05/02/02 労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会第3回議事録         第3回労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会                 日時 平成17年2月2日(水)                    13:00〜                 場所 中央合同庁舎5号館17階専用第21会議室 ○石野化学物質評価室長補佐  本日は、大変お忙しい中ご参集いただきましてありがとうございます。定刻になりま したので、「第3回労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」を開催いたしま す。本間委員はご都合によりご欠席、江馬委員におかれましては、若干遅れるとの連絡 をいただいております。  議事に先立ちまして、資料の確認をいたします。まず最初は、「第3回労働者の健康 障害防止に係るリスク評価検討会議事次第」です。資料No.1として「第2回労働者の 健康障害防止に係るリスク評価検討会議事概要(案)」、資料No.2「国が行う化学物 質等による労働者の健康障害防止に係るリスク評価について(再改訂案)」、No.3は 「リスク評価の結果に基づき講ずべき措置について(改訂案)」、No.4「ばく露関係 情報の届出について(案)」です。以上が資料ですが、お手元に別途環境省が作りまし たパンフレットの写し、「PRTR制度とは何か」という4枚紙のものを、参考として 置いております。以上ですが、よろしいでしょうか。  それでは前回に引き続きまして、櫻井先生に座長をお願いいたします。 ○櫻井座長  議事進行を努めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、事務局から前回の議事概要、資料No.1のご説明をお願いいたします。 ○石野化学物質評価室長補佐  時間の関係上、1〜3につきましては省略させていただきまして、4の概要を読み上 げます。                 (資料読み上げ) ○櫻井座長  ただいまのご説明について、何かご意見ございますでしょうか。                 (「なし」の声) ○櫻井座長  よろしいでしょうか。それでは、今日の議題に入りたいと思います。議事次第に従っ て進めさせていただきます。  最初は、資料No.2「国が行う化学物質等による労働者の健康障害防止に係るリスク 評価について」です。併せて、資料No.3「リスク評価の結果に基づき講ずべき措置に ついて」、両方前回指摘されたところについて、事務局から検討結果等あると思います ので、その辺りの説明から入りたいと思います。 ○石野化学物質評価室長補佐  ただいまの議事概要にもありましたが、指摘がなされた点について訂正した所をご説 明いたします。  まず、資料No.2の「国が行う化学物質等による労働者の健康障害防止に係るリスク 評価について」です。なお、訂正箇所に下線を引いております。順次説明します。  まず、資料No.2の7頁(3)のアの(ア)、8頁の(イ)に下線が引いてあります が、前回ご指摘があり議事録にもありますように、「作業は必要はない」という項目を 付け加えました。これは、9頁のフローチャートのほうにはあったのですが、本文の中 にその点を新たに付け加えたものです。(ウ)としまして、「許容濃度等、又は無毒性 量等が判定できない場合には、現時点ではリスクの判定はできないものとする」という 点に言及しました。  8頁のイの(ア)に下線がありますが、「総合的な判断を行う」。これは、以前は 「判定を行う」となっていましたが、「判定」という言葉ではリスクのあるなししか意 味しないこともありまして、リスクのある、なし、判断できないという3つの意味合い として、「判断」に変更しております。  7頁のいちばん上の行で、「3の(1)のイの(イ)の不確実係数10で除した場合に は、当該値をMOE算定に用いる無毒性量等とする」という所ですが、3頁のイの(イ )に不確実係数という項があります。無毒性量をいくつかの不確実係数で除した値があ るわけですが、無毒性量を不確実係数で割れば、厳密には無毒性量の定義から若干外れ るわけです。MOEを算定する際には、それを無毒性量等という形で再度意味づけして いる点です。  9、10頁のフローチャートです。これは議事概要でもご説明しましたが、許容濃度と ばく露レベルとの比較の点が落ちていましたので、「詳細な検討」の下線を引いた所に 入っております。右の枠のNOのところ、「現時点では作業は必要ないと考えられる (MOE>5)」の次に許容濃度とばく露レベルの比較を、また10頁では、発がん性の 場合のリスク評価の進め方を新たに付け加えました。  前回指摘はなかったのですが、事務局のほうで5頁の(ア)〜(カ)の順番を関連順 に並べ替えております。下線部は「換気設備等の設置状況による分類」ということで、 開放系で取り扱う場合、換気設備の設置状況をわかりやすく明示したものです。 資料No.2につきましては以上です。  次に資料No.3です。3頁の4の発がん性のリスク低減のための措置として(1) (2)とあります。4頁(3)はそれと比べて位置づけが若干違うわけですが、その意 味合いを明確にするために、留意事項として表題にしております。「人に対する発がん 性が知られている物質」等の表現を、(1)のアとイの表現は、IARCで言えば1と 2Aに対する表現ですが、同じ形に統一しています。  5頁の7は、前回は「リスクがないと判断されるもの」という表現になっておりまし たので、誤解のない形で、フローチャートにある、「現時点では作業は必要ないと考え られる等の場合」という表題にし、次の本文で「国が行うリスク評価において、『現時 点では作業は必要ないと考られる、または今後とも情報収集に努めるものとする』と判 断された場合でも」と表現を変更しております。資料No.2と3の変更の分につきまし ては以上です。 ○櫻井座長  以上、訂正箇所を中心として説明がありました。何かご質問やご意見がありましたら どうぞ。 ○和田委員  前回参加していなかったので議論されたと思いますが、資料No.2の3頁で、上のイ の「許容濃度等が存在しない場合」というのは、こういった情報等をただ収集するとい う意味で、許容濃度の場合は、当然ばく露期間や作業時間が8時間などといったことを 考慮して決めていますね。下の(イ)の場合、もちろんそういうものを考慮して決める ということでありますが、ただ動物から出た無毒性量だけをそのまま判断するのではな く、時間なども考慮してしようということですね。 ○櫻井座長  そのとおりです。 ○和田委員  下のほうの不確実係数のところで、この場合は人の研究であれば1でいいということ ですか。そういうことにされたわけですね。 ○櫻井座長  はい。 ○和田委員  普通、動物から出たもので判断する場合は、いままでは大体一般社会では10×10で100 でしたね。この場合は動物差だけで10を取って、個体差は取らないことに決められたと 考えてよろしいのですね。 ○櫻井座長  そうです。 ○和田委員  7頁、真ん中辺りの(イ)で「(ア)以外」とあります。この場合は、上が閾値がな いということですから、(イ)の場合は閾値がある場合、発がん性物質に閾値のあるも のがあることを前提にしておられるのですね。閾値がないということではなく、そうい う考えでよろしいのですね。 ○櫻井座長  はい。 ○和田委員  8頁の上から6行目に、1×10-4とありますが、これも一応合意された数字で、過剰 リスクはいままで10-5や10-6でやっていましたね。文書などだと-3乗でやったりしてい ましたね。 ○櫻井座長  一般人の場合ですね。作業環境ですので、10-4で。 ○和田委員  このくらいでいいだろうと、そういう合意に達したということですね。 ○櫻井座長  そうです。ほかに何かございますでしょうか。 ○加藤委員  先回聞き忘れたのかもしれませんが、5頁の(4)「ばく露レベルの把握」のアのと ころに作業環境の測定があるのですが、これは国や監督署から各企業が指示を受けて測 定するという意味ですか。 ○石野化学物質評価室長補佐  これは企業にしてもらうのではなく、実際は国が行う。具体的には委託で行うことと しておりますので、その委託先から企業に協力をお願いすることになります。 ○加藤委員  作業現場で測定するということですね。 ○石野化学物質評価室長補佐  はい。 ○櫻井座長  よろしいでしょうか。それでは、先へ進ませていただきます。  今日新しくご検討いただくのが、議事の(3)「ばく露関係情報の届出について」で す。これも事務局から検討のための案が出されていますので、2つに分けて説明してい ただくことにしたいと思います。資料No.4の1〜7頁、1〜4についてご説明をお願 いします。 ○石野化学物質評価室長補佐  まず全体の構成ですが、1が「趣旨」、2が「ばく露関係情報の把握方法の現状及び その課題」、3が「届出の対象物質等」、4が「事業者等の要件」、5が「届出項目及 びその必要性」、6が「届出の仕組みについて」となっております。  趣旨は3段落ありますが、第1段落では昨年度5月に報告された「職場における労働 者の健康確保のための化学物質管理のあり方検討会報告書」において、国によるリスク 管理を可能とするためには、事業場におけるばく露関係情報の把握が必要とされ、この ためには事業場における労働者の作業内容、作業従事労働者数、密閉系で使用する等の 作業環境等のばく露関係情報を収集、提供する仕組みが必要であるとされているところ です。  また、平成16年12月27日に労働政策審議会から厚生労働大臣に対して「今後の労働安 全衛生対策について」建議が行われました。この中の一部で、「国はリスク評価のため の情報収集を目的に、事業場における労働者の作業内容、従事労働者数、密閉系での使 用等のばく露関係情報を収集する仕組みを整えること」とされました。  このため、当検討会におきましては、未規制化学物質等を取り扱う事業者に対して、 ばく露関係情報の届出の義務を課する際の事業者の要件、届け出るべき項目等について 検討していただきたいということです。  2「ばく露関係情報の把握方法の現状及びその課題」、以下朗読いたします。                 (資料読み上げ) ○櫻井座長  ここまでのところでご質問、ご意見等ありましたらご発言ください。                 (「なし」の声) ○櫻井座長  ちょっと気がつきまして、小さいことなのですが、3頁のウ「取扱量」の1行目に 「対象事業場は上記の(ア)の結果からみて」とありますが、これは「下記」ですね。  では、先へ進んでもよろしいでしょうか。5と6を説明していただき、全体を含めて で結構ですので、何かお気づきの点があればということにしたいと思います。 ○石野化学物質評価室長補佐  5以下について読み上げさせていただきます。                 (資料読み上げ) ○石野化学物質評価室長補佐  次に、6頁からの別紙です。最後のほうに図がありますので、これを参照しながら説 明します。  1 届出の対象物質  (1)届出の対象となる物質は、労働安全衛生法第57条の2第1項において、労働者    に健康障害を生ずるおそれのあるもので、政令で通知対象物として定めている物    であって、特定化学物質障害予防規則等の特別規則において規制していないも    の。  (2)通知対象物又は通知対象物を重量の1%を超えて含有するもの。  最後の頁(図)の、真ん中のいちばん上にあるのが通知対象物です。  2 調査対象物質名の公表  (1)調査対象物質名の公表     国において、定期的に届出の対象となる化学物質の名称を公表することとす    る。  先ほどの図の左側の上に「国」「調査対象物質名の公表」とあります。  (2)届出の期間等     調査物質名が公表された後、一定期間内に各労働基準監督署に届け出る。  3 対象事業者の範囲  (1)業種 全業種  (2)規模 すべての規模の事業場  (3)範囲 届出の対象となる物質を、前年度の1年間に0.5トン以上取り扱ってい        た事業場  (4)届出項目(所定様式)    ア 事業場の名称等      事業場の名称、所在地、業種等    イ ばく露関係情報      ・化学物質の名称      ・用途      ・取り扱う物質の性状      ・取扱量及び労働者数      ・換気設備の設置状況等      ・作業形態、取り扱い時の温度等      ・作業時間  いちばん最後の図の右下の枠内が、届出項目の形になっております。  4 ばく露関係情報の取扱い  (1)国によるリスク評価、ばく露評価での活用、またリスク評価後、リスクありと    判定された場合の講ずべき措置の検討資料として活用  (2)必要に応じて、関係情報の提供  5 事業場における届出の手順例     対象となる化学物質を製造し、又は使用している事業場が取扱量を把握するため   には、次の方法が考えられる。  (1)化学物質を含有している製剤等について台帳等から確認する。  (2)MSDSを用いて調査の対象となる化学物質が含まれていること及びその含有    率が1%を超えていることを確認する。  (3)前年度の1年間の化学物質の取扱量を、台帳等から把握する。  (4)取扱量とMSDSから、前年度の調査対象化学物質の合計量が0.5トン以上の    場合には、所定の様式により国に届け出る。  いちばん最後の図は、ただいま説明いたしました件の流れ図です。左から、国が調査 対象物質を公表し、対象物質の中から調査対象物質を公表し、事業場が下の項目にある 当該物質を1年間に0.5トン以上を取り扱っている場合には、公表後一定期間内に監督 署へ届け出ていただくという仕組みの例です。以上です。 ○櫻井座長  ご意見、ご質問をいただきたいと思います。 ○福光委員  化学企業の場合に特に問題になるのは何をもって取り扱うかということで、原料は購 入する場合もあれば、自分でつくる場合もあります。つくったものが反応して途中で該 当物質がなくなる場合もあります。ですから、産業界ではどこをもって取扱量と言うか は大変難しいのです。PRTRのときにもこの辺りがかなり議論になりました。ほかの 業種の場合は、ただ買ったそのままのものを消費してしまうので問題はないのかもしれ ませんが、化学の場合、そこをどのように決めるかで作業がその工程ごとにかなり変わ ってしまうことになります。「そうすると、その量を全部調べるのですか」ということ になると、これは膨大な作業になってしまいます。そこを何か考えなければいけないの ではないかという気がします。 ○櫻井座長  事務局、何か考えはありますか。PRTRは、中間は通りませんでしたか。 ○福光委員  一応取扱量1トン以上という形ですが、その辺りが実際上はかなりぼやけてやってい るようです、私もあまり詳しくはわからないのですが。 ○石野化学物質評価室長補佐  取扱いについては、1頁の2のいちばん上に書いてありますが、製造又は使用するこ とを基本的に考えております。そういう量が0.5トン以上あることが明確にわかってい れば、あとは計算されなくてもよろしいのではないでしょうか。要するに0.5トンの所 を提出していただくかどうかだけの差です。また、計算などは、届出項目の所だけを提 出していただくことになりますので、PRTRのような計算は必要ないと考えておりま す。 ○福光委員  化学の場合、反応させるにしても、含有率は何パーセントのものを何トン反応させる などといろいろあるので、計算してみないとわからないのです。また、取扱量を作業形 態ごとに出すことになると、これは極めて難しいわけです。同じ窯で何種類もの反応を することになると、その反応物ごと、単位操作ごとの純度がいくつで何トンつくったか という記録がすべて揃っていなければできないことになります。そこが難しいのです。 ○石野化学物質評価室長補佐  リスク評価はばく露レベルが非常に重要なので、ここではばく露関係のところのみを 考えております。いわゆる密閉系で行われる工程についてはばく露の可能性は少ないの で基本的に必要ないと考えております。メーカーであれば、ばく露する作業はそれほど 多くない。例えばサンプリングをする、あるいはタンクローリーへの、運搬のときの注 入作業など、基本的にばく露作業として列挙してもらう方式を考えており、そういうば く露作業だけを取り上げてそれについて記載していただく。まだ決定しておりません が、反応工程すべてではなく、30から40程度の作業の中からそういうばく露作業を中心 に記載していただくことを、現在考えております。 ○福光委員  その場合、取扱量との関連がいつもあるわけですね。サンプリングであれば数グラム かもしれませんが、ある作業は取扱量としてはべらぼうに多いんですよと。化学の場合 は途中で出来上がったりするので、購入量といったものではないのです。そうすると本 来、単位操作ごとの量がわからなければ、ばく露量が推定できないことになります。 ○櫻井座長  製造の場合の具体的な方法は、少し知恵を集めて無理のない範囲でお願いしたいと思 います。 ○福光委員  そうですね、考えていただきたいと思います。 ○角元化学物質評価室長  量に関しては、工程ごとに量を算出するのではなく、まず、事業場としてトータルで 0.5トン扱っているかどうか、この報告に当たるかどうかということで、各工程ごとの 使用量を算出していただくことではありません。そこがPRTRなどと違うところで す。量の確定は、あくまでもこの報告の義務がかかるかどうかのためだけで、あとは当 該物の取扱工程に関してばく露状態はいかがですかと。そこは電卓も何も要らないので す。実態を書く、あるいは選択肢方式で、局排やプッシュプルなど該当のものに○を付 けていただくものです。  そういう意味で私どもも、そのプロセスフローを全部洗い出して膨大な手間をおかけ するようなイメージでは考えておりません。そこは、確かにPRTRを多少参考にして 製造設計をしておりますが、そのプロセスごとにいろいろ洗い出さなければならないの ではなく、ばく露実態だけを簡単にご報告いただければ結構なのです。そこはロードが 大きくかからないように、できるだけ簡単に私どもに実態を把握・調査させていただ く、そういう設計にしております。 ○福光委員  4頁の(イ)「取扱量の要件」で、その量はばく露と関係しているという書き方にな っています。そうすると各作業ごとのばく露量はそこの取扱量であると考えてそういっ たことを聞いたのです。 ○清水委員  変異原性試験も届出されることになっていますが、中間物も変異原性試験はするよう になっています。例えば、AとBという物質が反応してCという物質が出来ます。しか しそのCは中間物です。そこで労働者が次の何らかのステップでばく露するということ になると、Cも取扱量として報告するということですか。 ○石野化学物質評価室長補佐  最後のフローチャートを見てください。基本的に届け出ていただく物質名として、今 年度はこれを届け出てくださいという形で公示を考えております。ですから、その物質 名に該当するかどうかが第一義的にあると思います。  その対象となる物質は、施行令の別表第9に掲げる通知対象物質です。したがってそ れに該当せず、かつ0.5トン以上取り扱っていなければ、対象にはならないということ です。ですから、中間的に反応してできた物質で仮に該当するのであれば、やはり届け 出ていただくことになると思います。ただ、この対象物質は特殊な物質でなく世間一般 で大量に使われている物質、それと有害性が高いといったそもそものリスク評価の対象 物の範囲があるので、それにまず該当するのが第一要件です。もともとリスク評価は事 業場が自ら行うのが大前提となりますが、ただ、その中でただ今申し上げた要件に該当 するものについては国がリスク評価を行うという位置づけになっています。したがっ て、国が行うリスク評価の対象物についてもそういった選定の仕方をしています。 ○内山委員  確認です。混合物として含まれている場合の取扱対象物質は、発がん物質も含めてす べて1%以上ということですか。GHSのとおりにするというときには、発がん物質に 関しては、0.1%以上ですね。 ○角元化学物質評価室長  2頁の(2)「混合物の取扱い」に書いてあります。現状、私どものMSDSの交付 対象物質の裾切りが1%となっています。これは、MSDSがなかりせば該当の事業場 と言えどもその物を扱っているかどうかがそもそも知り得ないことになるので、国とし て、当然MSDSでその扱っている物を承知しているという前提で、これについては取 扱実態を特に届け出てくださいということです。まず、現状1%とは、現行制度に則っ てということです。  その項目の2行目以下に、GHSでは発がん性物質その他0.1%という別のレベルが 出てきています。これについては私ども、別途、GHSを取り入れた法令改正等を並行 して進めております。我が国のMSDS制度がGHS準拠になれば、結局そのMSDS のいっている所からまた報告をいただくということであれば、その暁にはスライドする ということになります。現状は、現行制度が前提で1%ということです。 ○内山委員  「同様の含有率の物を対象とするのが適当である」は、「GHSに沿って改正された 場合には」にかかるわけですね。 ○角元化学物質評価室長  はい。 ○内山委員  わかりました。 ○加藤委員  含有率0.5トン以上とは、私のイメージが少しずれているのかもしれませんが、例え ば10%入っているものの場合には10%の数量としての0.5トンですか。100%その物質の 場合。 ○石野化学物質評価室長補佐  100%として0.5トンです。例えば10%含まれていれば5トンになります。 ○加藤委員  掛け算をして、その言われている物質だけの量でいいわけですね。 ○石野化学物質評価室長補佐  そうです、純物質で0.5トンです。 ○加藤委員  商品として捉えるのではなくて。 ○石野化学物質評価室長補佐  商品であればそれに含有率を掛けた量として0.5トンを超えているか否かになります。 ○加藤委員  もう1つ、この1年前に遡ってという出し方ですが。ある程度大手の会社であればど ういう物をどのぐらい使っているかはわかるのでしょうが、これは規模に関係なく全業 種、3人であろうとお父さん1人でやっている作業場であろうと対象になるわけです ね。そういった所が急に「今回この物質が出ました」と過去1年間遡って出すように言 われた場合、その台帳をどこまできちんとつけているかは。その出たところから換算し て、いまから1年以上経ってから出しなさいというのは何となくわかるのですが、遡っ たものが出てくるかどうかは非常に疑問です。その辺はいかがでしょうか。 ○石野化学物質評価室長補佐  確かに小規模な事業場でそういった管理ができているかどうかは問題のひとつと思い ます。安全衛生管理体制の最少の規模の水準が10人です。確かにある程度の管理水準が 整っている所がデータの精度が上がるということはあります。  ただ、少なくとも1年間に0.5トン程度使っている所であれば、ほかの制度とも考え てばく露自体が危険なレベル、対象物はもともと有害性の高いものを取り扱うというの が大前提にあるので、理由のところで述べているような0.5トンが下限ではないかと考 えてそのようにいたしました。 ○角元化学物質評価室長  今たまたま確定申告の時期ですが、小さい企業といえども、どのような機材・資材を いくら購入してなど、帳簿は税務対策なり何なりで確実につけているはずなのです。い かなる中小企業といえども、ペンキをいくら買った、接着剤、溶剤をいくら買ったなど ということは、帳簿上、必ず追跡できるのではないかと思われます。  あとは、MSDSを突合してという、それができればなんとかなるのではないか。そ れでそこがきちんとうまくいくかという部分にかかってくるのだと思います。あと、制 度をどのようにそういう所までお知らせするかということになると思うのです。元の記 録が存在しないということは、企業という形を成してやっている以上、おそらくないの ではないかと思います。 ○櫻井座長  1月から12月ということですね。 ○角元化学物質評価室長  暦年がいいか年度がいいか、そこはまさに締めやすく報告しやすいという切り方があ るとは思うのですが。 ○加藤委員  どのぐらいの企業がいまMSDSを使ってやっているのですか。全業種、全部の事業 場にあるという前提ですね。 ○角元化学物質評価室長  MSDSについては、法定義務がかかっている化学品を製造する場合、取引のときに は必ずそれを添付して売るようにということです。あと、それを受け取った方がどの程 度活用されているかは、私どもの4年ほど前の実態調査でも、まだMSDSのことをご 存じない、あるいは活用具合がうまくないという実態も一方であるので、現状では必ず しもこの制度がきれいに100%うまくいっているということではありません。  ただ、MSDSと、そういった企業自らが事業活動としてつけている帳簿と、現場の 実態の3つをきちんと結びつけ、私どもでできるだけ手を煩わせないような形で書式設 定をすれば、制度としては中小企業対象でも十分に成り立ち得るのではないかと考えて おります。 ○櫻井座長  5頁の作業時間がちょっと気になっています。ばく露時間は、実際には8時間のうち 限定された時間だけばく露されるというケースのほうが多いであろうと思われます。し かしながら、この案で一応作業時間がばく露時間とほぼ同じと想定して作業時間を報告 してもらうという形になっています。そうすると、実質的には所定労働時間が1日何時 間というものが出てくるだけではないかなという気もします。いかがですか、うまくい きそうでしょうか。そうかと言ってばく露時間を推定して出してもらうというのは負担 がかかるとすれば、これはあえて作業時間を聞くこともないのではないかという気がし てきます。 ○内山委員  それは、通年使っているとは限らない場合もありますね。この製品が来た3カ月間だ け使った物質があるという場合ですとやはり作業時間は、1日8時間と記載されるかも しれないがそれを3カ月と。 ○櫻井座長  1年間の作業時間というような意味ですか。 ○内山委員  そういう記載形態になっているかは、そのようにすれば作業時間があればあったで意 味があるかなという気がします。 ○櫻井座長  1日の作業時間ではなく1年間の作業時間あるいは平均の1日の作業時間など、そう いうことでしょうか。何か難しいのですが、やはりあったほうがいいでしょうか。 ○内山委員  中小の事業場の場合は通年使っているとは限らないと思うのです。この製品は注文が きたときだけ、半年間だけ使ったなど。 ○岸委員  私ども、調査や労働安全衛生の相談などの目的でいろいろな事業場を多少回っている 経験から申しますと、作業時間はかなりばらばらです。例えば開放系でなく密閉系でや っているときには、1日のうちのごく一部の時間だけ実際にばく露するなどです。です から、作業時間を聞くのであれば1日に何時間ぐらいか、月にどのぐらいか、年間には どのぐらいかと、いま先生がおっしゃったことも確かにいろいろ季節性があるものもあ るので、それをお尋ねになるほうが。また、それは事業場でやっている人にはかなりし んどくて、かつ、簡単に答えられることだと思いますので。きちんと聞くほうがむしろ 情報としての価値があるのではないかと思います。 ○櫻井座長  それに関わる作業時間が何時間から何時間などと答えやすいようにしておいて、そこ に○を付けるなど、そういう感じですか。 ○岸委員  はい。 ○福光委員  従事者数は、同じ屋内作業場にいたらその作業をしていない人も対象にするというこ とですが、この辺りは同一作業場の定義をどのようにするかということになってくる と、またかなり。これは、完全に閉ざされた部屋という概念なのですか。 ○石野化学物質評価室長補佐  これは4頁の(4)のなお書きの所だと思いますが。ここで用いられている概念は、 場所における作業という形で粉塵則からきていますが、その概念を大体援用していると いうことです。要するに、まず発散源に直接従事している作業者、そしてその近くで作 業している人、主としてそういう人になります。要するに、ばく露するであろうと予想 される人です。ですから、その分については事業主の推測も若干入ってきますが、そこ はそういうばく露可能性の作業者を対象に人数を出していただくということを考えてお ります。 ○福光委員  では、各事業場にある程度お任せするということですか。 ○石野化学物質評価室長補佐  はい。 ○櫻井座長  先ほど加藤委員から1%のものを0.5トンという場合、実質的にその物質としては例 えば0.5トンの100倍を意味しているのですが、それは、これを読んだだけではどちらだ ろうかと思う人もちょっと多いかなという気がしています。 ○石野化学物質評価室長補佐  ある程度表現をわかりやすいように変更します。 ○櫻井座長  ほかに特段ありませんか。あとでお気づきの点があるかもしれませんが、今日見てい ただいて、それほど大きな議論点がなさそうで、おおよそこれでいいだろうという感じ でご議論をいただいたように思います。次回は一応3月18日に日程を取ってあります。 予定としてはそのときに報告書をご議論いただくことになっていましたが、事実上、報 告書(案)は今日のこの資料No.2、3、4を併せたものと実質的にはそう変わらない ものになるのではないかと思います。ですからあえてお集まりいただかなくても、事務 局と調整して一応私どもの段階で案を作って文書でご了解いただく、あるいは前の修正 もあり得るわけですが、そういう方向でよろしいでしょうか。加藤委員、福光委員、よ ろしいですか。 ○加藤委員  持ち帰って意見を調整したいと思います。「全部の規模に関係なく」というのが気に なっていました。私どもはさほど思っていないところがありますが規模によってはある と思いますので、その辺は確認させていただいたほうがいいと思います。 ○櫻井座長  その出てくるご意見によっては18日ということもあるかもしれませんね。それとも、 一応やるということにしておきますか。 ○石野化学物質評価室長補佐  開催を予定していただいて産業界の方から特段ないようであれば、特にないというこ とが明確になればご連絡しますけれども。 ○櫻井座長  私にいまご提案いただいたような文書でのものにする。 ○石野化学物質評価室長補佐  はい。 ○櫻井座長  それで検討すべき課題があれば18日に予定どおり。 ○石野化学物質評価室長補佐  規模に関係なくといったような所は気になるようですので。 ○櫻井座長  確かに、全部オーケーとも言いにくいだろうという。 ○石野化学物質評価室長補佐  そのような気がいたします。 ○古川化学物質対策課長  先ほど福光委員から取扱量云々という定義の話がありましたが、正直言って私ども も、まだ厳密にそこまでは考えていないのです。こういうものを示す場合には、当然も う少し精査してやらなければいけないと思います。ただ、石野化学物質評価室長補佐か ら話がありましたが、項目としてこういうものが必要かどうか、また、業種や規模など の話が出ましたが、そういう項目の所はある程度押さえておきたいという気持は持って いるのです。  そういう意味から、制度設計に係る部分ですのでできればその辺、これは業界マター でもありますし、やはり1回検討を願えればとは思っています。 ○櫻井座長  では、予定は予定どおりとさせていただきます。ご足労いただくこともあろうかと思 いますが、よろしくお願いいたします。 ○加藤委員  もし「所定の様式」に何かモデルのようなものがあれば、この文章だけよりも見た目 で、「これは大変だな、この程度ならできるかな」などとイメージがパッと湧くと思う のです。先生方にしろ、我々ユーザーやメーカーの立場ですと、それがいちばん気にな るところです。 ○古川化学物質対策課長  わかりました。 ○櫻井座長  議事に「その他」とありますが、事務局から何かありますか。委員から、特にご発言 はありませんか。では、本日の検討会を終了いたします。どうもありがとうございまし た。 照会先 労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室 TEL 03-5253-1111 (内線5512)