05/02/24 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(腹部臓器部会)第8回議事録     胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(第8回腹部臓器部会)議事録 1 日時   平成17年2月24日(木) 15:00〜17:00 2 場所   経済産業省別館817会議室 3 出席者  医学専門家:尾崎正彦、戸部隆吉、望月英隆(50音順)        厚生労働省:明治俊平、渡辺輝生、神保裕臣 他 4 議事内容 ○医療監察官  定刻より若干早目ですが、先生方お集まりですので、胸腹部臓器の障害認定に関する 専門検討会第8回腹部臓器部会を始めさせていただきます。それでは戸部先生、よろし くお願いいたします。 ○戸部座長  お忙しい中、ありがとうございます。討議に入る前に、事務局から提出資料の確認を お願いします。 ○障害係  資料1が1頁から始まって「腹部臓器部会(第8回)の論点」、資料2は10頁からで 「肝臓の取扱い(たたき台)(案3)」。資料3が18頁から始まって「ひ臓の取扱い (たたき台)(案1)」。資料4は22頁から始まって「胃の取扱い(たたき台)(素案 )」、資料5が26頁から始まって「小腸の取扱い(たたき台)(素案)」、資料6は33 頁から始まって「大腸の取扱い(たたき台)(素案)」、以上です。 ○戸部座長  それではまず前回ご議論いただいた項目のうち、肝臓とひ臓の取扱いについて、論議 を踏まえた修正についてご確認をいただきたいと思います。その後、新たな課題とし て、胃、小腸及び大腸の取扱いについて、時間の許す限り議論したいと思います。なお 時間の都合がありますので、膵臓も含めて、一定固まった臓器については、気がついた ことは事務局に連絡していただきたいと思いますが、ご指摘を踏まえた修正について は、座長一任ということでご了解いただきたいと思います。  それでは肝臓とひ臓の取扱いについて、事務局よりご説明願います。これは、特に修 正したところだけということでよろしいですか。 ○医療監察官  修正したところの考え方について、考え方というほどでもないのですが、まず13頁以 下、何点か直させていただいております。前回、「正常値」という言葉づかいはしなく なっていて、「基準値」という言葉づかいになっているということで、その点について 直させていただいたのが、肝臓の主なところです。併せて15頁については、8割、4カ 月という数字を出すのはいかがなものかというご指摘がありましたので、「相当部分 」、「比較的短期間」という形に変えさせていただいております。併せて、上の外傷学 会の分類について、Appendixのところは、図を念頭に置いた記載だろうということで、 ここは削除するのが適当だという座長のご指摘を踏まえて、削除させていただいており ます。  ひ臓について、18頁は、戸田先生のご指摘で、1の記載が若干おかしいのではないか ということで、訂正させていただいております。19頁のアンダーラインの所について は、尾崎先生のご指摘を踏まえて、考え方を変えたということではありませんが、若干 修文をしております。 ○戸部座長  結局、いまご討議いただいているこの資料が、全部今後報告される材料になりますの で、これをよく先生方にご覧いただいて、字句の訂正なども事務局のほうへ、討議の議 事録と同時に送っていただくようにすればよろしいかと思います。  ちょっと気がついたところで、この間のところ、10頁からひ臓の終わりまでです。戸 田先生は今日お休みなので、11頁の慢性肝炎の中で、B型肝炎の場合は、急性肝炎を発 症しても、慢性肝炎に移行することは稀であり、肝がんへの関与が稀であるということ ですが、ここを断言してよいかどうかということです。これについては戸田先生がおら れないので、日本をはじめ韓国、中国、アジアの肝癌にB型肝炎の関与が強う提起され たことがありますので、全面的に否定しうるかどうかについて、ここをよく確認してい ただきたいと思います。  15頁の肝臓の外傷の所ですが、肝外傷で複雑型の場合、出血を止めるということ、そ れから肝切除をする場合がある。その場合、短期間に治癒して再生される結果になっ て、そのためにあまり障害として考えなくてもよいというふうに取られる表現なのです が、これは、このように断言してしまうと、やはり問題も出てきます。正常肝臓の場合 には大きな予備能があるけれども、すべてが正常肝臓とは限らないので、そう断言して ない方がよい。「正常に復すると考えられる」の後に、「一方受傷時、慢性的に肝機能 障害が存在するような状態が存在するときには、切除に耐えないこともあり得る」とい うような表現で、全部これを障害の対象に考えないという断言は避けるべきであると思 います。  したがって、17頁の「上記のとおり、肝の部分切除等により一時的に肝臓の機能が低 下したとしても、その後機能は正常に復するのが通常と考えられることから、基本的に は障害には該当しない」と断言しきれるかどうか。ここはちょっと問題があるのではな いかと思います。あとは、小さなところですが、どうぞお気づきのところは、また全 部、この議事録と同時に、討議しているこれを訂正して事務局のほうへ送っていただけ ればと思います。  今日は胃、22頁から入ってよろしいですね。できれば、小腸、大腸まで終わって、次 回が最後になるので、次回に全部まとめて、もう一度通覧していただく。そのときに、 一応いままで臨時的に決めた等級障害を一覧表にしてまとめていただいて、腹部臓器の 中のばらつきを少なくする。整合性を求めるということを最後の作業にしたいと思いま す。22頁から入っていただきます。  その前に、最初に返っていただいて、腹部臓器部会の論点で、「胃の障害」というと ころがあります。今日は、こういう論点を中心に考えてほしいということなので、この 論点のところを全部読んでいただけますか。1頁から3頁まで読んでしまって、それか ら胃の障害に入りましょう。 ○障害係  (資料の読み上げ)「腹部臓器部会(第8回)の論点 第1 胃の障害」 ○戸部座長  こういう論点といいますか、こういうことを前提に置いて、次の22頁から以下にこの 取扱いが記されておりますが、これは、逐次ご意見をいただくことにして、いちばん障 害として評価すべきものの中の「逆流性食道炎」、これは確かに、障害の場所として、 症状が食道に出てきますが、やはり胃の全摘によって、噴門機能がなくなったことがそ の原因ですから、これはやはり胃の障害として考えたほうがよいのではないかと思いま すが、これについてはどうでしょうか。  ですから、大まかな考えとしては、消化吸収の非常に大事な中心臓器である胃が亡失 する、胃がなくなること自体が、大腸全摘と同じように障害認定の1つの基準であっ て、それプラス、噴門機能がなくなったことによる逆流性食道炎を伴うもの、あるいは 伴わないもの。それプラス、幽門機能がなくなったことに伴うダンピング症候群を伴う もの、伴わないもの。そういう形で評価したほうがわかりやすいのではないかと思いま すが、どうでしょうか、尾崎先生。 ○尾崎先生  食道のところで、逆流性食道炎の原因というのは、ほとんど胃のほうからきています ね。ですから、そこで記載してしまうと二重になってしまうかなという気がするのです が。 ○戸部座長  ですから、食道のところを削ってしまって。 ○尾崎先生  こちらに移してということで。 ○戸部座長  はい、こちらに移して。 ○尾崎先生  はい。そうすると、胃の術後としては、逆流性食道炎と消化吸収障害とダンピング と、一応3つの症状のうち、1つあるいは2つ以上とかという分け方で。 ○戸部座長  まず、胃がなくなるということは非常に大きな障害で、これによる消化吸収障害に は、それが多く出てくる人と少なく出てくる人はあるにしても、胃を亡失するというこ とは、ひとつ非常に大きな障害として認定し、それプラス噴門機能がなくなったことに よる。だからこれは、胃の噴門側切除の場合もそうですが、噴門側がなくなったための 逆流性食道炎を伴うもの、伴わないもの。それから、幽門機能がなくなったために起こ るダンピング症候群を伴うものと伴わないもの。それから、部分切除で噴門側切除、噴 門部を亡失したことによる障害。それと、逆流性食道炎を伴うもの、伴わないもの。そ ういうふうな分け方でどうでしょうか。 ○尾崎先生  取扱いとしては、逆流性食道炎は食道のほうから胃のほうに、その項目を移し変え て。確かに逆流性食道炎は、病変は食道にありますが、原因は胃というか。噴門部です よね。 ○戸部座長  原因は胃ですね。胃の障害ですから。 ○尾崎先生  ですから、食道のほうからこちらに逆流性食道炎の症状などを移して。 ○戸部座長  ですから、食道は狭窄症状だけになるわけですね。大体食道そのものが、食べ物を通 す管だけですから、やはり狭窄だけを残しておいて、食道炎は、胃の症状として考えた ほうがよいのではないでしょうか。望月先生、どうですか。 ○望月先生  私は記憶が薄いのですが、食道の場合に狭窄と逆流性食道炎の両方を伴ったものは、 というような条件設定はありましたか。 ○医療監察官  第9級ということでなっていくのだろうと思うのですが、胃のところにしても、結 局、その場所を変えているだけなので、そういう意味からいえば、取扱いが大きく異な ってしまうわけではないと思うのですが。 ○望月先生  そういうところで、ねじれや矛盾が出なければ、胃のほうに移してもよいかと思うの です。ただ、胃のほうに移した場合に、障害の数を、ダンピング症候群と、逆流性食道 炎と、消化吸収障害と3つに分類しても、現実問題としては2つくらいしかなくて、3 つ全部揃うということはないですね。それはそれでよろしいわけですね。 ○戸部座長  はい。それはそれでいいと思うのです。 ○尾崎先生  1つか2つ。 ○望月先生  そうですよね。 ○尾崎先生  2つ以上ですね。 ○望月先生  「以上」と書いてあれば済むことですね。 ○戸部座長  どんどんダンピングを起こすようなものは、逆流は逆に少ないのではないでしょう か。 ○望月先生  そうですね、そのとおりですね。胃全摘をしたら、両方起こり得ますけれども。 ○戸部座長  だから、一応そういうふうな主なところを念頭に置いた上で進めていきましょうか。 そうしましたら、戻って22頁から進めさせていただきます。胃の障害について、事務局 お願いいたします。 ○障害係  (資料の読み上げ)「第○胃の障害 1 現行の認定基準 2 胃の構造と機能及び 業務上の傷病による影響」 ○戸部座長  ここでひとつ切って、どうでしょうか。大体このとおりだと思うのですが、文章等で ご注意いただくところがあれば。 ○望月先生  「2つの表面」という表現は、どこかにありましたか。胃の解剖の構造で、「2つの 表面」とありますが。 ○戸部座長  ここはちょっとおかしいですね。 ○望月先生  普通は前後壁、壁と言いますが。 ○戸部座長  この胃の構造の所は、ちょっと文章の表現が。 ○医療監察官  「及び」以下の所については、ちょっと表現を変えます。 ○戸部座長  入口の噴門と出口の幽門という意味でしょうね。「開口部」というのはちょっとおか しいですね。だから、「業務上の傷病による影響」の所で、「胃の機能に影響を与える 傷病には、様々なものがあるが」というのは、「様々なものが考えられるが」のほうが 妥当ではないでしょうか。  それから最後の所で、「後遺症状を評価すれば足りると考える」という所は、「評価 することが妥当であろう」くらいのほうが。何か、「考える」というのは、切り捨ての ような感じがして、ちょっとおかしいなと思うのですが。この提出された文章は、やは り後々まで残るでしょうし、先生方のお名前も残りますから、変な表現をしていると、 鼎の軽重を問われますから、おかしい文章は指摘していただいて、訂正してください。 ここまでのところは、これでいいですか。これで先に進ませていただいてよろしいです か。ここは、大して重要なところではないですから、文章のおかしい所をちょっと訂正 していただければと思います。  それでは「検討の視点」についてお願いします。 ○障害係  (資料の読み上げ)「3 検討の視点」 ○戸部座長  ここで切りましょう。「検討の視点」について、特に1のほうの「全摘後数年を経過 して出現するような」で、これは主に貧血と骨障害、これはやはり胃酸がなくなってし まって、鉄の吸収が悪くなること。全摘の場合は、内因子が全部なくなりますから、悪 性貧血が出てきます。しかしこれは数年後のことですし、カルシウムの障害が起こっ て、骨粗鬆症、これも数年後非常に高率に出てきますが、これを障害として考えること が妥当かどうか。実際には、この中ではあまり考えなくてよいのではないかということ になっています。こういったことについて、2番がいまの点、1番は消化吸収障害によ る体重減少をどう評価するか。ダンピング症候群とか逆流性食道炎をどう評価するかと いうことです。その内容について、次を続けていただけますか。 ○障害係  (資料の読み上げ)「4 検討の内容 (1)胃全摘後の後遺症状」 ○戸部座長  ここをひとつ考えましょう。この、「胃全摘後発生する慢性の症状には、消化吸収障 害、ダンピング症候群、逆流性食道炎と貧血及び骨代謝障害などがある」。この後にち ょっと説明が書いてありますが、「消化吸収障害、ダンピング症候群、逆流性食道炎 」、これとこの後の2つは、全く別個のものですから、もう1つ、消化吸収障害の前 に、「比較的早期に出現する消化吸収障害、ダンピング症候群、逆流性食道炎」と入れ ておいたほうがよいですね。後にダブりますが、「時期を経過して出現する貧血及び骨 代謝障害などがある」として、その後またすぐ、「前の三の症状は、比較的早期に症状 が出現することがあり」とありますが、はっきりわかりやすく、こう書いておきましょ う。  その次の「一方、貧血」は、このとおりですね。数年を経過してからのことを言う。 「また貧血や骨代謝障害は、薬剤の投与によってその症状は軽快するものである」と、 これは断言してはいけないですね。「することが多い」と。それと、骨粗鬆症、これは 一旦なったら、なかなか治りませんよ。カルシウムとか、いまいろいろ投与されていま すが、尾崎先生、どうですか。 ○尾崎先生  そうですね。 ○戸部座長  おじいさん、おばあさんの腰痛とか、整形外科を。 ○尾崎先生  年齢的にも、なってしまうと戻らないですね。 ○戸部座長  胃切除した後は、比較的骨粗鬆症とか、骨軟化症、来やすい。これは、ビタミンDと かカルシウムとかがありますが、そう簡単に治らない。これを全く障害として無視して しまうかどうか。 ○尾崎先生  この表現でいくと、薬剤の投与で軽快してしまう、するものだからということであれ ば、逆流性食道炎も、ホイパンみたいなものを使えば、最近は薬でかなり症状が軽快し てしまいますね。ですから、むしろ「早期の障害と、比較的数年経ってからの障害」と して、そこまでに止めたほうが。薬剤で症状が軽くなるから、そちらは置いておきまし ょうとは言わないほうがよいのではないかと思います。 ○医療監察官  これは、どこまでを視野に入れるかというところと、なぜ、どこまで見るのかという ことですが、1つは、論点のところにも書かせていただいたのですが、それでは貧血と か骨代謝障害というものは、数年経てから出ますということで、それまで何をするかと いって、結局何もしないのではないか。それで、「どうもちょっとおかしいんです」と いったときに、ビタミンDとかカルシウムとかを投与し始める。それで、おかしいぞと なったときには、もう、基本的にずっとこれは続けなければいけないのかと。 ○尾崎先生  この2つは、よく労災で言う「再発」ですか、あるいは「再燃」かわからないけれど も、改めて加療が必要な病態ということにすれば、胃を取った早期の障害の症状を3つ に一応規定して考えていくというほうが、3年後か5年後か10年後かわからないもの を、ここに組み入れて考えるのは難しいですし、それは後だからいいですよと切り捨て てしまうのもどうなのかなと思うのです。ですから、ここのところで、後の2つは、数 年を経過してから出た場合には、これは加療対象になりますというような言い方のほう が扱いやすいかなという気がするのです。 ○戸部座長  これはわからないのですが、いちばんこういう場合があり得ると思うのです。胃の切 除などの場合、労災で胃がなくなってしまった場合、確かに早期のものはすぐ症状が出 てくるから、治癒した時点でわかるけれども、こういう貧血とか、数年を経て出てくる ものを、労災としてどう取り扱ったらよいのか。起こり得るということは入れておかな ければいけないでしょうね。起こったときに。 ○医療監察官  その前に、業務上で、胃を取らざるを得なかったのですということがわかっていて、 そこからきているということが、合理的に言えるのですということであれば、治療の対 象にならないということはないのではないか。ただ、それが、私どももそう短期のもの をずっともっているわけではないものですから、実際に出てきたときに、前と関係があ るのかどうか、本当に業務上のものだったのかというところで、実務的にはちょっと、 場合によっては、なかなか認定が難しい場合があるかもしれませんが、そこがきちっと わかっているのであれば、逆に言うと治療の対象にしますと。 ○戸部座長  ですから、ある意味で、労働災害で胃全体がなくなるということ。これは落下災害と か交通外傷で。胃はいちばん表面にありますから、破裂するとか、取ってしまわなけれ ばいけない場合も起こり得るでしょうね。しかし、胃そのものがなくなったことによっ て、消化吸収のいちばん中心の臓器である胃を取ってしまうこと、その等級をある程度 定めておけば、それでそれが将来、胃酸もなくなって、カルシウム障害とか鉄の吸収障 害が起こることも含めて、胃の障害はある程度、大腸全摘と同じように第9級ですか、 それくらいに1つポンとしておけば、後のことはカバーできるかもしれませんね。  起こり得ることも予想して、第11級というのは比較的低いでしょう。 ○医療監察官  それは逆に言うと、加療することを前提にしているのですが、比較的早期のときに は、ほとんど無症状できて、症状が出現したときには、また労災で面倒を見ますという ことであれば、第11級でもそれほどおかしくないのではないか。逆に、これはもう見な いのです。どうかわからんということであれば、ちょっと元のところを高く評価してあ げるということにもなってくるのですが、さすがに、関係があると言って、治療が必要 なのに、治療を見ませんというわけにはなかなかいかないだろうということで。 ○戸部座長  ですから、この貧血や骨代謝障害については、一応は障害から除外する。しかし、そ れが出た時点で、また労災として扱うようなことを一筆入れておきますか。 ○尾崎先生  話が戻って申しわけないのですが、肝臓でも、一旦ウイルスが正常化しても、その後 肝障害を起こしたり、肝臓がんに発展した場合には、再発として取り扱うという、大体 どの臓器もそういう考え方でいくとすれば、晩期障害というか、時間が経ってからの障 害は再発として。特に貧血、骨代謝障害は、必ず投薬が必要になりますから。 ○望月先生  これは就労上の障害という視点も必要なわけですね。 ○医療監察官  はい。 ○望月先生  例えばダンピング症候群とか消化吸収障害の場合には、体力的にかなり落ちてしまう だろうということから、労務上問題が起こるということで、障害認定ということがある と思うのですが、胃を切ったことによって、すでに第11級という、一応のレベルの障害 認定をしてあるのであれば、それプラス貧血とか骨代謝障害ということで等級に反映さ せる必要はないのではないかと思います。例えば貧血については、投薬すれば貧血は必 ず改善します。  それから就労年齢の方で、胃全摘をして、骨代謝障害があるために、労務に支障をき たすということは、私はほとんどないのではないかと思うのです。胃切除をして、ある いは全摘をした後で、骨軟化症、骨粗鬆症が普通の人よりもひどく起こって、老後、就 労年齢を過ぎてから障害が出てくるという人は、確かにおられるかと思うのですが、そ れが原因で労務に支障をきたすことはないのではないか。ならば、そういう病態に対し て治療が必要という事態が起こったら、それは療養費の支給という形で補償すればよい ということなのではないかと思うのです。  肝障害とはちょっと違うと思うのです。肝障害の場合は、再燃してきた場合にはやは り安静を保たなければならない。それはどんな年齢でも起こり得ますしね。だから労務 に支障をきたす。 ○尾崎先生  いや、肝障害と、扱いとしてというか、再発というのが。いま、加療を必要とする部 分を、どこに組み込んだらいいのかということなのです。 ○望月先生  病態の再発ということでは、先生がおっしゃるとおりだと思うのですが、もともと の、労務に支障をきたす云々の観点からしたら、ちょっと馴染まないのではないかとい う気がしますね。 ○戸部座長  大体これは、労務に支障をきたすかどうかというのが、非常に大きな論点というか、 拠りどころですね。ですから、そういう考え方で捉えたほうがよいでしょうか。 ○課長補佐  いまの考え方は、いま先生がおっしゃったとおり、もしこういう症状が出たら、当 然、労災で再発ということで治療を、主に薬剤の投与という形になると思うのですが、 それは行いますと。ただ、それによって改善されて、1回胃の摘出で評価しているので すが、それをさらに上回って、貧血とか骨代謝障害というものをさらに上回って評価す るということは必要がないのではないかという、それがこの文章の真意ですが。 ○戸部座長  だから、これは非常に難しいですね。こういうのは、ちょっとほかの臓器ではないで しょうね。 ○課長補佐  そうですね。 ○戸部座長  しかも、仕事が終わってしまってから、10年くらいしてから、悪性貧血が出てくると か、そういうことは、明らかに労務災害で起こった胃の亡失の後遺症として、10年も経 ってから起こってきた場合、これをどう取り扱いますかね。 ○医療監察官  定年になっても、就労中だけ療養を見るわけではないものですから。これは別に、肝 炎でもそうなのですが、引退されてから、例えば肝硬変に進展しました、肝がんになり ましたといったら、その時点で療養が必要なものだということで認めます。胃の場合 も、例えば50歳で怪我をされました、60歳になって定年後、家でやっていたら、ちょっ と具合が悪いぞというような場合、お辞めになっていても、その仕事の怪我による胃の 全摘を原因として貧血が起こったということであれば、当然そこは認めます。お辞めに なっているから、もう労災では見ないということではありませんので、そこは療養の対 象にはなることは間違いないです。 ○戸部座長  それをちゃんと付記しておいて、ここから除きますか。 ○医療監察官  そのほうが、障害としては非常にクリアになるのではないかと思います。 ○課長補佐  先生は、先ほど「悪性貧血」という言われ方をされましたが、それは、私どもは当然 治療をして、治療してももうこれ以上は軽快しないよという段階で評価することになる のですが、悪性貧血というものが、治療してももっと重い症状を残すということであれ ば、全然評価しないというか、ということでよいのかどうかということは、ちょっと。 ○望月先生  悪性と付いていますが、ビタミンB12をちゃんと投与してやれば治るのです。 ○戸部座長  あれは、どうして「悪性」という名前が付いているのですかね。ビタミンB12などと いうのは、以前はなかったのでしょうかね。 ○望月先生  治療に難渋したのでしょうね。 ○医療監察官  しないままだと、エラい重篤な症状を呈することがあるという。 ○戸部座長  貧血は、比較的薬でよく治るのです。胃切除をすると、酸がなくなって、鉄の吸収が 悪くなるから、これは普通の人でも鉄欠乏性の貧血になりやすいです。それから全摘す ると、胃のいわゆる内因子というものがなくなってしまうから、ずっと肝臓に蓄積され ているそういうものがなくなった頃から出てくるのですね。  ですが、これはもう今では、ビタミンB12とかを投与するとよく治るけれども、骨粗 鬆症のほうは、実際なかなか治りにくいですね。治らないと考えたほうがいいのではな いでしょうか。ですから、これは薬で軽快するものであると断言はしないほうがよいで すね。 ○医療監察官  そうなってしまうと、もうやめられない状態であると私は理解しているのですが、貧 血にしても、要は外から補給してあげないともう駄目な体になってしまっている。カル シウムを普通の状態では吸収できないような体になってしまっている。だから、外から ずっとテコ入れをしていかなければいけないような状態。そうなれば、これはもう、治 癒がないものですから、後はずっと労災のほうで、療養費だけということが中心になる のでしょうけれども、ずっと治療代のほうは見させていただきますということになるの かと思います。 ○戸部座長  ただ、これも老化と随分関係が深いですから、ここでそれをはっきり記載すると難し いですね。 ○医療監察官  実際に分けられるかどうかというのは、ちょっとアレなのですが、理屈として見れ ば、業務に起因してそうなっているのであれば、当然見ますということになろうかと思 います。そこは誤解されないように気をつけながら書かせていただきたいと思います。 ○戸部座長  そうしたら、「貧血は薬剤の投与によって、その症状が軽快することが多いものであ る」と断言せずに、「ことが多い」くらいにしておいてはどうでしょうか。それで切っ てしまったら。「貧血や骨代謝障害を障害として評価することを除くことにする」くら いのほうが、表現が穏やかですね。それで、「したがって、胃全摘後発生する慢性の症 状のうち」、これはやはり、消化吸収障害をいちばん筆頭に置いたほうがよいですね。 「消化吸収障害、ダンピング症候群、逆流性食道炎を後遺障害として評価することが適 当である」と切ってしまって、「逆流性食道炎」以下は抜いてしまいましょう。それで サッと次に進んで、「後遺障害による症状」を読んでいただけますか。 ○障害係  (資料の読み上げ「(2)後遺障害による症状 ア 消化吸収障害」 ○戸部座長  これはどうでしょうか。 ○望月先生  最初の「胃全摘等により」というところからですが、「消化吸収障害が生じるのは胃 の容積が減少したこと等に伴い食物の通過時間の短縮等が生じるから」と書いてありま すが、正確ではないと思います。「胃全摘等による消化吸収障害を生じるのは、消化に 関連する胃液の不足や欠如、胃の容積が減少したこと等に伴う食物の通過時間の短縮等 によるものであり」と、この両方が入っていないとおかしいですね。 ○戸部座長  そうですね。これは、胃の容積が減少したというだけではなくて、先生がおっしゃっ たように、これは消化のいちばん大事なペプシンによって、食べたものをかゆ状にして しまって、胃の中でかゆ状にして、それで小腸に送っていくわけです。それで、胃の中 で、これは袋として幽門機能があって噴門機能があって、食べた物をやはり何時間かそ こに止めておいて、そこへペプシノーゲンが分泌されて、胃酸でペプシンになって、ま たphが2から5くらいですが、そこでこの食べた物がおかゆみたいになってしまうので す。それから小腸へ少しずつ送られていって吸収されていくのです。それがなくなるわ けですから、ボリュームが少なくなったのではない。もちろんボリュームもなくなるけ れども、いちばん大事なペプシンと胃酸がなくなってしまうからです。それで胃の容積 が少なくなっていくのと、やはり幽門機能と噴門機能がなくなって、袋として止められ ないから。いま望月先生がおっしゃったことがいちばん大事なのです。容積が減少し、 これ以上に大事なことが抜けていますから、それをちゃんと入れておいてください。そ れから臨床所見。  ほかはどうですか。「脂肪便が認められる」ということですが、これはどうですか、 消化不良便ですね。 ○望月先生  はい。いちばん客観的に評価しやすいのが脂肪の量だからということで書いてあるの ではないかと思いますね。小腸のときも、それが問題になりましたから。 ○医療監察官  客観的に検査ができて、脂肪がいちばん評価されやすいのかなと。ただ、食物が、欧 米人と違うので、出てくるかという問題がちょっとあるのですが。 ○戸部座長  膵臓がなくなってしまって、リパーゼが出てこなくなると、明らかに脂肪便という表 現をしますが、確かにいま言われたように、消化不良の中で、脂肪がいちばん吸収され にくいということで、脂肪便と出されているのですが、普通は、胃全摘の後で、「脂肪 便」という言葉を使いますか。 ○望月先生  そうですね。おっしゃるとおり馴染まないところがあるのですが。 ○戸部座長  書いてあるのはわかるのですが、ちょっと馴染まない。 ○医療監察官  あともう1つ、これにしたのは、消化吸収不良症候群についての、昔の厚生省の研究 班。 ○戸部座長  「脂肪便」と書いてありますか。 ○医療監察官  それは、1つの原因だけではなくて、いろいろ、こういうときにはむしろ短腸症候群 だとか、こういう場合には胃の全摘からきていると見るのがいいんだよという、1つの ものとして、脂肪便で見なさいというのがあって、それを、この6.0グラムというのも、 そこから引っ張ってきているのですが。  ただ、ここはもう、いろんなものの原因による消化吸収障害の1つの見方として、脂 肪便というのがあって、この脂肪便については、このくらいを基準にすべきだというこ とが、いまでもどうもそれくらいしかないようなので。 ○戸部座長  ありますか。 ○医療監察官  ええ、その報告自体が、消化吸収不良の見方としては、汎用的な見方としては、どう もそれくらいしかなさそうなので。 ○望月先生  そうすると、いまのところの24頁の(1)(2)(3)を、(2)として「消化吸収障害が認めら れること」と書いて、そこのさらに小さな1番として「評価の指標として脂肪便が認め られること」とか、「糞便中脂肪量が6g/日以上」と書いて、それから2番として 「低体重・慢性下痢があること」というふうにすると、つまり、消化吸収障害の1つの 指標として言われているのだということがわかりやすくなるのではないでしょうか。 ○尾崎先生  このまま読むと、「いずれの要件も満たす」と言われると、なかなかきつくなります ね。いま先生が言われたように、通常でいったら、胃の手術をして、客観的に何かしら の臨床所見で、消化吸収障害があれば。 ○望月先生  そういうことですね。(1)と(2)があって、(2)の中に小さな1と2があって、そのど ちらでもよいということにしておくと、わかりやすいのですが。 ○課長補佐  (2)のアで、「消化吸収障害」とあって、この消化吸収障害を認めるのに、消化吸 収障害があることという形になってしまうので、ちょっと。 ○戸部座長  これは、やはり(1)が、胃の全部または噴門・幽門部の一部を切除したこと。(2)が、 いまの%標準体重。これは、普通はよく馴染むことですね。それから脂肪便は、消化不 良便のほうが馴染みやすい。消化不良便というのが、定義としては、脂肪量が6グラム といったものはないですが、消化不良の便は、見た目でわかりますね。普通のきれいな 便ではなくて、食べた物の残滓が、そのまま残っているような。 ○医療監察官  そうしますと、「消化不良便であると医師が認めたもの」とか、そのような。 ○戸部座長  それも、毎日でなくても、「ときに」でいいでしょうね。しかしこの中の3番目にあ る、「%標準体重が80以下のもの」、これは、術後の回復に普通よく使われますね。 ○課長補佐  尾崎先生が言われたように、(1)、(2)、(3)を全部満たすというのは、相当厳しいと いう。 ○尾崎先生  消化不良便というならまだよいと思うのですが、6グラムを満たすというのは、通常 の外来で、1日便を採って脂肪を調べてというのは。ですから、望月先生が言われたよ うに、(1)、(2)にして、(2)に「消化吸収障害」というのが2回出てくるのがアレだっ たら、臨床症状とか、そういう名前にしてどうですかね。 ○課長補佐  「以下の臨床症状がある」みたいな形で。 ○戸部座長  これは、消化吸収障害があって、消化吸収障害に由来した症状。 ○尾崎先生  障害による症状ということで、先生がおっしゃった小さい1、2というような書き方 はいかがですか。 ○医療監察官  「以下の臨床症状が認められること。1消化不良便が医師により確認されること。2 低体重や慢性下痢」と。で、それはいずれも。 ○望月先生  「いずれかが要件」のほうがいい。 ○医療監察官  「いずれも要件」か、「いずれか要件」か。まあ、消化不良便くらいであれば、「い ずれも要件」でというのであれば、そういうふうに設定させていただこうかと思うので すが。 ○戸部座長  やはり併せると、「%標準体重」がいちばん妥当ではないでしょうか。消化不良便は なくてもよいくらいだと思います。 ○望月先生  体重が減らなければ、実際にはそんなに問題ないわけですね。 ○尾崎先生  手術をして、体重減少があるというのが、もう消化吸収障害の。 ○医療監察官  そうしたらもう、要件2つだけにして。低体重が確認されること。それで、低体重と いうのはこういうものですよというだけの、すっきりした動きにしてしまう。 ○尾崎先生  そのほうがいいですね。 ○戸部座長  はっきりしてよいですね。普通の、標準体重の8割といったら、これはすごく痩せで すね。標準体重をいくつにするか。BMIをどのくらいにしますか。標準体重そのもの が、大体いま、肥満度のBMIは21から25くらいまでを標準体重にしていますでしょ う。 ○尾崎先生  受傷前の体重ではいけないのでしょうか。 ○戸部座長  しかし、その人が受傷前から肥満症状だった場合には。 ○望月先生  逆に、痩せている人はならないですね。 ○課長補佐  標準体重の式をきちっと明記しておけばいいわけですね。 ○戸部座長  はい。標準体重の表現を明記しておいてください。肥満度をどのくらいにするか。 ○望月先生  (身長−100)×0.9ぐらいですね。 ○戸部座長  いまは(体重)÷(身長をメートル数で表した2乗)を肥満度としている。肥満度を ある程度決めて、(身長m)2×肥満度、その肥満度を21〜25,標準的肥満度は大体22 ぐらいですね、厚生労働省は。 ○医療監察官  そうです。 ○望月先生  実際は21〜25ぐらいですね。 ○課長補佐  労災法の施行規則の中にも、たしかBMIが載っていたと思います。省令規定になり ます。 ○戸部座長  たしか死の四重奏で肥満度を決めました。これについてはまた調べて。 ○医療監察官  合わせる形で。たぶん見つかると思いますので、次の「ダンピング症候群」を読み上 げさせていただきます。 ○戸部座長  お願いいたします。 ○障害係  (資料の読み上げ)「イ.ダンピング症候群」 ○戸部座長  ダンピング症候群には2つあるのです。早期のearly dumpingと晩発性のlate dumping です。早発性のアーリーダンピングはここにも書かれているとおりですが、この中でい ちばん注目するのは起立不能、つまり立っていることができない。ここには括弧がして あって、desire to lie downと書いてあるように、横になりたいような、そのようにな るともう立っていられないということがダンピングの症状にはよく書かれてあります。  晩発性のレイトダンピングでは、食後2〜3時間後に低血糖症状が出てきます。低血 糖による空腹感、これは食べたものが早く腸に移ってしまうためで、その2つを書いて いただくことと、しびれというのがどこかに書いてありましたが、これはあまりこない です。いまのdesire to lie downを付け加えていただきたい。この中の「症状が残存し た場合における労働能力に与える支障の程度は比較的軽度であり、労務に支障を与える 」とありますが、この表現が少しおかしいのです。「支障の程度が比較的軽度であって も、労務に支障を与えることがある」ということではないでしょうか。 ○医療監察官  はい。ここはどの程度の等級にするかということで、確かに、その症状が出たときは 大変ですが、症状を予防するためにある程度やってあげる。すぐには活動できないが、 症状が出たときには安静にしなければいけないが、そこを過ぎてしまえば、逆に言うと 普通に仕事ができるということを考えると、労務に支障があるという第11級程度ではな いか。この職種には絶対就いてはいけないというところまではいかないのではないかと いうことで、このような書き方をしているのです。 ○戸部座長  要件を満たすものとしては、幽門部を含めて胃の切除を行ったこと、食後30分以内に 目まい、しびれ。しびれは取って起立不能、ダンピング症候群に起因すると認められる 症状、あるいは2〜3時間を経過して低血糖症状を呈する、これも入れておいてくださ い。 ○望月先生  ダンピング症候群のところで、「症状としては」と最初から書いてあるのは、早期ダ ンピングのことですね。 ○戸部座長  そうです。 ○望月先生  その3行に早期ダンピングのことが書いてあるので、その後に、やはり晩期ダンピン グ、晩発性ダンピングのこともここで説明する必要があると思います。その上で、「対 応としては食事指導を主体とした保存的治療が主体であり」と続き、最後に「以下のい ずれかの要件を満たすことが適当である」という中で、1番はこれでいいのですが、2 番は、早期としては食後30分以内の目まい、晩期としてはと、別々に書いたほうがわか りやすいのではないかと思います。 ○戸部座長  そのほうがいいと思います。 ○望月先生  1、2という数字は、上のほうと整合性を照らすならば、(1)、(2)のほうがいいと思 います。 ○戸部座長  そのほうがわかりやすいです。(1)、(2)でいまのことを付け加えてください。 ○課長補佐  二次健康診断給付の支給を決めるための検査としてBMIを使っているのですが、厚 生労働省令の中でも、BMI=体重kg/(身長m)2で、これが異常値を示す場合とい うのが要件ですから、やはりBMIはこの式を使っています。 ○戸部座長  数値はいくつになっていますか。 ○課長補佐  数値は示していないのです。BMIで異常を示す場合ということだけです。 ○戸部座長  何か書いてあるはずです。 ○医療監察官  それがガイドラインということで決まっていて、その上限を標準体重と考えれば、他 との整合性はつくのではないか。異常でない、いちばん上の値を取ってあげれば、いち ばん太いところの正常値を取って、それの80以下ということで言えばいいのではないか と。そこがいま確認できないので、その数値を取らせていただきます。 ○戸部座長  次回までに書いておいてください。「異常」という以上は数値が入っているはずです が。 ○医療監察官  ガイドラインということで数も入れているのですが、いま出てこないものですから。 ○戸部座長  たしか21〜25だったと思います。ちょっと確認しておいてください。次に、「障害 の評価」に移ります。 ○障害係  (資料の読み上げ)「(3)障害の評価」 ○戸部座長  「摂取量の制限も必要である」ということは、制限されているのであって、自分で制 限するという意味ではありませんね。 ○医療監察官  そうです、もともと。 ○戸部座長  食べられないようにしているということですね。 ○医療監察官  そうです。 ○戸部座長  そうすると、摂取量の制限という表現はおかしいのではありませんか。 ○医療監察官  自分でコントロールしているような語感があるということですか。 ○戸部座長  必要があって自分で制限しているのではなくて、摂取量の制限をされてしまうわけで すから、この表現はまずいのではありませんか。「食事後安静にとどまらず、摂取量も 制限されるから」でしょう。 ○医療監察官  そうですね。 ○戸部座長  否応なく制限されるからという意味ですよね。摂取量だけでなく、食事の質まで変わ ります。ダンピングを起こすと、甘いものなどは全然食べられなくなるのです。それか ら冷たいもの、ビールの一気飲みなどをしたら、いっぺんに引っくり返ります。とにか く、胃袋がなくなって、そのまま腸管へ持っていくから、甘いものなどの吸収はぐっと ダンピング症状が出てきます。 ○尾崎先生  ここの部分に逆流性食道炎の要素が入ってくるわけです。 ○戸部座長  逆流性食道炎もここへ入れましょう。逆流性食道炎は内視鏡で。 ○尾崎先生  3つの症状ということですね。 ○戸部座長  ア、イ、ウとありますが、ウをダンピングにして、イが逆流性食道炎となります。 ○尾崎先生  「ひどいもの」という表現の仕方は、適切でないような気がします。 ○戸部座長  ア、イ、1、(1)、(1)など、これは厚生労働省で決まったものがあるのですか。 ○医療監察官  (1)、ア、(ア)など決まったものがあります。 ○戸部座長  それでは、それを合わせて。 ○望月先生  障害の評価のところで、逆流性食道炎も入ったときは、書き方が少し難しくなります から、そこは工夫しなければいけないと思います。 ○戸部座長  これは、やはり消化吸収障害がいちばんで、それから上の逆流性食道炎、次に下の幽 門のダンピングという順番のほうがいい。消化吸収障害のほうに重点を置いて、「消化 吸収障害,逆流性食道炎及びダンピング症候群」という表現が適当ではないでしょう か。 ○尾崎先生  食道が入ると、もう1項目を食道の部分からどう引いてくるか、文章がちょっと。 ○課長補佐  たぶん、いちばん最終は7月29日開催の第4回の資料8頁に出ています。ただ、この まま持ってくると不自然です。 ○尾崎先生  これは(3)の障害の評価の上に入ります。 ○課長補佐  8頁はそうです。 ○尾崎先生  消化吸収障害があって、これが入って、それでダンピング症候群ということになるわ けです。 ○望月先生  逆流性食道炎でも、「噴門部が損傷されてなくても」ということが書いてあり、これ を食道の項に入れたわけです。食道の項の(3)胃の噴門部の手術等により亡失したこと と書いてありますから、胃のところで入れるものは(3)だけです。ただ、原因としては 同じで、逆流性食道炎の2行目のところで、「胃の噴門部は損傷を受けていないもの の、胃酸の分泌が多いことにより逆流性食道炎の」と書いてあります。 ○医療監察官  ただ、業務上のことを考えて、術後、逆流性食道炎について検討するということで す。 ○尾崎先生  障害の評価の前に入れるのだとしたら、この表現を大体横滑りさせればそれ程問題は ないと思います。障害の評価に逆流性食道炎をどの程度の障害として絡んでいかせるか ということだと思います。 ○望月先生  3つが全部ある人もいるわけですから、2つの人と同じ等級でいいかということが出 てきます。 ○尾崎先生  症状としてはないが、手術した人と1、2、3ときてしまう可能性があるので、2つ 以上でいいのではないかという気もします。逆流性食道炎とダンピングというのは、そ れ程バッティングしませんよね。どちらかというと、下にいくものと、上に戻るものだ から、3つのうち2つでいいのではないかと。 ○望月先生  2つ以上という表現でよろしいですね。 ○尾崎先生  ここに逆流性食道炎の表現も盛り込めば、まだ先にありますが、3つの症状が出る が、その2つ以上か1つか、というところでどうでしょうか。 ○医療監察官  そうすると、後は基礎となるところが第13級でいいのかどうかです。13になると13、 11、9ということになるのですが、11、9、7になるのか。その点が、先ほど先生が言 われた、例えば胃全摘だけは11にするなどといったことが、すぐには評価できないが、 かなり重要なので11ぐらいだとするのか、あるいは症状として出なければ13でいいとす るのか。表現は変えますが、13、11、9ということに。 ○戸部座長  障害等級へ進んでもらいましょうか。 ○障害係  (資料の読み上げ)「(4)障害等級」 ○戸部座長  上の2つは全く同じものですか。 ○医療監察官  第9級のほうは、先ほどの話でいくと、3つのうち2つ以上の症状が出ているものが 第9級ということです。第11級というのは、3つのうち1つだけ症状が出ているものと なります。第13級というのは、特段の症状は出ていないが、切ったということだけでそ れなりの制限があるということです。 ○戸部座長  ここでは「胃の全部または噴門部、若しくは幽門部を含む一部を亡失し、消化吸収障 害及び逆流性食道炎あるいはダンピング症候群を認めるもの」という表現ですね。もう 1つは「胃の全部または噴門部、若しくは幽門部を含む一部を亡失し、消化吸収障害及 びダンピング症候群と逆流性食道炎を認めるもの」ということですか。 ○医療監察官  先ほどの議論では、いずれか1つの症状を認めるものという形になります。 ○戸部座長  両方合併することは全くあり得ないでしょうか。例えばアルカリ性の液が逆にぐーっ と上がってきて、アルカリ性の腸液による食道炎があり得るわけですから、ダンピング と逆流性食道炎の両方を合併することがあり得ると思うのです。 ○医療監察官  3つの場合は、さらにその上の等級ということでも。大変なのだということであれ ば、それでもよろしいのです。 ○戸部座長  3つある場合はあると思います。そのような人に限って、消化吸収障害も起こりやす いのです。 ○望月先生  2つあると、消化吸収障害になってしまいますね。ですから2つあれば十分です。イ コールでもいい気がします。2つ以上ということだけでいいのではないかと思います。 ただ、他の障害との整合性がどうかということになります。 ○尾崎先生  等級に関しては、胆嚢が第13級でしょうか。 ○望月先生  いま見ていたのですが、肝硬変でAST、ALT値が基準値を超えないものが、第9 級の7の3です。胃を全部取って、ダンピングと消化吸収障害があるのと、肝硬変でA ST、ALT値が持続的に正常範囲にあるものが同じなのです。膵臓の機能障害でいく と、外分泌機能及び内分泌機能のいずれにも障害を認めるものは、第9級の7の3で す。それがちょうどいいぐらいかどうかです。 ○尾崎先生  最後は各臓器の一覧表で動かしていかないと。 ○戸部座長  この次にもう一度整合性を見直しても。 ○望月先生  3つの要素を設定して第7級にすると、ここだけが突出してしまうような感じがする ので、このままでいいような気がします。 ○尾崎先生  3つのうちの2つ以上ということですか。 ○望月座長  2つ以上と1つ。と無し。 ○戸部座長  3つあれば、第9級は必要でしょう。2つの場合は第11級ですか。 ○課長補佐  いまのは1つあれば第11級です。2つあっても3つあっても、第9級、1つであって も第11級ということです。症状が全然ないという場合が第13級ということです。 ○戸部座長  第13級ではおかしいと思います。胃が全部なくなって、何も症状がないということは あり得ないと思いますから、やはり第11級は必要ではないでしょうか。 ○尾崎先生  膵臓のほうで、軽微な膵液漏ということで第12級というのをつくりましたね。 ○医療監察官  その場合は、痛みだけに着目して第12級ということですが、この場合は、胃を取った から痛いというものではないだろうと。ここは何に支障があるのかを考えると、食べ方 や食べる量にどうしても制限があるので、障害が残ることは間違いないから第13級とし ているのですが、胆嚢摘出やひ臓などに比べたらこんなものではないと。明らかに制限 が出ることで基点が第11級になるのであれば、第11級の7ということになってくるとい うことです。例えば胃の全摘だけは第11級にして、部分切除といったものは第13級のま まにする、ということもあるのではないかと思います。 ○戸部座長  その考え方はどうでしょうか。とにかく障害の等級に関しては、もう一度考え直さな ければいけないのですからね。 ○尾崎先生  第13級は、胆嚢がなくなったのも、ひ臓がなくなったのも、胃が全部なくなったのも 同じということですね。 ○医療監察官  そうです。 ○望月先生  そうなったのですか。胆嚢は第13級でまだ消えていないのですか。 ○医療監察官  これも仮置きということですが、第11級にはならないということです。しかし、何も ということはどうかということで、ひ臓もそうですが、仮にやるとすれば第13級が適当 だろうと。胃の全摘が第13級では適当でないということであれば、基点が上がってくる わけです。 ○戸部座長  まず、いままでの我々のコンセンサスというか合意点としては、胆嚢、ひ臓が第13級 というのは誰が考えてもおかしくないが、胃の場合は、いろいろなことを考えると、第 13級で同列に置くのはどうかと思います。 ○望月先生  これは胃全摘とその他の切除を、2つに分けてはいかがでしょうか。 ○戸部座長  そうですね。 ○望月先生  幽門側胃切除は、第13級でもいいのではないかという気がします。座長が言われるよ うに、胃全摘が第13級のままでひ臓や胆嚢と全く同じというのは、労働上、全く支障を 来さない人だからそれでいいのではないかという議論もあるかもしれませんが、釈然と しないものがあります。 ○戸部座長  障害等級の等級そのものは後で決めるにしても、「胃全摘と部分切除、部分切除も噴 門側部分切除と幽門側部分切除」、切除という形では少し抵抗を感じるかもしれないか ら、「胃全部を亡失した場合」が1つ。胃全部を亡失して、ダンピングと逆流性食道炎 を合併する場合、そのいずれかを合併する場合、噴門を含めて噴門側胃の一部を亡失し た場合、それに逆流性食道炎を伴う場合と伴わない場合、幽門側部分を亡失した場合、 それにダンピングを伴う場合と伴わない場合、これぐらい分けるとすっきりします。 ○尾崎先生  第9級の7の3というのは、まず胃切除、幽門側でも胃切除だけで1つです。胃全摘 というのは、どのような形であっても、おそらく消化吸収障害を伴うから、第11級の9 以上で判定するということだと思います。 ○望月先生  そうすると胃全摘で逆流性食道炎プラス、ダピング。 ○尾崎先生  そうすると第9級の。 ○望月先生  両方伴うと第7級になってしまいますから、それがいいかどうかです。例えば、膵外 分泌、膵内分泌両方とも障害とされたものは第9級ですから。 ○戸部座長  それはまた後で全部統一させていかなければなりませんから、まず誰が見てもおかし くないように統一しなければいけませんが、胃を全部取ってしまったら、いろいろな障 害を残し得る胃を全部取ってしまい、しかもダンピングと逆流性食道炎があったら、痩 せるでしょうし、正常の仕事はちょっと難しいです。ですから、やはり第9級。第9級 の7の3の上は何ですか。第7級はどうなりますか。 ○医療監察官  年金になります。年金になるのはいいのですが、軽易な業務にしか就けないのです よ、というのは。 ○戸部座長  それだけのものは来ると思います。 ○課長補佐  本当に、そのような人は事務の仕事だけにしてくださいと先生方からは言われてしま うような人ですね。 ○戸部座長  先生方は実際に胃全摘をされて、いかがですか。 ○望月先生  ちゃんと社会復帰しています。 ○尾崎先生  リミットを第9級の7の3に設定して、その下を4つぐらいに分けなければいけない と思うのですが、難しいですね。 ○戸部座長  ダンピングも逆流性食道炎も、両方くるようなものはありませんか。 ○医療監察官  数は少ないかもしれませんが、そのような場合は大変だということで、そうしたもの だけ第7級に突き抜けても構わないのかもしれません。 ○戸部座長  それを一度決めてしまうと、判断するときに評価は難しくなるかもしれません。 ○課長補佐  胃全摘をし、ダンピングなどいろいろな症状を併発しているいちばん症状の悪い人で も、これからは事務の仕事のように軽い仕事しかできないと言われるような人はいるの でしょうか。そのような人がいるのであれば。 ○望月先生  最近の胃全摘は体重はもちろん減りますが、結構労働能力はあるので、ただ数字の上 だけで合わせていってしまうと第7級になるというのは、ちょっと突出し過ぎではない かという感じがします。しかし、胃全摘を第13級にし、胆嚢やひ臓と同じにしておくの もおかしいです。 ○戸部座長  第13級はおかしいですね。 ○尾崎先生  第12級ぐらいはあると思います。 ○戸部座長  第13級はひ臓、胆嚢の機能障害が全く考えられない場合、しかし、1つの大事な臓器 がなくなったからというぐらいの判断でしょうね。第13級の下の第14級というのはなか ったですか。 ○医療監察官  本人は痛い痛いと言っているが、本当に痛いのかというぐらいのものを第14級にして います。それなりの役割を果たしていた1つの臓器が、結果的になくなったということ から考えると、第13級がいいのではないかと思っています。尾崎先生が言われたよう に、胃の全摘については、消化吸収障害が頻発と考えたならば、それだけで第11級にな る。部分的な亡失については、なるか、ならないかわからないので第13級とするぐらい が納まりが。級を前提にすると、そうならざるを得ないのではないかと思いますが、最 終的なところは他との並びで決まってくるかなということのようです。 ○戸部座長  障害として考えられるのは、胃全摘、噴門側切除、幽門側切除の3つです。噴門側切 除は逆流性食道炎を起こし得る、つまり噴門があれば逆流性食道炎は起こらず、逆にダ ンピングを起こすので、分けられるとしたら、噴門側切除で逆流性食道炎があるか、な いか、幽門側切除でダンピングがあるか、ないか、それから胃全摘で逆流性食道炎、ダ ンピング症候群の両方があるか、ないか、障害の度合いとしてはそれぐらいです。幽門 側を切除してダンピングがない場合、普通の人の場合は何ともなく生活することはまず 考えられないですから、もっと下のほうでも。もっと低いのは第11級の9ですか。 ○医療監察官  何もなければ第13級です。 ○戸部座長  第13級でもいいですね。噴門側切除のほうが逆流性食道炎も起こしやすいし、幽門側 切除よりちょっと厄介ですから、ちょっと上でしょう。 ○望月先生  ほとんどが起こすから、黙っていてもプラス1になって第11級に上がるわけです。 ○医療監察官  なりますね。そのように考えると、本当に何もない人は同じだということで第13級で いいのではないかと。 ○戸部座長  しかし、胃全摘で第13級はおかしいです。 ○医療監察官  胃全摘で第13級というのは、理屈としては必ず消化吸収障害を起こすと考えて、最低 でも第11級にする。 ○戸部座長  症状としては起こさなくても。 ○医療監察官  そのように見てしまうということで、ちょっとつくりを変えると。 ○戸部座長  尾崎先生、いかがですか。 ○尾崎先生  等級の順序はそれでいいと思うのですが、4つの段階をうまくつくることができるか という問題です。 ○医療監察官  胃全摘についてはプラス1の条件は、必ず。 ○尾崎先生  1つあれば、もう第9級。要するに、胃全摘をやったら、第11級の9であって、そこ に逆流性食道炎かダンピングのどちらか1つあれば、プラス1で第9級です。 ○医療監察官  そうです。 ○尾崎先生  胃切除の場合、何もなければ第13級で、1つあれば第11級、2つ以上は第9級。 ○医療監察官  2つ以上が第9級です。 ○戸部座長  胃切除の場合、2つ以上はあまり起こらないでしょう。 ○尾崎先生  そうです。2つまでです。 ○戸部座長  噴門側を取らないと逆流性食道炎は起こらない。 ○尾崎先生  ただ、胃全摘は3つという可能性があるから、胃切除の2つと胃全摘の1つが3つに なっても、上は同じということになってしまいます。そこのところです。 ○医療監察官  そうです。そこがいいのか悪いのかということですが、実際上はどちらかだというこ とと、そうなったとしても、軽易な業務にさえ就けないというほどではないと考えて、 第9級でいいのかどうかです。 ○戸部座長  胃全摘でどちらかの症候群、あるいは両方を合併するものが最優先で、その次に胃全 摘がきて、それから噴門側切除と幽門側切除ぐらいに分ければ、4段階になるのではあ りませんか。 ○望月先生  いま、第7級の障害等級早見表を見ているのですが、胃全摘で2つ以上の障害が出た 場合は、やはり第7級でもいいかもしれない。他のものを見ると。 ○尾崎先生  お腹の臓器の、他のものとの兼合いと、他の器官の症状の等級ですね。 ○戸部座長  ともかく、手足がなくなったというのでも、このごろは義肢で普通の生活ができます が、内臓のなくなったものは代償作用というか、コンペンセーションが非常にうまく効 いて、一見、外には出ないが、やはり1つの臓器がなくなるということは大変なことで す。特に、胃の場合は後にも障害を残すので、基本的には第13級というのはおかしいと 思います。 ○医療監察官  第7級ぐらいでもいい。 ○戸部座長  第7級であってもおかしくはないです。 ○尾崎先生  おかしくないです。ここに書いてあるのは胃切除の等級であり、胃全摘になると、も う1段階上げて第11級の7ということになります。 ○医療監察官  そうすれば4段階で、先生が言われたような形できれいにできるのではないかと思い ます。 ○尾崎先生  4段階つくることができれば、いちばんすっきりします。その場合、膵臓を含めた他 の臓器の第7級、第9級、第11級は、一覧表にして見てみないと何とも言えないです。 場合によっては、膵臓などでも、この間のものより上がる可能性があるかもしれませ ん。 ○医療監察官  第11級ではなくて、7、9のような形でもいいのではないかと思います。 ○戸部座長  この頁だけのコピーは難しいですか。 ○医療監察官  可能です。 ○戸部座長  この本を持ち歩くのは重いですが、例えば、ここへ来るときに新幹線の中でこれをず っと見ながら来たら、頭の中でひらめいてくるかもしれません。この表の裏・表の1枚 紙と、いままで仮に付けた等級の一覧表を次回までに。 ○課長補佐  次回までに用意させていただきます。 ○戸部座長  送っていただけますか。 ○課長補佐  送らせていただきます。 ○戸部座長  胃のほうはそれで進めていいですか。 ○医療監察官  かなり時間が押していますので、小腸、大腸は論点のほうで説明させていただき、今 日はご意見を伺わせていただきたい。考え方が悪いということならばまた別ですが、そ れほどおかしくないということであれば、今日のことを踏まえたものを、早急に先生方 にお送りいたしますので、そこでご意見を加筆していただき、次回に備えるという形を 取らせていただきたいと思います。 ○戸部座長  読ませていただきましたが、たたき台として非常に詳しく作られていますので、まず 何も問題はないと思います。字句も結構ですし、このままでも問題ないと思いました。 ここでの問題は等級がどうかということと、最後の放射性腸炎が実際の障害としてあり 得るかどうかということです。 ○医療監察官  これは望月先生のご指導で作らせていただいたものですが、小腸、大腸の基本的な考 え方としてはこれでよろしいと座長から言っていただければと。望月先生からの宿題 で、まだ解決ができていないことに、9頁に書いてある「放射性腸炎」の関係がありま す。これを中に盛り込んだほうがいいのか、あるいはこれは労災としては考えにくいと いうことで書いたほうがいいのか、できれば次回この場で討議していただければと思い ます。9頁の放射性腸炎ですが、基本的には、ばく露から離れれば警戒するのが普通だ と、場合によっては遷延化する、あるいは晩発性の障害というものが起きることがある ということになります。労災の場合、癌などでずっと照射をしなければいけないことを 考えると、元のものが治らない、治らない場合は治療の対象であるということで、今回 検討していただいているような治癒した後の障害にはならないわけですから、他が治っ てこのようなことが残ることがあるのかどうかということ。  2番目としては、胃のところでも出てきましたが、晩発性のものが出た、あるいは遷 延化したといったとき、腸炎をほったらかしにすることはあるのか。要は、出たら出た で治療をするということであれば、これは加療の対象だということだけ書いておけば足 りるわけです。逆に、治療がないような状態、これ以上治療をしても仕様がないといっ たことも放射性腸炎ではあるのか、あるとしたら、次にどのような障害が出るのか。消 化吸収障害なのか、腸管の狭窄のような話なのか、あるいは他に症状が出るのか。狭窄 であれば、1回審議していただいた基準があるので、そのままそれを使えばいいという ことにもなります。 ○戸部座長  労働災害として、放射性腸炎が起こり得るかどうかということです。実際に膀胱がん などはあり得るかもしれませんが、膀胱がんで手術後の放射性腸炎、放射性腸炎そのも のは労働災害にはならないと思います。 ○望月先生  普通、治療目的で放射線をかける場合は、60グレイ、50グレイをかけるわけです。そ のような被爆が放射線の事故や労働災害で起こり得るかどうか。例えばチェルノブイリ で被爆した人たちが、その後放射性腸炎で悩んでいる人がいるかどうかということ。東 海村事故で何人か亡くなりましたが、亡くならなかった方々に、その後放射性腸炎の徴 候があるのかどうかということです。 ○医療監察官  生存されている方については、臓器のほうもやられているのですが、特に皮膚の障害 がひどいということで、当面治療をやめられるような、そもそも病院の無菌室から出ら れるような状況ではないということです。あれは非常に特殊な事故だったので、通常の 被爆であれば、もっと話にならないくらいの確率的な影響が出るものぐらいしかばく露 をしないし、させないということが私どもの規制です。後はベンジジンとかジアニシジ ンなどを取り扱っているような染料の所の人に膀胱がんが出たので照射をしたと、これ もあまり効果がなければ膀胱を取ってしまい、尿路変更ということで評価してあげれば いいわけですから、放射性腸炎はなかなか業務上では考えにくいのではないかと。 ○戸部座長  このところから、「放射性腸炎は労災補償の対象になり得ないと思われるので省略す る」ぐらいのことを一筆入れておけばと思います。普通、放射性腸炎は昔のコバルトな どによる深部照射をやった後、相当時間を置いてから出てくる場合が多いのです。あり 得ないと思います。 ○望月先生  あり得ないです。 ○医療監察官  それではそのようなことで。 ○尾崎先生  東海村のも、全部深部までいっていないらしい、せいぜい2センチ止まりということ です。 ○戸部座長  そうでしょうね。 ○尾崎先生  あのような被爆は。ですから、いわゆるリニアックを含めた照射とは、同じ被爆量で も違うようです。 ○戸部座長  ですから、除いていいのではありませんか。それからここでちょっと気になったの は、例えば人工肛門を作って、その後処置が非常に悪いということが入っていますが、 そのようなときはもう一度作り直すとか。いままでの臓器でもヘルニアなども再発した ら外科的に治し、どうしようもないものを障害に考えたという、これについてもその考 えでいいのですか。 ○望月先生  そういうことになります。もう1つは、外傷でそのようなものが作られた場合は、皮 膚にケロイドが残ったり、薄皮が残ります。瘢痕が残ると、どこに作ってもうまくいか ないということがあり得るのです。2回目、3回目の手術で形成手術をしようと思って も、初めからできないということもありますので、そのようなものも含めて。つまり、 できるものはやった後でやはり駄目だったと、最初から無理なものはそのままでという コンセプトです。  先ほど座長が私に、「何か参考はありましたか」とお聞きになりましたが、そのとき は短腸症候群のことだけだと思っていたのですが、これは厚生労働省の疾病による障害 認定の直腸・膀胱機能障害の見直しが3年ほど前にあって、班長をやらせていただいた のですが、そのときに作ったものを基にしております。ですから、先ほどちょっと指摘 があった障害等級、いちばん高いのは第5級になっていますが、膀胱のストーマが第7 級と固定されていたので、それに並べるとということであり、もちろん見直しをして下 げていくことは十分考えなければいけないと思っています。 ○戸部座長  そうすると、次回、全部を最終的にということで、いままでのものを全部見直しする 中で語句も訂正していただき、一覧表を作ってもらい、ばらつきをなくして整合性を求 めるようにしましょうか。次回が最後でしょうから、どこへ出してもおかしくないよう なものに皆で訂正して、それを次回見ることにしましょうか。無理ですか。 ○医療監察官  今日の議論から、早速手直しをさせていただき、それを一度お送りして、筆を入れて いただいたものをもう一度出すという形にさせていただきたいと思います。そのような ことで準備させていただきます。 ○戸部座長  例えば、食道からヘルニア、膵臓など、やったものは全部一覧表を作ってもらい、そ れが最終的なまとめになり、最初からずっと訂正していただいたものが、提出するまと めの説明になり、それから議事録が付いていれば、大体よくわかるのではありません か。完璧ではないですか。 ○医療監察官  次回は3月24日ということですが、一旦お送りして、また最終版を送らせていただく ということで作業を進めさせていただければと思います。 ○尾崎先生  次回は3時半からですか。 ○医療監察官  次回は3時からです。 ○戸部座長  3時からですね。 ○医療監察官  3時ということでお願いいたします。次回はすべて入れ込んだ形のものを用意させて いただきます。また、今日の議論を踏まえたものを取りあえず版としてお送りしますの で、お忙しい中とは思いますが、ちょっと加筆して送り返していただきたいと思いま す。3月24日以降の日程ですが、審議していただいたものの中にはひ臓の第8級を第13 級辺りに落とすという省令改正も含んでいますので、審議会にかけなければなりませ ん。審議会との約束事項ということで、先生方に諮っていただいたものについて、患者 団体等の意見を聞いた上で、もう一度先生方にお諮りするということがあります。3月 24日に審議していただいたものを、必要があれば加筆訂正をさせていただき、先生方に もう一度見ていただいたものについて、患者団体に説明をし、その意見を踏まえて、6 月ぐらいになると思いますが、また集まっていただき審議していただくことになると思 います。日程については、次回か、何回かやり取りをする中で、6月ぐらいのご都合の いい日取りを確認させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○戸部座長  胸部や泌尿器官について出されたものも、ある程度参考にすると。例えば腎臓が片一 方なくなった場合と膵臓や胃など、その辺を少し。 ○医療監察官  そこも含めて、他のところでどのような等級になっているか。基本的には小腸、大腸 のストーマと尿のストーマは同じで、第7級は第7級という形にしてありますから全く 同じですが、一側の腎臓についても第13級にするということで、機能障害があれば上が っていくという形を取っておりますので、そうは変わらないのですが、参考までに出さ せていただきます。 ○戸部座長  それがわかったほうがいいです。 ○尾崎先生  消化器の等級だけが突出してもいけないでしょうしね。 ○望月先生  尿路ストーマが第7級というのは、完全にフィックストの概念なのですか。 ○医療監察官  完全とは言わないのですが、元が第7級で決まっているものですから。 ○望月先生  他の臓器のいままでの話を聞いていますと、第7級ではちょっと高いのではないかと いう気がします。ストーマを作っただけなら、第9級でもいいかなと。最近のストーマ 管理は、昔と違ってとても良くなりました。 ○尾崎先生  胃がんなども、上手にやるとほとんどなくて経過しています。 ○医療監察官  その点については、泌尿器の先生方とは腹部と合わせましょうと。ただ、考え方の序 列としては、設けたものよりストーマ管理が難しいものは上に上げるが、どの辺にする のかは尿が第7級なのに、大腸のストーマが第9級とか、同じ第9級なら第9級、第7 級なら第7級。ここは胸腹部臓器全体の整合性が問題になりますが、第7級から落とす からには、それなりの理屈が必要になりますから、もし下げるのであれば、次回お諮り するときに十分ご審議いただかなければいけないと思っております。時間も押してきま したので、以上で終了したいと思います。 ○戸部座長  本日はどうもありがとうございました。 照会先  厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係      TEL 03−5253−1111(内線5468)      FAX 03−3502−6488