05/02/01 第5回 医業経営の非営利性等に関する検討会 議事録          第5回「医業経営の非営利性等に関する検討会」 日時    平成17年2月1日(火)10時00分から12時00分 場所    厚生労働省専用第22会議室 出席委員  石井孝宜、川原邦彦、品川芳宣、武田隆男、田中 滋、豊田 堯、       西澤寛俊、松原由美、真野俊樹、三上裕司、山崎 學                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから、第5回「医業経営の非営利性等に関する検討会」を開催します。委員 の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ当研究会にご出席いただき誠にありがと うございます。早速、議事に入らせていただきます。  昨年12月の第4回検討会で事務局より、「医療法人制度改革の基本的な方向性」につ いて論点整理ペーパーが提示されました。今回は、その論点整理に沿った形で「医療法 人に求められる役割」、「『非営利性』とは」について議論していただきます。それと 前回、委員の皆様方からご指摘のあった点を事務方で再整理して下さったので、これに ついても併せて議論していただきたいと存じます。  初めに事務局から資料の確認をお願いします。 ○山下指導課長補佐  お手元の資料をご覧ください。第5回の議事次第、委員名簿、座席表、資料1は「社 会保障制度と医療法人に求められる将来像」です。資料2−1は、「『公益法人制度改 革に関する有識者会議』報告書における『非営利』の考え方」です。資料2−2は「非 営利法人等の比較」です。資料2−3は「公益法人の役員報酬規程の開示について」で す。資料3−1は「主な論点の整理と社会福祉法人との比較」です。資料3−2は「医 療法人制度改革の基本的な方向性について(主な論点の整理)」です。資料3−3はカ ラーの1枚紙です。参考資料1は、社団法人日本医療法人協会からいただいている調査 結果の資料です。参考資料2は、昨年12月に政府の規制改革・民間開放推進会議で第1 次答申が出されました。その中の医療法人に関する抜粋版です。資料で不足がありまし たらご指摘ください。以上です。 ○田中座長  ありがとうございました。私もいろいろな関係者の方々から、この検討会の方向につ いて深い関心を持っているという話を聞いています。今日は皆様方の活発な議論をお願 いします。初めに、「医療法人に求められる役割」という資料に基づいて事務局から説 明をお願いします。 ○山下指導課長補佐  資料1ですが、「社会保障制度と医療法人に求められる将来像」の1枚紙に沿って、 簡単に説明させていただきます。これは第4回の検討会の場で論点として出しました最 初の頁で、まず社会保障制度において医療法人がどのような位置づけになっており、ま た社会保障制度の発展に伴って医療法人にどのような役割が求められているのかについ て、簡単なものとしてまとめたものです。これに沿って、逆に制度だけでなく実際の医 療法人のあり方についても、ご議論いただければと思いまして作成したものです。  繰り返しになりますが2つ目の○で、社会保障制度というのは広く国民を対象にし て、個人の責任や自助努力では対応しがたいリスクに対して、社会全体で支え合って、 個人の自立や家庭の機能を支援し、健やかで安心できる生活を保障することを目的とし ているものでございます。  3段落目になりますが、社会保障なくして国民生活の安定は望めないだろう。また4 段落目で、社会保障のサービスを提供している多くの主体は、自ら雇用市場を創出して いるほか、国民の「安心感」を醸成している。また、消費活動を支えており、特に経済 が悪化した場合にあっても、消費を安定化させる効果を持っているのではないか。○の 5番目のところに、そういう面で社会保障というのは今後とも民間の活力を基に、活性 化に寄与できるようにするべきではないか。最後に、そのような社会保障制度の役割と 民間の活力、活性化を考えると、今後の地域医療提供体制の有力な担い手としての医療 法人については、引き続き非営利、営利を目的としないものとして社会保障制度の一翼 を担う。これによって地域で質の高い、効率的な医療を提供することが求められるので はないか。このように事務方としては書かせていただいています。 ○田中座長  認定医療法人の話のベースになる医療法人の全体像を先に議論せよと、前回、委員の 方々からご発言がありましたのでまとめていただきました。この資料と説明についてご 意見がありましたらお願いします。 ○山崎委員  この資料のいちばん最後の○にある(1)のところですが、「非営利性・公益性の徹底に よる国民の信頼の確立」という項目で、医療法人制度について改革を推進する必要があ ると書かれていますけれども、本来、医療法人制度というのが成立した背景というの は、公益法人と営利法人の中間法人ということで、積極的な公益性は求めないというこ とと、営利法人のように配当しないという性格で作られたものです。したがって中間法 人的な現在の医療法人に、このような非営利性とか公益性の徹底というのを求めるのか どうかという疑問があるのです。 ○田中座長  ほかの委員の方々あるいは事務局からでも、いかがですか。50年前にそういう趣旨で 作られ、50年後変わろうとしているが、それについてどう考えるかとの質問です。 ○豊田委員  ここの文言の中で問題になるのは、「非営利性・公益性の徹底による」という部分で す。もともと医療そのものは非営利ということが医療法にも定められているわけです。 医療は非営利であると。医療法人は非営利の法人ではあるわけですが、問題は「公益性 の徹底」という部分です。ですから「徹底」という文言は、より積極的な公益性を求め るのかどうか。それについては「求めない」と創設時に書かれています。したがって中 間法人ということだったわけですが、医療そのものをきちんと行っていれば、それ自体 公益性が自然に要求され、それが満たされているということは、改めて非営利だから公 益性は要らないという議論にはならないわけで、それ自体医療そのものは非営利であ り、同時に公益性が常に求められているという形です。  ですから、ここでいう徹底は、さらに積極的な公益性を求める形にするのか、それと も従来のそういう形で、よりその辺を透明性をよくしていこうということなのか、その 辺をきちんとしないと、医療法人の性格そのものが従来と変わってくるということにな ると思いますので、この辺については議論が必要だと思います。 ○田中座長  今日、急いで結論を出すためでもないし、ここで論戦をしようというつもりはないで すが、皆さんの意見をお願いします。 ○品川委員  ○の4番目と5番目を中心に申し上げたいのですが、この4番目、5番目をざっと読 む限りでは、社会保障の充実それ自体が経済に多大な寄与をして、活性化に寄与できる ということで、この社会保障の充実それ自体の非常にプラス要因だけが指摘されている のです。しかし、これは経済全体から見ると、社会保障の充実というのは限られた資源 の配分においていろいろな問題を提起してくるわけであって、1つは、○の3番目に書 いてある個人の自立、自助努力を逆に損なうのです。国が何とかしてくれるから、いま のうちに遊べるだけ遊べという国民の惰情を招くことも、ひとつの問題点なのです。  国の経済全体から考えると、社会保障に資源が偏ると、当然ほかの経済活力を損なう わけで、この4番目、5番目のように書かれると、何か社会保障さえ充実すれば、すべ て日本の経済がうまくいくようで、プラスの要因だけ書かれるといささか白けるところ があるのです。その辺は自ずから資源の配分には限界があることをある程度きちんと書 かないと、厚労省だから社会保障万歳というわけにはなかなかいかないのではないかと 思います。 ○田中座長  この背景には、ほかのいろいろな会議から、社会保障制度はけしからんとさんざん言 われているから、それを前提に、それに対する答えを書いているのだと思います。経済 界から、いま先生が言われたようなことを言われているという認識が、たぶんこの紙の 前にあって、それに対する答えだから、そういうふうに読めてしまうのでしょうけれ ど。 ○品川委員  言いたいことはよくわかるのですが。 ○田中座長  ほかの論点でいかがですか。皆様方の意見を聞いておかないと、今後進展しませんの で。ディベートでなく、誰かを打破するとかいうつもりはないですが、それぞれの方の ご意見を伺っておくと事務局もまとめやすくなります。 ○山崎委員  効率性の問題というのは、どういうふうに考えればいいのですか。効率性というのも 大事だと思います。 ○田中座長  効率性は(2)ですが、いかがですか。 ○山下指導課長補佐  12月10日に出したものについて、それぞれ5本の柱で書いたもので非営利性と効率性 との関係ですが、私どもの考えとしては、まず医療というのは非営利でやっていただき たい。確かに医療の話をいろいろな方々から聞くと、例えば24時間電気を煌々と照らし て、いつでも患者が来たときに対応できるように温かいお湯を用意しておく。また、患 者が来るかどうかわからないけれども、医師や看護師などの医療スタッフを整えておか なければいけない。そういう形で実際、医療は話を聞く限り非効率的なサービス産業だ ろうと思います。  一方、そういった医療を提供するサービスは非効率であったとしても、それを支える 経営については同じように非効率でいいのか。サービスが非効率であっても、そのサー ビスを提供する経営面について同じように非効率でいいのかというと、そうではないだ ろうというのが我々の問題意識です。医療は非営利であって非効率な面があることが前 提の上で、資金面、人材面、材料面で安定的に提供できるように経営は効率的であって ほしい。そういう面で医療法人については経営を担う主体として、効率性というのがあ るだろうと柱を立てた次第です。  もう1つ、公益性の話が山崎委員からありましたが、昭和25年に医療法人の制度がで きたときには、積極的に公益性を求めないとはいえ、営利を目的としない法人だという 形で位置づけられました。それが50年以上経った現在についてどうなのか。突然、医療 法人すべてに公益性を求めることを考えているのかということについては、我々はそこ まで思ってはいない。非営利の位置づけは今後も維持したいというのが我々の考えです が、一方で非営利を維持しながら、また別のベクトルで公益性を高めるようなことをし たいという方々が、民間でいらっしゃるのではないか。いままで医療というのは、民間 と公立病院のように官でやっている人たちがいましたが、民間でも公益性の高いものを やる方々がいらっしゃるのであれば、そういったことを制度として用意することも、考 えられるのではないかということが背景としてあった次第です。 ○真野委員  両方求めるのか、トレードオフ関係にあるのかという話になると思います。いまの山 下課長補佐のご指摘でも、例えばこうこうと夜中に電気を点けておくことが非効率なの ではなくて、それをやめることができないということです。例えばほかのサービス業だ って24時間やっているところはあるわけで、それはお客が来て、それによって利益が上 がる可能性があるのでやっているわけです。医療機関はそうではなくて、利益が上がる 可能性が少なくてもやらなければいけないということだから、そこになると効率性と公 益なりのところのトレードオフということになるので、そこのところはバランスも非常 に重要だと思います。 ○品川委員  いまの公益性と効率性のトレードオフの問題ですが、短期的にはおっしゃるようにト レードオフの関係があるかもしれませんけれども、長期的には私はそれは表裏一体の話 だと思います。要するに、効率性を高めなければ長期的なサービス提供というのは非常 に困難ですから、効率性を高めることによって長期的・安定的なサービスを提供するこ とこそ、本来の公益性に適う話だと思います。  ただ、1日電気を点けておくことと、必要に応じて電気を消して資源を長期に使うと いう、先ほど言われたそのバランスをどう図っていくかというのが問題であって、た だ、病院だから温かく迎える、そのためにコストはいくらでも使っていいということで はないはずです。だから、そこは突き詰めていくと結局は表裏一体の問題で、効率性と いう問題は、結局は本当に公益サービスを長期間、安定的に提供するための不可欠の要 素ではないかと思います。 ○真野委員  基本的にそれは大賛成です。効率を求めるというのはある程度、少なくとも今までに 比べれば求めなければいけないということは前提に持っています。 ○山崎委員  もう1つ、公益性ということを言うならば、従来の国立病院や国立の療養所、自治体 立病院が、きちんとした公益性を持った医療を提供しているのですか。その辺が全然な くて、急にここに公益性というのがドンと入ってくるというのも変な話です。少なくと も私が知っているような国立病院あるいは自治体立病院が、そんなに公益性がきちんと 担保されていると思いませんし、地域の住民の方の代表がその病院の経営に参画してい るかといえば、全く参画していませんよね。だから、一方でそういうふうな現状があっ て、ここの部分だけにそういうスポットを当てて公益性と言うのはおかしいと思う。 ○田中座長  先ほどの品川委員の社会保障制度のマイナスの部分とか、公立病院の部分がここに書 かれていないのは何だという点ですが、確かに局や課が違うと書きにくいのかもしれま せんけれども、それは医療法人もこうなる以上、暗黙に扱っているということなのでし ょうか。 ○谷口指導課長  別に意見を集約しようというつもりはありませんが、まさに非営利というところから 医療法人が発足したというのは医療法に書いてあるとおりで、そこのところは我々も押 さえているつもりです。ただ、時代の流れと申しますか、住民のご要望といった点か ら、これは山崎委員が言われたとおり、公立も民間もひっくるめて、医療機関たるもの の公益性というのが、住民のほうからだんだん求められてきているのだろうと思いま す。それに対して公立や公的が、ご指摘の点をちゃんと明示しているのかと言われる と、私もその辺はどう答えていいのか、国立病院課長あたりから何か言わなければいけ ないのかもしれませんけれども、若干疑問なしとしないところもあります。  ただ、我々の目から見ますと、地域において医療を提供するという意味での医療計 画、各都道府県、2次医療圏等において、県レベルで政策的医療を担わせるという意味 からすると、不採算のへき地の医療を多く担っているのは自治体病院であるのも事実で す。それに対して、一般財源が多いからできるのではないかという批判があることも承 知しています。ただ、性格上は、どうしてもそういったところを担っているという面 も、あながち看過できないと考えていますので、そういう面からすると改善すべき点は あるにせよ、いまの公立・公的は、それなりの公益性というのは住民の目から見てもあ るのではないかと、私自身は考えています。  将来、それと同じような形で民間の医療機関も、そういった地域における住民に望ま れる医療を、公立病院と同じような形で担っていただければいいのではないか。そのよ うな気持からこんな形のものを、我々としては今後持っていけばいいのかなと思ってい るだけです。 ○田中座長  向こうが駄目だから、こっちも駄目でいいという結論にはならない。向こうが駄目な ら、こっちを良くしようだったら、向こうも良くしなさいと暗黙に言っていることにな るのかもしれません。  先ほどの効率性の点ですが、目的を効率的に果たすことが経済学で言う効率性ですか ら、課長補佐が言われた待ち時間があっても効率性と別に相反しないのです。例えば消 防署は1日中火事を消していれば効率的で、待機しているのは非効率ということにはな らなくて、上位目的が社会の安心感だとすれば、そのための待ち時間は別に効率性とは トレードオフにならないです。上位目的を非効率に果たす例は、無駄な、先ほどの品川 委員の言葉を使えば、要らざる電気をたくさん点けておく、これは非効率です。電気2 個でいいところを10個点けているのは非効率ですけれど、待ち時間があることは別に非 効率ではないから、そこはもっと安心していいのではないですか。  ほかになければ次の論点に進みたいと思いますが、医療法人についていかがですか。 ○品川委員  先ほどの山崎委員のご指摘の点は、ある意味ではこの議論の問題点を突いていると思 います。建前は公益性を高めるということで公立病院だ国立病院だと。ここで議論する 認定法人の問題も、何となく公的なものにもっていくと公益性が高まるような印象を与 えるかとは思います。これはひとつの組織論的な考え方をすると、公立・国立病院を運 営する人たち、あるいはいろいろな国家機関や公立機関を運用する人たちの意識の問題 なのです。どうしても親方日の丸的になり、お金は誰かが面倒を見てくれるからという ことで、どうしても効率性が蔑ろになるのです。あるいはその中では、どうしても権利 意識ばかり強くなって、我々がそういう公立病院に行くと、とにかく1分でも診療時間 に間に合わなかったら、もう受付はピシャッと閉められてしまって「駄目です」とな る。普通の民間病院だったら、そこは何とかなる。そういう融通性の問題でも、私の経 験では公立病院の窓口にいる人ほど冷たいです。彼らは自分たちの労働時間さえ守れば いいという安直な問題がある。  私も長い間公務員をやっていて、そこは民間レベルでやる効率性の問題と、どうして も国公立が担うところは、これは病院だけの問題ではなくて、誰かがお金を面倒見てく れる、自分が稼がなくてもいいという安堵感が、どうしても効率性の足を引っ張る。そ れは究極的には人間の性かもしれないですが、そこをどうコントロールしていくかとい うことは、本当は常に同じ問題を繰り返しながら、議論せざるを得ない問題がそこにあ ると思います。 ○山下指導課長補佐  ひとつ教えていただきたいのですが、公益性の考え方です。山崎委員が言われたよう に国立病院だから、自治体病院だから、いわゆる公と言われている国や地方自治体がつ くった病院だから公益性があるのだ、民間がつくったから公益性がないんだという議論 が、もしかしたら過去にやってきたのではないか。だけど、そこはまだ私の個人的な考 えかもしれませんが、そうではないだろうと思います。それは主体が公だから公益性が ある、主体が民だから公益性がないというのではなく、同じ医療でも例えばへき地の医 療や救急というように、どのような主体がやっていたとしても、そのサービスで公益性 があるということと公益性がなしということを考えたほうがいいのではないかというの が、こういった議論を考えるにあたって私は問題意識の背景に持っているのです。それ について、よろしければ、ご意見等をいただければと思います。 ○三上委員  公益性の考え方で、医療はすべての病気の方に提供するということで、一般の国民や 患者さんにとっては利益のあることですから公益と言えるわけですが、ここで言う公益 は不採算であって公益であるということです。官あるいは公が提供する公益というのは 不採算な部分、民ができない部分を提供するというのが、国公立の提供する公益という 部分であり、民間はいわゆる不採算であったら本来できないわけです。医業は継続でき ないということですから、本来の医療法人制度の精神にも反するわけです。いくら公益 があるからといっても、不採算であれば民間の医療法人は提供できない。提供し続けら れないということです。短期間であればできますけれども、長期間は継続できないとい うことです。  元来、医療法人制度ができたのは、いろいろ言われていますけれども、非営利、公益 というのは本来の医療のあるべき姿であって、医療法人制度とは全く関係ない話です。 医療法人制度は医療の継続ということが本来の目的で、37%の法人税が30%で、7%も 少なくて済む。あるいは相続のときにも譲渡しないということですから、法人というの は持分は株ではないということで、そこにも税金はかからない。医業が解散するまでは 継続できるということが前提で、本来スタートしたのではないかと思います。それが、 いつの間にか株式と同じような考え方になって、営利法人だというふうに言われるよう になり、今のような形になって改革ということが言われ出したのではないかと感じてい ます。 ○豊田委員  公益ということについて、先ほど補佐が、官と公だけで公益を分けられた議論があっ たということで、議論があったかどうか、そのような意識が一般にあったことも事実だ と思います。しかしながら近年の医療法人制度について言えば、この公益性の担保とい うときに一定の形を取らされるわけです。それは何かというと、持分の有り無しである とか、同族の割合がどうこうとか、これは形としてそれを求められる。持分があること が公益を損なうのか、同族者が多いことが公益性を損なうのかという問題と、そこの中 で行われている、例えば医療法人で言えば剰余金を還流して同族に入って行く問題と は、また別の問題だと思います。可能性としては想定できるけれども、イコールではな いのです。それをイコールであるというふうにいろいろ議論される。したがって公益性 の担保というと必ず持分がどう、同族がどうということになっています。  この辺の議論は後で私から発言していきますが、公益性を測る尺度として、これを重 視しているとなかなか形の上で話が進まない部分にぶつかるのです。医療法の中には、 いつも問題になる持分についての記載もない。この持分とは何なのかということを、き ちっとこの際、整理することも大事なことではないかと思います。この検討会はそうい うことを議論しますので、その辺をはっきりしていきたいと思います。私個人の意見を 申し上げれば、持分を持っているから営利だという議論には、絶対に同意できないです ね。持分があっても公益の仕事はやれるわけですし、現実にやっていると思いますし。 そういうことで、公益とは何かということについて議論していただきたいと思います。 ○田中座長  それぞれ山崎委員、豊田委員、あるいはほかの方々から、この論点について根本的な 問題をご指摘いただきました。ほかによろしいですか。ひとまずこれについての議論は 終わりとします。  次に「非営利性」について議論いたします。最初に、日本医療法人協会において取り まとめられたアンケート調査の結果を、豊田委員よりご説明いただきます。続いて事務 局から考え方についてお話を伺い、まとめて議論したいと存じます。豊田委員、お願い します。 ○豊田委員  参考資料1です。これは説明の仕方によってずいぶん長くなりますので、実際の数字 に基づいて説明をさせていただきます。1頁から7頁までは、これからご説明する数字 に基づいて当協会でまとめたものですので、後ほど読んでいただきたいと思いますが、 1頁をご覧ください。今回のこの調査は、「医療法人の非営利性等に関する調査」とい うことで、日本医療法人協会で実施しました。その目的は、医療法人の非営利性・公益 性向上に必要な資料を得たいということ、それに基づいて今後の医療法人制度改革に資 する資料にしたいということです。  調査対象は、全会員の1,410法人にアンケート形式で調査を行っています。実施した 期間は昨年の9月14日から11月初旬まで、アンケートの形で実施しました。残念ながら 回収できたのは1,410法人中182法人(12.9%)ということで、調査としては残念な結果 ですが、一応、従来、当協会で議論されてきた内容と大きく隔たるものではありません でした。  次に8頁は、現在の当協会における組織として、どういうふうになっているかを見て いますが、役員、社員、出資及び同族割合の現状を調査しています。理事ですが、持分 のある社団、持分のない社団と、大きく分けるとこういう形になるわけです。そのほか に財団があります。いろいろ問題になっている持分のある社団は、理事の数が大体5〜 10人、それに対して持分のない社団は10〜15人と、この辺にはっきりとした数字の差が あります。監事を見ると、持分のある社団では1人か2人ということですが、持分のな い社団になると2人から3人となっています。  9頁は理事の同族割合です。今回の医療法人改革の中でこの同族性という問題が起き ています。理事の同族性の割合が表3に出ています。これで見ると持分のない社団は特 別あるいは特定医療法人です。出資額限度法人は説明が必要ですが、これは9月から調 査を始めていて、ここに書かれている出資額限度法人は6月に整理された新しい形の出 資額限度法人というわけではないです。そういうのは期間的にも入っていない。従来か らある、要するに内容はこの検討会で整理された形ですけれども、その辺の差がここに 出てきます。理事の中の同族割合がご覧のとおりで、この先で出資のことも出てきます が、この前、整理された同族ではない。形はああいう形の出資額限度法人ですが、内容 はこれから出てくるとおり違ってきます。  そういうことで理事の割合は、持分のある社団は非常にばらついてはいますが、例え ば90〜100%の理事が同族であるという法人が27%、現在、出資額限度法人と言ってい ますけれども、そういった法人でも29.4%ということで、この出資額限度法人が前回の 整理とは大分違っていて、今後、対応を要することになるかと思います。こういうこと で理事の同族性が非常に高い。しかし、ばらつきが非常に大きいということです。監事 についても、やはり90〜100%が同族だという法人が、持分のある社団、出資額限度法 人をいま採用している法人で18%前後に達しているという現状です。  10頁は、社員数、出資額、同族社員割合、同族出資割合ということで見ています。表 5で社員の数をご覧ください。社員数は大体持分のない社団では10〜15人、持分のある 社団では5〜15人です。  出資額は表6です。いちばん左の端に払込時点での金額が書いてあります。これでご 覧いただくと出資額限度法人のときにいろいろ議論が出てきましたが、現在、持分のあ る社団、出資額限度法人と書いてあります。これをご覧いただくと、出資額限度法人を いま採用しているところでも、払込済みの出資額は2,000万円以下で64.7%、持分があ る社団で46.6%です。今後議論される持分のある社団、現在のここに出てくる出資額限 度法人をとっても、2,000万円以下で半数に近いということです。ご覧のとおり持分の ある社団では億を超えるところもあり、非常にばらつきが大きいことがご覧いただける かと思います。  11頁の表7ですが、それでは社員の同族割合はどうなっているのかです。持分のある 社団をご覧いただくと、社員の同族割合が50%以上は、この合計を見ると48.9%、49% 弱です。社員の半数以上が同族であると。100%同族であるというのも26%で、同族性 が非常に高いことがご覧いただけると思います。現在、出資額限度法人ということで定 款を作っている法人についても、似たような状況で同族性は非常に高い。これはあくま でも前回の整理の前の出資額限度法人ですので、形の上では持分のある社団の1つであ るということでご覧いただくと、今後、どうすべきかということが見えてくると思いま す。  表8の同族出資割合ですが、出資のある出資額限度法人、持分のある社団でご覧いた だきたいと思います。出資の90〜100%を同族で出資しているという部分をご覧いただ きたいのですが、いま出資額限度法人を採用しているところで47.1%、持分のある社団 では62.5%ということで、出資も同族による出資に頼っている法人が非常に多いことが ご覧いただけると思います。  12頁の表9では、そういうふうな形で構成されている医療法人が、非営利性あるいは 公益性に対して、どのような意識を持って業務を行っているかが出ています。表9は、 非営利性の具体的なイメージはどのようなものかですが、この問題は質問の仕方が難し いわけです。現在、いろいろ問題になっているいろいろな項目について非営利と考える か営利と考えるか、どう考えますかという形で質問しています。  先ほどから問題になっている、(1)の効率的な医業経営について高収益を上げること が営利目的かという質問に対して、営利目的としていると考えられないというのが全体 で58%です。営業で一生懸命努力をして効率的な経営を行っていることは営利目的だと 考えるのが13%に過ぎないのですが、しかしながら、そう考える人たちもいるというこ と。6割近い人たちが、それは営利目的とは違うでしょうということです。  (2)の附帯業務または収益業務を広範囲に行っていることについては意見が分かれま す。営利目的と考えないというのが28%、営利目的と考えられるのではないかというの が38%もあります。  (3)の医療法人の役員が同族関係者で占められていることは、先ほどお示ししたとお りですが、そのことが営利目的であると、営利に結び付くのかということに対しては、 そう考えないというのが全体で40%あります。これは持分のない社団でも45.8%はそう 考えられるとなっていて、持分のある社団の人とほとんど同じ考え方です。それに対し て同族で占めているのは営利と考えられても仕方ないというのが22%です。2対1の割 合です。  そういう意識の中で、(4)の医療法人の社員・役員とMS法人の役員・社員と同じで あることについてはどうなのかとなると、明確にそれは営利だろうと言われても仕方な いだろうというのが47%になります。  (5)のMS法人をはじめとする株式会社が医療法人の出資者又は社員になることにつ いてはどうかというと、同じようにそれは営利と考えられるということになります。  (6)のMS法人をはじめとする株式会社の代表者が医療法人の役員又は社員に就任し ていることについても、それは営利と考えられるのではないかとなっています。  (7)のMS法人を通して医療法人の剰余金を分配すること、還流して役員に戻るとい う形については、圧倒的に7割以上の人が、これは営利と考えられても仕方がないでし ょうと考えています。  13頁、これは先ほどのに続くわけですが、(8)で出資持分を有することについてどう 考えるかということです。出資持分を有していること自体が営利と考えられるのではな いかということに対しては、そうではないというのが48.3%、営利目的と考えられても しようがないというのが12%で圧倒的な差があります。出資持分を有していること自体 が営利とは直ちに考えられないというのが、持分のない社団、出資限度額法人、持分の ある社団で大体同じような数字が出ています。  (9)で社員の退社時に出資持分に応じた剰余金の分配が行われることについてはどう かという質問に対しては、そういった配分をすることによって営利そのものではないに しても、具合が悪いと考える人が41.8%です。それは営利とは何ら関係ないでしょうと いうのが16.5%で、それは好ましくないという数字のほうが倍以上多くなっています。  (10)で社員の退社時に出資払込額を限度として払戻しすること、いわゆる出資額です が、それに対しては68.7%の医療法人が、そういう形が営利を目的としているとは考え られないとしています。それでも営利だという人が7%いるわけですが、68.7%の人が そういう形は営利ではないだろうとしています。  (11)の社団医療法人の解散時に出資持分に応じた剰余財産の分配を行うことはどうか となると、やや似た数字になってきますが、そのことは別に営利とは関係ないでしょう というのが26.9%、営利と考えられるかもしれないというのは33.5%、これはぐっと近 づいてまいります。  (12)の社団医療法人の解散時に出資払込額を限度として残余財産を分配すること、出 資額に限るということになると、先ほどの社員の退社時と同じことで、それは営利とは 考えられずに済むだろうというのが67.6%、それに対して、やはり営利と考えられるで しょうというのが7.7%です。これは途中退社、解散ともほぼ同じです。  (13)の医療法人の役員の地位のみに基づいて高額な報酬を得ることは、圧倒的にそれ はいけませんよというのが59.3%です。営利は好ましくないという認識でよろしいと思 います。  (14)の提供する医療の内容に基づいて医療従事者に高額な報酬を支払うこと、優れた 医師を招聘して、その先生にたくさん払うことは、営利と関係ないということになって います。  14頁は以上のことをまとめています。言うならば剰余金の使い方について、これが分 配になるようなことは好ましくない、剰余金を医療に再投資し、質の高い医療を目指す べきだ、地域住民に安定的に安全な医療を提供し、永続性を図ることが大事であるとい ったことが書かれています。  15頁は出資持分ですけれども、先ほどお話した出資についていろいろな質問をしてい ます。出資持分があるから自分の病院を良くしようという意欲が出てくるのだという考 え方に対して、賛成しますか反対しますかということです。そういう考え方があるから こそということで、賛成が28.6%、そういう考え方はあまり賛同できないが23%で非常 に拮抗しています。  それから、こういう素朴な考えが出てきます。出資持分を解消すると病院経営の権利 が奪われるのではないかという心配がありますけれども、賛成するほうが少ないです。 そんなことはないでしょうというのが30%、そういう心配がありますねというのが23% ですから、これも似たような形です。次はあまり大きな問題ではありません。先祖代々 のというのはいいでしょう。  病院経営上、出資持分を解消してより公益性の高い法人形態に移行することについて はいかがですか、という質問に対しては、これは50%以上、半数以上の法人が賛成する としています。これは財団から始まって、持分のない社団、出資額限度、持分のある社 団と、全部がそういうことで、全体として57.1%がそうしたいと願っているわけです。 11%はそれは考えないということです。  16頁、表の11は、出資持分に伴う問題はどう解消したらいのかということですが、現 在、出資持分のある社団の法人が主になると思います。持分のある社団、それからここ に書いてある出資額限度法人は、先ほど説明したとおり新しい形の出資額限度法人では なくて、従来からの出資額限度法人が主であるということ。その出資持分に伴う問題を どう解消するかということで、(1)は出資額限度法人の普及を図るということで、全体 の中で58.8%は、出資額限度法人が必要であるということです。持分のある社団は63.6 %で、出資額限度を現在選択している医療法人はみんなそう考えていますし、出資額限 度は必要ないというのは12.1%になっています。  さらに(2)で特別医療法人・特定医療法人の要件緩和について、つまりこれは要件緩 和と書いていますが、要件緩和があればそちらに移行したいと読んでいただきたいと思 います。そういうふうな特定あるいは特別の形に移行することによって、出資額持分の 問題を解決したいというのが全体で75.8%です。この数字は出資額限度法人よりも高く なっています。その必要はないというのは、持分のある社団で出資額は12%でしたが、 こちらのほうは5%ということで、出資額限度法人あるいは特定・特別医療法人に移行 したいという思いが非常に強いことがこれに出ています。  17頁、配当禁止については、どのようなイメージで捉えていますかということです。 配当禁止についてはということですけれども、剰余金の扱いはどういうふうにと読み替 えていただくと、この表はわかりいいわけです。17頁の表12です。この剰余金を配当禁 止によって、病院の建て替えや医療機器の購入に充てるといったこと、要するに配当禁 止に抵触しないと考えている人が92.9%、ほとんどの人がそう考えています。  提供する医療の内容に基づいて医療従事者に高額な報酬を払う。これは先ほどのドク ターや特殊な技術を持った人たちに払うということで、こういうことも配当禁止には抵 触しないでしょうということです。  近隣の土地、建物の賃料に比較して著しく高い賃借料を支払うことは、同族にという 意味と解釈してください。そういうのはよくないですよというのが77.5%あります。そ れは配当禁止に抵触するでしょうということになります。そのほかに医療や健康に関わ る研究に使うこともいいですということ。  退社時や解散時に、社員に持分に応じた払戻しをすることは、配当禁止に抵触するの ではないかと、これはよそから指摘されているわけですが、医療法人の内部でもそうい う認識は45.6%の人にある。それは抵触しませんよというのは22.5%で半分以下になり ます。  退社時や解散時に、社員に出資払込額を限度として払い戻すこと、これは出資額限度 の方式ですけれども、これならどうかというと、72.5%の人が配当禁止に抵触しないと しています。要するに払い込んだものを返してもらうだけだという意味になります。  他の医療法人への出資については、34.1%の人が配当禁止には抵触しないでしょうと しています。  18頁は剰余金に関する自由な意見を求めていますが、やはり医療の内容、質や患者サ ービス向上のための設備投資等に充てるべきというのが圧倒的に多い数字です。  次に公益性の問題です。19頁の表13です。先ほど来議論になっている公益性の向上と 言いますが、どういうことを具体的にイメージするのかを書いています。救命救急医療 を実施することが84.1%、24時間365日診療を実施していることが76.4%、それから数 字の大きいところでは、へき地など採算の合わない地区において医療を実施しているこ とが83.5%です。医療の研修・研究は6割ぐらいの人が公益の中に見ております。社会 保険診療を実施していることも62%あります。もちろん、経営に関する情報を提供する ことについても、47%が公益性が高いと見ています。  20頁の表14は公益の問題ですが、「一般の」というのは現在は「特別・特定」とある ので、持分のある社団と考えていいと思います。そういった法人に、積極的な公益性ま で要求する必要があるかという質問に対して、すべての医療法人に求めるべきであると いうのが36.8%、不必要である、そこまで求める必要はないというのが32.4%、これに ついてはどちらとも言えない人が3割といった数字で分かれております。下に意見があ りますが、「公益性とは、患者・地域のために良質な医療を提供することである」とい う認識がトップに挙がっております。  次に、特別・特定あるいは出資額限度法人について、どのような考えを持っているか を聞いております。移行する財団もあるわけですが、特定医療法人について、構成割合 のパーセンテージを見ると、移行の意思があるというのは出資額限度法人が5.9%、持 分のある社団が23.9%。移行の意思はあるが困難としているのが出資額限度法人で52.9 %。両方を合わせると、半数を超えた法人が特定医療法人に移行したいと考えていると いうことをご覧いただきたいと思います。  なぜ移行するのかについてですが、いちばん多いのが、医療法人の永続性を図りた い、相続税の負担を軽減させたいという現実的な問題が出ており、両方を合わせると 24.6%で、医療法人の永続性を図りたいということに繋がると思います。次の選ぶ場合 の要因として、法人税の軽減税率を適用したいが全体で9.6%、出資額限度法人が16.7 %、持分のある社団は13.0%といった割合になっています。やはり、いちばんは医療法 人の永続性を確保したいということです。  22頁の表17は、移行の意思はあるが、なぜ困難なのかという問題について、いちばん 多いのが持分の放棄がなかなか困難であるということになります。それに対応する形で 表18は、移行の意思はないと答えた方の理由です。持分を放棄したくない、現在の出資 社員の経営権を確保したいということから、移行の意思はないとしています。ですか ら、移行できないという中には、移行したいが持分の放棄が困難であるというのと、し たくないというのと両方あるわけです。  23頁、特別医療法人は、特別・特定とほとんど似たような数字が出てきますが、本質 的な内容を述べますと、特定は法人税率が軽減されている、特別医療法人は収益事業が 行えるという2つの大きな違いがあるわけです。特別は一般の営利法人並みの法人税率 なので、その辺が結果として出ているようです。これは持分の放棄や同族性は一緒です から、特別医療法人を志向する法人は収益事業を行いたいということになります。  表22は、移行の意思がない中に、移ることで公益性を担保しても、法人税は営利法人 並みなので、法人税の軽減税率にメリットがないから移りたくないとなっています。  25頁の出資額限度法人については、先ほどから繰り返して述べておりますが、現在の 出資額限度法人が目指すものと、以前ここで整理された法人とは大幅に違うので、これ から提案する本来あるべき姿の出資額限度法人に移行したい法人という意味で捉えてい ただきたいと思います。出資額限度法人に移りたい、移行の意思が困難であるの両方を 合わせると56.8%であり、意思はあるが困難であるというのは、前回の整理後、高い4 つのハードルのためできないということで増えたのですが、移行したいグループではあ ります。  表24の、なぜ出資額限度法人に移るのかということに対しては、医療法人の永続性を 図りたいというのが圧倒的でした。この辺は特別・特定とあまり変わりがないようで す。パーセンテージについては、特別・特定より、むしろ高くなっています。特別・特 定にはなかなかいけないが、前段階の出資額にまず移りたいとするパーセンテージが、 特別・特定の永続性を図りたいというパーセンテージの倍近い数字として表れているの だと思います。  26頁の表25です。移行の意思はあるが困難と答えたのはなぜかということに対して は、先に示された4つの高いハードルが全部出てきます。ここでは、払込出資額を超え る持分の放棄は困難が7%、同族出資比率においては、同族がその半分を超えてはいけ ないのですが、その同族出資比率要件を満たせないというのが11.3%となっています。 また社員比率についても、同族が半数を超えていると駄目ですが、これが難しいという のが9.6%です。理事の数を3分の1以下にするという問題についても、このハードル が高いとしたのが7.8%ありました。前回の整理された内容を見て、合計28.7%が、や ろうと思ったができなくなったとしています。移行の意思がないというのは、先ほどの 特定に移らない人、特別に移りたくない人と同じです。  27頁以下は「医療法人の業務範囲」と書いてありますが、これは附帯業務の範囲で す。附帯業務について、いま何を行っているのか、何をやりたいのかということが一覧 として出ております。後ほど読んでいただければと思います。どちらかというと、患者 の利便性、自分たちの行っている医療がスムーズに行えるよう、それに接続する業務を ある程度自由にやらせてほしいという願いが出ております。  全体としては医療法人について、数が少なくて大変恐縮ですが、内部資料として調査 した内容では、医療法人の会員は、確かに非営利性、公益性を高めたいということは、 いままで述べてきたとおりでありますし、非営利・営利についてはいままでの議論とそ れほど違いのない結果だったのではないかと捉えております。これから議論すべきは公 益性は何か、持分の問題はどうするのかといったことで、医療法人の中では大きな問題 ではないかと思います。以上です。 ○田中座長  興味深いデータをありがとうございました。引き続き、事務局から資料2−1以下の 説明をお願いいたします。 ○山下指導課長補佐  資料2−1の「『公益法人制度改革に関する有識者会議』報告書における『非営利』 の考え方」について説明いたします。平成16年11月、政府の内閣官房において、公益法 人制度改革について抜本的に見直そうということから、現在ある民法上の公益法人と中 間法人法にある中間法人とを引っくるめて、つくりやすい非営利法人を新たに創設し、 その中から公益性の高いものに税制優遇なり、公益性の高いものに位置づけてはどうか ということで整理されているものです。この中で注目すべきところは、いわゆる営利を 目的としない非営利の考え方について、医療ではない別の観点からも報告書が出ている ということで、「非営利」についてどう考えているか、望ましい法人の規律について、 有識者会議の報告書を抜粋しながら参考までに報告したいと思います。  1頁に「社団形態の非営利法人制度」とありますが、「営利(剰余金の分配)を目的 としない団体に一般的に法人格取得の機会を付与することによって、法人を設立して活 動しようとする人々の自由活発な活動を促進する」と。営利法人との区別については、 「社員の権利・義務の内容として、出資義務を負わない、利益(剰余金)分配請求権を 有しない、残余財産分配請求権を有しない、法人財産に対する持分を有しないことと し、営利法人制度との区別を明確化する」と書かれています。  2頁は設立についてで、社団法人の設立については、「2名以上の者が、定款を作成 し、理事の選任を行い、設立の登記をすることによって成立する。設立時に一定の財産 を保有することは要しない」。社員については「社員となる資格は、各団体の定款で定 める。また、社員は、定款の定めに基づき経費支払義務を負うが、法人の対外的な債務 については、責任を負わない」、いわゆる有限責任とされています。  ガバナンスですが、「社員総会は、強行規定に反しない限り、いかなる事項について も決議できることとする」。(イ)理事については、「法人運営の適正を確保するた め、理事の法人又は第三者に対する責任規定を設ける。さらに、他の理事によって理事 の法人に対する責任が不問に付され、法人の利益が害されることを防ぐため、株式会社 制度と同様の社員による代表訴訟制度を新たに設ける。また、濫訴防止の観点から、代 表訴訟の制限に関する規定についても、同様の検討を行う必要がある」とされていま す。(ウ)監事については、「監事は、法人の業務(会計に関する事項を含む)を監査 するものとし、監査の実効性を確保するための権限を法定する」としています。  (4)の計算は「法人の財務状況を適切に開示するため、社員及び法人の債権者は、計 算書類の閲覧又は謄抄本の交付を請求することができるものとするほか、理事は、社員 総会の承認を得た貸借対照表若しくはその要旨を公告し、又は、公告に代え、インター ネット上のウェブサイトに表示しなければならない」。  (5)の拠出金については、「法人の財産的基礎の維持を図るため、定款の定めるとこ ろにより、拠出金制度の選択を可能とする。拠出金の返還は、拠出額の限度に限られ、 利息を付することはできない」と書かれております。  4頁の(9)清算については、「公益性を要件としない法人における残余財産の帰属に ついては、法人の自律的な意思決定に委ねることが相当」と書いてあります。  いまのは社団の話ですが、財団についての非営利法人制度については4頁の(2)に 「財団法人には、社員総会が存在しないため、理事の業務執行を牽制、監督する新たな 機関(評議員会)を法定するとともに、理事の業務執行の適正を確保するため、監事を 必置機関とする必要」とあります。  5頁では評議員会について、「評議員会は、3人以上の評議員により構成され、理事 の解任、監事の選解任、計算書類の承認など法律で定める事項に限り、決議を行う機関 とする」とあります。  6頁の計算では、「事業年度毎に計算書類を作成した上、評議員会に提出してその承 認を求めなければならないものとするほか、法人の財務状況の開示について、社団法人 と同様の規律を設ける」となっています。(キ)の清算については、「公益性を要件と しない財団法人における残余財産の帰属については、寄附行為によって定めるものとす ることが適当である」とあります。  以上が公益法人制度改革の有識者会議報告書で、非営利法人の規律について書かれた ものです。  資料2−2は簡単な比較ですが、当時の厚生省健康政策局の医療施設経営安定化推進 事業で出されたものです。左側の各非営利法人の種類に対して、それぞれ税や寄附、配 当や設立、収益事業の可否、出資持分、議決権などが書かれております。参考までに表 を分けておりますが、株式会社についても同様に比較対照できるように整理したもので す。参考までにご覧ください。  次に資料2−3に移ります。先般12月10日に私どもが整理した非営利性の中には、公 益性の高い(仮称)認定医療法人については、役員の報酬規程、報酬額ではなく報酬規 程を開示することとしてはどうかということを提示させていただきましたが、これが公 益法人ではどうなっているか。現在、公益法人は平成14年3月に閣僚会議の申合せで、 国から補助金を受けている公益法人、例えば補助金や委託費の交付を受けている公益法 人、検査や資格付与の事務・事業を委託しているような公益法人については、役員の報 酬・退職金に関する規程を定め、さらにそれを主たる事務所に備えるとともに、一般の 閲覧に供するようにし、インターネットにより公開すると書かれています。  先ほど報告した平成16年11月の有識者会議の報告書では、公益性を有するような法人 における役員報酬については、「しかしながら、適切な役員報酬等について、すべての 公益性を有する法人に対し一律の基準を設けることは困難であり、法人運営に必要な有 能な人材を確保する観点からも、適切な役員報酬等のあり方については、公益性を有す る法人の自律性を尊重することが望ましいと考えられ、役員報酬等については、例えば 役員に対する報酬等の支給基準の開示を求めるなど、国民一般に対する情報開示を通じ た社会監視の対象とすることが適当」と書かれています。  それ以降の資料については、すでに開示されている財団法人と社団法人の役員報酬規 程を参考までに付けてあります。最後の頁には、役員報酬の実態ということで、政府の 公益法人白書から抜粋したものと、独立行政法人の役員報酬が付けてあります。私から の説明は以上です。 ○田中座長  豊田委員、山下指導課長補佐の説明について、ご意見等があればお願いいたします。 ○真野委員  素人的な質問ですが、公益法人の有識者会議の報告書の4頁のいちばん下で、「財団 法人には、社員総会が存在しないため」云々で、「新たな機関(評議員会)」としてい ますが、財団法人には評議員会が既にあるのではないですか。別に文句をつけているの ではなく、なぜこのような書き方になるのか、ちょっとそれが疑問です。 ○山下指導課長補佐  公益法人はあまり詳しくないのですが、財団法人とは財産を寄附し、その財産を元に 公益性の高い事業を行う、その行うガバナンスが理事会だと。その理事会をチェックす る機能が、本来評議員会だと考えております。 ○真野委員  私もそのように理解していたのですが、資料2−2には議決権は評議員会にありとな っています。これはどう考えればいいのでしょうか。 ○梶尾企画官 4頁の話自体、いま民法には評議員制度は載っていません。実行上はあ るというぐらいの話で、実際は財団法人には大抵評議員会があり、それを制度的に位置 づけるべきではないかと。資料には、評議員会における議決権は1人1票だということ を書いているだけです。 ○真野委員  全体の議決権がこちらにあるという話ではないのですね。 ○梶尾企画官 そうです。 ○真野委員  わかりました。もう1つ、公益ということについて、先ほどからいろいろ議論が出て おり、公益は儲からないものをやるという話がありました。質問内容にもよるのでしょ うが、医療法人協会のアンケートでは、必ずしもそのような視点のものばかりではない のも公益として挙がっていますが、どちらかというと機能であるという考え方になって いるのでしょうか。 ○豊田委員  要するに、収入が少ない高いで、公益である公益でないというのは違うと思います。 医療が行っている公益というのは、特定の地域住民に対して、常に安心感を与えるよう な体制を取っていくこと自体が公益的な組織としての最も基本的な問題であり、それに 基づいて医療を行うことが公益です。医療のいちばんの問題は救急の問題ですが、そう いったことがここで高く評価されているのもそのようなことによるのです。医療の場合 は、金銭の問題などといったこととは違います。 ○三上委員  私は少し違う意見です。救急にしても非常に高い収益があるならば、当然、民間の株 式会社もやろうとする。いまも規制緩和で救急搬送等について、株式会社が入ろうとい う話が出ていますが、そういったものは収益、営利的なものであって、公益事業ではな いと思います。現在ある体制の中で不採算で、なおかつ住民が必要とする、民間ではな かなかできないことを提供するというのが公益事業であると理解します。 ○豊田委員  三上委員と意見が違うわけではありません。足りなかったのですが、この中では救急 をいちばんに挙げているのでそのように説明しましたが、当然、この中にも不採算な部 門やへき地の問題もあります。私が言おうとしたのは、収益などといったことよりも、 医療の場合の公益の問題をお話したので、委員が言われることと矛盾はしないと思って おります。 ○品川委員  質問ですが、先ほど豊田委員から、医療法人に1,410件照会して回収率が12.9%とい う説明があったのですが、この種の調査にしては非常に回収率が低いと思うのです。医 療法人それ自体が、このような問題について関心が低いのかどうか、なぜこれほど回収 率が低いのかということ。もう1点、先ほど、公益法人の役員報酬の説明がありました が、通常の公益法人の役員報酬は、ほとんどが業務執行の対価だと思うのです。しか し、医療法人の場合は医師としての、いわば役務提供の対価と、片手間に業務執行をや っている対価と、理事なり理事長が報酬としてもらう区分を実際はどのように考えるの でしょうか。以上の2点について伺いたいと思います。 ○豊田委員  回収率が低いのは、ここで発表する上でいちばん気になっていた問題ですが、このよ うな問題に対して無関心であるということではないのです。それぞれが触られたくない ところ、困ったと思っているところを全部聞いているわけですから、非常に躊躇した結 果がこのようなことではないか。いろいろと話を聞いて、いま医療法人が抱える悩みが このような形で出ているのではないか。ここ数年間の議論を見ていると、例えば同族で 固めることが何となく肩身が狭くなってきているといったことがあり、「うちは100% でちょっと出しにくい」とか、何となく同族が悪い、持分が同族であることが悪い、役 員を同族で占めることは肩身が狭いという議論がなされていることが背景にあると思い ます。 ○品川委員  回収率自体について、1頁に社団、財団、あるいは社団で持分あり・なしで回答率が 書いてありますが、それぞれの回答割合というのは算定されているのですか。委員が指 摘されたように、社団で持分のある人たちがいちばん答えにくいのだとすれば、そのよ うな人たちの回収率は何パーセントか、そのようなことまではやっていないのでしょう か。 ○豊田委員  私の説明をもっと正確に述べますと、いろいろな話を聞いていて、躊躇している部分 が非常に多いということで、無関心ということは明確に否定できます。現在、いちばん 問題になっている永続性については、無関心であるはずがないのです。どうやって安定 させ、永続性を図るか。一方で、いろいろ問題になっていることは持分のある社団につ いて、営利法人であるという指摘の下に同族の問題が大きく出てきています。先にここ でまとめた出資額限度についても、高いハードルなので、それをクリアしない法人は駄 目なのかという、ある種の失望感も与えていますし、諸々の結果ではないだろうかと、 私どもも非常に残念に思っております。 ○品川委員  むしろ、問題ありということで回収率が高くなったほうが。 ○豊田委員  そうなってほしかったですが、結果はこのようなことになりました。役員報酬の問題 について、1つは医師であり理事長である、つまり理事長の仕事もやり、医師としても 現役で働いている立場の報酬と、その対極にあるのは単に理事である、実際は役職が優 先しており、仕事の内容はそれほど伴わないのに、役員ということだけで報酬をもらう ということについて聞いています。これは駄目だというのが多かったです。その辺のと ころは、非常に常識的な形で結果が出ています。 ○品川委員  ほとんどが医師としての役務提供の対価で、業務執行の対価はあまり入らないという ことですか。 ○豊田委員  その辺の線引きは難しいです。医師として片手間ということは言いたくないわけです が、医師としてフルに働き、さらに理事長としてもいろいろな決断をしていくという理 事長が圧倒的に多いのです。ですから非常にハードな仕事をこなしているわけで、仕事 に対する報酬は高額であっても、それは営利だとは私は思わないのです。 ○品川委員  そうすると、区分もあまり明確にはしていないということですか。 ○豊田委員  区分は、制度としてはっきり聞いていません。ただ、名目だけで報酬を受けたり、高 額になったりすることについては聞きました。 ○山崎委員  いまの質問に関連してですが、理事長は理事会で選出されます。医療法人が30億、40 億といった多額の借入をするとき、理事長の無限責任で借りるのです。この辺の仕組み が非常におかしい。例えば理事会でひっくり返され、理事長が退任した場合、その債務 は誰が保証するのか、そのような場合に債務の保証の部分が非常に大きく絡むのです。 法整備を検討するときに、理事長の借入は有限責任という条件を付けないと、法人を運 営する際に支障が出ると思うのです。 ○真野委員  山崎委員の話から少し戻るかもしれませんが、報酬の部分で業務執行ないしリスクテ イクの部分、そこがあまり少ないというのは変な話ではないかと思います。院長先生や 理事長先生は医療の能力が高いという解釈かもしれませんが、普通の医療だけをやって いる人と比べての報酬の差というものがなかなか説明できないわけです。山崎委員の言 われたリスクテイクの部分、あるいは、借入というリスクではなくても医療法人全体に 責任を持っているという部分というのは、かなり大きく評価されているはずだと思うの ですが、どうでしょうか。 ○豊田委員  特に、持分のある社団の大きな問題は、理事長という名前で1つは出されておりま す。医療法人制度ができて50年以上の間に、医療法人もいろいろな時期から立ち上がっ て現在に至るまでに、例えば建物が古くなって改修する、新たな施設をつくる場合、銀 行はただでは貸してくれません。当然、担保を求めてきます。理事長だけがそんな資産 を持っているはずがありませんから、社員になっている親族といった人たちが財産を担 保に入れて借入をしている、という実態があります。放棄できないなどの大きな要因と して、私有財産が病院の担保に入っているということが現実としてあります。これにつ いての報酬などというものはないわけですが、民間の医療法人が立ち上がってくるとき に、そのような形でそれぞれの財産を間接的・直接的に使って、現在の医療法人になっ ているという現実を理解していただきたいと思います。単に同族何パーセント、持分何 パーセントという形で切り捨てられると、50年間の歴史や、ここまできた日本の民間医 療の現状と乖離した判断になるのではないか。この辺は真剣に検討しなければならない 部分だと思います。 ○石井委員  内容がよくわからないので、事務局にお聞きしますが、有識者会議の報告書の中で、 「公益性を要件としない法人」という表現があります。公益性を要件としない法人、あ るいは公益性を有する法人という区別を、公益法人改革の中でしているようであり、2 階層の感じがするのですが、その辺について簡単に説明していただければと思います。  もう1点、有識者会議の報告書の中に、公益性を要件としない法人に関しては、残余 財産の帰属について、法人の自律的な意思決定に委ねるということが書いてあります。 その辺りの意図がわかれば説明していただきたい。医療法人の場合も、現在、認定医療 法人という非常に大きなイメージが出てきておりますが、すべてがそうなるのではない だろうと。従来型の医療法人、ないしは何らかの形で変化する医療法人のイメージが出 てくると思うのです。それと少し関わりがあるような感じがするので、有識者会議にお ける公益性の整理も含めて、その辺をご教示いただければと思います。 ○山下指導課長補佐  担当ではないので、私が有識者会議の報告書を読み、事務局なりにどう解釈している かをお話いたします。ここでは、いわゆる一般的な法人、営利を目的としない法人を一 般的に「非営利」と定義した上で、ある判断主体がこの法人は公益性があるとしたもの については、公益性があると整理したものだと考えられます。公益性のあるものが良い のか、公益性のないものは悪いのかということについて判断していることは全くない。 良い、悪いの問題ではない。法人の判断で、非営利で公益性のないものを選ぶ、非営利 で公益性のあるものを選ぶということは、法人の自主性だろう。それについてどちらが いいということは、報告書にも書いていないのだろうと認識しております。 ○石井委員  ということは、非営利法人で公益性を積極的に求められないタイプの法人が、いまの 公益法人改革の議論の中に当然出てきているという解釈でよろしいのですね。 ○山下指導課長補佐  そうです。いまの中間法人、例えば学校の同窓会の集まりは営利を目的としないので 非営利、これがいま中間法人としてあります。また、地域の自治会も営利を目的とする ことはないでしょうから、これも中間法人。このようなものを非営利の法人として位置 づけようとしています。これらに公益性がないからいけないということはないだろうと 考えていますので、非営利の法人についてこうではないかという議論をしているのでは ないかと認識しております。 ○石井委員  ということは、50年前にできた医療法人制度のイメージは、有識者会議で言ってい る、公益性を積極的に求められない非営利法人と極めて類似性が高い。逆に言うと、あ る意味においては時代的に非常に進んでいたということでよろしいのでしょうか。 ○田中座長  その答は難しいですね。 ○松原委員  公益法人制度改革に関する有識者会議のほうは、どのような事業も一緒くたに扱って いる。とにかく非営利組織ならばすべて、先ほど山下課長補佐が言われたような総会だ ろうが、医療法人であろうが、社会福祉法人であろうが、とにかく一緒くたに扱ってい るのです。それについてはしようがないわけで、非営利組織の話をしているからどの事 業体と区別せず、事業を特定しないから網羅的になってしまっているのですが、本来 は、事業によって非営利組織で行う意義は変わってくると思います。そのような意味で は、医療において非営利で行う意義は何なのかということをはっきりさせ、それを担保 する要件は何か、その要件を考える際に、何度も言われているように、いまの医療法人 は借入のときに個人保証まで付いているといった実態との移行措置をどう考えるかとい う議論になっていくのだと思います。なぜ、医療では非営利なのか、医療における非営 利性とはどのようなことかが、まずは大切ではないかと思います。 ○石井委員  有識者会議の報告書の4頁に、「自律的に、定款において残余財産の帰属について」 云々という記載があります。自律的な意思決定に委ねる財産の帰属のイメージとはどん なものかがよくわからなかったので、お聞きしたいのです。 ○田中座長  同窓会が解散するときも同じですね。 ○石井委員  1つの例示として、同窓会が解散するときに、たまたま余剰があり、それを自律的に 決めたとき、同窓会全員の会員で残った財産を分配することが自律的意思決定の1つの ケースとして認められるということでよろしいのかどうか、そういった辺りをお聞きし たかったのです。逆に言うと、それが認められるのであれば、非営利法人であったとし てもそのような形態が認められるということになるわけです。その辺りをお聞きしたい のです。 ○山下指導課長補佐  より詳しいことは、内閣官房に確認したいと思っておりますが、3頁の(5)に「拠出 金」という言葉があります。拠出金は新しい言葉ですが、我々としてはこれを「出資額 限度」という言葉に置き換えられないだろうかと考えております。つまり、「出資額限 度の返還は、出資額の限度に限られ、利息を付することはできないものとする」、ま た、「清算時における弁済の順序については、他の一般債権に劣後する」、つまり他の 債権者がいて、本当に解散という事態にあって、他の債権者に債務の返済をした後、最 後の最後に拠出金の返還が拠出額の限度に限られ、利息を付することができないという ことだと。最後の最後に、もし余った場合はどうするのかという石井委員のご指摘につ いては、確認をし、次回に報告させていただきたいと思います。決まっていないのかも しれませんし、その辺をどう考えているのかを確認したいと思います。 ○石井委員  大変会計士的な発言で申し訳ないのですが、同窓会のように、キャッシュフロー、イ コール損益計算の場合は、言ってみれば、内部留保を一切持たないという形で資本の分 は形成されることがあり得るのですが、医療法人がやっている、特に病院の事業のよう なことを継続してやることになると、当然そこには会計上の会計処理、減価償却、引当 処理などいろいろなものが入ってきて、内部留保が存在しないという形で、健全で継続 的で安定的な経営を行うことはどうしてもできません。いまのような議論の辺りでは、 それが1つ要点になるのではないかと思ったりもしています。 ○武田委員  元へ返るか、先へ進むか、ちょっとわからないのですが、公益性についていろいろ議 論があります。認定医療法人になっていく場合、これについては避けて通れないと思う のです。三上委員と豊田委員の話は一緒だと言われますが、ちょっと違うような感じが いたします。公益性について、はっきりした意見なりをまとめていただいたほうが先へ 進めやすいのではないか。これを言うと進まないような気もして黙っていたのですが、 お願いしたいと思います。 ○田中座長  日程では、公益性については、回を設けて議論することになっております。 ○豊田委員  資料2−1の「社団形態の非営利法人制度」の(2)に、「社員の権利・義務の内容と して」と書かれており、ア)には「出資義務を負わない」とあります。これを医療法人 に当てはめると、「出資」が「出資額」に置き換えられると思います。例えば、医療法 人での出資は義務で出しているわけではない。別の言い方をすれば、その事業を立ち上 げるための資金なのです。その資金を出したのです。全額を銀行から借りたかもしれま せんが、その場合は担保を負担する人が出るという形で、義務で出しているわけではな いのです。医療法人における出資とこことの関係についてはどのような説明ができるの か、教えていただきたいと思います。 ○山下指導課長補佐  豊田委員が言われたとおり、医療法のどこを読んでも「出資」という言葉はないので す。現実に医療法人を立ち上げ、医療機関を運営する場合、人が集まってお金や現物を 出し合ってやることはあるだろう。それを医療法人制度として義務を求めているのかと いうと、そうではない。そこは我々の言う制度ではなく、まさしく法人内部の自治で自 律的なものだと思っております。それは医療法人でも同様だと考えております。 ○田中座長  もう1つ議題があります。時間の都合上、今日は説明だけで終わるかと思いますが、 重要な点ですのでお願いいたします。これは、前回、委員の皆様よりご指摘のあった、 論点が医療法人の改革のことなのか、認定医療法人のことなのか、話が混じっているの で、組み換えていただきました。宿題として頭の中に留めるために説明をお願いいたし ます。 ○山下指導課長補佐  資料3−1は、主な論点整理を読むと、社会福祉法人は少し似ているが、それについ て比較をしてほしいという指摘があったので、比較したものです。理事と理事会につい て、社会福祉法人では、社会福祉法第36条第3項により、理事の数や同族要件が規制さ れています。第38条では、理事の代表権についての制限と業務の決定は理事の過半数を もって決すると書いてあります。2頁にはそれについての細かいところが書いてありま すが、これについては端折ります。  3頁は監事について、主な論点では、責任が及ぶ範囲についても明確にしてはどうか ということが出されていますが、社会福祉法人では社会福祉法でも監事の職務として職 務の内容が1号から5号まで規定されております。  4頁は役員の報酬についてですが、社会福祉法人における役員の報酬については法律 に明確にはありませんが、定款の通知の中で、「勤務実態に即して支給すること」と し、「役員の地位にあることのみによっては、支給しない」と書かれています。  5頁は評議員会についてですが、社会福祉法では、「社会福祉法人に、評議員会を置 くことができる」、義務づけではなく、「できる」という規定があります。  6頁の会計情報、事業計画等の公開については、社会福祉法人については、社会福祉 法で「経営の原則」とあり、第24条に「社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手 としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強 化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保 を図らなければならない」、第44条の「会計」では、「社会福祉法人は、第2項の書類 (事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書)及びこれに関する監事の意見を 記載した書面を各事務所に備えて置き、当該社会福祉法人が提供する福祉サービスの利 用を希望する者その他の利害関係人から請求があつた場合には、正当な理由がある場合 を除いて、これを閲覧に供しなければならない」という規定があります。7頁はそれに ついて、細かい通知で明確にされているところです。  8頁は資産の保有と公募債についてです。資産の保有については、社会福祉法人は法 律では、「社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない」と簡単に書いて あり、通知では「社会福祉施設を経営する法人にあっては、すべての施設についてその 施設の用に供する不動産は基本財産としなければならない」と書かれています。  9頁は公認会計士等の監査ですが、社会福祉法人については通知で、「財産状況等の 監査に関しては、法人運営の透明性の確保の観点から、公認会計士、税理士等による外 部監査の活用を積極的に行うことが適当であること。特に、資産額が100億円以上若し くは負債額が50億円以上又は収支決算額が10億円以上の法人については、その事業規模 等に鑑み、2年に1回程度の外部監査の活用を行うことが望ましい」と書かれていま す。  10頁は収益事業で、社会福祉法人についても社会福祉事業に支障がない限り、法律で 公益事業が実施でき、公益事業か社会福祉事業に充てることを目的として収益事業を行 うことができると書いてあります。第57条では、社会福祉事業を行うに支障がある場合 には、所轄庁は、公益事業や収益事業の停止を法人に求める」という権限があります。  11頁は残余財産の帰属についてですが、社会福祉法人は社会福祉法で、「定款の定め るところにより、その帰属すべき者に帰属する」と。また、「前項の規定により処分さ れない財産は、国庫に帰属する」とあります。ここには書いてありませんが、法律には そう書いてあり、実際の通知では、定款では他の社会福祉法人ということを書くように 求めています。  もう1つの宿題は資料3−2と3−3ですが、12月10日に示した論点整理は非営利、 公益性、効率性、透明性、安定性といった柱に沿って論点を整理しており、医療法人の 話なのか、公益性の高い認定医療法人の話なのか、非常に不明確なので、きちんと分け て書いたほうがいいという指摘がありましたので、それを整理したものです。  資料3−2ですが、医療法人については非営利性の徹底、公益性の向上、透明性の確 保について、主語が「医療法人」となっているものをそのままピックアップしておりま す。2頁目以降は、主語が「認定医療法人」となっている論点について、さらに上乗せ で、このような規律が必要ではないかということが書かれております。  文章ではわかりにくいのですが、資料3−3では、左側に現行の特定医療法人、特別 医療法人、財団医療法人、社団医療法人とあり、非営利性の徹底はすべてを対象とす る、公益性の確立は上2つを対象とする、効率性の向上と透明性の確保については、内 容によってはすべてを対象とするものと上2つを対象とするものというのがあります。 「安定した医業経営の実現」とは外部監査の導入ですが、上2つを対象とするといった それぞれの垂幕があり、右側の認定医療法人、財団医療法人、社団医療法人と分かれて います。それぞれの垂幕に細かい字がありますが、黒い星印が認定医療法人のみに関す る事項、白い星印がすべての医療法人に関するものという位置づけで整理しておりま す。これをご覧になっていただければと思います。説明は以上です。 ○田中座長  中身を新しくしたのではなく、組み換えて出していただきました。項目としては、前 回議論を得ています。今日も議論を伺いたかったのですが、時間になりましたので、こ こは次回の冒頭でよろしいですか。テクニカルな質問は途中でも事務局に言っていただ ければいいと思いますが、これに関するご意見は、次回、冒頭に時間を取って説明した いと思います。  本日、前半で議論していただいた「医療法人に求められる役割」、また、もう少し広 い観点からいろいろなご指摘がありました。医療法人の理事長の役割の実態などについ ても非常に認識が深まったと思います。それを踏まえて、資料3に関わることを次回冒 頭に、そして公益性等についての話もするという予定で行いたいと存じます。  次回の日程と今後の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。 ○谷口指導課長  次回の日程については、ご連絡申し上げている3月8日(火)、午前10〜12時。場所 については調整中ですので、決まり次第ご案内を差し上げたいと考えております。いま 座長ご発言のとおり、今回時間がなくて積み残した資料3−1、3−2、3−3部分を 冒頭ご議論いただき、その後、剰余金の使途の明確化、公益性の確立、効率性の向上、 透明性の確保等についての議論に入っていただければと考えております。どうぞよろし くお願いいたします。 ○田中座長  本日は以上で終了いたします。豊田委員には特段にご説明をありがとうございまし た。皆様お忙しいところご出席いただきまして、ありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 大門 龍生(内線2560) 医療法人係長  伊藤 健一(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194