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第8回
資料13

就業形態の多様化に対応した最低賃金の適用について


 派遣労働者に対する最低賃金の取扱い

(1)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(第3章第4節関係)の施行について(昭和61年6月6日付け基発第333号)(抄)

4.労働基準法の適用に関する特例
(2)具体的事項
 ロ 賃金
(イ) 派遣元事業場と派遣先事業場とが異なる都道府県にある場合、派遣元の事業と派遣先の事業とが異なる産業に属する場合等には、派遣元の事業場と派遣先の事業場とで適用される最低賃金が異なることがあるが、いずれの場合であっても、派遣中の労働者については、派遣元の事業場に適用される最低賃金が適用されること。


(2)労働政策審議会建議−職業紹介事業制度、労働者派遣事業制度等の改正について−(抄)(平成14年12月26日)

III 労働者派遣法関係
 6 派遣元事業主・派遣先の講ずべき措置関係
 (8) (略)
 また、本部会において問題提起のあった、派遣労働者に対する最低賃金の取扱いについては、今後、別の場で中長期的な視点から検討することが適当であると考える。
 労働者代表委員から、派遣先の法定最低賃金をはじめ基本的雇用労働条件について、派遣先の通常の労働者の条件を下回ってはならないとする措置を検討すべきとの意見があった。


2 表示単位等

(1)最低賃金法第4条の解釈
第4条 (最低賃金賃金額)
 最低賃金額(最低賃金において定める賃金の額をいう。以下同じ。)は、時間、日、週又は月によつて定めるものとする。
 賃金が通常出来高払制その他の請負制で定められている場合であつて、前項の規定によることが不適当であると認められるときは、同項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより最低賃金額を定めることができる。

〔趣旨〕
 最低賃金額の基礎単位としては、原則として、期間的単位によって定めることとし、その期間は、わが国における賃金支払形態の実情にかんがみ、時間、日、週、月、いずれにもよりうることとしている。しかしながら、当該最低賃金の適用を受ける労働者について、賃金が出来高払制その他の請負制で定められている場合であって、労働時間を把握しがたいとき、または時間、日、週もしくは月というような一定の時間によって最低賃金額を定めることが不適当であると認められるときは、出来高賃金率等厚生労働省令で定めるところにより最低賃金額を定めることができることとしている。

〔解説〕
 (略)
 最低賃金は、労働条件を改善し、労働者の生活の安定に資することを目的とするものであるから、その保障する最低賃金額は、労働者の労働した時間に対応して一定額の賃金を保障するものであることが原則でなければならない。ところが、実際の賃金支払形態においては、定額制のみの場合のほかに、定額制にあわせて出来高払制その他の請負制をとっているものがあり、また、定額制はなく出来高払制その他の請負制のみであるものもあるが、いずれにしても、このような出来高払制その他の請負制では、賃金は生産された物品等の一定単位によっていくらと決められており、その一定単位について最低賃金額を定めても、労働者の生産する物品等の量がどれだけになるかは保障されていないので、賃金は不安定に変動し、最低賃金が本来期待しようとする最低の一定額の保障は望めないこととなる。したがって、本法の最低賃金額は、期間的単位によって定めるのを原則としたのである。この場合の期間の単位としては、諸外国においては、時間だけあるいは日だけできめる場合もみられるが、わが国における賃金支払形態の現状においては、それぞれの業種、職種によって時間給制、日給制あるいは月給制等その実態も異なるので、最低賃金が有効に実施されるためにも、単に一時間につきいくらという時間単位のみできめるといった画一的なきめ方をせず、それぞれの業種、職種の賃金慣行に即応して、時間、日、週、月のいずれにもより得ることとしたものである。もっとも、わが国においては、週給制をとっている例はほとんどないので、最低賃金を週によってきめることは現在のところまずあり得ないと考えられる。従来我が国の最低賃金のほとんどは時間額および日額を併用していたが、賃金支払形態、所定労働時間などの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の観点や就業形態の多様化への対応の観点などから、平成14年4月2日に中央最低賃金審議会で了承された時間額表示問題全員協議会報告において、地域別最低賃金額の表示単位期間について時間額単位方式への移行を図ることとされ、すべての地域別最低賃金について平成14年度の改正から時間額表示のみとなり、産業別最低賃金についても時間額単独表示への移行が進んでいる。
 最低賃金額が一定の期間によって定められた場合には、賃金支払形態のいかんを問わず、その期間中の所定労働時間の労働に対してその金額以上の賃金を支払えば足りるのであって、例えば、最低賃金が1時間につきいくらというように時間単位できめられたからといってその適用を受ける労働者の賃金支払形態をそれに合致するように時間額に変更するという必要はない。
 以上のように、最低賃金額を期間的単位によって定めることが本法の原則であるが、これのみによることは実情に沿わない場合があると予想される。すなわち、業種によっては、労務管理上、定額制をとらず、出来高払制その他の請負制をとっているものがある。「出来高払制その他の請負制」の「請負制」というのは、労働時間によって賃金が支払われる定額制に対する概念であり、一定の労働給付の結果または一定の出来高に対して賃率が決められるものである。しかしながら、労働時間の把握、作業の管理監督が可能でありながら、労働者を刺激する意味でこのような賃金制度をとっているものがあり、工場労働における出来高払制その他の請負制は、一般にこのようなものであるが、2に述べた理由により、この場合には第1項の規定による期間的単位で最低賃金を定めることができるのであるからこれによる。しかしながら、出来高払制その他の請負制の賃金形態をとっているもののうち、林業、漁業等におけるように、作業の態様から労働時間の把握その他作業の管理監督が困難であり、そのために、通常出来高払制その他の請負制をとっている場合がある。このような場合には、最低賃金額も期間的単位以外の単位によって定めざるをえないと考えられる。第2項はこのことを規定したものである。
 このように、労働時間が把握しがたい場合、その他第1項の規定によって最低賃金額を定めることが不適当である場合の取扱いについては、厚生労働省令である最低賃金法施行規則(以下「則」という。)の規定にゆだねられている。すなわち、この場合は、当該労働者の出来高または業績の一定の単位によって最低賃金額を定めることとなる(則第1条)。なお、現在決定されている最低賃金額では、労働者の出来高または業績の一定の単位によって定められたものはない。


(2) 中央最低賃金審議会時間額表示問題全員協議会報告(平成14年4月2日中央最低賃金審議会了承)

 地域別最低賃金額の表示単位について、平成14年から時間額単独方式に移行




(参考)
中央最低賃金審議会時間額表示問題全員協議会報告

(平成14年4月2日 中央最低賃金審議会了承)

 地域別最低賃金額の表示単位期間については、中央最低賃金審議会が最低賃金額の決定の前提となる基本的事項の一つとして、できるだけ全国的に統一的な処理が行われるよう、その考え方を整理しこれを地方最低賃金審議会に提示することとされ、目安制度創設以来、数度にわたり検討が行われた結果、平成12年12月15日に中央最低賃金審議会で了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」において、表示単位期間については、現行の日額・時間額併用方式から時間額単独方式へ一本化することが適当である旨の報告が全会一致でまとめられたところである。
 しかし、同報告においては「各都道府県において定められている最低賃金額の日額と時間額との関係をどのように考えるかという課題があり、この他現在のランク別に金額で示す表示方式が適当かどうか等の論点も考えられる」とされ、時間額単独方式への移行に当たっての条件整備を図っていくため、具体的な検討を行う必要があるとされたところである。
 本時間額表示問題全員協議会は、地域別最低賃金額の時間額単独方式への移行に当たって、そのための課題を整理、検討したところであるが、今般、下記のとおり「時間額表示問題全員協議会報告」として取りまとめたので報告する。

 時間額単独方式への移行について
(1) 現在、地域別最低賃金額の表示単位期間は日額・時間額の併用方式となっているが、賃金支払形態、所定労働時間などの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の観点や就業形態の多様化への対応の観点、さらにはわかりやすさの観点から時間額のみの表示が望ましいので、地域別最低賃金額については時間額単独方式への移行を急ぐべきである。
(2) この移行に当たっては、具体的にどのような金額で地域別最低賃金額の時間額を単独表示とするかという問題があるが、これまで各地域で自主的に定め適用している、現行の時間額からの移行を基本とするのが適当と考える。
 この場合、多くの地域においては移行に当たっての支障はないと考えられるが、これまで日額と時間額がそれぞれ地域の実情を踏まえて定められてきた経緯もあり、直ちに移行するのが困難な地域もあり得るので移行に向けての検討及び準備のための期間を設けることとし、それら地域においてはその期間を利用して、遅くとも平成16年度の地域別最低賃金額改正時からは時間額単独方式に移行できるよう地域における所定労働時間や賃金支払形態の状況等を勘案して必要な準備を進めることが適当である。
 目安の表示方法について
 大方の地域においては平成14年度から時間額単独方式に移行が進められることを念頭におくと、地域別最低賃金額の金額改定に係る目安は平成14年度から時間額で表示することが適当と考える。

(3)仕事と生活の調和に関する検討会議報告書(抜粋)(平成16年6月23日)

 III 所得の確保について
 2 「最低賃金制度」について
  (略)
 ○ 多様な働き方を選択できるようにすることは、例えば、同一の企業や事業所内においては、個々の労働者が異なる労働時間を選択できるようにすることでもあるが、この場合、異なる労働時間を選択したことに伴い処遇面で差異が生じたとしても、本人同士が納得いくようなものにしておかなければ、多様な選択肢を確保したことにはならない。このような観点に立つならば、賃金についての最低基準は所定労働時間の長短にかかわりなくすべての労働者に適用されることを法文上明示するために、所定労働時間が特に短い者についての最低賃金法上の適用除外規定は削除することが考えられる。なお、現在、実際上は所定労働時間の短い者でも最低賃金が適用されるような運用が行われている(注)。
(注)最低賃金法第8条第4号において、所定労働時間の特に短い者について、都道府県労働局長の許可を受けた場合は適用除外することとしている。これを受けて省令においては、適用除外となり得るのは、所定労働時間が特に短い者の実賃金が日、週又は月単位で設定されている場合であって、最低賃金額も同じ期間単位で設定されている場合のみとされており、最低賃金が時間額で設定されている場合又は実賃金が時間額で設定されている場合等は、原則どおり最低賃金が適用される。また、運用において、「所定労働時間が特に短い者」については所定労働時間が通常の労働者の3分の2程度以下の者をいうものとするとともに、これに該当する場合であっても、実賃金額と最低賃金額を時間換算した上で時間当たり実賃金額が時間当たり最低賃金を上回っているときのみ適用除外の許可を行うこととされている。

 ○ また、現行の最低賃金法においては、最低賃金は時間、日、週又は月単位で設定することとされているが、賃金支払形態、所定労働時間などの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の観点等から最低賃金の表示単位期間を最小単位である時間額表示に一本化することが適当であると考えられる。なお、運用においては大部分の最低賃金について時間額単位での表示を行っている。

  (略)


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