1 | 昭和32年「最低賃金に関する答申」(昭和32.12.18)
(1) | 最低賃金制度は労働条件の向上、企業の公正競争の確保、雇用の質的改善、国際信用の維持向上等国民経済の健全な発展を促進するとともに、中小企業経営の合理化にも寄与するものであり、法制化に前進すべき。 |
(2) | 業者間協定方式による最低賃金には、政府が今後とも援助指導を行うことが望ましく、また、法的拘束力を付与することが必要。 |
(3) | 最低賃金制は業種、職種、地域別の実態に応じて設定し、漸次拡大することが適当。 |
(4) | 最低賃金制度の実施に当たっては、新たな単独法によることが望ましい。 |
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2 | 最低賃金法の制定(昭和34年) 業者間協定に基づく最低賃金(法第9条)、業者間協定に基づく地域的最低賃金(法第10条)、労働協約に基づく最低賃金(法第11条)及び最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金(法第16条)の4方式を規定。
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3 | 最低賃金の普及促進
(1) | 「最低賃金制普及計画(昭和36年~38年)」の策定。 |
(2) | 昭和38年最低賃金制の今後のすすめ方に関する答申 最低賃金額の目安 最低賃金の金額は、当該業種の実態に即応してこれを決定する必要があるが、今後はできうるかぎり、全国的観点からの調整をはかるため、中央最低賃金審議会において、よるべき目安を作成することがのぞましい。その目安は、業種の実態、賃金の社会的相場、最低賃金制と密接な関係を有する他の諸制度などを十分勘案しながら、原則として、地域・業種グループごとにきめることとする。 |
(3) | 昭和39年最低賃金の対象業種および最低賃金額の目安に関する答申
イ | 最近における経済の成長にともない賃金格差は縮小しつつあり、今後もこの傾向は続くものと考えられるが、現在では、なお、地域別、業種別にかなりの格差が存在しているので、地域・業種グループごとに目安を作成した。なお、今後とも中小企業近代化対策の推進、労働力の適正な流動などにつとめなければならないが、最低賃金制の運用の過程においても、これらの推移にみあって賃金格差の縮小につとめることがのぞましい。 |
ロ | 目安の作成に当っては、賃金の実態を基礎とし、経済の成長にともなう雇用労働事情の推移、国民生活水準の改善などを勘案して、賃金の低い労働者をなくしていくという方向で対処した。 |
ハ | 今後新たに最低賃金を決定し、または、現在までに決定されている最低賃金を改訂するに当っては、原則として当該業種について実態調査を実施し、その結果にそくして実効性が確保されるよう目安を運用すべきである。 現在までに決定されている最低賃金については、可及的すみやかにこの金額を目安として改訂すべきものであり、また、今後新たに決定されるものはできるかぎりこの目安によるべきことはいうまでもないが、業種の実態により必要がある場合には、段階的にこの目安に到達する手段を講ずることもやむをえないものとする。 |
ニ | この目安は、地域・業種グループごとの一般の労働者を対象とするものであるから、最低賃金の設定に当っては、職種、年令の区分を設けるなど工夫を加え、基幹的労働者、一人前の労働者などについても、実効性ある最低賃金が設定されるよう努めることがのぞましい。 |
ホ | 雇入れ後の期間が3ヵ月にみたない者、とくに軽易な雑役労働に従事する者などについて、別の取扱いをすることにより、当該業種の一般の労働者にとって、実効性ある最低賃金額の決定が可能な場合には、これらの労働者について、この目安によらないことができる。 |
へ | 目安の金額は、最低賃金が適用対象として予定している一般の労働者の所定労働時間に対応するものであるから、パートタイマーなどのように、所定労働時間がとくに短いものについては、目安を時間当りに換算して最低賃金額を定めることが適切である。 |
ト | 中央最低賃金審議会は、目安の算定の基礎となっている業種の実態その他諸般の事情について毎年一回調査を実施し、その改訂の要否について検討を行なう。 |
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(4) | 「都道府県ごとの最低賃金推進計画(昭和39年~41年)」の策定。 |
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4 | 最低賃金法の改正(昭和43年)
(1) | 業者間協定方式を廃止し、最低賃金の決定方式としては最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金と労働協約に基づく地域的最低賃金の2方式。 |
(2) | 審議会方式による最低賃金の決定要件の緩和。 |
(3) | 審議会方式による最低賃金についての関係労使の申出及び意向反映手続きの設定等。 |
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5 | 昭和45年「今後における最低賃金制度のあり方について(答申)」(昭和45.9.8)
(1) | 最低賃金制は、労働経済の変ぼうの中でこれに即応し、なんらかの原因で、なんらかの形で存在する不公平な低賃金に対処し有効に作用するものでなければならず、このためには、労働市場の相場賃金と密接に関連した実効性あるものであるべき。 従って最低賃金は、労働市場の実態に則しかつ類似労働者の賃金が主たる基準となって決定されるようなあり方が望ましく、それは低賃金労働者の保護を実効的に確保する面でも現実に適応するものであると考える。 さらに、これからのわが国においては、賃金等の労働条件の改善向上を通じて労働力の質的向上とその有効発揮を図るとともに、企業の公正な競争の確保と経営の近代化、合理化をすすめることにより企業体質の強化改善を促進することが要請されるところである。前述のような最低賃金制は、このような要請にも対応しうるものであると考える。 |
(2) | わが国における最低賃金の適用は、現在中小企業労働者の約3分の1に達しているところであるが、最低賃金はすべての労働者が何らかの形でその適用をうけることが望ましい。従って、まだ適用をうけていない労働者についても適切な最低賃金が設定され、全国全産業の労働者があまねくその適用をうける状態が実現されるよう配慮されるべきである。これが推進に当たっては(1)の考えに則り、労働市場に応じ産業別、職業別又は地域別に最低賃金を設定することを基本とするべきである。この場合、低賃金労働者が多数存在する産業、職業又は地域から逐次最低賃金を適用し、すべての労働者に包括的に適用を及ぼすという姿勢が肝要である。 |
(3) | 全国全産業一律制については、なお地域間、産業間等の賃金格差がかなり大きく存在しているという事実を確認せざるを得ず、現状では実行性を期待しえない。 |
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6 | ILO条約批准(昭和46年)
(1) | 最低賃金決定制度の創設に関する条約(第26号) |
(2) | 開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第131号) |
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7 | 最低賃金の普及促進
(1) | 「最低賃金の年次推進計画(昭和46年~50年)」
(1) | 昭和50年度までにすべての労働者に最低賃金を適用することを目標とする。 |
(2) | 産業別、職業別の最低賃金と並んで地域別最低賃金の活用を進める。 |
(3) | 最低賃金の実効性が確保されるよう一般の賃金水準の動向に即し的確かつ効果的に改定を図る。 |
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(2) | 地域別最低賃金の普及 昭和47年3月の岐阜県から昭和51年1月の宮城県まで、全都道府県で地域別最低賃金の設定が終了。 |
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8 | 労働団体等の動き
(1) | 野党4党が全国一律最低賃金に関する「最低賃金法案」を国会に提出(昭和50.3.25)。 |
(2) | 労働4団体が「全国一律最低賃金の確立」を要求しストライキを予定(同50.3.27)。 |
(3) | 中央最低賃金審議会に全国一律最低賃金制度の問題を含めて「今後の最低賃金制のあり方について」諮問する旨の政府見解を表明し、ストライキは回避(同50.3.26)。 |
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9 | 最低賃金のあり方について諮問(昭和50.5.30)
(1) | 経済も安定成長へ転換しているが中小企業問題・賃金格差も残されている。最低賃金制が労働者の労働条件改善に果たす役割は重要性を増してくる。 |
(2) | 今後の最低賃金のあり方について、全国一律最低賃金制の問題を含め、調査審議を求める。 |
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10 | 小委員会報告(昭和51.3.22本審了承)
(1) | 最低賃金制の本質、地域最賃の性格、産業別最低賃金との関係、適用労働者の範囲等について検討すべき。 |
(2) | 地域別最低賃金の決定方式について何らかの改善が必要。 |
(3) | 最低賃金決定において中央最低賃金審議会の積極的機能を発揮する方向で検討することが適当。 |
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11 | 「今後の最低賃金制のあり方について(答申)」(昭和52.12.15)
(1) | 都道府県ごとの地方最低賃金審議会における決定を原則とする現行の最低賃金の決定方式は、今日なお地域間、産業間等の賃金格差がかなり大きく存在することから、地域特殊性を濃厚に持つ低賃金の改善に有効。 |
(2) | しかしながら、現行方式は最低賃金の決定について全国的な整合性を常に確保する保障に欠ける面があることも否定できない。したがって、当面の最低賃金制のあり方としては、地方最低賃金審議会が審議・決定する方式によることを基本としつつ、その一層適切な機能発揮を図るため、全国的な整合性の確保に資する見地から、中央最低賃金審議会の指導性を強化する次の措置を講ずることが必要。
イ | 最低賃金額の決定の前提となる次の基本的事項について、中央最低賃金審議会がその考え方を整理して地方最低賃金審議会に提示する。
・ | 地域別最低賃金と産業別最低賃金のそれぞれの性格と機能分担 |
・ | 高齢者の扱いその他適用労働者の範囲 |
・ | 最低賃金額の表示単位期間のとり方 |
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ロ | 最低賃金額の改定について、できるだけ全国的に整合性ある決定が行われるよう、中央最低賃金審議会は次により目安を作成し、地方最低賃金審議会に提示する。
・ | 毎年、47都道府県を数等のランクに分け、地域別最低賃金額の改定についての目安を提示する。 |
・ | 目安は一定時期までに示す。 |
・ | 目安の提示は昭和53年度より行う。 |
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なお、中央最低賃金審議会(昭和52.9.28)は、小委員会最終報告として次の事項を了解。
イ | 目安は、都道府県の地域格差、産業格差等を一切考慮しない各都道府県の低賃金層の平均状態を前提とし、全国的な整合性を配慮して描かれた最低賃金の水準を念頭におき、示されるもの。 |
ロ | 地方最低賃金審議会においては、従来同様各都道府県内の賃金状態に応じた独自の判断を下すために、賃金実態調査、参考人の意見聴取、実地視察等を行い審議をすすめ、改定についての結論を得るまでの過程において、全国的なバランスを配慮するという観点から、中央最低賃金審議会が提示した目安を参考にするものであって、目安は地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではない。 |
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12 | 小委員会報告(昭和53.7.27)
(1) | 第1小委員会報告(昭和53年度の目安を検討)
(1) | 従来の地域別最低賃金額の改定が中小企業の春季賃上げ状況と密接に関連していることに注目し、本年度の目安についてもこの関係を考慮。引上げ率は、消費者物価上昇率を下回らないようにする必要があると判断。 |
(2) | 本年春季賃上げ状況及び労働省が実施した特別賃金調査(従業員30人未満企業)の結果を検討し、目安を作成。 |
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(2) | 第2小委員会報告(表示単位期間等の問題を検討)
(1) | 最低賃金額の表示単位については、月額、日額、時間額とする案及び時間額のみにする案等も考えられるが、差し当たり従来通り日額を基本とし、時間額をあわせて表示。 |
(2) | 時間額の算定方式は今後引続き検討。 |
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