05/03/03 標準的電子カルテ推進委員会第7回議事録             第7回標準的電子カルテ推進委員会                         日時 平成17年3月3日(木)                            15:00〜                         場所 中央合同庁舎5号館6階                            共用第8会議室 ○高本補佐  ただいまから「第7回標準的電子カルテ推進委員会」を開催いたします。本日の委員 会は公開形式で行います。なお、報道関係の方が撮影等される場合は議事に入るまでと させていただきたく、あらかじめお願いを申し上げます。最初に、委員会開催に当たり まして、厚生労働省医政局医療技術情報推進室室長の新村より挨拶を申し上げます。 ○新村室長  本日、委員の皆様方におかれましては、ご多忙の中お集まりいただきましてありがと うございます。本日は前回に引き続いて中間論点整理メモに基づいて作成した主要な検 討項目のうち残された課題、電子カルテの導入効果を評価する方法、電子カルテの普及 策、更にはマン・マシンインターフェイスについて担当者からご報告をいただき、ご議 論いただきたいと考えております。また、前回までの発表や議論を基に作成した、最終 報告に向けた論点整理案もお示しすることとしております。次回3月30日には最終報告 案をお示しできればと思っておりますが、この論点整理案は、その最終報告に向けての 事項を整理したものですので、これについても併せてご議論いただければと思っており ます。以上、簡単でございますが、ご挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願 いいたします。 ○高本補佐  続きまして、本日の委員の出席状況について報告いたします。大久保委員、小川委 員、手嶋委員が都合により欠席するとの連絡をいただいております。なお、小川委員の 代理として、日本電気株式会社医療システム開発事業部シニアマネージャーの竹腰典弘 様にご出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。また、主要検討項 目の検討状況における報告者として、厚生労働科学研究「標準的電子カルテシステムに おける安全なユーザ・インターフェイス作成のためのガイドラインに関する研究」研究 班長、静岡大学工学部の作佐部先生にご出席いただいております。それでは、以降の議 事進行は大江座長にお願い申し上げます。 ○大江座長  委員の皆様には、年度末のお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうござい ます。議事に入る前に、事務局のほうで、今日の資料の確認をお願いします。 ○高本補佐  お手元の資料ですが、議事次第のほかに、資料1としてカラー刷り横向き、計31頁の 資料があります。これは最初の報告事項である「電子カルテが医療及び医療機関に与え る効果及び影響に関する研究」、「電子カルテシステム普及のための施策について」、 それぞれの報告のための資料です。その下に同じく横向き、計21頁の資料があります。 これはその次の報告事項である「優れたマン・マシンインターフェイスの実現」に関す る資料です。その下には資料3として、「最終報告に向けた論点整理(案)」という横 向き、4頁の資料があります。また資料3の別添で「標準的電子カルテ推進委員会主要 検討事項」ということで、保健医療福祉情報システム工業会の成松様からいただいた検 討要点メモという4頁の資料があります。その他委員の皆様のお手元には参考資料1〜 4、これまでにもお示しした中間論点整理メモ、主要な検討事項と検討体制、これまで の委員会等の開催状況、それから、前回第6回標準的電子カルテ推進委員会の議事録を お配りしております。これについては適宜ご参照いただけたらと考えております。もし 未配付の資料等不備がありましたら事務局に申し出ていただきたいと存じます。以上で 資料の確認を終わります。 ○大江座長  本日の議事に移ります。最初は議事の(1)、主要検討項目の検討状況報告について です。「電子カルテの導入効果を評価する方法の明確化」、続けて「電子カルテを普及 させていくための方策」について、連続して阿曽沼委員からご報告いただきます。 ○阿曽沼委員  初めに、「電子カルテシステムが医療及び医療機関に与える効果及び影響に関する研 究」ということで、現在電子カルテシステムを入れている多くの医療機関が、現実に入 れてどんな影響や効果があり、どんな問題点や課題があったのかということを整理して おります。アンケート調査及び約20ぐらいの医療機関のヒアリング調査をして、いま研 究班でまとめているところです。それと同時によくわかりましたのは、電子カルテシス テムを入れる場合に、明確に目標管理をして入れている所は現実には大変少ない。そう いう意味からすると、いろいろな課題や効果が出てくるのに明確にその直接的・間接的 な効果を自分たちできちっと認識できないという問題もありましたので、研究班では、 電子カルテシステムを入れるという組織行動の目標管理の手法、目標管理をみんなで共 有できる仕組みづくり、どういうことを評価項目とすればそれが見えてくるのかについ ての研究を進めてまいりました。それについて報告し、皆さんのご批評をいただければ と思っています。  一言で医療機関が電子カルテシステムを入れたといっても、多くのバラつきレベルが あるとよく言われております。JAHISが、部門内の電子化を単独で扱うレベル1か ら地域医療のネットワークを含めたレベル4、そして医療情報、保健情報まで含めたト ータルな情報を扱うレベル5まで5段階のレベルにしておりますが、一般的に我々が電 子カルテというのはレベル3であると考えられています。研究班の60病院のアンケート で、公的な支援を受けて電子カルテを導入している多くの医療機関で、現在レベル3、 いわゆる電子カルテを実際に病院の中で稼動させている所が36.7%。ほとんどがレベル 2のオーダリングシステムを中心としたものです。ただ、このオーダリングシステムも レベル3に向かう過渡期であるということですから、時間をかけてレベル3に持ってい くことが最終目的でありますので、このレベル2は基本的にはレベル3を確実に行うこ とを目的に電子化を進めているということです。  しかし、レベル2の中でもすべてのオーダーを電子化しているという医療機関は大変 少なく、よく言われているように、部門で自主入力をしなくても済む、会計がすぐ取れ るような基本的な後オーダーを行っている所がこのうちの半分ぐらいで、フルオーダー 化についてもまだ43.3%の26病院すべてが行っているという段階ではなかったというこ とがわかりました。  我々が調査の対象とした電子カルテというのは、狭義の電子カルテを診療支援のシス テム、広義の電子カルテシステムというと病院全体のネットワークを指すというふうに 調査をしたのですが、それが先ほどの結果でした。  これは厚生労働省の補助事業で平成15年に入れて平成16年に動かしたある病院です が、この病院が電子カルテを入れると言ったときの全体的な業務内容を図したもので す。多くの病院がこのような計画案を立てて、その中で段階的にシステムを導入してい るというのが実態であると思います。資料の中で破線がわかりにくくて、今回調査した ときの経費の対象外というのがはっきりしませんでしたので、モダリティーやME機器 は電子カルテシステムの経費に入れていないということを修正しました。  平成15年度の中で、実際のアンケートとは別に、特に大型の13医療機関(公的な病院 と一部民間病院)のヒアリングから、一体どのぐらいのお金をメーカーと契約している のかを調査しました。そのとき、病床500床、外来患者の1日平均が1,200人ぐらいの病 院が平均像でしたが、初期導入経費として大体18億円、年間の運用経費として1億円を 払っている所が多うございました。効果を考える、影響を考えるというのは、電子カル テシステムが戦略的な投資であると、皆さん割り切ってはいますが、戦略的な投資であ るとすれば、それなりのいろいろな意味でのリターンというものが必要になります。質 の向上、収益の改善、病院機能の改善等がありますが、このぐらいの費用をかけて、ど うだったのかということもきちんと整理をしておくことが必要ではないかということ で、委員の方々からも、ここについては詳細な調査が必要だというご意見も相当いただ いたので、調査をいたしました。  13病院よりモデル化した、平均的な電子カルテと言われていてシステム化をしている 病院のプロフィールですが、診療科及び部門としては、23診療科でICU/CCU、救 急、画像システムも含めて電子カルテ化をしている。経費として含まれる機器は、ネッ トワーク、再来受付機、POSレジ、自動入金機、患者の案内表示板もこの経費の中で 賄っていて、先ほどの18億円に入っているということです。対象外の機器はここに書い てあるものです。システムの概要は、診療支援、オーダリング、文書管理、部門システ ム、その他で、対象業務が大体網羅されております。  システム構成上の配慮としては、安全性の担保として、システムの中心部分について の二重化、また、多くの病院が整形・呼吸器・術前カンファレンス室、そういった所に は高精細2モニターを現場に一部入れて運用しているということが平均像です。  この13病院のモデル化ですが、18億円の経費はほとんどがリースで多く入れていま す。補助金の場合は、半分が補助であとはリースとか、いろいろなやり方があるので一 概には言えませんが、通常、18億でリース換算すると18億9,000万円ぐらいの支払いに なります。運用経費は1億円と先ほど言いましたが、何カ月とか何年間は無償期間があ るので、5年間を償却とした場合、このぐらいのモデル病院が現在支払っている費用 は、総面積で23億3,800万円ぐらいの経費をかけていると言えると思います。  ベッド当たりいくらだという議論がよくあります。ベッド当たりいくらというのは計 算すればすぐに出てくるのですが、私どもは、どちらかというと患者数という括りで、 1人の患者が1日入院し、いろいろな診療を受けている診療費用の中のいくらぐらいを 負担しているのだろうかということで、患者1人当たりの負担額を計算してみました。 平均稼動率を83%としました。地域医療計画上は85%、いま現在を見てみると在院日数 が低くなっているので82%ぐらいの病院が多かったのですが、一応83%と仮置きをして います。  患者数換算の場合は外来患者数の3分の1というのが病院経営指標の概要ということ で厚労省が出していますが、最近、日本医療評価機構は2.5分の1対0.25という感じで す。0.25でやればもう少し数字が変わってくるのですが、仮置きとして3分の1という ことで1日当たりの平均患者数を出します。そうすると、このモデル病院で815人にな ります。いろいろな関係のいろいろな変動があるということで、これを25日と仮置きし て5年間でどのぐらいの延べ患者数になるか、先ほど言った23億円が1患者当たりでど うなるかというと、経費だけを見ると1,916円ぐらいの負担がかかっています。そこで、 この経費をかけてどういう効果やメリットがあり、どういうことが実感できたのかが整 理される必要があるのだろうと思います。また、これを高いか安いかと見るのは、効果 との見合いということになろうかと思います。これを1対2.5で計算すると1,740円ぐら いになります。  このクラスの病院の平均医業収入には結構バラつきがありましたが、院外処方をやっ て、1患者当たりの平均は、日当点が約8,000円、急性期加算などをすると4万円で、 少し高めかなという議論もありましたが、一応このように仮置きをします。そうする と、年間の医業収入は88億5,600万円になります。先ほど、5年間の総支払額が23億 3,800万円でしたから、総収入との割合は、よくオーダリングのときでは2%、1.5%、 2.5%というようなモデルが出てきましたが、約5.2%になります。これは高負担と書い てありますが、オーダリングからすると高負担ということになります。一部都市部の高 収益の病院は106億円ぐらいでしたので、4.4%になります。  これをアンケート調査をした60病院で見てみました。60病院の医業収入が100%把握 できなかったので、今年度、この病院に関しては医業収入を再度ご報告いただいて詳細 に検討してみました。  メーカーで言えば、メーカー系とソフト系ベンダーということで括り分けをしており ますが、メーカー系はどちらかというと公的病院が多く、ソフトベンダー系は民間病院 系が多い。規模的にはどうかというと、次の頁にあるものが各社が担当している病院の 平均の病院像です。患者規模では865人、ソフトベンダー系の病院が624人。患者数にそ れほど大きな差はなかったと思います。  よくベッド当たりということがありますので、許可病床数の平均ベッドを入れてみま した。そして、端末の台数当たりではどうかということで平均を取りました。これは基 幹システムだけです。調査してみると、部門システムに関しては大変バラつきがありま したので、基幹システムと言われる維持、コスト管理、データウェアハウス、電子カル テをやっている病院のものです。これは年間で、患者1人当たりではないのですが、こ ういった数字になりました。許可病床数でいけば、1ベッド当たり約60〜130万円まで というデータが出ました。  先にもこれを使って学会で報告をしましたが、この病院は、中心になっていただいて いる多くの先生方に、自分たちが使っているシステムは使いやすいか、満足しているか ということを点数で評価してもらいましたが、必ずしも高い費用をかけている病院が高 い満足度を得られていないということが、数字上出てきました。この理由はいろいろあ ると思いますが、それも含めていま調査分析をしているところです。  この中で特に医業収入を詳細に回答していただいた病院、コンピューターについても ほぼ網羅的にトータルなシステム化を行っている病院で、それぞれの費用と運用経費を 提出してもらった病院を先ほどの対医業収入費、そして患者1人当たりの負担というこ とで見ると、これだけの大きなバラつきがあります。これは細かい1つ1つのシステム の機能レベルで比較は行っておりませんが、ちゃんとペーパーレスでデータが入ってい て、申請書を書くことなども、とりあえずシステムで行っていて、マニュアルも整備さ れているものです。若干の差はあったとしても、それが大きく医療を損なうようなもの であるかというと、そうではないということです。376円から2,036円までということで す。標準的電子カルテシステムの中に具備すべき機能というのがありますが、具備すべ き機能が本当に具備されているかどうかはまだ100%チェックしておりません。一部金 額の差のある所に関しては、こちらの委員会で出てきた「具備すべき機能」が本当に揃 っているかどうかをいま調査中です。これは今日お示しできませんでしたが、報告書に は入れたいと思っております。  先ほど述べたように、平成15年度には13病院の平均が約18億円でしたが、平成16年度 に導入し稼動したもの、つい最近稼動したものもたくさんありますが、それら7病院で 比較すると、平均の初期導入経費は15.5億円で、この1年間で14%低減していることが わかります。これはメーカー側のシステムエンジニア作業が減ってきていることが大き な影響ですが、最近言われているように、ノーカスタマイズということで、なるべく個 別のカスタマイズをしないでそのまま使っていくという傾向が、現場の方々にもこの 1、2年の間に相当浸透してきた結果ではないかと思います。14%低減しているという ことが事実としてわかりました。  ベンダー選定のポイントや視点などについて皆さん方からヒアリングをすると、プロ ジェクトをうまく進めるためにこうしたらいいというようなこととして、この6ポイン トが出てきました。とにかくコストパフォーマンスがいちばん重要である。いくら効果 があると言っても、高いものではしょうがないという意見が多くありました。それか ら、システムエンジニアの資質というのは大きくて、説明に来てくれるSEではなく て、担当するSEをどうやって吟味していったらいいのかという声を多く聞きまして、 ここが非常に重要なポイントだと思いました。それから、現場としては標準化の意欲、 対応度ということをポイントとして言っており、標準化ということが重要であるという 認識が現場サイドまで強く浸透しているのではないかということを窺わせました。  次に私たちは、目標管理、実際にコストをかけてどのような効果があったのかを自分 たちではっきり評価する、もしくは客観的にそれをみんなで共有できるような仕組みを つくるということで、バランスト・スコアカード(BSC)という1つの手法、考え方 をベースにいろいろ議論を進め、いくつかの病院と標準的な目標管理シートを今つくっ ておりますが、そんなことをやってきたプロセスについて少し報告いたします。  最初に、何のために電子カルテを入れるのかということが重要になります。病院は社 会的責任として、自分たちが何をやらなければいけないのか、経営基盤の強化の観点 で、我々は何をしなければいけないのかと。「競争」という言葉はなかなか微妙な言葉 ですが、医療のサービスをよくしていく競争の中で、地域の医療機関と共存共栄をしな がら有位性を保っていくというのが病院の使命であるということを含めて、こういった 観点から自分たちの弱み、強み、それから今後の社会の動向を見ながら目標管理をして いくということは、皆さん、頭ではわかっているわけですが、これをきちんと表出化し て組織で共有しているという病院は、この多くの調査の中でもほとんどされていなかっ たということが現状であろうかと思います。確かにいろいろな表はありますが、具体的 に何をどうしたらこの目標が達成できたという評価をするのかというところの合意は、 ほとんどの病院でできていませんでした。結果論としてよかったという意見は聞くので すが、今後は、こういったことをみんなで共有して責任を持つということが重要なのだ ろうと思いました。  患者の視点、財務の視点、業務プロセス・病院機能の視点、そして意識改革・人材開 発の視点で、それぞれの目標を持って、それぞれのパフォーマンス・インディケーター をつくって、これに数値を置いて具体的なアクションプランを作成していく。この具体 的なアクションプランの中で、コンピューターで何をやらせるのかということを具体的 に明らかにすることによって、例えば日当点が上がる、経営がよくなったと言うとき に、コンピューターのインパクトはどのぐらいあったのかを自分たちが納得できるよう にしておくということがBSCの手法をつくる1つの目標です。バランスト・スコアカ ードを使った戦略マップの組立ということで、電子カルテシステムを導入して標準化を 推進し、病院機能と業務プロセスを改革していくわけですから、このためには当然、意 識改革と人材開発の視点があって、病院としては、こういった1つ1つの大きな取組み をしなければいけない。それによって病院機能と業務プロセスの1つ1つの目標を達成 することにより、結果として収益の改善、そして患者の満足度の向上ということになる わけです。患者の満足度が問題であれば、また原点に戻ってサイクルを回していくとい うことになるわけですが、こういった目標管理をみんなで共有できる仕組みをつくって いこうということです。  KPI(Key-Performance Indicator)の例は一応このように置いてありますが、こ れは病院の経営改善そのもののKPIとほとんど一緒です。財務の視点で言えば、コン ピューターを入れている病院は運営経費を安くする、5年後のレベルアップのときには どのぐらい安くするか等、経費の部分で削減する目標を立てるわけですが、多くはこの KPIの中でいろいろな効果を見ていかざるを得ないと思っておりますので、こういっ たものをいま置いております。この中で、自分の病院としては何をポイントとして置く のか、もしくは新たにどういうものをつくっていくのかということをKPIとして設定 していくのだろうと思います。  我々が今いちばん時間をかけて皆さんで検討していただいているのは、アクションプ ランの策定と評価です。我々はこれをエビデンス・ベースト・ソリューション(EBS )と呼んでおりますが、業務改善として何をするのか、そして社会的な外部対応、例え ば個人情報保護法が出来たとか、医療評価機構をやらなければいけないとか、診療報酬 が変わったというような、自分たちの意図しない社会的な対応に対して、組織として何 をするのか、それに伴って業務改善をどうするのかということのアクションプランを具 体的に羅列していく。そして、その中でコンピューターに何を担わせるのかをみんなの 合意でアクションを置く。そうすることによって、例えば目標が達成できたときに、も しくは達成できなかったときにコンピューター化の課題、もしくは業務改善の課題、そ ういった所の課題をみんなで議論できるのではないかということで、ここを今、電子カ ルテスコアカード的にアクションプランのマップと、できればインパクトでスコア化が できないかということで非常に苦悩しております。  いくつかの病院の先生方とお話をして、このアクションプランを立てていく上では、 業務改善では、例えば患者の待ち時間解消のために自分たちは何をするのか。患者の待 ち時間というのは、診察待ちなのか、検査待ちなのか、治療待ちなのか、入院待ちなの か。そういうことを具体的に、きちんと目標を立ててこういうふうにしていこうと。そ れから運用の標準化、無駄とムラの解消というのは、何の無駄とムラを解消するのか、 患者対応の強化、社会的な対応ということを1つ1つ表出化して目標等を立てていく。 その中で電子カルテ化のために何をするのか、どういうことがうまくできれば、この業 務改善がより良くなるのかを考えていこうということです。  正直なところ、これは100点満点の回答はなくて、病院ごとに自分たちが納得して、 こういったことで整理をして、後で評価をするための、ここにドリルダウンして原因を 追求していくための仕組みをつくっていこうということです。  電子カルテ導入の影響ということでいくつかの病院、例えば九州総合病院、イセイ会 城東中央病院、タカオカ病院、それから島根の県立中央病院など多くの病院の現場でヒ アリングをして、このカテゴリーでまとめてみると、例えば意識改革、人材開発の視点 ではPeer Reviewの環境が実現できた、経営マインドが醸成できた、シミュレーション 力が圧倒的に上がってきた等々が効果としてあったということを、皆さんが強く言って います。  業務プロセスの視点、病院の機能の視点ではこの5つが非常に大きかったと言ってい ますが、経営指標のタイムリーなチェックということが意識改革にも非常に大きく役立 ったということです。  財務の視点では、それによって診療単価が上がり、経費が相対的に逓減して、レセプ トの返戻率、保留率が縮小し、未収金管理が徹底できて、明らかに財務的に効果があっ た。  患者の視点でいけば、患者の満足度というのは調査だけではわからないのですが、多 くの病院が、救急患者数が増える、お産の件数が増える、新規入院患者が増える、紹介 率が増えるということが、いわゆる病院のブランド力の向上によって患者から選ばれて いくということで、満足度が高いと評価すると、こういったことが効果としてあったの ではないかと。そして、その中でコンピューターが果たした役割がどのぐらいなのかが 皆さんで検討する大きなポイントなのだろうと思います。  島根県立中央病院は特徴的な例です。今から5年前に、初期投資28億円、5年間の運 用経費を全部入れると49億円かかったシステムです。このシステムを入れて、病院の経 営に果たしてどういう影響があり、患者の動向にどう影響があったのか、それを真剣に 考えていく必要があって、その中から見えてくるものを今後の糧としていこうというこ とで、島根県立中央病院の協力で、すべての経営指標を出してもらい、検討しました。 これを先ほどのBSCのカテゴリーでまとめますと、患者の満足度調査も当然上がって いますが、救急外来患者数は二次医療圏以外の患者数が増えてきた、新規入院患者が増 えて、出産数が増え、紹介率が上がったということです。紹介率が上がったということ のいちばん大きなものは、地元の医師会の方々との議論・協調が図られたことによるも のです。実は、島根県立中央病院は、すべての診療科の診療枠の20%を医師会に開放す ることによって、いちいち病院に問い合わせなくても自動的に予約が診療所等でとれる というやり方を取ることによって患者の紹介率が上がっていったのです。それから、電 子カルテの情報もすべて紹介してもらった先生方には文書形式もしくは媒体の形式で返 すことになっているということです。それから、病院の中に医師会室をつくって、患者 を紹介した先生たちが自由にその中に入って患者のデータを見られるようにした。そう いうことがあって紹介率が旧病院から比べて飛躍的に増えたということです。  診療報酬のシミュレーションですが、例えば回復期リハの病棟を出すときに、自分た ちの収入がどのぐらい変わって、どういうふうに平均在院日数に影響するのかというシ ミュレーションが、病院長が午前中に言って、お昼には出てきたと言うことです。在院 日数は1.8日短縮すると予測して回復リハの対応を決断したのだが、結果的に本当に1.8 日短縮して、経営のブレがなかったと述べており、こういう意味で、データを活用する ことによって対応力が増したと言っていました。  減点率は0.6ぐらいあったものが0.29で、これがほぼ限界値であろうということです が、収入に寄与して、約30%診療単価が上がってきたことになります。  診療単価が外来1万1,000円、入院4万円に伸びたわけですが、初期投資28億円、計 49億円かかったということで見てみると、実は、今までの5年間は1患者当たりの負担 2,900円。先ほどの最高額は2,000円ですから、それよりも確かに大きいことになりま す。新しいコンピューターを入れましたが、これから5年間の目標としては1,500円を 切るということで目標を立てており、1,447円ぐらいで推移できるのではないか。そう すると、10年間で見ると2,200円。これでもやはり高いということになります。  対医業収入費で言えば、今までの5年間は7.5%投資した。今後の5年間は3%に抑 えるのだが、やはり10年間平均では5%。この5%というのは、なかなか大変だという ような話でした。  これを実際の経営データで見てみますと、明らかに単金が上がっています。入院も外 来も、在院日数が減っていきます。実は、患者数はそれほど多く増えていません。人件 費は下がっており、経費は一定ですから、相対的に見れば下がっている。ところが医業 収入は、5年間頑張って、これだけ収入が上がったのだけれど、電子カルテ導入以前の 旧病院の額にとどいていない、ということがわかりました。病院の建屋の問題もありま すが、電子カルテの初期投資というものが確かに大きかったということで、もう少し経 費が安くなれば、当然医療収益、利益率はもっと上がって、皆さんから喜ばれるシステ ムになるのではないかというのが病院の評価でした。  対前年度比で外来や入院の収入がどれだけ上がったかということでは、平成12〜13年 に7%、本体の切り下げがあったときでも4%の増加があった。導入前から見ると、増 収益の上昇率が28.7%、導入前との比較では約30億円の医業収入の増加があった。だか ら、初期投資だけ見れば、回収できたのではないかということが病院としての結論で す。  診療報酬の中身についての議論もしましたが、これは明らかに、外来の診療費の行為 別の収入のバランスが大きいということが言えます。これはコンピューターを入れてい ない病院ですが、A病院とB病院は外来診療単金と入院の日当点が島根とほぼ同じ病院 ですが、院内処方を行っているということで投薬料に非常に大きく依存しています。そ れが院外処方になった途端に収入が40%以上落ちてしまうことになる、もしくは診療費 の改定にも非常に体力のない病院ということで、経営分析がほとんどできていないの で、ずっと漫然とこうやっているという状況です。当初、島根もそういう傾向でした が、日々電子カルテから上がってくるいろいろな情報をみんなで共有することによっ て、みんなが議論することによって、5年間かけてこういった体質になったということ が病院の皆さんの評価でした。  あとは、経済効果の目標の設定が当然必要ですが、いろいろな数値から出てきた日当 点が上がった原因は、コンピューターだけの問題ではありません。処置や指導料の取り 漏れが解消できた、返戻率が下がったということもありますが、診療報酬の体系の変化 によって、例えば放射線治療を増やした、外来の抗がん剤治療を増やした等、ビジネス プロセス・エンジニアリングによって増収を勝ち得ている部分があります。先ほど言い ましたように7%が平均で、3つの医療機関の調査をしますと、電子カルテを入れた 後、対前年度比で6〜7%ぐらい単金が上がっているという状況が見えましたので、こ れを低めに設定して仮置きで3%としていますが、こういった直接的、間接的な効果と いうものを考えてBPRをする、コンピューターを入れる、組織を強化するということ で大体どのぐらいの経営的な効果を得るのかという議論をし、BSCの中の数字目標を 立てる必要があるのではないかということです。  医業収入のうち、医薬品とか医療材料があります。医薬品は3%と仮置きしています が、実は、先ほどのモデル病院の購買上位の20品目の値引率を1%改善するだけで、年 間5,000万円ぐらい変わってきます。上位品目の20%を改善するだけで、全体で7〜8 %大きく改善できるということがわかっておりますので、年間経費の3%というのは、 それほど大きな数字ではないということです。ただ、これは公的病院が多いので、いろ いろな情報公開条例の中で現実的にこの1%というのがダイナミックにできるかという のは、現場の方たちとしてはなかなかいろいろあります。この辺の数字もいくつか分析 をして出してみましたが、多くの病院がこういうことでありました。ちなみに島根で言 えば、上位20品目を1%改善するだけで、約7,000万円ぐらいの改善が見込めるという ことで、これを目標設定としてやっていくと、こういった数字が期待できるわけです。 期待できるわけですが、これを実際にやってみたらどうだったかということを自分たち の目標管理に置いてみるということが必要なのではないかと思います。  「電子カルテシステムの普及のための方策」ですが、これはいろいろな議論があって なかなか難しいのですが、少し整理をしてみました。ヒアリングをしてみていちばん感 じることは、松原先生との話の中でも出てまいりましたが、日々医療をやっていて、電 子カルテが必須の道具だと思っている医療従事者がそれほど多くない、まだまだ非常に 少ないというのが現状です。医療の生業に必須の道具であるという確固たる認識をこれ からどうやって定着させていくか。これは当然効果をきちんと整理して皆さんに示して いくということが必要なのだろうと思いますが、日々の医療の現場の中でこういうこと をじっくり考えて認識できていないというのが現状です。しかし使ってみると、もう手 書きには戻れないという多くのアンケートがございます。  それから経済性。収益の増強がどのようにして図れるのか、経費の削減がどう図れる のか、何をしたらどう図れるのかということを、道筋を立ててきちんと整理する。それ から、先ほども数字がありましたが、5%が通常なのか、2.何パーセントがいいのか、 そういったことは当然効果との見合いですが、導入・運用コストの削減ということは今 後ともしていかなければいけない。標準化ということがこういうことにも結び付けられ れば、医療機関にとっては非常に大きなプラスになるであろうと思います。  もう1つは操作性の向上、これは多くの方々が言っています。非日常的な操作を強要 されるというようなことがいろいろありました。ただ、その実態を見てみるといろいろ ありますので、後で整理したいと思います。  それから誘引性。誘引性という言葉が適当かどうかわかりませんが、インセンティ ブ、政策誘導といったことも必要なのではないかということも挙げられました。必然性 ということですが、こういった標準化の議論の中で出てきたものを整理し、きちんと医 療機関側に示していくということが必要です。  それから経済性の向上です。患者1人当たり、モデルケースでは1,916円、調査病院 の平均でいくと1,000円になります。これは例えば診療報酬点数で少し負担してほしい という声が非常に大きいのですが、例えば診療録の管理加算が1回について300円とい うことになると3分の1。電子カルテの効果というものが30%のインパクトがあるとす れば、このうちの何パーセントかを将来診療報酬で担保できれば、病院にとっては非常 にありがたいという声を強く受けました。一般病床の療養環境加算が1日250円ぐらい です。これはどういうふうな理論が必要なのかということですが、そういうことが重要 なのではないかと思います。  ここは隠れてしまいましたが、今後この経費をどうやって負担するのか。病院の自己 負担にするのか、診療報酬等公的な負担の担保を求めていくのか。ただ、診療報酬の担 保を求めればトレードオフになって、どこかを削られるということになれば、病院全体 としてはマイナスに働いてしまいますので、その辺をどうしていくのかという議論であ ろうと思いますので、去年発表のときに出たコストダウンの施策を少し具体的にしてい くことが重要なのではないかと思います。  操作性については、60病院のアンケートで、ものすごい数のフリーライトの不満がわ かりました。まとめてみると、この7つです。レスポンスが遅くてイライラする。オー ダー種別ごとに操作が一定でない。用語が不統一である。今までは入れていなかったい ろいろなものを入力しなければいけない。自分が必要のないものまで機能を満載してい る。画面を扱うと、1モニターでは足りない、端末が足りないということで、こういっ たことをどう解消し、コストを安く入れていくのかが重要なのだと思います。  厚生労働省は、公的な支援をこれだけしてまいりました。地域も含めて290施設に対 して全部で1,453億円の支援をしてまいりましたが、これがどうであったかということ です。医療機関は常に電子カルテを入れたい。経費的な問題があったが、公的予算があ るから入れられたのだということでポジティブに評価しております。事実、この補助事 業があったときには飛躍的に導入件数が増えているという実態もあります。それで、こ ういった病院のヒアリングをして、こういった導入目的に対して満足しているかという ことに関しては、多くの病院が目標を達成できたということですから、こういった支援 はやはり効果があったのではないかと思っています。今後どういうふうに継続できるの か、ご検討いただけるとありがたいと思います。  今日は報告しませんが、カルテの記載にどう影響があったかをいま考えています。カ ルテの記載量に関しては、S&O、A&Pで見た場合に、直後から1年後に関してカル テの記載量が増えていった。それから、お医者さん以外のアクセスなり記載が増えたと いうことで、チーム医療に推進、貢献ができたというポジティブな評価が非常に多く、 80%ぐらいの方々がこの評価をされていました。  今、紙のカルテと電子カルテの記載項目を、内容ではありませんが、それについて一 部試験的に調査をしていますが、3月末までには、これも含めて報告をしたいと思って います。少し時間が超過しましたが、これで発表を終わりたいと思います。 ○大江座長  かなり分量のあるご報告で、大きく言うと、導入効果を評価する方法の明確化、それ から普及方策ということをご報告いただきましたが、いかがでしょうか。どちらのほう のテーマでも結構ですので、フリーディスカッションをしたいと思います。何かご質問 あるいはご指摘いただくこと等、どなたかございますか。 ○井上委員  大変詳しい研究をしていただき、ありがとうございました。島根県立中央病院が、導 入前に比べて30億円近くの増収になった。これはすべてがIT化の結果ではないかと思 いますが、その30億円というのは、どこから取ってきたかということなのです。島根県 の他の病院から取ってきたのか、それとも、島根県全体の医療費がこれだけ増えたの か。私が言いたいのは、私も病院長を長らくやっていたので、院長の立場でIT、電子 カルテを導入するということになると、それが経済的にペイするということが大切です から、コストの削減もさることながら、いかに増収を図るかということを考えてITの 導入仕様書を書いていくということになるのだと思うのです。そういうことでいいのか どうかが私は多少疑問なのです。前回の委員会でこの前のときに、ITの費用は誰が負 担するのかということを言いましたが、病院が負担すると、どうしても島根県立中央病 院と同じようなことになってくると思うのです。そういうことについてお考えを聞かせ ていただきたいのですが。 ○阿曽沼委員  誰が負担するのかについては非常に難しい問題があるのです。病院長のヒアリングを しますと、例えば放射線治療をやります、リニヤックを入れますと言えば、リニヤック の保険診療点数があって、どのぐらいの患者数が地域にいて、自分たちの目標がある。 そうすると、いくらぐらいで買えばその病院に大きな影響が出ないとか、いろいろな調 査ができるのだと思うのですが、電子カルテに関してはその目処がたたないので、本当 に自分たちがどういう目標を立てていいのかがわからないということがまず1つありま す。  もう1つは負担です。現場の意見としては、公的な支援、それから、病院がある程度 経費を削減し、増収をすることによって努力をする。もう1つは、本当にいいものであ れば、きちんとエビデンスを示して、患者の了解があれば、若干患者の負担もという意 見も強かったのです。ただ、それは診療報酬点数化ということで患者の負担をいただく ということでの意見ですが。ここはこうすべきだと、私どもの研究班ではなかなか言え ないのですが、先ほど言いましたように、病院自身が努力をして一部投資を回収してい くという努力をすると同時に、公的な診療報酬での担保ということも、そろそろ考えて ほしいという意見が非常に強かったのです。 ○井上委員  病院の経営というのが自由化で、余力のある所はIT投資をしてどんどん収益を上げ ていく。一方その代わり、弱小病院はどんどんつぶれる。その結果、日本のベッド数は 今よりはるかに少なくなって非常に効率的になってくる。そういう方向を目指してIT をやることが是か非か、難しい問題ですね。ということであれば、それでいいと私は思 うのですが、その辺のところがね。政府としても、日本のベッド数は確かに多いから、 IT導入を契機に全体のベッド数を減らしていく1つのきっかけになると。そういうふ うに考えておられてもおっしゃらないとは思うのですが、そういう効果も出てくる可能 性があるのではないかとお聞きしてそう思ったのです。 ○阿曽沼委員  民間医療機関のコンピューターの導入の仕方に学ぶべきものが相当あるという感じ が、この調査をすることによってわかりました。この病院を見ても、患者1人当たりの 負担や医業収入費は大きく違います。外から見ると、電子カルテでつくっていて、操作 もシンプルで、機能もシンプルである。だけれども、きちんとした医療が行われ、増収 も図られている。ですから、ここら辺の知恵の出し方で、これが即病床とか何かの政策 になるのかというのは私はよくわかりませんが、いま病院が健全な経営をしていく、も しくは患者の信頼を高めていく上でどれだけの負担があって、この負担を自分たちの努 力だけではできないという強い感覚を持っていて、診療報酬での担保が必要だと思って いるという現実がある。今そこまでわかったというところで、それがどういう方向感を 持って誘導されていくのかというのは私も言及できません。 ○石原委員  非常に詳細な、よいデータを出していただいて本当にありがとうございました。私も 大学病院の現場で苦しんでいる者ですが、この調査の中でわかっていたら教えていただ きたいのです。眼科、耳鼻科、歯科あるいは歯科口腔外科、こういう所は、電子カルテ を導入したとおっしゃっておられる所も実際には、外部から調査をすると、なかなか使 っていなかったり、部門システムとしてあるべき姿ではない形での電子化が進んでいた りしますが、そういう部門についてはいかがですか。 ○阿曽沼委員  60病院の中で、とりわけそういうことについて問題だという意見は、フリーライティ ングでも出てきませんでした。ただ、自分の所に入っている電子カルテを何点とつける かと言ったときに、眼科、耳鼻咽喉科では、おしなべて評価点数が少なかったという事 実はありました。ただ、具体的なフリーライティングで、こんなシステムは使えないか ら使っていないというものではなくて、皆さん、その気持がどういう気持かはわかりま せんが、きちんとそれを使っているというのが実態です。  ただ、この7番目に書きましたが、耳鼻咽喉科、眼科というのは診療科特有のME機 器が中央診療部門ではなくて自分の所にあって、それが自己完結で今までは診療科の中 でできていた。隣の診療科の人たちに声をかければできたものが、いちいちコンピュー ターで指示をしなければいけないという不満が、いくつかのフリーライティングであ り、診療科特有のME機器が接続できないということでは、かえって不便になったとい う実態の話も眼科や耳鼻咽喉科ではありました。  皮膚科、小児科の意見では、きめの細かい設定ができないので、操作性やパッケージ の機能についての不満はありましたが、それで電子カルテはどうも使えないというよう なネガティブな評価は、アンケート上はありませんでした。 ○石原委員  実際に今回の島根県立中央病院で示した解析、これはこれで正しいものだろうと思う のですが、同じ5年間で同規模の他の病院がどれぐらい一般的に増収増益になっている のか。それから人件費等についても、少なくとも診療所等の調査から見ると、この同時 期に診療所でも人件費は減っている。実際には収入が少なくなったから減らされている だろうと思うのですが、非常にシニカルな表現をすると、島根県立中央病院でコンピュ ーター導入の経費が圧力となって人件費を減らした可能性はないのかという見方をしま すと、同規模の他の病院のこの5年間と比べて、電子カルテを入れていない所も含めて いかがだったのか。その比較はいかがでしょうか。 ○阿曽沼委員  今日はまだ詳細に出ていないのですが、自治体は自治体として5つの病院を、コンピ ューターを入れていない所も含めてベンチマーキングをしました。ですから、その中で 増収がどうだったか、経費の削減がどうだったかと。それから、これと同規模の民間病 院で5年間使っているというのは事例があまりないので、そこについて詳細な比較はで きませんでした。特に民間病院の場合は、複合型、ケアミックス型にどんどん病院その ものも機能を変えていきますので、その収益構造をベンチマークすることがなかなか難 しかったので、それは今しておりません。しかし、公的な医療機関としてはこれと同じ ぐらい。公私病院連盟の数字なども駆使して数字を出しましたので、それはそれで出し たいと思います。ただ、この伸びは他の病院を圧倒する伸びであると思います。今まで が悪かったかと言えば、そうなってしまうかもしれませんが、平成10年のものと比較し ておりませんので、何とも言えません。 ○石原委員  コストがまだまだ高いというご指摘ですが、更に今後コストがかかる要因として、個 人情報保護法が施行され、セキュリティ対策を強く求められる。そういうことになると 多くのコンサルタントが、例えば1%であるとか0.何パーセントはIT化に伴ってコ ストをかけるべきだという意見があり、多くの機関でそれに頭をひねっているところだ ろうと思うのです。しかし、そういうコストまで考えていきますと、電子化を進めるこ とによって、5%どころか、もっとかかるのではないかという懸念が現場にはありませ んか。いかがでしょうか。 ○阿曽沼委員  その懸念は当然だと思います。例えば5年間使って、次に新しいことをやっていく、 その中で何を盛り込むかという議論が、当然組織としてあります。個人情報保護法の問 題については、コンピューター化すること以前の問題として、やらなければいけないこ とが当然あろうと思いますが、コンピューターによってそれをどう高めていくかという のは、次の更新のときということになるわけです。では、次の更新のときにそれをプラ スアルファとして経費を払うのか、もしくは今のままで同じものをやるのか、もしく は、かえって安くしていくのか。その辺は経営判断と、ものの考え方の問題であろうと 思いますが、そういうことがあることによって、また5年後に新たな経費を生んでお金 をかけるというのは、経営上マイナスになるのかなとは思います。  ですから島根でも、今まで49億円かかったけれど、次の5年間は総面積を22億円でで きました。それでも高いわけですが、それだけの経費を削減していく。こういった調査 を明らかにすることによって、医療機関側、業者側がきちんとした意識を持ってコスト パフォーマンスのいいシステムをつくっていくという動機づけになれば、これはこれで 非常にメリットがあるのではないかと思います。 ○大江座長  ITの導入コストを、別のコストの削減をもたらすことによって補うのか、収入増で 補うのかという話は、実は医療におけるIT導入にかかわらず、ほかの領域でも全く同 じ課題として議論されてきたことだと思います。何が医療機関特有の部分で、何が医療 機関でない所でも基本的に本質が同じ部分なのかというのが整理されると、もう少しわ かりやすくなるという気が、お話を聞いてしました。  1つ私から質問したいのです。導入効果を評価する方法として、患者の視点、満足度 などの話はありましたが、そこで働く医療スタッフの充実感の程度、あるいは忙しさの 減少、数量的に言うと、例えば超過勤務の減少とか、それによって専門職が専門職とし て本当にしたいことができる時間の増加とか、そういうことも非常に大事のように思う のです。そういうことが間接的に心の余裕を生み出し、安全を増やし、患者の満足度を 上げるという気がするのですが、今回の評価の中で、職務に対する満足度や忙しさのウ ェイトとか、そういうことを調査する方法は何か考えていましたか。 ○阿曽沼委員  それは少し不十分であると思います。これは顧客の視点にするのか、患者の視点にす るのかという原点の議論がありました。情報部門としては医療従事者が顧客なのだか ら、顧客の視点の満足度を上げないと病院全体がよくならないという意見もありまし た。このマップではきちんと整理されていないのですが、いま我々の班では、人材開発 の視点で医療従事者の満足度や職場環境の改善について病院として目標を立てていけ ば、具体的に何をするかというアクションプランが立てられるのではないかと思ってい ます。 ○大江座長  満足度が高くなると、よい人材が長くその医療機関で働く、あるいは集まってくるよ うになって、結果的に収入増とか、間接的な効果が大きいと思いますので。 ○阿曽沼委員  多くの病院長がおっしゃっていましたが、我々はまず患者に選ばれる病院の前に、医 療従事者に選ばれる病院になることが、経営上非常に重要だということを、多くの病院 経営者がおっしゃっていましたので、その視点は非常に重要だと思います。 ○大江座長  ほかに、ご発言されたいことがありましたら、お願いします。それでは、後ほどまた 時間が余りましたら戻ることにして、どうもありがとうございました。  それでは続いて、「優れたマン・マシンインターフェイスの実現」について、作佐部 研究班長にご報告をお願いいたします。資料はお手元の資料の2でございます。 ○作佐部班長  静岡大学工学部の作佐部と申します。中間論点整理メモにおける検討項目としての、 「優れたマン・マシンインターフェイスの実現」、これに対応する私の研究班として は、「標準的電子カルテシステムにおける、安全なユーザ・インターフェイス作成のた めのガイドラインに関する研究」ということでお話をさせていただきます。  この研究の概要を、かいつまんでお話しします。まず「スコープ」です。適用範囲と か注目点といった面に関しては、既存の技術に基づいた電子カルテなどの開発、及び既 存の電子カルテ製品の導入、こういった領域に対して関心をもって行いました。次は、 この研究の「プロダクト」です。この研究におけるアウトプットですが、ユーザ・イン ターフェイス参照モデルと人間工学的ガイドライン、この2つを今年度分のアウトプッ トとすることにしました。  それについての理由を少しお話しさせていただきます。既存の技術の中でも、既存の プラットホームを選ぶ理由ですが、これはほとんどの方が、特に若い先生になるとなお さらですが、通常、普段の生活からパーソナル・コンピューターなどをお使いになって おられる、さらにはオフィスと言われているような類のソフトウェアを、かなり定常的 に使っておられるという事実があります。学校教育の現場においても、これは小・中・ 高・大で、オフィス・スイーツを使うことを半ば義務づけているというか、課題の提出 などに用いたりしているということも事実です。  そうすると、今後そういった方々が現場に上がってくる、医療現場に配属されるわけ ですので、そういった方々のことをまず考えておく必要もある。もちろん、すでにコン ピューターを使われている方は、それほど多いとは言いきれない。全年齢に対すると、 それほど多いとは限りませんが、そうであれ、先進的に使われている方でも、やはりこ ういった一般的なソフトウェアをお使いになっているという事実は変わらないと推測し ております。  もう1つの点は、病院情報システム、すなわち病院の中で動いている情報システム は、電子カルテだけではありませんし、さらに言えばシステムというレベルではありま せんが、病院情報システムのパーソナル・コンピューターの上で、ワープロや表計算な ど、オフィス・スイーツを実際に使っておられるというのが実態です。これを導入しな いと、大変な不満の声が上がるというのも事実です。さらには、その他のデスクトップ 上の各種アプリケーションを使うということもあります。ということがありますので、 例えば全く違うオペレーティング・システム、かなり特殊なオペレーティング・システ ムを使うなどということは、あるいは特殊なハードウェアを使うということは、全く考 えることができません。  そういうことで、十分に普及しているプラットホームの上で、何ができるかを注目し ようというわけです。まず、計算機の形態としては、パーソナル・コンピューター及 び、若干ですが携帯端末が今後普及して、携帯電話と言ったほうが正確かもしれません が、それが普及すると思いますので、こういったものをターゲットに考えています。P DA、あるいはさらに、ウェアラブル・コンピューターといった、まだ実験段階に近い ものについては、対象にしておりません。  計算機の一部とも言えますが、入出力デバイスに関しても、現状のモニター、マウ ス、キーボード、この3つのセットを中心に考えています。タブレット、タッチパネ ル、あるいはゲームパッド、さらに進歩して、ヘッドマウント・ディスプレー(HMD )、あるいは視線追尾装置とか、そういう特殊なものは、対象に考えておりません。  そしてオペレーティング・システム、あるいは実際の画面が構築される上で使われる ソフトウェア、これはオペレーティング・システムと一体となっている場合、あるいは 別になっている場合がありますが、こういったものについても、普及しているMicrosoft Windows、Mac等のOS X、それからJava、あるいはX-Windowj、こういったもののみを 対象としております。  次にソフトウェア技術に関しても、既存のものを考えることになります。ソフトウェ アを開発したりする上で使われる各種の技術があり、具体的には開発ツール、それをさ らにいえば、プログラミング言語や統合化開発環境です。そして設計及び管理技法とし て、ドキュメントをどのようなものを作るか、管理体制はどのようにするか、役割分担 はどうするか。要するに、役割分担といえば、ソフトウェア・エンジニア(SE)、ユ ーザ対応のエンジニア、プログラマー、こういった分割というのは、結果的に出来上が ったものではありますが、定着しております。これを新たな、例えば一人の人で全部す るといったようなことは、実際に難しいと考えます。なぜかというと、これらのことを 変更する、新たな言語を使いなさい、新しい管理技法を使いなさいということになる と、技術者の再教育、さらにいけば、会社組織の変更などが必ず必要になってしまいま す。そうすると、改革には年単位、それは1年や2年ではないと思われますが、数年単 位の時間がかかります。その間、生産性が低下するので、あるいは新製品の開発が全く できなくなってしまったりするので、確実に次期製品の価格にはそれが跳ね返ってきま す。  そういうこともあって、実際、さらに詳しくターゲットを絞っていくと、既存の製品 の導入プロセスにメスを入れるのが、いちばん効果が早く表れるのではないかと考えま した。企業の製品開発サイクルというのは、5年からもう少し長いのではないかと、経 験的に見ています、電子カルテの市場においては。そうすると、いまこのようなものを やってくださいとメーカーに提言したとしても、その結果が出てくるまでには5年、短 くても2、3年くらいはかかってしまいます。グランドデザインの1つのマイルストー ンであるところは、目前に迫っているので、そういったものを待っている余裕はないと 考えました。  さらに、これはメーカーに対しての調査からわかったことで、見ればわかるのです が、最新の電子カルテ製品、「最新の」ということを付けておきます。一世代古いもの では、このようなことができていなかったりするのですが、最新の電子カルテ製品は、 ほとんどコンポーネント技術が実際に採用されております。いろいろ詳しく説明を聞き ました。それはこの場で公開できることではありませんが、各種のコンポーネント技術 の採用がなされていましたし、いままでの経験に基づいて、多種多様な設定が可能なよ うになっております。したがって、さらにどこにメスを入れるかということになると、 ユーザ要求の取込みの部分になると思います。現時点で、この部分においてもメーカー は、ユーザ対応専任の技術者、あるいは部署が実際に設置されております。カスタマイ ズについても、ある程度、行き当たりばったりのことにはならないように、少なくとも 現時点の体制は改善しつつあるということを、調査によって見つけることができまし た。  そこで、本研究のスコープ、適用範囲について、繰り返しになりますが、既存の電子 カルテ製品が導入される過程を第一に考えます。新たな電子カルテ製品が開発される際 にも、ここでの成果は適用されるであろうと考えますが、優先はされません。  それから、本研究のオーディエンス、読んでほしい人ということになりますが、電子 カルテを導入する医療施設側の担当者の方、それから実際同じレベルとして、電子カル テの導入を支援する技術者、メーカーの技術者ですね。そういった方々に読んでいただ くような資料を作りたいと考えました。電子カルテの開発、新たに開発をしているよう な方々についても、参考になればというところです。  ということで、「本研究のプロダクト」としては2つありましたが、そのうちの1 つ、「ユーザ・インターフェイス参照モデル」というものを提案します。参照モデルと いうと難しい話のように見えますが、実際は簡単なもので、ユーザ・インターフェイス 要素の一覧表というものをまず作ります。これは、ここで対象として採用されたプラッ トホームの上で、ツールキット、どのような開発のための道具があって、実際にどのよ うなユーザ・インターフェイス上の要素、画面上に実際に並んでいるものは、どんなも のが並ぶかといったものの一覧を、しっかり書いておきます。そして、オペレーティン グ・システムごとに、それらの類似性や違いといったものの比較表を作っておきます。  さらに少し複合的なものとしては、そういった要素の組み合わせが、どのようなパタ ンになっているかということについて、若干の分析をしておきます。これは一般的なア プリケーションを、特に病院情報システム自体を対象とはせずに、一般的なアプリケー ションとして、表計算や帳票、ワープロ、ドローイング、ブラウザのようなものについ て、その上でユーザ・インターフェイス要素がどのように配置されて、どのように機能 が割り付けられているかといったものを、改めて書いておきます。  参照モデルというものについて、簡単に説明しておきます。これは、モデルを作る上 で、設計上、いろいろなモデルが使われるわけですが、それを作るための道具立てとい うことで、モデルを記述するために使われるモデルです。このような考え方は、米国連 邦エンタープライズ・アーキテクチャー(EA)などで採用されております。それを真 似していると言っても、問題はありません。参照モデルというのは、モデルといって も、こういう分類的なもの、あるいは構造的なものと2種類考えられるのですが、ここ では分類的なものについて考えます。つまり、一覧表を作るということになります。  もう1つのプロダクトですが、実際に医療現場でユーザ・インターフェイス要素を並 べていくとき、配置していくときに必要となるであろうガイドラインについて、まず既 存で、JIS規格ですと、かなりの量のガイドラインがあります。そういったものを、 実際に参照していただかないといけないわけです。ただし、著作権上、そういったもの を報告書にコピーすることはできませんので、どういう文書にどれが、何が書いてある かといったサマリーは、お役に立てるのではないかと考えております。  さらに、そういったものの複合的な解釈として、医療現場の特殊性にあわせた、そう いったガイドラインに対する解釈の仕方というものを、若干説明しておきたいと考えて おります。病院の職員ではない私などにとっては、病院の中でどういうコンピューター がどのように置かれているかということは、調査しないとわからないわけで、簡単な調 査をしました。当たり前のことですが、広い机、ゆったりとした椅子、そういった理想 的な作業環境とは無縁なものでした。さらに言えば、いわゆるVDT、ビデオディスプ レー・ターミナルの作業というのは、モニターに正対するわけですが、とてもそういっ た環境でないことも、はっきりしているので、それに対応するために、どのようにする かを説明しようと考えております。  以上のような研究の形、成果というか、内容に至った理由を、説明いたします。それ らは主に、情報システム以外の分野での成果、それから情報システム開発の電子カルテ システム開発の現実、電子カルテ・メーカーに対する調査を行いました。それから、病 院のPC設置状況の調査も行いました。  ユーザビリティや情報システムの使い方に関する研究というのは、古くからあって、 産業心理学、あるいは人間工学、認知科学というものに、ほぼこの順番で台頭してきま したし、その中でいくつかのエポックメーキングなものがあります。そういったものを 参考にすることになり、それらの成果について参照するという形になるわけです。  ただ、こういった研究が、どのようなものをターゲットにしていたか。あるいは、ど のような状況をターゲットにしていたかということだけは、一言付け加えておかなけれ ばなりません。これらの研究は、いまほど情報システムというものが複雑になる以前の 時代のものです。複雑にネットワークが接続され、コンピューターを1人の人間が1つ の機械として使うのではない時代のものであったりしますし、さらに言えば、現在使わ れているオペレーティング・システムなどは、こういったものの成果の上に出来上がっ ています。オペレーティング・システムは基礎的な部品ですが、基礎的な部品を作るの に使われたこれらの研究成果を、複合的な製品である電子カルテの適用開発に、そのま ま適用するのは、現状では無理であると考えられます。そのような複合的なものに対す る研究は、まだ始まったばかりというのが実態であるようです。  もう1つの材料は、情報システムの開発などで、最近、パタンという言葉を皆さんよ く耳にされるかと思います。パタンという言葉を、実際に使いだしたのは、建築家のク リストファー・アレグザンダーという方ですが、パターン・ランゲージという概念を提 唱されました。これは、建築をターゲットとしたものですが、それは他の多くの分野で も、まさに情報システムの分野でも、流用できるだろうという流れがたくさんあって、 現に、ソフトウェアにおいてデザイン・パタンという言葉がよく使われており、もう10 年以上の歴史をもっている、1つの方法論というか、分野となっています。  ただし、1つだけ付け加えておかなければいけないというか、ここに、クリストファ ー・アレグザンダーの言葉をいくつか、重要な部分をピックアップしましたが、特にい ちばん上の部分、ここに書かれているようなことが、基礎的な考え方になっているの で、決してこれは科学的なものではないというところを強調しておきたいと思います。 また、皆様が普段使われている、さまざまな機器というのは、今日では、レィモンド・ ローウィという方が確立した、インダストリアル・デザインというビジネススタイルと いうか、産業というか、あるいは手法、そういったものを基礎にしております。  この方のいくつかの言葉を抜粋しますが、ここに書かれているようなことが言われて おります。そして、これは、情報システムの分野の言葉ですが、ヤコブ・ニールセンに よる、「ユーザビリティエンジニアリング原論」の中から、こういうスローガンが挙げ られています。「ユーザはいつも正しいわけではない」でありながら、「ユーザは常に 正しい」と、これは両方あります。あるいは立場、「ユーザはデザイナーではない」で すが「デザイナーはユーザではない」というのもあります。  さらに、現在のソフトウェア産業というのが、実際にどうなっているかということを 考えておかなければなりません。少なくとも1950年代、あるいは60年代であれば、ハー ドウェアも含めて、1つのシステムとして開発していた時代があります。いまは、そう いうことはありません。かといって、ハードウェアを除くすべてのソフトウェアを1つ のプロジェクトで開発するわけでも決してありません。オペレーティング・システムを 開発することは、仮にそのような技術をもったチームであっても、社会的にできない状 態になっております。  また、いまでは開発ツールなども高機能化してきたので、誰にでもプログラムを、と りあえず動くものであれば作ることができるようになったと言われております。現にそ うです。したがって、作るために必要な最低のスキルは、敷居が低くなり、低いレベル でもできるようになりました。しかし、良い情報システムを設計するために必要なスキ ルは、上がってしまいました。なぜかといえば、すべての内部構造を自らで作るわけに いかなくなってしまったわけですので、何を選ぶかというものも、設計要素になってき てしまいました。これによって設計というのは、単純な一方通行の話ではなく、何を使 うかということにおいて、ある意味で政治的な判断まで含まれなければいけなくなって しまいました。設計というのが、大変複雑になってしまったわけです。  また、当然ですが、ソフトウェアそれぞれが、どんどん機能を蓄積してきております ので、いまのソフトウェアは、ほとんどのものが、実際にマイクロソフト・ワードなど をお使いになればわかると思いますが、実際にそれを操作する、すべての機能を使いこ なす、あるいは設定するということ自身が、もうプログラミングと言えるようなレベル のスキルを必要とされるような、複雑なものになってきてしまいました。ソフトウェア 産業全体が、こういったことで階層化しているわけです。オペレーティング・システム を作るメーカー、ツールキットを作るメーカー、そしてアプリケーションを作るメーカ ー、それぞれが、さらに言えばアプリケーションを設定するメーカーの業者、現在では そういう4段階くらいに分かれているというふうに考えてもいいと思います。  さらにもう1つの問題ですが、欠陥のないソフトウェアと十分によいソフトウェア、 これはエドワード・ヨードンが提案した考え方で、日本ではこの言い方はしませんが、 米国ではよく使われる「Commercial Off-The-Shelf」、商業的にお店の棚に置いて売っ ているものを、コストの面とか、どんどん情報システムの現場でシステムに組み込んで 使わなければいけない状態になってきております。一方、ソフトウェアに対する品質要 求は相変わらず高く求められております。よく引き合いに出される、スペースシャトル の制御ソフトウェアといったものは、とにかく品質最優先で開発されるようになってお ります。これら、品質・機能・コスト、結局コストが必要ですが、これは三角形の構造 をもって、それぞれで一定の、例えば納期とか、そういったものに対して引っ張り合い をする状態になっているわけです。果たして病院情報システムは、どのポジションに置 くべきかということを考えなければいけません。私自身は、これについて答えを持って はおりません。おそらく品質は、スペースシャトル制御ソフトウェアほどではないにし ろ、高い品質を要求されるであろうということは明らかだと思います。  そこで、実際に電子カルテを作っているメーカーに対して調査を行いました。これ は、地理的な問題などもありますが、静岡県版電子カルテの開発に現段階で参加してい る、これは県内の全病院をカバーするわけですから、ほとんどの電子カルテ開発メーカ ーが関連すると思いますが、これらのメーカーに対して、実際に事業所に伺って、開発 技術者やユーザ対応の技術者から聞き取り調査を行いました。ユーザ対応で、どのよう な体制をとっているか、品質管理でどのような体制をとっているかを伺いました。アン ケートではなく、直接伺いました。  これは私の結論ですが、現時点の最新製品、あるいは最新製品を扱う体制において は、十分に高いレベルに達していると思われます。エドワード・ヨードンの言葉でも、 実際にその品質に関しては、日本は突出して高いと言われ、元々言われております。こ れは単に証明した、私から見て実感しただけのことでしかありませんが、品質は十分高 い、よい体制をとっております。しかし、ほとんどのメーカーのエンジニアが感じてい るのは、導入に関わるコストがどうしても高くなってしまうというふうに感じていまし た。  今後の活動として考えているのは、ユーザ・インターフェイスについての実験を行う 環境を用意したいと考えております。現状では、ユーザ・インターフェイスについて、 各種の実験、こういうメニューの並びだったらいいとか、そういった配置がよいのでは ないかといった実験ができる人は、残念ながら限られています。自らプログラムを書け る研究者、あるいは場合によっては医師の方でも書ける方がたくさんおられます。ある いは、メーカーなどにシステムの仕様を提示して、そのように作らせることができる立 場にいる、主に病院などの医療情報部、こういったところに限られております。それで すと、ユーザ・インターフェイスというのは、環境やその人の指向によって異なってし まってよいものなので、それぞれの中でよいユーザ・インターフェイスとはどういうも のかということを、頭の中で考えるだけでは駄目で、実際に目で見て動かしてという実 験をしなければ改善することはあり得ません。プログラムを書ける人、プログラムを書 かせることができる人だけが、いくら実験をしたり、その作ったものを誰かに使っても らって評価してもらっても、おそらく改善のペースというのは、いままでと同じくらい のものでしかないだろうと考えています。  ですので、これは、本当にこのようなソフトウェアを作れるかどうか自体が挑戦では あるのですが、素人、プログラムが書けない方でも、ユーザ・インターフェイスについ て各種の実験ができるようなソフトウェアを開発しようと思っています。その際に、本 当に単なる実験ソフトウェアであっては、それを現場にフィードバックする可能性が全 くなくなってしまいますので、そこで日本医師会のほうで進めている、オルカプロジェ クトというもので進められている、日医標準レセプト・ソフトウェアというものをベー スに、そういったシステムを開発しようと考えております。このソフトウェアは、オー プン・ソースですので、ライセンスを遵守する上で、好きな改造をすることができます し、その改造の結果は、実運用システムへのフィードバックができる可能性が残ってお ります。  もう1つ予定している活動としては、ユーザ・インターフェイス・パタン・ライブラ リーを作れないかと考えています。これは、技術者の立場ではなく、エンド・ユーザか らの視点で、そういうパタンというものをどんどんまとめていけないか、集約していけ ないかと考えています。先ほどちょっと出ました、クリストファー・アレグザンダーの 「パターン・ランゲージ」というのがありましたが、あれは、技術者の視点ではなく、 実際にその建物の中で生活する人の視点で、このような建物の配置がよいであろう、よ いというふうに認知されているということをパタン化したものです。こういう構造がよ いとかそういうものではなくて、こういう構造であれば、人々の気持が、例えばスムー ズなコミュニケーションができるとか、気持、感情にかかわる部分を含めてですが、そ ういったパタンというものがたくさん述べられています。  いまソフトウェアの世界で行われているデザイン・パタンというのは、そういうもの ではなく、非常にロジカルなものが中心ですが、ここでは医療従事者の方々に、そうい ったパタン、こういう経験をした、これはよかったと思ったというものを投稿していた だくような仕組みをつくることで、これは、クリストファー・アレグザンダーの最初の 言葉にあるように、混沌としてしまう可能性がないわけではありませんが、クリストフ ァー・アレグザンダーの言葉を借りれば、それを恐れていては何もできないので、まず はこういったものを進めていこうというふうに考えております。  最後に、簡単に言えば、いままで私がここで行ってきたのは、こういった考え方に基 づいてやってきた結果として、今回のような研究となりました。ここで強調しておきた いのは、すぐに誰にでもできる、誰にでも実施可能な戦術というものを導入できなけれ ばいけない。それに対して、私のような研究者ができることは、その戦術を実施するた めに使えるであろう道具をご提供したいというふうに考えて、このような形になりまし た。以上です。 ○大江座長  ただいまのご報告に関して、ご質問ご意見などございますか。 ○木村委員  作佐部先生から、各社よくやっているというお話で、私はすごく驚いてもいるのです が、最後のほうで、要するにユーザ・インターフェイス・パタン・ライブラリーの部分 で、「パタンを記述するルール」とありますが、これは要するにアップルが作っている MSがパクッた、アップル・ユーザ・インターフェイス・ガイドラインというようなも ののことなのか。それとも新たに、ルールとあるから、もうちょっと意味合いが違うの か。あるいは、こういうもので、既存のものはありますか。 ○作佐部班長  ありません。ルールというのは、むしろこの場合、後からできていくだろう、あるい は提供するツールの影響を受けていってしまうだろうと考えています。これは、やって みないとわからないというような、非常に無責任な言い方ですが、本当に現場の従事者 の方の声を、まずは聞いて、それを集約してやっていく過程で、おそらくルールという ものが、まずルール自身が成長していくと考えておりますので、これは本当に初期の状 態から、どんどんこれを発展させていく、継続的な活動だというふうに考えています。 ○木村委員  各社がそれぞれに、最適化したものを作ってきているというのは、私も実感するとこ ろで、昔の電子カルテをちょっと触った覚えがあって、確かに最近のものは、それなり に各社独自に最適化している。多分ユーザの声をたくさん入れたことでしょう。その結 果、結構、先ほど、設定という部分が増えてきている。それがはっきり見えないのが、 安全を考えたときに、危ない可能性があって、そういうものも、各エンド・ユーザは、 我々に言うわけです。これを、この方向で串刺しして見せてくれとか、要するにマクロ 的なことを求めてくるわけです。このマクロというのは、実はそのロジックが見えない ので、その看護師さんがほかの病院に行ったときに、意味合いの違いということがあり 得るという。この研究の基本的なタイトルにも、「安全な」というのが入っているの も、そこだろうと思うのです。それを記述する、違いを記述するツールが必要だと。少 なくとも、事柄に違いがあることをはっきりしないと、議論さえできないということ は、非常に重要な視点だろうと思うのです。ですから、それを是非期待しておりますと いうところです。 ○作佐部班長  私が、各メーカーがよくやっていると言ったことに驚かれたということですが、実 際、技術者としてのスタンスという意味では、もう学者になってしまった私などより も、はるかにしっかりした知性で、ソフトウェアの開発を皆さんしておられます。少な くとも、開発に関しては、かなりしっかりコントロールされているのは事実です。パフ ォーマンスの問題というのは、技術力だけの問題だけになってしまいますが、知性とい うレベルで言えば、それについてはしっかり努力している、改善もしている。もちろ ん、まだまだ完璧ではありませんが、少なくともISOの取得、CMMIのプロセスの 導入、そういったものをしっかりやっておられる。  最近、『クリニカル・ガバナンス』という本を、素人ながら読ませていただいたので すが、あれはイギリスの医療の現場から出てきたもので、外から見た視点では、日本の 医療の現場というのは、ああいったクリニカル・ガバナンスが必要なほど悲惨ではな い。はるかに非常に優れていると私は見ています。ソフトウェア開発においても、日本 は少なくとも最高の品質をもっていると言われた時代すらあります。  なぜそれがうまくいっていないのかというのが、これは本当に開発あるいは医療の現 場それぞれの間に、大きなギャップができてしまっている。そこをどう埋めるかという ことになると、もうこれは、歩み寄るしかない、意見を交換するしかないというふうに 考えたということです。何かはっきりした提言をしたとしても、使ってもらえなければ 意味がありませんので、意見交換の道具を作るというのが、1つの趣旨です。 ○大江座長  時間的なことがありますので、短目にお願いします。 ○廣瀬委員  先ほど木村先生もちらっとおっしゃいましたし、いま作佐部先生から、CMMI、I SOという言葉が出てきたので、そこを私も聞きたかったのです。何を根拠に満足でき る状況である、とおっしゃっているのか。つまり、ではCMMIであれば、レベルいく つなのか。それからISOであれば、多分15408あたりかと思うのですが、そこら辺を 明確に、あるいは、基準は何だったのかということをお聞かせください。  もう1点は、お答えいただく必要はありませんが、研究のフォーカスについては、も う少しクリアにしていただいたほうがよいのかなという気がします。 ○作佐部班長  廣瀬委員がおっしゃった、CMMIのプロセスでいえば、0から1に上がったくらい です。それでもいままでは、0ですらなかったわけですので、それですら十分だと私は 思います。 ○大江座長  それでは、まだいろいろコメントなさりたい方がおられると思いますが、進行の関係 もありますので、次に進みたいと思います。どうもありがとうございました。  続いて、最終報告に向けた論点整理案の検討についてということで、これは資料が準 備されていて、事務局のほうから概略の説明をいただくことになっておりますので、よ ろしくお願いします。 ○高本補佐  それではお手元の資料3及び委員の皆様には参考資料1、2として、「中間論点整理 メモ及び必要な検討事項と検討体制について」という資料を用意してございますので、 ご参照ください。資料3については、これまでの主要検討項目、この委員会全体でご議 論いただいた9つの項目について、検討責任者からのご発表内容及び関連事項という形 でまとめさせていただいていることでございます。次回、3月30日に予定している委員 会では、最終報告案が提示される予定ですので、そのための論点の整理を行っている、 そういう目的です。  まず最初に1ですが、「電子カルテが備えるべき共通の機能及びこれらの機能を満た すためのシステム要件」、その下には『中間論点整理メモ』の文章が入っております。 ○のところに、検討責任者のほうからあった研究内容をとりまとめておりますが、こう した研究成果のご発表を踏まえて、機能モデル等について提言をすることにしたらどう かというご提案です。  関連するものとしては、中間論点整理メモの別事項ですが、内容的には同じもの、電 子カルテが提供すべき機能や、その構成を検討していくというもの。それから、日本医 療情報学会様におかれては、機能を踏まえた電子カルテの定義等を発表されているとこ ろですが、そうした取組みとの関連、また、米国のIMOなどの電子カルテの機能モデ ルないしは要件等の提示がありますので、そうしたものとの関係などを踏まえて整理す べきではないかと考えているところです。  次に2は、これは本日ご発表いただいたものですが、「電子カルテシステムを普及さ せていくための方策」について、これは今回の報告と検討等を踏まえて、例えば下記の ような事項について提言してはどうか。これまでの普及策等の評価や今後の方向性、電 子カルテの標準化と今後の適切な普及策との関係の明確化です。  なお、関連事項としては、これまで厚生労働省の検討委員会で示したグランドデザイ ンのほか、政府全体のe−Japan重点計画や、規制改革の計画などでも、電子カル テの普及目標が提示されているので、ご紹介しています。  3番、4番については、同じく本日のご発表です。それぞれ中間論点整理メモの事項 に対して、検討結果等をご報告いただきましたが、それらの中の重要事項について提言 してはどうかということです。これまでの委員の皆様からの主要なご意見を関連事項と して、ここに記載してあります。例えば電子カルテが導入された場合の導入効果を評価 する方法の明確化に関連する項目としては、医療安全とか医療の効果というような言い 方もあるけれども、「医療の品質管理」というキーワードで、それに寄与するという視 点が必要ではないかというご指摘がございました。  また、次年度以降の研究事業に関係するものとしては「電子カルテシステム等の導入 による医療の安全性と質の改善の評価に関する研究」、これを公募しているところで す。マン・マシンインターフェイスについては、ただいま発表のあったところですが、 委員からの主要な意見、これは、ほかの発表に関係して出てきたものですが、電子カル テに必要な機能の達成とシステムのレスポンスへの影響等の関係も考慮して検討すべき であるというご意見を頂戴しています。  5番目、「共通の機能に対応するソフトウェア部品の標準化」については、前回の委 員会での発表を頂戴しているところですが、これらについては、ご提案があった以下の 内容を踏まえて、重要事項に関して提言してはどうかということでした。中長期的な視 野に立った施策が必要ではないか。例えばエンタープライズ・アーキテクチャー的なア プローチといったような提言があったところですが、それらに対して、委員のほうから は、ソフトウェア部品のビジョン作りについては、必要な社会的な負担等も考慮して検 討すべきではないかというご指摘があったところです。  3頁には、「電子カルテのセキュリティ基準の明確化等」、「医療安全の確保に電子 カルテが寄与できる領域等の検証及び安全性の確保の視点からのシステムのあり方等」 についての項目でございます。同じくこれも、検討責任者のほうからご発表があった内 容について、重要事項について提言することにしたらどうかというご提案ですが、6番 については、ほかの検討会、「医療情報ネットワーク基盤検討会」の最終報告が、昨年 9月に出ていますが、その中の重要事項について、関係するところをご発表いただいて いるところですので、それとの関連について配慮すべきではないかということです。  7番の、医療安全の確保に電子カルテが寄与できるという、そうしたあり方の検討に ついては、別添ということで、検討要点メモをいただいております。これは12月の当委 員会でご報告いただいた内容に追加して、ご発表いただいたJAHISの成松様のほう から頂戴しているものですが、この中のポイントと考えられるものについて、そこに掲 載させていただいています。これらについて、重要事項について提言することにしては どうかということです。  なお、関連するものとしては、委員のほうから、医療安全に標準的電子カルテがいか に貢献できるか、または、そのために持つべき機能は何かという視点等での検討が必要 ではないか。また、システムと人(利用者)の責任分担については明確にしておくべき ではないかというご指摘をいただいております。これについても、関連する研究事業が 次年度以降行われるということで、そこに公募課題を掲載しているところです。  8番については、「新旧システム間での円滑なデータ移行、異なるシステム間での互 換性確保」ということで、これも、研究報告等を踏まえて提言することにしたらどうか ということですが、かなりクリアなご提言をいただいているところで、異施設間の情報 連携と、個々の新旧システムデータ移行、大きく分けて2つのパタンでご提言いただい ているところですが、いわゆる標準的な形式などについての方向性がご提言されていま すので、それについて、重要事項について提言してはいかがかということです。  なお、委員のほうからは、これは本委員会の検討全体にかかわる重要事項であるの で、他の主要検討項目との関連性を踏まえて提言を行うべきであるというご指摘をいた だいております。  最後に9番目、「関連組織・団体の有機的な連携体制の構築」についても、ご発表の EHR対応に向けた国内標準化体制の整備のほか、ご提言いただいておりますので、そ れについての重要事項について提言をしてはどうかということです。委員からの主要な 意見としては、日本独自の情報モデル等を確立して、国際標準に反映させるという方向 性も重要なのではないか。また、中核的病院を中心とした情報ネットワークの運営、維 持といったようなご提言もございましたが、そうした病院だけでなく、開業医等の地域 医療を担う関係組織とのコラボレーションが非常に重要ではないかというご指摘をいた だいております。  以上、最終報告に向けた論点整理案の概要です。 ○大江座長  次回までに、私と事務局とで、このお示しした論点整理案に基づいて、肉づけをして いって案をお示しするということを考えておりますが、いかがでしょうか。ここで示さ れたものは、当初、中間論点整理メモの後、主要な検討事項、この委員会の役割を整理 した中の主要なものが取り込まれていると思いますが。 ○木村委員  要するに、これで担当した部分として、これをちょっと拝見して、ちょっとこの部分 が足りない、この部分はこういう意味とかいうことがあれば、早速、私たちで書いたほ うがよいか、それとも、そういう話はメールでお送りしたほうがよいか、どちらでしょ うか。 ○大江座長  ご相談ですが、いま一応考えているのは、時間的なこともありますし、年度末で皆さ ん大変お忙しいということもあるでしょうし、それから、一通りご報告はいただいて、 資料もいただいていますので、それを基に、ここにお示しした論点の部分をいただいて いる資料、あるいはこれまでの報告内容を基に、こちらで肉付けをさせていただいて、 その案を事前に、次回の委員会の、何日前になるかわかりませんが、2、3日前にお示 しして、読んでおいていただいて、当日の委員会でご意見をいただくというような形に なるかと思っています。そういうことでよろしいですか。 ○高本補佐  適宜資料など頂戴できれば、幸いです。 ○大江座長  もちろんそういう意味で、早めにご意見、お気づきの点があってという場合は、事務 局あるいは私のほうにメールでもいただければ、その部分をなるべく早く反映させてい ただくということで。 ○木村委員  わかりました。 ○新村室長  いまおっしゃったようなことで、いまお気づきのことがあれば、この直後でも数日以 内でも、メールをいただければ反映させます。 ○大江座長  最終の次回の委員会のときに、大幅に書き変える必要がないようにはしたいと思いま すので、早めにご意見をいただけたらと思っています。いまお気づきの点、何かござい ましたら、どの項目でも結構ですので、ご発言いただきたいと思いますが、いかがでし ょうか。 ○木村委員  私が申し上げたかったのは、新旧システム間のところで、もうちょっと突っ込んで、 J−MIXを使うべしというのではなくて、どう使うべきかまで言う必要があるかなと 思ったりした点。 ○大江座長  8番ですか。 ○木村委員  8番です。それよりも、9番で、この間もヒムスに行ってきて、アメリカのブレーラ ー担当官のレジオナル・ヘルス・インフォメーション・オーガニゼーションの125億の 話とかがあって、動きが、国際標準に反映されるという話が書いてあるから、その話は かなり要るだろうなと思いました。 ○大江座長  数行でも構いませんので、文章にしてお届けいただけると、大変助かります。 ○木村委員  うちの医療情報学会の取組みという話で、例の電子カルテの見解を見ると、早速私 は、190の静岡県の病院にアンケートを出して、いまちょうど返ってきている段階です ので、まとまり次第送ります。 ○石原委員  2の電子カルテシステムを普及させていくための方策ですが、そのステークホルダー として、「開発者、医療提供者、医療サービス利用者それぞれの視点を十分に踏まえな がら検討を行う」ということで、これはこれで大変結構だと思うのです。しかし、表現 はどうなるかわかりませんが、普及させていくために、やはり政府機関、あるいはそれ に近い所が提供されるマスター類とか、規約の類といったものは是非無料で、デジタル 媒体で提供していただける方法を、何らかの形で盛り込んでいただけたらと思いますの で、お願いいたします。 ○大江座長  いまのご指摘の点は、以前の中間論点整理メモにも、1つ項を立てて書いてありま す。それを積極的に取り込んでいくということでよろしいでしょうか。 ○石原委員  はい、お願いします。 ○大江座長  ほかに、いまご覧いただいてお気づきの点がありましたらどうぞ。 ○廣瀬委員  本委員会のこれまでの議論の中で、ほんの少しだけ出てきたのですが、電子カルテの メリットあるいは期待するメリットは、立場によってさまざまあると思うのですが、大 げさな言い方、しかし一般的な言葉を使えば、今後は、できるだけ、ナレッジ、知識を 見据えておく必要があると思うのです。例えば、某雑誌で、つい最近、エビデンス・ベ ースト・メディスンが残したものは何だったのかといったような記事がありましたね。 何を調べて、何をどう解釈したのかわからないといったようなことがあったわけです。 それを考えると、標準的な電子カルテという中の、将来像の1つとして入れておいてよ いのではないかと感じています。 ○大江座長  これは、もし入れるとすると、どの項あたりの話題になるでしょうか。 ○廣瀬委員  項、セクションまで考えなかったのですが、とりあえず気づいた点ということだった ので申し上げましたが、後半のほうでしょうかね。べき論でしょうか。 ○大江座長  3あたり。 ○廣瀬委員  はい。うまく申し上げられませんが。 ○大江座長  はい、では少しそのあたりで入れてみて、またご意見をいただきたいと思います。ほ かに、お気づきの点ございますか。それでは、またお気づきの点がありましたら、なる べく早い段階で、事務局のほうにメールででもお届けいただけたら、反映がスムーズに いきますので、よろしくご協力をお願いいたします。  本日予定している議題は以上ですが、ほかに何か特別にご発言なさりたいことはござ いますか。それでは事務局のほうから連絡事項等ありましたら、お願いします。 ○高本補佐  次回の委員会のご案内になりますが、3月30日の第8回本委員会については、厚生労 働省内の会議室で、3時から予定しております。これはまた追って公文書でご連絡を差 し上げますが、予め日程の確保のご配慮をお願いしたいと思います。 ○大江座長  それでは本日は長時間にわたり、熱心なご議論をありがとうございました。 (了) 照会先 医政局 研究開発振興課 医療技術情報推進室 企画開発係 中内 TEL 03-5253-1111(内 2588) FAX 03-3503-0595