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資料II

論点とこれまでの意見の概要


論点(案) 意見の概要
I  職業能力開発の現状と課題
 現状
(1) 職業能力開発の現状について
能力開発というと、ものづくりの、製造の現場の能力開発が多いが、実際の就業人口からいえば、サービス分野の方がずっと多くなっており、ニーズに対応しきれていないのではないか。
Off−JTも落ちているが、OJTも劣化しているはず。Off−JTを支援すると、企業はOJTを実施するより得だと考えOJTが軽視される。なぜOJTが崩れてきたのかについてしっかりおさえるべきではないか。
非正規労働者に対して能力開発はあまりなされていないが、非正規労働者の大半は自らの知識・技能を高めたいという意欲を持っている。非正規労働者の能力開発の実態をもっと調べる必要があるのではないか。
OJTの中には(1)上司や先輩の指導・助言といった狭義のものから、(2)日々のマネジメントにより行われているもの、(3)教育的見地からの配置や仕事の割当などによる広義のOJTまでいろいろあるが、特にこの広義のOJTが人員不足などにより劣化してきているのではないか。
自己啓発やOff−JTについては日本はもともと取り組まれてこなかったが、最近では日本が強かったOJTが劣化してしまっているのではないか。
教える側の能力が低下しているのではないか。仕事のやり方が集団的なものから個別的なものと変わっておりそれに連れて教え方も変わってきている。その変化に教える側が対応し切れていないのではないか。
自己啓発についてどのくらいの時間取り組んだかという視点が必要ではないか。
能力開発については、訓練の手前の動機づけとして、呼び水として誘い込むという配慮がなければならない。若者だけでなく女性など様々な層についても同じ。また、最近は、ラーニング能力が落ちている者が多い。「一を聞いて十を知る」の一は教育だが、その十にあるラーニング能力が乏しい。ティーチングの方法を改良することも大事であるが、ラーニング能力を高めることも大事である。
従来は基礎的な能力の部分は家庭や学校でと言われるが、今はそのような前提が崩れているということも考慮しておくべき。
(2) 踏まえるべき社会・経済情勢の変化について
雇用そのものが流動化しているということ以上に、職務内容が流動化しているということが、もっと深刻になってきているのではないか。求められる能力がどんどん変わってしまっており、フレキシブルにどんどんキャリアチェンジしたり、仕事の内容の変化についていけるような能力をつけていくことが重要ではないか。
キャリア・コンピタンシーのようなものがないと意欲も湧いてこないし、キャリア・チェンジにもフレキシビリティがない。スキルを持ったとしても、それが5年後、10年後までもたないということがやはり深刻ではないか。
企業は即戦力志向とする一方、企業内における人材育成も重視しているのではないか。仮に、企業が即戦力志向であるとした場合、(1)そのような傾向に合わせて教育訓練を見直すべきなのか、(2)中長期的にそのような傾向は企業にとっても良くないので見直していくべきなのか、変化を踏まえ、どのように考えるべきなのかについて整理する必要があるのではないか。
団塊の世代が退職することにより、賃金の高い労働者が減少し、企業の給与総額は減少するが、退職金の支払いが増加したり、企業年金が増加するなど、企業の人件費に大きな影響を与えることになるのではないか。
団塊の世代が高齢者層に入っていくことにより貯蓄を取り崩す層が増え、今まで非常に高かった貯蓄率が今後は低下していくと考えられるが、これは国内での資金調達が難しくなるという、投資にも大きな影響を与えるのではないか。
団塊の世代はものづくり分野に集中しており、これが企業にどのような影響を与えるかということも踏まえるべきではないか。
経済のグローバル化より国内雇用が減少するという点だけではなく、外資系企業が日本に進出してきているという事実が国内雇用にどのような質的な変化を与えるかということも考えていくべきではないか。
新規学卒者が正社員として就職している割合は92年頃から低くなっているはずであり、これを分析することは能力開発の点でも大きな意味があるのではないか。
ものづくりの問題の一方でもう一つの論点としてサービス業の話があるのではないか。サービス業が世界に誇れる質を達成していると言えるか。
学校から就業へという仕組みが壊れてきているのではないか。就職難のためにとりあえず大学に行ってしまう者が増加しており、そのような者がそのままフリーターになってしまっているのではないか。
新卒採用については企業は即戦力であることを世間が考えているほど求めていないのではないか。新卒に求めているのは立ち上がりの早さ、飲み込みの早さで、そのようなものは何か講座をとったからといって身に付くものではない。
中途採用については企業は事業のポートフォリオの変化の激しさもあって即戦力志向を強めているのではないか。
 今後の課題
(1) 関係者に求められる役割・課題について
  (1) 労働者
労働者自身は主体性、自発性ばかりあまり強調しないで欲しいと思っていないか。能力開発を主体的に進めていくための前提がかなり揺らいでいるのではないか。
地域の視点も踏まえていくべきではないか。
労働者が主体的にキャリア形成をするといっても、急には無理ではないか。企業の中には労働者が主体的にキャリア形成するのであれば会社が支援する必要はないと考えるところもあるがそれは非常に問題。どうやって企業主導から個人主導へソフトランディングさせるかという議論が必要ではないか。
研究会における検討対象は民間企業の労働者の話が中心だろうが、NPO、NGOで働く者も増加してきており、それらの者の職業能力開発も検討の対象とすべきではないか。また自営業についても議論が必要ではないか。
職業能力といったときに、雇用者だけが対象ではなく、NPOや自営という働き方も雇用に非常に近接しているものであり、それらも含めた議論が必要ではないか。
  (2) 企業
現在の事業主の能力開発が、メリットがあるとか、インセンティブがあるとか、そういうことを検証していくこと、あるいは、ベストプラクティスのようなものを示していくことが必要ではないか。
比較的大きい企業などの場合、昔は管理職を目指せばいいという、非常にわかりやすいルートがあったが、今は、何をどう頑張ればいいのか、企業側がうまくイメージを提供できていないのではないか。
企業は企業内でしっかり人材育成すべきではないか。
企業に職業能力開発の推進を説得するにはそれがメリットだと思える根拠、例えば市場で評価さえるといったようなことが必要ではないか。
企業にとっては民間の訓練機関を活用する余地がどうなっているかということも情報として有益ではないか。
  (3) 教育訓練機関
民間の活用は、競争があるからこそ、能力を高めようというインセンティブが湧くという部分に意味がある。単価を一律にして、1人当たりこれだと、そのアウトカムと、その単価が何の関係もないような形で委託されるのであれば、民間の活力を最大限に活用しているやり方とは必ずしもなり得ないのではないか。
社会人大学院は30歳代前半層の訓練などには、一番かなったシステムの1つであるが、教育の内容が必ずしも現実のニーズに即応していないのではないか。
若いうちに習得した能力、スキルだけでは持たなくなっており、生涯学習、あるいは生涯キャリア発達のメカニズムを考えていく必要があるのではないか。
訓練機関として、プロフェッショナルスクール、専門大学院の役割をどう考えるかも重要な論点ではないか。
民間教育訓練機関を活用するというときに誰がその担い手となるのか。専門学校だけでなく、株式会社系の学校法人ではない組織も活用してくべきではないか。
専修学校について入学したけれど途中で脱落してしまっている人も多いのではないか。後からミスマッチだと分かって脱落してしまうのでは非常に損失が大きい。信頼性の観点からも第三者的な立場から適性等を見極めることが必要ではないか。
  (4) 行政(国、地方)
今までのように国が指導するという流れにはならないのではないか。従来とは違った国の役割としては、助成金だけではなく、いろんな情報提供や時間的なサポートもあるのではないか。
能力開発を国が行う場合、どのような手法があるのかという論点もある。補助金や税制などの他に義務付けというものもある。海外の事例も参考にしながら検討することも考えられるのではないか。
  (5) その他(労働組合等)
労働組合の役割として労働者の能力開発や人材育成の強化などの取組もあるのではないか。
社会人が能力開発を行えないのは時間的余裕がないことも理由の一つであるが、そういう面をコントロールできるのは労働組合ではないのか。能力開発を阻害している原因を取り除いていくということも組合の重要な役割ではないか。
これまで労働組合の機能の中の「ライフ系」の観点ばかり取り組まれてきたが、今後、個別的な労使関係が重視されていく中で、「ワーク系」の機能が出てくるとバランスがとれてくるのではないか。
デパートでは非正社員が多数を占めるようになっているが、これらの者は転職すると経験があってもゼロからスタートすることになってしまい、不満も多かったが、最近では例えば特定の売り場での経験・能力などに特化した資格を設けていこうという動きが出てきているようである。
II  今後の施策の方向性
 職業能力開発の必要性、意義
現行の政策体系は政策を供給する側の手段の体系になっているが、もう少し受け手である人の視点、対象であると同時にキャリアを展開していく人であるという側面から組み立て直すことが大事ではないか。
能力開発をしたら、どんないい目があるかという結果を提示できないと、モチベーションにならないのではないか。
人的投資のパフォーマンスは何か。社会的にどのようにサポートしていくかということを考えるためには何らかの形で効果を測定していくべきではないか。
能力開発の在り方は企業の人材活用とあわせて議論する必要があるのではないか。
教育は究極のセーフティネットといえるのではないか。
能力開発の効果については結局インプットで測るしかないのではないか。信じて投資するしかないという点もある。
 必要となる各施策の方向性について
(1) 教育訓練機会の提供・確保の在り方
  (1)  対象者について
セグメントごとに全部施策は違うはずであり、どこを対象とするかがはっきりしないと具体策が出てこない。ターゲット・セグメントをどのあたりに置いて、どこに特に重点を置いた施策とするのかということは非常に重要である。ターゲットはいろんな置き方があると思うが、特に重点的なターゲットというものを考えたほうがいいのではないか。
職業に直接結びつく教育訓練に対して支援するだけでなく、一般教養的なものについても、いろいろなものと合わせて取り組むことにより能力開発につながっている面もある。一般教養的なものはすべて支援しないというのではなく、どのような能力開発に対して支援すべきか整理が必要ではないか。
職業能力として必要な能力について大学などの教育機関にフィードバックできるような仕組みが必要ではないか。
能力開発について「遍く広く」対象者として考えるのか、能力開発機会から遠い、このまま放置すると社会的に孤立してしまうような人に対する支援策の一つとして実施することとするのか。後者の場合は効率や効果の観点からは必ずしも高い成果が得られないかも知れないが、再分配施策としての意義があるのではないか。

(在職者)
選抜組、経営幹部候補、リーダー育成については、ニーズも高く、金はかかるけれども、どうすべきかということを企業はだいぶわかり始めており、このようなトップのレベルは企業自らやるだろうとして割り切っていくのではないか。
企業は中間層に対しては、今までのような一律階層別教育はどうも効果が薄れてきているため辞めているようだが、代わりの効果のあるやり方をまだ思いついてないのではないか。専門性やスキル、知識や経験も重要だが、行動特性、思考特性といった、自律的に自分で新しいことを学習し続ける能力が求められているが、どうしたら身に付くのかがまだはっきりしていない。この層への支援は間接的に企業に働きかけるとか、サービスプロバイダーに働きかけるような、間接的にレバレッジの利くようなやり方がいいのではないか。
下のレベルの人たちについては、企業は今までは抱えてきたけれども、もう対応できない、そういう投げ出しが出てきているような気がする。この部分を行政は直接支援をせざるを得ないのではないか。
下のレベルの人たちについてはむしろ企業が必死で何とか対応しようとしているのではないか。大企業では選抜教育を重視する割合が高まっている一方、中小企業を中心として底上げに必死になりかけているという二極化が始まっているのではないか。ボトムについて個人に働きかけるというのも大事だが、行政から働きかけるのはものすごく難しい。実際に中小企業が、底上げをかなり必死にやろうとしているのであれば、そういう中小企業を支援するフレームワークを考える必要があるのではないか。
今の仕事や転職にすぐ必要な能力開発というだけでなく、もう少し長期のキャリアを考えた能力開発が大事になるのではないか。現在第一線で一番仕事をしている人達が50歳代、60歳代になっても第一線で仕事を続けられるような仕組み作りが大事であり、リカレント教育の重要性が増すのではないか。
訓練の対象が正社員中心であるし、また外資系企業では、企業の上層部分の労働者にのみ熱心に職業能力開発を行っている。そういう傾向が今後は日本でも出てくるのか。出てくるとした場合、そういうものをほっといてもいいのかどうか、という論点もあるのではないか。

(中高年齢者)
訓練の対象は、属性別に考えた方がいいのではないか。その際中年への能力開発というのも大事な問題ではないか。
社会人大学に通う学生への支援がないのではないか。今後、65才まで、あるいはそれ以上になっても働くというとき、社会人に対するリカレント教育なしではもたないのではないか。
30代くらいの人を対象とした能力開発に対する支援が必要ではないか。団塊の世代が引退した後、この世代が社会の中でリーダーとして育っていかなければならないが今はその時期として、非常に重要ではないか。
就職しない人・できない人をニートと定義するならば、若年者だけでなく中高年にもニートが増えてきているのではないか。中高年のニートは独身者が多い。また、今は親がいるかもしれないが、今後、生活保護の対象となり得、彼らの存在は就労の問題だけでなく、社会保障の問題にも発展する。社会的に孤立している者への対策として能力開発がある。福祉施策と能力開発施策は結びつけて考えるべきではないか。能力開発の必要性はこれまで就業政策の面からのみ、ミクロ的な視点でばかり考えてきたが、福祉施策も視野に入れたマクロ的な視点で考えることも必要ではないか。

(若年者)


(非正規労働者)
雇用保険でカバーされていない人達の能力開発をどうするのかを検討することは重要ではないか。
非正規労働者の能力開発をどう考えるかは1つの大きな論点ではないか。

(離職者等)


(その他)
NPO、NGOでの就業や自営業も働く場として重要であり、これらの者の職業能力開発も検討していくべきではないか。
  (2)  教育訓練の内容について
職業に直接結びつく教育訓練に対して支援するだけでなく、一般教養的なものについても、いろいろなものと合わせて取り組むことにより能力開発につながっている面もある。一般教養的なものはすべて支援しないというのではなく、どのような能力開発に対して支援すべきか整理が必要ではないか。
職業能力として必要な能力について大学などの教育機関にフィードバックできるような仕組みが必要ではないか。
最近は、ラーニング能力が落ちている者が多い。ティーチングの方法を改良することも大事であるが、ラーニング能力を高めることも大事である。
バーチャルを活用してディスカッション形式で行う能力開発は自分で考える力がつくので効果的がある。個別の最新の手法をあわせて提供していくことにより、能力開発の手法も改善されていくのではないか。
従来は基礎的な能力の習得については学校や家庭で身につけるべきと考えられてきたが、そのような前提が崩れつつあるということも考慮しておくべきではないか。

(訓練への動機付け)
能力開発については、訓練の手前で動機付け、誘い込むという配慮が重要である。
知識・技能を付与するというだけではなく、能力開発はこのプロセス自体に働く意欲を高める効用があるのではないか。

(企業内における人材の高度化)
能力開発についてのノウハウは業界共通のものも多く、業界内で共有できるようになればより職業に密接に結びついた訓練内容となる。提供する側にとっても受講料をとるなど事業化の可能性もあるのではないか。
インターンシップというのは、対象となる学生の職業意識の啓発というだけではなく、受入担当者自身の教育訓練機会としても有効ではないか。
日本には企業の部長クラス以上に対する教育訓練がない。こういうニーズは大企業に多いのではないか。
OJTは閉鎖的な企業特殊的な訓練と位置づけられてきたが、OJTでも企業間でトランスファーできるものもあるのではないか。
産業の基盤レベルとなるような能力で不足しているようなところについては国家レベルで能力開発機会を提供していくことが必要ではないか。

(自己啓発、リカレント教育)
リカレント教育を受けたい人が受けられるような仕組みを国としても企業としても、どう整備するかが大事ではないか。その際には企業が時間面で配慮するということだけでなく、在職者が受けやすい大学院のプログラムをどう作らせるかということも大事ではないか。
中年層へのリカレント教育は、座学だけでなく、新しい技能を身につけるような実践的なものも必要ではないか。
リカレント教育には企業に金銭面の支援を求めるのではなく、どれぐらいそのための時間を与えたかということを評価するということも重要ではないか。
例えば日本版のコミュニティカレッジのようなもの、短期のセミナーのようなものをいつでもどこでも受講できるようにしていくかということも考えるべきではないか。

(セーフティネット(求職者))


(起業)
  (3)  必要となる支援について
職務内容が非常に流動化する中で、行政がどういうような訓練をするかということを決め、それに向かって施設をつくっていく、講座を用意していくというようなやり方はある意味では限界にきているのではないか。本当の意味で、民間の活力を活用して、市場が必要とする内容の教育訓練といったものをどう提供していくかということが必要になってくるのではないか。その際には助成金のような資金面での援助とともに、知識・情報の援助やキャリア・ブレイク制度のようなものをどうしていくかというようなことも、議論になるのではないか。
助成金の話だけではなく、税金の問題であるとか、あるいは最近議論になっているバウチャーの議論もあるが、基本的な考え方として、それぞれにどういったメリット、デメリットがあるのかということを考えていく必要がある。
理論的には、給付の形ではなく、融資のほうが、より自分にとってのコストとベネフィットを勘案した上での投資行動に踏み切るという意味において、同じ費用で支援するにしても有効になされるのではないか。
コスト対効果の高い政策はどこなのかについては、個人、会社、サービスプロバイダーの3つにどう働きかけるのかという、ある部分でマーケティングの発想が必要ではないか。給付なのか、ローンなのか、あるいは認定制度なのか、いろいろな働きかけの仕方がある中で、一番効き目のあるものは何かということを探す作業をしなければいけないのではないか。
行政のサポートのあり方も直接訓練を実施するだけでなく、どうやってその基盤を提供するのかということもあるのではないか。手法としては、減税や補助金という金銭面だけでなく、忙しすぎて能力開発できないという問題に対応するため、例えばキャリア・ブレイク制度を設けるなどの時間面での支援も必要ではないか。
能力開発活動への介入のあり方という切り口もある。直接提供ということもあろうし、個人に対する補助ということではバウチャーというものもあり得る。また、情報の整備ということも重要。
税制による教育訓練への支援はいいと思うが、支援をしなくても教育訓練に取り組んでいたであろう者にまで支援しているという問題もあるのではないか。
能力開発も重要な労働条件。企業が職業能力開発に熱心であることが外から見える形にしてはどうか。能力開発の時間やお金を基準に表彰制度を設けるといったやり方もあるのではないか。
どこで学ぶかということも重要。身近なところに学ぶ場があるかどうかで学習の継続は違ってくる。一つの施設で全てを提供するとか、全てを官で提供するということは現実的ではなく、訓練の場所を貸す、サテライトにするなど、公的な教育訓練の提供方法についてもフレックスにしていく必要があるのではないか。施設という枠を超えて、学校との互換性を持たせながら取り組むことはできないか。
知識・技能を付与するというだけではなく、能力開発はこのプロセス自体に働く意欲を高める効用があるのではないか。ここまでキャリア形成ということを位置づけてきた。就業意欲などの動機づけについて、能力開発の循環構造の中で整理し、自律的なモデルとしての能力開発施策を行って、その効果を測定するという一連の流れの幅広い雇用施策を行うことが大事ではないか。

(個人)
能力開発のためのマップのようなものも有効。教育訓練の1つの刺激策は資格取得であり、資格試験のために勉強方法はやり方が決まっているので簡単に知ることができる。
能力開発だけでなく、「学習支援」というキーワードも重要ではないか。学習支援のためのコーディネーターのような役割も必要。業界の中で一番の知識を持っている人を指導者として用いるのも有効だが、その場合は、教え方等への支援も必要ではないか。
訓練機会を提供する前段階のプロセスをどの程度重視するのか。本人に必要な訓練と実際の受講内容が乖離している場合もある。労働者も何をしていいか分からない場合もあり、訓練前のアドバイスなどの支援も重要ではないか。
資格を取った後の専門家集団が自律的に能力向上を継続するようになるということも重要ではないか。
欧米では、プロが、職種の資格や倫理などを決定し、プロフェッショナルな人材を育てている。この場合は主観的な基準も含めて資格を認定できるか、日本の場合は国が主導で、客観的な基準により資格を認定するしかない。そうなると表面的な知識がそろっているかということだけの認定にならざるを得ないのではないか。
勉強しようとするメカニズムが重要ではないか。

(企業)
助成金があまり使われていない原因の1つは、事業主としては現実的にどれだけ有効かがわからない、あるいは、具体的に一体何をしたらいいのか、何が必要なのかがわからないということがあるのではないか。
企業の中にも労働者の自発的なキャリア形成を支援しようという動きが、ここ2、3年でやっと出はじめており、この動きを押せるようなものが必要ではないか。
職業能力開発に関するニーズを把握する仕組みが必要ではないか。例えば、企業の教育訓練がうまくいっていないということであれば、これを改善する場を企業が設定することに対して支援するということもあるのではないか。
ミスマッチを緩和するという観点からも、アドホックに地域における業界団体などのニーズをくみ取った訓練機会を提供するということも、業界団体にとっても育成される人材が明確化するなど就職の可能性を高めるものとなるのではないか。
企業自体がニーズを把握して教育訓練をするという、その企業の自主的な取組への支援をしてはどうか。、ポジティブアクションなどの取組のように、企業自身が、企業の中の問題点を把握して、その解決に向け取り組むということに対する支援もありうるのではないか。
事業主に対する義務づけということはなかなか難しいが、規制緩和による対応という方法もあり得るのではないか。
企業自身が、今必要とされている能力や社員の能力開発のノウハウがわからないのではないか。専門家が企業側が納得するように助言していくということも大事ではないか。
個別企業が実際にどのような内容の訓練を行っているかについて情報をオープンにすることは、他の企業にも職業訓練が普及していくという効果があるのではないか。
企業に対しても、企業がどのような能力を必要としているかについて情報開示を求めるべきではないか。
客観的なデータだけで、企業の能力開発や教育訓練について評価するのは危険である。企業がどれだけ人材活用しているかを開示させ、そのことが企業にとってメリットになる仕組みが必要ではないか。
必要があれば企業は教育訓練を行う。必要があるのにやらない企業は淘汰されるだろう。しかし、実態として企業が教育訓練をやる必要があると具体的に感じているかどうか。能力開発の必要性を企業が具体的に認識できるようにするという方向に進めていくことが望ましいのではないか。
人材育成の必要性は企業も分かっているが、ノウハウがないので、どうしていいのかわからない。率先して企業が人材育成に資源を投入することにより社会が良くなるという仮説を立てて検証していくことが必要ではないか。

(その他)
実務家が教える側になる場合、教えることに関するノウハウが不足している場合もある。教えることについてトレーニングした上で教育訓練の場に送り込んでいくという仕組みがあってもいいのではないか。
給付金行政的なものだけでは限界であり、規制を緩和するということも含めた政策メニューをもっと考えていったらいいのではないか。
職業に直接結びつく教育訓練に対して支援するだけでなく、一般教養的なものについても、いろいろなものと合わせて取り組むことにより能力開発につながっている面もある。一般教養的なものはすべて支援しないというのではなく、どのような能力開発に対して支援すべきか整理が必要ではないか。
(2) 職業能力評価制度の在り方
資格が処遇につながっていると考えられているからみんな一生懸命勉強しているのだろう。求められている能力や評価されているものが分かりやすい仕組みを作ることも重要ではないか。
行動特性や思考特性のようなものを評価することは難しい。資格など明らかにできる部分は明確にし、残りの部分は職種毎に大くくりに作っていくということではなくて事柄毎に専門性を図れるような、できる部分についての仕組みを作っていけばいいのではないか。
資格があるものについてはその交通整理をすれば十分ではないか。
ビジネスキャリア制度について、ワークスタイルの変化やIT化などを踏まえた見直しが必要ではないか。
学習体系を作るに当たっては業界を支援していくという方法もあるのではないか。
評価の仕方について、資格のように固定化してしまうのが適切か。能力は変化するものであり、継続した学習を促すためにも資格や評価の仕方も変動させる必要がないか。
継続して学習することを評価する仕組みが必要ではないか。
必要となる就業基礎能力のようなものについてはコンピタンシーと呼ばない方がいいのではないか。
資格についてディレクトリを作ることは賛成であるが、その際に行政は格付けをするのではなく、情報の信頼性を確認することのみ行うべきだろう。
(3) 職業能力開発を行うに当たっての相談・情報提供の在り方
中高年の個別の相談に乗るときに必要なイメージと、若者の転職のケース、新卒の就職のケースなどいろいろなパターンが出てきているのではないか。キャリアに関する専門家をキャリア・コンサルタントだけに絞らないで、いくつか育成して促進して配置していくことが必要なのではないか。
キャリア・コンサルティングについては、大企業でも、この2年ぐらいでやっと導入し始めたという印象がある。また、そういう会社においては、キャリア・カウンセラーは全部社内の人材で、社外の人に頼むというパターンはほとんどない。社外のカウンセラーを契約で雇うケースが圧倒的に多いアメリカとは非常に対称的である。
キャリア・コンサルタントとして資格を取ったとしても、社内で活かすという道筋がないと、資格を増やしただけということになってしまうのではないか。今後、社会的にどのように活躍するかという姿を早く作っていくことが大きなポイントではないか。
教育訓練のためのいろいろなプログラムが提供されていてもその存在自体を知らないということも多く、また提供されている内容についても分かりにくいものが多い。ユーザーの視点に立った情報提供となるような工夫が必要ではないか。
情報提供について、信頼性の確保が難しいが、情報のフォーマットを決め、必要な情報を提供した教育訓練機関のもののみ、最終責任はその教育訓練機関ということで提供していってもいいのではないか。
(4) その他
<若年者>
大学生になってはじめて、職業ということを考えるというのが何かおかしいのではないか。学校教育や家庭の中で職業意識というものをどのようにうえつけるかというところまで考えるべきではないか。
ターゲットを若年のほうまで広げることが必要だというのは、共通認識だろう。学校から職業への移行をどうつくるかというところは、なかなかまだ取り組みがなされていないのではないか。若い人が自分の職業能力を開発できる場にどう社会として受け入れる体制を整えていくかというところも、大きな意味で職業能力開発という施策の課題ではないか。
ニートやフリーターが増加している原因はいろいろある。国もいろいろなメニューとして若年者対策に取り組もうとしているが、根本的な治療策がないのであれば、施策を試行錯誤しながら実施し、効果を測定し、最終的に効果があるものを見つけていくということが大事ではないか。
若年者対策については学校との連携は重要。ただし、学校をいったん出てしまうと情報がつかみにくいし、情報をつかんだとしても、個人情報の問題もあり、簡単に情報提供をお願いできない。一方で、若年者対策に関してはフリーターやニートを抱える親等からの相談も多く、親への働きかけも有効ではないか。
<技能伝承>
現場のブルーカラーの能力開発について、若い世代について新卒を採らず、請負社員で対応してきたため、団塊の世代が退職した後の技能形成や技能継承にどう対応していくかは大きな問題ではないか。
ものづくり業界においては、業務を外部委託するなど、自ら技能継承を放棄しているのではないか。これにどのように政策的に介入するかについて議論が必要ではないか。
<国際化>
非常にグローバルな視点で考えれば、日本においてはかなり縮小している技能だけれども、近隣諸国においては大変有意義なものがあり、国内的にどう温存していくのかという観点と、海外でどう使っていくのかという技術協力の観点から考えていく必要があるのではないか。
<他施策との連携>
教育との関係で一定の切り分けをして、個々の政策をつくっているところの限界が、在学の問題とかに出てきているのではないか。学校の存在も視野に入れて考えていかなければいけない。
能力開発と職業紹介をリンクさせることが重要ではないか。
<政策評価>
施策ごとにターゲットとの関係で効果がどうだったか、ターゲットの設定が適当であったかという観点から効果測定が必要ではないか。ターゲットを想定し、どういうメカニズムになっていて、どの部分が効いたのかという分析を行い、今後のアクションにつなげていくべき。


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