第3回 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)見直し検討会 議事録


1.日時 平成17年3月9日(水)14:00〜16:00

2.場所 経済産業省別館850会議室

3.出席者
(委員)池上千寿子、石井美智子、市川誠一、大平勝美、木原雅子、木原正博、木村哲、白井千香、前田秀雄、山本直樹、雪下國雄(以上11名、敬称略)
(厚生労働省)関山健康局疾病対策課長、荒木課長補佐、他

4.議題
(1)前回議事確認
(2)エイズ予防指針の見直しについて
−1 正しい知識の普及啓発
−2 検査・相談体制
−3 医療の提供

5.内容

(照会先) 健康局疾病対策課
電話:03−5253−1111(内線2354)

− 以下、別添ファイル参照



第3回 エイズ予防指針見直し検討会 議事録

  発言者 発言要旨
  事務局(補佐)
開会
出欠確認
  石井委員
(今回が初出席なので)挨拶
  座長
本日の予定
  事務局(補佐)
資料確認
  座長
四段表の対応策の☆が、前回の議論を事務局がまとめたもの。資料9の議事録とあわせて、補足などがあればご意見をいただきたい。
事務局から前回議論についての追加資料について説明を。
  事務局(補佐)
資料説明(資料2−(7)、資料2−(8)、参考11)
  座長
参考11(雪下委員提出資料)について、は雪下委員から補足があればどうぞ。
  雪下委員
学校内での性教育の場は「学校保健委員会」と「健康相談」等が制度として確保されており、性教育の基礎は学校保健内で対応すべきである。
また平成9年の「保健体育審議会答申」では、学校の実態を踏まえ、教職員の研修に積極的に取り組むこと、薬物乱用や性の逸脱行動に関する指導のため精神科医・産婦人科医等の学校医の増員の必要性等について明記されているが、なかなか実施されていない。
現在、日本医師会や文部科学省でモデル事業を実施しているところであり、こうしたモデル事業を通じて、山積する「こころの問題」「性の問題」への対策を学校医の中に地域の各専門医を配置し推進していく体制を構築中。
こころの問題、性の問題等に適切に対応していくためには、家庭や地域と学校が連携し、子供の心身を安定させてあげることが必要。
  座長
家庭、地域、学校との連携の他にも、文部科学省との連携についても、指針の中に盛り込んでいく。
  木原雅委員
保護者と教育機関との連携の際、行政機関内の問題もある。たとえば、教育委員会内のPTAの窓口となる課(社会教育課)とエイズ教育を担当する課(学校教育課)は異なり、社会教育課では、日本のエイズ流行の現状や予防教育の緊急性については十分に把握されていない状況。そのため、PTAが予防教育に対する要望を出しても、地域の教育全体に反映されにくい。行政機関内の横の連携も必要。文部科学省との連携の際にも考慮すべき点ではないか。
  大平委員
今の話は文科省の対応の問題でもある。
今の学校保健教育では、「自分の体を大切にする」ということについての教育が不足している。こうした心の豊かさを育てる教育は必要だが、実際には、性教育についての地域差などがあり、充分に実施されていない。
今回の指針には、こうした点についても盛り込んでほしい。
特に文科省にはしっかり取り組んでほしい。
  白井委員
指針に書くのはよいが、文部科学省と学校にきちんと届く形で書く必要がある。
  座長
今の指針もよくできているが、なかなか実行できていない。その辺を指針に盛り込めればよろしいのではないか。
  木原正委員
青少年の薬物濫用が急増している。薬物と性行動は関係が深いのでエイズ問題と連携して取り組んでいくことが必要。
  池上委員
文科省との話し合いの場を設定するのは重要であり、その際には、行政関係者だけでなく、エイズ対策のNGO、当事者等も参加してはどうか。
  座長
時間の都合もあり「議題2 検査」に移る。
  市川委員
資料2−(7)に、保健所等における陽性件数があるが、この数字は正しいデータか。
  白井委員
保健所では、確認検査により届出基準に合えば、陽性者を報告している。
  市川委員
全国の保健所は、動向委員会に報告しているのか。
  前田委員
検診で陽性が判明した感染者は、すぐに医療機関に行かない人もいるので、保健所から報告すべき(都は実施)。ただし、国からはそのような通知(保健所でHIV陽性を確認したら保健所から報告をあげること)は出ていない。保健所では報告しているところとしていないところがあるのではないか。南新宿検査室・都保健所では、医療機関への紹介状に報告済みである旨記載して重複を避けている。
  座長
ACCでは、重複は避けている(前医から報告しているものについては、ACCからは報告していない。)。
  市川委員
資料2−(7)の数字(HIV新規報告に占める保健所等での陽性件数の割合)は本当の数字か。本当なら保健所検査が機能している結果だ。
  座長
陽性者については、本人のためにも、少しでも早く治療の場へ繋げてあげる必要がある。
  大平委員
検査目的の献血が増加している。
2次感染の危険があるので、献血は遠慮してもらわなければならないが、献血会場でどの程度担当職員が対応できているのか。
検査目的の献血について、禁止している意義等について、指針に取り入れてほしい。
やはり検査は保健所で行うべきで、そのためにも、保健所で検査を受けやすい体制を作ることが重要。
  市川委員
どうやって検査目的の献血を防ぐか、なぜ検査目的で献血に行くのか。一つの理由としては、やはり保健所で迅速検査を実施していないからというのもある。
今後、放っておくと、検査目的の献血件数がますます増加していくことが予想されるので、保健所はこれまで以上に、利便性の高い検査を提供していく必要がある。
  座長
夜間検査など、利便性の高い検査について積極的に取り組んでくれているところもある。
  市川委員
日本で、感染が広がっており、献血と、保健所の検査と、それぞれが連携して対応していく体制を考えていかなければならない。
  木原正委員
献血のHIV陽性率の上昇は国際的にみて異常でこのまま続くと、輸血感染事故が多発する恐れがある。
献血への偏りを防ぐためには、献血の場面での努力も必要だが、HIV検査を受けやすい体制の社会的整備が必要。保健所だけに頼るのは早晩物理的に限界が来るので、一般医療機関で受けやすい検査体制の整備が必要。
  大平委員
日赤はきちんと仕事をしているが、感染予防の点においては国が方針を出すものである。国に協力しているという形で公的な立場を取っている。
輸血医療の安全性の確保についても、指針で導き出せないといけない。そういう指針であるべき。
  石井委員
しかし、逆の発想で献血の場と保健所のHIV抗体検査をうまく利用できないのであろうか。
  雪下委員
保健所では、予算上の問題で、体制整備ができていないところもあるのではないか。
  白井委員
自治体アンケートを行ったが、安全性のある血液確保の点では、日赤と連携できていると答えたところもあるが(9自治体)、全体としては日赤とはうまく連携できていない。
日赤は責任者レベルでは連携したいと言っているが、イベント時の啓発などの協力くらいで、現場では献血時にHIV検査希望者を保健所へ勧めることは消極的である。
  座長
医療の提供に移らせていただく。
  事務局(補佐)
資料説明(資料3−(1)、資料3−(2))
  座長
拠点病院間には実際にバラツキがあり、均一な医療提供は難しい状況。
都道府県ごとに中心となるような病院を作り、新たな体制を整備する必要があるのではないか。
各都道府県には一つくらいの核となる病院(中核拠点病院)を新設する必要があるのではないか。
  前田委員
東京都ではACCと駒込病院を含めた4病院で都全体の2/3の患者・感染者をかかえている。残りの39のエイズ治療拠点病院で1/3を分け合っているような状況。
拠点病院間では「エイズ拠点病院連携協議会」を開いて、病院間の診療連携による受診の平均化を図っているが、実際は患者自身が実績のある有名な病院に行きたがるため、難しい。
現在、拠点病院にはHIV診療に対するインセンティブがない。より積極的な診療を求めるには、何らかのインセンティブが必要ではないか。
実績に応じた補助金の配分なども案として考えられる。現在の設備整備の補助金は、診療実績のないところからHIV診療と関連の薄い理由で申請があったりしている。
  座長
確かにインセンティブがあれば育っていく病院もあるのではないか。
  前田委員
そもそも、拠点病院は現在の370カ所も必要なのかどうかの検証も必要。
拠点病院制度開始当時は、予後不良なエイズ患者のための病床を整備することが目的であったが、HAARTにより治療環境が改善された現在はむしろ外来(HIV感染者)が中心となっており、外来診療体制の整備にシフトしていく必要がある。拠点病院と協力診療所の病診連携システムを検討すべき。
  座長
東京都医師会に研究班でアンケートをしたところ、開業医のうち27%のドクターから、診療可能、あるいは整備等の条件が整えば可能、との回答があった。
  大平委員
拠点病院の選定に関しては、当時診療拒否などがあって、何とか受け入れてもらえるところを選んでもらった、という背景がある。
現在は、安心して転院もできない状況。患者が安心できる医療体制が必要。
医療体制の整備には、インセンティブを付与する方策がないと、なかなか難しい。
たとえば、HIV専門医のように、資格として認定する、というような制度があれば、人(医療従事者)も育っていくのではないか。病院の経営上のメリットも打ち出せる。
また、病院をきちんとフォローのできる、核となる病院を確保することは必要。
  白井委員
近畿のブロック拠点病院(大阪医療センター)では、外来はすでにパンクする見通しもあり、兵庫県下で診療経験のある拠点病院でも他科との連携が充分とはいえない。
集中化を避けるためには、拠点病院間で専門家の人事交流や異動がないと患者は分散できないと思う。
また、拠点病院といっても、MSWがいないところがほとんど(特に国立病院機構)。MSWやカウンセラーなどがいないと、患者が安心できる拠点病院とはいえない。
中核拠点病院構想は現在の拠点病院の集中化を容認し、選ばれなかった病院が、HIV診療にさらに消極的にならないか、といった点は大丈夫か。
  池上委員
自分のところ(NPO)の事業でも、個別相談が急増しており、カウンセラーの確保が必要。
また、新たな感染者のための会合も実施しているが(希望者を対象に4回連続で実施)、すでに100名以上が参加しており、スタッフの確保なども大変な状況。
インセンティブだけでは、こうした人的な問題は解決しないので、そのあたりの検討も必要。
  大平委員
HIV診療はそもそもお金・手間がかかるものであり、HIV医療体制の充実にあたっては、スタッフの充実が不可欠。国も、そのあたりについて充分認識した上で、スタッフの配置等について再検証してほしい。
HIV診療は、そもそも「3分診療」というものであるはずがなく、ACCでは1人20〜30分診てもらっているし、コーディネータナースが服薬支援をしてくれている。
感染者の将来予想を踏まえると、どのような医療体制が必要なのか、どういった施設が必要なのか。ある程度の予測をたてて、5年、10年先も考えて拠点病院の見直しを考えることが必要。後追い型ではなく先行投資型のような形で考えていく必要がある。
  座長
これまでの議論は、患者に対するケアがどうあるべきか、また、病院に対するインセンティブについて、が主なところ。
中核拠点病院について、患者・感染者数が多い東京・名古屋・大阪など、地域によっては都道府県に1つでは充分ではないかもしれない。各都道府県の実情に応じて適切な配置を検討する必要がある。
現状では、医療体制の整備について、都道府県の取組ではっきりとしたものは見られておらず、また、予算も削られている。都道府県の取組について、例えば数値目標が出せるのであれば、それを内部(あるいは外部)にみてもらい、検証し、改善する、といった方策もとれるかもしれない。
  前田委員
医療体制の整備については、自治体独自に整備目標を作れと言われても難しい。国から全体のスキームを示して欲しい。
東京都では、HIV感染者の歯科診療では、拠点病院と歯科医師連携事業を実施し、50カ所程度の歯科診療所に協力してもらっている。ただし補助も何もなく、ボランティアで協力してもらっている。このように、協力的な歯科診療所に対しても何らかのインセンティブを考えて欲しい。
  大平委員
私も、歯科診療について、例えば抜歯などはACCに行っているが、普段は近所の歯医者に通っている。こうしたところにも、少しは補助金があっても良いのではないか。
それぞれの医療機関が、HIV診療について、どういった診療行為まで対応できるのか、といったことを、予めPRするしくみも必要。
実際、HIV診療を公表することは高いハードルかもしれないが、ネットワークを駆使し、プライバシーに配慮し、連携してやってほしい。
  市川委員
この予防指針は、エイズ対策としての5カ年計画を立てるものであるが、計画を立てるだけではなく、実際に達成できたかどうかを検証することも重要。
医療体制の整備について、国と都道府県の役割分担が明確になっていない中では、都道府県が施策を展開していくのは難しい。
  座長
都道府県も主体的に実施してほしい、というところはある。
  前田委員
感染症法に基づく報告は匿名で実施しているので、実際に患者・感染者を把握できるのは医療機関だけ。
保健所が必要な療養体制を整備していくためには、結核事業のような支援体制(保健所での患者登録制度等)が必要。
  座長
研究班でみてみると各ブロックで研修等いろいろやってくれているが、事業化しているところもある。担い手はどこか。
  白井委員
都道府県での数値目標ということだが、医療の質など、どのように目標を設定すればいいのか。自治体任せということでは、自治体の対応も難しい。
  市川先生
医療体制の整備といった場合、医療機関だけで対応するというのは無理で、社会全体としての体制づくりも必要。
医療の質は医療機関が責任をもって対応するが、例えば福祉等について医療機関で対応しきれないものについて、どこが責任をもって対応するのか、といった役割分担について、指針の見直しでは検討する必要がある。
  池上委員
そうした役割分担について、うまくやっているところもあるが、病院、自治体、患者、それぞれにメリットがないと、連携はなかなか進んでいかない。調整機能をどこが果たすかが課題。
  大平委員
HIV医療は、現時点では不確定要素がたくさんある。
医療体制については、国がきちんと責任を持ち、自治体との役割分担、研究班の活用等を通じて整備することが必要。当面は疾病対策課が中心となって企画運営すべき。
1人の患者・感染者が偏見・差別を受けたときに国がある程度指導する態度をみせないといけない。
  座長
医療体制の整備については、自治体独自には難しい、国が指導力を発揮して、全体のスキームを呈示し、それを評価できるような体制が必要、という話があった。
時間の関係もあるので、最後に補足等あれば。
  市川委員
自治体はがんばっているが、予算も減っており、これ以上は難しい。そこは国がプッシュしないといけない。
現状においては、エイズ対策は国策である。
東京、名古屋、大阪のような、患者・感染者が多い地域で、まず何をやるか。それを受けて、他の自治体は、地域性を踏まえ、同様の施策を実施するのかどうかを検討する。
  池上委員
医療機関のマンパワーは限られている。
パンフレットなどの資材で対応できる部分については、有効に活用していくことが必要であり、できるだけ使う。
また、仲間どうしの情報提供、支援、支え合いも効果がある。当事者を巻き込んだ方策なども有効。
  大平委員
医療にあたっては、主治医と患者との信頼関係が重要であるが、その他にも、例えばNGOからの情報を円滑に活用できるようなしくみも大切。
患者の自己決定の際の説明は不可欠であり、時間的なフォローも必要だが、最終的には患者自身が治療方針を決められるような体制が必要。
  池上委員
例えば、セカンドオピニオンについても、医師によってバラバラである。
  大平委員
医師どうしの仲が悪い。紹介して欲しい病院に紹介してもらえない、といったこともある。セカンドオピニオンを推奨してほしい。
  前田委員
セカンドオピニオンは大切だが、その前に、そもそもの外来の時間を長くできるような体制整備が必要。
  木原正委員
拠点病院には多くの大学病院が含まれているが、独立法人化によって経営面が重視されており、感染症治療の収益性から見れば、エイズ拠点病院として今後空洞化していく(あるいはすでに空洞化している)懸念がある。見直しに際して注意が必要。
  座長
拠点病院の見直しはどうあるべきか、実績0の拠点病院が25%を占めているが、このような拠点病院を切り捨てるのか、減らすのか、患者感染者の増加が認められるのに減らせるのか、といった点についても、議論が必要。
  座長
本日の議論はここまで。
本日、議論できなかった、「原因の究明」「国際連携」については、次回以降。
本日の議論についての補足等については、次回の検討会の冒頭で再度議論したい。

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