戻る

有期事業(建設事業)に係るメリット増減幅について


 メリット制の現状

 労災保険のメリット制は、一定の要件(継続事業については一定の規模以上、有期事業については確定保険料又は請負金額等が一定額以上のもの)を満たす事業について、個々の事業の労災保険の収支(メリット収支率)に応じて、非業務災害分を除く労災保険率又は保険料の額を、継続事業については±40%の範囲で、一括有期事業及び単独有期事業については±35%の範囲で増減させる制度である。

 建設事業等の有期事業におけるメリット増減幅が継続事業よりも低く設定されてきたのは、有期事業へのメリット制の導入当時、建設事業等においては重大災害が多発する傾向にあり、継続事業と同様のメリット増減幅の設定が、著しい保険料負担の増加とそれに伴う事業主の災害防止インセンティブの減退を招くおそれがあったためであり、それを避けるために有期事業と継続事業との間で増減幅に差が設けられたという経緯がある。


 「労災保険料率の設定に関する検討会」報告書を踏まえた見直しの方向性

 建設業における最近の災害発生状況は、度数率・強度率とも継続事業のメリット幅が±40%に拡大された昭和55年当時の調査産業計の水準を下回っている状況にあり、これまで継続事業との間でメリット増減幅に差を設けてきた合理的な理由はなくなってきている。

 従って、建設事業等の有期事業におけるメリット増減幅を継続事業と同じ±40%に拡大し、それにより建設事業の事業主による災害防止努力を一層促進していくのが適当ではないかと考えられる。


労災保険のメリット制について


 概要
 労災保険のメリット制は、一定の要件を満たす事業について、個々の事業の労災保険の収支率に応じて、労災保険率や保険料の額を増減させる制度であり、事業主の負担の公平性と災害防止努力の促進を目的としている。
 具体的には、過去3年間の実績からメリット収支率を算出し、その値に応じて、一定の範囲内で労災保険率(保険料の額)を増減させている。

 メリット収支率(考え方)= 業務災害に係る保険給付
──────────────
非業務災害分を除く保険料
×100

 「保険給付」は労基法相当額等の調整を行い、それに見合う調整を「保険料」にも行っている。

 メリット制の要件
 (1) 継続事業
 イ 100人以上の労働者を使用する事業
 ロ 20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、その労働者数に事業の種類ごとに定められた労災保険率から非業務災害に係る率を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの
 ハ 一括有期事業で確定保険料の額が100万円以上であるもの

 (2) 有期事業
 イ 建設事業であって確定保険料の額が100万円以上又は請負額1億2,000万円以上のもの
 ロ 立木の伐採の事業であって、確定保険料の額が100万円以上又は素材の生産量が1,000立方メートル以上のもの


メリット増減幅改正の経緯


年度 メリット増減幅 備考
継続事業 建設事業
(有期)
立木の伐採
(有期)
建設事業
(一括有期)
立木の伐採
(一括有期)
昭和22年度           労災保険法
の制定
昭和26年度 ±30%


        メリット制
適用開始
昭和30年度


±20%


       
昭和40年度





±20%


±20%


±20%


一括有期
事業の創設
昭和51年度 ±35%


±25%


±25%


±25%


±25%


 
昭和55年度 ±40%


±30%


±30%


±30%


±30%


 
平成13年度


±35%


±35%








 
平成14年度








±35%


±35%


 


災害度数率及び災害強度率の推移及びメリット増減幅の改定の変遷


 
 
調査産業計
(事業所規模100人以上)
林業
(事業所規模100人以上)
総合工事業 メリット増減幅
の改定経緯  
度数率 強度率 度数率 強度率 度数率 強度率 継続事業 有期事業
昭和50年 4.77 0.43 19.97 1.02 8.22 1.80    
昭和51年 4.37 0.36 22.78 1.34 5.96 2.26 ±35% ±25%
昭和52年 4.32 0.42 21.69 1.56 7.63 0.97
昭和53年 3.91 0.35 22.57 1.28 8.43 1.28
昭和54年 3.65 0.36 21.89 1.45 6.92 1.47
昭和55年 3.59 0.32 20.49 0.82 6.67 0.90 ±40% ±30%
昭和56年 3.23 0.37 17.80 1.15 4.55 0.90
昭和57年 2.98 0.32 17.99 1.15 2.71 0.55
昭和58年 3.03 0.30 18.06 1.48 2.28 0.88
昭和59年 2.77 0.34 18.65 1.46 2.20 0.39
昭和60年 2.52 0.29 15.02 1.17 2.09 0.22
昭和61年 2.37 0.22 13.87 0.57 2.89 0.37
昭和62年 2.22 0.20 13.39 1.02 2.55 0.54
昭和63年 2.09 0.20 11.68 1.29 1.96 0.50
平成元年 2.05 0.20 11.45 0.85 2.39 0.88
平成2年 1.95 0.18 11.10 0.73 1.76 1.71
平成3年 1.92 0.17 8.45 0.56 2.27 0.54
平成4年 2.13 0.15 9.97 0.25 1.97 0.71
平成5年 2.07 0.18 9.05 0.26 1.36 0.43
平成6年 2.00 0.20 10.07 0.38 2.40 0.45
平成7年 1.88 0.19 9.99 1.75 2.25 0.72
平成8年 1.89 0.16 6.90 0.10 1.25 0.61
平成9年 1.75 0.16 7.61 0.13 1.11 0.37
平成10年 1.72 0.14 5.47 0.07 1.32 0.39
平成11年 1.80 0.14 2.47 0.06 1.44 0.30
平成12年 1.82 0.18 (※) (※) 1.10 0.70
平成13年 1.79 0.13     1.61 0.47 ±35%
平成14年 1.77 0.12     1.04 0.28
平成15年 1.78 0.12     1.61 0.25
資料出所:労働災害動向調査報告(厚生労働省)

・度数率= 労働災害による死傷者数×100万 / 延実労働時間数
・強度率= 労働損失日数×1,000 / 延実労働時間数
(※)調査対象となった事業所が少ないため、公表しないもの


トップへ
戻る