安全で安心な献血に関する懇談会のこれまでの議論について(案)


献血による健康被害の実態について

1.献血による健康被害は、軽度のものを含めると、年間約550万人の献血者のうち1%程度に発生している。なお、被害者の訴えによる統計であり、報告のない発生例もあるのではないかという指摘もある。
2.健康被害の具体的な内容は、VVR(血管迷走神経反射)による気分不良など軽微なものが大半であるが、稀に、RSD(反射性交感神経性萎縮症)や神経損傷など後遺障害が残る重篤な事例や遅発性VVRによる意識障害が原因と考えられる交通事故等も発生している。
3.平成15年度に発生した健康被害の内訳は、VVRの軽症が73%、皮下出血が21%、神経損傷が1%、クエン酸中毒が1%、その他が4%となっている。また、発生時期は採血後が多く(67%)、採血後30分以内の発生が32%、24時間以上経ってからの発生が24%(皮下出血、気分がすぐれない等)であった。
4.現在得られているデータにおいては、献血者の性別や採血の種類によって、健康被害の発生状況に差が見られる。
5.健康被害に対して、医療費等何らかの賠償又は補償が行われている事例は年間600〜800件程度であり、過去数年間でほぼ一定の率となっている。
6.医療費等を支出した事例のうち、採血事業者(担当医師等)に過失があったものとして医師賠償責任保険により被害者に賠償金の給付を行っているものは約6割、採血事業者が自主的に医療費等の補償(見舞金の給付等)を行っているものが約4割である。

 これまでの被害者に対する賠償・補償の運用について

1.現在、献血者の健康被害に対する補償金給付の仕組みは大別して次のとおり。
名称 概要
(1)賠償責任保険から支払われる賠償金
採血事業者の過失が認められる場合、約款で定められた条件に適合する範囲で給付される。
過失の有無の判定は保険会社が過去の事例を参考に実施(行為と結果に係る蓋然性により過失を推定する場合も多い)。
(2)献血者事故見舞金
根拠は献血者事故見舞金贈呈内規。賠償と単なる補償の性格を併せ持ち、種類は傷病見舞金、障害見舞金、遺族見舞金の3種類。
賠償責任保険では給付が認められない場合、賠償責任保険からの給付だけでは不十分な場合の補填。
給付額は献血者との話合い等を踏まえ、血液センターごとに判断。支出額が7万円を超える場合は、センターの申請により、本社から100分の90に相当する額をセンターに交付。(H11〜15年の間は本社からの交付事例2件のみ。)
小額の医療費については、保険会社に連絡せず(保険金給付の可否を確認せず)直接献血者に支払うセンターもある。
2.判定内容に関して以下の指摘もあった。
(1)会場から離れてからの事故は過失がないのか、状況によって過失になる場合もあるのではないか
(2)神経損傷や皮下出血は過失と考えるべきではないか
(3)時間的な問題で献血に伴うVVRではないと判断するのは医学的におかしいのではないか
3.採血事業者が任意で行っている見舞金の給付については、献血の公益性にかんがみても、採血事業者のみに任せるのではなく、国も何らかの支援を行うべきとの意見があった。
4.現在、各血液センターが実施する医療費等の補償や見舞金の性格(根拠、目的、理由)が必ずしも明確でなく、整理が必要であるとの議論があった。
(1)賠償責任保険の適用となる可能性がある事例に見舞金等で補償が行われている場合
(2)賠償責任保険の適用事例に、付加的に見舞金等の補償が行われている場合
(3)各センターの提供する医療費等の補償と本社見舞金を適用する場合の違い
5.4に関連して、日本赤十字社の見舞金制度導入の経緯、医師賠償責任保険の導入の経緯、医師賠償責任保険は献血に特化して契約したものかといった各制度の性格について明確にするべきとの議論があった。
6.現在日本赤十字社が加入している医師賠償保険の内容について確認すべきとの議論があった。
7.外国の救済制度等の実態(資金等)についても参考にすべきとの議論があった。

予防対策について

1.日赤の採血時の献血者に対する注意喚起情報の提供について、わかりやすく漏れのないものとする等の工夫が必要である。
2.リスクや補償に関する説明と同意(書面による署名を含む。)を確実に実施するための工夫が必要である。
3.今後はPC採血、400mL採血等が主流になってくると考えられ、献血者におけるリスクと医療上のベネフィットのバランス等については、引き続き議論する必要がある。

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