年分発第3号
平成17年3月24日


社会保障審議会
 会長 貝塚 啓明 殿

年金資金運用分科会
 分科会長 若杉 敬明


厚生年金保険及び国民年金の積立金の運用に関する基本方針の変更について(報告)


 平成17年3月24日厚生労働省発年第0324001号をもって社会保障審議会に諮問のあった標記については、本分科会における審議の結果、了承できるものと認められ、別紙1のとおり変更することが適当との結論を得たので報告する。
 なお、基本方針の変更に際し、別紙2のとおり申し添える。



(別紙1)

運用の基本方針の変更案

(下線部分は変更部分)
変更後 変更前
第2  積立金の運用に係る長期的な観点からの資産の構成に関する事項
 二 基本ポートフォリオ 
第2  積立金の運用に係る長期的な観点からの資産の構成に関する事項
二 基本ポートフォリオ
  1  基本ポートフォリオ
(略)
 基本ポートフォリオは、年金財政安定化の視点から変動リスクを一定範囲に抑える資産構成とする。また、平成16年の年金財政再計算は、物価上昇率1.0%、賃金上昇率2.1%という前提のもと、名目の予定運用利回りを3.2%と設定している。
(略)
  このような視点から、基本ポートフォリオは、次のとおりとする。
目標収益率 標準偏差 予定利率
3.37% 5.55% 3.20%

国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
67% 11% 8% 9% 5%
  1  基本ポートフォリオ
(略)
 基本ポートフォリオは、年金財政安定化の視点から変動リスクを一定範囲に抑える資産構成とする。また、平成11年度の年金財政再計算は、物価上昇率1.5%、賃金上昇率2.5%という前提のもと、名目の予定運用利回りを4.0%と設定している。
(略)
  このような視点から、基本ポートフォリオは、次のとおりとする。
目標収益率 標準偏差 予定利率
4.50% 5.43% 4.00%

国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
68% 12% 7% 8% 5%
  2  乖離許容幅
 各資産クラス固有の収益率の変動の大きさ、基本ポートフォリオにおける組入比率の大きさ、取引コスト等を総合的に勘案し、次のとおり乖離許容幅を設定する。
(%)
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
乖離許容幅 ±8 ±6 ±5 ±5
資産の変動幅 59〜67〜75 5〜11〜17 3〜8〜13 4〜9〜14
  2  乖離許容幅
 各資産クラス固有の収益率の変動の大きさ、基本ポートフォリオにおける組入比率の大きさ、取引コスト等を総合的に勘案し、次のとおり乖離許容幅を設定する。
(%)
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
乖離許容幅 ±8 ±6 ±5 ±5
資産の変動幅 60〜68〜76 6〜12〜18 2〜7〜12 3〜8〜13
 三  基本ポートフォリオの見直し
 基本ポートフォリオは、年金財政、運用環境等、現状で考え得る将来を想定して策定したものであるが、想定した運用環境が現実から乖離していないか、また基本ポートフォリオが年金制度の円滑な運営に適合しているか等の検証を行い、必要に応じて随時見直す。
 三  基本ポートフォリオの見直し
 基本ポートフォリオは、年金財政、運用環境等、現状で考え得る将来を想定して策定したものであるが、想定した運用環境が現実から乖離していないか、また基本ポートフォリオが年金制度の円滑な運営に適合しているか等の検証を行う。
 法律の定める(1)毎年1回の検証及び(2)少なくとも5年に1回行われる財政再計算の際に必ず検討することのほか、必要に応じて随時見直す。
 四  移行期の資産構成割合
 平成17年度の移行ポートフォリオ
 平成17年度の移行ポートフォリオは次のとおりとする。
 なお、国内株式、外国債券及び外国株式の比率については、今後上昇させていくこととなっているため、乖離許容幅に上限を設けないこととする。

  (1)運用資産全体の移行ポートフォリオ
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
移行ポートフォリオ 75% 8% 5% 6% 6%
乖離許容幅 ±2% -2% -2% -2%

  (2)年金資金運用基金の移行ポートフォリオ
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
移行ポートフォリオ 52% 21% 12% 15% 0%
乖離許容幅 ±5% -5% -5% -5%
   (注) (2)表は、年金資金運用基金が管理運用する資産のうち、市場で運用するものについてのポートフォリオである。
 四  移行期の資産構成割合
 平成16年度の移行ポートフォリオ
 平成16年度の移行ポートフォリオは次のとおりとする。
 なお、国内株式、外国債券及び外国株式の比率については、今後上昇させていくこととなっているため、乖離許容幅に上限を設けないこととする。

  (1)運用資産全体の移行ポートフォリオ
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
移行ポートフォリオ 79% 7% 3% 5% 6%
乖離許容幅 ±2% -2% -2% -2%

  (2)年金資金運用基金の移行ポートフォリオ
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
移行ポートフォリオ 56% 20% 10% 14% 0%
乖離許容幅 ±5% -5% -5% -5%
   (注) (2)表は、年金資金運用基金が管理運用する資産のうち、市場で運用するものについてのポートフォリオである。



(別紙2)

 今般、平成16年の年金財政再計算を踏まえ、基本ポートフォリオの策定を中心に基本方針の見直しを行ったが、その際、運用対象資産・運用手法、各資産に係るベンチマークの在り方、債券の満期保有運用等の関連する事項についても検討を行ったところである。
 これらの事項を含む年金積立金の運用のルールについては、平成18年4月の年金積立金管理運用独立行政法人の設立に伴い、新たな仕組み・体制の下で、今後、検討が進められることになるものであるが、検討に際しては、次の点に留意することが必要と考える。

1.巨額の年金資金の運用については、長期の視点に立ち、市場影響に留意するとともに、投資理論を背景に分散投資を基本とし、安全かつ確実を旨として、運用ルールづくりを行うことが必要である。   なお、運用の内容や結果については、適切に情報を開示し、国民の理解を得るよう努めることが必要である。

2.市場影響の緩和や安定的な運用収益の確保、また、不必要な売買コストの回避等、債券運用をより適切にする観点からは、債券の満期保有運用を導入することが考えられる。
 導入に当たっては、低金利局面における満期保有の妥当性、満期保有ファンドの構築方法、管理・評価の在り方等に関して検討を行うことが必要である。

3.最近の金融・運用技術の進展等を踏まえて、新しい運用資産・手法であるオルタナティブ投資が注目されているが、オルタナティブ投資には、分散投資効果を高め、運用の効率性を改善する効果がある一方で、流動性やリスク管理、評価の問題等の課題も残されている。
 また、ベンチマークについても、それぞれに内在する問題とともに、運用目的に合致し、運用機関の運用能力を十全に発揮させることができるように、ベンチマークの在り方を考えていくことが課題である。
 これらの事項については、年金資金の特性に留意しつつ、慎重に検討を進めることが必要である。

4.年金資金で保有する株式については、企業のガバナンス改革及び経営改革を通じて価値を高めていくことも重要である。このような観点から、民間企業の経営に直接的に影響を与えることがないよう留意しつつ、長期的に株主価値を高めることができるよう、コーポレートガバナンス(企業統治)への関与の在り方を検討することが必要である。

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