胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(第3回呼吸器ワーキング・グループ)議事録


1 日時 平成17年2月15日(火)14:30〜16:30

2 場所 厚生労働省専用第17会議室

3 出席者
 医学専門家:奥平博一、奥平雅彦、木村清延、斉藤芳晃、人見滋樹、横山哲朗
(50音順)
 厚生労働省:明治俊平、渡辺輝生、神保裕臣、菊池泰文 他

4 議事

○医療監察官
 定刻より早いのですが、先生方がお集まりですので、第3回胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会 呼吸器ワーキング・グループの検討会を始めさせていただきます。横山先生、よろしくお願いいたします。

○横山座長
 どうもご苦労さまです。まず、事務局から提出された資料の確認をお願いいたします。

○障害係
 資料No.1第3回呼吸器ワーキング・グループの論点、資料No.2論点別の各参集者の意見及び今回のたたき台のポイント、資料No.3肺の障害の取扱いのたたき台(案)2、参考資料として「肺の機能障害の評価方法について横山先生、木村先生、斉藤先生からいただいたご意見をまとめたもの、それから、横山先生から提出していただいた資料をお配りしております。

○横山座長
 皆さん方のお手元に全部揃っているでしょうか。その細かい文章の表現その他については、まだいろいろと手直しをしなければいけないかと思うのですが、骨組みについて何かご意見がございましたら、出していただきたいと思います。

○医療監察官
 論点別の意見と今回のたたき台のポイントについて説明をさせていただくということでよろしいでしょうか。

○横山座長
 お願いいたします。

○医療監察官
 説明をさせていただく前にお詫びをさせていただきたいと思うのです。実は、事前に送付したものと今日お配りしてあるものが、前半のほうは変わりがございませんけれども、実際の障害の評価の所について変えてありますので、そちらについても、どう変えたのかも含めて説明をさせていただければと思います。資料No.1と資料No.2、それから、横山先生からいただいた注記(1)〜(6)を使って説明をさせていただければと思います。
 資料No.1ですが、これは先生方に、お忙しいところ、1週間ぐらいの短い期間でご協力いただいたアンケートを、まとめに基づいて作ったものです。まず原則として、どのような物差しで呼吸器機能障害を見ていくのかということですが、これについて事務局で用意したのは、呼吸器機能障害は原則として安静時の検査で障害認定をしたらどうかということです。資料No.2の6頁に、障害等級を評価する検査は安静時と労作時、いずれが適当かということで、前回横山先生からも指摘がありましたが、旧じん肺法では運動負荷検査によって決めていたが、それがばらつき等のことがあるということで安静時の検査に変わった。このことを踏まえれば、安静時の検査が原則なのではないか。それから、患者の具体的な呼吸困難等を一定考慮するような方法が望ましいのではないかというような意見が出ました。それを踏まえて今回のたたき台ということで書かせていただいていますが、呼吸器機能障害は原則として安静時の検査によって障害認定をするということについて、特段反対はなかったということで、今回のたたき台も、呼吸器機能障害は、原則として労作能力の評価を念頭においた上で安静時の検査で障害認定をする。著しく不合理な場合については、運動負荷時の検査を加味するということで、たたき台を用意しております。
 資料No.1の1頁の3は、肺の傷病に係る療養を必要とする者の基準です。前回は事務局案として、呼吸不全について要療養ということで考えたらどうかということで出したところ、最初から60Torr以下は療養と決めつけるのはいかがなものかという意見が出され、とりあえず、上から下までよく見たうえで、最終的にどうするのか決めたほうがよいという意見が出されました。事務局のほうで、治療の絶対的適用、あるいは相対的適用について調べた上で、右端にあるように、基本的に30Torr以下は、いろいろな本を読んでも、脳も障害されるということで、治療の絶対的適用だろう。しかし30Torr以下はないだろう。60以下は相対的適用だろうということです。逆に言うと、絶対的適用は30Torr、相対的適用は60Torrというようなことを踏まえて、30〜60の間は個々の事案に応じて、症状が安定しているのかどうか、治療効果があるのかどうかを踏まえて療養の要否を決めるべきであるという形でたたき台を用意させていただきました。
 ここまでは送付したものとほとんど変わってないのですが、大きく変わった所が資料No.1の4以下、労務に与える支障の程度と呼吸器機能の障害の関係です。いちばんわかりやすいのは5頁かと思いますので、5頁を開いていただければと思います。障害等級認定のフローとあります。先ほどの所で動脈血酸素分圧が30Torrを超えないと「要療養にはならないということで、絶対適用の所で分かれる。そこのところは送付したものと変わりがないのです。その上で、症状が安定し、治療が不要だということであれば、60Torr以下であれば要療養になる、ここも変わりません。そして、30Torrを超えており、症状が安定し、治療が不要なときには治ゆ障害認定にする。そのときに、原則として、動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧による評価を行う。50Torr以下は3級、51〜60Torrについては、原則は7級で、炭酸ガス分圧が正常範囲内にないときには5級にする。61〜74Torrの場合は、原則は11級、正常範囲内にないときには9級にするということで、前回提出されたものにプラスして炭酸ガス分圧、前回これも評価の対象にすることが望ましいという合意ができたということで、それを加味したものになっているのです。
 そこからが送付したものと違います。送付したものでは、%1秒量による評価を並列の形で見ていくということで書いたのですが、机上配付をしたものには、動脈血酸素分圧と炭酸ガス分圧による評価を基本的に採用したらどうかということです。なぜそうなのかというと、1つは、血の中の酸素分圧なり炭酸ガス分圧というのは、換気・ガス交換・肺循環の相対的なものを表したものであるということ。また、注(1)にあるように、炭酸ガス分圧異常について評価をすることによって、恒常状態における運動負荷による能力を推測することができるということです。そこで、原則は動脈血酸素分圧と炭酸ガス分圧による評価でいく。ただし、注記の(3)にあるように、臨床所見や検査所見等から見て不適当なのだという場合には、スパイロメトリーあるいは運動負荷の成績を勘案するという話になります。机上配付したものでは、臨床所見から見て不適当の例として、安静時にも確かに呼吸困難し、非常に重篤な換気障害があれば、重く見てもいいのではないか。それ以外のときには、注記の(5)にあるように、事務局案では特段の要件は記してないのですが、横山先生に用意していただいたものでは、身障者法とか国年や厚年でも使っているスパイロ指数で40%以下になったようなときには、先ほど見ていただいた3、5、7、9、11を1級ずつ上げていったらどうか。運動負荷試験については、どういうふうにするかは次回検討していただければと思いますが、運動負荷試験を途中でやめてしまったようなときには、これも1つ上げたらどうかという形で評価をさせていただいたらどうかということで書きました。
 9〜11頁にかけて、いま申し上げた呼吸器機能障害の判断基準についての各先生方のご意見等と、たたき台で用意したものとを一覧にしてあります。基本的に、動脈血の酸素分圧、炭酸ガス分圧に着目するということについて反対は特段ありませんでした。併せて換気障害についても着目するということ自体にも反対はありませんでした。しかし、実際上どのように見ていくのかというところでは、いろいろなご意見が出されました。
 木村先生からは、ヒュー・ジョーンズの4、5というような重いものであれば、動脈血の酸素分圧が反映されるのだけれど、3以下のような場合にはなかなか反映されないこともあるので、むしろ%1秒量のほうを重視したらどうか。%1秒量の値を、最初に送付した事務局案では50Torrでしたが、50Torrでは厳しすぎるのではないかというような意見が出されました。斉藤先生からも同様に、%1秒量による障害等級については、50Torrというのは厳しすぎるのではないのか。むしろ、50Torrであれば3級にすべきではないのかというような意見が出されました。
 最終的に事務局としては、横山先生のご指摘と前回のご議論を踏まえて、基本の筋として、動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧に基本的に着目したらどうか。それが適当でないときに、スパイロメトリーによる評価を加味する。具体的には1ランク上げるということでいかがかということでたたき台を作りました。
 15〜19頁までは読み上げた上で、質問等があれば討議していただくということでどうかと思うのですが、横山座長、いかがですか。

○横山座長
 お願いします。
(資料No.1の15〜19頁を読み上げ)

○横山座長
 随分いろいろなことが書いてあるのですが、これは最終的に、どこかに文章として出るわけですか。

○医療監察官
 ここに書いてあるものが、最終的には胸腹部臓器全体の報告書の一部としてまとめられることになります。ホームページ上では今でも、検討会が終わりますと、その都度報告が外に出ている状態でして、終わったときには正式な報告書として世に出されることになります。

○横山座長
 ということは、ここにいる先生方の勉強のためではなくて、委員ではない関係者のために。

○医療監察官
 はい。

○横山座長
 そうすると、いろいろと大変な問題をここに含んでいると私は思うのですが、逐条的にだんだん議論をしていきましょうか。まず、全般で先生方のご意見があるでしょうか。

○木村先生
 基本的な所で、動脈血ガスと%1秒量に注目するという前回のものには文字どおり賛成なのですけれども、いま提示されたものは、むしろ血ガスを最大の基本とする。それに、必要であればということでもないのでしょうが、スパイロメトリーを加えると。実際には高齢者が多く、正しく理解ができないような人も加わってきている現状も確かにありますから、非常に魅力的ではあるのですが、7級だとか9級、11級などと細かく障害の等級を決めていく場合、果たして血ガスがこういうふうにきれいに分かれていくのかどうかという点で疑問があるように思うのです。私個人としては、%1秒量ないしは%肺活量というものを基本にして、検査ができないだとかそういうところに血液ガスを加えて考えるというのが、より基本的ではないかなと思うのです。

○人見先生
 私はそのほうが。努力によるといいますが、血液ガスのほうも、努力によって呼吸こらえすれば、悪くなるでしょう。それから、痛みを感じてウーッとなっている間につくのが下手だったら、何回かやっている間にむしろ、カッとなるかもわからない。ですから、どちらも客観性というのは本当に難しいことなのです。
 スパイロメトリーというのは本当に伝統的にやっているから、慣れた医師が普通にやれば、そう努力依存性といわなくても、いけるのではないかと思うのです。血液ガスのほうがむしろ、一般的ではないのではないですか。スパイロメトリーをメインにされるほうがいいのではないでしょうか。

○横山座長
 人見先生も同じなのですが、私どもは昭和20年代の半ばからスパイロメトリーで生きてきた人間なのです。肺機能障害の評価というと、何でもスパイロメトリーが基準になって、スパイロメトリーが土台の物差しになったうえで他の検査を積み重ねる、というものの考え方をずっとやってきたのです。
 しかし私は、これからの肺機能検査ということを考えると、スパイロメトリーにあまりに依存しすぎるのは危険ではないだろうかと思います。うちのコンピューターに入れたものが何万例かあるのですが、そのデータを引っくり返してみると、問題が出てきてしまったわけです。ではそれをどうすればいいかということを考えに考えたうえで、思い切って、ここで動脈血を中心にして、しかもそれは酸素分圧だけではなくてCO2分圧も合わせて評価する。しかし、それですべてを説明し切れるとは私も思いませんので、問題がある場合には、そこにスパイロメトリーの結果や運動負荷の結果を積み重ねていくということが、これからの肺機能障害の評価という点では、より合理的なのではないだろうかと思ったのです。これは私の独断かもしれないので、先生方のご意見を伺いながら然るべく直していかなければいけないと思います。

○奥平(博)先生
 私の理解が足りないのかもしれませんが、いま読まれた所に書いてあることと前に書いてある所とは必ずしも一致しない。

○横山座長
 私の意見は昨日原稿として渡したのですが、これは、そういうことが出てくる前の段階で書いておられるものですから、少し食い違いがあるのです。それで私は先ほどから、逐条審議をお願いしたいと申し上げたのです。

○医療監察官
 事務局の提案としては、動脈血ガスを基本に据えて、例外的に、それが不的確な場合に他のものを見ようということでどうかということです。ただ、そこの基本の所がいちばん大事なので、そこの所をまず議論していただいたらどうなのかというのが木村先生と人見先生のご意見です。どちらを基本に据えるのか、あるいは、先週先生方にお配りしたような形で、基本線が2つあるというようなものを事務局としてまず出したのですが、基本が2つがいいのか、あるいは基本をどちらかにするのかというところをご議論いただければ、大体決まってくるのではないかと思うのです。

○横山座長
 私がこれを拝見して気になったのは、アンダーラインをしてある所が何箇所かありますが、どうもこの辺の所に問題があるのではないか。逆に、それを慎重にしないと、この議論が公開された段階で、いろいろと批判の中心になりかねないので、ここのところはしっかりと文章を練っておく必要があるのではないかと思います。
 例えば、労作時の呼吸機能障害の問題にしても、労作時の呼吸機能障害というのは、運動をさせているときの呼吸機能障害でしかわからないのか。安静時の障害から推測はできないのかという問題もあると思います。
 それから、私は昔はそんなこと夢にも思わなかったのだけれど、自分が年をとってみると、運動負荷試験などで歩かされると、怖いのです。それはおそらく患者も同じだろうと思うので、それをどうやって解決していくかということを我々としては考えなければいけないのです。運動を負荷することのほうが、安静時の動脈血あるいはスパイロメトリーよりもより正確であるという議論には、なかなかいかないような気がするのですが、その辺はどうでしょうか。

○医療監察官
 安静時のものでやるのか、運動負荷時でやるのかということについて、各先生方のお考えは、基本的に安静時でやるべきだということについて反対はないのかなと思います。そして、安静時のものでスパイロメトリー中心にするのか、動脈血ガスを中心にするのか、あるいは二本建てにするのか、ということについて議論していただければと考えます。

○横山座長
 (2)のアンダーラインしてある文章を見ると、安静時では駄目だろうと。

○医療監察官
 安静時では駄目なのではなくて、本来運動負荷で何の問題もなくできるのであれば、運動負荷でやるのだけれど、結局、運動負荷はいろいろな問題点があると。さらに、安静時でも一定の範囲内であれば、これは先生が先ほどおっしゃいましたが、労作時の状況を推定することができるのだ。だから、安静時のもので原則やっていいのです。著しく不合理な場合だけ運動負荷を見るのですということが(2)に書いてあるのです。

○横山座長
 私は必ずしも合理・不合理という議論が適当ではないと思います。両者の間に齟齬がある場合に問題があるのであって、どちらが合理的で、どちらが不合理であるということは、そう簡単には言えないのではないかと思いますね。文章の表現というのは相当慎重にしておかないと、議論の場にいなかった人が読んだときに、何言ってるんだと言われる可能性がありますから、この席で先生方の慎重なご意見を承って、直すべき所は直していくほうがいいのではないかと思います。
 例えば(3)で「動脈血中に一定量の酸素が存在することが不可欠であり」ということがアンダーラインをして書いてあるのですが、一定量の酸素が存在することが不可欠とはなかなか言えないと思うのです、これはほかの所で分圧をいっているわけなので。酸素乖離曲線がありますから、必ずしも含量と分圧とは平行してない。各臓器に必要な酸素を送るためには、ある分圧差が必要なのだけれども、量というのは血流量との関係があることなので、こういう文章でアンダーラインをして強調することはなかなかできないと私は思うのです。

○医療監察官
 そこの所は強調ではなくて、変わったところで、新しく挿入した所にアンダーラインをしてあるのです。

○奥平(博)先生
 何か矛盾しているところがあるように思うのです。それから、安静時のものでいいのだということで全員賛成ということでしたが、この前頂いた中に、「運動負荷については次回以後に検討する」と書いてあったので、3回目である今回は、そこの所についてはあえて何も述べなかったのです。そういうこともあるので、必ずしも運動負荷が不必要ということではないと思うのです。

○横山座長
 それは私も同感なのです。私は運動負荷の無要論を主張しているのではないのです。ただ、運動負荷をやらないと拾ってこられないような機能障害がどこにあるのか。ではどんな場合に運動負荷をやらなければいけないかということも考えなければいけないと。

○奥平(博)先生
 臨床症状と明らかな乖離があるというときには、安静時だけではなくて、運動負荷も。運動負荷が努力依存性ということですが、努力依存性と言えば、すべてが努力依存性なのです。運動負荷というのは、虚血性心疾患のときに、うんと進んでいますよね。だから、そういうものを参考にしながら行ったらいいのではないかと思うのです。何というか、読んだだけで完全に違っていますよね。

○横山座長
 食い違っている場所があると私も思います。

○奥平(博)先生
 これ、2つ出してしまうと、何を考えているのか。一体どっちのほうがいいのだということになってしまうのではないかという気がしました。

○課長補佐 いまのお話で、具体的にどういう部分が、どことどこが食い違っていると言うのですか。

○奥平(博)先生
 例えば標準偏差が75Torrという話が出てきますが、そうしたら、こっちで50Torrというのはどういう整合性があるのかということもあります。

○医療監察官
 75Torrは異常である、障害があるという意味です。

○奥平(博)先生
 障害があるのだったら等級のほうにも。

○医療監察官
 ですから75Torr未満であれば障害になりますよと。前回は80Torrで出したのですが、80歳ぐらいの人は、標準偏差を入れると、それがほぼ正常といいますか、基準値そのものになるので、それは適当ではないでしょうと。正常な人を障害と言うわけにいかないので、75Torr未満が障害ですと。ただ、治療が必要かどうかという意味でいくと、75〜70Torrの人が治療が必要かというと、治療が必要でないことのほうが多いでしょうと。治療が終わってはじめて障害ということになりますし、低酸素血症が非常に進んでいるような人、例えば50Torrぐらいのレベルでいえば、慢性のものでも、しない場合もあるでしょうけれど、普通は治療をするでしょう、ということで50 Torrというのが出てくるのです。50 Torrと75 Torrというのは別段矛盾しているわけではなくて、75Torr未満については明らかに異常だから障害として評価しましょうということを書いてあるのです。

○横山座長
 昔の日本胸部疾患学会(現日本呼吸器学会)の肺生理専門委員会という所で、全国16の大学から健常者のデータを出してもらって統計を取ると、80歳を越したところでしたか、ある程度の年代になると、健常者の動脈血酸素分圧の回帰式が70Torrぐらいの所までいってしまうのです。更にばらつきを考慮すると、もう少し低いので、75 Torrというのがどこから出てきたのかと私も思って、後で議論していただきたいと思っているところなのです。
 その後でCharles・Fletcherの話が少し出てきますが、私はFletcherを大変よく知っていて、向こうも「ヨコ、ヨコ」と言っていろいろな話を持ち込んできた人なので、奥さんはいまも健在なのです。そのFletcherに私が、あなたが言っていることは、どうも納得がいかないのだという話をしたら、これはイギリスのロンドン中心の、3万と言いましたか、郵便配達夫のことを考えてもらわないと困るのだ。そういう大きな対象について、お金がないのに何らかの評価をしなければいけないというときに、Fletcherの意見が出てきたのです。私は個人的には、決して自覚症状や何かで評価できるとは思わないし、スパイロメトリーで評価できるとも思っていないのだという話を、彼がしつこくしたことを今でも覚えているのです。本に書いてあることとFletcherが言っていることは。17頁辺りも、慎重な表現をしないといけないのではないかという気がしているのです。

○人見先生
 スパイロメトリーのデータの1万ほどの例がコンピューターに入っていて、それを分析してみると矛盾点が出てきたということについて教えていただけますか。どんなことが出てきたのでしょうか。

○横山座長
 1万ではなくて3万何某かなのですが、その中で、健常と思われる患者が何人かおります。これは病院に来た患者を相手にして集めたデータですから、何らかの異常がある人が多いのですが、それでも、私どもが外来で拝見して、これは肺機能には異常はないのではないかと思うような人のデータを引き抜いて見ました。日本やアメリカでいろいろな学会その他で出している、加齢に伴う肺機能の変化というものは、大体一次式で表されています。回帰式が一次式で表されて、高齢の所は概挿法で延長して使っているものが多いのです。これを私どもが調べてみると、どうも年齢が高くなってくると曲がってきて、減り方が小さくなっている人が多いのです。なぜそんなことになってしまったかというと、Boldwin、Courrland等がやったころから始まって、当時はコンピューターなどはなく、手回しの計算機で計算しなければなりませんでした。そうすると二次式、三次式で、あるいはエクスポネンシャルのカーブで回帰式を求めるということは、およそ不可能に近かったのです。それから、対象にした年齢も大体60歳前後が多かったので、一次式でも問題はないということだったのです。しかし、どうも70歳、80歳、あるいはそれ以上の対象者の肺機能を見ていくと、回帰式は曲がってきていて、変化が小さくなってきているのです。
 私どもだけでなくアメリカでも、CANSASの大学の人も、2本の一次回帰式を組合わせて求めるべきであるというようなことを言っているのです。2本の直線回帰式ということは、交点の近くでは急に方向変換をすると言うのですが、そんなことはあり得ないので、おそらく何か曲線で加齢の影響が出てきているのではないかと私は思っています。
 ただ、非常に高齢な人になると、完全な健常者というものを決めようがないというか、大変難しい。それを打開していくのには、多くの施設が協力してやっていくより仕方がないのです。今ここで基準値がないとか何とかという話をしているのだったら、話にならないのであって、いまある、我々が利用できる基準値を使ってどのような問題があるのかを考えていくということではないかと思います。

○人見先生
 その矛盾点と、障害認定のときにこれが使いにくいということとは、そんなに結び付かないのではないですか。

○横山座長
 先ほど先生が言われたように、%1秒量というときに、肺活量の予測値を求める求め方に影響が出てくるわけです。ですので無視はできないと思います。

○木村先生
 私が理解しているところでは、いまの呼吸器病学会で出した標準は、日本人の18〜95歳までを対象にして新たに求めた計算式だと理解していますが。

○横山座長
 対象の年齢分布と症例対象数の関係を見ると、95歳、90歳などというのは非常に数が少ないのです。だから、そこの被験者の年齢分布も一緒に見ないといけない、同じウエイトで物事を考えてはいけないのだと私は理解しています。

○木村先生
 今回の対象の平均がどのぐらいになるのかということもありますが、相当日本人に合った形で網羅してきているのかなと私は理解したのですが、年齢的には70歳以上とかになると相当ばらついてくるものなのですか。95歳までというのは理解しているのですが、どのぐらいの比率で調べているのかというのが分からなかったものですから。

○横山座長
 例えば、残差標準偏差のようなものを計算した場合に、加齢に伴って、高齢者の残差標準偏差が大きくなってくるのです。それが大きくなるということは、棄却限界の幅が広くなってしまうのです。これでは駄目だと言ってしまうと、いまの臨床肺機能検査というのはつぶれてしまいます。そうかと言って、例えば5年先、10年先に慌てて基準値をつくろうとしても、なかなかできないことですから、いま第一線におられる先生方が中心になって組織をつくって、それでまとめていただくより他にないのではないかと考えています。

○奥平(博)先生
 私は、スパイロメトリーも考慮するけれども、基本的には動脈血の酸素分圧を基準にしていくということには非常に賛成なのです。そのことを言っているわけではないのですが、さっき75Torrというのが出てきましたね。75Torr以下は異常だけれども、病気ではないみたいな感じ。

○医療監察官
 病気や怪我によって、異常がある場合には障害として評価をすることになります。ただし、その異常が大きすぎて、例えば外から酸素をあげなければいけないとかいうことになると、治療の対象になります。治療が必要な人について、治療をやめて、あなたは障害ですよということはしません。75 Torrというのは、実はCibaのGuest Symposiumのところからもってきておりまして70 Torrでもいいのですが、70 Torr以下は異常です。ただ、60 Torr以下で一定の要件があれば、総体的な治療適用でしょうということで、治療が必要な人については、療養を続けていただくという提案しております。例えば58 Torrくらいの人なら、安静時58 Torrくらいで動くとグンと低酸素血症になってしまうというようなことであれば、酸素療法の適用ですということで治療を続けていただくというわけですから、基準としては一応上から下までありますが、実際上は適用にはなりません。療養をずっと続けていただきますと、そこが書いてあるだけなのです。

○横山座長
 いまCiba Guest Symposiumから引用したと言われたのですが、Ciba Guest Symposiumというのは1959年ですね。あの頃は、血液の酸素分圧を直接電極で計ることができなくて、バンスライクの装置で含量を計って、それで標準解離曲線に当てはめて、分圧に直していたわけです。これは、いま通用しないことなので、やはり新しい測定技術というか、いま現在普及している測定技術を基にした値を当てはめないと、違和感があると、先生方がさっきからおっしゃっていますが。何で75 Torrという数字が出たのだろうというふうなことになってしまいますね。

○奥平(博)先生
 それで、18頁の上のほうで消してある所には、「安静時の動脈血酸素分圧が60Torr以下の場合は治ゆとすべきではない」とか、「動脈血酸素分圧が60Torrを超え、80Torr以下のものについて、障害認定すべきである」と書いてありますね。だから、どうして。消してあることと、採用しているところが何かちょっと、判然と。

○横山座長
 具合が悪いから消したのだろうと思うのですが。

○奥平(博)先生
 そうなのです。だから。

○医療監察官
 ここは前回60 Torr以下はすべて一律療養が必要ですということで出させていただいたのですが。確かに、慢性の呼吸不全のような場合には、特段何もしないこともありますよということなので、ここの部分はもう消してしまいました。ということで、二重線が引いてある所は、これは消しましたということを表しているだけのものです。当然、消してあるわけですから、前回の考え方とは異なっているということです。

○横山座長
 ほかに何かございませんか。

○人見先生
 わざわざ下が読めるようにしてあるのは、何か意味があるのですか。ポンと消してしまったら残っていないですね。

○課長補佐 これは前回の文章を、前回の案を消して、消した所が二重線で消してあります。新たに付け加えた所が、下のアンダーラインで引いてあります。ですから、いわゆる見え消しと言いますか、前がどうであったかということを見せながら、新たにこう変えましたという作りになっています。ですから、その前の前回の数字から今回の数字に変わっているのは、当然それには理由があって、前回の議論を踏まえて変わったというふうにご理解いただければと思いますが。

○横山座長
 業務上の呼吸器疾患の場合に、肺の末梢領域の病変を主体とする患者さんがかなりあるわけですね。これから近い将来にそれが増えるのではないか。単純に、昔のじん肺その他とはちょっと様子が違って、末梢気道に病変が局在して、しかも、び漫性にあるという患者さんが増えた場合に、これもやはりスパイロメトリーでは引っかかってこないわけですが、そういうことも頭の中に置いて、今回のワーキンググループの仕事をまとめる方向にもっていかないといけないのではないかという気が私はするのです。それにはどうすればいいかということを、先生方にお考えいただきたいと思うのですが、何かご意見ございませんか。
 私が、動脈血のCO2分圧に取り組んで、しかも、異常なCO2分圧と言っている場合には、CO2分圧が異常に上昇している場合、これはいわゆる肺胞低換気というので、換気仕事量と噛み合わせてみるとわかる。ところが、動脈血CO2分圧が異常に低い場合は何かというと、結局これは肺胞レベルでのガス交換障害、特に拡散障害とか換気・血流比不均等分布という、肺の末梢気道の病変に対応した異常を、しかもそれを代償しようとする作用が働いている。代償しようという作用が働いているときには、これは、私どもの経験でも、運動負荷その他によって早く患者さんがバテてしまうということがあるので、動脈血のCO2分圧が高いだけでなく、低い場合も取り上げて考えていくほうがよいのではないかということで、私は「動脈血のCO2分圧異常を伴う場合」と一括して書いて、その2つを高い場合と低い場合とに分けて書いて。それは、今日先生方にお配りしたメモの中に入っていると思います。私のこのメモは、昨日循環器のワーキンググループをやってきたときに、神保さんからいろいろ注文を受けて、そうですかと言って家へ帰ってから思いつきを片っ端からメモしていったものですから、もうちょっとこれは細かいことを練らないといけないと、私自身大いに反省しているところです。その反省すべき点を先生方にご指摘いただければ、この次までにまた修正したものをお届けすることができるだろうと思っています。

○医療監察官
 先生、いままでのご議論の中で、動脈血ガスと炭酸ガス分圧に着目して、先生がおっしゃる形で正常範囲内にないものについては、より多く見るということについては、特段、先生方に異論はないのかなと。あと、この中で、異論があるとすると、スパイロメトリーというのをもう1つの柱にするのか、あるいは先生にお示しいただいたものの原則の例外として位置づけていくのか。ここが大きく考え方が分かれているところなので、ここについてもう少しご議論をいただければ、おのずから決まってくるのかと思います。例外でよいということであれば、先生のこの注記のものをもう少し具体化すれば、それで終わりということになりますし。

○横山座長
 簡単に終わりと言わないで、少し議論をしましょう。どうですか、先生方のご意見。遠慮なくおっしゃってくださればと思います。

○斉藤先生
 私は血液ガス主体の話で、ある意味ではスパイロメトリーがなくなるからいいかなという感じで考えているのですが、ただやはり、血液ガスの成績と、現在の、現状の患者さんの状態などを見ると、やはり少し高めで、うまく高いところの、私たちが悪いと認識している人でも、動脈血ガス分圧が高い人たちはいると思うのです。それを、どのようにして引き出すかという話のところに、スパイロメトリーが利用される。あるいは、私が前に言った、歩く運動のときの飽和度というものを入れたらよいのではないかということで理解しているのですが、ただ、一般的に言う、負荷をかけて、極力最大まで追い込むような仕方はしたくない。そのために、50メートルくらいをゆっくり歩くくらいの感じのペースで、この認定の基準というのは、要するに仕事ができるのかできないのかの基準が、いちばん大きな問題ですから、最大の負荷をかける必要は全くなくて、それをすべきでもないと考えています。
 歩行した程度の感じで、血液ガスが正常であっても、歩いたときに飽和度が下がってくるようなものを、何かこう引っ掛けるような形を残してほしいというのが、私の考えです。基本的には、またじん肺の話になって申しわけないのですが、我々が見ているじん肺の患者さんは、安静時は呼吸困難を全く感じていない人はたくさんいます。動けば息切れするというのが、じん肺の最初の所見だと思っていますから、スタティックな状態で調べるスパイロドラム血液ガスだけでは、やはり現実とちょっと離れたところがあるのではないかということを感じて仕方がないところです。

○横山座長
 私も全くそのご意見に賛成です。私がなぜスパイロメトリー・運動負荷試験を加えているかというと、安静時の動脈血酸素分圧は、それほど異常はないけれども、動かしてみると異常があるという場合もあり得るでしょう。それから、患者さんが自分の日常生活から、仕事をするのが苦しくてしょうがないという患者さんも中にはおります。そういうふうな方たちを何とか拾い出すために、スパイロメトリー、あるいは運動負荷試験というものを使ってはどうだろうか。動脈血ガスである程度悪い人、それほど悪くない人、それでもよいのですが、動脈血ガスに異常のある人で、症状あるいは身体所見その他から、どうしても医者の目から見て合わないという患者さん、いま先生がおっしゃった患者さんもその中に含まれると思うのですが、そういう方をどのようにして拾い出して評価していくかということを考えていただきたいと思うのです。
 運動負荷試験の場合に、今日お渡ししたメモの中に、苦しくて途中で運動負荷試験をやめてしまった、ギブアップしたということが書いてある。ギブアップはしないけれども、どうもよくないというような人が中にはいるわけです。どうもよくないというのを、どのようにして判断、評価していくかということが難しいところだと思います。しかもそれが、業務上の呼吸器疾患を主体に、じん肺病因もそうなのだと思うのですが、やっていらっしゃる患者さん方、これは運動負荷試験も十分熟練していらっしゃるだろうと思うのです。この、全国レベルでものを見た場合に、誰が、どの医者、どの検査員がやっても同じような結果が出るということでないと、なかなか難しい問題です。その、誰がやっても同じような結果が出るという数値の評価の基準というものを、どのようにして決めたらよいのか。これは大変大きな問題ですね。

○木村先生
 確かに、そこは難しいところがあると思います。

○横山座長
 さっき人見先生がおっしゃっていた、動脈血検査にしても、上手な検査員がサッと採血したときと、何度も何度も刺して、真っ青な皮下血腫をつくってしまったような場合とでは、結果が違ってくるだろうというようなことがありますから、下手な人がやったというのでは、これはやはり困るので、ある程度熟練した人たちが採血する。あるいは運動負荷試験をした場合のことを考えればいちばんよいのですが、ただ、熟練していても違う結果が出てくる可能性が出てくるわけです。それをどのようにして避けるかということが、この臨床肺じん検査の宿命的な課題ではないかと私は思っています。

○人見先生
 血液でいけたらスッという気がするのです。例えば、ちょっと危ないと思うのは、肺の全摘をして、さらに片方の中葉くらいを取っているような人でも、血液ガスはきれいです。75以上は十分ある。それから、胸膜癒着で、ほとんど肺活量のないような、拘束性障害のある人でも、血液ガスは全く正常。そういう人も落ちてしまわないのか。何かでチェックしないと出てこない。

○横山座長
 そういう人は、患者さん自身が日常生活で苦痛を訴えるということはあるでしょうね。

○人見先生
 それはあるでしょうね。

○横山座長
 だから、例えば動脈血ガスがそんなに異常がなくて、しかも先生がおっしゃったようなケースのように、患者さんに苦痛があれば、それを補足するような検査をして、その上でものを判断するというシステムを考えたらどうかというのが、私の意見です。そのために、スパイロメトリーなり運動負荷なりをしてみてはどうだろうか。

○人見先生
 そうしたら、患者さんの申請によりますか。私はトイレへ行くのもしんどいんだと。そうしたらスパイロメトリーやりましょうかというグループに入れるというような形でしょうかね。

○横山座長
 血液ガスがそんなに悪くなくても、患者さんが歩いて苦しいといったことを訴えておられるのであれば、やはりスパイロメトリーなり運動負荷試験なりをして、なぜそのような食い違いが出ているかということを調べたり、またその評価についても考える。1階級進級させる云々というのは、そういうことを含めてのことなのです。

○奥平(雅)先生
 こういう呼吸機能検査をするものとして、3つの軸が決まりましたね。それは、客観的な数値として出てくる。広く採用されていて、しかも客観的な数値で出てくる。それに対して、いまお話が出ましたが、自覚症状をどうするかということと、さっき斉藤先生がお話になっていて、患者さんを見ていると、どうも血液検査の成績と合わないのではないかという、全身状態等についての評価のときに、自覚症状と、もう1つ医師の診察時の判断というのが、その両方が非常に変動の多い要素になろうと思いますが、評価項目として加えておくと、特殊な例というものがほとんど救えてくるのではないかという感じがします。

○横山座長
 そうなのです。私はそういうことを書いたつもりなのです。患者さんの症状と、病態という言葉を私は使ったと思うのですが、それが血液ガスの検査の結果と一致しない。食い違いがあるというような場合には、その食い違いの原因について調べることを書いたつもりなのです。いま読んでいただいた長い文章の中で、それが出てきていませんが、私はかなりそれで救えるのではないかという気がしています。それで、あまり特殊な検査をそこに含めるということにも問題があるので、なるべくどこの施設というか、専門病院であれば、できるような検査の項目を例示していく。それにはスパイロメトリーと運動負荷試験くらいかなということを私は考えたわけです。ほかにこれを入れたらどうだろうというご意見があったら、是非教えていただきたいと思います。

○人見先生
 先生、スパイロメトリーが全例にあって悪いこともないのではないですか。

○横山座長
 ただね、肺の業務上の疾病で、肺の末梢領域に病変が局在しているような場合、スパイロメトリーだと見落としてしまうわけです。

○人見先生
 だから、両方するとしてね。問診とか医師の診察を経て、スパイロメトリーをしなければいけない人を選ぶのではなく、例えば1秒量が500くらいしかないというと、スパイロメトリーさえすれば、すぐわかってしまうわけでしょう。でも、1秒量が500でも血液ガスが正常という人は、結果として難しいでしょう。一度スパイロメトリーをさせたら良いと思う。

○横山座長
 現場で先生方が、スパイロメトリーを先に全員にやっておいて、後から動脈血ガス検査を付け加えられても、それはご自由だと私は思います。ご自由だと思うのですが、ものを考えていく手順として、どうすべきか。スパイロメトリーが異常な人について動脈血の検査を取り入れるというので、21世紀の呼吸器の検査としては、ちょっとぬかりがあるのではないかというのが、私の考え方です。
 だから、実際にスパイロメトリーをとっている検査技師の意見では、肺機能障害のひどい人、それから年寄りは、手間がかかってしょうがない。しかもそれは、データの信憑性も薄いのだと。先生方、それはわかっていますかということをよく言われるのです。ただ手順として、何を先にするかというのは、先生方の医療機関でのお仕事の都合で、決めていただければいいのではないかと思います。

○人見先生
 この認定のチャートでやってしまうと、出てこないということでしょう。

○横山座長
 いや、出てこないことはないです。ただ、判断はこのフローチャートによってしていただくということで。

○医療監察官
 臨床所見からみて適当でなければ、スパイロメトリーをやるというフローになっているのですが、ただ、ここでいうと、全く正常な人というのはちょっと見ないフローにはなっているので、正常という人も見るのですというふうにするのか、もう2本立てにしてしまうのかですね。

○課長補佐 いままでの議論ですと、例えば動脈血酸素分圧が全く正常でも、スパイロメトリーで評価して、障害に該当させる例があるといったような議論のように承ったのですが、そうだとすると、いまのフローはそのようになっていませんので、ここでとにかく74以下しか対象にしないということですから、75以上であっても、もう1つの道がある、障害の評価を受ける道があるというふうには、いまの案はなっていませんので、そこはそのように変えなければいけないし、そこがいままでの議論の1つの大きな分かれ目なのだろうと思っているわけです。

○医療監察官
 逆にそこを入れれば、大体先生方のコンセンサスが得られるということであれば、正常であっても、合わないときにはほかので見ていくのですと。そこで、次のステップとして1つ上げるだけでいいのかという話が出てくるのですが、まずは基本は、血液ガスで見ます。それで正常な場合も含めて、合わなければ、スパイロメトリーも見ますということが、いままでの議論のようですので、そこまでは、そういうようなコンセンサスが図れたという理解でよろしいでしょうか。

○横山座長
 いま私、このフローチャートをしげしげと見て気がついたのですが、人見先生がいまご指摘になったことは、まさにこれは抜けてしまっているわけです。だから、動脈血酸素分圧による評価ということで、50以下、51から60、61から74と、3つに分けてありますが、その上のところにもう1つマスがあって、それは結局非該当という格好できて、その5つのものについて、臨床所見が合わないというものについては、スパイロの結果も勘案して決めるというふうにしなければいけないと、いま私、これをしげしげと眺めて見て、これを75やったらどうなってしまうのかなということを考えていたのです。

○人見先生
 私にはデータはないのですが、1つ挙げただけでいいようなものの差ではないと思うのです。ちょっと大きな差がありそうで。だから、別の特定をして、簡単にそのときは1つ挙げるというような、1項目では駄目だと思います。データは持てないのですが。

○横山座長
 何項目つくればいいですか。

○人見先生
 わからないですがね。じん肺だけではないのでしょうけれども、私は見てないのでわかりませんが、例えば安静時に30呼吸くらいしながら最初シュシュシュッと。それでデスクワークをしている人をですね。でも、本当はしんどいのだけれども、運動時はですよ、とても坂道は歩けない。買物にも行けない。そのときは動脈血はポーンと下がっているけれども、じっとしていたら、そういう呼吸でいけてる。多分、CO2は下がってきて、それを見ればわかるかもわからないですが。あまりデータはないのですが、炭酸ガスは下がっているかもしれません。両方でチェックできるかどうか。中間層があって、血液ガスは、PaO2も、PaCO2も正常で、でも本当は、相当の障害が残っているということはあると思います。

○横山座長
 私が今日お配りした書類のおしまいの、注記の(6)のところに、「その被験者が職種の相違がある場合、例えばデスクワークをしていればいいという人と、筋肉労働者である場合と、どういうふうに仕分けるのか。さっき聞いたら、これを仕分ける必要はないということなのです。

○医療監察官
 デスクワークしかできないということであれば、少なくとも7級にはなるだろうということで、軽易な作業にしか就けないですということですね。ちょっと歩くだけでということであれば、7か5かというようなことになるかと思うのですが。

○斉藤先生
 そのことで、要するにこの労災保険の問題というのは、仕事をしていた人が何らかの理由、つまり職業性の原因によって、自分の体に変調、障害を得た、起こした、そのために能力が落ちたということですね。ですから、そういう考え方に立つと、その人が初めに健康だった、仕事を始める前にしていた仕事、それが元業ですね。その元業に戻れるかどうかというあたりが、いちばんの基準のもとになるわけです。筋肉労働者か、事務職なのかという考え方は、その場合、まずくないですか。

○医療監察官
 元職に就けるかどうかで、障害の有無を判断するわけではないのです。というのは、昔の障害は、元の職に就けない場合というような規定の仕方をしていたのですが、いまは逆にいうと、事務職の人であれば、通勤は車でないともう無理ですと。それで階段など使えないのでエレベーターで行く。それでもうほとんど歩かないような形にして、座ればどうにかできますという人でも、仕事はできますと。
 ところが、実際肉体を使っている人は、そんな仕事には就けませんと言ったときに、それでは肉体労働の人は、3級になるかというと、少なくとも座業はできるでしょうと。そうすると、同じように7級は7級ということで評価される。極端な例としては、よくピアニストのような例が出るのですが、指を1本なくしました。普通の人はそれでも仕事ができますよと言うのですが、ピアニストは、そんなふうになってしまったら、とてもできるわけはない。障害等級表自体が、職種に応じて、昔は職種に応じたような省令だったのですが、それを改めて一般的な形にしているということで、いまの省令を前提にすると、一般的な方が、これだけ失ったら、ここでいうと、軽易な労務にしか就けないか、就けるか就けないか。就けなければ7級です。通常の業務に就けるということであれば9級です。ちょっとだけ支障があれば11級ですということで、元職に戻れるか戻れないかということとは関係がないということです。
 ただ、前もひどかったです。前が例えば7級程度の障害をもっていました。その方がさらに悪くなって、例えば3級になりましたといったら、その3引く7の分だけ補償するということはあるのですが、基本は、もう職種を問わず、軽易な業務にしか就けなければ7級で、あとはもらっていた給料のほうで、給付基礎日額というところで差が出てくるということです。

○横山座長
 これは、規格を超えた、もっと基本的な議論であろうと私は思うのですが、ちょっとこのワーキンググループの及ぶところではないという感じがします。

○斉藤先生
 ただ、昔はこうだったというのは、昔の、旧じん肺法がそうですね。ドースレスポンスで、写真の影がひどいほど等級が高かったわけですから。でも、今回はその話はなくしてしまおうという話ですから、昔というよりも、今回がそういうきっかけになるのではないかという。おっしゃったような、「昔はこうだったけど」という言い方は。

○医療監察官
 いまの省令自体もそうなっているということをご説明したわけです。なお、いまのじん肺の障害の基準は昭和50年に作られたものでありまして、昭和53年にじん肺法改正前に作ったものがそのままになっているわけです。

○木村先生
 いまいちばん問題になっている、何を目安にするか。呼吸機能なのか、スパイロなのか、並列なのかということで、今回のご提案は、先ほど言ったように、動脈血ガスをまず基本に据えようということですね。非常にスマートだと私は思うのですが、ただこれがやはり、医者が見て、これはクリニカルに合わなければ、例えば動脈血を基本に据えてもスパイロはやれる。スパイロを基本にしても、これはどうもクリニカルなアレと合わないということであれば、動脈血を調べるということで、どちらもできるという救いはあるのですが、ここに提案された、例えば5級から11級のPCO2、PaCO2が、こういう形できれいに血液ガスというのは出てくるのかどうか。ここを教えていただければと思います。私は、スパイロメトリーであればきちんとできる人であれば、それなりに呼吸器の障害を出してくるもので、ただし、高齢者とか理解できない、うまく吹けない人がいるということは、十分理解しています。一部あるということはです。
 しかし、きちんとできれば再現性もそれなりにあるし、やはり、かなり初期の段階で、こういうふうに細かく分けることも可能ではないかと思っているのです。ただ、この血液ガスで、今回提案されたような形で、呼吸器の、要するに肺機能障害をきちんと反映した形で出てくるのかどうか。先生、そこにちょっと懸念をもっているのですが。

○横山座長
 日本中、どこの病院、医療機関で行っても、同じ成果が得られるかどうか、ちょっと考えなければいけないのですが、昔、胸部疾患学会の肺生理専門委員会でデータを集めた16の関連施設の個人表を統計的に処理して、データを持っていますが、データのばらつきという点からいうと、動脈血ガスのほうがスパイロメトリーよりは小さいのです。それから、私どものデータで、同じ患者さんで繰り返し検査をしている方がいて、中には100何回やっているという方もあるのですが、それを全部コンピューターに入れてあります。データのばらつきという点から、同じ状態でのデータのばらつき、例えば急性増悪を起こしたとか云々というのは、これはちょっと別の話にしておいて、患者さんの自覚症状、身体所見に特別に大きな変化がないときの、データのばらつきを見ると、意外に動脈血のほうがばらつきが小さい。スパイロのほうが大きい。特にスパイロメトリーの中の1秒量だとか、肺活量がいちばん小さくて、1秒量がその次で、フローリ以上になると、かなりそれがばらついてしまって使いものにならない。大体私どものほうで把握しているのは、そういうことですが。

○木村先生
 先生のほうの母集団は多いと思うのですが、私どもが昨年、斉藤先生も交じえて、じん肺症で、70くらいの平均年齢だったかと思うのですが、1,000名くらいの患者さんの呼吸困難度の理解とか日常生活のレベルとかという、じん肺法の中である指標を用いて、認識を共通にして実施した検査で見る限りは、PO2は、ヒュー・ジョーンズの分類と若干違うのですが、4度、5度とか、悪くなってこない限り、あまりPO2は変化してこないのです。
 それに対して、やはり1秒量とかVCは、それなりに変化しているということで、むしろ、いまの先生のとは乖離しているような成績なのですが、要は、悪くなれば無条件でPO2、文句なくわかりやすい指標でいいと思うのですが、軽度のものを見るのに、私がさっきから言っているのは、この11級、9級、7級と、もしこういうふうに分けていくときに、どうなのかなというのは、そのデータに拠っているのです。

○横山座長
 障害が軽度の場合というのは、あまりこの対象にはならないわけですね。

○木村先生
 でも先生、11級とかといったら、相当。相当という言い方が正しいかどうかはわかりませんが。

○横山座長
 数字が、60と61の間のところとか、そういう境目のところの、これはそのときによって多少の違いは出てくるかもしれませんが、大きな流れを把握している限りにおいてはいいし、それから特にCO2に関しては、かなりピシット敏感に入っている。

○木村先生
 ただ、肝腎要のPO2のほうで、それだけ感度があるのかなという。特に9級、11級あたりで、こういうふうにクリアに出てくるということは、私たちの成績では、1,000名くらいのデータでは、得られていないものですから。

○奥平(博)先生
 そういう感度を上げるために、運動負荷というものを考えているのではないでしょうか。

○木村先生
 もちろん乖離している場合には、そういうことで得られないときに、運動負荷ということもこれから考えていくのですが、何がいちばんベーシックな検査かということですよね。そこがいまいちばん問われているところなのだと思います。併用しないということであれば、どちらかをより優先するということであれば、やはりいちばん基本で感度の高いものを頭に据えてくることがやはり大事だろうと、私は思うのです。最後の運動負荷までやらなければ詰められないというのであれば、これはあくまでもサポートするものだと思うのです。運動負荷というのは、例外的にするものだろうと私は理解しているものですから。
 言えば、1次検査である程度認定できるものであれば、1次検査でかなりのものをうまくリーズナブルに分けられればいちばんいいのかなと思います。

○横山座長
 これは、じん肺法による、大きな集団の患者さんの検査と、それから、いまここで問題にしているのは、年間、せいぜい100例かそこらの患者さんですから、ちょっと話が違ってきてもおかしくないと思うのです。私がこんなことを申し上げているいちばんの根拠は、そこのところにあるので。これで年間何万件とか検査をしなければいけないということになってくると、話はちょっと別で、そこのところをちょっと、頭の隅のほうに置いていただかなければいけないと思います。

○人見先生
 動脈血炭酸ガス分圧の正常範囲というものがいくらかということと、これは、高いほうと低いほうを想定しているとさっきおっしゃったのですが、どういうときに高くなって、どういうときに低くなるのか。組み合わせですね。

○横山座長
 今日さし上げた資料に書いてありますが。

○人見先生
 これですね。

○横山座長
 高くなってくるのは、いわゆる肺胞低換値というもので、私は「呼吸と循環」誌の昭和30年代の別冊を用意しようと思ったら、別冊が見つからないので、失礼してしまったのですが、要するに、いわゆる肺胞低換気とは、これは呼吸換気仕事量が異常に増加している場合だろうと思います。今日お配りしたメモにも入っていますが、換気仕事量が増えると、曲線が横軸に肺胞換気量をとって、縦軸に仕事量、あるいはVCO2でもいいですが、カーブが急に立ち上がってくるわけです。
 もう1つは、肺胞換気式という、もっと別なアプローチでつくった式があって、そちらのほうは、原点を通って放射状に出る直線、恒常状態で安定した状態にあるとき、しかもCO2がなるべく低い状態にあるという条件を探していくと、その曲線群の中の該当するものの1つに、原点を通る放射状の肺胞換気の式が、接線になっている。これはPaCO2のいちばん低いところです。だから、呼吸中枢の障害がないような患者さんであれば、CO2分圧が高くなってくるということは、要するに換気仕事量が増えてきている場合に相当してくるわけです。

○人見先生
 ここに数字をポッと書けないのですか。このフローチャートのところの、正常範囲がといっている所に、そういう字は書けないのですか。

○横山座長
 この注の所ですか。

○人見先生
 ええ。

○横山座長
 正常範囲というのは書けます。ただ、これは年齢関数になりますから、簡単にはアレにはなりませんが。

○人見先生
 数字では書けないですか。

○横山座長
 数字で書こうと思えば書けますが。

○人見先生
 PaO2のほうが数字で書いてあるだけに、どういうふうにするのかなと思ってね。

○横山座長
 書きましょうか。書けと言われれば、書きますが。それは、例の肺生理専門委員会の基準値から計算すれば出てくるので。

○奥平(雅)先生
 こういう判定をする方が、専門医の方だけがなさるということが決まっているなら、あまり問題ないと思うのですが、実際には専門医でない方も判定されるわけですね。ですから、そういう非専門医の方にもわかるようなフローチャートにしておかないと、実際的になかなか使いにくいのではないかという感じがします。

○横山座長
 先生のおっしゃる専門医というのは、どういう専門医でしょうか。

○奥平(雅)先生
 呼吸器の専門医です。これは、労災認定でも、例えば全国、じん肺の診断のじん肺の専門医の方がいらっしゃいますが、それ以外の人でも、診断ができるわけです。いま日本ではそのようになっているのですね。ですから、こういう労災による疾患については、すべてその方面の専門医の認定を受けるということが、大前提としてあれば問題はないのですが。また、私は本来そういう方向にもっていくべきではないかと思うのですが、現状ではそうなっていないわけですから。

○横山座長
 奥平先生、すみません、動脈血のガスの評価といったものは、これは医師であれば常識的にできることではないのですか。それも、専門医でなければできないということになると、このシステムは成り立たないわけですが。

○奥平(雅)先生
 多くの医師には専門というのがありますから、自分の領域以外のものは、専門のところへ行ってほしいと言われる方が多いと思いますが、中には、非専門の人でも、「ああそうか、じゃあ私が書いてやろう」という人もないわけではないと思うのです。そういう人であっても、このフローチャートに沿ってやれば判断ができるというような形にする配慮が望ましいと思うのです。
 ですから、このフローチャートだけで押えきれない場合には、こういうことも同時に調べる必要があると思います。それを、このフローチャートの中に明示しておくことが必要なのではないかと思うのです。

○横山座長
 これは私が作ったフローチャートではないのですが。

○医療監察官
 酸素分圧の50とか60以下とかいうところについては、あまりそれなりに重い、酸素分圧がそれなりに下がった人が、それなりに大変だということ自体は、そう皆さん反対はないのではないか。それでは、先ほどから話題になっているがごとく、準呼吸不全とか、あるいは呼吸不全でもないけれども、呼吸機能の低下によって呼吸困難が大変だという人、というところだけがと言ってはおかしいのですが、実際上そこが問題になるのかなということで、そこのところについてちょっと、実際上61から70か、70、80、70以上のところですね。準呼吸不全なり、呼吸不全でないような方について、臨床所見に合わない場合には、スパイロメトリーでなり運動負荷でやる。そのときに、1つ挙げただけではなかなかうまくいかないことがあるということであれば、ちょっとそこのところを考えなければいけませんし、いや、1つ挙げただけでいいというのか、そこのところをちょっとご議論いただくと、大体考え方が整理されてくるのかなと思います。

○横山座長
 奥平先生がご指摘になったのは、こういうことについても、医師であれば何でもできるはずなのです。ただ、動脈血が検査できるような医療機関にいる医師というのは限定されることだと思うのです。動脈血ガスの検査ができる医療機関にいる医師なら、このくらいのことならわかるのではないでしょうか。難しいかな。

○課長補佐 いま奥平先生がおっしゃったのは、これではない方法を採用する場合の判断が、かなりお医者さんの技量によって左右されるのではないかということではないのでしょうか。つまり、いまのこれは、基本的な流れがいまのフローチャートに書いてあります。もう1つは、横山先生がお考えになっているのは、こうではないルートもあるのですよということですね。その、こうではないルートというのは、担当の先生が、いままでの臨床の状態から見て判断して、次の別のルートからの等級の決め方というものをやっていただいていいのですが。

○横山座長
 いま私がここに座っていて、責任を感じているのは、あまり裏道を明示してはいけないのではないかということなのです。原則論をしっかりと決めておいて、その原則の物差しに従って判断していけば、答えが出てくるというふうなものを作っておかないと、何か名人芸ではいけないのではないかと思うのですが、どうですか。

○課長補佐 それは、今回私どもがいちばんの目的としていることの1つです。つまり、いまの認定基準ですと、本当に先生のサジ加減次第で、11級にも9級にもなるということに、下手をすればなってしまうわけです。その先生方の見方、あるいは診断の仕方によって、随分差が出てきているのだろうと、はっきり確認はしていないのですが、そういうことが十分に予測されるような基準でもありますし。
 そうすると、やはりそこは、もちろん、先ほどらい出ている検査の慣れ・不慣れで多少の数値がちょっと変わってくるということくらいはあったとしても、基本的には検査の数値さえわかれば、等級が大体決まる。極めて例外的な例とか、それらはまた別のルートを一応ちゃんと、正式なものとして確保していくという形がとれれば、我々はいちばんよいというふうに願っています。
 ただ、それが本当に医学的に可能なのかどうかということを、先生方の英知を借りて作っていきたいということですので、我々が望んでいるのも、まさに横山先生がおっしゃっているとおりのことでございます。

○横山座長
 私は、それでもなおかつ問題だと。先生、私、昭和36年から「肺機能セミナー」という組織をつくって、肺機能の講習会を毎年1回夏にやっているわけです。その受講者が、2、3年前に1万人を超えて、中にはもう年をとってやめてしまった人もいますが、かなりの数の人が、そういう肺機能検査の基本的な勉強はしていらっしゃるというふうに、私は理解しています。
 それで、なるべくなら、私は、そんなことを言っても駄目ですよと言っては、笹本浩先生によく怒られたのですが、誰が見ても同じ答えが出てくるようなシステムをつくる。これは理想には違いないけれども、なかなか現実には難しいのではないか。それが、多少、例えば1級、2級違っても、少なくとも現行のものに比べればはるかにこのほうが、私は客観性が大きくなっているというふうに、自負はしているのですが。
 それがピシッと、誰が見ても同じ答えが出るというふうにするのは、なかなか難しいのではないかという気がするのです。とんでもなく違う結論が出るということは避けられてきているのではないかという気がしています。

○奥平(雅)先生
 先生がおっしゃった、呼吸機能検査の受講者が1万人を超えているという、そういう方々が認定するということにされれば問題はないと思うのですが、実際なかなかそうはいかない。

○横山座長
 確かにそうです。動脈血検査のできる医療機関に勤めている人と、その受講者の関係を見ていくと、動脈血検査ができる医療機関というのは、かなり皆さん、こういうことには慣れている医師が多いのではないかと思うのです。これはやはり、ちょっと病理学とは違ったところなので。

○奥平(雅)先生
 例えば何かこういう判断をするときには、判断できる医師はどういう資格をもっているとか、どういう機関にいる人というような限定がいままでなかったのですね。ですから、もしそれが付けられれば、それがいちばん望ましいと思いますね。

○横山座長
 私は、そのご意見には賛成しかねます。というのは、ある資格を持っていないと、その判断ができないというふうに限定するのはよくないと思います。ただ、いまこのワーキンググループで議論しなければいけないのは、基本原則がこうだということです。私はこれが決まって、1つの法律として出来上がった段階で、私はやはり、是非手引きみたいなものを作って、その中でいろいろと細かい、こういうときはこう考えたらどうですかというような、サゼッションというとおこがましいかもしれないけれども、何かその手引きを見れば、わからないこともかなり解消するというふうにできるのではないかと考えるのです。ですから、いまここで先生方にご議論いただいているのは、そのための骨子はどうするのかということではないかという気がしています。
 ただ、この骨子が、読んだ人によってみんな意見が違ってくるのでは、これは困りますので、これから少し、語句の表現その他、勉強しなければいけないと思っていますが。

○人見先生
 フローチャートを見て、アの流れで、主にアですね。ところが、イをよく読むと、上手に書けている。ただ、アとの違いは、数字が出ていない。1%、1秒率、%肺活量が一定以下に低下すると3級以上だと書いてある。ここに数字がきちっと入って、そしてフローチャートが出来上がると私はいいのではないかと思うのですが、是非。

○横山座長
 少し勉強します。

○人見先生
 19頁の筋肉のところで、「努力性の呼吸を行っている場合には、横隔膜以外の筋を」という、この辺に、肋間筋を上手に入れる工夫をしておかないと、ここがちょっと抜けている。だから、肋間筋の中には、努力性呼吸のときにしか使わない肋間筋もあるけれども、正常な呼吸のときに使っている肋間筋があるので、文言が難しいのですが、上手に入れる。
 それから、わざわざ「前斜角筋・腹直筋」を消したのはどういう意味なのか、「とう」でごまかそうとするのか、書いておいてもよいのではないか。

○医療監察官
 代表例ということで、1つ挙げればいいかと思ったのですが、この3つともというのも、ちょっとどうかなと思ったものですから。

○人見先生
 そのときは、今度は「とう」が効くのです。そのときの「とう」にして、3つ並べて、さらに「とう」としておくと、そのうちの1つでもいいという。消すのはちょっとまずい。

○横山座長
 私は赤丸を付けてしまったのですが、胸鎖乳突筋というのですか。それでいいのですか。

○人見先生
 胸鎖乳突筋でいいと思います。

○医療監察官
 そうしますと、基本的には、正常なものも含めて、臨床所見から見て不適当な場合に、スパイロでできると。そのときに、ちょっといま合意に至っていないのは、1つ挙げるだけでいいのか。あるいは、いくつかもっと、本当にいま安静時で、呼吸困難というのはまた別にして、そこまで至らないような、7級とか9級とか5級とか11級みたいなものを、どのようにしていったらよいのか。いまでいくと、多分ならないものは、やっと、異常でも11級くらいにしかならないものですから、いまの1つ挙げるという案ですと、そこのところはどうもちょっと、各先生方まだ合意には至っていないようですので、そこについては、また横山先生とご相談させていただきながら、どういうふうにしたらよいか。その前に、今度は1カ月ちょっと余裕がありますので、まず各先生方にご意見をお伺いしながら、また横山先生とご相談させていただいたものを、何回かやり取りさせていただいて。

○横山座長
 お手伝いはしますが、これからしばらく学会準備に入っていかなければいけないので、私どもは遊んでいるわけではありませんから、なかなか右から左にポンとはいかない。
 ただ、私が今日、是非先生方を含めてお願いしておきたいのは、今日読んでいただいたところの、特にアンダーラインを付してある所も含めて、いろいろ問題点があるような気がするものですから。私も勉強しますが、先生方も是非ひとつ、これはこうしたほうがいいとか、これは間違っているという点は、ご指摘願いたいと思います。お願いできますでしょうか。
 では、神保さん、大変恐縮ですが、この「ワーキンググループの論点」というところを、もう1回コピーしていただいて、書き込めるようにして、先生方の所に送っていただけませんか。それに赤字を入れていただいて、送り返していただいたもの全体をまとめて、次回の、3月22日、火曜に。だんだん学会が近づいているので、大変だろうと思いますが、ひとつ、なるべく早くそのご返事をいただいて、書き直したものを、もう1回お送りして検討していただくということにしたらどうかと思います。私は、ここのところがいちばん大事だと思うし、特にこれが公にされた段階で、いろいろさし障りがあっては困りますし、なるべく上手にまとめたいという希望を、私はもっています。
 予定の時間になりましたから、次回、3月22日までにできるだけ。

○医療監察官
 3月22日(火曜日)の、同じ2時半ということで。

○横山座長
 できるだけ細心の注意を払って勉強させていただきます。
 課長さん、何か注文おありですか。

○補償課長
 結構です。

○横山座長
 それでは、今日はこれでお開きにさせていただいて、次回に大いに期待したいと思います。どうもありがとうございました。


照会先   厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係
  TEL 03−5253−1111(内線5468)
  FAX 03−3502−6488

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