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161-衆-内閣委員会-8号 平成16年11月24日

平成十六年十一月二十四日(水曜日)
午後一時一分開議
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(略)

○松下委員長
 発達障害者支援法案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、先般来理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得た次第であります。
 この際、本起草案の趣旨及び内容について、私から御説明申し上げます。
 まず、本起草案の趣旨について御説明申し上げます。
 自閉症を初めとした発達障害者に対しては、社会的な理解が十分でなく、発達障害者及びその保護者は大きな精神的負担を強いられており、その支援は喫緊の課題であります。
 そこで、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために、発達障害症状の発現後、できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図ることを内容とする本起草案を提案することとした次第であります。
 次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、発達障害の定義を定めるとともに、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにすることとしております。
 第二に、児童の発達障害の早期発見、早期の発達支援、保育、教育等に関し必要な施策について定めることとしております。
 第三に、都道府県知事は、発達障害者支援センターを指定し、発達障害者に対する支援業務を行わせることができることとし、その業務の内容を定めることとしております。
 第四に、国及び地方公共団体は、発達障害者支援を行う民間団体に対して支援を行うとともに、国民に対する啓発を行うこととしております。
 なお、この法律は、平成十七年四月一日から施行することとしております。
 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

○松下委員長
 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。小宮山洋子君。

○小宮山(洋)委員
 この発達障害者支援法は、現在支援の谷間に置かれている自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、ADHD、学習障害、LDの方や保護者の皆さんたちの悲願であった支援のための法整備の第一歩となるものだと思います。
 この法律を意義あるものにするためには、一つは、すべての国民が発達障害を理解するようになること、そしてもう一つが、実際に支援が受けられるようになること、支援の実質的な中身だと思います。
 幾つか伺いたいと思いますが、まず、専門家の育成について伺っていきたいと思います。
 まず、医師ですが、現在、発達障害を診断できる専門医が非常に少ないということがあります。専門医の育成を全国でできるようにすることが必要です。少なくとも十万人に一人程度、つまり、一千人くらいの専門医の育成が必要だと考えられていますが、その育成を具体的にどのように行うつもりか、伺います。

○塩田政府参考人
 我が国では、発達障害など、子供あるいはその親の方々の心の問題に対応できる専門的な知識あるいは技能をお持ちの児童精神科医でありますとか小児科医というのは極めて少ない現状にあると認識しているところでありまして、この法律の趣旨を実効あらしめるためには、専門的知識を有する人材の確保が大変重要であると考えているところでございます。
 こうしたことから、厚生労働省におきましても、子供の心身の発達障害あるいは心の問題を抱える子供の診断、治療あるいはケアを適切に行うことのできる児童精神科医あるいは小児科医の確保、養成が非常に大事だと考えているところでございます。
 こうした観点から、一つは、平成十六年度内には検討会を開催いたしまして、小児科及び児童精神科の領域における専門医の確保対策について具体的な検討を始めたいと思っております。また、平成十七年度の厚生労働科学研究におきましても、子供の心の問題に専門的に対応できる医師などの確保、育成に関する研究の実施、養成プログラムの開発を行うことを予定しておりまして、現在、研究者に対しまして公募を行っているところでございます。
 いずれにいたしましても、こうした取り組みを速やかに進めまして、必要な養成、研修を実施しまして、発達障害などに対する専門的な技能あるいは知識を持つ医師の確保に努めてまいりたいと考えております。最低千人ぐらいの専門家の医師が必要だという御提案は大変貴重な御意見だと思っております。
 いずれにいたしましても、この法案が成立することによりまして、専門の医師の質の面、量の面での確保に努めてまいりたいと思っておりますし、この法律の制定によってこうした動き、人材の確保につながればと思っている次第でございます。

○小宮山(洋)委員
 この法案は皆様の声を受けて議員立法でつくられているわけですが、これから検討会をする、これからプログラム開発をするというのは非常に遅いと思います。省庁としてしっかりと取り組んで早急にやってほしいと思います。
 次に、母子保健にかかわる保健師あるいは保育士、幼児教育にかかわる関係者、また障害児の療育の関係者につきましても、一定以上の専門性を持って支援のプログラムが提案できる専門家の育成を全国でできるようにすることが必要だと思います。
 現在、自閉症・発達障害支援センター支援員の研修は、知的障害のない発達障害児者の支援の実績を持たない秩父学園で研修しているということですが、この現状ではなかなか無理があるのではないかという指摘もあります。どういう具体策を考えているのか、伺います。

○塩田政府参考人
 保健、福祉、医療、保育、いろいろな現場で活躍する専門家の養成、知識の普及が非常に重要だと考えているわけでございます。これまでも、保健師等に対するパンフレットの手引書の配付でありますとか、あるいは、先ほど御指摘ございました国立秩父学園でさまざまな地方自治体の職員等に対する研修を行ってきたところでございます。
 平成十七年度の概算要求におきまして、新たな取り組みとして、こうした法案が成立されるという動きも見ながら概算要求したつもりでありますが、全国の指導者に対する研修でありますとか、あるいは保健師、保育所、保育士等に対する実務研修なども新たに来年度からスタートしたいと考えているところでありまして、その予算の確保に全力を尽くしたいと思っております。
 また、先ほど、例えば秩父学園が知的障害のない自閉症を対象としていないというような問題の御指摘がございましたが、実際の研修の企画立案に当たりまして、外部の関係の専門家の御意見を聞くとか、あるいは実際の研修の講師にいろいろな分野で活躍の方を招くとか、いろいろな工夫をしていくことが必要だろうと思っております。また、国立秩父学園のあり方につきましても、この法律の制定を見まして、きちんとした機能が果たせるような見直しも検討していきたいと考えております。

○小宮山(洋)委員
 ぜひ、言われたようなことを早急にやっていただいて、いろいろな角度から、今あるものもいい形で活用するし、新たに必要なこともしっかりやっていくということをお約束いただきたいと思います。
 そして、学校教育でも、自閉症、ADHD、学習障害の障害特性を正しく理解して、子供ごとの支援プログラムの作成ができる教員の育成が急務だと思います。また、障害に適した職業指導ができる専門家も必要だと思います。例えば、その発達障害についての学習を教員免許の中に位置づけるとか、具体的に、学校教育の中での専門家の育成はどのようにされていくでしょうか。

○山中政府参考人
 発達障害のある子供さんたちへの教育に関しましては、自閉症あるいは学習障害、注意欠陥多動性障害等、障害の多様化あるいは複雑化に対応いたしまして、教員としても高度かつ専門的な知識、経験というものが求められるところでございます。
 このため、例えば国立特殊教育総合研究所を中心といたしまして、発達障害の児童生徒への対応に指導的役割を果たします教員、これを対象といたしました研修、あるいは、各学校で学校の内外の関係者あるいは保護者との連絡調整を行う特別の支援教育コーディネーターの養成といった指導的な役割あるいは中心的な役割を果たす教員の研修などの実施を行っているところでございます。また、これらの研修の中で職業指導についても取り上げているところでございます。
 また、教員養成課程の中におきましては、教育の基礎理論に関する科目という中で、障害のある児童、幼児、生徒の心身の発達、学習の課程を含めて取り扱うことになっておりまして、こういうものの中でも発達障害に関する内容が取り扱われているというところでございます。
 いずれにしても、今後とも、関係機関と連携しながら、障害のある児童生徒への職業指導といった点も含めまして、しっかりとした研修を行って、教員の専門性の向上というものに努めてまいりたいと考えております。

○小宮山(洋)委員
 その教育の基礎のところで、障害についての教育も教員免許の中でされているということですけれども、現在もそれが十分だとは言えない。特に、今まで認識のなかなか徹底していなかったこの発達障害についてもしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 次に、自閉症を初めとした発達障害への支援、実質的な支援について幾つか伺いたいと思います。
 この発達障害は、各種の障害と比べて、運動機能や知能には問題がなく、困難性が高くないと見られることが多いわけです。けれども、刺激への過敏性や突然のパニックなど、支援や介護が必要な場合も実際に多くあります。ところが、現在の支援費などでの制度では支援の困難性の評価が適切でないということが多いのだと思います。
 障害特性からくる生活上の困難性を正しく評価する仕組みをつくって適切な支援が受けられるようにする必要があると思いますが、そういう点について福祉政策の担当者の御認識はいかがでしょうか。

○塩田政府参考人
 ただいま議員から御指摘ございましたように、自閉症などの発達障害につきましては、一見してわかりにくいということとか、あるいは特定の事柄に強いこだわりがあるとか、あるいは他人とのコミュニケーションに大変な苦労があるとか、非常に対応が困難な方々であると認識をしているところでございます。
 昨年の四月から支援費制度が始まっております。この支援費制度におきましても、残念ながら、知的障害を伴う発達障害の方のみが支援費制度の対象でありますけれども、知的障害を伴う自閉症などの発達障害者の処遇におきまして対応の困難さを適切に評価するという観点から、一つは、施設支援費の障害程度区分において重度となるような評価ができるようにしているところでございます。二つ目には、行動障害があって個別的な支援が必要な方々について、強度行動障害特別支援加算費支給の対象にしているところでございます。
 また、先般、障害保健福祉施策の改革のグランドデザインを提案いたしました。この中で、施設サービスとか在宅サービスの見直しをすることになっておりますけれども、その中で知的障害を伴う自閉症などの発達障害の程度区分を設定するなど、適切な評価ができるような仕組みについて検討したいと考えているところでございます。
 いずれにしても、支援費制度などにおいて、自閉症などの対応の困難な方々についての正しい評価の仕組みについて、これからもその充実に努めてまいりたいと考えております。

○小宮山(洋)委員
 今、知的障害を伴うと言われたように聞いたんですけれども、知的障害を伴わない場合もあるわけですよね。だから、そういうさまざまな状況にある子供たち、そういう人たちに対する適正な正しい評価をする、そのためには、やはりその政策をつくられる方々がそういう認識をしっかりと持たれないと必要な政策ができないと思いますので、ちょっと今のお答えでは不十分かと思いますが、また同僚の議員が後でもいろいろな質問があると思いますので、先を急ぎます。
 次に、施設の問題なんですけれども、第一種、第二種自閉症児施設を初め、自閉症者を多く受け入れている入所施設、全国自閉症者施設協議会加盟五十七施設あると聞いています。さらに、最近自閉症者がふえている知的障害者施設などの状況を改善して、こうした施設を発達障害者援助の資源として積極的に活用してはどうかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

○塩田政府参考人
 御指摘のとおりでありまして、発達障害者の支援を行っていく上で自閉症児施設などの役割が大変大きいと思っておりまして、そこの施設の専門家の方々の活用ということが非常に大事であると思っておりますし、そういう施設を活用することで、身近なサービスとか御相談とかそういったことも発達障害を持つ方々あるいは家族にとって可能になると思っております。
 また、都道府県、指定都市の中核となる相談機関として自閉症・発達障害支援センターというものの整備を進めておりますけれども、このセンターと先ほど議員が指摘された施設との連携とか、そういったこともこれから重要だと考えているところでございます。
 いずれにしても、社会のいろいろな発達障害に対する理解あるスタッフとか施設、さまざまな社会資源を活用しまして、この法律の制定の趣旨がより充実したものになりますよう発達障害者の支援に努めてまいりたいと考えております。

○小宮山(洋)委員
 もちろん新しいセンターをつくることも必要ですが、今のいろいろな財政状況の中で新しいものをどんどんつくるというのは無理だと思いますので、やはりきめ細かいサービスを、支援を提供するためには、今ある社会的資源を有効に利用するということもしっかりと考えていってほしいと思います。
 次に、発達障害が現在の障害者福祉施策の谷間に落ちてしまっていて適切な支援が行われていないこと、それをきちんと理解されているでしょうか。
 現在の障害手帳制度では、手帳がないと支援が地域で受けられません。高機能自閉症、アスペルガー症候群、LD、ADHDの子供や成人に対する公的支援をどのような形で行っていくつもりなんでしょうか。精神障害者福祉手帳などの手帳の認定も受けられない発達障害者について、現行の手帳制度を変えるつもりがあるのか、地域で必要なサービスが受けられる仕組みづくりについて伺いたいと思います。

○塩田政府参考人
 現在、発達障害につきましては、御指摘ございましたように、既存の障害者福祉法制の対象に正面からはなっていないということ、それから、障害としての認識が社会一般に必ずしも広がっていないということで、その障害の発見でありますとか適切な対応がおくれがちであるということ、また、この問題に関する専門家が少なくてきちんとした対応がとりにくいといった課題がありまして、発達障害を持つ方々あるいはその家族の方々が地域での支援がなくて大きな不安を抱えていると認識をしているところでございます。こういう発達障害を持つ方々が地域の中で暮らしていけるためには、幼児期から障害の特性に応じたさまざまなサポートが必要だろうと思っているところでございます。
 その意味で、この法律ができることによりまして、例えば自閉症・発達障害センターを初めとする相談支援体制を充実することができるとか、あるいは人材の養成のきっかけとなって早期発見とか、保育や教育、いろいろな現場での支援が広がることが期待できると思っております。また、就業・生活支援センターなど、福祉と雇用の連携ということもこれから広がっていくのではないかと考えているところでございます。
 今後、この法律に基づきましてさまざまな取り組みをいたしまして、現行制度では、御指摘がありましたように、手帳を持っている方にはそれぞれの法律に基づくサービスが提供されておりますけれども、手帳を持たない方にとっては個別のサービスが受けられないという現状にございます。この法律に基づいてさまざまな取り組みをいたしまして、手帳を持たない方も含めて、発達障害を持つ方々に対するサービスのあり方、あるいは支援体制のあり方ということを検討いたしまして、今後の課題になりますけれども、そうした方々へのサービスの制度的位置づけについても検討してまいりたいと考えております。

○小宮山(洋)委員
 法律をつくっただけで実質的サービスが受けられなければ何もならないわけですから、この法律、随分いろいろ協議して修正を重ねてまいりましたけれども、最初は、思想はいいけれども、実際のサービスが受けられないんじゃないかという指摘もいろいろありました。そういう意味でも、今のような手帳を持たない人に対してもサービスが受けられるようにするという言葉だけではなくて、実際にどういうふうにして行っていくかをぜひしっかり詰めていってほしいと思います。また委員会でも、どのようになっているか質問を、後ほど、次の国会でもさせていただきたいと思います。
 次に、発達障害支援センターについては、年間二千五百万円の予算というふうに聞いています。現在、全国の二十カ所にしかないわけですけれども、全都道府県に設置できるのはいつを目標にしているんでしょうか。また、東京や大阪などの大都市では一カ所では十分ではないのではないかと思いますが、その点はいかがでしょう。

○塩田政府参考人
 平成十四年度から、地域で生活する自閉症などの発達障害に関する御相談に応じるということで、自閉症・発達障害センターの整備を図っているところであります。御指摘がありましたように、現在十九カ所あるということでありまして、今後その質的、量的な拡充が必要であると思っております。
 この法律ができることによって、そういう整備が加速度的に進むことを私たちも期待し、そのつもりで頑張ってまいりたいと思っております。
 自閉症・発達障害支援センターの予算でありますけれども、御指摘がありましたように、現在の予算では、相談支援を担当する職員一名、療育支援を担当する職員二名、就労支援を担当する職員一名の四名の方に必要な予算として、一カ所二千五百万円程度の予算が計上されているということでございます。
 御指摘がありましたように、これでは不十分ではないかという声があることも十分承知しております。この法案の施行後、実施状況とか、あるいはこの発達障害支援センターの事業の効果とか、いろいろなことを見きわめまして、予算のあり方についても検討していきたいと思っております。まずは、まだ十九カ所しかありませんので、全都道府県、全政令市に設置を急ぎたいと思っているところでございます。
 いずれにしても、この法案によって、今後自閉症・発達障害支援センターが質的にも量的にも拡充することを、私たちもその方向で頑張っていきたいと思っております。

○小宮山(洋)委員
 大体いつごろを目標にしているかと聞いたのですが。

○塩田政府参考人
 何年までにということは申し上げられないのが財政制約もあって残念ですけれども、できるだけ早く、数年のうちには、すべての都道府県、指定都市に少なくとも一カ所は設置できるように努力したいと思います。

○小宮山(洋)委員
 大体数年というのは二、三年ぐらいのところを数年というのだと思いますが、それでよろしいですか。

○塩田政府参考人
 そのような方向で努力したいと思います。

○小宮山(洋)委員
 しっかりと、これは議事録に残ると思いますので、またチェックをさせていただきたいと思います。
 そして、発達障害というのは非常に高い頻度で起こる障害だからこそ、まず、障害としてとらえる前に、子育て支援の施策として必要なサポートを受けられるようにすることが必要ではないかということを保護者の皆さんなどもおっしゃっています。子育て支援の担当者に対する発達障害と支援プログラムについての研修、どのように行うか、もう少しこれは広げた話なんですけれども、そのあたりも具体的な方策を伺えればと思います。

○塩田政府参考人
 発達障害児の方々に対しては専門的な支援が必要だという面がありますけれども、御指摘があったように、普通の子育ての中で、いわゆる育てにくい子供の子育てをどうするかという側面も有しておりますので、一般の子育て支援の担当の方々がこういう発達障害に対しての理解を深めていただけるということが大変重要であろうと考えているところでございます。
 発達障害児に対するいろいろな支援とあわせて、一般の子育て支援対策との連携も当然ながら必要であろうと思っているところでございます。これまで保健師等に対する手引書なども配付しておりますけれども、冒頭申し上げましたが、来年度予算の中で、新たに都道府県、政令市の行政担当者などに対する指導者の研修でありますとか、保健師、保育士等に対する実務研修の実施なども考えておりまして、こういう発達障害に対する理解を行政のいろいろな局面で理解されるスタッフをふやすべく努力したいと思っております。

○小宮山(洋)委員
 先ほど、専門家の育成についてはこれから審議会をつくってやるというような、検討会をつくってやるというようなお話でしたが、今言われたように、一般的な子育て支援の中でやるということは、そんな支援プログラムをつくるというほどの専門的な知識ということではなくて、認識があり、そのような必要なところへちゃんと連携がとれるようにしていけばいいわけですから、やろうと思えばすぐにできると思いますので、ぜひ、しっかりやっていただきたいと思います。
 次に、一般の人たちの認識とか啓発のことについて伺いたいんですが、再三申し上げているように、この発達障害、これは周囲の人たちからなかなか理解をしてもらえない、そして、育てていらっしゃる方も我が子のことがなかなか理解をできない、それで本人と家族は非常に苦しんでいらっしゃるという現状があるのだと思います。
 その発達障害児を育てる保護者を孤立させないということが、こうしたことが原因の虐待とか、非常に不幸な場合は無理心中などということもあると聞きますので、そうしたことを防ぐためにも重要だと思います。
 そのためには、社会全体、国民全体に対する啓発が急務だと思いますけれども、現状の認識とその啓発の方法、どのようにしていくのか、伺いたいと思います。

○塩田政府参考人
 御指摘がありましたように、発達障害を持つ子供にとりまして、社会にその障害の特性を理解してもらうだけで随分違うと思います。社会の周りの方々の理解があれば普通に暮らしていける方々であろうと思っております。
 ところが、発達障害について一般の方々の理解が必ずしも十分じゃないということで、例えば親御さんのしつけが悪いんだとか本人の性格が悪いんだといった、間違った、誤解が広がっているということでありまして、社会全体に正しい知識なり理解を広げていくことが最も大事な出発点であると思っているところでございます。
 こういうことにつきまして、厚生労働省といたしましては、一つは、保健、医療、福祉、教育、雇用などの専門家だけじゃなくて、社会全体が正しい理解をしていただくということが大事でありますので、例えば、ポスターでありますとか冊子を作成するでありますとか、シンポジウムを開催するなど、いろいろな形での啓発に努めたいと思っております。
 また、先ほど来議論になっております、保健、福祉、医療関係者など行政関係者あるいは専門家への研修も充実したいと思っておりますし、また、実際身近にある保育所などで、放課後クラブとか、発達障害者と一般の児童との交流を広げていくことでありますとか、企業などの職場における発達障害への理解の促進、あるいは、NPOなどでいろいろな活動を地域でされておりますけれども、そういう方々に対する支援など、いろいろな取り組みをこれからやってまいりたいと思っております。
 それから、こうした法律ができること自体も社会の理解を深める上では一つの契機になっておりますので、厚生労働省といたしましても、関係の方々と一緒になって、正しい理解が広まるように、そして発達障害を持つ方々が地域で普通に暮らせるような社会づくりを目指して、努力をしたいと思っております。

○小宮山(洋)委員
 最初に申し上げたように、この法律の目的というのは、実質的な支援が受けられるということとあわせて、国民が発達障害を理解するようになるという、アナウンスメント効果といいましょうか、啓発の効果があると思いますので、ぜひ、その点もよろしくお願いします。
 そして、発達障害への支援は、就学前から小学校へというように、一生を通じて支援をつないでいくことが必要だと思います。現在の縦割り行政、福祉では、保育園、小学校、養護学校、就労と環境が変わるたびに、ゼロから支援体制づくりを保護者みずからがやらなければならない現状があります。
 垣根を越えた支援体制をどのようにつくるのか、また、だれが担い手となってコーディネーターとしてつないでいく役割を果たすのか、これを厚生労働省、文部科学省に伺いたいと思います。

○塩田政府参考人
 発達障害者の方々への支援ということでは、幼児期、学齢期、青壮年期といった一人一人のライフステージに応じて一貫した支援が重要だと思いますし、また、保健、医療、福祉だけじゃなくて、教育、就労とか関係の分野の方々が協力して、これも一貫して支援をするという考え方が大事だろうと思っております。
 来年度の概算要求で発達障害者支援体制整備事業というのを要求しておりまして、これは都道府県レベルあるいは障害福祉圏域、地域レベルで福祉関係者、教育関係者が一緒になって支援チームをつくって発達障害者の応援をしていこう、そういう取り組みでございます。
 中央レベルでも、文科省とはこの法案をつくる過程で一緒にいろいろな勉強をしてまいりましたし、今後も支援については文科省と厚労省で協力していきたいと思っておりますし、現場のレベルでも、福祉サイド、教育サイドが垣根を払って、発達障害者への支援ができるように努力をしてまいりたいと考えております。

○山中政府参考人
 先生御指摘のように、発達障害のある子供一人一人のニーズに応じまして、また、幼稚園から小学校、中学校、高校、そういった発達段階に応じまして、それぞれの子供に合った支援を、また各段階連携しながら進めていくということは、非常に重要なことだというふうに考えております。
 文部科学省におきましても、平成十五年度から実施しております特別支援教育推進体制モデル事業というものを行っておりますけれども、この中でも、学校あるいは関係機関や保護者と連携いたしまして、乳幼児期から学校卒業までというものを通しました個別の教育支援計画というものを策定できないかということで、そのモデル的な事業を行っているところでございます。
 また、この個別の教育支援計画の中では、発達障害のある幼児、児童、生徒、子供の担任と、それから、それぞれ小中学校におきましては校内委員会というものを設けますが、そこで特別支援教育コーディネーターというものを設けまして、こういう方が中心になって保護者との連携あるいは関係機関との連携、十分意見を聞きながらその計画を立てるという形にしているところでございます。
 今後とも、厚生労働省との連携を密にいたしまして、発達障害者の方のそれぞれの障害に合った形で、総合的で一貫した教育ができますように、充実に努めてまいりたいと考えております。

○小宮山(洋)委員
 もう時間になりましたので終わりますが、厚生労働省、文部科学省、協力をしてやっていく、言葉だけではなくて、いろいろな場面でそういう言葉、きれいな言葉はたくさん伺います。けれども、実質的には、実際からすると垣根が依然としてあるんです。でも、受ける側は一人、同じ人なわけですから、言葉だけではなくて実効性のある連携した取り組みを、そして学校だけではなくて就労まで続くような、その方がトータル一生続いて支援が受けられるような仕組みづくりをぜひお願いしたいと思います。
 また、警察官への研修とか、地域の中で普通に暮らしていけるような研修体制など、せっかくつくる法案が十分な働きをするように最大限の努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。

○松下委員長
 次に、石毛えい子君。

○石毛委員
 民主党の石毛えい子でございます。
 本法案に関しまして、私は、障害を持つ子供さんあるいは成人に対する施策は、福祉や教育、労働その他さまざまな施策、制度が機能しておりますので、今回の質問は、本法案がそれらの施策を念頭に置いて、それぞれどのような関係にあって動いていることになるのか、そこに関心を寄せて、きょうは、この法案が成立いたしましたら実施に当たる省庁のうち、厚生労働省、文部科学省に質問をしたいと思います。
 そこで、早速厚生労働省への質問でございますが、法案の第二条「定義」は、「発達障害」の定義として、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」としております。
 この定義に関しまして、私は気になる点がございますので、それに触れて質問をしたいと思います。
 まず、発達障害という概括的な障害概念は、私はまだ未確立なのではないかというふうに受けとめているものでございます。アメリカでは、発達障害のうちに、知的障害、脳性麻痺も含まれております。また、私個人ではありますが、発達というスケールで、自閉の子供さんが呈する状態ですとかあるいは多動性の子供さんが呈する状態、そうしたそれぞれの子供さんが呈する状態を概括的に発達障害として概念化していいのかどうかということも、私とすれば違和感を覚えますということを率直に表明しておきたいと思います。
 しかし、私は、そのような状態を呈する子供さんが二次障害を受け、あるいは保護者の方も大変な厳しい状況に置かれている、そういう実情をお伺いし、また、私の知人、友人でもいらっしゃるということを想起すれば、そうしたことを思えば、支援を必要とされているというその実情は、私たち政治に携わる者あるいは社会がきちっと受けとめなければいけないと思いますし、そうしたことを考えますと、私は、この法案の名称をむしろ、自閉症、アスペルガー症候群その他というふうに具体的に法定化されている、そのことに特定障害者というような概括的な規定を置いて支援法としていただいた方がよかったのではないかというふうに考えるものでございます。
 「その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定める」ということになりますと、これから先、政令は内閣の手に移ってまいりますし、その具体的な作業は各省庁が進めていくことになりますので、私ども立法府にかかわる者がそのことに対してきちっと意見表明をする機会がどのようになるのか、そうしたことにも不安を覚えるというところでもございます。
 そこで、この政令で定めるということ、恐らく、検討会ですとか場合によっては審議会とか、さまざまな最終的にここに法定化している具体的な障害以外の障害を定めていく場合に手順を踏むのだと思いますが、その手順についてどのような透明性、公開性が図られるのかというようなことも受けとめていただきつつ、御答弁をお願いしたいと思います。

○塩田政府参考人
 まずは、発達障害という概念のとらえ方ですけれども、一番広い意味で発達障害をとらえるとすれば、例えばアメリカに発達障害支援権利章典法というのがございますが、この法律は、議員の御指摘のように、身体障害、精神障害も含めた、障害の別を問わない重度の障害者に対する支援法という形をとっているところでございます。
 後ほど議論があろうと思いますが、我が国の法制は、個別分野の法律をつくって対応してきたという経緯がありまして、最終的には、アメリカの法制度のように、全体を包括するようなサービス法を目指すべきだろうと思っておりますけれども、今回の発達障害者支援法の考え方というのは、現時点で緊急性を要する制度の谷間にある方々をいかに支援していくかという観点からまとめていただいたものと理解をしているところでございます。
 ということで、その対象範囲につきましては、法律上は、必ずしも知的障害を伴わないけれども他人との人間関係を築くことが困難であるなどの特徴を持っている脳機能障害で早期に発現するものということで、自閉症でありますとかアスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などが例として挙がっておりまして、さらに政令で対象範囲を決めるという法体系になっているところでございます。
 政令の要件は、一つは自閉症などとの類似性があるということ、それから脳機能の障害であるということ、それから通常早期に発現する、こういった法律上の要件だろうと思いますけれども、どういう方々を対象にするかについては、これからの障害者福祉法制をどうしていくかということも念頭に置きつつ、今回の発達障害者支援法案の趣旨も踏まえまして、今後、専門家を初め関係の方々、広く多くの方々の意見を聞きまして、今回これから行われる国会での御審議も参考にいたしまして、対象範囲については、丁寧な手続を追って公明なもとで政府として政令を定めていきたいと考えているところでございます。

○石毛委員
 もう一度確認させていただきたいのですけれども、今回の議論も踏まえてというように御答弁くださいましたけれども、政令で確定していくまでのプロセスというのは、例えば、今こういう状態を判断してこういう障害の方々を新しく政令によって発達障害に加えていきたいというようなことは、内閣で確定される前に、例えば公にされて、私どもがそのことについて意見を言っていくというような、そうした公開性、透明性というようなことは担保していただけますでしょうか。

○塩田政府参考人
 いろいろな機会を通じて、御意見を伺う場は設定したいと思っております。それから、政府でいろいろな政令などを定める際にはパブリックコメントという制度もございますので、この政令についてもパブリックコメントをして、いろいろな方々の御意見を聞いた上で政令を定めていきたいと考えております。

○石毛委員
 わかりました。
 次の質問でございますけれども、先ほど塩田部長が多少触れられていたと思いますけれども、次期通常国会で、知的障害、身体障害、精神障害の三障害に共通する福祉サービスを総合する、仮称ではございますが、障害者福祉サービス法案を提出されると伺っております。
 その法案の構成あるいは審議、成立に至った運びを想定しますときに、この法案との関係はどのようになるのでしょうか。お聞かせください。

○塩田政府参考人
 我が国の障害者に対する福祉に関する法制度は、障害の種別ごとに法律がつくられて発展してまいりました。現在は、知的障害者については知的障害者福祉法、身体障害者については身体障害者福祉法、精神障害者については精神保健福祉法という三つの法律がありまして、それぞれの経緯の中で、サービスの内容とかいろいろな体系もまちまちという現状にございます。
 しかしながら、こうした障害を持つ方々が地域で暮らすという意味では、サービスについていろいろな共通性がありますし、障害の種別を超えて、地域で生活するための支援が必要という観点から、次の通常国会に、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神障害者福祉法の福祉サービスの共通部分について一つの法律にまとめることによって、障害者の方々によりよいサービスが提供できるような制度の仕組みにしたいということで、現在検討を進めているところでございます。
 今回の法案で対象となる発達障害の方々ですけれども、知的障害を伴う場合には知的障害者福祉法の対象のサービスを受けられる、あるいは、精神保健福祉法の精神保健手帳を申請された方はそのサービスを受けられるという制度になっております。そういう個別の法律の対象にならない方は、今度の法案ができることによっていろいろなサービスとか取り組みに着手することができますけれども、現段階では、三つの法律の適用にならない方についてのサービスは制度化されていないという課題があります。これについては、この法律の施行の状況を見ながら、将来の課題として、ほかの三障害と同じようなサービスの対象になることが必要だろうと考えているところであります。
 最終的には、先ほどの御質問にお答えしましたように、障害の別を問わず、発達障害も含めて一つの法律のもとで共通の福祉サービスができるような法制度を目指すべきと考えておりますが、今度の法案は、それに向けての一つのステップとして位置づけられるのではないかと考えているところでございます。

○石毛委員
 私の質問の趣旨からいいまして、塩田部長が今福祉サービス法の範疇で御答弁をくださったのは、そのとおりだというふうに受けとめます。
 ただ、発達障害者支援法は、構成が多少変わっておりましてといいますか、むしろ総合的でありまして、教育が入っておりましたり、就労が入っておりましたり、その他諸機関との連携が入っておりましたりしまして、その構成から見れば、障害者基本法とダイレクトに対応する、障害者基本法の特別法というような受けとめ方もできるのではないかというふうに思っております。
 ただいますぐに私がどちらがどちらというふうに申し上げるつもりはございませんけれども、塩田部長が御答弁くださいました、やがて、総合的な障害者福祉サービス法に発達障害と呼ばれている方々が制度としてお入りになるとしても、もう一つ、さらに大枠の総合社会支援法、仮称でございますけれども、私の表現でございますけれども、そうしたところも視野に置く必要があるのかなというような思いはして伺っておりました。
 次でございますけれども、申し上げるまでもなく、先ほど来の質疑の中にも登場してきておりますように、日本の制度としての障害者サービスというのは手帳制度をベースにしております。これが現状ではいろいろとそごを来してきているという実態があると思いますし、国際的にも障害の定義は、御存じのように、WHOでは変更している、その変更の内容は、一言で言えば、医療モデルから社会モデルへ変化をするというような動向となっております。厚生労働省は、この動向についてどのように認識をしているのでしょうか。
 そしてまた、障害者基本法では、障害の種類、定義として難病は入っておりませんけれども、例えば、第二十三条では、難病等に起因する障害のある人に関して施策の推進を規定しております。また、附則にも難病に関する取り組みは規定をされているところでございます。
 そうした難病の方々の状態を思い起こしつつ、病気や医療モデルに基づく障害の種類や程度に対応して施策を実施するのではなくて、日常生活や社会生活で生じる障害にどのような支援が実施されるべきかという視点、こうしたところから障害者施策、制度が再構築されるべき時期に至っているものと私は考えるものでございますけれども、いかがでしょうか。

○塩田政府参考人
 国際的に見て、障害の定義が医療モデルから社会モデルを目指しているということはおっしゃるとおりでありまして、我が国の障害福祉施策もそうした方向を目指すべきであろうと考えているところでございます。
 ただ、いろいろな法律ができて、手帳制度ができて、それぞれいろいろなところで深く定着をしておりますので、直ちに医療モデルから社会モデルというわけにはいきません。技術的な検討とか、あるいは関係者のコンセンサスとか、いろいろな準備が必要だろうと思っております。
 また、難病の方々が障害者基本法の身体障害、知的障害、精神障害という状態になれば障害者福祉法の対象になっておりますし、難病の方々に対する福祉サイドから、今現在は難病対策としての福祉施策が講じられておりますけれども、一般の福祉対策の中で難病の方々をどう扱うかということが政策課題になっていることも十分認識をしているところでございます。
 いずれにいたしましても、障害者の定義をどうするかということは、我が国の障害者制度全般の根っこにかかわる大変重要なテーマでありますし、法律の総合化という議論もありましたけれども、そういう際に検討すべき大変大事な課題の一つであると認識をしているところでございます。

○石毛委員
 私は、大変心配をしております。繰り返しになる部分もありますけれども、障害者基本法は、障害の種類を知的障害、身体障害、精神障害、三障害に規定をしておりまして、そして、今度、発達障害者支援法が成立いたしますと、そこに規定された皆さんが制度、施策に該当されることになってまいります。
 そうしますと、難病の皆さん、難病と言われましても、難病の方でも状態に応じましては障害の認定を受けて手帳をお持ちの方もいらっしゃいますから、難病者イコール福祉制度の対象外というこの規定は行き過ぎだと思いますけれども、でも、多くの難病をお持ちの方が、手帳の取得を望んでおられたり、制度として福祉施策の活用を望んでおられます。その方々が、ちょうど今度はその方々のみが法律の間に落ちてしまう、落ち込んでしまう。
 ですから、ぜひとも、次の障害者福祉サービス法案の検討の際もこのことに関して留意をしていただきたいと思いますし、難病の皆さんが期待をされていないんでしたら何も特別に申し上げることはございませんけれども、大変今御懸念になっていらっしゃることでもありますので、十分にその要請あるいは御活動の様子を受けとめていただきたいというふうにつけ加えたいと思います。
 次でございますけれども、法案第五条一項は乳幼児健診を規定しておりますけれども、それに際しまして、「発達障害の早期発見に十分留意」というような規定になっております。この法案が成立されますと、乳幼児健診はどのように変わるのでしょうか。
 ヒアリングのときに伺いましたところ、今年度から、厚生科学研究で新しい健診内容が検討されているということですけれども、どこの地域でどのような内容をモデルに行われているのでしょうか。詳しくは時間もありますから結構ですけれども、端的にお示しください。
 また、その研究結果は広く公表されていくのでしょうか。最終的に研修内容の変更が確定されるまで、どのような手順で進められていくのでしょうか。そのことをお尋ねいたします。

○伍藤政府参考人
 母子保健法における健康診査でございますが、これは現在でも、既に一歳六カ月健診、それから三歳児健診の中で、発達障害に関係するものとしては、精神発達の状況でありますとか言語障害の有無でありますとか、その他育児上の問題についても検査ということで実施をしておりますので、基本的にはこのやり方で今後ともやってまいりたいと思いますし、むしろ、私ども考えておりますのは、こういった健診を通じて、医師や保健師、それに従事する者がこういった発達障害というものに早期に気づいて、それを地域でいかに支援をしていくか、そういった専門職の知見を高めるということが当面の課題ではないかというふうに考えております。
 今御指摘のありましたような研究事業についても、今後どういう形でこれを実施していくかということで、一つは、乳幼児健診における高機能広汎性発達障害の早期評価及び地域支援のマニュアル開発に関する研究ということで、これは福岡と東京をモデル地区とした研究を行っておりますし、それからもう一つは、軽度の発達障害児の発見と対応システム及びそのマニュアル開発に関する研究ということで、これは鳥取、山口、福岡、こういった地域における取り組みを一つのモデルとして、健診それからその後の事後相談のシステム開発、こういったことに着目して研究を行っておるところでありますので、こういうことが具体的な研究成果としてまとまってきた段階で、私ども、これが使えるものであれば、これをまた各市町村における健康診査あるいはそのフォローアップ体制、そういったものに活用していきたいというふうに思っております。

○石毛委員
 再度お教えいただきたいと思いますけれども、広汎性発達障害の子供さんに関しては福岡、東京、それから軽度の発達障害の子供さんに関しては鳥取、山口、福岡というふうにお聞きをいたしましたけれども、具体的に基礎自治体名をお教えいただけますか。

○伍藤政府参考人
 この県の中の具体的な市町村名というお尋ねだと思いますが、ちょっと今、直ちにわかりかねる状況でございます。

○石毛委員
 担当の方がお見えになっていらっしゃると思いますが、おわかりにならないですか。

○伍藤政府参考人
 幾つかの研究者に委託をして行っておりまして、高機能広汎性発達障害の方は九州大学の先生に主任研究者となっていただいておりますし、それから軽度発達障害の方は鳥取大学の先生にお願いをしておりまして、その県内における取り組みをモデルとしてやっておりますが、ちょっと今、具体的にどの地域で、どこの市町村でということまでは、大変申しわけありませんが、現に私、把握しておりませんというか、今手元に資料がございませんので、後ほど調べて御報告させていただきたいと思います。

○石毛委員
 それでは、後ほど連絡をしてくださいますように要請いたします。
 もう一点、質問の中で申し上げたと思いますけれども、厚生労働省で確定する健診の内容というのはそんなに細かい内容のものではないように伺っております。ヒアリングの際も、フォーマットはこういう一枚をいただきました。
 実際には、健診の中身というのは乳幼児健診を実施する市町村が最終的には作成をしているんだというふうに理解をしております。しかしながら、このフォーマット、これは非常にシンプルなものだというふうに思いますけれども、これでは、例えば高機能自閉症の方ですとか、それから、例えば注意欠陥多動性障害と言われるお子さんについてはなかなかわかりかねるような、そういうものではないかというふうに思います。
 ですから、これのもう一つブレークダウンしたものといいますか、あるいは、これをつくり変えたものとして、新しい厚生労働省としての指針といいますか、マニュアルのようなものが出されていくんだと思いますけれども、その最終確定、市町村にそういうものをお知らせしていく、そのものができるまでの厚生労働省としての進め方、プロセスというものを御答弁いただきたいと思います。と申しますのは、やはり、公開性、透明性というのは非常に大事な要素だと思いますので、お伺いいたします。

○伍藤政府参考人
 今、これは研究段階でありますから、この具体的な健診項目を今後変える必要があるかどうかも含めて、その研究成果を見ながら判断をしていきたいと思いますが、当面は、いろいろな障害に対応するような今の健診項目の中でも実施をしておりますので、その中でどういうふうにこういった問題に取り組んでいけるか、医師や保健師のいろいろな専門能力を高めるような、それから地域の支援体制をどうするか、そういったところに注力をしていきたいというふうに考えております。

○石毛委員
 もう一回確認ですけれども、新しく評価項目をつくり、評価リストに基づいて早期健診を行うというようなことではなくて、医師、保健師等、専門職種のいわば診断力といいましょうか、そういう力量を高めるためのマニュアルといいますか、手引書といいますか、そういうものをつくるのであって、健診項目の中身そのものは変わるわけではないというふうに御答弁いただいたというふうに受けとめていいですか、ここはすごく重要なところだと思うんですけれども。

○伍藤政府参考人
 研究を始めたばかりのところでありますから、この検査項目が不足なのか、これが不十分なのか、あるいは、どういった観点からこの発達障害というものに取り組んでいくべきなのか、そのあたりも全く未知数でありますから、今の時点では、直ちに、この健診の項目とかそういうやり方を変えるということまでは考えておりませんが、先ほど言いましたように、この研究成果とかそういうものによっては、可能性は、これからそういうものを将来的に見直していくということはあり得るというふうに考えておるところでございます。

○石毛委員
 ここのところは非常に重要なところだと思います。この法案を私の知り合いの方などと議論をしておりましたときに、これは厚生労働省ではございませんけれども、文部科学省が、特別支援教育に関しまして、通常学級におられる自閉症や、ここで法規定されているお子さんなどを担任の先生を通じて把握をしていただいたところ、大体六%ぐらいではないかというふうに調査結果が出ましたというふうに報告をされておりまして、その六%という数字といいましょうか、あるいはそうした方々がいらっしゃるということが今中心になって、ベースになって法案も動いているわけでございます。
 その六%の方が自閉症なのか、アスペルガー症候群なのかということの確定というのはまだできていないわけですよね。できていないからこそ、乳幼児健診でも、今、九州大学の先生や鳥取大学の先生が研究されていらっしゃるんだと思います。
 私がある先生から伺いましたところ、六%を確定していくためには、健診を受けた子供さんの二〇%ぐらいをスクリーニングしていかなければ六%というところにはいかないという、だから法文も、発見したら発達障害者支援センターへの相談とか、そういうような規定のしぶりもあるわけでございますし、現在でも、乳幼児健診では児童相談所へ健診というような二段構えの健診になっている、そういう仕組みでもございます。
 その仕組みが、さらに、こうした子供さんたちを明らかにしていくために健診を行うということになりますと、かなりの程度の子供さんが、まず第一次スクリーニングで発達障害があるのではないかというふうに思われかねない、思われるかもしれない。それが、ある小児精神科医の先生は、二〇%ぐらいの子供のスクリーニングから始まるのではないかというふうに言われておられます、いろいろと見解はあるんだと思いますけれども。
 そうしますと、二割内外の子供さん、二割内外の保護者の方たちが、もしかしたら、その年齢の子供さんに比べれば動きが激しかったりとか、いろいろな状態の中で違うというふうに判断されたことと、それから診断名をつけるということは、イコールではないかもしれないけれども、大変多くの子供さんたちがまずグレーゾーンに位置づけられる可能性があるのではないか。だから、まだ、こうしたいわゆる発達障害という方々について、診断方法や治療方法や指導方法が共通コンセンサスを得るまでにはなっていないのではないかというような強力な御意見もございます。もちろん、あるという御意見の専門家の方もいらっしゃるでしょう。ですから、非常に多義的であるということを十分にきちっと認識していただきたい。
 であるからこそ、私は、文部科学省さんにもこの点は後で確認させていただきたいと思いますけれども、乳幼児健診の健診項目の確定や、それから携わる関連職種や専門家の皆様がどのように判断されるのかということをきちっと確定していくプロセスを透明にして、そして議論をきちっと尽くせるようにして、そうした手だてを踏んでいかないと、やはり大変な反省点を残すことになりかねない。杞憂であればそれにこしたことはないと思いますけれども、そんなふうに思っております。
 ぜひ、伍藤局長の御答弁、まだ未知数だというふうにおっしゃいましたけれども、未知数を既知のものにしていくときのその政策担当としての手順の踏み方ということには十分御留意いただきたいというふうに思います。何しろ、法律が成立すれば、後は動かしていくのは省庁でいらっしゃるわけですから、そこのところは十分に申し上げておきたいと思います。
 とりわけ、早期の発見、早期の発達診断に関しましては、往々にして、自治体の姿勢によりましては、早期に、地域からとか、地域からというのはオーバーな表現かもしれませんけれども、近所やあるいは保育園、幼稚園の子供たちの仲間から離れて違うところで分離になるというような問題もございますので、ぜひとも今申し上げましたことはきちっと受けとめていただきたいと要請いたします。
 次でございます。
 第五条四項に、「児童及び保護者の意思を尊重」というふうに記載されてあります。
 まず、伍藤局長にお伺いします。
 乳幼児健診を受けるか受けないかということは、まず第一義的に児童及び保護者の意思が尊重される、優先されるというふうに理解をしてよろしいでしょうかということの確認をさせてください。

○伍藤政府参考人
 受けるか受けないかを含めて、この意思の尊重の中に入っておるものというふうに思っておりますが、一般論としては、この発達障害にかかわらず、私どもは、子供のいろいろな健康管理といいますか健康増進、そういった子供の健全な育成という観点から、できるだけ乳幼児健診の受診率は高めていくようにということを従来から行政施策としては目標にしてきておるところでございます。

○石毛委員
 余り時間をとるわけにはいかないのですけれども、従来からそうしているから、これからもそうしているというふうにおっしゃりたかったのかどうかと思いますが、現在、最も障害者施策の中で重視されていることは、これは社会的コンセンサスになってきていることですけれども、自己決定の尊重というところでございます。
 あえて申し上げれば、健全な成長という「健全な」というのも、育てる親御さんや御本人から見ても幅はあることなのではないでしょうか。ぜひとも、その自己決定の尊重、「児童及び保護者の意思を尊重」、これはせっかく法案の第五条四項に規定されていることでございますので、十分にきちっと受けとめていただきたいと要請をいたします。
 同じ中身に関してでございますけれども、第五条三項は、医学的、心理学的判定とか、発達障害者支援センターへの紹介、助言などを定めています。この点についても、児童、保護者の意思が第一義的に尊重されると理解をしてよろしいでしょうか。そのことを確認させてください。

○塩田政府参考人
 障害福祉の理念として、本人の自己決定とかあるいは自己選択ということが大変大事なキーワードになっているところでありまして、昨年四月からスタートした支援費もそういう考え方に立ってスタートしたものと理解しております。
 この五条の第四項の規定、「児童及び保護者の意思を尊重する」という規定は、そういう趣旨を書いたものと理解をしているところでございます。行政などによって強制的に心理判定とか発達障害者支援センターへの紹介とか、そういったことがあってはいけないことでありまして、保護者あるいは御本人に判定の意味とかを十分説明し、理解をしていただいた上で行うべき、そういう趣旨の規定であると理解をしております。

○石毛委員
 金子雇用対策部長にお尋ねいたします。
 法第十条は、就労の支援に関してでございますが、私は、今回のこの法案の作成過程でお話を伺わせていただきましたときに、大変感銘を受けましたと申しましょうか、そうしたことで本当に当事者の方は動揺されたり苦労されていらっしゃるんだなと思いましたのは、アスペルガーの状態をお持ちの青年が、ある集会の席で、職業安定所に相談に行ったところ、自閉症は就労支援の対象ではないと断られたというように発言されたそうです。
 厚生労働省は、何も、職業安定所、ほかのところで就労の支援を行う方々は手帳を持っていなければならないという規定ではないのだと思いますけれども、これまでどんなふうに対応をされてこられたのでしょうか。そこのところをお聞かせください。

○金子政府参考人
 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘をいただきました、自閉症の方は就労支援の対象とはならないというようなお話でございましたが、これは、発達障害者の方につきましても、障害者雇用促進法上は、身体障害者あるいは知的障害者の方は現在雇用義務の対象とはなっておりますが、こういった雇用義務制度の対象にはなってはおりませんが、職業リハビリテーションの措置につきましては、発達障害者の方も含めまして制度上対象になっているところでございます。
 したがって、そういう観点から申し上げれば、今御指摘いただきましたように、自閉症の方は就労の支援対象ではないという発言は適切を欠くものだと思っておりまして、我々としても、こういったような事実があるとすれば、今後とも、ハローワークの職員あるいは関係の機関の職員に対しまして、会議や研修の場で、法の趣旨でありますとか発達障害につきまして、いろいろ周知徹底を図りますとともに、職員の理解が深まるような方策をこれから本格的にやっていかなければいけないだろうというように考えております。

○石毛委員
 重ねてお尋ねいたしますけれども、そうしますと、法案成立後は新しく通知をお出しになるというようなことをお考えでいらっしゃいますでしょうか。

○金子政府参考人
 雇用の観点で申し上げますと、近々にも全国の労働局の会議がございますので、そういった場で改めて説明をする、あるいは障害者の雇用につきまして専任で担当しております職員の研修がございますので、そういったところで周知徹底を図っていきたいと思っております。
 省全体といたしましてどういう取り扱いをするかということは、もう少し検討させていただきたいと思っております。

○石毛委員
 実は、一九九三年の障害者基本法の制定のときから附帯決議等で、就労だけではございませんけれども、先ほど来触れました難病の方あるいは自閉等の障害をお持ちの方への施策の充実ということは附帯決議などで規定されてきていたことでございました。
 ですから、私ども立法府に所属する者といたしましても、もっときちっと施策の動向、推進の状況について留意を払うべきであったということを、私は、この法案を学ばせていただいておりますときに、強く思った次第でございます。
 同じようなことは、恐らく施策を担当する省庁にも言えることだと思います。附帯決議は、大臣がきちっとやってまいりますというふうに御答弁されることですから、省庁の側の責任として、やはり振り返ってみて、至らなかったこと、きちっと対応してこなかったことが多々あると思います。そうしたことを改めて思っていただきまして、たまたま就労支援に関して申し上げましたけれども、ぜひ、十全にお受けとめくださいますようにと思います。
 厚生労働省に対して最後の質問でございます。
 第十四条あるいは第二十条に民間団体についての規定がございます。どのような団体を想定して、どのような施策を講ずることができるというふうにお考えになられますか。その点をお聞かせください。

○塩田政府参考人
 民間団体につきましては、現在、実際に発達障害者の支援をさまざまなレベルで実施されておられます。例えば、社団法人の日本自閉症協会でありますとか全国LD親の会、あるいはNPO法人えじそんくらぶ、その他もろもろのいろいろな方々が活躍をされております。そういう諸団体を想定しているところでございます。
 また、発達障害を持つ人たちによる当事者の団体も、これからいろいろな活躍が期待されるところでありまして、そういう方々も当然対象になり得ると考えております。
 いずれにいたしましても、この法案の趣旨を実現する上で、民間の団体の方々が果たす役割は大変大きいと思いますので、厚生労働省といたしましても、そういう民間の方々の知恵もおかりしながら、ともに協力して、この法律の趣旨の実現に向けて、発達障害者の福祉の推進に向けて努力をさせていただきたいと思っております。

○石毛委員
 塩田部長の御答弁の中にございました中で、とりわけ私は、当事者団体に所属して活動される皆さんがエンパワーメントをしていけますように、国としても、やはり、発達障害と言われる方々の活動領域だけではございません、いろいろなところで直接活動されている当事者団体の方々に対する支援策、ぜひスタートをしていっていただきたい。充実していっていただきたいと言いたいところですけれども、まだ、スタートしたかしないか、していないというふうに私は受けとめておりますので、そのように申し上げます。
 ありがとうございました。
 文部科学省にお伺いいたします。
 いただきました時間で、急がなければならないのですけれども、法案の第五条二項に、先ほど申し上げました健診についてですけれども、今度は就学時健診について規定をしてあります。この法案の成立によりまして就学時健診が具体的にどのように変わることになっていくのか、その点について御説明ください。

○尾山政府参考人
 お答え申し上げます。
 市町村教育委員会が行います就学時健康診断の検査項目につきましては、学校保健法施行令で定められておるところでございます。本法案成立後につきましては、学校保健法施行令第二条第七号の「その他の疾病及び異常の有無」という項目におきまして、発達障害等も含む健康状態の把握に努めることとなると考えております。
 発達障害につきましては、ある程度の期間の観察が必要と考えられますので、就学時の健康診断だけでは十分に発見することは困難であろうかと思いますけれども、就学時健康診断に当たりまして、保護者の了解を得て小学校入学前の子供の状況についての情報の提供を受けることでございますとか、必要に応じて専門医の判断を求めること等によりまして、できる限り発達障害の早期発見に努めていくものと考えております。
 ただ、この点、いろいろ判断の難しい点もございますので、厚生労働省ともよく連携して対応してまいりたいと考えておるところでございます。

○石毛委員
 先ほど厚生労働省に質問した点をもう一度文部科学省にも質問いたしますが、児童及び保護者の意思の尊重に関しましては、第五条二項に規定するその健診に際しまして、児童、保護者の意思を第一義的に優先するというふうに理解をしてよろしいでしょうか。

○尾山政府参考人
 本法案が成立した後につきましては、法案第五条第二項で就学時健康診断において発達障害の早期発見に十分留意することが求められているだけではございませんで、法案第五条第四項におきまして、その実施においては、「児童及び保護者の意思を尊重するとともに、必要な配慮をしなければならない。」とされているところでございまして、この点を踏まえまして、円滑な就学時健康診断が実施されるよう、都道府県教育委員会を通じて指導してまいりたいと考えております。

○石毛委員
 質問通告はいたしませんでしたけれども、尾山総括官がお答えくださいましたので、配慮しなければならないとしている、そのことはどのようなことを想定されていらっしゃるのでしょうか。第五条の第四項は「必要な配慮をしなければならない。」という、私はそこまでは質問しなかったんですけれども、総括官がそういうふうに答弁されましたので、念のためにお答えいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○尾山政府参考人
 保護者や児童生徒の意思に反してまで強制的に聴取するといったようなことなどはしてはならないということではないかというふうに理解をしておるところでございます。

○石毛委員
 次ですが、関連して、第八条は教育に関する規定でございます。
 この規定に関しましては、最初に法案の原案が出されましたときから、いろいろな議論を重ねまして、今回提出の条文に最終的にまとまったものでございます。
 この条文の中に、最後の方ですけれども、適切な教育的支援というような規定がございます。この発達障害者支援法と並行して、現在、文部科学省において特別支援教育の推進が行われております。その中に、個別の教育支援計画の策定ということが規定されておりまして、現にそれが推進されているところでございます。
 そこで、これも確認でございますけれども、この教育支援計画の策定は法的な義務づけではないということの確認と、それから、計画は保護者の意向によってはつくらなくてもよいということを確認したいのですが、いかがでしょうか。

○山中政府参考人
 お答え申し上げます。
 先生御指摘の個別の教育支援計画でございますけれども、これは文部科学省の協力者会議の報告におきまして、今後、障害のある児童生徒一人一人のニーズを正確に把握して、教育の視点から適切に対応していくという考えのもとに、長期的な視点で、乳幼児から学校卒業後まで、その学校の中だけではなくて、一貫して適切な教育的支援をどのように行っていくか、そういうことを子供一人一人に応じた形で、しっかりとした教育支援の計画を立てていこうというものでございます。そういうものでございますので、法的にそれをつくらなければならないとかそういうものではないというものでございます。
 また、現在、先生御指摘ございましたけれども、特別支援教育推進体制モデル事業というものを行っておりますけれども、その中で、こういう個別の教育支援計画というものを個々の子供さん一人一人についてつくってみるということを、今モデル的に行っているところでございます。
 この場合、それぞれの子供一人一人に応じたものをつくっていこうということでございますので、その作成に当たりましては、保護者の積極的な理解あるいは参加をしていただき、計画の内容、どういう形で支援計画をつくるかという内容につきましても、保護者の御意見も聞きながらつくっていくということでございます。実際に、もうそのような形で、学校の先生、保護者、あるいはコーディネーターといった方が話し合い、十分協議し、協力して、それぞれの支援計画を作成しているという状況でございます。

○石毛委員
 念のために申し上げたいと思いますが、私は個別の教育支援計画を策定するということに反対しているものではございません。
 ただ、子供さんあるいは保護者の方のお気持ちやお考えや御意向と、それからその計画の進められ方というのが沿わない場合もあるのではないか。こういうようなことも想定しますと、やはりこの策定に、まずは児童や保護者の意向を第一義的に優先して受けとめていただきたいということは前提ではございますけれども、場合によっては参画しないこともあり得るというようなこと、今御答弁いただいたことでよろしいと思いますけれども、私はそのことを懸念する部分もあるものですから申し上げましたということです。
 ぜひ要請をしたいと思いますけれども、やはり、国際的には、特別な教育のニーズを有する子供たちも地域の普通学校で学ぶというインクルーシブの教育というのは、ユネスコのサラマンカ宣言以降、もう潮流になっていることでございます。ぜひとも、この個別の教育支援計画につきましても、ともに学ぶということを前提にして進めていただきたいということを要請いたします。
 次の質問でございますけれども、特別支援教育の推進体制、このことに関連してでございますけれども、広域特別支援連携協議会というものや地域での特別支援連携協議会の設置が求められております。
 ここで一つ私が心配をいたしますことは、発達障害者支援法案の方では、第三条第四項に、「犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止」してという、そのような規定がございます。
 ここは、実は、当初の法案では警察が規定されておりました。これは、障害をお持ちの方の御意向なども踏まえまして、警察という文言は最終案からは削ることになりまして、先ほど申しましたような規定のしぶりになったものでございます。
 ただ、犯罪等といいますと、どうしても警察ということが浮かんでまいりますので、戻りますが、広域特別支援連携協議会ですとか地域の特別支援連携協議会の構成団体となる関係部局に警察が想定されているのかどうか。これは文部科学省だけではなくて、厚生労働省その他関係する部局が連携をとるということになるわけでございますけれども、特別支援教育について、この協議会が記載されておりますので、文部科学省にお尋ねいたします。
 それからもう一つ、この協議会に発達障害をお持ちの方のリストが提出されるというようなことはあるのでしょうか。

○山中政府参考人
 お答え申し上げます。
 先生御指摘のものは、特別支援教育の検討をしております報告書におきまして、障害者の方を支援していくということになりますと、乳幼児から、また卒業後、就業というふうなことも含めてということもございますので、そういうこともございまして、特別支援教育を学校で実施していくという上においては、やはり学校、教育委員会といった教育関係だけではなくて、特別支援連携協議会といったようなものを地域あるいは県のレベルで設けていただきまして、そこで、それぞれの障害を持った子供たちをどう支援していくのかということを総合的な立場から連携していただきたいというものでございます。
 そういうものでございますので、その中心になる行政部局といたしましては、この法律の第三条四項に規定をされておりますような教育、医療、保健、福祉、労働等、そういう各分野を想定しているところでございます。
 また、先生の方から、こういう協議会の場に個別の発達障害者のリストが提出されるかということでございますけれども、通常、ここでは発達障害者を支援していくというためにどういう形で連携していくのか、その施策の共通理解でございますとか、あるいはそれぞれ連携していくための調整とか、そういう機能をこの協議会に持っていただきたいと思っておりますので、そういう個別の名前のリストがこういう場に提出されるというふうなことは想定していないというところでございます。

○石毛委員
 ありがとうございました。
 最後に申し上げて質問を終わりたいと思いますけれども、この発達障害者支援法が、関係する当事者団体の皆様から本当に強く要請されて成立に至るということは重々理解するわけでございますけれども、もう少し広げて、障害を持つ方への施策の状況を考えますと、御存じのように、国連では、障害者の権利条約の策定が進められておりますし、世界的にも四十カ国を超える国々で障害者差別禁止法が制定されております。
 このような動向から、日本でも、先般の障害者基本法の改正において、「国連における障害者権利条約の策定等の動向を踏まえ、制度整備の必要性について検討を行う」という附帯決議が付されたところでございます。
 本法案につきましても、施行後三年での見直し規定を置いております。
 この法案は、採決に至りました後に、実際に省庁によって行政的には推進されていくということになりますけれども、障害者の権利の確立、差別の禁止、ともに生きる社会の実現に向けて、本法が有用に作用してくれますように希望し、期待をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

○松下委員長
 次に、泉房穂君。

○泉(房)委員
 民主党の泉房穂です。
 今から三十分間、質問をさせていただきます。
 まず初めに、今回の法案につきまして、中心となられました福島豊議員また関係当事者の皆さんのこれまでの御努力と熱意に対しまして、深く感銘いたす次第であります。
 本来であれば、このような多くの方々の御努力と熱意のもとに成立が予定されている法案でございますので、もう少し積極的な、前向きな評価を持って質問をしたくは思っておりましたが、幾つかの懸念事項もございますので、その点も踏まえて質問をさせていただきます。
 本日、お手元の方にお配りさせていただいた配付資料についてでありますが、一枚は厚生労働省障害福祉部部長の私案としてのペーパーからの印刷物であります。もう一つにつきましては、発達障害者支援法案に関する比較表であります。一番下が議連の決定における法案、真ん中が先週提出された法案、一番上段が本日委員長起草案となっておる内容でございます。
 私といたしましては、幾つも変更点はございますが、そのうち七つばかりにつきましては、積極的な評価がし得ると考えています。
 まず一点は、第一条の「目的」のところの早期発見につきまして、早期発見の対象につきまして、当初、「発達障害児」という人の書き方をしておりましたが、そうではなく、「発達障害」という状態に着目した表現に改まっている点であります。もちろんのこと、障害につきましては、人ではなく、その障害という状態に着目して支援をしていくことが必要だ、その見地から、この変更点、修正点につきましてはよかったと考えております。
 二点目は、自立と社会参加が明文化されたことであります。これは、御存じのとおり、この春の障害者基本法におきましても、第一条におきまして、三回も書き込まれている、まさにキーワードであります。この部分が入ったことにつきましても、積極的によかったと思っております。
 第三点は、警察に関する部分であります。警察に関しましては、さまざまな御意見等もございましたので、その部分につきまして、懸念を払拭するような形で条文が、文章が変わったというふうに理解しております。  四点目は、教育についてであります。第八条につきまして、これも幾つかの団体からこの条文につきましての懸念がございましたので、第八条が変更となっておると理解しております。
 そして、第十二条「権利擁護」につきましては、当初は権利擁護をすべき責務を負っている団体が都道府県及び市町村でしたが、それのみならず国が入ったという点、これは当然のことでありますが、修正になってよかったと考えております。
 また、「差別されること等」という形で差別禁止の趣旨がこの十二条に加わったこと、これも積極的に評価できると考えております。
 また、最後に七点目につきまして、見直し規定が、当初なかったものが五年の見直しとなり、そして本日の委員長起草案におきましては三年という見直し規定が置かれたこと。
 この点は、ほかもございますが、この七つにつきましては、この間の努力をされた方々に対しまして、深く敬意を改めて表しておきたいと思います。
 しかしながら、こういった点を踏まえましても、現時点においてもまだ幾つかの懸念事項が指摘されております。今回、この法案が可決されることは、本当にある意味、関係当事者にとっての悲願であったと思います。しかしながら、事実を率直に見詰める姿勢というものは必要であろう。
 そのような見地から、具体的に申しますと、現時点におきましても、幾つかの団体、例えば、日本障害者協議会、障害者インターナショナル日本会議、そしてまた今回教育分野を受け持つ日本教職員組合、また、教育の欠格条項をなくす会準備会、これは統合教育を求める会でございますが、そのような会、知的障害者の親の会でもございます社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会、精神医療の分野における市民の人権擁護の会などなどから、この時点における本法案の成立について幾つかの心配事項が提示されております。
 そういった事項がないように、本日の委員会可決の後、運用面などにおきまして、それらの点につきましての御配慮がなされることを強く望むものであります。
 今回の法案につきましては、私が改めて語るまでもございませんが、一九七〇年の心身障害者対策基本法に始まり、一九九三年の障害者基本法改正、本来であれば、この時点におきまして、今回の対象とされた方々が障害者の中に当然含まれているという附帯決議もございましたので、その附帯決議に基づいて個別の施策がなされていれば、今日を待つまでもなく、もっと早い段階で多くの支援が得られたと考えております。
 また、二〇〇四年、この春の障害者基本法の改正におきましても、またも今回の支援対象の方々が積み残しになってしまった、そういった歴史的経緯の中に今日がある、そのような自覚はいたしております。
 ただ、私が懸念するのは、大きく申しまして三点であります。
 一つは、この法案が成立する、もちろんプラスの面があるのは当然であります。しかしながら、法律というものはひとり歩きしてしまう可能性もあろうかと思います。この法律ができたことによって、今回支援対象とされている方々が他の障害の方々のサービスから取り残されてしまわないかという懸念が一点ございます。また、関係当事者の熱意や努力とは裏腹に、今の社会的な状況のもと、かえって今回の支援対象とされた当の本人たちにとって、結果的にどうなるのかという心配もございます。また、障害者施策全般に対する影響というものも考えられます。
 この三点につきまして、質問をしてまいりたいと思います。
 まず、内容面についてであります。
 先週、谷間の障害者と言われる無年金障害者についての法案が可決されました。同じく谷間の障害者に関する所得保障についての法案でありました。今回も同じく谷間の障害者に関する法案でありますが、今回の法案につきまして、一体、この法案の成立によって具体的にどういったサービス、どういった支援策が始まるのかという質問であります。
 例えば、無年金障害者救済法案につきましては、その法案が通ることによりまして、来年の四月から、障害等級一級には五万円、二級には四万円の月々の給付金が支給されます。今回の法案は、一体、この法案が通ることによって具体的にどういったサービスが始まるのか、その点、まずお答えのほどをよろしくお願いいたします。

○塩田政府参考人
 この法案ですけれども、この法案は、議員から御説明があったように、これまで制度の谷間にあった方々に対する支援をどうするかという観点からつくられたものと考えております。
 これまで、知的障害のある場合は知的障害者福祉法のサービスが受けられていたわけでありますけれども、知的障害を伴わない方々については、それぞれの法律によるサービスがないということでございました。
 この法案はまだ理念法の段階でありまして、政策の方向性は出していただいているわけでありまして、この法律ができることによって、例えば発達障害者支援センターによる相談機能を充実することでありますとか、あるいは福祉と雇用分野の連携を密にすることでありますとか、あるいは教育分野と福祉分野の垣根を取っ払うというようなことでありまして、直ちにこの法案で具体的なサービスが開始するという性格の法案ではないと思っております。
 これから、この法案の趣旨を受けまして、さまざまな取り組みを地域レベル、国レベルでやりまして、一つ一つ検証して、将来は、後ほど議論になるかもしれませんが、障害の種別なく包括的なサービス法の中で一本化されるべき、またそれを目指すべきであろうと考えているところでございます。

○泉(房)委員
 今回の法案、じっくりと何度も何度も読ませていただきましたが、理念法と申しますが、本当に具体的な支援については書き込みがなされていないということは残念でなりません。
 私自身、先週の水曜日、犯罪被害者基本法にかかわり、委員会可決となりました。例えば、これも同じく、これまで放置されてきた犯罪に巻き込まれた被害者や遺族に関する支援法でございます。
 しかし、その法案につきましては、具体的にそれぞれの分野において、雇用の問題、住宅確保の問題などなど、既にその法案にその後の方向性が書かれております。また、その後の施策決定におきましても、官房長官をトップとし、大臣六名が加わり、また、有識者という名の具体的な当事者や支援団体の方も入った上で具体的な施策が遂行される、そういった法案になっております。
 ところが、今回の法案は、そのような具体的な書き込みもなされておらず、また、具体的な施策遂行における枠組みも書かれておりません。しかし、このことを今申したとしても、今から法改正がすぐになされるわけではないと思います。その点、運用に携わる面におきまして、条文には書かれていなくても、当事者や支援団体、またいろいろな方々の意見を踏まえて具体的な支援をしていく、そういった回答をいただきたいのですが、お願いいたします。

○塩田政府参考人
 この法案では、それぞれの保健、医療、福祉、教育、雇用などの大きな方向性は書かれておりますけれども、実際に、議員が指摘されたような政策の具体化という点では、予算をとり、いろいろな細かな制度をつくっていく作業が必要であります。
 御指摘のあった趣旨で、関係省庁とも連携して努力をしていきたいと思っております。

○泉(房)委員
 そして、今回の法案につきまして他の団体などからいろいろと指摘されているところは、この法案、理念法と言われましたが、その理念についての疑義が出されているんだと私は理解します。
 障害者福祉と申しましても、大きく言えば二つの考え方があろうかと思います。それは、幸せというものを、障害者本人の幸せをだれが決めるのかということにかかわっていると私は思いますが、本人の幸せは、本人が決めるのか、そうではなく、国なり、社会なり、保護者なりがある意味決めてあげるのかというようなところにかかわっているようにも思います。
 今回の障害者基本法の改正、また、国連で作業がなされております国連の障害者権利条約の理念と申しますのは、申すまでもなく、あくまでも障害者自身が権利の主体であり、であるがゆえに、障害というものをそのまま受けとめた上で、そのままの状態で障害者と健常者がともに生きていく社会が理想であると考え、であるがゆえに、自立と社会参加というキーワードが出てくる。そして、障害者の種別なく、支援される側から物事を見ていく、障害者を縦割りにしたりはしない、あくまでも施策を決めるのは本人である、こういった理念であろうと思います。
 それに対しまして、他方、国や社会や保護者の方から支援をしていくとなりますと、そうではなく、障害者は支援の対象であります。そして、早期発見し、できるだけ健常者に近づくようにならないか、そんな思いがにじみ出てまいります。
 また、より丁寧な手厚い支援という視点から、どうしても障害の種別を分け、また、健常者と違った形で、手厚い支援という名のもとに分離教育や別の取り扱いがなされてしまう、そういったこともあろうかと思います。
 今回の法案、率直に感想といたしましては、一九七〇年の心身障害者対策基本法のような形の考えが色濃く出ているように感じられてなりません。
 しかしながら、この点も同じであります。今すぐに条文が変わるわけではなかろうと思いますが、理念といたしましては、今回書き込みがなされておりませんが、支援対象となっている方々が当然権利を有しており、今回法文にやっと入りましたが、自立と社会参加を目指し、あくまでも本人の自己決定を尊重する、そういった趣旨からきた法案である、そういった理解でいいかどうか確認をしたいのですが、お願いいたします。

○塩田政府参考人
 障害者福祉のキーワードとして、自立と社会参加が大事であり、かつ、いろいろな分野において障害者自身の自己決定が必要であるということはおっしゃるとおりであると思います。
 そういう観点から、昨年四月から支援費制度をスタートし、障害者の方が地域で暮らせるという政策を目指しておりますし、今回の法案もそういった考え方に立って立案されたものと理解をしているところでございます。

○泉(房)委員
 私自身は、この自己決定権の尊重というのは、言葉だけじゃなくて、今後の障害者福祉施策に関して最も大きなキーワードの一つであろうと考えております。
 今回、この法案につきましては、多くの関係当事者の思いのこもった法案であろうと思います。私自身も、ある意味、思いのこもった中で今回対応させていただいております。
 私ごとになりますが、私も、四つ下の弟は生まれつきの先天性脳性麻痺であります。生まれ落ちたときから、私自身、四つ下の弟とこれまで生きてまいりました。小学校に入るときに、養護学校に行けと言われ、私と親含めて、市長に直談判をし、どうして障害があるからといって別の学校に行かなきゃいけないのか、兄である私と一緒にどうして同じ学校に行ってはいけないのか、そういった思いで、結果的に、何とか、お兄さんである私が一緒に通学をするという条件で、一緒に近くの学校に通いました。
 そういった中、あれからもう三十数年がたっているというのに、いまだに日本の教育現場は原則分離だということに、本当に情けない思いがいたします。
 また、そういった思いでもって、障害者と健常者がともに一緒にやっていく社会を求めつつ、私自身もその家族でございましたが、しかしながら、家族というものはなかなか本人にはなり切れなく、私の弟が運動会に出たいと言ったときに、私も親も必死にとめました。
 運動会に出ても走れるはずもないし、周りに迷惑もかかる、みっともない、だから別に運動会で走らなくても、応援団で一緒に応援すればいいじゃないか、私も親もそう言ってとめました。しかしながら、弟はそれを振り払って出ました。もちろん、まともには走れません。しかし、私は、そのときに、幾ら家族といっても、本人のためといっても、本当の本人の気持ちというものは本人にしかわからないのだろうと幼心に感じた次第です。
 私の原点はそこにありまして、幾ら家族や親が一生懸命、当の本人のためと思っても、おのずからそこには限界があってしまう、その視点であります。
 高齢者の分野におきましても、具体的には、私自身弁護士をして、そういった分野に数多く携わっておりますが、実際上、痴呆の始まった親に対しまして、家族がむしろ施設入所を勧めてしまう。当の痴呆の始まったばかりの方は、引き続き住みなれた地域で暮らしたいと思っていても、むしろ家族がその親の意思に反して特別養護老人ホームに入所手続をする、親も子供たちに迷惑をかけてはいけないと思い、みずから施設入所をしていく。
 そういった日々を、そういった毎日を送りながら、そうではなく、あくまでも当の本人の意思に従って、住みなれたところで暮らしたい方は住みなれたところで、通常学級に行きたいと本人が思うのであれば、幾ら親が心配であったとしても、同じような環境で学ばせてあげられるような社会をつくっていく、そういった姿勢が必要であろうと本当に強く思っております。
 そういった見地から、文部科学省に質問させていただきたいと思います。
 これも私が申すまでもなくお詳しいと思いますが、今、世界の中で、障害者と健常者を原則分離という教育をしているところは、恐らく日本だけだろうと思います。国連の障害者権利条約の作業部会におきましても、日本のみがいわば特異な姿勢をとっております。
 確かに、予算の伴う面もありますし、幾つかの解決すべき問題があることはわかります。しかしながら、方向性としては、あくまでも当の本人に選択権を保障し、一緒に勉強したいと思うのであれば、一緒に健常者と学べる環境をつくっていく、そういった方向は当然必要であろうと思いますが、この点、文部科学省の姿勢を問いたいと思います。

○山中政府参考人
 先生御指摘の点でございますけれども、障害を持つ子供たちについて、障害の状況に応じましてその可能性を最大限伸ばして、自立、社会参加、そのために必要な力を培ってもらいたいということで、そういう観点から、現在、盲、聾、養護学校あるいは小中学校の特殊学級等、あるいは通常学級に在学しまして続ける等、いろいろな形でのカリキュラムあるいは指導方法ということで教育を行っているところでございます。
 また、文部科学省では、平成十四年の四月でございますけれども、学校教育法の施行令を改正いたしまして、社会のノーマライゼーションの進展、あるいは教育の地方分権といった観点から、盲、聾、養護学校の就学基準に該当する子供につきましても、その障害の状況等に照らしまして、小中学校において適切な教育を受けることができるというふうに市町村の教育委員会が認めるという場合には、認定就学という形でございますけれども、その小中学校に就学できるという形で、就学手続の弾力化ということも行っているところでございます。
 文部科学省としては、障害を持つ子供たちがしっかりと自立し社会参加できるような、そういう力を養ってもらいたい、そういう観点からの教育、これを一生懸命充実していきたいというふうに考えております。

○泉(房)委員
 今お答えがございましたが、確かに弾力的な運用という形は、少しは始まったかとは思います。しかしながら、現実的なところ、その認定される数は極めて限定的であります。原則、例外が変わったわけではありません。日本の場合、原則が分離であり、例外的に一緒にやっていくというような姿勢はいまだ変わっていないと言わざるを得ません。
 そうではなくて、あくまでも私が申しているのは、今も御指摘がありましたが、盲、聾につきましては確かに議論のあるところであります。盲、聾につきましてはむしろ手厚い特別な環境が必要である、それは、確かにそういった面の議論もあることはわかっております。しかしながら、身体障害、知的障害につきましては、そうではなく、むしろ一緒に学ぶことを基本的に皆さんおっしゃっておられます。
 ポイントは選択権であります。当の本人に対してその選択権を保障していく、その姿勢であろうと思います。そういった見地で、ここで押し問答いたしましても、今現時点ですぐに回答があるわけではなかろうと思いますので、問題意識だけ提示させていただきました。
 また、自己決定の問題につきましては、この点はそんなきれいごとでないことは、私も重々わかります。重度の障害の方の場合など、判断能力が果たしてあるのか、そういった方に関して自己決定という名のもとに本人に任せてしまうとかえって本人のためにならない、まさに目の前でそういった部分と格闘している場合、そんなきれいごとでは済まない、それはまことにそのとおりであります。
 しかしながら、あくまでも理念としては、当の本人の判断能力が不十分であったとしても、それを周りがサポートし、あくまでも当の本人の人生は本人が決めていく、そこにどれだけその努力を働かすか、そこの努力を怠ってはいけないのではないかという視点だと私は考えております。
 その点、具体的な条文に即して質問させていただきますが、今回の法案の第三条の三項であります。
 二行ばかり読ませていただきますが、「発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者の意思ができる限り尊重されなければならないものとする。」この条文であります。
 これは、保護者の熱い思いも踏まえた上で入った条文であろうと思いますし、この条文自体は、むしろ、国や都道府県の方が勝手なことをするのではなく、あくまでも保護者の意思を踏まえた上で対応するという趣旨から書かれた条文であろうとは思いますが、しかしながら、今の私の申した視点からいきますと、あくまでも意思を尊重するのは当該本人、発達障害者その人ではないかと思う次第であるわけであります。
 これは、結局のところ、障害者にとって自立と社会参加を阻むのは、もちろん今の国、社会でもありますが、実際のところは、自分の親や家族というものが最後の大きな壁として立ちはだかってしまう、そういった現実をやはり直視せざるを得ないと思います。
 例えば、十五歳の場合、発達障害児であります。保護者の意思を尊重するのか、その本人の意思を尊重するのか。そのときに一体どちらの意思を尊重して、例えば親が、やはり世の中に迷惑をかけてはいけない、この子がかわいそうだ、ふびんだ、そういった思いから別の場所で学ぶという選択をとるとしても、当の本人が、いや、僕は一緒にやりたいんだといったときに、どちらの意思を尊重するのかという、まさにそこの現場における判断にかかわる問題であります。
 私は、その際、もちろんその本人の判断が明らかに誤っていたりした場合にはきっちり説得をする、それは当然でございますが、しかしながら、やはり人間は自分の人生は自分でしか決められないわけでありますから、最終的には、保護者ではなく本人の意思を尊重するんだろうと思いますが、この点、どのように考えておられるか、お答えください。

○塩田政府参考人
 障害者福祉の理念として、障害者自身の意思が最も尊重されなければならないというのが基本原則であろうと思っております。
 先ほども申し上げましたが、昨年からスタートしたいわゆる支援費制度も、障害者のノーマライゼーション、あるいは障害者自身がサービスを選ぶ、自己決定の理念に基づいた制度であると考えているところでございます。
 今回の法案でも、ここに書かれておりますように、発達障害者自身の意思ができる限り尊重されて、自己決定が確保されるということが必要であると思っております。
 議員が言われたように、仮に発達障害児のケースで親御さんと子供さんの意思が一致しない場合、障害者福祉の理念からいえば、やはり障害者御本人の意思が尊重されるべきであろうと思います。
 しかしながら、ケースによっては、御指摘があったように本当に難しいケースがあると思います。そういうときには、例えば専門家がよく両者の意見を聞いて、そのときの基本は、御本人の意思を尊重するということが基本であると思いますが、さまざまな専門家が公平な立場で親御さんたちを子供さんも含めてサポートするといった対応などもあると思います。
 いずれにしても、基本は、御本人の意思を尊重するということがこの法案の趣旨であると理解をしております。

○泉(房)委員
 次に、就労に関してであります。
 今回の法案につきましては、そのことによって何らかの給付金が出るわけではありません。学校の現場を卒業した後、皆さんそれぞれ社会に出てまいります。とする場合、結局、生活をどうやってやっていくかであります。働かないとお金は入ってこないわけであります。
 しかしながら、今の知的障害者の分野におきましても、なかなかそういった部分の理解も進まず、就労支援、それぞれ厚労省も頑張っておられると思いますが、まだまだな面もあろうかと思います。まして、軽度の、軽度のといいますか、今回の支援対象となっている方々の場合、よりわかりにくい、つまり、障害が重度であればあるほど大変なというわけではなくて、むしろ、わかりにくければなお余計大変だ、そういう面もあろうかと思います。
 そういった面における就労支援、今回の法案ができたとしても、例えば障害者の雇用率に反映されたりはしないと思いますが、しかしながら、今後どういった形で就労支援をしていくのか、この点、明確にお答えいただきたいと思います。

○金子政府参考人
 お答え申し上げます。
 今議員御指摘のように、障害者の雇用に関する法律につきましては、発達障害者の方については現在雇用義務の対象にもちろんなっておりません。ただ、法律で想定をしております職業リハビリテーションの措置、こういったものを中心にいたしまして支援の対象には制度上はなっておるわけでございます。
 具体的にどういうことができるかということでございますが、一つは、ハローワークにおきます職業相談や就職後のいろいろな助言指導でありますとか、あるいは全国に四十七設けております障害者職業センターにおきますいわゆる職業リハビリテーション、この中にはジョブコーチ制度と言われているものも含まれておりますけれども、こういったものによる職場定着支援といったようなことが制度的にはできるようになっておるわけでございます。
 要は、やはりこういった制度を使って発達障害者の方の就労、雇用をどうやってこれから支援していくかというところが大きなポイントだろうと思います。
 私どもといたしましては、今回の法案を契機にいたしまして、こうした制度を十分に活用いたしまして、保健、福祉、教育等の関係機関とも連携を図りながら就労機会の確保に努めていきたいと思っております。

○泉(房)委員
 現時点における答弁としては今程度であろうと思いますが、それで足りるものではないことは当然御認識されていると思います。本当に、仕事はしないと、お金の問題もそうですが、まさに誇りを持って人生を送っていくということもなかなか難しくなります。就労支援につきましては、ほかの面もそうですが、本当に特に力を入れていただきたいと思います。
 最後の質問でありますが、配りましたペーパー、一枚ペーパーの色紙であります。この図はあくまでも私案という形で聞いております。
 この図を見れば明らかなように、まさに、谷間の障害者のうち、今回につきましては発達障害者、軽度の発達障害をお持ちの方々などにつきましての法律であります。しかしながら、難病につきましては、今回については対象とはなっておりません。難病の問題をどのように考えられるのかというのが一点。
 そしてもう一点は、今回の発達障害者支援法ができたとしても、具体的なサービスにすぐ直結するわけではない。そういった中で、本来であれば、一番下にあります総合的な障害者福祉の法律の中にきっちりと位置づけられて、障害の種別なく、本当に支援を必要としている方すべてに対して、その人が必要としている支援をしていく、そういった法律をつくっていくべきだろう、そのように思うわけでありますが、方向性としてはそのような方向でいいと確認してよろしいのかどうか、御答弁よろしくお願いいたします。

○塩田政府参考人
 障害者基本法という法律がありますけれども、障害者基本法は、原因の別のいかんを問わず、すべての障害者に対する施策のあり方の基本方向を定めた、いわゆる障害者福祉行政の憲法というべき法律であろうと思います。
 現行の福祉サービスにしろ、個別の分野の法律は、お手元に配られてあります資料にありますように、個別の法律があって、残念ながら制度の谷間になる障害者がいらっしゃるということでございます。
 今後の方向としては、障害者基本法の上に立って、障害の理由のいかんを問わず、共通の障害については共通の、すべて包括的なサービスなりを目指すべきだろうと思っております。その方向に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

○泉(房)委員
 ありがとうございました。
 本日、委員会で可決し、これがまさに第一歩であり、これからスタートである、そういった思いを持って質問を終わらせていただきます。
 関係者の方々、どうも御苦労さまでございました。

○松下委員長
 次に、市村浩一郎君。

○市村委員
 民主党の市村でございます。
 これから三十分間、質問させていただきます。
 私は、この発達障害者支援法のことを聞きましたのは実はことしに入ってからでございまして、LD親の会の方々、地元の方々がわざわざ事務所を訪ねていただきまして、この法律が臨時国会に提出される可能性があるということのお話をいただきました。
 そして、そのお話を聞いて初めてこのことを知ったんですが、私としても、こんなことが今まで何できちっと立法府の立場で対処といいますか、対応されてこなかったのかなということを正直に感じたわけでございます。
 親御さんたちとお話をしていますと、本当に切実な声が、また気持ちが伝わってまいります。
 一日も早く発達障害というものに対して社会のしっかりとした認識を確立していかなくちゃならないということ、そして、その結果、その過程でもいいんですが、しっかりと発達障害に対しての社会的な取り組みをしていかなきゃならないということが求められているんだということを私も強く感じている次第でございます。
 この間お話もしましたら、もう既に四十年間もこうした問題に取り組んでいらっしゃる、御努力されている方々もいらっしゃるということでありまして、本当に今回この臨時国会で早期成立を図るべきだ、このような立場で私もこの法案に賛成者の一人として名前を連ねさせていただいております。
 本当に、これまで福島先生を初め、この法律の作成につきまして御努力された皆様には心からの敬意を表して、今から質問を始めさせていただきたいと存じております。
 また、発達障害者支援につきましては、やはりこれは福祉と教育というものが密接に連携をとる必要があるように感じております。今後のこの法律が、先ほど答弁の中にも、この法律は、理念法であって政策の方向性を定めるものであるということであります。これから具体的になってくるわけでございますけれども、今後のためにより明確にしておきたい点をこの場で質問させていただきたいと思っております。
 この法律を通じまして、発達障害に対する知識が普及していけば、恐らく、いや、必ずや、発達障害に対する周りの理解が深まりまして、二次障害と言われるもの、この発生を防ぐこともできると期待されております。
 まず、発達障害と支援の状況について御質問させていただきたいと存じます。
 最近問題になっております例えば学級崩壊や引きこもり、登校拒否なども、発達障害が原因の一つと考えられていると聞いておりますが、LD、学習障害ですね、またはADHD、注意欠陥多動性障害、そして高機能自閉などの発達障害者と言われている人々の全人口当たりの有病率推計値というのは存在するんでしょうか。また、あるとすれば、現状において、発達障害と思われる方々の有病率はどれぐらいなのか、どうぞよろしくお願いします。

○塩田政府参考人
 我が国におきます発達障害者の数とか障害が出現する率というのは、正確な数値は把握されておりませんけれども、欧米の専門家のデータでは、例えば、自閉症が八歳以下の〇・六%、注意欠陥多動性障害が学齢期の三から七%、学習障害が生徒の五%とされるデータがございます。
 また、文科省から御答弁した方がよろしいかもしれませんが、平成十四年に文部科学省が実施した調査におきましては、知的発達におくれはないものの学習面や行動面で著しい困難を持っていると担任教師が回答した児童生徒の割合は六・三%とされているところでございます。
 今後、厚生労働科学研究などを活用しまして、発達障害に関するきちんとしたデータの把握に努めてまいりたいと考えております。

○市村委員
 きょうは文科省の方もいらっしゃっていると思いますが、今の六・三%の数字は、大体現状をある程度正確に反映するものと考えていいんでしょうか。

○山中政府参考人
 今の六・三%という数字でございますけれども、これは平成十四年度に文部科学省が実施いたしました通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査というものを行いまして、これは、医師の診断を得てやったということではございませんで、その担当している教師が、こういう項目という項目を設定いたしまして、その項目の設定は専門家が設定したものでございますけれども、それに該当するという可能性のある子供の数を調査したところ、それが六・三%程度の割合であったということでございます。

○市村委員
 今御答弁の中に医師の診断という言葉がありました。発達障害というのもまた、まさに今の定義のことでもかなり法律の作成段階でも議論になったと聞いておりますが、現状において発達障害の診断を専門医に受けるためには何カ月も待たなければならないというふうに聞いておるんです。
 ところで、この本法の定義するところの発達障害を診断できる医師の方は、今現在どれぐらいいらっしゃるとお考えでしょうか。

○塩田政府参考人
 発達障害者の方を支援する上で、正確な診断ということが必要でありますし、そのためには専門的な知識や技能を持つ医師の確保が非常に重要だと考えております。そういう専門家の数が少ないというのは御指摘のとおりでございます。
 一例で申し上げますれば、日本児童青年精神医学会が認定医制度を設けておりますけれども、全国で百六名ということでありまして、二十歳未満人口十万人当たり〇・四二人ということでございまして、専門家をどう養成するかということが非常に重要であると思っております。
 この法案の成立を契機に、厚生労働省といたしましても、児童精神科あるいは児童福祉の専門の医師の養成をしたいと思っておりまして、これは、さきの質疑の中でも申し上げましたが、平成十六年のうちに検討会を設けて検討したいと思っておりますし、来年度の厚生科学研究においてもそうした研究をしたいと思って、今後とも努力したいと思っております。

○市村委員
 最初に小宮山委員の方からもありましたように、やはり百六人というのでは余りにも少な過ぎるということであります。これからだと思いますが、ぜひとも、そうした施策に対応していただきたいと思います。
 実は、診断についても、私が聞いているところによりますと、発達障害の対応が最も進んでいると言われる米国では、安易に医師が診断を下して薬を処方するという問題も指摘されているようであります。
 そうした観点からすると、勉強不足の医師による安易な判断は避けなければならないということが思われるわけでございますが、私としては、医師の判断のみを絶対の基準とするのではなく、心理系、福祉系、教育系の立場の方々が参加する総合的な診断が必要となってくると考えておりますが、その点、いかがでございましょうか。

○塩田政府参考人
 御指摘はそのとおりだと思います。
 特に、発達障害は、医療的なケアというよりは、発達障害をいろいろな地域の人たちが受け入れ、そして発達障害を持つ方々の障害の特性に応じていろいろな日常生活のサポートをするということが大事でありますので、医師のみならず、心理系、福祉系、教育系、さまざまな専門家の養成が必要ですし、それとあわせて一般の地域住民の理解ということが不可欠だろうと思います。
 この法案を契機に、いろいろな角度で努力をしていきたいと思っております。

○市村委員
 次に、特別支援教育についてちょっとお聞きしたいと思います。
 これは、文科省の皆さんへの質問なんですが、ここ数年、文科省の方で、主に発達障害を対象にした特別支援教育のモデル事業を進めているとお聞きしています。その文科省の進めてきた特別支援教育では、発達障害者に対してどのような対応をとってきたのでしょうか。例えば、教育現場における発達障害関係の研修機会をふやす予定はありますでしょうか。よろしくお願いします。

○山中政府参考人
 お答え申し上げます。
 発達障害のある子供さんたちへの教育につきましては、かなり高度、かつ、あるいは専門的な知識、経験というものが先生方にも求められるというふうに思っております。
 そういう意味で、例えば、国立特殊教育総合研究所でございますけれども、ここで、発達障害の子供たちへの対応に指導的な役割を果たします先生方、こういう先生方に対する研修でございますとか、あるいは、それぞれ個別の学校で、保護者を含めました関係者の方々、あるいは学校の外の専門家の方、そういう方と連絡調整をしていただけるような、特別支援教育コーディネーターというふうに呼んでおりますけれども、こういう方の養成ということも行っているところでございます。
 また、各都道府県におきましても、こういう方がまた都道府県に戻りまして、それぞれの県での実情に応じました研修の充実といったものも図っているというところでございます。

○市村委員
 今、特別支援教育のことを申し上げましたが、このたびの発達障害者支援法案の中に出てきます発達障害者支援センターと特別支援教育センターとの連携というのはどうなっていくのか、これについては文科省、厚生労働省、それぞれからお答えいただきたいと思います。

○山中政府参考人
 今現在、文部科学省で特別支援教育推進モデル事業というものを行っておりますけれども、この中で、特別支援連携協議会というものを設けまして、教育界だけでなく、学校、教育委員会だけでなくて、いろいろな福祉、労働等の関係の機関とも連携しながら、しっかりとした支援をしていこうということで取り組んでいるところでございます。その場合、当然、発達障害者支援センターというようなものもその連携する先として含まれてくるというふうに考えております。
 実際には、現在全国で十九カ所でございますか、発達障害支援センターがございますけれども、このモデル事業の中でも、特別支援連携協議会の中にそのセンターの方が加わっていただいている事例、あるいはセンターとこの協議会が連携いたしまして研修を実施している事例というところもあるところでございます。
 今後とも、福祉、労働等の関係の機関と連携しながら、この協議会もしっかりと御支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩田政府参考人
 発達障害者支援センターはこれから大きな役割を果たすと思っておりますが、現在全国で十九カ所でありますので、これをまず全国、全都道府県、全政令指定都市にふやすということが前提となりますが、文科省サイドの教育センターと発達障害者支援センターの連携が必要です。来年度予算で、両者も加わった、福祉と教育サイドが垣根を取り払った協議会をつくって支援をするような仕組みを考えているところでございます。
 今後とも、教育と福祉の垣根を取り払うということが大事ですし、この法案がその契機になると考えているところでございます。

○市村委員
 ありがとうございます。
 次に、支援体制についてお伺いしたいと思います。
 発達障害者の発達支援に当たっては、早期発見、早期対応が重要と言われています。学校での対応は特別支援教育の導入などもあって少しずつではあっても対応が進みつつあるようでありますけれども、例えば就学前、保育園や幼稚園の対応はまだまだとお聞きしておりますが、まず、保育園では、この法律制定を受けて次年度以降どのような対応を行うのか教えてください。

○伍藤政府参考人
 障害のある子供に対する保育についてでございますが、これまでも保育所の保育指針というのを定めて、一人一人の子供の発達や障害の状態を把握して保育する、こういうことを基本にしておりまして、障害児保育もできるだけ幅広く取り入れるようにということで進めてきております。
 それから、障害児の保育に関する保育士さんなどの研修を充実する、こういうことも取り組んでおりますし、それから、軽度のものも含めて、障害児を一定数受け入れた場合に、その保育所に助成措置を講じる、こういう施策も講じているところでございますので、こういった施策を来年度以降も引き続き充実をさせ、それから、新たに、発達障害児、こういう概念も出てまいりますので、こういったものにきめ細かく取り組めるように努力していきたいと思っております。

○市村委員
 ありがとうございます。
 それでは、幼稚園の方では、この法律制定を受けて次年度以降どのような対応を行うか、よろしくお願いします。

○山中政府参考人
 お答え申し上げます。
 幼稚園でございますけれども、幼稚園におきましても、発達障害を含めました障害のある子供たちの受け入れということ、あるいは指導の充実ということを図ってきたところでございますけれども、平成十五年から、幼稚園における障害のある幼児の受け入れや指導に関する調査研究というものを市町村の教育委員会に委嘱して実施しているというところでございますし、また、来年度の概算要求でございますけれども、幼稚園それから高等学校等も含めまして、一貫した障害を持つ子供たちへの支援体制を構築するというために、特別支援教育体制推進事業というものを四十七都道府県で行いたいというふうに思っているところでございます。

○市村委員
 ありがとうございます。
 次に、早期診断についてちょっと御質問したいと思いますが、早期診断の重要性は言うまでもないということであります。
 ただ、正確な診断を行える専門家が少ないという現状において、いたずらに診断を下すことによりまして混乱が生じる可能性もあると思われまして、例えば母子保健法に基づく健康診査での早期発見が規定されておりますけれども、実際に診断を行う医師や保健師が正確な診断を行えるようにするためにはどのような支援を行うのか、これについてもよろしくお願いします。

○伍藤政府参考人
 現場でこの発達障害児の支援に当たる医師や保健師、こういった者の専門知識の普及というのは大変重要なことでありますので、従来から保健師等による保健指導、こういったものの充実を図るためにいろいろなマニュアルをつくって自治体に配付をしております。それから、来年度の概算要求におきましても、自治体の保健師等を対象とした研修を実施するということで要求をしておるところであります。
 それから、いろいろな各種研究でございますが、今年度内に私ども検討会を立ち上げて、先ほど来議論がありますが、小児科とか児童精神科の領域のこういった医師の確保についての検討を始めたいと思っておりますし、来年度の科学研究費の中におきましても、こういった子供の問題に対応できる専門医の確保、育成のあり方、こういったものの研究をしていきたいというふうに考えております。

○市村委員
 同様に、厚労省さんへの質問なんですが、就学時の健康診断を行う医師等が正確な診断を行えるようにするためにはどのような支援を行うのか、お願いいたします。

○尾山政府参考人
 文部科学省でございます。
 発達障害につきましては、ある程度の期間の観察が必要と考えられますので、一回の検査で十分に判断することは困難であること、また、現在各市町村において専門家の確保に困難を伴う場合があると考えられること等の理由から、現時点におきましては、就学時の健康診断だけでは十分に発見することは困難であると考えております。
 しかしながら、今後、発達障害の早期発見という観点からは、入学後の学校生活における観察等を通じてだけでなく、就学時健康診断に当たりましても、できる限り正確な診断、発達障害の早期発見に努めていただくことが重要であると認識しております。
 このため、文部科学省といたしましても、現在、学校・地域保健連携推進事業というものを進めておりますが、これは学校と地域保健が連携し、健康相談活動について円滑な運営ができるよう専門医を学校へ派遣している事業でございますけれども、こういった事業を通じまして学校が精神科医や小児科医などの地域医療の専門家に相談し指導を得られるような体制を整備することでございますとか、あるいは、発達障害児の教育支援を行う体制を整備するため策定しましたガイドラインの試案につきまして、都道府県教育委員会等の御意見等を踏まえて必要な見直しを行いまして、都道府県教育委員会等にお示しすることなどにより支援してまいりたいと考えておるところでございます。

○市村委員
 厚労省さんからはないということで、まあ、今のでよしとします。
 次に、権利擁護について御質問したいと思います。
 例えば、発達障害に熟達した専門家の適切な診断と配置が行われなければ、発達障害者の中でも攻撃性の強い児童生徒などに対して、本人の発達を促すという名目で、親の意思や本人の意向を無視して、薬の投与など治療の強制を行う可能性があるのではないかという不安があるとも聞いています。
 そうした場合を含めて、第十二条にもあります権利擁護が非常に重要になってきますけれども、具体的に就学期の児童生徒に対してはどのように権利擁護を行うことを想定しているのかということで、文部科学省の方からお願いいたします。

○山中政府参考人
 お答え申し上げます。
 薬の投与等のところはまた医療的な行為ということになろうかと思いますけれども、学校現場におきまして、今回の法律の対象になりますような発達障害のある子供さん方、この教育を行うという上では、この法律にございますように、権利擁護といったものに十分配慮して支援を行っていくということが必要になるというふうに考えております。
 発達障害を持つ子供の指導につきましても、保護者の理解、協力、これが不可欠でございますので、非常に重要でございますので、指導に際しましては、保護者とも、よく説明し、あるいは理解を得ながら、協力しながら進めていくということが必要になってくるというふうに考えております。
 こういうふうな観点から、文部科学省におきましては、小中学校の体制整備ということで、ガイドライン、試案でございますけれども、これを作成いたしまして、すべての教育委員会あるいは小中学校に配付しておりますし、また、先ほど申し上げましたような研修というものを通じまして、発達障害に関します教育に携わる者の理解、これを深めていくということをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

○市村委員
 現代、いろいろ薬が大変進歩してきまして、いろいろな形で、この状況にはこうした薬を打てばいいということがだんだんわかってきている昨今でありますけれども、やはり、だからといって、では、騒げば薬を打てばいい、攻撃性が強いから薬を打てばいい、こういうことではないということでございますので、その辺はきちっと踏んまえていただいて対処していただかなきゃならないと思いますので、そこをぜひとも強調しておきたいと思います。
 それから、就労支援につきまして質問させていただきたいと思いますが、やはり、何といいましても、発達障害者の皆さんにとってみれば、周りの理解を深めるという意味でも就労支援が非常に重要だろうと思います。
 発達障害を持つと思われる方々は、適切な教育を行われれば働くことができ、しかも納税者になることができると期待されております。その意味で、発達障害者支援センターではどのような体制で就労支援を行うんでしょうか。よろしくお願いします。

○塩田政府参考人
 発達障害者支援センターでは、心理療法を担当する職員、それから相談支援を担当する職員のほか、就労支援を担当する専門職員を配置することとされているところでございます。その就労の担当の職員というのは、授産施設などで障害者の就労問題の経験がある方が配置されるものと考えております。
 実際の仕事としては、障害を持つ方が職業生活を送る上でのいろいろなルールをマスターしなければいけませんので、そういうルールをマスターするための支援でありますとか、あるいは、企業に出ていって企業の理解を得るべき努力、企業の方が障害を理解してもらえれば、御指摘があったように、発達障害を持つ方もちゃんと働くことができるわけでございます。
 それから、後ほどまた御答弁があると思いますが、ハローワークとかいろいろなさまざまな地域の機関との連携とか、そういったことを発達障害者支援センターの職員は行うことが期待されていると考えております。

○市村委員
 その今の発達障害者支援センターでは、例えばジョブコーチ制度の導入などは考えていないんでしょうか。

○金子政府参考人
 ジョブコーチの関係についてのお尋ねでございますが、私ども、今、ジョブコーチ制度ということで、障害者職業センターというところにジョブコーチを配置するほかに、協力型ジョブコーチ制度というのがありまして、これは地域の社会福祉法人等にお願いをしております。現に、今ございます自閉症・発達障害支援センターにおきましても、協力機関型のジョブコーチということで、幾つかのところで配置をお願いしているところでございます。取り組んでいただいているところでございます。
 この法律によります発達障害者支援センターにつきましても、こうした形でのジョブコーチ制度の利用を進めていただけるように対応を図っていきたいというように考えております。

○市村委員
 今、障害者職業センターの話が出ました。現在、障害者職業センターがあるんですが、そこの障害者職業センターでも、今後、発達障害者の方々のために就労支援を積極的に行う用意はあるのかということではいかがでしょうか。

○金子政府参考人
 障害者職業センターでの取り組みについてのお尋ねでございますが、現在、障害者職業センターにおきまして、職務評価でございますとか職業準備訓練、あるいは先ほど申し上げましたようなジョブコーチによります支援、こういったことが発達障害者についても支援の対象となっております。ただ、現状を見てみますと、まだ極めて限られた状況であるというふうに考えております。
 また、一方で、効果的な支援技法というものの開発というのもこれから進めていかなければならない状況ではないかと考えておりまして、こうした面で、今現在、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の方におきまして、新たな支援技法の開発について研究、検討を有識者の方に集まっていただきまして行っているところでございます。
 こうした成果も踏まえて、今後、発達障害者の就労支援に障害者職業センターとしても積極的に取り組んでいきたい、このように思っております。

○市村委員
 ありがとうございます。
 この法律が今度できて、施行が来年の四月一日でございますので、来年度以降、発達障害というものに対する理解、実は発達障害ということだけじゃなくて、先ほどからも議論がありますように、やはり障害というものに対する理解が深まっていかなければならないのではないかというふうに思います。
 私の知り合いの方は、竹中ナミさんですけれども、いや、チャレンジドだと。チャレンジを生まれながらにして、生まれながらなのか、後生的に事故で肢体不自由になった方もいらっしゃいますけれども、やはり、チャレンジを授けられた、与えられた人なんだということで、呼び名もされていますし、チャレンジドを納税者にということで御努力されている方もいらっしゃいます。
 とにかく、障害というものに対する私たちの意識を変えて、これを前提としながら、しかし、それをいかに社会的によりよい方向に持っていくということ、そしてまた、先ほどからも議論がありますように、いわゆる健常者と原則分離じゃなくて、原則的に一緒、ただ、その中で、与えられたものといいますか、与えられた状況というものをしっかりと認識しながら、社会の中でお互いに貢献できるような、そうした状況をつくっていくことが大切じゃないかと思います。
 ことしの通常国会でも、障害者基本法がこの内閣委員会を経て成立しております。我が党の委員の中にも、この障害者基本法と発達障害者支援法との関連性について疑問を付する委員の方がいらっしゃったことも、私も重々承知しています。
 だから、今後、ぜひともそうしたことがもっとしっくりとうまくいくように、また、きょうも結局、厚生労働省さんそれから文部科学省さんと二つの省庁の方がいらっしゃっているんですけれども、こういった面でも、やはり、もっと障害という切り口で、チャレンジドでも何でもいいですが、そうした切り口で、お互いもっと、もちろん省庁の皆さんだけじゃありません、私たち国民全体が認識を深め、協力できるような体制をつくるということが大切だと思いますので、このことを最後に申し上げて私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○松下委員長
 次に、山口富男君。

○山口(富)委員
 日本共産党の山口富男です。
 日本の障害者施策を振り返りますと、身体、知的、精神障害者とその対象を広げてきて、現在、総合的な障害者福祉法の制定に前進すべき時期だと思います。
 それから、国連の場合も、完全参加と平等を掲げた国際障害者年の取り組みがあり、その後、今日では二十一世紀の最初の国際的な人権条約である障害者権利条約の策定作業に入るという動きです。
 このように総合的な障害者福祉法の制定への流れの中に本法案を位置づけますと、私は、障害者基本法との関係では個別法になりますし、現在の法制においていわゆる谷間と言われる人たちに対する支援の問題では、公的な支援をつくっていく政策的な立法になっていくというふうに思うんです。
 まず、厚生労働省にお伺いいたしますけれども、本法案が対象にしております一連の障害の分野に対しての支援が大変おくれていたというふうに指摘されているわけですが、なぜこうした事態が生まれたのか、これをどう考えているのか、まず示していただきたい。

○塩田政府参考人
 発達障害を持つ方々に対する施策は、委員の御指摘のとおり、かなりおくれていることは事実だろうと思います。知的障害を持つ方々については知的障害者福祉法によるサービスが提供されておりますが、知的障害を持たない方々についてはいわゆる制度の谷間であったということでございます。
 日本の法制度、障害者に対する法制度が個別分野ごとに発展してきた、そういう時代の制度的な経緯の中で、十分な対策が講じられなかったということでありまして、先ほど委員が御指摘になったように、障害者基本法は、原因のいかんを問わず、すべての障害者を対象にした基本法であります。最終的には、その障害者基本法と整合性のとれた包括的なサービス法を目指したいと思っております。
 この発達障害については、きょう、いろいろな議員の御指摘を受けておりますが、一見して障害がわかりづらかったということとか、専門家がいなかったということとか、いろいろな事情で施策として取り組んでこれなかったということであります。この法案を契機に、いろいろな施策を講じて、最終的にはほかの障害と同じような制度ができるような努力をしていきたいと思っております。

○山口(富)委員
 私は、今塩田部長が指摘をされた点につけ加えまして、もう一点、行政側の姿勢の問題があるというふうに痛感するんです。
 きょう、何人かの委員が指摘されましたけれども、一九九三年の障害者基本法改正時の国会の附帯決議、これをもう一度振り返りますと、「てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。」というふうになっていたわけですが、私は、やはりこの方向が行政の分野に生かされなかったということも厳しく見る必要があると思うんです。
 そのことを冒頭に申し上げたいのは、ここでやっと立法化がされていくわけですから、それを踏まえての、もちろん立法府も仕事をいたしますけれども、行政の姿勢が非常に大事になっているので、その点つけ加えておきたいと思うんです。
 法案に入りたいんですが、第二条で、発達障害について政令で定めるということになっております。
 これにつきましては、いろいろな団体から、きょうの答弁の中でも、先ほど、当事者団体それから支援された方々の団体、たくさん名前が挙がりました。私たち議連の委員のところにも日本てんかん協会からも要望が参ってきているんですけれども、この政令について、先ほど塩田部長は、丁寧に、公正にやるんだという話がありましたが、必ず関係団体の意見をよく聞いて定めるようにしていただきたい。

○塩田政府参考人
 この発達障害者支援法の対象につきましては、法律で、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」ということになっているところでございます。
 ですから、三つの要件がありまして、自閉症などとの類似性、それから脳機能の障害であること、それから症状が通常低年齢において発現する、この三つの要件を満たすものが政令で対象になるということだろうと思います。
 この法律の趣旨が、制度の谷間にある方をなるべく拾っていろいろな支援の手を差し伸べようという法案の趣旨ですから、この法律の趣旨に沿ってなるべく広い障害を対象にしたいと考えているところでございますが、その政令の制定に当たりましては、パブリックコメントも含めまして、関係の方々、障害者、当事者の方々、いろいろな意見を丁寧に聞いて、透明かつ公正な手続のもとで定めていきたいと思っております。

○山口(富)委員
 さて、具体的なこの分野の支援といった場合に、乳幼児期から成人にかけてのライフステージに応じて連続的な支援が必要になるのと、地域からの支援が当然必要になってくるわけです。
 特に、発達障害の場合に、早期の発見と適切な診断、また療育によって、二次的な社会的不適応が相当改善されると言われております。それだけに、本法案が第一条の「目的」に早期の発見、支援を掲げて、そして第三条で早期発見のための必要な措置を講じるとしたのもそのためだと思うんです。
 それで、公的支援といった場合に、早期発見につながる機会の確保が大変大事になるわけですけれども、特に乳幼児期の健康診査につきましては、これが早期発見の機会になるわけですが、第五条でも、その点につきまして、母子保健法それから学校保健法にかかわる問題が指摘されております。
 今、母子保健法の問題で、一歳六カ月健診で重度の精神遅滞や自閉症、それから三歳児健診では中程度の精神遅滞、自閉症に気づくきっかけになると報告されています。
 この点につきましては、厚生労働省などが行っております発達障害支援に関する勉強会、随分大部の記録集になっておりますが、これを見ますと、この問題での提案や現状の分析がかなり突っ込んで展開されているように思います。
 そこで、お尋ねしたいんですが、この母子保健法に基づく乳幼児健診で、これまでどの程度発達障害児について見出すことができたのか、示していただきたい。

○伍藤政府参考人
 発達障害につきましては、明らかな行動障害や対人障害などの特徴的な症状が集団生活を行う年齢になるまでなかなか明らかとならない場合がある、こういった特徴を有しておりますし、それから、この分野に関する専門家がまた少ないというような問題もありまして、一歳六カ月健診あるいは三歳児健診における早期発見はなかなか難しいという指摘がなされておりまして、現状において、この健診で発達障害児をどの程度発見しているかということは十分把握されていないところは正直なところでございます。
 そのため、私ども、厚生労働科学研究におきまして、こういう乳幼児健診における発達障害への対応、あるいはその後の地域支援体制をどうするかということを、今研究を始めたところでございます。

○山口(富)委員
 定量的な分析がないということなんですが、しかし、私は、初めから乳幼児健診で発見するのは難しいと決めてかかることは全く必要ないと思うんです。
 この勉強会の第二回目に、これは自閉症協会の氏田さんが「早期発見・早期診断」というテーマで、ある資料を提出されています。
 これを見ますと、幾つか事例が挙がっているんですが、一歳半健診時で、指さしができず、パニック状態で泣き叫び続けて別室に呼ばれた。ところが、言葉が幾つかできたものですから、異常は認められないと判断された。その後、御両親が心配になりまして、三歳になったころに、インターネットなどを使って、どうもお子さんの行動が小児の自閉症に該当するんじゃないかと思って、児童相談所に相談した。そうしましたら、お母さんの気にし過ぎでは、もっと穏やかな気持ちでゆっくりとかかわってほしいという、有効な助言が得られなかったという話があるんですね。
 となりますと、今必要になってくるのは、乳幼児健診が早期にこれに気づく一つの重要なきっかけになるわけですから、そういう位置づけを与えながら、児童相談所ですとか市町村の児童相談の窓口、保健所、それから保育所、幼稚園、こういうところとの有機的な連関の中で対応していくという取り組みが非常に大事になると思うんです。この点はどういう考えをお持ちなんでしょうか。

○伍藤政府参考人
 先ほど言いましたような研究を進めてまいりまして、科学的な知見を積み重ねていきたいということが一つでありますし、それから、今御指摘のありましたような保育所、幼稚園その他いろいろな機関がかかわるわけでありますから、そういったところとのお互いの連携、それから情報の交換、これは大変有意義なことだと思いますので、そういった観点から、私どもも少し、幼保の連携、そういったものについても配慮していきたいというふうに考えております。

○山口(富)委員
 ぜひ、連携を持った対応を図っていただきたいと思うんです。
 次に、自閉症やアスペルガー症候群などについて、診断や訓練の手法がなかなか確立していないということをよく聞くんですけれども、先ほどの質疑でもありましたが、専門医の方が少ないというのも勉強会での共通認識だと思います。
 それで、本法案ですと、十九条で「専門的な医療機関の確保」がうたわれます、それから二十四条で「調査研究」を定めているわけですが、一つお尋ねしたいのは、診断する医療機関の拡充、診断評価方法の充実、こういう十九条、二十四条で定められた方向でどういう仕事を進めるのかというのを一点聞きたい。
 それからもう一点は、二十二条と二十三条なんですけれども、ここで医療、保健、福祉、教育等に従事する職員への研修などというのが挙がっているわけですけれども、法案に対応した取り組みについて、今後どういう強化を目指すのか。この二点、答えてください。

○塩田政府参考人
 この発達障害者支援法の趣旨を実現するためには、専門家の養成、それから専門的な機関の拡充ということが不可欠だろうと思います。
 研修について、来年度予算で、国立神経センターでの研修とか、いろいろ新たな医師、保健師などを対象とした研修もやりたいと思っておりますし、医療機関の整備も非常に大事だろうと思っております。また、厚生科学研究などを使ってそういう専門家の養成をどうすればできるとか、いろいろなこれまで着手していない問題がたくさんございますので、この法案の趣旨を受けて努力をしていきたいと思っております。

○山口(富)委員
 塩田部長、来年四月一日が施行日になりますね。そうすると、そう日にちがないわけです。今言われたように、各分野での具体化を一気に図っていくとなると、これは、関係の例えば文部科学省と厚生労働省の関係を密にした対応をやっていくのか。どういう形で四月一日施行に向けての体制というのをとっていくんですか。

○塩田政府参考人
 冒頭御質問されましたように、発達障害者に対する支援、制度として大変対応がおくれてきたということであろうと思います。
 こうした反省に立って、ことしの初め、一月だったと思いますが、発達障害の当事者の団体の方々、専門家の方、それから文科省と厚生労働省が一緒になっていろいろ勉強して、どういう対策を連携してすることができるか、そういう中で、国会の先生方がそれを支援するという観点からこの法案を立案していただいたということであろうと考えております。
 この法案ができることが、これまで不十分であった対策の出発点になるということだろうと思います。そういう意味で、今現在、十分な取り組みができていないということはそのとおりでありますけれども、この法案によってこれから始まる。それから、来年度も、今まで二億円程度の予算でありましたけれども、ほかの分野に比べれば非常に少ないんですが、八億円を超える予算、新たな取り組みの予算、概算要求もしておりますので、この法案の成立を待って、いろいろな取り組みが省庁間の垣根を取り払ってできるように努力をしていきたいと思っております。

○山口(富)委員
 私も、皆さんがことし勉強会を開いて、関係団体の皆さんの意見も聞きながらいろいろな努力をされ始めたということはよく知っております。
 その中で、鳥取大学の小枝達也さんが、鳥取県の五歳児健診の経験を大変評価されているわけです。この中で、昨年度、鳥取県で三三・三%で実施された、今年度は六九・二%だということなんですが、事前に両親の方に健診票をお渡しして、それから保育所や幼稚園などの集団生活の状況も把握して五歳児健診に当たるという仕組みになっているらしいんです。
 既に、先ほどのお話の中でも、厚生労働科学研究として小枝さんを主任研究者とした研究が始まっているということの紹介がありましたけれども、私は、この五歳児健診なども含めて、有効な提案や経験については積極的に検討して国の施策に生かすべきだと思うんですが、これについてはどういうお考えですか。

○伍藤政府参考人
 本年度から開始をいたしました厚生労働科学研究におきまして、先ほど申し上げましたような二つの研究事業を行っておりまして、その一つが御指摘のありました小枝先生の鳥取大学による研究でございます。
 その中で、鳥取県は先駆的に五歳児健診ということをモデル的にやっているわけでありますが、こういう研究事業の中で、五歳児健診の有効性とか、発達障害、こういったものに対してどのような効果があるのか、それから地域支援のあり方としてどういうことが考えられるかといったことが成果としてまとまってまいりましたら、私どもも、それを一つの考え方として全国にまた提示をするというようなことも考えてみたいというふうに思っております。

○山口(富)委員
 では、続いて文部科学省にお尋ねします。
 ちょっと時間が押し詰まってきましたので、二点まとめてお尋ねします。
 一つは、文部科学省の昨年九月一日現在の調査で、小中学校におけるLD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒への教育支援に関する体制整備の実施状況調査結果という報告があります。
 これを見ますと、検討する校内委員会というものが小学校、中学校合わせて六一・七%に設置されている。それから、発達障害にかかわる実態把握の実施状況を見ると、小中合わせて五八・九%だ。やっと始まったところという感じなんですが、ところが、個別の指導計画や教育支援計画の方になりますと、これはもちろん強制や画一的なものにしちゃいけないわけですけれども、極めて少ないんですね。個別の指導計画の方は小中合わせて二二・九、教育支援計画の方は一四・四なんですね。この現状についての評価と今後の改善についてひとつ示していただきたい。
 それからもう一つは、先ほど就学時健康診断について話があったんですけれども、先ほど述べられましたけれども、学校保健法施行令の第二条の七項にかかわってくるわけですね。この七項が「その他の疾病及び異常の有無」という、これしかないわけですけれども、これは母子保健法の方は比較的、もう少し障害を見るという視点が入っているものになっているんですが、この施行令を改定するのか、あるいは無理やりこの七項目で読もうとしているのか、そこはどうなのか示していただきたい。

○山中政府参考人
 一点目でございますけれども、先生御指摘の校内体制と申しますか学校内の体制整備の状況、あるいは個別の支援計画の問題でございますけれども、現在、担任の先生だけが悩む、あるいは保護者の方だけが悩むということではなくて、やはり学校としてしっかりとした体制をつくって発達障害のお子さんたちを支援できるような、そういう体制をつくっていこうということでのモデル事業を進めているところでございます。
 先生御指摘の調査は、昨年、平成十五年の九月一日現在のものでございますけれども、平成十五年から、個別の支援計画につきましては、その作成についてのモデル事業もやっているところでございますが、御指摘のとおり、個別の教育支援計画でございますと一四・四という状況でございます。
 さらに、これをまた、ことしも九月一日の状況を今現在調査しているところでございますけれども、さらに、それぞれの学校におきましてしっかりとした取り組みができるような体制づくりというものを進めていきたいというふうに考えております。(山口(富)委員「もう一点、学校保健法の方も」と呼ぶ)

○松下委員長
 文部科学省尾山総括官。
 簡潔明瞭にお願いします。

○尾山政府参考人
 先生の御指摘にございましたように、学校保健法施行令第二条第七号「その他の疾病及び異常の有無」という規定に基づきまして、今後、発達障害の早期発見という観点から必要な対応を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

○山口(富)委員
 見直すわけですね。
 時間が参りました。
 三年後の見直しですから、これをきちんと仕事していただいて、有効な見直しになるように仕事を進めていただきたいと思います。
 終わります。

○松下委員長
 これにて発言は終わりました。
 お諮りいたします。
 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

○松下委員長
 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。
 なお、本法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○松下委員長
 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十二分散会


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