05/02/14 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(循環器ワーキング・グループ) 第3回議事録 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(第3回循環器ワーキング・グループ) 1 日時 平成17年2月14日(月)16:00~17:45 2 場所 厚生労働省専用第17会議室 3 出席者 医学専門家:奥平雅彦、笠貫宏、髙本眞一、横山哲朗 (50音順) 厚生労働省:明治俊平、渡辺輝生、神保裕臣、菊池泰文 他 4 議事内容 ○職認官 ただいまから、「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会第3回循環器ワーキング ・グループ」を始めます。笠貫座長、よろしくお願いします。 ○笠貫座長 討議に入る前に、事務局から本日の提出資料のご確認をお願いします。 ○障害係長 資料No.1「第3回循環器ワーキング・グループの主な論点」、資料No.2「循環器の 構成(案)」、資料No.3「胸部臓器分野の障害認定に関する専門検討会報告書たたき 台(循環器)」、以上です。 ○笠貫座長 どうもありがとうございます。まず心筋梗塞について、前回ご指摘のあった箇所の修 正について、事務局からご説明をお願いします。 ○職認官 多くは、表現に関するご指摘ですので、主なところだけご報告します。たたき台の7 頁の真ん中やや下あたり(ア)のaの第3段落に「心筋梗塞については」で始まる文章 がありますが、3行目に「心機能低下の程度が小さい」と従来は書いていましたが、 「軽度に止まる」という表現のほうが適切であるというご指摘をいただきまして、同様 のところを何カ所か直しています。同じ頁の下から5行目で、「急性症状が再度出現し た場合」と修正しました。前回、「再燃した場合には」と書きましたが、馴染みの悪い 表現であるということで「再発」などとしてはいかがかというご指摘がありました。た だ、この「再発」という表現は労災補償行政の部内の用語としては特殊な使い方をしま すので、ここは「再度出現」としました。再度ご指摘があればと思います。2行下は 「心筋梗塞については、他の疾病一般と比較すると」と、「比較」という表現に直しま した。 8頁の(イ)のaの本文2行目、左室駆出率の式の「×100」の場所を誤認されない ようなところに移し替えました。2行下で「心機能低下が中等度以上」とありますが、 前は「著明である」としていたものを、40%未満に低下している場合の程度の表現をこ のように替えました。さらに2行下の終わりのほうに、「その後の心機能の低下は緩慢 である」と書いています。従来は「極めて緩慢」としていましたが、「極めて」をとっ たほうがいいということで直しました。この「極めて」が何行か下に2カ所ほど消し忘 れて残っているところがありましたので、そこは併せて消していただければと思いま す。 さらに2行下の「その心機能の低下には」のあとに、「梗塞巣の部位と範囲」とあり ますが、「範囲と部位」を引っ繰り返したものです。また、その「心機能の低下には」 という文章の「梗塞巣の部位と範囲」の前に、「年齢・」というフレーズを入れるべき だと思います。従来年齢についてくどくどと書いていたのを削ったのですが、「年齢・ 」だけ入れていただければと思います。 bの第2段落の2行目に、「心室性頻脈性不整脈」とあります。「心室性」を加えま した。2行下、「したがって、こうした危険な」というのは従来の「悪性の」を「危険 な」に直したものです。下から2行目、「残存する狭窄が高度ではないものや末梢の血 管の狭窄である場合には」は、前回のご指摘の表現をそのまま使いましたが、若干回り くどい気もします。なおご指摘があればいただきたいと思います。8頁のいちばん最後 の「また」のあとの「心筋虚血の有無については、評価法の標準化が困難等のことから 」というのは、前回ご指摘いただいたままの表現を使いました。3行目の「したがって 」以下とまとめにも同じ表現を使っています。 (3)の第3段落の下から5行目のまた書きのいちばん最後に、「心機能が正常範囲 に止まった場合を含め」とあります。心機能の低下が僅かであることをどう表現するか ということでしたが、僅かな場合であればすなわちそれは正常範囲ではないかというこ とで、こう書いたほうがわかりやすいということでしました。心機能の正常範囲が定義 としては見当たらない気がしますので、その辺との関係で正常範囲という表現をそれで もよろしければこのままでと思っておりますが、そこをなお確認させていただければと 思います。いまの文に続いて「特に過大な負荷が加わる」のあとの表現は、前と替えて 「心不全症状や」に直しました。主なところは以上です。 あとは若干、日本語としてどうかと思ったところを直しております。さらに、文章が 冗長、ワンセンテンスが長い、障害の検討に当たって必ずしも必要でないような叙述が あるのではないかという部分の整理は、全体の検討を一通りお願いしたあと、バランス を見ながら整理をさせていただければと思っております。以上、心筋梗塞の前回のご指 摘を踏まえた修正の主なところをご報告させていただきました。 ○笠貫座長 どうもありがとうございます。ただいまのご説明について、何かご意見はあります か。 ○横山先生 1頁目の心停止はいいのですか。「心停止となったことにより、重篤な不整脈が出現 しやすくなる」で、心停止になったら止まってしまうわけだから、心停止の病歴を持つ ものについてどういう表現を。 7頁の下から5行目に「再度」というのが同じセンテンスの中に二度出てきています が、これは直していただいたほうが。 ○職認官 後ろのほうを取らせていただきます。 ○横山先生 2番目の「再度」というのは、改めて療養の対象とするという何か別の表現にしたほ うがいいと思います。 ○笠貫座長 ほかにありますか。今日は西村先生がお休みということで、また細かい訂正もいただ けるかと思います。7頁の「心機能低下の程度によって」の説明と8頁の「心機能低下 が緩慢である」という文章は繋がっていると思いますが、前回に心機能低下が軽度の場 合に、その心機能がさらに低下する速度は強調されましたか。程度と速度の2つの要素 は別々になりますが、緩慢であるということは強調すべきでしょうか。 ○職認官 前回は「極めて緩慢」となっていて、さすがに「極めて」が付いていると違和感が強 いということで「極めて」を取ったのです。 ○笠貫座長 スピードが大事なのですね。 ○職認官 以前、西村先生がお使いになった表現でいくと横這いと言えるかどうか。緩慢であれ ば概ね横這いということで、症状の安定、すなわち治ゆに繋がり得る。横這いではなく て長い目である程度中期的に見ると、明らかに大きく下がっていく。傾きもある程度下 向きになっているものは変化しているものだということで、症状の安定とは言えないの ではないか。そこのところを症状の低下が緩慢であると表現したつもりなのです。 ○笠貫座長 緩慢で、なおかつ軽度であると。 ○職認官 軽度なものは緩慢であるという理解です。 ○笠貫座長 8頁の「心機能の低下も著明となる」というのは、スピードも速くかつ高度の心機能 低下になるという意味を現しているのですか。 ○職認官 この場合の著明は緩慢の反対語で、スピードを現しているつもりです。 ○笠貫座長 著明というと非常に速いという、これも極めてに近い意味を持ってしまいますが、そ の後の心機能の低下も高度になるという程度のことかと思いますが。 ○職認官 顕著というと、普通はものすごくはっきりしている。著明というのは異なることが明 らかだというぐらいの意味ではないかと思いますが、語感の問題でそういうふうに読み にくいということであれば、何かうまい表現をお教えいただくか事務局で考えさせてい ただきます。 ○笠貫座長 心機能に対して軽度と中等度と高度という3つの使い方できていますから、心機能低 下40%以下の場合には、高度になるという程度にしてもいい感じがします。 ○課長補佐 むしろスピードを表わしたいなら、スピードと書いたほうがはっきりしますよね。ス ピードが緩慢なのか緩慢ではないのか。 ○笠貫座長 その後の心機能低下も、緩慢の反対は速いですよね。 ○横山先生 緩慢というと何か。 ○課長補佐 平たく言うと、ゆっくりですよね。 ○横山先生 「緩徐」という言葉があります。おそらく、言っていらっしゃることはそういうこと ではないかと思います。 ○笠貫座長 医学的には緩慢よりも緩徐のほうを使われると思いますので、「緩徐」ということと 心機能低下の進行も速いとか、そうしていただくほうがいいかと思います。 前回の心筋虚血について、残存する狭窄の高度と末梢の血管という狭窄の程度と部位 について記載するというご指摘があったところは、直していただいていると思います。 心筋梗塞については、これでいいですか。奥平先生、何かありますか。 ○奥平先生 いまのご説明のあった前のところでもいいですか。5頁の(1)検討の視点の最初の 行は、やはり「壊死した心筋の部位と範囲」のほうがいいと思います。その頁の病態の 3行目、「血液供給を失った心筋は、まず、内膜から」は「内膜側から」のほうがいい でしょう。「心内膜側から壊死が始まり、次第に外膜側」。その3行下も「壊死した部 位と範囲」のほうがいいのではないかと思います。 6頁の2行目は「心筋の壊死という器質的損傷」になっていますが、「損傷」より 「病変」のほうがいいかと思います。これを読まれる方が必ずしも医学領域の方だけで はないとすると、10行目の「10個/1時以上」というのも、普通の文章で「1時間あた り10個以上」のほうがわかりやすいかもしれません。(イ)治療の2行上で、「残存す る不整脈」、不整脈が悪性でなのでしょうか。残存する不整脈が悪性で、心筋虚血が重 篤であるほどということなのでしょうか。 ○職認官 修正のご指摘どおりになっていないところがあって恐縮ですが、「残存する不整脈が 危険で」としたほうが、それで「心筋虚血が重篤で」ということでよろしいですか。 ○奥平先生 はい。あと1カ所、7頁の上から2行目です。「不整脈が出現したときに重大な事態 」に括弧して、例えば「突然死」ということを入れておいたほうが文章としてはわかり やすいかと思います。以上です。 ○笠貫座長 髙本先生、何かありますか。 ○髙本先生 ここはいいと思いました。 ○笠貫座長 次に、大動脈解離についてです。前回、治ゆとなったものに障害を残すと考えるかど うか、また再発をどう考えるかについて討議が途中までだったかと思います。前回の案 文について指摘があった箇所の修正と併せて、事務局からご説明をいただきたいと思い ます。お願いします。 ○職認官 資料No.1の1頁です。いま、座長からお話がありましたとおり、大動脈解離の再発 と障害と連動してくるのだろうと思いますが、大動脈解離を一旦発症した方は元々血管 の脆弱性があります。したがって、血圧管理も必要ですし、また大動脈解離を起こすこ とがほかの人に比べれば高いということをもって、障害と見るか、また再度発症した場 合にそれを再発と見るかどうかという点を、前回、再度検討することとされていまし た。事務局としては血管の脆弱性は基礎疾患ではないか、したがって、血圧管理も基礎 疾患に対する治療ではないか、新しい解離も新たな疾病の発症であって、前の大動脈解 離に起因したものではないのではないかと考えていますが、再度今日、ご議論をいただ ければと思います。 併せて、文章の修正箇所の主な所を説明します。16頁の(2)のアの(ア)下3分の 1ぐらいに「大動脈解離の病型分類」とありまして、ここをいろいろと直しました。ド ベイキー分類のI型、II型が逆になっていましたので、そこを直しました。また、ドベ イキーのIIIBの定義について、「横隔膜を超えて腹部大動脈に至っているもの」と書 きました。16頁のいちばん最後の行で、「大動脈解離では真腔と偽腔とは内腔が交通し ている」とご指摘をいただいたと思いますので、そのように直しました。 17頁の(ウ)の治療ですが、この部分もいろいろと直しています。2行目の部位の問 題で弓部大動脈を加えました。第3段落のまた書きの5行目に、「60mm以下でもでも」 と「でも」が2つありますので、消していただければと思います。また書きの最初の行 の終わりに、「スタンフォード分類B型で、偽腔開存型については、早期に破裂するこ とは少ないため」と書いてありますが、「スタンフォード分類B型では偽腔開存型であ っても、早期に破裂することは少ないため」にしたほうがいいかと思いますが、ご指摘 をいただければと思います。最後のセンテンスのなお書きですが、合併症によって障害 が残った場合の問題も記述しておく必要があるということで、ここに書きました。 18頁では、ご指摘をいただいたところではないのですが、ウの2段落目の3行目の最 後から、「置換部の前後に解離が生ずる等特段の変化がないか」として、人工血管に置 換したものをしばらく観察する必要性がある理由を書いていますが、この間の話までで こんなことはないのではという気がしてきたので、適切な例示があればご指摘をいただ ければと思います。主な修正は以上です。 ○笠貫座長 ただいまのご説明にご意見はございますか。 ○横山先生 17頁の真ん中辺りに「60mm」とありますが、普通は循環器はmmなんですか。mm1字で はないのですか。 ○髙本先生 これは長さですから6cmです。圧ではないので、これはmmでいいのです。 ○横山先生 わかりました。 ○笠貫座長 その前は血圧管理になっていますから、「従来は、大動脈径が60mmに至ると破裂の危 険が大きい」ということだと思います。 ○職認官 「これが」を「大動脈径が」というふうに。 ○笠貫座長 そういうことです。 ○髙本先生 先ほどの16頁のいちばん下で、「真腔と偽腔とは内腔が交通している」というのは、 そうなのですが、真腔と偽腔と、また内腔というのが別にあるように思われるでしょ う。真腔と偽腔が交通しているので、そちらのほうがわかりやすいと思います。「真腔 と偽腔が交通している偽腔開存型が多いが」と。 ○奥平先生 前はたしか「血液」が交通しているということで、それなら「内腔」のほうがいいと 言ったのですが。 ○髙本先生 さっきのところで、これは「60mmに至ると」より、「60mm以上になると」のほうがい いと思います。60mmになった途端に破裂するというより、60mm以上になると破裂する確 率が高いと。「60mm以下でも破裂した例が報告されているため、最近では大動脈径が55 mm以上で手術することが多い」と「大動脈径が」を入れたほうがわかりやすいと思いま す。先ほどの「偽腔開存型であっても」というのはいいと思います。「ついては」とい うよりも良い。 先ほど言われた18頁のウの4、5行目ぐらいのところで、「解離した部位を全て人工 血管に置換したものにあっては、置換部の前後に解離が生ずる等特段の変化がないか、 また、偽腔閉塞型にあっては、偽腔開存型に移行することがないか等を確かめるための ものであって」と。置換部前後というのは、吻合部なんですよ。普通の大動脈と血管の 吻合部で、吻合部というのは何かが起こる可能性がありまして、吻合部の仮性動脈瘤な ど、そこだけポコッと膨らんだりし、解離とは少し病態は違うのですが、解離から生じ たわけですので、「吻合部などに特段の変化がないかどうかを確かめるため」としたら どうでしょうか。 ○職認官 「仮性動脈瘤が起こる等特段の変化がないかどうか」というように、例示として書け るほどの典型例ではないのでしょうか。 ○髙本先生 何か起こるとしたらそういうことなのです。吻合したところが解けるとか、せっかく やっても感染などがあると、少し緩んでそこに瘤ができることが間々あります。両方な いですけど。 ○職認官 職員などが読むには、何か例示があったほうがわかりやすいと思うものですから。 ○髙本先生 「吻合部に仮性動脈瘤など、特段の変化がないか」ですよね。 ○笠貫座長 この大動脈解離については、解離した部位を全て人工血管に置換したもの、偽腔閉塞 型で線維化したもので、1年間経過を見たものは治ゆという判断をして、それは再発は ないという考え方でよろしいわけですね。 ○髙本先生 その病気としてはそういうことで、再発したら別の病気と考えるわけです。 ○笠貫座長 最初にご説明していただいたように、血圧管理が必要であったことをもって障害を残 すとは言えないという結論を出したのは、それが根拠となるわけです。偽腔閉塞型で線 維化した、そこの血管のつながりには再発しないということと、人工血管で置換したも のも1年間経ったら、そのつながりのところに病変は起こらないということで、血圧管 理はその大動脈解離とは全く別個のもののための血圧管理だということで、障害を残さ ないという結論になると思いますが、髙本先生、そういう考え方でよろしいでしょう か。開存型に関しては治ゆはないと、これもクリアに区別されることだと思います。そ れで奥平先生、よろしいでしょうか。 ○横山先生 血圧管理という言葉をよく使うのですが、皆さんはこれでわかるのですかね。 ○笠貫座長 血圧管理でわかるかと思うのですが、何かいい言葉はありますか。 ○横山先生 降圧剤などを飲んで血圧を低いレベルに保っていても、ヒュッと上がるのがあります が、そういうのは管理の中に入るのですか。 ○笠貫座長 そういう意味では入るかなと思いますが。 ○横山先生 ……間違えないでしょうね。 ○髙本先生 大動脈解離が起こった直後は、降圧管理というようにはっきりと降圧ということは言 いますが、通常の日常生活あるいは外来のレベルでは、降圧なのですが血圧を上げるこ とはまずないです。 ○横山先生 上がることはあるでしょうね。 ○髙本先生 それはそれを管理すると。 ○笠貫座長 ということで、少なくとも1年間以上はフォローした結論をしていただくということ だと思います。 ○奥平先生 言葉使いについてですが、16頁(2)アの最初の行で、「大動脈解離とは、大動脈の 中膜で内層と外層に剥離し」とありますが、中膜で剥離するのか、中膜が剥離するの か、どうなのでしょうか。中膜が内層、外層に剥離するのか、中膜においてという意味 なのか。 ○髙本先生 中膜においてですね。 ○奥平先生 そしたら「中膜で」でよろしいのですかね。つまらないことですが、中膜が内層、外 層に剥離するということですね。専門の先生がそれでよければ。 ○髙本先生 人によって解離が違いますので、中膜の内膜側のほうでやると、外側は結構厚くなり ます。外側の近くの中膜の少ないところで裂けると、外膜が少なくなってどんどん拡大 するのではないかと思っているのですが、どうでしょうか。 ○奥平先生 昭和34年頃ですが、監察医務院で解離性大動脈瘤の解剖例を70~80例集めて、病理学 会誌に報告をしたことがあるのですが、そのときには、裂ける場所は中膜の外3分の1 がいちばん多いです。 ○髙本先生 そうですね。先生にお聞きしたいのですが、全部同じ場所ですか。 ○奥平先生 いや、そんなことはない。 ○髙本先生 多少変わりますよね。 ○奥平先生 はい、違います。ただ、全体として、頻度として見れば、中膜の外3分の1で剥離し た例がいちばん多いということです。 ○髙本先生 同じ解離をしても、あまり大きくならないものと、どんどん大きくなるものと2つあ りまして、どんどん解離が大きくなるのは、外膜が薄くなって、中膜の外側のほうで破 れて大きくなるのかなと。起こったときにそこのところを取って、ゼンソウを取って調 べているものはないですから。 ○奥平先生 慶應大学病理の細田教授がよくお調べになっているのですが、大体同じような傾向だ ったと思います。解離性動脈瘤では最近脳動脈の解離性動脈瘤で問題になっています。 それでは、わりあいに内膜に近いところで解離して内腔を塞ぐタイプが多いように書い てありますが、大動脈はそういうのはほとんどないと思います。内膜直下というのは極 めて少ないと思います。 17頁のいちばん上の行で、「血液が比較的短期間のうちに血栓化し」というのがあり ますが、「血栓・器質化し」のほうがいいかなと思います。 これも17頁で、いまの行から6行目で、「血栓が解け」という字です。「とける」、 これはさんずいのほうがいいのかと思います。もしこの解を使うのであれば、「融解」 という字にするほうがいいのではないかと思いました。 次に(ウ)治療のところのいちばん上の行です。「解離部は急速に拡大し、破裂した り、心タンポナーデを起こすことが多いため」とありますが、これは「解離部が急速に 拡大し、心嚢内に破裂して、心タンポナーデを起こすことが多いため」というほうが実 状に合う記載だと思います。 いちばん下の行で、これは臨床的なことに関係するのでご検討いただかないといけま せんが、「症状が安定し、労災保険における治ゆとなるものもあるのではないかとも考 えられる」というのですが、これは持って回ったような言い方なので、「症状が安定し たものでは、労災保険における治ゆとなるものがあると考えられる」とか、そういう表 現のほうがすっきりしていいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○職認官 いまの表現がいいかどうかは別ですが、結論として症状が安定することはないとして いますので、その辺との兼合いも取りながら、回りくどい表現にならないように検討さ せていただきます。 ○奥平先生 18頁の(3)の1行目で、「全身が必要とする量の血液を灌流」というのは、大動脈 のときに灌流という言葉がいいのかどうか、いかがでしょうか。 ○髙本先生 灌流というのは組織を。 ○奥平先生 ですから、「輸送」といっても少しおかしいし、「流通」がいいのかと思います。大 動脈に灌流という言葉は馴染まない言葉かと思ったのですが。 ○笠貫先生 何か良い言葉がありますか。 ○奥平先生 生理学の本を調べてみるのがいちばんいいと思うのです。 ○笠貫座長 通常は「送る」とか、「送り出す」ですね。 ○奥平先生 そうですね。 ○笠貫座長 先ほどのご指摘で、17頁の終わりから18頁にかけての「労災保険における治ゆとなる ものもあるのではないかとも考える」とありますが、これはその後に否定しているの で、表現の仕方をご検討いただけたらと思います。大動脈解離についてほかにご意見が ありませんようでしたら、次に移らせていただきます。ペースメーカ等を植え込んだ場 合のことをどこに書くかについては、前回少しお話いただいたかもしれませんが、この 点について事務局からご説明いただきたいと思います。 ○職認官 資料No.2の2頁をご覧ください。「循環器の構成(案)」と書いてありますが、全 体としては胸腹部臓器の報告書としてまとめられる予定ですので、最終的にどうなるの かはまだペンディングなのですが、これを上の部会に上げるときにはこういう形でと、 事務局で思っているのはこのようなところかなという構成です。実質的には、第1のと ころで、いくつかの観点でご検討していただいている最中ということですが、ペースメ ーカについて、どこにどうやって書くかということです。 第1の1、3、4、5で、心筋梗塞、狭心症、心停止、大動脈解離は、脳・心臓疾患 の業務上外の認定基準をご検討いただいたときに、循環器の対象疾病として、この4つ がこういう順番で書かれているので、基本的にはそれに沿った形で検討するのが自然で はないかということで、そのように並べさせていただきました。 ペースメーカあるいは除細動器を植え込むのは、心筋梗塞と心停止の場合かと思いま す。疾病別に見ると、2つの場合に植え込まれることがあるとなると、どこか最初のと ころでペースメーカ等を植え込んだ場合、それ自体による障害の内容、程度を検討して おいていただいて、という書き方もあるかもしれませんが、いきなり最初にペースメー カがくるというのも何ですので、「心筋梗塞」の後、2番目として「心筋梗塞後に植込 み型心臓ペースメーカ等を植え込んだ場合の障害等級」と書いて、そこでは単独の障害 の程度をまず検討した上で、心筋梗塞による残存障害の程度とトータルして考えると、 このぐらいになるのではないか、ということを書きます。4番の「心停止」でも、植込 み治療が行われるので、そこでは2で検討したとおりの等級でどうかという書き方、構 成にしてはいかがでしょうかという、まず構成の提案が1点です。 報告書のたたき台の11頁以下に、そういう案を前提にしたたたき台の案文を書いてい ます。基本的にはいままでご検討いただいたものを2番として書いただけに近いのです が、若干日本語としての整理をさせていただいたのと、12頁の下3分の1のウで、いま 申し上げたように、ペースメーカを植え込んだ場合の障害等級ということで、それその ものの障害等級がこのくらいで、それに心筋梗塞による障害の程度を加味して考える と、トータルとしてこのぐらいの障害等級になるのではないかという点を書き加えた文 章になっています。 次の頁では、同様に除細動器の場合で、下のほうのウで、「除細動器を植え込んだ者 の障害等級は、以上のような支障に」、これは除細動器を植え込んだことそのものによ る支障ですが、それに「加え、前記1で検討したとおり云々」という書き方をしていま す。 心停止のところでも、11~13頁の記述を引用し、「そこに書いてあるとおりに」とい うことで書いているところがありますが、それはこの後にご検討いただければと思いま す。 前後しますが、ペースメーカについても、前回ご指摘いただいた案文の修正がありま すので、日本語として整理した以外にちょっとご説明を申し上げます。12頁の2行目で すが、「また、ペースメーカの植込み後に徐脈等により」と前に書いたのですが、「不 整脈により」と書いたほうが正確だということで直しました。同様の文章が除細動器の 場合についてもありますが、同じように直しています。 13頁の真ん中の辺りで、イの(ウ)の最後の4行の「さらに」というところです。こ こで「除細動器の植込み後に不整脈」と書き方を直したところが出てきます。ここは前 回自動車の運転免許について非常に大きな制限があり、「適性がない」というような書 き方をしていましたが、必ずしもそう書かなくてもよければ、このような表現に抑えて はいかがかということもありましたので、このようにさせていただきました。よりその 根拠を明確に掲げられるのであれば書かせていただきたいとは思いますが、決してここ で「大型の運転免許について適性がない」と書かないと、障害の内容についてうまく書 き表せないというほどでもないと思いますので、このようにさせていただきました。そ の他の点は省略させていただきます。以上です。 ○笠貫座長 ここでご討議いただきたいのは循環器としてまとめるときの構成だと思います。ペー スメーカ、植込み型除細動器は、心停止に対する治療として行われます。それについて の障害等級として議論されるわけですが、この構成上の問題として、心筋梗塞後に起こ った合併症としての不整脈治療というところが先にくることから、順番としてはここに 書いたらどうでしょうかというご提案だと思うのです。これについては最終的に横山先 生のほうでお考えいただくのかもしれませんが、事務局としては心筋梗塞のところでペ ースメーカ等が出てきて、心停止のところで、後で出てくるものを参照というより、先 に説明したほうがいいというお考えですね。どちらでもよろしいかとは思うのですが、 読みやすいほうがいいかと思います。 通常は前からずっと見ていくよりも、心停止の場合は心停止だけを先に見るわけです から、ペースメーカのことを見る場合には、むしろ最初から4番目を読むことが多いか もしれません。心筋梗塞後に不整脈が合併してペースメーカ、植込み型除細動器を入れ る患者より、むしろ心停止になってこういった治療を受けた人が多いですから、最初か ら心停止の項を読むということになると、より多くの必要とする人は4番目の項目を最 初から読むと思うのです。流れとしてはこちらのほうが自然かと思います。これは最終 的なところでご議論いただくのでもよろしいかと思うのですが、どうでしょうか。 ○職認官 構成ですから、医学的にこうでなくてはならないということはないと思うのですが、 だんだんと内容が固まってくると、表現も文章としてのつくりも少しずつ細かいところ を含めて固めていきたいと思いますので、構成が変わると、それに伴ってのちょっとし たいじりも出てきたりすることがあるものですから。 ○笠貫座長 心筋梗塞後の治療としてペースメーカ、ICDが入ったときには、障害等級が2つ合 わさったものとしての評価はしないということで。心筋梗塞の場合には11級、ペースメ ーカが9級、植込み型除細動器が7級と決まっているわけですから、両者を加えて重症 にすることはしないと決まっていれば、後でもあまり問題にはならないのではないかと 思うのですが。 ○職認官 大きな問題ではないですが。 ○笠貫座長 11級に9級が加わると7級になるという話になると、ここで議論をしておかないと複 雑になるかと思うのですが、これは最後にまとめるときにご検討いただけたらと思いま す。 ○職認官 植込み治療というのは、心停止の場合のほうが圧倒的に多いということなのでしょう か。そうすると、心筋梗塞の後に植込み治療の話が出てくると、心停止のところには中 に潜り込んでいる程度の書き振りしかないと、何か見た目には違和感があるような、そ ういう意味での。 ○笠貫座長 アメリカ、ヨーロッパの場合には、心停止の80%ぐらいは冠動脈疾患によると考えら れていますし、一次性心停止として取り上げられることから考えて、2番に持ってきて もいいと思うのですが、日本の場合には心停止のこれまでのデータからは、むしろ冠動 脈疾患以外のほうが7、8割を占めるのではないかと考えられています。これは剖検例 と臨床例とは違うかもしれませんが、欧米との違いがあるかもしれませんので、どちら でもあまり結論が出ないので、どちらでもよろしいかと思うのですが、奥平先生、ここ について何かご意見はありますか。 ○奥平先生 心停止というのは昭和36年に、最初の脳心疾患の労働基準局長通達が出たときから平 成7年まで、ずっと一次性心停止とされてきた概念と、平成8年の通達ででた不整脈死 の両方が加わったのが、この心停止になっているわけなのです。死亡診断書の直接死因 に心停止と書いてありましても、その原因に心筋梗塞が書いてあれば、もちろんそれは 心停止にならず心筋梗塞に分類されるという、いわゆる死亡診断書の書き方のルールに 基づいて処理されます。原疾患が書かれないで心停止になったものとして従来通達で出 ていたものが、ICD‐10ではここにしか入る所がないという経緯があってこうなった のです。ですから、そういう経緯を配慮した上で、疾患名として非常につかみ所のない 面がありますから、やはり前に出さないでこの辺りに置くのが適当ではないかと思いま す。 ○笠貫座長 後ろにというご意見をいただいたと思いますが、これは最終的には全体の構成のとこ ろでお考えいただくことにしたいと思いま。 それでは、続いて「心停止」に入ります。事務局からご説明をお願いします。 ○職認官 これは今日初めてご検討いただくものですので、ご検討いただきたいところを簡単に ご説明した上で案文を読ませていただきます。 まず、資料1をご覧ください。先ほど横山先生から表現の不適切さはご指摘いただき ましたが、笠貫座長にもご指導いただきまして下勉強をした上で考えてみますと、「心 停止となったことにより重篤な不整脈が一層出現しやすくなるか」と書きましたが、心 停止の結果亡くなってしまえば、当然障害の対象にはなり得ない、当たり前のことです が、蘇生した場合が障害の対象になり得る話です。その場合に、いったん重篤な不整脈 等で心停止になっても、蘇生して前と全く同じ状態に戻ってしまえば、つまりあくまで 一過性の発作のようなものととらえられるのであれば、障害を残すことにはならない。 発作直後は少しは治療が必要なのかもしれませんが、あくまで一過性のものというとら え方があります。一方、器質的な変化の有無にかかわらず、心停止のあとは何かしら前 とは違う状態になります、例えば、重篤な不整脈が前よりも明らかに出現しやすくなる 状態に変化したということであれば、心停止となったことによって出やすくなった不整 脈に対する治療が必要になりますし、それは、当然業務上の療養として補償されるべき ものです。そのために機器の植込み治療が行われたのであれば、それによって生じた支 障も当然に障害として補償されることになります。そのあとの問題は自動的に決まって くる話で、○で書いた「重篤な不整脈が心停止によって一層出現しやすくなったかどう か」が医学的に明確にされるのであれば、その後の労災保険法上の処理は当然こうなり ます、という話に近いので、その辺りを中心にご議論、ご教授いただきたいと思いま す。 14頁(2)アをご覧ください。「心停止は、心筋症や原発性不整脈を基礎とする心室 性頻脈性不整脈や徐脈性不整脈等の出現によるもので、心停止に至る者は、元来、こう した重篤な不整脈が出現しやすかった」。これは事実だと思いますが、現にいったん心 停止になった場合には、蘇生後、重篤な不整脈が出現する割合が一層高くなる、比べる と明らかに高まるという考え方に基づいて整理をさせていただきました。この辺りは、 どういうことから言えるのかが、うまく準備ができませんでしたので、その点の論拠を いろいろご教授いただくことを中心にご検討いただきたいと思います。 ○課長補佐 要は、今回心停止に関しましては、心停止は一過性の単なる発作であって、それが治 まるとまた元の状態に戻るのではないかという考え方が1つあると思うのです。そうだ とすれば、当然後遺障害も何も残さない。元の状態に戻ったのであれば後遺障害も残さ ないのだから、障害補償の対象とする考え方はできないのではないかというのが1つの 考え方です。 もう1つは、やはり心停止の状態で蘇生すると、前よりもどこかが違っていて、それ に対して何かが行われる。その結果、これが1つの大きな治療法だと聞いております が、ペースメーカを入れる。前と違って、業務上の疾病にかかったことによって前と違 う状態になり、それの治療として行われるものだと評価ができるのであれば、心筋梗塞 で心臓の機能が低下したことによって、ペースメーカを入れることと同じ評価ができる だろう。しかし、そうではないとすれば、ペースメーカを入れることを労災として評価 していいのかということがありまして、その分かれ目が、心停止を起こしたあとは前と 違っているのだというところなのだろう。先生方にお聞きすると、臨床的には違うとお っしゃっていますので、だからそれを前提に、今回は結論としてペースメーカを入れる ことは障害として評価するとなっているわけです。私どもが調べた限りでも言えるかな と、臨床経験上ということで整理させていただいたのですが、専門の先生方に是非ご意 見をということです。 ○職認官 短いので、一通り読ませていただきます。 ○障害係長 (4心停止(14頁)読み上げ) ○笠貫座長 ありがとうございます。それでは、ただいまのご説明にご質問、ご意見がございまし たらお願いします。 心停止が新たな病態であり、もともと基礎疾患があるかないかは関係なく、心停止が 一度発症した場合にはその再発率が極めて高いと考えていただくと、整理しやすいと思 うのです。例えば、可能性があるという意味では、皆さん可能性があるわけです。しか し、起こってしまったということはそこで不連続になります。今度は再発の蓋然性は非 常に高いのだと考えると、私は、ペースメーカを入れる、あるいは植込み型除細動器を 入れる治療を受けなければいけないわけですから、受けたあとは障害補償の対象となる ということでよろしいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか、髙本先生。 ○髙本先生 よろしいのではないでしょうか。 ○笠貫座長 心室性期外収縮があることと、心停止発症とは連続性がるとは必ずしも考えなくても よろしいと思うのです。心室性期外収縮は多くの人に見られますから、心室細動になる のとは不連続点のもので、心室細動を過重負荷で起こしてしまった人は別の病気として 再発性が高いと思います。奥平先生、いかがでしょうか。 ○奥平先生 先ほどの話の繰り返しになりますが、昭和36年に初めて脳・心疾患が業務上疾病に取 り上げられました。そのときには、一時性心停止はWHOの分類に入っていたから取り 上げたということで、実態としてはポックリ病を考えておられたようなのです。その考 え方は、昭和62年の改定、あるいは平成7年の改定のときにもずっと引きずっていたわ けです。それが、平成8年の杉本先生を座長とする不整脈の検討会では、いわゆるポッ クリ病は不整脈死なのだと位置づけが変わってきたのです。原発性ですから、原因不明 ということですね。 それを考えていきますと、例えばこの文章の(2)の最初にあります「心停止は、心 筋症や」と、業務上疾病ではないものをここに入れてくることに問題があるのではない かと思うのです。全体を見ながらですとよく理解できるのですが、もしここで問題にな るとしたら、ここに「心筋症や」と入っていることが、あとでいろいろ差し支えが起こ ってくるかもわからないという感じがしているのですが、いかがでしょうか。 ○笠貫座長 基礎心疾患の有無・種類にかかわらず、心室細動、心突然死が起こってしまった病気 としてとらえることでどうかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○奥平先生 業務上疾病が基本ですから、心筋症は現時点では業務上疾病として扱われておりませ ん。いろいろな場合がありますから心筋症でも認定される場合もないとは言えないと思 いますが、通常の意味での業務上疾病ではないと思います。 ○笠貫座長 ポックリ病の話が出ましたが、心停止自体を業務上の疾病という考え方でとらえない と、ポックリ病も入ってこないわけです。たぶん、杉本先生が不整脈死、特にポックリ 病の病態を労災対象として取り上げてきたところには、やはり基礎にどういう病気があ るかに係わり合いなく心停止、しかも過重負荷で心停止が起こってしまうこと自体が作 業関連疾患に入るというとらえ方かなと、私は感じます。そういう意味では、ここは心 筋症があるかはあまり関係なくてもよろしいかと感じていたのですが。 ○奥平先生 杉本先生の検討会に、1人だけ臨床でない人間として入れられてしまったので、よく 覚えておりますが、杉本先生は不整脈を起こす原因として、まず器質性疾患として心筋 梗塞、その他心筋炎、弁膜症などを挙げ、第2番目のグループとして代謝性疾患を挙げ られたわけです。第3番目のグループとして、原因不明のもの。原因不明のものの中 に、青年期突然死症候群が含まれているのです。器質的疾患によるものは、業務上疾病 としての不整脈死とは原則としてしないことを明記してあると、私は理解しているので す。業務上疾病として不整脈死に相当するのは3のグループだろう。したがって、年間 の発生数としてはどれくらいを考えるかというときに、これはその場におられた岡田先 生のご発言ですが、1年間で10例内外ではないか。 ですから、器質性疾患による不整脈は、死亡診断書でも心筋症で不整脈死であれば、 ICDによる死亡分類では心筋症のところで扱われて、突然死に入ってこないと私は理 解したのです。 ○笠貫座長 そうしますと、健康者という一般の労務に就いている方は、例えば、高血圧がある、 あるいは心筋症の話も出ましたが、医学が進歩してくると、原因のわからないポックリ 病の一部も分子レベルで原因がわかってくる。そのような中で過重労働がかかって突然 死を起こす、あるいは心停止で蘇生された方を含めて、その方々が労災の対象にならな いのかどうかは非常に大きな問題だと思うのです。基礎疾患があるというと、どういう ものまでを基礎疾患にするのか、全く基礎疾患がないのをどう定義するのか、どこまで の検査でするのか、連続したスペクトルムにあるわけです。そうすると、そこの線引き も難しいような気がするのですが、ここはむしろ横山先生にお伺いしたほうがよろしい かもしれません。考え方は多少違いがあるかもしれませんので、あるいは事務局からい まの議論についてお答えいただけますでしょうか。 ○課長補佐 いまの奥平先生のお話は平成7年の改正の議論で、そのあともう1回改正しておりま す。そこで長期の過重負荷を考えたときに、少し考え方が変わったのかなぐらいに思っ ております。いずれにしても、当然心停止を起こす人は、たぶん過重な負荷だけで心臓 などの関係に全く何の支障もない人が、仕事が大変だったからといって心停止を起こす のは、0ないし極めてまれな例です。ですから、皆さん何らかの相当のものを持ってい たのだろうと思うのですが、いずれにしても過重な業務が加わってそれが原因となった ということであれば、それをいまは業務上と評価しているのであろうと思います。 ただ、例えば今回心停止を発症した人について、過重な業務を除いた分はその人のも ともと持っている体の状態です。それは業務によるものではない。心停止を起こした原 因は、確かに過重な業務が加わったからなったのでしょう。心停止で運よく助かって前 の状態に戻ったときに、たぶんその人は前よりも健康な状態にはならない。前と同じ か、前よりも悪いかだと思うのですが、前と同じ状態ということはそこに戻ったところ までで、労災としてはそれ以上の評価はしなくていいのではないかという考え方が1つ あると思うのです。そこがどうなのだろうということで、我々の心臓疾患の業務上の考 え方の延長戦でいけば、元に戻ったのであれば、それ以上はもともとその人が持ってい た体の状態を維持するなり、改善するなりは別のものだと考えたほうが素直なものです から。 ○笠貫座長 基礎疾患があるかないかは連続したスペクトルムにあり、以前は全く原因がないと思 われていたものも、原因として一部解明されてくるものがあります。医学の進歩でこの 線はなかなか引けないところです。そこで心停止が過重業務で起こってしまった人は、 心停止が発作でという病気として発症してしまったのです。そこが循環器疾患とほかの 慢性疾患との違いなのだと思います。精神的ストレスも含めて過重負荷で発作が一度起 こってしまった人は心停止として再発してしまいます。そこで突然死をしてしまう人も います。蘇生された人は、もう心停止という病気を持って一生生きていくことになりま す。そうすると、植込み型除細動器あるいはペースメーカは、ずっとその人から除くこ とはできません。心停止による死亡はそれで予防できます。そういうことでいくと、私 は病気として安定したという意味で、治ゆでいいと思うのです。療養補償になっていた だけたらと、患者を見ている者としてはそう思います。 ○奥平先生 いまのお考えの中で、業務負荷が一定のレベル以上であれば、いま裁判でも大体認め られる方向になっています。ですから、発症の原因が業務の過重負荷があったという認 定があれば、いまおっしゃる基礎疾患が何であっても認められる可能性があるのです。 ただ、こういう所で書出しのときに、本来業務上疾病に入っていないものを最初に書い てしまうことに問題がありはしないかということなのです。ですから、もっとぼかして 「種々の心疾患や」などと書いていただいてもいいのですが、心筋症というと、どうし ても何か個人的な要因のほうが強いのではないかと理解しているものですから。 ○笠貫座長 ここはこういう文章を入れないで、先ほどの「基礎疾患の有無にかかわらず」は入れ ても入れなくても、「心停止とは、心室性頻脈性不整脈や徐脈性不整脈の出現によって 起こるもので」として、「心停止に至る者は、重篤な不整脈が出現しやすかったという こともできるが」ということは除いてしまう。過重業務で心停止が起こってしまったこ とは何らかあるということであり、何かなくても過重負荷がかかって心停止が起こるか というと、極めてまれなことですからそれは書かない。心停止の多くとは心室性頻脈性 不整脈によって生じるもので、いったん心停止となった者は、蘇生後も重篤な不整脈の 再発の可能性が極めて高いことを書いていただければ、先生のご指摘をいただかなくて もいいかもしれません。その辺りで整理をしていただけますでしょうか。 そうしますと、「検討の視点から」のところで表現は、今回心停止は初めてですの で、事務局のほうで整理をしていただきたいと思います。また、今日は西村先生がご欠 席ですので、心停止について西村先生のご意見を十分にお聞きした上で、次回もう少し 詰めたいと思います。心停止についてまだ何かご質問、ご意見ございますか。退院後の 治療についてのペースメーカと除細動については、先ほどの心筋梗塞のほうで触れられ たことですのでよろしいかと思います。 ○職認官 結論としては、心停止になった方はその後再度心停止、重篤な不整脈が出現する可能 性が極めて高いということは、お医者さんはどなたも異論はないという理解でよろしい ですか。特別根拠を示すほどのこともないくらいに疑いのない事実ですと、その一言書 けば誰も反論はない、特殊な場合は別ですが、ほとんど出るとは思えないという理解 で。 ○笠貫座長 まず出ないと思います。植込み型除細動器を入れた場合の、除細動器の作動率は大体 30~40%ぐらいですから、入れていなければそこで亡くなっていたことになりますの で、そういう意味ではそのデータはあります。 ○奥平先生 いまの心停止の説明で、国際疾病分類第10版の心停止のところには番号が書いてあり ますね。ICD‐10の何番に相当するなど、それを入れていただくと誤解が少なくてい いのではないかと思うのです。そのことは、平成13年の最後のときにも、私はそれにと てもこだわった覚えがあります。最後にそれを入れていただいたのですが、入れておい たほうが、心停止は何でも最後は心停止だったらという意味とは違うことが、はっきり わかっていいのではないかと思います。 ○職認官 その点については、まだ事務局が勝手に書いているだけの状態なのですが、4頁に、 業務上外の認定基準で示されている4つの疾病に沿って検討するのが切り口として素直 だろうと、いまこういう順番でご検討いただいているのですが、このような疾病が挙が っています。ここに、ア、イ、ウ、エの各疾病はICD‐10の分類に対応した疾患名で あるという趣旨のことを書いておけばよろしいでしょうか。 ○笠貫座長 先ほど奥平先生からご指摘がありましたように、ここで言う心停止は一応労災認定を 受けた心停止になりますから、ここでまた説明を加えておいていただけば理解されやす いかと思います。そういう形でお願いします。 ○職認官 これは確認なのですが、障害の問題ですので、ここで検討すべき疾病は業務上のもの と認定されたものが対象だというのは、当然大前提にはしているのですが、ときには断 ったほうがわかりやすいというご趣旨ですね。 ○笠貫座長 はい。心停止につきましてはほかにございませんでしょうか。 西村先生がご出席できなかったので、次回にもう少し議論を深めたいと思いますが、 今日の議論はここまでにさせていただいて、次回修正したものを改めてお出しいただく ことにしたいと思います。よろしいですか。 ○横山先生 4頁の「検討の進め方」のウに、(心臓性突然死)と書いてありますが、心臓性突然 死というのは学問的に使われる言葉なのですか。私が若いころに、ササモトさんから、 「性」とごまかしの言葉を使うんじゃない、と非常に怒られたことがあったのです。 ○職認官 このア、イ、ウ、エの表現そのものは、先ほども申し上げた業務上外の報告書に書い てあることをまず抜粋しました。障害の検討をするのに「心臓性突然死を含む」と書く のはさすがにおかしいので、そこは外しましたが、基本はそこに準拠するということ で、ア、イ、ウ、エは業務上外の認定基準なり報告書なりの記述を引用してあります。 そこではこう書いてあるということです。 ○奥平先生 ICD‐10の日本訳がこのようになっているのですね。 ○笠貫座長 cardiac sudden deathをどう日本語に直すかというときに、「性」を一応入れてもい いことになっています。先生がご指摘になったように、「性」はできるだけ取ったほう がいいという考え方が強くなってきていまして、先ほどの心室性期外収縮も最近は「性 」を入れていないことが多いのですが、それぞれの先生の考え方でということにはなっ ています。心室性期外収縮も心室性頻脈も「性」を取る方向に変わってきてはいると思 うのですが、今回は労災のほうで「性」を入れたと思いますので、そういう形で進めさ せていただきたいと思います。 それでは、次回の日程について事務局からご説明ください。 ○職認官 3月3日16時からこの部屋でということで準備させていただいておりますので、よろ しくお願いします。今日は資料がこの場での机上配付になってしまいまして、申し訳あ りませんでした。次回は事前にお送りできるように準備したいと思います。今日は西村 先生がご欠席ですが、次回は狭心症については最低限準備いたします。残りは「外傷」 と「心膜」の話になりますので、疾病になぞって考えられる外傷はそのままなぞってと 考えているのですが、この点についてもできれば何かしら用意したいと思います。 ○笠貫座長 それでは、今日はありがとうございました。これで終わらせていただきます。 照会先 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係 TEL 03-5253-1111(内線5468)