05/02/01 雇用政策研究会第6回議事録             平成16年度第6回雇用政策研究会                        日時 平成17年2月1日(火)                           18:00〜                        場所 厚生労働省専用第21会議室 ○小野座長  ただいまから、雇用政策研究会を開催します。本日の議題となっている少子化問題に 関しては、昨年の12月24日の少子化社会対策会議において、「少子化社会対策大綱に基 づく重点施策の具体的実施計画について」(子ども・子育て応援プラン)が決定された ところです。まずはその内容等について、雇用均等・児童家庭局総務課長から説明をお 願いします。どうぞよろしくお願いします。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  お手元の資料No.2「子ども・子育て応援プランの策定について」、その次に冊子 「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」、この2つを使っ てご説明したいと思います。  まず、資料No.2は策定の経緯です。1頁目は日本の少子化の現状、一貫して下がっ ているということであります。2頁目は主要先進国の出生率の推移です。ヨーロッパの 中でも北欧やフランス、あるいはドイツ、イタリアのような例があるというのはご案内 のとおりです。  3頁目はこれまでの少子化対策です。1.57ショックが平成2年にあったわけですが、 平成7年度からエンゼルプラン、平成12年度から新エンゼルプランを作り、計画的に保 育関係事業を中心に目標を掲げて整備等を進めてきているわけです。3頁にありますよ うに保育所の入所児童数、延長保育、その他関連の事業、育児休業制度等について目標 に掲げて整備を進める、あるいは受入れを進めるということが進んできています。  4頁はこれまでのプランについていろいろと指摘を受けたものを書き出したもので す。1つは働き方の見直しに関する取組が進んでいない。その次にあるように、子育て 期にある30代の男性の4人に1人は週60時間以上就業している。世界的に見ても、男性 の家事・育児に費やす時間が少ないということが言われていますし、育児休業のことも 言われています。  大きい2つ目は、子育て支援サービスがどこでも十分に行きわたっている状況にはな いということで、保育サービスの拡充を図っていますが待機児童がまだ存在する、在宅 で育児を行う家庭の子育て負担感が大きいというご指摘がありました。あるいは、こう いう問題点が認識されてきているというご指摘がありました。  3番目には、若者が社会的に自立することが難しい経済状況であるということで、こ こに書いてあることが起こっています。  いちばん下にあるように、子どもを生み、育てやすい環境整備が進んだという実感を 持つことができないのではないかということを踏まえて、次のステップを取る必要があ るということに至ったわけです。  5頁からはまた別の経緯です。平成14年1月に新しい人口推計を作った際、これから さらに少子化が進むという推計があり、ここに書いてありますように「少子化社会対策 基本法」や「次世代育成支援対策推進法」というものを国会に提出、昨年7月に成立い たしました。これに基づきまして大綱を作る、プランを作る、あるいは地方公共団体や 企業において行動計画を作るということを進めてきているわけです。  6頁が、少子化社会対策大綱です。昨年6月の少子化社会対策基本法を受け、政府で 決めたものでございます。これまでの指摘、問題点を踏まえて、3つの視点と4つの重 点課題を書いています。3つの視点としては、若者の自立が難しくなっていることから 自立への希望と力を考えよう、次は、子育ての不安と障壁を除去しよう、あるいは子育 てについて、地域や家族のきずなをはぐくんでいこうという視点から4つの重点課題と いうものを立てています。1つは若者の自立とたくましい子どもの育ちとし、先ほどの 就業困難を解消するための取組等の課題を与えているわけです。2番目が、仕事と家庭 の両立支援と働き方の見直しということで、のちほど詳しくご覧いただきます。3番目 は生命の大切さや家庭の役割についての理解を深める。4番目には子育ての新たな支え 合いと連帯という、4つの重点課題を受け、今回プランを作ったというものです。  今回、ねらいをいくつか挙げています。大綱決定に沿ってプランを作ろうということ で、5年間の具体的な施策内容と目標を提示しています。次の※にあるように、これま では保育関係事業を中心に目標が設定されていましたが、若者の自立や働き方の見直し 等を含めた幅広いものにしていこう。あるいはきめ細かい地域の子育て支援や児童虐待 防止など、すべての子どもと子育てを大切にした取組にしよう。2つ目の○にある10年 後を展望した「目指すべき社会の姿」を提示することにより、「子どもを生み、育てる ことに喜びを感じることのできる社会」にどう進んでいるのか分かるようにしていこ う。あるいは、各市町村の行動計画を踏まえた形の計画にしていこうというのが今回の ポイントになっています。  冊子のほうは項目を中心にご覧いただきたいと思います。1頁目が趣旨、2頁目から が先ほどの4つの重点課題に沿って、具体的な目標を設けたものであります。  2頁目からは、若者の自立とたくましい子どもの育ちで、1つは若者の就労支援の充 実ということです。教育段階から職場定着に至るまでのキャリア形成、就職支援という ことで、そこに初等中等教育段階におけるキャリア教育の推進、下には若年者試行雇 用、日本版デュアルシステムの推進ということで、目標値を掲げられるものは掲げてい ます。3頁目にあるように、目指すべき社会の姿として、若年失業者の増加傾向を転換 するという目標を掲げています。  そのほか、(2)に奨学金事業の充実とあります。勉学を希望する者が機会を失うこ とがないようにする。あるいは(3)、体験活動を通じて豊かな人間性の育成を図ろう ということで、4頁目にあるようにボランティアなど、いろいろな活動を通じて地域社 会の基本的なルールや感性、社会性を身につけた、意欲にあふれた若者が成長できるよ うにしていこうということを盛り込んでいます。そのほか、5頁では子どもの学びの支 援ということで、学校教育の充実について支援をしていこうというものです。  6頁からが大きな2番目、仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しです。職場優先の 風土を変え、働き方の見直しを図り、男性も女性もともに個性と能力を発揮しながら、 子育てにしっかりと力と時間を注ぐことができるようにするという目標のもと、(1)に あるように企業の取組を一層推進する。一般事業主行動計画の策定について、大企業は 100%、中小企業は25%を目標にしていこう。あるいは法律に基づき目標を達成した企 業を認定し、計画策定企業の20%以上を目標にしていこう、ということを掲げていま す。そのほか、ファミリー・フレンドリー企業は3倍以上の増加を目標としています。 また、7頁に育児休業制度の取組の推進ということで、就業規則の規定などが掲げてあ ります。  (3)が男性の子育て参加の推進です。先ほどの認定企業、男性の育児休業取得に実績 がある企業20%以上を目指そう。また、(4)にある仕事と生活の調和のとれた働き方の 実現ということで労働時間の関係。それから8頁、2つ目にあるような長時間にわたる 時間外労働の是正について1割以上の減少を目指そう。年次有給休暇の取得促進といっ たことを掲げているところです。そのほか、多様な働き方についても8頁の後段に記述 をしています。  9頁、(5)にあるように、安心して妊娠・出産し、働き続けられる職場環境整備があ ります。また、(6)にありますが再就職等の促進ということで、育児のために退職した 場合でも再就職できるような、いろいろな支援をしていこう。10頁には「両立支援ハロ ーワーク」の支援ということも書いています。そういうことにより、10頁の下にあるよ うに、育児休業を男性10%、女性80%を目指していこう。2つ目の◇にありますが男性 も家庭でしっかりと子どもに向き合う時間を持ち、先進国並みに時間を取っていくよう にしよう。10頁の下から3つ目の◇ですが、育児期にある男女の長時間労働が是正され ることを目指していこうではないかということを書いています。  11頁が大きな3つ目、生命の大切さ、家庭の役割の関係です。小さいころから子ども とふれあうような機会を捉えることによって、家庭の大切さを考える機会が持てるよう に、ふれあいの事業等を行っていこうというものです。  11頁の下、4は、子育ての新たな支え合いと連帯です。(1)は地域子育て支援の展 開ということで、働いている、いないにかかわらず子育て支援をしていこう。12頁にあ るように、いろいろな子育て拠点の整備を進めていこうということが書いてあります。 12頁の下のほうには就学前の教育・保育の充実ということで、幼稚園と保育所の連携、 総合施設の制度化などを13頁にかけて書いています。13頁の(3)は地域住民による子育 て支援の促進ということであります。  14頁(2)は、保育サービス等の充実ということで「待機児童ゼロ作戦」のさらなる 展開、あるいは放課後児童対策の充実ということを引き続き目標値を設けて進めようと いうものです。15頁(3)は、多様な保育サービスの充実を掲げています。  16頁の(4)は、特に支援を必要とする子どもとその家庭に対する支援の推進です。 (1)として昨今言われています児童虐待防止対策の推進のため、予防からいろいろな対 策まで目標値を入れるということであります。18頁は母子家庭等、ひとり親家庭の支援 の推進、あるいは(3)では、障害児等への支援の推進ということを掲げています。19頁 の下にありますように、児童虐待により、子どもが命を落とすことがない社会を目指そ うではないかということを掲げています。  20頁から22頁にかけまして、小児医療、母子保健関係のものがありますが、時間の関 係で省略させていただきます。  23頁の(6)、子育てに安心、安全な住まいやまちづくりをということで住宅の関 係、23頁の下からは子育てバリアフリーということで、建物などいろいろな場所でのバ リアフリー、あるいは心のバリアフリー化を進めようということを掲げています。  最後に26頁、27頁にかけてですが、26頁の(7)で経済的負担の軽減と書いてありま す。大綱を受けたプランですので、税制のあり方について記述しているところなのです が、プランについてもう少し検討課題があるのではないか、という各方面からのご意見 を受け、27頁にあるように、社会保障の枠にとらわれることなく、次世代育成支援の推 進を図る。また、下から3〜4行目に書いてありますが、地域や家族の多様な子育て支 援、働き方に関わる支援、児童手当等の経済的支援など、多岐にわたる施策について、 そのあり方を幅広く検討すると入れるべきではないかというご意見を受け、引き続きこ ういうことを検討していきたいという意味の表現を入れました。以上です。 ○小野座長  ありがとうございました。いまの説明について、質問等がありましたらどうぞお願い します。 ○八代委員  前回出席していないのですが、少子化問題は今回が初めてということでよろしいので すか。前回も同じ議論だったのでしょうか。 ○小野座長  最初のときにやりました。 ○八代委員  いまご説明いただいたさまざまな政策というのはいずれも重要なものなのですが、少 子化対策というか、少子化の問題と絡めて考えたときには、まず何が少子化の基本的な 原因なのかという要因を明確に捉えなければ、無差別に弾を撃っても当たるかどうかわ からないわけです。その意味ではいちばん基本的ですが、いただいた資料No.2、「少 子化の現状」というところで、なぜ出生率が下がってきたのかといういちばん大きな原 因を特定する必要があるのではないかと考えるわけです。  例えば、前の厚生省の人口問題審議会などでもさんざん議論されてきたわけですが、 やはり昭和22年から昭和40年ぐらいまで、4.32から2.1まで下がった原因と、その後、 例えば昭和50年からいまに至るまで下がった原因というのはまず違うのではないか。最 初のほうはやはり産業構造の変化等、あるいは優生保護法などいろいろな原因で自営業 の比率が下がることによって、子どものニーズが自営業とサラリーマンでは基本的に違 いますから大きく産業構造の変化によって変わった。  しかし、それ以後の落ち方というのはサラリーマンの中で婚姻率が下がったり、ある いは結婚した人の子どもを持つ率が徐々に下がってきている。これが人口学的要因だと したら、ターゲットとすべきものは昔の話ではなくて、まさに昭和50年以降、じりじり と下がっていることの要因は何かということを特定する必要があると思います。そのと きに、ご説明の中であまり強調されなかったのですが、経済学的な少子化の説明として 最も用いられるのは機会費用の高さです。つまり女性が働くことと子どもを持つ、育て ることとが両立し難いという説明は間接的にあるわけですが、より直接的に、子どもを 持つことによって母親がフルタイムで働けなくなる。あるいは仕事を辞めざるを得なく なる。それが生涯において、莫大な機会費用となってくるので、子どもを持つことのメ リットを相殺してしまうことが一般には分析されているわけです。  そういう形で考えると、いちばん大事なのは機会費用をいかにして下げられるかとい うことに集中すべきであるわけです。それはやはり、働き方の見直しということにつな がるのではないか。特にここにあるような、何が問題で働くことと子育てが両立できな いかというと、いまの日本の雇用システムそのものにある。要するに誰の抵抗もなし に、誰の損もなしに少子化対策ができるという幻想をやめるべきである。少子化対策を するためには必ず何らかの犠牲というか、問題が起こる。そのトレード・オフを踏まえ た上で少子化対策をすべきであって、その犠牲を極力少なくする。そのような明確な認 識なしに、ただ出来ることをやりましょうといったら効果が少ないのは当たり前ではな いか。何が少子化対策の犠牲になるか、ということをピンポイントで示す必要がある。 それがいまのご説明ではあまり出来ていないのではないか。人々の意識を単に変えれば いい。夫がもっと子育てを手伝えばいい、という意識論になってしまっているのではな いか。  例えば、結婚している男性の4分の1が週60時間以上働いているから子育てができな いというご指摘がある。それは全くそのとおりなのですが、なぜそうなのかといったら 日本的雇用慣行というものがもともとそうなっているわけです。つまり、日本的雇用慣 行の暗黙の前提は夫がフルタイムで会社のために働き、その代わりフルタイムの専業主 婦が子育てをするという、明確な役割分担の下に出来上がっているわけです。そういう 契約で企業は家族ぐるみで雇用を保証しているわけです。その中で女性が働き出したと きに、少子化対策のために夫はもっと働く時間を短くしろ、転勤はやめろなどと言え ば、やはり日本的雇用慣行の暗黙の前提自体が狂ってしまうわけです。その意味では、 日本的雇用慣行というのは暗黙のうちに男女の固定的な役割分担を前提にした上で、男 性に徹底した企業内訓練を与え、それを企業が十分活用するために、言わば自由な配置 転換、慢性的な長時間労働というものを契約のパッケージの1つとしているわけです。 それは何らかの犠牲なしには変えられないわけです。  大事なのは、少子化対策のためにどういうコストを払うべきかをきちんと認識しない と、いつまで経っても効果的な少子化対策はできないのではないか。敵を知らなければ 敵に勝てないわけです。残念ながら、そのような認識がいまのご説明には欠けているの ではないかというのがとりあえずのコメントです。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  プランの説明を短時間でと思いましたので、このようになってしまい恐縮です。原 因、あるいはその背景というものはいろいろなところで言われています。例えば昨年だ と、政府で『少子化社会白書』というものを出しています。そこでは少子化の原因は晩 婚化、未婚化、夫婦の出生力の低下などがいわれています。さらにその背景は何かとい うことで、いま八代委員が言われたように仕事と子育てが両立できるような環境整備の 遅れ、高学歴化、あるいは子育ての負担感の増大、経済的不安定さの増大等、いろいろ 要因が分析されています。諸先生のおっしゃいました点も大きいものと思います。その 点はまた別のところで説明しないと、説得力がないというのもおっしゃるとおりだと思 います。我々としてはそのような背景、原因を踏まえた上で、このプランを作ったとい うことを説明していかなければいけないと思った次第です。 ○勝田雇用政策課長  もしよろしければ、ほかの資料を用意しています。妊娠・出産した場合の問題などを 含めて、雇用・労働とのかかわりが強い資料No.3として用意しています。これの説明 を先にさせていただいて、ご議論をさらに深めていただいたほうがよろしいかと思いま す。 ○小野座長  お願いします。 ○中井雇用政策課長補佐  八代委員からいろいろご指摘があったことも関連するようなデータが出てまいります ので、引き続き資料No.1、資料No.3について説明させていただきます。まず資料No.1 は論点ということで、毎回お示ししているものです。本日はそのうち3頁(3)、今後 の雇用労働政策のあり方についての(3)の少子化対策に関する政策の関連でご議論いた だきたいと思います。よろしくお願いいたします。  資料No.3の説明をいたしますのでご覧ください。少子化問題等に関する資料という ことですが、まず1頁は先ほど説明があった「子ども・子育て応援プラン」の中で、少 子化の流れを変えるために雇用・労働面で改善すべき事項として挙げられているものを 列挙しています。その次の頁からはそれぞれ関連の資料をお付けしていますので、順に 説明していきたいと思います。  まず1頁目の最初の○、「若年者の不安定な状況を改善し、経済的な自立を促せない か」についてです。これは資料の2頁をご覧ください。若年者の雇用問題ということで 簡単に整理した資料がございます。全体的な失業率が高いことやフリーターが増加して いるという不安定な雇用状況。それから、未婚の理由として「金銭的に余裕がないから 」をあげる者の割合が非常に高く、特にパート・アルバイトで高くなっているという現 状が示されています。  1頁の次の○、「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しをどう進めるか」の関連で すが、このうち最初の黒ポツ、「育児期の男女の長時間労働を是正すべきではないか」 ということについては、まず3頁に子育て期における長時間労働の実態が、例として男 女それぞれ示されています。特に男性、女性が働き盛りにおいて、週60時間以上労働す る割合がだんだん上がってきているという点が示されています。次の4頁、両親の帰宅 時間ということで、特に男性においては午後10時以降に帰る者の割合がかなり高くなっ ていることも示されています。  1頁の2番目の○の黒ポツの2つ目、「男性の家事・育児への参加を促せないか」に ついては、5頁に夫と妻の家事関連時間の表があります。これを見ると、妻が有業、無 業である場合、いずれと比較しても男性の家事関連時間は極めて短いという現状があり ます。  次の黒ポツ、「有給休暇、育児休業の取得促進、子育て期間中の勤務時間短縮等の措 置の普及促進をどう進めるか」については、まず6頁に年次有給休暇の取得率が低下し ているという現状を、それから7頁、労働者の7割が年次有給休暇の取得にためらいを 感じているという現状とその理由が示されています。8頁では男性の育児休業の取得率 が低水準であるという実態が、また、9頁においては、育児休業が利用できたのに取得 しなかった理由がそれぞれ男女別に示されています。10頁は育児と仕事の両立を図るた めの措置の状況です。これを見ると、育児のための勤務時間短縮等の措置の実施、ある いは看護休暇制度が少ないという状況があります。これは少し古いのですが、2002年の 時点で示されています。11頁、子育て中の仕事の悩みということで時間の調整ができな い等、労働時間の問題が悩みとして示されているという状況です。  1頁に戻って次の黒ポツ、「育児で離職を余儀なくされる者をどう減少させるか」に ついては、12頁に、結婚および出産・育児により、離職する者の割合の推移がありま す。低下傾向ではありますが、依然として2割は結婚などの理由により離職していると いう現状があります。13頁、妊娠・出産を理由とした解雇等の個別紛争解決援助件数が このところ増加しているといった現状が示されています。14頁はアンケートの結果で す。働き続けるために必要なことについて、仕事内容とともに、子育てしながらでも働 きやすい制度や社風の割合が高くなっています。なお、15頁ですが、第1子の出産前後 での母の就業状況の変化が示されています。出産1年前では7割以上が有職だったもの が、出産1年後には有職は3割強まで低下しているというものです。その背景として16 頁にあるとおり、理想のライフコースとして専業主婦を考えている方が約2割いるとい うこともあります。一方、両立することを理想のライフコースと考える人が28%いる反 面、予定で考えるときには18%まで低下するということで理想との差が最も大きくなっ ている状況があります。  また、1頁に戻って次の○、「育児が一段落した後の円滑な再就職を促進すべきでは ないか」については、必要な支援策として女性側から考えられているものとして17頁に まとめています。保育施設、再就職などの情報提供、あるいは一時保育などが上位に挙 がっています。また、そういったことも含め、働き方の多様な選択肢を整理するべきで はないかということが今後の課題になってこようかということで資料を整理いたしまし た。  なお、18頁には当研究会において、少子化に関してこれまでいろいろご議論、ご指摘 があったものを整理していますので、参考にしていただければと思います。さらに19 頁、20頁は、少子化に関しての日本経団連と連合の意見を報告書等から抜粋をしていま す。経団連も2003年に出した報告書から、2004年の12月に出された報告書では少し踏み 込んだ内容になっているのではないかと思います。連合のほうでは、やはり長時間労働 についての指摘がかなり多く載っています。  21頁以降は参考資料になります。先ほど、出生率の国際比較の資料が資料No.2にあ りましたが、その関連の部分の概要ですのでご参考いただければと思います。また27頁 以降は、少子化に関するその他資料ということで、議論の参考になればとお付けしまし た。各々について細かい説明は省略しますが、出生率と就業率、労働力率の関係につい ての分析、あるいは未婚率や初婚年齢の推移、出生児数に関する資料、少子化対策とし て期待する支援。36頁、37頁は子どもがいる世帯といない世帯、高齢者世帯の所得の比 較です。また、教育費などについての資料も用意いたしましたので参考にしていただけ ればと思います。  資料の説明については以上です。お手元にこれまでの資料もお付けしていますので、 適宜ご参照いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○小野座長  どうも、ご苦労様でした。たくさんの要因が指摘されました。先ほど八代委員から、 現行の雇用システムが根っこになっていて、そこから長時間労働というものが出てく る。働き方の見直しもなかなか出来ない、出来難い。それが少子化に結びついてくると いう議論かと思います。  いま、たくさんの要因が指摘されました。これは先ほどの八代委員の議論と結びつく ところがあります。子育て期に長時間労働があった、両親の帰宅が遅い、有給休暇の取 得率が低い、あるいは円滑な再就職ができないこともおそらく長期雇用システムと関連 していると思います。  もちろん、それ以外の要因も指摘されました。雇用政策研究会の初回でも、なぜ出生 率が下がったのだろうかということでいろいろ議論しました。重複するような議論でか まいません。お気づきの点がありましたら、どうぞ遠慮なくご指摘いただきたいと思い ます。 ○小杉委員  八代委員のご意見に賛成です。しかし、いまや全員が働き始めたとおっしゃいました けれども、もう1つ、若い男性が雇用契約に入れなくなった、そこがまた大きなポイン トだと思います。卒業後1、2年、フリーターであった人の結婚率が低い、出産をしな いという傾向が指摘されています。一方で日本型雇用慣行において、入口から入れない 男性たちが出てきた、これが大きな転換点だと思います。これについてどういう対策を 取っていくのか。これをこれまでの日本型雇用慣行の中に収めるような方向に持ってい くのかどうか、ということが大事だと思います。ただし、女性の参加の問題もあります し、それでは収まらない。これまでの雇用慣行の中に吸収しろという議論ではなくて、 これまでの雇用慣行とほかのバイパスを付け、違うキャリアを作っていくという方向で 議論しなくてはいけないのではないかと思います。 ○小野座長  その点はいかがですか。 ○八代委員  全くそのとおりです。 ○小野座長  少子化の原因には、日本型雇用慣行があるということですが、八代委員のご意見も、 いままでの雇用慣行の中に取り込んでいくという発想ではないように思います。 ○小杉委員  はい。 ○八代委員  ちょっと補足させていただくと、これまでの雇用政策というのはどちらかというと日 本的雇用慣行をベースに、それを政府が支援するという考え方でできていたと思いま す。とにかく企業に雇ってもらう、あるいは企業に職業訓練をしてもらう。そのために 政府は何ができるかという発想でやってきました。いま、小杉委員がおっしゃったよう にそれでは非常に無理な状況になってきている。それであれば、やはり日本的雇用慣行 と代替的、あるいは補完的な仕組みを作っていくというのが大事である。それが職業訓 練というように簡単に書いてあるのですが、その職業訓練というのは、やはりこれまで の日本的雇用慣行をベースに考えていた職業訓練ではなくて、もっとマーケット・ベー ス、民間の人材ビジネスなどを中心に置いたようなものになるのではないかという政策 につながるかと思います。それが女性や若年者などの訓練をやっていくための1つ大き な鍵になる。  さらに言えば、派遣という働き方も日本的雇用慣行から見れば悪い働き方であるとこ れまで規制されてきたのですが、ある意味で全く未熟練の人にまず訓練を受けさせると いう、1つのとっかかりと考えれば派遣会社がやってくれる訓練もそれなりに貴重なも のです。だから、どちらの立場から見るかで、これまでの雇用政策もずいぶん見方を変 えてこなければいけないのではないかと思いました。それが少子化対策にもつながって いくと思います。 ○大橋委員  私も八代委員のように、少子化の問題についての議論はいくらしてもし足りないので はないかと思います。特に少子化の問題は今世紀最大の問題ではないかと思っておりま す。ただ、少子化大綱の読み方ですが、最初に「自立する若者」という議論が出てい て、一瞬、「あれ、ストレートにわからないな」と思えるのです。ただ、よく考えると 2つ考え方があって、1つは先ほど八代委員が言われた子どもの機会費用の問題。もう 1つは、子どものメリットが小さくなってきたのではないか。そういう点では子どもを 育てやすいとか、立派に子どもが育つとか、そういったことは1つのメリットです。だ からメリットのほうからこの大綱は入っていけるなと私は読んだのです。機会費用もも ちろん大事ですが、子どものメリットが特に小さくなってきたことも大変大事だと思う のです。  まず子どもが優秀かどうか、あるいは、出来のいい子どもができるかどうかというリ スクもある。出来のいい息子ができたと思ったら全然親元にいない。転勤転勤でいろい ろな所を回りっ放しだ、親の死に目にも来ないと。そう点でメリットも感じていない。 メリットのところで最初の議論が出てくるのですが、ストレートにいかないなという気 はします。  大事なことは、少子化がいかに深刻な問題かについて十分に説得できる議論をするべ きではないか。というのは1.57ショックや1.3といった議論が出てきます。これは何と なく皆さんは漠然と考えていると思うのですが、これがいかに深刻か。例えば、1.3で あれば、合計特殊出生率は、女性ですから2で割ると1人が0.65しか産まない。80年生 きるとして、単純計算すると一世代で人口は6割5分になり、二世帯では半分以下にな ります。将来どういうことが起こるかを十分に認識してもらうと後のいろいろな政策も しやすいのではないか。  この資料に、合計特殊出生率が1.3とか1.57と下がってきている。しかも、この合計 特殊出生率の技術的な問題で、将来若干上がるかもしれないという、何となくホッとす るような話もあるのですが、基本的に人口は減っているわけですから、あまりホッとす べきではない話だと思います。そういう点では、いかに1.3を下回るか、あるいは1.2に なると大変だということを国民にきちんと理解していただくことが出発点ではないか。  もう1つ、八代委員、小杉委員の話を聞いていて、もう少し説明がいるなと思ったの は、例えば若い人が就業できなくなったのは最近の傾向ですが、少子化はずっと続いて いる。しかし、伝統的な日本の雇用慣行があったときもずっと続いているわけです。逆 に言えば、伝統的な雇用慣行が今よりも定着していたときは、もっと合計特殊出生率は 高かった。いろいろな要因で説明するときに、そのトレンドをいかに説明するかが大変 大事ではないか。そう思うと、いろいろと頭が混乱してくるのですが、その辺、伝統的 な雇用慣行の立場に立って説明されるという話を、どう考えたらよいのでしょうか。 ○八代委員  そこは大橋委員が言われるようにちょっと説明が不足しています。つまり、伝統的な 日本的雇用慣行が少子化と結び付くというのは、それ自体ではなく、当然女性の就業率 が高まるのが直接的な要因です。つまり、日本的雇用慣行は女性が働かないことを前提 に出来上がっている仕組みであると捉えれば、女性が働かなくて、男女の固定的な役割 分担が明確な時代は非常に少子化に対して中立的であった。しかし、女性が働かないこ とを前提として出来上がった社会慣行の下で女性の進学率が高まり就職率が高まると、 そこで矛盾が起こってくる。  そのためには少子化対策は2つあって、1つは、いろいろな人が言っているように女 性を家庭に戻せばいいと。これは論理的な1つのやり方ですが、これは到底不可能であ り、すでに起こった少子化の結果、そんなことをしたらますます労働力不足になってし まう。そうであれば、やはり女性が働くことを前提にした働き方に変えていかなければ いけない。そのネックになっているのが雇用慣行です。かつてはネックになっていなか ったのが環境の変化の中でネックになってきている、だから変えなければいけないとい う考え方です。 ○小野座長  資料38頁に大学までの教育費が、すさまじい金額になっています。八代委員、こうい うのはどのように考えられますか。小学校だけ公立で、あとは全部私立ということです か。 ○八代委員  よく教育費が高いことが少子化の原因であるという意見があります。現にアンケート などを取ってもそういう答えがいちばん多いのですが、私はこれには疑いを持っていま す。教育費の高さは絶対額なのか相対額なのかということであって、つまり、子どもを 育てる身になりますと、人よりもより良い教育環境を自分の子どもに与えたい、それに よって自分の子どもの生涯所得というか、要するに、もっと簡単に言えば幸せになれる ように投資をしたいという親のニーズがあったときに、それは相対的な教育費が問題に なるわけなのです。例えば、ほかの家庭が10投資したら自分は12投資しないと意味がな いわけですから、いわば一種のラットレースになるわけです。  その意味では、確かに教育費が高いから子育てが大変だというのはもちろんそうです が、逆に言えば、そうせざるを得ないような状況が家庭にあるのではないか。その意味 では、例えば政府が補助することで教育費を下げるのは、あまり少子化対策には貢献し ないのではないか。仮に教育費の補助をもっと出せば、それで浮いた余裕を家計はもっ と、逆に言えば他の人との差をつけるために投資する可能性が大きいのではないか。そ れは一種の相対価格が問題なわけです。その意味でも教育費より機会費用のほうがはる かに重要なのではないか。政策的な対策として満遍なく教育費に補助しても、状況はあ まり変わらないのではないかという認識です。  軍縮みたいに皆が一緒になってあまり過大な教育投資をしないということが可能にな れば、もちろん可能だと思いますが、それは個人の効用を最大化するという今の市場経 済の考え方からすれば難しいのではないだろうかということです。これについては、多 分異論があると思います。 ○大石委員  正規社員と非正規社員の待遇格差が、やはりこういった問題の背景としてかなりある と思っております。雇用慣行がネックになっているというときにも、非正規であっても きちんとした社会保障が得られるとか、そうした待遇があればそれほど問題にならない と思います。多様な働き方を保障するといいましたときに、いろいろな施策が今までも 言われていますが、本当にそういう方向でいくのだったら、それこそ年齢差別も性差別 も全部禁止する法律を作って、履歴書に年齢を書いては駄目とか、性別も推し量れない ようにして出すとか、そういうようなことはできないのだろうか。結局、女性が再就職 するにしても年齢がネックになるとかいろいろあるわけです。根本的に全部変えるとし たら、そういうことをする時期かなと個人的に思っています。 ○八代委員  年功賃金を前提として、年齢差別をしないように企業に強制するというご趣旨でしょ うか。 ○大石委員  別に年功賃金を前提にする必要は全然なく、能力に応じた賃金でいいと思います。採 用などのときに、年齢や性別に関する情報はなしにして評価しなければいけないように したほうがいいと思います。 ○八代委員  そうであれば逆に完全な職種別賃金で、年齢がもともと意味のないような賃金体系に しておくほうがはるかにすっきりします。どんなに差別禁止規定を設けたとしても、企 業は当然ながら必要があればそれをくぐって、ある意味で迂回することがあるのです。 そもそも大石委員が言われるように、年齢差別、性差別の原因となっている要因を取り 除かないと、本当の意味の対策にならないのではないかと思います。そういう意味で、 年功賃金制度自体が年齢差別を生むことの直接的な要因になってしまうわけで、完全な 職種別賃金及び能力別というか、業績主義というか、そういうことをしていれば、企業 のほうから年齢や性別で雇用者を差別する必要性がなくなってしまう、ということでは いかがでしょうかということです。 ○大石委員  枠組みとして、例えばパートであれば社会保険料がかからないとか、そういった制度 的な差がついてしまう。そうなるとどうしても企業が動きますので、それはイコールに なるようにしなければいけないということです。 ○黒澤委員  いまのと関連してですが、先ほど大石委員が言われたように、やはり働き方に非常に 大きな格差がある、オール・オア・ナッシングといいますか、フルタイムでやりがいが あって、そして報酬も高い。しかしながらそういった働き方は拘束力が強いので、そう いった働き方ができないとなると、今度は働きがい、やりがいが少なくて報酬が低く、 拘束力の非常に低いパートや非正社員的な働き方しかない。そういう状況があり、か つ、あるからこそなのですが、フルタイムで働きながら出産・育児をすることが難しい 限り、子どもを持つことによる機会費用自体も非常に莫大か、少ないかのどちらかだと 思うのです。つまり機会費用自体も連続的ではないわけです。  そのように考えると、八代委員が言われたように、また先ほどご説明していただいた 中にもあるのですが、1つの重要な少子化対策としては、再就職がしやすいというか、 再チャレンジがしやすいようなシステム、労働市場の整備が非常に重要になると思いま す。また、冊子の27頁の検討課題のところに「児童手当等の経済的支援」とあります。 これは先ほどの教育費の関連になると思いますが機会費用が非常に大きい限り、微々た る金銭的な支援をしても全く効果がないのではないか。これは実証的なことに基づいて いるわけではありませんが、理論的にはそう考えられるのではないかと感じました。 ○山川委員  若干関連しますが、日本型雇用システムの関連性は機会費用の大きさというのがある と思います。日本型雇用システム自体は別に法律で強制されたものではないものですか ら、逆に、日本型雇用システムを法律で強制的に禁止するわけにもいかない。例えば時 間外労働を一定時間以上は完全に禁止するとか、転勤を禁止するとか。これは当然、解 雇に跳ね返ってくるわけですから実際上極端な話になると思います。そうなると、結局 のところ制度を中立化するということになると思うのですが、制度を中立化することの 効果がどう現れるのか。この資料では5年ぐらいを目標にして挙げています。制度の中 立化は次第に進みつつあるように思うのですが、それによってどのぐらい効果が期待で きるのか、推測できるのかどうかが1つ論点としてあると思います。  一方では、労働力率を高めるということで女性の就業促進について触れられていま す。それと少子化対策が矛盾しない形で政策を設計しないと、いまの状況が拡大するお それがあるように思います。  あと個別的なことですが、「子ども・子育て応援プラン」の目標を見ていると非常に いい目標がたくさん出ています。1つ気になったのは、保育園に入れなくて待っている 児童がたくさんいると聞きますが、14頁では保育所の受入れ児童数の拡大で、5年間で 203万人から215万人となっています。ほかの数値目標は2倍とか大きいのですが、これ だけは非常に控えめで、財政の問題もあろうと思いますが何か根拠はあるのでしょう か。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  この数字は全国市町村の計画を積み上げたものです。下に書いてありますように現在 待機児童が50人以上いる市町村は、待機児童を解消するために、今年は4月に集中的に 計画を作り実施していただこうと考えております。都市部は確かに増やさなければいけ ないのですが、地方はどんどん子どもが減っており保育所の受入れ児童も減っているた め、そういった差し引きを入れている数字ですので少しマイルドになっている面があり ます。都市部の待機児童の多い所はこれ以上に増やさないといけない状況があります が、それは別途取り出してやらなければいけないということです。 ○八代委員  今の点ですが、これは高井課長とも昔から議論していたのですが、待機児童という概 念自体がナンセンスだと思います。いま高井課長が言われたように、これは市町村に届 け出た待機児童です。保育所に申し込んで、しかし実際には入れてもらえなかった人の 数を積み上げたものにすぎないわけで、実は、その背後に膨大な潜在需要があるので す。これは就業意欲喪失者と同じ考え方であって、もう諦めて登録さえしない人がたく さんいるはずです。これは一種の逃げ水であって、市町村に登録した待機児童を政策目 標にする限りはいつまで経っても間に合わない。  むしろ直接的に、例えば就業構造基本調査などで見た、子どもがいるために働きたい けれど働けないという人の数を見ると桁が違います。例えば400万とか500万という数字 が出てきます。今の児童福祉法では、働くためにやむを得ず、両親がやむを得ず働かな ければいけないような一部の人を想定した保育所政策ですので、そういう人を対象とし た保育政策というのは、根本的に変えなければいけない。いわば、それは保育サービス 産業になるわけです。それはある意味で専業主婦にも必要なサービスであって、今のよ うにフルタイムならいいがパートは駄目だとか、そういういろいろな制約を付けていた のでは到底間に合わない。  その意味では、これも長年の論争ですが、今の児童福祉法を社会福祉法と同じような 形で、介護施設と全く同じような考え方の対等な契約に基づくサービス産業としての保 育所に。できれば育児保険のような介護保険とパラレルな仕組みをつくることにより、 事実上のバウチャーの仕組みにしていく。そういう構造改革が必要ですが、これまでの 保育所政策は、今の制度を何とか少しずつ広げていこうというやり方なので、常に間に 合わないのではないか。そこはそれとして規制改革の大きなポイントであるわけです。  その前に山川委員が言われた、いわゆる法律論議で日本的雇用慣行を禁止するのは当 然ナンセンスであり、これは労使の自由の決定に委ねるという中立的な政策にしなけれ ばいけないわけで、全く言われるとおりです。今の政策は、実は中立ではないのであっ て、日本的雇用慣行と代替的な、先ほど言った派遣や有期契約を規制する形で間接的に 日本的雇用慣行を保護しているわけです。これを撤廃して、ある意味で多様な働き方へ の政策的中立性が、まず重要だと思います。その方向で所管局でやっていただいており ますが、まだまだ工場への派遣労働は1年だとかというのがたくさんあるので、それを まずやめていただく。  これは山川委員のご専門ですが、いわゆる解雇規制をもう少し弾力的にすることによ り、能力に応じて雇うというか、あるいは公務員のような分限免職といいますか、能力 が不足しているときも1つの解雇理由になると。それにより外部の労働市場と内部の労 働市場のイコールフィッティングを確保する政策は、子育てを終えて働きたいと思う女 性、あるいは若年者にとって当然プラスになる。しかし、当然既得権に触れるからなか なかそういうことはできない。そういう意味で、中立化する中でもやるべき政策はまだ 十分あるわけです。それが残念ながら少子化対策の中に十分盛り込まれないのは、当然 ながら、それが大きな社会的コストを持つからで、だからそれに触れないでおこうとい うことです。  女性の再就職支援は大事ですが、それは決して職業訓練だけではなく、もっと平等な 雇用機会が得られるようにしていく政策を含むはずなのですが、残念ながらそれが明確 化されていないのが問題です。 ○黒澤委員  保育サービスの配分は都道府県間でどう決められているのでしょうか。同一都道府県 の中でもどのように、例えば港区はこのぐらい、千代田区はこのぐらい、品川区はこの ぐらいでというのは、どういったメカニズムで決められているのでしょうか。また、休 日保育や延長保育をやるとか、やらないとかというのはどう決められているのか教えて いただけますか。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  いまのシステムは、基本的には市区町村が保育サービスの必要度をいろいろな形で把 握をし、保育所が必要であれば保育所を整備する。あるいは、いま言われたような一時 保育や多様な保育ニーズに応じられるサービスがどれだけ必要かというのは、基本的に は市区町村がそれを受け付ける形になっておりますので、たくさん来れば用意しなけれ ばいけないということで整備をし、サービスを整備していくと。保育所をつくったり、 関係の保育所でいろいろなサービスを用意してもらうというシステムでやっておりま す。 ○黒澤委員  どうしてこのようなことをお伺いしたかというと、いわゆる個票のレベルで分析する と、保育所の整備状態や質が出生率に影響を与えてきているのですね。ところが都道府 県ベースで集計された値で分析をしますと、公的な保育園については、量的にも質的に も全く効いてこないのです。しかしながら無認可の保育園の利用も入れると効いてくる のです。これは推測にすぎないのですが、同一都道府県の中でも公的保育園の量的、質 的配分のされ方には、例えば東京都の中で品川区は非常にタイトですが、例えば東村山 ではそうでもなかったりとかいったばらつきがある。それで都道府県単位で集計された データを使うと効果がなくなっているということは、すなわちどういった量や質のサー ビスを提供するかが、地域地域のニーズに合っていない可能性を示しているのではない かと感じたものですから。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  答えになっているかどうかわかりませんが、担当している者としては、いろいろな要 素があると思います。歴史的には保育所と幼稚園の関係があります。保育所が多い所は 幼稚園は少ない関係があったり、今は幼稚園が保育所的なサービスを進めたりしていま す。保育サービスについては、かなり限定的で非常に小さな、例えばマンション1つ出 来て急にということがよく都市部では言われますが、人口が急に動いた場合に需給がお かしくなってきたりする要素もあったり、都道府県では把握できないような、同じ市区 町村の中でも空いている所とタイトな所があったりということがありますので、非常に 切り分けが難しいところがあるのではないかと推測いたします。 ○八代委員  いまの民間保育所では対応できない保育ニーズというのが存在するのです。例えば、 いまでも日曜日にやっている民間保育所は非常に少ないと思います。日曜に働かなけれ ばいけない人は最初から民間保育所は当てにできない。それはサービス産業でないとい うことであって、保育の関係者とさんざん議論したときに、日曜ぐらいは母親は子ども の元にいるべきだ、だから日曜に保育所を開けてはいけないと。それは児童福祉法の考 え方かもしれないのですが、少なくともサービス産業の考え方ではないのです。つま り、需要がある所に供給するというサービス産業になっていないわけです。だからこ そ、そこを社会福祉法のように対等な契約に基づく関係に置き換えない限りは、どんな に民間保育所を整備しても、必ずどこかが漏れるニーズが出てきてしまう。最近は日曜 保育は進んでいるのでしょうか。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  プランの15頁に、土曜、日曜、祝日の箇所数を増やそうと、これも箇所数で書いてい ます。おそらく受入れのキャパシティがより重要になってくると思いますが、こういう 形で、よりニーズに合った形で進めているところです。 ○大石委員  日曜保育は、認可保育所が日曜日までやることにかかるコストを考えると、例えば日 曜日に受け入れる保育所を整備する方向では駄目なのでしょうか。例えば、私の子ども が行っていた保育所で美容師さんの子どもは、平日は来ていて、日曜日は別の保育園に 行くと。全員が全員、日曜日働いているわけではないので、コスト平均値や地域的な偏 在を考えると、何か別の仕方もあるのではないかと思うのですが。 ○八代委員  それは非常に現実的な対策です。元々は、同じサービスをしているのに、なぜ保育コ ストがそんなに違うのかという点がポイントになるわけです。 ○大橋委員  機会費用が非常に高くて少しぐらい補助してもあまり効果がないというお話がありま したが、よく経営者団体の方が、どうして企業や政府が補助しなければいけないのかと いう議論を出されると思うのですが、これにきちんと答えていないのではないかと思う のです。実際に少子化を阻止できるほどの効果を持つにはすごい機会費用が高いと。そ れをなぜ税金でやらなければいけないのかということについて、やはり同意がいると思 うのです。というのは、子どもは社会のものというよりか、まずは親のものですから私 有財というのか、それに対して、どうして政府なり企業が負担しなければいけないのか というところについても、やはり議論を整理しないといけないと思います。  例えば、私のゼミの学生が就職活動するときに、育児休業制度が整っている会社を一 生懸命探したのです。そうか優秀な人はこういう所を探して行くのか、なるほど効果が あるなと思って、それで学生に、「あなた子どもを何人ぐらい産むの」と言ったら、 「まあ、せいぜい2人だね」という話ですから。確かに優秀な学生は得られるかもしれ ないが、しかし子どもを増やす効果が実際あるかないか、これは疑問だと思います。  もう1つ保育所の件は、私の友人(男)が子どもを保育所へ入れていますが、迎えに 行ったり、風呂に入れたり、寝かしたりいろいろなことをやらなければいけない、非常 に面倒だといいます。今まで女性がパートでやっていた、男性は正規社員であった。と ころが正規社員でもやらなければいけなくなった。すると、もう面倒だなと、じゃあ子 どもをやめようと。こうなると今までは男のほうが子どもをほしい、ほしいと言ってい たのですが、今度は2人の意見が合致して子どもを産まなくなってしまうと、ますます 減ってしまうのではないかという危惧もありますので、効果については考えたほうがい いなということです。  そういう意味で、これはなかなか難しい、微妙な問題をたくさん含んでいて、それを クリアしていく議論をするには、今日の2時間だけではとても無理ですから、やはり、 これは今世紀最大の問題ということでしっかり議論していく必要があるし、また、細か いところを押さえればいくらでも問題が出てくるなという気がします。 ○八代委員  それに関連して、機会費用が大きいから子育て支援は要らないと必ずしも私は言って いるわけではないのです。それはそれとして当然子育て支援のための費用は必要です。 それだけで対応できるわけではないので、機会費用を減らすための働き方の多様化も同 時に必要ですということを言っております。  いま大橋委員が言われたように、なぜ子どもという私的財に対して政府が援助しなけ ればいけないのかということについては、これは介護とのアナロジーで考える。つまり 介護もかつては家族の問題であって、別に政府がそのようなことをする必要がないとい うところから、介護の社会化という形で介護保険ができたわけです。ある意味で、何が 社会的に支援すべきもので、何が家庭でやるべきかというものは、やはり時代とともに 変わってきて、それはその問題の深刻さからきているわけです。高齢化社会になって要 介護者が増えるとともに、特定の家族だけが介護の負担をすることのリスクを社会的に 分散しようということから介護保険が生まれたわけです。同じように、逆に子どもの数 が少なくなって、しかも、これは産みたくないから持たないというのだったら仕方ない のですが、産みたいけれども持てないということであれば、これは一種の、ある意味で 要介護者が増えることと似ていると考えれば、これを社会的に子育ての費用を分散しよ うと、一種の社会保険として考えるというやり方が出てくるのではないか。このときに 子育ては要介護と同じようなリスクではないのだという考え方が当然あろうかと思いま すが、広い意味の子どもを持つということは非常に大きな負担がかかるのだから、それ を社会的に配分するということで考えれば、社会保険の1つと考えても決しておかしく ないのではないかと。いま育児保険という考え方が除々に出てきておりますが、こうい うのも本当はきちんと検討対象に入れる必要があるのではないかと思っております。 ○山川委員  いまの点、賛成なのですが、現在でも雇用保険法は、育児休業給付と介護休業給付と 一緒にしていますから、共通の把握が可能だと思います。あと介護について従来でした ら、社会化することによるコストなどがかなり議論になっていたと思うのですが、介護 保険の場合は、介護を社会化して、それをいわばビジネスのニーズと結び付けた。先ほ ど言われていた点で、問題もあるかもしれませんが、いろいろ社会的に需要があって制 度的に実現するに至ったということがあるので、育児についても同じような発想で外国 人などの問題にもひょっとしたら関わるかもしれませんが、そういった方向はあり得る のではないか、社会化のスムーズなやり方の一環になるのではないかという気がしま す。 ○大橋委員  保険というのは面白いのですが、どういうリスクがあると言えばいいのでしょうか。 ○八代委員  それは要介護のリスクに対して介護保険があるように、子どもをもつことによって育 て上げるまでのコストをもつリスクということですね。言われる意味は、たぶん保険だ とモラルハザードが起こる、これが保険の最大の問題なのですが、少子化対策というふ うに考えると、モラルハザード大歓迎なのです。つまり育児保険ができたから子どもを もとうかという人をむしろウエルカムするわけですから、その意味ではモラルハザード の問題を考えなくていいという意味では、1つの良い社会保険ではないだろうか。  山川委員が言われたように、育児と介護のパラレルと考えたときに、昔からバウチャ ーという考え方があったのですが、これは行政的に非常に抵抗があるのです。しかし、 保険だとなぜか抵抗がないのです。ですから、介護保険が出来たときも、元々あれは保 険ではなくて税金でやるべきだという意見があったのですが、それに対しては、やはり 「介護バウチャー」には猛烈な反対があったのです。あまり根拠はないのですが、介護 保険という社会保険にしたということも聞いたわけです。  同じやり方でやると、言われたように、いまのような保育所に対する支援を介護保険 と同じようにする。子どもをもつ人への保育報酬といいますか、そういう形の保険にす ることで、事実上のバウチャーが実現するわけです。そういう意味では行政的にも抵抗 のない仕組みです。問題は財源なのですが、それもいまのバラバラの少子化対策の財源 をここに集中すると、それによって子どもをもつ個人に対して、現物給付としての介護 報酬を提供する。それによって保育の費用あるいは、さまざまな保育サービスの費用を これで賄っていただくという形です。そうすると、大石委員の言われた認可外保育所の 問題も、全て解決するわけなので、是非、検討課題に上げていただきたいと考えていま す。 ○大橋委員  もう少し質問なのですが、社会保険という視点から財源を捻出し、それでサポートし ていくということで、そのときのリスクが子どもをもつリスクというのは、社会的にど のぐらいアピールできるのかが気になったのです。だから私は最初に言いましたが、や はり少子化がいかに深刻かということを出発点にして、話を進めるべきではないだろう か。さらにその後で、では、資金をどう捻出するかというところで、そのリスクの話を する形かなと思うのです。 ○八代委員  言われるとおりで、まず少子化の深刻を訴えるというのは大賛成ですが、その後に、 では、その深刻さに対して人々がどれくらい負担するべきか、ということを国民的に合 意する手段として、社会保険はまた有用なのです。社会保険は目的税ですから、人々が 少子化が深刻だと考えたら、そのために何パーセントの保険料を負担できるか、という 議論に直ちにつながるわけです。ですから、そういういろいろな意味で、考慮に値する のではないかということです。たしか雇用均等・児童家庭局で1度検討されたという話 を聞いたのですが。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  これは平成15年の8月にそういう研究会を作りましたが、当時、2年前の報告書によ りますと両論ありまして、いま言われたようにそもそも保険事故なのだろうかとか、い ろいろ負担してもらえるのだろうかという話もある一方で、やはり子育ての関係を国民 全体で負担することも大事なのではないか、ということが併せて書かれています。 ○八代委員  その報告書はほとんど知られていないので、是非次回に紹介していただければありが たいと思います。 ○小野座長  いま少子化が非常に深刻な問題だというのはそのとおりです。そういうふうに社会全 体で少子化の問題を考えるときに、先ほど大橋委員は子どもは私的財だと言われました が、そういう面があることはたしかだけれども、やはりその場合でも私的財なのです か。私はどこかで「子どもは公共財だ」という意見を聞いたような気がするのです。そ ういう視点もまたあっていい。要するに経済全体としてあるいは社会全体として子ども がいなくなると大きな影響が出る。子どもがいるということは、子どもを産んだ人にも いろいろプラスの影響があるけれども、子どもをもっていない人が、人の子どもを見て も自分自身がプラスの影響を受けるという公共財的な面があるわけです。そのような認 識も少子化というものの深刻さを考える中から、新しく出てくる考え方ではないかと思 います。  保育所の問題と関連して、外国ではよくベビーシッターと言うでしょう。日本ではあ まり聞かないように思うのですが、どうなのですか。あるいはベビーシッターというも のに何かいろいろ弊害があるのでしょうか。児童虐待のテレビなどを私は見たことがあ るのですが、どうして日本ではベビーシッターがあまり流行しないのでしょうか。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  正確かどうかわかりませんが、ベビーシッターは日本では会社が100以上ありまして、 その関係団体もあります。例えばアメリカなどと比べて、かなり生い立ち、風土が違う のではないか。アメリカ、ヨーロッパでは確かにベビーシッターを使うのが大変多いと 聞いています。日本ではどちらかというと、かつては隣近所で預かっていたのかもしれ ませんが、幼稚園なり保育所があって、そちらを使うのがいま多くなっています。た だ、確かに今いろいろなニーズがあるわけなので、ベビーシッターの関連会社が100社 以上あって、サービスを提供しているということはあります。 ○小野座長  料金は保育所に預けるよりは高くなるのですか。 ○高井雇用均等・児童家庭局総務課長  時間制で2時間何千円かという形で、時間に応じて負担します。大きく違うのは保育 所にしろ幼稚園にしろ、一定の公費が入っていますが、ベビーシッターは基本的には相 対契約で、一部助成制度はありますが、基本的には自己負担でお願いする仕組みです。 ○八代委員  ですから、そこでまた介護保険とのアナロジーでいうと、介護保険では在宅介護サー ビスと施設介護とはイコールフィッティングになっているわけです。ところがいま言わ れたようにベビーシッターという一種の在宅介護に相当するものには、一切補助は出ず に保育所に行くと所得によって違うのですが大幅な補助がある。そういう意味で制度的 にバイアスがあるのです。だからこそバウチャーという形で、あるいは介護報酬みたい な形で、そこのイコールフィッティングをすることによって、保育所以外の形である非 常にコストの高いベビーシッターをもっと使いやすくできるのではないか。「保育ママ 」という制度を自治体などでは一部出していますが、それも非常に例外的です。  私は保育予算も不十分だと思いますが、その不十分な保育予算が施設補助という形で 浪費されている面があるのです。貴重な保育予算を効率的に配分するための保育バウチ ャーというのを、歴代保育課長に言っているのですが、絶対に駄目だと拒否されている 経緯があります。 ○小野座長  何かほかにご意見ありますか。No.3を見ますと、No.1の3頁の(1)の所に関連した 資料も入っているのです。つまり人口が減って労働力人口が減ってしまう。それは困る ということで高齢者とか、女性などに少し働いてもらおうではないか。そのためにはい ろいろな施策を考える。そのようにして高齢者や女性の労働力率を上げる、そしてもち ろん彼らに実際に仕事に就いて働いてもらうということです。  女性に働いてもらうことを考えた場合、つまり女性の就業率を高めた場合に、一時的 に就業者を増やす効果をもつわけです。ここの研究会で考えている期間、向こう10年ぐ らいはそれでいいけれども、少し長い目で見ると、女性の就業率を上げた結果、かえっ て少子化を促進するのではないか。先ほど山川委員が指摘された点です。そういう点に ついての資料が27頁とかに入っているように思うのです。28頁、29頁はどう読むのか、 その辺に関連した説明を事務局からお願いします。 ○中井雇用政策課長補佐  いまのお話ですが、我々としても暗黙のうちに山川委員が言われたように、労働力率 を高めていくことと少子化対策、それが矛盾しない制度設計は重要である。要は労働市 場に出てきていただくことが少子化につながっては本も子もないという話だと思います ので、そこについて最終的に整合性のある形で整理をしなければいけないと考えていま す。  27頁からの資料を補足します。27頁、28頁は富士通総研の研究員の方が作成された資 料を引用しております。就業率・労働参加率が増えていくことと合計特殊出生率の関係 を見て、その関係で各国の状況をプロットしたときに、結果として曲線になっています が、男女の就業率格差が大きい状況から徐々に縮小するにつれて、出生率が一旦低下す る。ただある一定の水準を越えるとその格差が縮小するにつれて、出生率が上がるとい う関係があるのではないかという分析結果が27頁です。  28頁、今度は出生率と性別の役割分担の意識の関係について、各国についてプロット したということで、グループ分けをされているものです。イタリアとアイルランドの関 係が微妙だとかいう話もあるのですが、この分析結果によれば男は仕事、女性は家庭と いう固定的な役割分担の考えが強い国ほど、出生率が低いのではないかというグループ 分けをされているという結果です。  29頁は、有配偶女性の労働力率と合計特殊出生率をブロック別に相関を見たもので す。R2が0.537ですが、以前、『厚生労働白書』に掲載された分析結果で、労働力率が 高いブロックでは、合計特殊出生率が高いという相関が見られるということとなってい ます。これらを見たときにいろいろ議論はあると思いますが、要は社会参加することが 必ずしも出生率の低下につながることにはなっていない。その背景としていろいろ社会 的環境が変化しているという話も先ほど議論があったかと思いますが、そういう分析が あります。 ○小野座長  いまの説明で何かありますか。 ○八代委員  補足させていただきますと、27頁のグラフは時系列ではなくて横断面の分析ですか ら、必ずしも放っておいてこうなるわけではないわけです。ただ、これが言っているの は、経済発展段階が低いうちは、女性の就業率が高まることは出生率を下げる要因にな るわけですが、一定以上に経済、社会が成熟化しますと、それはむしろ正の相関をもつ 可能性がある。そういう意味では女性が働くことと少子化が進むことは別にトレードオ フではなくて、むしろ両立する可能性は十分ある。きちんとした制度改革さえすれば両 立は可能であるということを示唆しているのではないかということです。  ですから、そういう社会を目指すべきであって、それはもう少し具体的に言うと、北 欧などは男女間の賃金格差が比較的低い、それはある意味で年功賃金ではなくて、職種 別賃金であって、しかも雇用が流動的であって、能力に応じて働くことができるという 社会は、非常に男女が働きやすい社会であって、それは同時に一時的に子どもを持つた めに仕事を辞めたからといって、その時点だけしか機会費用は発生しない。あとでいく らでも取り返せる。そういう流動的な社会が今後の1つのモデルになるのではないかと いうインプリケーションがあるのではないかということです。  29頁のグラフで気をつけなければいけないのは、自営業比率がコントロールされてな いので、東北や北陸の出生率が高いのは、女性の労働力率が高いということと同時に、 それは自営業としての労働力率が高い。自営業の場合は女性も働きやすいし、同時に子 育てと仕事が両立しやすい関係もあるので、注意が必要ではないかということです。 ○小野座長  後の点、事務局はどうですか、そのとおりですか。 ○中井雇用政策課長補佐  この分析結果について八代委員が言われたことは、いろいろ議論がある中で世間でも されている見方ではないかと思っていますし、別の所でもその時代によって女性が働く ことと出生率の関係が、負から正に変わったみたいな分析があると承知しています。先 ほどから出ている社会制度、法慣行の話などもどうするかという話もあるかと思います が、そういうことも踏まえて、見ていくのかなということです。自営業比率については 調整してみます。 ○小野座長  私は27頁は疑問です。チリとクェートはOECDに入っていない国です。OECDに 入っていない国はたくさんあるわけで、どうしてそういうのは除いているのか。OEC Dに入っている国も、これを数えると14、5あるかな。いまOECDは全部で30国ぐらい ありますね。なぜそういう国をみんな抜いているのだろうかという疑問が出てくるので す。そういう判断をするときの材料としては私は非常にこれは弱いと思う。むしろ29頁 の右上がりの線、これは八代委員ご指摘のように、自営業比率をコントロールしたり、 説明変数に入れたり、まだいろいろあると思うのです。そこは少しがっちり分析して、 山川委員が指摘された女性の就業率を高めても、必ずしも少子化に結びつかないのだと いう議論も、もう少し補強したほうがいいと思います。27頁については全部の国のサン プルを入れたら、こういう線になるのかどうか私はやったことがないのでわからないの です。 ○大橋委員  チリとクェートをデータから省いて書くと、トルコは異常値になりますが、右上がり の直線が書けます。 ○小野座長  たくさんサンプルがあるのだから、全部の国を入れないと、やはりこれはいただけな いなという感じがするのですが、いかがでしょうか。 ○中井雇用政策課長補佐  これは既存の調査の分析の引用ということで、言われるとおり全てを我々自らやって いないので、それは可能かどうかということもありますし、またいろいろな分析にも当 たってみたいと思います。 ○小野座長  何か年次によって、樋口委員のデータがあったと思うのです。時期によってマイナス とプラスの相関になるとか、そのような話をちょっと、樋口委員の分析かどうかははっ きりしないけれども、そういうことを先ほど言われたのではなかったですか。 ○中井雇用政策課長補佐  今回資料を付けていないのですが、樋口委員がどこかのシンポジウムか何かで発表さ れた資料の中に、時代背景とともにそこの相関関係が変わってきているというものがあ りました。 ○小野座長  それは面白いですね。それが可能であれば。 ○中井雇用政策課長補佐  また紹介する機会をもちたいと思います。 ○小野座長  是非それはお願いします。 ○大橋委員  それと、ある一定の年数の合計特殊出生率の変化と就業率ですか。 ○小野座長  変化を取る。 ○大橋委員  変化を取れば、1つ出てくる。 ○中井雇用政策課長補佐  参考にさせていただきます。 ○小野座長  被説明変数のほうも説明変数のほうも、まだいろいろ考えていただければありがたい と思います。 ○山川委員  先ほどの賃金格差とか市場の流動性との関係という観点から、分析することはあり得 るのでしょうか。アメリカでは流動化していて賃金格差も日本に比べれば少ないと思い ますが、ほかの例えばスカンジナビア3国がどうであるかとか、静態的な話になるのか もしれませんが、そういった点から分析すると、どうなるかという点も興味がありま す。 ○小野座長  要するに説明変数にするものを入れて、もっとサンプルを増やして、きちんとやって みたらどうなるかということですね。とりあえずOECD加盟国30カ国でいいですよ ね。それをやって、どういうふうになるかはわからないけれども、労働市場の流動性の 話とか、賃金格差の問題とか、そのような変数を入れながら議論を補強してもらったら 参考になると思います。 ○中井雇用政策課長補佐  どういう結果が、良いものが出るかどうかというのはわかりませんが、いまのご指摘 等を参考にしながら勉強をしていきたいと思います。 ○小野座長  それでよろしくお願いします。 ○黒澤委員  以前、筑波大学の山田先生が論文をお書きになっています。出生率と就業を同時に決 定しないといけないので、同時推定式で分析していました。 ○小野座長  厳密には。 ○黒澤委員  あれはすごい昔なのですね。あれを最近のデータでやってみると興味深いのではない でしょうか。その当時は就業が出生率に与える影響は完全にマイナスだったのですが。 ○小野座長  そうですね。そういう同時性がありますから、それも面倒くさいでしょうが、一応考 慮されてやっていただければと思います。 ○大石委員  流動性の点ですが、スカンジナビアでは流動性はアメリカほどではないと思うのです が、これらの国について言えるのは、パートとフルとの格差がないのです。日本ほどパ ートとフルとの差が激しい国はなかなかないわけですから、そういった待遇の面での格 差も影響しているのではないかと思います。 ○小野座長  アメリカ、イギリス、日本は、パートとフルの格差はあるでしょう。 ○大石委員  イギリスはあります。 ○小野座長  アメリカも日本と同じぐらいパートとフルが大きな。 ○大石委員  社会保障というか医療とかいったベネフィットの面も、かなり違いますし、格差があ ります。 ○小野座長  私が言ったのは賃金格差の話で、アメリカ・イギリスは結構格差があるのです。それ も面白い議論です。 ○大橋委員  この表でもアメリカ・スウェーデンのように、女性就業率が高くても、合計特殊出生 率の高い国があるのはすごく希望がもてるというのか。それを強調すると。 ○小野座長  そういうのは何があるのでしょうかね。 ○黒澤委員  この就業者というのはフルもパートも全部含まれていますね。オランダみたいに男性 でも女性でも、とにかく2人で1.4人ぐらい働けばいいという形で就業することも1つ の両立の方向性だと思います。あるいは日本で今までなされていたみたいに、男の人は 1.5働いて女性は0.3働いてというやり方ででも、この場合は両立というのではないので すが、分担の1つの合理的なあり方であったわけです。ですから、ここで就業者数の比 率を取っていることは1つのやり方ではあると思うのですが、両立の度合いを示すとい う意味では先ほど大石委員が言われたように、正社員なら正社員だけで見るとか、賃金 格差で見るとかいった、いろいろな横軸の取り方があり得るかなと思います。 ○小野座長  それは面白いですね。 ○山川委員  前、議論がどこかで出てきたかと思いますが、両国ともたしか婚外子の比率がすごく 多い国ではないか。つまり結婚と出産が必ずしも結びついていない国ではなかったかと 思います。アメリカも多分。 ○小野座長  アメリカも高いですか。 ○小杉委員  いま出産だけの話になっていますが、その前提の結婚ということも大事ではないかと 思うのです。いま晩婚化・非婚化がどんどん進んでいる。結婚をした人たちの出生率が 最近下がったとか言われていますが、一応2人産むとか、そういう数字をかなり保って いると思うのですが、晩婚化がどんどん進んでいる。あるいは結婚をしない人がどんど ん増えているという事態も、とても大事なことではないか。  今回、うちの雑誌の中で「出会い」という問題について分析しています。そこで人口 問題の研究者の方で、出会いの縁が変わってきている。70年代以降、結婚がどんどん減 っている背景にあるのは、1つにはお見合いがなくなったのと、もう1つは最近になっ てどんどん減っているのは、職場での出会い「職縁」が減っているという議論がされて いるのです。それと関係すると思うのですが、私はフリーターの人を調査していて、フ リーターになる女性というのは、基本的にはかなり性の役割、分業感を強く持った人な のです。専業主婦志向だから、一時的に働くのだから何も無理して就職しなくてもいい という女性たちの職場と、正社員の男性の職場は実は隔絶されているのです。  フリーターの方たちは若者の多い、楽しい職場にいるのです。その楽しい職場には男 女もいるのですが、そこで出逢うフリーターの男性は専業主婦をさせてくれる相手では ないので対象外なのです。その辺、出会いのミスマッチが就業形態の分断の中で起きて いるなというのを実は感じているのです。就業形態の変化の中で、若い人の職場が正社 員の職場と分断されている。そこから、出会いという所からもう既に変化が始まってい るのではないかと思うのです。それをどうするのかはわからないのですが。 ○小野座長  それと似ていると言っていいか、いろいろな企業が研究所を地方へもっていってしま う。研究所にはあまり女の人がいないので、派遣とかパートで女の人が来るとえらくモ テてしまうとかいう話を聞きます。あれは企業の政策というかコストをなるべく低めよ うという政策の結果、研究所が東京から離れた所に作られるわけですが、その結果、研 究機関で働いている人が、なかなかお嫁さんをもらえないなんていう話も聞きます。 ○小杉委員  かつて日本型雇用慣行が職縁で企業の中で結び付けていた。そこで専業主婦を作り出 していたのですね。そういう機能をもっていた職場だったと思うのです。それが変わっ てきていて、今までの出会いのマーケットも変わってきている。そのマーケットをうま く調整する術がないような状態なのではないかなという気がしています。 ○八代委員  ニーズがあればそれに応じたビジネスが発展するわけで、いわば職安のジョブマッチ ングみたいなお見合いビジネスというのもそれなりにあるわけですが、なぜそういうマ ーケットが、そういうものに対して反応できないのですか。 ○小杉委員  少しは増えてきているという話も出ていました。もう1つには長時間労働の話がかぶ ってきて、職場に絡め取られていることが多いので、それ以外の所での機会がないとい うことだと思います。 ○小野座長  いまお見合いのビジネスはたくさんありますよね。 ○八代委員  そうです。 ○大石委員  小杉委員が言われたことと関連してですが、フリーター同士が結婚しても、そこそこ 暮らせるし、そこそこの社会保障が得られるような社会でないかぎりは、子どもは生ま れないのかなというところがあります。また、このプランの報告書を拝見していて思う ところは、子どものいる世帯の中において格差が広がってきているのです。私も最近分 析したのですが、それは単に母子世帯とか、ひとり親世帯が増えているからというだけ ではなくて、夫婦と子どもだけのいわゆる核家族、すごく安定的だと思われていた核家 族世帯についても不平等度がだんだん高まってきているのです。そういった格差の拡大 する中で、子育て支援をどうするのかという視点を、これから考えていく必要があるの ではないかというふうに思います。 ○小野座長  フリーター同士は結婚しにくいですか。 ○大石委員  結婚まではできるのですが、次、子どもが生まれると破綻する。 ○小野座長  そうですか。 ○大石委員  片方が仕事を辞めたら、もう生活できない、破綻する。 ○小杉委員  それぞれ1人で生きているのがぎりぎりの生活水準、という賃金ですから、2人なら 生きていけますが、プラスアルファーは無理だということです。 ○小野座長  子どもが出来ちゃうとね。 ○小杉委員  まさに正社員と非正社員の格差の大きい状態が縮まらない。正社員になるチャンスが ないということです。 ○小野座長  それでは、前回までにご指摘いただいた点について事務局から資料を用意しているよ うですのでお願いします。 ○中井雇用政策課長補佐  資料No.3の39頁からです。前回、パートを選んだ理由割合を、自分が主な収入源か どうかというので見られないかというご指摘が座長からあったと思います。それについ て、グラフを作ったのが39頁と40頁です。これを見ますと1990年から2001年の変化とし て、男女いずれにおいても、「自分の都合の良い時間に働きたい」という割合が、パー トを選んだ理由として最も高いのですが、それが下がってきている。一方で正社員とし て働ける会社がない。2001年は雇用情勢が厳しかったということもあろうかと思います が、その割合が上昇していることが調査結果から示されています。  そのうち、25〜34歳については40頁です。これを見ますと、これは男女とも「仕事の 内容に興味が持てた」「正社員で働ける会社がない」といった割合が上昇している。中 でも主な収入源が配偶者である場合を除いて、特に女性では正社員として働ける会社が ないというのが割合として上がってきています。また、女性で主な収入源が配偶者の場 合では、依然として家事・育児の事情で正社員として働けない割合が高くなっている、 という結果になっています。  41頁〜43頁は前回、樋口委員から社会生活の時間についてどうなっているのかが見ら れたらというお話がありましたので、一次活動、二次活動、三次活動、年齢別・男女別 にその時間配分を整理したものです。これを見ると、全体的に特に30代と40代で、一次 活動と三次活動が少なくて、二次活動、特に仕事が長くなっている。ただ、家事・育児 では、男女間の格差は、5頁の資料とは若干内容的に重複する面もありますが、そうい う傾向があるということで、時間の使い方、前回ご議論のあったことについての関連指 標です。あとまだいろいろと宿題をいただいていて、作業をしているものもありますの で、今後、示したいと思います。 ○小野座長  全体を含めまして何かご意見がありましたら出していただきたいと思います。大体よ ろしいですか。今日の研究会はこれで閉じたいと思いますが、次回について事務局から 連絡をお願いします。 ○中井雇用政策課長補佐  本日は遅い時間にもかかわらずありがとうございました。次回第7回につきましては 2月18日(金)午前10時から12時まで、場所は中央合同庁舎5号館専用第15会議室で開 催する予定としていますので、よろしくお願いいたします。なお、本日いろいろご議論 をいただいた論点とか、さらに分析する点をご指摘いただきましたので、引き続き整理 したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。 ○小野座長  今日はこれで終わります。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係 TEL:03−5253−1111(内線:5732) FAX:03−3502−2278