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第1回及び第2回結核医療に関する検討小委員会議論の要旨

入所命令制度
命令に強制力がないために苦慮する事例あり。ただし、入所を要する全ての結核患者に対して強制力を行使する必要はないので、入所の勧告を前提とした制度とすべき。この際、応急入院や移送の制度の付加も必要。
入所命令期間について、最近の検査技術の進歩を踏まえた見直しが必要。
長期排菌患者に対して、強制力を持たせなくとも、患者が自ら納得して入所に応じる方策を検討する方法もある。また、感染に関する注意を守った上で、家庭で問題なく過ごしているケースもある。

結核診査協議会の診査事項
入所命令の適否の診査は患者の入院後に実施される例が多い。(診査前の応急入院の制度がないため、個別の事前審査ができない。)感染拡大防止を目的とした入院と治療中断防止を目的とした入院とで、協議会の開催時期、構成員も柔軟に捉えるべき。
命令入所中の結核医療の質の診査に関する権限がない。
入退院基準、適用の方法を診査の対象とすべき。

公的関与に基づく治療支援
塗抹検査の結果にかかわらず、治療中断の防止を目的とした公費負担制度が必要。

化学予防
発病前治療と、発症者に対する治療が混同されることもあり、呼称を工夫すべき。
最近の感染者については年齢の上限を設けずに、化学予防の対象とすべき。また、既感染未治療で、発病リスクの高い人に対しても、化学予防の適応を拡大すべき。
化学予防の適応を拡大するメリットと同時に、デメリットもきちんと検証し、双方を勘案して最終判断をすべき。
真のハイリスク者特定のための検査精度が向上すれば、副作用の弊害は相対的に減少すると思われる。
線維化した古い病巣に対するINH単独投与の効果については、1970年代のIUATの国際共同研究により、不活動性病変を有し治療歴がない群については、6か月以上の投与により発病率が3分の1から4分の1程度に減少するという結果が出ている。

入退院基準
入院基準として必要な条件は、感染性が高い状態であること、及び適切かつ確実な医療提供のために入院が必要であること。感染性が高いと考えるべき状態は、未治療の喀痰塗抹陽性肺結核、または喉頭・気管支結核で、その生活環境、行動から他者に結核を感染させるおそれの高い状態。適切かつ確実な医療提供のために入院が必要な場合とは、重症度や合併症の状態により、入院治療が必要と判断される状況及び治療中断が予測され、再燃、薬剤耐性化を来たす可能性が高いと判断される場合をいう。
感染性の消失と退院後の治療の継続性が確保できれば、結核治療のための入院は不要となる。感染性の消失は、喀痰塗抹陰性化または菌量の減少、自覚症状の消失、その他の検査所見結果の総合的な判断による。ただし、多剤耐性の場合はこの限りでない。また、退院後の生活の場が集団生活である場合などは、2週間に1回以上の喀痰塗抹検査または培養検査で連続2回以上陰性であることが望ましい。
入院治療だけでなく、診断、通院治療もセットにして考えるべき。退院の早期化が、治療の完遂を妨げる結果となってはいけない。
多剤耐性化を防ぐために、これが予想されるケースについては、全額公費負担を前提とした強制的な治療介入を制度として確立すべき。
職業にもよるが、退院許可が必ずしも就業禁止解除を意味しないことを明記すべきか。

結核病床
全国一律の病床数算定基準を廃止し、新規感染性結核患者の感染性消失までの入院に要する病床数及び慢性排菌等長期の入院に要する病床数等、公衆衛生上必要な病床数を都道府県知事が定めることとする。
結核病床、入院期間、入退院基準はいずれも相互に関連のある課題である。入退院基準を整理し、適切な入院期間で退院することになれば、さらに空床が増えるのは自明である。並行して地域差を勘案した適正な結核病床数および配置を早急に検討すべき。

モデル事業
平成16年4月1日現在54施設274床において実施している。
実施医療機関の意見:患者要件については、合併症のない結核疑い患者の一時収容ができれば望ましい。施設要件については、陰圧及び二重扉であれば、引き戸である必要はないのではないか;独立換気、陰圧設備は必須事項ではないか;病室内の殺菌設備の設置は、除菌や安全確保面から効果的ではない。患者管理要件については、排菌がある間は、通常のマスクではなく、外科用マスクを着用すべき;単科精神科などでは、経験を有する内科医の非常勤併任で十分ではないか等。(アンケート中間報告)
患者要件につき、合併症のない患者も結核の診断がつくまでモデル病床に一時収容することを許容すれば、モデル病床はより普及すると思われる。
独立換気の個室を多くの病院で備えることにより、結核に限らず空気感染をするあらゆる疾患に対応可能となり、院内感染対策にも資するものである。


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