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(資料3)

諸外国における間接差別に係る規定等(概要)

  アメリカ EU イギリス ドイツ
間接差別に関する規制 1964年公民権法第7編703条(k)(1)(1991年改正後)

【703条(k)(1)】
 本編の下では、以下のいずれかの場合には、差別的効果に基づく違法な雇用慣行となる。
(i)原告が、ある使用者の行為により差別的効果が発生することを証明したのに対し、使用者が、それが当該地位における職務と関連性があり、かつ業務上の必要性に合致していることを証明しなかった場合
(A)原告が、それに代わる別の方法が存在することを証明したのに対し、使用者がその採用を拒否する場合
均等待遇に関する76年指令修正(76/207/EEC指令)(2002/73/EC指令により改正)

【2条2】
間接差別:外見上は中立な規定、基準又は慣行が、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に特定の不利益を与える場合。ただし、当該規定、基準又は慣行が、正当な目的によって客観的に正当化され、その目的を実現する手段が適切かつ必要である場合はこの限りではない。

 (参考:1976年当初の76/207/EEC指令の規定)
【2条1】
均等待遇の原則とは、直接的か又は間接的であるかにかかわらず性別、特に婚姻上もしくは家族上の地位に関連した理由に基づくいかなる差別も存在してはならないことを意味するものである。


性差別事件の挙証責任に関する1997年12月15日の理事会指令(97/80/EC)

【2条】
1 本指令では、均等待遇原則とは、間接的にも直接的にも、性別に基づくなんらの差別もないことである。

2 第1項で言及した均等待遇原則に関して、外見上は中立的な規定、基準、慣行が、一方の性別に属する成員に不均衡に不利益を与える場合、かかる規定、基準、慣行が適切かつ必要であり、性別と関連性のない客観的要素によって正当化できない限り、間接差別が存在しているものとする。
 1975年性差別禁止法1条1(2)(b)、2条(1)(2001年改正後)


【1条1(2)(b)】
本項が適用される規定に関するいかなる場合においても、以下の行為を行った者は女性に対する差別を行ったものとする。
・当該行為者が男性に対し同様に適用し、又は適用するであろう以下のような規定、基準又は慣行を、女性に対して適用した場合
 (@)それにより不利益を受ける女性の割合が、不利益を受ける男性の割合よりも相当程度大きく、かつ、
 (A)当該行為者がその適用される者の性別に関係なく正当であることを立証し得ず、かつ
 (B)その女性に対し、不利益となるもの
【2条(1)】
 この規定は男性にも適用される。

 (参考:1975年当初の性差別禁止法の規定)
【1条1(1)(b)】
本項が適用される規定に関するいかなる場合においても、以下の行為を行った者は女性に対する差別を行ったものとする。
・当該行為者が男性に対し同様に適用し、又は適用するであろう以下のような要件又は条件を、女性に対して適用した場合
(@)それに適合し得る女性の割合が、それに適合し得る男性の割合よりも相当程度小さく、かつ
(A)当該行為者がその適用される者の性別に関係なく正当であることを立証し得ず、かつ
(B)女性がそれに適合し得ないが故に、その女性に対し、不利益となるもの
【2条(1)】
 この規定は男性にも適用される。
民法第611条a第1項、612条第3項(間接差別についての明確な規定はないが、解釈によって、上記規定に含まれていると解されている。)

(参考)
【611条a(1)】
 使用者は、被用者と約定をなし、又は労働者に関する措置を講ずる場合に、特に雇用契約の設定、昇進、職務上の指示、解雇を行う場合に、性を理由として不利に扱ってはならない。ただし、約定や措置が被用者の遂行する職務の性質に基づき、かつ、一定の性が当該職務の不可欠の前提であるときには、性による異なった取扱いが許される。紛争が生じた場合に、被用者が性による不利益取扱いを推測せしめる事実を疎明したときには、使用者は不利益取扱いが性によらない合理的な理由に基づくものであること又はその性が遂行される職務にとって不可欠の前提をなすものであることにつき、立証責任を負うものとする。
【612条(3)】
 雇用契約において同一又は同等とみなされる労働に対し、性別を理由として、他方の性の者より低い報酬を約定してはならない。被用者の性を理由に特別な保護規定が適用されることは低い報酬の約定を正当化するものでない。611条a第1項第3文は準用する。
間接差別として処理される事案の範囲等 【取り扱う事案の特徴】
・採用・昇進に関する事案が多く、解雇は少ない。
・賃金については同一賃金法で規定していることとの関係で適用例はない。
・パートタイム労働者や家庭責任の有無等に係る事項が間接差別とされた例はない。

【間接差別として処理される事案】
・男女の生物的な相違に関する基準(例:身長、体重要件を課すこと、体力テストによる選考等)
・過去の教育上の差別等が原因で、あるグループにおいて満たしにくい基準(例:一般知能テスト、学歴、経験要件、教育要件、主観的選考決定等)

(参考裁判例)
・使用者が、発電所の作業員の資格要件として、高卒以上の学歴と一般的知能・理解力テストへの合格を要求したケースにつき、連邦最高裁判所は、いずれの要件も(1)過去の教育上の差別のために黒人に対して差別的な効果をもたらし、かつ、(2)職務の十分な遂行との明白な関係がなく、業務上の必要性や職務関連性が認められないという事実を指摘した上で、使用者に差別意思がなかったとしても第7編違反が成立するとした。この判決は、第7編の目的が、明らかな差別の禁止にとどまらず、雇用からマイノリティを差別的に排除する効果を持つ「人為的、恣意的かつ不必要な障壁」の除去も含むことを強調している。(グリッグス事件 連邦最高裁 1971年)
・刑務所の看守について、体重120ポンド以上、身長5フィート2インチ以上という要件が女性に対して差別的な効果を有し、職務関連性が認められないので、違法と判断された。(ドサード事件 連邦最高裁 1977年)
・銀行に雇用されている黒人女性の原告は応募した4つのポストのいずれにも採用されなかった。当該銀行は、応募者を評価するための確立した基準を有しておらず、監督者の主観的判断に委ねており、原告を拒否した監督者は全て白人であった。地裁、控訴審は、原告の訴えを棄却したが、連邦最高裁は、差別的効果理論は客観的基準による選考のもたらす差別的効果のみならず、主観的基準による選考のもたらす差別的効果にも適用されると判示し、差し戻した。(ワトソン事件 連邦最高裁 1988年)

【間接差別として処理されない事案】
・真正な先任権制度によって生じた雇用条件の差異は、それが差別的意図の結果でない限り、違法とはならない。(公民権法第7編703条(h))
・性別を理由とする報酬における差別は原則として違法だが、性による賃金格差が同一賃金法(EPA)の規定により是認されている場合は、第7編違反に該当しない。
EPA6条 同一事業所内の同一労働について性別による賃金差別を行ってはならない。ただし、その賃金格差が(1)先任権制度(2)能力成績による任用制度(3)生産の量や質による出来高払い制度(4)その他の性別以外の要素に基づく差異、に基づく差異である場合には違法ではない。)

(参考裁判例)
・大学の看護学部(大多数が女性)の教員が、賃金が職務の価値が匹敵する大多数を男性が占める学部の教員の賃金より低く、各学部の職務の市場価値に基づいて賃金を設定するという表面上中立的な大学の方針、行為が差別的効果を有し違法であると訴えたが、第7編が具体化する連邦政策は機会の平等であり、結果の平等ではなく、市場価格は本来的に職務に関連するものであり、原告の主張を認めることは、使用者に独立した経営判断ではない賃金格差の責任を課すことになると判示した。(スポルディング事件 連邦第9巡回裁判所 1984年)
【間接差別として処理される事案】
・パートタイム労働者とフルタイム労働者とで異なる処遇等

(参考裁判例)
・被告会社の年金制度が、パート労働者は、合計20年のうち15年以上フルタイムで勤務した場合のみ年金を受給できることとしていることについて、受給できなかった原告が、家族や子供の面倒を見るためには女性は男性よりもパート労働に従事することが多いため、女性を不利益な立場に置くものとし、訴えた事案につき、欧州司法裁判所は、パート労働者が年金から除外されることが性に基づくいかなる差別にも関連しない客観的に正当化される事由に基づいていることを企業が証明しない限り、条約119条に抵触するとした。その際、会社側に差別の意図は必要ではない。(ビルカ事件(独)欧州司法裁判所 1986年)
・税アドバイザー資格試験の免除を受けられる勤務期間が、フルタイムとパートタイムとで異なることとするのは、ブレーメンの税事務所で勤務する119名のパートタイムのうち110名が女性であることから、間接差別として訴えた事案につき、欧州司法裁判所は、本件は実際に女性に性差別的効果を与えており、原則として指令違反であり、性に基づく差別と関係のない要因によって正当化できる場合に限り、結論が異なるとした。(コーディング事件(独)欧州司法裁判所 1997年)
・整理解雇されたパート労働者の原告が整理解雇をする場合に使用者が社会的基準に基づき選択しなければならない労働者のカテゴリーからパート労働者を除外することは指令に違反するとして訴えた事案につき、欧州司法裁判所は、76指令は、パート労働者がフルタイム労働者と比較し得ないという一般的な根拠に基づいて進行する国内ルールも、その対象とするとした。(カッヒェルマン事件(独)欧州司法裁判所 2000年)
【取り扱う事案の特徴】
・シングルマザーやパートタイム労働者など社会的な問題や家庭責任等に関わる事案が多い。

【間接差別として処理される事案】
・男女の生物的な相違に関する基準(例:身長、体重要件を課すこと、体力テストによる選考)
・社会問題や女性に家庭責任があることを前提として、シングルマザーにとって満たしにくい基準やパートタイム労働者とフルイム労働者とで異なる基準等

(参考裁判例)
・剰員解雇の際、フルタイム労働者には先任権ルールを適用する一方、パート労働者を先に解雇するという労働協約について、労働審判所及び雇用上訴審判所はフルタイム労働を先任権基準とすることは、性差別禁止法に規定する間接差別を構成するとし、更に、先任権基準が必要ということと、パートタイムの優先解雇は異なるものであり、非常に差別的であり、正当性は認められないとした。(クラーク事件 雇用上訴審判所 1982年)
・子供を産んだ未婚の女性がパート勤務を申し出たが、受け入れられず、フルタイム勤務を要求されることは間接差別として訴えた事案につき、裁判所は、現代社会における女性の役割の変化にも拘わらず、男性よりも女性は育児が大きな負担となっているのは事実とし、使用者はフルタイムで働くという要求が正当化されるということを示していないとして、間接差別が認められた。(ホルムズ事件 雇用上訴審判所 1984年)
【取り扱う事案の特徴】
・パートタイム労働者に関する事案がほとんどである。
・通常の賃金以外の、企業年金や休暇等の付加的給付の支給要件に関する事案が多い。

(参考裁判例)
・昇格要件である6年の適性観察期間(勤続年数)の計算につき週労働時間が通常の4分の3以上の労働者を1,半分以上の者を0.5として計算する協約規定に基づき、週20時間労働の大学事務職員の昇格請求を認めなかった事案において、右協約規定により適性観察期間(勤続年数)が2倍とされるパートタイム労働者における女性の比率が90%を超えること、また、右不平等取扱いを正当化する理由がないことで、間接差別に当たるとされた例(ニンツ事件 連邦労働裁判所 1992年)
一方の性に対する不利益
の有無の判断基準
・「5分の4ルール」による認定。(EEOC等)
(一定の選考手続き等における、あるグループ(人種・性等)の成功率が最も成功率の高いグループの5分の4を下回る場合は、その選考手続き等は、一般的に差別的効果があると判断される。ただし、統計的有為性の有無等によって、例外はある。)

(参考裁判例)
・見習いから正式な自主消防士になるための身体敏捷性テスト(PAT)のテストの1つについて、6人の女性見習い消防士は4人しか合格しなかったが、24人の男性見習い消防士は全員合格した。連邦巡回裁判所は、PATを課すことは、女性の合格率が男性の8割を下回ることから、女性に対する差別的効果を有していることを認めた。また、テストの職務関連性についても証拠がないとし、被告に対し、同テストへの不合格を理由に解雇した原告を見習いとして再雇用し、原告を正式な消防士とする前提として差別のないテストの再開発を命じた。(ファーミングビル事件 連邦第2巡回裁判所 1999年)

・具体的な判断は各国の裁判所が行う。
(定まった判断基準はない。)

(参考裁判例)
・雇用権利法において不公正解雇の申立をなし得る要件が勤続2年以上とされていることは男性に比べこれを満たす女性が少なく、間接差別であるとして訴えた事案につき、欧州司法裁判所は、この要件は男性77.4%、女性68.9%が満たしており、一見して女性が男性に比べて相当程度少ないということを示しているようには見えない。国内裁判所は、男性よりも圧倒的に少数の女性しかその措置により課される要件を充足できないことを入手可能な統計が示しているかを実証しなければならず、もしそうであれば、その措置が性別に基づく差別に関連しない客観的な要素により正当化されない限り、間接差別と判示した。
(シーモア・スミス事件(英)1999年)
・具体的な判断は雇用(労働)審判所が行う。
・差別的効果の有無について定まった判断基準はなく、実際事件が起こって審判所が判断を下すまで結果を予測することが困難な傾向がある。

※2001年改正により、「要件や条件」は「規定、基準又は慣行」に改正された。

(参考裁判例)
・パート教員である原告が剰員解雇された際、年金制度が50歳から60歳で5年以上勤続しており剰員等により退職した教員に対して、常用の雇用契約における労働時間に比例して付加的な勤続年数が加算される仕組みになっていることは、女性に対する間接差別として訴えた事案につき、労働審判所は、フルタイムの50歳以上の女性教師の割合(89.5%)はフルタイムで50歳以上の男性教師の割合(97%)より相当程度小さいとはいえないとした。雇用上訴審判所も何が相当程度小さいといえるか否かは労働審判所の決定する事柄とし、労働審判所の判断を支持した。(ブラック事件 雇用上訴審判所 1994年)
・地下鉄運転手とした働くシングルマザーの原告が、会社が新たに導入した交替制勤務の下では、シフト交換の継続が図れず退職した後、間接差別として訴えた事案につき、労働審判所は、2023人の男性運転手は全員が適応できた(100%)が、21人の女性運転手のうち適応できないのは原告のみであり、交替条件を充足できる女性は95.2%である、男性運転手の数と女性運転手の数を考慮し、さらに女性の方が男性より1人親となって育児する可能性が高いことを考慮すると、この交替制は女性にとって満たしにくい要件であるとした。控訴院も労働審判所が要件が差別的か否かを判断するとしてその判断を支持した。(ロンドン・アンダー・グラウンド事件 控訴院 1998年)
・具体的な判断は労働裁判所が行う。
・当該措置の対象となる全ての者において、不利益を受けるグループにおける一方の性の比率が、不利益を受けないグループないしは全対象者におけるその性の比率より「はるかに」高い場合。
使用者の抗弁 ・当該行為が、職務と関連性があり、かつ業務上の必要性に合致していること。(法703条(k)(1))
・使用者が専門家によって開発された能力テストに依拠した場合は、違法な差別を意図したものでない限り、間接差別とはならない(法703条(h))。ただし、採用や昇進の選考方法として用いられるテストについては、テストの結果と当該職務の遂行能力との間に高度の関連性が存在することの「妥当性検定」が求められる。

(参考裁判例)
・鉄道警察隊の体力レベルをあげるために課した採用試験の条件の1つについて、男性応募者は69%が合格したのに対し、女性応募者は12%しかテストに合格しなかったため、テストに落ちた女性が訴えた。被告側はこの条件が女性に対する差別的効果を有することを認めていたため、この条件が業務上の必要性の有無が争点となった。裁判所は、差別的効果であるとの主張に反論するためには、差別的な足切り点は職務の良好な遂行に必要な最低限の資格を測定するものでなければならないとし、当該条件が、そのようなものであったと被告側が立証し得たか否かを検討するため、地裁に差し戻すこととした。(ラニング事件 連邦第3巡回裁判所 1999年)
・当該規定、基準又は慣行が、正当な目的によって客観的に正当化され、その目的を実現する手段が適切かつ必要である場合。(指令2条2)
・具体的な判断は各国の裁判所が行うべき。

(参考裁判例)
・昇格要件である6年の適性観察期間(勤続年数)の計算につき、週労働時間が通常の4分の3以上の労働者を1,半分以下の者を0.5として計算する協約規定に基づき、週20時間労働の大学事務職員の昇格請求を認めなかったことは、右協約規定により適性観察期間(勤続年数)が2倍とされるパートタイム労働者における女性の比率が90%を超えることから間接差別であるとして訴えた事案につき、欧州司法裁判所は、パート男性の比率がパート女性の比率より遙かに少ない場合には、使用者が客観的な要因によって協約上の規定を正当化できない限り、条約119条に違反するとしつつも、事実を評価し、問題となっている労働協約の規定が性と無関係な客観的に正当化できる要因に基づくものであるか否かをあらゆる状況に照らして決めるのは国内裁判所であるとした。(ニンツ事件(独) 欧州司法裁判所 1991年)
・税アドバイザー資格試験の免除を受けられる勤務期間が、フルタイムとパートタイムとで異なることとするのは、ブレーメンの税事務所で勤務する119名のパートタイムのうち110名が女性であることから、間接差別として訴えた事案につき、欧州司法裁判所は、本件は実際に女性に性差別的効果を与えており、原則として指令違反であり、性に基づく差別と関係のない要因によって正当化できる場合に限り、結論が異なる。あらゆる状況に照らして、性に関係なく適用されるものの実際に男性に比べ女性に影響を与える法律の規定が、性に基づくいかなる差別とも関係のない客観的な理由により正当化されるのかどうかを決定するのは、事実を評価し国内法を解釈する司法権限を有している国内裁判所であるとした。(コーディング事件(独)欧州司法裁判所 1997年)
・当該規定、基準又は慣行が性別に関係なく正当であること。
(法1条1(2)(b))
・具体的な判断は雇用(労働)審判所が行う。
・要件や条件を課す使用者の必要性と、その要件や条件の差別的効果の間のバランスで判断するという考えでなされるため、実際に事件が起こって審判所が判断を下すまで結果を予測することが困難な傾向がある。

(参考裁判例)
・パートの先順位解雇は既婚女性にとっては、子育てをしなければならないため、フルタイムで働ける未婚の女性や男性と比べて不利であるため、女性又は既婚であることを理由とした差別として訴えた事案につき、労働審判所は比較のための適切なプールは、フルタイム勤務と両立できないような小さい子のいる家庭であるとし、フルタイム要件は、一般的に女性又は既婚女性でこれを充足できる者の割合は相当程度少ないのは自明の理とする原告の主張を却下した。雇用上訴審判所も幼い子供を持つ未婚の女性よりも既婚の女性の方が育児責任を担っているとは仮定できないとした。さらに、労働審判所はたとえ剰員選定手続きが間接差別効果を有する場合であっても、特定の状況においては正当化されうると判断する権利があり、コストや効率の上で付随的な利点があるため、パートタイムを先順位で解雇することに正当性があると判断することも許されるとした。(キッド事件 雇用上訴審判所 1985年)
・子供を産んだ女性が、パートタイム勤務を申し出たところ、ジョブシェアをする者が見つからないこと等から拒否されたため間接差別として訴えた事案につき、労働審判所は使用者側がパートタイム勤務できるように様々な手段を講じたこと等を考慮し、正当性を認め、原告の訴えを却下し、雇用上訴審判所もこれを認めた。(ブレン事件 雇用上訴審判所 1997年)
・地下鉄運転手として働くシングルマザーの原告が会社が新たに導入した交替制勤務の下ではシフト交換の継続が図れず退職した後間接差別として訴えた事案につき、労働審判所は証拠に基づき正当性なしとの結論に至る権限を有する、会社の経費節約、効率性の必要性と1人親で子供の世話をしている者への差別的効果を考慮すべきところ、会社は便宜を図ることはできたはずとして正当性は認められないとして雇用上訴審判所は労働審判所の判断を支持、控訴院もこれを認めた。(ロンドン・アンダー・グラウンド事件 控訴院 1998年)
・異なる取扱いが性別によらない合理的な理由に基づくものであること又は性別が遂行される職務の不可避の前提をなすものであること。(法611条a第1項)
※フランスの状況:労働法典122条-45で「いかなる人も、採用手続きまたは実習あるいは企業内での教育訓練機関への機会から排除されてはならず、いかなる労働者も、特に賃金、教育訓練、再就職訓練、配属、資格、分類、昇進、人事異動、契約更新の問題について、(中略)、性(中略)、を理由に、懲戒、解雇または直接・間接を問わず差別的処置の対象とされてはならない。」と規定。しかし、フランス政府に対する調査結果によれば、間接差別の概念は、欧州司法裁判所からきているもので、フランス国内で、間接差別が争われた裁判例はほとんどないため、まだ明確な概念とはなっていない。また、パートタイム労働者とフルタイム労働者の間の均等問題については、労働法典において、両者の間における賃金の平等について規定されているため、間接差別の問題として争われることを想定するのは難しいとのこと。 (労働法典122条-45の2001年改正の際、「直接・間接を問わず」という文言が追加された。)


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