資料No.2-1 |
(1) | 趣旨 我が国の産業界では、5万種類を超える化学物質が使用されているが、これらの物質の中には労働者に健康障害を生ずるおそれのあるものも多く存在している。 また、近年、国際的には「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム」(以下「GHS」という。)の推進、EUにおいては化学物質に対する厳しい規制の検討がなされているほか、我が国でもダイオキシン、石綿、シックハウス症候群等の化学物質による健康問題が社会的に大きな関心を集めるようになっている。 このような人への健康障害を生ずるおそれのある化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物(以下「化学物質等」という。)のうち法令で規制されていないもの(以下「未規制化学物質」という。)をすべて法令で規制することは現実的ではないことから、未規制化学物質の管理は事業者自ら、当該物質の有害性等と労働者の当該物質へのばく露レベルに応じて生ずる健康障害の可能性及び程度について評価(以下「リスク評価」という。)を行い、必要な措置を講ずる自律的な管理が基本である。 しかしながら、現に発生している職業性疾病のうち、未規制化学物質によるものが半数程度を占めていること、中小企業等では自律的な化学物質管理が十分でないこと等を考慮すると、労働者が有害性の高い物質を取り扱う作業であって、ばく露レベルが高くリスクが高いと想定されるものについては、国自らリスク評価を行い、その結果に応じて所要の措置を講ずる必要がある。 | ||||||||||
(2) | リスク評価の方法の概要 リスク評価においては、化学物質等の有害性の種類及び程度の特定、ばく露レベルに応じて生ずるおそれのある健康障害の可能性及びその程度(以下「量―反応関係」という。)、労働者の当該物質へのばく露レベルについて把握(以下「ばく露評価」という。)することにより、スクリーニング的なリスクの判定を行う。その結果、リスクが高いと判定された場合には、データ等について詳細に検証し、再度リスクの判定を行う(別紙「リスク評価の進め方」参照)。
| ||||||||||
(3) | 考慮すべき事項 リスク評価の実施に当たっては、次の事項について考慮する必要がある。
|
2 | 有害性の種類及び程度の特定 主要文献等を利用することにより、調査対象化学物質等の有害性について把握する。有害性はGHSのクラス分けに従い、急性毒性、皮膚腐食性・刺激性、眼に対する重篤な損傷性・刺激性、呼吸器感作性・皮膚感作性、発がん性、生殖毒性及び臓器毒性・全身毒性とする。 主要文献等から、日本産業衛生学会の提案している許容濃度(以下「許容濃度」という。)、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)で定める時間加重平均濃度(以下「TLV―TWA」という。)、無毒性量(NOAEL)、最小毒性量(LOAEL)、無影響量(NOEL)、最小影響量(LOEL)、有害性に係るGHSの区分等の量―反応関係に係る有害性データに関する情報を把握する。 |
(1) | 臓器毒性・全身毒性又は生殖毒性
物質が臓器毒性・全身毒性又は生殖毒性を有することを把握し、ばく露限界等について調査を行う。
| ||||||||
(2) | 急性毒性 急性毒性については、動物実験等のデータから得られた急性毒性に係るGHSの区分、LD50又はLC50の値、蒸気圧等のばく露に関係する物理化学的性状について把握する。 | ||||||||
(3) | 皮膚腐食性・刺激性又は眼に対する重篤な損傷性・刺激性 物質が当該性質を有することを把握する。 皮膚に対する不可逆的な損傷、若しくは可逆的な刺激性又は眼に対する重篤な損傷、若しくは刺激性を生じさせる有害性に係るGHSの区分について調査する。 | ||||||||
(4) | 呼吸器感作性又は皮膚感作性 化学物質等を吸入の後で気道過敏症を誘発する性質、又は当該物質との皮膚接触の後でアレルギー反応を誘発する性質について把握する。 | ||||||||
(5) | 発がん性 発がん性を有することを把握し、閾値がないと考えられている場合にはがんの過剰発生率を、閾値がないと考えられている場合以外の場合には、無毒性量等を把握する。 | ||||||||
(6) | データの検討 量−反応関係等から得られる有害性データについて、動物実験から得られたデータと人から得られたものがある場合には、原則として人のデータを優先的に用いる。 また、実験に基づくデータを使用する場合には、これらのデータが適切な手法を用いて得られたものであること等データの信頼性について十分調査する。 |
(1) | ばく露評価の手順 ばく露評価に用いるばく露レベルは、当該作業環境の空気中の濃度の測定又は個人ばく露濃度の測定により把握する。 ばく露レベルの把握の手順は次のとおりとする。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 調査対象物質及び取り扱い作業等の優先順位付けのための分類
| ||||||||||||||||||||||||||||||||
(3) | 作業環境の測定の対象とする作業の把握
| ||||||||||||||||||||||||||||||||
(4) | ばく露レベルの把握
|
(1) | 判定の概要 リスクの判定は、発がん性以外の場合には、原則として、作業に従事する労働者に対する化学物質等へのばく露レベルと、許容濃度、無毒性量 (NOAEL) 等を定量的に比較することにより行い、無毒性量 (NOAEL)等の値を文献等から把握できない場合には、評価対象としての優先順位を繰り下げる。発がん性の場合は、閾値がないと考えられている場合と閾値がないと考えられている場合以外の場合とに分けて判定する。 スクリーニング的なリスク評価において、リスクが高いと判定された場合には、有害性データ、作業環境の空気中の濃度の測定結果等のデータの検証、又は追加を行い学識経験者の意見を聴き詳細な検討を行う。 さらに、詳細な検討においてリスクが高いと判断される場合には、ばく露を防止するための所要の措置を講ずる。 | ||||||||||||||||
(2) | 判定の手順 リスクの判定に際しては、許容濃度、人に対する無毒性量(NOAEL)等を優先的に用いるが、当該値が存在しない場合には、動物実験等から得られた値を外挿して用いる。 無毒性量等を得ることができないクラスの有害性の場合には、量―反応関係、有害性等、ばく露労働者の数等を考慮することにより総合的にリスクの判定を行う。
| ||||||||||||||||
(3) | 判定基準 リスクは次の基準に従い判定し、必要な場合には詳細な検討の対象とする。
| ||||||||||||||||
(4) | 詳細な検討の手順
詳細な検討は次の手順によって行う。
|