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潜在結核感染者に対する発病前治療について

 初感染結核に対する発病前治療については、平成元年2月28日付け健医感発第20号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知により、イソニコチン酸ヒドラジド(以下「INH」という。)の投与対象として、29歳以下の者を基準としてきた。しかし、現状では、30歳以上の者の中にも、結核集団感染等において、INHの内服により発病を予防できる者が含まれている事例が多く、また、結核既感染で発病のリスクが特に高い者についてはINH投与が発病予防に有効であることから、潜在結核感染症に対する発病予防治療としてのINH投与対象者をより広範に規定する必要がある。
 したがって、INHの単独療法を行ってもよい対象として、従来の初感染結核で特に軽度な症例に替えて、潜在結核感染者で医師が特に必要と認めた症例とし、その詳細については、下記ア〜ウのいずれかの条件を満たし、かつ医師が特に必要と認めた者とする。

 感染性結核患者と最近6か月以内に接触があり、ツベルクリン反応検査(以下「ツ反」という。)等の検査結果から、医師により、感染を受けたと判断された者
 胸部エックス線上明らかな陳旧性結核の所見(胸膜癒着像や石灰化のみを認める者を除く)があり、ツ反等の検査結果により結核感染が強く疑われ、かつ結核治療の既往がない者
 以下に掲げる医学的な結核発病リスク要因を持った者であって、記載されている条件を備えている者
(1)  ヒト免疫不全症候群ウイルス感染者及びその他著しい免疫抑制状態の者については、感染性結核患者との最近6か月以内の接触歴、または胸部エックス線上結核感染を疑わせる所見(胸膜癒着像及び石灰化像のみである場合を含む)を認める等結核感染が強く疑われ、かつ結核治療の既往がない者
(2)  免疫抑制作用のある薬剤(注1)を使用している者については、ツ反等の検査結果により、または胸部エックス線上結核感染を疑わせる所見(胸膜癒着像及び石灰化像のみである場合を含む)を認める者、その他医師が必要と判断した者であって、かつ結核治療の既往がない者
(3)  じん肺、糖尿病、人工透析治療中等、必ずしも免疫抑制状態にはないが、結核発症リスクが高い者については、ツ反等の検査結果により、または胸部エックス線上結核感染を疑わせる所見(胸部エックス線上の胸膜癒着像及び石灰化のみである場合を除く)を認め、かつ結核治療の既往がない者
注1:副腎皮質ステロイド薬(1日に10mg以上のプレドニゾロンと当価量の1か月以上の投与)、TNFα阻害剤、シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン、ミゾリピン、抗リンパ球抗体、OKT3等

  また、実施に際して、以下の事項に留意することとする。
 対象者の選定に当たっては、感染している可能性、投与により得られる利益及び起こりうる副作用の影響を十分に考慮した上で、適切に行うこと。
 特に、高齢者に対するINHの投与に際しては、肝障害の出現を注意深くモニタリングし、定期的に肝機能検査を実施すること。
 活動性結核患者を対象として選定しないように、事前検査を十分に行うこと。
 中途で服薬を中断しないよう、服薬状況を確認しつつ実施すること。


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