05/02/09 労働政策審議会雇用均等分科会第41回議事録            第41回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年2月9日(水)10:00〜12:00 2 場所: 経済産業省別館 944号会議室 3 出席者:    労側委員:片岡委員、篠原委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:若菜会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員 ○若菜分科会長  ただいまから第41回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。今日ご欠席は 樋口委員、横溝委員、岡本委員です。  それでは早速議事に入りたいと思います。本日の議題は、「男女雇用機会均等対策に ついて」です。前回、論点についてご了承いただきましたが、本日はこのうちの「妊娠 ・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」と「間接差別の禁止」について順次ご議論 いただきたいと思っております。最初に事務局から資料のご説明をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  それではお手元の資料の説明に入りますが、その前に資料の確認をさせていただきま す。資料No.1が妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止関係の資料です。資料 No.1−1が「男女雇用機会均等政策研究会報告書」の抜粋です。資料No.1−2が「男 女雇用均等室における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに係る相談事案の概要」 です。資料No.1−3が「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに係る規定等」です。  資料No.2が間接差別の禁止の関係の資料で、資料No.2−1が「男女雇用機会均等政 策研究会報告書」の抜粋。資料No.2−2が「男女雇用機会均等政策研究会における 『間接差別として考えられる例』の関係資料」です。  資料No.3が労働者側委員提出資料で、「連合・男女雇用機会均等法施行後の職場実 態調査結果(個人編)」となっております。また本日参考資料として、いちばん最後に ありますが、「次世代育成支援対策推進法第14条第1項の厚生労働大臣の定める表示 (次世代認定マーク)」ですが、その関係についての資料も付けております。  それでは資料No.1、2についてご説明させていただきます。まず資料No.1−1で す。男女雇用機会均等政策研究会報告書のうち、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱 いの禁止の関係の抜粋です。9月に1度ご説明しておりますので、頁をめくりながらと いうことでお願いいたします。ご案内のとおり、この中程にあるように、均等法の8条 においては、妊娠・出産又は産前産後休業の取得を理由とした解雇が禁止されておりま すが、解雇以外の局面について規制する規定は現在ないわけです。下のほうにあります ように、妊娠・出産に関連する不利益な取扱い、妊娠・出産は一般の性差別とは異なっ ていて、実際に職務遂行ができない場面や、能率の低下を伴う場面が想定されるという ことを踏まえて、ここでは4つの場面に分けて検討しました。2頁目の上のほうに、ポ ツ4つで記しております。そして、我が国の裁判例の動向ですが、これも中程にありま すが、最高裁判決がいくつか出ておりまして、法律上の権利行使を抑制し、法律が労働 者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるような不利益な取扱いは許されないとの判 示がなされているところです。  めくっていただいて、諸外国の動向とか、その集約といったものをまとめてあります が、(4)に、この研究会における1つのまとめを記述しております。6点ほど整理し ておりますが、(1)は、今回調査を行った諸外国では、妊娠・出産等に基づく不利益な 取扱いについては、解雇以外についても規制しているということ。そして育児・介護休 業法において育児休業の申出あるいは育児休業をしたことを理由とした不利益な取扱い を禁止していることとのバランスがとれたものとなる必要があること。そして3番目 が、いくつかのことを述べておりますが、原職又は原職相当職への復帰を、産休取得に 関して求めることも合理性があるのではないかということです。4点目は、産休中の評 価については、最高裁判決の趣旨を踏まえながら、社会的コンセンサスを形成すること が必要であることなどを記しているところです。あと、A3判で、諸外国の状況につい て資料が付いております。  資料No.1−2をお願いします。雇用均等室に寄せられた不利益取扱いに係る相談事 案の概要です。実はここでは、不利益取扱いということでお出ししておりますが、室に 寄せられる相談の中で多いのは、単純な妊娠を理由とした解雇の事案です。今回、それ 以外のものを取り上げているということです。すべての経過を書き込めているものでは ありませんし、これは個別具体的な事案の1つの対応例ということで見ていただきたい と存じます。まず1頁目ですが、これは、産後の職場復帰に当たって、一方的に時間外 労働のない補助的な業務に配置換えされたという事案です。相談内容ですが、2人目の お子さんを産んで、産休期間中に、そもそもの配属先であった調査部門の組織変更があ った。この方は、研究職として採用されていたわけですが、休業終了後は新設された部 門の補助的な業務、これはデータエントリーとかセミナーのサポートとか、そういう業 務だそうですが、そういった業務に配置換えするとの内示があったわけで、この方は研 究職としての職場復帰を希望して相談に来たものです。  均等室の対応ですが、会社としては相談者の休業前の配属先について、組織変更があ って、その仕事がなくなったということで、いろいろ検討した結果、調査部門内のグル ープの間の研究職の配置換えというのはなかなか難しいということ。そして、相談者が 保育所の送迎の関係で、時間外労働ができないということで、そこに配慮して復帰先を 内示した。処遇としても、これまでの研究職としての処遇に変更はないということを言 っていたわけです。  均等室としては、相談者のこれまでの対応として、フレックスタイムを利用して時間 外労働もこなしてきているということで、ご本人が望んでいるわけでもないのに、一方 的に補助的な業務に配置することは、子供を有することを理由として女性のみを補助的 業務に配置するということで、調査部門への研究職としての復帰を指導したわけです。 結果的には、室の指導を受け入れ、相談者は調査部門に研究職として職場復帰ができた という事案です。  2頁目をお願いします。これは雇止めの事案です。妊娠し、産休の申出をしたことを 理由に、有期契約の更新がされないとした事案で、相談内容をご覧いただきたいと思い ますが、有期契約の社員として、5回契約更新をして、2年半近くの勤務とのことで す。直属の上司に妊娠を報告して、産休の申出をしたところ、次の契約更新は無いと言 われたということで、相談に訪れたものです。室が事情聴取をしたところ、1番目とし て会社はいま、グループ企業全体で人員削減を行うという方針の中で、退職者の後は補 充しないという形で社員を減らしている方針であるとのことでした。2番目として、こ の方の契約更新、最新の契約更新を行った際に、今期限りだという説明を行っていない けれども、そもそも契約書の中には、会社の都合で途中解雇もあり得るということも記 載している。それから、契約社員について、妊娠・出産を理由として契約の更新をしな いという方針はないけれども、この方については考えていないということでした。  室としては、ここに記載のようなことで、実質において期間の定めのない雇用契約と 考えられる。それから、妊娠の報告の後、契約を更新しないとしていることを勘案する と、これは均等法の8条違反ではないかということで、雇止めをしないように指導した ものです。結果的にこの方は産休の取得ができて、雇止めなしということになったもの です。  3番目は、これも雇止めですが、これは登録型の派遣社員の例です。登録型の派遣社 員として、数回契約が更新されていました。派遣元会社に妊娠を報告したその翌日に、 派遣先に迷惑がかかってはいけないということで、雇止めを通告されたということで相 談があったものです。事情聴取をしたところ、派遣元の会社は、これはそもそもは派遣 先の会社が業務の効率化のために受付業務に派遣労働者を受け入れたものの、なかなか 期待通りの効果があがらないということを理由として、契約を今期限りとしたことが直 接の理由であって、妊娠を理由としたものではないこと。2番目として、この相談者の 対応について客からクレームが入ってきている。これも、派遣先会社が派遣契約を終了 する理由の1つであることを主張したわけですが、併せて妊娠によって身体などに支障 がないか心配したことも事実であって、本人に、妊娠を理由とする雇止めという誤解を 与えた可能性があることも認めているものです。  室としては、まず均等法8条の説明をして、有期であっても、反復更新されているよ うな場合には、実質において解雇ということにもなるということを説明した上で、相談 者が派遣元会社に妊娠を報告したその翌日に、雇止めを通告したということで、これは やはり妊娠が理由と判断されるということで、雇止めをしないよう指導を行ったわけで す。会社の対応としては、これは結果的に派遣元・派遣先ともに、契約の更新というこ とで了解して、更新されることとなった事案です。ここには書かれておりませんが、そ もそも長期で働いてもらうというような期待感を抱かせるような言動があったことも、 この事案についてはありました。  4頁目です。産休後の復職のポストをめぐっての問題です。2カ月の契約のパートと して何度も契約を更新してきた。この方は機械の担当の職種で勤務していたわけです が、産休取得後は「軽易な業務の職種で契約する」と会社から言われたということで す。ところが、この業務になると、時給がいまよりも安くなってしまう。さらには、自 分がこれまで行っていた職種に新規の採用があることで、非常に将来が不安であるとい うことで相談があったものです。  室の事情聴取ですが、復職後の職種については、あくまで母体への健康を考慮したも の、この仕事には重い物を持つといった作業もあるということで、周りの者も配慮して いる状態だということでした。さらには、相談者が行っている職種については、合理化 の一環としての外注化を予定しているということで、相談者が主張していたような新規 雇入れの予定はないということでした。また会社としては、この方の雇用を打ちきる考 えはなく、産休中も在籍の扱い、そして社会保険もきちんと継続するつもりだというこ とも主張しております。  室としては、雇用は継続するとしても、妊娠したことを理由として異なる職種での労 働契約を改めて締結するということは、その契約が一旦終了するとみることができ、ま たその契約の終了が労働者の真意ではないと認められるときには「解雇」に該当します よということで、現在の職種での勤務が可能であるなら、これは外注化がいけないとい うことは、なかなか言い難いということがございますが、可能であれば、原職に復帰さ せるべきということを申し上げたわけです。会社としては、機械担当の職種への復帰は 外注化を進めていくということで、これはできなかったわけですが、当初提示があった ものとは別の、機械担当以外の職種に復帰するということで、処遇としては原職相当の ものを受けられることになった事案です。  5番目です。つわりにより休んだところ、パート勤務への変更を求められた事案で す。正社員として10カ月間勤務していた女性が、11月につわりのために10日間休んだと いうことで、その後は通常どおりの仕事ができていたわけですが、所長から、これから も休むでしょうということで、その翌年の2月の末からパート勤務になってくれと言わ れ、これを拒絶したところ、今度は1カ月以内に有期契約のパートに変更すると言われ た。ところが、その場合の勤務条件についても説明もないし、多分これは処遇が落ちる でしょうということで、不安であるとして相談に訪れた事案です。  雇用均等室が事情聴取をしたところ、会社は、相談者にしてもらっている仕事が納期 のある仕事で、妊娠したために急に休まれるのは非常に困る。周囲からもクレーム、苦 情が出てきているということ。そして、そもそも最初の欠勤が無断欠勤であって、その 後診断書の提出もないということで、相談者の対応、言動について不信感を抱いてい る。すでに代替の正社員の採用を決めているとの主張でした。  これについても先ほどと同様の指導をしたわけで、会社の対応ですが、会社は正社員 として雇用継続することを約束したわけですが、その後相談者はつわりがひどくなっ て、結局のところご自身から社会保険給付の受給資格が生じる時期までの正社員勤務で いいということで、それまでの間の正社員としての雇用継続になった事案です。  最後の事案です。これは、母性健康管理措置が絡んでいる退職勧奨です。切迫流産 で、医師の指導に従って安静のため欠勤したところ、退職勧奨されたという事案です。 老健施設の介護職として勤務していた相談者ですが、妊娠が判明した後切迫流産で入退 院を繰り返していた。医師からは、お腹が痛むときは安静が必要という指導があったた め、症状が出るたびに電話をかけて休みをとっていたけれども、事務長のほうから体調 が悪いなら一旦退職してもらって、出産後再雇用したいがどうかということで、退職の 勧奨を受けたということです。  均等室の対応ですが、事情聴取をしたところ、施設側はまずその相談者の勤務状況に ついて、欠勤が多くて同僚に負担がかかってきている。そして、この方が行っている仕 事は、デイケア部門で、相談者を含む4名で勤務のローテーションを組んでいるけれど も、突発的な欠勤で業務運営に支障が生じている。さらには、今後の話として、妊娠中 に施設利用者の送迎、入浴介助といった通常業務ができるか、非常に疑問であるという ことで、このような退職勧奨をしたという主張でした。また、やり取りの中で、母性健 康管理措置についての認識がいささか欠けているということも判明したところです。  均等室のほうからは、まず1番目ですが、通常の欠勤の場合と扱いを異にして、切迫 流産による欠勤等の場合のみ、欠勤等を理由とした解雇ということになれば8条に反す る。これは勧奨退職であるわけですが、これはやはり、やむを得ず応ずるようなものの 場合には、解雇に含まれるということを説明して、注意喚起を行っております。それ で、やはり均等法23条に基づいた指導を守ることができるようにすることを求めたわけ です。  施設の対応としては、退職勧奨は撤回したわけですが、少ない人数で勤務のローテー ションを組んでいる、相談者の業務の軽減もなかなか難しいという事情もあって、結局 相談者と話し合いをした結果、医師から受けた指導事項を守ることができるよう、体調 が落ち着くまで休業とし、産休・育休を取得した後復職するということで折合いがつい たものです。資料No.1−2は以上です。  資料No.1−3をお願いします。これは、内容は飛ばしますが、妊娠・出産等を理由 とする不利益取扱いに係る規定等で、関連する法律、指針、通達などを整理したもので す。妊娠・出産に関係するところ、ポイントはアンダーラインを引いてございます。最 初は労基法の平均賃金と解雇制限。2頁目が年休の算定のあり方です。3頁目が、均等 法の8条、4頁から5頁にかけては、施行通達です。6頁は育児・介護休業法の関係 で、不利益取扱いの禁止規定ですが、育児休業については、育児休業の申出をしたこと についても含めて、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとなっているところで す。  その関係の指針で、先般改正についてご了解いただいたもので、真ん中ほどにある (2)の「ロ、ハ」あたりは追加されているものです。本年4月1日から適用予定の指 針です。  9頁から10頁が解釈通達です。11頁、12頁は、派遣法の関係規定で、派遣先について 係る契約の解除等、あるいは適正な派遣就業の確保等に係る規定を設けております。解 釈通達はその次の頁に付けております。  続いて資料No.2−1をご覧ください。均等研究会の報告書の「間接差別」の関係で す。これもポイントだけにしますが、1頁目の下の方で、間接差別の概念として、どの ようなものか、4行ほど整理しております。そしてここにおいても、裁判例なども検討 したわけですが、2頁目の中程で、我が国においては、現在までのところ間接差別法理 に立って判断された裁判例は、雇用の分野には見出せないということですが、雇用の分 野ではないものの、平成14年に大阪高裁で判決された、被災者自立支援金請求事件にお いては、世帯主要件が世帯間差別とともに、男女間差別を招来し、しかもその差別には 合理的な理由を見出すことができないということで、いままでとは違う形の差別を認め たものとして、今後の動向が注目されると記しております。その概要などがその次に続 いていて、その他間接差別概念の概念整理を、(1)、(2)、(3)とまとめております。そ して諸外国の状況についても(3)で整理した上で、各国の取扱いの違いなども整理し ております。  そして6頁の(4)で、検討するに当たって留意すべきことを4点ほどまとめており ます。何らかの形で諸外国は法規制を行っている状況にあるとか、あるいは、結果の平 等とは違うということについて、間接差別法理についての冷静な議論を進める上で、そ ういった理解の浸透が必要であること。あるいは、どのようなものが間接差別に該当す る可能性があるかについて、予めイメージを示して、予測可能性を高め、法的安定性を 高めることが必要といったようなことを示しております。  そして7頁の下の方で、間接差別として考えられる例として、様々なところで間接差 別ではないかと指摘を受けたようなものについて、7つの例をとりまとめて問題提起を しております。実際には、これは個別具体的な事案ごとに事実認定をして判断していく ものでもありますし、総合的な判断を行うことになるわけですが、またここでは、委員 の中でも意見が若干割れたものもあるわけで、7つでお示ししております。後ろのほう には、また諸外国の対応について表で整理したものをお付けしております。  資料No.2−2では、いま申し上げた7つの事例の中で、間接差別として考えられる 例を取り上げております。そこに関係すると思われるデータについて整理しておりま す。まず1頁目で、コース別雇用管理の関係です。コース別雇用管理の導入状況、平成 15年の状況で9.5%とか、あるいは労働者割合にすると、規模計で27.5%といったよう な数字を掲げております。2頁目は、コース別の採用状況の推移ですが、専門職を除い ていずれのコースについても、近年男女とも採用したという企業割合が増えている傾向 にあります。(4)は総合職の受験者に占める男女採用者の割合、いわば合格率、採用者 率といったもので、男女別に折れ線グラフで示しております。常に男性のほうが合格率 が高い状況になっております。  3頁、コース区分の要件に転勤の有無を設けている企業割合ですが、約8割が要件と しているという状況が示されております。さらには、10年間を見た場合の転勤実績につ いて見ておりまして、これはややサンプル数が少ないので、見るときに注意が必要かと 思いますが、転勤要件がある企業を100として、転勤実績があったというのは77.5%で、 10%の企業、右から3つ目ですが、転勤実績がないということでした。  4頁、5頁が、学歴・学部要件関係です。高校・短大・大学の進学率の推移を男女別 に示しております。大卒についても、近年女性の大学への進学率が高まって、男性との 格差は縮小傾向にあります。隣の、学部の在籍者、在学生数の構成比の推移ですが、工 学部系にはまだ依然として女性は非常に少ない。男性は4人に1人は工学部といった状 況が示されております。構造的なものは変わっておりません。  福利厚生、家族手当等の支給に係る世帯主要件の関係です。まずは家族手当で、77.5 %の事業所で、家族手当を導入している状況です。その要件として、(注)をご覧いた だきたいのですが、配偶者の収入金額以外の支給要件がある事業所(81.4%)の内訳と して、最も多いのが税控除の対象となる扶養家族であることですが、それに次いで、主 たる生計者であること、あるいは世帯主であることというのも、お示ししたグラフのと おりの状況になっております。実際の受給者の男女比は、男性が非常に多い。家族手当 の支給労働者割合についても、お示ししたグラフのとおりです。  続いて住宅手当です。住宅手当も同様の傾向で、まず事業所規模計では74.7%の事業 所で導入されています。支給要件は、これも支給要件のある事業所の74.7%を100とし てご覧いただきたいのですが、最も多いのが世帯主であることといったような状況にな っております。そして住宅手当支給の男女比も記載のとおりで、住宅手当支給労働者割 合も、このとおりです。  10頁で、社宅制度の有無です。社宅制度をもっている企業割合は85.2%です。その入 居条件は、最も多いのはその他で、ここには社宅の入居者を転勤者に限定しているとい うものが多かったということですが、それに続いて、世帯主であること、本人の年齢な どが続いております。  最後に、パート労働者の手当・福利厚生等の実施状況別事業所数割合で、例えば家族 手当、住宅手当などでは、パートと正社員で適用する事業所の割合に格差がある。比較 的小さいものとして、慶弔見舞金とかがあるという状況です。資料No.1、2について は以上です。 ○若菜分科会長  それでは、労働側委員から、資料No.3についてご説明があればお願いします。 ○吉宮委員  私のほうから、資料No.3について、この議論が始まる際に、私ども連合として制度 調査、個人調査をしたこともあり、その資料提供をして、討議の参考にしてほしいとい うことで要請したわけですが、今日の議論に即した形で少し整理しました。個人編とあ るように、2種類あって、労働組合の役員の方に、労使で確認している制度等の運用状 況について聞いたものと、そこに働く男性・女性の労働者の方々に、実態を基にして聞 いたものがありまして、今日お示しするのは、その中の自由記入欄といって、それぞれ 組合員の方が感じていることを自由に書いてもらったものをそのまま文言として整理し たものです。区分けは、私どもで、その内容を整理していますので、そこにご注意いた だければと思います。  1番目に「実態調査の概要」で、2004年1月から3月にかけて、対象者としては男女 組合員約2,500名ずつやって、5,000名に実施したのですが、回答者は男性が1,616名、 女性が1,517名で3,141名の方にお答えいただいたということです。今日の議論の結婚、 妊娠、出産を理由とする不利益取扱いに係る問題について、女性から約450名、男性か ら170名の意見があって、自由記入欄の分類別にみると、まず「有形無形の退職勧奨」 ということに分けていて、結婚したら辞めさせるという慣行がかなりあります。○の3 つ目に、産休を取ったら迷惑という雰囲気、「辞めてくれ」と直接間接的に言われたこ とがあるという女性の声がありますし、そのさらに2つ目くらいに、産休を取ることが できない、妊娠した女性はみんな退職させられるという声もあります。  2頁にいって、「異動の対象となる」ということで、最初の○のところにあります が、妊娠がわかったとたん、勤務の変更を伴う異動を命じられたということで、これは 女性の声です。  4つ目の○で、結婚したら通勤時間が2倍の所に異動になった。妊娠したら、人前に そんな格好で出ないように言われた、という声も女性の方から寄せられました。  さらに1つおいて、産休後、通勤時間がいままで以上にかかる店舗に異動させられた ということ。その下に、「産休後復帰したら希望しない部署に配属される」など、女性 についてそのようになっていますよという声が男性の組合員からも寄せられています。  それから、「査定が低い」という分け方ですが、休業後の職場復帰時には無条件で査 定を下げられることがある。次の○の2行目あたりに、産休明けの3カ月間に、通常よ り多い業務量をこなしたにもかかわらず、査定が最低だったので、人事に確認したとこ ろ産休中の3カ月は他人の業務・業績とみなすので、産休の査定は最低と規定している と説明を受けたということです。  「賃金が下がる」という分け方ですが、先ほど裁判例もありましたように、ここでは どのくらいのカット率か書いてありませんが、○の2つ目に、産休を取得したらボーナ スをカットされた。「その他」として、先ほどの均等室の相談事例にありましたが、ま ず最初に、産休後、正社員からパートへの異動要求をされた。2つ目の○に、2人の子 供に育休1年ずつをとって、3人目を妊娠しているときに、会社側から、退職してパー トで再雇用すると言われて、辞めざるを得なくなった人がいたという、これは職場から の声です。○の3つ目、多分これは制服をそれぞれ女性の方々に貸与していると思うの ですが、妊婦用の制服がない。育休を取得したため、一時金減額、有給休暇無しになっ た。産休前「元の職種に戻れないかもしれません」と言われた等の声がございます。  3頁には、コース別雇用管理制度に係るだろうという問題について、少しピックアッ プしました。これについては、総括的に言いますと、コース別雇用管理制度がある職場 は約4割だったのですが、女性の64%が一般職で、男性の78%が総合職という傾向で、 トータルで見ると、女性は一般職で男性は総合職という、そんな見方が出ているという ことです。総合職は男性、一般職は女性という偏りというところで、「転勤」の2つ 前、○の5つ目ですが、入社時、女子は一般職で入社する。次の○に学歴による職種の 別とされているが、大卒女性の採用はないため、総合職の女性は存在しないというこ と。転勤について、男性のほとんどが転勤を伴う雇用契約を結んでいる。次の○に子育 てをしている女性は全国異動のコースを選択しづらそうであるという、男性の組合員の 見方がある。○の3つ目、現在では転勤等のない我社で、男性は定型業務をしている人 でも以前のままの総合職であり、一般職に下がることはない。男性はほとんど総合職で 住宅手当等がある。女性はほとんど事務職で、住宅手当なしという声です。  「その他」として、研究会報告は、この転勤要件について、委員の間に異論があった ということですが、それは女性同士が選択できた、選択の幅があるということで出てい ましたが、その中で、私どもの声からすると、男性は始めから総合職、入社してからも 総合職と一般職があることすら知らなかった。説明はなかったという女性の声がありま す。それから、一般職は女性しかいない。昇進がほとんどないということです。次は、 コースは最初から定められていたという声があって、選んだわけではなく、学歴等で決 まっていた。入社当時から決められていた。入社時の募集がそのコースだったので特に 理由はありません。学歴、性別、年齢によって決まるため、選択の余地はないという女 性の声。男性の方からも、選んでおりません。男性社員はみな総合職です。  こんな実態で、我が組合、連合としても、各組合に、大きな課題ですので、こういう 問題について、きちんと対応するようにということで、運動に取り組む予定ですが、私 どもの実態としては、このようなものが寄せられています。今日の討議の参考になれば と思います。 ○若菜分科会長  それでは、まず妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止についてから始めたい と思います。ご意見ご質問等ございましたらお願いいたします。 ○片岡委員  研究会報告で、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに係る問題を課題に取り上げ られたことは、大変積極的に受け止めて、是非これを早期に実現するような方向、結論 が出るということを期待しています。私は、つまり、育休もそうだったと思うのです が、不利益取扱いとは何かということを事例で示すことは、大変重要だなと、行政の相 談事例や連合の結果報告を伺って思いました。  残念ながら、何がそういうものに該当するかということが、非常に多岐にわたってい ることから、やはりそれを考える、未然に防ごうというきっかけになるような事例は、 十分示す必要があるだろうと思いますし、やはり当事者が、これはおかしいのだという ことを言える状況をつくることが重要であるという点からも、事例は必要だと思いま す。先走りますが、育休法のときがそうであったように、不利益取扱い規定が決まった ものを、できれば早く社会に出していく。間違っていたら申しわけありませんが、不利 益取扱い禁止事項は、先に実施させたという経過があったように記憶していますので、 個人的にはそのようにできたらと思っています。  この妊娠・出産の不利益取扱いが、やはり職場で引き起こしている問題というもの を、私どもでも取組みの中から少しご紹介したいと思います。まずは率直に言って、連 合調査結果を連合の会議で受けたときに、私は本当に労働組合の存在がより一層問われ ると、そして先ほど吉宮さんもおっしゃったのですが、アンケートに答えた方たちのこ れから何をすべきかという回答は、職場の実態を直視せよという、非常に強いものがあ りました。まだまだ男性規範といいますか、男性型の労組が多い中では、そういう実態 を、見て見ぬふりではないと思いますが、放置しているということは結果からも明らか で、本当に個人的な意見を言えば、均等法の遵守義務みたいなものを労働組合もきちっ と持つという自覚を促すものを、反省も含めてですが、考えざるを得ない状況がありま す。  不利益取扱いが引き起こす問題と考えているのは、やはり育休を取ろうということよ りも、本当にハードルが高いという状況になっていますので、研究会報告でも言われて いるように、育休の取得、申出も含めた不利益取扱い禁止とセットで、妊娠・出産に係 る不利益取扱いを禁止することが、より実効性を高めると思います。依然育休よりもハ ードルが高いという状況を、現場では引き起こしていると思います。  あと、中にはやはり我慢をしている。あるいは不利益取扱いだけれども、受けざるを 得ないということで受容している人が大変多くいると考えられます。それはやはり、妊 娠中という状況からすれば、母体への影響も大変大きいと思いますし、当然のことなが ら、そういう状態で働く人の意欲が高まるかといえば、高まらないと思います。加え て、これは、つい最近、研修会をサービス連合でも開いたのですが、これを放置してい ることは、実は当事者の意欲を下げるだけでなく、その周囲で働く女性の意欲まで下げ ているという声が出されました。結婚で辞める女性は少なくなったのですが、出産後も 働き続ける先輩がいない。そういう状況を見ていると、自分は多分この会社では働き続 けられないと諦めていたと、後輩に当たるという人から意見がありました。そうしない ためにどうするかということを話していますが、やはり同じ職場に妊娠・出産後も働き 続ける女性がいるということは大変重要で、そういう人がいるからこそ安心な、両立が 整っている職場という実感が生まれる。その中から、女性も子供を産んでも働き続け、 管理職になっている人もいて、その人を目指そうという関係も、一方でできている職場 がある。先ほど申し上げたような職場では、残念ながら働き続けられないと当事者以外 の人も思う状況を生んでいて、結果、全体の意欲を下げている。これは大変経営的にも 損であるというか、問題だと思います。  あとは、依然、正社員からいわゆる非正社員に、ときに配慮という名前の下で変わっ たらどうか、きついだろうからと。先ほどの事例にもあったのですが、「これは絶対配 慮ではない」と言いたい当事者が多いと思うのですが、やはり自分の妊娠している状態 を考え、それでも働き続けられるならと思って、決して配慮ではない、不利益な扱いで すが、非正規雇用に変わっていく人がいることが、この問題に非常に集中しています。  最後に申し上げたいのは、何度も申し上げてきたことですが、正社員と、いわゆる非 正社員と言われる女性の中で、双方が分断させられる働き方、このことにもつながって いると思います。周りの人は、配慮してあげたいけれども、自分にはそんなことを言っ ている余裕はないということを言うわけです。それが正社員と非正社員の間に持ち込ま れれば、なお一層深刻な状態になりますし、関連して、職場の要員をどうするのかと か、競争競争と言われている状況をどうするのかということなども、そういう実態の中 では出てきたことを、ちょっと加えて申し上げたいと思います。  結局、妊娠・出産で働き続けられなければ、自発的であれ強制的であれ、辞めてもう 一度働こうというときは非典型労働者で、均等待遇という実効ある担保策がないまま、 もう一度労働の現場に出ると社会保険や社会保障の支え手になっていく可能性の問題も 労働の現場で起きている。こうした問題も考え、もう一度原則に戻りますが、不利益取 扱い禁止ということを、是非この議論の中で進めていきたいと思います。 ○吉宮委員  研究会報告についてお聞きしたいのですが、妊娠・出産に伴う不利益取扱い禁止はな いので、男女平等、あるいは少子化問題を考えたら、禁止にすべきだと書いていて、こ れは大賛成なのです。しかし諸外国の例の紹介のときに、妊娠・出産に対する不利益取 扱い、性差別として規制しと言っていますね。アメリカもそうですし、EU、イギリス もそうですが、その場合の「性差別禁止」という考え方を我が国でとった場合、どうい うようになるかということです。その関連で、この問題を検討するに当たって留意すべ き事項ということで、6頁の(4)に、産前産後休業期間中の評価は、休業しなかった者 とのバランスをどう考えるかという問題がありますね、ということで強めてしまった ら、使用者は女性の方を雇わないという経済的な側面が出てくるということです。先ほ ど紹介した、性差別禁止といった場合に、休業中の間に会社で起こった様々な問題は、 休業しないものとみなして措置を講ずるという意味が入っていますね。  ここでいう休業中、休業したら能力が落ちますね、休まなかったらバランスが崩れま すね。だからそこはどうすべきかということは、(4)では言っていないのです。その上 でいちばん最後に、今後、裁判例、先ほどの休業中に伴う様々な一時金等の要件云々の ところの、最高裁の判例だと思うのですが、「周知をするとともに、それを超えた保護 をすべきか否かについて、議論を重ね社会的コンセンサスを形成していくことが必要で ある」とこう言っている意味は、どういう意味なのかということ。(5)の、産前産後休 業以外の母性保護措置等についても、(4)と同様と考えられるという、この(4)とは何を 言っているのか。(6)の妊娠・出産に起因する症状による能率低下等について、(4)と同 じだと言っているのですが、ここの問題はどのように考えるか。性差別禁止といったと きには、不利益取扱いは絶対してはいけないということ、法律的効果というのですか、 まずこれが第1点です。  2つ目に、男女双方に差別禁止をちゃんとしましょうと言ったときに、アメリカの場 合は、母性保護に係るものは特段、特別措置としてみなさないというやり方ですね。イ ギリスは、母性保護については、特別措置としてお互い認め合うというか、男性から見 たら差別だけれども、それは差別に当たらないという書き方をしています。研究会は、 どういうスタンスなのでしょうか。その点に触れていないので、冒頭議論するに当たっ て、2点ほどお尋ねします。 ○石井雇用均等政策課長  必ずしもご質問に的確に答えられるか、いろいろな要素があったご質問だと思ってお りますが、まず諸外国の対応について申し上げたいのですが、資料No.1−1の3頁か ら5頁に記載しておりますように、確かに性差別として規制している国もありますが、 規定の上では、性差別とは別途に規制しているというのがイギリスでありフランスであ ると記載しているところです。必ずしも性差別という形で規制していないところもあり ます。ただし、解雇以外の不利益取扱いについて、いずれも規制しているということに ついては共通しているというのが、まず1点目に念のために申し上げたいと思います。  その上で、ご指摘があったのは(4)から(6)で言っている意味であろうかと思います。 産前産後休業期間中の評価について、(4)で記してございますが、これについては、と りあえず日本の裁判の判断を見ても、例えば「住友生命保険事件」、資料の3頁にもあ りますが、いま労基法の中で、産休あるいは育児時間というものを労働基準法上認めて いるわけですが、そうした権利の行使による不就労を、そうした欠務のない者と同等に 処遇することまで求めているとはいえないということになっております。すなわち、欠 勤をしなかったものとみなして、全て働いたものとみなせということまでは言っていな い。  ただし、最高裁判決などを見ると、少なくとも法律上の権利を抑制し、法律が労働者 の権利を保障した趣旨を実質的に失わせるような不利益な取扱いは許されない、ここは はっきりしているわけです。したがって、その辺の評価をどうするかについては、いろ いろな議論があるでしょう。これはやはり、しっかり共通の理解の下で取り組んでいか ないと、バラつきも生じますし。要はここで言いたいのは、何が不利益取扱いなのかと いうことをきちっと定めていくことがあるのではないかということを申し上げているわ けです。  (5)については、産休以外の母性保護措置、あるいは母性健康管理措置についても、 欠勤を伴うわけで、これについても、考え方としては同様、やはりきちっと考え方を整 理する必要があることを言っております。ちなみに、海外の対応でも、産休については 手厚くしつつも、それ以外の母性保護の措置は、そこまで手厚くしないという例も多々 ございます。産休については、例えば勤続期間を根拠に決める労働条件の算定に当たっ ては、勤続したものとみなせという規定をもちつつも、それ以外の措置については、そ こまでは規定をしていないとか、ややその辺の違いも諸外国においても見られるところ です。したがって、ここはやはり何が不利益取扱いなのか、きちっと決めていくことが 大切でしょうということを言っているわけです。  (6)も同様ですが、ただ、疾病に近いということもあって、少なくとも一般の疾病よ りも不利に扱われるべきではないということを、念のため申し上げているということで す。  2つ目は、双方差別禁止の関係で、母性保護措置の扱いはどういうスタンスなのかと いうことですが、アメリカとそれ以外で取り上げた諸外国の対比でいえば、アメリカは ご案内のとおり、均等取扱いが非常に徹底していて、いわゆる女性のみに認める母性保 護措置といいますか、そういうものは一切、少なくとも連邦法レベルではないわけで す。日本を含め、多くの国は、産休もそうですが、母性保護措置があるわけで、どうい うスタンスと問われるまでもなく、やはりそうした母性保護措置というのは現にありま すし、その意義を否定する方は、おそらくあまりおられないだろうと思いますので、こ れはそれを前提に、すなわち女性のみ、そういう特有の妊娠・出産に起因したものにつ いての措置は、いかに性差別禁止を、男女双方差別禁止をしたとしても、そこは残ると 考えております。  ちなみに、我が国が批准している女子差別撤廃条約においても、女性に対する差別の 例外として、母性保護措置、これは差別の例外としてきちっと位置づけておりますし、 また、前回議論になりましたが、いわゆるポジティブ・アクションといったものも、差 別とはしないということで、定義上も生き続けているものです。 ○奥山委員  研究会報告の趣旨は、概ねいま事務局からお話していただいたところで尽きるのでは ないかと思うのですが、一言ちょっと、それにかかわった人間として。2のほうは置い て、1の問題について、妊娠・出産を理由とする不利益取扱いについて、どのような規 制を法律的にしていくかという枠組みの問題で、それを、性差別という観点から規制を していくか、性差別という枠組みとは違って、妊娠・出産を理由とする不利益取扱いそ れ自身を違法なものとして評価するか。その法的な網掛け、規制の枠組みの違いなのだ ろうと思うのです。アメリカなどの場合は典型的に、それを性差別という観点からつか まえていく。しかしイギリスなどは、性差別という観点ではつかまえていかないで、日 本と同じように、別途、妊娠・出産ということを理由とする不利益取扱いで違法になる かどうかという問題をつかまえていく。枠組みの問題として考える必要があるのではな いか。  それが、さっき言った具体的な不利益取扱い、例示(6)で挙げられたもの、それとは 必ずしも直結はしないのではないか。具体的な不利益取扱い、当該妊娠・出産を理由に 行われた具体的な不利益取扱いが違法になるかどうかの判断については、妊娠・出産等 を理由とする不利益取扱いの禁止についても、いろいろな形態があるわけです。それが 2頁目のところで、4つの基本的な類型が挙げられているわけです。そのときに、例え ば1とか3のような例、妊娠・出産したこと自体とか、産前産後休業を取得したこと自 体についての、何か具体的な不利益は、比較的違法性といいますか、違法評価がしやす いわけです。個人差はありますが、妊娠・出産によって労務能力が場合によれば低下す る場合があります。あるいは妊娠・出産によって休業、出産休暇をとりますね。休業は いわゆる不就労ですから、そういう不就労の状態を、例えば賞与等を支給するときに、 出勤して働いている人との間で、同じように扱えるかどうか。それは法律の規制がない し、必ずしもそれを同じに扱えということもなかなか言えない。  問題は、そういう場合に、そういう権利を抑制する効果がどの程度あるか。それから そういうことによって出てくる不利益の性質とか内容とか程度を見て、やはり総合的に 判断しなければいけない。それは現在日本の裁判所でもやっているところです。そうい う点では、性差別として規制するかどうか、あるいは規制すべきかどうかということ と、具体的な妊娠・出産による不利益の中身とか性質によって、それを違法と評価する かどうかは、やはり違う問題だろうと思うのです。それをちょっと研究会のほうでは、 明らかにしたいというか、混乱しないようにしたいということでした。  2つ目の点は、妊娠・出産等、こういう母性保護というものを、男女雇用平等の観点 から、どう位置づけるかという問題で、アメリカはご承知のとおり、ある意味では絶対 的な、ちょっと言葉の表現は違うかもしれませんが、絶対的な平等を指向するというこ とですので、要するに妊娠・出産も、ちょっと極端な言い方をすると、かぜで休んだと か、その他の疾病で休んだというものと同じように扱うという形で、必ずしもこれを特 別な保護の対象にしていないということです。でも、いわゆるヨーロッパの国の多く は、日本と同じように、この妊娠・出産についての特別保護というものは、別段、雇用 平等の観点からすれば、男性には認められなくても、それは違法な性差別の枠の中で考 える必要はない問題であると区別しているわけです。  そういう点では、それぞれの国において、もちろん法制の違いとか、文化的な背景の 違いもあるのでしょうけれども、そういうものをどのように保護の対象にするか。ある いは逆に性差別として規制するか、しないか。しない場合に、どういう枠組みでそれを 規制していくかは、それぞれの国の、ある意味では法体系の違い等がありますから、そ ういうものをやはり比較検討していく必要があるのではないかということを示していま す。ですから、この研究会報告では、「必ずこうあるべきだ」とか、「こういう方向が いい」ということは打ち出していなくて、例えば、こういう代表的に行われる議論の場 所で、ある程度問題の所在とか、議論の論点とか、そういうものを明らかにしたかっ た。いまのご質問については、そういうところを考えながら報告書の作成をしていると いうことでお考えいただければと思います。 ○吉宮委員  そうしますと、性差別禁止という禁止と捉える手法をとるのと、不利益取扱い禁止と いうところで、直接やることと、法律的な効果というのはそれほど違わないという理解 でいいのですか。 ○奥山委員  違法になったときの法律的な効果は、私個人では違わないと思うのです。つまり、そ れを性差別として評価して、合理的な評価をするか。それとも妊娠・出産ということに ついての特別な不利益取扱いについて違法性が認められるかどうか。違法性が認められ たときの法律的な効果については、具体例を出していくと違うところがあるかもしれま せんが、基本的には違わないという気がしています。 ○若菜分科会長  ほかにご意見ご質問ございますか。渡邊委員、どうぞ。 ○渡邊委員  雇用均等法が施行されて、今いちばんのテーマですと、妊娠・出産に伴ういろいろな 不利益という事例で、研究会で取り上げられ、それから、均等室のいろいろな対応等で やっていただいていますが、こういう事例を、もっと国民一般に開かれた、いわゆる情 報収集の1つの方法としてやる。例えば、一昔前に、「赤ちゃん110番」というのをや って、相当のインパクトがあった。これはスポンサー付きでお答えをして、育児その他 の相談に乗った。それで非常にその当時、20年くらい前にインパクトがあったというこ とも聞いております。  何か雇用機会均等法そのものの事例、法律の施行に伴ういろいろなこと、例えばどう いうことが違法になるとかいうこともなかなか一般に知られないという面もあると思い ます。それは、企業側にもやはりそういう専門の部署があって、大手ではやっている所 もありますが、特に中小企業などの場合については、そういうセクションもないという 場合、やはりこれは、雇用機会均等のいろいろなアイテムがたくさんありますが、それ に伴う一般の国民というか、消費者がいろいろ質問をしたり、相談をもちかけたりする ような機関というものを持ったほうがよいのではないか。そして法制に伴ういろいろな 適法化というものを労使、専門家の皆さんで結論を付けることが法律そのものの遵守と か、いわゆるコンプライアンスとかに対する国民へのいろいろな関係になるのではない か。  役所側というか、行政側でそういうものはやっているのかもしれませんが、その辺は どうなのですか。 ○石井雇用均等政策課長  行政としては雇用均等室が基本的に法施行機関で、ありとあらゆる相談を本当にたく さん受けて、その都度対応してきているところです。その情報発信の仕方についてのお 尋ねだろうと思いますが、それについても様々なパンフレット、あるいは記者発表も含 めて、情報発信の中で具体的な事例を示しています。特にここ数年、妊娠・出産を理由 とした解雇事案は非常に増えてきており、それについてはここ2、3年、6月の男女雇 用機会均等月間、その時にプレス発表もし、その中に具体的な事例も含めてリリースを しています。おそらくそういうものがまだ十分に行き渡っていないよ、もう少し工夫の 余地があるのではないかといったご指摘だと思いますが、違いますでしょうか。 ○渡邊委員  一言で言うと、そういうことだと思います。やはりそういう周知というのが専門家に 対する記者発表とかの域を脱していないのではないか。あとは委員会等による専門チー ムに委ねられているのではなく、もっと国民全体にそれが広がり、自分が悩んでいるこ とを、例えばダイヤル110番ではないですが、電話をする、あるいはインターネットでホ ームページを開いて、そこから吸収するとか。それに対する答えをこういう所の機関に 諮る。均等法そのもの、差別の問題等について法的な効果にするまでに至っていないで はないか。記者発表や月間でどうのこうのというのは、定例的な時だけであって、やは りこういうように開かれていますよというスタンスのほうが大事ではないかと思いま す。 ○石井雇用均等政策課長  大変貴重なご意見をありがとうございました。いま言いそびれたのですが、三田にあ る「女性と仕事の未来館」のホームページは相当充実しており、そこに具体的な事例も 含めてネットでオープンにしています。この辺については、せっかく労使がお集まりで すので、その辺のお力添えもいただきながら、組織的に流していくやり方も、できれば ご相談させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○川本委員  意見というか、感想めいたことになりますが。資料1−1の2頁目に4点、不利益取 扱いの見方の角度が書いてあります。言ってみれば、妊娠・出産したこと、単にそれを もって不利益取扱いをされる、ここはわかりやすいわけです。そうではなくて、能率低 下が出てくるとか、労働不能の問題、あるいは休んだ場合の処遇の問題、その後復職し たときの問題と、どういうように実態があるかという把握自体も難しいですし、そこに どう規制をかけていくか。事例を1個1個当たっていたら、なかなか奥が深くて難しい 問題だと、いま相談事例も見ながら思った次第です。  したがって、同じ不利益取扱いでもパッとわかりやすく判断をして、規制のかけ方を 検討できる範囲のものと、そうでないものがあるので、これは慎重に議論を深めたほう がいいと思います。最後に外国の事例があり、5、6頁に(1)から(6)までポイントが載 っていますが、まさしくその辺のことをよく表されているところだと思います。私がい つも思っていることは、これからの世の中、公正性という概念が非常に重要だと思いま す。ここは男女雇用機会均等法の問題をやっていますが、一方で公正という考え方をど う取っていくか。例えば(4)休業期間中、休業した人としない人の問題、こういう絡み はどうしても出てきて、どうバランスをとりながら公正という概念から結論を出してい くのか。あまり意見になっていませんが、一言で言えばこの辺は慎重な議論が必要だと いうことです。 ○吉宮委員  先ほど性差別で捉えるか、捉えないかという議論と、女性の母性保護についての位置 づけをお聞きしたのは、育児・介護休業制度も不利益取扱い禁止を講じていますが、あ の場合は男女とも取れるわけですよね。男性にも女性にも開かれた制度ですよね。そこ で、男性だろうが、女性だろうが、不利益取扱いしてはまずいよと言っていますね。産 前産後休業、母性保護は女性だけを対象にしたものです。しかし、それを保護すること は差別に当たらないということによる、不利益な取扱いと権利行使のバランスをどう考 えるか。  保護は差別に当たらないというときに、我々は男女平等の議論をしているわけです が、男性と女性の違いの産前産後というところを、権利行使したことに伴って男はこの 休業休暇はないので、使用者が女性よりも男性のほうが使いやすいと考えることからす ると、いわば今後のわが国の社会政策なりを考えたときに、保護すべき強度というの か、強さというのをどう考えるか。仮にいまは1.29人という実態ですが、これからさら に産みたい方は産んでもらいましょうというときです。仮に1人の女性が3人産み職業 生活を考え、通常の権利行使をした場合、産前産後、育児休業を女性が取っていくと、 かなりの期間、会社にとっては貢献が低くなるわけです。賃金上、あるいは待遇上も、 最近は能力評価もやっていますが、全く貢献しないということであれば、低く評価され る。  育児・介護休業は男女ともにある制度ですが、産前産後というのは男性にない権利な ものですから、そこをどう考えるのか政策的にきちんとしないと、同じ不利益取扱いな のですが、同じでいいのか議論をいただきたい。ここで言っている裁判例で、90%を出 勤要件にしている所は駄目だと。これは行使に反するようなものと思いますが、その辺 のバランスを考えたときに、例えばイギリスを見ると、休暇中に得られたものは、ちゃ んと権利として扱うみたいな、あらゆる不利益は禁止と書いてあります。この辺の中身 がわかれば、賃金上の問題や昇進、昇格に伴う、イギリスが講じている不利益取扱いの 中身がわかれば議論しやすいと思います。参考までですが。全く同じでいいのか、育児 ・介護休業のしかけ方と、産前産後休暇について、専門家的な立場でどうでしょうか。 ○奥山委員  いまのご質問で、あまりそういう切り口で考えたことはないので、感想だけになりま すが。1つは、育児・介護休業法は、男性、女性ともに取れる問題ですから、妊娠・出 産による休業とは少し質の違うものと思います。問題は、育介法でも男性が休業したと きに、休業による不就労期間の処遇をどう評価するか。それから、妊娠・出産による休 業、休暇による不就労をどう評価するかは基本的には同じだと思います。そのときに休 業による不就労を、処遇評価の中でどの程度の不利益を課するか。あるいは、もうそん なものは絶対に不利益はかけられないんだ、というと少し話は違うのですが、やはり働 いている人と働いていない人との間で同じ処遇をすることは難しい問題も一方であると 思います。  問題は、不利益の性質、内容、程度を個別な事例で考えていかなければいけないと思 います。そういう点では育介法の休業、男女双方が取れる権利と、妊娠・出産による女 性だけが取れる権利ということの違いは、あまり考えなくてもいいのではないか。  ただ問題は妊娠・出産の場合、産前休業は任意で、産後は強制なのです。育介法は取 る、取らないは労働者側の任意の選択によるわけで、そういう形の休業です。出産の場 合は、特に産後は強制ですから、自分は働きたいと思っても働けない、休ませなければ いけない。そういう休ませなければいけないことによる不就労を、不利益との程度でど う性質を考えるかは少し違う議論をしなければいけない。  吉宮委員がおっしゃった育児・介護休業法は男女双方が取れる。産休は女性だけしか 取れないところの違いでの不利益は、法律的な観点からはそう違いは出ないのではない か。問題は休業による不就労の不利益を、どのように考えるかということだと思いま す。それは両方一緒だという気がします。 ○石井雇用均等政策課長  参考までに今日お配りした資料1−3をご覧ください。最初に労働基準法を掲載して いますが、そこにおける平均賃金の算定におきまして、アンダーラインを引いているの が産休ですが、その1つ間を置いて、育児休業です。これは2つ合わせて、その間平均 賃金の算定においては、影響しないよう分子から除くという取扱いになっています。  年次有給休暇も、8割以上出勤したかどうかの出勤率の算定にあたり、第7号も産休 とならび育休について、この間出勤したものとみなすということで、取りあえず基準法 上の世界では扱いを同じく保護しているといいますか、特別な扱いを認めている状況で す。 ○佐藤博委員  私は法律の専門家ではないのですが、基本的には奥山委員と同じように、法律の枠組 みとして性差別でいくのか、母性保護でいくのか。何を不利益取扱いとするかどうかは 論理的には別だろうと。基本的にはどちらであっても不利益取扱いの見方が違ってくる こともあり得るので、不利益取扱いは法律の枠組みによって差が出てくることはないの ではないか。ですから、そこはあまり心配しなくてもいいのではないか。何を不利益取 扱いにするかは、どちらのアプローチでいっても、同じ結論は合意できれば出せること だと思います。  育介法の中での不利益取扱いで作ってきたものがありますが、今回の妊娠・出産のと ころはできていなかったわけです。例えば育児休業をとったことによる不利益取扱いの 考え方がそのままこちらで使える部分と、新たにこちらで議論しなければいけない部分 と少し分けておいたほうがいいのではないか。こちらは強制休業のところもあります が、基本的に休んでしまったところをどうするか、ということはある程度共通議論でき る部分がある。休んだこと自体の扱いや、休んだ後の働きぶりについては、休んだこと を不利益にすることは駄目ですよと。基本的に能力が下がったことについては、それに ついて評価することはある程度認めるとかいろいろあります。  ところが共通に議論できないところがあって、例えば妊娠・出産、能率低下は育介法 では考えていないわけです。いままで我々が育介法の中で議論してきた不利益取扱いの ものをある程度拡張する形でできる部分は、私は同じにしておいたほうがいいと思いま す。問題になれば、妊娠・出産で不利益取扱いを直したほうがいいことになり、今度こ ちらを変えれば育介法のほうもつなげないと、休業に係る部分がまた変なことになって しまう。ですから、その部分と新たに考えなければいけないところは結構難しいと思い ますので、そういう整理もこれから議論していくときに大事ではないか。育介法の不利 益取扱いの考え方でいける部分と、新たに議論しなければいけないところを分けて少し 整理していただくほうがいいと思います。 ○奥山委員  先ほど吉宮委員がおっしゃったことの懸念されている中身というのは、休業というこ とを処遇との関係でどう考えていくかということですよね。例えば年休は法律的に出勤 とみなすと書いてあります。一時金を算定する場合も、それを出勤したものとしてみな していくか、あるいは退職金の支給の場合でも、それを勤務した期間として組み込む か。そういう問題のときに、休業で休んだところがそういうものから外れてしまうと非 常に不公平になり、結局権利が正当に行使できないのではないかというご懸念だと思い ます。それは法律的にどうするかはいろいろな国の立法政策の問題もあり議論しなけれ ばならないと思います。  イギリスの場合も、あらゆる不利益取扱いについての記述をしていることも、私の理 解からすると、そういう権利行使をしたこと自体による不利益なのです。それによって 出てきた不就労という状態をどう評価するか、あるいは妊娠・出産によって、勤務して いても、個々人の差はありますが、労働能力の低下が出たときに、それをどう評価する かは、イギリスでもあらゆる不利益取扱いを禁止するとは言わないと思うのです。先ほ どの4つの例、法律上、設定された権利を行使しようとすること自体を不利に扱うよう な場合と、権利行使したことによって出てくる欠勤、不就労を他の労働者の処遇との関 係で評価するのとは少し違うのではないか。イギリスの場合も、それは別途個別に違法 評価基準を立てて判断するのではないかと思います。 ○吉宮委員  休業しない労働者との公平性と、保護することがこういう理由で差別に当たらないと いうことも、公的に確認し合うと。保護は大まかに休業保護と言うのか、休業を出勤と みなすという制度なのか。これは国民コンセンサスとしてここまで保護してもいいので はないかということになるのか、そこはどうなのですか。保護することは差別に当たら ないと宣言する意味は何ですか。つまり男性から見たら保護すればするほど差別ではな いかと。 ○奥山委員  いまのお話をお聞きしていますと、母性保護いわゆる妊娠・出産による休業という権 利、簡単に言うと出産休暇という権利を女性にのみ認めることが、男性との関係で差別 に当たるかどうかという問題で、通常、日本の場合も歴史的にそうですが、それは母性 保護だから、差別における違法な差別とは評価しないということですよね。  それと、母性保護の範囲をどこまでやるか。権利取得を認めるのか。権利行使によっ て出てきた不就労についてどう評価するかまでを保護として、それを他の疾病による不 就労と違う取扱いをしてはいけない、ということまで含めて保護の範囲で考えるのかは 違うと思います。いまの日本の法制上は、妊娠・出産による休業までは権利として認め る。休業の結果、出てくる不就労について、それをどう評価するか。例えば使用者側が その不就労をマイナス要因として、処遇上不利に評価したときに、その不利な評価が差 別に当たるかどうか。他の男性の処遇との比較で差別に当たるかどうかは別の判断で す。ただ、そこまで保護の範囲で考えていくべきだという議論もあるかもしれません が、私はそれは違うと感じます。 ○今田委員  奥山委員がおっしゃったことは理解しにくいのですが、妊娠・出産に伴って、何らか の変化が起きて、その結果、労働能力が低下したということは、まさに妊娠・出産と同 じことなのです。 ○奥山委員  それは違うことです。 ○今田委員  人によってレベルが高い人もいれば、低い人がいたとしても。 ○奥山委員  妊娠・出産によっても、例えばつわりの重い人とか、個人差が大きいわけではないで すか。そういう人は出勤していても普段の仕事の能率が計れない場合があり得るので、 それをどう評価するのかは全然別です。 ○今田委員  高い、低いがあったとしても、原因そのものが妊娠・出産なのだから、妊娠・出産に ついての一定の保護とか、枠組みを作ると決めたら、高い人があろうが、低い人があろ うが、それはその範囲内というのが論理としては一貫性があると思います。これは認め るけれども、こちらは個人差があるから、こちらに関しては男性との間の公平性でもう 一度評価軸を作らなければいけない、というのは論理としてはわかりにくいです。 ○奥山委員  母性保護の範囲をどこまで入れるかについては立法政策上の問題があるから、休業と いう権利取得までを保護の範囲にするか。あるいはそれによって個人差が出てくるよう な不就労による能力評価を別途の問題として考えて、それを個別に考えるかは政策的な 違い、保護をどこまで広めるかどうかの問題だということで、私はそれを完全に否定し ようとしているわけではない。ただし、私の考えは、それは少し違う問題として議論し たほうがいいというだけの話です。私はそれを否定するものではない。今田委員は、そ ういうように考えるべきだということも1つの意見だと思います。要するに母性保護の 権利保障をどの範囲までやるかといったときに、権利の行使、妊娠・出産をしたから私 は通常の仕事がやりにくいから休みたい、という休む権利を認めるまでが母性保護の枠 の中なのか。それともそれによって不就労、あるいは労働能力が落ちたこと、それは関 係ないのか。妊娠・出産によって出てきた個人差は関係ない、すべて保護の枠の中に入 れるのかは、考え方の違いだけの問題です。 ○今田委員  それは大きいです。違いだけという問題ではないと思います。 ○奥山委員  ですから、そこは議論する必要があると思いますが、私はそこまでを母性保護とする のは違うのではないかということです。 ○川本委員  使用者側として意見を言わせていただきます。性差別の問題と休業したときの不利益 取扱いの問題と当然あるわけですが、根本的に企業の立場としては、実際企業経営とい うものがあって、それが存続しなければいけない。倒産は避けなければいけないし、発 展していかなければいけない。その中にコスト管理、効率性の追求、併せて従業員に対 しては労働の対価としてどう払っていくのかという問題が当然あるわけです。  したがって、その上で対価としてどう考えていくのか。もう1つは、就労している人 と不就労になった方の扱いの公正性もどう保つのか、という視点も当然あります。その 中で社会的な問題から見て、いかに性差別については堅持しながら、また併せて妊娠・ 出産ならびに母性保護という観点から、そこは一歩譲ったとしても、企業としてはコス ト的なものが生じたりすることが出てくる部分だと思います。  したがって、不就労と就労している場合の問題というのは、単に休みを取ったから何 か不利益があるとして扱う問題と、就労しなかったことによって生じる不利益な話とい うことで別枠の問題ではないでしょうか。要するに視点が違うという意味で、そのよう に角度が違った中で議論をしていかなければいけないのではないかと思います。 ○吉宮委員  個別企業のロジックから言うと、いま川本委員がおっしゃったように、経済的な側面 からどう見るかを考えると思います。そのことと、産前産後休業に伴う子育てという社 会的なものの見方をどう考えるか、私は非常に大事な点だと思います。つまり、経済的 な側面だけ見たら、男女平等と言ったときはこんなことは考えられず、男性と女性では 女性のほうがお金がかかって、男性はかかりにくいからということで、同じ産業、同じ 業種で労務構成で、男性100%、女性20%でどちらを使うかと言ったら、競争条件は明 らかに違う。そこを何とか社会的に、男であれ、女であれというか、性別に伴う様々な ことを社会的に公正さ、あるいは平等さを確保しようということは、ここでの議論だと 思います。  加えて育児というのは、まさに次世代と言われるように、社会の安定的な持続を考え たとき、企業の役割、社会の役割を考えたときに、単なる企業の経済的側面だけで議論 していいのかと私は考えているわけです。まさに産む、産まないは自由なのだからお前 は責任持て、子供を産んで不就労なのだから、仕事をしなかったのだからそれだけマイ ナスの評価をされるのは当たり前だとすることがどうなのか。そこの議論は不利益取扱 いと言ったときに、権利行使の関係もありますが、それは根本的に横たわっているので はないか。従来型はまさに経済的側面からでしたし、加えて女性は結婚したら辞めると か、妊娠したら辞めると。統計的に言うといまでも妊娠したら70%は辞めているわけで す。それは自分の意思で辞めた方もいるかもしれませんが、その中に非自発的な離職と いうのは、任意で辞めるよりも多いと思います。それが雇用環境の問題で、働きにくい と出ているわけです。権利行使とのバランスと言えばそれまでですが、もう少し深く権 利行使のバランスは何なのかということを議論すべきだと思います。 ○片岡委員  吉宮委員が問題提起されていることと、奥山委員からいまの保護の範囲のご説明を伺 って、私は現場の実態から見た場合、このままでは本当に大変なことになるという危機 感がそこにあるわけです。やはり、この時点で保護の範囲というか、先ほど吉宮委員が おっしゃっていることで言うと、不就労期間をどう扱うかということも含めた保護の強 度というのは、是非今回の議論の中できちっとテーマに載せる。意見としては、産休を 取っている期間も不利益な取扱いはしないということで、具体的にはどういうことかと いう点を精査する議論は丁寧にやるという前提でやっていく必要があるのではないかと 思います。  もう一方で労働不能というのは就労していないということで、能力低下と2つ取り上 げられていると思います。妊娠中の働き方に個人差があるにせよ、能力が下がるのかと いう理由を考えて見た場合、まさにそれは個人差だと思いますが、たまたま自分の身近 には、むしろそれ以上に頑張って、あまり頑張り過ぎるなと言いたくなるような働き方 をしている人がいる。そういう人を見ていると、確かに休憩を取ることが若干多かった り、補食と言いますか、ものを食べるのに少し仕事場を離れたりはしていますが、果た して妊娠している人の働き方が、場合によっては能力低下だから、それをその前提で評 価を低めていいとは、そういう理由から考えるとならないと思います。  一方で、ときどき休むということなどがあれば、おそらくそれは体調管理、母子保健 法に基づく指導なりを一方で実際に履行する結果で、見え方としてはそう見えるという か、能力が落ちていると言われているのではないかと思います。それで能力が落ちたと いう評価は絶対あってはならないと思います。職場ではみんなが健康で、バリバリ働け るというのは、逆にいまは異常というか、そういう中では妊娠中の人の働き方も否定的 に見られる。具合が悪いけれども会社に出てきて働こうとしている人、疾病で休業した が復帰して、少し軽勤務をするような人も含めて、そういう努力をする人たちが働いて いる職場のほうが、むしろ働きやすいと思います。ですから、労働能力が下がるという ことを、妊娠中との関係で不利益の扱いをしていいということには絶対にならないので はないか。 ○佐藤博委員  保護の範囲なり、不利益取扱いをどうするか、社会全体として均等を進めながら、他 方、子育てしやすい、出産しやすいという大きな政策の中で、どこまで保護の範囲と し、不利益をどうするか。それはもちろん企業経営と考えているわけです。それは皆さ んそう思っていると思います。ただ、そのときに一方で具体的な場でどうするかという ことがあって、1つは妊娠・出産して、能率低下する。その能率低下をどう扱うか。実 際上、いままでと違うような働き方になる人もいる、全員ではない。そこはバラつきが あります。実際、産前産後に休業を取る。休業を取れば、その後たぶん働き方が違って いることは多い。  こういうように3つに分けたときに、1つは子育て支援ということで、働き方が変わ っても、変わらない扱いというのも1つの考え方です。もう1つは、休業を取ったこと 自体を不利益に扱わない。そこだけは不就業として扱う。しかしそれ自体をマイナスに は扱わない。それは1つの考え方です。しかし、それはそうではないという考え方もも ちろんあります。  もう1つは、前後の能力が低下する部分についてどう見るか。それは個別に賃金の場 合であったり、昇進だったり、その他退職金等々にかかわるわけです。私はある程度個 別に議論しないといけないと思います。一般論でバランスをとるのだと、それはそうな のです。もちろん基本的な考え方を確認することは大事だと思いますが、不就業の扱い なり、妊娠・出産について働き方が変わることについてどう見るか。それは休業を取っ たあとにもつながっていくわけです。例えば産前産後で、休業を取ると、相当働いてい ない期間が長い。そのあとの能率低下は育児・介護法にあるわけです。これを一貫して 考えたときに、どういう扱いが不利益取扱いなのか。例えば賃金についてはこうだ、退 職金についてはこうだと違ってくる場合もあると思います。ですから一律にこうだとは なかなか難しい。  吉宮委員もたぶん妊娠・出産、能率低下とか、不就業も全部含めて賃金を払えという 主張ではない。そうであれば企業ではなくて、社会的にしなければそれは無理です。賃 金をそこまで払えなんてすれば、明らかに女性をできるだけ避けたいという議論になっ てしまう。具体的な例で出していかないと、たぶん使用者側も議論しにくいと思いまし た。 ○若菜分科会長  不利益取扱い禁止について、いまの時点で他にご意見があれば伺いますが、もう1つ 議題があります。 ○山崎委員  簡単な質問ですが、相談事案が6つ紹介されていますが、これはかなり均等室の指導 よろしきを得て、最終的な結論は会社の対応が非常にいい対応になっています。会社も 苦労したと思います。そこでその場における経営者の判断、従業員との関係、取引先と のそのときの状況はありますが、そういう判断基準というか、いかに辛い判断をしてい るか、均等室では理解していただいていると思います。逆にこういうように指導して も、会社の対応がなかなかうまくいかないという例はかなりあるのですか。そういう事 例はないのですか。これはかなりいいので、こんなにうまくいっていればいいのではな いかと。4頁のように、軽易な仕事に就いて、待遇もそれ相当というのはどの程度かわ かりませんが、まあ、そうなっている例もありますが、これがうまくいかなかったほう がむしろ問題で、そこが知りたいところです。解雇の事例も8割ぐらいあると書いてあ ります。 ○石井雇用均等政策課長  おっしゃるとおり、いつもこのような形でうまくいくとは限りません。両方の言い分 とか、そこにも相当程度違いがあったりして、結果的に相談者が期待したものと異なる 結末もあります。これは1つの対応の例としてご紹介した、ということも冒頭で申し上 げたとおりです。これに書き込めていない様々な事情などもあって、その結果、事業主 としても受け入れることとなったというものも相当あるわけです。  この中でも扱いとして必ずしも100%満足でないのが事例の5番目だと思います。こ れはつわりで休んだら、パート勤務への変更と。この場合は雰囲気的にもあまりよろし くない。相談者が休んだ経過なども事業主のほうで不満に思われていて、これは居づら い状況が底流にあったがための結末だと思います。失敗例をお示しせよというお尋ねで したら、またそれはそれで考えたいと思います。 ○川本委員  いま失敗例というお話がありましたが、どちらかというと失敗例ではなくて、結論的 にはまとまったのだが、こちらから会社にこういう話があったけれども直してくれと言 って、会社が直した例が載っています。一方で、そういう相談があったが、相談者が言 っていることのほうが筋が通らなくて、それはこうですよと。ここの解釈はこうですと いうことでご指導されて、そういう結論になったものも何かあれば、どういう判断の中 身の基準で考えられているのかがよりわかると思いましたので、補足ですがお願いでき ればと思います。  男女雇用機会均等法で、双方の性差別を完全に禁止ということになったら、本来的に 言えば不就労とか、能率が下がったとかあっても関係ないわけですよね。完全に仕事の 面だけで見るわけですから。そうではなくて、社会性の問題、男女という別々の性があ るという中で、ここの部分はより保護するとか、これは平等でないところを作っている という枠組みになると思うのです。平等でないところをどういう範囲で、どの程度にし なければいけないのかという議論になるのではないか。私は当然経営側ですので、経済 的側面も考えていただきたい。その中にもう1つあるのは、その範囲の中で具体的に規 制しやすい議論になるものと、これは非常に複雑で文章に書きにくいものとか、あるい は事例を示すことによって何となく感じがわかっていくものとか、かなり議論を深めて いくと、いろいろなところに足が出ていくかなと思います。 ○佐藤博委員  均等室の事例で、先ほど吉宮委員が説明していただいた連合としても反省していると いうこと。片岡委員からもやらなければというお話がありましたが、これを普通に見れ ば、何でやっていないのかと。例えば均等室に持って行けば、当然やってくれそうなぐ らいのひどいものもあります。そうすると、逆に言えば、組合が取り組んでうまくいっ たものは集めていないわけですか。何もやっていないのか。もしそうであれば、それは さみしい限りだという気がします。  つまり、公式の苦情処理制度に載せるという意味ではなく、個別の不満や苦情の処理 は当然やっているのですが、特に女性の妊娠・出産については、全然やられていないほ うに近いほうにあるという実態ですか。組合がやって、こうなった、とかがあると、そ れが1つのルールづくりになるから、そういう取組みがあればと思うのですが、そうい うものは集めていないのですか。具体的にこういうものについて組合として取り組ん で、こうなりましたとか、そんなこともないぐらい全然やっていないのですか。 ○吉宮委員  当然やるべきことですから、あまり話題にしていないのです。 ○佐藤博委員  不利益取扱いも実際上労使がやっていく中で何が不利益か、それを議論することにな るわけです。そういうものがないと、ここだけで議論していても、決めても全然実効性 がないということになってしまう。それはいまの組合が主張する中で作っていける部分 はあると思います。そのあと並行して、こういう所でそれをルール化していくというこ とはあると思います。もしあれば教えていただきたい。 ○吉宮委員  ILO183号条約、母性保護条約は日本は批准していないのですが、その1つの原因 が出産手当金、健康保険法102条に定めている出産手当金が6割です。条約は約7割と 言っていることもあって、批准する意味でも、出産手当金の給付率を上げるべきだと言 っています。それは是非政府としても検討していただきたいと思います。 ○奥山委員  先ほどの片岡委員のお話のあとにコメントしたかったのですが、聞いていてまさにお っしゃるとおりだと重々認識しています。先ほどからの私の話は、吉宮委員、片岡委員 に反対しているということでは決してなく、理論的に考えたときに、そういうことをど う切り口にするかということです。基本的には妊娠・出産による不利益取扱いは禁止の 対象として考えていくべきで、大賛成だと個人的に考えています。  先ほどの均等室の事例にしても、労働能率の低下と書いてありますが、多くの事例 は、おそらく妊娠・出産したら、いままでの仕事がやれないだろうとか、あるいは接客 に対していろいろな不便が出るだろうとか、いわば妊娠・出産による能力低下を見込み とか、可能性で出して、それで具体的に不利益取扱いをしているということはとんでも ないことで問題外です。  いままで議論しているのは、それによって具体的に普段の仕事よりも能率が低下した ときにそれを不利益にしたときの評価をどうするかということです。言いたいのは、基 本的に妊娠・出産による不利益取扱いの禁止という命題やルールがあって、その下で不 利益はどういうものかという議論を個別に見ていくことが必要だろうということだけな のです。ですから、そこは議論しなければいけないでしょう。おそらく実態的には労働 能率が下がるということの見込みや可能性でやられるようなことが少なくない。そうい うものについてはこういう規定とかルールに基づいてきちっとやる必要があることはお っしゃるとおりだと思います。 ○若菜分科会長  時間が少なくなりましたが、もう1つの議題の間接差別の禁止についてご質問、ご意 見があればお願いします。 ○吉宮委員  先ほど課長が説明した研究会の報告で、資料2−1の1番目ですが、私どもも、女性 であることを理由とした差別禁止という、直接差別と言われていることは当然なので す。  先ほど労働組合の制度調査を紹介しませんでしたが、組合役員の調査をやると、賃金 制度であれ、退職金制度であれ、ごく少数、結婚退職した女性については上乗せして出 すみたいなことが残っていますが、大体、制度上は問題はないということが分かりま す。問題は先ほど言った形を変えた差別というか、運用上の差別というのが出てきてい る。そういう意味で直接差別以外の差別禁止法を、改めて検討すべきではないかと、私 も前から言っています。1頁に、昨年の夏に国連の差別撤廃委員会で指摘されたと書い てありますが、私の記憶では1995年の差別撤廃委員会のときから指摘されていたと思い ます。いずれにせよ、そういうこともあって検討することは大賛成です。  男女共同参画社会基本法の法律の中で、間接差別を含むみたいな解釈を政府がしてい ると、私は何かで読んだことがあるのですが、その辺はどうなのか。具体的には雇用分 野ですから均等法でやればいいのですが、国全体として間接差別法理みたいなものを法 制化している仕組みは今あるのかどうか。 ○石井雇用均等政策課長  男女共同参画基本法は、私どもが所管する法律ではございません。有権解釈権限を持 っているわけではないのですが、確かに3条の中で「差別的取扱いを受けないこと」と いう規定があり、その規定をめぐって法案審議の際にやり取りがあったことは確認して います。その中で、第3条の規定は直接差別、間接差別という切り口で規定しているも のではないが、性別による差別的取扱いは、直接的な差別意図があるものには限られな いといった答弁がなされたと議事録で確認しています。 ○吉宮委員  わかりました。ありがとうございました。そこで研究会を参考にさせていただき、3 頁、各概念を整理していただき、4頁の4行目に「間接差別は外見上は性中立的な基準 等が男女に与える影響の違いに着目し、かつ差別意図の有無は問わない」ということで 考えられて、いわゆる結果の平等との関係でも、その制度、規制が業務の関連性でもて ばいいわけで、結果の平等を求めるわけではありませんというものは、私どももこれで いいのではと思っています。したがって、相当程度の不利益という場合の相当程度とい うのは、アメリカの場合は5分の4というルールが示されています。イギリスの場合は 裁判所が判断するというか、そんな個別的な判断と書いてあります。逆に言うと、相当 程度の不利益を労働者側が提示して、この制度はこういう理由で設けているという立証 責任を使用者側が行うというのが、間接差別の仕組みであるという理解でいいのです か。 ○石井雇用均等政策課長  研究会報告で一応定義的なものを書いており、趣旨としてはそういうことです。 ○奥山委員  いまの点に絞って言いますと、何が違法な間接差別に当たるかというときの証明が、 個別のケースでは問題になると思います。アメリカでやっている場合は、労働者側が、 差別、違法性を主張していくときに、男女の問題だけで考えると、当該性中立的な基準 や要件が、一方の性、特に女性の場合、女性のほうに著しい不均衡をもたらしている。 こういう格差の存在を証明します。その格差の存在が、女性という一方の性に著しい不 利益な効果を出している。この2つを一応証明としてやる責任があります。それに対し て、会社側が抗弁として、そういう格差をもたらした要件も、当該求められる職務につ いて、どうしても遂行上必要な要件なんだということを証明できれば、違法性が阻却さ れる。それに対して再抗弁として労働側が、いや、そうかもしれないが、そういう効果 をもたらすための目的を実現するための他の方法があるではないかと。具体的な方法を また言えば、さらに違法性がもう一回出てくるという訴訟上のやり取りをするのです。  原則的には性中立的な要件でも、当該比較検討するグループ間に、グループ全体とし て不均衡が見出だされる。それが差別的な効果を生んでいるというものである、という ことが基本的な前提です。それに対して正当性の要件として、それは職務遂行上、業務 の必要性で必要だということを会社側が証明する。そういうものを含めて全体として間 接差別です。 ○吉宮委員  労働者側がグループとしてとか、データというか、統計上示すということですよね。 ○奥山委員  そうですね。統計による証明方法です。アメリカなどは、私が勉強した中では、かな り統計上の活用を認めている。イギリスは必ずしも統計数値だけによらない。しかし認 める場合があり得る。ただ、現在アメリカでも5分の4ルール、不均衡という幅で、単 なる格差だけでは困るので、そういう要件が一方の性にかなり著しい格差になってい る。それが不利益な効果があることを言わなければいけない。その目安として、EEO Cがタイトルセブンの執行責任機関ですから、5分の4というルールを作って、それを 裁判所が尊重する形で個々のケースに当てはめているわけです。しかし、わが国もそう ですし、アメリカも原理原則的なことを言えば、EEOCが持っているルール・アンド ・レギュレーションには、裁判所は必ずしも拘束されないのです。最近のケースでは、 裁判所も一応目安として5分の4と考えますが、それで差別的な効果の一応の証明を考 えていますが、必ずしもそれに依っていることでもないような裁判所もあるみたいで す。ただ枠組みとしてはそういう枠組みでやられているということです。 ○吉宮委員  私は差別というのは形を変えて出てくるものですから、それはちゃんとしたことで対 応していくべきで、間接差別法理というのは必要だと思います。  もう1つはいままで雇用管理、雇用慣行という様々な問題がありますが、いままでは 男性中心に作られてきたことは否めないわけです。それを女性の目から見て、制度、規 定等がどういう不利益をもたらせたかという議論が、現段階で考えるべき課題だと思い ますので、間接差別問題については非常に大事なテーマです。もちろん禁止を法理とし て規定すべきだと求めています。 ○若菜分科会長  他に間接差別についてご質問、ご意見はございますか。特にご意見がなければ、本日 はこのぐらいにさせていただきます。本日の署名委員は片岡委員、前田委員にお願いし ます。最後に事務局から次回の予定についてご連絡をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回は3月11日(金)午後2時から開催いたします。場所については調整中ですの で、決まり次第ご連絡させていただきます。 ○若菜分科会長  本日の分科会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 法規係 (内線:7836)