第2回 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)見直し検討会 議事録


1.日時 平成17年2月21日(月)14:00〜16:00

2.場所 経済産業省別館850会議室

3.出席者
(委員)池上千寿子、市川誠一、木原雅子、木原正博、木村哲、島宮道男、白井千香、藤井久丈、前田秀雄、南砂、山本直樹、雪下國雄(以上12名、敬称略)
(厚生労働省)関山健康局疾病対策課長、荒木課長補佐、他

4.議題
(1)前回議事確認
(2)エイズ予防指針の見直しについて
−1 正しい知識の普及啓発<MSM・青少年>
−2 正しい知識の普及啓発<一般国民・その他個別施策層>
−3 検査・相談体制

5.内容


(照会先)健康局疾病対策課
電話:03−5253−1111(内線2354)


− 以下、別添ファイル参照



第2回 エイズ予防指針見直し検討会 議事録


  発言者 発言要旨
  事務局(補佐)
開会
出欠確認
  座長
本日の予定
  事務局(補佐)
資料説明(前回の議論について)
  座長
説明のあった中で、資料5−1、四段表の対応策の☆が、前回の議論を事務局でまとめてもらったもの。
前回の議論で時間切れになってしまった部分もあるので、補足などがあればご意見をいただきたい。
  池上委員
青少年について、前回の議論では、「学校教育」がメインだったが、例えば高校を卒業した専門学校生などには、そうした教育の場がない。
こうした青少年のためにも、気軽に相談できる場や、エイズに関する情報を入手できる場が必要。
学校教育でカバーできないこうした対象について、事前に調査・分析した上で、地域でどのような場を確保するのか、といったことについてモデル的にでも実施して、事業化を検討することが必要。対象集団を特定する必要がある。
  座長
前回の議論では、学校教育の中で情報を入手する場として、保健室というのが上げられていたが、学校教育でカバーできない青少年に対しては、それに代わるものも必要、ということ。
  藤井委員
予防教育については、学校で、知識の押しつけだけではない教育を実施していくことが必要。
また学校教育でカバーできない青少年に対しても、教育の場を確保する必要がある。卒業前後で、予防教育の内容が、全く変わるわけではない。
PTA連合会で実施した学生1万人アンケートの結果が新聞報道されているが、データのみが先行してしまって誤解を招いているところがあるので補足したい。
このアンケートは、子供たちの性関係の若年化ということにスポットをあてるものではない。そのことはアンケート前から充分予測できている。
今回のアンケートで今後に向けて見えてきた指標としては、子供たちの今の環境は、人と人とのつながりが希薄化していることが起因している。
親や地域との関係を改めて見直すことが必要ではないか。子供達のそうした環境の改善についても指針に盛り込んでいくべき。
予防教育は、子供たちの成長段階に合わせたものでなければならない。
今は、インターネットや漫画などで行き過ぎた性情報が氾濫してしまっている。性関係を急がされているという風潮がある。これらを規制するということではないが、何か対策を考えていく必要がある。
  木原正委員
現行の予防指針の中で、「正しい知識とそれに基づく個人個人の注意深い行動により、多くの場合、予防することが可能である。」とあるが、これについては見直す必要があると考えている。
単に、個人の行動だけではなく、それを取り巻く社会的な要因も含めて整備していく必要がある。前文にはそうした視点を是非加えていきたい。
  木原雅委員
高校卒業後の若者ににどうアプローチしていくか、ということだが、モデル事業の中で、リスクを身近に感じられる効果をねらい“地域に即したパンフレットやポスター”を作成したところ、若年層の検査・相談件数が増加した、という検証ができている。
在学中の青少年だけでなく、卒業後あるいは学校中退の若者にも地域版パンフ・ポスターを若者が集まる場所(コンビニ・カラオケ等)を通して提供するという方法もある。その際には、より詳細な情報あるいは検査・相談の際のアクセス先の呈示が必須となる。
  市川委員
青少年について考えていく場合、あわせて、男性同性間の感染が増加しているということも踏まえる必要がある。
学校や保健医療機関などでは、そうした男性同性間の感染に関する相談体制が充分にとられていない。
また、「規制」については、逆に当事者の行き場がなくなってしまうという懸念も検討する必要がある。
  藤井委員
「規制」という意味は、実際問題として、行き過ぎた情報が青少年に性関係を急がせる風潮があり、一方、子供たちでそうした情報をシャットアウトできないという現状であれば、そうした環境を改善する必要があるのではないか、という趣旨。
一言で青少年といっても、それぞれ状況が異なる。例えば、コンドームについても、子供たちの状況によって興味を持ったり持たなかったりする。個別に対応していくことが必要。
  前田委員
子供たちによって、レベルや環境が違うので、多角的なアプローチが必要。
東京都でも、夜10:00過ぎに電話がかかってきて、妊娠や感染症の相談があったりする。昼じゃなくて夜相談したい、といっている。
いろんな場面でアプローチできるように体制を確保してあげる必要がある。
  座長
どこにいけばちゃんとした情報を得られるのか、といった情報から必要。
  池上委員
ポスターやパンフレットなどはアプローチのための一つの有効な方法。
また、陽性の人を普及啓発のプログラムに加えていくことも必要。
WEBで実施したゲイコミュニティ向けの調査結果もあるが、いくら知識があっても「身近感」がないとなかなか行動変容にはつながらない。この「身近感」という点では当事者のメッセージへの接触等が有効と思われる。
  白井委員
アプローチのツールとして、インターネットは活用していくべき。神戸市の夜間検査アンケートでも、半数以上がインターネットでアクセスして検査のことを知ったと回答している。
また、ピアエデュケーションやピアカウンセリングについても、例えば学校の中で実施しようとすると、教育委員会等の反対もあって、難しい面があったりするが、そうした場合には、学校外で地域保健として取り組めるのではないか。
  座長
学校の中でもやってもらう必要はある。
  藤井委員
学校の中での性教育をできるレベルで行い、それ以上のレベルのものについては学校の外で、というようにきめ細かい層別の対応が必要。指針の中でそうしたニュアンスを盛り込めればいい。
  木原雅委員
学外の情報提供の例だが、数年前から、メール相談を導入した保健所があるが、それによって相談件数が増加して、検査に結びついているという例がある。また、今年度、試験的にインターネットのSTD予防情報サイトを開設し、青少年に配布したパンフにそのアクセス先を呈示したところ、数ヶ月でかなりのヒット数を得ている。そうした若者に使いやすいツールの検討が必要。
  雪下委員
予防教育の基本は、学校での性教育だろう。ただ、今の性教育が果たしてその任務を果たせているのか疑問。
大学生を対象に、性に関する知識をどこで学んだかアンケートしてみると、「学校」というのは12〜14%、「家」というのは数%。学校での性教育の効果がでていない。
最低限の統一的な知識の付与は、学校での性教育が基本。
以前、日本医師会に委託されてエイズ教育を1年間のモデル事業で実施したことがあったが、モデル事業止まりで次年度は予算がつかずにおわってしまった。
学校では、文部科学省から言われて、47都道府県の学校医の中に産婦人科医を入れるようにしている。
昨年か一昨年に、医師会も関わって学校保健会で性の副読本を作ったが、内容に問題があるということで校長預かりということになって、結局生徒に配布されなかった。文部科学省、教育委員会、東京都、神奈川県など、どうもやっていることがチグハグで、それが今の性教育の現状といえる。
メディアについても、いろいろ情報はあっても規制がないので、間違った性知識が提供されている。
指針には、予防教育にしっかり取り組むということを明記したい。
  座長
前回も、学校教育がやりにくい、文部科学省との連携が必要、という議論があった。
  藤井委員
高校での性教育は、個々の問題の事例はあるが、産婦人科、泌尿器科医とも協力してもらい、全体としては努力している。
性教育では、医学的な知識だけではなく、子供たちの心のケアも含めたモデルを作っていくことを、文部科学省にも働きかけたい。
  木原正委員
学校での予防教育はもちろん大切だが、学校のみで全てのことを全ての子供に共通に教えていくということではダメ。学校には学校の役割があり、社会の中で分業していくという理解でいいか。
  雪下委員
最低限の知識、基本的な知識については、学校で教育する。それ以外は個別に対応する、ということが必要。
いろいろな情報が氾濫していると、子供たちは、何が正しくて何が正しくないのか、混乱してしまう。基本となる骨の部分はしっかり学校の性教育で抑える。
  座長
青少年、男性同性間の感染対策についてはここまでとする。
  座長
次に、一般国民向け普及啓発について。
事務局より資料説明を。
  事務局(補佐)
資料説明
  座長
市川委員の研究報告からの抜粋、資料(2)−1について、市川委員から補足はあるか。
  市川委員
厚生労働省、エイズ予防財団、政府広報などでいろいろな普及啓発を行っているが、実施しただけで評価しないということではダメなので、このような評価を実施した。
サッカー日本代表のゴールキーパー、楢崎選手を使ったテレビCMは、比較的認知率が高かった。東京都のポスター(魔裟斗)も認知率が高かった。
広報は、より多くの人に知ってもらう必要がある。とにかくたくさんいろんなところに出すということよりも、例えば認知率の高いテレビに集中して実施する、といったことも必要。
また、地域的にみると、認知率が高い方がエイズに関する知識も関心も高い、という面も見られた。効果的に広報を実施することで、知識の普及にもつながっていくのではないか。
  木原正委員
従来型の広報のやり方というのは、その効果は疑問。
以前、在日ブラジル人を対象に、テレビや新聞などで普及啓発をやった。対象が23万人だったが、これを1億2,000万人に換算すると40億円くらいかけて実施したが、行動変容には繋がらなかった。
PTA連合会のアンケートでは、若い人は、日本でエイズが増えているということについては7〜8割は知っている。ただ、自分の住んでいる地域ではどうか、となると2割しかしらない。自分の身の回りで、というのが理解できていない。
全国一律の広報というのはその効果は疑問。もっと絞って実施する必要がある。
  池上委員
現在実施している一般国民向けの広報は、対象が絞り切れていない。
例えば、今年のUNAIDSは女性に焦点をあてている。
日本でも、例えば、男性、女性、30代の男性、など、対象を絞って、踏み込んだメッセージで全国展開していくことも必要。そうすることで、受けては「自分に対するメッセージ」ということを感じてもらえるのではないか。
  山本委員
市川委員の研究では、行動変容段階まで聞いているのか。
  市川委員
行動変容までは聞いていない。
  木原雅委員
対象を絞る、というのは賛成。
注意する必要があるのは、「全国」といった場合、どうしても東京中心になってしまうということ。地方のことも考える必要がある。
「東京は危ないけど地方は危なくない」という誤解を生みかねない。
  藤井委員
たしかに、性行動は都会が活発で地方はそうではない、といったイメージがあるが、人工妊娠中絶の率を見ても、地方の方が高かったりする。
それぞれの地域ごとに、ある年齢層に対しては新聞がいいとか、タウン誌がいいとか、インターネットがいいとか、そうやってどの層をターゲットにするかによってマルチに発信していくことが必要。
  市川委員
知識だけでは行動変容は起きない、ということは既に実証されている。
広報をやるのであれば、どこに集中してやるのか、使う媒体を考えることが必要。
知識ではなく、意識を刺激するようなメッセージをどのように出していけばいいのか、というところが重要で、当事者からの意見も必要。
  座長
単なるバラマキ的な広報はあまり効果が上がらない。もっとターゲットを絞って実施すべき、という意見が出ている。
  前田委員
マス向けの広報が、メッセージ性もないまま単にバラマキ的に実施するということが問題。
ただ、全国共通のテーマで広報をやるというのは必要。エイズが一部の人の問題でなく全国民共通の問題であるという意識はベースに必要。
マス向けの広報があって、プラスで個別の広報が必要。マスを切り捨ててしまうのはダメ。
  木原正委員
マス(日本全体)と個別(地域)とどちらかにウエイトをかけていく、ということであればやはり個別の方だろう。マスだけでは効果が期待できない。
  市川委員
国民の知識の底上げ、偏見や差別の解消、などはマス向けの広報、個々の行動変容を促すようなものは個別の広報、という使い分けではないか。
  白井委員
地方では、地域の情報を地域に還元したい、という思いがあるが、性感染症では定点の問題もあり、確かに全国レベルではエイズが増加している、といっても、それぞれの地域では報告数が0だったりすると、なかなか自分たちの問題として理解されない。
  木原正委員
中絶やSTDが増えているというデータは、地域レベルでも自分たちの問題として自覚させるには充分なデータではある。
  雪下委員
広報で、エイズが増えています、コンドームを使いましょう、だけでは弱い。
ただエイズだけではなく、クラミジアの問題、不妊の問題などとセットでインパクトのある取り上げ方が必要。
  座長
性感染症と共同戦線で実施する必要がある、ということだろう。
木原雅子委員からPTA向けの普及啓発に関する資料を提出してもらっているので、資料の説明を。
  木原雅委員
資料説明(以下、資料概要)

〔エイズ対策における青少年対策に関する提案〕
エイズ予防教育の特徴
事前の調査と事後の評価を行うもの(科学的な証拠に基づく教育)
発達段階・行動段階に即した適切な啓発普及を行うもの
自分にもリスクがあることを知ってもらうため、地域性を考慮したメッセージ、セクシャルネットワークの考え方、身近な情報(一般の性感染症・中絶など)を加えたもの
エイズ予防教育における連携体制
学校における集団教育は、保健所等からの情報提供を受けた学校の教師が実施
保健室においては一部ハイリスク層の子供に対する個別指導/情報提供
ハイリスク層の子どもに対する学外(保健所・医療機関・主任児童員等)の相談窓口の紹介及び連携
今後の取り組みの方向性
保健所の役割は、「学校教育の側面支援」「ハイリスク層の受け皿(相談窓口)」「地域(保護者含む)への予防啓発」「検査体制(STDを含めた)の整備拡張」
学校の役割は、「基本的予防教育の実施」「学校内の環境作り」「保護者(PTA)との連携」「地域(保健行政、医療機関等)との連携」
上記二者の役割分担を明確にし、教育委員会(文部科学省)、PTAも含めて連携していくことが必要

〔青少年対策におけるPTAの関わりについて〕
家庭内における取組
家庭内の日常会話及び通常の関わりの充実
自分にもリスクがあることを伝える(パンフの手渡しなど)
家庭外(地域)における取組
学校における予防教育の支援→学校関係者との連携
他の保護者との連携(保護者会に来ない親への情報伝達)
保護者向け勉強会の開催(親子パンフを使用)
学外の相談窓口の設置→医療機関等との連携
性情報の氾濫への対処
  山本委員
木原雅子委員の話は極めてもっともの話。今はこうした当たり前のことができていない、ということだろう。
  藤井委員
今の子供たちは、性に対して無防備であったり、知識があっても行動しない、といった風潮がある。
また、変な仲間意識というのもあって、一緒にいるけれどもお互いにそんなに信用していなかったりする。
子供たちを取り巻く環境の改善が重要。
  雪下委員
学校内でのPTAを含めた会の開催というのは決められている。
学校保健委員会は、昭和47年に文部科学省が決めたもので、学校長、養護教員、栄養士、担任、医師会、歯科医師会、薬剤師会、PTA、生徒、保健所、民生委員などで構成されているもの。年に数回開催することとされている。
これがちゃんと機能していれば、家庭・地域に情報が還元できる。文部科学省の調査では85%が実施しているとしているが、実際に、家庭・地域まで還元できているのは30%くらい。
さらに、学校保健委員会は、全国、ブロック、県、市レベルまであるが、各学校にはない。
また、学校保健法では、保健室で月1回、健康相談を実施することと決められているが、ほとんど実施されていないのではないか。
他にも講話が年1回など実施している。
これら3つを使って進めていけばいいのではないか。
  木原正委員
今の社会は、子供に限らず、家庭、地域、学校など、人と人との結びつきが失われている。(Lack of connectiveness)
この失われてしまったものを戦略的に取り戻していくことが必要。
  座長
その他の個別施策層向けの普及啓発の議論にうつる。
事務局から資料説明を。資料(2)−5(外国人提言)の要点説明もあわせて。
  事務局(補佐)
資料説明
  池上委員
CSW(コマーシャルセックスワーカー)対策として、従事者向けのものはあるが、客向け、経営者向けの対策がほとんどない。
従事者の保健行動は、客や経営者の意向によるところが大きいので、客や経営者向けの取組を行っていかないと効果はあがらない。
風俗について、店舗型は把握しやすいが、非店舗型は把握が難しい。当事者に参加してもらってまず現状を把握する必要がある。
客としては中高年層が大きい割合であり、ここにターゲットを絞る必要がある。
  前田委員
CSW向け施策として、資料AI自治体というのが東京都だが、東京都でもイリーガルへの対応という課題があるため、この程度しか実施できない。
CSWや外国人対策を考えるとき、イリーガルな部分をどうするか、というのが問題。例えば、不法入国の問題をどうするか。コンドームを使う店は売春防止法に違反した営業をしていることになるがどうするか。今は、こうしたイリーガルな部分には触れない程度に、慎重に慎重を重ねてやっているというのが実態。
  座長
今の問題について、指針としてどこまで書くか、というところはある。
  木原雅委員
最近、デリヘルが急増しているが、中高生からの相談もある。単に“割りのいいアルバイト”という認識で足を踏み入れてしまったらレイプされた、というような話も聞く。中高生たちは自分たちのことをCSWと認識していない。どのように情報を入れていくのかが問題。
  木原正委員
風俗について、店舗型は1,000程度でほぼ横ばいで推移しているが、1999年に風俗営業法が改正され、非店舗型が急速に増加した。2002年には12,000程度がデリヘル。
このように、CSWは様子が変わってきている。CSWと普通の人との境目があまりなくなってきている。
  座長
こうした新しいトレンドに対応した施策、というのが必要。
  雪下委員
中高年のおじさん対策であるとともに、子供たちのことも心配。非店舗型について取り締まる必要もあるのではないか。
  池上委員
予防対策に国境なし、という姿勢が必要。職業や国籍に関係なく、提供するものは提供する。
下手に規制してしまうと、地下にもぐっていってしまって、ますますアプローチできなくなる、という悪循環になる。
予防・ケアを優先する、ということを指針で明確にする必要がある。
  前田委員
違法を無視していい、ということではないが、じゃあ違法を取り締まることでHIV感染が解決するか、といえばそう単純でもない。
エイズ対策については、違法の取り締まりという問題とは一旦切り離して実施する必要がある。第一線で対策をしている者は危険な立場にあり、制度的なバックアップが必要。
  市川委員
本人たちにとって必要な健康のための工夫をする必要がある。
CSWや外国人といったことをあまり前面に押し出し過ぎない方がいい。
  座長
本日のもう1つのテーマ、検査・相談に入る。
事務局から資料説明を。
  事務局(補佐)
資料説明。
補足として、資料は提出していないが、迅速・夜間・休日検査を導入したことによって件数がどう変化したか、という数字だが、迅速では200%や500%といった増加率、夜間・休日では20%程度の増加率となっている。
また、昨年一年間の新規HIV感染者報告は748件だが、うち自治体が実施する検査で判明したものが4割程度、それ以外は医療機関で判明したもの、という推計がある。
  座長
今自治体では、迅速検査や夜間・休日検査を導入して、検査数も増加している。
HIV感染の場合は、感染に気づかないまま、ということが考えられるので、検査の普及が急務となっている。
  池上委員
迅速、夜間、休日など、いろいろな検査を導入して、受検者が選べるというのは大切。
ただ、検査の目的は、陽性の人を速やかに医療につなげるということ。したがって、そうした検査の運用面の整備が重要。
検査をして、陽性の人、判定保留の人がそのまま放り出されて医療に繋がらない、というケースが散見されている。特に、一般医療機関で、検査後うまく繋げられていない。この連携が必要。
運用面の整備では、人員配置、職員のトレーニングが必要。サービスの均一化と向上が必要。
  座長
研究報告で、保健所で陽性となった人が病院に結びついたかについて、関東や近畿でデータをとったが、20%弱(17〜18%)が病院に結びついたかどうか分からない、という数字がある。
  市川委員
迅速検査の導入で確かに件数が増加しているが、件数を増加させることが目的ではない。本当に検査が必要な人が検査を受けられたかどうかが問題。
迅速検査では偽陽性率が1%とされているが、感染率の低い集団では陽性的中率(陽性結果に占める真の陽性の割合)が低い、すなわち偽陽性者が多くなる。一方、感染率の高い集団では陽性的中率が高くなるのでこうした検査の提供に向けた検査方法といえる。
迅速検査を導入した結果、検査受付が混んでしまって、1時間で受付を打ちきるというような例も出ている。
いわゆる「いきなりエイズ」の人の中には、自分が感染していることを知りながら医療に結びつけなかったケースもある。検査実施者の研修を検証して、検査のカウンセリングを強化する必要がある。
  山本委員
陽性の場合、確実に医療に繋げることは大切だが、あわせて、陰性の人に対するカウンセリングも重要。
検査は、身に覚えがある人が集まることもあるわけだから、今後の行動変容につながるようなメッセージを発することが必要。
  白井委員
自治体では、迅速、夜間、休日など取り組もうとしてはいるが、自治体の組織再編などで、保健所レベルでは充分に対応しきれない面もある。
役所には、検査希望者が来所しにくいが、職員が役所の外に出て、保健所以外の検査室などで検査を実施する方が、利便性が高いということもある。
  座長
全ての保健所で同じように検査するだけではなく、検査のセンター化なども効率的であるということ。
  木原正委員
アメリカでは、国民の40%が検査を受けていて、自分がHIVに感染していることを知っているという割合は75%。日本でもより一層検査体制を広げていく必要がある。
昨年の厚生労働省の通知で、HIV感染の疑いがある場合には検査を保険適用できることとされたが、現場の医療機関ではそのことを知らなかったり、また査定で切られてしまったりしている。HIV検査の保険適用をスムーズにする必要がある。
保健所以外の検査については、クオリティを保って実施することが必要。泌尿器科の中には、毎日検査を実施ということは難しいが、月のうち何日か実施するということであれば可能という話も聞いている。
  山本委員
日本の場合、自分がHIVに感染していることを知っているという割合は20%程度。
  市川委員
保健所以外の検査の拡大については賛成。
大阪では、土曜日に常設検査を実施している。実施主体は大阪のチャームというNPOだが、スタッフの確保が難しいという話を聞いている。
検査の実施について、NPOに全面委託というのは問題。検査は公的セクションが担うべきで、NPOなどと共同で運営する、などが必要。
  座長
人材の育成、継続的な検査の実施、といったためには、行政の関与が必要ということ。
  事務局(課長)
多様な検査機会を確保する必要がある、ということは委員共通の意見として理解した。
あわせて、今の保健所をどう活用していくか、についてもご議論いただきたい。
  座長
今の保健所を活性化して対応するのか、センター化する必要があるのか、などについては、それぞれの地域によって異なるところがある。
ただ、ベースとしてミニマムサービスを確保するのは保健所だろう。
  市川委員
保健所の検査は必要ないというわけではないが、午前中に検査をやっている保健所などもある。アンケートでは、平日なら夜間、土・日も午後、というニーズが多い。保健所でもそうしたニーズを把握していても、なかなか変わってくれない。
便利なところにある保健所などは、午後や夜間に検査をするなど、地域ごとに取り組んでいく必要がある。
  前田委員
南新宿では、7割が都民で3割が他県からの流入。都内の某区では、区民が2割、その他都民が4割で、他県からの流入が4割。都市部のセンターへ集中化すれば、どうしてもこういう流入現象が生じる。
都内23区では、南新宿検査・相談室で夜間・休日検査をする一方で、月曜日から金曜日まで、必ずどこかの区の保健所で検査を受けられるように棲み分けている。ただ一律に実施するだけではなく、センターと地域の保健所とバランスよく体制をとりながら、戦略的に実施していくことが必要。
保健所の検査をやめてしまうと、職員のアクティビティ、モチベーションが落ちてしまう危険もある。保健所は、教育、普及、検査などを総合的に実施することが特色であり、全く検査機能をなくしてしまうのは危険。
  座長
保健所の検査を基本としながら、地域の特性に応じて対応していくことが必要。
  白井委員
先ほどの保健所で午前中に検査を実施しているという件だが、検査技師もいない保健所もあるので、検体を検査センターに運搬する必要が生じる。そのため午後の検査だと厳しい、という面もある。(迅速検査と従来の検査の体制では条件が異なるが。)
保健所では、職員一人が複数の事業を持っているので、HIVやSTDの専任がいない。都道府県感染症予防計画の中にSTD/HIVを含めている自治体もあるが、4割程度ではないか。自分の地域で患者・感染者がいないという状況では、STD/HIV対策を優先するには、なかなか自治体内部の意識が変わっていかない。
  座長
自治体にがんばってもらえる指針にしていきたい。
  雪下委員
保健所でなかなか検査を受けてもらえない、ということのネックはどのあたりにあるのか。
  市川委員
まず、検査を実施している時間の問題。働いていたり学校に行っていたりすると、休まないと検査を受けられない。
それから、保健所で検査を実施しているのは知っているが、保健所がどこにあるか分からないというケースもある。
また、検査にいってどんなことをされるのか分からない、といった不安もある。
保健所の検査以外の医療機関の検査でHIV感染が判明している例については、そのうち検査目的で検査を受けたというのは10〜20%程度。残りは術前検査など。こうした術前検査で判明したケースがちゃんと拠点病院につながっているのかも問題。
  座長
そうしたデータは見たことがない。
  島宮委員
青少年の問題について、高校では「保健」の時間があるが、中学校では体育の時間の中のどこかで「保健」の時間を確保するということになっている。中学校でどれだけ保健の時間が確保できているか。
中学で性の関心が高まっているのは事実。中学校、もしくは小学校高学年からの教育が重要。
  座長
本日の議論はここまで。補足等については、次回の検討会の冒頭で再度議論したい。

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