05/01/31 第26回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録    第26回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日時  平成17年1月31日(月)10:00〜12:00 2 場所  経済産業省別館827号会議室 3 出席者 [委員]  奥平委員、小山委員、齋藤委員、佐藤委員、讃井委員、            下永吉委員、菅井委員、鈴木委員、田村委員、都村委員、            中山委員、成宮委員、堀越委員       [事務局] 松井勤労者生活部長、宮本勤労者生活課長 4 議題 (1)累積欠損金の解消における目標の設定について (2)剰余金の付加退職金への配分の考え方について   (累積欠損金の解消に向けての目標設定に伴う検討事項) 5 議事内容 ○齋藤部会長  第26回中小企業退職金共済部会を開催させていただきたいと思います。今日は勝委 員、山路委員がご欠席です。今日の議題は、お手元にお配りしてある次第に書いてある とおりです。「累積欠損金の解消における目標の設定について」という議題から始めた いと思います。最初に事務局からご説明をお願いします。 ○宮本勤労者生活課長  最初の議題について、資料1に基づきましてご説明いたします。資料1の2頁をご覧 ください。この数値は既に11月の審議会でもご案内したものですが、平成15年度末現在 において、一般中退制度で約2,700億円、林退制度において約18億円の累積欠損金が存 在している。それぞれ、ここは責任準備金に対する割合で出していますが約8.5%、約 10.5%という値になっています。  これに対して6頁をご覧いただきたいと思います。これも前回までに、時々でご報告 いたしましたが、累積欠損金の存在について2つの審議会あるいは委員会からご意見が 出されています。厚生労働省の独立行政法人を評価する評価委員会、そのさらに上位と いうか、総務省に設置されている、全体の取りまとめを行う親委員会に当たる政策評価 ・独立行政法人評価委員会のご審議の結果、厚生労働省の評価委員会に対して意見が出 されたものです。  ポイントとなるのは「・」の段落のところ、上から4行目の後ろのほうです。「累損 を解消するための具体的な目標設定がなされていない。累積欠損金の解消に向けては、 明確な目標の下で削減に努めることが重要である。余裕金の安全かつ効率的な運用に配 慮しながら、具体的な削減目標の設定状況を踏まえた上で評価することが望ましい」と あります。これは評価委員会に対する親の評価委員会からのご意見ですので、直接的に 評価委員会が計画を設定すべきということをおっしゃっているのではなく、厚生労働省 あるいは大臣において具体的な削減目標を設定していただいて、その上でそれに基づい て明確な目標を設定していただき、累損の解消が計画的に進んでいたかをチェックする ようにという、方法についてのご意見をいただいています。結果的に、間接的には私ど もに対して具体的な目標設定を促しているものということになろうかと思います。  7頁は財政制度等審議会の委員長から財務大臣に対し、建議がなされたものを私ども に通知されたものであります。(5)財務の健全性の中ほど、「また」というところの 段落をご覧いただきたいと思います。「特別会計から運営費交付金を交付している独立 行政法人において累積赤字があるなどの、財務の健全性が毀損している場合には、当該 法人が中期計画の中で適切な収支改善策を確実に遂行するよう、所管省庁がチェック機 能を働かせる必要がある」。ここは必ずしも中退制度、あるいは勤労者退職金共済機構 だけを取り上げて言ったものではありませんが、1つの例として勤労者退職金共済機構 が多額の欠損金を抱えていることを引きながら、このような議論がされているというこ とです。このように累積欠損金の解消については、非常に多くの議論をこの審議会でも していただきましたが、1つ、ここで大きな状況の変化がこういう形で表れてきている ことをまずご紹介させていただきます。  具体的な目標についてどうするかという点について、3頁の考え方をご覧いただきた いと思います。「2 累積欠損金の計画的解消」ということで、具体的な目標を設定す る場合の基本となる考え方についてここでご説明いたします。(1)企業における退職 給付会計と呼ばれているものが既に株式会社などについては適用されています。これが どういう状況になっているのかということですが、数理計算上の差異、詳しくは同じ資 料の一番最後、14頁または15頁を後ほどご覧いただければと思います。かいつまんで申 し上げますと、予定利回りと実際の利回りの差を「数理計算上の差異」という形で定義 しています。予定した利回りに実際の利回りが届かなかったことなどで欠損金が生じた 場合には、在籍者の平均残存勤務期間内の費用処理が求められています。これは仮に中 退制度にそのまま当てはめるとすると、一般中退の被共済者の方の平均掛金納付月数が 注にあるように115カ月、年数にすると約9.6年です。林退制度においては147カ月、年 数にすると約12.3年ということになります。企業会計に適用されている退職金給付をそ のまま適用すると、約10年程度で先ほどご説明した累積欠損金を毎年度均等に費用処理 することが求められることになります。  しかし、私どもとしては、次の(1)、(2)、(3)にあるような理由に基づき、民間の基 準から言えば10年程度になってしまいますけれども、もう少し長期化してもいいのでは ないかと考えています。というのも、1つは企業に適用されている退職給付会計の導入 の定義などでは、株式会社を中心としていますが、株式として出資をしている出資者、 あるいは取引先など取引の安全性を図る必要性があることから、民間企業について財務 の健全性を明らかにする。あるいは、不健全性についてきちんと明らかにすることを目 的としてこの制度が導入され、その企業の存続についてある程度外側からわかるよう な、資料の公開という制度が導入されているわけです。  (1)にあるように、中小企業退職金共済制度については制度が法律に基づくものであ る。したがって、公的制度として、株式会社や民間の企業体に比べると、かなり強い意 味で継続性が確保されている。その点で、必ずしも厳密に退職給付会計を民間並みに適 用しなくてもいいのではないかと考えられます。  2番目に本制度においては現在、事業主の過去分についての追加拠出が法律上原則と して認められておりません。仮に累積欠損金を解消しようとすると、その原資というの は運用収益により確保しなければならないことになります。ある程度の利益を上げるた めに、一方では制度の安全・確実な運営ということを考慮しながら、片方で累積欠損金 について十分な資金を充てるということになると、多少ハイリスク・ハイリターンの資 産に投資しなければならないということがあろうかと思います。あまり過度にハイリス ク・ハイリターンの資産に投入することはできないだろう。不適当ではないかというこ とです。10年程度を厳密にどうしても守ろうとすれば、逆算するとどの程度単年度の利 益を計上しなければならないかが計算されてしまいますので、それに基づいて株式投 資、あるいは海外の資産について資産配分をより高める。それによって、非常に高い収 益を目指すこともできますけれども、ご案内のとおり、一方で大きく下落する可能性も 非常に含んでしまいます。そういった、過度にハイリスク・ハイリターンの資産運用を しなくても済む程度の運用で、累損の解消をしていくことが適当ではないか。そのため には、多少長い期間ということも許されるのではないかということです。  3番目は林退制度固有の問題になります。林退制度については、例えば一般中退の約 3兆という数字に比べると、林退制度の場合には約150億程度と、規模が相対的にかな り小さいことを考慮すると、ハイリスク・ハイリターンの資産にあまり多くを割り当て ることはできないことがより強く要請がされます。そうなると、単年度で返せる額とい うものも自ずと、あまり大きな額にすることは難しくなってくるということを踏まえる ことが必要ではないかと思います。ということから、本制度において累積欠損金の解消 期間をやや長めにすることを考えてはいかがかと思っています。  (2)に、然らば10年を超える長期の期間で累積欠損金を確実に返していくという時 に、若干留意する点があるのではないかと考えています。この制度は独立行政法人の勤 労者退職金共済機構が運用していますけれども、運営に当たっては中期目標が設定され ています。概ね5年程度ということになりますが、現在の中期目標は設立の経緯もあり ますので、今年を含めてあと残り4年となります。それ以降は5年刻みで次々と更新さ れていくということになろうかと思います。そういったことを考えると、累積欠損金の 解消計画といった目標も中期計画の期間と整合的に設定することが適当ではないかと考 えています。  また、先ほど、独立行政法人評価の親委員会や財政制度等委員会において具体的な目 標を要請されているわけです。その場合の目標について、単年度で設定するというご意 見もあったやに伺っていますが、単年度の収支といったものを目標にしてしまうと、他 方で単年度の市場環境が非常に大きく変動するといったこともあります。それらに左右 されてしまうことも不適当と考えていますので、ある程度それらがならされる期間の長 さを目標とすることが適当ではないかと思っています。  したがって、先ほどの中期目標期間との整合性を考慮すると中期目標の期間内での達 成を目標とする。例えば、5年間でいくら解消するということを考えるということを目 標とするのが適当ではないかと思っています。  (3)に、もう1点留意すべき事項があろうかと思っています。将来の経済情勢等に ついて、予測を加えることが非常に困難ではないかということであります。これは誤解 を与えてしまうことかもしれませんが、私どもの意図は例えば中期目標を2つや3つ、 つまり2つなら10年、3つなら15年、4つだったら20年ということになります。そうい った長期の期間の中で、一番最初に来る中期目標の期間の経済が良くて、2番目に来る 中期目標の期間においては経済状態があまり良くない。3番目もやはり良くなくて、4 番目が良かったという、中期目標の期間内においてはある程度のデコボコが発生するだ ろうと思います。そのうち、何番目の経済環境が良くて、何番目の経済環境が良くない といったことまでを予測するということはかなり難しいことではないかと思います。そ ういう意味で、「将来の経済情勢等を予測することは困難であることから」というよう に書かせていただきました。  そういったことから、目標の設定に当たっては各期間、均等に累積欠損金を解消して いく。つまり、1番目は例えばあまり景気が良くなさそうなので、少し累積欠損金の解 消額を小さくしておいて、2番目が良さそうだからその分を上乗せしてしまうといった ことを考えるのではなく、各期間均等に分けてしまうということにしたらいかがかと考 えています。  当然、解消計画を立てましても、その進捗の状況というのは異なると思われます。予 定を上回って解消が進むこともあるかもしれませんし、予定を下回ることもあるかもし れません。この解消計画はここで一旦立てた上で中期目標の見直しの期間、概ね5年ご とにやってまいりますので、その際に進捗状況を振り返っていただいて、必要に応じて 残りの期間についての見直しを行うことが必要ではないかと思っています。  そこで4頁、以上3頁でご説明したような考え方に基づき、いくつかの選択肢として 一応現実性を踏まえて考えたものが一般中退について案1から案4まで、林退について も案1から案4までの4つです。  この表の作りですが、例えば一般中退の案1の欄を左の行から順番にご説明いたしま す。まず案1、「累積欠損金までの年数」とありますが、これを9年間としています。 なぜ、区切りの悪い9年間なのかということについては、先ほど中期目標のところでも ご説明申し上げましたが、今年度を含めると現行の中期目標期間は残り4年間ありま す。最短でいくと4年間で解消するものもありますが、これは運用の状況、あるいは単 年度で解消する目安の額の大きさを考えても非常に大きな数字ですので、あまり現実的 ではない。そうすると、次に短い期間は4年を迎えて見直された中期目標の期間が概ね 5年間ですから、4+5で9年間になるということです。以降、2、3、4については 5年毎に中期目標が更新されることを考え、4+5の倍数が並んでいるというもので す。  そこで、仮にまず最短の9年間という形で考えると、中期目標の1期間、5年相当分 で解消すべき額というのは、累積欠損金の中期目標期間で按分すると、5年間の1中期 目標期間で1,491億円を解消するということになります。  これを目標として考えるわけですが、一方において、単年度にどのぐらい進んだかど うかについても、ある程度は監視、あるいはチェックする必要もあります。その意味 で、1,491億を仮に均等に返せるとしたときの一種の目安額として、5で割った数字を その次の右隣に掲げてあります。1,491億を5で割った数字になりますが、298億円とい うことになります。  さらに右の欄、「平成15年度末資産に対する割合」ですが、仮に昨年の末、今年の年 度初に当たりますが、持っていた資産額を運用して298億円を得ようとすると、そのと きの単利の利回りが1%ということになります。実際には、予定運用利回りがさらに1 %ありますので、298億円に相当する1%を得ようとすると、2%以上の金額、利回り を達成しなければならないということになります。2%というのは現在、10年ものの満 期国債の平均の利回りが一番直近だと1.3%ぐらいですので、10年ものの国債を買った だけでは1.3%でまだまだ足りません。したがって、その分、より高い利回りを獲得す るためには、先ほど申しましたように期待収益がより高い国内の株式、海外の株式や海 外の債権といった、いわゆるリスク性の資産と呼ばれているものにもう少し、現行以上 に資産の配分を割り当てなければならないということになります。  以下、案2、3、4については作りは同じです。先ほど申しましたようなことから、 案2では14年間、この際の5年の目標値が959億円、単年度の目安は192億円になりま す。この場合、資産運用利回りは0.64%に相当するということになります。あと、3、 4については説明は割愛させていただきます。  一方、林退制度ですが、表の作りについては一般中退制度と同じです。期間について は同じような案を設定させていただいていますが、5年間としたときの1期間あたりの 解消目標額については林退制度の額が一般中退と違います。そこからちょっと数字が違 ってきて、案1でいくと9億8,300万円を5年間で解消する。それを1つの目安として、 単年度でどのぐらい平均的に返せばいいのかという目安額を計算すると1億9,700万円 に相当します。15年度末の資産に対する割合、何パーセントに相当するかを単純に計算 すると1.29%です。  なお、林退についてはご案内のとおり、予定運用利回りが0.7%に設定されています ので、最低限必要な数字は1.29%に0.7%を足した1.99%を運用しなければならないと いうことになります。  案2、3、4については同じような状況ですので、説明は割愛させていただきます。 なお、残りの頁は先ほどご覧いただいたもののほかに、後ほどご覧いただきたい資料と して退職給付会計の概要について14頁以下で説明を加えています。とりあえず、ここで はご説明を省略させていただきます。何かご不明な点等がありましたら、後ほど、説明 いたしたいと思っています。  ご参考までに、最近までの各事業における運用の状況について資料3を用いて説明い たします。資料3の2頁〜5頁はこれまで、平成3年以降、約12年ほどですが、それぞ れの事業についての予定運用利回りと実際の平均運用利回り、それぞれの期で発生した 損益金、それと累積の額を事業別に整理したものです。  6頁は一般中退制度についての付加退職金の支給率です。7頁の資料3−2以下で、 最近の状況について簡単にご報告いたします。まず、8頁の色刷りの折れ線グラフです が、この中の一番右をご覧いただくと、今年度12月末までのベンチマークの収益率の推 移です。年度の初めを起点として、今までに累積でどのぐらい収益率があったかという ものです。これはNOMURA−BPIの数値ですが、国内株式は12月末までで1.25% でした。これは年率化されておりません。もし年率化しようとすると、単純にこれの3 分の4倍ということになります。国内株式はTOPIX配当込みの数字ですがマイナス 1.98%、外国債券はシティーバンクグループの国債インデックスですが円換算ベースで 9.06%でした。それから外国株式、MSCIは日本を除いた円換算ベースで11.82%で した。先月の審議会でご報告したときに非常に悪い状況だったわけですが、ご覧になっ ていただくと一目で、赤い線で示されています国内株式が12月に非常に大きく反転しま したので、トータルとして見ると全般にかなり良い傾向になってきていたという状況で す。  9頁は先ほど少し簡単に申し上げましたが、金利等の推移について整理したもので す。この中で比較的、運用の場でよく使われているものが真ん中よりも少し左、「国債 (10年)」というものです。この中で、応募利回りが発行されたときの国債の利回りを 決定する上で非常に重要な要素となってまいります。最近では、12月末で1.445%、10 年間持っていると1万円当たり1.445%のものしか現在では配当としてもらえない。さ らに1月に入ってもう少し下がっていますので、現在では先ほど申しましたように1.4 %を切るまで、1.33%ぐらいだと思いますが、その程度まで金利が落ちてきてしまって いるということです。  資料3−3の11頁をご覧ください。11頁の数字は一般の中退制度についての資産の運 用状況で、昨年末の状況です。上の表の一番右にある「利回り」という欄の一番下が年 率化されました、つまり、12月までの利回りを3分の4倍し、1年間に換算した数字で す。これは現在のところ、12月末の数字で2.5%となっています。  一方、下の表は民間の信託銀行や投資顧問、あるいは生命保険会社に委託して運用し ているものです。こちらは4月以来の数値で年率化していませんが、2.62%となってい ます。それぞれの資産でベンチマークを上回る成績を残していますが、残念ながら外国 株式だけは市場平均よりも少し収益率が悪く、それでも収益率そのものが非常に高いと いう状況です。  12頁以降は特退の事業です。12頁、13頁が建退、清退のそれぞれの運用状況です。累 積欠損金に関係する林退については14頁をご覧いただきたいと思います。表の作り方は 一般中退制度と同じになっています。特退の場合には11月末の数字になりますが、11月 の数字で林退では0.83%です。下の表をご覧いただくと、林退の場合には資産規模が大 体150億程度ということですので、安全・確実に主軸を置いた運用をしていますから、 金銭信託についてはあまり大きな割合をかけることなく、またあまり多くの資産を外の 資産などに振り分けないようになっています。これは金額が0以下などということでは なくて、運用していないということになります。それぞれ、とりあえず予定運用利回り を上回る利回りが今のところ達成できているという状況にはあります。議題1に関し、 事務局で用意した資料の説明は以上です。 ○齋藤部会長  どうもありがとうございました。ただいまの説明について、ご意見、ご質問ありまし たらお願いします。 ○讃井委員  今ご説明いただいた目標設定の前提となる事項で確認したいところがありますので、 教えていただきたいと思います。資料1の3頁、企業における退職給付会計を計算し て、運用するという場合にどうなるかというご説明がありました。在職者の平均残存勤 務期間というものは、文字どおり読むと平均的な退職までの勤続期間があって、それを 現在働いている方のこれまでの勤続期間の平均から引き、残っている平均の残存期間な のかなと思うのです。そのように理解してよろしいのでしょうか。 ○宮本勤労者生活課長  厳密に企業会計でやるときにはそのように計算していると伺っています。 ○讃井委員  そうすると、それをもしそのまま当てはめるとすると、制度が全く違いますので難し いかと思います。この中退共において、退職金が支払われるまでの加入期間から現在加 入している方々のこれまでの平均の加入期間を引いたものが残存期間に当たるというこ とではないのですか。 ○瀧原課長補佐  おっしゃる事はそのとおりだと思います。平均残存期間を考えるときに、そのときの 在籍状況が非常に影響します。当然、制度が始まったばかりですと短い期間の方が多い ですから、中退に入っていて辞めるまでの期間が今いる人の平均残存年数と大きく乖離 をすることになります。短い人が多いですから。逆に制度がある程度成熟すると、実は これはほぼ同じになります。これは計算上の話なのですが、短く辞める人もいれば長く 辞める人もいる。  今いる人の平均残存年数というのは、短く辞めた人はもうその場にいません。ところ が、退職者の平均残存年数といったら短い人も考慮するし、長い人も考慮するというこ とで、退職した人の平均残存年数と今いる人の残存年数というのは制度が成熟してしま うと理論的にはほぼ同じ値になることになります。  中退は今どうなっているかというと、実際、在職者の掛金平均納付月数と今ここでお 示ししている退職者の平均月数は大体同じぐらいなのです。その意味では、ここでお示 ししている10年程度というのは、どちらを取っても大体10年程度と思っていただいて結 構です。 ○讃井委員  目安とすると大体10年ということですか。 ○瀧原課長補佐  そうですね。 ○成宮委員  平均在職期間が正規分布をしているのではなくて、9.6年で一般中退になっています。 その辺が多いというのではなくて、実は20年など、もっと長い人が多くいる一方で、1 年未満など短い人が多くなっている状況ですか。 ○瀧原課長補佐  特にどちらが多いと言えば、もちろん中退は制度上、短い人のほうが多いです。短く 辞める人と長く辞める人とではウエイト的には短い人が多いのです。長い人というのは だんだん減ってくるのですが、この分布は今年辞めた人との切り方で見たときと、今い る人が全体的に、近いうちに辞める人もいれば長い人もいる。ちょっとイメージがしに くいかもしれませんが、大体、毎年同じずつ人数が入ってきて、平均的に1年目で11% そのあと何%、何%と辞めていった時の辞め方によって、辞めた人と今いる人というの は大体同じに見られるということです。今年1年でという切り方と、あるグループをそ の人が辞めるまで見た、40年なり45年で見たときの切り方は結果的には同じようになり ます。 ○讃井委員  それに関連してまた質問します。一般中退のほうが適年から移ってくる人もいらっし ゃいますし、続々と加入してくるということでこのような予想ができるかと思います。  林退については非常に難しい状況にあるということもありますし、例えば今加入して いる方の年齢構成の今後の推移といったことはどのようになっているのでしょうか。 ○瀧原課長補佐  これから林業自身、ある程度規模が小さくなってくるのではないかというようなイメ ージがあります。その一方で、最近、林退に関しては「緑の雇用制度」という形で、林 業労働者にどんどん新しく入ってきてもらおうという制度があります。その成果もあっ て最近、林退制度に入ってきていただける方がある程度増えてきています。  実は林業についても、今の時点である程度新しく入ってきていただいている方がいら っしゃいますので、今の時点で見る限りはどんどん高齢者が増えて、ある意味では制度 の成熟化、さらに進んで終わりの状況になっているかというと決してそうではありませ ん。今の時点では、辞めていかれる方もいるし新しく入ってこられる方もいる。相対的 には少し年齢が上がっていますが、全体的に見る限りはまだ成熟した制度が続いている というのが今のところの見通しだと思っています。 ○齋藤部会長  ほかにいかがですか。 ○佐藤委員  何度も聞いたような感じがするのですが、資料1の3頁の(2)勤労者退職金機構が 中期目標を定めていて、その中期目標の抄録のようなものが資料にも付いています。基 本的には、勤労者退職金機構も累積欠損金をなくしていきましょうということを考えて いるわけですよね。それと新たに今度、年度目標を設けるという関係が、中期目標の期 間内での達成を目標とするという意味合いでオーバーラップされています。意味がよく わかりにくいのですが、そこをもう少し説明いただけますか。  それから、中期目標の経過はまだあまりないと思うのですが、要するに現状の運用努 力や加入の促進、運営の効率化などいろいろなことを言っています。そういった状況に ついても併せて、どのように厚生労働省としては見ているのかをお話し願います。 ○宮本勤労者生活課長  まず、資料1の11頁をご覧いただきたいと思います。先ほど、説明を割愛した資料で す。上のほうに「独立行政法人勤労者退職金共済機構中期目標(抄)」とあります。真 ん中あたりに、同じようなタイトルで「中期計画」というものがあります。  このうち、中期目標は厚生労働大臣が機構に対して示すもの、決めているのは厚生労 働大臣です。厚生労働大臣が大まかに目標を設定し、5年間、今回残り4年間ですけれ ども、終期までに「こういうことを目標として掲げるので実行していただきたい」とい うことを大臣が定めます。それに基づき、機構が今度は自らの目標として、同じ期間内 で大臣から示された中期目標を達成するための独自の成果として、中期計画を設定する という仕組みになっています。  今回議題になっているのは、このうち厚生労働大臣が定めている中期目標のところで す。当然、これは佐藤委員がご指摘のように、累積欠損金の処理について明確に1つの タイトルを立て、解消に向けて着実に実行するということを謳ってはいるわけです。現 在、状況が変わってきたのは抽象的に、着実に実行することだけではなくて、中身につ いてもう少し具体化した、数値目標的なものを設定するべきであるというご意見をいた だいています。したがって、厚生労働大臣の定める中期目標について、今問題になるの はここの部分をどういう形で明確化するかが問題になります。  そうしますと、これを受けて、今度は機構において中期計画を定めていますので、中 期計画において、あるいは中期計画を単年度ごとに詳細化した年度計画というものもあ りますが、機構における対応のところでまた変化が生じてくるということになります。  中期目標については、累積欠損金についてのみ抄録として掲げました。独立行政法人 評価委員会、厚生労働省における評価委員会がこの3月末までの半年間ではあります が、機構の運用状況について外部の評価委員会の方々が評価をしています。その中に は、累積欠損金の処理の問題以外にも新規加入者の獲得、業務の効率性、つまり経費の 削減、被共済者の皆様に対するサービスの向上を含めてですが、そういった課題につい ての評価をしていただきました。そこにおける評価としては、とりあえずこの中期目標 が予定している程度には改善している。中期目標程度にはきちんと業務が良くなってい る。いくつかの項目、例えば運用について外部の専門家のご意見を伺うような仕組みを 設けているなどのことについては、計画で求めている以上に良くやっているという評価 をいただいてはいます。 ○松井勤労者生活部長  前半の解説なのですが、11頁の中期目標・中期計画は独立行政法人に関する通則法が あり、それに依拠して国が目標を定め、計画は当該法人が作るという法律の命令で策定 しています。策定をした当時、実は累積欠損金については解消ということは計画の中で 謳いましたが、どのように解消するかをこのような場で議論していなかったものですか ら書いていませんでした。とにかく「なくします」とだけ書きました。  そういう経過があって、6頁に戻って、今度はそういった運用をチェックする評価委 員会ができました。ここの中段を見ていただくと、「これらを解消するための具体的目 標設定がなされていない」とありますように、実はご議論していなかったわけです。そ こでいよいよ、平成16年12月に作れと言われた。その前には7頁、財政制度等の審議会 でも収支改善策を確実に実施するためのチェックを働かせろという中で、特別会計から 運営交付金が出ている法人として名指しされてどうも議論がなされたようです。それが あったあとで、実は12月に、「よく見るとやると書いてあるけれども、具体的な累損の 解消計画が入っていないではないか」と言われた。ゆえに、3頁に戻って、いよいよ具 体的に皆様にお諮りしています。  ここで先ほどの(2)を見ていただくと、最初のパラグラフ、累積欠損金の計画的解 消目標がないと言われていますので、これを定めさせていただきたいというものです。 「なお」書きは解消するに当たっても単年度ごとでは収支が動きますので、単年度でい くらというのはちょっと難しい。中期目標の期間内で、5年や10年の間でトータルいく らと定めることでよろしいでしょうかという質問にしています。そうやって全体を定め て、あとは期間ごとに割り算すると1年ごとにはいくらという、先ほどご説明したとお りの構造になっています。 ○成宮委員  先ほどの讃井委員の2つ目の質問と関連するのではないかと思うのですが、ご指摘 は、林退のこの先の人数というか、資産規模がどうなっていくのかなということに関す るご質問だったと思います。一般中退のほうも、最近いろいろ言われている話からの類 推でいくと、「2007年問題」などと言われているように、戦後団塊世代がいよいよ退職 をしていく時期が迫ってきている。これがまず1つ、今の中退の加入者の動向にどうい う影響を与えるのか。もう1つ、ふわっとした動向で言われていることから考えると、 企業は常用の雇用者の数を減らしてきているような動きがあります。あるいはもっと言 うと、大企業などで始まっている話だと思いますけれども、退職金制度そのものを見直 していくというような流れもある。  そのようなことも考えると、林退だけに限らず、一般の中退についてもこの制度の規 模を考えていかなければいけないのではないか。というのは、4頁の表、平成15年度末 の資産に対する割合、どれだけ頑張って返していくのか。例えば案1だと1%、先ほど のご説明でそれにもう1%必要ですから、運用ベースでいくと2%ということがありま す。これはあくまでも平成15年度末の資産規模でした。  これが仮に将来増減すると、ベースの1%のところはいくら増減しても1%ですが、 ここは毎年平均、目標としていくら返すかというほうから決まってきますから、ここの 比率は増減するわけです。そうすると、言わば運用でどれだけ頑張らなければいけない かという点の数字も動いてくる。加入促進の努力なども一方で当然あるわけですが、大 きな流れとしてどういう動向になり得るのか。もし、何かあればお聞きしたいと思いま した。 ○松井勤労者生活部長  2007年問題は本制度においても大きな影響があるのではないかと考えます。実は現在 の被共済者の年齢分布がどうなっているかが大きいものですから、機構に検証していた だきました。  今、資料はないのですが、結論から申しますと、いわゆる団塊の世代の方を日本全体 における団塊の世代と同じように抱えている集団ではないということだけは検証されて います。ややフラット化しています。それも中小企業を中心にしているということもあ るのでしょう。もともと、大企業におられるような方が一次下請、二次下請のようなと ころにいるという、あえて言えば定常的な状態で分布している組織だということがわか りました。2007年問題が長期に影響するということはどうもないのではないかという予 測をしています。  しかし、今言われた退職金制度そのものが将来どうなるかということについては、 1、2年の話ではありません。10年、15年という長いタームで考えていかなければなり ません。具体的にすべて検証しきっているわけではありませんが、給与の支払い形態が 退職金を当てにしない形での賃金ベースに移っているということも言われています。そ れがまだ新聞に載るぐらいですから、大企業ベースに世の中すべてが一般化しているわ けではないことがまず検証されています。  中退制度そのものについてはいわゆる中小企業、外部積立、しかも安定した運用だと いうことで額等についてはいろいろあるでしょうが、引続き制度として利用するという 傾向がまだあるというように、にらんでいます。その範囲の中で、今後どんどん伸びて いくという予測はしていませんが、一定程度の堅調な推移はあるのではないかという予 測をしています。  具体的な証といっては何なのですが、適格退職年金制度はここ数年かけてなくなると いうことで、運用が移っています。適年からの掛金の移し換えということも今、こちら で起こっています。そういう意味では、適年などを利用していた事業主の中で、引続き 退職金制度が要るという認識のもとに、またその判断のもとに掛金を中退に移している という現状があります。それらを考えると、ここ5年や10年ぐらいの間は間違いなく、 むしろそういったものをしっかり取り込んで、被共済者集団を健全なものとして運営す るということが行われれば、ここで描こうとしている累積欠損のモデルとしてあながち 不当ではないかなと思っています。  その上で3頁の(3)に書いているように、いわゆる制度など、構成そのものはあま りグラつきがないことを前提に、むしろ資産の運用状況の予測が困難である。とりあえ ずはこういった形を立てますけれども、中期計画の見直しに合わせ、累積欠損計画とい うものは随時見直すということで、全体セットでお願いできないかと思っています。 ○都村委員  今の被共済者の関連で発言します。2007年問題というのは、大企業等の定年60歳を想 定して2007年と言っていますが、中小企業で働く労働者の場合、定年というのは大企業 と同じなのですか。平均的な退職年齢などお聞かせください。 ○宮本勤労者生活課長  まず、この制度に加入されている皆様の退職者の方の年齢分布はわかります。それで 見ると、60歳が退職時の年齢としては一番多いです。それでも加入している年代、60歳 に新たになられた方の中で、60歳で退職される方の割合は概ね50%ぐらいです。 ○都村委員  60歳で退職する方がですか。 ○宮本勤労者生活課長  はい。そのあと、60歳以降になられても引続き働かれて、退職時の年齢が60歳前半ま で緩やかに落ちてはきますけれども、64歳ぐらいの方でまだ2万人ほどの方が在職され ています。緩やかにそこまで下がってきますけれども、スパッと60歳で断崖のようにい らっしゃらなくなるということではありません。65歳以上の方でもまだまだ、非常に多 くの方がご活躍され、70歳近くなって辞められる方も多いということです。 ○都村委員  そうすると、リタイアする時点が違ってきますね。大企業と同じように、少しずつず れてくる可能性もあるのでしょうか。 ○宮本勤労者生活課長  ある程度ご年配の方については都村委員がご指摘のように、60歳でももうちょっとバ ラけてくるという形になります。中退制度の場合にはもう1つ、退職者の方の動向とし ては、やはり中小企業の制度なのでもう少し早い段階で辞められる方も結構いらっしゃ る。必ずしも退職される方が一局集中的に、大企業のような勤務状況というか、長期雇 用のような分布にはなっていないというものです。 ○齋藤部会長  ほかにありませんか。 ○佐藤委員  同じような意見を申し上げますが、中小企業退職金共済というのは老後の生活に備え るという人もそれなりにお見えになるけれども、平均すれば10年で辞めていく。10年で 辞めていくということは、次の仕事を探すというか、それに備える性格が非常に強いと 思います。本格的な退職金制度にはなり切っていない。例えば、大企業で2,000万、 3,000万ももらわれる人とこの人たちとを比較すれば、全く規模が違うと思います。そ の意味で言うと、今おっしゃっている団塊の世代の一斉退職という問題はあまり考えな くていいのではないか。そのことが1つです。  それから、予測が困難ということを言いながら中期計画の中で欠損を解消していく。 あのような矛盾したことを文章に書かれるというのは納得できません。確かにどのよう なエコノミストでもなかなか当たらないのだから、それは仕方がないと思います。そう いうような形で、実質的にはここの審議会が中期計画をも決めてしまうと理解していい のですか。 ○宮本勤労者生活課長  中期計画の中にはほかにもいろいろありますので、全てということではないわけで す。その中でかなり大きなウエイトを占めることになるであろう累積欠損金の問題につ いて、ある意味では独立行政法人は言われたことをする。独立行政法人が判断するとい う仕組みではありません。ここでご審議いただき、決定したことそのものが独立行政法 人の勤退機構の運営に非常に大きな影響を与えることは確かだろうと思います。 ○都村委員  計画的解消の第1期の初年度というのは何年から始まるのですか。 ○瀧原課長補佐  今年度を考えています。 ○都村委員  平成17年4月から始まるということですか。 ○瀧原課長補佐  この年数の考え方は、最初に「9年」と書いていますが、これには実は今年度を入れ ています。ですから平成16年4月から始まる、今年はもうこれだけ始まっているのです が、それを入れて16、17、18、19という4年間、それからそのあとの5年間、今書いて いる案はそのような形で書いています。 ○都村委員  そうすると、もうスタートしているわけですね。計画的解消のためには、先ほどから も出ているように収益の改善、経費の節減が大きなポイントになると思います。それを 図っていかなければいけないのですが、それぞれについて、どのような具体的方策でい くかというのはこれからなのですか。それとも、もう計画に合わせて具体的な方策は考 えられているのでしょうか。 ○宮本勤労者生活課長  まず1つ、経費の問題については独立行政法人が中期目標を設定する際、政府全体で ある程度統一的な削減目標が示されています。その意味では、経費についてはかなり厳 しいものが既に用意されています。  仮にこの目標が設定された場合にどのような変更が必要になるかという、準備側の問 題ですが、これについては作業としては運用の見直しは当然必要になろうかと思いま す。先ほど申し上げましたように、機構における現在の運用はおよそ3分の2ほどを国 債など、債券の満期保有と言われている運用をし、残りについては信託銀行などに委託 して、ハイリスク・ハイリターンというか、少しリスクを取ってより高い収益を獲得す る運用をしています。その際、株式に何%当てるのか、外債や外国株式にどのぐらいに 当てるのか。現在は決められたルールに従って調整していますけれども、そのルールで 示された目標を達成できるかどうかを検証し、必要があれば割合の変更をしなければな らないということになります。 ○堀越委員  欠損金を解消するのは早いにこしたことはないと思います。これは個人的意見と言え ばそうなのですが、案1という9年間、この辺が民間ベースが限度だと。  民間ベースで考えても、私の仕事上で考えても、会社などの場合だと10年間は読めま せんから。この辺が1つの接点になると思います。  もうすでにこの計画は始まっているということですから、平成16年12月分が出るよう なお話を聞いたことはあるのです。平成17年3月までいけば2,600億が2,000億になるの かということの予定と、それから、4頁の表を見たとき必ず利益が出るという感覚で見 えるのです。3%から1%に下げましたから、それでいいのでしょうけれども、もし、 逆に回ったときは、何か資料などで検討されているのかどうかお伺いしたいのです。 ○宮本勤労者生活課長  今年度の収益の状況については前回の審議会で報告しました。一方で資産の残高の問 題と、他方で責任準備金の計算をしないといけません。今日は提示できませんが、次回 の段階で推定値はお示しできると思っております。  2番目にご指摘のありました、利益がこれだけ出なかったときというご指摘ですが、 例えば298とか、192、141、112という単年度の解消目安を達成するためには、右側の欄 の利回りが必要だということです。これは目安と申しましたように、私どもが今提案申 し上げているのは、目標そのものは5年間のトータルの数字ですので、単年度の数字 は、それを5で割ったものを、平均的に返すのだったらこのぐらいの金額と。ただし、 その年によって当然利回りが良かったり悪かったりするときもあろうかと思いますが、 それをおしなべて5年間で通して見たときに1,491とか、959といった数字で調整する と。その意味で単年度の目標値298とか、1%という数字はあくまでも目安の数字とお 考えいただければと思います。 ○堀越委員  マイナスはないということですか。 ○宮本勤労者生活課長  マイナスは、可能性としてはあると思います。 ○成宮委員  これまでは、それがあったからいいのでは。 ○松井勤労者生活部長  あくまでも先ほど言われた目標と計画のような予測の話ですが、資産運用というの は、ここでいう命題としては「安全かつ効率的な運用」ということをいたしますが、い ろいろなことで剰余が出ない年もありましょう。しかし制度を運用する限りは、必ずや 「安全かつ効率的に」を目標にし、どれぐらいの運用収益を上げるべきということは掲 げ続けなければいけない。予測できないから何も目標を立てないということはないので あって、目標を立てるというのは、どのぐらいの収益を上げていこう、運用利回りをど のぐらいにしようではないか、ということをやることがポジティブであり、それを独法 化の中で、独立行政法人の一般的命題として掲げました。  ところが個別に見てまいりますと、このように既に特殊法人から独立行政法人にする までの赤字があった、累積欠損があった。そのものについては累積欠損をなくすという 方向性をもって、どうなくしていくかをもう少し具体的に書いてくれと、定めるべきだ という命題が明確にされましたので、単にそれからの資産運用を安全・効率だけではな く、赤字部分をどうするかということまで目標設定をしなければということで、やろう としているわけです。その中で、今言われましたように利益が出るとすれば、これくら い毎年解消していけば、この年度で赤字累積が解消されるというモデルを作りました。 単年度は言われたように全然利益が出なくて、逆に、さらに累積欠損が拡大すること は、可能性としてはなくはないと思いますが、それらを安易にしてそういうものにする のか、安全かつ効率的運用を目指しいろいろなことをやった上で、世の中全体としてや むかたなくなったときに、増えるかといったレベルの問題かと思っております。 ○田村委員  累損を解消していかなければいけないという方向はわかりますが、言われるように9 年でやる必要はないと思っております。運用による利益確保の部分でどのぐらいのリス クを負うかということ、母集団をどのぐらい大きくしていくかということ、これをもう 少し計算上は入れる必要があるのだろうと思います。  2つ目は、営業活動による加入者の拡大のようなところです。拡大と削減はある程度 評価を受けながらやっているということですが、先ほど成宮委員が言われたように2007 年問題がありますが、逆に、今は定年を60歳から65歳に延ばすことは、大企業は義務化 されてくるわけです。そうすると残存は増えてくるのではないか。さらに、会員さん、 加入企業数が増えてくればポータビリティが効くわけですから、辞めてまた新たに入る のではなくて、持ち運びができるようになれば増えてくる。そういうものを増やしてい くこと自体が、辞める人を減らし、中に残留を増やしていく。そして母集団を増やすこ とになってくるので、そのことの計算も要るのではないか。  加入者を増やすという意味でいうと、3つ目では、商品としての魅力が必要だろうと 思います。売る商品に魅力がなかったら加入者も入って来ないわけですから。そのとき に安全性と利回りということになりますので、その辺も加味していかないと。ただ運用 と累損解消だけではなく、いかにパイを増やし加入者数を増やすことのほうが中小企業 の退職金を考えるときもっと大切ではないか。私どもの計算で、賃金でいくと、大体 1,000人以上と100人未満でとりますと、8ポイント弱ぐらいの格差があると言われてい ます。それに一時金、賞与を入れると50ポイントぐらいの差があります。要は月給と年 俸、さらに生涯賃金で見ると倍以上の差が出てくるわけですから、むしろ安全性や利回 りのところで有利にし、会員さんを増やす努力があって、その結果として累損が解消で きる方向を目指すほうが中退金の本筋ではないかという気がしますので、是非、その辺 の考慮をお願いしたいと思います。 ○小山委員  今のと先ほど佐藤委員が言われたことと関連するのですが、この委員会は何を決めら れるのかが1つ疑問です。先ほどの「目標と計画」というところでいきますと、ここで 目標の議論をするとすれば、厚生労働大臣が定める目標について議論していると理解し てよろしいのでしょうか。ここで議論をしてそういう目標を定めていく、そのための議 論なのだということでしょうか。 ○宮本勤労者生活課長  大体そういうご理解で結構です。もう少し厳格に申し上げますと、資料1の9〜10頁 にありますが、法律条文に基づき説明しますと、この審議会で例年、この時期にご審議 をお願いしているのは、ご案内のとおり付加退職金の支給率そのものの決定です。その 仕組みは、9頁に法律の10条が退職金に関する規定で、このうち2のロが付加退職金の 根拠規定で、付加退職金をどう計算するかは4で具体的に定めております。  主要部分を読み上げますと、「付加退職金の支給率は、厚生労働大臣が、各年度ごと に、厚生労働省令の定めるところにより、当該年度の前年度の運用収入のうち付加退職 金の支払に充てるべき部分の額として算定した額を」、つまり省令で付加退職金の原資 の額を計算するように定めることになっていますが、「その額を仮定退職金」、今辞め られたら退職金はどのぐらい発生するかという退職金額、仮定の退職金総額で割り算 し、率を計算し、それを基準として「当該年度以降の運用収入の見込額その他の事情を 勘案して、当該年度の前年度末までに、労働政策審議会の意見を聴いて定めるものとす る」となっております。  最終的にその率について、省令で定められた方式に基づき計算された率、その率につ いて更に諸般の事情を勘案し、ご審議いただくとなっております。その場合、率を計算 するときに分母は、仮定退職金ですから自動的に決まってしまいますが、分子は省令で 決めることになっております。その省令の内容は10頁にあります、中小企業退職金共済 法施行規則第17条になります。ここで建議で議論いただいた内容を書いてあるわけです が、利益の2分の1、つまり給付経理の損益計算における利益見込みの2分の1とする となっております。実質的には率についてということですが、利益をどう計算するかが 事実上、率の計算にほぼ等しくなってくるということです。  率は労働政策審議会の意見を聴いてということですから、利益についてどう計算する か、あるいは利益について、次の議論と少し関連する話かもしれませんが、発生する利 益をどういう形で付加退職金に充てるのかが、結局労働政策審議会の意見を伺いながら となりますので、形式的に誰が決めてということでやるとするならば、厚生労働大臣が 計画を定めることになろうかと思います。その前提要件として、利益についての考え方 について審議会の意見を伺うことになるのではないかと思います。 ○小山委員  付加退職金についてこの場で審議することは定められたことですから当然そうだと思 います。目標設定については、ここでどういう目標を立てるのかを決めていいのか、今 のお話では納得できませんね。  もう1つは、先ほどの議論であったとおり、利回りをどうするかだけではなく、いか に利益を出すかという意味合いでいくと、加入の促進から何からさまざまな計画がある わけです。そういうのを総合し、きちんと収益を上げて、それを欠損金の埋め合わせに していくのかということだろうと思うのです。単純に利回りをどう上げるのかという話 だけでこの数値が議論されているものですから、少し違うのではないかという疑問を感 じているのです。今の説明ではちょっと納得できないのです。 ○菅井委員  関連してですが、非常に議論しにくいのは、4頁の1、2、3、4の中で、ここのど れかに確定をしましょうという1つの前提があると思うのです。そういう中で3頁の (3)では、「将来の経済情勢等を予測することは困難であるから」ということになっ てくると、この累積赤字を早いうちに埋めてしまいたいという気持を感じるのです。そ うなってくると、今、小山委員が言われた付加の部分との関連が出てきてそれを解消す るために、それを埋めるのに単年度なのか、あるいは5年間あたりでもいいのですが、 特に単年度、埋めるための収益が出なかった場合、付加のほうに今の2分の1を回す部 分を減らしますよとか、そういうところに関わってくるので非常に議論しにくいので す。  最初から、例えば案3なら案3ですと、経済見通しが悪いから、これからはっきりし ないから安全なところで少し長くなるけれど、安全な穴埋めのベースをつくっていきま しょうということなら少しわかってくるのですが、何となくその背景にあるものが、早 いうちにやりたいという気持を感じる、見え見えなものですから、その辺、もしありま したらお聞かせいただきたい。 ○松井勤労者生活部長  そういう考えは持っていません。(3)の文章の流れは予測困難ということで縮めよ うといっているのではなく、ここの後段で言いたいのは、ある期間にいくらとできない ので、非常に横着ですが各期間均等に解消させていただけませんかと。要するに単純に 割り算することでいいでしょうというくらいの話です。長い期間でどのぐらいの赤字を 解消することを決めて、あと、各期間はとりあえず割り算させてくださいと。単年度ご とにいくらいくらというのはとても難しい。先ほど言いましたように利益が出る年、出 ない年もあったりするのですが、なべて長い期間、5年ぐらいの範囲でこれぐらいの赤 字解消はできないかと。あるいは、9年、10年、15年、長い期間の中でこのぐらいと。 そこで言われたうち単年度で収益が出ないときです。これは累積欠損の赤字解消もでき ませんし、付加退の配分も、利益が出たときにやるというルールですから、配れないの です。だから、いずれも累損が重なるのです。そうすると、それを翌年度以降に平均値 でやっているけど、解消できなくなるから見直して、少し多めにして解消する、作り直 しをしなければいけませんねということわりを解いているだけで、それぐらいの大ざっ ぱな考え方というか、予測できないからそういう考え方でよろしいでしょうか、という ことを問いたかったということです。  権限そのものについての基本的な話に戻りますが、この審議会は労働政策に関する重 要事項について調査・審議していただき、意見をいただいて、行政当局としてその意見 をいただきながら運用していく。そのときに、必ず「重要事項について」ということが かかっているのです。もう1つは、法律に書いてある事項で労働政策審議会に諮れと書 いてあることは必ずやらなければいけない。この2つでお願いしていると思います。い つも議論になるのは、皆様方にポイント、ポイントを聞くのではなく、こんな意見を聞 くのだったら全部をきちんと説明して、全体をわかるようにしてやるのがいいのではな いかというお話もあるのですが、そこについては重要事項の話を聞かせていただく際、 あるいは、法律で定めた事項についてご意見をいただく際に、客観的情報としてなるべ く可能な限り言わせていただいているつもりです。それを常時やるということは、今言 った審議会の法律の命題から反して、できないのではないかというところがあるという ことです。  かつ、あくまで意見をいただくということで、ここでは決定権があるということでは ないと思っています。重要事項について調査・審議し意見をいただいて、責任は行政当 局であるし、この場合は目標を立て具体的計画策定の上での業務推進は独立行政法人の 機構が持っております。ただ、それを運用するに当たっての大枠なりについての設定で 重要な判断を開示していただくという理解でおります。 ○菅井委員  そうすれば、見通しの立たないところで、あまり無理な計画をすることはかえって危 険ですね。 ○松井勤労者生活部長  そういうご意見もありますし、そういうことにもなります。 ○菅井委員  確かに、無理な目標を掲げて努力をしてもらうことのほうが、どんどん改革も進む し、うまくいくだろうという考え方も一部にあるかもしれませんが、しかし、これだけ 長期的に、きちんと安定的にやっていかなければならない、とりわけ中小企業の退職金 ということになってみれば、無理をして、どこかでまたそれを手直しするために、更に 無理をしなければならない状況を来たさない、安定的な考え方が必要ではないかと思っ ております。 ○都村委員  いろいろご説明をいただいているうちに明らかになってきたわけですが、計画的な解 消について考慮すべき点は、当然のことながら第1点は、将来の経済情勢です。確か に、ここにも書かれているように予測するのはなかなか困難ですが、先ほどご説明いた だいたベンチマーク収益率を平成13年と平成14年と平成16年を比較しますと、国内債や 外国債は大きな変化はなくプラスです。株式については、特に外国株式が2、3年前に 比べて、相対的に良好になってきています。  第2点は、制度の加入状況です。これは平成15年度末で約60万事業所が契約してい て、被共済者が約520万人いらっしゃる。ただ新規加入の共済契約者数が、やや減少し ているのは少し問題だと思いますが、先ほどから出ていますように、さらに加入促進対 策を行うとか、各共済事業に充てる経費で節減できるところは節減していくことが求め られているわけです。  第3点は、やはり健全な資産運用を行うということで、先ほども説明がありましたよ うに、いろいろ運用の配分を変えるとか、そういうことを行う。これらの3つの点と、 さらに実態として受給者の平均掛金、納付年数は一般が9.6年、林退が12.3年を考慮に 入れると、4頁の案で、案2、案3が妥当なのではないかと思います。 ○齋藤部会長  使用者側から、何かご意見ありますか。 ○中山委員  このような多額な累損がありますが、私どもの立場からしますと累損の解消が第一で す。この案を拝見しますと第1案は9年、この方向で私は賛成したいと思います。1日 も早く累損の解消が基本です。これはあくまでも、お作りになられた推定値だと思いま すが、この辺が妥当ではないかと。私どもは小さい会社ですが、累損が3年続いたら会 社はほとんど倒産しています。銀行の融資は受けられませんし、これは国のほうで作ら れているシステムですからいいのでしょうけれど、やはり共通分母の累損の解消がまず 基本です。皆さんいろいろご意見があると思いますが、推定値としての目標値ですか ら、それはできるのではないかと、9年ぐらいで。 ○佐藤委員  私は3か4でいいのではないかと思います。要するに予測は立たないということで す。それと、責任準備金は何と3兆円も持っています。それは一般の中小企業とか、我 々が知り得る経営の問題とは、かなり違うということです。10年で辞めていく人たちが 圧倒的多数というか、平均値がそこへくるのでしょうが、そういう中で3兆円が、これ は計算上必要なかったということだろうと思うけれども、これの再計算をやってみる必 要があるのではないか。これは絶対触ってはいけない数字だとは誰も言っていないし、 課長も言っていないと思うのです。また、流れの中で変わっていますし。  計画を立てればいいのだというのなら、3か4を決めておけば皆さん納得なさるので はありませんか。 ○松井勤労者生活部長  非常に具体的な数値を踏み込んでいただいて有難いと思います。実は、この累損解消 についての具体的計画を行政当局として真剣に考えているのは、今まで特殊法人で直接 大臣が特別会計からいろいろな補助金を出してやるという運営方式のやり方をやってい る間は、ある意味で、大臣責任、国の責任ということを強く言って、そうすると運用 が、ある意味では憂慮されていたという状況があったのですが、独立行政法人に変える ことでどういうことが起こっているかと申しますと、第一義的な運用主体は機構の理事 長というか、機構のトップに運用責任を任せる。そして国は、運営費交付金というか、 必要最小限の運営費を渡して、その中でうまくやっていきなさいよということで、この 法人に任せる組み換えが行われたという認識でおります。  そうすると、確かに国がつくり、国がいろいろな補助金を出してやっていた運営が、 やや民間的な運用にだいぶ変わってきている中で、この機構の代表者が、いろいろな意 味で責任を問われるシステムが構築されました。資産運用に関しても、効率的な運用、 安定的な運用を国以上にやるということもあり、国のほうでつくった累損ですが、今 後、新しくシステムを変えたのだから、それもなるべく民間に近い形で、赤字のない組 織体として健全に運営してくれと。そして5年間なりの計画を立てたら、その度ごとに 理事長以下管理者の責任を問うという体系に変えてきています。責任を問う以上は、こ ちらとしても厳しくという言い方もありましょうし、ある程度赤字を解消し、効率的な 運用ができるように、いろいろな設定条件を改善していかなければいけないと考えてお り、今後この制度が、より発展するためにという点で、まだまだ今後やっていくべき点 があると思っています。  それは言われたように、対象者の話や給付金の、退職金カーブをどうするとか、ポー タビリティを高める。これはいずれも法律事項です。これは別途国会に諮り、そういう ものを改めるということをやりつつ、今ある中で、より健全な運用と赤字解消をやらな いと。今の段階で目標を設定しなさいと評価委員会で、今具体的目標は法人が設定して つくることになっているのですね。我々は、しなさいということを抽象的に言ったこと になっているのです。法人自身が計画を立てていないという状況になっていますので、 立てなければいけない中で、枠組みを是非とも設定しなければならない。そして、赤字 が続く期間が長ければ長いほどいいというものでもないということになってしまってい る。つまり民間的な運用をするということで、一般的には赤字期間が短いほうがいいと いうのが言われるとおりです。  しかし、これだけの資産規模の中で相当長期にわたらないと解消できないという条件 を許してきた状況がありますし、安定的な運用をやれ、厳しくやれというのを、どの辺 で調和させるかが問題であります。ご指摘の中で期間に関して言えば、9年では難しい が14〜24の間でというご意見が出ましたので、非常に有難いことであります。この中 で、どの辺りが適当かを考えさせていただきたいと思います。 ○小山委員  少し話がすっきりしないのはどういうことかと言うと、先ほどの、ここは何を決める のかという問題と関連するのですが、何で累積欠損が出たかというと、予定運用利回り と平均運用利回りの差がかなり長い期間あったわけで、原因はほとんどそれです。その 結果、これではまずいということで労働側もかなりの決断、あるいは組合員からの批判 を受けながらも1%という予定運用利回りに下げることを確認してきたわけです。これ がもうこれ以上、累積欠損を増やさない1つの再建策といいますか、これからの道とし て選んできた方針だったわけです。  その方向に向かって、ようやく日本経済も回復基調に入ってきている、この先を見て も過去10数年の異常なデフレの時代はもう終わるだろう、という大方の予想の中で、こ れから独立行政法人として機構がどう運営していくのかということになるわけです。そ うすると、ここで変な計画、いくらという枠を決めるのではなく、むしろ機構のほうが 1%に下げた利回りの中で、どういう計画で積極的に利益を増やしていけるのかを考え てもらうのも機構の役割、あるいは民間手法を取り入れた独立行政法人としての役割で はないかと思うのです。にもかかわらず、ここで予測困難な数字を入れて、部会の中で 枠をきちんと決めてしまうというのは、一体どういうことかなというのが、私は非常に 腑に落ちないところで、そのところをもう少しご説明いただけないでしょうか。 ○松井勤労者生活部長  今のご意見は、起こっている事象の事実の半分を捉えているかなという気がいたしま す。累損が拡大したのは確かに言われるとおりで、予定運用利回り、つまり法定してお りましたので、これぐらいの給付をしなければと、つまり国会で定めていただく、これ だけの給付をやると。ところが実際上の運用がそこまでいかない中で、これだけの高い 給付をすることを約束し続けたあげくが、この累損になったという計算上の問題があ る。それで、その給付を下げるタイミングと、逆に資産運用をしっかりやらなければい けないというタイミングのずれが、ずっと起こっていたのは事実です。  資産運用について当時特殊法人である中退に、どういう命令をかけていたかという と、それは審議会ではないのですが、制度発足当初から国としてやる資産運用だから 「安定運用」ということを強く申しておりました。「効率運用」ということはほとんど 言っておりませんでした。安定する運用先を重視しているがために利益が上がる運用が なかなかできないということもありました。それらを、ある意味で少しずつ解消してき ているという中で、給付カーブを下げるという決断をしました。それはここでご審議い ただきました。そして、給付カーブについては、実は法律でいちいち定めていたのを政 令というか、機動性を発揮するために政令に委任するということまで落としてやりまし た。  そして資産運用に関しては、それまで内部のルールで安定運用ということで、政府が 発行する債権を中心にと言っていたことを、この機構自体で民間の必要な所に運用でき るということで、運用手法も、利益追求型ならばということで運用能力を拡大すること をいたしております。言われたようなことをすべて、総合的にやっていかなければいけ ない状況の中で今はどうかということです。1%に運用利回りを下げたときの話は先ほ どありましたように、まさに、これ以上累損を増やさないという決断の下にいろいろ議 論して、させていただいた。そして、そこまでやったのだから利益が出れば双方に分け て累損解消と、それまで貢献した方への付加退を出そうということでやってきました。 そこまでが合意だったと思います。  そして、運用する中で今何が起こっているかというと、実は、責任主体が機構になっ たために、今言われ始めているのは、今ある累損をもう少し早くなくすことにもっと力 を入れてくれと。決定して拘束するのではなくて、なくすという年次計画を立ててやっ てくれということを独立行政法人を監視するシステムの中で言われて、行政当局もやら ざるを得ない。だから目標を書いた。具体的計画は、まさに機構にやりなさいというと ころまできているわけです。その機構に策定してもらう計画の枠組みを、ここである程 度議論する、ご意見をいただくということでこういう例示をしております。これをどう するかは、やはり機構になるわけです。ここでアロアンスをいただくことがすごく重要 なことではないかということで、お諮りをしているものです。 ○齋藤部会長  この議題ばかりをやっていてもどうかと思いますので、とりあえず議題1の議論は、 これくらいにしたいと思います。皆様方のご意見を伺いますと、累損を計画的に解消す ること自身については、大体そのような感じでおられるのではないかと思いますが、計 画期間をどうするとか、具体的にどういう手段があるかなどは、もう少し事務局で、今 日いろいろご議論が出ましたので、これを基にして考えていただき、次回にそれを議論 するということにしていただきたいと思います。 ○小山委員  今のまとめだとちょっと引っ掛かるのです。累損をなくしていく、それはないほうが いいのはわかるのですが、民間企業の累損とこの制度の累損は全然意味が違う。そして 実際上、今累損はどんどん縮小していく予定利回りの設定にしたわけですから、という 過程に今あるということです。一般的に累損はないほうがいいというのは一体どういう ことかをもう一度問いたいのです。ここの場合の累損というのは、一体何を指すのか。 このまま運用をしていると、例えば破綻することが予想されるような累損なのか、ある いは、このことによってどういう障害が起こってくるのかを、もう少し整理していただ きたいのです。 ○松井勤労者生活部長  ここでいうことは民間の中でも、いわゆる一般の製造業等の事業を営む企業体と違う というのは言われるとおりですが、あえて言えば共済制度ですね、生命保険共済や損害 保険、特に生保が多いと思いますが、そういった総合会社であれ株式会社であれ、そう いうものを運用している会社に限りなく近い状況だと思います。ある集団が一定の事象 が起こって、必要となる給付額、総額はこれぐらい予定されます、それに見合うだけの 資産を今保有しているでしょうかという中で、ある意味では机上で想定したときの給付 と、現在持っている資産とのバランスがとれているかというものだと思っています。で すから、今起動するためにではなく、仮にこの集団がやめたときにどのぐらいの給付が 要り、それに十分な資産を持っているか。それがうまくいかないということになれば、 民間の商業ベースで申しますと、その集団は頼りない集団だ、だから新たな加入者を募 集するときに、なかなか安定的な運用が期待できないから、その会社は避けて別の優良 な会社にいくということです。先ほど言った、適用とかいろいろなものを拡大する、被 共済者を拡大しようとするときに胸を張って宣伝できるような組織体でないと。国がい ろいろな形で運用等を応援していますから、別の信用力はありますよということはもち ろん言えますが、それプラス、さらに資産運用が健全だということが言えれば、もっと 中小企業等にも自信を持って加入を勧められるぐらいの意味付けはあると思っておりま す。 ○佐藤委員  独立行政法人になって機構の理事長、代表権を持っている方に責任がいくと。その責 任の中身は一体どういうことですか。 ○松井勤労者生活部長  どういうことといいますのは。 ○佐藤委員  責任がそちらにいくという。 ○松井勤労者生活部長  運用について一義的な責任は理事長以下に。 ○佐藤委員  だから、その責任は何なんですかと聞いているのです。 ○松井勤労者生活部長  この場合であれば、資産の安定かつ健全な運用、合理的な運用という。 ○佐藤委員  言葉だけですか。 ○松井勤労者生活部長  言葉であるし、もし責任をとらせれば、今まで以上に、多分、任命等に当たってその 方の任期中を評価して、次の任命に相当に影響するというような形になってくると思い ます。 ○齋藤部会長  ほかの評価委員会の目から見れば、こういう組織自体がいいのか、こういう制度自身 がいいのかという議論になるのだろうと思います。理事長の責任も当然ですが。 ○成宮委員  財政審もそう言っていますね。 ○齋藤部会長  そうです。多分、そういう議論を根本において、評価委員会などは言っている。各独 立行政法人というのは、それほど厳しいものだと、厳しい制度に変わったのですという ことだと思うのです。 ○佐藤委員  責任という言葉がどこまでなのかと聞いているのは、我々は労働側を代表して出てい ますが、我々が、例えば、この問題以外においても組合運動に誤りがあったとか、そう いったことに対しては、結果責任を負わなければいけない立場でみんな出ている。この 場も、ある意味ではそういう意味なのです。はっきり言って、理事長さんが引責される とか、そういう意味合いまで聞いているのですが、そこはどうなのです。 ○松井勤労者生活部長  そこは大臣でないので言えませんが、今度独立行政法人にしていくという基本的な考 え方の中で、一定の目標を達成しないと次の責任者の任命等も、当然運用状況を配慮す るということを言われております。さらに、部会長が言われましたように、そうした制 度そのものがうまくいかないのであればもう一度見直すということで、世の中のいろい ろな仕組みについて今まで以上に点検をすると言われております。今から5年という か、4年ちょっとですが経ってみて、この制度を一応法律で決めて、審議会の意見を聴 いて法律で決めた枠組みですが、それがうまくいかなければ、その枠組み自体がまずい のか、その任務に当たった方の手法がまずいのかということを改めて問うということを やると。従前、ややもすればあまり行われなかったという評価の中で、今後頻繁にやる ということになっております。ですから答えとして、理事長の責任を問うて、次の期間 は任命しないというようなこともあり得ると思っております。 ○齋藤部会長  時間もそろそろになってまいりましたが、どうしましょうか。とりあえず議題2の資 料説明だけ、簡単にお願いできますか。 ○宮本勤労者生活課長  時間もないということですので簡単に説明します。資料2の2頁です。仮に累積欠損 金の解消に向けての目標を設定したとした場合に、是非ともこの審議会でご審議をいた だきたい事項を説明するペーパーです。1.現行の付加退職金の支給率の決定に当たっ ての考え方については、この資料2の6頁以下に、平成14年の建議のエッセンス部分と いいますか、中心部分を付けています。そのときの審議についての議事録も資料4とし て付けています。  建議に至るまでの部会の審議の概要をまとめますと、3つのマルが非常に重要な要素 としてあるのではないかと思っております。予定運用利回りを下げて利益が発生したと きには、一方では被共済者に還元するべきだという意見、それと累積欠損金の解消に充 てるべきだという意見、利回りが非常に下がってしまったので、付加退職金による魅力 度を上げるということも重要ではないかという意見があったということで、現在の6頁 にありますような建議となったものです。  しかしながら、2.累積欠損金の解消に向けての目標設定に伴う検討事項では、仮に 累積欠損金の解消について具体的な目標値を設定した場合に、5年間なら5年間で達成 するときに、単年度ごとにどういう形でそれを処理するかという議論に響くということ ですが、一般の中小企業退職金共済制度に累積欠損金が存在し、その解消に向けて目標 を設定したとしますと、利益の2分の1が解消の目安額に、これは単年度の目安額です が、それに満たない場合もあり得るのではないか。この場合に現行の定め方、今の省令 あるいはバックにあります建議の考え方に基づいた省令ですが、現行の定め方では目標 の達成そのものと、利益の2分の1を付加退職金の原資の基準額とすることが両立しな いことになりますので、付加退職金の原資の基準額を定めるに当たっての調整を、どう 考えたらいいのかを是非とも審議願いたいので、検討事項としてここで書かせていただ きました。  例えば、利益の2分の1が解消目安額に満たないとし、極端な1つの例として、仮に 目安額を確実に充当することを優先したとすると、付加退職金の原資の基準額が利益の 2分の1よりも少なくなってしまう。一方、仮に付加退職金の原資の基準額を利益の2 分の1にきっちり決めたとしますと、その年度における目安額の解消ができなくなりま すので、累積欠損金の解消は将来に先送りといいますか、期待することになりますの で、計画期間内での目標の達成が困難になる可能性がある。これは双方ともどちらかに 片寄せしてしまうという、非常に典型的な例としてこういうことになってしまう。それ をもってして、目標の達成そのものと、利益の2分の1を付加退職金の原資の基準額と することを両立させることができないと説明したわけです。この調整について、どうい う考え方に立つべきかについて審議をお願いしたいということです。  時間もありませんので残りの資料は、何回かご覧いただきました省令と建議の概要で すので、これについての説明は割愛させていただきます。 ○齋藤部会長  ありがとうございました。では、どうしましょうか。 ○佐藤委員  私、初回のときにも申し上げたように、この2分の1、2分の1を決めたときは皆さ んご存じのとおり、非常に激しい討論もやったわけです。それで1%に下げるのは非常 に苦痛だったわけですが、それでも何とか利益が出れば付加退職金に2分の1、累損の 解消に2分の1という合意ができたわけです。不安材料を2つ書かれてしまうと、これ も決めろというのか、ということになるので、非常に乱暴な書き方というか、本音の書 き方というのか、ちょっと受け入れ難い書き方ですね、私から見ると。  前回の議論は議事録が付いているから、でも、臨場感からいうと、それはもっと激し かったですよ。何せ1%に下げたわけですから。それでも累損の解消のためだという説 明がいっぱいされたわけですよ。運用が悪いということが盛んに言われた。だから、今 日議論したように、累損の解消を24年でやるなら24年と決めていただければ、それはか なりバラつきが楽になる。短期に決めれば付加退へ行くものが少なくなるというのは誰 が考えてもわかる話であって、これは平行して議論しないとちょっと。前の議題は終わ ったわけではないからあれだと思いますが、十分そこは時間をとっていただきたいと思 います。 ○宮本勤労者生活課長  乱暴な書き方という、その点、私ども文才がないので申し訳ないのですが、仮にする ならばという意味で非常に極端なケースを挙げたので、こういうことになっています が、別にどれにしていただきたいということを書いたつもりはありませんで、審議の結 果かなと思っております。 ○齋藤部会長  特段、今日言っておきたいことがありましたらどうぞ。 ○小山委員  私どもも一言申し上げておきたいと思います。1%に下げたと今佐藤委員が言われた 経過でいけば、これで累損は減らしていけるのだということで合意形成をしてきた経過 があったということ。本来でしたら、この2分の1を付加退職金に充てるということを 前提にして、何年の計画だったらやっていけるのかという試算をしていただくほうが、 本来の筋だと私は思っています。しかし、逆に目標ありきということだとすれば、でき るだけ長期の設定をせざるを得ないのかとも思いますが、これはこれからの議論という ことでしたら次回以降で、その辺については議論していきたいと思います。私らの意見 は、そういうことだ、ということだけ申し上げておきたいと思います。 ○堀越委員  今の目標ありきですが、やはり目標はきちんと設定しないといけないと思います。20 何年とかという目標は出せませんから、その辺は慎重に決める。ただ、上のほうからい ろいろ言ってこられると、私は東京税理士会厚生年金基金の理事長をしています。機構 は違いますが全く同じで責任を問われる立場にあります。この間、1年半かけて付加加 給を65%カットしました。これには3分の2の加入者の同意がなければいけない。非常 に難行しましたが、我々の職業の看板に傷つけられないものですから、つぶすわけにい かず。この機構の理事長さんも同じだと思うのですね、これは余談ですが、寝られない 日がたくさん出てくると思います。 ○成宮委員  ここの書き方は逆にいうと、利益の2分の1が解消目安額に満たない場合と書いてあ るのは、むしろ控え目というか、えらく慎重な書き方で、そもそも利益が出ない、1% に下げたとしても、累損をつぎ足してしまうということも起こり得る。だって過去はそ ういう状況もあったわけですから。そういう意味では両方の可能性もあるわけです。  その意味では、先ほどの議論に戻ってしまうかもしれませんが、独法と国の関係とい いますか、あるいは独法化を国がいろいろな機関に対して進めていった狙いだと思うの ですが、やるべきことは国が決めるのだけれども、それを具体的に、どううまくやる か。それをうまくやっていくためには、若干給与、国家公務員に準ずる身分で給与等も 制約があるというのも、場合によっては外してうまい運用を考えていくとか。多くの独 法に取り入れられていますが、役員さんの給与というかボーナス部分に相当するところ は、業績によってゼロになったり割増しになったり、それを規定上入れている所もあり ます。そういう形で運用していくことによって、むしろそこの運用の弾力化で国が求め る目標を、いかにうまく達成していただくかを期待した組織というか、それをつくって きたわけです。  それからいうと、そのことを最大限に活かして独法の運営・運用に求める目標値は、 なるべく意欲的な目標値を求めて、それを目指して目一杯頑張っていただく。もちろん 国の側も、それを遂行していただくためにいろんな制度面の制約が、やっぱりあります というようなことがあって、これがあるとなかなかうまくいきませんということがある 場合には、国も責任を持って制度改革を進めていただくと。これがうまく相俟っていか ないと、なかなかうまく改善が進んでいかない。これが独法化の狙いだったような気も しますので、その意味では、もちろん厳しいところはあるのですが、目標として独法に お願いをするのは、なるべく、絶対不可能なことを言うべきではありませんけれども、 かなり厳しい目標を求めていくということが重要なのかなと思います。 ○奥平委員  欠損の解消は、あまり長過ぎないほうがいいのではないかということです。資料3の 4頁を見ますと、平成3年から平成15年、10年間のこれだけの損益が出ているわけで す。長い間には必ず悪いときは結構出てくると思うのです。ですから、あまり長過ぎな いで、その都度、その都度がある程度クリアできるような数値をもっていって、あまり 長い期間でないうちに解消していったほうがいいのではないかということを考えており ます。  1つお聞きしますが、以前に退職金を一時金でもらわない人が年金的にもらって、そ ういう方たちにも付加退職金が付いていく、ということが決められたような記憶がある のですが、それは今でも続いているのでしょうか。そういうことは現在あり得るのでし ょうか。 ○瀧原課長補佐  今言われたのは年金型、我々は分割退職金と言いますが、分割でもらう場合は、もら う退職金額は退職した時点で確定します。それ以降については付加退職金のように支給 率で決まるものには入りませんが、ただ辞めた時点で、その後、いくらの利息を付ける ときに、基本は、今予定利回り1%ですから、1%をベースにして考えますが、仮に付 加退職金が毎年ある程度付くような状況ですと、それは1%以上に回るということです から、その利回りを1%より高い利回りに設定するような制度の枠組みは今持っており ます。ただ現在においては1%プラスアルファはありません。ですから、分割でもらう 場合は、辞めた時点で確定した金額について1%の利息は付けた形での10年間とか5年 間で配分して、お渡ししているという形になっています。 ○奥平委員  残金に対してですね。 ○瀧原課長補佐  はい。 ○奥平委員  あの当時、すごく市中の金利が下がりましたときに、ここに預けておいたほうがいい んじゃないか、というようなことまで出た時期がありましたので、そういうシステムが 今だに続いているのかなということをお聞きしたわけです。 ○瀧原課長補佐  現在は1%に下がっております。 ○都村委員  付加退職金制度が平成2年に創設されて、その後、7年、14年に改正されましたが、 その経緯をどう考えるかがこの問題を考えるときにあると思うのです。被共済者に適用 する退職金カーブの引下げとセットで付加退職金の考え方が整理されたわけです。経済 情勢が低迷している下では、制度を維持するためには運用予定利回りの引下げはやむを 得なかったわけです。そこで付加退職金とセットで考え方が整理されてきた、その経緯 を軽視すべきではないと思います。  それから、新規の加入を促進するのがプラスの方向に向くわけですから、そのために は、これだけ退職金があり、これだけ付加退職金がある、こういう制度ですという、や はり魅力的な制度にする必要があるわけです。そこのところを付加退職金が導入された 経緯と合わせて考えることが大事ではないかと思います。 ○齋藤部会長  ありがとうございました。まだいろいろおっしゃりたいことはたくさんあると思いま すが、それは次回伺うことにしまして、今日はこの辺で終了させていただきたいと思い ます。次回は2月18日、10時からでしたね。 ○宮本勤労者生活課長  次回の開催は2月18日(金)10時からです。場所は厚生労働省6階共用第8会議室を 予定しております。 ○齋藤部会長  それでは、今日の議事録の署名委員は、田村委員と奥平委員にお願いをしたいと思い ます。どうかよろしくお願いいたします。それでは、どうもご苦労さまでした。 6 配付資料 (1)累積欠損金の解消における目標の設定について  (1−1)累積欠損金の計画的解消について(案)  (1−2)総務省政策評価・独立行政法人評価委員会及び財政制度等審議会の指摘      (抄)  (1−3)付加退職金関連の参照条文及び独立行政法人勤労者退職金共済機構の中期      目標・中期計画(抄)  (1−4)退職給付に係る会計基準(抄) (2)剰余金の付加退職金への配分の考え方について  (2−1)累積欠損金の解消に向けての目標設定に伴う検討事項  (2−2)付加退職金関連の参照条文及び建議(平成14年1月24日)(抄) (3)中小企業退職金共済制度の資産運用等に係る現況  (3−1)中小企業退職金共済事業の収支状況及び付加退職金支給率の推移  (3−2)経済情勢に係る関連資料  (3−3)中小企業退職金共済事業に係る資産運用の現状 (4)第12回中小企業退職金共済部会の議事録 照会先:厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課 調査係(内線5373)