05/01/18 妊婦の服薬情報等の収集に関する検討会第1回議事録           第1回妊婦の服薬情報等の収集に関する検討会                       日時 平成17年1月18日(火)                          17時〜                       場所 厚生労働省専用第18〜20会議室 ○事務局  第1回「妊婦の服薬情報等の収集に関する検討会」を開催いたします。本日ご出席の 委員の方々におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうご ざいます。本検討会は、公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは議事に入る前 までとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理 解とご協力のほどをよろしくお願いいたします。  はじめに委員のご紹介をさせていただきたいと思います。あいうえお順にご紹介いた します。  明治大学法学部教授の石井美智子先生。  国立成育医療センター医薬品情報管理室・治験管理室主任薬剤師の石川洋一先生。  東京女子医科大学医学部教授の大澤真木子先生。  虎の門病院産婦人科部長の加藤賢朗先生。  東京SP研究会代表の佐伯晴子先生。  福島県立医科大学医学部教授で、日本産科婦人科学会常務理事の佐藤章先生。  国際医療福祉病院院長の佐藤郁夫先生。  聖路加国際病院産婦人科部長・生殖医療センター所長の佐藤孝道先生。  虎の門病院薬剤部長の林昌洋先生。  横浜市立大学大学院医学研究科教授で、日本産婦人科医会常務理事の平原史樹先生。  国立成育医療センター周産期診療部母性内科医長の村島温子先生。  筑波大学臨床医学系産婦人科教授の吉川裕之先生。  続いて事務局側を紹介させていただきます。厚生労働省医薬食品局安全対策課課長の 平山、同じく医薬食品局安全対策課安全使用推進室長の森口です。まず課長の平山から 一言ご挨拶を申し上げたいと思います。 ○安全対策課長  委員の皆様方には、お忙しいところをお集まりいただきましてどうもありがとうござ います。妊婦の服薬情報と、その服薬による胎児への影響ということにつきましては、 医薬品の市販後の調査の中では、非常に情報を集めにくい分野でございました。いろい ろ工夫はされていたわけですが、なかなか情報を集めることができないという現状があ り、安全対策課でも何とかして妊婦の服薬時の影響について、適切な情報を与えられな いかということを長年懸念してきたところでございます。  幸いにして、今年提出させていただきました来年度の政府の予算案の中に、「妊婦と クスリの情報センター」というものを立ち上げ、そこで妊婦に対する服薬指導を行うと ともに、その後に出生されたお子さんについての情報を集めるという1つの仕組みを予 算上考え、それを成育医療センターで実際に事業としてやっていただけるということが わかりましたので、我々としては、この政府案に従って、この事業を進めていきたいと 考えております。予算の成立は、今年の春ごろになるかと思いますが、その後にスムー ズにこの事業が開始できるという状況を、ぜひとも作っておきたいと考えまして、若干 前倒しではありますが、この時期に検討会を開始させていただきました。  この検討会では、実際の業務をどうやっていくかということについて、いろいろ問題 点がございますので、それを十分議論していただいて、その議論を当センターの立ち上 げ、あるいは運営の中に活かしていければと考えておりますので、忌憚のないご意見を いただきたいと考えております。今後ともよろしくお願いしたいと思います。 ○事務局  次に座長を決めさせていただきたいと思います。本検討会の座長につきましては、互 選により選出したいと考えておりますが、どなたかご推挙いただければと思います。 ○加藤委員  佐藤郁夫先生がよろしいかと思いますが、皆さんいかがでしょうか。                 (異議なしとの声) ○事務局  よろしければ、佐藤郁夫先生に座長をお願いしたいと思います。それでは佐藤先生、 座長席のほうによろしくお願いいたします。 ○佐藤座長  ただいまご推挙いただきましたが、本当に私でよろしいかどうかわかりません。大変 不慣れではございますが、今日の委員の皆さんのご支援をいただきながら、スムーズに 会が進められればと思っております。ご協力のほどをよろしくお願いいたします。  それでは、これから議事に従って進行させていただきますが、まず事務局から、今日 の資料の説明をよろしくお願いいたします。 ○事務局  資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料の表紙に、第1回妊婦の 服薬情報等の収集に関する検討会と書いてある資料一覧表があります。ここに資料と参 考資料が書いてありますが、資料は1〜9までございます。事前に委員の先生方には1 から7番までは送付させていただいており、8番、9番については本日追加させていた だきました。また、委員の先生方のみに参考資料として、1〜8までの資料を配付して おります。  資料1が、この検討会の委員の名簿です。資料2は、「平成17年度医薬関係予算案の 概要」、資料3は「『妊婦とクスリ情報センター(仮称)』構想」、資料4は「カナダ マザーリスク・プログラム」、資料5は「検討事項(案)」、資料6は平原先生から提 出された「日本産婦人科医会先天異常モニタリング(JAOG)と横浜市立大学医学部 国際先天異常モニタリングセンターのとりくみ」と題した資料です。  資料7は、成育医療センターの村島先生から提出されたもので「国立成育医療センタ ーにおける妊娠・授乳と薬相談外来の実際」と題したもの、資料8は、聖路加国際病院 の佐藤先生から提出されているもので「聖路加国際病院生殖医療センター 妊娠と薬相談 クリニック」と題した資料です。資料9は、虎の門病院の加藤先生と林先生両名のお名 前で出されているもので「虎の門病院『妊娠と薬相談外来』の取り組み」と題したもの です。  先生方のみに参考資料として配付しているのは、参考資料1がMOTHERISK Intake Form、参考資料2がMOTHERISK PROGRAM、参考資料3はPregnancy Follow Up MOTHERISK PROGRAM、参考資料4はTHE MOTHERISK PROGRAM-NVP FORMです。  参考資料5は左上にLITHIUMと書いてあります。参考資料6は、炭酸リチウム製剤の 添付文書です。参考資料7は写真のついたものです。参考資料8は、PL顆粒の添付文書 です。以上です。 ○佐藤座長  委員の先生方、お手元の資料で何か欠落しているものはございませんか。ございませ んようですので、早速議事に移らせていただきます。まず、議事1の「事業の説明」を 事務局からよろしくお願いいたします。 ○事務局  事務局から資料の2と3を使って、今回の事業の説明をさせていただきます。資料2 は「平成17年度医薬関係予算案の概要」ですが、冒頭に課長の平山からご案内いたしま したとおり、平成17年度の政府案として医薬関係予算案の概要をまとめた資料です。こ の政府案については、1月21日から国会が始まり、そこで来年度の予算を審議すること になっております。資料2の2に「妊婦のためのクスリ情報センター事業費」とありま すが、こういった内容で、約4,800万円程度、平成17年度の政府案の予算として、ご審 議いただこうと考えているところです。  内容ですが、資料3の「『妊婦とクスリ情報センター(仮称)』構想」とあります が、「妊娠中の医薬品投与の現状と課題」ということで書いています。現状は、医薬品 の胎児への影響については必ずしも十分な情報があるわけではないという状況があり、 また、その情報を十分活かす相談体制も、必ずしも十分ではないという状況である。極 端な場合には、ここに書かれていますように、服薬中に予期せずに妊娠した場合に、中 絶が行われたり、あるいは慢性疾患患者の方が長期に服薬する場合に、避妊を強いられ たり、あるいは妊娠中は薬物療法が避けられて適切な医療を受ける機会を逸する、とい うようなことが起きていると言われています。  このような現状を打開するために、厚生労働省がいま考えている事業として、服薬の 影響を心配する妊婦、あるいは主治医に対して相談窓口を開き、この相談業務を通じて 服薬妊婦を登録し、追跡調査を行うことで出生児に関する情報を収集するということ。 また、収集した情報をデータベース化して、今後の相談や医薬品に付いている添付文書 の改訂に活用するというような仕組みを構築したいと考えております。  「具体的な妊婦相談・情報収集構想」ですが、国立成育医療センターに、医師、薬剤 師あるいはデータベースの処理要員等を配置して、「妊婦とクスリ情報センター(仮称 )」を開設していただければと考えております。そして、このセンターにおいて服薬の 不安を抱える妊婦から相談を受け付ける相談業務を開始することを考えております。  相談に活用する情報は、カナダのトロントの小児病院で蓄積されているデータなども 活用できればと考えています。あるいは、基になる情報としては、既存の文献情報など を基礎情報として活用するということも考えています。こういった相談業務を通じて、 妊婦の協力を得て出生児に関する情報を収集して蓄積していきたいと考えています。こ ういった内容の予算の要求を、平成17年度の政府案として作成しているのですが、将来 的には各地域の拠点となるような産婦人科を、ネットワーク病院として組織できればと 考えております。組織化して、妊婦からの直接の電話相談にも業務を拡大していき、集 積情報の充実を図っていきたいと考えています。こういった情報が集積されると、十分 なエビデンスが集まりますので、医薬品の添付文書へ反映し、妊婦に対する情報の周知 が図っていけるのではないかと考えています。  次の頁は、いま申し上げたような内容を絵で表しております。服薬の影響が心配な妊 婦からの相談に応じるということで、当初はおそらく妊婦の主治医の方を介して相談に 応じる、という形になるのではないかと考えています。相談に応じて、妊娠が経過して いき、出産した場合には、出産後、出生児の状況の情報を妊婦から教えていただき、情 報収集を図るということで、これを国立成育医療センターで蓄積していくということで す。相談に当たっては、トロントの小児病院との連携を図ったり、あるいは公表の文献 データを活用したりして相談に応じていく。将来的には、協力病院のネットワークを作 って情報を集めていきたいと考えております。情報量が増加していけば、薬に関する情 報が蓄積され、添付文書の改訂などにも反映できるのではないかと思います。こういっ た事業を今後進めていきたいと考えておりまして、本日検討会を開催し、先生方にいろ いろとお教えを乞いたいと考えているところです。以上です。 ○佐藤座長  ただいまの事務局からの説明に対して、委員の先生方から何かご質問等はございます でしょうか。ございませんようですので、議事の2に移らせていただきます。先ほども ご説明がありましたように、厚労省が計画しております事業を検討するにあたり、関連 する事業の現状というようなものを事務局、また今日お集まりの委員の先生方からご紹 介いただきたいと思っています。初めに、昨年厚労省がカナダのトロント小児病院のマ ザーリスク・プログラムを視察されたということですので、その紹介を事務局からお願 いしたいと思います。 ○事務局  資料4を用いて説明いたします。カナダのトロントの小児病院において、私どもがい ま考えていますような妊婦からの相談業務というものを行っているということでしたの で、昨年の8月に訪問して、どういうように行っているのか、調査をしてまいりまし た。調査をするにあたり、本日、委員としてご参加いただいている虎の門病院の林先生 と国立成育医療センターの村島先生にもご同行いただき、調査に参加していただいてい ます。  1.査期間と場所ですが、昨年の8月10〜15日までの期間で調査に行ってまいりまし た。  2.実際にカナダのトロントの小児病院で、電話相談を行っている対象地域、対象と なる人口ですが、特に対象となる地域は限定していないということで、カナダ全土、あ るいはカナダを越えてアメリカからも電話相談がきているという状況とのことです。ト ロントのあるオンタリオ州の人口は800〜900万人程度だそうです。  3.相談の内容ですが、妊娠中の医薬品の服用はもちろんのこと、感染症や放射線、 化学物質等、医薬品以外にも胎児に影響を与えるような事項すべてについて、トロント の小児病院では相談に応じているということでした。  4.こういった事業を行うにあたって、どのように周知したかというと、プログラム の開始が1985年で、その当初はステッカーなどを活用して宣伝を行っていたということ です。  5.運営資金ですが、私どもは国の事業として開始するので、どのような資金源で行 っているのかということを確認しましたら、トロント州からの財源が主ですが、国から のお金なり、あるいは寄付なども集まって、種々の財源を利用して行っているというこ とでした。  6.この相談業務を「マザーリスク・プログラム」というようにトロントの小児病院 では呼んでいるようですが、電話相談の窓口の数や対応時間を聞きましたところ、妊婦 からの相談にのる一般の電話相談が5回線あって、朝の9時から夕方の5時まで応じて いるとのことでした。その他に、つわり専門の相談ということで2回線あり、やはり同 じく9時から5時まで。また、飲酒なり、あるいは乱用薬物なりの相談も受け付ける回 線も別途設けているそうで、これは朝の8時から夜6時まで開設しているとのことでし た。電話相談に応じているカウンセラーの資格はどういう方かということも確認しまし たが、カウンセラーについては、カナダにおいて医療職種の資格を持っている方ではな い方が対応されているということでした。  7.開始するにあたって、どのようなトレーニングを積んで電話相談に応じているか ということですが、大体1カ月間の初期トレーニングを実施して行っているということ で、講義や相談業務を見るという視察、あるいは指導者付きで相談業務を行うというよ うな過程を経て、実際の業務に入るということでした。  8.相談業務の実施方法ですが、実際には記入シート(参考資料1)が用意されてお り、それに記入しながら相談に応じるということです。相談に回答するにあたっては、 各医薬品ごとに回答用のステートメントを作成しており、それに基づいて回答している ということです。参考資料5は、リチウム製剤についてのものですが、こういった回答 ステートメントを基に、回答をしているということです。このステートメントについて は、逐次新しい情報があれば改訂しているということなので、お手元の資料は最新の情 報を反映していないので、カナダのトロント病院の先生に聞きましたら、今日配付した 資料を使われると、作成後に最新の情報が入る場合があり、情報が古くなっている可能 性があるので、業務には使わないでいただきたいということでした。  相談に応じた後、シートに記入するわけですが、外来に来ていただいて、面談で行う ということもしているそうです。面談の場合も、面談専用の記録用紙(参考資料2)が あり、面談の内容を書いて記録しているとのことでした。その他、面談に来た患者の主 治医には、面談の内容を書面で郵送しているということです。書面での回答は、ここに 書いてありますとおり、ステートメントの範囲内で実施しているが、何かしら文献を複 写して渡すというサービスは行っていないとのことでした。  9.相談して来た方の出産結果のフォローアップの方法です。電話相談は、トロント 小児病院では、年間約4万件ぐらいになるとのことで、4万件もあると、すべての出産 結果を確認するのはなかなか手間がかかり、すべての出産結果を確認しているわけでは ないとのことでした。ある特定の医薬品をターゲットにして、例えば新規の医薬品など について、フォローアップを実施しているとのことだそうです。研究対象にするという ことなので、患者の同意が必要で、フォローアップする際には、大学の倫理委員会から の指示に基づいて、口頭あるいは文書で患者の同意をとった上で、フォローアップを実 施しているということでした。  出産結果については、電話で本人に確認するということも実施するが、詳細な情報に ついては妊婦の同意を得て、主治医に確認をしたりしているそうです。おおむね相談件 数の3分の2については電話でのフォローアップが可能ということで、「出産結果を教 えてください」と言って拒否されるケースは1%程度ではないかということを聞いてい ます。  10.相談者とのトラブルですが、こういった情報提供なり、情報収集をして、何かし らトラブルが生じるかということに関しては、相談者から訴訟などを提起されたことは ないと話していました。異常児の出産については、自然の状態でも1〜3%は発生する ということですので、そういったリスクを上昇させないという形での情報提供をしてい るので、万が一、異常児を出産して、訴訟になったとしても敗訴することはないのでは ないかと考えている、という話をされていました。ただ、対応について、応対の仕方が 悪いとか、そういった苦情が寄せられることはあるが、年に数件程度で稀ですという話 をされていました。  11.電話相談のための情報源ですが、評価を受けているという意味で、学術雑誌に掲 載されている論文を基に、回答のステートメントを作成しているということです。た だ、学術雑誌に掲載されている論文がないような場合には、情報がないということで、 学会発表の情報や、企業が実施したけれども企業として発表していないような情報も、 活用できれば活用しているということだそうです。  12.回答用のステートメントという、相談に応じる内容について、どういった管理の 仕方をしているかというと、データベースのソフトではなく、通常のワープロのソフト のMS-Wordというソフトで回答用のステートメントを管理しているということで、約600 件ぐらいあるそうです。これは逐次、新しい情報がないか情報収集をしていて、新たな 情報があるごとにアップデイトをしているそうです。相談結果については、記録紙があ り、それに記入しているが、それはいまのところ電子媒体ではなく、紙媒体で保存して いるということで、電子的なデータベースの作成を試みてはいるがまだ完成はしていな い、というような回答でした。  このプログラムは、1985年から始まっているということで、今までの累計の相談件数 は約30万件ほどたまっているそうです。そのうち、一部の医薬品について、ターゲット を決めてフォローアップをしているとのことで、フォローアップしているのは大体6,000 件、2%程度ではないかというお話でした。トロントの小児病院で行われているマザー リスク・プログラムで見てきた内容は、こういった内容です。私どもは昨年8月に訪ね たのですが、トロントの小児病院でこのプログラムを行っているのが伊藤真也先生とい う日本人の方で、大変お世話になり、懇切丁寧に教えていただき、非常に感謝している ところです。  お手元の資料のうち、ご説明しなかったのが参考資料4です。これは、妊婦の薬相談 ではなく、つわりの相談ということで、相談がきたときに記録をする記録用紙です。参 考資料6は、カナダのトロントでもらってきたのではありません。参考資料5がリチウ ム製剤についての回答用ステートメントなので、日本のリチウム製剤の添付文書にはど のような情報があるかということで、参考までに炭酸リチウム製剤の添付文書を付けて います。3頁の左下に、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」とありますが、こういう内 容が書かれています。参考資料7は、トロント小児病院の外観や、電話相談を行ってい る部屋の写真等です。参考資料8は、日本国内で販売されている医薬品の添付文書で、 どういった情報が妊婦、産婦、授乳婦等への投与という注意書で書かれているかという ことで、添付文書を付けました。事務局からは以上です。 ○佐藤座長  これから委員の先生に順次ご発表をお願いしたいと思います。まず、佐藤孝道委員か ら、聖路加国際病院で実施している「妊娠と薬相談クリニック」について、ご説明をお 願いしたいと思います。佐藤先生は、日本で長い間、こちらの方面で素晴らしいペーパ ーをたくさん出されておられます。先生、よろしくお願いいたします。 ○佐藤(孝)委員  資料8に基づいて説明します。もともとは、前任の虎の門病院のほうでやっていたシ ステムを、4年ほど前に聖路加国際病院でも是非やりたいと思って始めたものです。こ ちらに来ておられる林部長、あるいはその前の加野弘道部長などと一緒に相談して作っ た虎の門病院のシステムを、ほとんどそのまま使っています。実際には、面談の相談し か行っていません。面談相談しか行わない理由は、話が適切に理解されているかどうか を確認することが、非常に大事な作業であるからです。電話での相談に応じることも稀 にはありますが、それは医師からの相談の場合です。  患者から直接の場合、遠方だということがあったとしても、近くのどこかの病院に行 ってもらい、そこを介して説明をするという形をとっています。そうしないと、適切な 情報が電話では伝わらないのではないかという危惧があるわけです。実際に外来をやっ ていると、患者さんの顔色とか、微妙な反応の仕方というので、話が理解されているか どうかを判定しないといけない場面が結構たくさんあります。  システムとしては、患者もしくは主治医のほうから、予約電話番号と書いてある所に 電話をしていただいて、問診表を送り、それに記入してこちらに送り返していただく。 その問診表は、資料の4枚目にありますが、これも虎の門病院のものとほとんど同じだ と思います。それに記入して送り返していただき、それに基づいて調査をし、あとは外 来のほうに来ていただいて説明をする、という形をとっています。  2枚目、開設をしたのは2001年6月です。1件大体30分となっていますが、実際には 時間を超えることがしばしばあります。自費の料金で1万2,000円をいただいています。 産婦人科の医師1名、薬剤師が1名同席します。相談件数は、まだそんなに多くはな く、月に4件ぐらいのところで、いちばんたくさんの相談があった薬剤は、1人の人が 48剤についてということで、実際には1人の人がたくさんの薬を使用しているというこ とがあり、電話での相談などでたくさんあったときにどうするのだろうか、時間はどの ぐらいかかるのだろうかと思いまして、後でお伺いしてみたいと思っていたところで す。  5枚目、実際に来られた患者を見てみると、クリニックの受診時に妊娠中であったと いう人が86%、妊娠していなかった人が14%います。つまり、妊娠していない状態で相 談に来られる人が比較的多いというか、妊娠に気がつかないで薬を飲んでしまったとい うことではなくて、これから妊娠しようとする方で相談に来られる方が比較的多い、と いうことが1つ言えると思います。  6枚目も大体同じような意味合いになると思います。多くの人が妊娠と気がつかない で飲んでいて相談に来られる、という方が多いのですが、もともと妊娠していないとい う状態で来られる方もいるということです。  7枚目は、紹介があるかどうかということです。129人、81%の患者が、医師からの 紹介状を持って来ているということです。つまり、いろいろな相談について言うと、主 治医のほうで答えられるような内容のものは答えていて、結構大変そうなのが回ってき ている、ということが言えるのではないかと思います。同時に、患者に情報が伝わらな いだけではなく、医師にもなかなか情報が伝わらないというところに、非常に大きな問 題があるのではないかと思っています。  次に医薬品の種類で、どんな種類の薬剤について相談があったかということを書いて います。比較的多くて目につくのは、中枢神経系の薬剤、つまり比較的長期にわたって 服用している慢性疾患、もともとその患者が持っていたかもしれない疾患、ということ に関する相談が多いということは、そういうことに関する情報が、医師にも適切に伝わ っていないのではないか。本来だったら、妊娠をしようとしている患者に薬を処方して いる場合は、そういう説明はきちんとされなければいけないわけですが、実際はされて いないし、たぶん患者から聞かれても適切に答えられないというのは、やはり医師に情 報が適切に伝わっていないのではないかと思います。薬剤の種類としては、慢性疾患に 関わるものが比較的多いというのが、ちょっと気になるところです。  相談に来られた中で、これは昔、虎の門病院で出していたのと同じ程度のデータにな っていると思うのですが、大体3%か4%ぐらいの患者が、一応薬の影響が出るのでは ないかと思われるような内容の薬剤を服用していたということです。はがきで後の情報 を追跡していますが、薬剤による奇形は、まだ例数が少ないので子どもに異常があっ た、という報告をいただいている症例はありません。  「まとめ」で書いていますが、妊娠と薬相談クリニックへ医師からの紹介が多いとい うことや、あるいはこれから妊娠しようとする女性の受診者が少なくないということ は、妊娠中の薬剤の影響に関する情報が、妊婦だけではなく医師にも適切に伝わってい ないことを意味していると思います。情報が適切に伝わらない理由として考えられるの は、基本的に医師がよりどころにしているのは添付文書ですが、その添付文書の記載が 適切でない、記載方法が判りにくい、エビデンスに基づいていない、妊娠の時期による 影響が区分されていない。また、動物実験のデータが重視されすぎている、といった問 題があります。  最終的に主治医に聞いてみると、まず妊婦から薬について相談を受けたとき、調べる のは添付文書であり、ですから添付文書の記載は非常に大事だと思いますが、それが現 状では不十分かと思います。もう1つは、データは十分ではないが実際には結構たくさ んある。調べればきちんとしたデータは比較的たくさんあるのだが、それを蓄積をして 解析をする機関、あるいはそれをわかりやすく医師に伝える、あるいは患者に伝える機 関が少ない。データを蓄積し、解析する機関が公的なものが日本にはない、というのが 非常に大きな問題ではないかと思います。妊婦や、妊娠しようとする女性への情報提供 は、民間で行われてもいいのではないかと思いますが、データの蓄積や解析、あるいは それを添付文書に反映するのは、公的な機関が関与すべきだと、外来を担当していて感 じるわけです。もう1つは、この会議の趣旨とは違うかもしれませんが、授乳中の薬剤 に関する問題も非常に大きいので、どこかの機会で併せて検討していただければありが たいと思います。 ○佐藤座長  いままで事務局と佐藤委員からご説明いただきましたが、ここでお2人の方からのご 説明に関してご質問をお受けしようと思います。まず、事務局のカナダのトロントの見 学の結果について、何かご質問等がございますでしょうか。 ○佐藤(孝)委員  1件当たり、電話の相談時間はどのぐらいなのでしょうか。 ○事務局  電話の相談内容によって違っているようで、実際に私も電話相談をされている部屋 で、やっているところを見ていたのですが、数分で終わってしまうような方もいらっし ゃいますし、中には長い方もいらっしゃるようでした。聞くところでは、その場でカウ ンセラーの方が回答できないような質問がきたときには、ドクターの方が相談にのるよ うな形に、当番制にしているということなので、そのドクターの方に相談して回答する ようなシステムにもしていると聞いています。 ○佐藤(孝)委員  リチウムの文書を拝見して、よく書かれていると思うのです。実際には、これを素人 ではなくてある程度トレーニングされた方が説明されるということだと思うのです。こ れは私たちが読むとわかりやすく書かれていますが、実際にこれを普通の人が理解でき るのか。そこら辺のギャップをどのように埋めるのか。例えば、最後のところに「まと め」として、初期のteratogenic riskに関する情報が、何かバイヤスがあったというこ とで、最近のデータだとリスクは以前に言われているのよりずっと少なくなっていると いう説明があります。これを専門家ではない人が患者さんに説明して、これでわかるの かなと思うのですが、そこのギャップはどのように埋めておられるのでしょうか。 ○事務局  その点については、必ずしもドクターや薬剤師、あるいは看護師の資格を持っていな い方が電話相談にあたられているようでしたが、こういったステートメントを用いて、 相談にはうまく応じているようでした。日本でもしこういう相談に応じる場合は、当初 は主治医の方を通じた相談ということで始めざるを得ないかなと思うのです。情報の伝 え方も、どういった点を留意しながら、日本国内で行っていったらいいかということ も、うまい方法があればご教示いただければありがたいと思っています。 ○佐藤座長  いまの佐藤委員からのご質問は、運用面で大きな問題になると思うのですが、実施に あたっては、先輩であるカナダのトロントからの情報を十分受けることができるという こと、また佐藤委員がやられて、電話よりやはり対話がすぐれているということ、この 辺の手法については、これから実際に実施に移るまでの過程で問題を解決する、という 方向でしかないのではないかと思います。時間に限りがありますが、トロントのことに ついて、どうしてもここでお聞きしたいということがございますでしょうか。 ○佐伯委員  基本的なことなのですが、カナダで例えば妊娠・出産する費用は、保険で賄われるの かどうかということと、相談をする場合、相談者の費用負担はどのようになっているの かという、その点をお願いします。 ○事務局  カナダのトロントにおいては、一般の診療は、トロント市民は全部無料、自己負担な しで診療機関にかかれると聞いています。疾病の治療ではない、出産がその対象になっ ているかどうかは、確認していないので確定的なことは言えません。また、この電話相 談の費用についても、通常の診療が自己負担なしでできるので、相談者の負担なしで、 無料で実施しているということです。 ○佐藤座長  数日間の見学で、事務局に詳細について質問をしても、回答に苦慮するところがある のではないかと思います。委員の先生方の中には首をかしげていらっしゃる方もおられ ます。この辺のところは、また回を進める過程の中で、そういうご指摘、ご質問につい ては回答していただくという形でよろしいでしょうか。 ○佐伯委員  結構です。 ○佐藤座長  それでは、佐藤孝道委員のプレゼンテーションに対して、何かご質問ございますか。 それでは次に虎の門病院で実践されている妊娠と薬の相談について、林昌洋委員からよ ろしくお願いいたします。 ○林委員  資料9に基づいてご紹介いたします。「虎の門病院『妊娠と薬相談外来』の取り組み 」ということで、現在委員になっている加藤先生と一緒に進めているところですが、今 回は、全体のアウトラインの紹介とともに、フォーカスを3点絞ってご紹介し、今日の 話題にさせていただければと思っています。まず、「妊婦への催奇形情報の提供とカウ ンセリングの実際」という点です。当院では、佐藤孝道委員と薬剤部の共同運営という 形で、1988年4月に外来がオープンいたしました。「開設の目的」にありますように、 当時、やはりサリドマイドを含めていろいろな薬物の影響を心配する方が、十分な情報 を得られないまま、非常に苦慮されていたご夫婦がいらっしゃるということで、産婦人 科のほうから薬物の情報提供を求められた薬剤部とがコンビになったという形です。  4頁ですが、聖路加のシステムと同じだという話が先ほどありましたが、主に近隣の 産婦人科の先生方からの紹介で見える方と、直接申込みをされる方がいらっしゃいま す。先日も読売新聞などに載りますと、受診者の方は倍ぐらいになるということがあ り、潜在的な需要は、現在私どもが担当してきているよりも、おそらく倍近くあるので はないかというようには、一施設でも感じています。  まず、本人から、妊娠の時期や使った薬剤がわかるような情報を、調査表というもの で申し込んでいただきます。当院では、予約受付から調査すべてを薬剤部の医薬情報課 のほうで担当しています。患者に予約日を伝えて、当院も完全面談型でやっています。 外来では、産婦人科医と薬剤師が同席し、薬剤師から医薬品の情報の提供と、産婦人科 医からの総合的な危険度評価と指導ということをしています。  出産結果のほうは、トロントは一斉調査という話でしたが、私どもはやっていて感じ るのですが、1年、2年経ってしまうと、日本では居住地を移られるカップルが多いの ではないか。お子さんができて次のアパートに越されるということもあるので、追跡調 査はなかなか難しい面があります。基本的には、外来受診時に葉書をお預けして、その 葉書に目隠しをするような形で出産結果を教えていただき、ある程度出産結果情報を集 積している、というような構造の外来をしています。   次の頁に1988年からの推移が出ています。当初5年間は、約300件前後で推移してい ましたが、若干のでこぼこはありますが、1993年ぐらいから500件台、昨年は600件台、 今年は12月末で400いくつということですが、たぶん今年も600近くというところで推移 してきております。これが新聞や妊婦の雑誌の『たまごクラブ』などに載りますと、一 気に受診者が、申込みが増えるところを見ると、おそらくこういう情報を必要としてい る方たちは、この数よりは多いということになると思います。  次のグラフは、どなたの処方で、あるいは薬局で買い求めて心配になったのかという ことですが、産婦人科の先生方からの投薬でも、わずかですが不安になる方がいること は事実です。基本的には内科医や泌尿器、耳鼻科等、産婦人科以外のいろいろな診療科 の医師の処方に基づいて問合せがきます。また、OTC等の風邪薬で対処していて心配 ということも、20%前後のところであります。  7頁、飲まれた時期ですが、これは時期の危険度と薬剤自体の危険度の評価体系を、 外来として開設当初より作ってきています。胎児の器官形成期にある絶対過敏期に飲ん でいる方の薬剤が60%ぐらいある一方で、あまり問題ない時期の方もいるということで すが、実際には妊娠に気づいた時期は最も危険な時期になるわけなので、危ない時期に 飲んでいる薬剤が、少なからずやはりあるという状況です。  次は相談者の性別ですが、女性のみが9割で、男性のみが3%、男性の方は、やはり コルシチン等のことも何となく伝わっているのか、全然コルシチンでない痛風の薬など を飲んでいても、見える方が結構多かったりしています。ご夫婦での相談、両方という 方もいらっしゃいます。  妊娠前と後ですが、女性は圧倒的に妊娠した後が多く、これはやはり風邪をひいた、 インフルエンザウィルスが流行っている、あるいは花粉症だ、自分は妊娠していない、 避妊していたはずなのだがということで、後で気がついて受診される方が多いというこ とです。しかし、一定のパーセントで、合併症妊娠の方がおられ、精神科系の薬を飲ん でいる方、あるいは甲状腺の薬を飲んでいる方、ぜん息の薬を飲んでいる方、潰瘍性大 腸炎の薬を飲んでいる方で相談に見える方がいて、やはりこの辺を上手に対応していか ないと、本人自身が具合が悪くなってしまいかねない、自己判断での休薬のようなこと も考えられますので、十分なカウンセリングが必要なところだと思います。  年齢分布は、やはり20代後半から30代にかけてがピークですが、10代から40代まで、 幅広い方が受診されています。  1人当たりの薬は、先ほど佐藤委員から最高記録の方の話がありましたが、もう少し 多い方もいます。特にOTCを2種類ぐらい飲まれると、OTC1つで10種類ぐらい成 分が入っていますので、成分として数えるともっと多い方もいらっしゃると思います。 ここまでが大体当院の状況です。  次に、やはり添付文書情報というのは適正使用の、こう使うべきという情報で、バイ ブルではあるのですが、こういうタイプのカウンセリングに、さらなる情報の調査の必 要な例を1つご紹介します。ニューキノロン系の抗菌薬は、基本的には妊婦さん禁忌と いうことになっていて、13頁に紹介しましたように投与しないこと。炭疽菌の問題があ って、若干表現は変わっていますが、いまは大体こういったところだと思います。  14頁にあるように、厚生労働省からの情報や製薬企業の情報、あるいは種々の書籍、 データベース、あるいは独自の文献検索、あるいは購入しているデータベース等で検索 すると、次にありますように1996年の『European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology』を見ますと、ヨーロッパのこういう催奇形 情報ネットワークがあり(エンティス)、そちらのほうで集計をしたデータで549例、 ニューキノロン系の抗菌剤を使っている妊婦を前向き調査をして、一般の妊婦と比べて 危険度が上がっていないので、ディスカッションのところでは報告の著者らは、子宮内 でのニューキノロン系抗菌薬の曝露は、妊娠の中断の適応にはならないという結論をす る専門家の意見も出てきているという状況で、これに照らして患者さんの危険度の説明 をしていくということをしています。もちろん、これから使う場合には、ほかにセフェ ムでも何でもありますのでということも、私たちもそうですし報告の著者らも述べてい ます。  3番めに、「妊婦の薬物使用例データ集積の必要性と有益性」について考えてみる と、18頁が当院で相談の多い薬効分ベスト20になります。年代を追って少し増えている ものがあります。例えば15位の精神神経用剤は、9番にベンゾジアゼッピンやSSRI 程度の軽いものを抜かして、この辺がちょっと増えてきている傾向があると思います。 この辺も要注意だなと思います。  こういうものを、先ほどお話したように葉書で結果回収しながら、データベース化し ていくと、20頁をご覧ください。右下の数字が違っていて2.2%は2.1%に直してくださ い。ニューキノロン系の薬剤は、先ほどエンティスのヨーロッパの催奇形情報提供ネッ トワークの文献がありましたが、日本で当院のこの十数年の取組みの中で、ノルフロキ サシン、オフロキサシン、レボフロキサシン等が50例を超える例数があって、全体で285 例のニューキノロンを使っていた絶対過敏期、これは器管形成期のお母様の出産結果を 結果回収しているなかで、健常児を出産しているのが279例、97.9%、何らかの異常が ありましたということをお葉書でいただいて、後ほど確認させていただいた方が6名、 2.1%です。  これをどういうふうに評価するか、疫学的に考えなければいけないところなのです が、一般的に当院でペニシリンを使っていたりセフェムを使っている人たちでも、この ぐらいの頻度になっていますので、これはニューキノロン系が問題だというデータでは ない。データ的にも歴史的にも科学的にも問題ないとされているものと、数字的には上 昇するものではないというデータが得られてくる効果が、蓄積すると出てくるのです が、これに10年かかっているよりは、もっと何か国レベルでいいシステムができていく 必要があると、私どもは感じていますということで括らせていただきます。 ○佐藤座長  ただいまの林委員のプレゼンテーションに対して、何か委員の先生方からご質問等ご ざいますか。ないようですので、続きまして今度は日本産婦人科医会の先天異常モニタ リングについて、平原委員からお願いします。産婦人科の第一線で活躍される先生のデ ータを主にした膨大なデータの1つではないかと思います。よろしくお願いします。 ○平原委員  平原でございます。資料6に従って説明させていただきます。いま、2人の委員の先 生方がお話されたのは、それぞれの個々のお薬を飲まれた方がどうなったかというお話 ですが、こちらはむしろ先天異常のお子さんが生まれたときに、その方がお薬を飲んで いたかどうかといったところの視点で集めてきた、マクロのデータの捉え方という形 で、薬との関係を話しているという仕組みです。  資料6の2枚目にサマリーが書いてあります。日本産婦人科医会、先天異常モニタリ ング(JAOG)と書いてありますが、1972年からこのモニタリングの仕組みが始まっ て、あとで述べますがサリドマイドがきっかけです。本邦においては全国レベルで先天 異常モニタリングをしているのは、唯一、ここだけです。地方でもいくつかあったので すが、地方の行政がすべてお金を出さなくなり、いま現在、先天異常のことを把握して いるモニタリング調査というのは、日本産婦人科医会が行っているこれだけです。  全国の331病院に協力していただいているのですが、この中には開業している先生も おられますし、先駆的な先端医療をやっている病院もありますし、いろいろな層の病院 が加わってモニタリングしています。全部の赤ちゃんのうち、10%の赤ちゃんのモニタ リングを行っています。大体10万人ぐらいの分娩を対象として、その中から生まれてき た先天異常の赤ちゃんの調査をしているという形になります。  これを集計しているのは、私ども横浜市立大学医学部国際先天異常モニタリングセン ターという所です。これも後で述べますが、国際先天異常監視機構というWHOの機関 の日本支部ということで、WHOの本部と調査に関する情報の行き来をしています。  3頁は英語で書いていますが、このデータから集められた日本の先天異常の頻度がこ こに書かれています。実際に日本のマクロのレベルでの先天異常の把握の頻度というの は、これが唯一のデータだろうと考えています。これは1997-2001年までということで、 1にVSDと書いていますが、心奇形です。2がCleft lip & palateとあり、口唇・ 口蓋裂ですが、これらが頻度として多いというのがわかります。  4頁の折れ線グラフは、1972年から現在に至るまでの頻度が書いてあります。縦軸は パーセントで1%で書いてあり、こんな低いのかと言われるかもしれませんが、これは 生まれた直後にわかる先天異常の頻度で、しかもかなりはっきりとした先天異常という 捉え方で見ていくと、このぐらいの頻度だろうと思います。最後のあたりで急峻に上が っているのは、超音波の診断を調査対象として把握し始めてから急に増えてきたという 部分があります。その影響が先ほど言ったVSDの心奇形の異常が増えてきたという形 で、現在のところ、日本の先天異常でいちばん頻度が高いのは心奇形です。  5頁は先天異常モニタリングの歴史です。これは薬とは非常に深い関係があり、ここ に書いてありますようにサリドマイドが発売されてサリドマイドの問題が出たときに、 あちこちの小児科の先生には、特殊な先天異常の形の赤ちゃんがいるなというのはわか っていたのですが、初めてそれらを横につなぐ情報として確認したら、みんなサリドマ イドを飲んでいた。それだったら、なぜそういう情報を横につなぐ仕組みがなかったの かという先天奇形学者の反省から、WHOが中心になり、この先天異常モニタリングを 作ろうという形になったわけです。  6頁にその流れが書いてあります。1972年からWHOに先駆け、日本産婦人科医会の 前身母体である日本母性保護医協会は、サリドマイドの反省から、全国で先天異常のお 子さんが生まれたときに、そのルーツを辿って薬を飲んでいた人はとにかく薬を把握す る。その薬がもし共通の薬だったら、直ちにその薬は怪しいというウォーニングを出す べきだという仕組みで始まったわけです。  現在は、国際先天異常監視機構というWHOの機関があり、日本はその加盟機関とし て加わってやっています。1970年代に東京を含め各地区にあったのですが、お金がなし ということで今はすべて廃止になりました。というのは先天異常モニタリングでは、ほ ぼ異常ないというデータが毎年蓄積されるのです。異常があったら大変なわけです。サ リドマイドがあったことを反省し、すべて小規模な火事で抑えてきたのです。大規模な 火災にならない。小さな先天異常のお薬は全部これで摘み取ってきました。そのために 変わりがないというのが結果なのです。変化がないことに関して行政は全く見向きしま せん。そんな変化のないことにお金を出す必要はないということで、全部切られてきた という経緯があります。いま現在の日本産婦人科医会の調査も、大きな変化がないとい うのが毎年の報告で、毎年変化がないのになぜやる意味があるのかと、ずっと言われ続 けているのが現状です。  7頁、8頁は同じ資料が続いていて、9頁に国際先天異常監視機構のことが簡単に紹 介されています。これは先天異常サーベイランス、国際先天異常監視機構という機関で やっていて、先進25ヵ国で行っています。ここに書いているような国が加わってやって います。  10頁ですが、国際先天異常監視機構の中にいろいろな作業部会が入っています。その 中でピンク色は薬剤影響調査委員会です。この先天異常監視機構は全世界で毎年、300 万人を超える赤ちゃんをモニタリングしています。そこから薬が関係していた先天異常 を全部集めています。とにかく妊娠中に飲んでいた薬はすべて洗い出して全部調査の対 象になっていますので、いちばん多いのが切迫早産の薬であったりするのですが、とに かく飲んでいた薬すべてをリストアップしてチェックしている機関です。ここで調査を しています。  11頁は1つの例になります。ここにいろいろな国が書いてありますが、日本は下から 3つ目に書いてあります。先天異常でなおかつ薬を飲んでいたという記録があった人た ちは、すべて日本もこの機関に調査のデータを提出し、WHOの本部に統計疫学の専門 家、薬剤の専門家がいて、そこで全部集計して情報発信をしています。この中で、先ほ ど述べましたようにいくつかの薬がもうウォーニングで出て、第2のサリドマイドはす べて未然に防げてきたというのが現実です。そういったことでやっているのが現状で す。  12頁には「Malformation」と英語で書いてあり、わかりにくくて恐縮ですが、いちば ん上のところには心奇形と糖尿病との関係でどうだとか、そういった細かいアソシエー ションの関係を、つぶさに見ていくような形でいろいろやっています。  13頁は「Antivirals」と書いてありますが、これはほぼアシクロビルだと思っていた だいて結構ですけれども、アシクロビルとVSDの関係をいまやターゲットとして分析 して、何らかのウォーニングを出さなければというふうな動きで、いま動いているとい う資料です。  この国際先天異常監視機構は薬のことは非常に重要なテーマの1つなのですが、あり とあらゆることをやっています。先天異常と関係している、例えば環境ホルモンの問 題、電磁波の問題、タバコなどに関しての情報を、この調査機関では調査しています。 我々の日本産婦人科医会の調査でもタバコ、お酒など、いろいろな調査をしながら先天 異常に関わる発生要因との関係を見ていくことをやっている現状です。これには厚生科 学研究のお金が一部加わって実行していて、大部分が日本産婦人科医会が母体となって いる「おぎゃあ献金」が主たる経済的なバックになっています。 ○佐藤座長  ただいまの平原委員のご説明に関して、何かご質問はございますか。ないようですの で、次に国立成育医療センターで実施している妊娠・授乳と薬相談外来について、村島 温子委員、お願いします。 ○村島委員  資料7を基に説明させていただきます。1の成育医療センターに妊娠・授乳と薬相談 外来が、なぜ開設されたかという背景からお話したいと思います。ご存じない方もいら っしゃると思いますので簡単に説明させていただくと、当院は母親のおなかの中に誕生 した小さな命である胎児が、小児期を経て成人し、母親・父親になるという、リプロダ クションサイクルを対象とした「成育医療」という新しい概念に基づいた医療機関で す。  ハイリスク妊娠が多くて、おのずと妊娠中、授乳中の薬剤内服が必要となる頻度が高 くなっています。開院当初は産科と新生児科などの診療科の間だけではなく、医師の間 にも考え方に違いが見られ、混乱を招くことも多々ありまして、統一した見解が必要と 考えられました。そこで、関係者が集まって既存のエビデンスを評価した上で、カンフ ァランスを通して方針を決定するという体制がとられるようになりました。  このようななかで、院外の女性にも情報提供したいという考えで構成員が一致し、平 成15年12月から公式に相談外来を開始しました。この準備のために、ここにいらっしゃ る虎の門病院の林委員の所を見学させていただいたり、数回に渡りトロント小児病院の 先ほどからお名前の出ている伊藤真也部長にも来院を仰ぎまして、いろいろと指導いた だきました。それで体制を整えて始めたところでございます。  当初は、説明内容の基本となる、先ほどから出ているステートメント、相談者への回 答書のようなものなのですが、この内容検討とか作成に時間がかかることが想定された ため、PRを世田谷区医師会に限定してスタートしました。その後、だんだん準備が整 いつつあるということもありまして、学会及び新聞報道などによって、少しずつ活動を 拡大しているところでございます。  我々のとっている、外来の申し込みから当日までの流れについて次にご説明したいと 思います。医師からの紹介であるとか新聞などで当外来を知った方々からは、直接専属 薬剤師に電話がかかってまいります。専属薬剤師が対応しまして簡単な問診をいたしま す。そこで当外来での対応が適当であるのか、必要な情報はどのくらいで集められるの かを判断し、予約日を仮設定しております。  その連絡を受けました担当医師は予約日を確定すると共に、カンファランスの召集を 行っております。余談になりますが、当院では電子カルテを採用しているということ で、医師でないと予約日が得られないということで、予約に関しては担当医師が行って おります。  カンファランスは様々な専門の医師(産科、内科、新生児科、薬理学、遺伝学など) および薬剤師で行っております。そのカンファランスのための基礎資料は、皆さんもご 存じだと思いますが、BRIGGSのような成書であるとか、REPROTOX、TERISなどの情報で あるとか、MOTHERISK PROGRAMからいただいたステートメント、および情報が少ない場 合には製薬会社からの動物実験などの情報とか、もちろん添付文書も参考に検討させて いただいています。  さらにPubMedなどにより最新の関連文献を検索し、内容を確認し、必要なものについ てはその内容についてもカンファランスで検討しています。担当医師はカンファランス の結果、先ほどのMOTHERISK PROGRAMのステートメントを参考に、当院独自のステート メントを作成し、今後の対応・説明のための資料とし、チーム全体で共有しています。 また、抗てんかん剤などのような他分野に関わる複雑な薬剤につきましては、小児神 経、児童精神科などの専門医にも加わっていただいて、拡大カンファランスを開いてお ります。必要に応じて、トロントのMOTHERISK PROGRAMとコンサルテーション、ディス カッションなどを行っております。  次に2枚目で相談業務の実際です。当院の相談外来は自費診療で、30分程度というこ とで5,000円で始めております。医師が背景疾患や既往歴について確認した上で、ステ ートメントやその他の検討内容を踏まえて、情報を個別化し説明しております。薬剤師 は補足説明及び薬学的見地からの説明を加えていただいております。終了後、追跡調査 の葉書を手渡しておりますが、これは虎の門病院のやっている方法を、参考にさせてい ただきました。  今までに相談対象になった主な薬剤ですけれども、うちの場合はまだオープンしてか ら間もないということで、この辺は省略させていただきますが、やはり現場にいて感じ るのは、精神科領域の薬の相談がいちばん多いということです。  最後ですが、遭遇しているあるいは将来的に予想される問題点です。これは私たち が、ほんの短期間ではありますが現場にいて感じている問題点を、いくつか列挙させて いただきました。いちばん大きな問題としては、英語圏で使用されていない医薬品や新 規医薬品の情報がほとんどない場合に、どうステートメントを作成したらいいか。とい うことがいちばん大きな問題だと感じています。そのためには全国的なネットワークづ くりが重要になってくると思っています。  問題点2は、また検討内容のほうに出てくるとは思いますが、追跡調査の方法の正確 性を担保するために、あと倫理上の問題をクリアーするために、どのような方法がいい のかが問題になってくるかと思います。  問題点3の今後の業務拡大については、今後検討していただくとは思いますが、現在 のところは外来での対面相談及び入院患者への相談のみを行っていますけれども、今 後、医師や一般の方々への電話あるいはメールでの情報提供も行いたいと考えています が、その際のいろいろクリアーしなければいけない問題が多々あると思います。  妊娠中の薬剤服用に関する情報提供をして、妊娠の転期に関する情報収集すること は、事業化して全国的なネットワークができれば、データベースのより充実が期待でき ると思います。それが添付文書へ反映されるようになれば、私たち周産期の現場で働い ている者にとって大変すばらしいことだと思っています。 ○佐藤座長  ただいまの村島委員のご説明に関して、何かご質問はございますか。ないようですの で、次に検討していただく問題にもリンクしますので次に進ませていただきます。議事 の3として事務局から資料5の説明をお願いします。 ○事務局  今後、この検討会で、妊婦と薬の事業などを行っていくにあたって検討すべき事項の 案を事務局で用意しています。資料5ですが、1は提供する情報に関しての検討事項 で、提供する情報に関してどういったことを検討したらいいか。その内容として、1つ 目はトロントの小児病院のマザーリスク・プログラムのステートメントの活用につい て、どう考えたらいいか。2つ目は既存の文献情報の活用についてどう考えたらいい か。3つ目は副作用報告の中で、研究報告ということで厚生労働省に製薬企業から報告 がされますけれども、そういった企業から報告される研究報告の活用についてどう考え るか。4つ目は提供する情報の更新の頻度についてはどう考えたらいいか。これは例え ば定期的に半年なり1年なりで内容を全体的に見直して更新していくのがいいのか。あ るいは問い合わせが妊婦さんからあるたびに、どういう情報があるのか調査を行って、 新たな情報があればその都度見直していくやり方がいいのかという点です。  2は情報提供の方法に関しての検討事項です。1つ目は、情報提供の手段とか媒体に ついてどう考えたらいいか。電話で行うのか、面談で行うのか、文書で行ったらいいの か、実際の主治医経由で行ったらいいのか、あるいは妊婦さんから直接行ったらいいの かです。2つ目は情報提供する際に留意すべき点です。先ほどのご紹介にもありました が、医薬品を服用しない場合の異常児の出産の確率の情報提供などについて、どういう 形で提供したらいいのか、どう考えたらいいか、ご検討いただければと案を提示してい ます。  3は情報提供した後のフォローアップ(情報収集)について、どういう点を検討した らいいかで、1つ目は情報収集に関する同意の取得時期です。2つ目に情報収集に関す る同意の取得方法については、口頭で取ったらいいのか文書で取ったらいいのか。3つ 目が出産結果の確認方法をどうしたらいいか。出産予定時期に連絡したらいいのか、先 方からの連絡を待つやり方がいいのか。4つ目に情報を収集する対象者としては、どう いう方を対象にしたらいいのか。実際に相談した妊婦さんが出産されてお母さんになっ た人から直接収集したらいいのか、あるいは主治医の方から収集したらいいのか。この 点をどう考えたらいいのかということです。  5つ目に情報の収集の項目に関して、お母さんに関する事項についてどういう項目を 情報収集したらいいのか。あるいは生まれてきたお子様に関する事項について、どうい う事項を収集したらいいのか、この点をどう考えたらいいのかということです。6つ目 は、生まれてきたお子様のフォローアップ期間です。どの程度の時期まで異常があった のか、なかったのかについて追いかけて行ったらいいのか、その辺をどう考えたらいい のかということです。7つ目は、本日、横浜市立大学の平原委員からご紹介がありまし たけれども、日本産婦人科医会の先天異常モニタリングで出産の情報収集をしています ので、そういった既に行われている情報収集の関連について、どういうふうに考えたら いいのかも検討事項になるのではないかということで挙げています。  いま申しましたように、提供する情報、情報の提供方法、情報の収集に関する事項と いうことで1、2、3と挙げていますが、4はその他の検討事項として大きな問題点が あればということで挙げています。これについてご議論いただければと思います。 ○佐藤座長  いま事務局から、これからの検討会での検討事項等についてお話をいただきました。 いま、お話いただいた各検討事項の詳細については次回以降で検討することになります が、ご説明をいただいた時点で、これに追加するような検討事項等を委員の先生方から ご指摘いただければ、ここでご意見を拝聴したいと思います。いかがですか。何かござ いますか。 ○佐藤(章)委員  この薬に関するいろいろなことをやるのは非常にいいのですが、ほかの外国、特にア メリカやフランスでは妊婦さん自体が妊娠中に薬を飲んでいるのかどうか。サプリメン トやビタミンを含めれば、99%飲んでいる可能性があるというデータが出ているわけで す。日本でこれをやるならば1年間でかなりの分娩数があるのですから、そこのところ で妊婦さんが薬を飲んでいるかどうか。どんな薬を飲んでいるかを一斉に調べて、日本 の女性はエックス線をはじめ、サリドマイドのことについてもかなり敏感になっていま すから、外国とは違うような気がするのです。それでも知らないで飲んでしまったとい うことも含めて、まずどういう薬を全妊婦さんが、どのぐらい、妊娠している間に飲ん でいるのかを、1回調べてもらえば学問的にもアピールする面においても、それからデ ータを今後フォローアップする点においても、私は非常に意義があるのではないかと思 います。  これは人的にかなり大変ですし、お金もかかると思いますが、そこのところは誰かが どこかでやらなければいけないので、国単位でやっていただきたい。モデル全部をやる わけにはいきませんが、ある程度のところを押さえてやる。我々のような特殊な大学病 院だというと合併症の人が多いですから、そういうときには薬はたくさん飲んでいます が、一般の人たちのいわゆる開業医の先生のレベルで、日本産婦人科医会のようなとこ ろで実際にお産の終わった後に、どういう薬を飲んでいるかの一斉調査を頼んでいただ きたいと思います。 ○佐藤座長  いまの先生のお話は、これまで各施設で、妊婦さんに処方されてきたお薬以外に最近 多くの人達が服用している健康云々と薬品を徹底的に洗ったらどうかということです ね。この辺り実際にやられている平原委員とか佐藤孝道委員は、どうでしょうか。 ○林委員  日本産婦人科医会のモニタリングは、実際にお生まれになったときにハッと気が付い た先天異常の方を対象にして、「お薬飲んでましたか」と聞くのです。基本的には先天 異常の発生要因の中で外的な要因というか、そういう薬とかで起こる頻度はもともと非 常に少ないのです。ですから大部分の方はお薬はほとんど関係ないということですが、 大体それで薬を飲んでいる頻度というのは15%ぐらいだと思います。たぶん漏れもある と思いますので、日本人の女性の方はお薬は飲んでない人のほうが多いと思います。  確かに、先生がおっしゃるように実数把握のためにというのは、本当はすべての方を 対象にやるという形でやらなければいけないと思いますし、その情報収集の仕方も相当 緻密にやらなければいけないのですが、これは人的な資源がそこに投入されない限り、 そこまでエネルギーを使って正確なデータが出てくるかというのは、なかなか難しいよ うな気がします。 ○佐藤(章)委員  絶対正確ということはあり得ないですね。まず無理ですけれども、傾向として、いま の日本の人たちはどういう意識でどのくらいどういう薬をいちばん飲んでいるのか。そ ういうところから考えて定点モニターするには、いちばん多く飲んでいる薬についてま ず最初にやってみる。全部薬をやるといったら大変なことになります。頻度が低いので すからたくさんの母数がなければできない。そういうのは国でカバーしてあげないとで きない。これは何もしなければいいデータは出ません。完全なものはあり得ませんが、 ある程度のところを押さえておく必要があると思います。  最近のアメリカのデータでは、60何パーセントは必ず薬を飲んでいる。それもサプリ メントやビタミン以外の薬を、妊娠中に1回は飲んでいるというデータが出ているわけ です。日本はそれ以下であるのかどうか。どういう薬がいちばん飲まれているのか。そ ういうところでの相談がいちばん多くなってくるわけですから、そこの薬から完全にや っていきましょうという順序も決まってくるような気がする。私はそれで提案している わけです。 ○平原委員  2000年12月に厚労省が、葉酸を栄養補助食品として摂りなさいというアナウンスメン トを出しているのですが、実際に葉酸をサプリメントとして摂っておられる方は1桁の パーセント以下です。これだけアナウンスされてもそんなものです。そういうのが底辺 にあるのだろうと思います。たぶん飲みたくないのです。 ○佐藤座長  佐藤章委員の提案に関して、何かご意見はございますか。 ○吉川委員  確かにそれも大事だとは思いますが、ただ、今回、いちばん対象になっているのは、 先ほど虎の門とか聖路加などで相談対象になったように、むしろ産科で処方された薬で はなくて、内科とかあるいは自分が薬局で買った薬剤が95%を超す。むしろ妊娠してい ることを知らないで飲んだ薬剤とかが、おそらくこの相談の主な対象だと思います。  先生のおっしゃっているように、妊娠していることがわかっていて、主に産科医が関 与して薬剤を出すことに関しても調査する必要はあると思いますけれども。 ○佐藤(章)委員  私が言っているのは産科が出している薬というよりは、むしろ先生がおっしゃってい るような他の所で知らないで飲んでいる。それから治療と言いながら薬を飲んでいるも のが、どのぐらいあるのかということも含めてやらなければ駄目だということです。 ○吉川委員  それも同時に大事なことで、実は把握できていない。平原委員が言われたようにほと んど使っていないというよりは、おそらく本人が例えば妊娠中の造血剤だとか、あるい はカンジダ膣炎の膣錠だとかは、ほとんど薬剤と意識していない。産科医が使っている 薬剤の場合だと、本人が申告しているかどうか、かなり疑問なところもあります。  ただ、今回の場合は、妊娠初期の、まさに聖路加病院とか虎の門で扱っている対象に 対して、外来レベルで対応していくのか、あるいはトロントのように電話相談中心でや っていくかということが問題の主体のような気がするのです。同時に、先生のおっしゃ っているような妊娠中の問題というのも、また同時進行で調べていく必要はあると思い ます。ただ、これも、この事業が進行していることによってわかってくる面も、相談内 容の中で結構あると思います。 ○佐伯委員  私、今回のはとてもいい試みだとは思うのですが、何のために、誰のためにというの を確認しておきたいのです。少子化と言われていますけれども、お母さんたちが安心し て子供を産める、そのサポートの1つだと思うのです。そうすると、このトロントの試 みは8回線あって、そのうちの1回線だけが薬物相談なのです。すべての一般電話相談 が5回線あって、つわりの専門相談が2回線あって、要するに赤ちゃんを産むまでのあ らゆる不安に対応しますよという、その中の一部として薬を飲んだときの回線もあると いうことです。その考え方を真似るのであれば、一部だけでなく全部の不安に応えると いう理念から、真似たほうがいいのではないかという気がしています。 ○事務局  私の説明が悪かったのですが、トロントの小児病院では全部で8回線あり、5回線の 一般相談というのが、妊婦さんからの薬の服用の相談という意味での一般相談というこ とです。「薬物」と書いてあったのが、いわゆる麻薬とか覚醒剤といったいわゆる麻薬 類の乱用薬物での相談窓口というのが1回線専用で、トロントの小児病院に設置されて いるということです。トロントの小児病院もメインの5回線は、薬の服用に関する相談 の一般相談の窓口ということで設置されていると聞いています。私の説明が悪くて誤解 を与えたようですので補足させていただきます。 ○石井委員  いまの質問と関連すると思いますが、このセンターの構想の最終目的がもうひとつは っきりしないところがあるように思います。トロントのような電話相談を作ろうとして いるのか、医師に対して情報を提供できる全国的なセンターを構想するのか。フォロー アップを行うことが重要なのか、フォローアップは、情報提供の資料を得るために行う のか。そこをはっきしていただいたほうが、検討しやすいのではないかと思います。こ れが1点です。  もう1点は、私だけであれば資料をくださればよいのですが、現在、薬の副作用情報 が我が国でどのように一般の人あるいは医師に提供されるシステムになっているか。そ のシステムとこのセンター構想との関係はどうなっていくのかということを教えていた だきたいと思います。 ○佐藤座長  前段の先生の質問については事務局からお願いします。 ○事務局  いま、座長からもお話がありましたけれども、私どもとしては今まで集中的にセンタ ーとして情報を収集する場所がなかったということ。妊婦さんが薬を飲んだときにお子 様に与える影響があるかないか、ないという情報もかなり重要です。そういった集める ということが体系的に行われていなかったということなので、集めるにはどうしたらい いのかを考え、集めるにあたっては初めに説明しましたように相談業務をして、相談業 務を通じて薬を飲まれた妊婦さんを見つけ、そこでお子様の情報を提供いただけるので あればいただいた上で情報を集積すれば、たくさんの情報が集まってくるのではないか と考えています。ですから、私どもとしてはメインとして情報を集めたいということ を、まず第1の目的として考えているところです。 ○佐藤座長  後段のほうについては、いかがですか。 ○事務局  後段のほうですが、薬の副作用情報の提供方法というのは、まず第1には、いまお医 者様が使われている医療用の医薬品と呼んでいる医薬品については、普通、薬には添付 文書という文書が付いています。参考資料の8が薬の添付文書ですが、すべての医薬品 にはこういった添付文書を添付するように法律の規制がかかっています。この中に薬の 効能なり効果と併せて副作用の情報も盛り込まれていて、こういった文書で情報提供さ れるというのが薬の情報提供の第1番です。  そのほか、お医者様のところには、各製薬企業のMRと呼ばれる担当者の方が適宜訪 問されて、情報提供するという手段もあります。あと、薬として少数の方に使っていた のではわからないような副作用が、使用中に見つかることがあり、新たな副作用が見つ かったという場合、その時々に応じて添付文書を改訂して情報提供されるということが あります。かなり重大な副作用が見つかったとなると、特別に情報提供の文書などを、 製薬企業が医療機関に対して配布して情報提供する手段も使われています。 ○石井委員  質問の趣旨は逆です。お医者さんが何らかの副作用を疑ったときに、それに関する情 報を集められるシステムがどのようにできているかということです。私だけが知らない のでしたらここで説明していただく必要はないので、あとで読むべき資料を教えていた だければ結構です。 ○事務局  あとで、もし必要があれば資料等を送らせていただきたいと思いますが、簡単に説明 させていただきますと、副作用情報の収集という意味ですと、薬事法上、製薬企業に対 して副作用の報告義務をかけています。先ほど申しましたように企業のMRと呼ばれる 担当者が医療機関の先生方のところに行って、常日ごろから副作用が生じていないかと いう情報収集をしています。そこで重篤な副作用が発生した場合には、その副作用の種 類に応じて報告期限等を15日なり30日と定めています。企業から厚生労働省に、副作用 の報告をする義務が薬事法上かかっていて、そこで製薬企業を通じて副作用情報が集ま るルートが1つあります。  それとプラスして、医師、薬剤師など医療関係者の方々にも、これは新たに薬事法が 改正されて平成15年7月からですが、直接医療関係者の方々から厚生労働省に副作用を 報告していただく法律の規定ができ、こちらのほうも医療関係者の方々が危害の発生を 防止する必要があると感じたときには、厚生労働省に副作用情報を報告していただく薬 事法上の制度ができあがっています。 ○佐藤座長  よろしいですか。 ○佐藤(孝)委員  情報が少ないというのは確かで、情報を集めることも非常に大事ですが、先ほど林委 員も言われたように、実際に患者さんから直接情報を集めていくとすると、たぶん10年 とか20年という計画になると思います。もちろんそれは非常に大事なことだと思います が、もう1つ、これは是非検討していただきたいことに入るのですけれども、医薬品の 副作用とか、妊婦さんが飲んだ場合にどういうふうになるかということに関する、少な くとも文献的な情報、要するに世界中の研究に関する情報というのは非常にたくさんあ ります。決してないわけではない。我々が相談するときに使えるぐらいの十分な量の情 報があるので、それをどうやってまとめて整理し、システムとして組んでいくかを是非 検討していただきたいと思います。  もう1つは、誰に情報を提供するかということがあります。もちろん最終的には消費 者というか、患者さんということになるのだと思いますが、医療の場合は添付文書もそ ういう意味合いでたぶん書かれているのだと思いますけれども、実際にそれを処方する 医師への情報提供は非常に大事だと思います。この情報提供に関しての検討事項の中で は、基本的には妊婦さんというか、ユーザーへの直接的な情報伝達だけが主眼に置かれ ていますが、医師にどうやって情報提供するかも、是非検討していただければと思いま す。 ○佐藤座長  時間も迫ってきたのですが、是非ここでお聞きしたいことがあれば手短にお願いしま す。 ○大澤委員  佐藤委員が言われたことと少し重なりますが、実際の相談というか情報提供を患者さ んにする方たちを、どうやって育てるかもひとつあると思います。教材としてわかりや すい情報を作り上げることと同時に、そういう情報を、カウンセリングマインドを持っ て患者さんに提供できる人材を育成する事業も一緒にしていただかないと、情報だけ渡 されて不安を抱えた妊婦さんが、ずっと悶々としているということもあり得るかもしれ ないと思います。 ○平原委員  今日の題名のところに、「妊婦の服薬情報等の収集に関する」とあり、「等」という 意味合いがちょっと私もよくわからないのです。今回は薬という切り口で議論していま すが、薬が赤ちゃんにどういう影響があるのか、赤ちゃんがどう安心できた環境で薬を 飲めるのかという問題で、赤ちゃんの先天異常の切り口からすると、実際には先天異常 に関わる外的な要因というのは2〜3%あるかないかぐらいのもので、そのうちで薬と いうのはもっともっと少ないのです。  そうすると、我々の生活環境自体が本当に安心できる環境なのかという切り口で考え れば、薬のことは比率からしたら非常に少ない。その部分に関していろいろこれから調 査することに関しては、あまりにも使われるエネルギーが大きいのです。我々の所も先 天異常の発生要因に関しての情報収集を必死にやっているのですが、とにかく集めるの が大変なのです。実地の産科医の先生たちが集めること自体も大変ですし、集まったデ ータを確認するための作業も膨大なエネルギーを使ってやっているのが現状で、それで もなかなか集まらないというのが現状です。それを薬の切り口だけで集めるというエネ ルギーをもし使うとしたら、これは逆に言うと非常に無駄なエネルギーになるのではな いかと私は危惧しているところです。  実は先天異常の発生要因というのは、我々の生活環境の中からいろいろ探し出すな ら、それこそ携帯電話がどのぐらい影響があるのかなども、本当は心配の種になってい なければいけないはずなのです。「薬は」という切り口でいくのであれば、日本産婦人 科医会が今までやっていたのは、相談窓口がなかったというのがいちばんの欠点だった と思います。その部分に関しては是非何とか進めていただきたいというのが私どもの意 見です。 ○吉川委員  私はちょっと反対なのです。反対というか、薬のことはあまり軽視してはいけないと いう感じがします。資料3の中で、要するに例えば中絶に絡んだりとか、あるいは慢性 疾患で妊娠可能な人が避妊を強いられたり、あるいは実際に妊娠中に適切な医療を受け られなかったり、私自身もいままで薬剤に関して相談を受ける頻度は非常に高くて、患 者さんは非常に心配します。  その中で一般の医師のレベルの話をすると、実は虎の門病院から『妊娠と薬』という 本が出ていて、そういうものを調べて、それでもわからないと私自身も虎の門病院に照 会していたという状況です。社会的に非常に大きな影響がある問題と考えています。お そらく一般の人に理解しにくいのは、薬剤というのは何万もあって、情報が足りない一 方で膨大でもあるのです。要するに情報をいかに整理するかです。例えば普通の一般の 医療ですと、情報が膨大になってきたら整理する、文献のレビューをするというのは、 まさにガイドラインを作るときの第一歩の作業です。この薬剤では、ガイドラインを作 るのが不可能なぐらいに膨大な資料と膨大な数の薬剤がある。そういうことで、むしろ 1個1個に対応していくことがせめてできることなので、おそらく相談ということなの だと思います。要するに、すべての薬剤に対してどう対応するかを、ガイドラインで記 述するエネルギーはとてもかけられない。1個1個起きたものに対して対応していくと いうことが限界ともいえるのです。  例えば無影響期で受精から2週間ぐらいの間に飲んだ薬剤というのは、実際には胎児 奇形の原因にならない。それはall-or-noneと言って、要するに流産の原因になっても 奇形の原因にはならない。そういうことすら現場の医師は知らないのです。それで「大 丈夫ですか」「いや、保証できない」と言って患者さんが非常に不安がり、中にはそれ が中絶の原因になったりしている。流産にならなかった段階では、奇形にならない、全 然影響ないと簡単に言えるような場合でも、実際にそういうことがある。虎の門病院に かかっているうちの3分の1が、現場の医師が一言で終わるようなことですら、実際受 診している。これは医師のレベルの低さでもあるのです。  これに対して、国としてきちっとやっていこうと思ったら、こういう妊婦とクスリ情 報センターというものを築いていく必要があります。これは医師の教育もあるかもしれ ないし、患者さんのためもあるし、内科疾患でいろいろと薬剤を飲んでいる人が子供を 得るための情報提供でもある。いろいろ複合的な面を持っていると思いますが、これは 大事な事業として始めるべきだと思います。  いま考えるべきことは、今日の中で例えば感染症とか放射線とか化学物質を含むのか どうか。あるいはワクチンとかを含むのか。要するに薬と言っている範囲です。あと先 ほどの授乳期を含むのか。そういうところも私は議論していただきたいと思います。 ○佐藤座長  ありがとうございました。今日、1つの検討事項として事務局から案を出していただ き、いま先生方からいろいろな切り口でご提案をいただきました。本日議論していただ きました内容を事務局を中心に整理し、次回以降でまた改めて、検討させていただくこ とに決めまして、今日の第1回目の検討会を終わらせていただきたいと思います。次は 議題の4の「その他」ですが、事務局から何かございますか。 ○事務局  特にございません。 ○佐藤座長  本日は、各委員の先生から有意義なご意見をたくさんいただきました。これを踏まえ て次回以降の検討会に活かしていきたいと思っています。以上をもちまして本日の議題 はすべて終了しました。事務局から連絡事項等がございますか。 ○事務局  次回の日程につきましては、また先生方に連絡させていただいて調整させていただき ますので、よろしくお願いします。 ○佐藤座長  以上をもちまして、第1回目の検討会を終わらせていただきます。ありがとうござい ました。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局安全対策課  鬼山(内線2753) Tel.03-5253-1111(代表)