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結核病床数算定の基礎
感染性患者のために必要な病床数を急性期と慢性排菌とに分けて考察する。

急性期
基本:年間発生患者数 X 患者の在院期間 = 一定の時点で入院している患者数
 現状から出発すると
  病床数 X 病床占有率
 ですが、在院期間は、病院によっては、不必要に長い、あるいは、入院不必要な患者でも入院させている場合があり、年間発生患者数 X あるべき在院期間、で計算すべき。基本は、年間発生喀痰塗抹陽性結核患者数 X あるべき在院期間である。
 これに何を加えるか?
  1.  喀痰塗抹陽性でない結核患者の入院
喀痰塗抹陽性でない患者には、
 a.  検査が不十分なため喀痰塗抹陽性となっていない
 b.  感染性からは入院不要だが結核専門医がいないため結核病床へ紹介している
本来的には、aのみが病床の対象
しかし、a.b.をわけた統計数字は存在しない。喀痰塗抹陰性結核患者での入院は43%なので、その数は入院するものと推定し、計算したが、実際はaのみが隔離の対象。より少なくてもよいであろう。
  2.  患者発生の季節変動:4-6月に結核患者発生が平均値より10%ほど多い。よって、病床数も上記計算値より10%多くあるべき。
  3.  患者発生と在院期間のランダムなばらつき
発生数が多いところでは、どの日時にも同じ程度発生すると想定されるが、人数が少なければ、ばらつきが大きくなるので、余裕を持って病床を確保する必要がある。モンテカルロシミュレーションで、患者発生はポアッソン分布、在院期間は対数正規分布が変動すると仮定して、99%カバーする範囲の数字を計算した。
  4.  非結核の混入
5%ほど、非結核性抗酸菌、非活動性結核が混入するとして計算。
上記の条件下で計算した。
 入院期間塗抹陽性90日、陰性60日なら、6413床、占拠率72%
 入院期間塗抹陽性45日、陰性30日なら、3709床、占拠率62%
季節変動、ランダムなばらつき、があるため、ある程度空床が発生することはおりこむ必要がある(感染症病床のように占拠率一桁ということはありえないが)

慢性排菌
慢性排菌病床は、慢性排菌者数より計算した。2002年は853人の慢性排菌患者がおり、346人が入院している。慢性排菌は、1998-2002年まで毎年14%づつ減少してきている(それ以前も減少している)。以前の減少は、おそらく、長期入院者の死亡と非結核性抗酸菌を入院させなくなったこと、最近の減少は、長期入院していた患者の死亡、などの影響が大きいと思われる。多剤耐性結核の割合はそれほど変化していない。多剤耐性結核の治療は改善しており、慢性排菌を作らないようになっているが、今後、長期入院していた患者の死亡、はそれほど減少するとは思えず、今後、減少は鈍化すると思われる。よって、300床ほど、慢性患者のために必要と思われる。

これらのほか、感染性の人のほか、
 DOT目的入院
 自宅生活が困難なため入院を続けているもの
も、何らかの対策が必要である。


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