第2回職業がん対策専門検討会


日時 平成17年2月4日(金)
 13:00〜
場所 厚生労働省5階専用第12会議室


照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部
化学物質対策課化学物質評価室審査係
TEL03−5253−1111(5512)



○有害性調査機関査察官(大淵)
 ただいまより第2回職業がん対策専門検討会を開催いたします。本日は先生方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。なお福島委員が所用のため欠席されています。
 本日の会議の概要については、検討事項として、前回の検討会においてがん原性試験の結果等を評価したアクリル酸=2−ヒドロキシエチル、アリルクロリド、ο-フェニレンジアミン、この3物質について検討会の報告書の案を事務局で作成していますので、これについてまずご検討をいただきます。それが終わりましたら、今度は新たにがん原性の評価をしていただくものを2物質(シクロヘキセンとp-ニトロアニソール)を予定しております。どうぞよろしくお願いします。
 では、座長の櫻井委員、お願いします。

○座長(櫻井)
 議事進行をさせていただきます。最初に、本日の配付資料の確認をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 2枚目に資料一覧がありますので、それに沿って確認をお願いします。資料1として、第1回職業がん対策専門検討会議事要旨(案)です。資料2から資料4については、前回検討いただきました物質のそれぞれ検討結果報告(案)になっています。資料5は今回、新たに検討するシクロヘキセンの関係で、枝番の1が基本情報、枝番の2がバイオアッセイ研究センターでの試験結果です。枝番の3がACGIHの提案理由書になっています。資料6がp-ニトロアニソールの関係で、枝番の1が基本情報、枝番の2がバイオアッセイ研究センターでの試験結果です。

○座長
 まず初めに、第1回職業がん対策専門検討会議事要旨(案)について、事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 それでは議事要旨(案)を確認させていただきます。出席者については省略し、概要から読み上げたいと思います。
(資料1の概要 読み上げ)

○座長
 この議事要旨については、事務局から皆さんに事前に配付していると思います。既にご覧になっていると思いますので、大きな変更はなしということでよろしいでしょうか。万が一、疑問点等がありましたら、事務局にご確認いただくということで、基本的にこの内容で了承したということにさせていただきたいと思いますが、何かございますか。

○座長
 特段ないようですので、基本的にこの内容で了承することにさせていただきます。
 続きまして、前回検討が終了している3物質についての検討会報告書について、検討したいと思います。まずアクリル酸=2−ヒドロキシエチルの報告書(案)について、事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 報告書案について説明します。報告書のスタイルとしては職業がん対策専門検討会から厚生労働省の労働基準局長に報告するという形になっています。以下については読み上げさせていただきます。
 日本バイオアッセイ研究センターにおいて実施した実験動物を用いたアクリル酸=2−ヒドロキシエチルの経口投与によるがん原性試験結果等に関する検討結果報告(案)
 本検討会は、貴職からの委嘱により標記試験結果等について検討を行い、その結果を下記のとおり報告する。記 別添の日本バイオアッセイ研究センターの試験結果等から、アクリル酸=2−ヒドロキシエチルは、動物に対する弱いがん原性が示唆されるが、当該物質については、既に「変異原性が認められる化学物質」としてがん原性物質に準ずる健康障害防止措置に係る行政指導が行われているため、さらなる行政対応は必要ないと考える。
 2頁目からの別添の試験結果の詳細については、時間の関係もありますので説明は省略させていただきます。
 試験結果の記載の仕方について、平成15年度の検討結果報告書については、ここで書いてあります表の部分については、腫瘍の発生数等のみを書いて、有意性については特に印等は付けていませんでしたが、今回からは有意性についても印を付けるような形で表記をしています。

○座長
 この案について何かご意見はありますか。

○津田委員
 内容については別に変更はないのですが、「まとめ」のところで繰り返しの言葉があり、わかりにくいと思います。例えば3行目「F344/DuCrjラットの雄に対する」は、前述の繰り返しです。最初に「F344/DuCrjラットでは」で始まっていますから。

○座長
 「F344」から「雄に対する」までは要らないということですね。

○津田委員
 そうです。同様にその次の次の行も要りません。「エチルの」の後から「雌」までの間も繰り返しになります。「雌」は要りますが、「F」から「ラットの」までの行は要らないと思います。
 最後から2行目の「Crj」云々から「の」までの行も同様です。

○座長
 「マウスの」までですね。ありがとうございました。では、そのように修正させていただきます。それ以外に、何かご指摘はありますか。ないようですので、この修正を加えた上で、この案を採用し、検討結果報告としたいと思います。
 次にアリルクロリドの検討に入りたいと思います。報告書案について事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 報告書を読み上げさせていただきます。
 日本バイオアッセイ研究センターにおいて実施した実験動物を用いたアリルクロリドの吸入投与によるがん原性試験結果等に関する検討結果報告(案)
 本検討会は、貴職からの委嘱により標記試験結果等について検討を行い、その結果を下記のとおり報告する。記 別添の日本バイオアッセイ研究センターの試験結果等から、アリルクロリドは、動物に対するがん原性が認められるため、関係労働者の当該物質に係る健康障害の防止のための行政対応が必要と考える。なお、試験結果では神経毒性が認められるので、行政対応に当たっては、これについても考慮すべきである。
 試験結果の報告の詳細は省略しますが、若干、修文をこの場でお願いします。3頁、4の「まとめ」です。ここの1行目、ラットの雄のことについて記載していますが、2頁の3のラットの「腫瘍性病変」の記載と比べて言葉が漏れていましたので、「雄の膀胱の移行上皮がん及び甲状腺の濾胞状腺腫の発生増加」という形でつなげていただければと思います。

○座長
 この案について何かご意見はありますか。

○津田委員
 先ほどと同じです。

○座長
 4の「まとめ」の2行目、「アリルクロリドの」まではいいのですが、その後「F」から「ラットの」までですね。

○津田委員
 2行目の「アリル」から「対する」まで、その次の行の「アリル」から「腫瘍の」まで、次の次の「アリル」から「対する」までも不要です。

○座長
 そうすると、「認められ、がん原性を示す明らかな証拠であると考えられた」。

○津田委員
 「雌には、発生増加は認められなかった」で良いと思います。

○座長
 「アリルクロリドのばく露によると考えられる」というのは要らない。

○津田委員
 「腫瘍の」までは不要だと思います。

○座長
 「雌には発生増加は認められなかった」ということになります。そこまで消してしまって大丈夫でしょうか。

○有害性調査機関査察官
 「腫瘍の」は残しておいたほうがいいと思います。

○座長
 「腫瘍の」は残さないと。「腫瘍の」はいいですね。

○津田委員
 はい。

○座長
 「アリルクロリドのばく露によると考えられる」というのは要らないですか。

○津田委員
 本件はアリルクロリドの評価を行っているので不要です。

○有害性調査機関査察官
 直し方についてはこちらで案を作って、先生方にもう一度書面で確認させていただくということでよろしいでしょうか。

○座長
 確かに重複があって、クリアにしたいと思いますので。ただ、気がかりなところがあるので、全部整合性をとって、少し丁寧にうまくやってください。

○有害性調査機関査察官
 物質の名前は1回はどこかに書いておくほうがいいかと思います。あとは繰り返しをなくすということも含めて、こちらで案を作らせていただきます。

○日本バイオアッセイ研究センター
 評価のまとめの文章のときに、事務局で追加された「甲状腺の濾胞状腺腫」の件なのですが、ここでは移行上皮がんの発生増加、すなわち悪性の腫瘍の発生増加をもって明らかな証拠としています。それに対して、甲状腺の濾胞状腺腫に関しては、単に良性腫瘍だけの増加という意味合いなので、それが明らかな証拠の根拠にはならないと考えております。できれば「ラットの雄に対するがん原性を示す明らかな証拠であると考えられた」の後に、「また、甲状腺に濾胞状腺腫の発生増加も認められた」という文章のほうがよろしいかと思うのですが、いかがでしょうか。

○座長
 そういうご意見ですが、そのほうがよろしいでしょうか。

○津田委員
 それで良いと思います。

○座長
 わかりました。そのようにするとしますと、「雄の膀胱に」は最初のとおりですね。「移行上皮がんの発生増加が認められ、がん原性を示す明らかな証拠であると考えられた。また、甲状腺の濾胞状腺腫の発生増加もみられた」ですね。
 では、そのようにしたいと思います。1頁目の文は問題ないということですか。

○有害性調査機関査察官
 今回のものは従来のものと少し違うのは、神経毒性の関係の記載を追加したところが、ほかのものとやや違うところですが、これの記載もこのような形でよろしいでしょうか。

○座長
 前回の議事でもこういうものを記載しようというご意見でした。よろしゅうございますか。それでは特段ご異議はございませんので、この(案)を取って、検討結果報告としたいと思います。
 3番目、ο-フェニレンジアミンの検討結果報告(案)の検討に入りたいと思います。報告書案について事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 読み上げさせていただきます。
 日本バイオアッセイ研究センターにおいて実施した実験動物を用いたο-フェニレンジアミン二塩酸塩の経口投与によるがん原性試験結果等に関する検討結果報告(案)
 本検討会は、貴職からの委嘱により標記試験結果等について検討を行い、その結果を下記のとおり報告する。記 別添の日本バイオアッセイ研究センターの試験結果等から、ο-フェニレンジアミン二塩酸塩は、動物に対するがん原性が認められるため、関係労働者のο-フェニレンジアミン及びその塩に係る健康障害の防止のための行政対応が必要と考える。
 試験結果の詳細は省略しますが、このο-フェニレンジアミンの関係については、試験そのものは二塩酸塩で行っていますが、私どもの行政対応として考える場合には、「ο-フェニレンジアミン及びその塩」という形で行政対応をする方向で考えたいということで、このような書きぶりにさせていただいています。この辺りについてご議論をいただければと思っています。

○座長
 いかがでしょうか。何かご意見がありましたらどうぞ。ο-フェニレンジアミン二塩酸塩で実施した結果は、ο-フェニレンジアミン及びその塩というやや一般化しても、そのまま通用するであろうという案です。特段ご異議ないということで、それではこの物質についてはこの案のとおりとして、検討結果報告としたいと思います。
 続きまして、議事次第の(4)「日本バイオアッセイ研究センターにおいて実施した実験動物を用いる化学物質の有害性調査結果等の検討」に入りたいと思います。まず、シクロヘキセンについてです。いつものように全体の物質情報について事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 資料5−1です。「シクロヘキセンの基本情報」ということで、概略を紹介します。物理化学的性質ですが、数値としてはそこに示してあるとおりで、常温での性状は特異な臭気を有する無色の液体です。生産量は平成14年に1200t、メーカーは旭化成ケミカルズ、東レとなっています。用途はシクロヘキサノールの中間原料、L-リジンの中間原料、特殊溶剤、シクロヘキセンオキサイド他各種有機合成原料となっています。
 法令による規制の現状は、労働安全衛生法の関係については危険物ということで、引火性の物というグループに分類されます。また、MSDSの対象物質になっています。その他、消防法等についてこのような規制がなされています。
 がん原性の評価についてはIARC、日本産業衛生学会、ACGIHとも、現在のところでは特に評価はありません。変異原性の関係ですが、微生物を用いる変異原性試験については陽性となっています。また、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験については陰性となっています。ばく露限界はACGIHにおいて300ppmというのが提案されており、その300ppmが提案されたときの提案理由が資料5−3にあります。ヒトへの影響は、皮膚、粘膜を刺激する、皮膚浸食や麻酔性ありとなっています。

○座長
 続きまして、がん原性試験結果について説明をお願いします。
(パワーポイント使用)

○日本バイオアッセイ説明者 シクロヘキセンのラットとマウスを用いたがん原性試験結果について説明します。
 被験物質シクロヘキセンは分子量82.14、沸点83.3℃の無色透明の液体です。
 当センターで行った変異原性試験では、微生物を用いた変異原性試験では陽性、培養細胞を用いた染色体異常試験では陰性となっています。
 試験方法は、投与経路は全身ばく露による吸入試験、動物種はラットはF344(Fischer)ラット、マウスはBDFマウスです。群構成は1対照群と3投与群で、1群当たり雌雄各50匹を用いました。投与条件は1日6時間、週5日間のばく露で104週間のばく露を行いました。投与濃度はラットは雌雄とも600、1200、2400ppm、マウスは75、150、300ppmとしました。今回のシクロヘキセンの試験では、ラットとマウスの投与濃度がかなり違うのですが、予備試験の段階でラットのほうは4800ppmで動物の死亡がみられています。マウスは予備試験の段階で600ppmで動物の死亡がみられています。結果的に最高投与群はそれぞれ予備試験で死亡がみられた濃度の2分の1の濃度となっています。
 飼育環境条件ですが、温度は23±2℃、湿度55±15%、12時間照明、吸入チャンバーの換気回数は1時間当たり12回としました。餌は固型飼料、飲水はフィルターろ過し、紫外線照射した市水を、それぞれ自由摂取させました。観察・検査項目は一般状態の観察、体重・摂餌量の測定、血液・生化学的検査、尿検査、臓器重量の測定、剖検、病理組織学的検査を実施しました。
 それでは結果の説明です。まず、生存率は、ラットの雄では特に大きな変化はみられませんでした。雌でも同じように大きな変化はみられませんでした。体重は、ラットの雄では2400ppm群が投与期間を通じてやや低値でした。ラットの雌でも2400ppm群が投与期間を通じて、やや低値でした。
 腫瘍の結果です。肝臓の肝細胞腺腫と肝細胞がんを合わせた発生数がペトー検定で有意な増加となりました。しかし、その発生数をみますと僅かな増加です。また、肝細胞腺腫、または肝細胞がんそれぞれでは有意な結果とはなりませんでした。その他の臓器でも発生が増加した腫瘍はみられませんでした。
 次に雌です。雌では下垂体、甲状腺、子宮、脾臓等に腫瘍がみられましたが、特別発生が増加した腫瘍はみられませんでした。
 次にマウスの結果です。マウスの雄の生存率はやはり大きな差はみられませんでした。マウスの雌は全体的に生存率がやや低いようですが、投与群と対照群に大きな差はみられませんでした。
 体重です。マウスの雄の体重は、投与群と対照群はほぼ同様な値で推移しました。マウスの雌は300ppm群が投与期間中にやや低値な週もありましたが、最終的体重はコントロールと同様な値となりました。
 腫瘍の結果ですが、マウスの雄は肺、肝臓等に腫瘍がみられましたが、発生の増加した腫瘍はみられませんでした。マウスの雌はいくつかの臓器に腫瘍がみられましたが、発生の増加がみられた腫瘍はありませんでした。
 まとめです。ラットでは、雄で肝細胞腺腫と肝細胞がんを合わせた発生数の増加がみられましたが、その増加は僅かであり、肝細胞腺腫及び肝細胞がん、それぞれには発生増加はみられませんでした。また、他の組織、臓器には腫瘍の発生増加は認められませんでした。したがって、本試験の結果からは、雄に対するがん原性を示す証拠は得られなかったと判断しました。雌には、シクロヘキセンのばく露による腫瘍の発生増加は認められませんでした。マウスでは雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、シクロヘキセンのマウスに対するがん原性を示す証拠は得られませんでした。
(パワーポイント終了)

○座長
 この物質の一般事項及びがん原性試験結果についてのご説明等がありましたが、それに対する質疑、あるいはがん原性試験の評価等についてご審議をお願いします。どうぞご自由にご発言ください。発がんの問題はありませんでしょうか。まとめ等もこのとおりということで津田先生いかがでしょうか。

○津田委員
 先ほどと似たような繰り返しがありまして修正案をお送りしてあります。例えばシクロヘキセンがいきなり雌のところに出てきたり、雄に対するとか、その辺の書き方の問題です。内容自体については問題ありません。

○日本バイオアッセイ
 それでは、先に津田先生からいただいておりますので、修正したものを読ませていただきます。「シクロヘキセンの投与によって、ラットでは、雄で肝細胞腺腫と肝細胞がんを合わせた発生数の増加がみられたが、その増加は僅かであり、肝細胞腺腫及び肝細胞がん、それぞれには発生増加がみられなかった。また、他の組織、臓器には腫瘍の発生増加は認められなかった。従って、本試験の結果からは、雄に対するがん原性を示す証拠は得られなかった。雌には、腫瘍の発生増加は認められなかった。マウスでは、雌雄とも腫瘍の発生増加が認められず、がん原性を示す証拠は得られなかった」と修正させていただきました。

○座長
 それではよろしゅうございましょうか。特段の追加のご意見もないようですので、シクロヘキセンについての本日の検討はこれで終えたいと思います。このシクロヘキセン及び次のp-ニトロアニソールの検討結果報告書そのものの検討はどうするかということについては、後ほど事務局から説明がありますので、そのときにご考慮願いたいと思います。
 次に、p-ニトロアニソールについてです。まず、物質情報について事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 資料6−1、「p-ニトロアニソールの基本情報」です。物理化学的性質ですが、数値的なものはこちらに示してあるとおりで、常温での性状が結晶、固体状態のものです。輸入量が平成14年において400t、輸入業者は酒井興業という所です。用途は染料の中間体です。法令による規制の現状は、労働安全衛生法関係では「変異原性が認められた化学物質」ということで、行政指導の対象となっています。その他、船舶安全法等により、規制が行われています。
 がん原性の評価についてはIARC、日本産業衛生学会、ACGIHとも現在のところありません。動物に対する評価は、ラットへの経口の急性毒性がみられるということです。変異原性の関係は、微生物を用いる変異原性試験では陽性、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験についても陽性という結果になっています。

○座長
 続きましてがん原性試験結果について、説明をお願いします。

○日本バイオアッセイ
 p-ニトロアニソールのラットとマウスを用いたがん原性試験の報告をします。被験物質は結晶の固体です。水に不溶ということで混餌試験で行っています。
 変異原性は当センターで行った試験では、微生物を用いた変異原性試験では陽性、菌株はTA100、代謝活性化なしで陽性を示しています。培養細胞を用いた染色体異常試験でも陽性を示しています。細胞株はCHL、代謝活性化ありで陽性を示しています。
 次にがん原性試験の試験方法です。投与経路は固体、水に溶けないということで、混餌による経口投与を行っています。動物種は吸入試験と同様にラットF344、マウスはBDFを用いています。群構成は1対照群と3投与群で、雌雄各50匹を用いています。投与条件として、これは自由摂取なので、7日間ということで104週間、トータルすべて休みなしに投与しています。投与濃度は13週間の予備試験を行った結果、ラットの雌雄では2000ppm、4000ppm、8000ppmを選択しました。マウスは5000ppm、10000ppm、20000ppmと、マウスのほうが若干高い濃度で設定しています。
 飼育環境は温度が23±2℃、湿度は55±15%、以下、照明、換気回数はこういう条件で設定しています。飼料については被験物質を混合した粉末飼料を動物に与えています。対照群は粉末飼料のみを与えています。水は吸入試験と同様にフィルターでろ過した紫外線照射の市水を自由摂取させています。
 観察・検査項目です。動物の一般状態の観察、体重・摂餌量の測定、血液・生化学的検査、尿検査、臓器重量の測定、剖検、病理組織学的検査を実施しています。
 試験結果です。このグラフは、ラットの雄の生存動物の推移を示したグラフです。特にここで大きな気になる点は、最高用量の雄の8000ppm群では、約68週以降辺りから、大幅な動物の死亡がみられています。最終的には動物の生存数は2匹になっています。この死亡の原因は、慢性腎症によるものがほとんどでした。ラットの雌については特に大きな投与群の生存率の低下はありません。若干、後半の部分で最高用量がかすかな低下を示しています。こちらのほうの死因も、主にラットの雄で言いましたように、慢性腎症による死亡が若干増加していました。
 体重推移はラットの雄は全投与期間を通して、最高用量の8000ppm群ではこのように体重増加の抑制が認められました。中間用量の4000ppm群では、後半で僅かな体重増加の抑制が認められています。ラットの雌では、1番上は対照群ですが、全投与群とも若干対照群よりも体重増加の抑制が認められています。
 腫瘍の発生状況です。ラット雄の発生状況は、肝臓では肝細胞腺腫の発生が増加傾向を示しており、Fisher検定でも4000ppm群、8000ppm群で有意な発生が認められています。精巣では間細胞腫の発生も認められていますが、これはヒストリカルデータの範囲内ということと、この系統の動物にはほとんどの雄に認められるということで、被験物質によるものであるかという判断はできませんでした。ラットの雌は肝臓で僅かな肝細胞腺腫の発生増加が8000ppm群で認められています。増加した腫瘍としては子宮の腺がんが4000ppm群、8000ppm群で特に多く発生しています。
 この写真がラットの腫瘍の、特に肝臓で雄に8000ppm群に認められた肝臓の肝細胞腺腫です。続きまして、雌の8000ppm群の子宮の腺がんの写真です。
 マウスの試験結果です。このグラフはマウスの雄の生存率の推移を表しています。このように20000ppm群では、肝腫瘍による死亡が目立ちました。中間用量群と高用量群は対照群と比べても生存率の低下が認められています。マウスの雌は高用量群では肝腫瘍による低下が認められています。
 体重推移です。マウスの雄では投与群では投与用量に対応した体重増加の抑制が認められています。雌でも対照群に比べて投与群は体重増加の抑制が認められています。
 腫瘍の発生状況です。この表はマウスの雄ですが、悪性腫瘍で肝臓の肝細胞がんの発生増加が認められています。特に20000ppm群では39匹と、Fisher検定で有意差を示しています。肝芽腫ですが、肝芽腫はまれな腫瘍で、ほとんど当センターのヒストリカルコントロールではない腫瘍ですが、このように投与量に対応した発生増加が認められています。当然、肝細胞腺腫、肝芽腫、肝細胞がんを合わせた検定でも増加を示しています。
 マウスの雌は悪性腫瘍は、肝臓の肝細胞がんの発生が、投与量に対応した増加を示しています。肝芽腫の発生は10000ppm群から発生が認められています。肝細胞腺腫、肝細胞がん、肝芽腫それぞれ合わせた検定を行った結果でも、増加を示しています。
 これは雄の20000ppmの最高用量群に認められた肝細胞がんの写真です。次は雄の20000ppm群で認められた肝芽腫の写真で、この青い部分が肝芽腫です。
 試験の結果のまとめです。ラットでは、雄に肝細胞腺腫の発生増加が認められ、p-ニトロアニソールの雄ラットに対するがん原性を示す証拠と考えられた。雌には子宮腺がんの発生増加が認められ、この物質の雌ラットに対するがん原性を示す明らかな証拠と考えられました。
 マウスでは、雌雄のマウスに肝芽腫及び肝細胞がんの発生増加が認められ、p-ニトロアニソールのがん原性を示す明らかな証拠と考えられました。
(パワーポイント終了)

○座長
 ただいまの説明に対する質疑、まとめ等についてご意見をいただきたいと思います。

○有害性調査機関査察官
 p-ニトロアニソールについては福島委員から事前にコメントをいただいております。まとめの部分にあたるかと思いますが、ラットの雌に関する記載で、現在の5の「まとめ」では、ラットの雌については子宮がんの発生増加をもとにがん原性を示すという記載がありますが、試験結果を見ると、肝臓の肝細胞腺腫の増加もみられるので、そのことについても記載したほうがよいのではないかという趣旨のコメントです。

○座長
 福島委員のご意見を入れると、「また、雌の肝細胞腺腫の発生増加もみられた」という文章が入るわけですね。

○座長
 いかがでしょうか。松島委員、特段ございませんか。

○松島委員
 いいのではないでしょうか。まとめて検討結果が出るわけですから、言葉の整合性、文章の整合性が非常に重要だと思いますので、是非その辺を注意して作っていただきたいと思います。

○座長
 この物質についてのがん原性試験の評価等は特段よろしいですね。意見も出尽くしたようですので、p-ニトロアニソールについての今日の検討はこれで終えたいと思います。

○有害性調査機関査察官
 こちらの会議の中で、それぞれのがん原性試験の結果の評価を先ほどしていただきましたが、それに基づいて行政対応が必要かどうかというところまで、検討のほうを行っていただければと思います。それを踏まえて今日検討しました残りの2物質についての報告書(案)を作成させていただきたいと思います。

○座長
 先ほどのシクロヘキセンについて、行政対応が必要かどうかということについて、いかがでしょうか。

○松島委員
 がん原性がないわけですから、必要ないです。

○座長
 そういうことでよろしゅうございましょうか。
                (異議なし)

○座長
 では、そのようにさせていただきます。次にp-ニトロアニソールについてはいかがでしょうか。これはがん原性が認められるということから、行政対応が必要であるという結論でよろしいですか。
                (異議なし)

○座長
 そのように決定させていただきます。

○森永委員
 これは本当に輸入業者が1か所だけれども、どこかあちこちで実際使用されているのですか。そういうのはわからないですね。

○有害性調査機関査察官
 使っているところがどのくらいあるかということですか。資料6−2を見ますと還元するとp−アニシジンとなり、染料の中間体として使用されるということですので、ユーザーは複数あるのではないかと思っています。

○座長
 それでは次に進みます。議事次第(5)「その他」ですが、事務局で1つあったと思いますのでお願いします。

○有害性調査機関査察官
 事務局から1つご報告させていただきます。平成15年度の職業がん対策検討会で検討していただいた物質についてのその後の状況について、ご報告させていただきます。
 平成15年度はN,N-ジメチルホルムアミドを含め、計6物質について検討いただき、それぞれがん原性試験の結果、がん原性が認められるということで、行政対応が必要というご意見を賜っております。その後の状況ですが、前回の検討会でご報告しましたとおり、N,N-ジメチルホルムアミドについては既に指針の案を作成し、その内容についてパブリックコメントの手続を行っており、意見募集については終了し、現在、省内でその後の法令審査の手続を行っているところです。
 それ以外の5物質については、現在、指針案の作成中ですが、先生方にご了承いただきたいことがあり、本日ここで説明したいと思います。残りの5物質というのは、具体的にはグリシドール、キノリン、1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼン、ヒドラジン一水和物、クロトンアルデヒドの5物質ですが、その中で、キノリン、ヒドラジン一水和物については試験を実施した物質だけではなく、もう少し範囲を広げて指針の対象としたいということで、具体的にはキノリンについては「キノリン及びその塩」という形で指針の対象とさせていただきたい。ヒドラジン一水和物については無水のものであるヒドラジンを含めること、これらについての塩も含めるという形で指針の対象とさせていただきたいと考えています。これについて先生方のご了解をこの場でいただければと思っております。

○座長
 この件はいかがでしょうか。

○津田委員
 「及びその塩」と、「並びにこれらの塩」というのはどういう違いなのですか。

○有害性調査機関査察官
 「及び」「並びに」は法律上の記載のルールということで、いくつかのものを並行して並べるときに、最初の小さい括りを「及び」でして、さらに大きな並列関係のものについて「並びに」という言い方をするということで、法律上の使い方ということです。

○座長
 いつも気にはなっていたのですが、きちんと使い分けられているのだろうとは思っていました。

○松島委員
 実際に使用されている場合には、塩の形のものもあるわけですから、こういう具合に指針の中では対象物質の範囲をきちんと決めてお出しになることはいいのではないでしょうか。

○座長
 皆さんよろしゅうございますか。
                (異議なし)

○座長
 それでは事務局からの提案は了承されたということにいたします。その他、事務局で何かございますか。

○有害性調査機関査察官
 検討事項についてはございません。

○座長
 それでは、以上で今日の議事の検討を終わります。続きまして、今後の予定について事務局から説明をお願いします。

○有害性調査機関査察官
 今後の予定ですが、今回新しく検討いただきましたシクロヘキセン、p-ニトロアニソールの2物質については、検討会報告書の案を事務局でまた作成し、これについては会議形式ではなく、私どもから先生方に郵送させていただき、ご意見を伺うという形にさせていただきたいと思います。そのときには、先ほど修正意見をいただきました前回検討物質の報告書案の修正版についても併せて送らせていただき、内容をもう一度確認していただくような形で進めさせていただきたいと思っております。

○座長
 そのようなスケジュール案ですが、それでよろしいでしょうか。

○松島委員
 コメントが出てきた場合には、事務局は櫻井座長に我々は一任しますので、最終的な修正は協議してお決めいただきたいと思いますので、座長よろしくお願いいたします。

○座長
 そういうことでよろしければ、そのようにさせていただきたいと思います。
 ほかには事務局から特段ありませんか。また、委員の皆さん方からご意見等はございますでしょうか。

○津田委員
 バイオアッセイさんにお伺いしますが、いままでのがん原性試験で、子宮がんのデータというのはありますか。

○日本バイオアッセイ
 子宮がんは今回が初めてです。

○津田委員
 非常に珍しいと思います。化学発がんをやっている人たちで子宮発がんのモデルを作ろうと努力していますが、エチルニトロソウレア等のがん原性物質をいきなり子宮に入れるというような方法でやっと発生するぐらいです。

○座長
 そういう貴重な話ですか。勉強しました。それから今回は肝芽腫などという珍しいものもありますね。

○津田委員
 マウスは時々みられます。

○座長
 そうですか。それでは本日の検討会はこれで終わりたいと思います。事務局から事務連絡はありますか。

○有害性調査機関査察官
 連絡事項は特にございませんが、もしよろしければ最後に化学物質対策課長から、ご挨拶を申し上げたいと思います。

○化学物質対策課長
 本年度の最後ということで一言御礼のご挨拶を申し上げたいと思います。
 今回の検討会は昨年の12月15日に3物質、本日2物質、計5物質について熱心なご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。今回の審議の結果得られました結論に従い、私どもできるだけ速やかに指針等を作成し、関係者に対する指導等に努めてまいりたいと考えているところです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

○座長
 ありがとうございました。

トップへ