オーストラリア※ |
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定員は連邦政府(Commonwealth Government)によって調整されている。 |
・ |
1973年、医学部委員会がオーストラリアの大学委員会に提出したレポートによって医師数増員と2つの医学部新設が勧められ、1991年までに年間1,560人の医学部卒業生を輩出するようになった。 |
・ |
1988年の医学教育に関する委員会は、都市部のGeneral Practitioner(GP)の過剰を指摘 |
・ |
1996年医療従事者の供給を調整するために医学部の上限を設定した。 |
・ |
1990年代後半から医学生数増員
(1995年には856人 → 1999年には1,334人) |
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オーストリア※※ |
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ベルギー※※※ |
・ |
1997年、ベルギー政府は医師登録数の減員を提案
(2004年・700人 → 2005年・650人 → 2006年・600人) |
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医師全体の60%をフラマン語、40%をフランス語を話す医師と制限した。 |
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カナダ※ |
・ |
1964年、Hospital insurance の導入に伴い、医師部定員を増員させ、4つの医学部を新設した。 |
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1985年に医学部卒業生のピークを迎えた(1,835人) |
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1984年の医師人材調査(1980−2000)とそれに続く1991年のBarerと Stoddartの調査により、医師過剰を防ぐための医学部入学減員が進められた。 |
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1999年には医学部卒業生数は1,516人にまで減少 |
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1999年のTask Force on Physician Supplyにより年間2,000人の医学部卒業生を輩出する増員方向に変更 |
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フランス※ |
・ |
1980年、医師過剰を防ぐため医学部入学者数を減員 |
・ |
1993年には医学部卒業者数が3,500人まで減少 |
・ |
2010−2015年に予測されている医師不足を解消するため、2001年には4,100人、2002人には5,100人の学生を受け入れた。 |
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ギリシャ |
・ |
文部省が医学部定員を決定(定員は需要と供給との兼ね合いというより各年の医学部の予算によって決定されてきた) |
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現在、医学部入学者数は一定になっている。 |
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アイルランド※※※ |
・ |
The Higher Education Authorityが予算配分のプロセスを通じて入学可能な定員を決定する。 |
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日本※※※ |
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1961年の以降の国民皆保険化に伴い、医師需要が高まっていった。 |
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1970年以降新しい医学部が設立され、医学部入学定員は1970年の4,380人から1982年の8,360人にまで増加した。 |
・ |
1986年、厚生省は2025年に10%の医師過剰を見込み、1995年までに10%の入学定員削減を目指した。 |
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1993年、医学部入学者数は7%減少 |
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1998年、厚生省は新たに2020年の医師過剰を見込み、10%の医学部入学定員削減を決定 |
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韓国※※ |
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メキシコ※※※ |
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1967年以来、医学部入学定員は増加し続け、中産階級からの需要によって新しい医学部も設立された。 |
・ |
1980年には医学部入学者が93,365人のピークを迎えたが、経済危機も加わって、医学部卒業者の失業者が現れた。 |
・ |
1980年以降は医学部入学定員も削減され、医学部新設も中止されている。 |
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オランダ※※ |
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ニュージーランド※※※ |
・ |
医学部入学の上限は285名と国で定められている。 |
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ノルウェー※※※ |
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医学部入学定員は594名と国で定められている。 |
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スペイン※※※ |
・ |
医学部入学定員は保健省、教育省、そしてNational Conference of University Chairmenによって定められている。 |
・ |
1978年に入学定員制限が提言され、1987年に大学評議会との合意を得た。 |
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スウェーデン※※※ |
・ |
医学部定員は中央政府によって決められている。 |
・ |
1960年以降、ヘルスケアシステムの急激な拡大に合わせるため、医学部定員が増員され、医学部も新設された。 |
・ |
医学生の数は1960年の431人から1973年には1,026人にまで増加した。 |
・ |
1980年代前半、医師過剰への対応と医療費抑制を目的に医学部定員を削減した。1984年には845人になった。 |
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スイス※※ |
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イギリス※ |
・ |
1966年、Royal Commission for Medical Educationが医学部定員増員と医学部新設を提案し、医学部定員は4,230人になった。 |
・ |
Todd Committee、Advisory Committee for Medical Manpower Planning、 Medical Workforce Standing Advisory Committeeも人口増加と医療サービスの需要に見合う医師数の増加を提案した。 |
・ |
1998年には医学部学生は5,091人となり、1999年には5,600人となった。 |
・ |
The NHS Plan 2000では今後1,000人の医学生増加を目標にしている。 |
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アメリカ ※※※ |
・ |
連邦政府は医学部定員の制限を強いてはいない。 |
・ |
Health Professions Education Assistance Act of 1963により、連邦政府は医学教育調査を行っている。 |
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※最近増員に変更した。
1. |
多様な医師数レベル
適切な量と質のヘルスケアを効果的な手段で供与するには、医師サービスの需要を満たし、適合されることが求められる。このような適合により、OECD諸国における10万人当たりの医師数レベルは多様である。罹患率や死亡率の多様性ゆえにGDPに占める医療費や医療システムのデザインによっても変わってくる。一般に、医師数密度が高い国は医師供給を市場に任せている国であり、医師数密度が低い国は医学部への入学を限っている国である。 |
2. |
医師不足が基調
OECD諸国では現在医師不足が発生している。複数の国々における最近の医師数傾向予測が示唆するように、対策がたてられなければ、それらの国々での医師不足は今後20年間で悪化し、医師需要が高まって医師供給が低くなるという結果に陥るであろう。立てうる対策とは、徐々に減りゆく若手コホートから、より多くの者を医師として雇用し、つまりは医師への給与やサービスの条件を高めることも含められる。 |
3. |
国の役割
国は教育・研修、移民、継続や退職といった、医師供給に影響を及ぼす多様な政治的手段を行使しなくてはならない。 |
4. |
医学部定員増の傾向
幾つかの国々では現在医学部入学数を増やしたり、それについて検討されたりしている。 |
5. |
頭脳流出の問題
医師の移民は医師不足の国では不足解消を容易にする。しかし、健康指標の悪い貧しい国々から健康指標の良い豊かな国々へ医師が長期的に流出することについては、国際的公平という観点から大変問題である。 |
6. |
早期退職の解決法
多くのOECD諸国で見られる医師の早期退職に対し、幾つかの国では退職契約をより融通のあるものとしたり、業務継続を財政的に有利にし、退職を遅らせようとする試みがある。 |
7. |
地域格差の課題
ほとんどのOECD諸国で医師労働力の地理的不平等がおこっている。これに対して、教育政策、規制政策、そして財政政策を混合させて対処することで、幾つかの国では解消に成功してきた。 |
8. |
プライマリケアの問題
専門分化傾向が高まるのに反して、複数の国ではプライマリケアのキャリアの相対的魅力が上がってきている。幾つかの根拠が示すことには、プライマリケア業務を学生に経験させることや、教職にプライマリケアのモデル(Role Model)になるような人を任命することが、医学生らのプライマリケアでのキャリアに影響を及ぼすことになる。 |
9. |
支払方式と医師活動
医師によって提供されるサービスはその生産性と数による。Activity-related methods of payment(活動に基づく支払い方式)は医療費を上昇させるものの医師の活動率を上げる。また、ほとんど知られていないが、医師活動増加はケアの質に影響を及ぼす。近年興味をもたれているのは、可能であるならば、医療ケアの質に直接報いるような医師への支払いを工夫することである。 |
1. |
要旨
提供される医療システムのパフォーマンスの比較においては、医療を提供するスタッフの技術(skill)、動機(motivation)、コミット(commitment)が密接に関連していることは周知となっており、多くの政策担当者にとって、今や医療workforceの問題は興味あるところである。
ヨーロッパにおいては、これまで各国独自の医療システムを発展させてきたが、人口の高齢化などによる疾病構造の変化、IT化や医療技術の発達、消費者文化の発展の中で求められる医療の質そのものも変化しており、今後はそれに見合ったシステムの改革が必要とされている。このような変化の中では、健康アウトカムを改善するような、Quality (質), Accessibility(アクセス), Cost of health service delivery(医療サービスの費用)などに焦点をあてた医療の変革が推奨されるが、医療従事者の意識そのものも変化しており、仕事と家庭のバランスを重視、労働条件に対する要求が高くなっていることのほかに、女性医師が増加していることなど、労働力の検討においては多数の要因が関係している。
また、EUの統一・拡大で国境を越えた労働者の流れが生じ、人材が集中もしくは流出する地域(国)の格差の問題や、旧ソ連などを例とした東欧社会の医療システムの変換も考慮に入れたEU内での論議が期待されている。本報告書では、先進国(industrialized)と中所得国(middle income)間で共通した問題、また各国の実情に沿った特異的な課題について言及されている。 |
2. |
人材
医療労働力においてその生産、開発、管理とマネジメントは一連の機能であり、これを調査することにより医療システムの目標を達成することが可能である。 |
3. |
政策共有の重要性
社会の発展は、医療システムの発展とも密接に関連しており、EU内で政策を共有することは重要である。状況の違う立場においては、政策の転換を考慮することも必要である。 |
4. |
移動
医療従事者の移動(migration)については、政治的な課題でもあるが、可能な政策介入についてBuchanらは組織レベル(Organisational)、国レベル、国際レベルで下記のようなの取り組みを挙げている。
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組織レベル: |
”Twinning”=人材交換を支援するネットワーク作り、人材交換、教育支援、雇用−被雇用者の双方協定 |
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国レベル: |
政府間の協定、倫理憲章、補完(compensation)、移民(migration)の調整技術協力(トレーニングのインフラも含め) |
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国際レベル: |
国際憲章(例:Commonwealth code)、多国間協定 |
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5. |
専門職種間での従事領域の変化
医師と看護士など、医療の内容における境界が以前より曖昧になってきている。Skill mixは行われる国や地域、人材の資質によっても左右されるため配慮が必要である。また、女性医師の増加など、社会におけるgender relationshipを考慮に入れた検討が必要である。 |
6. |
専門教育の構造と傾向
求められる医療の質も変化し、優れたコミュニケーション能力が必要とされる。また、科学的根拠に基づいた医療では、臨床診断における有効なツールの活用、知識習得のための新しいスキルの獲得能力が必要であり、現場においてはチーム医療が重要である。 |
7. |
医療従事者のパフォーマンスマネジメント
可能な限り良質のアウトカムを得るのに最も適した方法を知ることが重要であり、パフォーマンスをモニターし、組織や仕事の分類、医療の標準化、給与方法、情報の回覧などを評価する。 |
8. |
ヘルスケアマネージャーの重要性
医師、看護士含めて医療ケア労働力の鍵となる存在であり、ヨーロッパの医療変革において重要な役割を果たしている。 |
9. |
医療におけるインセンティブ
経済的なものだけでなく、医療目標や労働条件、文化なども重要な要因となる。 |
10. |
労働条件
バーンアウト症候群のように医療従事者の労働意欲を低下させる要因として、仕事内容の複雑化などが挙げられる。 |
国名 |
現在の医師数
2002年*(対10万) |
医師需給地域差(対10万) |
問題点・僻地対策など |
ギリシア |
450 |
最多 |
Attica(Athens)570 |
最低 |
Central Greece160 |
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1968年の法律で医学部卒業生は卒後最低1年の地方Health Center/Clinicでの勤務が課された。現在は法改正が行われ、将来一般医(General Practice)希望の者のみ。 |
スイス |
360 |
最多 |
Basle 291人に1医師 |
最低 |
Appenzell 1115人に1医師 |
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1990年代に医師志望者が急増。1998年に4大学が厳重な入学試験を課した。現在、7大学がこの入学試験を課しており、定員は全体で923人である。 |
フランス |
330.3
(全職種) |
最多 |
Illd-de-France425 |
最低 |
Picardy241 |
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1970年代後半にはじめられたNumerus Clausus
(医学生の2年次進学者を制限するプログラム)で、医師数の地域差拡大を解消するように人数制限が計画されている。 |
ドイツ |
330
369(2003) |
最多 |
Hamburg |
最低 |
Brandenburg |
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1993年のSocial Code Bookにより平均の110%以上が医師過剰と定義された。1990年に国内を10グループに分けた地域で勤務する医師を当時の人口で割った値をニーズとし、医師過剰はその110%を超えた場合と定義されている |
オランダ |
310 |
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Numerus fixus(医学部入学者を制限)が導入されている。 |
スペイン |
290 |
最多 |
Navarra230 |
(公的機関 |
最低 |
Catalonia130 |
のみ) |
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1980年代初頭まで20,000人であった医学部入学者は、1987年のUniversity Councilとの合意により、10,000人以下に減少した |
スウェーデン |
300(2000) |
医師数最多 450
医師数最低 217 平均321 |
|
問題は医師の高齢化による退職。現在は年間800人の国内医大卒の医師と2-300人の外国医大卒の医師が働きはじめるが、その一方で年間400人の医師が退職している。 |
ノルウェー |
300(2001) |
人口2000人以下の町:160
人口5万人以上の町:70 |
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大きな格差の存在 |
国名 |
現在の医師数 |
医師需給地域差(対10万) |
問題点・僻地対策など |
オーストラリア |
250(2001) |
|
・問題は医師不足ではなく、分布の偏在が原因。
・へき地出身の学生、またはへき地の実習をうけた学生がへき地医療を選択する可能性が高いので、へき地から学生を選択し、へき地に訓練施設を作る政策。
・へき地医療に関心のある学生の特別報奨金とその学生を入学させる医大に対する助成金の支払い。
・へき地医療に焦点をあてたジェームズ・クック医科大学:1学年60名のうち15名以上をへき地出身者から採用予定。
・地域医療支援機関ACRRM (Australian College of Rural and Remote Medicine)を設立(1996)、へき地医療の教育・トレーニングの支援を行っている。 |
イギリス |
210(2001) |
|
・Regionや診療科によって医師不足が問題化している。NHSは医師と個人契約しているため、僻地勤務の強制力はない。
・2004年よりCommonwealth国からであってもGMC(General Medical Council)登録に試験が必要となった。
・General Practitioner Vocational Training Scheme :僻地診療に学生をexposeさせ、必要な知識と技術を教える。
・2002年4月までは、プライマリヘルスケア医の数を地域で制限、管理していた。
・Canada,Australiaと同様に僻地診療においては、最低限の給料を保証していた。(OECD report) |
アメリカ |
240(2001) |
|
・National Health Service Corpは奨学金制度を持つプログラムであり、地理的、人種的に医師の少ない地域に医師を提供するための機構である。1973年以降30年以上僻地対策を行っている。
・Department of Health and Human ServicesのBureau of HealthProfessionalsでは、医師不足地域の定義がなされ、国内のどの地域に医師が少ないのかHealth Professional Shortage Areas (HPSAs)を定めて把握し、情報提供を行っている。 |
カナダ |
210(2001) |
最多 |
Nova Scotia209 |
最低 |
Nunavut34 (北極圏内)
Northwest Territory102 |
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1999年以降、各州が医学部定員増員
2001年新しくオンタリオ州に医学部新設
2001年にはオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州に医学部サテライトキャンパスを設置し、地方やコミュニティ医学教育に力を入れている。 |
マレーシア |
65.8(1997) |
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へき地の医師不足のため、国内で医師として勤務するには、国が指定する病院・診療所で、卒後3年間勤務することが義務付けられている。 |
台湾 |
|
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郡部診療所を公費で設立、診療報酬は収入となる制度を確立。診療所医師を近隣の病院のスタッフとして採用。 |
・ |
Evans(1974) “Supplier-Induced Demand: Some Empirical Evidence and Implication,” In Perlman, M.(ed.), The Economics of Health and Medical Care, John and Wiley, pp.162-173 |
・ |
Fuchs, V. R., (1978) “The Supply of Surgeon and the Demand for Operations,” Journal of Human Resources.13 (Supplement): pp.35-56 |
・ |
Green(1978) “Physician-induced Demand for Medical Care,” Journal of Human Resources.13 (Supplement): pp.21-34 |
・ |
Reinhardt(1978) “Comment,” in Greenberg, W.(ed.) Competition in The Health Care Sector: Past, Present, and Future, Aspen System, pp.121-148 |
・ |
Auster and Oavaca(1981) “Identification of Supplier Induced Demand in the Health Care Sector,” Journal of Human Resources. 16(3): pp.327-342 |
・ |
Pauly and Satterthwaite(1981) “The Pricing of Primary Care Physicians’ Services: a Test of the Role of Consumer Information,” the Bell Journal of Economics.12(2): pp.488-506 |
・ |
Rossiter and Wilensky(1984) “Identification of Physician-Induced Demand,” Journal of Human Resources.19(2): pp231-244 |
・ |
Kenkel(1990) “Consumer Health Information and the Demand for Medical Care,” Review of Economics and Statistics.72(4): pp.587-595 |
・ |
Escarce(1992)“Explaining the Association between Surgeon Supply and Utilization,” Inquiry.29: pp.403-415 |
・ |
Dranove and Wehner(1994) “Physician-Induced Demand for Childbirth,” Journal of Health Economics. 13: pp.61-73 |
・ |
Pohlmeier and Ulrich(1995) “An Econometric Model of the Two-Part Decisionmaking Process in the Demand for Health Care,” Journal of Human Resources.30(2): pp.339-361 |