戻る

雇用均等室における妊娠・出産等を理由とする
不利益取扱いに係る相談事案の概要


出産後の職場復帰に当たり、一方的に時間外労働のない補助的業務へ配置換えされたとする事案(均等法第6条関係)

【相談内容】
   第2子の産休期間中に休業前の配属先である調査部門の組織変更があったため、休業終了後は新設された部門の補助的業務に配置換えするとの内示があった。復帰後、短時間勤務で働きたいとの申出等は行っておらず、一方的に決定されたものである。研究職として採用されており、研究職として職場復帰したいと申し出るも受け入れられず、納得できない。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、会社は、相談者の休業前の配属先については組織変更により廃止したため、各部門のマネージャーとも相談し復帰先を検討したが、(1)調査部門内のグループ間の研究職の配置換えは各グループの専門性が高いため困難であること、(2)相談者は保育所の迎えの時間には退社したいとの意向があること、から相談者に配慮し時間外労働のない復帰先を内示したものであり、研究職としての処遇に変更はないと主張した。
 室は、会社に対し、相談者はこれまでフレックスタイム制を利用し時間外労働も行ってきており、第2子出産により時間外労働のない業務への配置を望んでいるわけではないにもかかわらず、相談者を補助的業務に配置することは、一方的に子供を有することを理由に女性のみを補助的業務に配置するもので、均等法第6条に違反する取扱いであり、相談者を調査部門に研究職として復帰させるよう指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、会社は、相談者に対する配置換えの内示を撤回し、相談者は調査部門に研究職として職場復帰することとなった。


妊娠し、産休の申出をしたことを理由に有期契約の更新がされないとする事案(均等法第8条関係)

【相談内容】
   有期契約社員として5回契約を更新し、2年半近く勤務しているが、この度、直属の上司に妊娠を報告し、産休の申出をしたところ、次回の契約更新は無いと言われた。契約を更新し今後も働き続けたい。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取をしたところ、会社は、(1)現在、グループ企業全体で人員削減を行うとの方針の下、退職者が出た場合には欠員補充をしないという形で社員を減らして行くこととしている、(2)最新の契約更新の際に、更新は今回限りとするとの説明は行っていないが、契約書には会社の都合により途中解雇もあり得ることを記載している、(3)契約社員について、妊娠や出産を理由として契約更新しないという方針はなく、グループ会社の中には、妊娠・出産後も継続勤務している例もあるが、相談者について契約を更新することは考えていない、と主張した。
 室は、会社に対し、(1)従来、契約更新について話し合いもなく自動的に更新を重ねるなどの契約更新の方法が採られており、実質においては期間の定めのない雇用契約と考えられること、(2)人員削減については、社員から退職の申出があれば欠員を補充しない形で行っているが、相談者については、退職の申出はしておらず契約の更新を望んでいるのに妊娠報告の後契約更新はしないとしていることを勘案すると、契約期間満了による雇い止めであっても妊娠を理由とする解雇に当たり、均等法第8条に違反するものであり、雇い止めをしないよう指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、会社は、相談者の契約を更新することとし、相談者は勤務を継続し産休を取得することとなった。


派遣元に妊娠を報告したところ、派遣元との間の有期労働契約を更新しないと言われたとする事案(均等法第8条関係)

【相談内容】
   登録型の派遣社員として、数回契約を更新して働き続けていたが、派遣元会社に妊娠を報告したところ、その翌日に、「妊娠したことで派遣先に迷惑がかかってはいけない。」と言われ、雇止めを通告された。妊娠したことを理由に雇止めされるのは納得できない。継続就業を強く希望する。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、派遣元会社は、(1)今回、相談者を雇止めしたのは、業務の効率化のため受付業務に派遣労働者を受け入れた派遣先会社が、期待通りの効果があがらないとして労働者派遣契約を今期限りとしてきたことによるもので、相談者が妊娠したことを理由として雇止めをしたわけではない、(2)また、相談者については、相談者の派遣先での受付業務の対応について、客からクレームが何件か入ったことも、派遣先会社が労働者派遣契約を終了する理由の一つとなっていると主張したものの、妊娠により仕事や身体に支障がないか心配したことで本人に妊娠を理由とする雇止めという誤解を与えた可能性もあることを認めた。
 室は、派遣元会社に対し、女性労働者が妊娠したことを理由として解雇することは、均等法第8条に違反すること、また、有期契約であっても、反復更新され、実質において期間の定めのない契約と認められる場合には、期間満了を理由として雇止めをすることは「解雇」に当たるものであることを説明した上で、従前派遣契約の更新が無くなることを説明してこなかったのに、相談者が派遣元会社に妊娠を報告した翌日に「妊娠したことで派遣先に迷惑がかかってはいけない。」として雇止めを通告した以上、妊娠を理由としたものと判断されるとして雇止めをしないよう指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、派遣元会社は、相談者との契約を更新することとし、また、派遣先会社も、相談者に係る労働者派遣契約を更新することとした。


産休を取得しようとしたところ、産休取得後は現在の職種より時給の低い職種でしか契約できないと言われたとする事案(均等法第8条関係)

【相談内容】
   2ヶ月契約のパートとして、何度も契約更新をしつつ機械担当の職種で勤務しているが、産休を取得しようとしたところ、会社から、「産休を取得した後は、母体の健康が心配なので、軽易な業務の職種で契約する。」と言われた。軽易な業務の職種は現在の職種よりも時給がかなり安くなり、また、自分が行ってきた現在の職種には新規雇入れをするとのことで原職に戻れるのかも不明である。「この条件が嫌なら、別の会社にいってくれ。」と言われたが、生活のこともあるので、今の職種に復職したい。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、会社は、(1)復職後の職種については、あくまでも母体の健康を考慮してのこと、機械担当の職種は重い物を持つなどの作業もあり、現在は周囲の者が配慮している状況であること、また、相談者が行っている職種については会社が進めている合理化の一環として外注化を予定しているものであり、新規雇入れを行う予定はないこと、(2)雇用を打ちきる考えはなく、産休中も在籍扱いとし、社会保険もきちんと継続するつもりであることを主張した。
 室は、会社に対し、雇用は継続するとしても、妊娠し、出産し、産休を取得したことを理由として、異なる職種での労働契約を改めて締結することは、従前の労働契約が一旦終了したものとみることができ、その労働契約の終了が、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には、妊娠・出産を理由とする「解雇」に当たり、均等法第8条に違反することを説明し、現在の職種での勤務が可能であるのであれば、原職に復帰させるべきと指導した。

【会社の対応等】
   室の指導の結果、機械担当の職種への復帰は業務の外注化の対象職種であることからできなかったものの、当初提示があったものとは別の、機械担当以外の職種に復帰することとなり、そこでほぼ原職相当の処遇を受けられることとなった。


つわりにより休んだところ、パート勤務への変更を求められた事案
 (均等法第8条関係)

【相談内容】
   正社員として1月から10ヶ月間勤務し、11月に、つわりのために10日間休み、その後は通常どおり仕事をしていたところ、所長から「これからも休むだろうから、来年の2月末からパート勤務になってくれ。」と言われた。正社員として継続勤務したい旨返答したところ、今度は1ヶ月以内に有期契約のパートに変更すると言われた。パートに変更した後の勤務条件についても説明が全くないが、1日に5時間しか働けず、給料が大きくダウンするのは避けられず、不安である。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、会社は、(1)納期のある仕事であり、妊娠したため急に休まれるのは非常に困る、周囲に負担がかかっており、現場から苦情が出ている、(2)つわりの時も初日は無断欠勤で、また、その後診断書等の提出もないことから相談者に対して不信感を抱いている、(3)相談者がいつでも休める体制を整えるため、すでに代替の正社員の採用を決めていると主張した。
 室は、会社に対し、妊娠・出産を理由として、正社員から有期契約のパートの労働契約に変更することは、従前の労働契約が一旦終了したものとみることができ、その労働契約の終了が、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には、妊娠・出産を理由とする「解雇」に当たり、均等法第8条に違反することを説明し、正社員として継続雇用するよう指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、会社は正社員として雇用継続をすることを約した。しかし、その後、相談者はつわりがひどくなり、社会保険給付の受給資格が生じる時期まで正社員として勤務しその後は退職したいと申し出たため、会社は希望を受けて、当該時期まで正社員として雇用を継続することとなった。


切迫流産で医師の指導に従い安静のため欠勤したところ、退職勧奨された事案 (均等法第8条、第22条、第23条関係)

【相談内容】
   老人保健施設の介護職として勤務していたが、妊娠が判明した直後、切迫流産で2週間入院、退院後も1週間休み、一旦復職したが、再び体調が悪化し、1週間休んだ。医師から「お腹が痛むときは安静が必要」と指導されていたため、症状が出るたびに、施設に電話の上休みを取っていたが、事務長から「体調が悪いなら、一旦退職してもらい、出産後再雇用したいがどうか」と退職勧奨された。しかし、体調が落ち着けば、復職したいし、産休、育休を取得して継続就業したい、また、再雇用を保証すると言われても不安である。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取をしたところ、施設は、(1)相談者の勤務状況について、退院後一旦復職したが、欠勤が多く、同僚の負担が大きい、(2)また、現在、デイケア部門で、相談者を含む4名で勤務のローテーションを組んでいるが、相談者の突発的な欠勤で、業務運営に支障が出ている、(3)今後、相談者の体調が回復し、復職したとしても、妊娠中に施設利用者の送迎、入浴介助などの通常業務ができるかどうか疑問があるため、母体の保護のために、一旦退職させ体調が回復した後再雇用しようと考えていると主張した。
 また、施設の就業規則には、母性健康管理措置についての規定はあるものの、均等法第22、23条に基づく事業主の義務について充分認識されていなかったことが判明した。
 室は、施設に対し、(1)通常の欠勤の場合と扱いを異にし、切迫流産による欠勤等の場合のみ、欠勤等を理由として解雇する場合には、均等法第8条に違反すること、(2)また、形式的には勧奨退職でも、労働者がやむを得ず応ずることとなり、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は、「解雇」に含まれることを説明し、注意喚起を行った。その上で、室は施設に対し、退職を求めるのではなく、均等法第23条に基づき、相談者が医師から受けた指導事項を守ることができるようにするために、相談者に休業をとらせるよう指導した。

【施設の対応等】
   室の指導により、施設は、法に沿った対応をすることを確約し、退職勧奨は撤回した。また、少ない人数で勤務のローテーションを組んでいるため、相談者の業務軽減は難しい事情を踏まえて、相談者と話し合った結果、相談者は医師から受けた指導事項を守ることができるよう体調が落ち着くまで休業とし、産休・育休を取得した後、復職することとなった。


トップへ
戻る