05/01/31 第8回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会の議事録について         第8回 職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                        日時 平成17年1月31日(月)                           18:00〜                        場所 厚生労働省 省議室 ○諏訪座長  定刻を過ぎましたので、第8回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会を開催い たします。  前回、これまでの議論を踏まえた論点整理案についてご議論をいただきました。そこ で、その結果を事務局に更に整理していただいたものに基づいて、本日もその議論を更 に深めていただきたいと思います。事務局から前回の議論を踏まえて修正した論点整理 (案)などがお手元に配付されています。これらについて説明を受けたあと、議論に移ら せていただきます。それでは、よろしくお願いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  それでは、配付させていただいた資料について説明します。資料Iの論点整理(案)は、 前回の資料から新しくなっているところは下線を引いた部分になります。前回はそれぞ れの項目に対していろいろとご意見をいただきましたので、主な事項を追加していま す。特に、本日の「教育訓練機会の提供の在り方」の部分に関連するものは3頁以降で す。例えば、「職業に直接結びつく教育訓練に対して支援するだけでなく、一般教養的 なものであっても能力開発につながっている面もあり、どのような能力開発に対して支 援すべきか整理が必要ではないか」というご意見や「職業能力として必要な能力につい て大学などの教育機関にフィードバックできるような仕組みが必要ではないか」という ご意見がありました。また、「能力開発についてのノウハウは業界共通のものも多く、 業界内で共有できるようになれば、より職業に密接に結びついた訓練内容となるのでは ないか」や「技能はあるが、教えることに関するノウハウが不足している場合もあるの で、教えることについてトレーニングした上で教育訓練の場に送り込んでいくという仕 組みがあってもいいのではないか」といった、教育訓練の内容に必要なものに関してい ろいろといただいたご意見も追加しています。  それから、必要となる支援の内容について、「ミスマッチを緩和するという観点から も、地域において業界団体などからニーズをくみ取った訓練機会を提供するということ も効果があるのではないか。業界団体にとっても育成される人材が明確化され、採用の 可能性が高まるものとなるのではないか」といったご意見がありましたので、4頁に追 加しています。資料Iは主な意見だけをまとめていますが、資料IIではいただいたご意 見を詳細にまとめていますので、適宜ご参照いただければと思います。  本日の「教育訓練機会の提供の在り方」に関連しまして、資料III、IVについて説明 します。資料IIIは現在国会に提出中ですが、職業能力開発局の来年度の重点施策と予 算の概要についてPR資料としてまとめたものを配っています。資料IVは、主な職業訓 練の資料をまとめたものになります。  資料IVの方から説明します。1頁は、労働市場の5つのインフラ整備の図です。これ は、平成13年に定めた現行の第7次職業能力開発基本計画の具体的なイメージを表して いるものです。第7次計画は、ご承知のように平成13年に策定され、平成17年度までの 5カ年計画になっています。目標の1つに、中長期的な視点に立った政策の枠組みとし て、これら5つのインフラ整備を推進することが必要だとされており、そのイメージを 表わしたものがこの図です。本日は、このうちの、特に一番右下の「能力開発に必要な 多様な教育訓練機会の確保」、この辺りが関係する部分になろうかと思います。現状で は、公共職業能力開発施設で職業訓練を実施しているほか、専門学校や大学、大学院と いった多様な民間の教育訓練機関を活用しながら教育訓練機会を提供しているところで す。  2頁は、職業能力開発施策の概要の体系図を示したものです。このうち、本日特に関 係する部分は、職業能力の開発・向上のために、公共職業能力開発施設それぞれにおい て公共職業訓練を実施していることや訓練施設の指導員を養成していること。それか ら、労働者の自発的な能力開発の推進として、キャリア形成促進助成金や教育訓練給付 金などを活用した支援をしているところです。事業主等が行う教育訓練の推進として、 事業主には努力義務として事業内職業能力開発計画の作成や職業能力開発推進者の設置 等を行っていただいています。それから、事業主の取組に対して、キャリア形成促進助 成金や認定職業訓練等を活用して支援を行っているところです。  3頁は、現行の職業能力開発促進法の体系における関係者の責務を示したものです。 網掛けの部分は平成13年の法改正で新しく付け加えられたところです。事業主が講ずべ き措置としては、OJTも含めた職業訓練の実施や教育訓練や職業能力検定を受けさせ る措置、労働者の自発的な職業能力開発に対する援助となっています。労働者の自発的 な取組への援助としては、平成9年の改正でもともと有給教育訓練休暇の付与、始業・ 終業時刻の時間面での配慮のために必要な措置がありましたが、そのほかに、情報の提 供やキャリア・コンサルティングなどの相談体制の整備、労働者の配置その他の雇用管 理についての配慮等について新しく付け加えられています。それから、労働者の自発的 な取組への援助について厚生労働大臣が「指針」で示すというところも新しく付け加え られています。  国や都道府県の責務については、まず事業主の取組への支援がありますが、これに関 連して先ほど少しお話しましたが、キャリア形成促進助成金の制度があります。また、 求職者に対する職業訓練の実施ということで、離職者訓練を行うとともに、事業主、事 業主団体が実施できないような職業訓練を行うということで、例えば在職者訓練、それ から特にブルーカラー系の学卒訓練等を実施しています。労働者の自発的な職業能力開 発の援助については、先ほどお話したように教育訓練給付金等で対応しています。その ほか、技能検定の円滑な実施も国や都道府県の責務としています。  4頁からは、具体的に教育訓練機会の提供として現状実施している個別の施策の説明 になります。1つ目は公共職業訓練の実施です。4頁の一番上に公共職業訓練等の実施 状況・計画を示しています。平成16年度は、離職者訓練25万人、在職者訓練21万人、学 卒者訓練4万人、合計50万人に対して公共職業訓練を実施していくことにしています。 このうち、特に離職者訓練については、民間教育訓練機関、専門学校や大学、NPO、 事業主等さまざまな民間教育訓練機関へ委託を拡大し、民間活用を積極的に行いながら 実施しているところです。離職者訓練の実施状況・計画の(うち委託)と記載されてい る部分が民間教育訓練機関を活用して実施している職業訓練になります。2の(1)の部 分で、大学、NPO、求人企業等における委託訓練コースの主な例を示していますので ご参照いただければと思います。2の(2)の若年者に対する職業訓練の実施について、 特に若年者に対しては今年度からは公共職業訓練の中にも、日本版デュアルシステムの 要素を取り入れて実施しているところです。  公共職業訓練の大きな課題として、特に離職者訓練に関して就職率をできるだけ向上 させていくということがあります。現行でも公共職業能力開発施設で行っている離職者 訓練は、訓練修了者の就職率が70%となっており、民間教育訓練機関への委託訓練の修 了者の就職率も50%ぐらいの状況になっています。独立行政法人雇用・能力開発機構の 中期目標期間は平成19年度までですが、最終年度までに施設内訓練終了者は就職率を75 %以上に、民間教育訓練機関への委託訓練の場合は訓練終了後の就職率を60%以上にと いう目標が設定されていますので、こちらの引き上げが一番の大きな課題になっていま す。  6頁は公共職業能力開発施設の状況です。民間教育訓練機関も積極的に活用していま すが、民間では実施できない高度な訓練を中心に公共職業能力開発施設において職業訓 練の機会を提供しています。平成16年4月現在、全体の施設数は302校です。2で公 共職業能力開発施設の内訳を示しています。1つ目は、職業能力開発大学校です。こち らは前期・後期2年ずつの4年間で学卒の方を中心に高度な職業訓練を行う施設になっ ており、独立行政法人雇用・能力開発機構が整備しています。2つ目は、職業能力開発 短期大学校です。こちらは、専門課程2年だけで、学卒の方を中心に訓練を行っていま して、独立行政法人雇用・能力開発機構が1校、都道府県が7校になっています。3つ 目の職業能力開発促進センター、ポリテクセンターと呼んでいますが、こちらでは6カ 月以内の短期間の訓練を行っていまして、主に離職者、在職者の方を中心に実施してい ます。全部で62施設あります。4つ目は、職業能力開発校です。こちらは市町村も1校 設置しておりますが、都道府県が設置することになっています。地域のニーズに応じて 中卒・高卒の方に対する訓練や離職者、在職者などに対する比較的高度ではない訓練を 実施していただいています。それから、障害者に対して訓練をする施設として、障害者 職業能力開発校を国が13校、都道府県が6校設置しています。最後の職業能力開発総合 大学校は、訓練を担当する指導員の養成施設として、神奈川県の相模原に独立行政法人 雇用・能力開発機構が設置しております。説明の中で専門課程や応用課程について言及 しましたが、それらについての細かな職業訓練の種類を次の頁に資料として添付してい ますので、ご参照いただければと思います。  8頁は、公共職業訓練の実績です。離職者訓練の就職率の方は、先ほど施設内訓練が 約7割、委託訓練が約5割というお話をしました。学卒者訓練は、平成15年度では約 25,000人の方に訓練を実施していますが、約9割近くの方が就職しているという状況に なっています。  10頁です。前回の会議で業界団体のニーズをくみ取った訓練にした方が、業界団体や 企業にとってどのような人材が育成されたのか明確になって採用の可能性が高まるので はないかというご意見がありましたので、このような取組の紹介の意味も兼ねて、資料 として添付しています。これはオーダーメイド型訓練と呼んでいまして、独立行政法人 雇用・能力開発機構において、求人企業の具体的な人材ニーズに応じたコース設定を行 っているものです。求人企業や民間教育訓練機関あるいは公共職業能力開発施設本体が 個別にコースを設定して、求人企業が求めるような訓練を実施する取組を行っていま す。特に平成17年度は業界団体の方にお願いしまして、業界団体の傘下の方々のニーズ を組み取りながらコース設定をしていく取組を考えているところです。  13頁は、キャリア形成促進助成金です。これは事業主に対する支援策になります。例 えば入職して何年目の方にどういった訓練を受けさせるかといった計画を立て、それに 基づいて年間で訓練を実施している。そのような訓練計画を作成している事業主であっ て、職業能力開発推進者を選任している事業主に対して助成しています。それぞれ、訓 練を実施した場合やキャリア・コンサルティングを受けさせるために休暇を与えた場 合、長期間の教育訓練休暇の制度を与えた場合、計画に基づいて従業員に資格試験を受 けさせた場合に給付金によって賃金の一部や受講料、受験料の一部を支援している制度 です。  16頁です。事業主に対する支援として、認定職業訓練の資料を添付しています。こ れは法律に規定されており、都道府県が職業訓練基準に合致すると認定した訓練に対し て、訓練を実施している事業主や事業主団体に補助金を支払っています。その補助金の 2分の1を国が支援するという取組になっています。現在、全国で1,380ぐらいの認定 職業訓練施設があります。訓練科目は、建築、金属・機械加工、情報処理、和洋裁、調 理等いろいろあります。数としては、建築、土木が一番多いようです。施設自体に関し ては、大企業では独自に学校を作っているところもありますが、中小の事業主が単独で 学校を設置するのはなかなか難しいので、中小企業団体で学校を設置する場合もあるよ うです。  17頁です。労働者個人に対する援助としては、教育訓練給付制度による支援を行って います。現在は労働者が負担した費用の4割(上限額20万円)に相当する額を給付して います。平成15年度は、支給件数47万人、支給金額は約900億円となっています。指定 されている講座の数ですが、平成16年10月1日現在で約1万1,000講座になっています。 18頁のグラフを見ると、ピーク時に指定講座は2万2,000件ぐらいありましたが、いろ いろな指摘により雇用の安定に資するものという観点や政策効果の観点、あるいは不正 受給防止の観点から、講座指定を重点化しており、現時点では約1万1,000講座という 状況です。  資料IIIを用いて、今まで説明した施策以外に職業能力開発局で重点的に取り組んで いる施策について説明します。  1頁です。最近、特に若年者にフリーターやニートが増えているのではないかといっ た指摘があります。厚生労働大臣ほか関係する5大臣が集まって、若者自立・挑戦プラ ンを策定し、対策を強化して取り組んでいるところです。Iの1にありますように、来 年度は更にフリーター・無業者と言われている方々の働く意欲を涵養・向上するといっ た取組も強化していこうということで、いくつかの施策を挙げています。(1)の若者 自立塾。こちらは、全国20ヵ所で実施する予定です。若年者に合宿形式の集団生活を送 ってもらいながら、生活訓練や労働体験に取り組んでいただきます。そのような活動を 通じて、職業人、社会人として必要な基本的能力を習得していただき、勤労観の醸成を 図っていただきます。これを来年度から新規にやっていこうと考えています。(2)ヤ ングジョブスポットの見直し等による若年者への働きかけの強化です。現在、大都市部 を中心に全国16ヵ所にヤングジョブスポットを置いています。従来は拠点を設置し、若 年者の方々に来ていただいてそれぞれ情報交換をしたりキャリア・コンサルティングを 受けていただいたりといった中で、就業意欲の向上を図っていただくという施設でした が、それだけではなく、更にインターネット等を活用した情報の発信とか、拠点を設け て若者がやってくるのを待つだけではなく、こちらから若者が集まるような場所に出向 いて行くといったように、少し手法を見直して若年者の方々への働きかけを強化してい こうと考えています。(3)就職基礎能力速成講座の実施です。民間事業者の方にお願 いして、ビジネスマナーやコミュニケーション能力を身に付けるための簡単な講座を10 日間程度で実施していただくことを考えています。  本日は特に教育訓練に関連するものを取り上げたいと思っていますので、次に日本版 デュアルシステムの拡充について説明します。こちらは、公共職業訓練を活用して実施 しているほかに、民間教育訓練機関や専門学校、企業自身でデュアルシステムの導入を 推進できるような取組を来年度は強化しようと考えています。具体的には、専門学校 側、企業側にそれぞれコーディネーターを配置しまして、デュアルシステムをどのよう に導入していくかという相談に乗りながら、個別にコースを作っていく事業を考えてい ます。コーディネーターは、今年度は全国で10ヵ所配置していましたが、来年度は更に 20ヵ所に配置数を拡充して取り組んでいこうと考えています。  2頁です。日本版デュアルシステムへの橋渡し講習の実施についてです。日本版デュ アルシステムといっても、最初は企業側、専門学校側の方もなかなかこれは何なのかよ くわからなかったようです。学生の方でも「本当に入って大丈夫か」という思いもある と思いますので、簡単な体験講習のようなものを実施して、自分にどのようなコースが 合っているかを見極めながら本格的なデュアルシステムに移行していただくという意味 で、橋渡しという名前にしています。このような事業を来年度、新規に取り組んでいこ うと考えています。  IIIは企業ニーズ等に対応した職業能力開発の推進です。1つ目は公共職業訓練の実 施の部分でもお話しましたが、来年度も専修学校やいろいろな民間教育訓練機関を活用 して職業訓練を推進することを行っていきます。2つ目の個別の企業の要望に即した職 業訓練の充実というのは、先ほどオーダーメイド型訓練で紹介したものになります。3 つ目は地域における創業を支援する実践的な職業訓練の推進です。1つは、創業サポー トセンターを全国に2ヵ所置いていまして、創業や新分野展開をしようと考えている方 への相談援助や人材育成のための講習などを実施しています。もう1つは、実際に創業 に取り組みたいという方々に対して必要な基本的知識やノウハウに関わる講習のような ものとセットで、企業での実習訓練を来年度以降、都道府県にお願いして実施していこ うと考えています。  3頁です。Vの母子家庭等自立支援対策の推進では、来年度から、就労経験のない又 は乏しい母子家庭のお母さん方、児童扶養手当や生活保護を受給されている方に対し て、無料の職業訓練機会を拡充していこうと考えています。こちらの訓練内容は、最初 に、5日間程度の準備のための訓練をやっていただきます。これをプレ訓練と呼んでい ます。そのうえで、3ヵ月から6ヵ月程度の公共職業訓練を実施していただきます。こ ういったものを、来年度全体で3,000人を対象に実施していこうと考えています。  VIは障害者に対する職業能力開発の推進です。現在、障害者に対しては障害者職業能 力開発校で専門的な訓練を実施していますが、障害者職業能力開発校が設置されていな い県が全国に30県ほどあります。こういった方々に身近な地域で職業訓練を実施してい ただくため、主に知的障害者の方々を対象とした訓練コースを一般の職業能力開発校で 設定して訓練を実施していこうというものです。今年度から15県の職業能力開発校で実 施していましたが、来年度は23県に拡充して実施していこうと考えています。もう1つ は、これも今年度から実施していますが、企業や社会福祉法人といった多様な訓練先 で、それぞれの障害者に応じた職業訓練を推進していこうというものです。今年度は 5,000人、来年度は6,000人に拡充して実施していきたいと考えています。  それから、前回ご指摘いただいた資料を追加でいくつか提出しています。資料IVの 19、20頁です。ご指摘の1つは、主に専修学校ですが、中退率が高くなっているのでは ないかということでしたので、それに対応する資料として提出しています。専修学校と 比較する意味で、他の学校の中退率も併せて用意したのですが、高等学校の中退率は表 の右下の2.2%という状況です。これ以上の細かいデータはありませんでしたが、普 通科ですと1.6%、専門学科は2.4%、総合学科は2.3%という状況になっていま す。20頁が専修学校の中途退学者の割合になります。これは毎年調査しているものでは なく、最新のものが平成9年度と大分古い資料になって恐縮なのですが、全体の中途退 学者の割合は約6.9%です。この中で特に工業系や商業実務といった学科が、他の学 科と比べても中退率が非常に高い状況になっています。工業が12.1%、商業実務が10 %ぐらいの割合となっています。  21頁です。こちらは、いわゆるダブルスクールに通っている学生が多いのではないか というご指摘に対応する資料として提出しています。ただ、この資料は専修学校におい て他の学校に在学している者の数というデータでしかありません。専修学校には約75万 人の方が在学されていますが、その中で他の学校に在学している方は35,000人という状 況です。  22頁です。自己啓発にどれぐらい取り組んだのか、時間数でも確認した方がいいので はないかというご指摘がありましたので、資料として提出しています。これは、厚生労 働省で委託して実施している能力開発基本調査のものですが、1年間にどれぐらい自己 啓発を実施したかという質問に対する、労働者からの回答です。割合としては、不明を 除けば10〜20時間未満が一番高い状況です。どの時間層も大体10%前後になっていま す。説明は以上です。 ○諏訪座長  どうもありがとうございました。それでは先回に引き続いて論点整理の資料Iと資料II などを使って皆様に議論を深めていただきたいと思いますが、今回は、先回の次の「職 業能力開発の必要性・意義」並びに「教育訓練機会の提供の在り方」、この辺りを特に 意識して議論いただければと思っています。必要性・意義というところは、何を今さら というところもありますから、ここは最初に新しい視点等でご指摘がさらにありました ら、それをいただいて、そのあと重要な教育訓練機会の提供の在り方などについて、特 にご議論いただければと思っております。よろしくお願いいたします。 ○高橋委員  今もいろいろなことが動き始めていて新しい取組もあります。具体的に言えば、例え ば若者自立塾。これは、どのくらいの予算でどんなことを期待して、どんなイメージの ものを実行するのかということ、それと、デュアルシステムというのも名前は聞くので すが、具体的にはどんな形で、どんな効果を期待してやろうとしているのか、少し情報 をいただければと思います。 ○キャリア形成支援室長(半田)  若者自立塾についてご説明します。これはニート対策として言われています。必ずし も、ニートのためにというのと少し違います。職業意識が極めて低い、あるいは、働く ことに対して自信が極めて低い若者を支援するものとして、ヤングジョブスポットなど いろいろとありますが、そういったものでもなかなか意識や自信を高めることができな いような方々を、合宿形式の集団生活の中での正しい生活を通して、基本的な能力や労 働体験などを通して仕事に関する意識、できれば能力も高めていって、なろうことなら 就職につなげていこうというものです。おおむね1ヵ所20人、3ヵ月ぐらいのコースで やっていただく。これを基本的に民間の方々にやっていただいて、私どもはその塾実施 者に対して一定額の奨励金を交付することで支援していく。簡単ですが、そういうこと を考えております。 ○基盤整備室長(三上)  一方で座学での教育訓練をしながら、実際の企業の中で実務をやるというように、両 方をデュアル、両用しながら学んでいくという、そういう仕組みを作ってきているとこ ろです。企業としては、その先その人が就職するかどうかは別としても、その人の感じ というか雰囲気はつかめるし、訓練生の方は、企業とはどういうものかということも理 解できるという意味で、スタートしてまだあまり時間はないのですが、座学だけの訓練 よりも就職率などもよいという、そういうような仕組みです。 ○高橋委員  いわゆるインターンシップというものより、もう少し本格的なものなんですね。 ○基盤整備室長(三上)  そうです。就職先として意識しながら、本当はそのまま雇用ということでずっと先に 行ければいいのですが。それを想定しつつ訓練をするという仕組みです。 ○高橋委員  質問の意図は今の若者たち、若者自立塾もデュアルシステムもそうですが、それは何 が狙いになってくるのかなと考えたとき、若者自身が「これだったんだ」というジョブ マッチング的なものの確信を強めるのか、あるいは即戦力的に、すっと会社の仕事にな りやすいような実践的な訓練を、学校の教育の延長線上にしていこうというイメージな のか、むしろ仕事見つけみたいな、体験して、「これだったんだ」みたいな気づきを与 えるのか、いろいろな効果があり得ると思うし、若者自立塾も何かの狙いはあると思う のですが、こういうものはよく言われるように、ニートはどうしてできたかという話か ら始まって、フリーターがなぜ増えたかという話など、結局いろいろな理由があってよ くわからないじゃないですか。ということは、これをやれば絶対間違いない、根本治療 だというものはないわけですね。ということは、これもいろいろやってみているという イメージでいいわけですね。言い方は変ですが、確認です。この若者自立塾も予算で議 論になりましたね。やって絶対に効果があるかどうかを証明しなければやらせないとい うのだったら、こんなの身も蓋もないですよね。要するにわからないながらも、手探り でいろいろなことをやっていかなければいけないということだと思うのですが、その場 合の大きなポイントは、本来の目的に対しての効果測定みたいなものであって、本当に こういう意味で、どういう効果がどの程度まであるのか、というようなことの試行錯誤 を短期間にどれだけできて、やっぱりこういうことだというところにたどりつくかとい う。イメージですけどね。先ほどの教育訓練機会の提供の在り方ということで、基本的 な考え方の1つとして、その部分がとても重要のような気がするのです。いろいろなこ とをやって効果測定をしながら、Learningしていく過程というものを全体の中にどう組 み込んでいくかという、非常に抽象的な議論ですが、そういう側面を重視して、絶対効 果があるものをまず探そうという議論をあまり厳密にやるよりもね。というのは、全体 としてはそんな印象がするのです。いかがですか、そういう部分がある。 ○キャリア形成支援室長(半田)  若者自立塾に関しては、かなりニートなどになる原因などを考えて、これで効果があ るのではないかと思ってやってはいるのですが、全体としてはむしろ今の先生のコメン トをいただいた判断でいいのかもしれません。若者自律塾に関しては、そもそもなぜニ ート的な状態になっているのか。これもいろいろ議論があるところなんですが、若者た ちの就職機会は激減していますね。そういった中で、就職しようとしているけれど、そ ういうことができなくて自信喪失になっている若者がたくさんいるのではないか。もち ろん別の理由、例えば病気に近いような方々もいらっしゃるのでしょうが、そういった 方々はこの塾でもやっていけないだろう。対象にしているのは、厳しい就職状況の中で 自信喪失気味になっている、そして動けなくなってしまったような人たち。こういう人 たちがたくさんいて、こういう人たちは、ちょっとしたきっかけを与えることによっ て、立ち直ることができるのではないかということです。  勤労青少年福祉行政の経験を通じて、若者たちは人との交わりの中でいろいろなこと を経験して、自信を取り戻して立ち直っていくという姿が見えています。こういう合宿 形式でやっているところはあまりないのですが、そういった勤労青少年行政などの経験 も頭に入れてみますと、こういった人たちも集団生活の中で生活訓練を経て、労働体験 を経てということで、一定の効果が期待できるのではないかと思っております。もちろ んこれは直ちに就職につなげるという意味ではなくて、就職につなげるための底上げと 言いますか、そういったことを期待しておりますし、そうなるのではないかと考えて、 (若者自立塾の考え方を)組み立てているところです。 ○基盤整備室長(三上)  デュアルの方も、効果というところでは先ほども少し申し上げましたが、これまでの 若者に対する座学だけの訓練に比べて、今までの経過で言うと約10ポイントばかり高 い。座学だけだと60%ぐらいの就職率なのですが、実際にその職場で実習し、理解して いくということで、今70%ぐらいの就職率になっています。そういった意味では効果が あるのではないかということで、今後、さらに進めていきたいと思っております。 ○玄田委員  今の高橋委員の議論と関係していると思うのですが、能力開発の必要性もしくは方向 性ということに関して言うと、やはり非常に大きな転機にきているような気がしていま す。わかりやすく言うと例えば教育訓練給付制度、予算としても800億円に近いという 相当大きな、能力開発行政の目玉になっているもの。これはどういう方向を目指してい るかと言うと、どちらかと言うと、遍く広くと言いますか、雇用保険の加入期間が5年 以上の人たちに対しては、すべて広く受ける機会が与えられていて、結果的にその分40 万人台という非常に多くの人が、それによって能力開発の機会を得られている。これは 産業構造の転換の中、誰もが職を失うかもしれないというようなリスクの中で、社会的 に求められて作られた制度であるとして、一定の意味づけはあったと思っています。  それに対して今出たような、例えば若者自立塾もそうですし、デュアルシステムもお そらくそうだと思うのですが、その対象となるのは非常に限られた限定的な人です。私 の記憶が間違っていなければ、若者自立塾で来年度予想されているのは1,200人でした か。スケールが1桁違うわけです。こんなに大きな就業問題を抱えているときに、スケ ールが小さいものは意味がないかと言うと、決してそういうわけではなくて、むしろ私 が言いたいのは、遍く広く能力開発の機会を提供する方向性と、いま、ある意味では能 力開発の危機の状況にある人に対して、重点的な施策を施すべきか、限られた予算の中 でどちらの方向づけを強めていくかということが問われているのではないか。私が理解 する若者自立塾の意義というのは、半田室長の前で言うのもあれですが、能力開発に対 してチャンスがない人たちがたくさんいるということです。ある地域に行くと、これは 本当に21世紀の話だろうかと思うような能力開発に関するある種の退化がある。つま り、教育訓練を受けたってどうせ就職がないのだから意味がないだろうと。特に女性が 下手に勉強したり能力開発をすると、婚期が遅れて困るぞとか、今はそんな勉強をする ことにどんな意味があるんだ、というようなことを言いかねない状況が地方で広がりつ つあると思っています。  そう考えると、そんなことはごく例外的だとみなすこともできるのですが、一方で今 非常に、ある部分に対しては本当に能力開発に関する危機があって、個人レベルの意思 決定ではとても届かない、しかもそれが、放置された場合には単に経済成長という問題 だけではなくて、広く社会問題になりきれないところがある。そう考えていくと、例え ば遍く広くの策というのは、やはり経済全体の成長とか、マクロ的な効率性ということ には意味があると思うのですが、私がイメージする重点的な施策というのは、一体誰に 対して能力開発を重点的にしなければいけないかという、むしろマクロ的な成長より も、ある種の再分配策として能力開発を位置づけていって、言ってみればto whomと言 いますか、今、本当に能力開発が必要な対象は誰か、ということをみんなで合意して、 それに関してはなかなか効果が出なかったとしても、ここに「究極のセーフティネット 」という言葉がありますが、そういう能力開発から非常に遠い距離にある人に対して、 一定の、再分配策としての公的な能力開発がなされない場合にどういう社会的な危険性 があるのだろうか。その中で能力開発政策を考えていかなければならない。  それは当然、予想される経済効率性とか人材投資の効果というのは、必ずしも十分高 くない可能性があろうかと思います。しかしそうであったとしても、やはりしていかな ければならないということで、今私がイメージする能力開発の必要性というのは、誰に 対する能力開発の施策が最も緊急を要していて、それに対して一体どのくらいのスパン でその効果を、単に経済効率性だけではなく見ていくかというような議論が、今の必要 性というような議論では欠かせないようなイメージがありますし、自立塾とかデュアル システムの意義というのは、私は、再分配施策、重点施策としての意義だと理解すべき だろうと思っています。  非常に抽象的に言えば、今その能力開発の必要性を求められているのは、非常に社会 的な孤立の状態に置かれていて、放置した場合にはそれが強まっていく、その孤立を回 避する方策としてはいろいろあるが、1つの重点的な方策として、本人自身の能力を開 発する機会を提供することによって社会的な孤立者をできる限り予防していくというの が、もしかしたらこれからの能力開発の必要性、もしくは意義ではないかと思っていま す。 ○諏訪座長  ありがとうございました。ほかにこの能力開発の必要性、意義ということで新しい、 現時点から将来を見たときの課題、あるいは論点をご指摘いただければと思います。 ○黒澤委員  1点だけ質問させてください。先ほど若者自立塾の話が出たのですが、この若者自立 塾に参加する方々のリクルートというか、どなたが参加するのかはどのように進めてい らっしゃるのですか。 ○キャリア形成支援室長(半田)  端的にお答えしますと、塾実施者が中心になってやっていただく予定です。塾実施者 の選別をする、あるいは(塾実施者に対して)奨励金を支給することをやっていただ く、言うならば上位の団体、これも民間団体にお願いしようと思っておりますが、この 団体にもそれなりに、若者を集めることについて支援をしていただきたいと思っていま すし、また私ども国も、あるいは各都道府県自治体等にも要請して協力をお願いしたい と思っておりますが、中核になるのは塾実施者そのものです。 ○黒澤委員  なんでそういうことをお伺いしたかと言いますと、若年に対しては見る限り、すぐに 訓練ではなく、まずそのアドバイスとか相談とか、そういった機会を与えてから職業紹 介なり訓練なりというような形で、その間のパイプの部分がずいぶん太くなってきた素 晴らしいことだという印象があるのですが、そのパイプの部分に何をしていいかわから ないというような人たちが入ったときに、こういうオプションがあるんだということが わかりやすいシステムがあればあるほど、より大きな効果が期待できると思うのです。  もちろん、この資料にあるように出向くといった形で働きかけるということもありう るのですが、実際として、若年というと学校とのリンクが非常に強くなると思うので す。問題があるとか、立場として不利な人たちがいるんだというようなことについての 情報について、ジョブカフェでもヤングジョブスポットでも若者自立塾でもなんでもい いのですが、そこと学校との情報のやり取りというのは存在しているのでしょうか。 ○キャリア形成支援室長(半田)  実は私どもはこの若者自立塾の前に、今度、見直しをしようとしているヤングジョブ スポットも担当しています。ヤングジョブスポットに関しては、これは機構の施設です から機構のやり方にお任せしておりますが、箇所によっては、学校と連携してやってい こうとしているところももちろんあります。ただ全般的に、学校との連携が難しいとい うよりも、学校と連携しても、フリーター・ニートの把握はなかなか難しいところがあ るように感じています。と言いますのは、学校に在校している間はもちろんわかるので すが、卒業してしまうと、その後の足どりは学校でもなかなかつかめないし、仮につか めても、そのあたりの情報をこういう外の第三者機関に提供してもらうことには困難が あるように聞いております。  それで、ヤングジョブスポットの経験からも申しますと、こういう方々を集めるのに 一番大きく効いてくるのは親御さん、保護者自身だろうと思っています。ヤングジョブ スポットのときも、これを立ち上げようとしましたところ、親御さんたちからいろいろ な問合せがありました。うちの息子がとか、親戚の娘が、という話で。その説明会では ないのですが、ある関係団体がヤングジョブスポットの啓発のためのシンポジウムを行 ったところ、来ておられたのはみんな私ぐらいの年齢のお父さん、お母さんでした。こ の若者自立塾の話でも、塾自身を実施したいという問合せもありますが、それ以上に、 こういうのができるのだったら是非子どもを預けたいが、どこに行けばいいのかという ような問合せがありました。たぶん親御さんが一番のキーになるのではないかと考えて おります。 ○諏訪座長  今、教育訓練の以前にアドバイスをしたり、つなげていく前段階みたいなものを、揉 んでみると言うのですか、そういうのが必要ではないかということを黒澤委員がおっし ゃっていましたが、その「揉む」という意味では、ボランティアの教育訓練効果という のを最近調査した大学院生がいまして、あれが想像以上に高いのですね。ボランティア 活動に行ってみて、最初から最後まで自分で責任を負って背伸びしてやったことによっ て、すごく成長する部分がある。ところがボランティアをしている側には、そういうこ とにボランティアを使われることは本来の筋から外れるというような気持があって、や る側と受ける側との間にずれがあったりするようなんですね。そういう報告を聞きなが ら、これからは多様な視点で見ていく必要があるのかなということを思ったのですが、 少しそうした、今までとは違った視点でのご指摘などもいただければと思います。 ○玄田委員  意義の所で、人材投資効果の測定は必要ということで、例えばこういう点も是非考え ていただきたいと思います。厚生労働省はニートという言葉、公的に定義していないと 思うので、あまりそういう言葉をここで出すのが適当かどうかわかりませんが、就職希 望はあるが実際には職探しをしていない、だから失業者にもなっていない、もしくは、 職業に就きたいという希望自体も表明していない、そういう人をニートと呼ぶとするな らば、実は今、若い人の問題だけではなくて中年のニートがものすごく増えている。30 代とか40代のニートがものすごい勢いで増えていて、このままでいくと数年後には生活 保護の相当な急増に成りかねない。いまはまだ親が存命であったりするために、なんと か生活をしていけてるわけですが、その中では独身のニートも極めて多い。もし中年の ニートをこのまま放っておくと、これは単に就業対策だけではなくて、むしろ社会保障 全般で、非常に大きな負担を引き起こす可能性が極めて大きいと思っています。なぜ増 えたかは大変多様ですが、リストラにあったり再就職ができない中で、職探しをしても 自分には無理なんだと諦めるケースと、社会的な引きこもりの人たちが若年を超えて、 完全に中高齢化しているというような2つの要素もあって、すぐには解決できないよう な深刻な状況が強まっている。  そういう人たちの能力開発をすることは極めて難しいわけですが、先ほども話したよ うにチャネル、パイプをすることによって社会的な孤立を避け、少しでも自分の自立の 道をつなげていくという方法をしていかないと、これからは就業面で、失業者が増える とか無業者が増えるということを超えて、もうかなり、一歩手前の状況になっていると 思います。それはもちろんニートに限らず、国民年金の滞納者なども含めて考えていく と、これからは就業政策だけではなくて福祉政策と、ここで福祉政策のことを言うこと が適当かどうかわかりませんが、かなり能力開発の意味というのが出てきているような 気がします。  もっと言えば、若年のニートが増えているけれど、実は、メンタルとか、病気や怪我 を理由として今働けなくなっている人が、この5年間ぐらいで相当増えています。だか ら先ほどお話があったように、メンタル以外の部分もありますが、非常に今、働きなが らも働くことに自信を失って、働けなくなっている人が増えているのです。何が言いた いかと言うと、能力開発の必要性・意義を議論する場合、それは当然、就業政策の中で の能力開発として議論してきたわけですが、今の段階としては、若年を超えて、厚生労 働行政全般と言いますか、就業施策と福祉施策の融合の中に能力開発を位置づけていか ないと。あまり細かい小さな議論で人材投資効果、いくら稼げるようになったとか、就 業できる可能性が高まったというような、ミクロ的な問題だけではなくて社会政策全般 としての位置づけが、いま能力開発に求められているような印象を持っています。 ○北浦委員  今の玄田委員のお話で尽きていると思うのですが、おっしゃったように、能力開発と いうのはわりと狭い範疇から出発して、ここまで広がってきたという感じがあるので、 もう少し広い目で見て整理することが大事な局面にきているのは確かだと思います。お っしゃったように能力開発というのは、ここで議論をしていくと、だんだん技術論的な ところに陥ってしまうところがある。知識、技能を付与するという大事な側面はあるの ですが、それだけではなくてそれを通じて、先ほどの玄田委員や高橋委員のお話などを 聞いていますと、やはり就業意欲を高めるとか、働く意欲を高めていくような効用が、 能力開発のプロセスの中にあるのだろうと思うのです。そういうものとマッチしたよう な形でないと能力開発が生きてこない。それはまさに就業政策だということだろうと思 うのです。ですから、せっかくここまでキャリア・コンサルティングとかキャリア形成 というのが位置づけられていますので、それと結びつけたようなことでこの職業能力開 発の位置づけを、もう少し明確にしていくといいのではないか。能力開発の前段になる そういう動機づけと言いますか、そういうものの整理をして、そのことによって能力開 発をし、能力開発の中でまたキャリアに対しての自覚を高めていく、という循環構造を 作っていくことが、能力開発政策の新しい方向づけだと考えれば、これは立派な雇用政 策になっていく、自立的なモデルの雇用政策だと、こういうふうになると思うので、ま さにおっしゃった点が非常に重要ではないかなと思っています。 ○山川委員  今のお話との関連で、生活保護の方にいく可能性があるというのは、本当にそういう 可能性があるのではないかと思いますが、逆に、生活保護自体をどう考えるかという問 題もあるわけで、就労援助型の生活保護の在り方とか、そういうことと両面から考えて いくことがあり得るのではないか。外国ではそういうことをやっている国があるようで すので、そう思います。  それと全く別の観点ですが、一昨日か昨日かの新聞に、どこかの大きな会社が、知財 部門の全従業員に知財教育を受けさせるというような記事が載っていました。企業にと って必要があれば能力開発をやるわけで、必要がない、あるいは、あるのに感じていな い企業は淘汰されていくのかもしれないということなのですが、社会的に見たら、自分 の企業が果たして教育訓練を必要としているのかということを、どれだけ認識している のかちょっと疑問に思いました。お題目としてはもちろん必要としていると言うでしょ うが、全員に知財教育を受けさせるというほど、具体的に認識して行動に出るようなこ とがあるのか。そういう機会を持つ企業が増えてくればいいのではないか。だからどう しようというレベルのお話ではないのですが、そういうことを感じています。 ○高橋委員  先ほどの効果測定の話にもう1回戻ってお話したいのですが、私も玄田委員が言われ るとおり、ミクロ経済学的なROIを出せということを必ずしも言っているわけではあ りません。業者の話で、あそこに箱物を入れました、あるいはこういう、例えば助成金 を入れました。それで結局どうだったかというと、あれは駄目だったじゃないかみたい な批判を受けたりするのですが、そういったのはサンコクストに対する議論だと思うの です。この間、講演で京都府の私のしごと館におじゃまして、中も見せていただいたの ですが、あれに数百億かけてなんなんだと。別に批判をするつもりで言っているのでは ないのですが、ただ、例えばあの中にいろいろなコーナーがあります。あのコーナーの 中で、最初に具体的に想定したターゲットの人たちが、例えば玄田委員が言われた種の ターゲットの人もいるでしょうし、中学生ぐらいとか、いろいろなターゲットの人に、 こんな効果があるのではないかという仮定をしてやってみた結果、どうだったのですか という話は別に、あれ自体を批判するとかしないとかではなくて、あれをこれからどう 活かすかということを考えたときに、考えようによっては、このコーナーはもうやめて しまおうと思う、むしろこういうターゲットの人にこういう効果があったのだったら、 これをもっと前面に出そうというようなことを、かなり思い切ってできるような、これ からのアクションにつながる効果測定が非常に重要なのではないか。もしそうだとする と、先ほどの話ではないけれど、やはりターゲットを分けていかないといけなくて、こ ういうターゲットに対してこういう効果があるのではないかという仮説で、こうやった ものがこうだったから、次にはどんどん柔軟に、これだと思ったところには、そういう 方向にどんどん集約していくというダイナミズムが欲しいような気がします。  例えば政策というのはどうしても、先ほどのデュアルシステムでも就職率が10%上が りましたというお話がありました。アピールするのは重要だと思うのですが、じゃあ、 なんで、どんなメカニズムで、どういう理由で、何が効いて、どんな人たちが、どうし て10%よくなったのかという解釈がすごく重要だと思うのです。やっぱりそうなんだ、 こういうところがポイントなんだということになってきたら、それをもっと横展開して いくとか、そこだけに特化したものをもっと作っていくとか、いろいろな方法論がある ので。ただしターゲットは、先ほど玄田委員が言われた部分がすごく重要だと思うので すが、同時にもう少し広い若者の部分、学生の部分も必要でしょうし、もう1つ、企業 というのもすごくある。先ほどありましたが社員に投資する。この部分で私、どちらか というとその部分が専門に近いのですが、企業の方々と話をして思うのは、人材育成の ニーズは感じていないのかというと、すごく人材育成ができていないから、例えば大き なプロジェクトがシステムインテグレーションでこけてしまって、何十億円の損失が出 てどうしようもない、その根本は何かと言うと、プロジェクトマネージメントの人材が 育っていないからだ、とかいう問題意識はものすごく深刻に持っている。持っているけ れど、どうやったらそういう人材を育成できるかという方法論とか、あるいは経営のコ ミットメントがどこかで引っかかってしまって空回りしていて、そういう会社は淘汰さ せればいいと言ってしまうと。正直言うと、そんなことを言うと日本の基幹産業のかな りの会社が淘汰される可能性があるので、やはりそれは国としての政策としてはまずい だろう。もう少し企業が率先して人材育成に金も時間も、経営的な労力も使うようにな ってもらうことが、社会全体としての職業人材の育成の効率性をすごく上げるんだとい うようなターゲットと仮説の絞り方もあって、じゃあ、そのためにはどうしたらいいか ということが、先ほどとは全然違う部分にあると思うのです。  だから、何本柱かあって、それぞれのターゲットと仮説検証でどんどん施策を絞り込 んで、効果的な施策をそこから浮き上がらせてくれるというダイナミックなプロセスが ほしいなと、そんな感じがします。決して過去の責任を問うという意味ではなくてとい うことです。 ○諏訪座長  この職業能力開発の必要性、意義というところでは、今までのところで少し抽象化し て申し上げますと、教育訓練へ行く手前の部分での動機づけとか、あるいは、いわば呼 び水で誘い込むといったような部分にさまざまな配慮がないといけない。これは若者の 問題が考えられているけれど、玄田委員もご指摘になったように、確かにさまざまな世 代にこうした問題がありますし、働きたいと思いながら、なかなか具体的な行動に出ら れない、女性などの場合にもそういうことはあるのかもしれませんので、この種の配慮 を欠いたままに能力開発という今までのところにピョンと飛ぶと、ついてこられない部 分がたくさんあって、施策の効果も上がらないのではないか。  もう1つは、先回だったと思うのですが、高橋委員がおっしゃられていたコンピタン シーみたいな、広い方の意味ですが、思考行動特性的な部分を教育訓練の場合にも配慮 しなければいけないと言いますが、最近そんな実例を学生で見ました。それは、非常に 苦労して周りがいろいろなことをやって、内定まで導いていた学生が今度は相談室にや って来て、実は単位が何十単位も取れていなくて留年ですと言ったというのです。これ はまさにコンピタンシーなんですね。つまり、この人は教育訓練をするとそれに応じて は引っ張られていくけれど、自分でLearningすることができないタイプの人なのです ね。ですから、1を聞いたら10を知るというのは、まさに1を聞くというのは教育、訓 練の部分かもしれませんが、10を知るというのはLearningの部分で、このLearning、学 習力が非常に今の若者、あるいは、社会人もだと私は思っていますが、落ちているので はないだろうか。昔に比べて今はいろいろな意味で周りから教育をする、予備校とか塾 ができているかわりに、昔みたいに苦労して独学をするというようなことがない、ある いは日本の学校では、予習というのをあまりさせないですね。予習というのはlearning、 自分で仮説を作って、こうかなと理解していて先生の授業、つまり教育、educationを 聞くと、ああ、そういうことだったのかとわかる。この予習力がないというような問題 も、実は、教育訓練という言い方をしてしまうと落ちてしまうのです。  私はやはりteachingとlearningは違うという風に、最近つくづく思っています。日本 の場合は今までteachingの方法を改良すればいいとか、そんなことばかり議論していた けれど、実はそれを受ける側のlearningも、その中にはmotivationも入っていますし、 自信を喪失してしまう問題とかいろいろあります。今挙げた学生の例などは、就職指導 をした側はもう徒労感に陥ってしまっているのですね。 ○玄田委員  資料Iの3頁目、アンダーラインを引いてある所ですごく気になったのは、「職業に 直接結びつく教育訓練に対して支援するだけでなく、一般教養的なものであっても能力 開発につながっている面もあり」というニュアンスがやや違和感があって、ここに出て くる「一般教養的なもの」という意味ではなくて、むしろ、今本当に職業能力開発に求 められているのは、座長がlearningとおっしゃったようなものでもそうでしょうし、も っと基礎的な能力と言うのでしょうか、例えば自立塾がなぜ必要かというと、どんな職 業訓練をしても朝ちゃんと起きてこられないと就職はできないわけです。2時間カウン セリングをしても、そういう基礎的な能力やlearningすることがリズムになっていない と苦しいわけです。しかしそれは、通常予想されるのは、そんな基礎的な能力、朝起き たり挨拶をするなんていうの家で教えるものだろう、学校で教えるものだろうという前 提があったと思うのですが、残念ながらそれが崩れてしまっているケースがあるわけ で、今本当に職業能力として向上させなければならないのは、資料の議論にもあるよう に、即戦力ではなくてその前提となるような、自分自身でlearningする基礎的な能力と いうものを、根本的に能力開発の問題としてとらえていかないと。それは当然あるもの だろうとか、それは学校がやるものだろうとか、家庭の問題だという前提が崩れている ところに、今の能力開発の危機や必要性があるという認識でいかないと、一般教養とい う言葉は誤解されると思います。 ○諏訪座長  少し発展、膨らみが出てきたところで、今日集中的に議論をしていただきたいもう1 つのテーマで、教育訓練機会の提供の在り方や学習機会といったものの提供の在り方、 学習者から見れば獲得の仕方という問題について、少しご議論いただきたいと思いま す。 ○北浦委員  どこでどのように学ぶかという観点から、2つほど申し上げたいと思います。1つは どこでということで、これはおそらく公共訓練の在り方を考えていく上でも重要になっ てくるのだと思います。いろいろな場合で見て、例えば施設で学ぶわけですが、その施 設が公共訓練のような施設、あるいは民間でもそうなのですが、身近なところにあるか で学習が継続できるかどうかが決まってしまうところがありますし、有効性が違ってき ます。例えば中小企業の場合ですと、終業時刻から30分以内くらいの場所でないと、そ ういったトレーニングができないではないかという議論があって、そういった中で、公 共校は本当に役割を持っているのかという議論もあったりします。逆に、またそういう 地域の集積の中にあった中の、これは生産技能系ですが、例えば技術センターのような ところがそういった役割を持って、訓練の場として機能しているというのがあります。 そうすると、現場に近い所、身近な所でないといけないということです。  では、どこでといったときに、学校というものは、施設の制約があった場合に、全て あるところに完成させられていると不都合が生じるのではないかと思います。極端に言 うと、本当に身近な所にない場合は、場所だけでも貸してほしいというニーズが出てく るのか、あるいはサテライトのような形で機動的に運営する、そのようなところは考え ていく必要があると思います。中小企業などのニーズを聞いていると、身近な所にない という議論なのです。  もう1つは、そこで教えるといっても、そこの教育がきっちりとしたものでなくては いけません。おそらくこれはもう1つの大きな問題の、指導者の問題につながっていく と思います。カリキュラムが立派でも、そこにおける指導という内容、専門性が揃って いないといけません。そうすると、餅屋は餅屋的な発想になると、全てのところが全て を管理できるか、百貨店のように整理できるかというと、なかなかなりません。  そこのところで、本当に学んでいこうという意欲が高まってくると、おそらく1ヵ所 では無理だという議論も出てきます。そういうところをどう考えていったらいいのか。 全てを提供するような形の施設は金もかかりすぎていけません。  この2つのことから考えていくと、現在の1ヵ所において固定的に実施をして、それ で全てを提供していくという仕組みだけでは限界があります。現実に公共訓練などを見 ると、民間との出前型でやってみたり、オーダーメイドでやったり、連携を取りなが ら、場所を提供しながらやっていくなど、いろいろなパターンが出ています。そのよう に、少し施設というハードの制約を超えて、もっと柔軟に対応できるような発想を持っ ていかないといけないと思います。  もう1つは、類似の機関というのはたくさんあります。大学へのフィードバックとい うのはありますが、例えば大学のときにこういう訓練校、あるいは高校で学んだことが 単位になる、あるいは大学の一コマを必要な科目として使えるようにしてしまう、そう いう互換性でも持ってくれば、またこの位置づけが変わってくるのです。  つまり、全てをそこで整備する時代ではなくなってきているわけです。いま連合大学 などありますが、関連する教育機関との連携の在り方、そういう中において何かを変え ていかなければなりません。公共の訓練施設ということで考えると、1ヵ所の固定的な 範囲で全て賄うという発想ではなく、それを核としてフレックスな体制を作っていくこ とが必要なのかという感じがします。特に中小企業などの場合は現場でというのがある ので、そこが1つあると思います。  もう1つ方法論から考えると、座学が常識になっていて、教室で教えていくのが座学 になっています。しかし、これはすでに職業能力開発大学校の応用課程などにも取り込 まれていますが、一番大きいのは、少し討議をするような形のワークショップ型という か、研究会といった形において、能力開発が図られています。つまり、個人で学習する というやり方に座学ということだけではなく、もう少しフレキシビリティのある方法論 も取り込んでいく必要があると思います。  その辺は職業能力開発大学などではいろいろ開発されているのだと思いますが、そう いった少し従来と違う発想法を、そろそろ考えて、新しい公共施設の在り方を作って、 それがいろいろな民間の教育訓練の補完的な存在であるとするべきではないかと思いま す。 ○玄田委員  今の北浦委員と関係していると思いますが、新しい提供の在り方として、従来の発想 を変えていかなければいけないときに、Off−JTのイメージに対して、OJTとい うのは企業内で閉じたもの、その企業にいないとできない、企業のメンバーでないとで きない、暗黙のうちにそういう前提としていたことが多かったように思います。特に経 済学では、企業特殊的な技能訓練、熟練という言葉を使った場合には、その企業にいる 人でないとそのOJTはできないという感じでした。もしかするとその発想自体を変え ていかなくてはならなくて、本当のいいOJTというのは企業間をトランスファーでき るのであって、その可能性に社会全体でもう少し目を向けていかなければならないので はないかと思います。  しばしば大久保さんが言われることなのですが、今リクルートとトヨタでOJTのパ ッケージを提供するテストをされていて、最近よく新聞でも目にするように、郵便局に トヨタ方式を導入すると極めて効率が改善するといったように、OJTのあり方や教育 訓練は企業による違いがないわけではないですが、十分に移行可能だと思います。しか も、やってみれば実に当たり前のことをやるのがOJTだという認識が共有され、効果 を挙げています。  ただ、当たり前なことを可能にするには、企業にはお金が要るわけで、それを民間の 企業ベースだけでやると、経済的に非常に余力のある企業だけがOJTのトランスファ ーのノウハウを得ることができます。しかし、本当に今必要なのは、中小企業を含め て、OJTというのをやりたいが、どうやればいいかわからない、ゆとりがなくてそう いう人を雇うことができない、そういうときに、これが本当のOJTだということをト ランスファーするパッケージなり、プログラムを行政として公的に提供することが、果 たして本当に不可能なのかどうか。それがもしかしたら能力開発の中で、これからます ますOJTが重要な意味を持っているというときに、今すぐにこうやればできるという 計画はできないにせよ、十分に検討に値する部分であって、行政的なOJTを企業間で 移行させるようなプログラムなりを考えるというのは、今、重要な局面にきているよう な印象を持って、北浦委員の話を聞いていました。 ○高橋委員  またそれにも拡張させていただくと、どのような能力を上げたいのかということと、 その能力を上げるためにはどのような手法が効果的なのかということがあります。今ま での教育訓練は、国も企業もそうだったりするのですが、専門知識、スキル技能系を、 座学やそれに類するもので上げるところ以外の組合せの開発がすごく遅れていて、ご存 じのようにOJTというのも日本の強みだったのですが、Off−JTと自己啓発につ いては、先進国の中でも日本は非常に遅れてきたので、これは投資額が遅れてきただけ ではなくて、Off−JTについても、私が企業を見ていても内容の水準について、か なり見劣りがします。  例えばOJTとOff−JTの中間的な部分で、アクションラーニングというのがあ り、習ったものを現場で使ってみる、また少し戻って習ってみるという手法を、最近少 しずつ日本でも企業は始めています。特にリーダーシップ教育では絶対に必要なのでや っています。あれも全然遅れてきてしまったと思います。  そう考えると、OJTの制度化や、Off−JTでも今までのタイプと違うタイプの Off−JTを入れていかないと、いま本当に必要とされている能力がつけられないの ではないかという気がします。  先ほど、大きなプロジェクトマネジメントで、システムインテグレーションで何十億 のプロジェクトがこけているという話をしましたが、これは決して大きなプロジェクト の大責任者というすごいレベルの人ではなく、中小のシステムインテグレーションの会 社や、ソフトウエアの会社などに聞くと、1,000万円、2,000万円単位のこけている損失 はそこら中で出ていて、それは数人単位のプロジェクトマネジメントが5、6人単位で もうまくいかないケースです。そのプロジェクトマネジメントを資格制度にして、手法 を学んで、座学で学ぶとできるようになるかというと、結局よく聞くと、このままでは このプロジェクトはうまくいかないと。どうして今までわからなかったのかとメンバー の1人に聞いてみると、何となくわかっていましたと。何で私に言わなかったのだとい うと、聞かれなかったのでと。何で聞かれないと言わないのだというと、そういうこと を聞かれもしないのに言うような雰囲気ではなかったと。そうなると何なのかという と、プロジェクトマネジメントの能力に、一番悪い情報でも気懸ねなくリーダーに言え る雰囲気を作るEQ的な能力がないと駄目なのです。それを今までの紋切型の座学で教 えられるかというと、駄目だと思います。  Off−JTで一切教えられるかというと、それとOJTを組み合わせます。新しい Off−JTと新しいタイプのOJTを組み合わせると、いろいろなパッケージができ ます。もちろんその企業の圧倒的な優位性にしようと思っているのであれば、その企業 が他社に先駆けて秘密にやればいいと思いますが、そこまでいかないにしても、産業構 造の基盤レベルで、こういう能力が不足している、これからますます不足するというも のは今EQ的な部分も含めたプロジェクトマネジメントと言いましたが、もっと企業の 枠を超えた形でいろいろ含めて、いくつかあって、そういうものが積極的にOJTとO ff−JTを組み合わせた新しい手法で提供できてもいいのではないかと思います。逆 にそういうことをやらないと効果がうまく上がらないのではないかという気がします。  そういうイメージですと、例えがオーダーメイド型というのは、果たして今そういう 意味で機能しているのか、あるいはもっと改善の余地があるのか。お聞きすると、その 方向でいくと何となくもう少しいいものができそうな気もするのです。もう1つ言うと ITを使う。E-learningというと、何かボタンを押して画面を1人で見ている感じがあ るのですが、今E-learningですごくポイントになってくるのは、例えばバーチャルのデ ィスカッションのクラス運用などを実際にやっているところを見ると、ものすごく効果 があります。400人いたら、1クラス40人で10クラスを作って、コーディネーターがい て、あるテーマを与えます。例えば「ダイエーの再生機構のこういう話があったけれど も、君たちはどう思いますか」と示して、そこでディスカッションをさせたりします。 そこにファシリテーターがいて、途中で脱線しそうになると入ってきます。  それはもっとレベルの低い話でもいいのですが、こういう店舗で働いていて、このよ うなお客様がこのようなことを言ったら、どのように答えるのがお客様の気持がいいと 思うか。お客様の気持を考えるとどうだと思うかと言うと、誰かが「私だったらこうす る」、「いや、私だったらこうする」というようなディスカッションをして、「そうい うことを考える人もいるのか」というようにやりながら、自分でものを考える癖をつけ る、相手の気持を考えて動くということを自分でものを考えながらやる癖をつけさせる ためのバーチャルのクラスとしては、いちいち往復1時間以上かけてやるより、非常に 効率的にいいかもしれません。  そういう諸々の個別の最新の手法をどんどん積み上げていくと、初めて今までの知識 偏重、座学偏重でカバーできなかった部分ができるようになるのかという気がします。 ○諏訪座長  教育訓練機会の提供の在り方ということで、いくつか貴重な示唆がありましたが、他 にいかがでしょうか。 ○山川委員  最後に申し上げようかと思っていたのですが、法律家の悪癖で、2の論理構造が今1 つ頭に入ってこないので申しますと、(1)教育訓練機会の提供の在り方の中の2番目 の○で「必要となる支援の内容」というのが出てきます。他方、(2)として職業能力 評価制度の在り方とあります。よくわからないのですが、論理構造としては、まず教育 訓練機会はどういうものであるべきかという、政策と離れた教育訓練機会そのものの問 題があって、それに対する施策の在り方として直接提供と支援があって、それ以降はい ろいろと内容があると思いますが、相談情報提供というのも支援の一種だと思います し、職業能力評価制度も、おそらく公的には支援制度として作るのだと思います。それ で、「その他」というようなことになるのではないかと思います。かつ、それぞれの項 目が前に述べられた課題に対応している形になると論理的には美しい構造になるのでは ないかと思います。  若干内容的なことを申し上げると、先ほど高橋委員の言われた支援として、例えば企 業自体がどういう教育訓練のニーズがあるかということを認識していただく対策がそう いうことに対する支援を現実にできるのかはわかりませんが、あり得るのではないかと 思います。別分野の話なのですが、ポジティブアクション、アファーマティブアクショ ンというのは、企業の中で男女雇用平等という観点からどういう問題があるかを認識 し、問題の原因をとらえ、その改善策を考えることを行動計画として提供する、あるい は支援するというようなことなので、これと同じような発想で、企業自体がニーズを把 握して、それを実現するようなものに対する支援がないのかという点が1つです。  あとは、規制緩和云々ということが中に出てきますが、その他、スウェーデンのよう な形で直接の義務づけを行うという政策の在り方もあるのですが、なかなか難しいと思 います。その中間的なもので規制緩和という形での支援もあって、「徒弟」という言葉 が労働基準法の中に残っているのですが、場合によって規制緩和と結び付けるというの があり得るのかと思います。  これもいい具体的な案がないのですが、たとえば、年休というのは1日単位で与える のが原則で、半日単位の年休は労働者が請求して、任意に使用者が与えるのは構わない ということです。なかなか教育訓練の時間が取れないということであれば、例えば従業 員代表との協定を噛ませるなどして、一日の一部について自発的な教育訓練のために年 休を取ることを認めるといった労働基準法の中での仕組みと結び付ける方法とか、いろ いろなやり方はあるのではないかと思います。 ○諏訪座長  論理構造の部分は非常に致命的な問題にもつながりかねないので、後で整理していた だくこととします。いろいろな我々の議論をKJ法的にまとめていったところですので、 あっちが落ちていたり、こっちが落ちているという中間なのだろうと思います。  今非常に重要なことがありまして、企業が気づくようにさせることを何らかの形で側 面から支援する、それは企業だけではないのではないかと思います。いろいろな関係組 織、学校なども含めた部分に、もう少し気付かせないと、せっかく新しい内容の酒も古 い皮袋の中に突っ込まなければいけなくなるという問題という感じもします。先ほど問 題提起されたので、少しよろしくお願いします。 ○高橋委員  私の理解では、人材育成に関わる問題が起きていて、これが由々しき問題というとこ ろまでは、かなり経営者なり何なりの共通した認識があるのですが、その問題はどのよ うな能力が足りないかという鋭い認識が不十分なケースが多々あります。百歩譲って、 そこまではわかっているケースもあります。しかし、どうやったらその能力が付くかの 方法論が思い付かない。  先ほどのプロジェクトマネジメントの話でわかりやすく言うと、部下が言ってこなか ったとします。わかっているのになぜ言ってこない、今の若者は駄目だという問題で終 わってしまうと身も蓋もありません。プロジェクトマネジメントがそれを引き出すとい うよりも、プロジェクトマネジメントに対して、何か悪いニュースでも安心して伝えら れるような雰囲気のマネジメントスタイルを作る能力を、マネージャー側に付ければい いのではないかと思うかどうかというのは、結構深い洞察なのです。そこまでいってい ない気がします。  そこまでいったとしても、どうやったら今のマネージャーにそういう能力がつくかと いうと、またこれが難しいのです。この2段階くらいの困難が待ち受けていて、なかな か企業が動きにくいのです。  ただ、共通的な部分があるので、業界オーダーメイド型というのがありましたが、あ のような基本的な発想の中で救える部分が結構あると思います。それについては、本当 に必要な能力は何か、その能力をつけるためにこのような方法論があるということを、 企業側に「なるほど」と言わせるぐらいの専門性のある人がうまく動いて、試行錯誤し ながらだんだんプログラムを作っていく形でないと駄目だと思います。企業からの学校 への投げかけも同じなのですが、取って付けたように「コミュニケーション能力」とい うと、コミュニケーション講座となりがちなところの間に噛ます方法論と、本質を見抜 く専門家の育成がないと、インセンティブ以前の問題として難しいと思います。 ○諏訪座長  非常に重要な問題提起だと思います。 ○黒澤委員  今考えられているオーダーメイド型の訓練においては、例えば1つのオーダーメイド のパターンが出来上がった場合、その内容や詳細についてはオープンにしているのでし ょうか。 ○能力開発課長(久保村)  オーダーメイド型訓練そのものを、その段階ですぐにホームページで公開するなど、 そうしたことはしておりません。ただ、ノウハウ自体は全体的に集めて、事例集を作っ たり、研究をやっていただいて1つのパターンにするなど、そういうことは独立行政法 人雇用・能力開発機構の方で取り組んでいます。 ○黒澤委員  何でそういうことを申し上げたかというと、今、高橋委員のおっしゃったような、業 界団体単位、地域単位など、ある程度同一産業の集積があるようなところというのは、 あそこがやったからこっちもやるという形で、だんだん普及していくという1つのモデ ルもあるかと思います。大手が絡んでいる場合の方が評判はいいようですが、アメリカ などではどことどこの企業が参画して作られた訓練は、どのくらいのレベルのエンジニ アの訓練に使われたか、何人が出席して、どういった内容で、その後はどのような評判 だったかということが全部ホームページに出ていて、それを他の企業なりが見て、私も やってほしいという形で、ポピュラーなものは永続的にやられるといったこともありま すので、それも1つの手かなと思いました。 ○能力開発課長(久保村)  そういう1つの各業界ごとの能力開発の典型パターン、例えばこういう部分について こういう能力を高める必要があるといったものを、能開機構で生涯能力開発体系図とい う形で業種ごとに整理をしていて、能力開発の事業主の相談に応じるときに、コンピュ ータに一部入っているので、こういうパターンがある、こういうところを強化した方が いい、こういうところを教育した方がいい、そのような教育相談には活用しています。 ○高橋委員  細かいところを見ないとわからないのですが、今、特に分野によっては必要な能力の 変化が激しいとか、文章にすると非常に陳腐化しやすい部分があって、文章にしても陳 腐化しない部分があって、どうしてもその辺が難しいと思います。もう1つは、業界自 身がどうしたらいいのかわかっていない部分もあるので、業界がお客さんなので、取り あえず聞きましょうという感じでいくと、彼らの言うことを聞いて、そのとおりにやっ ていると振り回されるという問題があるので、むしろこちら側が教えられるぐらいの専 門性のあるスタッフの体制を取っていくぐらいのつもりの方がいいのではないかと思い ます。最先端事例を用いた上で、普通の会社は学びたいというくらいのレベル、「こう やって教えればいいのだ」「そういうのを出そう」というくらいのものです。例えばフ リーランスの人と契約する形でもいいのですが、そういう専門家が揃ってくると、日本 版IIPのようなものをやろうと思ったときの中核になるコンサルタント集団になってい くのではないかという気がするのです。そういうものに乗ってくるかどうかが、また1 つの評価です。IIPのように、そういうことを熱心にやって、貢献もしてくれる会社に ポイントがつくというような。  どうしたらIIPで認められるようになるのかというと、コンサルタントが行って説明 して、「そういう教育をしないといけませんね」と言って、企業が一生懸命頑張るよう になるくらいの、最先端の企業が聞きに来るほどとは言いませんが、そのくらいの専門 化集団は欲しい感じがします。 ○玄田委員  大いに賛成する部分もありますが、一方では有能なコンサルタント集団が育成された ときの怖さがあると思うのです。つまり、例えばここに書いてあるような、働く人本人 に自分の能力をもっと明確にするようなYESのようなものを整備するのは必要だと思い ますが、本当は企業も、「お宅はどういう人を求めているのですか、あなた自身が明確 にしてください」という努力を求めていくべきだと思うのです。  コミュニケーションスキルが必要だといったときに、そのコミュニケーションスキル とは何ですかといったときに、コミュニケーションスキルだと。先ほど言ったように、 どうすれば育成できるかと言ったら、それは学校でやってくれではなくて、あなたはど のようなコミュニケーションスキルが必要かということを明確にしていかないと、労働 者ばかりに情報開示を求めて、企業は情報開示をしないというのは、どうやってもミス マッチが解消できないし、もっと言えば、コンサルタントが育てば育つほど、それにフ リーライドするというのが出てくるから、それは怖いのです。  どうすれば防げるかというと、1つは実績を示すことだと思います。次世代育成支援 で4月以降のプランを出すことになっていますが、公的にどのくらい社会全般、労働者 全般にオープンにする仕組みになっているのかは私は知りません。ただ、その企業はど れだけ人材を活用し、育成しているかというのは、年齢構成、女性の離職率などを見れ ばわかるわけです。今までの情報開示というのは、有価証券などに見られるように、人 的資源の情報に関しては極めて限られた情報しか開示されていないわけで、業界として の人材ニーズを明確化するというと、また業界というような流れで、あなた自身の求め ている人材はどこにあるのかということを事実上促したり、インセンティブを作るよう なものにしていかないといけないし、そのための1つは、労働者にも自身の能力を開示 するような仕組みを整備するのなら、企業個々に対しても能力開示を明示する。  私が思うのは、推進企業表彰も、いろいろなフィードバックの表彰も、本当は企業が アピールすることを社会全体としてサポートすることを促すものであるはずだし、本来 はカウンセリング、コンサルトの養成と同時に、企業自身が積極的に自分自身の持って いる人的資源を開示することがメリットになるような仕組みを作っていくことが両輪で あって、初めてその仕組みがうまくいくのだと思います。 ○北浦委員  確かに、企業の側ももっと明示しないといけないのですが、その動機づけになるのか わかりませんが、わりと労働組合の役割もあるのかと思います。最近は産業別の組合で も、職業ごとの組合という意識がだんだん出てきて、その中で能力開発に関心を持った り、それをベースにした労働条件の決定など、そういう発想が少しずつ生まれてきてい ます。そういう意識ができてくる中において、今のような話ももう少し解けてくるのか と思います。そういった意味で、それを労働組合の固有の役割と見るかどうかは別です が、私は1つのきっかけにはなるかと思っていますので、そういったところも含めて考 えていったらいいのではないかと思っています。  別の話なのですが、大変数字が大きいので整理しておかなければいけないと思ったの ですが、職業能力開発推進者が7万人以上います。7万人の方がどのような活動をして いるかをきちんとフォローできるのか。これは相当な数だと思うのですが、そこの役割 をどういう位置づけにしていくのか。現実的には当て職的になっている場合が多いと思 いますし、そこに講習というのもあるのですが、この辺の実態を教えていただければと 思います。 ○キャリア形成支援室長(半田)  職業能力開発推進者についてですが、どういった方々が専任されているかについては ある程度把握しています。ただ、その方々が推進者として具体的にどういう活動をして いるかまで調査していたかは定かに記憶していませんので、後ほど報告を取りまとめた ものを確認してお答えしたいと思います。 ○諏訪座長  次回でいいと思うので、宿題としてお願いします。 ○高橋委員  先ほどの玄田委員の発言に追加ですが、全くおっしゃるとおりで、思考停止になって しまうとしょうがないのです。先ほどIiP的と申し上げたのは、私の理解のIiPの特徴 は、「お宅の人材ビジョンは何ですか」「そもそも事業ビジョンは何で、そのためにど のような人材が必要だと理解していますか」というような質問をガンガンやって、ちゃ んと答えられないと認定されないという部分があるのです。だから、ややもすると日本 のそのような制度というのは、下手すると雑誌などが選ぶ何とかの会社などもそうなの ですが、客観的、自動的な数字だけで、議論を挟まずに決められるようにしたいという 思いになりすぎるのですが、それは無理で、絶対に主観的な判断を入れた方がいいと思 います。その代わり、最後は何人かの人間が合議制で決めるというのはあるのですが、 問題はそのプロセスでの納得性があって、「あなたのところではどう考えているのです か」と質問をしたときに、答えられなかったら駄目だと言えるだけの納得性のある人が 就かないと駄目です。  例えばそれはどういうことだと言われたときに、こういう会社であればこうだ、こう いう会社ならこうだ、こういうことを言っているわけですと、そのレベルぐらいまでは 言えないと駄目だということを、迫力を持って言えるレベルの人であればいいと思いま す。ただ、そういうプロセスがあって考えさせて、そこまで考えていなかったのでいろ いろ教えてください。こちらも勉強して自分で考えるといって勉強していって、最後は 言えるようになるというファシリテーションもやれるぐらいということであって、おっ しゃるように客観的に決められる、教えられるというのはまずいと思います。 ○諏訪座長  先ほど能力開発に関する一種のマップのようなものを久保村さんがおっしゃっていま したが、1つの有効な方法だというので最近行われてきているのですが、昔からあった 1つの刺激策は資格制度だったのだろうと思います。言うまでもなく、製造業、建設な どでは資格制度がたくさんありますが、今たくさん増えている第3次産業、第4次産業 的な部分に関しての資格制度のようなものが十分にうまく作られていなくて、これが市 場横断的な行動に対してマイナスになるということをよく言われていますが、それだけ ではなくて、今野浩浩一郎さんなど、いろいろな人が前から言っていますが、資格制度 は勉強をするときのやり方を教えてくれるわけです。こういう資格を取るためには、こ のような能力、このような知識が必要で、それに対してはこのような勉強方法があっ て、このようなことがあると、かなり体系化されています。勉強する上でやりやすいの ではないかと思うのです。  このようなことを申しますのは、実はうちの学生の3、4年生を対象に、学習態度の 調査をやっています。そしたら大変なことに気づきました。中学、高校教育は、大学受 験、高校受験、上級学校への進学の刺激がないと、勉強をさせるのがすごく難しいと言 われています。実は大学もそういうところがあることが見つかってしまったのです。大 学の勉強を一生懸命しているという学生と、そうでないという学生、ゼミを一生懸命や っているという学生と、そうでない学生。こうした学生の差は確かにあるのですが、た いしたことはないのです。何がものすごい差を生むかというと、資格の勉強をしている かどうかですごい差が出るのです。  例えば私の学部ですと、資格の勉強をしていない3、4年生は、授業外では平均週5 時間ちょっとくらいしか勉強していないのですが、資格の勉強をしている学生は平均で 18時間以上なのです。  ということは、一体資格とは何なのだろうと考えてみたら、結局資格というのは、勉 強の仕方がかなりきれいに見えて、それに比べて大学の勉強というのは、何をやったら どうなるというのがあまり見えないのです。とにかく一生懸命勉強しろということは先 生も言うのですが、先ほど高橋委員がおっしゃったような、あなたはどこの能力が足り なくて、どこをどう埋めるかということは言いません。ところが資格の勉強の場合に は、絶えず模擬試験などをして、自分のどこが足りない、この成績を上げなければいけ ないというようなことを知ることができます。教育訓練機会の提供の在り方ということ では、こうした部分も大事なのかと改めて思っています。ほかにいかがでしょうか。 ○北浦委員  先ほど来の議論を聞いていると、能力開発だけではなく、学習支援というキーワード も作って、全体を組み替えないといけないのかという気がしてきます。そういった中で 考えると、前にも出てきた、教える人の問題で、今までのインストラクターでいいの か、そこは少し考えないといけないと思います。もっと学習支援のコーディネーターと いったものも含めて、教育の補助者のようなものをバラエティーに富まして考えないと いけないと思います。  もう1つは、専門性を持っているという意味で言うと、先生が専門家として養成され るのも大事だと思うのですが、例えば職業ということですと、業界の中の専門知識を持 っている人が一番の教える人となっていく。OJTの世界はまさにそうであるわけです から、そういったところで、もっと登用される仕組みも考えていく必要がある。今一番 大事なのは、体制を整備すると同時に、一方的に教えるのではなく、いろいろな教え 方、学び方を支援してくれる人をどう作り出すかというところはかなりこれからの政策 としての重点になるのかという感じがします。 ○諏訪座長  ほかにいかがでしょうか。 ○黒澤委員  先ほど私は若年の方はパイプが非常に太くなってきたと申し上げたのですが、論点整 理案を拝見しても、予算の概要を拝見しても、一度外部労働市場に出ないといけないよ うな若年以外の求職者については、訓練というところから議論が始まっているような気 がしてなりません。これには賛否両論あると思うのですが、どのくらい就業ありきと考 えるのかについても、議論すべきではないかと思います。つまり、職業紹介ということ がまずあって、そういった職業紹介レベルの求職支援、アドバイスというか、どうやっ てレジメを書くのか、適性を気づかせる、職歴の棚卸し、そういったことでも就業でき る人であれば、別に公的に訓練をする必要はないわけです。そのプロセスを経て、訓練 という形での公共訓練の位置づけとしていくのかどうか。今は必ずしもそのようになっ ていないのではないかと思うものですから。それが1点目です。  もう1つは、教育訓練給付制度についてですが、業務統計を拝見しても、誰が一番使 っているかというと20代、30代の女性です。あまりいいデータではないのですが、回帰 などやりましたら、そういう人たちの所得に影響のある状況ではまだない。ヒアリング などで伺っても、ちまたで恰好良いと思われているような内容の訓練を受けてしまっ て、それが労働市場でどのくらいの価値があるのかというアドバイスを全く受けずにや っている。誰が一番知っているのかと言えば個人が一番知っているのかもしれません が。この教育訓練給付については、大体が在職者です。しかしながら、もう少しそこに アドバイスなり、何らかの形で方向づけをする可能性も考えてもいいのかと思います。  企業主導から個人主導にシフトしていることは間違いないと思うのです。いろいろな 調査を見ても、企業の方は個人でやってほしいという形にどんどん移行しています。能 力開発の調査などを見ると、個人の労働者もその必要性はどんどん感じています。しか し、その実施率やその状況は伸びていないのです。何をやっていいのかわからない、ど うやっていいのかわからないというところもあると思うので、その部分の手当もどうし ていくかを考えないといけないと思います。 ○山川委員  先ほどの資格の話で、確かに資格を目指しているとよく勉強するというのは法科大学 院にいるとよくわかって、平日の睡眠時間は4、5時間ぐらいで勉強していて、大変そ うだと思っています。問題は専門家になった段階での、専門家集団の役割ではないかと 思います。今、新聞や雑誌の裏表紙などを見るとやたらと資格のことが載っているので すが、どのくらい就職に役立つかなど、専門家であることの効果がよくわからないもの もあります。星が3つ付いたり、5つ付いたりしていることはあるのですが。  それはともかくとして、専門家集団の自律的なトレーニングがどのくらいあるのかが ちょっと気になります。例えばアメリカの弁護士会では研修を受けないと資格がなくな るとか、そこまでやっているのですが、他の専門家集団でも、そういった自律的にトレ ーニングするような機会があるかどうかということ、労働組合の役割という話が先ほど 出ましたが、必ずしも大きな部分ではないのではないかとも思いますが、その他に専門 家集団の役割のようなものも考えられるかと思います。 ○高橋委員  今のお話に少し関連するのですが、私も素人ですのでよく知らないのですが、私もヨ ーロッパに行って聞いたら、イギリスなどでは弁護士資格は弁護士会が認定するのです かね。要するに、ドイツでは医者の世界で、要するにプロフェッショナルという伝統の ある欧米の場合にはプロフェッショナルという職業の職業団体の人たちが倫理規定も含 めて全部認定します。だから、プロ中のプロがプロを認定する仕組みがあって、その中 には客観的な知識以外のもの、いろいろな要素を入れられるのですが、日本の場合は基 本的に全部御国主導になってしまうと、どうしても主観的な部分を入れられなくなって きて、見るべき能力が落ちてきているという背景があるような気がするのです。だか ら、職業団体主導で、プロフェッショナルという職業グループができてきたという背景 のない日本において、どうするのかと考えてみると、下手すると資格も表面的な知識だ けに走ってしまいがちな、それ以上の部分に突っ込むと批判を免れないとなってしまう と難しいのかという感じがします。 ○諏訪座長  誤解を招かないように、私が先ほど資格と言ったのは、だから資格をたくさん増やし てやらせろという意味ではなくて、資格を受けるとなぜ勉強するのかという、このメカ ニズムです。それから、資格をやって、仮に取ったときもそうですが、取らなかったと きに何が自分に残るのかという、ここの分析が重要なのではないかということです。と 同時に、資格もより現実的なというか、市場、時代の変化とのかかわりで、意味のある 資格が絶えず見直されていくことも重要だと思います。  高橋委員がおっしゃられた倫理のような部分を抜け落としたままに、プロフェッショ ナルの倫理が欠けたまま、表面的な専門知識やスキルを判定することがいいのかという のは、非常に重要な次の問題なのかと思っています。プロフェッショナルな倫理という のは、どこでどのように作っていくべきなのか、高い専門性を持つというところは、同 時に非常に高い職業責任を負っていくわけで、医者の医療過誤などはその限界的な例だ と思います。こうした問題も含めて、専門家集団、教育訓練ということでは確かに重要 だと思います。  というわけで、今日はややあっちへ飛んだり、こっちへ飛んだりで議論をいたしまし たが、これまであまりしなかった点のご指摘が多々あったと思うので、これらをまとめ ていただいて、次回、さらにご議論をいただきたいと思います。事務局は次回、次のテ ーマである、職業能力評価制度の在り方をさらに議論を詰めていただきたいという要望 が出ているので、ひとつ頭の片隅にでも置いておいていただければと思います。事務局 は今日の議論を整理していただいて、全体に論点整理の構成等も少し見直しなどをし て、次回の会議にご用意いただきたいと思います。次回日程などについてご説明をお願 いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  次回は2月16日(水)10時からの開催を予定していますので、よろしくお願いしま す。 ○諏訪座長  では、これにて第8回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会を閉会とさせてい ただきます。本日も熱心なご討議ありがとうございました。