05/02/16 第9回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会の議事録について          第9回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                        日時 平成17年2月16日(水)                           10:00〜                        場所 厚生労働省省議室9階 ○諏訪座長  ただいまから、「第9回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会」を開催したい と思います。前回は、職業能力開発の必要性・意義や教育訓練機会の提供の在り方につ いて、ご議論いただきました。本日は、次の論点に当たる職業能力評価制度の在り方を 中心にご議論いただければと考えております。最初に事務局から、前回の議論を踏まえ て修正した論点整理(案)などが提出されていますので、これらについてのご説明をお 願いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  前回のご議論を踏まえて、資料I、資料IIを提示しております。大きく変わった部分 としては、資料Iの3頁、「今後の施策の方向性」の2の必要となる各施策の方向性に ついての(1)「教育訓練機会の提供・確保の在り方」の部分について、整理が十分で はないというご意見がありましたので、(1)対象者について、(2)教育訓練の内容につい て、(3)必要となる支援について、ということで整理しております。今日のご議論の 「職業能力評価制度の在り方」という部分に関連したこれまでのご意見としては、6頁 に6つほど挙げておりますので、それぞれご参照いただければと思います。 ○諏訪座長  本日の議題は、「職業能力評価制度の在り方について」です。本日は厚生労働省のほ かに、実際に職業能力評価制度の運営に携わられておられる中央職業能力開発協会能力 評価部次長の永瀬聡子様、現在作成している職業能力評価基準の策定にご協力をいただ き、実際に作成されたものを企業内で活用されるよう取り組んでいらっしゃる社団法人 日本自動車工業会参与労務室長の奥村政一様にもお出でいただいております。したがっ て、現場のお話も併せてご説明いただければと願っております。  順番ですが、最初に厚生労働省からは、現在の職業能力評価制度全体の姿についてご 説明いただき、次いで中央職業能力開発協会の永瀬聡子様からは、現在特に力を入れて 取り組んでおられる包括的な職業能力評価基準の作成を中心に、その作成プロセスな ど、実際の作成に関するお話を伺い、最後に奥村政一様からは策定された評価基準をど のように企業に取り入れようとしているのか、今後はどのように発展させていこうと考 えられているかなどといった点を中心にお話をいただこうと考えております。早速、厚 生労働省からのご説明をお願いいたします。 ○能力評価課長(井上)  能力評価課長の井上でございます。お手元の資料III−@から資料III−Dについて、 順次説明申し上げたいと思います。資料III−@の1頁は、職業能力評価基準が必要と なってきた背景などについて、簡単に整理してあります。1つ目は、経営環境の変化な どに伴い、我が国の雇用システムは構造的な変化に直面しているといった環境がありま す。2つ目は、労使など関係者にとって、共通の物差しとして活用することが可能な職 業能力評価制度、さらにはそうしたものを軸とした職業能力開発の体系が必要になって いるということです。3つ目は、個人・企業、それぞれ相手方に対して必要とする職業 能力を、お互いにわかりやすい形で示すことができるようにする、そうしたものを社会 基盤として整備していく必要があるということです。  2頁は職業能力基準の策定意義ということで、少し角度を変えての見方です。職業能 力評価基準については、それぞれ活用する主体によって、さまざまな活用の仕方、効果 が期待できるものです。例えば、労働者にとっては、自らのキャリア形成の目標設定な どをしたり、転職・求職といった場合には、その目安として活用することが可能です。 企業においては、人材育成、雇用管理に活用する、あるいは採用活動の目安として活用 することも可能です。需給調整機関においては、企業・労働者双方のマッチングの目安 として活用することが可能です。教育訓練機関においては、職務内容、レベル、訓練の 目標が明確となることにより、効率的・効果的な教育訓練が可能となるものです。  3頁は職業能力評価基準と活用方法です。これについては、現在策定中の職業能力評 価基準とこれまでにある制度、例えば技能検定制度、ビジネス・キャリア制度といった 制度との関係を大きく整理して、図示したものです。この考え方としては、職業能力評 価基準を各業種・職種にわたり、横断的に体系化し、共通言語化する。それをさまざま な場面で活用するためのツールとして、技能検定制度、ビジネス・キャリア制度などと いった制度を整備していくという考え方です。  4頁は職業能力評価基準策定の取組み状況です。これについては、このあと詳細が永 瀬様、奥村様からお話があるかと思いますので、私の方からは簡単に触れさせていただ きたいと思います。職業能力評価基準については、実践的なものとなるよう、業界団体 との連携のもとに、仕事をこなすために必要な職業能力を分析・体系化し、基準として 策定するものです。対象の職種としては、サービス業からものづくり産業など、幅広く カバーしようと考えているところです。5の取組み状況の図ですが、網掛けをしている 所が既に完成した基準です。いちばん下の所は業種横断的な事務系職務ということで、 事務系職種については業種を超えて共通の基準が策定できるのではないかということ で、策定をしているものです。  6頁は職業能力評価基準の構成で、職業能力評価基準、求められる能力のレベルを4 つのレベルに区分して、さらに実践的なものとなるよう、典型的なビジネスシーンにお ける行動例、何ができるといったような形で示すことにしております。  7頁は人事・労務・能力開発職務のレベルを例として挙げたものです。全体はかなり 大部なものですが、資料III−Aに職業能力評価基準、人事・労務・能力開発職種につ いて、全体のものを付けております。  8頁は職業能力評価基準策定のプロセスということです。私の方からは、簡単に概略 だけ申し上げたいと思いますが、業界団体・企業等から構成される作業委員会を設置し て、ヒアリング調査などを含めて職務分析を行う。それを基にして、職務をこなすため に必要な能力を明確にして、それを基準として整理していくものです。  9頁は、企業における活用の取組みの例です。職業能力評価基準は、それぞれできて さほど時間も経っていないところですが、こうした基準の作業委員会の策定企業などに お尋ねした結果として、1つはアンダーラインが引いてあるように、人事評価・賃金・ 処遇制度の見直しや整備に活用したい、能力開発・研修体系の見直しや整備に活用した いといった声が上がっています。  10頁は、業界団体における活用の取組みの例です。自動車製造業は、奥村様の方から お話があるかと思います。スーパーマーケット業においては、既存の業界内の資格、ス ーパーマーケット検定と称されているものについて、職業能力評価基準を参考にしなが ら、再構築をしたいという考え方です。印刷業においては、人事評価制度等が未整備で ある中小零細企業向けに、この職業能力評価基準を活用したいということです。資料 III−@は以上です。資料III−Aは適宜ご参照いただければと思います。  資料III−Bは、「ビジネス・キャリア制度」についてです。策定の背景としては、 ホワイトカラー労働者に求める職業能力が多様化・高度化していくといった中で、ホワ イトカラー労働者の段階的・体系的な職業能力の修得を支援する、そして、職業能力を 評価するという仕組みです。1にこの制度の目的が書いてありますが、今申し上げたよ うなところと共通して、ホワイトカラーに必要な職業能力について、共通の物差しが形 成されるようにしていくというものです。2は制度の概要です。(1)は、下の(1)か ら(10)までに掲げた職務分野ごとに、さらに165単位のユニットに分類し、そのユニッ トごとに学習すべき知識等の内容を体系化したものです。(2)は実績あるいは現状と いうことで、現在70の機関において、1,067の講座が開設されています。受講者数は平 成15年度分で4万7,686人です。(3)のように、ユニットを修得された方が、中央職 業能力開発協会が実施している試験に合格した場合には、認定書を発行しています。受 験申請者数は2万7,062人です。3はこの制度の効果で、労働者にとってキャリア目標 を立て、あるいは自らの職務遂行能力を的確に把握することにより、社内における処遇 向上、あるいは円滑な労働移動に利用できるというものです。企業にとっては、社内の 人材育成や人事処遇制度と連動して活用することが可能です。  次頁は各年度ごとのビジネス・キャリア制度の利用状況の推移です。  資料III−Cは、「YES−プログラム」ということです。漢字で「若年者就職基礎能力 支援事業」、Youth Employability Support Programということです。この背景とし ては、言うまでもなく若年者の雇用職業問題が深刻となっている中で、若年者の能力・ 適性に対応した職業選択が可能となるようにするための制度を構築しようとするもので す。1はその目的ですが、就職・採用という場面において、若年者と企業との間で、企 業が若年者に求める能力を中心にして、就職基礎能力に関する共通の物差しが広く使わ れるようにしていきたいというものです。  2の(1)は制度の概要ですが、この「就職基礎能力」は何かと申しますと、1つは コミュニケーション能力、職業意識、ビジネスマナー、基礎学力、社会常識といったも のです。それにプラスして、財務・経理、コンピューターの操作、語学の3つのうち、 いずれかの分野から定められた資格を取得することが要件となっているところです。 (2)は現状です。このYES−プログラムについては、講座を受講して、それぞれの能 力を修得するものと、試験に合格して能力を修得するものと、2種類あります。講座に ついては66機関・555講座、試験については28機関・144試験となっております。  こうした講座や試験をクリアした若年者が申請した場合には、厚生労働大臣名により 「若年者就職基礎能力修得証明書」を発行することとしております。これは10月から発 行しておりますが、現在のところ23件となっております。その理由としては、開設され ている講座を見ると毎日1時間、2時間といった形で開設される講座は少なく、集中的 に1日何時間という形で展開されるものが多く、学業との関係でこの秋の時期には取り にくかったのではないか。それぞれこうした5つの分野、資格を取らなくてはいけない ので、それなりの時間を要するということがあろうかと考えております。  3がこの制度の効果ですが、若年者にとっては企業が求める就職基礎能力の内容を知 り、自らの目標を立てる際に活用できる。さらに、そうした能力を修得することによ り、就職活動の場面などで、自己アピール力を高めることができる。企業にとってはコ ミュニケーション能力などについて、客観的な判断材料の1つとして活用できる。さら に、若年者が目標に向かって努力する姿勢の判断材料として活用できるものです。  次頁は今説明した内容と重複しますので、説明は省略しますが、図にするとYES−プ ログラムの枠組はこのような形になるところです。  資料III−Dは、「技能検定制度」についてです。1は制度の目的です。昭和34年度 から始まったものですが、技能検定制度は労働者の有する技能を検定し、公証する国家 検定制度です。2は制度の概要です。  次頁ですが、職種としては現在137の職種ということです。どのぐらい利用されてい るかという状況は、平成15年度は受験申請者数が45万人、合格者数が18万人、制度開設 以来の累計ですが、合格者、技能士の数は296万人ということです。この技能検定制度 については等級区分がなされており、等級に区分される場合には特級、1級、2級、3 級といったもの、それから単一等級ということで、等級によって区分されないものも一 部あります。技能検定に合格した場合には、「技能士」と称することができます。  (2)は実施体制ですが、技能検定は国家検定ということで、厚生労働大臣が実施と いうことです。ただ、実際の試験事務などについては、都道府県知事、中央職業能力開 発協会で役割分担をしながら行っているところです。一部、ファイナルシャル・プラン ニング等8職種については、指定された民間機関が試験業務を実施しております。この 制度の効果としては、労働者にとってはキャリア目標を立てることができる、自らの技 能のレベルを示すことができ活用できるということです。企業にとっては、個人が有す る技能を客観的に把握できる、従業員の技能修得意欲の増進のきっかけにすることがで きるということがあります。  次頁は、先ほど申し上げた137の職種です。その他の中のアンダーラインを引いた職 種が指定試験機関で実施しているものです。  最後の頁は、技能検定の実施状況の推移で、合計の所は平成15年度に18万3,540人の 合格者、累計295万8,300人の合格者となっているところです。 ○諏訪座長  今のご説明、あるいは資料に基づいて、ご質問、ご意見を承りたいと思います。 ○高橋委員  純粋に質問で、ただ私が全然知らないだけなのかもしれないのですが、1つはビジネ ス・キャリア制度が平成12年からガタッと落ちてくる理由はどういうことが考えられる のかということです。もう1つ、YES−プログラムは始まったばかりですから今後の見 通しになってしまうのでしょうが、技能検定制度は平成14年から逆にニーズが急激に増 えているのですが、これは何があったのかという辺りを教えていただけますか。 ○能力評価課長(井上)  まず、ビジネス・キャリア制度の講座数は、趨勢的に見ると減ってはきているのです が、これについては利用者のほうで利用する分野がだんだんと明確になってきたという ことがあるかと思います。もう1つは、平成10年からそれまで認定講座の有効期間が1 年であったところ、3年に延長しましたので、3年に1回、講座の認定を更新すればよ いことになりました。その関係で講座数が減った数字になっているものと考えておりま す。それが1点です。  技能検定制度について、平成14年度以降、受検者数が増えているということですが、 これについては平成14年度に新たに技能検定職種に追加したファイナンシャル・プラン ニングの受検者が大変多く、それが寄与しているものだと考えております。 ○高橋委員  そうすると、ビジネス・キャリアの方はかなり明暗がはっきりしてきたというか、こ こは使われて、ここは使われないというようなものがはっきりしてきたというお話だっ たのですが、逆に言うとどの辺りはわりに人気で、どの辺りはそうではなかったと、何 か傾向がありましたら教えてください。 ○能力評価課長(井上)  数だけですべてが言えるとは思いませんが、10分野のうち、講座数では人事・労務・ 能力開発が222講座、営業マーケティングが206講座、経理・財務が194講座、少ない方 では国際業務が3講座、物流管理が36講座という形です。 ○高橋委員  それはおそらく国際とか、実際のマーケットに出ている職種に就いている人数の違い は当然あるのだと思うのです。ただ、やってみて実際に多かったのが減ってきたという ことは、そこにこういうものになじみやすい部分、職種となじみにくい部分というのが あったのかと何となく思うのです。これも臆測でも結構なのですが、その辺は何かおあ りですか。 ○能力評価課長(井上)  今申し上げた数字は平成15年度の講座数で、平成14年度以前の経年的なものが手元に ありませんので何とも言えないのですが、平成15年度の数字を見ても分野によって需要 の多い、少ないというものが出ているのではないかと思っております。 ○廣石委員  私もこのビジネス・キャリア制度について、どのように評価されているかということ をお伺いしたいと思っております。10年ちょっと前になりますか、私もこのビジネス・ キャリア制度のあるユニットの問題作成を担当したことがあります。具体的に言うと、 労使関係のところを担当しました。そうすると、労働法は別のユニットがあるからそれ は入れてはいけないとか、165ユニットという細かい単位になっているので、その中で 非常に問題が作りにくかったという記憶があります。しかも、多肢選択式で行う。そう すると、知識があるか、ないかということを問うものになってしまう。どういう考え方 でやっているかということを問うものは、なかなか問題を作れないという経験をしたこ とがありました。  これは今後の職業能力評価基準全体に言えることかもしれませんが、労働者本人がど うやってそれぞれ能力を身に付けているのか、もしくは行動をとっているのかというこ とをどのように評価するかを考えないと、それこそ知識だけしか問うことができないと いうことになると、これは本来の趣旨と違ったものになってくる可能性もあるのではな いかという感じがいたします。そういった意味で、ビジネス・キャリア制度自体は知識 を体系化したもので、その知識があるか、ないかをチェックするものだと言われてしま えばそれまでなのです。そうすると、それを企業がどう使うのか、持っている人につい て、どのようにアプローチするのかというところがどうも見えないという経験をしたこ とがあります。そのときから10年間経っておりますので、現在はどのように運用されて いるのか承知しておりませんが、ビジネス・キャリア制度について、今後、厚生労働省 がどのように展開を図っていこうとしておられるのか、もし方向性が出ているようでし たらお教えいただければと思います。 ○能力評価課長(井上)  まず、多肢選択式ということで、知識だけを問うのではないかという部分について は、そうした点の反省も含めて、その後、記述式の問題なども入れるようにしておりま す。それが1点です。  それから、165のユニットで細分化されすぎているのではないかという点で、165のユ ニットの修了試験は単位ごとですが、その上級の試験については、もう少し大括りの形 での試験ということで、中央協会で実施しているところです。企業でどのように活用さ れているかについては、最新のものでなくて恐縮ですが、2001年から2003年ごろにかけ て、企業からヒアリングしている内容としては、企業の中で昇格要件の1つとして用い ている、あるいはビジネス・キャリアを修得していると手当を出す、あるいは自己啓発 教育のツールとして活用を推奨しているという例があるところです。  ビジネス・キャリア制度の今後の方向性についてですが、現在、中央職業能力開発協 会において、教育訓練機関、学識経験者といった方々をメンバーとして、見直しの検討 を進めているところです。まだ確定的な方向性は出ていないところですが、将来的には 先ほどご説明申し上げた資料III−@の3頁にありますように、職業能力評価基準を基 にしたものとして、再構築していくということが1つの方向性として考えられるところ です。  これはどういうことかと申しますと、廣石委員は私などよりもよくご存じなのだと思 いますが、ビジネス・キャリア制度発足当時は学習の提供手段という位置づけで、いま ひとつ性格が曖昧だったというところがあろうかと思います。その後、ユニットの修了 試験といったことも相まって、能力評価的な色彩も強まってきたわけです。さらにそこ を推し進めて、レベル1からレベル4まである職業能力評価基準と事務系職種、各職種 に分かれてありますが、これとビジネス・キャリア制度がリンクするような形で、ビジ ネス・キャリア制度でユニットを修得すれば、職業能力評価基準に当てはめればどの程 度の能力を持っていることになるかという、能力評価の方向に進んでいくことが1つの 方向性ではないかと考えております。 ○諏訪座長  いろいろご質問もあろうかと思いますが、今日は3人の方々からのご説明を受けると いうことですので、今の能力評価全体に関する点は、後ほど必要があれば、またご質 問、ご意見をいただくことにします。まず、永瀬様からのご説明を受けたいと思いま す。なお、永瀬様と奥村様に併せてご説明を受けたあと質疑応答という方法もあるので すが、少し次元が違うのではないかと思いますので、まず永瀬様からのご説明を受け て、質疑をしていただく。次に奥村様からのご説明を受けたあと、質疑応答という順番 で進めたいと思います。永瀬様、よろしくお願いいたします。 ○永瀬聡子氏  中央職業能力開発協会の永瀬と申します。私の方からはお手元の資料III−Eと資料 III−Aを適宣ご覧いただきながら、説明いたします。資料III−Eは「職業能力評価基 準の構成と策定プロセス」です。1頁の職業能力評価基準の特長ですが、この評価基準 のセールスポイントとしては4点ほどあるのではないかと考えております。1点目は産 業界の人材育成ニーズを的確に反映していること。2点目は、職場での役割に応じて4 つのレベルを設定し、併せてキャリア形成の目安となるキャリア・パスを例示しており ます。  3点目は、能力の整理の仕方として、「能力ユニット」という一定の大きさの括りに 整理して、柔軟な構成としております。これにより、企業や労働者の実情、活用の目的 に応じてさまざまにカスタマイズしてお使いいただくことができるのではないかと考え ております。4点目は能力の記述の対象で、現実の仕事の場面で求められる実践的な職 業能力を記述の対象としております。このため、基準の中身としては単に知識のみにと どまらず、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述するという構成になっており ます。  こういった特長が、具体的にはどのように策定プロセスや基準の構成に反映されてい るかについて、説明します。2頁の職業能力評価基準の策定プロセスですが、業種ごと の業界団体にご協力いただき進めているものです。1つ目の○ですが、まず業界団体、 傘下企業等の皆様からなる、業種別の基準作成の作業委員会を設置します。ここで業界 の将来に向けての展望、人材ニーズといったものをご議論いただき、どのような職種を 対象に基準を作っていくか、企業調査に当たって、どういった点に留意する必要がある かといった方向付けをしていただきます。  これを受けて、実際にいくつかの企業にご協力をいただいて、ヒアリング調査を行う わけです。具体的には企業に伺い、実際にその仕事を担当されている方や管理職の方な ど、複数の観点からそれぞれの職務にどのような仕事ぶりが求められるかといったお話 を伺います。そのようなヒアリング調査で集めたデータに基づき、職務の内容をどのよ うな形で整理したらいいか。また、それぞれの職務をこなすための能力として、どのよ うな仕事ぶりが求められるか。こういったものをレベルに応じて評価基準として整理し てまいります。ラフな形ではありますが、この段階で職業能力評価基準の原案を作成し ます。これを受けて委員会にご報告をして、原案についてのご議論などをいただきま す。さらに、どういった点を明らかにしなければいけないかといった方向付けをしてい ただいて、次にもう一度企業に伺って、原案を検証するための企業のヒアリングを行い ます。こういったサイクルを経て、能力評価基準の取りまとめを行って公表をするとい う流れです。このようなプロセスにおいて、随時、業界としてどのような形で活用が考 えられるかというご検討もいただいているところです。  以上のようなプロセスにおいて、業界の人材ニーズを反映したものということで、将 来に向けた視点を1つの留意点としております。現状どのような仕事をやっているかを 映すというだけではなくて、将来の産業の方向などを見据えて、将来的にどういう仕事 が増えてくるのか、どういった仕事ぶりが求められるのかといった、少し将来に向けた 視点が必要ではないか。このようなご議論がおのずと委員会の委員の先生方からも出さ れて、こういった観点から基準の作成作業を進めております。  3頁はレベル区分の考え方です。本基準では、企業の働く場面で求められる能力を対 象としているということで、レベル区分の考え方でも企業において期待される役割、責 任の範囲といったものに着目して、4つのレベルを設定しております。こちらでは事務 系職種についてのレベル区分を例に挙げております。レベル1は担当者を想定しており ますが、担当者として上司の指示・助言を踏まえて、定例的な業務を確実に遂行できる 能力水準。レベル2は主任や係長を想定していますが、グループやチームの中心メンバ ーとして、いろいろ工夫しながら自らの判断、改善なども行って業務を進めるために必 要な能力水準。レベル3は課長相当をイメージしていますが、中小規模の組織の責任 者、もしくは高度専門職・熟練者としていろいろな方針、問題解決などを行い、利益に つながる業務を遂行するために必要な水準というように整理をしております。レベル4 は部長相当をイメージしていますが、より大きな組織の責任者、もしくはハイレベルの 専門家として広範囲な統合的な判断・意思決定を行い、企業の利益に貢献するために必 要な能力という形で整理しております。これは事務系職種を例に挙げていますが、基本 的に各業種同じような考え方で、整理をしております。  4頁ですが、レベル設定と合わせてキャリア・パスを例示しています。本基準では評 価の目安であると同時に、将来に向けた能力開発やキャリア形成の目安としてもご活用 いただけるように、大変大雑把ではありますが、キャリア・パスを例示しております。 こちらでお示ししているのは事務系職種のキャリア・パスですが、レベル1、レベル2 まで進んで、レベル3からはマネジャー系に進む場合と、より高度な専門性を持って企 業に貢献するスペシャリスト系のキャリア・パスを想定し、マネジャーを経験したり、 スペシャリストを経験したり、相互に入れ替わりながらキャリア形成をしていくという イメージをお示ししているところです。以上のようなレベル区分やキャリア・パスの基 本的な認識を踏まえて、具体的な基準を作成しているところです。  5頁ですが、基準の様式としては様式1から3によって構成されています。5−1 「職業能力評価基準の構成」は図が小さいので、資料III−Aを使って説明します。1 頁は職業能力評価基準・全体構成です。これが事務系職種の整理をした職務の基準の全 体構成です。縦に職種・職務が並んでおり、横にレベルが示されております。職種とレ ベル1から4のマトリックスとして整理しております。次頁は、具体的なユニットの構 成という形でブレークダウンしてまいります。  次頁の「能力ユニット一覧」は、「人事・労務・能力開発」の職種についての能力ユ ニットの構成です。大きく、共通能力のユニットと選択能力ユニットに分けて整理をし ております。共通能力ユニットは、どのような職務を担当するにせよ、基本的に事務系 の仕事をする場合に求められる能力を整理しております。それに対して選択能力ユニッ トでは、人事・労務・能力開発といった職務、さらにその職務の中でもどのような部分 を担当しているかによって、適宜選択できるような形の能力をセットしております。例 えば主任や係長クラスのレベル2での能力の構成を見ると、共通のベースとなる能力と して「企業倫理とコンプライアンス」、「関係者との連携による業務の遂行」といった チームワークに関すること、「課題の設定と成果の追求」、「業務効率化の推進」とい ったユニットがあり、それに加えて、下にあるような「人事制度の運用」、「要員計画 」、「賃金」。労務では「労使関係」、「就業管理」といった中から、それぞれの担当 の仕事に応じてユニットを選択して、その組合わせで能力を示していくという構造にな っております。  その右側のレベル3、レベル4はスペシャリストとマネジャーということで、キャリ ア・パスは2つのルートを想定していますので、それに応じた形でマネジャーは例えば 共通能力の「プロセス・成果のマネジメント」、「予算の策定とコストのマネジメント 」、「組織と人のマネジメント」といった、ヒト・モノ・カネに関するマネジメントの ユニットを付けているという形で整理をしております。それに対してスペシャリスト は、選択ユニットのほうで、より専門性の高いユニットを組み合わせるという形で、キ ャリア・パスに対応したユニットの構成を示しております。  次にそれぞれのユニットの記述ぶりですが、9頁に「課題の設定と成果の追求」とい うユニットがあります。これが様式3ですが、大きく2つの部分からなっております。 上の半分が職務遂行のための基準ということで、ここで具体的なビジネスシーンで求め られる仕事ぶりを例示しております。例えば新聞・雑誌や内外の会合を通じて、社会情 勢や市場の動向を自ら把握し、自分の仕事と関連付けながら、業務課題や目標を検討し ているという形で、実際の業務の進め方の参考となるような行動を例示しております。  それに対して、上のような仕事ぶりを下支えする上で必要となってくる知識を「必要 な知識」という形で整理をしているところです。職業能力評価基準の構成、策定プロセ スについては以上ですが、現在この職業能力評価基準については作成が済んだものから 当協会のホームページなどで公表しております。また、いろいろな協会の説明会の場面 などでも、広く説明をしているところですが、今後とも各方面から幅広いご意見をいた だきながら、より良いものを作成していくとともに、活用に向けた取組みについても進 めたいと思っております。 ○諏訪座長  ご質問、ご意見がありましたらお願いします。 ○北浦委員  大変立派な体系だと思うのですが、2つほど聞かせていただきたいと思います。1つ は先ほどのご説明の中でありましたが、カスタマイズという話です。これは確かに体系 は体系として非常に良くできているのですが、実際場面においては相当カスタマイズし ないと、それぞれの個別事情はかなり違う。そうすると、カスタマイズの方法などにつ いて、協会の方で何か指導というのはおかしいのですが、こういうやり方があるという のをお示ししたり、あるいはそういうところを少し開発するということを考えられてい るのかどうか。この点を1点お聞きしたいと思います。 ○永瀬聡子氏  カスタマイズの基本的な考え方としては、様式2の所で能力ユニットの構成を示して おります。これはあくまでも1つの能力の組合せの目安ということで、各企業でお使い いただく場合には必要なユニットをこの中からピックアップしていただいたり、または それぞれユニットについてもレベル設定されておりますが、必要があればレベルを跨が ってユニットを組み合わせていただくといった形で、これを目安にして、まず能力の組 合せを考えていただくということがあるかと思います。  また、こういったものの活用の方法としては、各企業でいろいろな職務の記述書を作 成されると思います。そういったときに、この様式3で書き込まれた記述を少し修文し たり、またはいくつか項目を組み合わせて、企業の中の職務の要件書を作っていただく ことができるのではないかと思います。現在、そういった説明などをさせていただいて いるところです。 ○北浦委員  それに関連して、これは各業界団体と共同でやっているので、その実態を踏まえるこ とは大変結構だと思うのですが、例えば中小企業ということになると、かなり細かくな る。これもカスタマイズの話なのかもしれませんが、業種によって違いがあり、各業界 団体のカバレッジがかなり違います。中小企業への普及はどのように考えられているの ですか。 ○永瀬聡子氏  中小企業にこそ、かなりお役に立つものではないかと思っているのですが、カスタマ イズが必要な部分もあるかと思います。これだけ体系的にいろいろな情報をまとめるの は、個々の企業では難しいと思うので、そこの部分をまずご提供した上で、やはり中小 企業では、いくつものユニットをまとめて1人で担当されているなどといった部分があ りますので、今後、中小企業の実態に沿ったコンサルティングなどといったことをして いく必要もあるのではないかと思っております。そういった形で、活用促進に向けた業 務を展開していければと思っております。 ○上西委員  (独)雇用・能力開発機構でも、業界団体と連携して各業界あるいは分野ごとに求め られる能力ユニットを具体化していくような作業をずっと前から進めてきて、今アビリ ティガーデンのホームページでも公開されていると思うのです。そちらの作業とここで ご説明いただいた作業というのは、並行して進んでいるのか、どういう関係があるの か、教えていただけますか。 ○永瀬聡子氏  (独)雇用・能力開発機構においても、生涯能力開発体系を作っているのですが、そ れについては相互に、ユニット単位についてはお互いに大体対応するような形のものに なっております。また、調査の過程で収集したデータなども共有して、いろいろ連携を とりながら作成を進めているところです。 ○上西委員  平成16年度からいろいろな業界で取組みが始まっているということなのですが、これ は実際のところ、業界側にどのぐらいこういうのをやりたいというニーズがあるのか、 あるいは行政側から「是非協力してくれ」というスタンスであるのか、その辺りの業界 側の反応はどうなのでしょうか。 ○永瀬聡子氏  これは平成14年度からの事業だったわけですが、最初はまずどういうものかというこ とから説明を始めて、ご協力をいただくという形もあるわけですが、業界によって説明 をするとこういうものが必要だったということで、例えばスーパーマーケットの業界な どでは、業界内のいろいろな検定制度を拡充したいと考えていたので、そのベースとし て是非取り組みたいということがありました。また、どのような仕事をしているか、ど ういう人材が必要なのかを業界として広く発信していきたいというご希望は、かなり多 くの団体でお持ちのようです。そういった観点からも、実際に「こういったことをご一 緒に作りませんか」というお話をすると、ニーズについてはお持ちの業界もかなりある という感触です。 ○高橋委員  直接それに関係するのですが、例えば資料III−Eの2頁で「策定ニーズが高い職務」 という表現も出てくるのですが、もう少し具体的に言うと、今のお話でどんな理由で、 どんな職種に対して、どんなものを期待するパターンが見えてくるのでしょうか。 ○永瀬聡子氏  まず、策定ニーズが高いというのは大きく2つあります。1つは、やはりその業界に なくてはならない職種、例えばホテル業で言えばフロント、レストランサービスといっ た、その業種ならではの職務は外せないだろうというご議論です。それと併せて、今ま だ1つの部署として確立はしていないのですが、業界の将来を考えた場合に、将来的に こういう能力なり職務が重要になってくるだろうということで、例えばホテル業では環 境対応、ファシリティマネジメント、ホテルの空間をどのように演出していくかといっ たものは、必ずしも専任の部門や担当者がいるわけではないのですが、そういった職務 についてもユニット群も作ってはどうかというご議論がありました。そういった今後必 要になってくるような職務についても、整理をしているという状況です。 ○廣石委員  資料III−Aを拝見すると、基本的に行動を中心としてさまざまな基準が作られてい ると思います。私も企業実務を10年ほど担当しておりましたので、こういったものを企 業が見たときに、人事考課、もしくは人材開発目標として使うのは非常に有効なのでは ないかと理解をしたところです。将来このレベルだったらこのぐらいのことはやってほ しい、という行動のパターンだろうと思います。ただ、それは行動を把握するというこ とになるわけで、そのバックには能力がある、なしというところとは、実は次元として 少し違うものなのかもしれない。これは1つの感想です。  つまり、それは何に結び付いていくかというと、採用というところでこれを使えるか といった場合に、どのように認定するのか。先ほどビジネス・キャリア制度との連動と いう話がありましたが、例えばこういった行動をとっているかどうかをどうチェックす るのか、企業横断的にどう評価するのかということは、逆に非常に難しい話になってく るような気もするところです。ですから、行動を把握するのか、能力を把握するのかと いうところで、基本的には資料III−Aでは行動を把握しているものだという理解でよ ろしいのか、というところが1点です。もう1つは、将来的な企業横断的な評価という ところになると、今のところそれをどのようにお考えなのか。その2点を伺わせていた だければと思います。 ○永瀬聡子氏  まず、この基準で記述しているものは、行動の例をお示ししているものです。この行 動というのは、知識、思考特性、行動特性というものが一体となって、実際の職場での 行動として反映されるという理解をしております。その実際に現れた能力としての行動 を記述しているという整理です。  企業横断的な評価で、例えば、採用で個別企業それぞれの活用場面で提案しているの は、これを面接のときの手持ちにしていただく。優秀な人材が欲しいといっても、それ だけではなかなかマッチングしないことがあります。こういう行動の中から、事業主の 方がここの部分だというところを少しピックアップしていただき、そういうイメージを 持ちながら採用の際に面接をしていただいて、今までの仕事の中でどういう取組みをし てきましたか、という投げかけをしていただいたり、また、需給調整機関などの相談場 面で、求人・求職の条件を確認する際などに、共通のベースとして活用していただくこ とで、ミスマッチの解消につながるのではないかと思っています。  また、業界横断的な把握についても、今後考えていかなければいけない課題であると 思っております。一つ一つのユニットについては、業界の中だけで必ずしも閉じた能力 ということではなく、ほかの業界にも共通する能力、特に共通能力で設定しております チームワークに関する能力、業務推進のマネジメントについてのユニットなどは、各業 界横断的な中身を持っているかと思います。こういうものが、業界横断的に使えるよう なユニットの管理についても工夫して参りたいと考えております。 ○廣石委員  今の話で、行動に現れるのは能力もあるし知識もあるし、その人の行動特性もある。 たぶん組織の適用環境など、いろいろなものが混ざって一つの行動になるというお話が ありました。行動をとるのか、能力をとるのか、これは言葉の問題になってしまいます ので、これ以上議論する気はありません。もし行動のところに目を向けるのならば、先 ほどの採用のところでも、例えばこんな行動をとったかどうか考えるという部分では非 常に意味があるようにお見受けしました。これは能力評価なのかというよりも、こうい う行動を期待するという形で企業が使うのであれば、有効な使い方ができるような印象 を持ちました。 ○北浦委員  今のに関連してですが、もし行動ということであるとすれば、それだけ実態に即して くるわけですから、これの陳腐化も起きてくるわけですので、メンテナンスをどう考え ているのか。  業界固有のものはかなり具体性が出てくるのでわかるのですが、横断的なものはかな り抽象度の高いような表現になっていますし、しかも文章記述ですから、表現的にいか に書いていっても曖昧性が残ってくるわけです。ある程度横断的になると抽象度が高ま ってくるから、これだけでは使えないことになってくる。そこのところは限度があると 思いますので、その辺はどうお考えですか。  将来の方向で企業横断という話がありましたが、そのことと先ほど言ったカスタマイ ズという話とは矛盾するのかという感じがします。カスタマイズを考えて、そのベーシ ックと考えていくのか、ベースとして考えていくのか、あるいは本当に欧米的な横断基 準と考えるのかでは全然方向が違ってしまうと思いますが、その辺はどう考えています か。 ○永瀬聡子氏  メンテナンスの重要性については、産業界の状況も常に動いておりますので、その必 要性はご指摘のとおり、また委員会でもいつもご質問いただくところです。これについ ては、一定のサイクルで更新をしていく必要があると考えています。  文章の記述は、共通になればなるほど具体性が薄くなるのではないかという点につき ましては、例えば、現在、基準策定作業の現場では事務系職種のところで作ったチーム ワークについての能力、業務の進め方についてプロセス管理の能力などのユニットは、 他の業種でも共通なので使ってはいるのですが、その際、記述ぶりはその業界で理解し 易い形に直す必要があるという議論になりました。その意味では、全く同じユニット を、業界を跨がって使うという形ではないのですが、ユニットのコンセプトや記述の構 造は同じなので、それらの関係性を示せるような形でユニットを管理していきたいと考 えております。  ご指摘いただいたとおり、実際の個々の企業で使う場合と、労働市場のインフラとし て使う場合とでは使い方をそれぞれで工夫する必要があるかと思っております。 ○能力評価課長(井上)  今の点について、共通のユニットになると抽象的になるというお話、あるいはメンテ ナンスのお話がありましたが、職業能力評価基準を手がけたのは平成14年度からです。 私どもとしては、これまでそれぞれの業種について策定したものについても、これが完 成品であるとか、固定的なものとは考えておりません。  メンテナンスにとどまらず、実際にその企業、その業種で使われることにより、例え ば策定時点では抽象的にしか書けなかったものが、肉付けした形でできるということ で、だんだんと出来上がっていくのではないか。能力評価基準については、その内容が 良いものであるということと同時に、より多くの企業や労働者に使われることにより、 より共通の物差しとしての価値が高まるのではないかと考えております。  これは、非常に雑駁な切り口ですけれども、産業分類で見ると99の中分類がありま す。その中で公務員、農林水産業、高度な資格を要する職業といった業種を除き、それ 以外のところで大体7、8割のところがカバーできれば、一つの共通の物差しとして使 えるのではないかと考えております。  中分類全部をカバーするというわけではありませんが、それぞれの業種を中分類にな ぞらえて換算すると、平成16年度に完成予定のもので約35%、平成17年度完成のもので 約55%という目標で進めております。 ○諏訪座長  まだ、いろいろご質問、ご議論はあろうかと思いますが、この辺で奥村様からの説明 を伺い、その後の質疑応答の中に、その他のご意見等を反映していただければと思いま す。奥村様よろしくお願いいたします。 ○奥村政一氏  自動車工業会の労務室長の奥村です。自動車産業は今年までで、まだまだ報告書が出 来上がっていない段階で、この場でご説明をするのはふさわしいのかどうか、その辺は 少し割り引いていただきまして、ご容赦いただければと思います。  資料III−Fの1頁です。私ども自動車製造業として、今回受けた、それからこれまで の経過について若干述べさせていただきます。自動車工業会は、自動車を製造販売して いる14社の業界団体です。それと、私どもが協会からいただいた事業ですが、対極にあ る組合の産別としての自動車総連があります。私どもは、この事業に参画するに当た り、ものづくり産業として労使で取り組み、共通した成果・報告並びにいろいろな問題 解決に向け、極めて有用であろうということで労使で取り組みました。  自動車総連は、私どもシャーシーメーカーのほかに、部品、車体、販売、輸送も含め 約70万人の産別になります。自動車総連は1,270組合ありますけれども、そのうち約500 組合が製造に関連している組合です。平成15年10月に、東京大学大学院の藤本先生に座 長をお願いして立ち上げ、今まで調査を進めながら来ております。この委員会の参加企 業は、スズキ、トヨタ、日産ディーゼル、富士重工業、本田、三菱ふそうとなっており ます。もう1件厚生労働省からワークシェアリングの事業も3年度事業で受けておりま す。両方を全部ということになると大変ですので担当を分けてやっております。  取り組んだ趣旨・目的というのは、やはりものづくりの原点が自動車産業では「組立 」職種が一番明快でわかりやすい。しかも、組立職種は技能検定職種に入っていない。 長い間いろいろ検討してきたのですが、自動車の場合にはモデルチェンジや生産技術の 発展・向上等があってなかなか難しいということがあります。今回、組立職種に取り組 み、業界として共通的なことが何か求められるのではないかということで取り組みまし た。現在、いろいろ調査を重ねてきているということです。  2頁で、報告書ということで最終的にまとめてまいりますが、職業能力評価基準の策 定と並行し、能力評価基準は自動車産業でも一緒なのですが、人事・処遇制度と連動し ていますから、各社極めて重要な課題となっております。能力診断シートも作ろうとい うことで今進めております。  職業能力評価基準のレベル分けに際しての根幹となる、ということで記述を抽出した エッセンスについては、チェックシート式にやっていこうと考えております。構成につ いては、永瀬さんからの説明がありましたし、共通的なことになりますので割愛させて いただきます。  判断基準欄にどの程度の○印が付与されているかにより、自分はどの程度のことがで きるのかの評価が大体できるのではないかということで今進めております。  大事なことは、自動車業界として今後の狙いということもありますが、それについて ご説明いたします。4頁の1つ目の狙いで、自身の今後の能力開発の目安となり、結果 として業界全体としての多能工育成や技能向上につながることを期待したいと考えてお ります。組立職種は、自動車産業の最も代表的な職種の1つです。産業として、技能の 伝承、改善等極めて重要な職場であり、能力評価を業界全体といいますか、業界共通に なんとかお手伝いできるようなものができないかと考えてやっております。  2つ目の狙いで、業界として、関係企業や取引先に対し人事評価制度等整備に向けて 活用できることを期待したいと考えております。私どもシャーシーメーカーはもちろん ですが、車体や部品なども相当取引をさせていただいている企業や業界が非常に広いで す。こうしたことをやることにより、広く他の産業の方々に対して、技能のレベルアッ プなり、企業や産業としての技術水準等にもなんとかお手伝いできるのではないかと欲 張ったことも考えております。  3つ目の狙いで、正規従業員の他、能力評価が難しいと言われる期間従業員、派遣従 業員も適用可能にしたいと考えております。正規従業員という言葉が、今は正規、不正 規と言っていいのかどうかは別ですが、このように働き方、雇用の状況が変わってきて いる時代ですが、基本的には正規従業員でということがあります。今、自動車産業はか なり忙しい産業になっており、期間従業員や派遣従業員が相当増えてきておりますの で、品質、安全、生産性、職場運営、職場管理の観点からも、やはり一体となって仕事 をしていくことが必要です。総合組立産業として、職場の和は極めて大切ですので、こ ういう方たちにもなんとか使えるといいますか、参考になるものになればと思っており ます。こういう方たちの採用の際の一つの履歴書みたいなことでも使えればと思いま す。  それから、最終的なことですが、業界内の職業能力パスポート的役割を果たせればと 考えております。要は、先ほどの診断シートにより自分で評価したものを、各企業に応 募していった場合に、それを見ていただければ、そういうことをされてきたのかという ことで、質問や意見交換をする前に、使用者側にしても本人にしても、自分が大体どの 程度の水準にあるかをわかっていただける。  そういうことで、自動車総連は2003年から、もし重大な雇用問題が発生した場合で も、なんとか働いている人が他の企業へ移動ができるような体制を考えたいという運動 を進めてきていることもあります。そういう意味で、業界としてのパスポート的なもの ができればと考えております。  5頁で今後の課題です。まず初めに、組立職種における有効性や職業能力評価基準の 活用動向調査をしていきたいと思っております。これは私ども業界団体、自動車総連の 労使双方の立場で活用可能性について検討し、各会員会社並びに傘下の組合に対して展 開していきたいと考えております。  2つ目は、業界内の様々な職種においての職業能力評価基準等の活用検討です。組立 職種は、自動車産業においてその作業や生産技術の改善、技術的な向上といったものが 図られております。しかしながら、自動車産業における組立職種というのは、今まで省 人化等で自動化も図ってきておりますが、自動車産業においては組立職種は極めて最重 点の職種ですので、こういうものについては今後も継続していきたいと考えておりま す。  3つ目は、期間従業員・派遣従業員も含めて従業員の意欲・活力の向上につなげたい ということです。製造業ですので、技能の伝承・継承といったことはもちろんですが、 これから全世界的な競争の中で、やはりこの競争に打ち勝って生産性の向上、コスト低 減、商品力強化に向けて、働く人の意欲・活力、そして労働条件の維持向上に合わせて 家族並びに地域社会の発展のお手伝いができればということも若干考えさせていただい ております。 ○諏訪座長  ありがとうございました。今の報告に基づいてご質問、ご意見を賜ります。 ○上西委員  今見せていただいた能力診断シートですが、各企業が人事評価のため、能力開発のた めにそれぞれこのような形のものは既に持っていると思うのです。それぞれの会社が持 っている上に、業界共通のものを作った場合、その業界共通のものというのは、それぞ れの会社にとってどういう意味を持つのかが難しいのではないかと思うのですがいかが ですか。 ○奥村政一氏  ご指摘のとおりで、各社既に人事処遇制度として直結しており、そのものですので、 昇給、昇進・昇格も含めてなっております。これは、各社極めて重要なことですのでも ちろん持っております。  各社確かに持っておりますけれども、今求めているのは組立職種において、普通の能 力評価基準といいますか、採用や募集をした場合の共通項的なことがこれで明確になる と思います。もちろん業界によって差がありますが、ある程度大まかに共通的なパスポ ートと言うか、ある意味で運転免許証みたいなことでよろしいかと思うのです。運転免 許証は持っていますと、上手か上手でないかは別ですけれども、そういうことで業界と してはこういう診断シートを見ることにより、その方の水準といいますか、基本的なレ ベルがそれで極めて明確・簡単に理解できる。  そういうことで、当該会社がその方を雇った場合に、仕事に就けるときに、訓練や教 育を省略できたりしますので、これを活用していただければ、企業にとっては経費的な もの、日数的なものも効率が上がることが考えられます。 ○上西委員  今パスポートとおっしゃいましたけれども、移動の際に必要になるということです か。それぞれの会社の中で育成していくシステムは独自で持っているけれども、移動の 際には基準が統一されたパスポートがあるといいというお話だと理解してよろしいです か。 ○奥村政一氏  はい、そうです。特に、期間従業員や派遣の方は今後もっと増えてくると思います。 そうした場合に、14ある自動車メーカーは市場動向により繁閑が非常に激しいものです から、そういう場合には労働移動が起こります。その場合には有効なものになるのでは ないか、ということを私どもは期待しております。 ○廣石委員  今の、最後のところは私も伺いたいところでした。他社への移動がどれだけ考えられ ているのか、というところが私もとても気になるところでした。期間従業員、派遣従業 員も、ある意味では視野に入れている。どちらかというと、正規従業員はあまり移動さ れては困るわけですから、そちらの方の話ではない、というふうに今の話は理解しまし た。  現場だと、こういうものは非常に作りやすい。生産労働者の場合には、ある意味でこ のようなものをそれぞれの会社が作っているということはよくわかるわけです。このよ うな職業能力評価基準について、ホワイトカラーに対してこういうものを作るお考えが あるのか、もし作ったとしてどれほど有効なものになり得るのかをお聞かせいただけれ ばと思います。 ○奥村政一氏  協会からこのお話をいただいたときに、ほかの産業でもやられたのですが、人事、労 務、技術というものも含め、もっと幅広くお願いできないかということでした。私ども としては企業ですから、同じ財務なり、経理なり、システムエンジニアリングなり、い ろいろ職種があります。これは、個々の企業によって若干違いますし、そこは各社の伝 統なり方針がありますから、仕事のやり方、やらせ方、評価等が違います。やることは 自動車だからといって、ほかの産業とかなり違っているようなことはないと思います。 私どもは、この組立職種に限定させてください、ということで無理を申し上げさせてい ただきました。今のご質問の件ですが、私どもはそれほど大幅に、自動車が変わってい るとは思いません。 ○廣石委員  そうすると、共通部分で職業能力評価基準を作ったとするならば、ホワイトカラーの 部分は、自動車産業の部分においても妥当するという理解でよろしいですか。 ○奥村政一氏  はい。先ほど永瀬さんから説明のあった、広い事務部門は基本的に活用できるだろう と思います。それほど変わっているわけではないと思います。 ○北浦委員  業界内の能力パスポート的なということですが、これは期間雇用や派遣のところで価 値が出てくるのだろうと思うのですが、具体的にパスポートを考えているのですか。 ○奥村政一氏  いいえ、これは審議をしている段階でも出てきた話ですが目安的なものが出てきた。 目安と言ってもしようがないということで、パスポート的なものかなとか、免許証的な ものかなという話が出てきました。基本的には、3頁の診断シートに自分で○を付けて いただいたものをお持ちいただければ、それがパスポート的な役割を果たすということ でご理解いただいてよろしいかと思います。特別何かを設けるということではありませ ん。 ○北浦委員  現実にパスポートを作るということではないということですが、そういうシートを本 人に渡すという話になるのですか。 ○奥村政一氏  はい。これも審議をしている段階で出たのですが、例えばハローワークや学校があり ます。学校はまだまだ難しいかもしれないのですが、そういう公の機関なりのときに、 自動車の組立を希望する方が来たときに、こういうものを事前に渡せば、その方の位置 づけもわかるでしょう。その方が企業へ行った場合でも、それを直接出していただけれ ば、有効なものになるだろうと考えております。これは、私どもの希望ですから、これ から成果物ができた後にいろいろご相談ということになろうかと思います。 ○北浦委員  いずれにしても、その使い方のところが非常に重要だと思いますので、そういう検討 というか、考え方を持っているというのは大変いいのではないかと承りました。  先ほどありましたように、担当作業とか自工程という形の表現になってしまうのでや や抽象度が出ますが、「ある程度」ということと、業界内部で使っていれば、それはあ る程度、理解可能ということになるのだろうと思います。問題は特に派遣ということに なると、派遣業界自体にこれを理解してもらわないといけなくなってくるわけです。業 界内部でない、他の人たちにこの尺度を見せなければならないのではないかと思うので す。 ○奥村政一氏  各企業とも、最近は派遣の人を雇って事業を進めています。自動車の場合は、人材派 遣会社とはかなり深い関係がありますので、活用の仕方については初めから大きな壁は ないのではと考えています。あとは、その企業なり私どもの努力次第ということになろ うかと思います。 ○高橋委員  今のお話に、こういうものは使われないと意味がないので、目的は何なのかというこ とを感じていました。今のお話は非常に明快で、期間工など移動的な人たちの問題を考 えたときに、標準的なものが絶対あった方がいい、というのは非常にわかりやすいお話 だと思います。  そうだとすると、そういうことの対象になる職種にだけ作ればいいということです。 それにあまり関係なさそうなものにはあまり必要ない。言い方は悪いのですが、業界の 再編が起きたときに、どこかの自動車会社の調子が悪くなってきて、そこは大幅に削減 せざるを得なくなると。同じ問題はホワイトカラーの中にも出てくる。総務、経理は別 として、技術者というのはあり得ると思います。  総合電気でも、ここ数年例えばNECでパソコンの設計をやっていた技術者が、ソニ ーでVAIOの設計をやるために転職するみたいな話というのは、会社自体のビジネス ポートフォリオの見直しがどんどん起きてくると思います。そういうことをターゲット にするのであればわかりやすい目的で、それに合った職業能力評価のあり方がすごく明 確に出てくると思います。  ずっとお聞きしていて問題なのは、全般的に職業能力評価という目的はいろいろある のですけれども、あまりにも総花的で、極めて包括的なものを総花的な目的のために作 るというと、大体が誰も使わないものになるというのが一番心配です。もちろん、いろ いろな目的のために、全然バラバラで、お互いにシナジーが出ないような形でやるのは 問題ですけれども、すべての目的のために1個で対応しようというのは、随分無理があ るのかと思います。  それでは何で考えたらいいのかというと、目的は資料にもありましたけれども、1つ はマッチングなのか。もう1つは個人の能力開発の目標を与え、意欲を高め、自己啓発 を促進するのか。マッチングというのは採用にしてもそうだし、これは会社側からのマ ッチングもあるし、本人側からのマッチングもあります。この仕事をやる適性がある人 なのかどうか、あるいは自分自身がその仕事に向いているのかどうかマッチングを判断 する。自分の目標にして、スキルアップのために努力させることが目的なのかによって 違います。  もう1つ切り口が違うのは、例えばYES-プログラムなどはそうですが、若手の定着と いうことがあります。最初の1年、2年、3年の中でなんとか仕事をこなせるようにな るまで若手を定着させる問題が、今の日本の企業の中で、定着力、育成力が落ちている 問題にどう対応していくのか。これは、もう少し上までいった人間の自己啓発みたいな 話を促進するのとは随分違う内容だと思います。着目すべき能力もすごく違ってくると 思います。  もう1つ言えば、これは経済産業省の話なのかもしれないのですけれども、重要なの は日本の国際競争力を考えたときに、こういう能力を業界全体としても、極めて意図的 に国の政策的に強める努力をしていかないと、日本の国際競争力は駄目なのではないか という議論で能力開発をしていくというのもあります。  例えば、イギリスのIiPの制度というのは能力評価ではないですけれども、IiP が始まったのはサッチャー政権のときに、イギリスの国際競争力が最大のポイントで、 それが目的で始まったのです。何にしても、かなりピンポイントで、対象者とターゲッ トになる人たちと目的を明確にしないと駄目なのだろうと思うのです。  それによって、先ほどから出ている行動を記述するのか、能力を記述するのかという 問題も全部スタイルが変わってきます。それだと包括的にならないではないかというこ とですが、とにかく1個どこかで使われないと広がらないのです。そうやっていくつか ターゲットにして広げられるものを作り、それをいろいろな目的のために少しずつ転用 する、転用できないところは少し改造していくみたいなことをやっていかないと、最初 から全部にカバレッジできるようなものを作ろうと思うと、誰もカバーできないものに なってしまうというのがすごく心配なのです。だから、今の自動車工業会の話はものす ごくわかりやすくて、ピンポイントで目的を明確にして作っている。こういうものは使 われるだろうという気がいたします。  それに関連していくつか申し上げますと、目的が何かということと、仕事の分野とい うことがあります。戦略性の高い仕事と共通性の高い仕事というのは、業界の中にもあ るわけです。戦略性の高い仕事というのは、その会社の優位性の源泉になっている部分 であり、これは業界標準どおりやってしまったら身も蓋もないです。その会社が、他社 と違う形でやらなければいけないところです。共通性の部分というのは、そういうもの ではない部分です。  日本の終身雇用の弊害として、別に戦略性を求めているわけではないけれども、独自 のものが多すぎてしまって、ジョブマーケットの流動性が出にくいということがありま す。そこの部分でいうと、そこで差別化をとるというわけではないのだけれども、例え ば経理の罫線の引き方が我が社独特だからといって、差別化になるわけではないのだか ら、そういうものはできるだけ標準化しよう、という話を進めていくのは1つの目的に なり得るけれども、戦略性のコアの部分に入り込もうとしても、そこまでカバーするも のを同時に作ろうとしても意味がないのだと思うのです。企業は使わないと思います。  もう1つあるのは、ジョブ包括的に記述するのか、特定の能力を記述するのかという ことです。ここではユニットという形で分解されていますが、どうしてもホワイトカラ ーの部分を含めてもそうですけれども、1つの仕事、職種、ジョブの名前として、その 部分の人間が必要な能力を包括的に記述したいという気持がすごく出ています。そうだ とすると、その中には知識的なことから行動特性、思考特性的なことまでいろいろなも のが混ざってきます。  それをジョブとして、ジョブディスティンクションみたいな形できちっと包括的に作 りたいという話。ファイナンシャル・プランナーというのは微妙なのですけれども、フ ァイナンシャル・プランナーという資格を取ってファイナンシャル・プランナーになる のは、ファイナンシャル・プランナーというある種のスキルを認定しているのか、ファ イナンシャル・プランナーという職業認定なのかということがあります。スキルと職業 の認定がほとんどイコールになるものというのは、医師と弁護士のようなものがありま す。  多くのものは、あるスキルを認定することは、ある職種の中で生きる1つのスキルを 認定しているにすぎないタイプのものが多いと思います。職業能力の認定というのを、 1つの職種として丸ごと認定するのか、その職種がある種のスキルの塊として認定する ことをより重視するのかということによって作り方がすごく変わってくると思います。  マッチングというと、これは包括的でないとマッチングできないです。マッチングが 目的だというのであれば、ジョブ包括的だという記述に行かざるを得ないのだけれど も、個人がスキルアップをさせるためだというのであれば、ジョブ包括的である必要は ない。例えば先ほどお話があった、これからの仕事で特に重要であって、今はまだこう いうことを勉強している人は少ないのだけれども、こういうスキルをもっと世の中で身 につけたいし、身につけてほしいみたいなものをどんどん個別にユニット化して、それ を認定する形にしていけば、むしろ個人はそれに向かって目標ができて、勉強できると いうふうになるかもしれません。でも、それはジョブ包括的である必要はないのではな いかと思うのです。  能力については、先ほどから廣石委員がおっしゃっている部分と同じなのですが、行 動特性、思考特性的な部分なのか、知識、スキル的な部分なのかということもあり、両 方見ようとすると、両方を同じ基準で認定しようとするのは絶対に無理なのです。スキ ル、知識的な部分でいえば四択で見ることはかなりの部分はできるでしょうけれども、 行動特性、思考特性は記述式であったとしても、テストで見ること自体が非常に難しい ということになります。  そうだとすれば、これは見方を分けて考えなければいけない。両方を包括的に一遍に やろうとするのか、それは別のものとして、こっちはこっち、あっちはあっちにしよう ということになるのかです。ホワイトカラーの4段階の評価基準がありましたけれど も、あの4段階を見てみると、いちばん下の段階は比較的「こなし仕事」です。とりあ えずこなせる、言われたことはちゃんとできる。そのレベルでは、結構スキル、知識的 な部分の割合が多いです。  上のレベルまでいくとどうなるかというと、マネジャーのところで「意思決定し、判 断する高度な知識経験がある」みたいな表現があります。今のマネジャーに求められる ことは、判断力よりも遂行力ではないかと思うのです。例えば、人事制度を改革すると きには、いろいろな部門へ行って、「なんでそんなものをやるんだ」という人間を必死 になって説得する。それは制度改革だけではなくて、ものすごいエネルギーとパワーを 必要とするし、それを仕切るマネジャーであり、場合によっては高度スペシャリストの 仕事というのは、その部分でものすごい行動特性、思考特性がないと成果は出ないで す。  あの4段階でも、上に行けば行くほど、行動特性、思考特性的なウエイトが高くな る。一番最初の段階は、スキル的なウエイトが高いかもしれない。それを全部包括的に すべての職種を、レベルもすべてについて、同じような書式で書こうとすると絶対に無 理が出る感じがいたします。  そういうことで考えてみると、最初から全体を包括的にマクロ的に見るのではなく て、目的やターゲットをいくつかに絞って、そこで成功事例を積み上げていくことをま ずやった方が、いきなりカバレッジを目的とするよりは、全体として非常にいいのでは ないか。それによってすごく絞れた議論になってくるのではないかという感じがいたし ました。 ○能力評価課長(井上)  高橋委員のご意見についてですが、評価基準を作るにしても、目的を明確にしたもの にならないといけないというお話でした。資料III−@の3頁を見ますと、端的に申し ますと、私どもも職業能力評価基準が必ずしもそのまま直接の形で使えるとは思ってお りません。それは、その場面場面の根底にある共通の基準、内容ということです。それ を、例えば自己啓発なりの場面のツールとしてはビジネス・キャリア制度、公的な訓練 施設、あるいは企業の訓練施設でどういう教育カリキュラムをという場合には生涯職業 能力開発体系という形のツールに落とし込んでいくという形で考えております。  2点目のご指摘の、個々の企業に特有の戦略性の部分については、職業能力評価基準 の対象とはなってこないと考えております。  3点目の、個々の能力で捉えるのか、それともジョブとして捉えるのかということで すが、生身の人間ですので、どちらと割り切るのは難しい部分があると思います。今、 その両面あるところを先ほどの説明にもありましたように、共通のユニットと選択のユ ニットということを組み合わせることによって1つのジョブを作るという考え方をとっ ております。それぞれのジョブごとに作っていくと、かなり重なってくる部分があって わかりにくくなることがありますので、共通と選択という形をとっております。  4点目は廣石委員のお話とも関連しますが、その能力とは何かということです。知識 なのか、行動特性、思考特性なのかということです。高橋委員ご指摘のように、レベル が上がっていくに従い、知識だけでなく、そうした場面に応じた職務遂行能力を含めた 行動特性なり思考特性の比重が高まってくるだろうと思います。  この職業能力評価基準においては、基本的にそれぞれのレベルで何ができるか。指示 を受けてできる、自分で判断してできる、部下を指導してできるとか、何ができるとい うことで表しております。これまでの知識偏重みたいなところがあったところに、行動 特性なり思考特性を合わせた形で考えた場合、何ができるという形で示すのが、1つの 物差しとしてわかりやすいのではないかということで、このような試みをさせていただ きました。  先ほども申し上げましたように、既に完成した業種の基準を含め、私ども今の段階で 作れます基準が、完成形とも固定したものとも考えておりません。例えば、今の何がで きるというのを、もう少し違う形で表現した方が実用性が高まるということであれば、 そこは柔軟に考えていきたいと思っております。 ○北浦委員  資料III−@の3頁に絵が出ているのですが、目的別というのは大変よくわかります。 この絵を見て、線の書き方はこれでいいのかということで疑問に思うところがありま す。細かいところは省きますが2つだけ申し上げます。  1点は、グリーンの部分の生涯職業能力開発体系です。この部分が職業訓練とだけと しかつながっていないのですが、生涯職業能力開発体系ということになると、本来はも う少し右側の世界にも関わってくるのかという感じがしています。  もう1つわからないのは、能力評価ツールという紫色の部分がキャリア・コンサルテ ィングにつながっていて、キャリア・コンサルタントで能力評価となっています。これ は、どういうことを考えているのか教えてください。 ○能力評価課長(井上)  1点目のご指摘は、確かに生涯職業能力開発体系だけではなくて、他のものについて も上の方から下の方に、線の太い、細いはあるのだろうけれども実はつながるのだろう と思います。ただ、そうするとその対応関係がわかりにくくなるということで、ある程 度デフォルメした形で示させていただきました。  能力評価ツールについては、現在職業安定局と連携して開発中です。何ができるとい うことを、求職者本人がわかりやすいような形で、先ほどの自動車のシートにも似てい るところがありますが、チェックして、それを安定所なり民間の需給調整機関、あるい はキャリア・コンサルタントの方で見て、マッチングに活かせるようなものをと考えて おります。 ○北浦委員  特にマッチング系ということですね。 ○能力評価課長(井上)  はい。 ○諏訪座長  本日は、大変盛りだくさんの研究会になりましたが、全体としては能力評価の在り方 ということで、三人の方からご報告、ご説明をいただき、委員の方々と一緒にこれまで 検討してまいりました。まだまだ議論は尽きないところではありますが、時間がまいり ましたので本日はこの辺りで終わらせていただきます。永瀬様、奥村様にはお忙しい中 をいらしていただき、大変貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。  次の論点ですが、次回は「職業能力開発を行うに当たっての相談、情報提供の在り方 」ということでご議論いただきます。事務局には、いつものとおり本日の議論を踏ま え、論点整理(案)をさらに整理していただき、次回の会議にご用意いただきたいと思 います。  次回以降の日程について事務局から説明をお願いいたします。 ○総務課長補佐(佐々木)  次回は、3月8日(火)の10時から2時間ということで開催を予定しておりますので よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  次回は、3月8日ということで年度末の大変お忙しいところを恐縮ですが、よろしく ご出席のほどをお願いいたします。以上をもちまして、第9回職業能力開発の今後の在 り方に関する研究会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。