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第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

(注)  枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。

1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾

 平成14年12月26日1:35頃、自転車乗車中に4tトラックにはねられる。近医に搬送され、CT撮影にて右急性硬膜外血腫、外傷性クモ膜下出血と診断。同日朝に、挿管後、提供病院に搬送される。9:40救急外来到着時 JCS300、呼吸はほぼ停止状態、瞳孔散大固定、対光反射消失。開頭血腫除去術を施行するも、手術後のCT撮影にて著明な脳浮腫を認め、回復困難と診断。
 12月27日、家族より意思表示カードの提示があった。家族からネットワークコーディネーターの説明を受けたいとの申し出があったため、同日15:30、病院は中日本支部に連絡。
 同日16:59にネットワークのコーディネーター2名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行っている。遅れて都道府県コーディネーター1名が病院に到着。
 同日20:05に、ネットワークのコーディネーター2名および都道府県コーディネーター1名が家族(患者の両親)に面談。脳死下臓器提供についての一般的な説明を行った。
 12月29日19:30、病院は臨床的に脳死と診断。同日19:47、病院は中日本支部に連絡。
 同日20:05に、ネットワークのコーディネーター2名および都道府県コーディネーター1名が家族(患者の両親、弟)に面談し、主治医同席の下、脳死判定、臓器提供の内容、手続き等につき文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認している。
 同日20:40に患者の父が代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。

 家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続きを記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への説明等は適正に行われたものと評価できる。


2.ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等

 12月29日21:32より、心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、12月30日04:51よりレシピエント候補者の選定を開始している。また、法的脳死判定が終了した後、同日11:00より各臓器別にレシピエント候補者の意思確認が開始された。
 心臓については、第1候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾。第2候補者は、候補者が右胸心のため左胸心のスペースが小さいことを理由に移植実施施設側が辞退。第3候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者に心臓の移植が実施されている。
 肺については、第1候補者、第2候補者、第3候補者、第4候補者、第5候補者の移植実施施設側がドナーの肺機能不良を理由に両肺の移植を辞退し、肺の移植が見送られることになった。
 肝臓については、第1候補者、第2候補者はドナーの状態が不安定であることから移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第3候補者はドナーの状態を考慮し、候補者と主治医との相談の上、移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第4候補者は、候補者の体調が良く判断できないとの理由で移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第5候補者は、ドナーの状態が不安定であることから移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第6候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾。第7候補者は、医学的に適応なしと主治医が判断し移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。最終的に、開腹後に肝生検を行った結果、40〜50%の脂肪肝であることが判明し、肝臓の移植が見送られることとなった。
 膵臓・腎臓の同時移植については、第1候補者の移植実施施設側が一旦膵臓・腎臓の同時移植を受諾するも、リンパ球直接交叉試験のB warm抗体が陽性であることを理由に辞退。第2候補者、第3候補者、第4候補者の移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を受諾するも、最終的に、摘出された膵臓に6箇所の石灰化を認めたため、膵臓の移植が見送られることとなった。
 左右の腎臓については、第1候補者は、候補者に心疾患があるため移植実施施設側が腎臓の移植を辞退。第2候補者は、候補者の現在の病状から移植実施施設側が腎臓の移植を辞退。第3候補者は、候補者の気持ちの整理がつかないことを理由に移植実施施設側が腎臓の移植を辞退。第4候補者、第5候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、順位通り第4候補者と第5候補者に左右の腎臓の移植が実施されている。
 また、感染症検査やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続きが行われたものと評価できる。

 ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等

 12月30日10:10に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより、家族に対して、肺、肝臓、膵臓移植については医学的理由にて移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。


4.臓器の搬送

 12月30日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 臓器の搬送は適正に行われた。


5.臓器摘出後の家族への支援

 臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともにご遺体をお見送りしている。
 12月31日にネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が告別式に参列している。
 2003年1月8日には腎臓移植を受けたレシピエントからのサンクスレターを家族に郵送している。
 1月17日、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が患者の両親、および実弟と会食。レシピエントからのサンクスレターに対する返事の手紙を預かっている。
 1月29日、心臓と左腎臓の移植を受けたレシピエントが退院されたことを実弟にメールにて報告し、両親からお礼の電話を受ける。
 2月16日にはネットワークのコーディネーター1名がご自宅を訪問。四十九日法要に参列し、厚生労働大臣と岐阜県知事からの感謝状を手渡し、その後の経過報告を行っている。感謝状を受け取った父親は、その場で仏壇に供え、涙ぐまれていた。親戚や知人らも臓器提供について、「あの子らしい」「良いことをしたね」と話される。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントの退院状況や近況報告等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。

【評価】
 コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、告別式の出席、家族への報告等適切な対応がとられている。


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