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厚生労働科学研究に関する意見の概要(II)【ナショナルセンター】

未定稿

1.社会的背景と厚生労働科学研究の使命について
項目 概要
社会的背景
(1)社会構造の変化
急速な少子高齢化の進展
子どもを持たないカップルの増加等により予想される小児疾病構造の将来的な変化
(2)社会生活の変化
ライフスタイルの変化に伴う結婚年齢および出産年齢の上昇
引きこもりや自殺の増加等のこころの問題の表面化
(3)医療技術の進歩
新たな医療技術開発と臨床的エビデンス集積の必要性
生殖医療技術の進歩
難病に関する診断技術の向上と対照的な治療法開発の遅れ
幹細胞治療や遺伝子治療などの開発の急速な進展(臨床レベル導入段階)
(4)新たな脅威
感染症やテロ対策等健康危機管理に関する問題の表面化
研究の使命
(1)国民の健康確保
国民が求める「安全・安心」の確保のために、我が国のライフサイエンス施策の中核的役割を担うこと
国民の健康保持・増進 (単なる科学技術の発展・振興ではない。文部科学省・科学研究費等との相違点。)
将来の疾病構造の予測とそれに基づく医療政策の推進
安全で安心できる医療の推進、高度で先進的な医療技術の提供の推進
生殖細胞の発生から始まるヒトの一生の健康支援、健全な次世代の育成
(2)政策エビデンスの確立
厚生労働行政の政策に科学的根拠を与えること
科学的根拠の入手・検証・活用による情報公開の推進や意志形成過程の透明化
先駆的な診断・予防・治療方法開発のため臨床応用の基礎となる基礎的分野の研究遂行
QOL向上のための方策の開発・検証・評価・応用
学問的には新規ではないものの、一般社会で汎用されている科学技術の検証的研究の実施
質の高い臨床研究の推進による国際的なEBMに関する情報の発信支援
限られた資源(人材、賃金、設備)の効率的活用と社会的公平性の担保を目的にした研究推進


2.これからの厚生労働科学研究に関する基本的考え方について
項目 概要
基本スタンス
それぞれの研究領域の中で独創性、先端性の高い科学を推進することが「突破口」を作る。
研究成果が保健医療福祉施策へと反映されることを前提とした研究課題を設定することが重要。
政策立案や政策医療に沿った内容に関する重点的研究が厚生労働科研の特徴。
国民の健康・安全に直結するエビデンス、政策展開への連接、保健医療情報の解析、予防医療・先端医療の応用・普及、生活上の高度な安全・安心の確保等の観点を重視。
厚生労働科学研究は、厚生労働省の所掌に沿ったものであることが必要。
目的・目標を明確化し、浅く広い文科省の科研費との違いを明確にすることが必要。
課題の適切な選定のためには、専門家が十分に現状の分析と今後研究を進めるべき方向を検討するとともに、選定と評価の前提となる、事業ごとの目的、各研究の目的を明確に事前に定義することが必要。
政府の科学技術政策における位置づけ
文部科学省科学研究費と重複しないよう調整しつつ、基礎研究の充実にも努めるべき。
ナノメディシンといった大型プロジェクトや医療機器開発、国際間の共同研究などの推進では他省庁等と連携を図るべき。


3.これからの厚生労働科学研究の体制の在り方について
項目 概要
研究の枠組み
我が国の臨床的エビデンスを作るため、民間の研究資金による枠組みでは実施が困難な大規模で長期間の研究も含め、ミッションと成果を明確にした上で、共同研究を効率的に進める戦略的な体制により、確実に成果を達成することが必要。
競争的環境で実施すべき研究開発課題と指定型研究で対応すべき研究開発課題の枠組を再考することが必要。
研究評価の在り方
社会医学研究が過小評価されているとの意見もあることから、課題毎に行政的基準と学術的基準を予め明示する等、評価基準を明確にする必要がある。
研究の評価は、行政施策への貢献度に重点を置き、論文数や学会発表ではなく、国民の健康・福祉施策への貢献の観点から重点的に評価すべき。
長期に及ぶ研究は中間報告を簡素化するなどの見直しが必要。
厚生労働科学研究の研究成果を審議会や政策検討等でより積極的に活用するよう努める等、研究者のモチベーションを高めつつ責任感を持たせることも重要。
課題・分野設定の在り方
現在の国の研究事業は短期目的達成型の傾向が強く、競争的であることが求められるが、厚生労働科学研究においては、これを基本としつつも、課題選択と研究費配分においては研究の目的と我が国の医療等の実情を踏まえる必要がある。
独創性・先進性ではやや低いと思われる課題であっても、政策的に国が率先して取り組むべき課題(政策医療等)、他省庁の研究スキームでは対応できない分野については厚生労働省が継続的に支援すべき。
EBMに結びつく研究、政策医療を推進する臨床研究、安全・安心のための医療体制構築など実践的医学研究の支援を重視した採択方式とすべき。
申請事務・交付事務
厚生労働科学研究の予算執行が、文部科学省科学研究費より著しく遅い現状を改善する必要がある。
研究員の採用やシステムの構築などに支障を来しているため、複数年度の採択や、事務処理プロセスの簡素化(電子システムの導入等)等による、繰越手続の簡素化も求められる。
初年度に払い込まれた委託費が年度を超えて使えるようする等、実情に適した予算執行の弾力化が必要である。
研究事業管理
研究の目的を良く理解した上で学術的観点から適切に評価し、資金配分等を行う機能および人員(プログラムディレクター、プログラムオフィサー;PO、PD)を備えた組織(ファンディングエージェンシー;FA)を整備する必要がある。
FAを国立高度専門医療センターが担うには、1)研究費の企画・配分業務の位置づけ、2)必要な人員・予算の確保、3)本省と国立高度専門医療センターとの役割分担の明確化、が必要である。
FAに関して、本省はFAの監督や全体の企画調整等に当たり、各FAは得意とする分野について研究費配分を行うようなシステムの構築が必要である。
translational medicine等、特に重点疾患を対象とする分野については、各ナショナルセンターが専門分野に対して責任を持って、研究全体の企画・調整や研究資金の適正配分等を行い、運営の効率化を図る。その際、多施設協同研究を中心とした研究班、ミッションを特化し明確にした研究班・組織を重視する。
体制強化
基礎研究の成果から臨床応用可能なプロダクトを創出するためのプラットフォームの構築が必要である。
採択・審査・評価のプロセスを適切に行うため、情報収集、戦略立案から審査、評価に至る一貫した体制を整える必要がある。
疾患研究においては大規模コホートを含む分子疫学研究、トランスレーショナルリサーチ、基礎研究の成果を応用した新たな医療を開発するための基盤整備を含めた研究開発の推進が必要である。
大規模臨床研究を行う上で必要な全国規模のデータベース共有化を図る必要がある。併せてデータマネージメント・センターの設立が望まれる。
大規模な臨床研究では、多くの優秀な研究補助者が必須であり、適切な支援が求められる。
推進事業については、本体研究と推進事業の規模や期間に整合性がないなど、人材の確保に支障が生じている。
産学官の連携を進める上で、企業等から研究費を受け入れて共同研究が実施出来るように規程を見直す必要がある。
人材育成
各研究分野毎に、研究の企画立案、進行状況や内容の評価及び採択等の一括的管理を行う専任担当官(PD、PO)を置き、研究の振興を図る必要がある。
説明責任
PD、POが備えるべき要件及び養成プログラムを明確にし、研究者がPD、PO業務に交代で従事できる組織体制が必要である。
研究成果がどのように行政施策に反映されたのか、国民に対し適切に還元されたのか、などについての評価を踏まえた研究事業の運営が必要である。
研究成果を研究者間で共有するだけでなく、分かり易い形で広く国民への広報に努める必要があり(例えば、一般向けのパンフレット作成、インターネット等の活用、マスコミへの働きかけ等)、専任担当官が計画的に実施すべき。


4.具体的な課題等について
心臓病、脳卒中等をはじめとする生活習慣病の克服(予防から治療法開発にわたる取組の充実)のための研究
我が国における新たな医療技術開発と臨床的エビデンスの作成とその普及のための研究
厚生労働政策立案とその検証のための研究
限られた医療福祉資源の効率的、経済的活用と社会的公平性の担保を目的にした医療政策研究
引きこもりや自殺の増加等のこころの問題に取り組む研究
感染症やテロ対策等健康危機管理に関する問題に取り組む研究
質の高い、効率的な国際協力研究を推進するための海外拠点の設置
次世代育成支援(リプロダクションサイクル支援);リプロダクションサイクルを円滑に回転させるための研究
新規治療法の標準化のための研究
母子保健データベース構築と情報発信のための研究
出生コホート、成育難治性疾患データベースと成育疾患検体バンクの構築
わが国における小児疾病構造の将来的な変化を予測する研究
生殖医療技術のアウトカムを把握し、問題点を科学的に解明する研究
難病診断技術の向上に伴う治療法の開発
老化・老年病に関する研究の推進と、その成果に基づく老化の制御・老年病の克服のための研究
高齢者の権利擁護等の社会科学的検討及び保健・医療・福祉政策の連携方策の確立のための研究
高齢者に特徴的な疾病・障害の予防、診断及び治療並びにリハビリテーションについての研究
高齢者の自立促進介護ケアの確立、介護予防プログラム等の開発等の研究


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