05/01/19 第6回腎臓移植に関する作業班議事録             腎臓移植に関する作業班(第6回)          日時:平成17年1月19日(水) 15:00〜17:27          場所:合同庁舎5号館 専用第17会議室(16階) 1.開会  斎藤主査  それでは定刻になりましたので、腎臓移植に関する作業班(第6回)を開催させてい ただきます。寺岡班員がまだ御到着ではありませんが、もうすぐ到着されるということ ですので、始めさせていただきます。皆様、本日はお忙しい中をお集まりいただき、あ りがとうございました。本日は議事に即しまして、横浜国立大学の辰井助教授及び日本 臓器移植ネットワークの菊地チーフコーディネーターを参考人としてお呼びしておりま す。御議論をいただく前に、臓器移植対策室長よりごあいさつを申し上げます。  片岡室長  臓器移植対策室長の片岡でございます。昨年7月よりこの職をしておりまして、皆様 方には本当に日頃から大変お世話になっておりまして、どうもありがとうございます。 本日は腎移植に関する作業班で久しぶりの開催になるわけでございますが、今回は3年 前にレシピエント選択基準を改正した後の状況ということをメインに御議論いただきた いと思っておりまして、忌憚のない貴重な御意見をよろしくお願いしたいと思います。 簡単ではございますが一言ごあいさつさせていただきました。今後ともどうぞよろしく お願いいたします。  斎藤主査  それでは以降の進行を大島班長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 2.議事 (1)腎臓移植レシピエント選択基準について  大島班長  きょうはお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。今お話に ありましたように、3年前にこの会議で非常に重要な決定をしていただきまして、それ までの腎臓の配分ルールを根本から変えて、それを移植の専門委員会で最終決定してい ただいて、その決めていただいた配分ルールで今までやってきました。そのときに、私 の記憶では最低1年以上、とにかくこのルールでやってみて、その結果、再度検討をし ようというお話であったかと思います。前回の議論では、基本的なものの考え方として は、いかに成績を落とさない、あるいは成績を上げるという有効性の観点からが1つ と、公平性という観点からが、患者さんにとっていかに公平に考えていくのか、そして 待ち時間等をどう考えていくのかというようなこと。あるいは地域にとっての公平性と いうのも議論をされたと思います。それからもう1つの大きな問題としては、必要度、 重要度、緊急度というふうに言っていいかと思いますけれども、小児の問題について、 これは加算というのかプラスに考えるべきであるという議論がそのときになされまし た。  それからもう1つは、これも全体にわたっての大きな考え方だったのですけれども、 効率性と言っていいのか、臓器の提供が増えないことには、もともと臓器の配分そのも のに関する問題の意味そのものが非常に希薄になるということで、提供のモチベーショ ンをどう上げていったらいいのか、あるいはそれを下げないようにするためには一体ど うするかという議論があって、それまでのHLAシステムをミスマッチルールに変えた ということと、地域性、待機時間というようなものを合わせて、それぞれポイント制で ほぼ1:1:1というシミュレーションを何度か行った結果、現行のように決まってい った経緯があると思います。  本日はその結果が一体どうなったのかということを、今ここで一度サマライズしてい ただいて、これで良いのかどうかという検討が1つ。もう1つは人から提供されるよう なこういったひとの臓器のような公益性の非常に高い資源というとちょっと問題があり ますが、こうしたものをシェアしていくときの基本的な考え方は一体どうなのかという ようなことについて、原則論から説き起こしたような議論が、前回のときにはちょっと 欠けていたというようなことがありました。  実はこれは専門委員会と町野先生から、その点について少し議論を押えておくべきで はないかという御提案がありまして、きょうは横浜国立大学の辰井先生にその点で御意 見を伺うということで、御参加をいただいています。それではまず事務局のほうから、 改めて論点の説明等をお願いしたいと思います。  斎藤主査  それでは資料の確認も含めて、論点の説明をさせていただきます。お配りしておりま す資料は議事次第と班員名簿とが綴られたもの。続きまして資料1として、腎臓移植レ シピエント選択基準について。資料2としまして、レシピエント選択基準変更後の移植 実施状況ということで、パワーポイントをまとめたものがございます。また資料2の別 紙といたしまして、待機期間/年齢と移植腎生着率とありますカラーの一枚紙がござい ます。最後に飯野班員から御提出いただきました資料が、別綴りとして付けておりま す。もし落丁等がございましたら事務局までお申し付けください。特になければ資料1 について、論点整理の御説明をさせていただきます。ただいま班長から御説明いただい た部分とかなり重なる部分もございますが、その点御了承ください。  本議題につきましては、昨年12月に開催されました第19回の臓器移植委員会におきま して、平成14年1月に選択基準が改正された後の腎臓移植実施状況について、御報告を いただいたところです。その結果、本作業班において、再度検討することが適当という 結論となりました。1番の経緯でこれまでの流れについて簡単にまとめさせていただい ております。2の現状というところにつきまして移植実施状況の詳細については、この 後、日本臓器移植ネットワークのほうより御報告をいただきます。3の検討のポイント というところで、事務局からお示しをしておりますが、これは想定される論点というこ とでして、これ以外の論点もあるかと思いますので、限定して御議論いただく必要はご ざいませんが、前回の改正におきましては、搬送時間の短縮、小児患者の優先度、待機 年数の長い登録者の優先度を上げるということを主眼に改正を行っております。その上 で腎の生着率、レシピエントの生存率、その後の転帰等につきまして御議論をいただき たいと考えております。またHLA適合度の評価、都道府県内配分といった点も論点に なるものと考えております。  次のページに4の第19回臓器移植委員会における主な意見というところで、前回の審 議会で出されました意見についてまとめさせていただきました。長期透析レシピエント の割合の増加から、移植成績がある程度低下することは予想の範囲内であった。患者登 録を居住地外の都道府県で行っている実態があり、地域内での移植を進める目標が達成 できていない。小児患者や長期待機患者が移植を受けられるようになった点は評価でき るので、すぐに基準を変更するよりも、ドナーの増加を図るべき。また、優先すべき患 者の選択については、生命倫理学的な観点からの議論も必要といったような意見が出さ れているところでございます。  3ページに、旧レシピエント選択基準を付けております。当時の選択基準は、成人の 腎提供者と小児の腎提供者の場合を分けて、基準が設定されております。さらに6ペー ジになりますが、その後、現在の選択基準に改正する際に当たっての考え方の骨子とい たしまして、過去の臓器移植委員会に提出された資料をお付けしております。この中で 下線で示しております都道府県内配分による搬送時間ポイントの導入、HLA適合度に 関してマッチルールからミスマッチルールへの変更、待機日数ポイントの導入、小児待 機患者ポイントの導入などが改正の要点でありまして、これを反映したかたちでの現行 の選択基準を7ページ、8ページにお付けしております。資料1について事務局からは 以上です。  続きまして資料2に移りまして、現在の腎臓移植実施状況ということで、臓器移植ネ ットワークのほうから御説明をいただきたいと思います。  菊地参考人  それでは臓器移植ネットワークのほうから、旧選択基準と新選択基準についての比較 をさせていただきたいと思います。旧基準については、1995年4月1日から2002年1月 9日までです。N数は1,041件になります。新基準につきましては、2002年1月10日か ら2003年12月31日まで。N数の移植数は238件になります。このパワーポイントにつき ましては、すべて皆様のお手元にコピーがありますので、そちらを参考にしていただき たいと思います。  まず旧基準と新基準に分けましてミスマッチ数ですけれども、DRは旧基準では0.12 でした。それが新基準では0.60ということで、かなり増加をしております。ABにつき ましては1.23、新基準で2.24ということになっております。ドナーの年齢なのですけれ ども、45.6歳が旧基準、新基準は48.7歳が平均でした。WIT、温阻血時間につきまし ては旧基準では8.1分、新基準につきましては8.0分というふうになっております。ここ は大きな変化はありません。この選択基準の変更の大きな1つの目的でもありましたT ITですけれども、これは旧基準で14.5時間から、新基準では12.6時間ということで、 約2時間の短縮が見られています。  飯野班員  これは統計的に有意差はあるのですか。  寺岡班員  かろうじて統計的に有意です。  菊地参考人  それからレシピエント選択基準変更前後のシッピングと待機期間と透析期間です。旧 基準では腎臓を提供いただいた同一県内でのシッピングは31.4%でした。それが新基準 では75.6%に増加しています。これはワーキンググループのオーダーは確か「8割前後 が県内で移植ができるように」というようなオーダーであったと記憶しています。ブロ ック内の移植ですけれども、旧基準については、57%、新基準については24.4%という ふうに減少しております。これは旧基準はブロック内は同一のシッピングルールでした けれども、新基準につきましては、提供された施設の県内にポイントが高く付いており ますので、低くなるのは当然のことかと思われます。ブロック外移植はDR、ABのH LAがシッスクマッチの場合は、ブロックを超えてシッピングするという旧ルールがあ りましたので、旧ルールでは11.6%でしたが、新基準ではブロック外にポイントがあり ませんので0.0%ということになっております。  それから小児移植を増やそうということで、1つ小児ポイントというのが新基準で加 わったところですけれども、旧基準では全体2.8%でしたが、新基準では9.2%で、旧基 準では年間2名から5名の小児移植でしたけれども、新基準では10名を超えておりま す。オーダーとしましては、小児移植については全体の移植の8.0〜10.0%ぐらいの間 であればいいのではないかというようなオーダーであったと思います。レシピエントの 年齢ですけれども、旧基準では44.8歳、新基準では45.6歳でした。大きな変化はありま せんでした。  この待機期間と透析期間という部分でかなり大きな変化が見られています。旧基準で は、待機期間は6.7年、新基準では14.1年ということで、待機期間にしてほぼ倍の年数 になっています。透析期間につきましては旧基準で10.1年、新基準では透析期間が16.4 年に増加をしているのが現場です。  これをグラフで見てみますと、待機年数につきましては旧基準が5年未満が459件、 5〜10年が331件。透析年数で見ますと、5年未満が261件、5〜10年が310件、10〜15 年が337件になっていますが、こちらの新基準で見てみますと、待機年数は10〜15年の 方が15〜20年と含めて非常に待機年数の多い方が多くなっています。透析年数を見てみ ますと、透析年数でも10〜15年、15〜20年、20年以上という方が非常に多くなっている というのが現状です。  次に生存率と生着率です。生存率を3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月という ところで見てみました。旧基準では3ヶ月97.4%、6ヶ月96.6%、12ヶ月95.0%、24ヶ 月が93.6%というふうになっています。新基準では3ヶ月が92.9%、6ヶ月が92.4%、 12ヶ月91.7%、24ヶ月が90.6%で、P値が0.0362ということですから、有意であるとい うふうに見てよろしいかと思います。  生着率につきましては、旧基準3ヶ月が90%、6ヶ月が87.8%、12ヶ月が85.1%、24 ヶ月で81.7%です。新基準につきましては生着率3ヶ月が88.2%、6ヶ月が85.6%、12 ヶ月が83.9%、24ヶ月で81.1%というとになっています。  次に選択基準変更後のNFK・透析期間、死亡・生着率を見てみました。離脱不能例 が旧基準では8.5%、新基準では10.1%です。PNFですけれども、旧基準では1.6%、 新基準では1.7%でした。透析期間は先ほどお示ししました。レシピエントの年齢もお 示ししましたので、この移植後の死亡率を見てみますと、旧基準では3ヶ月までに亡く なられた方が2.6%、新基準では5.9%と増加をしています。6ヶ月が3.3%、新基準で は7.6%、12ヶ月では5.0%、新基準では8.0%ということで、死亡率は増加をしていま す。生着率ですが、3ヶ月は旧基準が90%、6ヶ月が87.8%、12ヶ月が85.1%です。新 基準では88.2%、85.6%、12ヶ月で83.9%となっています。  この新基準を2002年と2003年に分けて見てみました。移植後の死亡率なのですけれど も、3ヶ月を見てみますと、2002年の新基準に変わりました初年度が7.7%と非常に高 くて、2003年度になりますと4.5%に減少しています。6ヶ月は14.3%、2003年度は5.2 %。12ヶ月で14.3%、6.0%になっています。  生着率につきましても、2002年よりも2003年のほうが非常に良くなっているというこ とが分かります。2004年度の分も重ねて見ていただこうと思い、コンピューターから引 き出して見たのですけれども、やはりまだすべてが返ってきているわけではないので、 参考までに前年度の移植の件数が151件で、4名の方が3か月以内に亡くなっていると いうのが現状です。ですから年々少なくなっているというふうに見てよいかと思いま す。  その透析の離脱不能例とその原因ですけれども、透析の離脱不能例は旧基準では88 件、新基準では24件でした。PNFが旧基準では23件で新基準では4件ということにな っています。約4倍の数になりますでしょうか。そう言ったかたちで見ていただければ ありがたいと思うのですけれども、PNFの比較はこのようになります。血栓は旧基準 で10件ですので、こちらのほうは少し多いのかなというところです。拒絶反応はどちら かというと少し少なめ。移植術の関連合併症が3件と1件、状態悪化が1件と0件。死 亡がやはり旧基準で14件に加えて8件ということで、離脱不能例の原因にも死亡が非常 に多くなっているというふうに見ることができます。  次に移植後1年以内の死亡とその死因ですけれども、死亡例につきましてはこの12ヶ 月以内に亡くなられた数が、こちらのグラフの左側のピンクがかったほうが旧基準で す。このグリーンがかったほうが新基準になります。見ていただいたら分かりますよう に、新基準についてはこのあたりの1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月あたりの死亡例が 非常に多いことが分かります。その原因ですけれども、肺炎、呼吸不全というのが旧基 準で16件、新基準では5件。敗血症が旧基準で7件、新基準で5件です。脳血管障害は 旧基準で7件、新基準が1件。消化管出血/穿孔等が旧基準で6件、新基準はありませ んでした。心筋梗塞/心不全/他は旧基準で6件、新基準はありませんでした。移植術 関連合併症が旧基準で4件、新基準で4件。肝不全は旧基準が4件、新基準が0件。髄 膜炎は1件と0件。上腸間膜動脈血栓症が0件、1件。自殺が1件、1件というふうに なっています。非常に透析期間の長い方と待機期間の長い方が選定されているという声 が聞かれますので、透析に関する関連の合併症と言いますと、こういった心筋梗塞であ るとか、脳血管障害も考えることができるのでしょうか。こういったところがそうかと 思うのですけれども、そのあたりにについては、必ずしもたくさん存在するということ ではないかと思います。  次にこれは参考までにですけれども、17年1月4日現在の腎臓移植希望登録者数で す。これは年齢別ですけれども、15歳未満、16〜30歳、31〜45歳、46〜60歳、61歳以上 というふうに分けてみました。46〜60歳の方がいちばん多くて6,327名の待機患者がい ます。  待機年数別に見てみますとこのようになります。5年未満の方が6,172名で最も多い ですけれども、最も移植を受けられた待機年数の平均がこの16年、12年というあたりで すので、そういった方は1,593人、719人といったこれだけの人数がまだおられるという ところになります。  透析の年数ですけれども、最も多いのは5年までと6〜10年ということになります。 移植を現実的に新基準で最も多く受けられているのは、16〜20年の間の方でまだ1,150 人おられるということになります。  次にファクターを入れるというか、待機期間/年齢と移植腎生着率というふうに分け てみました。これで生着率を見てみました。分類は待機期間については0〜5年、6〜 10年、11〜15年、16〜20年、20年以上というふうに分けてあります。年齢については0 〜15歳、16〜50歳、50歳以上というファクターで分けて、分析をお願いしました。こち らが80%で12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月ということになります。この部分で80%以下のとこ ろを見てみますと、最もこのいちばん下にある部分が11〜15年の待機期間の0〜15歳の 方です。この青い部分につきましては、6〜10年の0〜15歳の方です。小児移植につい ては少し成績が悪いのかなという感じはするのですけれども、小児移植の移植数自体が 非常に少ないですので、1人の方が透析に戻られると、パーセンテージとしてはすごく 悪くなるのかなというところも見ていかなければいけないところだと思います。  次にこちらの透析期間/年齢というところで生着率を見てみました。75%がこのあた りですので、成績自体は非常にいいかと思うのですが、この下のほうを見てみますと、 この部分はまったく同じで、11〜15年の0〜15歳の方。  飯野班員  それは何例ですか。2例ぐらいですか。  菊地参考人  すみません。資料があちらに。  飯野班員  2例では結論を言うかのは難しいですね。  菊地参考人  このラインについては、20年以上で51歳以上の方。こちらのラインについては6〜10 年で0〜15歳ということで、やはり移植数が関係しているのかなと思います。その他に ついては75%以上ということで、成績については遜色のない成績かと思います。  寺岡班員  その前のスライドを出してください。これが患者生存率ですね。移植腎生着率ではな くて患者生存率ですね。プリントのほうも違っています。患者生存率、その次が移植腎 生着率ですね。  長谷川班員  そうです。それが移植腎生着率。その前が患者生存率ですね。  寺岡委員  配布資料の上段がペイシェント・サバイバル。その下が生着率。  菊地参考人  今度は透析期間/年齢と移植腎生着率でよろしいですか。  寺岡班員  そうです。ちょっと並べ方があれだったのですね。  菊地参考人  すみません。次は待機期間と移植腎の生着率で、待機期間が0〜5年、6〜10年、11 〜15年、16〜20年、20年以上ということで分類をしてまいす。このブルーの部分は20年 以上の待機期間の方です。この赤い部分につきましては、16〜20年ということで、待機 期間の長い方の生着率が悪くなっているのかなというふうに見られます。  寺岡班員  これが患者生存率だ。  菊地参考人  待機期間と生存率ですね。すみません。分かりました。訂正をお願いします。待機期 間と患者生存率です。この部分もいちばん下の2ラインを見てみますと、このブルーの 部分は待機期間が20年以上、赤の部分が16〜20年ということで、24ヶ月で75%近く、赤 い部分についても85%近くありますけれども、他の部分に比べるとこの2つの分類が少 し落ちるというような部分になっています。  寺岡班員  もう1回1つ前を。下段は透析期間ではなくて待機期間です。待機期間/年齢と移植 腎生着率。  菊地参考人  え、これは待機期間ですか、先生。  寺岡班員  待機期間。  菊地参考人  2つとも待機期間ということですか。  寺岡班員  2つとも待機期間です。そうです。最初が待機期間/年齢と患者生存率で、次が待機 期間/年齢と移植腎生着率ですね。  菊地参考人  全部待機期間でやっているのですね。すみません。ありがとうございます。不手際が ありまして、すみませんでした。  大島班長  ありがとうございました。それでは飯野委員のほうから続けて。  飯野班員  今のことでちょっといいですか。内容の確認で、PNFについての4ページ上のスラ イドですけれども、プライマリーノンファンクションをどう定義したかというのは別に して、23/1041というのは1.6じゃないですね。もっと大きいですよね。ここを直してく ださい。計算違いです。23例だったら1041で割れば1.6にならないです。だから旧基準 のPNFが多いということがいえます。  寺岡班員  2.2%です。  飯野班員  そうですね。全然違う結論になってしまうから、こういうところは注意しなければい けません。重要なところですね。  大島班長  極めて重要です。よくそんなところに気が付かれましたね。  両角班員  説明不能の原因にPNFと血栓がありますが、この分類基準でのPNFと血栓はどの ように違うのですか。  寺岡班員  これは基本的にはネットワークのほうに、主治医の先生のほうから申告された情報を 基準にしてあります。血栓というのはあくまでも手技的な要因が強いですから梗塞と血 栓は別個としたのです。梗塞というのは、どちらかというと腎臓側の要因というニュア ンスが強いわけです。逆に血栓については手技的な要因のようなニュアンスで記載され ていましたので、このように分類しました。  両角班員  血栓は移植術関連に近い判断ですね。  寺岡班員  それに近いですね。それからPNFの定義については、以前の班会議の時に申し上げ ましたけれども、基本的には主治医の先生が記載されたものを前提にしているのです が、例えば1つの腎臓でPNFになっていて、同じ条件の腎臓が透析から離脱して、ク レアチニン値が非常に良好な場合、こういうふうなものに関しては、その他に拒絶反応 などの原因が記載されていれば、そちらを原因としました。例えばPNFと記載されて いても、片腎の機能が良好で、かつ機能廃絶原因の欄に拒絶反応と記載されている場合 は、拒絶反応を原因としました。両腎ともPNFと記載されその他の原因が記載されて いないものについては、全部PNFにしております。ですからPNFの定義としては、 両腎とも離脱できなかった場合で、その他の原因が記載されていないものをPNFとし ました。ただし、片腎のTITが4時間ぐらいで、他方のTITが長く、しかもPNF となった場合は、その辺も配慮して決定しました。  大島班長  議論は後にさせていただくということで、他に御確認だけ。  菊地参考人  資料なのですけれども、こちらのほうに都道府県別の腎臓提供と移植件数ということ で、県内のバランスが分かるように添付しておりますので、御参考ください。  大島班長  ありがとうございます。他によろしいですか。また後でお気付きになったら。  飯野班員  最後の資料です。時間もそんなにないと思いますので、ディスカッションに多くを回 したいと思いますので、簡単に説明させていただきます。目的としては今コーディネー ターの方から説明していただいた資料ですね。東日本支部の腎移植施設、実務委員会委 員、それから首都圏移植コーディネーターのトータル144名に配りまして、それの評価 をしていただいたわけです。どういう希望があるかどうか。質問項目はそこに1・2・ 3・4・5とありますように、この前のときに改変された部分について質問しておりま す。回答は41.1%で51名です。  2ページ目ですけれども、これは搬送時間についてです。いちばん大きなパイのとこ ろは「このままでいい」というものです。次の黒いところが「改善すべき」という意見 です。つまり42人は「このままでいい」と。3名が「改善すべきだ」ということです。 その意見については下に書いてあります。  それから次の3ページですけれども、これもHLAの適合度(ミスマッチ)のポイン トについてですけれども、「そのままでいい」というのが36名、9名の方が改善すべき だ。それでどのように改善すべきかは下に書いてありますように、「ポイントの比重を 下げる」ということで、いろいろな下げ方がありますけれども、それをやっていただき たいということであります。  4ページ目ですけれども、これは待機日数のポイントです。待機日数に関しては、多 くの方が「改善すべきだ」という意見がやはり多いということで26名いらっしゃいま す。18名はそのままでいいということです。どういうふうに変えるかというのはそこに 書いてありますように、ポイントに上限を設ける。比重を下げるというような意見が多 かったです。  次に5ページの小児待機患者のポイント。これは非常に賛成意見が多くて、更にもっ とあげるべきだとの意見です。改善すべきだという人の中には、もっとポイントを加算 すべきだという方がいらっしゃいます。  それから6ページ目ですけれども、これはHCVですね。C型肝炎の抗体ドナーから レシピエントへの移植について。これはほとんどの方が「そのままでいい」と。東日本 のデータでも移植した方、レシピエントの肝炎発症がありませんので問題ないとしてい ます。今の所ですけれども、そういう意見です。その他の意見は7ページに書いてあり ます。以上です。  大島班長  ありがとうございました。何か御確認、御質問があれば。  柏原班員  6ページのHCVの点ですけれども、実際には何名ぐらい行われているのですか。  飯野班員  全体で4件だと思います。  柏原班員  4例。  飯野班員  4例です。  柏原班員  東日本で2例ですね。  飯野班員  はい、2例です。  佐多班員  その期間というのはとれぐらいありましたか。移植されてから今までの。  飯野班員  期間は、正確には調べていないのですけれども、2001年が最初ですので、1年間はな かったように思いますので、2002年が第1例目だったと思います。長くて2年というと ころでしょうか。  大島班長  他によろしいですか。それでは今までの結果を踏まえて、今後どうあるべきかという 御議論をいただきたいと思います。非常に大ざっぱに言ってしまえば、新基準になって 腎臓のクオリティーは良くなっているけれども、患者さんの側のクオリティーと言うと ちょっと良くないのですけれども、待機期間が非常に長くなって透析期間が伸びて、一 般的には多分リスクが上がっているだろうということで、1年目だけを見てみると、そ のリスクが上がったせいなのかどうかは単純には言えませんけれども、結果としてはど うも成績がよろしくなかったと。ところが2年目、3年目という年月を経るにしたがっ て、成績も非常に良くなってきていると、こういう理解でよろしいですね。そしてもし 大きな問題があるとすると、どうも待機の日数が非常に延びていることによって、結果 として新しく登録した人のチャンスというのはほとんどないというような現象が起こっ てきているというようなことではないかなというふうに思います。御意見を。  飯野班員  最初のところでいちばん重要なのは、やはり死亡率が高くなったというのがポイント だと思うのですけれども、ただ、いま菊地コーディネーターのほうから、3か月のデー タでは年ごとに良くなっているということなのですね。これをどういうふうに評価する か。本当に何かのファクターで良くなっているのなら、いま言いました死亡率が高いと いう点は、ディスカッションの対象にならないかもしれない。それは何か要因みたいな ものは考えられるのですか。  大島班長  言いにくいことが多分あるのかも分からないけれども、もしきちんと捕まえているこ とであればお話を。  菊地参考人  やはり透析期間が長いということで、合併症をお持ちの方がおられるというのは事実 かと思います。ですけれども、登録時の診察のそのあたりの最初の死亡率が高かったと いうのは、先生方は御存じだと思いますので、最初の診察でのリスクの高い方、そのリ スクの高い方に移植を行うか、行わないかというのは、移植医の判断になりますので、 そういった判断がうまくいってきているのかなと思います。  飯野班員  そうすると臨床的診断と治療を良くすれば、今のルールでもこの点は改善できるとい うことですか。  菊地参考人  移植をたくさんして実際に診ている先生に聞いていただくのが一番かなと思うので す。先生、いかがですか。  寺岡班員  これはいろいろなところで議論で出たと思うのですが、確かにリスクは高くなってい るけれども、最終的に移植をするかどうかを決めるのは、担当医が決めるわけですね。 ですからレシピエント候補者が移植術に耐えられるか、あるいは免疫抑制剤に耐えられ るかを十分に検討して、耐えられないと判断すれば辞退することも可能です。医学的に リスクが高いという判断で、実際に私たちは辞退したこともありました。それは担当医 の明確な判断のもとに決定されるべきことです。ただ、夜中にしかも緊急に、短時間の 間に評価をするという、非常に限界がある中でやらざるをえないというところは、確か にリスクとしてはあると思うのです。重要なことは、先ほど菊地さんから発表がありま したが、私はその死亡原因だと思うのです。例えば心不全、心筋梗塞、脳血管障害など による死亡が急に増えているということであれば待機期間と関係があるかもしれません が、それはむしろ今までの割合どおりであって、増加しているのは移植術関連合併症、 あるいは肺炎、敗血症などです。したがって実際には待機期間の延長と直接関連した死 因による死亡が増加していると言い切れないと言う印象を得ています。  もう1つは、新基準になって2腎とも同じ都道府県の中で移植される。そうすると都 道府県によっては1施設で2例を移植するという現象が出てきています。現実に2002年 に行われた1年以内の死亡の12件のうち、3件は同施設で移植した例の死亡です。です から例えばスタッフの少ないところでは、1例目の手術を行って、2例目の手術を行う ため、あまり術後管理に専念できないような状況もあったかと思うのですね。最近では だんだん分散されて、2例を一度には無理だから、1例は他の病院で移植していただき たいと他の移植施設に依頼されるようになってきています。これらも最近の改善につな がっているのではないかと考えています。  大島班長  ありがとうございました。他に御意見を。どうぞ。  両角班員  透析の患者さんの死因が最近変わっています。感染症が2番目に上がってきていま す。以前は心血管系、2番目は脳血管症で、3番目が感染症だったのですけれども、現 在は心血管症の次は感染症です。長期の透析患者さんは非常に感染に弱くて、感染に対 するハイリスクグループであるため、腎移植手術後の死因と従来の透析関連感染症、長 期の待機期間に関係ないという結論は、今はあまり妥当ではないというふうに思いま す。  それからもう1つは、長期待機の患者さん、長期透析の患者さんは移植後の長期成績 が悪い為、長期予後の懸念されているグループです。今回の報告は長期以前でも問題が あったわけです。本来なら評価をされるのは、移植3年以降の成績がどうかという所な のです。お示しいただいたデータを見ていると、待機期間が長かった患者さんの生着率 の成績はやっぱり悪くなっています。そういう意味では待機の長いグループは、長期に はどんどん悪くなっていく姿が見えかかっているという気がします。  寺岡班員  確かにおっしゃるとおりで、菊地さんが示された年齢別、待機期間別生存率、そのこ とだと思うのですね。待機期間別生存率では、待機期間の長い群は60歳代の人が多いわ けですから、どうしてもそれを反映してくるわけです。年齢別で分けてみると40歳代で 待機期間が20年以上群の生存率が相対的に悪いようです。そういう意味では確かにそう いったことは言えると思います。ただ、必ずしもそうではない年齢群もありますので、 非常に解釈が難しくなるわけです。  大島班長  他にいかがですか。  飯野班員  今のディスカッションで、1つは1ページ目の2番目のスライドで示されているよう に、レシピエントの年齢は変わっていないのですね。結局、透析期間の長い方がやはり 死亡率が高いということなのですね。だから年齢だけで判断してはいけないというのが 1つ記憶しておかないといけないことですね。  大島班長  他に御意見いかがですか。  柏原班員  だんだん死亡率が減ってきているということなのですけれども、提供された腎臓がす べて使われている率には、あまり影響は受けていないのですか。例えばどうも評価が低 いので移植をやめようかとか、そういうようなところではどうなのですか。  菊地参考人  すみません。そういった分析はしていないので、正確な答はできないのですけれど も、やはりそのあたりでクレアチニンの値であるとか無尿の期間であるとかそういった ものについては、摘出の先生方がその時点で評価をしていますので、あまりそういった 期間が長い、クレアチニンが高いという腎臓については、その時点で断念している例も 何件かありますので、その時点では移植に用いることが可能と言われた腎臓のみの移植 だと考えていますが、摘出された後に移植に用いられなかった事例も数件ございますの で、そういうところで判断されていると思います。  柏原班員  ですからこの2年間ですか。初め7.7が2.6と下がっているあたりで、そういう数には あまり変化がないのか、あるいは最近は成績を考えて、そこで評価を入れるようなこと が現場で行われているのかというようなあたりです。  菊地参考人  そのあたりの摘出の評価については、3年前とあまり変わったというところは聞いて いませんので。  長谷川班員  菊地さんに代わってお答えするわけではないのですが、大体摘出に伺ったチームが、 摘出というか、腎提供の手術を担当するチームが実際問題として判断していますよね。 「これ、使えないよね」、あるいは「俺たちのチームなら使うよ」というふうにおっし ゃられたら、これはみんな使えますので。東日本ではそうですね。そうすると大体今は だんだんこう平らになってきたのではないでしょうか。あまり凸凹は少しずつなくなっ てきたのではないかなと。菊地さんが言われたような、そのクレアチニンの数値という ふうな単純なポイントではないと思うのですね。いくらクレアチニンが高くても、ある いは無尿期間があっても、入院時の腎機能が良かったということであれば、これはリバ ーシビリティがあるのではないかというようなことで、むしろ断念するのは感染症を持 ってこないだろうかというような、そういうところが多いのではないかと思うのです ね。  大島班長  ありがとうございます。議論が前の条件と今度の条件と、何が変わったのかという、 その変わったことについて議論をしていただくということで、摘出のあり方だとかとい うことについては、これは基本的に変わっていないという前提で御議論いただかない と、非常に具合の悪いことになりますので、仮に何かあるにしても、明らかにこんなお かしいことが起こっているぞというのがあれば、具体的に御指摘いただきたいと思いま すが、しかし今回は前回の条件と今回の条件と、ここが変わったと。変わったことから 想像される、あるいは起こり得る現象について、どうなのだという議論を進めていただ きたいと思います。主な問題は医学的に考えれば、いくつかもちろん出てくるのですけ れども、今度変わったということだけに限定してしまえば、患者側の条件とそれからも う1つ。リスクが高くなれば、それを受ける側の条件というのか、移植をする側の条件 が、今度の基準によってこういった問題が具体的に起こってきて、それによって死亡だ とかノンファンクションにつながっている可能性があるというようなことがあれば、そ ういった提案を御指摘いただきたいというふうに思います。  寺岡班員  確かに大島先生のおっしゃるとおりで、旧基準と新基準で何が変わったかということ をまず整理する必要があります。では新基準で死亡率が年々改善しつつあるのは、それ は何が違うのだろうかということを整理する必要があります。旧基準から新基準に変わ って、年齢は変わらないけれども、待機期間及び、透析期間が長くなったということ は、1つのリスクファクターであることは間違いない。ですから移植医がそれを念頭に 置いて移植しなければならないということは1つはっきりしています。それともう1つ は、やはり同一県で移植することが多くなりましたので、2腎とも同一施設で移植する という機会も増えてきたということが1つ大きいと思います。  それともう1つは、これは逆に、ではどうして新しい基準の中で年々死亡率が改善し つつあるということについては、新しい免疫抑制剤が導入されたこと、また肺炎とか感 染症が死因として多かったということを考えますと、免疫抑制が過剰であった可能性が 考えられます。2000年から2001年にかけて新しい免疫抑制薬が導入されましたね。それ はMMFであり、バシリキシマブであり、そういった免疫抑制薬の使い方はどうだった のかという気もするのです。例えばクロリムスとMMFの最近の成績を見てみますと、 1年生着率が93%なのですね。バシリキシマブを使ったケースの1年および、2年生着 率は92.8%なのです。これは脳死移植の成績に匹敵しています。それから驚いたこと に、ネオーラルとバシリキシマブとMMFを使った最近の生着率は、マルチセンターで 2年生着率が97.5%なのですね。これは世界に誇れる成績だと思います。  ですからおそらく徐々に免疫抑制薬の使い方に習熟してこられて、それが最近のデー タにも反映してきているのではないかと思います。これだけの悪い条件の中で、それだ けのデータが出ているということは、これは素晴らしいことだと私は思います。このよ うな条件が重なって改善してきたのではないかと考えています。  大島班長  ありがとうございます。非常に重要な御指摘をいま寺岡先生からしていただいたので すけれども、ちょうど免疫抑制剤が大きく変わる時期にぶつかっていることはぶつかっ ていると。そういったときというのは、確かに成績が落ちる可能性というのがあるかと 思います。いかがでしょうか。特に3か月以内という最初の1年ですね。3ヶ月以内が 良くないといういことが出ていたように思うのですけれども。全体としてはそれほど今 の特にHLAがいちばん大きな、HLAだけではないのですけれども、HLAと腎臓の クオリティーということだけを考えると、距離の問題とHLAのマッチングの問題だけ に焦点を合わせて考えれば、そんなに今の基準が悪いものではないぞというような印象 で受け止めていいのかなというふうに感じておりますけれども、いかがでしょうか。  飯野班員  大島先生の言うとおりだと思うのですけれども、やはり我々の東日本のアンケートを 見ても、やはり待機期間に関してはもっと考えなければいけないのではないでしょう か。  大島班長  ええ、その問題は次に。  飯野班員  はい。そうすると成績に関してはPNFや他の成績も良くなっているし評価できると 思います。  大島班長  成績に関する大きなファクターですね。HLAと距離の問題ですね。地域性の問題で すね。  飯野班員  それは先生の意見のとおりだと思います。  大島班長  この議論を打ち切ってよろしいでしょうか。いわゆる成績の問題の点で。  佐多班員  質問だけなのですけれども、4ページの「移植後1年以内の死亡と死因」の下のスラ イドの左側に縦棒のグラフがありますね。その右側の山は消えているというのは、さっ き寺岡先生がおっしゃったような、免疫抑制剤の使い方が大分変わってきて、ここの部 分が下がったからという、そういう意味ですか。そのグラフの9、10、11、12月の山が ゼロになっています。  寺岡班員  そうです。旧基準では多かったのが、今ではなくなっていますね。  佐多班員  これが免疫抑制剤の使い方が良くなったので。  寺岡班員  それは何とも言えないのですけれども。  佐多班員  理由は何かなと。  寺岡班員  そうですね。それは1つあると思います。不思議なことなのですが、旧基準では移植 後死亡は2峰性で、最初の4ヶ月ぐらいまで多くて、それからその次に10ヶ月ぐらいに ピークがあったのですが、新基準ではこの2つ目のピークがなくなっています。  佐多班員  大体このあたりは、普通はヘルペス系のウイルスが上がってくる時期だと思うのです けれども、それがなくなったということになる。  長谷川班員  いいえ、なくなっていませんね。  両角班員  感染症に対する早期のモニタリングや治療が劇的に向上しているためと思います。早 く診断して悪化する前に治療ができるという体制が、各移植施設のレベルが上がってい ると思います。その向上がかなり影響していると思います。  大島班長  なるほど。菊地参考人、これの1041の旧基準は何年から何年まで。あ、書いてある か。  菊地参考人  ネットワーク発足から2002年1月9日までです。  大島班長  95年から2002年までのデータですね。  柏原班員  さっきからこの新しい制度で成績のことを話していますが、死亡率が高いのは2002年 だけなのですね。2003年はどうなのでしょう。前の旧と比べると3ヶ月が2.6が4.5とい うことですから少し高いが、3年目になると数少ないですけれども、良い成績です。で すから2002年というのは制度が変わって、多少不慣れな部分というのでしょうか、そう いう他の因子の影響というのは、この部分で考えられないのでしょうか。  大島班長  いかがでしょうか。  両角班員  中日本ブロック全体のデータではないのですけれども、愛知県の場合は1人ひとりの 患者さんを、個々の持っている合併症であるとか既往歴によって、重症度化をしたスコ アリングをしています。その中で「ハイリスクとして極めて周到な準備をして移植に対 処しないと危険」という人たちが何人かいるわけです。全体の登録者数のちょうど50% がハイリスクに分類され、移植管理に気を付けるべきという方です。実際に移植された 患者さんのうち、61%がハイリスクで、9%が小児でしたから、70%が小児プログラム とハイリスクでした。先般システムが変わった中で、全国でも極めてハイリスクの患者 さんが多数移植を受けたと思います。ハイリスク移植の経過から学習したことがそのご の対処などに反映されたという要因は十分あると思います。  大島班長  それでは成績に関する部分はこれぐらいにしまして、また後で何かお気付きの点があ れば、御意見いただくということで、飯野班員のほうから、ウェイティングタイムの問 題についてどうなのかと。これは透析期間の延長、あるいはレシピエントの年齢につい ては大きな変化はないということなのですけれども、年齢についてはあまり変化がない けれども、待機期間が当然長くなってきている。そして透析期間が長くなってきてい る。ただし、今までの議論を前提にすると、成績そのものは最初ちょっと危ないかなと 懸念されたものが、それほどでもないということですけれども、そうするとかなりピュ アに待機期間というものに大きなウエートを置いたシェアリングポイントというものの 考え方そのものが一体どうなのかと。これは公平性とかシェアリングそのものを、どう いう原理原則で考えていくのかというようなところにつながってくるかと思いますけれ ども、途中で辰井先生の御意見を伺いながらこの話を進めていきたいと思います。まず 最初に口火で飯野先生。  飯野班員  基本的には東日本の意見としては、「待機期間が長いのはやはり問題だ」という意見 が多かったことです。それから基本的にぼくの考えとしては、若い人の腎移植をもっと 増やすべきだと思います。なぜかというと、小児に関しては優遇されており、その延長 上として20あるいは30代、そういう若年層の中年になる前の方々に優先的に移植をして あげるのが社会的にもいいのではないかと考えます。これは公平か公正かちょっと考え 方によって違うと思うのですけれども、そういうシステムをつくるのも社会的公平・公 正の方法かなというふうに考えています。  大島班長  ありがとうございます。小児に関しては、それを採択するかどうかという議論は別に して、理由がかなり明快で、待機期間が長い人ということが問題であるということにつ いて、どういう理由というふうに考えたらよろしいのでしょうか。  飯野班員  やはり東日本での議論では先ほど示された成績が向上しているという論点が入ってい なかったものですから、今までのデータからすると、やはり死亡率が高いということか ら、待機時間を短くすれば、死亡率がもう少し低くできるだろうということで言ったの です。  大島班長  いかがでしょうか。どうぞ。  両角班員  移植成績を重要視した立場からは、長期透析患者が増加すると中長期の成績は悪化す ると予想されます。将来を見越すと、透析期間の長い方がどんどん移植に拾われていく 状況は、本当にいいかどうかはなかなか判断の難しいところです。これは純粋に医学的 な成績からの感想です。それからもう1つは、中日本ブロックの評価委員会の中で弁護 士の先生から何度も指摘があったことです。レシピエントが選定されたのが地域のポイ ントと待機期間のポイントがほとんどすべてで、HLAは全く関係なく6ミスマッチで も選ばれるということは、原則から考えると、いかがなものかということを再三言われ ました。それからもう1つ、日本人のHLAは比較的偏っていますから、同じ方が何回 も何回もレシピエント候補者に出ます。そういう中で、スキップする方は医学的な理由 からではなくちょっとしたことで何回もスキップしています。このルールはそれでいい のですかという疑問が投げられています。医学的な理由でいま移植ができないために、 見送った場合は仕方がないけれども、とても個人的な理由で見送っている人が、ペナル ティの減点もなく同じポイントの待機で残っていることはいかがなものかという話が出 ています。実際、いつも同じ透析歴20年以上の何名かが、評価委員会に登場してくるた めお名前を知っています。そのぐらい重複して同じことが起きてきますので、待機期間 がポイントのあり方などについては、少しセレクションの段階で疑問があると思いま す。  寺岡班員  私は単純に、先に並んでいる人が先に移植を受けるというのが当然じゃないかと考え ています。逆に言うと、今まではずっと15年、20年待っていても、新しく入ってきた人 がその前に入って移植を受けてきたのがこれまでの旧基準だったと。ところが新基準で は以前からずっと並んで待っていた人が移植を受けて、新しい人が割り込む機会が少な くなっているわけですね。だから順番の論理から言えば、私はむしろ今のほうがより公 平なのではないかと思っています。順番の論理だけから言いますとね。  逆に言うと、新しく登録した人が移植を受ける機会が減少した、だから新登録が少な くなったと。その御議論は非常によく分かるのですが、では旧基準の間ずっと長年並ん で待っていた人たちの権利はどうなのだということも、1つ忘れてはいけないファクタ ーだろうと考えます。だからと言って、今のままでいいと言うわけではありません。た だ、そういったことも考慮しなければいけないのではないかということですね。  それともう1つの問題は、やはりお子さんに移植してあげたい。これには明確な医学 的な理由がある。確かそうですね。では20代、30代のこれからどんどんアクティブに働 く人には、ぜひ移植をしてあげたい。気持ちとしてはそうなのです。しかし透析医の先 生方と、あるいは移植学医とで、合同のシンポジウムをやりますと、そこでいつも出て くるのはね「移植医はいつも若い人にばかり移植したがる」と、「本当に透析医として 移植してもらいたいのは、これ以上、透析では維持できないという人たちである」とい う議論が必ず出てきます。  ですから透析の長期合併症の進展を防止するということも、移植の大きな役割の1つ だろうと思います。そのためには、若干成績が悪くなるだろうということはあると思う のですけれどもね。ですからその辺をどうバランスさせるかということだと思うので す。そう言う視点も我々は持っていないと、ただ単に若い人に移植をするとか、新規登 録を増加させるために新しい人に移植するというふうな論理だけでいくと、これまでず っと20年待って耐えて、黙々と更新料を払ってきた人たちが、ではどうなるのだという 議論があると思います。また透析医の先生方の長期合併症で、もうこれ以上透析では維 持できない人に何とか移植して欲しいということも、確かに真実だろうと思いますの で、その辺の視点もよくバランスさせなければいけないかなというふうに私は考えてい ます。  大島班長  いかがですか。非常に重要な。  飯野班員  寺岡先生の御意見は非常にクリアカットで明快だと思うのですけれども、僕もそうい う考え方に則っていいかなという気はするのですけれども、ただ、やはり我々は、僕も 大分年取ってきて何年生きるというのを考えてみると、やはり我々は社会のことを考 え、若い人がやはり社会的な有用な人材として、日本あるいは世界を背負って立つ人た ちに移植をしてあげたいという、そういう観点が僕は重要ではないかなと個人的には思 っているのです。  寺岡班員  私もそうだと思います。ただ、先程の点もやはり配慮しなければいけないのじゃない かということで申し上げているだけで、基本的にはそうだと思います。  大島班長  小児の問題に絡めていうと、小児についてはプラスアルファ点を付けるべきだという ことで、大きな配慮が前回ではなされたと。しかしそれでも足りないというのが飯野先 生の今の。  飯野班員  年齢別に少し点数を若い人にあげるとか、そういうふうにしたほうがいいかなと思っ ているのです。小児はもう少し上げてもよろしいのですけれども、それプラス、例えば 16歳以上20歳までを少し何点かつけるとか。  寺岡班員  菊地さん、候補の1位に選ばれたリストは、子どもさんが確か13%ぐらいでしたよ ね。  菊地参考人  そうです。  寺岡班員  ただ、それで辞退されたり、すでに生体腎移植をされたりということで辞退されて、 結局9%になったわけですね。今のルールで実際に選ばれた方の確率は12〜13%ありま したね。  長谷川班員  ものすごく難しい問題だと思うのです。ここで話したってどうにも解決できっこない もので、実際問題、僕がしゃべり始めるとぶっ壊しになってしまうから、黙っていよう と思ったのだけれども、この東日本支部でのアンケートは、結局はこの縛りの中での見 直しの話だけだよね。結局、問題は全体の数を増やさなければならないのを、みんな分 かっているから、そういう意味でどうやったら、移植を待っている患者さんの1人でも 多くが移植ができるようにするにはどうしたらいいの。それには配分の方法を変えた ら、少しでもその助けになるのというのだったらば、僕らはいくらでも意見を出せま す。でもそれを言うと、今度はそれは移植医のエゴだとか、またワンシェア・ワンキー プの話ですかみたいなことで、今までずっと発言が抑えられてきたのです。  私が発言すると、いつもそういうことになってしまうからあれなのだけれども、寺岡 先生が言ったような、ファーストカム、ファーストサーブ。これは大原則で、その全体 をいま変えてしまったら、今まで15年20年待って年間5,000円ずつ払って待っている患 者さんはどうなるのということもありますよね。といって、子どものときに登録してい たのに、16になってしまって、ボーナス点ももらえなくなってしまって、あとずっとま た16年待たなければいけないのだという、そういう若い人たちもいますよね。だからみ んなが満足するようなことはできないわけ。こんな小さなパイを分けているのだから。  今年増えた、増えたと言っても173でしょう。これが1,700にったというのならば、も うみんながもっともっと話をすることがあると思うのだけれども、20増えておおいばり で言えないよね。増えたなんて言えないと思うので、だからどういうふうにして増やし たらいいのかね。増えるのに配分の仕方でその移植の数として献腎の移植を増やす。そ ういうドライブがかかるような配分の仕方ができるのだろうか。それとも今までどお り、みんなが監視して、いろいろな人が監視して、あいつインチキしないか。移植医が インチキしないかといって、みんなが不幸な平等にずっと収まる歴史をずっと続けるの がいいのか。どっちなのですかね。  大島班長  本当に私も言いたくなるような話で、私が言っては、それこそ本当に打ち壊しになる ので、ちょっとこのあたりで辰井先生にお伺いします。13,000人ぐらいが登録してい る。1人が毎年5,000円ずつ負担をしている。長い人は20年以上。0年から20年以上と いう状況になっていまして、以前のルールだけを簡単に言ってしまいますと、要するに その当時の医学的な観点からの成績だけを非常に重視したルールであったために、それ はHLAという抗原がいくつ合っているかという、それだけでこうやったものだから、 合っている人たちで登録したばかりの人が当たる確率も、20年待っている人が当たる確 率も、基本的には何も変わらないというルールだったのですね。それを今のようなルー ルに変えてきたと。それを変えることによって、寺岡先生が先ほど主張された、最初に 並んでいる人に行く確率が飛躍的に高まったというのが、新しいルールなのですね。  13,000人待っていて、実際の腎提供数が200人行きませんから、1.何%ぐらいです かね。それぐらいの非常に限られたパイというのか、限られたものになっているわけで す。それをもちろん今議論をしているのは、どちらかと言えば医療関係者ばかりなので すね。医療関係者でしかも移植関係者というふうに、全部が全部そうなのではないので すけれども、その方たちがどちらかというと主流で議論をしているということが今の状 況で、最終的にここで議論されて、ある一定の結論が出て、それを上部の専門委員会に 提出して、そこで最終的にOKをいただくのですが、その中には患者団体もいますし、 他の医療関係者以外の法律家もいますし、いろいろな方がそこの中には見えますけれど も、その前の詰めていく議論の中では、おそらく辰井先生が初めてかなというような状 況で議論をしてきています。というようなバックグラウンドの限られた、しかも人から 提供される臓器といったようなものを、どのような原理原則で配分をしていったらいい のか。あるいはそれを決めていくプロセスの中に、どのような人間が関与すべきなのか とかというようなこと。あるいは例は臓器ではないかも分からないけれども、世界中に 例えば非常に限られたものを配分するときの原則として、こういうモデルがあるとかと いうようなお話をちょっと伺えればというふうに思います。  辰井参考人  その世界的なモデルについては、多分皆さんのほうがよく御存じだと思います。基本 的な考え方について何点かお話ししたりあるいはお伺いしたいのですが、旧基準でも一 応適合度の同じものの範囲では、待機期間というのは考慮されていたわけですよね。今 回、医学的な基準自体も変わったと思うのですが、それはそれでよろしいのですよね。  大島班長  待機期間が考慮されていたというのは、どういう意味ですか。  辰井参考人  同じ条件の人の中では、待機期間の長い人をやるということにはなっていたわけです ね。  大島班長  はい。  辰井参考人  それで今回、医学的な基準のほうをもう少し見直されたというふうに伺っていますけ れども、その同じ基準の中で、前と同じように待機期間も考慮するというのよりも、今 回の基準というのは、待機期間が非常に優先的に考慮されているということなのです か。  大島班長  そうです。  辰井参考人  その医学的基準の変更についてどういう意義があるのか、もう1つよく分からないの ですが、その現在の医学的な基準の中で待機期間を考慮するというのと、旧基準のまま のやり方をとるというのとでは、待機期間の考慮のされ方が若干は違いますか。  大島班長  前に何が問題になったかと言うと、全国対象の配分システムだったのですね。そうす ると北海道で出た腎臓がマッチングが良ければ沖縄に行くと。ところがその距離が長け れば長いほど、その搬送の時間が当然長くかかるわけですね。その長いものほど成績が 良くないというデータがはっきり出たわけですね。したがってこれはできるだけ近いエ リアでやるべきではないかということが、はっきりとデータで出てきたということで す。  それからもう1つ。HLAというのが、すべてであるというような時代が、移植の中 では続いてきたのですけれども、免疫抑制療法とかいろいろな治療法の進歩によって、 その影響度というのは昔言われていたほどないのじゃないかということが、これも科学 的に明らかになってきたわけですね。そういった背景があってどうするのかと。そこの 中で本当の公平というのは一体何なのだろうかと。そういう議論が個人というものにス ポットを当てたときに、効率性だとかいろいろんなことを全部抜いて、個人というもの にスポットを当てたときに本当の公平というのは何かということになると、待機期間し かないと。待機期間しかほとんど公平性を担保するものというのは何もないじゃないか というのが議論の中にあって、その中でやはり待機期間というのをもう少しきちんと考 えるべきではないかということで、基準としては1:1:1というようなポイント制が 成立したというのが大体の流れですね。  辰井参考人  すみません。待機期間の比重がどのくらいがいいのかということについては、ちょっ と申し上げにくいのですけれども、待機期間が基本だというのはおそらくそうだろうと 思います。ただ、子どもについて別扱いというのは、比較的とりやすいやり方だと思い ます。それももちろん不平等だという言い方はできますが、社会として子どもを優先的 にやろうという決断をするということは、何ら不合理なことではないだろうと思いま す。ただ、それが子どもを例えばどこで子どもを切るのかというのはあります。18とか 20で切るとして、子どもと大人という切り方をすることは、比較的容易だと思います が、大人の範囲内で若い人を優先というのは、少し難しいという感触はあります。  飯野班員  高齢者はどうですか。50以上とか60以上。  辰井参考人  それは医学的に非常に困難だというのであれば、医学的な適合性の観点から考慮には 入ると思いますが、やはりそれだけ長い間苦労されてきたということでもあるかもしれ ませんので、歳でそれほど先が長くないからだめというような議論はしにくいのではな いかと思います。  大島班長  一般論として、非常に限られた公共的な資源を、それを欲しがっている、あるいは必 要としているという状況にある人が多くいるときの配分の原則というのは、例えばどう いうふうに考えたらいいとか、それを配分していくときに、どういうふうに公平制の担 保だとか必要性とか、あるいは重要度だとか、いろいろな要素が多分入ってくると思う のですけれども、そういったものを考えていくときの基準とか何かというのは、どう考 えたらよいのかですね。  辰井参考人  以前からの議事録なども拝見しましたが、それは皆さんがこれまでに考えてこられた いろいろな要素以上のものというのはないと思います。その中でどの基準が例えば法律 から見るといちばん重要だとか、そのようなものが存在しているわけではありません。  大島班長  きょうは先生のような方に来ていただいて、この議論の中に加わっていただいている のですけれども、実際に例えばこういうものを詰めていくときのプロセスで、このメン バーではちょっとまずいのじゃないのとか、もう少し他のメンバーが入ったほうがいい のじゃないのかとか、そう言った点についていかがでしょうか。  辰井参考人  御質問の主旨と少し外れるかもしれないのですが、きょう私がここに来て、何か言え ることがあるかなということを考えますと、先ほどその新基準になるときに、都道府県 別あるいはブロック別というのが優先されるようになったと。それによって医学的な成 績は割合向上しているようだということは分かったのですが、それでもなお、このシス テムを継続するということについては、いま現在はかなり問題があるように私は思いま す。というのは、臓器移植全体はもちろん御承知のとおりですけれども、全国で均一の やり方で公平にやるということが決まっている。したがいまして、各都道府県から少な くともある程度、確実に献腎があるというような状況であれば、都道府県別というシス テムを採るということも、それほど不当ではないと思いますが、今のようにもうゼロの ところもある。  その状況が固定してしまっているという状況を維持したまま、これを続けるというこ とになりますと、本当に一部の地域の人にはまったくチャンスがないということになる わけですよね。ですので、これは厚労省の方にお伺いしたほうがいいのかもしれません が、このシステムに移行するときに、献腎を促進する手段というのを同時に採られたの かどうか。あるいはこれから採る御予定があるのかどうかということが、かなり重要な のではないかと思います。  大島班長  いま非常に重要な点を御指摘されたのですが、実は議論は、もちろん私が国のほうを 代弁する必要はまったくないのですけれども、設備とか施設だとか、そういった環境状 況の整備というのは、国が均等にもちろんやってきているわけですね。どこの都道府県 だからどうだとか、こうだとかいうようなことは一切なくてですね。それを実際に行う のはその県、あるいはその現場でこれはどんな場所でもそうですね。それで何が起こっ たかというと、昔も今も出ないところはまったく出ないわけですね。要するにやらない わけですね。やる意欲もあるのかないのか、よく分からない。そして腎臓をもらうだけ はもらう。これが逆に、各県からすると、とんでもない大きな問題になってしまって、 多い所は愛知県がいちばん多かったのですけれども、百何十腎という腎臓が数年の間に 出ていって、いま先生が御指摘されたように、本来なら各県がみんな均等になったとき に、全体がバランス良く行くというのが当然なのですね。  ところがそれはエゴではないかというふうに言ってしまえば、間違いなくこれは県と いう単位のエゴでしょうし、しかし「あることが動いていくというのは、理屈だけでこ とが動かない」というのも事実だと思うのですね。結果としてモラルハザードが極めて 顕著に起こってしまって、努力しないところは何も努力しなくて、腎臓だけを待ってい て行うと。ところが努力する所はほとんど全部出ていってしまうということで、努力し ていた所がやる気をなくしてしまって、さらに全体としてパイがどんどん小さくなって いくという現象が起こってしまったのですね。これは全体を考えると、待っている患者 さん全体にとってとんでもないデメリットがそこで生じたということが言えるわけです ね。個人の自由、個人の権利というものを主張すればするほど、全体がやせ細ってしま って、結局、全体のメリットというものがなくなってしまったと。こういう現象が起こ って、これをこのまま行ったら大変なことになるというのが、前回の中でも大きな議論 になったところなのですね。  辰井参考人  おっしゃることは大変よく分かるのですが、前回の改正について、それが元々少なか ったものがますます下がってしまったと。それはもう非常な緊急事態であるということ を大島先生もおっしゃっておられて、それに対する本当に緊急の一時的な措置として は、許容可能なものであったと思います。それで実際問題として、各地域によって担当 する人のモチベーションが非常に違うということも、よく分かるのですが、しかし、や はりその結果を患者側に結局負担させるということになるわけなので、少なくとも、た だ施設、お金を同じように出すという以上の何らかの措置を将来的に行うという見通し は見せた上でないと、地域別というのはちょっと維持しがたいのではないかと思いま す。  飯野班員  今の御意見は、非常に公平にするのはいいと思うのですけれども、ただ僕がちょっと 気にかかるのは、こういうものでもそうですが、公に頼ってはいけないと思うのです ね。やはり患者さんあるいは移植医あるいは腎臓内科医が、やはり自分の所の患者さん を治療しようという意欲を持って行動しなければいけないのです。パブリックにという と日本的な考え方だと、すべて厚生労働省とかいろいろ言うと思うのですが、そうじゃ ないと思うのですね。やはり自分たちで動かなければ、日本の社会というのは変わらな い。そこがいま僕は日本の社会の悪いところだと思うのですね。そこを変えていくため にも、この移植をきちんと自分たちで掘り起こして、それで増やしていくという、そう いう理論的なものが必要です。ですから出ない県ではそれを活発にさせるように、その 人たちが動かなければだめだと思いますね。例えば新潟県なんかは、どんどん増えてい ますね。これは新潟大学の高橋先生なんかががんばっていらっしゃるというのも1つあ ると思うのですね。ですから、そういう観点も必要かなという気がしています。  辰井参考人  すみません。そのようにお医者さんの側に言っていただけるのは、非常にすばらしい ことだと思います。ただ、国として、私は全然国を代表していませんけれども、そちら の立場から国の役割ということで考えると、やっぱり全国で公平なシステムをつくると いう建て前でやっていると。それで実際に熱心になさるお医者さんがいる地域の方は良 いわけですが、やっぱりいくら医療現場の仲間同士で呼びかけても、それに応じてこな いというか、もうここはあまりやる気がないという所は出てきて残る可能性はどうして もある。それを何とかするというのは、やはり国の責任だと思います。そこは少なくと も見てということでないと、地域別にやりましょうというシステムでは、あまりにも不 公正で、負担しなければならない患者が出てくるという問題はあると思います。  大島班長  患者さんの側にとってみれば、国であろうが、行政であろうが、医者であろうが、医 療側であろうが、そんなことはまあ勝手にやってくれと。だけどいつまで登録を続けた ってほとんどゼロに近い可能性であるとするなら、これは一体どうなるのと、当然これ は言いたくなりますよね。寺岡先生、いかがですか。  寺岡班員  おっしゃることは非常によく分かるのです。その議論は私たち医者があまり普段発想 しないようなことでおっしゃっているのだと思うのですね。結局は長谷川先生もおっし ゃいましたけれども、全体を底上げしないといけないと。そうしないと各地域の方々も 移植を受けるチャンスがなくなるわけです。これまでのことに関しては、献腎の活発な 県からは多くの腎臓が県外に出ていく、献腎が活発でない県でも少ないながら一定の数 の腎臓がシッピングされてくる。したがってアクティビティーの低い県ではそれが固定 化されてしまう。アクティビティーの高い県は逆にそれがマイナスの要素になって、ど んどんモチベーションが下がっていく。これからの傾向が固定化されてきたのがこれま での制度であったわけです。これについては大島先生がさっき的確におっしゃったと思 うのです。  今の制度になって確かに全体として、献腎の活発でない県では移植は受けられないん じゃないかという心配はあるわけです。しかしここ1、2年の傾向を調べてみますと、 今までまったく献腎が活発でなかった県において、少数ではあるけれども献腎が行われ るようになってきています。九州もそうです。東北もそうです。これはおそらく大きな 1つの芽ではないかというふうに私は考えています。辰井先生がおっしゃるように、最 終的には全国の方が均等に受けられるようにならなければならないのでしょう。そうい ったシステムを今すぐにはつくれないけれども、それを目指すのだと。それをやるには どういう方法が有効なのか。旧ルールのほうがいいのか。つまり少ない腎臓を公平に分 けるのがいいのか。あるいはインセンティブを与えながら、活性化していって、少しず つ全体的に持ち上げて、底上げしていくのがいいのかという方法だと思うのです。  ですから今の方法が完全に地域主義で、地域エゴでそうだということではなくて、こ れは大島先生もさっきおっしゃいましたけれども、全体的にやはり底上げをしていこう という、1つの戦略の中での1つの採った方法であるというふうに御理解いただきたい と思うのですね。ですからどちらが本当に正しいのか断定はできませんが、今はこうい う方法を採っているということで。  ただ先ほど申し上げましたように、かなりの県で少ない数ではありますが、そういう 芽が出てきています。それは事実です。それはやはりこのやり方の、1つの効果なので しようね。  片岡室長  都道府県ごとにポイントを高くしていっているのは必ずしも都道府県ごとで公平にと 言いますか、公正にやっていこうというのではなくて、あくまで阻血時間が短いほうが 医学的に生着が高いということで、基本的にはあくまで医学的な判断でこのポイント付 けをして、結果として、都道府県ごとの格差が出てくるようなことにもなってしまって いるということですので、基本は医学的に判断していると思っています。  それから寺岡先生からおっしゃっていただいていますけれども、都道府県ごとに結果 としてこのような差が出ておりますので、このことについては機会あるごとに都道府県 に対して、「基準が変わって、それぞれで努力しないと患者さんが迷惑します」という ことは言って来ていますが、まだまだ十分に行き渡っていないところもありますので、 このことについては、また来月、都道府県の課長会議を行いますので、そういう機会に 具体的にこういうような数字を示しながら、各都道府県に本気になっていただくように 行っていきたいと思っています。  大島班長  行政の側としては、今のような返答以上のことは多分言えないだろうと思うのですけ れども、私がちょっと思っているのは、先生が御指摘されたそのお話の中で、全体のパ イをいかに増やすかというのは、受ける患者さん側にとっても非常に大きなことだと思 うのですね。それと矛盾しないようなかたちでやるためには、自分たちの地域の臓器提 供数を増やすということが、ある意味で必須のことになると思うのです。このルールで は、地域以外で出た腎臓をただ待っているだけではだめなのですよと。お互いにきちん とある一定の人口比で、これだけは出てくるという理屈上の話としては数の頻度という のはあるわけですから、その部分というのはやはりきちんとやるべきですよと。それを 行政の側からいくら言っても、県の課長さんあたりにいくら言ったって、ほとんど効果 は上がらないということは、私はもう30年以上移植をやっていますけれども、そんなこ とはもうまったく効果はないということはもう分かりきっている話です。  だとすれば今度は逆に患者さんのほうから、なぜうちの県では出ないのだと。ただも らっているだけでいいわけないでしょうと。こういう運動なりということも、非常に必 要な話ではないかなと。そこでそういった努力なしに、権利だけをもし主張すると、こ れはすごく歪んだ状況になるのじゃないかなというようなことも考えたりするのですけ れども、そういうことはいかがなのでしょうかね。  辰井参考人  そのかたちが望ましいとは思います。患者なら患者側もある程度の運動なり何なりを して、活発にさせていくことが望ましいとは思いますが、それをやれというようなこと は申し上げにくいところはあると思います。実際、たまたま活発な県にいらっしゃる方 は別に何もしなくてもできているわけなので、もちろんそれに文句を言っても仕方がな いというのはそのとおりで、実際には患者さんが御自分で動かれなければ仕方がないの だろうとは思いますが、システムとして活発に流れていない地域では、まったく可能性 がないというようなシステムを前提として、それで患者のほうもがんばれということ は、ちょっと申し上げにくいと思います。  ただ、先ほど寺岡先生から御報告いただいたように、新しい制度にして少し芽が出て きているというのは、本当に良いニュースだと思いますので、そういったことはなるべ く表に出していただいて、そういうわけで全国的に増やしていくという見込みの下で、 こういう制度ができているのですよということがはっきり分かれば、それは結構だと思 います。  大島班長  いかがでしようか。長谷川先生。  長谷川班員  さっき大島先生がとても大事なことをちょっと言われかけて、要するに人が亡くなっ た後に死んだ後の臓器を他の人のために提供する。それを先生がちょっと言われた、要 するに日本国民の資源みたいな、そういう考えを日本人が持てるのだろうか。例えばア メリカなんか、もう亡くなった後、これはユナイテッドステートのナショナルリソース だと、石油と同じように考えていますね。だからなるべく広く臓器移植のために、骨ま で提供してというかたちになっています。それで多くの州では「俺はいやだよというカ ードを持っていない限りは、提供が原則」というかたちになっているけれども、どうな のでしょう。日本あるいは厚生労働省では、そういうふうに考えているのですか。亡く なった後の臓器を国民全体の財産と考えているのでしょうか。そこまでなかなか踏み込 めないね。  斎藤主査  基本的にはあくまでも臓器移植法の趣旨に立ち帰れば、「提供したいという提供者の 意思がまず重要だ」というふうに考えておりますので、まずいちばん最初にはそこがあ るのかなというふうに考えておりますけれども。  長谷川班員  ですから新しい脳死と臓器移植法では、亡くなった方の臓器提供の意思は尊重されな ければならないという大原則がうたわれていながら、むしろそれを無視しようとするよ うな方向にいま動いているのではないですか。例えばカードを持っていた人のカードの 提示の時期が、心停止の後であったり心停止の直前であったり、それから本人がカード を持っていて臓器提供をしようという意思があるのに、後から出てきて田舎の叔父様が 反対したら臓器提供ができないとか、あるいは4類型に指定されていないところの施設 でお亡くなりになりつつある患者さんを、臓器提供のために4類型の指定施設に移送し てはいけないというふうな行政指導があったりというのは、これはやはりあまり安全面 に振って、臓器移植を厚生労働省自らがブレーキをかけているような面はございません か。  今度そのカードの不備についてはずいぶん踏み込んだ見直しがあったと思います。や はりもう少し行政指導の面で、特にここに来られる方は臓器移植を推進するための公僕 でいらっしゃるわけですから、もっともっと力を振るって、例えば臓器移植に協力され た病院には、1回出たら1つ星マークをあげるとか、ここの医療施設は臓器施設に17の 星マークがあるみたいな、そういうふうな良い面でのプロパガンダをどんどん進めて、 臓器移植を一日千秋の思いで待っている人たちのために、少し積極的に動いてください よ。  確かに皆さん大変だと思いますけれども、後ろにいるマスコミの方々がセンセーショ ナルにワーッと50人も集まって、脳死で臓器提供をすると、そこの病院の人は何か悪い ことをしたみたいに記者会見までしなければいけないけれども、そういうものではない ですよね。良いことをしているわけですから、もっと積極的に行政の人も動いていただ けるようにお願いしたいと思います。  大島班長  ある意味で移植医の代表的な御意見でありまして、代表的な意見の長谷川先生からド ナーカードのあれは大ヒットだというおほめの言葉を。行政側としてはどうしても世論 というか世の中の動向に弱いと言えば弱いのでしょうけれども、その動向を見据えなが ら、より健全なかたちで進めたいというのがあって、実際に医療現場にいる人間の側か ら行くと、ちょっとじれったいなと思うぐらい慎重な部分があるというふうには見える だろうと思います。  ウェイティングタイムの問題につきましては、いろいろと辰井先生に御意見を伺いま して、今の全体のやりとりだけから判断しますと、いくつかもちろん問題はあって、実 際にもちろんゼロではないのですけれども、非常に可能性の低い状態と、可能性の高い 状態にある方たちが、ある一定のルールの下で置かれた場合に、それを公平という観点 から見たときには、どう見ても結果が明らかに初めから違っていて、可能性がほとんど ないと推定されるような状況があるというようなルールというのは、それだけでちょっ と問題があるのではないかと。  ただし、非常に大きなジレンマが当然あるわけで、地域だとか個別のことを考えると きに、全体を満たすという状況があれば良いのですけれども、初めからそれが満たしき れないという。しかもものすごく限定された厳しい資源というか「もの」の中で、どう せざるを得ないのか。さらに異なったルールをとって、個人の権利というものをさらに 平等化するということだけに焦点を当てれば、パイそのものがもっと小さくなってしま うというような事態というのは、非常に危険な状況でもあるのです。  そういった状況に対してパイを増やしながら、ある時期にはどう見ても不公平ではな いかという点を、多少片眼をつぶりながら、さらに何とか両眼を開けるような方向性を 探っていくというやり方と、それからそういう意識を常に持ちながら議論を進めていく というようなことであれば、容認される範囲ではないかというような御意見だったかと 思います。いかがでしょうか。どうぞ。  両角班員  ウェイティングタイムに関して、基本がファーストカム・ファーストサーブというの は分かりやすくて、大原則だと思います。臓器移植ネットワークシステムでは、移植を 希望する患者さんが自分の意思でもって加わってお金を払っていくという部分の費用 が、額として実際にはそれほど大きくないのは分かっているのですけれども、この費用 が運営の中心にあることが根幹です。もしも待機期間が非常に長い人しか移植を受けら れないということで、新規の移植登録者がなくなる。長期待機者しか移植を受けられな いことが新しい登録をディスカレッジをしているとすると大問題だと思います。そうい うことがなければ、とりあえずはいま先生がおっしゃったように、地域のポイントの重 要度などの因子についての論議はあるにしても、結局は移植数が劇的に増えなければ一 切解決しないわけですから、現段階では今の制度はおかしくはない範疇だと思います。  大島班長  いかがでしょうか。  飯野班員  この報告を見ていても、透析年数が高くなるほど当たる率が高くなっていますね。で すからこれは透析年数がある期間、それぞれ10年10年で、同じような率で当たるように 少しウェイティングを変えれば、長期になれば時間が経つごとに少なくなるわけですか ら、ある程度公平になるのではないでしょうか。ですからこの式のウェイティングの重 さを変えてみたらどうかと思います。  長谷川班員  子どもを除いた成人で当たった人の、いちばん短い透析期間とか待機期間はどれぐら いですか。子どもではなくて。  菊地参考人  5年であります。5年でHLAのフルマッチと地域ポイントで28点か。  長谷川班員  5年より短いのはない。  菊地参考人  すぐ確認してみます。  木村班員  先ほどの待機期間と移植時の生着率とか生存率のグラフを見ていて、非常に不思議に 思っていたことがあって、それは待機期間のポイントは大体12ポイントぐらいで頭打ち になるという選択でしたね。  寺岡班員  15.5ポイント。  木村班員  あ、15.5点ですか。にもかかわらずそれ以上に、要するに16〜20年待機の人が悪くな っている。それからさらに20年以上の人が悪くなっている。こういう現象が起こってい るのは、これはなぜでしょうかね。もう1つの年齢との関係を見てみると、生着率と生 存率の両方とも、年齢と待機期間の両方で解析しているグラフを見ると、明らかに年齢 が上がっていると生着率や生存率は悪くなってしまう。もしそれが、これは個別の解析 をしなければいけないと思いますけれども、ただこのグラフだけから見ると、待機期間 そのものはあまり影響はなくて、年齢がいちばん影響しているのではないかというふう に思われますけれども、その点に関する解析はどうなっていますでしょうか。  寺岡班員  年齢別の解析は確かに先生のおっしゃるとおりで、レシピエントの年齢に関しまして は、61歳以上の1年生着率は73%ですね。その他については15歳未満が88%、16〜30歳 が84.9%、31〜40歳が86%、46〜60歳が83.7%とだんだん下がってきまして、61歳以上 は1年生着率が73%。5年生着率では60%を少し切るという具合になっています。確か に年齢がいちばん大きなファクターであることは間違いないと思います。  長谷川班員  今インターネットのホームページで見た患者さんたちは、「先生、今度のシステムで 待つ時間がまた長くなっていますよね」みたいなことでよく御存じでしょう。そうする と新しく登録する人に、とにかく今までは「おまえ、宝くじ買わないと当たらないから ね」と言って登録してもらったけれど、今は16年先というとそんなこともなかなか言え ませんよね。  佐多班員  ちょっと関係ないかもしれないけれど、以前にドナーカードを持っている人の数と、 それから実際に移植の臓器提供に至るまでのいろいろな障害があって、だんだん減って いって、最後はもう微々たるものになっているという事実がありましたね。あの辺はど れぐらい改善がされているのでしょうか。いろいろな障害があると思うのですが、それ をやっぱり取り除く努力をするだけで、もう二桁ぐらい上がるのではないかというふう に思うのですが、それはネットワークの問題とかいろいろな問題があると思うので、そ こを取り除く努力はどれぐらいしているのかということと、どれぐらい改善されたのか というのは、皆さんを納得させる上でやっぱり1つのポイントになると思います。その 上で1つの社会的なコンセンサスをどういう方向に持っていくのかとか、そういうふう になっていくのかと思うのですが、そこの断る理由というのが、むしろそこの社会的な 臓器移植のドナーとなるところの障害になっているカルチャーの問題なのかもしれない ので、そこをどうするのか、もし分かったら教えていただきたい。  大島班長  これは先ほど出てきたドナーカードの意思表示という、あれも今度変わりますよね。 それからなぜ増えないのかということにつながってくるような話なのですけれども、こ の話を始めるとまた1時間ぐらいかかるのですけれども、いろいろなかたちでもって今 もうそれが重要であるという意識というのは、もうずっと持っていまして、厚労省もそ れに対する研究費とはなかなか言いにくいようなお金なのですけれども、臓器提供を増 やさなければいけないということで、実際にそういったところへずいぶんお金を注ぎ込 んで、どういう方策でやるのかということをもう10年以上にわたってずっと続けていま すし、その後の具体的な成果も少しずつ上がりつつあるという状況だろうと思います。 具体的なことをしゃべろうとするとずいぶん時間がかかってしまうのですけれども。  佐多班員  ここの席にいる人はほとんど移植推進派であると同時に実施者なのです。だけどあそ このドナー側をいかに増やすかというところはむしろ、全然別の立場の人が集まってや っているところなのですね。だけど言いたいことは、要するにあれだけの数があって、 もうこれだけ微々たるものに実は減ってしまっているという。あそこはもう私自身、寺 岡先生に表を見せていただいて、愕然としたのはそこなのですね。そこがやっぱりいろ いろな努力はあるかもしれないのですが、それは移植側の立場の人が、いくらやっても だめなのではないかと。別の考え方があるのではないかというふうに常に思っているわ けで、それでこういうところでドナーをもっと底上げしなくてはいかんといくら叫んで いても、何か問題は解決しないと、そんな気がしているので、何か結論が変なのですけ れども、その辺はだからどういう格好で行くのかというのは、別にやっぱり議論が必要 なのではないかと。ここで言っていてもだめだと。  大島班長  ありがとうございます。ここで議論するような話ではないと思いますし、何だか長谷 川先生の第2弾目で、ぶちこわしのような話になりそうです。どうぞ。  菊地参考人  先ほどの最短なのですけれども、2002年がやはり2,127日で6年弱、5年と数ヶ月と いうことになります。  寺岡班員  179日というのがある。  菊地参考人  小児だと思います。2003年が2,125日で7年が最短です。16歳以上の方です。  長谷川班員  そういう人はどうして当たっているのだろう。  菊地参考人  HLAがまず5点・5点の14点のフルマッチと、地域ポイントがそれに付きますと12 点ですから。  片岡室長  ただいま佐多先生がおっしゃられたのは、脳死の関係ではないかと思います。それは 先程班長が言いましたように、ドナーカードの記載不備事例についての取扱いを見直し たりするなど、なかなか成果が上がりませんけれどもいろいろな努力はしております。 今回は献腎といいますか、心停止下での提供が実際このケースはほとんどですので、こ のこととは直接はリンクしない数かと思います。  長谷川班員  ある部分、リンクするのではありませんか。  片岡室長  献腎事例を積み重ねていくことにより、脳死下からの提供事例につながっていくとい うことはあります。そういう意味でリンクしないわけではありません。  長谷川班員  結局、ざっくばらんな話で、今まで脳死と臓器移植法の法律ができる前に、日本全国 で心停止かあるいは脳死にかかわらず、腎臓の提供に一生懸命に協力してくださった病 院の約半数は、いわゆる4類型指定病院以外の病院ですよね。それで新しい脳死の法律 ができてからワーッと騒がれて、例えば4類型の指定を受けていない病院で脳死者が出 た場合に、それが臓器提供に結び付かないというものの多くは、出先の病院の脳神経外 科の先生たちは、「俺たちは外されたのだよ」という、そういう気持ちはないでしょう か。  大島班長  ちょっとこの議論はもう時間もないので。  長谷川班員  関係ないね。はい。  大島班長  ということで、時間切れでおしまいですというやり方はあまりしたくないのですけれ ども、具体的な提案として飯野委員のほうから、小児を除いた高齢者までの間に、もう 少しきめ細かいというのか、もう少し細かい点数配分をするようなことをやって、チャ ンスを広げたらどうかというような御意見がありましたけれども、いかがですか。  両角班員  それを是とする医学的な根拠がどこにもないようですが。  飯野班員  医学的なものではなくて、これは社会的・倫理的な意見として言ったわけですね。僕 はそれよりも、各待機期間の5年ごとに、すべて同じ率で当たるようにすればいいのじ ゃないかなと。そうすればそれぞれ待機期間が長くなれば、もっと確率が高くなるわけ で、そういうように点数のウェイティングを変えれば、若い人も。移植できます  両角班員  同じ点数をもらう人がいっぱい増えますから、そこでの新しい配分ルールがまた別に 必要です。今は待機期間だけが細かい点になり、小数点以下が並んでいるから順番が決 まるのであって、それをしないと、同点数が続出します。  佐多班員  この作業班の一番の基準というのは、はっきり言うとこういう倫理的な基準ではない ので、医学的な根拠でもって基準を変えるか変えないかという場なのであって、それが なければ、あまり変える必要はないという立場だと思うのですが、いかがでしょうか。  木村班員  私がさっき質問したのはまさにそこだったのですね。要するにこれは待機期間ではな くて年齢がある程度以上になると、予後が悪くなるというふうに見たほうがよろしいの ではないか。そうすると飯野先生のように、細かく点数を上げていくというよりも、あ る一定の点数を例えば50歳まで、あるいは60歳までは加算して、そこから上はその点数 を加算しないというふうにしたほうが、この根拠に基づく新しい選択基準ということに なるのではないかと思います。  大島班長  実はきょう辰井先生に来ていただいたのは、この新しい配分基準がどういう過程でで きてきたかというのは、もちろん臓器移植の専門委員会の委員は承知しているわけです が、町野先生が「ちょっと待ってよ」というような感じで、「医学的な基準だけでこれ を決めていい話なのだろうか」というようなことで提案をされたのですね。これは半分 疑問型で「本当にそれでいいのだろうか」というような、もう少しこういったものを決 めていくときには、違った目が必要なのではないだろうかという御意見を出されて、そ れでできればいま佐多先生が言われたようなことだけを考えて我々やれば非常に楽で、 ただ、かなり似たようなものの考え方をする集団ですから、そこから出てくる結論とい うのは、非常に偏ったものになる可能性は十分にありうるわけで、そういったことを町 野先生は危惧されたのだと思うのですね。そこで専門委員会で、やはりこれはきちんと そういった面も入れたほうがいいのではないかというようなことで、きょう来ていただ いたのですけれども、ちょっと手を挙げられかけたので、いかがですか。  辰井参考人  実質的に選択基準を決定するのは、この場だけということであるとすると、医学的な 基準だけを考慮されればよいというわけには、当然いかないだろうと思います。  大島班長  決定するのは専門委員会なのです。それで専門委員会の中には法律家もいますし、患 者代表もいますし、他のいろいろな方も入っています。ただ、議論のほとんどというわ けではなく、向こうも議論をするのですが、提案はここから出るという、こういうプロ セスです。  辰井参考人  その間にもし社会的、倫理的な観点も考慮するのだとすると、実施される方以外の目 が必要だというのも、そのとおりだと思いますが、しかし実際の側の方にその発言権が ないかというと、決してそのようなことはないと思います。  大島班長  ありがとうございます。  寺岡班員  いま医学的な面という発言なのですが、木村先生がおっしゃったことは非常に重要 で、辰井先生もおっしゃいましたけれども、年齢の61歳以上が非常に悪いことは事実な のです。しかし、61歳以上の人がそのまま透析を続けたら、その生存率はどうなるかと いうと、もっと悲惨ですよね。確か60歳代ですと透析の10年生存率は29.1%ですね。確 かに移植の成績を向上させなければいけないということは事実です。  しかし、では移植の成績を上げるためにそういうハイリスクグループの人達を除外し ていいのか?腎不全医療全体として考えた場合には、移植医療と透析医療とのすみ分け という視点から、そういったハイリスクグループの患者さんをどうするか、その人達の 生存率あるいはクオリティーオブライフを上げるためには、どうしたらいいかという視 点も必要なのではないかという気がするのです。ただ、その場合は、ルールをつくると いうことは非常に複雑になってしまいますよね。  さっき辰井先生がおっしゃいましたけれども、長谷川先生も最初におっしゃったと思 うのですが、このルールの原則は何かと言うと、もちろん公平・公正が第一であると。 その次には成績を良くしなければいけない。その次には移植を増やさなければいけな い。しかしこの3つを満足させ得るルールはあり得ないでしょう。成績を良くしようと 思ったら、あるところを犠牲にしなければいけない。確かに飯野先生がおっしゃるよう に、若い人を、今後社会を背負っていく人たちを優先させるべきという指摘も理解でき ます。しかし結局はこれらの論点をある程度バランスをさせるしかないのだろうと思い ます。そのバランスが非常に重要ではないかと思うのですね。どういうルールをつくっ ても、100%の正解はなくて、どこかからはクレームが出る。ですから私はやはり何年 かおきに、これらのデータをフィードバックしながら、そこで細かく微調整していくし かないだろうと思います。  UNOSもそうですよね。UNOSも例えばHLAのポイントの比重を下げたり、上 げたりしています。最近ではイクスパンデッド・クライテリア・ドナーをつくっていま すね。私は結局はそういうふうなデータを注ぎ込みながら、日々議論をしていって微調 整をしていくしかないだろうと思います。ですからどういう案ができたとしても、どう いうものをつくったとしても、この委員会のメンバーは、移植医からも、患者団体から も、また社会からも批判されるわけです。しかしそういう作業を積み重ねながら、少し ずつ良い方向へ向けていくしかないだろうと思うのです。  1つの原則は、移植医療だけのことを考えるのではなくて、腎不全医療全体を考える 視点を、そこに入れていくということが必要ではないか。幸いこの委員会には飯野先生 とか両角先生のような透析医療も一生懸命におやりになっている先生方がいらっしゃい ますので、私は結局最終的にはその辺のバランスをとるしかないだろうと思います。し かしどういうふうな案をつくっても、100点満点のルールはできないということは認識 しておく必要があります。  大島班長  ありがとうございます。私が言わなければいけないことを、みんな寺岡委員が言って しまったような感じなのですけれども、ここで時間はちょっと過ぎているのですが、こ こでクローズしてしまっていいのかどうかという話になると、飯野委員からの提案がど うしても引っかかって残っているのですが、全体としていかがですか。それほど自信を 持って飯野先生が言っているような感じではないと思いますが、こういった考え方もど うかというような提案のように伺ったのですが。  寺岡班員  その点に関して言うと、今は10年までは直線的に1年ごとに1点上がるのですね。10 年を過ぎてからゆるやかなカーブになって、結局25年で15.5ポイントでしたっけ。確か ネットワークから3つの案を出されたのですね。その中で勾配がいちばん低いのを選ん だのが今のルールでしたね。ですからおそらくあの勾配をさらに低くするというと、も うフラットになってしまいますので、フラットにするのはまずいでしょうね。やはり10 年待っている人よりも、15年の人のほうがやはり少しは高くなっていないとまずいでし ょうから。そうすると最初の開始を10年ではなくて7年か8年ぐらいにすると、もう少 しその辺のバランスがとれるかなと思います。ただこれはバランスをとるための方法で して、その根拠は何かと言われた場合には、非常に困りますけれどもね。ですからどう してそういうふうに変更したのかということをきちんと説明できるように、木村先生が 発言されたように、医学的な立場からも、そしてまた公正・公平な立場からも、きちん と説明できるような理由が必要でしょうね。ただ、もし変更するとすればその点だろう し、そういった御意見は非常に多かったと思います。ただ、最終的にそれをどうするか ということに関しては、もっと皆さんの御意見をお聞きしてみないと、何とも言えませ んけれども。  大島班長  辰井先生、何か我々のようなこういう医療集団が今のような議論を一生懸命にやるの ですけれども、何か私は違和感があるのです。ここで5年ごとに決めて、それをやるの がより公平だとか、寺岡委員の言った「早い者勝ち」じゃないですけれども、早く並ん だ順番が1つの原則だろうというのは非常に分かりやすくて、これについてはあまり文 句が付けにくい話だなという感じは私はするのですね。そこにいくつかのファクターが 入ってくるというのは、もちろんありうる話なのですが、原則はそうだという話なので すけれども、これを例えば年齢ごとにみんなフェアでなければいけないというのはどう いう根拠なのかなというふうに考えてしまったり。それは本当にどういう根拠でもって そういうことがありうるのかなと。何が言いたいかというと、我々のような集団が考え ていていいのかなというような疑問符を持ちながら、ちょっと違和感を持ちながらむし ろ、そういったことは他のむしろ患者さんたちの患者団体が自分たちの意見として「こ ういったふうにしてくれ」というように、そういう機会があれば希望者たちにそういっ た意見を聞いたほうが、よっぽどいいのじゃないかなというふうに思って見たりするの ですけれども、いかがですか。  辰井参考人  ええ。その幅広いというか、利害関係者の多くのいろいろな立場の方が関係されてい ますから、そこから代表を出してお話を聞くということは確かに必要なのだろうと思い ます。ただ、全体として必ずしも移植に関係する話だけではないのですが、専門家の方 が御自分で何かを決定するということに関して、特に最近、それは自分たちが決めるべ きではないのではないかというようなお考えが、どこの領域でも強くなっているような 感じがいたしますが、他からもどんどん意見を聞かなければならないというのは当然と いたしましても、やっぱり基本的に実施される方も、その実質的な判断を行うべき立場 にあるということは、間違いないと思います。  大島班長  プロとして提示できる材料というのは、かなり限定されていると思うのですね。そこ に関しては譲りませんよと。ただ、そのことが全体の中でどれほど大きな意味を持つか という判断は、またこれは違った見方になると思うのですね。だから我々がプロフェッ ショナルとして医療に携わる者として、どういう治療成績で、どういうアクションを起 こせばどういうふうになってという、それに関わる材料を基に議論を行うということは 当然ですし、それは我々の責任だと思っているのですね。  ところがそうでない今のようなお話ですよね。5年以内の登録の人と5〜10年の登録 の人と、10〜15年の登録の人と、20年以上の登録の人と、それは権利はイーブンです と。どうして権利はイーブンになるのかなと、私なんかは分からなくなってしまうので すよ。少なくともそれを示せる根拠、ロジックを持っている人は多分ここにはいないの ではないかなという感じがするのです。それを社会学とか法律という観点から、その論 拠はこうですということが示されることができるなら、むしろその人たちがこの部分に 関しては主導権を握っていただく。もしそういうものがなければ、その当時者である人 たちがむしろ御意見を言ったほうが、よほどすっきりするのではないかなというような 感じがするのですね。我々は5年目、10年目、10年以上、その人たちにはこれだけのリ スクがありますよということは提示できますよね。やること自体についてはもちろん責 任を持って、20年でどんなリスクがあろうと、その代りそれを選択するのは最終的には 向こうというのか、それを選択する側の人ですから。  長谷川班員  またすみません。飯野先生の意見があまりにも冷たくみんなには拒否されていますけ れども、いや、そういう意見が出ていいのじゃないですか。  大島班長  拒否なんか全然していませんよ。  長谷川班員  ああ、両角さんの言い方が冷たいのだよね。医学的な根拠がないから、議論の対象に ならない。医学的な根拠はないですよ。例えば子どもにどうして14点上げたのかなんて いう医学的な根拠はそんなのないですよ。  両角班員  成長中という根拠があります。  長谷川班員  だけど14点という根拠はないでしょう。  両角班員  それはそうです。  寺岡班員  そこまで言ってしまったら、根拠って何だということになりかねないですから。  長谷川班員  ということで、いま皆さんは本当に子どもに温かくしてくださったわけだけれども、 では子どもを過ぎた人で、やっぱりこれから世の中に出て社会的に生産的な生活に入っ ていこうという人たちに、やっぱり生産的な生活に入れるチャンスを移植のほうがはる かに多いから、それを与えて上げようというのは、これは根拠のない話ではないのじゃ ないですか。ある程度根拠があるのではないですかね。彼は彼自身の意見もそうだろう し、それから東日本のコーディネーターだとか実務委員会の委員のアンケートの大きな 部分を彼は代表して言っているわけで、余り簡単に医学的な根拠がないからといって、 ボツにされてしまうのはちょっと気の毒だと思うし、僕もそういう心情ですね。  寺岡班員  おそらく先生、心情的にはみんな賛成していると思いますよ。ただその根拠について 説明できないだけで。  大島班長  私の立場から言うと、今度、専門委員会で説明しなければいけないのですね。どうい うことでこういう基準を持ち出したのだということを、きちんと説明しなければいけな い。その説明をするのにどういう説明の仕方をするか。今の先生がおっしゃられたのも 確かにあれなのだけれども、それはかなり心情に訴える説明になりますよね。  長谷川班員  でもね、生産的な生活に入ってきますよ。  大島班長  私が言いたいのは、法律的な根拠だとか何とかの社会学的な何かだとか、そういった ような根拠というのは、できればあったほうが話としては。  寺岡班員  それはできるのではないですか。例えば20歳の人に移植して、その人があと40年間生 産する価値というのは計算できますよね。その20歳のほうは生着率も生存率もいいわけ ですね。その人が移植をすることによって、生産的な価値という意味では、計算できる のでしょう。  辰井参考人  ただその計算は多分かなり反発を招くと思います。  大島班長  私は今のような話では、私自身が大反対をしなければいけない。そういうロジックを もし持ってくると、それでは70の人あるいは60の人は移植を希望していけないのか、権 利がないのかという議論にこれはつながりますので、医療の立場からはそれは絶対に私 は言えない。  寺岡班員  その通りです。技術的には計算可能と申し上げた訳で私の本意はそうではありませ ん。両角先生がさっきおっしゃったことは非常に重要な指摘だと思うのですが、このま まで行った場合に、新しい人が移植できないと。そうするネットワークの新規登録者が 減るのではないかと。そうすると登録料が減ることによって、ネットワークの予算が維 持できないのではないかと。そういうことがない限りにおいては、このままでいいのじ ゃないかという主旨のことをおっしゃいましたよね。たしかに1つのご意見だろうと思 いますが、ただ、ネットワークの経営状態が維持できるかどうかということによって、 配分ルールを変えるということはどうなのでしょうか?  両角班員  いえいえ、そういう意味ではありません。ネットワークの経営というよりも、ネット ワークのシステムを支えるのは臓器移植を希望する患者のためですから、患者さんが離 反するようなシステムは、患者さんのためにつくっているシステムなのですから、あっ てはいけないという趣旨です。  寺岡班員  よくわかりました。7年か8年ぐらいでカーブを曲げるようなかたちで、もう少しバ ランスがとれるようにすれば、先生や飯野先生のおっしゃっていることもある程度それ で満足できるだろうと思いますが。  大島班長  ちょっと何か議論がかなり複雑なような感じになって来てしまったのですが、私が時 間を気にして多少誘導しようとしたために、余計おかしくなったのかも分かりませんけ れども、いかがでしよう。全体として、もしどうしてもこの問題はあれだということな らば、改めて仕切り直しをするということもいいかと思いますが。  柏原班員  町野先生が言ったからどうのというところが分からないのですね。もし今のように年 齢の若い人にやってくれということで、例えば先ほど…。  大島班長  ちょっと先生、誰が言ったから。  柏原班員  いやいや、その上の委員から。  大島班長  町野先生が年齢どうのと、そんなこと何も言っていませんよ。  柏原班員  いや、そうじゃないです。その基準がこれでいいのかというような話をされたと。  大島班長  その基準はちょっとあれですけれども、なぜきょう辰井先生が見えているかという理 由は、私は何度か言いましたけれども、これを一度見直そうではないかというのが、専 門委員会の中で決まって、その議論のプロセスの中で限られた臓器をどう配分するかと いうことについて、もう少し広いというのか、あるいはいろいろな意味でそういった限 られたものを欲しがっている人がいっぱいいて、ある意味でパイが小さいわけですね。 それをどうするかということについて、どちらかというと医療集団だけでそういった議 論をするということについて、どうだろうかという投げかけのようなお話が町野先生か らあったと。それを受けて、やはりもう少しいろいろな社会の御意見を聞いたほうがい いだろうということで、こういうことになったのです。町野先生が「ああせい、こうせ い」というような、具体的なコメントを何か出したという話では一切ないことです。  柏原班員  そこは置いておいも、ここで若い人に移植をもっと進めようという話は、ここでやる のではなくて、上の委員がやはり今の将来を見据えて、若い人にもやれるような配分は ちょっと考えろということがあって、初めてではどうするかということであって、今の 議論をずっとしても、医学的な根拠も何もないというのに、どうやって我々が点数をこ こにもっと付けて、若い人にやらせようとか、そういうことはちょっと難しいのじゃな いかなという気がします。もっと上の委員会の判断で宿題を出してもらうということで はないでしょうか。  それから登録が長くなると、あるいは年齢が高齢になると、成績はどうも悪くなりそ うだという事に関しては、個人の希望というのも捨てきれないという部分もあるので、 そういう患者さんにやはりインフォメーションをきちっと与えて、登録するのかどうか を選択させるということは必要ではないでしょうか。今まで腎移植をするとみんなバラ 色ですよという部分もあって、では移植しようと、気負いが高い人は一部にはいますけ れども、事実はマスで見るとやや成績が悪いよということを、きちんとネットワークを 通してなり、あるいは登録先から登録者に情報を提供して、場合によっては自主的に遠 慮してもらうということをしながら行くほかないのではないのかと思います。  大島班長  ありがとうございました。もう30分過ぎていますので。  佐多班員  この委員会の中で私は移植とほとんど関係ないと言えば関係ないですね。感染症だか ら行ってこいと言われて、自分の意思と関わりなく来てずいぶん勉強させていただい て、非常におもしろかったのですが、要するにこの作業班の中にもしこの生命倫理の問 題をディスカッションするというのだったら、今回は辰井先生が来られたけれど、先生 1人だけであとは全然違う人ばかりですよね。  もしこういうかたちで議論が必要だとすれば、医学的な話をきちんとした上で、この 生命倫理学的なディスカッションをしましょうというのだったら、やっぱりそれは何人 か複数以上来ないと、ディスカッションにならないのじゃないかと思うのですね。  大島班長  ありがとうございました。  斎藤主査  それでは事務局のほうから御提案ということなのですが、2004年度の腎臓移植の結果 についても、今年度末に1度集計をとられるというふうに伺っております。その上で3 年間のデータがおそらく今年の5月か6月くらいには、また集まるのではないかという ふうに考えられますので、その当たりのも踏まえたデータを揃えまして、あと今の佐多 先生からもありましたような、この構成員の内容についても、一部ちょっと考えさせて いただきまして、再度開催をさせていただくというようなかたちで事務局としては考え ておりますが、いかがでございましょうか。 3.閉会  大島班長  今の事務局の提案はいかがでございましょうかということなのですけれども、ぜひそ の方向で進めさせていただきたいと思います。きょうの議論で最後のところで、少しけ つまずいたわけではないのですけれども、大きな議論になりまして、大体おおまかにい って、前回我々が考えたシステムは、まあ、90点ぐらいの評価でうまく動いてきている というような感じではなかったかと思います。最後のところについて、時間を見ながら 私は押し切ってしまおうかなという気持ちがちょっと出たのですけれども、やはりそれ はまずいので、もう1回最後の今の積みきれない部分を、事務局の提案のように、その 段階でもう1回やると。  例えば今の議論の中心になっているどういうメンバーをお呼びしたらいいのかという ようなことについても、また相談させていただきながら進めさせていただきたいという ことで、きょうはこの辺で終わりたいと思いますけれども、いかがでしょうか。ありが とうございます。それでは本当に長い間ありがとうございました。  斎藤主査  ありがとうございました。次の開催につきましては、再度、皆様に日程調整の御連絡 をさせていただきますので、どうぞ御協力をよろしくお願いいたします。本日は長時 間、大変ありがとうございました。                                     <了>                        ┌――――――――――――――┐                        |照会先:健康局臓器移植対策室|                        |担当者:斎藤・永野     |                        |内線 :2362・2366 |                        └――――――――――――――┘