第9回
資料2

論点ごとのこれまでの議論の整理

〔総論部に対応〕


1 最低賃金制度の意義・役割
 (1) 最低賃金法の目的
 現行の最低賃金法は第1条において目的を規定しているが、そこでは、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」とされている。 これによれば、最低賃金法の第一義的な目的は、低賃金労働者に賃金の最低額を保障し、その労働条件の改善を図ることであり、第二義的な目的として労働者の生活の安定、労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保を掲げ、究極的には国民経済の健全な発展に寄与しようとするものであるとされている。

 (2)  最低賃金制度に関する経済的理論
 最低賃金制度は、労働需要曲線と労働供給曲線がともに右下がりであり、労働供給曲線の傾きが労働需要曲線の傾きより緩やかな労働市場において生じるおそれがある賃金の際限のない下落を防止する下支え効果を果たすものである。
 また、需要独占的な労働市場においては、買い手企業における買い叩きを防止し、適正な賃金及び雇用を達成し、厚生損失を減少させるという効果も有している。

 (3) ILOのスタールの整理
 最低賃金制度の意義・役割について講学的に整理したものとして、ILO事務局のジェラルド・スタールによる整理があるが、それによれば、おおむね以下のとおりである。なお、このうちア、イは産業別(職業別)最低賃金にかかわるものであり、ウ、エは一般的最低賃金にかかわるものである。
 弱い立場にある集団の保護
 その労働者集団の特殊な性格のために労働市場において特に弱い立場にあるもの(一般的には有効な団体交渉の欠如と低賃金の双方によって特徴づけられる)を保護することを目的とするものであり、ILO第26号条約はこの考え方に近い。
 いわゆる苦汗労働の排除を目的とするものであるが、団体交渉類似の手続により最低賃金を決定することにより、団体交渉の自発的発展を奨励するという目的も併せ持っているとされる。
 公正な賃金の決定
 個々の産業や職業の最低賃金を決定するが、その適用範囲は、アと異なり少数で未組織の労働者に限定される必要はなく、比較的高い賃金の労働者を含むすべての労働者にまで及ぶ可能性がある。
 また、労働者の賃金の不当な切下げによって競争することを防ぐという公正競争の確保という役割や、労使紛争を減少させ安定した団体交渉関係の発展を促進させることも目的とするものである。
 賃金構造の底辺の設定
 あらゆる産業に従事する労働者を容認しがたいと考えられる低賃金から守るために一般的に適用できるような最低限度を定めるものであり、ILO第131号条約はこの考え方に立つ。
 マクロ経済政策の手段としての最低賃金
 賃金の一般的な水準と構造を国家の経済的安定、成長、所得分配といった目的と調和のとれたものに変えるという役割である。特に開発途上国において重要な役割として考えられてきた。

 (4) まとめ
 以上から最低賃金制度の意義・役割を整理すると、苦汗労働の防止は最低賃金制度の初期の考え方であり、また、マクロ経済政策としての手段は主に開発途上国において用いられるものである。我が国における最低賃金制度に求められる第一義的な役割は、すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティーネット)としての「一般的最低賃金」((3)のウ)としての役割であり、最低賃金制度に公正な賃金の決定((3)のイ)の役割を担わせるとしてもそれはあくまで第二義的、副次的なものであると考えられる。

2 意義・役割に照らした現行の最低賃金制度の問題点
 (1) 産業別最低賃金
 最低賃金法制定当初は業者間協定方式を中心に産業別に最低賃金を設定し、できる限り適用労働者数の拡大を図っていったが、当時の最低賃金は苦汗労働の防止、公正な賃金の決定及び賃金構造の底辺の設定という役割を併せ持ったものであったと考えられる。
 その後昭和43年の最低賃金法改正により、業者間協定方式が廃止され、産業別、職業別又は地域別に設定することによりすべての労働者への適用を図ることとされたことから、ここでは産業別最低賃金も一般的最低賃金としての役割が最も重視されることとなった。
 さらに、年次推進計画により地域別最低賃金の推進が図られ、昭和51年に全都道府県に地域別最低賃金が設定されたことから、産業別最低賃金は、その後は公正な賃金の決定(公正競争の確保)の役割を果たすものを目指すこととし、小くくりの産業において基幹的労働者を対象とするものとして設定することとされた。
 しかしながら、現状をみると、基幹的労働者は大部分が年齢や軽易な業務などを除外するといったネガティブリスト方式によって定義されており、実態としては、当該産業の「基幹的労働者」とは言い難いパートタイム労働者までをも対象とするものになるとともに、その水準は地域別最低賃金をわずかに(14%程度)上回っているにすぎず、比較的賃金水準の高い労働者の賃金の不当な切下げによる競争を防止するという機能を果たしているとはいえず、その役割も地域別最低賃金と重複している面が多くなっていると考えられる。

 また、産業別最低賃金は、そもそも労使のイニシアティブによって設定するものとされているが、現行方式による国の関与は、労使の自主的な取組みを基本とするものであると言い切れるのかという問題もある。

 (2) 労働協約の拡張適用による最低賃金
 労働協約の拡張適用による最低賃金も、その役割は公正な賃金の決定と考えられるが、我が国の労使関係の実情からみて活用が困難な状況にあり、また、産業別最低賃金の労働協約ケースと役割的には重複している。

 (3) 地域別最低賃金
 地域別最低賃金については、最低賃金法第3条の決定基準(労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力)に基づき、昭和53年からは全国的整合性を確保する観点から導入された目安を参考として改定が行われてきたが、一般的賃金水準と比較した最低賃金の比率や低賃金労働者の賃金水準と比較した最低賃金の比率については、地域的にみて不均衡がみられるなど、一般的最低賃金として適切に機能しているかという観点からの問題があると考えられる。

 最低賃金を取り巻く環境変化
 現在の最低賃金制度については、最低賃金制度の意義・役割に照らして前記のような問題があるとともに、最低賃金制度を取り巻く経済社会の変化の中で、さらに以下のような問題が生じていると考えられる。

 (1) 産業構造の変化
 産業構造が変化する中で、サービス経済化が進展しており、また、企業活動においても、研究開発、マーケティングなどの非生産部門のウエイトが高まり、直接生産部門のウエイトが低下している。さらに、国の内外を問わず企業間での競争が激化する中で、業種転換や業種転換にまでは至らないものの新規事業への重点の移動などが頻繁に行われ、産業のボーダレス化が進展している。

 このような状況の中で、小くくりの産業についてしかも地域別に設定することになっている現在の産業別最低賃金では、本来対象とすべき労働者層のウェイトが減少の一途をたどったり、あるいは本来対象とすべき労働者が対象外となったりすることとなり、公正競争の確保という面においても、また、公正な賃金の決定という面においても、その存在意義が低下せざるを得ないのではないかと考えられる。

 (2) 就業構造の変化
 パートタイム労働者、派遣労働者、請負労働者の増加等就業形態の多様化が進展し、安全網としての最低賃金制度によって賃金の下支えが行われるべき労働者が増加している。

 また、派遣労働者、請負労働者の増加の中で、小くくりの産業における基幹的労働者を対象としている現在の産業別最低賃金では、同一産業内で同種の業務に従事している労働者であっても、就業形態が異なるというだけで適用される最低賃金が区々となるという事態が生ずるなど、従事する職務に応じた公正な賃金の決定が困難になっている面がある。

 このような状況の中で、最低賃金制度については、産業別最低賃金のあり方の見直しを含め適切に機能していくようにすることがますます求められている。

 (3) 賃金構造、賃金制度の変化
 時間当たり賃金ごとの雇用者の分布をみると、パートタイム労働者等賃金の低い層の割合が高まるとともに、パートタイム労働者層と一般労働者層の賃金格差が拡大する傾向にある。また、年収階級別の雇用者の分布をみても、パートタイム労働者の増加等により、年収階級の高い層と低い層との両極に分散する傾向が拡大している。このような中で、最低賃金制度は、低賃金の労働者層の安全網として、その真価を発揮すべき重要な時期にある。

 また、賃金制度についてみると、仕事給(職務給、職能給、業績給)の導入が進み、賃金の構成要素のうちでも、職務、職種などの仕事の内容や業績・成果に対応する部分が拡大し、労働者の処遇を決める重要な要素となってきている。このような中で、最低賃金の決定に際して、こうした要素をどのように考慮し反映させるかということも課題になると考えられる。

 (4) 労働組合の組織率の低下
 労働組合の組織率は長期的に低下し、現在20%を割る状況となっており、賃金決定において団体交渉によってカバーされない労働者が増加している。最低賃金制度は、団体交渉によってカバーされない労働者にとっての最後の依り所(安全網)であり、とりわけ労働組合の組織率が著しく低いパートタイム労働者にとっては、最低賃金制度が賃金に係る安全網として果たすべき役割は、ますます重要となっている。




〔各論部に対応〕


1 最低賃金の体系のあり方
 (1) 地域別、産業別、職業別といった設定方式のあり方
 現行の最低賃金法第16条は、「(前略)一定の事業、職業又は地域について、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図るため必要があると認めるときは、(中略)最低賃金の決定をすることができる」と規定している。
 しかしながら、最低賃金制度の第一義的な役割は、すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網を設定すること(いわゆる「一般的最低賃金」)であると考えられる。現在すべての都道府県において地域別最低賃金が設定されているが、「国内の各地域ごとに、すべての労働者に適用される最低賃金(地域別最低賃金)を決定しなければならない」ことを法律上明確にすることが考えられる。
 また、これとの関係で、一般的最低賃金としては、地域別最低賃金のほかに多元的に産業別や職業別に最低賃金を設定することを前提としないことを明確にすることも考えられる。

 (2) 産業別(職業別)最低賃金のあり方
 産業別最低賃金は、地域別最低賃金が全都道府県に設定された後は、関係労使が労働条件の向上又は事業の公正競争の確保の観点から、小くくりの産業の基幹的労働者について、地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を必要と認めるものに限定して設定すべきこととされている。
 しかしながら、その現状をみると、基幹的労働者については、大部分が年齢や軽易な業務を除外するなどのネガティブリスト方式によって定義されており、その水準も平均でみると地域別最低賃金より14%高い程度にとどまっている。したがって、現在の産業別最低賃金は、本来の目的どおりに必ずしも機能しておらず、むしろ産業別最低賃金が設定されている産業のパートタイム労働者を始めとする低賃金労働者の賃金の下支えとして機能し、一般的最低賃金として地域別最低賃金と重複した役割を果たしてしまっている面があるのではないかと考えられる。
 さらに、産業がボーダレス化し、事業転換等も頻繁にみられること、派遣労働者や請負労働者の増加等就業形態が多様化していることなどによって、現在の産業別最低賃金が公正な賃金決定や公正競争の確保の観点からも十分に機能しなくなってきている面があるとも考えられる。
 これらのことから、現行の産業別最低賃金については、一定の見直しを行う必要があると考えられる。

 この点について、
 最低賃金の第一義的な役割である賃金の低廉な労働者に対する一般的最低賃金については、地域別最低賃金があれば十分ではないか、
 産業別最低賃金の役割とされている労使自治や団体交渉の補完、促進については、本来労使が自主的に取り組むべきものであり、そこに国が最低賃金制度として関与する必要はないのではないか、
 なぜ特定の産業についてのみ高い最低賃金を設定する必要があるのかが分かりにくく、産業別最低賃金の設定されていない産業についても保護されるべき労働者がいるのではないか、
といった観点から、産業別最低賃金は廃止すべきであるとの意見があった。

 これに対して、公正競争ケースについては、より高いレベルの公正競争の確保を目的として賃金格差に着目して設定することとされているものの、その必要性は分かりにくく廃止せざるを得ないが、労働協約ケースについては、賃金の最低額に関する定めが労働協約として具体化されている中で、これを尊重して最低賃金を定めるものであり、労使交渉、労使自治の補完、促進という積極的意義もあるので、労働協約ケースをより有効に機能するようにしつつ、独立させて最低賃金法に明確に位置付けるべきであるとの意見もあった。

 また、労働協約ケースによる労使の自主的な取組みを基本とする産業別最低賃金について、産業構造の変化や就業形態の多様化、職務に応じた処遇がより重要となっていること等を踏まえ、公正な賃金の決定という役割を担うものとして、大くくりの産業について基幹的労働者の定義をもう少し整備して職種に応じた最低賃金を目指すべきであるとの意見があった。なお、この場合、最低賃金法第1条の目的との関係を整理する必要があるとの意見もあった。

 なお、産業別最低賃金を廃止又は見直す場合でも、現に存在しているものについては賃金決定に一定の影響力を有していると考えられることから、直ちに廃止することは困難であり、一定期間は経過的な措置が必要であるとの意見があった。

 (3) 審議会方式と労働協約拡張方式、国の関与のあり方
 (産業別(職業別)最低賃金を存続する場合、)労働協約の拡張適用という労働組合法の制度ではなく、労働協約の中の最低賃金だけを取り出すという最低賃金法の制度だとすれば、労使交渉、労使自治の補完、促進という趣旨からしても、審議会の意見を聴いて行政機関が決定するシステムを採らざるを得ないのではないかとの意見があった。

 最低賃金法第11条の労働協約の拡張適用による最低賃金は、労働協約が労働者及び使用者の大部分(おおむね3分の2以上)に適用されることが要件であるが、我が国の労使関係の実情からみて活用が困難な面があり、現在2件(適用労働者数約500人)が存在するのみである。この点について、現行の産業別最低賃金の労働協約ケースを労働協約を基本とする最低賃金の決定方式として法律上位置付けるとすれば、最低賃金法第11条の労働協約を拡張適用する最低賃金とは役割が重複することとなることから、廃止してもよいのではないかとの意見があった。

2 安全網としての最低賃金のあり方
 (1) 決定基準のあり方
 地域別最低賃金については、これまで、最低賃金法第3条の「労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力」のうち、目安制度によって類似の労働者の賃金の引上げ率を重視した改定審議が行われてきたが、地域別最低賃金がセーフティネットとしての一般的最低賃金として適切に機能するよう、様々な要素を今まで以上に総合的に勘案することが必要であると考えられる。

 「類似の労働者の賃金」については、地域別最低賃金について、これまで賃金改定状況調査による小規模企業の賃金改定率を重視してきたが、最低賃金のセーフティネットとしての機能を重視するとともに、賃金格差の是正という機能も考慮するならば、低賃金労働者の賃金水準のみでなく一般労働者の賃金水準も重視することが考えられるとの意見があった。

 「支払能力」については、最低賃金法第3条は「通常の事業の賃金支払能力」と規定しており、これは個々の企業の支払能力のことではなく、雇用に影響を与えない、生産性を考慮したといったマクロ的な意味での通常の事業に期待することのできる賃金の負担能力のことであると考えられる。なお、この点に関して、ILO第131号条約第3条には、考慮すべき要素として、「経済的要素(経済開発上の要請、生産性の水準並びに高水準の雇用を達成し及び維持することの望ましさを含む。)」と規定されており、また、「支払能力」という表現が誤解を招きやすい面があることから、決定基準の経済的要素として、生産性の水準や雇用の確保等といった趣旨が含まれることを明確化することが考えられるのではないかとの意見があった。

 (2) 水準及びその考慮要素のあり方
 地域別最低賃金の水準については、一般的最低賃金という性格にかんがみ、セーフティネットとして適切な機能を果たすにふさわしい水準とすることが必要であると考えられる。

 地域別最低賃金については、最低賃金法第3条の決定基準(「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」)を基本としつつも、目安制度により、類似の労働者の賃金の引上げ率を重視して全国的な整合性を図りつつその引上げが行われてきたが、そもそも絶対的水準についての議論がされてこなかったのではないか、したがって、セーフティネット本来の役割を考え、適切に機能するようにするために、絶対的水準についても議論すべきではないかとの意見があった。また、賃金分布や雇用への影響など様々な考慮要素をこれまで以上に勘案して改定審議を行うべきとの意見があった。

 これに対して、最低賃金は生活保護のように絶対額を決めるものではなく、賃金は団体交渉で引上げを決めるものであるから、従来の目安制度による引上げという手法の枠内でも一定の改善は可能ではないかとの意見もあった。

 いずれにしても、地域別最低賃金のあるべき絶対的水準を具体的にどのように定めるかを明確にすることは困難な面がある。 しかしながら、地域別最低賃金の水準と地域の一般的賃金水準や低賃金労働者の賃金水準との関係については、地域的整合性を保つとともに経年的にある程度安定的に推移するようにすることが、最低賃金が適切に機能するという観点からは重要ではないかと考えられる。
 この点について、現在の地域別最低賃金の地域の一般的賃金水準や低賃金労働者の賃金水準に対する比率等をみると、地域的にみて不均衡な面があり、一定の見直しを検討する必要があると考えられる。
〔地域的不均衡の例〕
 ・一般労働者の平均所定内給与に対する最低賃金の比率(東京31.4% 青森45.3% 全国平均36.5% 「平成15年賃金構造基本統計調査」)
 ・所定内給与の第1・20分位に対する最低賃金の比率(東京87.2% 沖縄100.3% 全国平均94.6% 「平成16年最低賃金に関する基礎調査」)

 最低賃金と生活保護との関係については、最低賃金の賃金としての性格から、生活保護に直接的にリンクすることは必ずしも適当ではないが、最低生計費という観点やモラル・ハザードの観点、さらには生活保護において自立支援がより重視される方向にあることから、単身者について、少なくとも実質的にみて生活保護の水準を下回らないようにすることを検討する必要があると考えられる。
 なお、生活保護との比較については、最低賃金の設定単位、住宅扶助、課税等の関係などを含め技術的検討が必要であるとの意見があった。

 (3) 減額措置及び適用除外のあり方
 諸外国では、生産性や雇用への影響等を踏まえ、若年者や訓練中の者を対象に最低賃金について一定の減額措置を採っている国が少なくないことも踏まえ、地域別最低賃金について、一定の年齢区分の者等を対象に減額措置を採用することが考えられるとの意見があった。

 これに関して、最低賃金の水準との関連が問題であり、地域別最低賃金の水準の見直しと併せて検討するべきであるとの意見があった。

 また、減額措置を採用する場合、対象者等についてさらに検討することが必要であるとの意見があった。

 (4) 履行確保のあり方
 最低賃金法第5条第1項違反の罰則(2万円)については、昭和34年の最低賃金法制定時以来1万円とされている(平成3年4月の罰金等臨時措置法の改正により2万円とされている)が、最低賃金のセーフティネットとしての実効性確保等の観点から、地域別最低賃金に係る最低賃金法第5条第1項違反の罰則については、引き上げる必要があると考えられる。

 また、これと併せて、(産業別(職業別)最低賃金を存続する場合、)産業別(職業別)最低賃金に係る罰則のあり方についても、民事効化を含め検討する必要があると考えられる。

3 その他
 (1) 最低賃金の設定単位のあり方
 現在、基本的に都道府県単位で最低賃金が設定されているが、労働市場の状況や近隣の都道府県の最低賃金額に大きな差がない地域もあることなどを踏まえると、地域別最低賃金(産業別(職業別)最低賃金を存続する場合は、産業別(職業別)最低賃金)の設定単位については、より広い単位で設定することを検討する必要があるとの意見があった。

 (2) 就業形態の多様化に対応した最低賃金の適用のあり方
 派遣労働者に対する最低賃金の適用については、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行時から、派遣元の事業場に適用される最低賃金を適用しているが、その後、適用対象業務が原則自由化され、物の製造の業務への派遣も解禁されたところであり、例えば、派遣先が産業別最低賃金が設定されている製造業であったとしても、派遣元の事業場である労働者派遣業はサービス業に分類されることから、派遣労働者には派遣先の産業別最低賃金は適用されないといった問題が生じている。
 しかし、現に業務に従事しているのが派遣先であり、賃金の決定に際しては、どこでどういう仕事をしているかを重視すべきであると考えられることから、派遣労働者に対する最低賃金の適用については、派遣先の地域別(産業別(職業別)最低賃金を存続する場合は、産業別(職業別))最低賃金を適用する必要があるのではないかと考えられる。

 最低賃金の表示単位について

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