05/01/13 第3回食の安全に関するリスクコミュニケーションの在り方に関する研究会 議事録    第3回食の安全に関するリスクコミュニケーションの在り方に関する研究会                         厚生労働省医薬食品局食品安全部                         平成17年1月13日(木)                         10:00〜12:00                         於:厚生労働省専用第18会議室 ○林座長  おはようございます。では、定刻となりましたので、ただいまから第3回「食の安全 に関するリスクコミュニケーションの在り方に関する研究会」を開催させていただきま す。  本日は、御多忙のところありがとうございました。  まず、本日の出欠の状況を事務局からお願いいたします。 ○広瀬企画情報課長補佐  本日は、座長を含めまして5名の方に出席いただく予定となっております。  なお、金川構成員、神田構成員からは事前に欠席との連絡をいただいております。  また、岩渕構成員からは、少し遅れるかもしれないということで連絡が入っておりま す。 それから、丸井構成員の方は、若干遅れているようですが、じきに見えられると 思いますので、よろしくお願いいたします。 ○林座長  ありがとうございました。では、次に配付資料の確認をお願いいたします。 ○広瀬企画情報課長補佐  お手元に議事次第ということで一枚紙がございます。  資料1が「丸井構成員  提出資料」。  資料2が「加藤構成員  提出資料」。  資料3の「岩渕構成員  提出資料」につきましては、後ほど配付させていただきます。 資料4が「病原性大 腸菌O157集団食中毒事件について」。  資料5が「金川構成員からのコメント」  また、第1回目と第2回目の議事録の方がまとまりましたので、併せて配付させてい ただいております。  もし、不足等ございましたら、お申し出いただければと思います。 ○林座長  資料は、よろしゅうございますでしょうか。  では、議事に入らせていただきます。  前回からの続きで、各構成員からの御発表をいただくことになっておりますが、今回 は多少時間にゆとりがあるということですので、それぞれの方々に20分以内に御発表い ただいて、その後10分を目安に質疑と意見を交換いたしたいと思います。  では、早速なんですけれども、丸井先生からお願いいたします。 ○丸井構成員  それでは、御紹介いただきました丸井です。  本日は、20分ほどお時間をいただいて、私が平成13年、14年、そして15年、16年と別 のタイトルで厚生科学研究を続けてきており、それがリスクコミュニケーションと関連 しておりますので、その経過と成果を少し御紹介させていただきたいと思います。 (PW)  当初、平成13年〜14年は、食物アレルギーの食品表示の研究をさせていただきまし た。ちょうど食品表示について世間での注目が高くなってきましたときで、表示制度に 関する懇談会、そしてそれに基づきまして、食品の表示に関する共同会議、それが農林 水産省と厚生労働省の2つの省の間で共同して行われております。これは厚生労働省と しては薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会の専門部会としても位置づけられていると いう会議になりました。  その辺りのところからお手伝いさせていただいております。平成15年の春、食品安全 委員会ができる前に、厚生労働科学研究費で食のリスクコミュニケーションに関する研 究を始めさせていただいておりまして、今年で2年目になりました。 (PW)  食品表示というのは、ある意味では食品に関するリスクコミュニケーションのまず第 一歩です。食品の食べ物の中に何が入っているかということをまず知らせるということ になります。  それまで、食品表示に関しては、さまざまな批判がありました。言葉の統一ができて いないとか、さまざまな法律が入り組む、あるいはきちんと消費者のほしい情報が得ら れない、食べ物の、特に加工食品がどのようにしてつくられたのかというトレーサビリ ティーが不十分である、あるいは企業側の倫理が十分ではないのではないかというよう な指摘がさまざまありました。 (PW)  実際に表示というのはいろいろな形で行われています。スーパーなどで値札のような 形で行われていたり、容器包装されたものでは、このように値札と一緒に表示されると いうようなこともあります。 (PW)  特に加工食品の場合には、原料がよくわからない、一体中に何が入っているかという ことがわからないので、特に一括表示ということがございます。これは農林水産省のJ AS法に基づいてつくられておりますが、そこに厚生労働省の食品衛生法も一緒に載っ てくるという形で、その中に両方入っております。これが、いわゆる一括表示というも ので、包装の表に、これはおいしいとか、製品名が書いてあるのとは別で、大体四角で 囲ったものがどこかに付いているものです。 (PW)  これには、さまざまあります。先ほどのように産地が書いてある生鮮食品のものもあ りますし、こういうようなものの場合には、これは白子ですけれども、裏側にこのよう な形で張ってあります。これは品名、原産地、原材料名、賞味期限、内容量、保存方 法、製造者、こういうまとまった表示が義務づけられています。 (PW)  なかなか厄介なのが、いわゆる最近のコンビニで売っているようなお弁当のようなも のです。これは多種類が中に入っておりまして、たくさんのものが入っているので、こ れを文字で表現して伝えようと思いますと、どんなに少なくしても、ここにございます けれども、ここにたくさんの文字が入るということになります。表示は、コミュニケー ションのツールですので、できるだけわかりやすく誤解のないようにすると同時に、正 しい内容を伝えるということです。正しい内容というためには、中に入っているものを 全部表示したいわけです。  とすると、特にお弁当のような場合には、中にあるものをすべてが、どのような材料 でつくられているかということを表示するのは非常に難しいことになります。  ところが、一方で読みやすさということもあります。例えば最近のように高齢化して お年寄りが見るというときには文字が余り小さいと、結局のところ、むしろ読めないと いうことになって、何のための表示か、コミュニケーションのツールとして役に立たな いのではないかということもあり、できるだけ簡単にしたい。だけれども、内容を知ら せたいという2つの相反した要求がどうしても出てくることになります。 (PW)  そういう中で、平成13年、実際には14年から食品衛生法で食物アレルギーについての 表示が義務づけられまして、それでどのように表示するのがよいか。先ほどのように、 できるだけ詳しく表示をしたいけれども、詳し過ぎると見にくくなって使いにくくな る。その2つの間でどのように調整するかについて、私のところで食品表示の研究班を 引き受けさせていただきまして、幾つかの研究を中に入れました。  その中の大きい2つが、表示の検討会、どのような表示をするかということ。  もう一つは検知法、中にアレルギーを引き起こすようなたんぱくがどれぐらい入って いるかという検知をしないと、どれぐらい入っているという表示ができないということ です。その2つが大きいグループになりました。 (PW)  上の方の表示の検討会ですが、これはメンバーが製造業者、販売業者、患者会の方、 それから医療機関などです。医療機関を除けば、食べ物についてつくる側、流通する、 あるいはそれを実際に使うという患者さんの側まで、すべてが同じテーブルで、意見を 言い合って、実際にどこまで表示が可能なのか、あるいはどこまで表示をすべきなの か、してほしいのかというようなことを、いろいろな立場からすべて意見を出し合いな がら、では最終的に現実に表示としてどのような表示をすればよいかというようなこと を検討する場として、これをかなり頻繁に続けました。  後ほどお話ししますが、それがさまざまな立場で関わる人々の間のリスクコミュニケ ーションという形で進められたというふうに思います。 (PW)  勿論、食物アレルギーは、主としてお子さんです。大人も勿論ありますけれども、お 子さんのことなので親御さんが非常に心配して、お子さんに食べさせるものを親御さん が表示を読むということになります。 (PW)  既に御承知のように、特定原材料として5つ、卵、乳、小麦、そば、落花生、これが 義務づけられ、厚生労働省の通知による規定が19、最近バナナが入りましたので、20と いうことになります。  これが、表示が奨励されるという種類のものです。この部分が食物アレルギーの表示 です。 (PW)  具体例で言いますと、ちょっと見にくいかもしれませんが、ここに「大豆由来原材料 を含む」と、先ほどの一括表示の最後のところに書いてあります。このような形で、あ る意味では見たい方にとっては、探せばあり、一般の方にとっては、余り目立たないと いうような表示になっております。 (PW)  原材料表示は、どの国でも大体行われておりまして、アメリカなどでは原材料すべて を表示する、あるいは栄養表示が組み合わされるというような種類のもので、これは必 ずしも日本だけではないです。 (PW)  これが、もう少し大きくなりますが、先ほどのように、これは栄養表示と両方あるも のです。その他、卵、大豆、鶏肉由来原材料を含むということで、こういうふうに書い てあったら、お子さんのアレルギーを引き起こすかもしれないので、これは使わないで おこうというような形に親御さんが判断できるというものです。  これが、余り大きくなり過ぎますと、今度は一般の消費者の方にとって、一体これは 何かということになってきます。先ほどのように折り合いをどこで付けるかということ で、現在のところこのような表示になっております。 (PW)  その背景にありますのは、先ほどのように検知法で大体1mLの中に数μg 、大体数ppm が入っていたら、表示するということです。ある意味でppm レベルですので、ごく微量 というふうにお考えいただいていいので、この検知法自体が、また少し難しいというこ ともあります。 (PW)  もう一つは、コンタミネーションで入ってきて、微量入ることがあります。元の材料 に少し入っているために、最終的な製品に少し入ることになります。  その場合でも、我が国の法律で、入っているかもしれないという表示はいけないとい うことになっていますので、わずかでも入っていれば表示をするということになりま す。 (PW)  例えば、英語の表記で行きますと、ここに「May contain nuts traces 」と書いて あります。ナッツの痕跡はあるかもしれないという表示はアメリカ、イギリスなどでは 認められていますが、我が国ではこれは認めないと。なぜかと言うと、入っているかも しれないということを表示すれば、表示する側としては非常に楽になりますが、消費す る側、患者さんの側としては非常に範囲が狭くなってきます。入っているかもしれなけ れば避けなければいけないということになってきて、我が国では禁止されています。 (PW)  では、実際に問題が起こるのはどういうことでしょうか。リスクマネージメント、リ スクコミュニケーションなどと、リスク、リスクと言いますが、その場合のリスクとい うのは、一般的にはハザードの大きさです。リスクは、被害の大きさと、それが起こる 確率をかけ合わせたものですので、くじ引きのようなものです。一回当たったときの当 たりくじの大きさ、それから当たる確率に相当します。それが10万人に一本で何億円当 たるのがいいのか、100 人に一人で5,000円当たるのがいいのか、くじで言えばそうな りますが、リスクはそれが逆で、当たったときの被害の大きさと、起こる頻度となりま す。その2つが関わってくる問題ですので、どちら側に注目するか、あるいはどちら側 を強調するかによって、受け取る側の認知は非常に変わってきます。そういうわけでリ スクコントロールは、そういうわけで一つひとつの危害を小さくするモノの管理と、起 こる確率を小さくするという実際の流通あるいは使用の段階での問題と2つ出てくるこ とになります。 (PW)  アレルギーの食品の表示の場合には、そこが非常に複雑です。例えば食品の管理をす ればよい、つまりハザードを小さくするというのが従来よくあったもので、例えば菌が 混入しないようにするとか、腐敗しないように管理をするというようなものは、これは モノの管理をすればよかったわけです。アレルギーの場合には、非常に難しくて、食品 そのものが悪いわけでも、汚染されているわけでもなく、多くの人にとってはたんぱく 源として必要なものです。けれども、ある一部の方にとっては、危険なのです。つま り、だれが食べるかが非常に大きい問題になるということです。しかも、さまざまなた んぱくがあり、それのどれが問題になるかが違い、そばでアレルギーを起こす方が卵で 起こすわけではないのです。「何が」というのが問題になりますし、発症するのも量が さまざまです。それは人によって違いますし、また、一人の人でも運動した後では通常 よりも微量で発症するというようなことがあります。先ほどのように、モノを管理し て、細菌学的な管理、あるいは化学的な管理をきちんとすればそれでよいというもので はなく、モノ自体が悪いのではなくて、だれがどんなタイミングで何を食べるかによっ て問題が起こるということです。それだけにモノの管理よりは、その後、実際に消費者 の方が手に取るまでの表示、あるいは説明というのが非常に大事になるわけです。 (PW)  そういうことで、実際には消費者表示というのは、リスクコミュニケーションのたく さんあるツールのうちの1つです。しかし、まず最初に目につくところということにな ります。  書かれた情報以外のコミュニケーションというのも非常に大事ですし、コミュニケー ションというからには、双方向で、必要があれば、すぐ問い合わせられるということも 必要です。 (PW)  例えば、この例ですと、ここにも原材料の一部に小麦、サバを含む、これは酢です が、サバが入っているんです。サバが入っているというのは、非常に異様な感じがしま すが、サバのエキスというのは、いろいろな食べ物に使われます。これも元の材料の中 にサバエキスが入っていて、ごく微量ですが、それが製品にも入っているということに なります。  これは、お客様相談センターで、電話番号がかなり大きく書かれています。こういう 形で、もし、サバが気になる、あるいはどれぐらいの分量なのかというのが気になる患 者さんがあれば、問い合わせて直接聞くことができます。これは、そういう双方向を可 能にするということになります。 (PW)  小さくて申し訳ありませんが、この表示の下のところにホームページのアドレスが入 っています。これも、大豆、その他が入っていると書いてありますけれども、ホームペ ージを書くことによって問い合わせられるというような仕組みで、できるだけ双方向性 を確保しようというような試みのひとつです。 (PW)  そして、ここまでが最初の2年間の研究で、大体方向づけとしたところです。それで はもう少し広くリスクコミュニケーション全体をどうするかということで、昨年来、リ スクコミュニケーション、特に行政がどのような形で一般の方に情報を出し、あるいは 受け取るかという研究を始めました。リスクコミュニケーションの第一ステップとして は、正しく情報を伝えるということが大事で、単なる伝達、つまり一方的に情報を出す 伝達ではない。相手をきちんと意識しながら、先ほどのようにフィードバックを保証す るというようなことをどのようにしたら可能だろうかということで、この研究班の中 に、食とメディアの研究会というのを立ち上げました。さまざまなメディアで仕事をし ていらっしゃる方や研究者と御一緒にまず、キンメダイの報道を材料として研究班でい ろいろと、どのようなリスクコミュニケーションがよいのかということを考えさせてい ただきました。 (PW)  これは、平成15年の6月の「水銀を含有する魚介類等の摂食に関する注意事項」とい ういわゆるキンメダイ報道の一番最初に出たものです。これを材料にしまして、いろい ろ議論をいたしました。 (PW)  ここのところで、お手元の資料も見ていただきたのですが、後ろの方に文字だけのも のが、今、見ていただいているものの2枚ほどめくっていただきますと、「リスクコミ ュニケーションの第一ステップ」という資料がございます。下のページが10/14 になっ ているものです。  これが、行政のリスクコミュニケーションがどのようであるべきかということの報告 書の一部分です。先ほどお話ししましたように、平成15年の6月に、いわゆるキンメダ イの一連の報道がありました。そのときにマスメディアが、誤解ではないにしても、正 しく報道する、あるいは曲解して報道する、あるいは誇張して報道するというようなこ とがありました。  例えば、水銀という言葉で、水銀、魚というキーワードから、すぐに水俣病を連想し て、水俣病のときの胎児性の水俣病の患者さんの映像を出すというようなことがありま した。これは恐らく出した側の厚生労働省とは意図が全く違うものです。マスメディア がを介在することによって、国民の側はキンメダイの魚が非常に怖いということにな り、国会でも問題になった風評被害というのが非常に大きくなりました。  それで、我々はテレビでの報道を全部記録しました。それを見ながら、一体どういう ような問題があったのか、どのような伝え方をすれば、マスメディアではそれほど大き い問題が起きなかったのではないか、というようなことをさまざまな視点から検討いた しました。  概要が11/14 のところにございます。最終的に、実際に行政がマスメディアに伝える とき、いわゆる記者会見のような場面もありますし、あるいるは紙を出すこともありま すが、そのときにどのような点に注意して出すとよいのかというのが、そこに書いてあ ります。、一番最後のページを見ていただきますと、これが前に写しているものの全体 像です。  情報をどのように出すかというところで、タイミングがいいか、あるいはだれが発表 者として適任なのか、あるいは情報について問い合わせがきちんとできるのか、あるい は素人だけでなく、具体的な専門家に対しても説明できるような資料があるかというよ うなことから始まります。情報の内容について伝達していく順番に、そこにチェックリ ストがあります。だれに向けた情報が書いてあるか、あるいは根拠があるか、あるいは 原因物質がはっきりしていれば、それがどんなものか書いてあるか、先ほどのリスクで 言えば、ハザードについてきちんと書いてあるか、それから暴露状況、先ほどので言い ますと、頻度あるいは確率のことになりますが、それについてきちんと記述してある か、説明してあるか、あるいはその結果としてどのような健康被害が考えられ、今まで の状況はどうか。そして、さらにどのようなことが予測されるか、また、アクションと 書いてありますが、それに対して行政はどのような対応を用意しているのか、あるいは 個人として、あるいは企業として何をしていただきたいのかということをきちんと明示 するというようなことが必要だろうとチェック項目を挙げてあります。  そして、特に大事だと考えられましたのは表現です。わかりやすさ。どうしても専門 用語を使ってしまいがちです。先ほどの1枚前の文章は、行政の内部で厚生労働省から 各都道府県等へ出される通知がそのままマスコミに流れたということで、それで非常に わかりにくくなったのではないかと思います。一般の人間にもわかりやすい言葉で、ど れだけ書けるかということを、ここでチェックしようではないかということです。  一番最後のところに、先ほども非常に難しいタイトルが付いておりましたけれども、 タイトルで内容がわかるようにする。あるいは、「初めて」ということで、非常に大き い社会的な話題になりましたので、そういった言葉遣いも注意が大事だということにな ります。  少なくとも食の安全に関して行政が地方自治体、あるいは業者、マスメディア、国民 向けに情報を出していって反応を得ながらリスクコミュニケーションをしていくという ときには、少なくとも最初の段階でこれぐらいのチェックをして、そして情報を出して いく必要があるのではないかということです。我々の方で提案をさせていただきまし て、恐らくその後のアマメシバのプレスリリース、あるいはBSEの特定部位に関する プレスリリースのときには、例えばQ&Aを非常に充実させて、早い段階でわかりやす い情報を出すというようなことを厚生労働省の方で非常に努力していただいたと思いま す。  特に、BSEの特定危険部位の追加のときには、多分初めてQ&Aで図を入れたと思 います。そういう形で見てわかる、あるいは読めばわかるというようなものも大事で す。また、一目でわかるというところから、詳しい情報を知りたい方には詳しくわかる というところまで、さまざまな需要がありますので非常に難しいのですが、行政が初め にどのような情報を出すかということが、その後のリスクコミュニケーションの決め手 になるだろうということで、研究班としてこのようなチェックリストを作成させていた だきました。  今年度は、直接個人が見ることができる厚生労働省のホームページが、果たしてわか りやすいホームページになっているかということの検証を、今、させていただいている ところです。 (PW)  初めにちょっと戻りますが、食物アレルギーで先ほどお話ししましたように、表示検 討会は、製造業者の方、流通、販売、患者の皆さん、それから医療関係者、さまざまな 違う立場で生活していらっしゃる方が集まって、一緒に話をしながら具体的な方向を考 えるということをいたしました。  それまでは、どうしても行政は一つひとつの対応で決めていくということが多かった ように思います。食物アレルギーの表示問題で、リスクコミュニケーションに関して私 個人が感じましたことは、同じ時代、同じ社会に暮らしていても、異文化を背負う人々 がいるということです。立場が違う、全く違う育ち方があるなど、さまざまなことで異 文化なんだというように考える必要がありそうです。  まず同じテーブルに着いて心を開いて話をちゃんと聞こうということが大事です。そ して、まずは押し付けないように自分の立場をきちんと説明する必要があります。立場 と考え方に違いがあることを認めます。それぞれが自分の立場のことを話しますが、違 うんだということを認めて、でも調整可能な部分があって、調整可能であることを一人 だけではなくて双方が信じて妥当な方策を探る。このあたりがリスクコミュニケーショ ンの基本の形かなと思います。  そして、これは一度ではうまくいかない。一度であきらめず、これを何度も繰り返す のです。そういうプロセスがリスクコミュニケーションの形として必要なのではないか なと思います。特に研究班の中の表示検討委員会、先ほどお話ししましたように、さま ざまな立場、別の役割を背後に持っている皆さんが、一緒に一つの何かの形の成果を出 していくためには、1回では済まないというようなことを非常に強く感じました。これ は研究班の研究に非常に付加的なものですが、私個人の感想として、付け加えさせてい ただきます。  以上です。どうもありがとうございました。 ○林座長  どうもありがとうございました。では、時間の関係で5分ほど、ただいまの丸井先生 の御発表に御質問、コメントがございましたらお願いします。  今の先生のお話の中で、リスクコミュニケーションにおける社会心理学的な問題を強 調され感銘を受けました。  ただ、コミュニケーションでのもう一つの大事なことは、コミュニケーションの内容 を明確に理解しているということだと思います。  例えば、内容が正確な事実である場合と、コミュニケーションをしようとする内容に ついて不確実な点が多い場合とでは社会心理学的な扱い方も異なってくると思います が、そういう点はいかがですか。 ○丸井構成員  今、御指摘いただいたところは、非常に大事なところです。問題の性質なり内容が明 確になっていれば、それでいいんですけれども、そうではない場合というのが非常に多 いわけです。実際に起こるかもしれない、起こらないかもしれない、どのようなメカニ ズムで起こるかが、まだ十分わかっていないというような場合、これはむしろ専門家の 側が専門家の内部でのきちんとしたコミュニケーションが必要になってくると思いま す。不確実な場合でも、例えば行政も、あるいは専門家もこういうことが起こるかもし れないということは、説明して、どこがわかっていて、どこがわからないのかというこ とをきちんと説明しなければいけないと思うんです。  これが、先ほどの専門家の間で意見が食い違うということがありまして、その場合 に、今日は余りお話ししませんでしたが、マスメディアははっきりと単純にものを言う 専門家を求める傾向が多く、実はよくわからないのだというようなことを言う専門家の 意見をなかなかじっくりと聞いたり、報道したりしないことがあります。そのため、よ く事情を知る専門家にとっては非常に短絡的な報道だけが流れるということになりま す。けれども、それは専門家あるいは行政もきちんと報道する方、マスメディアの方と 事件が何か起こってから話を始めるのではなくて、やはり普段から、俗な言い方をすれ ば、きちん付き合って、お互いが信頼して正しい情報を流してもらえるような関係をつ くっておくことが必要なので、リスクコミュニケーションの基本は、やはり信頼関係だ と思います。それを専門家の中でも、あるいは専門家とマスメディア、あるいは行政と 専門家と消費者、すべての間で普段からどうやってつくるかということが、実は出発点 になるだろうと思います。 ○林座長  ほかに何かございませんでしょうか。  では、もう一つ言わせていただきますと、先ほどQ&Aをおつくりなったとのことで すが、Q&Aとは何かをはっきり理解する必要があります。Q&Aの中には、専門家に は明確にわかっているんだけれども、消費者の方がわかりにくい問題についてのQ&A と、先ほど申しましたように、専門家の多くでは不確実な点が残っている問題について のQ&Aがあります。まだ十分にわかっていないんだけれども、後者のQ&Aでは、現 状ではこういう考え方が標準的ではないか、この問題を解決するには、こういう研究が 必要なんじゃないかなというような情報を示す必要があります。本質的には異なったQ &Aを一緒くたにすると、誤解を招きやすいと思います。  先ほどのメディアが間違った報道をするということについても、誤解されやすい問題 点ついての説明が不十分であったということも考える必要があります。  先ほど先生がおっしゃったように、メディアはクリアカットに話す人の説明だけを強 調する傾向はあります。やはりメディアが誤解をするかもしれないという問題点を取り 上げて説明するというようなことが大事だと思うんですけれども、先生、その点につい てどうしたらいいかというようなことですが。 ○丸井構成員  そこのところが最も大事なところだと、このメンバー全員が話をしていたところで す。こういうチェックリストを用意するということは、一方的な思い込みで情報を流す と恐らくは誤解されますので、どのようなところが誤解の元になるか、あるいはどこが 不明確なのかということを意識しながら、現在、持っている情報で確実なところ、それ から不確実なところをきちんとえり分けて伝えるということが必要だろうということで す。  ですから、わからないところは、むしろ現在わかっていないということをきちんと伝 えた方がよいのです。恐らくは、後でこの部分がこういうふうにわかるようになったと いうことを追加していくことができます。そういう意味では、食の安全に関連するリス クコミュニケーションでは可能でしょう。これがもっと緊急性のある、感染症などの場 合には、もっと短い時間の幅で起きますので、これも似たような問題があります。  食の場合には、感染症ほど緊急性のないこともありますので、これは追加しながら、 あるいは修正しながらきちんと誤解のないように、わからないところはわからないとい うふうに、むしろきちんと出していくということが大事なんではないか。そのためのチ ェックリストというふうに考えています。 ○林座長  どうもありがとうございました。  次に、加藤先生よろしくお願いいたします。 ○加藤構成員  加藤でございます。おはようございます。  今、丸井先生のお話を伺っていて、常日ごろずっと考え続けてきていることであり、 今日私が今から少しお話をさせていただきたいと思っている事柄は、もう丸井先生にす べてお話しいただいた気がいたしております。私は感激しているというところでござい ます。ただリスクコミュニケーションと申しますのは、やはりキーワードは、先ほどの お話にも出てまいりました双方向の関係ということではありますけれども、厚労省を始 めとしたリスクコミュニケーション、意見交換会で、私どもの立場というのは、そこに 参加をして発信される情報を受け止めると、一義的にはそういう立場にございます。そ ういう立場で感じていることを率直にお話をさせていただけたらと思います。  A4一枚紙ではございますけれども、1〜4まで4つほど挙げさせていただきまし た。1つ目が「『リスクコミュニケーション』の意義」と書いてございます。黒ポツが 2つございますけれども、1つ目について申し上げれば、これまでの行政の情報提供と の違いは何か。旧経済企画庁の国民生活局の中には、10月の消費者月間事業の中に、全 国で何か所か意見交換ではございませんけれども、会合を持っていて消費者に対して情 報発信をするという企画もございました。これは、決して双方向の関係ではございませ んけれども、旧経済企画庁に限らず、行政サイドで行われるこれまでの企画と、現在の 意見交換会がどう違うのかという辺りをもう少し明確にしていく必要があるのかなとい う気がしております。  次は、リスク評価、リスク管理と一体となって初めて生きるリスクコミュニケーショ ン。これは、昨年の7月の食品安全委員会の報告の中にも書いてございますけれども、 情報を発信するだけではなくて、これは2番、3番のところとも関係してまいりますけ れども、評価、管理のところにどうつなげていくのかというとても大事な視点だろうと いうふうに考えております。  2番目の「『リスクコミュニケーション』の役割」。  消費者の意見・考え方を評価、管理に反映する。今、申し上げたことと同じでござい ます。  それから、評価、管理の内容・結果を消費者に正確に伝える。これは、今の丸井先生 のお話にも出てまいりましたが、非常に難しいことだろうと思います。  私ども全国組織でございまして、全地婦連を構成しておりますのは、各都道府県47都 道府県と、3つの政令都市がございます。  私どもは、年6〜7回理事会を開催いたしまして、県の代表が1名ずつく出てまいり ます。構成は50名でございます。50名が私どもの理事会のところで話し合われた内容 を、それぞれの都道府県に帰り、会員に情報を提供していくわけです。多くのまだ会っ たことがない会員をイメージして情報を正確に伝えることの難しさというのは、日々実 感しております。  しかし、正確に情報を伝えて共有してもらわなければ、私どもの運動というのは真に 力を得ることができませんので、どう情報を伝える、共有化し合うにはやはりここのと ころはとても大事だろうというふうに思っております。  それから、正確性を期すということだけではなくて、やはり速やかに、なるべく早く 全国に情報を発信していくということがとても重要だというふうに考えております。  3番目「効果的な『リスクコミュニケーション』の在り方」。  ここでも「双方向性の確保」と書いてございます。行政からの一方的な情報提供では なく、やはり理解されたか、されないのかということを常にチェックしながら情報提供 していくことがとても大事なんだろうというふうに思います。  日ごろ役所の方だけに限りませんけれども、さまざまな情報を御提供いただく際に、 やはり基本は対面なんだろうと思うんです。対面の大切さというのは、相手が理解して いるか、していないのかというのを、すぐその場で確認ができる。  ところが、確認しないまま自分が考えていることだけを、言い続ける方もたくさんい らっしゃいますし、普通は一つひとつ区切りながら、本当に、今、自分が話したことが 相手に伝わっているのかという確認の作業というのも、とても大事だろうというふうに 思います。  受け手の自分たち、それから自分も情報を発信していくときに、とても大事だと思う のは、丸井先生もお話になりましたが、わからないことをわからないというふうに言え る環境づくりと言うんでしょうか、これはとても大事だろうと思うんですが、情報を伝 え共有し合うということ、どう伝えていくのかというのは、とても大事だろうというふ うに思っております。  昨年の4月に、私は事務局長になりましたが、昨年の11月に皆さん御存じかもしれま せんが、NHKの土曜の夕方6時頃から、『週間子どもニュース』という番組がござい ます。ここでお父さん役をやっていらっしゃいます池上彰さんに11月にお越しいただい て、ちょっとお話をいただきました。  そのときに、池上さんがおっしゃっていたのは、自分は父親役として参加をしている と。土曜日生放送でございますので、金曜日の夕方から、土曜の夜に登場する子どもた ちと、打ち合わせをなさるそうです。  そこで、とことん子どもたちに次の日の番組の内容を話すそうです。話したときに、 3人の子どもたちが、わからないことはわからないと言ってほしいと。そのときに子ど もですから、こんなことを言ってしまったら恥かしいんじゃないかということも初めは あったが、そのときには池上さんはもとよりですけれども、スタッフ全員が子ども達が わからないと言ったときに、そんなこともおまえはわからないのかということは、絶対 に言わないようにすると。とにかく大人が、スタッフが率先してわからないということ を連発して、それで子どもがようやくそこで安心して、何を言ってもこの場は許される んだと。それが求められているんだということを理解し、そうすると子どもたちがいろ んなことを聞いてくるそうです。  そのときに、1つの例として、池上さんがおっしゃっていたのは、例えば、東京新潟 間に新幹線が開通いたしましたという情報を、新潟だったか、申し訳ございません、正 確ではないかもしれませんけれども、そういうことを伝えようと思って、これはどうい うことかわかる?と言ったら、普通は例えば東京から長岡の間に新幹線が走るというふ うに思うんですが、その列車はどこに行くのかと子どもが聞いたそうです。  どうして東京と長岡間を開通しましたと言っているのに、どこに行くと、ゴールはど こだと子どもが言ったというんです。子どもたちは、東京と長岡の間を新幹線はこうい うふうに通っていると考えていることがようやくわかったそうです。東京と長岡を行く んではなくて、子どもたちはこういうふうに新幹線というのは開通したんだというふう に思ったので、東京から発車した新幹線の終着点はどこなんだと。  事ほどさように、大人たちは自分の常識で、こんなことはわかるだろうと思って多く の人は話をするけれども、相手が子どもでなくても、自分が考えることがそういうふう に相手に理解されないということが非常に多くあるということを理解した上で話という のはしていかなければいけないと。  これは、やはり自分の組織のところでも、いろんな人、会に入っていない人にもいろ いろ大事なことを伝えていきたいときに、とても重要なことを教えていただいたなとい うふうに11月は感じました。  3番の黒ポツの2番目、公平性の確保ということでございますが、これは例えば意見 交換会等に出席できない、出席しない方にどう情報を伝えていくのかというのもとても 大事だろうというふうに思うんです。関心を持ってそこに出てこられる方はまだいいけ れども、やはりそこに参加されない、できない方への情報提供というのもとても大事 で、ましてや小さい子どもたちを抱えていらっしゃる若い親御さんなどには、やはり重 要な情報、食の安全という観点からすれば、届けなければいけない情報というのがたく さんあるんだろうと思いますけれども、やはり小さい子どもを抱えて意見交換会等には 来れない方がたくさんいるということを常に念頭に置きながら、しかし情報は伝えてい く。  どう伝えていくのかというときには、やはりメディアの活用ということもとても大事 でしょうし、今、行われている広報のやり方というのも、もう一度洗い直してみる必要 があるのかなという気がいたします。  去年、栃木で、厚労省だったか農水だったか忘れましたけれども、意見交換会が行わ れようとしたときに、栃木の会員が参加してみたいというふうに連絡してまいりまし て、行っていいかしらと言うから、どうぞというふうにこちらでもお話ししましたが、 いざ申し込みをしようと思ったら、やはり申込書を書いて提出しなければいけなくて、 それもちょっと煩雑だったものですから、参加を見送ってしまったんです。だから、参 加申し込みのときの容易なアクセスの仕方みたいなことももう一つ工夫が必要なのかな という気がいたします。  3番の黒ポツの3つ目、理解の確保、これは私、初回でも申し上げましたし、今の丸 井先生のお話の中にも出てまいりましたけれども、やはり専門家にとって有用な専門用 語でも、やはり一般の方たちにとっては、障害になる場合もたくさんあるんだというこ とを是非御理解いただいた上で、文字の上でも、話す言葉の上でも留意する必要がある のかなと。それから、丁寧な説明ということもしていく必要があるんだろうというふう に思います。 それと、初回でも申し上げましたけれども、伝え手側にどう情報を伝え ていくのかということが、やはり質、量ともに数をこなしていくということも大事でし ょうし、やはりトレーニングというのはとても大事なんだろうというふうに思います。  基本的には、相手の立場に立って考えていくという基本があり、かつきちんとトレー ニングを計画的に積んで身に付けていく。それから、伝えることのうまい人というのは 世の中にたくさんいらっしゃいますね。政治家なんかとも話していて、まずい人もたく さん政治家の中にもいらっしゃいますけれども、やはり地元に帰って多くの有権者を前 にして話す、それから自分が伝えたいことが相手に伝わらないといけませんから、そこ のところは現場のところで政治家というのはトレーニングをしながら身に付けているん だろうと思いますけれども、とてもうまいスピーチ、それから会話をしていても魅了す るような政治家もたくさんいますけれども、やはりそれも現場で数を踏んできて蓄積さ れているのかなと思います。  池上さんみたいなケースもそうですけれども、やはりコミュニケーションの取り方の 上手な人と日々、丸井先生もそうですけれども、伝えることに長けていらっしゃる方と いうのは、非常にこちらも勉強になりますので、そういう人と交流し合うということの 大切さというのも日々感じております。  3の黒ポツ4ですが、評価、管理の中でリスクコミュニケーションを活かす(縦割の 排除、上下間の情報流通の確保、透明性の確保)それぞれほかにも大事なことがあろう かと思います。上下間の情報流通の確保と申しますのは、役所の中で局長までは知って いるけれども、それ以上は知らないとか、あるいはポリティカルなところまでは届いて いなかったということのないように、やはり役所の中では、すべての人が大臣も含めて 情報を共有し合えるような環境づくりというのを、やはり意識的にきちんとしていく必 要が、今後も更にあるんだろうというふうに思います。  4番は、自分のところに置き換えて考えてみました。「『リスクコミュニケーション 』における消費者団体の役割」。  黒ポツの1つ目の専門性、継続性。この専門性というのは、決して消費者団体の構成 員が専門家という意味ではございません。ただ、一般消費者に比べれば、触れる情報の 量、質ともに、やはり多いんだろうと思います。そういう意味での専門性でございま す。  それから継続的に1年こっきりでなくなってしまうような組織はそうないと思います ので、やはり専門性、継続性というのを団体というのは有している。  それから、黒ポツの2ですが、構成員の意見の反映と情報伝達機能というのを有して いる。  3番目のポツですが、構成員のみではなく、一般消費者の意見反映の重要性。やはり 会員の話だけではなくて、会員外の人たちの意見も組織として聞いて、こういう話が情 報発信されているけれども、わからないようですよとかフィードバックをしていくとき に、会員だけの話ではない方たちの意見というのも団体とすれば聞いて伝える、そこで 双方向性というのを確保していく役割というのも団体の中にはあろうかと思います。そ ういうことを私どもは今後努めていかなければいけないのかなというふうに思います。  それから、私どもは、今年で36年目になりますけれども、ちふれ化粧品という化粧品 をつくりましたときから、原材料の表示というのは容器に表示してまいりました。これ は、販売したときには組織販売、今は一般市場で販売していますけれども、やはり会員 の中で化粧品を流通させていくときに、やはり信頼を醸成していくというのはとても大 事でございますけれども、100 人、200 人を相手にするわけではないので、やはり多く の人たちの信頼を持っていただくためには、やはりこの化粧品の中にどういう原料が使 われているのかというのをだれにでもわかるようにする必要があると思いまして、すべ ての容器に使われている原料の表示というのを行いました。  今でもそのことによって皮膚の弱い方等も御利用いただけるように範囲が広がってま いりましたし、それからこういうものを使ったものはないのかというお問い合わせをい ただくことも可能になりましたし、やはり化粧品における原材料表示というのをやって きてよかったということを今も思っております。  それから、丸井先生が同じ時代に生きながら異文化を背負う人々がいるということを 理解していかなければいけないというお話がございましたけれども、私もまさに日々実 感しております。  私どもの組織は消費者問題だけではなく、男女共同参画それから平和の問題、さまざ まな問題を日々の運動のテーマとして活動しておりますけれども、例えば今ですと、平 和の問題、今年戦後60周年ですから、平和の大切さみたいなものを共有し合わなければ いけないわけですが、やはりつくづく去年12月に奈良に出張いたしましたときに、やは りあそこは平和の大切さを思うけれども、その発信の仕方というのは、祈りから出てく る、静かなところから平和の大切さみたいなものを共有して運動としてこうやっていこ うみたいなものがあったり、かつて私どもでカラーテレビの買い控え運動いう運動をい たしました。このときには、初めカラーテレビのボイコット運動としようかなと思いま した。  ところが、私ども50団体ございまして、それを7つのブロックに分けておりまして、 ある東北のブロック会議にまいりまして、こういう運動を展開していくタイトルとし て、カラーテレビボイコット運動でいいだろうかと言ったときに、東北の人々がボイコ ット運動では東北で広めることはできないと。では、どうしたらいいでしょうかと言っ たときに考えて、買い控え運動だったらやっていけると。1年間カラーテレビを買い控 えをする運動が全国で展開することが可能になりました。  これもやはりボイコットではだめで、買い控えだったらできるというのも会員から出 てきて、それで共有できると運動が展開できる。これは食の安全、リスコミということ を今後やっていくときにも、やはり双方向の関係というのはキーワードだというふうに 思っておりますので、厚生労働省にお頼みするだけではなくて、うちの組織の中でもそ ういうことを意識しながら今後もやっていきたいなというふうに思っております。  とりとめもないんですが、とりあえず以上でございます。 ○林座長  非常にわかりやすい御意見で、どうもありがとうございました。  では、加藤構成員の御意見に何か御質問、コメントはございませんでしょうか。  どうぞ。 ○丸井構成員  非常にわかりやすく、現場に近いところからのお話をいただいてありがとうございま した。  リスクコミュニケーションはいろいろ難しいことも多いんですけれども、私の質問は 1つだけあります。最後のところで、消費者団体を担っていらっしゃるわけですが、私 はBSEのときでもいつも思っていたんですが、消費者というのは何なんだろうかと。 消費者にとってこれが必要だというようなことは、いつも出るんですが、消費者といっ ても実は非常に幅が広くて、今、お話があったように、さまざまな意見があるわけで す。構成員だけではなく、それ以外の方の意見も反映させたいというのはそうなんです が、組織として非常に幅広い意見、中にはかなり大きい声の少数意見というのもありま す。ただ声の大きいだけの意見が組織としての意見となってはいけないし、かといって 単なる多数決で過半数をちょっと超えるからこの組織の意見であるというふうに出すと いうことは、過半数近くの人たちの意見を切り捨てることにもなると思います。組織と して意見を出されるとき、つまり消費者の意見はこうだ言って出されるのが非常に難し いときがあると思うのです。個人として発言するのは簡単ですが、組織として消費者と いうのを背負って発言されるときは、どういうようなことを考えて、あるいはどういう ようなプロセスで組織としての消費者の意見というのを出されるんだろうかと思いまし たので、もし説明していただければと。 ○加藤構成員  全地婦連の組織に限ってということで御紹介させていただきますと、やはり全国50団 体で構成しているわけですから、東京に一同があるテーマごとに集まって協議し合って 答えをまとめるということはまず不可能です。それもタイムリーに社会に発信していか なければいけないときには、やはりインターネットがすべての団体のところに普及して いればいいんですけれども、まだまだうちのような組織はそうでもございませんので、 ファックスみたいなものを使って、1つの例ですが、来週NHKの会長との懇談があり ます。代表者が一人参加するわけですけれども、各団体には事前にNHKに対して何か 要望、意見等ございましたらみたいな感じファックスで意見を募るようなことをいたし ます。 ○林座長  どうぞ。 ○大山構成員  大変、現実に即してお話ししていただきありがとうございます。  質問ということではないんですが、私も広報室という立場で、いろんな方とお会いす るときに、基本的にはフェース・トゥ・フェースが基本であるということは、加藤さん のお話に大賛成なんです。  ところが、私も企業の人間ですから、どうしても効率を考えます。そうすると、いろ んなことを伝えるときに、フェース・トゥ・フェースの関係は非常に効率が悪いんで す。ですから、結局どうしたらいいんだろうかという思いで、正直いつも悩んでいま す。ただフェース・トゥ・フェースで、実際に面と向かってお話ししたときに、加藤さ んのお話どおりに何がわかっているんだろうか、わかっていないかもしれないというこ とが、実際に会えば伝わってきます。ですから、そういう中で新しくコミュニケーショ ンができるのかなということがあります。  私どもの広報室に新人が来たときに、その者に教えたのは、うそをつくなと、知らな いことは知らないと言えということです。つまり広報室というと、どうしても会社全体 のことを知っていると皆さん期待されます。ところが、そんなことはあるわけはないん です。広報室だけれども、会社のことについて知らないことはいっぱいあります。だか ら、知らないことは知らないと、それは調べてお答えします、というふうに言いなさい と教育しています。  ただ、先ほどあったように、わからないことをわからないと言うのと同じだと思うん ですが、心の中でいい格好をしないととか、私は会社を代表しているんだから、知らな いと言ったら恥かしいぞとか、言ってはいけないんじゃないかというふうなことではな くて、知らないものは知らないと、自分はいい格好をしてはいけないんだということを 教えています。  特にうそをつきますと、あとそれを修正するのは大変なエネルギーが要ります。です から、自分たちがうそをつかないためにも、知らないことは知らないと言いなさいとい うことで、それは自分に対しても教訓なんですけれども、そういう形でいろんなところ と会話をさせていただいております。知らないということは決して恥かしいことではあ りません。ところが、やはりイメージされるのが、広報室というと何でも会社のことを 知っていると思われてしまうので、非常に辛いところです。 ○林座長  先ほどの消費者とは何かが問題になりましたが、後でお話があるかもしれませんけれ ども、消費者とは何かについて岩渕構成員のご意見をお聞かせ下さい。個人としての消 費者と、団体あるいは組織としての消費者とでは変わってくると思いますが。 ○岩渕構成員  消費者とは何かというような明確な定義は持ち合わせておりませんので、それは控え させていただきますが、ただ団体としてと、あるいは個人としてというところになりま すと、かねて言われています、一般の消費者とセミプロという関係で、どうしても団体 の方はセミプロで、それは悪い意味で言っているわけではありませんで、そういう人た ちを大事にうまく活用していくのがリスコミの1つの方法であるというのを後で申し上 げたいと思います。 ○林座長  ありがとうございました。では、次に岩渕先生、よろしくお願いいたします。 ○岩渕構成員  私は情報の伝え方が大変下手な人間でございまして、3分しゃべれば大概ぼろが出る と思いますので、できるだけ短くしようと思いまして、実はビデオを用意しました。  これはBSEのときの調査検討委員会で報告書を自民党にかなり厳しく書きました。 その後で、衆議院の農林水産委員会に参考人として呼ばれて、そのときのやりとりを10 分ぐらいにまとめたんですが、皆さんのマスコミ批判を聞くと余りそっちの方に時間を 取ってはいられていないという気持ちになりましたので、これはせいぜい2〜3分ぐら いでやめたいと思います。                 (ビデオ上映)  これは当時の雰囲気だけをちょっとお伝えしたいなと思ったわけです。  今回のテーマに即して申し上げますと、リスクコミュニケーションの範囲をどの程度 まで広げるか、あるいは絞り込むか、そこの問題はあると思います。リスクアナリシス の中にはアセスメント、マネージメント、コミュニケーションがあるというふうに言わ れておりますけれども、マスコミから見ますと、リスクコミュニケーションの中には、 例えば今回この委員会でもかなり指摘されていますように、マスコミは間違いが多いと いう言われ方をされています。  それはどういう場合かと言いますと、通常のいわゆる懇談会とか、そういうベースで はなくて、一番多いのは、やはり発生の時点で、要するに情報がない段階で、役所側も しっかりした情報を持ち合わせていない段階の報道は、やはり誤解を招くケースが多い ということは言えると思うんです。  それはリスクコミュニケーションであるか、リスクマネージメントであるか、やや微 妙なところがあるんですが、そこのところを皆さんごっちゃに議論なさっているので、 話がいつまで経っても堂々巡りでわけのわからない方向に行っているというふうにしか 聞こえません。  ですから、リスクマネージメントと言えるかどうかわかりませんが、いわゆる危機管 理、発生した時点での対応と、通常の情報の共有、あるいは信頼の醸成とは、少し別の カテゴリーで考えた方がいいのではないかということを、まず第一に申し上げておきた いと思います。  あと、2枚の資料で、ちょっとごらんいただきたいんですが、まず一番目が「A安全 と安心の乖離」という点であります。これは最初から指摘されていたところであります が、いろんな議論を聞いておりまして、事業者の方は安全性に自信をしっかり持ってい るわけで、一方、消費者の方は安全性に不安という表現をずっと使われておりますけれ ども、不安というよりも不信に近いのではないかというふうに思います。  ですから、そこのところが単なる不安ということであると、不安というのがあたかも 全く根拠のないエモーショナルな行動であるというふうに我々は受け止めてしまいます が、不信であればどうなのかということを、もう一回考えていただきたいと思います。  逆に言うと、消費者の不安の中には事業者に対する不信の念がかなりあるのではない かということを見逃してはいけないというふうに思います。  そこで、★のところに書いてありますけれども、事業者は安全性を確実なもの、ある いは所与の条件として、リスコミは無知かつ疑い深い消費者を説得するツールと考えて はいないか、別にいるというふうには言いませんけれども、いないだろうかという疑問 がわきます。  最終的にそれを判断するのは、やはり消費者であろうというふうに私は思いますの で、余り消費者を軽く見ない方がいいと思います。  それから、不信の原因というのは、いまだに法令違反があるということです。以前ほ どではなくなったということも言えますけれども、依然としてある。しかも、なおかつ そういったようなことが重なったことによって引き起こされた消費者の不信感というの はかなり根深いものがあって、その根深いものが全く根拠のない情緒的なものかと言う と、そう言えるかどうか、そこのところもよく考えていただきたいというふうに思いま す。  それから、回収不要論というのが一部ありました。基準違反、事例のリスクは微々た るもので回収は不要で壮大なる無駄というふうなニュアンスで考えるという発言もござ いましたけれども、これは事業者の方の論理でありまして、では消費者の方から言いま すと、確率はたとえ低くても、自分に当たれば100 %だということであります。これは がんの治癒率でも同じことでありますけれども、ゼロリスク、ゼロハザードかもしれま せんけれども、その辺りを当然ながらできればほしいというのが人情でございます。  更に言いますと、回収不要論というのは、安全基準の妥当性、つまり安全基準が果た して妥当なものかどうか、厳し過ぎないかどうかという問題と、もう一つは企業のコン プライアンスの問題であるというふうに言わざるを得ない。  もともとこれは本来リスコミの問題ではないんです。つまり、回収基準が厳し過ぎる から緩和しろという議論と、大したことはないから回収しなくてもいいんではないかと いう議論というのは全く別の次元ではないかというふうに思います。  確かに、規制当局におきましては、添加物だけでもべらぼうな数がありまして、安全 基準のリスクアセスメントが追いつかない状態でありますので、責任回避というと、行 政には失礼ですけれども、ある意味で、できるだけゼロリスク、あるいはゼロハザード に近づけたいという思いがありまして追いついていない。つまり、どの程度まで安全か というところが、いまだにきちんと確信を持って打ち出されていないものが結構たくさ んあるということも事実であろうと思います。  一方、一部の食品関連企業は、人命と健康に関わっているという意識がまだ非常に薄 弱な企業が非常に多いというふうに思います。  そういう意味で言いますと、コンプライアンスと基準の問題を含めて、双方のレベル アップ、もう少しレベルが向上しないうちは、今のままで行くしかないのかなというふ うに思います。  それから、回収が不安をあおるという批判は気持ちは理解できるけれども、本末転倒 というか、一種の居直りの議論であろうというふうに思います。逆に言いますと、基準 がこれから緩和の方向に向かっていくのは歓迎いたしますが、それは当然ながら罰則の 強化と結び付いていなければ、国民の生命、健康の安全は保てません。ですから、企業 の経済活動を自由にするということは大前提でございますけれども、法令に違反した場 合には、厳しい処分を受ける、そういう時代に入っている。そういう意味で、強化して いって、行政の手法としては、事前規制から事後規制へ移行する。これは大きな流れで ございますので、当然ながらその方向に向かうべきであろうと思います。  ということで、よそのことをちょっと申し上げましたけれども、マスコミへの不満・ 批判というのがC番目に書いてございます。おおざっぱなところで申し上げますと、報 道内容が不正確であると。それから、担当記者が役所より早く変わって勉強不足である と。あるいは、事件、問題事例だけを報道して、消費者の不安をあおり、風評被害の元 凶になっている。行政や事業者の安全システムづくりや信頼回復の努力を報道しない。 リスコミの全国展開も地方版ぐらいしか載らないと。さまざまな御批判がございまし た。それは一面当たっているんですが、それに対して、ではどうするかということをも う一回きちんと考えていただかないと話にならないというふうに思います。  マスコミのサイドから、それに対する一種の弁解とも反論ともつかないんですが、事 情説明ということで申し上げておきたい。報道する優先順位というのは、まず読者の関 心のあることというのが大前提でございますけれども、一番優先されるのは、発生する 事件、事故などのニュースであります。それから社会問題、それから生活情報と、おお ざっぱにそうであろうというふうに思います。例えば、先ほどの事例にありしまたキン メダイの汚染とか、集団食中毒O157とか、雪印の不正とか、食品安全基準の違反な どというのは大々的に報道するんですけれども、リスコミの討論会などは余り報道しな いということになります。  それで、報道の特徴、限界、問題点として、まず第一に速報性ということが挙げられ ます。2番目が一般性、3番目が量的制約があると思います。  不正確だと批判される報道というのは、この3点セットが常に絡み合って起こってい るというふうに私は思っています。  A番の速報性というのは、短時間で原稿を書いて処理しなければいけないという場合 です。つまり、先ほど申し上げました、リスクマネージメントに関わる発生事態のとき の記事でありますけれども、まず、短時間で原稿を書いて、細部の事実関係を確認する 時間的な余裕がない場合が結構多いということでありまして、ミスを避けるためには、 時間的余裕と正確なデータがとにかくほしい、役所の発表内容は正確だけれどもわかり にくくて、マスコミの報道はわかりやすいけれども不正確だと言われているが、双方の 努力が必要だということが言えると思います。  それはなぜかと言いますと、先ほどちょっと出てきましたけれども、96年の薬害エイ ズ事件以来、行政の方は常に情報隠しという批判にさらされてきております。  ですから、情報の開示のプライオリティーが高くなっておりまして、発生即発表とい うのが常識であります。国民の方からしても、それは歓迎すべきことではあります。  ただし、その副作用といたしましては、正確な情報が集まらない段階でも発表しなけ ればいけないという一種のプレッシャーがかかっておりまして、先ほど丸井先生がお出 しになったチェックリストをいちいち点検している暇など勿論ありません。行政にとっ てもそこのところをどういうふうに対応していくかというのは、非常に大きな問題であ ります。  もう一つは、さっきちょっと話題に出ました、マスコミがセンセーショナルな報道を する。例えば、水銀のときに水俣の映像を流した。あるいはBSEのときに、いつもよ たよたとしている牛を延々と流したといったような事例があります。  1つ、テレビの場合はどうしても映像がほしいということであります。だからといっ て適切な映像であるかどうかというのは、また別問題でありまして、それに対する批判 は甘んじて受けますけれども、そういうような状況の中で言えば、正確で視覚的なコン テンツを情報提供側でも少し考えていただきたいなと、これはお願いベースでありま す。そういったようなことが言えるのではないかなと思います。  ついでになりますが、センセーショナリズムという問題は常にマスコミ批判で使われ るんですけれども、いい例で言いますと、所沢のダイオキシン騒動のときには、久米宏 の報道ステーションが結局裁判で負けました。非常に不届きな報道であるというのは、 マスコミにいる私自身もそう思います。  ところが、あの報道一発で廃棄物処理法の改正案が国会を通りました。そういう意味 で言いますと、手段、方法は不正ではあったけれども、結果としては社会にかなり大き な貢献をした。あれ以来、私はそういう問題に余り関わりたくないなと思っているぐら いの衝撃的な結果を招いたというふうなことが言えると思います。  それから、記者の交代が早過ぎるというのは、これは公務員もそうですけれども、と にかく社内人事の一環として全体のバランスの中でやります。  特に問題なのは、使いにくい専門家の養成には消極的だということであります。つま り、食の専門家と言いますと、社内的に見ると、ややうるさい存在になりかねないとい うことで、使いにくいというのも多分上の方の判断の中にはあるだろうというふうに思 われます。  ただ、少し時代も変わってきまして、専門家をきちんと立てないといけないという意 識も勿論出てきておりますので、一面的ではありませんけれども、深層心理の中でそう いうのがあるであろうということは容易に推察できるということであります。  次のBの一般性については、全国民を対象にしているマスコミは、個別のテーマに偏 った報道というのは余りできないということでありまして、詳細な報道とか、論議を含 む、いわゆるセミプロの要望にはなかなか応えられないというのが、現実的な制約でご ざいます。  確かに繰り返し報道する、あるいは解説することは啓発的な意義はあるんですけれど も、マスコミの大原則として同じ内容とか、同工異曲のような報道というのは、原則と してタブーになっている。「新聞」ではなくて「古聞」だと言われるような感じもあり まして、それを繰り返し報道するには、新たな意義、あるいは何らかのファクト、要素 が必要になってくるということでございます。その工夫というのは、常々マスコミ自身 もやる必要があるんですけれども、一応その辺りも御理解いただきたいというふうに思 います。  C番目の量的制約については、これはわかりやすいんですが、紙面のスペースや放送 時間の問題がありまして、これだけ大量に情報がシャワーのように流れる時代において は、その中で選ばざるを得ないということになりますので、先ほど言ったようなプライ オリティーがありますので、なかなかそれに入ることは難しいというような制約がござ います。  新聞は特に最近文字が大きくなりまして、短文化が要請されますので、報道されにく いと同時に正確な報道をしにくいという1つの原因にもなります。つまり、短い文章で 正確に表現するということは非常に難しい。  そういう意味で言いますと、啓蒙、あるいは国民の情報の共有をもう少し推進しよう ということであれば、国民の電波を使っている民放、勿論NHKもそうですけれども、 テレビ業界などは、もう少し政府の方針を反映させることもできないわけではないけれ ども、新聞の場合は完全に独立していまして、どこからも監督受けておりませんので、 全くそれぞれの自由ということになります。しかも、新聞の場合は特にそうなんです が、消費者の関心が最優先、テレビもそうです。  それから、意見広告を含む広告料は非常に高いというようなことも現実にありますか ら、どういうふうにマスコミに報道させるかという工夫でございますけれども、まず消 費者に関心を持たせるように、先ほど申し上げましたがテレビには視覚的、特に正確な 視覚的コンテンツが必要であって、新聞には社会的意義のコンパクトな解説、特にほし いのは関連データなんです。ですから、データベースがどこにどういうふうにあるのか と、もう少しデータベースの整備を、とっさの場合にもある程度のデータを出せるよう な体制を整えてほしいというふうには思います。  新聞独自でそれぞれのデータベースを確保するというのは、なかなか難しいというこ とで、これは行政にお願いしておきたいと思います。  ツールで言いますと、多チャンネル化した、最近はCSとかデジタル放送もチャンネ ル数が増えますし、そういう意味で言いますと、メディアが非常に拡大しておりますの で、それを含めたさまざまな活用方法というのを考えておくべきだろうというふうに思 います。勿論、インターネットとか、コミュニティー雑誌・新聞も活用すべきであろう というふうに思います。  では一般の消費者にどういうふうに伝えていくかということでありますけれども、ま ず一番最初に申し上げましたように、リスコミの範囲で言えば、一種の危機管理と、信 頼を醸成するような通常のリスクコミュニケーションという2つの面があると思うんで すけれども、一般の国民に、信頼醸成の勉強会に出てきて、3時間なり4時間なり、ち ゃんとおとなしく黙って聞いて、よく勉強しなさいというのは、なかなか無理があると 思うんです。  これは、最初から議題になっておりますように、セミプロを相手にするのか、一般国 民を相手にするのかという問題点であります。ですから、勿論、一般の国民に対する啓 蒙的な情報提供は、たゆまぬ努力が必要なことは申し上げるまでもありません。ですけ れども、一般国民の反応がないとか、参加者が少ないということで、国民に対して一種 の不満めいたものを抱くとか、あるいはマスコミに対して批判をするとかというのは、 そこのところはややおかど違いの部分も確かにある。  具体的にどういうふうにすればいいかと言いますと、勿論ベースとしての一般的な情 報提供なり情報の共有というのは必要なんですが、国民が最も関心を持つのは、購買す るときと事件が起こったときです。  ですから、買う段階での食品表示の問題は、先ほど丸井先生がおっしゃいましたが、 それはチェックリストも勿論全部付けて、必要でありますし、トレーサビリティーも含 んで、いい方向に大分動いているとは思います。  それと、食品表示について言えば、とにかくインチキなしを徹底しないと話にならな いということです。国民、あるいは消費者の不信感の最たるものは、とにかくまたイン チキが出たというふうな感じで、北朝鮮のアサリが十三湖産に化けるかどうかはわかり ませんけれども、きちんと徹底した正確性の確保というのは、これは追求していただき たい。  罰則が最近厳しくなりましたけれども、行政サイドには、違反した場合の罰則を厳し くしてもらいたい。これはさっき申し上げたとおりなので、事前規制は緩めて、罰則は 厳しくしないと、これはいつまで経ってもイタチごっこになってしまう。  それと、違反の発生、あるいは事件、事故の発生、そういったような場合、いかに正 確にきちんとした情報を伝えられるか、これはマスコミに対して、以前からさまざまな 御批判もあるところでありますけれども、これにどういうふうに取り組んでいくかとい うことであります。  ですから、コンパクトでわかりやすく、しかも正確なという非常に困難な、手足縛っ て泳げというような要求ではございますけれども、これもマスコミ自身の勉強を含めて 必要であろうというふうに思います。  その上で、いわゆる情報の提供、信頼感の醸成ということ、あるいは正確な報道とい うテーマに応えるために何が必要かというと、勿論、皆さんおっしゃっているように、 普段からの相互の情報交換なり、信頼感の醸成というのは勿論必要なことであります し、勉強するということで言えば、セミプロ、これは関係者、マスコミも含めたセミプ ロと言っておきたいんですが、情報交換会、あるいは勉強会、こういったようなものを かなり頻繁に開いて、それぞれの知識レベル、意識レベルをきちんと保っておく必要が あるのではないかなと思います。  ですから、オピニオンリーダーの啓蒙、情報の共有が必要で、オピニオンリーダーと 一般国民というのは、区分けしてやる必要があるのではないかなと思います。  とりあえず、以上です。 ○林座長  どうもありがとうございました。岩渕構成員のお話に何か御意見、御質問はございま せんでしょうか。  どうぞ。 ○大山構成員  ありがとうございました。前回、私からも回収不要論的な部分の話をさせていただい ておりますが、ここでも正直思いましたのは、別にすべて回収不要なんて言ったつもり はなかったんです。  ただ、回収した中には本当に不要なものもあるんじゃないかということを前回に私は 言ったつもりだったんだけれども、岩渕構成員も多分同じ意味で使われていると思うん ですが、この文章を読むと、何となくそうじゃなくて、もっと強いインパクトで私は受 け取れた次第なんです。  ですから、言葉、情報というのがありますが、それをどう認識するか、理解するかと いう理解の共有というものが、社内においても、同じ業界内においても本当に大事なん ではないかというふうに感じています。例えば通知等が出ますと、それはどういう意味 なんだろう、我々にどう影響が出るんだろうかということを考えていったときに、社内 にもかなり認識というか理解のずれが出ています。それは、会社が違えば全く違ってき てしまうんです。ですから、その辺を共有するということが大事なのかなということを 最近つくづく思っています。  今のB番の回収不要論を読むと、多分私の言ったことは御理解いただいたと思うんだ けれども、こうやって読むと、何となくここまで強く言ったつもりはなかったんだけれ どもという思いがした次第です。 ○岩渕構成員  なんの恨みもございませんけれども、勿論、一般の多くの企業がきちんとやっている ということも十分承知の上でございます。ただし、いつも問題になるのは、常に一部の 不心得者が出るということでございまして、特に食品という国民の生命、健康に関わる 業界は、そこのところをごく一部と言って見過ごすわけにはいかないということを業界 全体として認識していただきたいというふうに思っている次第でございます。 ○林座長  どうもありがとうございました。何か先生御意見ございますか。 ○加藤構成員  申し訳ございません、これは厚労省にお聞きした方がいいのかもしれませんけれど も、岩渕先生のお話の最後の★のところで、テレビは、やはり視覚的なコンテンツが必 要なんだと。視覚的なコンテンツは、正確性を期す意味で視覚的コンテンツも含めた提 供があればみたいなお話があったかと思うんですけれども、これはメディアの独自性と いうのか、独立性というのかという観点から情報提供を求めることについて、果たして いいのかなというのが素直な気持ちなんですが。 ○岩渕構成員  お願いベースで申し上げたんですけれども、勿論使わなければ使わないで構わないわ けであります。現実的に言いますと、テレビの場合は、例えばデスクの段階で、何か資 料がほしい、映像がほしいというようなことが往々にしてありがちだという状況説明と 言いますか、そういうことを申し上げただけでありまして、独自性ということにこだわ りますと、かえって逆に不正確だとか、おかしな問題がいっぱい出てくるのではないか なというふうに思いまして、余り堅苦しく考えるとおかしなことになるんではないかと いう逆の心配が現実的にはあります。 ○林座長  どうもありがとうございました。ただいま3人の構成員の方から、行政が考えなけれ ばいけない重要な課題が提案されました。 では次の課題について事務局から御説明いただけますか。 ○広瀬企画情報課長補佐  それでは、お手元の資料4になるかと思いますが、「病原性大腸菌O157集団食中 毒事件について」ということで説明させていただきます。最初の1ページをおめくりい ただきますと「O157対応経過概要」というものがありますが、これはそれぞれの時 期でこういうことが起きたということを時系列で、少しわかりやすくなるかなというこ とで付けさせていただいたものでございます。  説明は次のものからにさせていただきます。  ごく簡単な概要でございますけれども「堺市学童集団下痢症事件の概要」ということ で、事件が起きたのは平成8年でございました。学童の間で下痢、血便等を主症状とす る多数の有症者が発生したということの報告がありまして、14日には26名の検便のう ち、13検体からO157が発見された。23日には死亡者が出たということでございま す。  最終的にといっても、9月25日の時点ですけれども、学童6,309 名、職員が92名、二 次感染と思われる者が160 名、合計で6,561 名の被害者が出ているということでござい ます。当時の厚生省でございますが、8月7日に中間報告をしておりまして「貝割れ大 根については、原因食材とは断定できないが、その可能性も否定できない」というよう な報告を出させていただきました。  9月26日には、最終報告ということで「堺市学童集団下痢症の原因食材としては、特 定の生産施設から7月7日、8日及び9日に出荷された貝割れ大根が最も可能性が高い と考えられる」というような報告を出しています。  次のページ以降に、中間報告及び最終報告の概要を付けております。  最初は、中間報告の概要でございますが、中身はちょっと省略させていただきますけ れども、経緯ですとか、調査結果の概要ですとか、発生原因については、時期とか、範 囲、それから発生原因の推定など、項目ごとに多少細かく解説をさせていただいており ます。 問題となりましたのは、原因食材の推定ということですけれども、いろいろな メニューの中から一つひとつ検討していった中で、最終結論としては、先ほど説明させ ていただきました、かいわれ大根について、原因食材とは断定できないけれども、可能 性も否定できないというようなことを出させていただきました。  その次は、最終報告の方の概要です。  こちらも経緯ですとか、原因について、それぞれ一つひとつ解説をさせていただいて おりまして、結論としては、先ほど申し上げさせていただいたようなことが、3ページ の中段ぐらいに記載させているところでございます。  このようなことで対応させていただいたわけでございますが、それを受けまして、東 京と大阪でそれぞれ訴えがありまして、裁判があったということでございます。  最後から2枚目のページをちょっと見ていただければと思いますが、平成8年の夏に 発生した事件ということで、原因食材の可能性を指摘された、かいわれ大根の生産農家 等から根拠のない公表により売上が激減したということで国に賠償請求が求められ、東 京と大阪で2つの訴訟が提出されております。  訴訟の経緯でございますけれども、東京地裁判決では、国の責任を否定されておりま すが、東京高裁判決では、国の賠償責任が認められ、大阪地裁及び大阪高裁においても 国の賠償責任が認められたところでございます。  これらの高裁判決で、国は最高裁に上告受理の申立てということを行っておりました が、この申立てについて、平成16年12月14日、最高裁において当該申立てを受理する理 由がないということの決定が行われ、東京、大阪両高裁の判決が確定いたしておりま す。  これに対するコメントが、1ページ前にあります平成16年12月14日の厚生労働省食品 安全部というもので、今回の最高裁判所の決定は国にとって大変厳しいものであると受 け止めている。  厚生労働省としては、今後とも迅速な情報公開を推進するという基本的な考え方に何 ら変わりはないが、個別具体的な情報公開の在り方について、今回の判断も踏まえて適 切に対応してまいりたいというものでございます。  また、1ページ後ろお戻りいただきまして「訴訟における主な争点と司法判断」とい うことですけれども、1つは原因調査報告内容の合理性ということと、それから公表行 為の正当性という2つが主な争点でございました。  この争点に関する司法判断としては、Aの原因調査報告の内容ということでございま すけれども、東京地裁は「過程と結論ともに合理的」という判断をしていただいたもの でございますが、東京高裁、大阪地裁は「結論は問題ないが、個々の調査や原因検討が 不十分」という判断でございました。  また、大阪高裁は「原因調査の合理性・原因推定の妥当性に疑問なしとは言えず」と いう判断でございます。  それから、公表行為の正当性について、公表目的については、いずれも国の違法性と いうものを否定しているということでございます。  要するに、国民への情報公開という目的は、いずれの判決も認めておりますけれど も、食中毒の拡大防止という目的について、大阪地裁、大阪高裁では否定している。  次に、公表方法についてでございますが、東京地裁は「疫学的判断を正確に公表し、 混乱防止の一定の配慮もあった」という違法性を否定していますが、その他の判決では 「曖昧な公表により誤解を生んだ注意義務違反、過渡的な情報を中間報告の形で記者会 見をして公表するほどの緊急性はなかった」ということ。それから「会見に同席した専 門家の『95%以上』の発言がかいわれ原因説を強く印象づけた」などを理由として違法 との判断でございます。  最後のページに「かいわれ訴訟 各判決の比較」というものがございます。  左上の方から東京地裁判決で、国が勝訴のものでございますが、先ほどお話ししたよ うなことで不合理な点は認められないというようなことでございました。  公表目的、これは情報提供と食中毒の拡大防止のための公表であると。  公表方法としては、疫学的判断を正確に公表しており、混乱を避けるための一定の配 慮もあったということでございます。  東京高裁判決では、国側敗訴でございますけれども、かいわれと断定できないとした こと自体は問題ないが、流通過程の検証や、学校休職のみに発生した原因の検討が不十 分であった。  目的のところで、食品一般への不安が広がる中では、隠蔽されるよりもはるかに適切 であったと。  公表方法ですが、何について注意喚起するのか明示していない。特定の施設が疑わ れ、他の施設は安全と示すのも一方法であったのに、曖昧な公表をして誤解を生んだ注 意義務違反がある。他の業者への配慮が不十分であったというようなことでございま す。  下段になりますが、大阪地裁判決では、報告内容の合理性については、かいわれを原 因食材とする仮説自体には問題はないが、個々の調査には不備があると。  公表目的として、拡大防止目的は認められないが、情報公開が目的と認められ、これ は正当ということでございます。  公表方法について、過渡的な情報を記者会見までして公表すべき緊急性はなかったの ではないか。報告書の論述全体や、会見に同席した専門家の「95%以上」との発言は、 かいわれが原因と強く印象づけるため違法ではないかということでございます。  報告内容の合理性について、大阪高裁の方でございますけれども、原因調査の合理 性、それから原因推定の妥当性に疑問のがないとは言えないということでございます。 最終報告の結論部分も相当ではないということ。  公表目的、公表方法については、先ほど説明したものと同じでございますので、省略 させていただきます。  以上です。  それから、本日御欠席の金川先生からコメントをいただいておりますので、これも併 せて読み上げさせていただきます。資料5になります。  「O157事件への対応について(クライシスコミュニケーションの立場から見た考 察)」ということでございます。  「全体的印象」ですが、最も大きな問題は、疫学的推論の限界についての説明を怠っ たところにある。すなわち、疫学的推定の結果を「真実」として大臣が発言してしまっ たことにあると思われる。疫学的推定である限り、当時の厚生省の報告は科学的には正 しい。しかし、このことと「真実」は異なる。すなわち、推計学的には正しくても、実 際には菌が出ていないのだから、真実は神のみぞ知るなのである。  2番目でございますが、したがって発表は、疫学的推論であり、あくまでも確率であ る。従って特定の業者を指すものではないことを強調すべきであった。  3番目、中間報告や最終報告などの情報公開は、全体としてクライシスマネージメン トの中で適切に位置づけられなければならない。すなわち、クライシスをマネージメン トする場合、クライシスマネージメントのチーム内で専門家をまとめて使いこなす技術 が必要となる。例えば、クライシスについての科学的な知識を提供する専門家、それを 公正に伝えるコミュニケーションの専門家、クライシスコミュニケーションをだれにい つどのように実施するかのスケジュール構築の担当者を一つのチームとして束ねる組織 や技術が必要となる。O157事件について言えば、個々の専門家は存在するものの、 それをまとめる技術が欠落していたと思われる。特に問題は、報告書の内容自体の問題 というよりも、その内容の大臣へのブリーフィングの仕方や、大臣のパフォーマンスも 含めた対応に問題があったのではないかと考えている。  その次は具体的な問題点でございますけれども「Aコンテンツについて」。  報告書の内容は、上述したように、疫学的推論上は、科学的な根拠に基づいたもので あり、その意味では大きな瑕疵があるとは言い難い。しかし、繰り返すが、それは「あ くまでも確率であり、特定の業者を指すものではない」ということを強調することが必 要であった。加えて、一般的に確率論の話はわかりにくいので、徹底的にわかりやすく 伝える工夫も必要であった。  「Bプレゼンテーションについて」。  政治家である大臣として白黒付けたがる気持ちは理解できるが、菌が検出されていな い段階では、大臣へのブリーフィングの際には、報告書の調査結果はあくまでも可能性 であり、前述したように、まだ原因はわからないということを繰り返し強調すべきであ ったのではなかったか。  国民に向けたクライシスコミュニケーションの在り方に目が向きがちであるけれど も、大臣のように影響力の大きなキーパーソンに正しく理解してもらうというような、 足下のクライシスコミュニケーションにもっと目を向ける必要がある。また、国民の多 くはマスメディアを通じて情報を得ているのだから、マスメディアに対する効果的クラ イシスコミュニケーションも重要である。加えて省庁間(特に農水省との関係)でどの ようなクライシスコミュニケーションをしているのか、お互いのコンテンツを検討して おく必要があったと思われる。  プレゼンテーションを行う場合、表情・姿勢・声の調子までコントロールする必要が ある。プレゼンテーションは基本的にプロの仕事であり、米国などでは、そのようなト レーニングを受けた人が対応している。  プレス発表のやり方について、内容をどのように伝えるかの検討も含め、既に述べ た、大臣へのブリーフィングの仕方、省庁間の連絡等を含め、きちんとマネージメント システムを確立しておくことが重要である。  以上でございます。 ○林座長  どうもありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明について、O157 問題につきまして、何か御意見、御質問はございませんでしょうか。  特に、当時の厚生省の対応について、意見がありますでしょうか。  どうぞ。 ○岩渕構成員  判決の中では、緊急性はなかったというような表現が使われておりますけれども、当 時の状況を顧みますと、やはりかなり緊急性はあったと思います。あの当時、生鮮食料 品に対する全般的な不信感、不安感が非常に高まりまして、寿司屋ががらがらで、刺身 を出さなくなった料理店がたくさんあった。そのこと自体が、緊急性を証明することに はなりませんけれども、傍証としてはそういうようなこともあったということでありま して、国民の不安がかなり強い段階で、何らかの発表が必要であったということは、確 かに言えるというふうに思います。  マスコミの方も、発表を要求したケースもあったかとは思います。コメントを寄せら れた方がおっしゃっているように、その過程で、もう少しきちんと推論であると強調し ておく必要があったというようなこともある意味では言えたかもしれないということで あります。  役所の発表はこれこれで、マスコミの伝え方はこうこうだったというぐらいの状況で あればいいのではないか。役所は筋論ですから、筋論をもう少しきちんと出された方が よかったということが言えると思います。  当時の大臣がパフォーマンスが好きだったということも若干はありますけれども、状 況証拠で物証があるか、ないかという話になったときには、裁判の場ではなかなか難し い部分もあるかもしれないけれども、当時の状況としては、少なくとも私個人は、将来 裁判で負けるかもしれないけれども、ある程度の推論まで含めて出した方がいいという ふうに役所の担当者には申し上げた経緯があります。ですから、私もある意味で共犯で あろうというふうに思っております。 ○加藤構成員  かいつまんで4つございます。今回の最高裁の判決について、被害の拡大防止のため には迅速な情報提供というのがとても大事だろうというふうに思います。  これは、やはり被害者が、今回もそうですけれども、かいわれのときもそうでしたけ れども、子どもやお年寄りということも考えて、被害を拡大しないように防止するとい う観点からも迅速な情報提供がとても大事だと思います。  それから、今回の判決によって情報提供に消極的になることを懸念しております。  3つ目は、迅速な情報提供制度の確立をする必要があるんだろうと思います。  それと、原因が確定していなくても可能性が高い場合には、迅速な情報提供を私ども は求めたいと思います。  原因が間違っているリスクよりも、被害が拡大するリスクの方を防ぐべきだろうとい うふうに思います。後で間違っていたことが判明した場合には、国が補償するという制 度を速やかに構築していく必要性があるんだろうというふうに思います。  以上でございます。 ○林座長  どうもありがとうございました。ほかにございますか。  どうぞ。 ○丸井構成員  私は、疫学が専門ですので、疫学的推論として、報告書自体がそれほどおかしいこと を言っているとは思わないのです.コメントを寄せてくださった金川先生も推論自体は いいけれども、その説明が十分ではなかったから、内容ではなくて、その伝え方に問題 があったということです。今、御意見があったように、まさしくリスクコミュニケーシ ョンの問題であって、どのような形でそれを伝えるかということだったと思います。  そういう意味で、平成8年の時点で、行政とマスコミというのは、言わば異文化です が、行政はマスコミというものの特性をきちんと承知した上で流すべきだし、パフォー マンスをすべきであったろうというふうに思います。  ですから、これは流し方の部分に問題があったので、これからむしろその辺のところ をきちんと進めていってくださればいいことなのではないかというふうに思います。  そういうわけで、むしろ先ほど加藤委員からのお話があったとおりだというふうに私 も思います。  この後、随分行政は学んできているというふうに思います。例えば先ほどのマスメデ ィアの特性を考えると、先ほど余り強調しませんでしたが、キンメダイ80グラムという ふうに出て、その80グラムというのは一体どれぐらいなのかというのは、具体的にわか らない。80グラムは正しいかもしれないけれども、80グラムというのは具体的に、例え ば先ほどの視覚化したときに一切れ程度なのか、それとも一口なのか、それとももっと 大きいのか。大体一切れということになるんですけれども、受け取る側が80グラムとい うので何をイメージできるかという視覚化というのがきちんと情報を出す側からできる というのも非常に必要なことです。報告書自体にそれほど問題がなくて、伝え方という ところが非常に大きい問題に、この事例でもなったと思います。そういう意味でリスク コミュニケーションを、どのようにしていくかということについて非常に示唆的な例だ と思います。これで情報を出すことを控えるということのないように、私からもそうし ていただきたいというふうに思いました。 ○林座長  どうもありがとうございました。  どうぞ。 ○大山構成員  今の皆様のお話は全くそのとおりだと私も思っております。本当に伝え方の問題だろ うというふうに思っておりますが、今回この判決から何を学ぶのか、今後どう生かして いくのかというところを少し考えたいなと思ったんです。  この資料をいただきまして、最初に思ったのが予防原則ということがすぐに頭に思い つきます。ですから、危険が疑われている食品を、もしそれが本当に問題があるんなら ば禁止しなければいけないということは当然だと思います。  だけれども、予防原則の場合には、それだけではなくて、もしそれを禁止してしまっ た場合には、逆にどのような影響が出てくるのかという両サイドの予防原則というもの が検討されていなければいけないんではないかなと思います。危険の可能性があるから 禁止するということだけではなくて、禁止してしまったときに、逆にどんな影響が出て くるのかなというようなことを、やはりそういった予防原則も大事なんではないかなと いうようなことを思います。  今日の新聞に、カラスの例があったんです。カラスを捕獲していったときに、ハトが 増えて、ハトの糞からいろんな病気が広がっているというようなことが今日の新聞に出 ておりました。  1つのことをやったときに、次にどんなことが出てくるんだろうかと、反対側のこと も予防原則の中には考えておかなければいけないんじゃないかなということは考えた次 第です。  特に日本の場合には、リスク評価の歴史が浅いですから、リスク評価の結果に基づい た政策というものが、そういった習慣がないと思っています。食品安全委員会の方では 食品安全影響評価されていても、リスク影響評価というのはほとんどされていないんじ ゃないかなと思います。この通知を出したときに、どういうようなマイナスのことが出 てくるのかということも、反対の影響がどう出てくるかということも考えてみる必要が あるんじゃないかなというふうに私は思っています。  昨今、食品メーカーの中で大きな課題になっておりますのは、残留農薬ポジティブリ スト制ということがあるんですけれども、それに対して基本的に否定するつもりは全く なくて、より安全なものを求めていく姿には全く問題ないんだと考えています。  だけども、もしあの制度が出たときに、どういうことが起きるのか、食品メーカーで どんなことが起きてくるのかと、その辺の影響の大きさということも、やはり予防原則 の中では考えてもらいたい。リスク評価を考えてもらいたいというようなことを強く感 じています。  ですから、データベースが十分ない、例えば残留農薬一律基準が0.01ということで決 まるとしたときに、そのデータベースはほとんどないと思っています。その中で、もし それができてしまったときに、実際問題調べてみたら基準をクリアーできないかもしれ ない。別に、我々は悪意を持っているわけではないんだけれども、結果としてそうなる 可能性があるんだと思うんです。  ですから、そういったときに当然回収というようなことになってきますから、そのこ ともきちんと影響評価を考えてもらいたいなというふうなことは思っています。  今回、リスクコミュニケーションにどう生かすかという中で、この判決どおりだと私 も思います。今、先生方がお話しいただいたように、私もそのとおりの問題だからその 辺をきっちり伝えればいいんだろう、正しく誤解がないようにお伝えすれば問題ないと 思います。ただ、こういった判断、判決から予防原則がすぐ思い浮かんで、ただ予防原 則は両サイドからもうちょっと見てほしいなという要望を私は感じた次第です。 ○林座長  どうもありがとうございました。  ほかになければ、1つだけ意見を述べさせていただきます。今回は調査方法にも問題 はないし、疫学的な知見からの推論にも問題ないということはですので、リスクコミュ ニケーションのところに問題があるということは、どなたも考えることだと思います。 その意味で、この問題をリスクコミュニケーションの課題に取り上げられたということ は正しいと思います。  そこで3点ほど伺います。原因探索について実施された試験・研究のデータから特定 の施設から特定の日に出荷されたものが問題であって、この施設から出たものでも、そ れ以外のものについては問題はなく、他の生産施設から出たものについても安全性に問 題はないという結論が得られています。この点はもっと明確に示す必要があったと思い ます。  次に、重大な食中毒事件の拡大防止に役立つために、この情報公開をしたというニュ アンスで書かれておりますけれども、特定の施設の特定の期日に出荷されたものだけが 本当に問題になるんだとすれば、この情報公開は中毒の拡大防止にはつながらないはず です。その点、論理に矛盾があるように感じたのですが。  もう一つの問題は、汚染メカニズム、保管条件についての影響の検討についてです。 この検討によると、O157に汚染されたかいわれ大根、温度管理が悪い条件下で長時 間放置すると菌が増えてます。しかし、この検討には、最初のO157の菌の汚染がど こから起こったかということについては何も触れていないです。これについて触れてい ないとすると、特定の生産施設のやり方が問題だというふうに取らざるを得なくなりま す。その点がリスクコミュニケーションの問題と思います。  最後に、今回の問題は、今後の食品衛生の改善に反映されなければならないと考えら れますが、この点について行政の方にお聞きしたいと思います。  以上です。 ○高原企画情報課長  座長からも御指摘があったわけですけれども、私どもは当時の対応としては、非常に 大きな社会的な混乱なり不安の中で、限られた時間の中で最大限の努力をした対応だっ たろうと思っております。しかしながら、今回の司法の最終的な判断というのは重いも のであり、これを今後につなげていく必要があるだろうと考えています。  基本的な受け止め方としては、私どもにとって非常に厳しい内容ではありますけれど も、今後の対応としては迅速な情報公開を推進するという基本的な考え方、基本的な軸 足は全く変えるつもりはないということでございます。  そういう前提に立って、言わば方法論も含めて、どういう工夫なり改善点が考えられ るかということを、今回のケースを教材にして考えていかなければならないと思ってい ます。  例えばということで言いますと、金川先生からコメントをいただいているわけですけ れども、恐らく、今後とも大規模な食中毒事件の発生に代表されるような緊急事態とい うのは出てくるんだろうと思います。  その際に、いわゆる疫学的な手法を使って、原因を究明なり推測していくという手法 というのは必ず出てくるんだろうと思いますが、そういう中で、金川先生から御指摘い ただいているような、例えば確立論の話はわかりにくいから、徹底的にわかりやすく伝 える必要があるという点は、改めて整理しておく必要があると思っております。  ほかの先生方からも御指摘があった点や、あるいはマネージメントの全体の中でコミ ュニケーションというのをきちんと位置づけてやっていく必要があるという点について も、私どもももう少し勉強して、今後につなげていきたいと思います。  金川先生は、クライシスコミュニケーションというふうにおっしゃっているわけです けれども、こういう緊急時の対応と、今日もお話が出ましたけれども、いわゆるデイリ ーな、あるいはベーシックなリスクコミュニケーションというのを少し切り分けて考え る必要もあると思っていますが、またこの場以外でもいろいろお気づきの点があれば御 指摘いただいて、我々も少し整理をし、最終的な成果物の中に、盛り込んでいければと 思っております。  以上でございます。 ○林座長  ありがとうございました。今後も迅速な情報公開を適切に実施するという方針は変え ないとの意見でしたが、その適切というところが重要だと思います。だから、先ほどの 確率論をもう少しわかりやすく説明するというのも1つですけれども。  それから、一つお聞きしたいのは、こういうようなO157の事例についての国外の 情報の調査は、どの程度行われたのでしょうか。  その他に今回、いろんな調査、研究、試験をやっておられますけれども、最初の汚染 の発端については何も触れていないんです。  例えば、流通には特別の問題は何もない。それから施設でのいろいろな作業について も問題はないように受け取れます。そうしますと、最初の汚染はどこから始まったかと いうことがわかりません。  全部消去していきますと、最初の汚染は種子にある可能性があるように思われます。 もしこれが本当だとすれば、やはり今後の行政の問題としては、やはり種子についての トレーサビリティーを考えなければいけないと今考えられますが、いかがなんでしょう か。 ○広瀬企画情報課長補佐  今、トレーサビリティーという話がありましたけれども、生鮮物になってきますと、 やはり牛肉は1つの個体から切り出されてきていますが、かいわれは一本一本が別個体 です。  そういう意味では、種子をトレースしていくというのは、かなり難しいのではないか という印象がありますが、ただ、ものの流通の流れということで、例えば生産物を加工 業者にどういうふうに納入されて、いつ、どういうロットで入ったかとか、それはこの 間の食品衛生法の改正の中でも記録、それから帳簿とかの管理というようなことで、な るべく食中毒が起きたときに、トレースバックできるように各業者において、そういう 記録を残してくださいというようなことで指導をお願いしています。 ○林座長  それはやっておられるわけですね。 ○広瀬企画情報課長補佐  はい。 ○林座長  それは結構なことですね。ほかに何か御質問はございませんでしょうか。  どうぞ。 ○高原企画情報課長  種の問題については、後日一定の対応なり、公表なりもしているということですの で、その辺りの情報は各先生方には後日提供させていただきたいと思います。 ○林座長  配付資料を読んでみますと、種についての検討がほとんどないように受け取られま す。情報がほとんどないからです。多分、多くの構成員の方は気づいておられたんでは ないかと思いますので、よろしくお願いいたします。  ほかに何かございますか。 ○林座長  そういたしますと、議論すべき点はあると思いますが、次の機会までにいろいろ考え ていただくとして、今回の意見交換会を終了させていただきまして、事務局の方にお返 しいたします。 ○広瀬企画情報課長補佐  ありがとうございました。次回ですが、先生方の御都合がよろしければ、2月7日の 午後を考えております。  具体的には、2時以降になるか、3時以降になるかということはあるかと思います が、いかがでしょうか。  それから、本日欠席の先生もいらっしゃいますので、正式にはその方々の確認も含め て、きちんと確認が取れた上で、正確なものについては先生方へお伝えしたいと思いま すが、今の段階では皆様いかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。 ○岩渕構成員  5時半までに終わってほしいです。 ○広瀬企画情報課長補佐  わかりました。では、またほかの方も含めまして、正式には後日ということにいたし ます。 ○林座長  もし、ほかになければ、本日の研究会はこれで終了させていただきます。  どうもありがとうございました。                                     <了> 照会先:医薬食品局食品安全部 企画情報課 内線(2493、2452)