05/01/27 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会（循環器ワーキング・グループ）
         第２回議事録


　胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会（第２回循環器ワーキング・グループ）


１　日時　　平成１７年１月２７日（木）１６：００～１７：４５

２　場所　　厚生労働省専用第１７会議室

３　出席者　医学専門家：奥平雅彦、笠貫宏、髙本眞一、西村重敬、横山哲朗　（５０音順）
　　　　　　厚生労働省：明治俊平、渡辺輝生、神保裕臣、菊池泰文　他
４　議事内容

○職認官
　ただいまから、「第２回循環器ワーキング・グループ」を始めます。議事に先立ち、
事務局に異動がありましたので、ご紹介申し上げます。

○補償課長
　１月10日付で補償課長に就任いたしました明治でございます。どうぞよろしくお願い
いたします。先生方には循環器の障害認定について、専門的な立場からご検討いただい
ているところで、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。私は医学的なことは全く
の素人ですが、一生懸命勉強していきたいと思いますので、何分ご指導方、よろしくお
願いいたします。

○職認官
　それでは座長、よろしくお願いいたします。

○笠貫座長
　それでは討議に入る前に、事務局から提出資料の確認をお願いいたします。

○障害係長
　資料１「第２回循環器ワーキング・グループの主な論点」、資料２「胸部臓器分野の
障害認定に関する専門検討会報告書（たたき台）II循環器」、また、前回の会議の議事
録を机上にお配りしております。

○笠貫座長
　前回討議された、ペースメーカ等を植え込んだ場合の取扱いについて、その後の検討
で事務局からご説明がありましたら、お願いしたいと思います。

○職認官
　11頁からが、ペースメーカ等を植え込んだ場合の取扱いの記述になっております。前
回ご指摘いただいて修正いたしました所をご報告申し上げます。11頁の末尾の行の「激
しい運動時に」云々という文章の中に、前回までは「徐脈が出た場合に」という表現が
入っていたのですが、おかしいということで修正いたしました。
　12頁の（５）のアのまた書きですが、「また、ペースメーカの植込み後に」という文
章があって、前回は運転することは基本的に制限されるということを一律に書いていた
のですが、必ずしも全面的に制限されるわけではない、ペースメーカも一定の制限があ
りますということで、警察庁から通達が出ておりましたので、その通達の仕組みをなぞ
って、そういうように書かせていただきました。
　除細動器を植え込んだ場合についても、13頁の（ウ）の「さらに」という所に、同様
の文章があります。除細動器の場合は学会の見解として、大型免許及び第二種免許の適
性はないということが示されているものですから、障害の内容として重要であろうとい
うことで、ペースメーカにはありませんが、除細動器のほうにはこういう記述も加えて
おります。そういう所が主な変更点です。
　ペースメーカについては前回、ここの記述以外に、心筋梗塞を発症した後に植え込ん
だ場合に、両者の障害を総合的に評価してどうなるかという点についてもご議論いただ
きました。いまはペースメーカを別項として作っているのですが、実際には何かの病気
があって、その治療としてペースメーカを植え込むということですから、そこら辺の整
理を最終的にどうするか、循環器の検討全体が終わった段階で、書き方についてもう一
度整理してお諮りしたいと思っております。ですから、そこは少し保留にさせていただ
いて、現在のところは、こういうように手直しをしたということで、ご報告させていた
だきます。

○笠貫座長
　心停止については、原因疾患に関して、心筋梗塞以外の場合にどう議論するか、前回
も奥平先生からご指摘いただきましたが、これは業務上の疾病ではないというお話があ
りました。心筋梗塞以外の基礎疾患があった場合、あるいは全く基礎疾患がなかった場
合は、ペースメーカ等として扱うということですね。心筋梗塞の中に含んでしまうかど
うかということですね。その点については最終的なまとめのときに、またご検討いただ
くことにしたいと思います。
　ただいまの文章について、ご意見はございますか。

○奥平先生
　細かい点ですが、13頁の（６）にア、イ、ウというのがありますね。ウの「以上のこ
とからすると」の１行上に、「適正はないとの見解を有している」とありますが、これ
は「適正」ではなくて「適応」ですか。

○職認官
　原文は「適性」です。

○奥平先生
　もう１点は、ウの５行目です。「なお、除細動器は心室細動というより致死性の高い
」、そこの「という」の所に、読点を入れておいたほうが。「いうより」と読まれるこ
とはないとは思うのですが、より分かりやすいのではないかと思います。

○職認官
　はい。

○笠貫座長
　除細動器の所では、「日本ペーシング・電気生理学会は」云々と書いてありますが、
具体的に紹介したほうがよろしいのでしょうか。これはステートメントだと思います
が、「相当に高いと認められる」ということにするか、具体的に学会名を書いたほうが
いいのかどうか。これまでこういったものはお書きになっているわけですか。

○職認官
　事務局としては、例えば学会のガイドラインではこうなっていますというものが具体
的にあって、根拠としてしっかりしているのであれば、書かせていただいたほうがより
しっかりした話になるのではないかと思っているのですが、学会でこういう所に引用さ
れていることに何の異議もないということかどうか、ちょっと分かりませんということ
だとすると、強引に引用するのは差し控えようかということです。

○笠貫座長
　デリケートな問題ですね。多分、学会としてもエビデンスを示すことになると、難し
いかもしれないですね。

○職認官
　であれば、抽象的な書き方にさせていただきますか。

○笠貫座長
　「相当に高いと認められる」ということにしておくだけでも、（ウ）は十分通じるの
ではないかと思うのです。免許の保留については、特に大型免許及び第二種免許の適性
はないということになると、学会の見解と、警視庁では、かなりグレーな表現になって
います。それをどうするかについては、ケース・バイ・ケースの判断という形になって
いるかと思います。はっきり「適性はない」という形になると、かなりきついかもしれ
ないと思います。

○職認官
　ペーシング・電気生理学会の見解の話ですから、先生がそうおっしゃるのであれば。
この記述がないと成り立たないという所ではありませんで、障害の材料があるなら、で
きるだけきちんと示しておこうということですので。

○横山先生
　出版された報告書などで取り上げているもの、ないし交通法規ではっきりしているよ
うなものがあれば、資料として詳細なものを書いておいてあげたほうが、読む人には親
切ではないでしょうか。

○笠貫座長
　引用文献ではなくて、やはり本文の中に入れておいたほうがよろしいですか。これを
決めるに当たってのプロセスでは、エビデンスがなくて非常に苦労をしたという経過が
あります。特に日本の場合は植込み型除細動器が、欧米に比べて遅れて導入されたこと
もあって、日本のデータがないのです。大型免許と第二種免許が適性ではないと考えら
れています。

○横山先生
　欧米の場合、大型免許というのはあるのですか。

○笠貫座長
　特別にこういう形ではないかもしれませんね。

○横山先生
　たしかなかったと思います。

○笠貫座長
　アメリカの場合は、免許の細かいことには触れていませんし、確率論でどちらが許容
範囲ですかということを決めるのは、国民的にもかなりコンセンサスが得らるようです
が、日本の場合はそれがなかなか得られないので、学会の見解としては、こういうより
安全なものを示したのだと思います。西村先生はいかがでしょうか。

○西村先生
　確かに難しいので、先生がある程度ご判断されたらどうでしょうか。

○笠貫座長
　わかりました。

○西村先生
　それから12頁の（５）のアの第２パラグラフですが、「また、ペースメーカの植込み
後に」の所で、「徐脈により」という限定が入っておりますね。確認ですが、「徐脈」
というのは、もともと入っているのでしょうか。「意識消失」ではなくて、「徐脈によ
り」ということですか。

○笠貫座長
　あれには入っていなかったと思います。植込み後に失神発作があるかないかというこ
とだけだったと思います。

○西村先生
　常識的にはそうではないかと思うのですが、それが現実的にはなかなか分からないの
です。

○職認官
　原文が「不整脈により」となっていますので、直させていただきます。

○笠貫座長
　先ほどの学会の件は、具体的に書いたほうがいいというご指摘を、横山先生からいた
だきましたが、学会で作る側としては、エビデンスがそれほど強くはなかったかと思っ
たものですから、こういうものに書くには根拠が少ないのではないかと思ったのです。
ただ学会の見解として出していますので、少し検討していただくことにしたいと思いま
す。

○職認官
　ここは文章を直して、また先生にご確認いただくようにいたします。いま西村先生に
ご指摘いただいた点は、13頁の除細動器の表現でも、「頻脈等」と書いてありますが、
ここも「不整脈」に整理させていただきます。13頁の真ん中辺りのちょっと下、「さら
に」という文章です。

○課長補佐
　西村先生のご指摘は、「徐脈により」という所が不必要ではないかということです
ね。

○西村先生
　あるいは徐脈だけに限定できるのかという話です。

○課長補佐
　不整脈ということであれば。

○職認官
　警察庁の文章がそうなっています。

○笠貫座長
　ほかにございますか。特にないようでしたら、ペースメーカ等については、後日、ご
検討いただけたらと思います。
　次に、心筋梗塞に入ります。それでは事務局からご説明をお願いいたします。

○職認官
　資料１の１頁です。心筋梗塞については、いろいろとご議論いただいてまいりまし
た。現在の論点として残っているのは、具体的な治ゆの基準と、どういう範囲のものが
治ゆするかということに伴っての障害等級だと思います。それをご議論いただければと
思います。
　治ゆについてはアとイの２つがあります。アは、心機能に着目し、その低下の程度に
よって、その後さらに低下していく、それが概ね横這いかどうか、あるいは明らかに下
向きに傾いているかどうかというところで区別しましょうと。イの不整脈、虚血という
のは、また違う観点での検討が必要ですが、それぞれが「治ゆ」と言えるような状態に
なっていた場合に、全体として治ゆにしましょうということです。
　アですが、心機能のほうの考え方としては、概ね合意をいただいていたのかと思いま
す。あとはどう表現するかというところでの議論ではないかという理解でおります。前
回の議論では左室駆出率は重要だけれども、心機能をズバリ数字で表すのは困難であ
る、したがって定性的な表現で定めたらどうかということで、アの最後の文章として、
「心機能の低下が軽度に止まるもの」という表現で、報告書も作らせていただいており
ます。その場合、軽度というのがどのぐらいなのかというところが分かりにくいですの
で、左室駆出率40％以上というのをひとつの目安とし、若干下回っても治ゆとなる場合
もあるし、これを上回っても治ゆとならない場合もありますということを、軽度の判断
材料として書かせていただきました。
　イですが、不整脈について前回のご議論では、悪性の不整脈と言いますか、心室性期
外収縮の連発、頻発、多形性のもの、R on Tといったものが、心室細動につながりやす
いと言われています。そういうものは具体的に、限定的に列挙するのはなかなか難し
い、あるいは適切ではないと思われるので、これも総括的に、「悪性の不整脈」という
表現で示してはどうだろうかと。そういうものがあれば駄目です、なければ心室性期外
収縮が多少あっても、それ自体は治ゆを妨げるものではないということで、概ねまとめ
ていただいたのではないかという気がしております。そこら辺は表現ぶりも含めて、ご
確認いただければと思います。
　ご議論が残っていると思われるのは、イのまた書きの心筋虚血の扱いです。あまりひ
どいものが残っていれば、治ゆにならないのは当然ですが、多少残っている場合にどう
するかというところは、本日、ご議論をいただければと思っております。事務局の案と
しては、最後の１行のカギ括弧に書いてありますように、「残存する心筋虚血が軽微な
ものに止まるもの」は治ゆとしてはいかがかと。一応、先ほどの心機能の低下について
は「軽度」という表現を使っておりますが、この場合の「軽微」というのは、それより
もより軽いものということです。定性的な表現ですが、相対的にはそういうレベルのも
ののみなら治ゆとしていいのではないかという案で作らせていただいております。
　障害等級ですが、これまでご議論いただいたよりも、かなり状態のいいものだけを治
ゆにしましょうというように収束してきたのかという気がしておりますので、結論とし
て障害等級は11級の単独等級でいかがかと。いろいろなケースを考えますと、若干11級
を超えるものもあるのではないかという可能性も考えられなくはないのですが、等級の
切分けの基準をどうするか非常に難しいというか、妥当な基準を設定することが困難で
あることも考え合わせて、治ゆの範囲を上記のようなものにすれば、11級単独の等級で
十分妥当ではないかということで、案をまとめました。ただ、それは虚血の扱いをどう
するかによって、若干影響が出てくる問題ですので、そこはご議論いただければと思っ
ております。
　全体的に手直しをしておりますので、本来は最初から読み上げるのですが、時間の関
係もありますので、前半は概ね医学的なことを整理して書いた部分ですので、後ほどご
確認いただきたいと思います。本日は７頁の上のほうのイ「労災保険における心筋梗塞
の治ゆ」から読み上げます。

○障害係長
　（７～10頁の読上げ）

○笠貫座長
　「心筋梗塞の治ゆ」については、今までもご議論いただいたと思いますが、ただいま
の説明にご意見、ご質問はございますか。

○横山先生
　１頁のイのいちばん最後の行で、特に追加するとおっしゃった所です。「『残存する
心筋虚血が軽微なものに止まるもの』を治ゆとする」とありますが、この「もの」とい
うのが重なっているのが、文章としていかがかと思うのです。

○職認官
　１頁の資料そのものは、後に残す文章ではなくて、今日の私の説明の便宜に作ってあ
る資料なのです。本文に書くときには、いまのご指摘を踏まえて、不備がないようにさ
せていただきます。

○横山先生
　この「もの」というのが、後からやたらに出てくるのです。そこら辺はもうちょっと
整理したほうがいい。
　それからこの前も、たしかご指摘があったと思うのですが、センテンスが長すぎるか
ら理解しにくいところがあると思うのです。文章を適当に句点で切って、迫力が出てく
るように直していただくと、もっといいものになるのではないでしょうか。同じことを
言っていながら、何かピンとこないのです。

○笠貫座長
　文章のご検討は、よろしくお願いいたします。治ゆに関して、心機能については、
「軽度に止まるもの」という記載だけにしたらどうかということですが、西村先生、こ
れでよろしいですか。

○西村先生
　基本的にはこれでよろしいと思います。あとは言葉遣いや表現を少し直していく。例
えば７頁の（ア）のａです。これでも多分、そんなに間違いではないと思うのですが、
第３パラグラフに、「心機能低下の程度が小さい」というのがあります。この「小さい
」というのは、あまり馴染まないかもしれませんので、「軽度」とか、そういう言葉
を。その３行下にも「心機能低下の程度が小さく」と出ております。
　同じ頁のｂのいちばん下のパラグラフの１行目に、「心筋梗塞については、急性症状
の再燃」とありますが、「再燃」か「再発」か、「再発」のほうがいいような気がしま
す。
　８頁の（イ）のａの第２パラグラフです。私が、同じ左室駆出率40％でも症状が出る
出ないは、年齢やいろいろな要素がありますという説明をしたので、ここに入れていた
だいたと思うのですが、このパラグラフが本当に要るのかどうか。場合によってはなく
てもよろしいのではないかという気がします。
　次のパラグラフでも、同じく「心機能低下の程度が小さく」という言葉があります。
　９頁の「しかし」というパラグラフに、「残存する狭窄が軽微なものに止まる場合」
という文章も、少し直さないといけない。残存する狭窄が軽微であれば心筋虚血が出な
いので、これは適切なものに。「残存する狭窄が及ぶ範囲が狭い」とか、「狭窄度が比
較的高度でない」とか、そんな表現の併用になるのではないかと思います。
　「また、心筋虚血の有無については、検査方法によっても異なるなどのこと」という
のは、確かにこのとおりですが、これをどういうようにうまく表現するかです。例えば
「心筋虚血の有無については、評価法の標準化が困難等のことから」とか。普通、虚血
の程度と言いますと、強さと範囲と場所がどうかという、この３つで評価するのです
が、それを標準化することがなかなか難しい。運動負荷の心電図検査ですと、それもな
かなか出来ませんし、シンチという検査がどこでも出来るわけではありません。それか
ら、症状があるかないかぐらいの評価でするのです。その基準化・標準化が難しいの
で、内容としてはこういう意味になるとは思うのですが、ここの文章は適切にしたほう
がいいのではないかと思います。

○笠貫座長
　９頁の残存する狭窄が高度でないというのと、先生がおっしゃった広く及ばないとい
うのは、末梢の病変だということですね。

○西村先生
　そうです。

○笠貫座長
　これが是非入ったほうがいいと思います。75％以上あっても、90％、99％ではないと
いう意味で、狭窄そのものが高度ではないと。また太い所ではなくて末梢の所だという
意味なので、「広く及ばない」というのはいい表現だと思います。あるいは「末梢の血
管の」どちらかでご検討いただきたいと思います。
　それから８頁の心機能低下の上から４行目ですが、「心機能の低下が著明」と言う
と、30％以下になってしまいますから、「40％未満に低下している場合には、中等度以
上の心機能の低下とされている」と言うほうがいいのでは。

○西村先生
　あと、同じく修飾語の使い方で、同じ文章のａ、第１パラグラフの下から２行目に、
「その後の心機能の低下は極めて」というのがあります。この「極めて」を削ったほう
が、誤解を招かないのではないかと思います。

○笠貫座長
　それから８頁のｂ、「不整脈及び心筋虚血について」の６行目です。「頻脈性不整脈
」でもいいのですが、ここに「心室性頻脈性不整脈」と入れるのはどうでしょうか。

○西村先生
　いや、いいのではないでしょうか。

○笠貫座長
　入れておいたほうがいいかもしれませんね。「心室性」というのを入れていただけた
らと思います。
　「悪性心室性期外収縮」という言葉は、あまり一般的ではないかもしれないので、こ
れを「危険な不整脈」に変えていただければと思います。その前に具体的な説明が入っ
ていますから。そういう意味では「心室性」の下の「悪性であるときは」というのを除
いて、「多形性の場合は」というように書いて、「したがって、こうした危険な不整脈
が残存している場合」というように書いていただけたら、一般の先生にはわかりやすい
かもしれませんので、そういうようにお願いしたいと思います。
　この前ご議論いただいた３ヶ月については、「概ね約３ヶ月後であり」ということ
で、奥平先生、よろしいでしょうか。

○奥平先生
　はい、いいです。

○笠貫座長
　「心筋梗塞の治ゆ」については、非常に一般的にわかりやすいと言いますか、あるい
はケースによって、医師と患者サイドの裁量もある程度入れられるのではないかという
感じはするのですが、横山先生、いかがでしょうか。表現がやや曖昧にはなってきたの
ですけれど。

○横山先生
　意識的に書いていらっしゃるのかもしれませんが、全般的に曖昧な表現が多すぎるよ
うな気がします。例えば委員会のメンバーが考えたのか、一般の人が考えられるのか、
その辺の表現の仕方です。
　それと７頁の下から３行目に、「疾病一般に比べると多い」というのがあります。
「くらべる」というのは「比」のほうですか、「較」のほうですか。これにはいろいろ
な意見があると思うのですが、むしろ議論を避けるのだったら、「比較すると」と言っ
てしまったほうが楽ではないかと思います。
　８頁には左室駆出率を計算する式がありますが、「×100」というのが付いています。
この「×100」というのは、ここに置いておくより、むしろ分子のおしまいの所に持っ
て行ったほうが、誤解が少ないのではないでしょうか。

○職認官
　はい。

○笠貫座長
　現在のエビデンスでいくと、これまでの議論の中での、ＥＦを40％に固定するという
のと、具体的に期外収縮の頻発が何個以上というのは、完全に決められないところがあ
って、表現がかなり曖昧に取れるようになっているのです。それについては専門家の中
でもコンセンサスとして、こうしなさいと言うと異論が出てくるということで、お認め
いただけたらと思います。そういうことで、できるだけクリアカットにしようと努力は
してきたのですが、今回はこれでお認めいただけたらと思います。髙本先生、循環器外
科の先生としていかがでしょうか。

○髙本先生
　９頁の下から２行目ですが、「心筋梗塞発症後は、・・・特に過大な負荷が加わる
と、心機能の低下を早めたり」というのは、なかなか難しいですね。これは「心不全症
状や重篤な不整脈を誘発する等のおそれがあり」と。

○笠貫座長
　「心機能の低下」ではなくて、「心不全症状」ですか。

○髙本先生
　よくても負荷が相当強いと、それは起こり得ます。梗塞を起こさなかったら元に戻り
ますから、「心不全症状」ぐらいにしたほうがいいのではないでしょうか。

○笠貫座長
　ここは心機能症低下ということより心不全症状とか、自覚症状で書いていただく。そ
の上の「心機能の低下の程度が」の所は、「軽微」と言うよりも「軽度」に統一してい
ただくほうがいいかもしれませんね。

○職認官
　ここの意図の１つは、ものすごく小さなというか、本当に軽度な心筋梗塞だった場合
に、障害になり得るのか、11級になり得るのかというところも、押さえがほしいなと思
ったのです。不整脈・虚血はあってもわずかである、したがって障害の評価の対象は、
基本的には心機能が低下したことであるというように書かせていただいたので、それな
りに低下している場合には、こういう制限が出る、こういうことはできないと書けるの
です。しかし心機能の低下がわずかな場合、EF50％ぐらいありますというような場合に
も、やはりそれなりの障害、制限、あるいは避けるべき場面があるという異が言えなけ
れば、例えばEF50%以上は障害とは言えないではないかという議論が出てくるのではな
いかと感じます、心機能の低下を評価の中心にするのであれば。
　ここで「軽微」と書いている意図は、50％程度の場合であっても、それで息切れした
りするなどの症状はほとんど出ないでしょうけれど、負荷の大きい労作をするとこうい
う悪影響が出ます、したがって、やはり11級程度の制限は出てくるのですと、そういう
いう趣旨のことを書く必要があると考えています。「心機能の低下の程度が軽微」と書
いたのは、そういう意図です。

○笠貫座長
　軽度より軽いということで、「軽微」にしたわけですね。

○職認官
　ええ。軽い心筋梗塞でも、すべて11級になるのですと。軽いというのは、50％台ぐら
いの場合でもということです。

○課長補佐
　単にここは表現ぶりだけの問題ですので、例えば「非常に軽い」でもいいし、何でも
いいと思うのです。

○笠貫座長
　逆に言うと、11級に相当するということを言うためには、むしろ心機能が正常であっ
てもということですね。

○職認官
　正常という定義がどう出来るかわかりませんでしたので。

○西村先生
　下限ではなくて、上限を決めるというやつですね。

○課長補佐
　考え方としては、心筋梗塞を発症してそれが治ゆになった場合は、すべて11級にする
ということですので、軽い分はどんなに軽くてもいいということになるわけです。

○笠貫座長
　心機能の低下の程度を言っているわけですから、「心機能の程度にかかわらず」と
か、「心機能が正常でも」とか、むしろそちらにしておいたほうが、分かりいいかもし
れませんね。

○課長補佐
　そのほうがクリアですよね。

○西村先生
　２つはちょっと言いすぎかなという気がしますね。

○奥平先生
　心筋梗塞をどれぐらいの大きさから臨床的に認知できるかというのも、問題になると
思うのです。「心筋梗塞」という言葉だけで言えば、冠動脈が詰まって灌流域の心筋が
死ぬことですから、理論的には、非常に小さな範囲でも心筋梗塞と言えないわけではな
いのです。たしか昭和40年代だったと思いますが、心筋梗塞で亡くなった方を病理で調
べてみても、冠動脈の閉塞像が見つからないということがありました。現時点では急性
冠症候群でうまく説明できると思いますが、そのときに心筋梗塞の大きさというのはど
ういうものか、どれくらいの大きさがあれば心筋梗塞と言うのかという議論があったと
思うのです。やはり顕微鏡的に認知できるようなものではなくて、肉眼的に容易に認識
できるような大きさ、範囲のものを想定しないと、臨床的にもなかなか診断ができない
のではないかという感じがするのですが、この場合の心筋梗塞の概念はいかがでしょう
か。

○笠貫座長
　これについて西村先生はいかがでしょうか。

○西村先生
　臨床的には心筋の逸脱酵素、あるいは心筋マーカーがカットオフよりも上がるという
甘い基準から、やはり３倍を超える、かつ臨床症例で胸痛があった、かつ心電図に何ら
かの変化があったものを、心筋梗塞と定義している場合が多いです。先生がおっしゃっ
たのは、完璧性の梗塞以外の心内膜下、心電図ですとＴ波の変化だけが出たもので、ク
レアチンカイネースが300、400上がっていても正常を超えていますので、臨床診断は心
筋梗塞となります。そういう方はほとんど心機能障害を起こさないので、３ヶ月ぐらい
で診ると、心機能はほほ正常なところに戻っている。そういうものから入ると思いま
す。

○奥平先生
　そうすると最低限、臨床的に診断されていることが条件になりますね。ただ言葉だけ
で言うと、「心筋虚血」という用語がたくさん出てくるものですから、理屈だけで言え
ば、臨床的にはとても心筋梗塞とは診断されないようなものも、入ってきてしまうので
はないかという印象を受けたのです。

○課長補佐
　労災の世界で考えれば、すでに業務上の認定を受けて、心筋梗塞という診断名を受け
て、治療をして、治った人がここに出てきますので、実務的にその心配はありません。
すでに監督署長から、この人は業務に起因する心筋梗塞ですという認定を受けて、初め
てここへ来ますので、その意味で、その問題はあまり考えなくてもいいのではないかと
思います。

○奥平先生
　もう１つ、これも文章全体ですが、７頁の（ア）のａの４行目に、「一般に、労災保
険制度においては」という言葉が出てきます。こういう「一般に」という言葉は、本当
に必要なのだろうか。労災保険制度においてはこうなのだということを言うのですか
ら、「一般に」は要らないのではないか。
　そういう細かいことを言っていくと、下のほうの「したがって」というパラグラフ
に、「心筋梗塞の発症後も、心機能低下の程度が小さく、そのため、症状が安定してい
るものはあると考えられる」とありますが、この「そのため」という言葉が、実はこの
文章の中のいろいろな所に出てくるのです。「そのため」とか、「その結果」という言
葉が出てきますが、これはもしかしたらなくてもいいのではないかという感じがいたし
ました。
　ついでですが、「このため」というのが、８頁のちょうど真ん中辺りにあって、その
２行上に「その他、梗塞巣の範囲と部位」というのがあります。一般的には「部位と範
囲」のほうがいいかという細かな所がありますので、是非ご検討いただければと思いま
す。

○課長補佐
　いまのは原案を書いている担当者の趣味と言いますか、これまでの文章の作り方の癖
みたいなものが出てまいります。体裁についてはいろいろあると思いますが、医学的に
これはちょっとおかしいという点は、はっきりご指摘いただければ、クリアに直してい
きたいと思います。趣味的なものはいろいろ出てまいりますので、なかなか難しいで
す。
　そういう意味でいきますと、先ほど西村先生から、８頁の（イ）のａの２つ目のパラ
グラフの「しかし」の所は必要ないのではないか、というご提示があったのですが、こ
こはどうでしょうか。ないほうがいいということであれば、消したほうがいいですし。

○西村先生
　いまおっしゃった最後の文、「心機能の低下に」云々、「因子が関係する」というの
は、入れたほうがいいかもしれませんが、年齢によってどうのこうのというのは、なく
てもいいのではないでしょうか。特にここだけ、年齢のことが唐突に出てくるような気
もしますし。

○課長補佐
　ここは意図的には。

○職認官
　全体としては左室駆出率が重要な指標ではあるけれど、それだけでは決められないと
いうことで、それだけではという所の理由を、少し書いておかないといけないというだ
けですから、最後の「梗塞巣の部位と範囲」というフレーズだけ残せば、このフレーズ
全体の役目は一応果たせるかと思います。

○西村先生
　そこへ発症年齢などを入れていただいてもいいかもしれません。

○笠貫座長
　そこは、その後の心機能の低下も著明になるということができるという次に、その心
機能低下には年齢、梗塞の部位と範囲、いわゆる「心室に対する負荷の大きさ等さまざ
まな因子が関係する」というようにしていただければ、整理されるかと思います。
　心筋梗塞の治ゆの基準については、コンセンサスが得られたと思いますので、心機能
の低下の表現の仕方、不整脈の表現の仕方、心筋虚血の表現の仕方を骨格にして、この
報告書のたたき台の修正をお願いしたいと思います。

○職認官
　等級は11でよろしいですか。

○笠貫座長
　ここは、前回11でよかったと思いますが、西村先生よろしいですね。

○西村先生
　はい。

○笠貫座長
　それでは、続きまして「大動脈解離」の検討に入ります。事務局から説明をお願いい
たします。

○職認官
　１頁に戻りまして、読み上げに先立ってご説明申し上げます。前回、大動脈解離につ
いては、報告書そのものはご覧いただかずに、その柱のところだけをご議論いただきま
した。治ゆについては、１頁のアとイに書いてある「解離した部位を全て人工血管に置
換したもの」、それから「偽腔閉塞型で、解離部の線維化が完成したもの」、これは概
ね治ゆとすることに異議はないだろうということでした。
　もう１つ、下行大動脈の解離部がまだ開存しているものでも、安定しているものがあ
るのかもしれない。要するに、血流が残っていても拡大しないものがある。拡大しなけ
れば、労災保険でいう安定治ゆ、ということを言えるかもしれないのではないか。そこ
のところを検討すべきではないかということで、今回文章を書かせていただきましたの
で、ご検討いただきます。
　事務局として、髙本先生のご指導をいただいた上で、まとめさせていただいた案文と
しては、拡大しなければ安定なのかもしれませんけれども、拡大しないということを見
極めることがどうもできない。２年か３年、大動脈径の拡大の状況を観察し、拡大して
いないということになったとしても、その後の拡大がないということの保証にはどうも
ならない。そういうエビデンスはちょっと見当たらないということで、考え方として
は、拡大しなければ安定し、治ゆということかもしれませんけれども、現実には治ゆと
することは難しい、困難であるということで書いておりますがいかがでしょうか。
　それから、障害であるかどうかということですけれども、１頁にあるアとイの場合に
ついては、障害を残すといえるのかどうか。もちろん、健常な人の大動脈とはちょっと
状態が変わってきてはいるわけですけれども、何かしら機能に支障があるかというと、
どうも支障があるとはいえないということで、「障害はない」というふうにまとめまし
たが、この点について改めてご検討いただければということです。
　まだ、報告書のたたき台を全然読み上げておりませんでしたので、14頁から読み上げ
させていただきます。

○障害係長
　（14～17頁の読上げ）

○髙本先生
　いちばん大きな間違いは、14頁の下から４行目で、解離が上行大動脈にとどまるのは
II型なのです。下行大動脈まで続くのはI型なのです。これは、医学的に明らかな間違
いですから直さなければいけません。
　その下の、「解離範囲が狭いもの」というのは、下行大動脈に限るものをIIIａ型で、
腹部横隔膜を越えて腹部大動脈に至るものがIIIｂ型なのです。範囲が狭いというか、
もっとはっきり書いたほうがいいと思います。

○職認官
　横隔膜を越えているということですか。

○髙本先生
　越えているのがIIIｂ型です。

○職認官
　そこで区切るということでよろしいですか。

○髙本先生
　そうです。その上の（ア）の病型分類の、スタンフォード分類が部位に着目して、解
離範囲を考慮したドベイキー分類というのは、両方とも部位と、IIIａ、IIIｂ……った
範囲がありますけれども、これは書かないほうがいいのではないかと思います。「解離
した部位に着目したスタンフォード分類と、ドベイキー分類が引用されている」と。
　スタンフォード分類はどちらかというと、その後の治療方法に関係してくるのです。
ドベイキーも、両方重なっていますから、あまり別々に書かないほうがいいと思うので
す。
　それから、（ウ）の治療のところはかなり変えなくてはいけないと思っています。２
行目の「解離した上行大動脈」、ときには上行弓部大動脈を換えることもあります。
「解離した上行大動脈あるいは上行弓部大動脈を人工血管に置換する緊急手術を行う
」。
　その上ですが、「破裂することが多いため」というところは、「破裂したり心タンポ
ナーデを起こすことが多いため、原則として、解離した上行大動脈あるいは上行弓部大
動脈を人工血管に置換する緊急手術を行う」と書いたほうがいいと思います。
　その下、I型とII型を入れ換えて、「このうち、ドベイキー分類II型については、解
離部を全て人工血管に置換することになるため、同じくI型については、下行大動脈の
解離部は残すことになる」のところはずっといいです。
　その次に、「なお、上記のとおり」の「上記のとおり」は要らないと思いますので消
す。「なお、Ａ型でも偽腔閉塞型となった場合でも、破裂する可能性はほとんどないた
め」というのですが、「Ａ型でも偽腔閉塞型の場合でも、心タンポナーデになることが
あるため、経過をみながら手術を行うこともあり、また保存的療法を行うこともある」
と。これは両方なのです。下のほうにもこれが書いてありますけれども、こう言ってし
まうと、手術することもときにはありますから。
　次の「また」の後は、「偽腔開存型については、早期に破裂することはほとんどない
」というのですが、「破裂することが少ないため、保存的療法が選択される。この場
合、大動脈径は、発症直後」。ここはあまり細かいことを書かないで、「発症１週間後
」というのは、「発症直後より徐々に拡大し、その後も、厳格な血圧管理を行っても、
さらに少しずつ拡大することが多い」と。
　それから、「60mmに至ると破裂する危険が大きいとされ、原則として手術を行うとさ
れていたが、最近は」という「最近は」というのは取ったほうがいいと思います。「60
mm以下でも破裂した例が報告されているため、最近では、55mm以上で手術することが多
い」と。マルファンのこれを入れたほうがいいのかどうか、あまりしつこいから必要な
いでしょうね。最近は45mmといったりして、まだ少し流動的ですから。
　次のパラグラフで、「なお、以上は、大動脈解離そのものに対する治療方法であって
」というのは要らないと思います。「なお、偽腔閉塞型や下行大動脈の解離であって
も、発症時に心タンポナーデや臓器虚血等が生じ、それらに対する治療として手術が必
要となる場合がある」と。これは全部まとめてこう書く。
　16頁の２番目のパラグラフで、「数年間の観察結果等によって、長期的にほとんど拡
大しないか否か」というのは「ほとんど」は要らないのではないでしょうか。「長期的
に拡大しないか否かを判定することは、現時点では極めて困難」と。「ほとんど」とい
うのは少し曖昧になりますから要らないです。
　ウの「大動脈解離の治ゆを判定し得る時期」、２番目のパラグラフで「こうした観察
の目的は、全部置換型」というのは、これは言葉としてはですね。

○職認官
　すみません、いろいろいじっているときに直しそびれたものです。「解離した部位を
すべて人工血管に置換したもの」ということです。

○髙本先生
　そういうことですね。直すところは、そんなところでしょうか。

○笠貫座長
　医学的なことについては十分ご検討いただくことにします。心筋梗塞との整合性を含
め、大動脈解離についての治ゆの基準と障害等級についてご検討いただきます。まず、
大動脈解離の治ゆの基準として、前回、開存型も一部というお話も出たのですが、今回
は開存型はすべて入れないということで、偽腔閉塞型までを治ゆとして判定するという
ことでよろしいということですね。

○髙本先生
　少しはペーパーを見ましたけれども、やはり将来のリスクは開存型であるというのが
多いです。見ていて、確かにずっと大きさが変わらないものももちろんあるのですが、
ある程度変わらなくて、５、６年してから大きくなるものも中にはあります。そういう
ことを書いているペーパーはあまりないです。やはり、このリスクファクターは開存で
あるという論文がほとんどですから、文献的に開存していても大丈夫だ、というのはあ
まりないです。

○笠貫座長
　これは、心筋梗塞の心筋虚血とは別だという考え方で、偽腔開存型は治ゆとみなさな
いということでよろしいかと思います。西村先生はいかがですか。

○西村先生
　私も賛成です。

○笠貫座長
　閉塞型でも、最近は潰瘍様というか、ＵＬＰだと危ないのではないかという考え方は
いかがですか。

○髙本先生
　閉塞型は、いま早期血栓閉塞型とか言ったでしょう。私は、「血栓」という言葉を除
けたのですけれども、閉塞型の診断は、造影のＣＴでやることが多いのですけれども、
正確にいうと偽腔非造影型なのです。本当に血栓で閉塞されているかどうかはよくわか
らないです。

○職認官
　造影剤が入っていかないだけだということですね。

○髙本先生
　そうです。私は超音波をやるのですけれども、超音波で見ますと、血栓ももちろんあ
りますが、液体成分がこうなって、こう揺れているのも結構あります。そういうもの
が、ＵＬＰというショート……から血液が入り、血栓が溶けていく開存型になるのだろ
うと思います。それが、ときには破裂することもあります。ですから、偽腔閉塞型とい
うものでも、ちゃんとフォローアップしないと危ないということは事実です。これは、
１年経てば大丈夫だと思います。

○職認官
　偽腔閉塞型になったら治ゆではなくて、「線維化が完成した」ときは治ゆとなるとい
う書き方をしているのですが、それならよろしいということですか。

○髙本先生
　線維化が完成するというのは、偽腔が三日月状にあって、だんだん偽腔が狭くなりま
す。最後の、本当に治るときは解離があったかどうかわからないようになる。ＣＴでは
そうなります。そうなったら、ほとんど普通と同じで、正常と考えてもいいと思いま
す。

○笠貫座長
　この場合には、偽腔閉塞型であって、かつ線維化が完成したものということですか。

○髙本先生
　そうです。

○笠貫座長
　そうすると、偽腔閉塞型でも、完成したという確証がないものは治ゆとしない。

○髙本先生
　いちばん理想的な治り方は、偽腔が完全になくなってしまいます。中から圧迫され
て、血栓も薄くなって、もう偽腔があるかないかですから、それは完全に治ります。ち
ょっと偽腔が形として残っているけれども、それは半年以上経つと線維化してきますか
ら、それは偽腔閉塞型の治ゆでもいいと思います。

○笠貫座長
　16頁の、「発症後１年間は経過を観察する必要があり」ということで確認されるとい
うことだと思います。

○西村先生
　ここでは、あえて「線維化」という言葉を使われていますが、線維化は発症からの期
間と、画像的には読んだ人が、なるほどこれは線維化だとわかるようなことを言ってお
かないと、器質化と線維化を混同されてしまう可能性があります。

○髙本先生
　それは、器質化のほうがいいかもわかりません。どういう形になるかというのは、血
栓が器質化するわけです。

○笠貫座長
　その表現ですね。

○奥平先生
　標本で見ますと、時間が経ったものは解離、剥離が起こったところに内皮化が起こり
ます。内皮細胞がずうっと覆ってきて、その内皮細胞の下は、両方とも膠原線維が増え
てきます。それとは別に、外膜側にも線維化が起こってきます。いまお話になってい
た、血栓の器質化というのは、偽腔内の血栓が肉芽組織によって置換されたものです。
ですから、厳密にいうと、器質化だけというわけにはいかないと思うのです。器質化し
たものも線維化していくわけですから、あまり細かくいわないで線維化だけのほうがい
いかなという感じがします。
　とても立派にまとまっているのですが、最初のところで、最近では「解離性大動脈瘤
」といわないで、「大動脈解離」というのだというのは、文章の最初で断っていただい
たほうがいいと思います。脳・心の最終の平成13年のときには、「解離性大動脈瘤」に
なっています。現在は、病像を理解した上でこういうふうに呼ばれていることが多い、
というただし書きを入れていただくほうがいいと思います。
　15頁のいちばん上の、「大動脈解離では、真腔と偽腔とは血液が交通している」とあ
りますが、「内腔が」のほうがよろしいかと思います。

○笠貫座長
　それは、直していただきたいと思います。16頁でウの始まる前のところの、「一方、
治ゆ後、当初の解離部とは別の部位に新たな解離が生じた場合、それは新たな疾病の発
症であって」ということですけれども、これについて、例えば大動脈解離を起こす血管
の脆弱性が存在しているので解離が起こり、手術をした場所の前後というのはつながり
だとして、別な場所に解離が起こったという判断は難しいと思うのです。これは、新た
な疾病の発症に取ってよろしいのでしょうか。私は、連続性があるのではないかと感じ
るのです。
　心筋梗塞のときに、冠動脈疾患で、例えば右冠動脈に狭窄が起きて心筋梗塞が起こ
り、再発のときには前下行枝でしたというときに、それは別な発症ですとは言わないの
ではないか。やはり、冠動脈の動脈硬化のリスクファクターがあって、そこで心筋梗塞
が起こったと考えると、それは再発になります。そうすると、大動脈解離も同じ血管の
連続性があると、発症のメカニズムも同じで、その方に再度起こった場合には再発、と
いう捉え方ができるのではないでしょうか。

○髙本先生
　II型で発症して、II型はクローニックで、III型はアキュートで発症した場合、間は
必ず境がある。あるいはIII型を先に発症して、それは手術した。そのうちにI型といい
ますか、上行も解離を起こしたとか、破裂したということもあります。だから、その素
因はあると思うのですが、これが労災となるかどうかということです。そのときにスト
レスがあるとか、そういう労災の状況があるのなら労災にしてもいいと思います。とこ
ろが、２番目のときは、静かにしているときになったということだったら・・・。

○笠貫座長
　この点について、奥平先生はいかがですか。

○奥平先生
　いまは、発症時の状況ではないですね。業務負荷が、ある期間にどれぐらい加わって
いるかという評価でやるわけです。発症時にテレビを見ていた場合でも、それは業務に
関係ないとはいわないということですね。

○職認官
　そうです。業務負荷をどのように見るかはありますけれども、下のほうが１回解離し
てそれが治って、今度は上行大動脈が解離したというときに、動脈硬化などの素因があ
るからこそなのでしょうから、後の解離も前のに起因すると言えるかというと、それは
なかなか難しいのかと思います。
　心筋梗塞についても、ギリギリ言うと、どういう場合に再発したのかどうか議論し出
すと、なかなかすっきり単純には言いにくい部分があって、再発の一般論は残したので
すが、書きぶりをいろいろやってみて、結局、再発の具体的な記述は削除してありま
す。前の疾病に起因しているのが再発です、起因していなければ新しい疾病です。同じ
病名が付いても、それだけでは必ずしも前のものが原因になって発症したとは、単純に
100％はいえません、というふうに一般論でしかなかなか言いにくいです。

○課長補佐
　本質的なところではないので、なお書き全体、あるいは「一方」以下は、積極的に置
いておく意味はないのだろうと考えています。

○笠貫座長
　これは、障害等級のところで、治ゆした場合に「後遺障害を残すとは言えない」とい
うことでいくのか、やはり11級にするのかというところの問題だと思います。先ほどの
手術をしたところの、上端、下端のどちらかに解離が起こりますということに、過重労
働が加わった場合にどうなるか、という問題はずっと残りました。
　それから、先ほどの偽腔閉塞型で線維化が起こったとしても、それは完全に否定でき
ない。先ほど、心筋梗塞の場合の11級が必要だとした理由なのですけれども、それと共
通性があるのではないだろうかという気もします。
　どちらが致死的かというと、大動脈解離はかなり致死的にもなり得ると思います。そ
うすると、障害等級について、なしということはどうなのでしょうか。それで、再発の
定義にもちょっとかかってきます。もともと大動脈の脆弱性があって、それで１度発症
してしまった方が、同じ解離部、あるいはその連続性のところに起こる場合と、別の離
れた場所に起こる場合というのは、両方ともリスクとしては存在するわけです。そうす
ると、障害等級も心筋梗塞と同じではないかという感じがするのです。

○職認官
　基礎疾患があるから最初も発症しましたと。一旦発症した人は、そういう基礎疾患が
あるからこそですと。したがって再発もしやすいですと。そういう意味で、再発しやす
いというのは労災保険における再発には当たらないということです。それは、あくまで
基礎疾患があるので、新たな疾病が起こりやすいというだけのことなのです。
　例えば、大動脈解離で人工血管に取り換えて、その境目の取り換え範囲が不十分でと
か、病変部がわずかに残っていました、そこが裂けていきましたということであれば、
再発になるだろうと思いますが。

○笠貫座長
　そういうことがあり得るとしたら、心筋梗塞の再発と同じように、制限が必要になっ
てくるのではないかと思います。先ほどの心筋梗塞のところで、過重な負荷というとこ
ろで書いてあったと思うのですが、そのときにはそういうことが起こり得ますと。不整
脈にしても何にしても、突然死は起こり得るということで11級にしたのだとすると、こ
れも同じことかなという感じがするのですが、奥平先生いかがでしょうか。

○奥平先生
　この場所の４行ぐらいはないほうがいいのではないかと思っています。実際にどのぐ
らいの頻度でありますか。この病気自体非常に症例が少ないですね。その中でどれぐら
いの頻度でありますか。

○髙本先生
　再発ですか。

○奥平先生
　ここに書いてあるようなことに該当する症例というのはいかがですか。

○髙本先生
　全部置換する率のほうが少ないです。解離は、残しているほうが多いです。全部置換
できるというのは１割ぐらいでしょうか。ですから、ほとんどの症例は解離が残ってい
ます。治ゆになる人たちのほうが少ないです。治ゆになった人たちの再発はどうかとい
うと、そういう形の再発というよりは、むしろマッファの人が多いです。ですから、
III型で発症しているのに、I型がまたできるとか、I型の手術をやっても、またIII型に
なるという形のが多いです。もし、その吻合部に何かあるというのは、むしろ感染でそ
こに偽性の動脈瘤ができるという症例のほうが多いです。そこの断端から何か問題を起
こすというのは、感染以外あまりないですし、必ず感染は起こしますが、ほかはあまり
ないです。

○奥平先生
　いま髙本先生にお話を伺った上でですが、この大動脈解離自体が稀な疾患に属すると
思うのです。その中のごく一部であれば、特にこだわる必要はないのではないかという
気がします。もし、そういう治療をした人で、別の場合に出てきたら、心筋梗塞と同じ
ように、いわゆる再発と同じような概念で扱うことにしておいたほうが、行政の人も扱
いやすいのではないかという気がします。

○職認官
　16頁のなお書きの６行は、本当になおの話で、さらっと書いて、労災保険制度にあま
り馴染みのない医師が読んだときに、全体像がわかりやすくなる、という程度の趣旨で
書いているものです。
　ギリギリ申しますと、前の病気に起因して起こったのか、新しい病気なのかという問
題は障害の問題ではなくて、業務起因性という、労災保険の中でも違う分野の問題にな
りますので、障害の検討の中で、この問題を決めましょうというわけには、物事の性格
上、いかない部分があります。何も問題がないような内容であれば、理解の促進のため
に書かせていただこうかということですが、いろいろ議論があるような話であれば、障
害の検討としてはあえてここで無理して書く必要はない話になります。

○横山先生
　いま拝見していて全体の印象ですが、この専門検討会の目的というのは、先ほど課長
補佐が指摘したように、病気が一段落して、労災保険をどのように適用していくか、と
いうことが問題になるわけです。診断学あるいはその他でも、各論の、要するに病気の
形だとか、治療法の選択だとか、そういうのは過ぎた段階でこの検討会の話題になって
きているのだと私は理解しております。
　その過ぎた段階での記述というのが、全体に比べて少なすぎるような気がするので
す。もう少し冒頭のところを整理して、こういう段階になったら労災適用の認定をする
のだと。その認定にはこういう点に注意するのだ、ということをもっとクローズアップ
していただいたほうがいいのではないかという意見です。
　要するに、病気全体の説明はあってもいいですけれども、冒頭のところに、簡単にサ
ラッと流されて、それで、この労災保険の問題が、個々の症例で表面化してきた段階は
どういうふうに考えるのか、ということをはっきり書いておかないと、これを将来読む
方たちもわかりにくいだろうと思います。それから、なにか迫力が少なくなってきてし
まうので、ご検討いただければという気がします。

○課長補佐
　今回は、確かに心臓の部分だけ病態の説明などでかなりボリュームを取っています。
それはなぜかというと、心筋梗塞のときに、治ゆを判断する前提として、病態をこうい
うふうに考えました、その上で治ゆはこう考えましたというつながりだったものですか
ら、この病態の説明、あるいは中には治療法の説明まで含めて長々と書いてあります。
　本来、ほかのところではそんなに病態の説明は入れていないです。そんなことは当然
のこととして置いておいて、それが、治療を行って、治ゆのときにはどの状態を治ゆに
見たらいいか。そして、それを前提として障害をどの程度に見ていきましょうかと。確
かにおっしゃるとおり、ほかのものと比べたら、やたら病態の説明が長いというのは、
私自身もそう思っています。
　大動脈解離にしても、我々がいままでに経験している治ゆの判断とは、特殊な面がか
なりあるものですから、それでこの辺も必要かということです。削れるところはできる
だけ削ったほうがシャープになっていいという気はするのですが、そのような構造でず
らずらと書いてあります。我々もどの状態を治ゆと見て、そしてその後に残ったものを
どう評価するかということだというのはおっしゃるとおりです。

○笠貫座長
　我々ドクターサイドも、心筋梗塞の治ゆというときに、大動脈解離も、心停止もそう
なのですが、その再発というのは突然死に結び付くということで、どこで治ゆとして判
断するかというのは非常に難しいというところに起因しているのではないかと思いま
す。
　そういう意味で、心筋梗塞が再発すると今でも30％は死にます。そこのところの予測
が難しいというのが、我々専門家のほうでも、線引きがきれいにできないというところ
が、事務局にも迷惑をかけているのではないかと思います。いまご指摘がありましたよ
うに、できるだけ病態・治療のほうは簡潔にしながら、最終的には治ゆの基準をどのよ
うにするかという形にまとめていくようにお願いたします。
　いまのところは、奥平先生がご指摘になりましたように、省く方向でよろしいです
か。なお書きのところは、わかりやすくということで書いていただいたとのことです
が、逆に誤解を招くかもしれないと思います。

○職認官
　奥平先生からご指摘のあった、大動脈解離の呼称の問題ですが、結論としてこうさせ
ていただきたいと思います。そこのお断りについては、まだとりあえずの形なのです
が、循環器については、いま病気ごとに検討しております。ほかの臓器については、身
体のどの辺にあって、どういう役割を果たしていて、というようなことを簡単に書いた
上で中身の検討に入っている書きぶりにしています。
　一方、循環器については、とりあえず18頁以下に、参考として「心臓の構造と機能」
や病態について書かせていただこうかと思っておりますが。
　そこで、いまの大動脈解離の名称についても、21頁の（５）のアのなお書きでお断り
しています。この病態についても、本当にこんなにいっぱい書くのかとか、という辺り
は、最終的にはもう少し整理させていただきます。いずれにしても、名称についてはお
断りをさせていただきます。

○髙本先生
　「解離性大動脈」というふうに使うのですが、発症するときは「大動脈解離」として
発症しますから。それが長い間にだんだん大きくなります。瘤になると「解離性大動脈
瘤」というわけです。「瘤」も使わないことはなくて使うのですが、発症するときは大
体「大動脈解離」で発症します。瘤になると「解離性大動脈瘤」といいます。

○笠貫座長
　最後に、障害等級については「運動等の制限は必要ない」ということで、「後遺障害
を残すとは言えない」ということについては、この案どおりでよろしいですか。

○髙本先生
　残すことは残すのだけれども、それは例えば腎機能の障害、麻痺、脳梗塞を起こすの
ですが、それはそちらのほうでやるのですか。

○職認官
　各臓器に障害として残れば、それは各臓器の障害として当然評価します。

○課長補佐
　そういうことであれば、そのように記述していけば、大動脈解離が治ゆした後にはこ
ういうものが残るけれども、それは下半身の麻痺であれば下半身の麻痺として評価す
る。要は、ほかのもので評価しているから、これ独自で評価することはないという意味
で、こういうことになっているというご理解だと思うのです。

○職認官
　ご理解はいただいているのです。

○課長補佐
　その表現として、これでは何もないよと読めてしまいます。大動脈解離が治ゆした後
に、何も障害はありませんというふうに見えることは確かです。

○西村先生
　私も、これは気になりました。発症したときの……として脳血管障害、片麻痺が残
る。治療として手術成績は良くなっていますけれども、先ほど言った周術期の合併症で
下肢の麻痺、脳血管障害を合併するのは、どうしてもこの疾患では起こります。後遺症
は、その臓器で評価する。そのことは言及しておいた方がいいと思います。

○課長補佐
　そうですね、それはおっしゃるとおりだと思います。

○笠貫座長
　ここは、書き加えていただきます。先ほどの「運動等の制限は必要ない」というのは
言い切ってよろしいですか。これは、心筋梗塞のほうは「11級に相当する」と書いたの
ですけれども、大動脈解離と心筋梗塞との違いはどうでしょうか。

○髙本先生
　治ゆした者についてはですね。

○笠貫座長
　そうです。心筋梗塞も、治ゆした者については11級です。心筋梗塞と大動脈解離と、
それだけはっきり制限なしといっていいかどうかが気にはなるのですが。

○課長補佐
　端的に言って、大動脈解離にしても心筋梗塞にしても、先生方がもう治ゆですと判断
した後、これから新たな仕事に就きますというときに、特に仕事について制限はありま
せんとおっしゃるのか、それともこういう仕事はやめてください、あるいは避けてくだ
さいとおっしゃるのか、極めて単純に言ってしまえば、私どもの障害の評価というのは
そういう話だと思うのです。
　そういう意味でいうと、心筋梗塞については、過度な負担のかかる仕事はやめてくだ
さいとか、避けてくださいと先生方がご指導されるとお聞きしました。一方、大動脈解
離の方について、あなたは治りましたと。仕事を探そうと思います、というときに何か
指示をするかどうか、非常に単純に言ってしまうと、そのような形だということです。

○笠貫座長
　西村先生、内科の立場からいくとどうでしょうか。

○西村先生
　グレーゾーンかもしれないです。血圧が上がらないほうが望ましいという感じはしま
す。血圧のコントロールは続けますから。

○課長補佐
　それは、先ほども出た、素因の話になります。もともと血圧の高い人なのです。です
から、もともと持っている素因を鎮めるというか、危険な状態にならないようにしまし
ょうという話で、そこをセーブするための制限を評価するというのは、制度としておか
しいのかと考えています。

○笠貫座長
　そこで、先ほどの再発の定義にもよるのですが、再発の予防をしましょうというとき
には、高血圧の治療ではなくて、通常の血圧よりもっと低くする、120、110以下にする
治療をするわけです。急激に上がるような職業、あるいは体位を避けましょうという指
導はします。そうすると、何らかの制限に入るのではないかという感じがします。

○医療監察官
　そうすると、「瞬間的に血圧が上昇するような動きをする」というのは、ここではし
てもいいのだと書いてあるのですが、逆だと。そういう動きによって、血圧が上昇する
ような仕事には就かないほうがいいのだと。

○笠貫座長
　そこは、大きく分かれるところです。

○髙本先生
　最初の発症のときは、おそらくそういうことが誘因になっていますから、もう一度起
こさないということを、できるだけ確実にするためには、血圧が上がらないほうがいい
です。やらないより、やったほうがいいと。

○笠貫座長
　再発という定義は別だとしても、一度大動脈解離を起こした人の生活指導をするとき
には、また別なところに起こったとしても、こういう生活は気をつけましょう、こうい
う職業は気をつけましょうという指導はします。そうすると、11級の下があるのかどう
かわからないのですが、何らかの障害等級があってもいいのではないかと思うのです。

○課長補佐
　11級の下の話ですが、いま別の部会で13級を新設すべきだというご意見が出ておりま
す。13級を新たに新設して、極めて軽いものを13級として評価する。11級という評価は
できないけれども、13級をつくって、やはり13級で評価すべきだという報告になりそう
です。そうしますと、胸腹部臓器の障害として、13級を新たに新設するという動きがあ
ります。
　11級として評価するには、つまり、先ほどの心筋梗塞と同じ評価というのはちょっと
高いということであって、13級ならば妥当だということであれば、13級という評価が可
能かと思います。いずれにしても、障害があるのだということをいわなければいけな
い。先ほど笠貫先生がおっしゃった、一回起こした人は、また血圧が上がると、血管そ
のものが脆弱性があるということなのです。もともと素因があって、それの再発を防ぐ
ための制限があるというのは、私どもの制度の中で、後遺障害として評価する場合の労
働の制限という、いままでの位置づけからは少し外れるのかという感じなのです。
　ですから、そうではない後遺症状として評価できる制限なり、障害というものがある
のですということが必要になるのだろうと思います。それが、かなり軽いものであって
も、それなりの障害として評価ができると思うのです。いまのところ、それが出てきて
いないのです。

○笠貫座長
　その素因が、マルファン症候群のようにはっきりした遺伝疾患とは別に、大動脈解離
というのは動脈硬化の環境要因も含めて、職業に起因する要素がある病態だとして考え
ると、何らか運動制限が必要かなという感じがします。
　心筋梗塞11級で、大動脈解離は等級なしというふうにするか、あるいは13級というい
まの中間を設けるかということについても、これから検討していただけたらと思いま
す。ここですぐ結論が出るかどうかというのは難しい問題だと思います。次回までとい
うことでよろしいでしょうか。なしということにしますか。

○髙本先生
　検討したらいいのではないですか。

○笠貫座長
　これも、検討していただくことにいたします。大動脈解離についての細かい検討は今
回が初めてだったと思いますが、文章等についてはご検討いただくということでお願い
いたします。治ゆについては、コンセンサスが得られたと思いますが、障害等級につい
ては、次回までにご検討いただくということにいたします。
　狭心症のところまでは進みませんでしたが、本日ご検討いただき、たくさんご指摘い
ただいたところを踏まえて、事務局で修正したものの提出をお願いいたします。
　次回の日程について事務局からお願いいたします。

○職認官
　次回は、２月14日（月）の16時から18時まで、本日と同じ部屋で行います。

○笠貫座長
　本日はこれで終わります。長時間どうもありがとうございました。


照会先　　厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係
　　　　　ＴＥＬ　０３－５２５３－１１１１（内線5468）　
　　　　　ＦＡＸ　０３－３５０２－６４８８