケートに 基づき、施策が遅れている部分をより強化するような内容とする必要があるのではない かということ。  あと、小野寺先生の研究班で行われております無症候性のSTIに関する研究成果な どを踏まえまして、今後の対応策を盛り込む必要があるんではないかと。  あと、性感染症の蔓延防止のために必要な施策を重点化して、総花的な記載を改める 必要があるのではないかというふうな観点で考えているところでございます。また、こ ちらについても御意見をいただければと思います。  個別の論点といたしまして、64ページからでございます。  性感染症の特定指針の構成といたしましては、前文を含めまして柱としては第1〜第 6までございます。  その構成について、先ほどのエイズの指針の構成と非常に似通ってございまして、28 ページの一番左のところにエイズ予防指針のフレームが第1〜第8まで示されておりま す。 そのうち、性感染症の予防指針で採用しておりますフレームが「第1 原因の究 明」「第2 発生の予防及びまん延の防止」「第3 医療の提供」「第4 研究開発の 推進」「第5 国際的な連携」。第6、第7がなくて「第8 関係機関との新たな連携 」と。  人権の内容ですとか、普及啓発の内容については、それぞれの項目の中に入ってござ いますが、第1〜第5と第8の6本の柱で、現在、性感染症の予防指針が運用されてき ているところでございます。  ですので、エイズに特定する部分と、性感染症一般の部分と若干の差異はございます が、おおむね構成体としては非常に類似したものであるということを一点付け加えさせ ていただきます。  また、64ページの個別の論点でございます。まず、前文といたしまして、性感染症の 対象としてクラミジア、ヘルペス、コンジローム、梅毒、淋菌の五感染症を挙げている ところでございます。  それから、性感染症は感染しても無症状であることが多いということですとか、感染 した者が治療を怠りやすいという特性を有するというふうな泌尿器科学的な、また産婦 人科学的な記載がございますが、こういう記載についても小野寺さんの研究成果ですと か、最近知見によって更新する必要はないのかというのが改正事項として考えられると ころでございます。  第2段落でございますが、こちらも個人情報への配慮は特に必要ということなどです が、この辺りが性感染症と他の感染症とどちらも個人情報の保護への配慮が必要という ことで、ここに特に必要というふうに強調する必要があるかどうかという点が1点ある かというのが論点として考えたところでございます。  この論点の作成に当たりましては、事務局なり関係する課と大体の意見交換をした上 で定めてございますが、まだ、論点についても出し尽くせていない部分がたくさんあろ うと思いますので、また御意見をいただければと思います。  第3段落目で、先ほどの北村委員からの御発表がございました低用量経口避妊薬の使 用が性感染症増加の要因になるとの懸念が指摘されていることと等が挙げられる。この 辺りが先ほどの御説明とまた違ってございますので、この辺の科学的な知見に基づく変 更が必要ではないかというふうに考えてございます。  65ページでございますが、第4段落目でございます。ここも最も重要な策として普及 啓発を挙げているということですが、これも現在も最も重要なものなのかどうか。  あと、性教育と積極的に連携していく必要があるということで、これも本当に連携だ けでいいのか、性教育と感染症対策は一体的な推進ではないのかというふうな考え方も ございます。  あと、もう一つ根本的な課題といたしまして、後天性免疫不全の予防指針と、性感染 症の予防指針を別々に5年間運用してきたということについて、連携という形がいいの か、統合という形がいいのかということも論点として挙げられるのではないかというふ うに考えてございます。  第5段落でございますが、連携して取り組む対象として国、地方公共団体、医療関係 者、民間団体が連携ということでございますが、本当にこれだけの例示でいいかどうか ということも考えられる論点でございます。  第6段落ですが、一応感染症法に基づく指針でございますが、5つの感染症以外にも 性感染症として挙げられるものがございますが、そういうのは例示として挙げなくても いいのかどうかというのが1点ございます。  第7段落で5年ごとの見直し規定、これも5年がいいのか、あとは見直し規定を置く 必要があるかどうか。そういうこともまた御議論いただければということがございま す。  66ページでございますが、ここからが各論に入ってきますが「第一 原因の究明」と いうことでございます。  こちらも先ほど少し御議論がございました、STD、STIとも申し上げますが、そ の発生動向調査において、定点把握、現在は各医療研において、泌尿器科皮膚科系と産 婦人科系を同数にするというふうな形でお願いしてございますが、それが定点の設定に 当たって、均質性、代表性が確保されているのかどうか。そして、定点把握の考え方 も、経時的な流行トレンドを監視するものなのか、それとも全国的な患者数を推計する ものなのか。それとも国際間での比較は可能な数値を算出するものなのか。2番と3番 は似通ったような論点でございますが、トレンドを見るのか、推計するのかというとこ ろが考え方として2つあるところでございます。  第2段落でございますが、現在の情報を収集はするんですけれども、それを分析結果 について必要なものに幅広く公開提供を行っていくと、これが本当にきちんとされてい るかどうか、そして情報の公開提供はどの程度行われているのか。そして、収集された 情報と情報提供内容の関連はどうか、個人情報保護の観点も念頭に置いた検討が必要で はないかと。  それから「二 発生動向の調査の活用」ということでございます。  ここで、一応発生動向調査の考え方として、下から2行目にございますが、十万人当 たりの患者数のように定量的な評価のできる数値を的確に推計できるように努めるとい うことで、5年前の段階では、全国的な患者推計というのを念頭に置いた形になってご ざいますが、それを求める場合の問題点として、67ページの上にございます。  これもかねがね指摘されてございますが、人口とか、その地域に存在する医療施設の 数に対して設置されている定点の数、割合が均一ではないんではないかと。そして、泌 尿器科皮膚科系の定点と産婦人科系の定点をおおむね同数にするという考え方に根拠が 見られないんではないかと。  STD定点に設定している診療科の構成が、県によってばらばらではないかと。  あとは、数千人報告する施設と、年間1人という施設と、定点の規模にばらつつきが あるんではないか。  そして、報告医療機関からの受診内容に偏り、疾患の偏りがあるかどうかということ で、今の定点についての問題点が挙げられているところでございます。  それから「三 発生動向の調査以外の調査等」ということで、数年ごとに地域を限定 した全数調査ということで、これは幾つかの県で全数把握をされているところもござい ますが、これが法律に基づかない形でございますので、県における自主的な取組みとし て推奨できるということは考えられますが、これを指針としてどういうふうに記載して いくかということが問題点としてございます。  あとは、四番でございますけれども、多様な媒体、積極的にマスコミを使った広報な どが必要ではないかということが考えられるということでございます。  大きな柱の2点目「発生の予防及びまん延の防止」ということでございます。  こちらにつきましては、基本的な考え方の部分に、先ほどの性感染症の予防方法とし てのコンドームの使用という表現がございますが、論点といたしまして、68ページにご ざいますが、学校教育についての記載の点、あと道徳教育の観点からの記載、そういう ものが要るのではないかということでございます。  第2段落でございますが、各個人の行動を性感染症に罹患する危険性が低いものに変 化させるということで、これも小中学校の教育課程において体得することにより、より 効率的になるんではないかという論点もございます。  第3段落でございますが、ここでは3行目から4行目にかけて、よりきめ細かい普及 啓発を実現ということで、これももう少し具体的な記述が必要ではないかというと。  あと、教育現場における性教育の必要性ですとか、ピア・エデュケーションという仲 間教育という発達段階に合わせた適切な内容に考えする記載が必要ではないかという論 点が考えられております。  二番目の「予防方法としてのコンドームの使用の推奨」ということで、これも3行目 から4行目ですが、避妊と性感染症予防の双方にとって極めて有効な、かつ、第一に選 択されるべき性感染症の予防方法ということで、コンドームについての評価がされてご ざいます。  論点として、この評価が適切かどうか、コンドームに関する普及啓発を中軸という表 現もございます。これで本当にいいのがどうか。そして記載について簡潔にすべきじゃ ないかという点が挙げられてございます。  69ページでございますが、普及啓発についてですが、両者の専門家による手引書を作 成すること、これももう既に作成されているのであれば、もう基本指針から落としても いいんではないかと考えられているところでございます。  あと「三 検査の推奨と検査機会の提供」ということでございますが、これも感染の 可能性のあるものに対する検査受診の推奨ということでございますが、それもきちんと 性感染症についての理解をしていただいた上で行われるべきであるということで、検査 前カウンセリング、それから次の段落にも検査後カウンセリングという考え方を取って いく必要があるんではないかと。  この辺りはエイズの方の検査については、かなり徹底されているところがございます が、性感染症については、その辺りは不十分ではないかという問題意識に基づくもので ございます。  第3段落のところでございますが、検査法の普及ということですが、国、都道府県の 事務となってございますが、これだけ民間の活力が高まってきている中で、行政機関が 普及していく必要があるのか、それともどういったマニュアルを活用するのかという論 点がございます。  70ページでございますが「四 対象者の実情に応じた対策」ということで、これも年 齢や性別に応じた追加的な配慮を行っていくという点は特に問題はないと思いますが、 第2段落として、学校等における教育について、これも児童生徒の性別構成等の実態と か、地域における保護者の理解というふうな表現がございますが、これも具体的にどう いうふうな教育が必要かという記載が必要ではないかと考えてございます。  そして、第3段落で「女性は」という形で始まってございますが、男性側の方の論点 は必要かどうかということ。  あと、次世代への影響があることということを抽象的に書いてございますが、具体的 に想定されるものとして不妊とか、先天異常とか、慢性感染症、急性感染症、発達異 常、そういう可能性を踏まえた上での次世代の影響といった具体的な表現に変更するこ とはできないかどうかという論点がございます。  相談指導につきましても、これも最近指導という言葉は、余り行政用語で使われなく なってきていますが、カウンセリングというふうな対等な立場での相談を受け付けるよ うな体制の方が実態に即した表現ではないかということと、あと行政機関だけではなく て、地域の産婦人科、泌尿器科と連携した対応が必要ではないかということがございま す。  71ページが第三の柱の「医療の提供」についてでございます。  こちらについても、適切に処方された治療薬を投与するというのは、基本的にどの疾 患でも大切な事項だということでございます。  あと、薬剤耐性菌が性感染症においても増えてきているということが小野寺先生の研 究班でも示されてきてございますが、そういう科学的根拠に基づいた記述が必要ではな いかということでございます。  「二 医療関係者への情報の提供の強化」ということで、これも行政機関がやるの か、関係団体がやるのかという役割分担の問題がございます。  「三 学会等の関係団体との連携」ということで、こちらについても最近の動向を踏 まえた記載ですとか、行政機関が普及を支援していく必要があるのか。それとも、普及 については民間の関係団体が行うべきではないかというふうな考え方もございます。  柱の4点目が「研究開発の推進」ということでございます。  こちらにつきましても、最近の研究開発の動向を踏まえた記載の変更ですとか、性感 染症に関するリスクコミュニケーションに関する研究というのが今後必要になるんでは ないかという点でございます。  72ページ目でございますが「二 検査や治療等に関する研究開発の推進」ということ で、こちらも効果的で簡便な治療法の開発とか、そういった形で記載されてございます が、最近の知見に基づいた記載の変更ですとか、あと耐性菌を出現させないような治療 薬という表現というのは、実際、投与方法が原因でなるケースが多いんではないかとい うこともございますが、そういう医師による処方の適正化による出現予防というのが必 要ではないかということでございます。  それから、耐性菌に対する治療薬の開発というのも今後必要となるんではないかとい う点でございます。  それから、三番の疫学研究でございますが、低用量経口避妊薬の使用と性感染症との 関連を分析することは困難なのかどうかとうこと。  あと、コンドーム使用を含む性感染症予防策が、蔓延防止に役立っているかどうかの 疫学研究も必要ではないかということでございます。  「四 社会面と医学面における性の行動様式に関する研究」でございます。  こちらについても、実際によくマスコミなどで取り上げられることが多くて、実際の 施策に役立っているかどうかということでございますが、この辺りの研究の必要性とい うのも今後の課題でございます。  「五 研究評価等の充実」ということでございますが、これも評価一般論であれば、 特に記載が要らないんではないかということでございます。  73ページでございますが「第五 国際的な連携」ということでございます。  これもほかのエイズとか、結核、マラリア、インフルエンザと違って、STIにつき ましては、重要な感染症として位置づけられていないんですけれども、こういう記載で 適当かどうかということでございます。  「二 諸外国との情報交換の推進」について、これも先ほどの指針の評価という点 で、国際的な情報交換の事例などについて、実際にされているかどうかという点がござ います。 「三 国際的な感染拡大抑制への貢献」ということで、エイズ・結核・マラ リア基金などが運用されていますが、そういう記載が必要かどうかということも論点に なっているところでございます。  「第六 関係機関等との連携の強化等」というところで、保健所の機能強化というと ころが表現で出てくるんですが、この辺り、こんなに後ろでいいのかどうかと。それと も保健所ということの機能役割は非常に大事ということで、1項目起こすべきではない かという論点でございます。  あと「二 本指針の進捗状況の評価及び展開」ですが、これも「専門家の意見を聴き ながら評価を行う」となってございますが、専門家以外の意見を聞くことも必要ではな いかというふうな論点でございまして、かなり6つの柱について個別に事務局の案とし て考えたものでございますが、まだまだこれでも足りないと考えてございます。  本日は、まだこの論点について御議論をいただいて、また論点の対応についても御意 見を、後ほどペーパーでもファックスでもいただければというふうに考えてございます ので、考える材料として事務局から提案させていただいたものでございます。  以上でございます。 ○木村委員長  ありがとうございました。事務局の方から論点の整理をしていただきました。また、 先ほど北村委員の方からコンドーム、低用量ピル、そして緊急避妊の御提言をいただい ております。  先ほど小野寺委員の方から定点のことについて御意見がおありということでしたが、 この際出していただいて、それらを含めて論点について御意見をいただこうと思います ので、お願いいたします。 ○小野寺委員  それでは、少し定点のことで、御説明というか意見を申し上げたいと思います。  先ほど来意見が出ておりますが、現在の定点調査は、かなりばらつきがあるというの が大方の見方と考えてもいいんではないかと思います。  それは、先ほども指摘がありましたが、各定点が必ずしもSTDの患者をたくさん見 ているところが定点と選ばれるわけではない。  ですから、年間に何百例という患者さんを見ているところもあれば、数件のところし かないところも入っていると。  実は私もよく知らないんですが、これは医師会の方で定点を決めている状況もあるよ うなんです。ですから、私ども学会等で意見なんかも聞いているんですが、どうもどこ が定点かという情報がこちらの方に入っておりませんので、1つはそういった定点とし てどういうところが選ばれているかということを少し調査をして明確にする必要がある んではないかと思います。  定点調査は、これ迄の経過からすれば、全体的なSTDのトレンドは見れるだろうと 思います。  というのは、1997年ごろからでしょうか、熊本先生が行われたSTDのセンチネル・ サーベイランスというのがありました。約六年間、10万人当たりのSTDの患者数を見 ているわけですが、大阪府と8つの県を選んで、そこである時期を定めて、その時期に ほとんど全数に近い形でSTD患者を届けて、10万人当たりの年対罹患率を求めていま す。それが最も今までのデータとしては信頼に足るものだと思うんですが、2000年頃か らは厚労省で行っている発生動向調査、定点調査の全体的なトレンドとほぼ一致したと いう事実があるんです。  ですから、トレンドとしては間違ってはないと思うんです。ただやはり、今後も定点 調査が本当にそのままでいいのかというのは、また議論が違うと思いますし、それから 先ほどのデータにありましたが、クラミジア、淋菌に関しましても2002年をピークに少 し減っているんです。2003年、2004年と減っています。ただ、これが本当に減っている かどうかというのは少し疑問があると思います。  というのは、私の研究班で、無症候の感染者の実態を調査しておりますが、決して減 っているという印象はない。  ですから、そういったことも含めて、今の定点調査そのものが果たして実情に近いも のであるかどうかというものは、何か対比するデータを基に、毎回ではなくてもいいん ですが、1年に一遍でも、2年に一遍でもいいと思うんですが、例えば学会レベルで非 常に患者さんが多い施設をピックアップして、そこで全数調査的に地域限定でも、ある 時期限定でもいいんですが、そういうことをやって今の定点の調査との関連性あるいは 同等性を比べると必要があると思います。  統計学者などの協力も必要だと思うんですが、そういったことをやってみないと、こ れが本当に全体の流れとしてこのままでいいのかということは、今の状況ではつかめな いと思います。やはり、その辺はもう少し議論をして、根本的な見直しが必要だろうと 思っております。 ○木村委員長  ありがとうございました。この予防指針ができるときに、定点の見直しをするという ことで、定点の数も随分増やしたし、いろんな議論があったかと思うんですが、現在 は、定点をどういうふうに決めるべきか、どうあるべきかという議論は、今はされてい ないんです。 ○事務局(前田)  定点の議論につきましては、感染症発生動向調査の次の議題にも関係しますが、議論 の対象となると考えてございます。  ちなみに、数字的な内容でございますが、9ページに定点報告の数についてございま す。 定点医療機関は、現在、920 でございますが、9ページの一番上に「定点医療機 関数」という記載がございまして、平成2年が585 というところで、ずっと600 前後で 来ていたんですが、平成11年4月の性病予防法から感染症法に変わったという段階で 855 に増えまして、その後、900 を超えるという状況に至っているところでございま す。  定点の選び方につきましては、一応法律上は都道府県知事が医療機関に依頼を行うと いうことでございまして、実効上は各県で選定されているというものでございますが、 中には先ほど小野寺委員の御発言がございましたとおり、医師会の方に調整をお願いし ているケースがあるかもしれませんが、形といたしましては都道府県知事が定点医療機 関の長に対して依頼を行うというふうな形になっているところでございます。  一応、数としては以上でございます。 ○木村委員長  定点の数が都市によって違うのは、自治体に任せている結果、こういう数字が上がっ てきているということでございますか。国として幾つということを特に言っているわけ ではないと。 ○事務局(前田)  たまたま今日は資料を付けてございませんが、保健所管内の人口によって定点医療機 関の数を決めていただいてございまして、それが複数にわたる場合については、産婦人 科と泌尿器科の数をおおむね同数にするようにしてくださいというふうにお願いをして いるところでございます。  関連たしますので、83ページの資料について簡単に触れさせていただきます。  定点の動向についてでございますが、これは国立感染症研究所の谷口室長の行ってい る研究についてのサーベイランスシステム改善についての研究班からの意見ということ でございます。  この報告システムについての下の2番のところでございますが、性感染症定点医療機 関の選定方式を変更し、より多数の報告を得る必要があるという、先ほどいただいた御 議論と同じような御意見をいただいてございます。  実際に定点の実態については、その次の84ページにございますが、(イ)でございま す。「保健所あたり性感染症定点医療機関数は婦人科系0カ所の保健所が47%、皮膚泌 尿器科系0%が40%、合計2か所以下か83%と地域ごと性別など対象ごとの動向把握が 困難な状況である」ということでございます。  ですので、保健所管内の中に1つしか定点がないところが83%でございまして、それ を婦人科系と泌尿器科系に割り振っているところが、大体同数ということで、一応数と してはそんなに婦人科系の数と泌尿器科系の数は変わらないようにはなってきてござい ますが、この選定方式、あと選定箇所数、そしてそれが地域を代表している医療機関か どうかということについては、御議論があろうかというところでございます。  以上でございます。 ○木村委員長  ありがとうございました。この予防指針の見直しの中にも小野寺先生の定点の見直し というようなことを挙げておくということでよろしいでしょうか。 ○小野寺委員  はい。 ○木村委員長  あと、先ほど北村先生の方からあった件でございますけれども、性感染症を予防して いく上で、ピルなりコンドームなり、あるいは緊急避妊といった点について御意見はご ざいますでしょうか。これをどういうふうに予防指針の中に盛り込んでいくのか。 ど うぞ。 ○北村委員  緊急避妊については、国自体が承認している薬剤はございません。残念ながら先ほど 説明させていただきましたように、既存の薬剤の中でアメリカでは1970年代に使用して いた救急避妊法と実は同じものがあるものですから、それを転用して使っているにすぎ ません。  結果として、5割の人が気持ち悪くなり、15%の人が吐くという状況があります。世 界で広く使われているのは、先ほど、パーソナルユースという話をしましたが、副作用 が全くといっていいほどないです。レボノルゲストレル、すなわち黄体ホルモン単独剤 なんですけれども、国が承認していないものの項目を、こういうものに入れ込めるのか どうかということについては、私は大変興味があります。  しかし、それが現実には1,500 施設のネットワークを通じて、副作用があることを承 知で処方されているという事実と、2004年に厚生科学研究で行いました男女の生活と意 識に関する調査、これは第2回もやらせていただきましたが、これによっても緊急避妊 の存在を知っている人が国民の2割にも及ぶ、しかも女性について言いますと、1.8 % の人がかつて使ったことがあるという事実がある。実は極めてファジーな国なんでござ います。その辺り、こういうものに盛り込めるならば、意識を喚起できるという気持ち がございます。  低用量ピルについては、だからこれを除けということではなくて、とかくこういう指 針が策定されたときに、低用量ピルの普及が性感染症を拡大させるのではないかと、こ れが私どもの5年間を通じては必ずしも事実ではなくて、どうも偏見と誤解がかなり根 強くあったのではないだろうか。下手をすると、低用量ピルをスケープゴートにしてエ イズ対策や性感染症予防対策の取組みを怠ってきたのではないかと、この辺りを私は現 場で感じ取っています。 ○木村委員長  何か御意見はございますでしょうか。  池上委員どうぞ。 ○池上委員  ピルのことではないんですけれども、同じ文脈で、65ページの第4段落に、性感染症 は、正しい知識と、それに基づく個人の注意深い行動により予防することが可能である と書いてあります。  過去20年間のエイズ対策において、反省されたのは、知識の提供だけでは行動は変わ らないという歴然たる事実である。というのは性感染というのは、相手がいる行為によ って感染する、予防行為も相手と合意しなければ実行できない、個人の意思だけではだ めなのです。  それから、知識があったら行動に移るかというと、性についてはとても文化だとかジ ェンダーだとかいろんな要因が絡んでそんな意識とか態度とかが行動を促進したり阻害 したりしています。知識の提供だけでは行動に結び付かないというのがエイズの場合は 20年かかってやってわかった。  知識さえあれば個人の行動によって予防できるというとすべて個人の責任になります ね。けれどもそれほど単純ではない。予防的な環境が整えられているのかどうか。性の 健康行動を支援するような環境が整えられているのかどうかといったようなことも重要 な要因であるということがやっとわかってきたのです。特に医療的な知識重視の普及啓 発は反省しなければ、ということが21世紀になってUNAIDS等々から発信されてい ることです。  ということになりますと、正しい知識と個人の注意深い行動により予防することが可 能と、いいきるのではなく社会的な疾患としてとらえるという発想が必要だろうと考え ます。  それによって、例えば教育はどうなるのかとか、検査における相談体制とか、すべて に影響してくると思うんです。そういう意味で、同じような文脈だと思いましたので、 発言いたしました。 ○木村委員長  大事なところだと思います。ありがとうございました。  ほかに御意見はございますか。  白井委員どうぞ。 ○白井委員  今の池上委員と同感でありまして、やはり環境整備というところをしていかないと、 特に若年者というか、私たちも無症候の方々の性感染症をどのように把握するか、それ で早くに予防、それから治療に結び付けるということで、高校生、大学生ぐらいの方方 にアンケートを取っているんですけれども、やはり「気軽に受診できる医療機関がない 」とか、「検査に行こうと思ってもその場所がない」とか、それから「保健所の検査で あっても昼間にやっていたらいけないではないか」とか、医療機関の受診にはどうして も保険証が要りますから、保険証がなければ受診できない。  それは勿論今の医療制度の中では当たり前のことなんですけれども、それでしたらス クリーニングを保険証がないような形でも設定するような環境整備をしなければいけな いんではないかと思っております。この予防指針の中で前段、64ページにも先ほどの 「個人の」ということと関係しているような文章があるのかなと思うんですが、症状が 軽いので感染した者が治療を怠りやすいというのは、別に性感染症に関わらず、どんな 疾患であっても症状がなければ治療に結び付かないわけですし、それを性感染症の特性 としてしまうよりも、やはりそういう受診行動は当たり前なのだから、どういうふうに 対応していったらいいのかということの個人だけに帰するような対応では限界なのでは ないかなと思っています。 ○木村委員長  ありがとうございました。環境を整えるような指針が必要であると。  北村委員どうぞ。 ○北村委員  先ほど池上委員が指針が存在するが、果たしてこれが一体どの程度理解され、使われ てきているのか、それをどう評価しているのかと、これこそ問題であるという発言がご ざいましたが、私自身もこの指針を拝見させていただく中で、大変立派な文言が並び、 項目が羅列されていることを十分承知しておりますが、しかしその一方で、一つひとつ に対する評価が十分なされていない。この部分をもう少し全面に出す必要があるだろう と。 とりわけ、学校との連携とか、あるいは教育というような言葉が随所に出てきま す。先般の国会での議論などを始めとして、このところの性教育バッシングなどは私か らいいますと、非常に低次元のところで話題になっておる。政府の答弁などについて も、このエイズ予防対策は一体どうなっているんだと、いら立ちさえ覚えるような発言 がなされていることに大変懸念あるいは危惧を覚えるものであります。  そういう意味では、性教育というような言葉を、むしろ具体的に性感染症教育とか、 性感染症予防教育とか、そういうような形に特定した表現に用いていかないと、やや進 めずらいかなという感じがしますし、現場は性教育バッククラッシュが起こる中、学校 の先生たちが非常に尻込みしている中、こんな立派な指針があるのにもかかわらず、こ れを遂行し得ないという、その一方の動きが起こっていることに大変残念な気持ちがし ます。  ちなみに、2004年の厚生科学研究をさせていただきましたが、3,000 人の国民の意識 調査ですが、性に関する事柄を知るべき時期というので、例えばコンドームの使い方と いうのを問いかけてみました。  国民の46.5%は、中学生のときまでにはコンドームの使い方を知るべきであると言っ ていますし、16.4%は小学校を卒業するまでにコンドームの使い方を知るべきだと国民 は答えているんです。  7割の人が15歳までにコンドームの使い方は知っておくべきであると答えている現実 があるにもかかわらず、学校教育の中での消極性は、国民との認識の乖離というものを 明確に表わしてしまっておりますし、さて、この指針が一体文部科学省にとってどうい う意味づけになっていたのか、私は事務局に是非お伺いしたい気持ちでいっぱいでござ います。○木村委員長  今日は、文科省の方は見えておられますでしょうか。エイズの検討会でも、この辺り は大分議論になったところでして、今日はおられますか。 ○小野寺委員  先ほど白井委員から御報告がありましたが、要するに先ほどから話しているのは10 代、ティーンエイジャーの問題ですね。結局、性感染症が心配であっても、実際にそれ を受ける機会がない、受けたいと思っても、どこで受けていいかわからない、お金のこ とが心配だと、あるいはプライバシーの方をどこまで守ってくれるんだろうかというこ とが、大変若い世代では心配になっているという事実がアンケートでわかってまいりま す。  現実に、今、定点調査にしてもサーベイランスにしても、主に症状のあるものを対象 にして行われているわけですが、実際に無症候のSTD患者は非常に多いという現状が あります。  例えば、ある県の5,000 人規模の高校生の男女生徒を対象にした性器クラミジアの調 査がありますが、私の研究班でお願いしていますが、性器クラミジア感染症の有病率は 女の子で13%、男の子でも8%ぐらい見られます。  それから、私は若年者を対象として調査しています。高校生から大学生ぐらいまでを 対象として、いろんなイベントなどで募集者を募って希望者に対して、クラミジアと淋 菌の病原検査です、抗体検査ではありません。それをやっておりまして、やはり9%前 後にクラミジアの陽性者が存在します。そこの中のアンケートの中でも、やはり自分が 心配でもどうやったらいいかわからないという意見が多い。  そういった中で、若年者がどういった感染予防を認識しているかということを調査し てみますと、コンドームを予防として使っているのは半分に行かない。せいぜい行って いる予防とすれば、パートナーを少なくすると。ただ、それもある時期だけの話であっ て、それを過去にさかのぼれば、多くのパートナーがいることは事実です。  ですから、いわゆる性感染症あるいは性教育などもそうだと思うんですが、非常に基 本的な知識がない。あるいは、性感染症が非常に心配ではあっても検査を受けられない ような状況の中で、そういった若年者が検査をする場所もなければ機会もない。ある意 味では、そういった無症候の、特に若年者を対象として何らかのスクリーニングの窓口 をつくってやることが必要です。しかも十分にプライバシーに配慮して、それを我々は インターネットを使って結果を知らせるようにしているんです。  検体を出す段階で同意書を取って、そのときにIDを渡します。IDを渡して、もし 検査の結果を知りたければ自分でIDを打ち込んで、その結果を知る。勿論、本人が知 りたくなければ知る必要はないわけです。  その結果を知ると同時に、性感染症に関する知識をホームページ等を開設して、そこ で知るようにするということをやっておりますが、一つのモデルではありますけれど も、そういったモデルをつくって、スクリーニングをするチャンスを与えてやらなけれ ば、本当の基本的な感染者の減少には結び付かないと思っております。 ○木村委員長  ありがとうございました。ちょっと時間が迫ってきましたので、更にいろいろ御意見 があると思いますが、先ほどと同じような方法で、メールあるいはファックス等で事務 局の方にお寄せいただきたいと思います。  最後に4番目の性感染症の発生動向調査の見直しについて事務局の方からお願いいた します。 ○事務局(前田)  資料でございますが、76ページ以降でございます。  先ほど、後天性免疫不全症候群についての御説明がございましたが、76ページが梅毒 の届出基準ということで、定義と届出基準、これを現場の医師が読まれて、梅毒につき ましては全数把握でございますので、この基準に合致した場合に届出をしていただくと いうことでございます。  77ページの性器クラミジア感染症以降は、先ほど申し上げた920 の定点医療機関から の報告の基準でございまして、定義と届出基準、それから性器ヘルペスウイルス感染症 についても同様で、定義と臨床的特徴、届出基準、備考でございます。  78ページが、尖圭コンジローマと淋菌感染症ということで、これも若干横線が入って ございますが、これは国立感染症研究所並びに感染症技術ワーキンググループなどでの 御意見を踏まえながら検討をしているところでございますが、こちらでも御意見をいた だければと思います。  それから、届出の様式につきましてでございますが、全数把握であるのは81ページの 梅毒でございます。  梅毒につきましては、発生届があって、その裏面に116 と書いてございますが、これ が両面という形で発生届を表裏一体で使おうというふうなのが現在の案でございます。  82ページ、ちょっと上下逆になってございますが「別紙様式10」と小さく書いてござ いますが、これが4つの性感染症について年齢別、それから男女別についてSTDの定 点からの月報という形での報告でございます。  この年齢構成の在り方ですとか、男女別だけでいいのかどうかということも御議論あ るかもしれませんが、現状として行われているのは、この報告様式にのっとって毎月報 告されているということでございます。  あと、先ほども若干紹介いたしました83ページからの谷口班の報告でございますが、 この御意見として84ページにございますけれども、淋菌感染症が、現在、定点報告です が、オーストラリア、イギリスなどでは全数報告の対象になっているということで、こ れについて保健所は59%が、全医療機関からの淋菌感染症の報告を受けることは困難だ と。その理由として、医療機関の負担が増える、協力依頼が困難という回答がされてい たという調査結果でございます。  簡単ですが、以上でございます。 ○木村委員長  この動向調査の見直しについて、今、特に御意見はございますでしょうか。 小野寺 委員、お願いします。 ○小野寺委員  今の中で、淋菌感染症の報告を全数調査ということがあるんですが、私は、余りこれ は意味のあることではないと思うんです。  と申しますのは、淋菌感染症は全体的な頻度としては非常に低いです。しかも淋菌感 染症の場合には、症状がはっきりしますから、割と本人が受診する率が高いわけです。 ですから、はっきりしているものを見つけるというよりも、もっと重点を置くべきは、 先ほど申し上げたようなクラミジア感染症のように症状がはっきりしない。しかも、そ れが放置されることによって将来的に骨盤の腹膜炎ですとか、あるいは不妊につながる ような事例に陥るといったものを重点的に見る方が私は重要だろうと思います。全数把 握で淋菌を見るんであれば、もっと違う形でクラミジア感染症の実態を把握する方がは るかに重要であると私は思います。  以上です。 ○木村委員長  無症状のものをどういうふうにモニターしていくかというのは、また技術的に難しい 面もあると思いますが、大事な点だと思います。  ほかに御意見がございましたら、事務局の方に後ほど御連絡いただくということで、 よろしいでしょうか。ちょっと時間が来てしまったので、委員会としては、この辺りで 一応の締めにしたいと思いますが、今後のスケジュール等につきまして、事務局の方か らお願いします。 ○事務局(前田)  では、本日いただいた御意見、またこれからもいろいろと御意見をいただきたいと思 ってございます。  先ほどエイズの検討会の方の見直し検討会が、29ページのタイムスケジュールで出さ れてございますが、4月下旬ぐらいまでをとりあえずの目途として進められているとい うことでございます。  こちらでエイズ予防指針の見直し案がかたまってくるのに合わせまして、本日いただ いた御意見とかを踏まえて、またこちらの性感染症の予防指針の見直しについても検討 していきたいと考えてございますので、大体かたまります5月か6月ぐらいに、また日 程調整をさせていただきますが、この会を開かせていただければと考えているところで ございます。 ○木村委員長  どうもありがとうございました。本日、先生方、大変年度末でお忙しい中、お集まり いただきまして、ありがとうございました。  本日いただいた御意見あるいはこれから事務局の方に御連絡いただく御意見、それか らエイズの方の検討会からの意見等を総合いたしまして、5月か6月ごろにお集まりい ただきたいということでございますので、よろしくお願いします。  本日は、不手際で少し時間を延長いたしまして、申し訳ありませんでした。  どうもありがとうございました。 ○事務局(前田)  ありがとうございました。以上でエイズ・性感染症ワーキンググループを閉会させて いただきます。  あと、机上に母子保健の関係でございますが「すこやか親子21」というパンフレット 資料がございますので、性感染症分野についての記載もございますので、御高覧いただ ければと思います。  本日は、どうもありがとうございました。                                    (以上) 照会先:厚生労働省健康局結核感染症課     特定感染症係(清水、平塚) 電話 :03−5253−1111(内線2379,2386)