05/02/09 第16回社会保障審議会議事録                第16回社会保障審議会 ○日時  平成17年2月9日(水)16:00〜18:00 ○場所  厚生労働省 省議室(9階) ○出席者 <委員:五十音順、敬称略>       岩男壽美子、岩田正美、大森 彌、翁 百合、沖藤典子、       貝塚啓明、鴨下重彦、北村惣一郎、京極宣、久保田泰雄、       見城美枝子、櫻井秀也、清家 篤、廣松 毅、星野進保、       堀 勝洋、宮島 洋、矢野弘典、山出 保、山本文男、渡辺俊介      <事務局>       尾辻秀久 厚生労働大臣、井口直樹 政策統括官(社会保障)、       清水美智夫 参事官(社会保障)、宮島俊彦 大臣官房会計課長、       杉浦信平 参事官(会計)、牧原厚雄 統計情報部企画課長、       原 勝則 医政局総務課長、高井康行 雇用均等・児童家庭局総務課長、       小島比登志 社会・援護局長、椋野美智子 社会・援護局総務課長、       村木厚子 障害保健福祉部企画課長、山崎史郎 老健局総務課長、       間杉 純 保険局総務課長、渡辺芳樹 年金局長、貝谷 伸 年金局総務課長、       小林和弘 社会保険庁次長、宇野 裕 社会保険庁総務部総務課長、       古川夏樹 政策企画官 ○議事内容 1.開会 (古川政策企画官)  定刻になりましたのでただ今から「第16回社会保障審議会」を開会させていただきま す。  本日はお忙しい中、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。  本日は、新しい任期の下での第1回目の会合となりますので、皆様方には、後ほど会 長を選出していただくこととしておりますが、それまでの間、便宜、事務局が議事進行 を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  なお、本日は、後ほど厚生労働大臣が出席しご挨拶申し上げる予定です。  社会保障審議会の委員につきましては、任期が2年と定められており前回までの任期 は、本年1月28日をもって満了となりました。これに伴い、あらためてご就任をお願い しましたところ、多くの方々には再任をいただき、また、新たに4名の委員をお迎えす ることとなりました。  まず、任期満了に伴い、退任された委員のお名前をご報告いたします。  奥田 碩委員、岸本葉子委員、永井多恵子委員、西尾 勝委員が退任されております。  次に、今回新たにご就任いただいた委員をご紹介申し上げます。お名前をお呼びいた しますので、大変恐縮ですが、その場で一言ご挨拶をお願い申し上げます。  千葉大学法経学部教授の大森 彌委員でございます。 (大森委員)  大森です。よろしくお願いいたします。 (古川政策企画官)  作家の沖藤典子委員でございます。 (沖藤委員)  沖藤でございます。よろしくお願いいたします。 (古川政策企画官)  エッセイストで青森大学教授の見城美枝子委員でございます。 (見城委員)  見城です。よろしくお願いいたします。 (古川政策企画官)  (社) 日本経済団体連合会専務理事の矢野弘典委員でございます。 (矢野委員)  矢野でございます。よろしくお願いいたします。 (古川政策企画官)  新任の委員の皆様は、以上の4名の先生方です。  次に、本日の出席状況を報告させていただきます。  本日は、浅野委員、稲上委員、長谷川委員及び若杉委員が欠席されております。  なお、鴨下委員につきましては、遅れての出席とのご連絡をいただいております。  出席いただいた委員が委員総数の3分の1を超えておりますので、会議は成立してお りますことをご報告いたします。  それでは、これから、冒頭ご説明いたしました当審議会の会長の選出を行っていただ きたいと存じます。  社会保障審議会令第4条に定めるところによりますと、「審議会に会長を置き、委員 の互選により選任する」となっております。  選出の方法につきましては、「委員の互選」となっておりますので、皆様にお諮りい たしたいと存じます。いかがでしょうか。 (渡辺委員)  これまで会長をお務めいただきました貝塚啓明先生に、引き続きお務めいただくの が、ふさわしいと思いますので、ご推薦いたします。 (古川政策企画官)  只今、渡辺委員から貝塚委員に引き続き会長をお願いしてはどうかとのご発言がござ いましたが、いかがでしょうか。 (拍手)  ご異議がないようでございますので、貝塚委員に本審議会の会長をお願いしたいと存 じます。貝塚委員、どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、早速で恐縮ですが、貝塚委員には会長席にお移りいただき、以後の進行を お願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 (貝塚会長)  ただいま、引き続き会長を務めるようにとのお話をいただきました。委員の皆様のご 協力を得て、円滑な運営に努めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたしま す。  それでは、議事を進めてまいりたいと存じます。  社会保障審議会令第4条第3項に「会長に事故があるときは、あらかじめその指名す る委員が、その職務を代理する」とされています。  この会長代理については、ご経験が豊富な岩男委員にお願いしたいと思います。  岩男委員、どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、尾辻厚生労働大臣が出席されておりますので、ここで、尾辻大臣からご挨拶 をお願いしたいと思います。 (尾辻大臣)  厚生労働大臣の尾辻でございます。皆様、本日は、御多用中のところお集まりいただ きまして誠にありがとうございます。また、委員各位におかれましては、快く委員ご就 任をお引き受けいただき、心より御礼申し上げます。  急速な少子高齢化や厳しい財政状況の中で、厚生労働行政の抱える政策課題、とりわ け、今後の社会保障の在り方は国民の大きな関心事項となっております。  私は、厚生労働大臣に就任して以来、様々な現場を見てまいりました。以前、障害者 の方々とお話ししたときに、自分たちはタックスイーターからタックスペイヤーになり たいんだとおっしゃったことに大変感銘を受けとことを覚えております。  こうした経験から、私としては、今後の我が国社会のあるべき姿は、「一人ひとりが 持てる能力を充分に発揮できる社会」、「個人ができる限り自らの責任で自らの生活を 営んでいくことができる社会」、「個人が尊厳を持って生きていくことができる社会」 が大切であると考えております。また、非常に変化の激しい状況の中で、社会保障制度 は、このようなときこそ、国民のセーフティネットとしての機能を十分発揮することが 重要であると考えております。  現在、政府は、「社会保障の在り方に関する懇談会」において、税、保険料等の給付 と負担の在り方などを含め、社会保障全般の一体的な見直しについて幅広く議論をいた だいております。  もとより、社会保障審議会では、これまでも、分科会や部会の場で、年金、医療、介 護、福祉など山積する課題について、専門的な観点からご検討いただいており、また、 この総会の場には、各分科会、部会の主要な委員の先生方にお集まりいただいておりま す。  私としては、この「社会保障審議会」と「社会保障の在り方に関する懇談会」は、い わば車の両輪と考えており、委員の皆様方からも引き続き忌憚のないご意見を頂戴でき ればと思っております。  急速な少子高齢化などに鑑みますと、厚生労働行政の歩むべき道は決して平坦ではあ りません。課題は山積しておりますが、我が国の社会保障を持続可能で安定的なものと していくため、私としても全力で取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞ よろしくお願い申し上げます。 (貝塚会長)  それでは、大臣には5分程度という短い時間ではありますが、時間がいただけるとい うことですので、せっかくの機会ですから、何かご発言がございましたら、お願いしま す。 (京極委員)  大臣は社会保障のことで孤軍奮闘されていると伺っておりますが、経済財政諮問会議 その他で色々なことが先に決まりまして、本社会保障審議会では個別報告が多くて、そ もそも論をあまり議論することがないので、もうちょっと議論したらどうかと思ってい ます。  最近感じますのは、かつて旧大蔵省のお考えになったいくつかの呪縛がありまして、 一番大きな呪縛は、国民負担率を直しても50%問題というのは重くのしかかっておりま す。社会保障が小さい時は50%をめどにということで、それなりに意味があったんです が、大きくなってきますと、これでいいのか。合成の誤謬という言葉がありますが、個 人や個別企業の家計だけで見ますと所得に占める保険料や税負担は重いわけです。個別 で見た場合と国民経済全体で所得を見た場合は違うんで、税の場合は生活保護者の所得 になりますし、保険料は年金という形で、特に賦課方式の場合、よりはっきりしていま す。医療や介護についてもサービスという形で国民に供給されることになっていますの で、そういうもの全体をどう考えたらいいか、このあたりを深く検討する必要があるの ではないか。  経済成長と社会保障をリンクして考える考え方はありますが、アメリカでは大不況の 中で1930年代に社会保障が生まれたわけです。今日、成長率が非常に下がって不況が続 いてる中で、高齢化の率はある程度考えて年金や医療を考えることは必要ですが、経済 成長率に社会保障全般を押し込めていいのかどうか、これはちょっと狭苦しい議論じゃ ないか。財政的な議論だけじゃなくて、トータルな見地から社会保障審議会で検討すべ きだと思っております。 (清家委員)  先ほど尾辻大臣が、すべての人が能力を十分に発揮できるような社会にすることが大 切だとおっしゃいました。全く賛成です。働く意思と能力のある高齢者は日本にたくさ んおられますので、そういう人たちが高齢社会において生涯現役で働けるような仕組み を作ることも社会保障の問題と密接にかかわってきます。厚生と労働を合わせて厚生労 働省になったわけですから、社会保障の問題も雇用の問題等と連携を持たせて議論して いくことが大切ではないかと思っております。 (矢野委員)  大臣のお話を伺って大変心強く思いました。社会保障の在り方に関する懇談会と社会 保障審議会が車の両輪であるというご認識であり、今ほど一体改革の必要性が高まって いる時はないと思いますので、この場でしかるべき論議が、スケジュール感をもって行 われていくことを期待したいと思います。 (貝塚会長)  それでは、大臣から所感をいただければと思います。 (尾辻大臣)  3人の先生方から応援団としてのご発言をいただきまして、誠にありがとうございま す。最初に財政と社会保障との関係について、特に国民負担率という具体的な言葉が出 てきてのお話でございました。私は厚生労働大臣になります1年前は党のほうの厚生労 働部会長でございました。この時以来、経済財政諮問会議と国民負担率という言葉をめ ぐってずいぶんやりとりをしております。今はどうなっているかと申しますと、骨太の 方針の中には、「例えば」という言葉はついているんですが、「例えば潜在的国民負担 率50%を一つの目途とすべきである」という内容になっております。これについてはい ろいろなご意見がありますが、私どもはどう言っているかと申しますと、社会保障にか かわる費用というのは制度としても義務的な費用であるし、どうしても積み上げていか なければならないものであるから、最初にキャップをはめられてもどうしようもない。 そもそも考え方が違うのではないだろうか。一言でいいますとこういうふうに言ってい るところでございますので、先生方の応援をあらためてよろしくお願い申し上げたいと 存じます。  次に、せっかく厚生省、労働省が一緒になったのだから、そのメリットを生かして頑 張れというお話でございました。まさにご指摘のとおりでありまして、日ごろ私もその ことは強く申しているところでございますから、狭い縦割りなど廃して、大きな立場で 頑張っていきたいと思っております。  最後に、この社会保障審議会についてのお話がございました。私は両輪だと思ってお りますということをお世辞で申し上げたつもりは全くありません。本当にそのとおりに 思っておりまして、先ほどご挨拶の中でも申し上げましたが、先生方に忌憚のないご意 見をお出しいただいて、まさに日本の社会保障をリードしていただきますよう、お願い 申し上げたいと思います。  先生方のお話について、意を尽くしたお答えになっているとも思いませんが、以上を 申し上げて、あらためての御礼にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願 い申し上げます。 (貝塚会長)  大臣は、この後ご予定があるとのことですので、ここで退席されます。尾辻大臣どう もありがとうございました。 (厚生労働大臣退席)  それでは次の議題に移りたいと思います。  前回の審議会以降、社会保障にかかわる様々な動きがありましたので、いくつかをま とめて事務局から報告していただき、その後で、各委員にご意見・ご論議をお願いした いと思います。  事務局からの説明は、3回に分けて行ってもらいます。  それでは、まず、「厚生労働省の平成17年度予算の概要等」、「社会保障制度の一体 的見直し」、「三位一体改革」、「生活保護制度の見直し」について、簡潔に事務局か ら説明をお願いします。 (宮島会計課長)  私から平成17年度厚生労働省予算案の説明をさせていただきます。資料1−1をご覧 ください。  まず1ページですが、17年度予算案は20兆8,178億円で、前年度予算に比べて6,268億 円、3.1%の増となっております。そのうち社会保障関係費は5,849億円で3.0%の増で す。政府予算の中でプラスになっているのは社会保障関係と科学技術関係だけです。  参考として、国全体の一般会計の内容が示されておりますが、一般会計は約82兆円、 増加額は720億円で0.1%の増ということです。  一般歳出は、47兆円で3,491億円の減少ですが、一般歳出47兆円に占める厚生労働省 予算の割合は43.9%となっています。  3ページに移りまして、社会保障関係費の内訳です。医療が8兆862億円、年金、介 護、福祉等、雇用となっておりますが、増減欄を見ていただきますと、医療については 583億円の減少となっています。これは今回の三位一体改革において国民健康保険に都 道府県負担が導入された関係で、マイナスになっているということです。  雇用関係予算はマイナス641億円となっていますが、失業率の改善を反映して雇用保 険の財政が改善したことを反映しているものです。  4ページは特別会計の予算です。17年度予算額72兆5,681億円で、対前年2兆2,821億 円の増となっています。それぞれの内訳は、資料にお示ししているとおりです。  予算案の中身につきましては目次欄を見ていただきますと、三位一体改革、介護保険 の改正、障害者福祉の改正、年金の2分の1国庫負担への積み増し、社会保険庁の事務 費の問題等が記載されておりますが、時間の関係で、以上とさせていただきます。 (清水参事官)  社会保障担当参事官の清水でございます。私からは資料1−2以下3点の資料を説明 させていただきます。  まず資料1−2「平成17年度税制改正の概要」によって税制改正のご説明をしたいと 思います。内容が多岐にわたりますので、要点だけ申し上げます。  4ページをご覧いただきたいと思います。基礎年金の国庫負担割合の着実な引上げを 図るための税制上の整備ということで、定率減税の2分の1縮減が行われまして、1,100 億円ほど17年度年金の国庫負担の引上げに用いられるということが税制改正に関連して 定められました。基礎となる定率減税の縮減がうたわれています。  厚生年金基金等に係る特別法人税の課税の停止措置が延長されています。  国民年金保険料の納付に関して、税の減免を受けるためには、1年後の確定申告の際 から確定申告書に添付するという取り扱いがとられるなど、いくつか特徴的な点があり ます。その他につきましては、説明を省略させていただきます。  次に資料1−3「社会保障の在り方に関する懇談会における議論の整理」をご覧いた だきたいと思います。  10ページをお開き下さい。この懇談会は10ページにあります要綱に基づいて昨年7月 に設置されたものです。  趣旨は、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため、社会保障制度 全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行うとい うことで設けられたものです。  11ページに委員の名簿がありますが、本日当審議会にご出席の宮島委員にもご参加を いただいております。政府側も関係閣僚が参加しております。  12ページに開催の経緯がありますが、昨年7月30日に検討を開始しまして、社会保障 の一体的見直し、年金一元化、介護保険制度改革、医療保険制度改革、生活保護・少子 化対策等について論議の上、昨年12月には議論の整理をしております。それが3ページ から掲載されています。大部になりますので、1ページをご覧いただきたいと思いま す。これは3ページ以降の内容を厚生労働省において短くサマリーとしてまとめたもの ですが、このサマリーに基づき簡単にご説明いたします。  1.社会保障の一体的見直しの考え方としては、次のような意見がありました。  ○ 個々の制度のみならず全体を見通して一体的な見直しに取り組まなくてはならな   い。  ○ 個別の制度を見直し、積み上げた結果で社会保障制度全体の規模を論じるとする   意見、給付と負担の在り方について一体的に議論すべきとする意見、社会保障制度   全体の規模を管理することにより持続可能な制度を作っていくべきとの意見があり   ました。  ○ 居住費や食費の給付の重複調整など、各制度の役割や相互関係の調整が必要であ   る。  ○ 潜在的国民負担率については、50%を上限として定めることが適当とする意見が   ある一方、まずは社会保障のあるべき姿や制度の効率化の議論をすべきであるな   ど、様々なお立場の意見があります。  2.公的年金一元化については、次のような意見がありました。  ○ 公的年金制度の一元化は、将来的な選択肢の一つである。  ○ 被用者と自営業者等とは所得が違うということ、非正規労働者への年金適用の在   り方といった問題もある。また、納税者番号制度を導入すべきという意見と、納入   者番号は所得把握に明らかに限界があるという意見もありました。  ○ 基礎年金の在り方についても様々な意見があり、不公平感を増すという意見もあ   りました。  3.介護保険については、早急に改革を実施することが必要という意見がありまし   た。  4.介護保険制度に関連する医療制度については、糖尿病、高血圧など生活習慣病対 策を重視すべきではないかという意見等がありました。  中医協については、第三者の目で改革案を検討することが必要という意見がありまし た。  5.生活保護については、生活保護を身の丈に合った形に見直す方向で議論すること が必要である。  6.少子化対策については、高齢者関係給付の比重の高い社会保障制度の見直しをは じめとする少子化対策に取り組むことが必要である。  駆け足で説明いたしましたが、以上のようなご意見があったということです。  2月16日に次回の社会保障の在り方に関する懇談会が予定されておりまして、順次、 医療や雇用の関係、経済との関係などについて議論が進んでいくことになっておりま す。  次に資料1−4ですが、三位一体改革関係を手短にご説明申し上げます。  1ページですが、昨年の夏、三位一体改革に関して地方6団体からご提言がありまし た。それに対して私どもは官邸からの求めで対案をお出しし、国と地方の協議会が行わ れ、様々な調整の結果、11月26日、政府・与党合意が行われました。その概要が右上の 四角に書いてあります。  税源移譲としては、国民健康保険の国庫負担50%のうち7,000億円程度を都道府県負 担としたらどうかという点が1点。  国保以外の移譲補助金850億円程度、税源を移譲し、補助負担金としては廃止すると いう点があります。  生活保護負担金と児童扶養手当の補助率の見直しについては、地方関係者が参加する 協議機関を設置して検討を行い、17年秋までに結論を得て、18年度から実施することに なりました。  これらの税源移譲のほか交付金化もすることにしました。施設整備関係ですが、1,390 億円程度、医療・保健衛生、高齢者関係、児童福祉関係を交付金化することにしまし た。  これが三位一体改革に関連する厚生労働省関係の措置ということです。  なお、ソフトの様々な補助金についても交付金化・統合補助金化できるものはしよう ということで、社会福祉、医療・保健衛生、高齢者施策、障害者施策、児童福祉関係で 合計1,910億円程度を交付金化・統合補助金化するという改革を併せて行っています。  この考え方に基づいて予算編成が行われたとともに、法律措置も必要ですので、2ペ ージの冒頭に書いてあります「国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法 等の一部を改正する法律案」を今国会に提出しました。  中身は、11月26日の政府・与党合意の着実な実施ということで、国民健康保険に関し ては都道府県に負担していただく。具体的にはどこかというと、保険基盤安定化制度の ところの都道府県負担を現行の4分の1から4分の3にするという点と、都道府県財政 調整交付金7%。これは18年の完成形ですので17年度は5%という形で都道府県負担を 導入する。  先ほど申しました負担金・補助金の850億円の廃止は2番に書いてあります。  負担金・補助金の交付金化は3番に書いてあります。  17年度において、定率減税の縮減による増収分から1,101億円を基礎年金の国庫負担 の引上げに充当するという法律改正もこの法律の中で行うことにしています。  6ページ以降は、11月26日決定の「政府・与党合意」本文、16ページ以降は途中過程 における省の考え方を整理したものなどですが、説明は省略させていただきます。 私からは以上です。 (椋野総務課長)  社会・援護局の総務課長でございます。資料1−5の「生活保護制度の見直しの概要 」に沿いましてご説明申し上げます。  まず1ページですが、生活保護制度の在り方につきましては、本審議会福祉部会に設 置された生活保護制度の在り方に関する専門委員会において、平成15年8月から検討が 行われ、昨年12月に報告書が取りまとめられました。厚生労働省といたしましては同報 告書を踏まえて見直しの内容を検討し、平成17年度から順次、見直しを実施していくこ ととしております。  資料の右側四角内に表示しておりますが、報告書においては、生活保護基準の見直し に関し、生活扶助基準の5年に一度の定期的検証、老齢加算の段階的廃止、母子加算の 見直し、高校就学費用の給付等が指摘されています。  また、制度・運用の在り方と自立支援の見直しについては、自立支援プログラムの導 入、実施体制の整備、資産・能力の活用等の在り方の見直し等が指摘されています。こ の場では特に自立支援プログラムについてご説明させていただきたいと思います。  2ページをご覧ください。報告書では、生活保護制度を経済的給付に加えて、効果的 な自立就労支援策を実施する制度に転換する必要性が指摘されていることから、地方自 治体が被保護者の実情に応じた多様な自立支援プログラムを整備し、被保護者に取り組 んでいただくとともに、地方自治体はこれに沿って支援を実施するということになって います。  具体的なプログラムのイメージは3ページです。  稼働能力を有する方に対しては、就労を阻害している要因を段階的に克服し、就労を 実現するためのメニュー、精神障害者など社会的入院患者に対しては、居宅生活への復 帰やその維持・向上のためのメニュー、高齢者に対しては、健康的な自立生活を支える ためのメニューなどを整備して、被保護者に対してプログラムへの参加を指導するとと もに支援をしていくこととしております。  ここでいう自立というのは就労による自立のみならず、自分で自分の健康、生活管理 ができるという日常生活自立及び社会的なつながりを回復・維持する社会的自立を含む 幅広い概念として打ち出されています。  4ページですが、地方自治体の自立支援プログラムの実施のために、17年度、職業安 定局等の予算案において、福祉事務所とハローワークの連携や無料の職業訓練の拡充に よる被保護者の就労支援事業も盛り込まれています。  5ページは、三位一体改革における生活保護費負担金の見直しについてですが、昨年 11月の政府・与党の合意において、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討 を行い、17年秋までに結論を得て、18年度から実施することとされています。この協議 機関について、現在、地方団体等関係機関と構成メンバーや進め方についてご相談申し 上げているところです。できるだけ早く検討を始めたいと考えております。以上です。 (貝塚会長)  それでは、ただいま説明のありましたことについて、ご意見・ご質問等がありました らお願いします。 (山本委員)  最後の生活保護のところですが、地方団体と協議をしてるという話だったと思いま す。耳が悪いから聞き違いかもしれませんが、地方団体とはどこを指して言われたので すか。 (椋野総務課長)  協議機関を設置させていただきたいということで、市長会、知事会の事務局にご相談 申し上げているところでございまして、協議が始まっているわけではありません。協議 機関の設置についてご相談をさせていただいている段階です。 (山本委員)  事務局に連絡したからといって、こういう公式の場で地方と協議中であるということ を言うのはどうかと思います。全然知らないんです、もう一つ地方団体があるのかと思 いました。事務局の誰と話したか知りませんが、こういうところで協議中ですという発 言をすると、これはもう協議を進めているんだなと皆さん思う。基本的な合意があるん だと解せられるおそれがあるから、訂正してくれませんか。今日は知事会の委員が出席 されていませんので、市長会長と町村会長の2人が聞いていて黙って帰ったのかと知事 会から怒られます。 (椋野総務課長)  地方団体の事務局にご相談を申し上げさせていただいております。 (山出委員)  三位一体改革についてかなり時間を割いてお話がありましたので、私から基本的なこ とをお話しさせていただきたいと思います。私どもはなぜ三位一体改革をやっておるか と申しますと、できるだけ地方の自主自立、自由な裁量の余地を広げたいというのが基 本的な考え方です。そういう意味で地方の側から、我々はこういう補助金の類は、この 際削減して、税に変えてほしいということを提案したことは事実であります。しかし、 そうした地方の改革案に対して、厚生労働省関係の補助金につきましては、達成された ものは1割にも満たないことを申し上げておきたいと思います。  なおかつ、我々が地方の改革案の中で提示しなかったもの、それは一つは国民健康保 険ですが、その理由は、いま医療保険制度を議論していらっしゃる最中だ。現にその議 論はこの場にもあるわけで、議論していらっしゃる最中だから、国民健康保険は我々自 身が削減対象から外そうといったわけですが、これをあえて持ち出されて俎上に乗せて こられた。そういう意味で、地方の側はこのことについては不満が残っているというこ とを申し上げておきたいと思います。  もう一つは、生活保護の負担金です。生活保護の支給事務というのは本来、国の仕事 であるはずでありまして、そういう意味で地方の裁量とはかかわりがないんだ、だから こそ我々は改革の外に置こうということを申し上げた次第でありますが、これをあえて 俎上に乗せてこられまして、なおかつ国の負担率を落とすという提示の仕方でありまし たので、私どもはここも違いますよということを申し上げているわけです。  もともと生活保護につきましては法定受託事務という表現でありまして、国の責任で 実施すべき範ちゅうのものだから、地方の裁量とはかかわりがない。そのことについて は我々は議論の外なんですよということを申し上げた次第でして、にもかかわらず生活 保護の国の負担率を下げるというのは筋が通りませんよと、こういう言い分であるとい うことをご承知いただきたいと思っています。  国の負担率を下げるというのは我々から見ますと、単なる地方への負担転嫁だと言い たいわけでありまして、ここのところに大きい齟齬がある。単なる地方への負担転嫁が 前提である負担率の引き下げというのは、いけないという立場であることを申し上げて おきたいと思います。  医療保険制度の改革のことですが、市町村が現実に責任を持っているのは国民健康保 険なんです。現状を申し上げますと、被保険者の2分の1を超える者が無職という実態 でありまして、無職者が被保険者の半分を超えてる。こういう方々から保険料は現実問 題として徴収できないというのが実態であります。保険料が徴収できませんので、どう いう措置をするかというと、ここへ税金を入れるわけです。この税の総額は法定で定め られたもの、法定で定められていないものを含めますと、全市町村で1兆円を超えるん です。ここの実態を知る必要があります。  この際、国民健康保険について抜本的な改革は必要ですし、国を保険者にして、高齢 者を含めて、医療保険制度への一本化を強く求めたいと思っているわけです。折しも、 政管健保についても都道府県単位に分割をして、独立行政法人等に移行するという議論 もあるわけですので、この機会に国保の構造的問題の解決に向けて、国保についても政 管健保と一体的に議論をすべきだと考えているということを申し上げておきます。  医療保険部会においては高齢者医療制度の検討も進められています。75歳以上の後期 高齢者については社会保険ではなく、公費等による運営を国の責任において実施するべ きだと申し上げたいと思っています。我々市町村は国保と介護保険の担当でありまし て、この2つとも極めて深刻な財政運営に直面しているわけです。そういう実態からし ますと、市町村が、この上さらに保険者を担うということは到底考えられない。このこ とを申し上げておきたいと思います。以上です。 (星野委員)  私は医療部会の座長をやらせていただいておりますが、山出委員が言われたことは医 療部会でずっと検討しておりまして、お隣の山本委員にもご出席いただいているわけで す。いま山出委員が言われたことは切実なご意見ですから、山出委員のご意見として承 りますが、議論は差し止めたいと思います。議論は医療部会のほうでやらせていただき たいと思います。非常に真剣にやっておりますので、よろしく。 (山出委員)  私は医療保険部会でも議論をしていることは承知していますし、部会には市長会から も委員が出席しています。この場は、そうした部会をさらに総括する場でもありますの で、あえて申し上げた次第でございます。 (貝塚会長)  そのほか、委員のほうから補助金が税にかわって1割程度になってしまったとか、生 活保護の補助率の話も出ましたが、それらについて厚生労働省からご説明いただけます か。 (清水参事官)  私から総括的にご説明申し上げます。三位一体改革関係につきましては、政府部内、 与党関係、地方団体との間で様々な論議がありました結果、先ほど申し上げましたよう な決着になったわけです。その中でも様々なご意見がありますので、特に生活保護、児 童扶養手当の関係については、これから1年かけて更に論議を深めていくことになって おります。  国民健康保険の関係につきましては、財政基盤が脆弱ですので、保険者はなるべく広 域化していかなければならないという方向があります。そういう方向に沿って、都道府 県に様々な調整をしていただく。都道府県の自由度に着目したような形で財政負担をい ただくという方向で考えているものでありまして、トータル的な方向としては、三位一 体改革にまさに沿うものではないかと思っています。  地方に同化定着したものについては地方にお願いするという考え方で、850億円とい う額のものも提案したわけです。  そういう中で、引き続き論議が必要なものはともに論議するような形にしていただけ ればと思っております。現在、法案を国会に提出しているところですので、国会での法 案の1日も早い成立をお願いしたいと考えております。 (山本委員)  生保にしても国保にしても地方団体との接触が少ないんです。どこかでアッという間 に決めていったというのが今回の三位一体の財政改革の結論だったんです。生活保護と いうのは誰が責任を持つのかという基礎から議論をしなければいけない。そういう時期 がきていると思います。そういう議論もしないで、ただポッと出したというやり方です から、地方側が反発しているわけです。本質的な議論を何もしないまま、ただ数字だけ をあっちにやりこっちにやるというやり方をしてきたのが今度の三位一体の財政改革の 本当の姿だと思います。それではいい制度を作り上げていくことはできないし、検討も することができないわけです。生活保護というのは、誰が責任を持つのか、どうすれば いい制度になるのか、こういう基礎的なところから我々と話し合いをするというような 姿勢を出して下さるようお願いしておきたい。  国保は都道府県が介入することは大いに賛成です。やるべきだと思います。地方だと 言ってるわけですから、地方全体が責任を持って国保を維持していくことが必要だと思 います。都道府県は別だ、市町村だけがこれを持てというのは間違っていると思いま す。そういう基礎的なことも含めて、国保についてもこれから突っ込んだ議論が十分で きるようにしてください。  一つ問題点があるのは、5%と7%の調整について、どういうガイドラインで、これ から県が介入するのかしないのか。従来どおりのやり方をするのかしないのか、これら についても不明瞭なんです。なぜ私どもが不明瞭というかというと、協議しなかったか らなんです。我々とよく協議をした上で5%、7%にしたのであればよく理解できるん ですが、どこかでポンと出されて決められたもんですから、どうなっていくのか。ガイ ドラインを作るんだといわれてるけど、それを示したかどうかについても我々はわかり ません。不安が大きいんです。  生保にしろ国保にしろ社会保障の中で最も大事なものですから、さっき申し上げたよ うなことで我々地方と接触をして、協議をして進めていくようにしてください。今日お 願いしておきますから、この次も私から同じような発言をしないでいいようにしておい てください。お願いしておきます。 (山出委員)  いま山本委員がおっしゃった接触がほしいということは、介護保険、障害者の支援費 制度、こういうものについても同じだということを申し上げておきます。 (貝塚会長)  生活保護の話が出ましたが、何かございますか。 (岩田委員)  私は福祉部会の座長を務めさせていただいておりますが、福祉部会において生活保護 の議論をしておりまして、半分ぐらい進んだ時に三位一体改革の議論が出てまいりまし たので、私どもも議論がやりにくいというか、なかなか難しい状況にありました。財政 問題については、部会に設置した専門委員会のレベルでは、生活保護制度は国の制度で あるので国が責任を持つという基本的なことを委員が相互に確認したというレベルにと どまりました。地方と国が分業するということは最初から織り込まれた制度ではあるん ですが、どういうふうに分業するかということについてきちっと確認した上でやらない となかなか難しいだろうという感じを持っております。  地方自治体の長の方々の不安は大変よくわかるわけですが、その前に、どういうふう に分業しあうかということについてきちっとした上で、それぞれがどう責任をとるの か。生活保護に関しては基本的には国の制度ですので、専門委員会としては国がきちっ と責任をとるべきだという意見でございました。 (大森委員)  今回、生活保護制度について自立支援を入れてきたんですが、分権改革の時に、当時 の厚生省の皆さん方はこれを自治事務にすることを大変嫌がった。生活保護の本体は法 定受託事務ですといって。それは分権委員会で認めたんですが、実際には生活保護から 離れて自立していく人たちがいるではないか、それを支援するプログラムは重要だ、こ れは自治体の仕事ではないかということで、やっと認めて頂いたのが実態だと私は思っ ています。  そして、今回は自立支援をお使いになった。お使いになったことについて私は否定的 ではありません。せっかく労働省と一緒になりましたから、自立就労という観点で、生 活保護を受けた方々も社会的に自立していく方向でいろいろ支援することは正しい道筋 だと思っています。自立支援プログラムを立ち上げたことについて私は反対しません。 ただし、そのことと生活保護の国の負担率を減らすというのとは同じことではないんじ ゃないか。自立支援プログラムを立ち上げる費用と、現在の生活保護の現金支給という 仕事にかかわる国と自治体の負担の在り方について少し混同されて、押し込んでこられ たのではないか。  そのことが明確でない限り、都道府県と市は簡単にこれを認めることにはなりませ ん。自立支援プログラムを立ち上げたことについては、まじめなケースワーカーの人た ちはいいという判断になると思ってますので、それはそれとして推進すべきだと思うん ですが、生活保護の本体のほうの負担率をそれに引っかけて、この率で減らすなんてい うのは厚生労働省の思想問題だと考えます。改めて自治体ときちんと協議をして、自治 体の理解と支持を得て、その上で実施に踏み切っていただきたい。半分はいい方向に向 かってる、半分は相当怪しいということを申し上げておきたいと思います。 (京極委員)  こういう議論を社会保障審議会でやっていただきたいと思っています。地方分権化と 民営化は21世紀型の社会保障の方向ですから、この2つの軸でやっていかざるをえな い。しかし国がどこまでやるか、それをきちんと議論する。  これから社会保障を考える時は、国民一人一人がどうするかという問題なしに、ゆり かごから墓場まで全部国がやってくれるという発想はもう通用しないので、ゆりかごか ら墓場まで全部自分が関与してやっていくと国民が思わないといい社会保障になってい かないと思うんですね。このあたりをこれから議論していただきたいと思います。 (貝塚会長)  ほかに何かございますか。時間が押しておりますので、手短にお願いします。 (櫻井委員)  厚生労働大臣が社会保障審議会と車の両輪だとおっしゃった社会保障の在り方に関す る懇談会の資料が資料1−3に出ておりますが、懇談会の内容は、三位一体改革の生活 保護等の議論にも関係があると思います。懇談会の内容は、公助を減らして自助を増や せということで、自立を支援するというのはいいのですが、それがお金の問題で考えら れている。公助のお金を減らして、自助にまかせるというお金の問題で議論されている 部分がある。このところが、車の両輪の一つである懇談会の進め方がちょっとおかしい なと思います。  潜在的国民負担率の話も、もともと臨調がいった国民負担率というのは租税負担と社 会保障の負担だけだったわけで、それは実際に37%ぐらいで、ここ十数年、少なくとも 平成になってから全然動いていないわけです。そこに赤字国債を足して、潜在的国民負 担率というのが飛び込んできたわけで、飛び込ませたことにも問題があるし、もし赤字 国債を足すなら、50%という議論は、もともとそれがなくて50%が問題だといってたん だから、別の議論でなくてはいけないのに、余計なものを足しても50%の議論がまだ生 きているというのは全くおかしい。資料の論点にも両論併記みたいに書いてあるので、 車の両輪とされた社会保障審議会としては、どのように考えるのかを議論しておいた方 がいいと思います。 (貝塚会長)  それでは、次に移りたいと思います。「介護保険制度の見直し」と「障害者自立支援 法案」及び「子ども・子育て応援プラン等」について、事務局から簡潔に説明をお願い します。 (山崎総務課長)  老健局の総務課長でございます。資料2−1「介護制度改革関連法案の概要等」をご 覧いただきたいと思います。  2ページ、介護保険法等の一部を改正する法律案(概要)について簡潔にご説明いた します。介護保険は平成12年4月にスタートしまして5年近くになりますが、保険者で ある市町村のご努力もあり、制度は定着してきております。当初、要介護認定が200万 人程度でしたが、今は400万人を超えています。それに伴って費用も毎年10%ぐらい伸 びておりまして、当初は3.6兆円の規模だったものが17年度は6.8兆円となっています。  今回の見直しですが、もともと介護保険法附則第2条に施行5年後に見直すという規 定がありました。それに基づき、制度の持続可能性の確保、明るく活力ある超高齢社会 の構築、社会保障の総合化を基本的視点として、制度全般について見直しを行っていま す。  I.改正の概要ですが、7つあります。  1.予防重視型システムへの転換  (1) 新予防給付の創設。軽度者(要支援・要介護1)の方々が非常に増えています。 当初は80万人だったのが今は200万人を超えておりまして、この方々に対するサービス をどう考えるかというのが一つの大きな論点です。軽度者に対するサービスが状態の改 善につながっていないという指摘もありまして、それを踏まえて創設したものです。  (2) 地域支援事業の創設。要支援・要介護になるおそれのある高齢者を対象とした効 果的な介護予防事業を介護制度に新たに位置づけようというものです。  2.施設給付の見直し  (1) 居住費・食費の見直し。介護保険の場合は在宅と施設利用がありますが、在宅と 施設を比較しますと、施設のほうが一般的に利用者負担が軽いという問題があります。 在宅と施設の利用者負担の公平性という観点から、介護保険3施設(ショートステイを 含む)等の居住費・食費について、保険給付の対象外にするという見直しです。  (2) 低所得者に対する配慮。低所得者の施設利用が困難にならないよう、負担軽減を 図る観点から新たな補足的給付を創設することとしています。  3.新たなサービス体系の確立  現在、認知症の高齢者は150万人いらっしゃいますが、10年後には250万人と見込まれ ています。一人暮らし高齢者の増加、在宅支援の強化、高齢者虐待への対応、医療と介 護との連携等の観点から次の3つを考えています。  (1) 地域密着型サービスの創設。身近な地域で、地域の特性に応じた多様で柔軟なサ ービス提供が可能となるよう、大きな施設よりは地域に密着したサービスを作っていき たいと考えています。  (2) 地域包括支援センターの創設。地域における総合的な相談窓口機能、介護予防マ ネジメント、包括的・継続的マネジメントの支援を担う「地域包括支援センター」等の 新たなサービス体系の確立を目指していきたいということです。  4.サービスの質の確保・向上  サービスの量は大変拡大しました。事業者の参入が広がり、雇用の面でもプラスにな っていますが、一方で質の問題が問われています。利用者からの不満等もあります。今 回は量より質という面での制度改正です。  (1) 情報開示の標準化として、介護サービス事業者に対して情報の公表を義務付け る。  (2) 事業者規制の見直し。介護保険は規制の緩い形でスタートしていますが、指定の 更新制の導入、欠格要件の見直し等を行っていきたいと考えています。  (3) ケアマネジメントの見直し。ケアマネジャーの資格の更新制の導入、研修の義務 化等を考えていきたいと考えています。  5.負担の在り方・制度運営の見直し  市町村に一生懸命運営していただいておりますが、よりやりやすいような形を目指し ていきたいと思っています。  (1) 第1号保険料の見直し。65歳以上の保険料ですが、低所得者についてきめ細かな 保険料設定ができるようにする。現在、老齢年金から天引きさせていただいています が、遺族年金、障害年金からも天引きできるような徴収方法の見直しを行っていきたい と考えています。  そのほか(2) 要介護認定の見直し、(3) 市町村の保険者機能の強化を考えています。  6.彼保険者・受給者の範囲  40歳以上の方が被保険者であり受給者ですが、この範囲についてどう考えるかという 議論です。これに関しては与党における議論もたくさんありまして、それを踏まえた上 で、今回、法律の附則として検討を行うという規定を置いています。  政府は、介護保険制度の被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲について、社会 保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて検討を行い、平成21年度を目 途として所要の措置を講ずるものとするとしています。  7.その他として、「痴呆」の名称を「認知症」へ変更等を考えております。  4ページは介護保険法施行法の一部を改正する法律案ですが、現行の経過措置を延長 しようというものです。  5ページは三位一体関連ですが、施設整備費を交付金化するための法律改正です。こ の2つについては説明を省略させていただきます。以上です。 (村木企画課長)  引き続きまして障害者自立支援法の関係を説明させていただきます。障害保健福祉部 の企画課長でございます。資料2−2をご覧いただきたいと思います。1ページに概要 をまとめておりますので、この資料で説明をさせていただきます。  障害者の地域生活を促進するため、自立を支援する観点から新しい法律を提示させて いただく予定です。「1.」は障害者自立支援法による改革のねらいとして、大きな四 角で囲んだところに5本の柱を書いております。  1点目は障害者の福祉サービスの「一元化」です。  障害者関係の施策は、知的障害、身体障害、精神障害など細切れで縦割りになってい ます。これら3障害をあわせて一つの枠組みとし、一元化をするということです。身近 な自治体である市町村にサービスの提供主体になっていただいてサービスを充実する。  2点目は障害者がもっと「働ける社会」にということです。  障害者の方々は自分で稼ぎたいというご希望が強いので、福祉のサイドでもこれを応 援するようなメニューをきちんと盛り込んでいこうということです。これと併せて労働 行政のほうで障害者雇用促進法の改正が行われますので、福祉サイド、労働サイド両方 の施策を連携して、障害者が働くことを支援するということです。  3点目は地域の限られた社会資源を活用できるよう「規制緩和」を行う。  大規模な施設で収容型の生活ということではなくて、普通に町の中で障害者が暮らし ていけるようにしたいということで、小さい町や村でも身近なところにサービスの提供 拠点があるようにしたい。立派な建物でなくても、空き教室や空き店舗や民家を使うと か、サービスの提供主体も社会福祉法人だけではなく、NPO等々にも参入していただ く。地域にある資源を使って障害者福祉のサービスを供給していくということです。  4点目は公平なサービス利用のための「手続きや基準の透明化、明確化」です。  これまでの障害者福祉は支援費制度を中心にやっていましたが、市町村の担当のとこ ろから、どの障害者にはどれだけのサービスが必要かという物差しが欠けている、ケア マネが制度化されていない、支給決定等々について第三者が関与するという透明な仕組 みがない、これが今の障害者施策の大きな欠陥であるという指摘をいただいておりまし た。この点を改善したいということで、物差しの仕組み、ケアマネの制度化、障害の認 定や支給決定について審査会を設けること、こういった制度の強化をしたいということ です。  5点目は増大する福祉サービス等の費用を皆で負担し、支え合う仕組みの強化です。  在宅系のサービスが非常に増えておりまして、財源不足という問題が生じています。 これをきちんと支えて、必要な人に必要なサービスがいきわたるようにする。  (1) みんなで支えるということですから利用者にも負担していただくということで す。食費等の実費負担、利用したサービスの量や所得に応じて一定の定率負担を導入さ せていただき、そのための低所得者対策、激変緩和措置を盛り込みたいと考えておりま す。  (2) これまで在宅系のサービスについては国の予算は裁量的経費ということで財源措 置が不十分でしたが、今度の法律で国の負担も義務負担化することにしています。  以上の5つを改革の柱にした法律を今国会に提出したいということです。  法律の形式ですが、1ページの一番下のところにありますように、今までは法律が障 害種別に分かれていましたが、障害の種別に関係なく、ご自分が申請して福祉サービス を利用する、その部分については3つの障害と児童福祉を共通の1本の法律でやりたい と考えております。以上です。 (高井総務課長)  続きまして、雇用均等・児童家庭局の総務課長です。子ども・子育て応援プランにつ いてご説明させていただきます。資料2−3ですが、2ページをお開きください。  子ども・子育て応援プランにつきましては、昨年12月24日、全閣僚から成ります「少 子化社会対策会議」で決定されたものです。昨年6月の「少子化社会対策大綱」に掲げ る4つの重点課題に沿って、今後5年間の具体的な施策内容と目標を提示するというも のです。  5年間の計画ですが、少子化の流れを変えるための各般の施策がいかに進んでいるか ががわかるように、10年後を展望した「目指すべき社会の姿」を掲げ、それに向けて、 内容や効果を評価しながら、この5年間の施策を重点的に実施しようということです。  具体的な内容はその下にありますが、最近は若者の失業者が増えているとか、長時間 労働の風潮がなかなか変わらないとか、子育てサービスが十分に行き渡ってないという ことを踏まえまして、4つの重点課題に沿って5年間の目標を作っております。  1つは若者の自立とたくましい子どもの育ちということで、代表例として若年者のト ライアル雇用の充実の話が書いてあります。そのほか小・中・高等学校において一定期 間、まとまった体験活動を実施することによって若者の就業、自立について進めていこ うという内容です。  2つ目は仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しです。次世代育成支援の企業の行動 計画を作っていただく。個々人の生活等に配慮して労働時間の改善を図っていく。  こういうことによって、資料右側の目指すべき社会の姿として、育児休業の取得を促 進しようとか、子どもと向き合う時間を増やそうとか、長時間労働を是正しようという ことです。  3つ目は生命の大切さ、家庭の役割等についての理解、4つ目は子育ての新たな支え 合いと連帯です。これについては子育て拠点を増やすとか、待機児童ゼロ作戦をさらに 展開する。児童虐待防止ネットワークの設置などの内容です。  3ページ以降は本文ですが、詳細は省略させていただきます。  最後の29ページをご覧いただきたいと思います。検討課題と書いてありますが、昨 年、このプランを策定するにあたり、各方面からいろいろなご意見をいただいておりま す。  昨年作りました対策大綱とこのプランの中でも十分に捉えきれていない問題がありま すので、引き続き検討していこうということです。  社会保障給付の中で大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、次世代育成支援の 推進を図る。地域や家族の子育て支援、児童手当等の経済的支援など多岐にわたって検 討していくということを書いています。施策の推進と併せて、このようなことを検討し ていくということです。  次に資料2−4ですが、総合施設の「審議のまとめ」です。  1ページの上にありますように、中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童 部会の合同の検討会議を行いまして、12月末に審議のまとめができました。  昨年9月にここで報告させていただきましたが、従来の幼稚園、保育所に対して就学 前の教育・保育を一体とした総合施設をどう作っていくかということについてご検討い ただきました。岩男部会長に座長をしていただいて、まとめていただいております。  骨格については昨年9月に報告させていただいたところと変わっておりませんが、具 体的なことが入っております。1ページの下に対象者について具体的な記述が入ったと か、2ページですと教育・保育の内容について具体的な記述を入れています。さらに具 体的な詰めの必要なところもありますが、17年度にモデル事業を実施して、その成果を 具体的な設計の中に入れていくことにしています。17年度はモデル事業をし、18年度か ら本格実施を進めるという考えです。以上です。 (貝塚会長)  それでは、ただいま説明のありましたことについて、ご意見・ご質問がございました らお願いします。 (久保田委員)  介護保険制度、障害者自立支援、子ども・子育て応援プランについて一言申し上げた いと思います。介護保険の問題につきましては、私ども連合は5年前から、普遍的な制 度、すなわち年齢とか原因の違いを問わずに、介護を必要とする人を国民全体で支えて いくことが基本的な考え方ではないかというスタンスでおります。資料2−1の3ペー ジにありますように、法案の提出過程において附則が入ったということですが、あいま いな表現になっています。平成21年度に確実に実施するよう強く要望しておきたいと思 います。  2つ目は障害者自立支援法案についてですが、身体、知的、精神の3本立ての縦割り が今回の法律によって福祉サービス、公費負担医療、共通の制度のもとで一元的に提供 される仕組みが整うという点では、従来の障害者施策の大きな転換であり、評価をすべ きであると考えています。  ただ、障害者のお子さんを抱えている組合員から不安の声があがっているのも事実で す。応能負担から応益負担に転換するという考え方、障害者の1割の利用者負担、特に 公費負担医療の自己負担については十分な経過措置と激変緩和措置、低所得者対策をお 願いしたいと思います。保護される低所得者の範囲からちょっと外れる層が厳しい負担 を強いられると思いますので、実態を十分踏まえた措置をとっていただきたいと思いま す。  3つ目です。子ども・子育て応援プランにつきましては、少子化対策というのは国を あげての国策として欠かせないという認識は共通です。ただ、全体として総花的であっ て、決定打になるのかどうかわからないと思っています。労働組合の立場としては最大 の課題は働き方というところにあると考えています。男女が共同参画で、ともに働き、 家庭生活を共同で担っていくための労働環境の整備と実効性をどう高めるかというのが 非常に大事だと思うんですが、実態の把握とか分析が必ずしも十分ではない。そういう ことを推進しようという掛け声はあるんですが、法的な拘束力という点でも課題がある のではないかと思います。  重点をしっかり定めて、現実に実効性をどう上げるか。政・労・使、家庭も含めて真 剣に考えていく必要があるのではないかと思っております。以上意見です。 (渡辺委員)  先ほどの資料2−3の最後のページで、高齢者関係給付を見直して、もうちょっと児 童にあてるというのは個人的には大賛成です。高齢者関係給付は30年前は30%だったの が今は約70%になり、もっと増えていくと思います。今はあまりにも高齢者に偏ってい るため、年金に代表されるような世代間の問題が出てくると思います。これは極めて大 きなテーマなので見直すことは結構ですし、この審議会でも議論すべきテーマだと思い ます。厚生労働省としては、どの程度見直すといった目標値みたいなものをお持ちなん でしょうか。 (高井総務課長)  今のご質問に対して、すぐに答は持っておりませんが、国会等でも引き合いに出され るのがOECD諸国の社会保障給付に占める子ども関係の比率です。その時に桁が違う のではないかというお話もいただきます。諸外国の様子も見ていかなくてはいけないの ではないかと思います。 (矢野委員)  介護保険の問題については、介護保険部会で激しい論議がなされましたので、それを ここで繰り返すつもりはありませんが、今日提出された資料に基づき、大事な点だけを 申し上げておきたいと思います。  一番大きい問題は被保険者・受給者の範囲です。資料2−1の3ページにありますよ うに、社会保障制度全般の一体的な見直しと併せて、その是非を検討することになった わけですから、そういう方向で、これからの論議に我々も参画していきたいと思ってい ます。  介護を必要とする状況の発生の理由を問わずにという意味合いで普遍化という言葉が 使われ始めているのですが、はなはだ意味のはっきりしない言葉になっています。自動 車事故でそういう問題が起こります。労災事故でも同じことが起こるわけです。そうい う場合も一緒に入れようということなのかというと、そうではないと思います。自動車 事故は自賠責保険で対応したらいいし、労災事故は労災保険で対応したらいいと思って います。普遍化という言葉が歩きだしますと、例外はどうするのだということになって きます。響きのいい言葉なので誤解を招くと思いますので、この言葉の使い方について は、また、今後の文書の作成においても、気をつけたほうがいいのではないかと思いま す。  資料2−1の2ページに「予防重視型システムへの転換」とありますが、私どもも大 事なことだと思っています。これによって介護を必要としない状況が生まれることが大 事だと思うわけです。制度の趣旨にのっとって、介護給付が膨らんでいくような状態に ならないようにするという考え方が必要です。地域支援事業については、今まで市町村 の住民サービスで実施してきた事業を介護保険の枠組みに取り入れようとしているわけ ですが、仮に取り入れるとしても第2号保険料を使うのは理由がないと思っています。  3ページに戻りまして、第1号保険料の見直しについて書かれていますが、第1号保 険料は全体の18%です。公費を除けば、残りについては自動的に第2号保険料というこ とになってきます。これは論議の場もなくて、自動的に負担するという仕組みになって います。これはちょっとおかしいのではないかと思っていまして、サイレントマジョリ ティの意見を聞く場が必要ではないかと思います。保険料改定についての議論の場を設 け、その中で法定上限を決めておくなど、そういう配慮をすべきであります。税金を上 げるというのは大問題ですが、保険料については位置づけが軽すぎるのではないかとい う問題意識を持っておりますことを申し上げておきたいと思います。  障害者自立支援の問題について、現行の支援費制度には、節度のようなものが必要だ と思います。効率化・合理化の進行状況を見ながら、今後の在り方を考えていけばよい と思っています。  子ども・子育て応援プランの問題については、少子化対策のウエイトを今まで以上に 高める必要があると思います。高齢化対策についてはずいぶんやってきましたが、少子 化対策はちょっと足りなかったのではないか。国も地方公共団体も、また、財政的な面 でも規制の問題についても、もっと思い切った取り組みが必要ではないか、改革の必要 があるのではないかと思っています。企業のほうも相当努力して一緒になってやってい く必要があると思っています。そういう方向で、ここに書かれているもの以外でもいろ んな施策を具体化していければよいのではないかと思います。以上です。 (岩男会長代理)  介護保険に関してですが、介護保険の利用者がこれだけ大幅に伸びているということ は、ケアを提供する人材の必要数も大幅に伸びているということだと思います。厚生省 と労働省が一緒になって厚生労働省になられたので、人材育成についても配慮しておら れると思いますが、私のささやかな経験からいっても、予防重視型、自立支援型にもっ ていく時に、体力維持或いは体力回復の為に在宅へ訪問する理学療法士がすごく足りな くて、利用したくてもサービスを受けられないという状態があちこちで起こっていると 聞いております。  学生の就職の際に、介護関係の職場や特に理学療法士は穴場ではないかと勧めており ますが、そういう新しい雇用の場を開拓することと併せて、介護保険で人材の足りない 所での人材育成に力を注いでいただきたいというのが1点です。  2点目は、少子化対策については、個々に小さなことをしてもなかなかうまくいかな いので、もっと思い切ったことをしなければいけない時期にきていると認識しておりま す。男性の育児休業取得率10%という目標数値をあげておられるわけですが、先月、私 が未就学児の父親の調査をしました際にも、働き方の見直しの中で、どうすれば育児休 業をとるようになるかと尋ねましたら、育児休業をとる最短期間を決めて、それを強制 してほしい、そうしないと実効はあがらないという声が一番多かった。また、具体的に は、今どういう形で育児休業をとるといいと思うかと尋ねると、残業を1年間しないよ うな形で法的に整備をしてほしいという希望が強くありましたので、そういう方向でも 努力していただきたいと思っております。 (見城委員)  子ども・子育て応援プラン等も拝見しているのですが、現在、虐待によって死亡する 子どものニュースが相次いでおります。安全だと思ったから自宅や親元に帰した、そう したら死亡してしまったという事件が相次ぐ中で、「子どもを預かる職員の資質及び専 門性を向上させるための研修は重要である」とあるのですが、こういうところは早急に やっていただけないか。判断誤りでどうしてそのようなことになるのか疑問な点も多い のですが、少子化の中で大事な子どもが一人ずつ亡くなっていくということは大きなこ とだと思います。生活の中ではなかなか見えてこない部分でもあり、子どもは物言えぬ 状態ですから、職員の資質の向上と、具体的なチェック機構を検討できないかというこ とが1点です。  最近は母子家庭が急増し、しかも母子家庭の生活保護が増えているということを各地 で耳にいたします。子どもの生活の質が大変落ちてるということで、子育て支援という 大変いいプログラムがあるのですが、現実には非常に貧しい状況で子どもが育ってい く。  文部科学省等で今後の教育の一つの柱として食育ということが出ているのですが、厚 生労働省の子育て支援対策では食事の問題は考えておられないのでしょうか。小学校で 朝食を出すべきだと私は考えているんですが、どこまで支援して、どういった場所で自 立していただくかというところも具体的にこの中で審議できればと思っています。よろ しくお願いいたします。 (櫻井委員)  先ほど渡辺委員から社会保障給付が高齢者に偏っているのを、厚生労働省としてはど の程度見直すという目標値があるのかという質問に対して、諸外国を参考にしてという お答えがありましたが、社会保障給付そのものが日本は低いわけですから、高齢者の給 付を減らして小児に回すということはとんでもない話です。社会保障給付そのものを十 分に確保して、高齢者にも十分な給付をした上で、小児に対しても給付するということ で進まなければおかしいと思います。  介護保険の問題で、予防重視型を基本にというのはいいのですが、介護予防という言 葉はおかしいと思います。何年か前に老健局が介護予防という勝手な言葉を作ったので すが、介護予防というのはものすごく変な言葉です。要介護状態の人の悪化防止、要介 護状態を軽減するという意味と、もう一つは要介護状態になることを予防するという要 介護予防という二通りの意味に使われています。最初に作った時から私はおかしいと老 健局にいってきたんですが、ずっと改めなかった。今までは法律には使われなかったか らいいのですが、法律に書き込むのであれば、介護予防というのは日本語としておかし いから、きちんと直してほしいと思います。例えば、要介護予防とか、介護度軽減策、 介護度悪化防止策とか使い分けてもらいたい。介護保険部会で議論されないなら、社会 保障審議会総会できちんと議論すべきだと思います。 (貝塚会長)  それでは、次に「医療保険制度改革」及び「社会保険庁改革」の状況について、事務 局から簡潔に説明をお願いします。 (間杉総務課長)  保険局の総務課長でございます。資料3−1ですが、2ページに医療保険部会の開催 経過と今後の予定を書いております。星野委員に部会長をお願いして、これまでご議論 いただいてきましたが、いよいよ来年の通常国会に改革法案を提出したいと考えており まして、今年は正念場でございます。  私どもは一巡目と呼んでおりますが、そもそも高齢者医療とは何か、老年医療とは何 かということから議論に入りまして、それにふさわしい制度体系の在り方とはどういう ものだろうか、一つの柱である都道府県を単位に保険者を再編・統合していく、その意 義はどこにあるのだろうか、都道府県に具体的にどのような役割を担っていただくか等 々、議論を進めてきていただきました。  昨年7月、第9回においてこれまで一巡目の論点整理をしていただきまして、昨年秋 から二巡目として、まず保険者の再編から議論をお願いし、昨年は国保関係、三位一体 関係についてご審議をいただきました。  今年に入ってから、保険者再編・統合の中でも特に政管健保問題に焦点が当てられ、 総理官邸に設置された「社会保障の在り方に関する懇談会」において、社会保険庁の組 織形態の在り方についても議論されています。私どもとしては制度論としての保険者論 はいかにあるべきかという角度から議論を開始していただいたところです。  今後の予定にありますように、部会において春先ぐらいまでは保険者再編の問題につ いてご議論をお願いしたいと考えております。今回の三位一体改革で国保の改革はまだ 途上だと考えておりますし、さらなる安定化のためにどのような形がいいのか、それを 部会でご議論いただきたいと考えております。  もう一つの柱が高齢者医療制度です。春先から夏ぐらいまでの間に高齢者医療制度に ついてタイトなご議論をお願いしたいと考えています。夏には改革の全体像についてご 議論をお願いしたい。このようなペースで、年内になんとか改革法案を取りまとめたい と考えております。よろしくお願い申し上げます。 (宇野総務課長)  社会保険庁の総務課長でございます。資料3−2の「社会保険庁改革の進捗状況」を ご覧ください。 (山本委員)  すみません。私は時間がないので、もうこれで失礼しなくてはなりません。そこで、 どうしても申し上げておきたいことがありますので、一言で言います。私は混合診療は 絶対反対です。資料は読みました。読んだけれどそれでも納得できません。こんなばか げたことをやるというのは先進国日本の恥だと思います。  もう一つは、参考資料4に「三位一体に関する地方六団体提案」と書いてある。どう してこんなものを出したのか理解できません。我々地方六団体は事業を削減しなさいと 言っているのではないのです。地方へ移して地方でやらせてくださいと言っているので す。いかにも削減するように六団体が提案したというふうに受け止められがちな文章に なっているのです。こういうところに出さないようにしてください。そういうことを言 うのは厚生労働省だろうと思いますので、これは間違っていると思います。混合診療は 絶対反対です。それと、参考資料4の文章は間違っているということだけ申し上げて、 時間がきましたので、私は帰らせていただきます。恐れ入ります。 (宇野総務課長)  それでは、資料3−2の1ページの社会保険庁改革の進捗状況についてご説明させて いただきます。社会保険庁の業務改善メニューを中心とした緊急対応プログラムが最終 的に80項目になっています。それをベースにして、社会保険庁独自で改革に取り組んで いる事項を一覧に整理したものですので、後程ご覧いただければと思います。  2ページは市場化テストについてですが、社会保険庁の業務改善の一環として外部委 託の拡大を考えています。厚生年金保険、政府管掌健康保険の未適用事業所に対する適 用促進事業、国民年金保険料の収納事業、年金電話相談センター事業について、それぞ れの事業毎に社会保険事務所を5カ所、5カ所、2カ所ずつ選びまして、民間に委ねる という市場化テストをやることにしています。以上は事業面における改善です。  3ページですが、社会保険庁の組織の見直しについて、どういう議論が進んでいるか ということをご紹介したいと思います。  昨年末に開かれました第5回の「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」において 中間とりまとめをいただきまして、社会保険事業の運営主体に求められる基本的要素と して、資料の四角内に表示してあります8つの要素が示されました。この8つの要素を 踏まえつつ、独立行政法人化等公法人化すべきではないか、民間に委ねてはどうか、社 会保険庁の業務の一つである徴収業務を他の機関に移管してはどうかという議論も含 め、あらゆる議論を例外とせず幅広い検討を進めていく、こういうことが決定されたと ころでございます。  それを受けまして、今年の1月28日の第6回の社会保険庁の在り方に関する有識者会 議において、口頭了解が成されています。(1)現行の社会保険庁の存続を前提としない。 (2)国民の信頼を確保するためには、どのような組織とすべきかという観点を重視する。 これを議論の方針として、従来の検討スケジュールを前倒しして、3月に新しい組織の グランドデザイン(新組織の基本的骨格)をまとめようということで議論が進んでいま す。次回は2月末ですが、第7回目の社会保険庁の在り方に関する有識者会議におい て、座長メモが提出される予定です。  また、2.「社会保険庁をめぐる不祥事等に関する調査報告」というものを1月14日 に出させていただきました。様々な不祥事があったわけですが、組織に構造的な問題が あったのではないかと考えて自己反省をしております。組織の構造問題としては、内部 統制(ガバナンス)が不足していた。内向きで閉鎖的な組織体質になっているのではな いか。そこで、自ら抜本的な改革をしていかなくてはいけないという認識に立ちまし て、4つの改革の方向性を出させていただいております。以上が社会保険庁改革の現状 でございます。 (貝塚会長)  ただいまの説明について、ご意見・ご質問等がございましたらお願いします。 (久保田委員)  私は医療保険部会のメンバーに入っておりますので、この総会では、医療保険制度改 革の中身については申し上げませんが、国民の負担という観点から申し上げますと、公 的保険の給付範囲の見直し、その延長線上の議論、保険免責制度の導入等々、給付範囲 の縮小の動きというのは、経済財政諮問会議や規制改革等々からの流れが強いんだろう と思いますが、そういう点についてはもっと慎重に、社会保障のビジョンや理念をしっ かり背骨に一本通した議論をすべきだと思います。社会保障審議会の先生方の見識をも って、そういうことについても前向きな発言をお願いしたいと思っています。  私ども労働組合のサラリーマンの立場からしますと、抜本改革をするすると言いなが ら全部先送りにして、窓口負担は1割から2割、2割から3割と引き上げられています し、保険料のアップ、しかも総報酬制ということでボーナスからも保険料が徴収されて おり、けっこうな負担になっているということを前提に考えるべきではないかと思いま す。国民年金に加入していても将来どうなるかわからないから民間保険に入ろうかみた いな、制度そのものに対して国民が不信感を招かないような設計の在り方を議論してい くべきではないかと思っています。  増加する社会保障費の中で自然増というか、そういう問題で増える部分と、無駄を省 いた徹底したコスト意識を持った削減ということは別の話であり、構造的な問題を明確 に区分して議論をしてもらいたい。そういうことを全部ひっくるめて、上からキャップ をかぶせた議論というのはあまりにも乱暴すぎるし、本末転倒ではないかと思っていま す。医療保険制度だけの問題ではありませんが、意見だけ申し上げておきます。 (櫻井委員)  厚生労働大臣は、本日の挨拶の中で、委員の皆さんから忌憚のない意見を出してほし いと最初におっしゃって、3人の委員から意見があった後で、もう一度同じ事を繰り返 しおっしゃいました。貝塚会長も冒頭に活発に議論をしてほしいとおっしゃったし、資 料の説明の後にも委員に論議をしてくれとおっしゃっているのですが、時間がない、時 間がないということで、私は、言いたいことの10分の1も言っていないのです。また、 私の発言に対する議論もこの審議会で全く行われておりません。忌憚のない意見を出 せ、活発に議論をしろというのであれば、審議時間を延ばすなり回数を増やすなりし て、本当に実のある審議会の審議ができるようにお考えいただきたいと思います。 (京極委員)  私も同じ意見で、報告は報告で年に1回とか2回とか総会で行われるのですが、社会 保障審議会の運営の仕方について、会長と事務局で考えていただきたいと思います。 (貝塚会長)  個別の問題は各部会で相当な議論がされており、ここ最近は、その結果を総会の場で 説明するという進め方になっています。今度の新しい問題は、社会保障全体の問題であ りますから、それについて検討課題にしてほしいというご発言ですので、事務局とご相 談して考えたいと思います。 (北村委員)  介護保険も医療保険もどちらも制度改革という形で、それぞれの部会ができて審議さ れているんですが、医療サイドからみると同じ患者さんであるのに対象となる保険が変 更され、対象となる患者さんが行ったり戻ったりしている。保険のシステムを2つに分 けたことで、それぞれの負担が減ったように見えますが、社会保障全体のお金としては 全く一緒で、むしろ増加する可能性があります。介護保険を扱う老健局、医療保険を扱 う保険局、この2つの部会・部局から別々に報告が出されるのではなくて、総合プラン として、それぞれ合わさった報告が本審議会から出されるべきだと思います。  我々医療に従事する側としては、行っている内容も対象となる患者さんも介護とよく 似た点があります。医療側に入っている患者さんが介護側に回る場合もあるし、介護側 の患者さんが医療側に回る場合もあります。しかも、それを業として行っている事業主 は同一人物であることも少なくありません。病院を持ち、かつ介護保険を用いる施設を 経営しておられます。介護患者(要介護者)の中から医療対象の患者さんを見つけだし て、病院に引き戻して医療を提供しているということも、医療側としては情けない話な のですがよく耳にいたします。2つの制度改革は本質的には1つのものであるべきとい う気がしてなりません。この2つが合わさった報告というものもこの社会保障審議会に 出てくるべきではないかと思っています。 (貝塚会長)  私も介護保険部会で座長を務めさせていただいておりましたが、部会でも医療保険に 対してどの程度影響があるかということは、結局、数字的なことは十分に検討できませ んでした。その点は今後の課題だと思います。 (翁委員)  社会保険庁の改革について意見と質問とを申し上げたいのですが、意見としては、資 料に書いてありますように、きちんとしたガバナンスが発揮される組織を作っていただ きたいというのが一つと、いま一番大きな問題になっている空洞化の問題を解決するこ とが大きなポイントだと思っています。徴収をきちんと強力にやって、しかもコストの 低い方法でできるような組織にしていただきたいと思います。それと同時に、民間にで きることはアウトソーシングしていく。徴収を強力にすると同時に、民間にできること はアウトソーシングするという考え方でご議論いただきたいと思っています。  それから、これはお伺いしたいことなのですが、官邸において、社会保障の在り方に 関して一体的な見直しに取り組んでおられるということですが、そこでは年金制度の体 系の基礎年金の在り方等も議論になっていると思うのですが、それと今回の社会保険庁 の組織の見直しとは、どういった観点で2つの話を関連づけて議論しておられるのか、 お伺いします。 (小林次長)  社会保険庁の次長でございます。「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」という のは、官邸において官房長官の下、有識者会議という形で位置付けられているわけです が、年金制度なり医療保険制度なり各制度を通じた共通的な大きな議論をする場として は、「社会保障の在り方に関する懇談会」が運営されており、一方「社会保険庁の在り 方に関する有識者会議」では、実施庁である社会保険庁について、組織の在り方という 特命事項的な議論をする場として設置されております。  本体の制度論全体の問題なり議論の収斂ということと、それを実施する立場の実施庁 の組織の在り方というのは無関係ではありません。日々動いている社会保険事業を効果 的、効率的に実施するための社会保険業務組織の在り方について集中的にご議論いただ く場としての有識者会議において、この5月を目指して議論をさせていただいておりま す。制度論全体の議論が収斂していくことによって、また社会保険業務組織の議論への フィードバックもあるかと思いますが、有識者会議は社会保険の業務組織としてふさわ しい組織形態の在り方について、集中的に議論するための場として運営させていただい ているという状況でございます。 (渡辺年金局長)  官邸の社会保障の在り方に関する懇談会について申し上げる立場にはないかもしれな いのですが、社会保険庁の組織問題と社会保障制度全体の在り方、とりわけ社会保険庁 組織にかかわりの深い医療と年金のうちの年金の面で見てまいりますと、社会保障の在 り方に関する懇談会においては、年金に関しては年金の一元化というキーワードで様々 なご議論がなされ、12月に、それまでの各委員のペーパーを含めた様々な意見を中間ま とめとして整理をさせていただいたという経緯があります。  それらの中で、特定の意見に収斂したという状況ではございません。社会保険庁組織 との関連で申し上げれば、国民皆年金という仕組みについて疑念をさしはさむご意見が あったわけではない。国民皆年金という制度を維持していく上で、どのような実施庁の 組織がふさわしいのかという議論については、そういう前提に立って官邸の社会保険庁 の在り方に関する有識者会議で社会保険庁の在り方をご検討いただいてるものと考えて おります。社会保険庁の存続を前提としないという口頭了解をいただいておりますの で、幅広いご議論が必要かとは思いますが、国民皆年金を維持するという意味において は変化はないのではないかと、制度を立案する側からは見ております。  社会保険庁の組織の在り方という設定ですので、厚生年金保険、国民年金保険の保険 者の在り方ということを言っているわけではありません。わかりづらい言い方ですが、 医療保険と違って年金保険の場合、特に国民年金、厚生年金は法律をもって保険料率、 保険料額を規定しております。国権の最高機関たる国会みずからが保険者機能を発揮し ているという形ですので、保険者の在り方についてまで社会保険庁の在り方に関する有 識者会議におけるご議論が及んでいるという理解はしておりません。  以上、外枠の大前提を申し上げた次第ですが、国会の機能を含め、国が責任をもって 制度を企画・立案・運営していくという基本と、具体的な実施庁たる社会保険庁の組織 運営の在り方という問題を微妙に切り分けて、議論の整理をいただけるものと考えてお ります。 (貝塚会長)  アメリカでは95%の人が社会保険税を払っています。財政学者の評価は、最良の税制 であるということです。日本とは非常に違っています。源泉徴収か何かで税金に上乗せ して徴収しているのでしょうか。しかし自営業者もほとんどの人が払っています。日本 の実情とはだいぶ違うということです。  それでは、時間がまいりました。今日の審議会はこれで終わらせていただきます。  長時間、どうもありがとうございました。  (※ 追記、終了後) (沖藤委員)  本日は、初めての出席より発言する機会を失ってしまいました。是非とも、私が、 「子育てについては、女性の生き方支援を重点課題の中に入れるべきで、日本は、キャ リアアップ支援がないことが子育てへの制限を生んでいる。」ことを発言したかったこ とを記録に残しておいて下さるようお願いします。                                    −以上− 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159