04/12/24 第7回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会議事録          第7回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                       日時 平成16年12月24日(金)                          10:00〜                       場所 厚生労働省共用第7会議室 ○諏訪座長  定刻となりましたので、ただいまから第7回職業能力開発の今後の在り方に関する研 究会を開催させていただきます。  前回ですが、これまでの議論を踏まえ、論点整理案をご検討いただきました。その際 に出た意見等を踏まえ、さらに事務局が整理してくださっているので、その修正をした 論点整理案を踏まえて、皆様からさらにご議論をいただきたいと思います。まず事務局 からご説明をお願いいたします。 ○総務課長(妹尾)  資料Iは、「論点整理案」ということでお出ししています。いま諏訪座長からおっし ゃっていただいたように、前回お出しした論点整理案に、前回の議論、これまでの議論 を踏まえて加筆をしたものです。前回も説明したように、今後の議論をとりまとめてい く際の1つの骨子になるようなもの、考慮すべき要素を織り込んだものとして整理して います。  内容について説明いたします。柱立てとして、I「能力開発の現状と課題」、2頁の II「今後の施策の方向性」ということでまとめています。Iの中で「現状」と「今後の 課題」と分けています。  1の「現状」の中で、(1)「職業能力開発の現状について」という部分では、大掴 みで現状についての認識として3点書いています。能力開発の現在のシステムが企業、 産業のニーズ、個人、企業、教育訓練機関等のさまざまな社会の変化に即したものとな っているか。あるいはOJTが十分に取り組まれなくなってきている理由は何か。非正 規労働者の能力開発に対する意欲は総じて高いが、その機会は十分に提供されていない のではないか。こういう現状があるという認識です。  それに加えて、議論や報告をまとめていただく際に、「踏まえるべき社会・経済情勢 の変化」ということで、(2)でまとめています。(1)が「労働力の供給面の変化」で す。いずれの項目も人口に膾炙していますが、例えば少子高齢化の進行と労働力人口の 減少、「2007年問題」と言われる団塊世代の定年時期の到来があると考えています。イ タリックで書いている部分は、これまでの議論の中でのご指摘をかい摘んで書いていま す。「団塊世代の定年時期の到来は個別の企業に対してだけではなく、国際経済全体へ の影響を与えるものではないか」「団塊世代はものづくりの分野に集中していて、これ が2007年で引退することにより、企業にどのような影響を与えるのか」という指摘があ ったかと思います。それと関連しますが、ものづくり技能の衰退、他方で若年者問題の 深刻化、フリーターやニートの増加、労働者の意識の多様化、いろいろな場面での意識 の多様化の問題があるかと思います。職業生活の長期化があります。長期化に関して は、職業生涯が長期化していく中で、「特に中高年齢者の職業能力開発が重要だ」とい うご指摘がありました。  (2)ですが、反対に、「労働力の需要面の変化」です。経済のグローバル化の進展が まず考えられます。グローバル化に関しては、我が国の産業の空洞化の指摘がよくされ ますが、それと同時に、「日本に外資系企業が進出してくることが、国内雇用にどう影 響するのかということも考えるべきだ」とご指摘があったところです。その他、IT 化、技術革新の進展、知識社会化の進展、サービス経済化の進展、これらに伴う即戦力 志向、成果主義、人材育成への投資の減少等といった企業行動の変化があります。  企業行動の変化に関しては、即戦力志向がよく言われますが、企業内の人材育成を重 視している点もあります。即戦力志向傾向に合わせて、教育訓練の在り方を見直してい くべきなのか」あるいは「中長期的に見ると、即戦力志向傾向は企業にとって望ましく ないというとらえ方をするのか、いずれであるか」というご指摘がありました。「雇用 形態の多様化」については、「新規学卒者の正社員として就職している割合の減少傾向 をどう考えるか」というご指摘がありました。  このような現状に対応して、2として「今後の課題」ということで、関係者それぞれ について、今後の課題として何があるかという形でまとめています。労働者に関して は、いろいろなカテゴリーの労働者がいますが、「企業主導の能力開発に加え、個人主 導の能力開発を進めることが重要ではないか」というご指摘があったところです。企業 について言えば、「企業は今後とも能力開発の主要な担い手として位置づけるべきでは ないか」あるいは「事業主の能力開発への取組を検証した上で、ベストプラクティス( どうやればうまくいくか)を提示することが重要ではないか」「いかに企業が民間の教 育訓練機関を活用していくか、そういう情報も有益ではないか」とご指摘があったとこ ろです。  教育訓練機関については、民間と公共があるかと思いますが、例えば「社会人大学が 提供する教育訓練の内容が果たして企業、産業、社会全体のニーズにうまく合っている のか」というご指摘もありました。  行政について言えば、国と地方の行政の両方ありますが、その行政についてどう考え るか。例えば支援施策の在り方として、「助成金だけでなく、情報提供や時間面での配 慮を進める手法もあり得るのではないか」とご指摘があったわけです。  その他として、関係者としては労働組合などがあるかと思っています。組合について はヒアリングの際にも一度聞いたわけですが、そういう関係者についての課題をまとめ ていくことが必要だと考えています。  IIは、以上のような現状を踏まえた上での「今後の施策の方向性」ということです。 施策の方向性の各論に入る前に、職業能力開発の必要性や意義をまとめることが必要で はないかということで、1に書いています。能力開発の効果を提示できるようにするこ とが重要ではないか。能力開発をしたことで、企業、個人、社会全体にとって、どうい う効果があるのかを提示していく必要があるのではないかという点です。いまの点と関 連しますが、社会的に支援していくためには、人材投資の効果を測定する、あるいは効 果の測定の結果を示していくことが必要ではないかということもありました。効果とし て、教育訓練の究極のセーフティネット、社会にとってのセーフティネットであること が言えるのではないかということが意義の1つとして挙げられていました。  その上で、「必要となる今後の各施策の方向性」です。施策の方向性については、多 様なご意見をいただいていましたが、大括りに(1)として、「教育訓練機会の提供の 在り方」、(2)が「職業能力評価制度の在り方」、(3)が「職業能力開発を行うに 当たっての相談・情報提供の在り方」、(4)が「その他」ということで、事務局とし ては、いまのところこの括り方で示しています。  (1)の「教育訓練機会の提供の在り方」として、まず教育訓練の内容ですが、(1) で対象者や目的をどう考えていくか。対象者別にどのような支援が必要か、あるいは我 々が今後考える際に、どういう対象者を重点的な支援対象とするのか。雇用保険の枠外 の者、今ご承知のように行政施策的にいうと、雇用保険3事業で扱っている部分が非常 に大きいので、雇用保険の枠外の者あるいは非正規労働者に対しても施策をどうしてい くべきか。それからNPOなりNGOという、従来なかったような分野での就業者ある いは自営業者も増えていますが、そういう人の能力開発をどう考えていくか。先にも出 てきましたが、中高年齢者の能力開発をどうサポートしていくか。現在第一線で仕事を している人が、今後も第一線で仕事を続けられるような能力開発も重要ではないか、と いうようなご指摘がありました。  そのような訓練の内容を支えるための支援の内容として、(2)のところにまとめてい ます。支援の例としては費用を助成する、時間、情報提供、個人への直接の支援、企業 への支援など、切り口はいろいろあるかと思いますが、支援の問題点としては、例えば リカレント教育を受けたい人が受けられるような仕組の整備をどう進めていくか、さら に、企業に対する支援としては従来どちらかというと、その企業が金銭面でどのくらい 支援をしたかをメルクマールとして助成をしていたわけですが、金銭面のみならず、例 えば「企業が時間面でどう配慮したかもメルクマールにしてはどうか」というご指摘が ありました。能力開発を労働条件の1つとして、それを従業員に明示するような仕組の 整備も有益ではないか、助成金だけでなく、政策メニューとして規制緩和も考えるべき ではないか、マーケティングの発想も取り入れる必要があるのではないか、能力開発の 支援については個人に対する補助なり、税制の優遇措置、企業に対する教育訓練の義務 づけ、情報の提供については対企業、対個人などいろいろあると思いますが、情報提供 なり、情報のコーディネートなどもあり、それぞれのメリット、デメリットを踏まえた 上での検討が必要というご指摘があったところです。  (2)として、「職業能力評価制度の在り方」を挙げています。項目として挙げてい ますが、今のところ十分なご議論がされていないような部分ですので、項目だけの掲示 にしています。  (3)として、「職業能力評価を行うに当たっての相談・情報提供の在り方」という ことで、支援施策の一端ともいえますが、今後能力開発に関する相談・情報提供が重要 だろうということで特出しをしています。キャリア・コンサルタントの養成の関係で は、キャリア・コンサルタントの資格を取った者が社会的にどう活躍するか、あるいは 社会的に活用されているかを見せることが、キャリア・コンサルタントの普及に重要で はないかとご指摘のあったところです。  (4)の「その他」です。諸々のご指摘をいただいています。学校から職業の移行の 過程をどう作っていくか、社会が若者をどう受け入れるのかについて、もう少し検討す べきではないか、団塊世代が退職した後で技能継承をどう進めていくか、グローバルな 視点で見た場合に、日本において衰退した技能も近隣諸国では有意義なものもあって、 これをどう国内的に残すか、あるいは海外にどう伝えていくかという海外協力的な視点 も必要ではないかというご指摘が従来あったところです。  このようにまとめさせていただいて、これについてまた議論を重ねさせていただけれ ばと考えているところです。 ○総務課長補佐(佐々木)  資料II、追加資料として配っている分について説明します。資料IIは、今説明をした 資料Iのそれぞれの大きな項目ごとに、第1回目、第2回目辺り、前回のご議論などを 中心に、どんなご意見があったのかをさらに詳細にまとめたものなので、適宜ご参照い ただければと思っています。参考資料として配っているものですが、前回さらにデータ について追加のご要望のあったものを配っています。  1頁目です。「新規学卒者の正社員の割合が減っているのではないか」というご指摘 がありまして、資料として提出しています。こちらは平成13年に日本労働研究機構 で、「大都市の若者の就業行動と意識」という調査をしているものですが、これによる と、高校卒業直後は、正社員の比率が1989年、1992年卒と比べて、1997年、2000年卒の 辺りは、非常に減少しています。一方でパート・アルバイトの比率は大幅に上昇してい ます。  2頁です。「入社時の選社理由」ですが、こちらについては、能力開発というもの が、労働者が会社を選ぶ際の重要な労働条件になっているのではないかというご指摘が あり、それに対する基礎的なデータとして配っています。こちらはリクルート ワーク ス研究所で、「大学生の企業イメージ調査」というもので調べているものです。大学生 の入社時の選社理由ですが、一番高いのは「自分の興味・関心にあった業種である」と いうところですが、過去のものから選社理由として大幅に上昇しているのが、例えば 「職場の人間関係がよさそう」「職場に活気がある」「技術力・企画力に優れている」 「今後発展する可能性を秘めている」「自分がやってみたい職種につける」「仕事を通 じて人々に喜びを与えられる」「仕事を通じて専門知識や技術が身につく」といった理 由で入社する割合が増加していると言えるのではないかと思います。  3頁です。前回は職種別には出しておりましたが、「さらに企業規模別でデータはな いか」とのご指摘がありまして、提出しています。職種別では、管理職、技術・研究職 で、即戦力として活用するため、中途採用を実施した傾向が多く見られますが、企業規 模別に見ると、企業規模が比較的大きいほうが、即戦力として活用するために中途採用 を実施している傾向が見られます。企業規模が小さくなるにつれ、退職者の補充のため に中途採用を実施している傾向が見られるのではないかと思います。  7頁です。「雇用形態別転職率の資料」というご意見がありましたが、総務省の「労 働力調査」で転職率を見ると、非正規雇用者では1990年以降、だんだん転職率が高まっ ていると思われます。非正規雇用者に比べれば低い比率ですが、正規雇用者も徐々に高 まる傾向が見られるかと思います。  8頁です。就業形態別の離職率はどうなっているのかというご指摘がありましたが、 厚生労働省の「雇用動向調査」からの資料を提出しています。一般労働者は4年連続離 職率が増加しています。パートタイム労働者も過去3年は増加していたのですが、平成 14年時点では前年と比べて、26.4%と減少しています。  9頁は勤続年数です。就業形態別に勤続年数の状況はどうなっているのかというご指 摘がありましたが、一般労働者、パートタイム労働者ともに、勤続年数は増加傾向にあ ります。ただ、年齢階級別に見ると、20〜24歳、25〜29歳の層では、勤続年数が若干短 くなっている傾向が見られます。  11頁です。OJTの取組が薄れてきているのではないかというご指摘がありました が、こちらについては前回もお出ししている資料です。平成13年度と比べれば、平成14 年度にOJTを実施した事業所の割合は減少しています。12頁にOJT実施上の問題点 として、2000年に日経連が調査したものがあります。問題点としては、「多くの企業が 個々の管理者や先輩に任せきりにしている」「上司や管理者が忙しくなり部下育成にま で手が及ばない」といったことを理由として挙げる企業が多くなっています。  13頁です。非正規労働者への教育訓練が非常に重要ではないか、そういうデータがな いかというご指摘を踏まえて出しています。こちらについては、厚生労働省の「パート タイム労働者総合実態調査」のもので、パート労働者のものだけなのですが、計画的な OJT、Off-JTをパート労働者に実施している割合は、総計で、Off-JTは17.8 %、OJTは23.1%と、非常に少ない状況かと思われます。ただ、産業別、企業規模別 で多少バラつきがあって、産業別に見ると、小売業、飲食店、金融・保険業の辺りで、 特にOJTなのかもしれませんが、実施している状況は他の業種と比べて高いと思われ ます。 ○高橋委員  途中ですみませんが、「計画的なOJT」というのはどういう定義ですか。どういう 意味で、「計画的」というのかを後で教えてください。 ○総務課長補佐(佐々木)  14頁で、「社会人大学への進学率」です。学校基本調査によるもので、「社会人大学 への進学率」としていますが、大学院の年齢別入学者となっていて、年齢別で社会人が どうなっているかを調べられるかと思ったのですが、社会人が大学院にどの程度進学し ているのか、年齢別には今の時点ではわからず、一番下に修士課程、博士課程、専門職 学位課程の、社会人の入学割合は取れています。それによると、修士課程は約10%、博 士課程は24.5%、専門職学位課程は約50%が社会人の方となっております。  15頁も社会人大学の話ですが、社会人学生が占めている分野別の比率です。修士課程 では社会科学、博士課程では医・歯学、専門職学位課程では社会科学を専攻されている 社会人が多いという状況です。  16頁です。「専修学校の状況はどうなっているか」というご質問があったので、以下 に専修学校の資料をいくつか付けています。専修学校の数自体ですが、平成10年をピー クに5年連続で減少しています。  17頁は、どういった分野で勉強されているかです。資料自体が、東京都の専修学校各 種学校協会が出されている「専修学校教育白書」で、東京都の状況のみになっています が、専門課程では工業、医療、衛生、文化・教養で学生が多い状況です。高等課程では 医療、衛生、服飾・家政に占める割合が高くなっています。一般課程では圧倒的に文化 ・教養に学生の占める割合が高くなっています。  18頁は「専修学校の在校者数の推移」です。平成6年度以降、全ての課程で在籍者数 は若干減少する傾向にあったのかと思われますが、平成11年度以降は専門課程の方で少 しずつ増加している傾向にあります。  19頁は「専修学校専門課程入学者のうち大学の卒業者数」です。専修学校専門課程に 入学される方が年間約32万人いらっしゃる中で、そのうちの約8%が大学や短大などの 高等教育機関出身の方ということで、その8%の内訳を示した図になります。それによ れば、高等教育機関を卒業し、専門学校に入られる方の約72%が大学卒となっていま す。  20頁は「専修学校入学者のうち就業している者の割合」です。こちらは専門課程や一 般課程については、入学者に占める就業者の割合は低くなっていますが、高等課程は2 割から3割ぐらいを就業者が占めています。  21頁は「専修学校専門課程学科別卒業者数」です。平成14年度においては24万6,000 人ぐらいの卒業者がいて、このうち就職しているのは約20万人ぐらいで、就職率は77% ぐらいです。この就職した方のうちの、関係分野に就職した方の割合は約9割となって います。22頁は「就職率」ですが、短期大学、大学の就職率に比べて、専門学校のほう が77.1%と、若干高くなっています。  「検討する際には諸外国の状況も参照してはどうか」というご指摘がありましたの で、23頁から3頁ほどに諸外国の状況を簡単にまとめています。アメリカ、イギリス、 ドイツ、フランスの教育訓練制度、職業能力評価制度の概要を付けているので、議論の 際にご参照いただければと思います。 ○諏訪座長  それではこれから論点整理案を基に、さらにご意見を賜りたいと思います。資料IIを ご覧になっていただければわかりますが、たくさん意見の出ている部分と、まるで空白 の部分があります。後者は例えば3頁目の「組合等の役割の問題」や6頁の「職業能力 評価制度の在り方」です。こういう部分を少し埋めていただけたらというのが希望です が、全体としては、今日は主として、Iの「職業能力開発の現状と課題」を中心的にご 議論いただき、併せて今のような欠けている部分について、少しご示唆をいただければ と思っています。よろしくお願いします。 ○高橋委員  マスコミ情報しか知らないのですが、企業の教育投資の税額控除という話が出ていた のですが、あれは厚生労働省のどんなところで、どんな議論がなされた結果ああいう話 が出てきたのかという背景を教えていただければと思うのですが。 ○総務課長(妹尾)  税額控除に関しては経産省、文科省、厚生労働省で共同で要求したのですが、同じも のをそれぞれの省庁の切り口で必要だということです。私ども厚生労働省としては、企 業が従業員に教育訓練投資を行うことが従業員の能力開発につながる、税制上でも支援 する意義があると考えたものです。経産省は当然企業の競争力強化、文科省は全体とし ての知識向上や能力開発、こういう議論です。 ○高橋委員  3省共同でということですね。 ○総務課長(妹尾)  はい。 ○高橋委員  今回のこの話は関連がありますものね。 ○総務課長(妹尾)  はい。 ○黒澤委員  関連してお伺いします。減税の対象になる訓練というのは、内容や対象者などに限定 はないということですか。 ○総務課長(妹尾)  手元に資料がないのですが、記憶している限りでは、減税の対象になる支出項目は相 当程度限定されています。いちばん大きなものは、訓練をしている間の従業員の賃金で すが、それは減税の対象にならないとなっています。どうして税額控除の対象になる費 用の項目が限定されたかというと、厚生労働省の施策でキャリア形成促進助成金という ものがあって、企業が教育訓練をした場合に、それに要した費用や賃金についても助成 をするという助成金があるのですが、税においては教育訓練費が費用として扱われてい ることなどもあり、対象費用の項目を相当程度限定しています。  そもそもどういう場合に税額控除するかについても、税当局とのやり取りの中で非常 に限定的になっていて、原則的には、前過去2年間の平均の教育訓練投資が、例えばあ る企業は100あったとすると、当該年度について100に対して伸びた部分、100が120にな ったときに、その20の部分の一定額を税額控除するという仕組になっています。ただ し、今のは原則で、中小企業については100が120になったときに、120全体についての 一定の部分を税額控除すると。ですから、中小企業は総額で、原則は伸びた分だけと、 こういう二段構えになっています。  そういう意味で、対象項目でも非常に限定がかかっているというのと、そもそも何を 捉えるかという部分でも限定がかかっているということです。もし必要がありました ら、この会議が終わるまでに資料を用意してお届けしたいと思います。 ○黒澤委員  なぜそういうことを伺ったかと言うと、今日いただいた資料Iの方でも、3頁に「必 要となる支援の内容」ということで、「企業に対する支援の際には時間面での配慮も必 要なのではないか」という意見があります。その点からみると、こういった税額控除は 非常にいいと思うのですが、今までなされているフランスやオーストラリアの例を見る と、結局はそういった支援をしなくても訓練がなされた人たちに、訓練が結局されてい るという、だから無駄に税金が使われてしまうという、デッドウェイトロスというか、 死荷重が起こっています。つまり何かというと、放っておくと訓練がなされないような 単純労働者や若年者などに重点的にやってほしかったのですが、蓋を開けてみると、管 理職ばかりに訓練がなされていたというようなことがあったものですから。ただ、そう いった限定的な部分に控除をすることは、それである程度は押さえられるということで すね。 ○北浦委員  今の黒澤委員のご指摘は非常に重要だと思います。政策手法として税額控除と助成は バッティングするというか、それは先ほどの説明のとおりです。そういったようなきめ の細かさのところで違いが出てくるので、私はそこは非常に重要な点かと思います。  そのことに関連して聞きます。賃金は当然かと思うのですが、それ以外の部分におい て、今度の税額控除の対象となる部分と、助成金の対象となる部分と無関係ではないと 思うのです。ということは、助成の考え方も、それを前提にまた見直していくことにな るのでしょうか。 ○総務課長(妹尾)  実は、今そこまでの方針はありません。税と助成金は併給調整のようなことにはなっ ています。1つの企業が1つの教育訓練投資で、両方の恩恵を被ることはないようにな っていますが、今の税の考え方に基づいて助成金を見直すことは、目の前の課題にはな っていません。 ○北浦委員  現行の調整制度を前提に議論すればいいということですね。 ○総務課長(妹尾)  はい。 ○総務課長補佐(佐々木)  先ほどの「計画的なOJT」ということですが、企業の方にお送りしている調査表 で、「計画的なOJTとは」という解説を書いております。こちらによれば、日常の業 務に就きながら行われる教育訓練のうち、教育訓練に関する計画書などを作成するなど し、教育担当者、対象者、期間、内容を具体的に決めて、段階的、継続的に実施してい る場合となっております。 ○諏訪座長  ですから、23%を多いと見るか、少ないと見るかですが、もし本当にそこまで厳格に 見れば、かなりやっているとも考えられるかもしれない、そこが難しいと思います。い つでもOJTは難しいのです。こういうふうに定義をしても、回答する側がわかって答 えてくれているかどうかもわからないということがあります。 ○高橋委員  ちょっとそれについてよろしいですか。「能力開発の現状と課題」というまとめの部 分に関連するのですが、OJTの言葉の範囲によっては、随分いろいろな問題意識が出 てくると思います。私は4つか5つぐらいに分けるのですが、私が分けて考えたときの イメージでいうと、まず、狭義のOJTというのがあって、それは先輩や上司が、後輩 を指導、アドバイスするというイメージで、今の計画的OJTといわれるものの中に結 構入っているかと思うのです。計画的か非計画的かは別にしても、指導、助言。定期的 に、「どうだお前、ちゃんと覚えたか」とやりながらやっているというのはありますよ ね。それは狭義のOJTです。2番目に、実はものすごく大きな問題として、これはO JTと呼ばないかもしれませんが、日々のマネージメントスタイルの問題がすごく大き いのです。これは把握するのは難しい。例えば先ほど非正規労働者が増えることはいい ことか悪いことかという議論がありましたが、最近いろいろ聞くと、非正規労働者だか らlearningがない、正規労働者はlearningがあるとはいかない。いろいろな資料を見て も、そうとは言えません。正規労働者でもlearningがないような仕事のさせられ方をし ている人も結構います。  最近いろいろお聞きしますと、非正規労働者においても、企業が採用するときにアル バイトでも、「あの会社のアルバイト経験であれば職務経験として意味があると見なす 」という会社が、いくつか出始めているという話もあります。  あまり明確に言うのもどうかと思いますが、先日もインタビューで、スターバックス さんに行って聞いてきたのですが、もともとマニュアルがほとんどないことに加えて、 さまざまな資格制度のようなものが社内にあって、ファシリテーター(促進者)資格、 アルバイトでも正社員でも関係なく教育をできる資格を持っている人が、アルバイトの 中にも何十人もいるとか、コーヒーマスターのような知識についての資格のようなもの があって、そういうものをどんどんアルバイトが取っていけると。  そんなところでいくと、アパレル関係の企業の人事部長などと話をすると、「あそこ でアルバイトを何年かやってきた人は自分で考えて動くよね」と。ところが「某何とか という会社のアルバイトを長くやっている人は自分で考えないよね」と。そういうこと を完全に意識し始めているような感じがするのです。これは何かというと、マネージメ ントスタイルの問題なのです。自分で考え、自分で動くようなマネージメントスタイル なのかどうなのか。これもOJTだと思うのです。さっきのようなお話の質問項目でい くと、そういうものは当然入らなくなってしまうのですが、実はこれがものすごく重要 な部分としてあると思います。  広い意味のOJTで3番目というのは、私はジョブアサインメントだと思うのです。 要するに何の仕事をやらせるかです。一番初めの先輩、上司の指導が劣化しているとい うのがもちろんあるのですが、実は3番目がすごく劣化しているというのをよく聞くの です。3番目がなぜ劣化するかというと、プレッシャーもあるし、人も足りないから、 この人間が今までずっとやってきて、一番確実だったから、またあいつにやらせるしか ないとすると、他の人にはその仕事のチャンスがきません。しかも、その人はもう飽き てしまうようなのです。そういうことが起きています。昔は教育的見地から、「思い切 ってあいつにこの仕事を任せてみよう」ということでローテーションというのがあった と思います。一般的な意味で言ったら、グルグル回すローテーションではこれから必要 な人材は育たないと思います。新しい今の経営環境の中で必要な人材を育てるための異 動を含めたジョブアサインメントの仕組が、今まで以上に回っていない部分がすごく大 きいと思うのです。  1番目、2番目、3番目で、それぞれ別個の問題としてとても重要なのではないかと 思います。それとOff-JT自体ですが、日本の会社の社員1人当たりのOff-JT投資 が非常に少ない、これは昔から少ないと思います。もう1つは自己啓発です。日本はホ ワイトカラーの自己啓発は一番少ないです。そもそも会社の中に自己啓発を支援するよ うな体制があまりないと思います。お前だけ行くのかみたいな、そういうイメージが常 について回ると思います。  この5つぐらいを分けたときに、「企業の人材育成」と言っても、この5つの側面、 Off-JTや自己啓発は日本は元々弱かったので、未だに弱いという分野と、昔はこれ は日本は強かったのにそれが劣化しているという話と、昔も今も強いのか弱いのかみた いな、その辺は整理した方がいいと思っています。明らかに、指導型のOJTは日本の 企業の強さの1つだったと思うのですが、これが劣化してきています。それからジョブ アサインメントの部分が劣化してきています。マネジメントスタイルも、管理的マネジ メントスタイルからの脱脚は進み始めているといっても、まだ十分ではないという、私 は5つの要素をそのぐらいに分けて考えるのですが、OJTという一言以外にもいろい ろあるのです。Off-JTとOJT以外の話で、マネージメントスタイルやジョブアサ インメントの問題がすごく大きいと思うので、現状認識として、それをどう認識するの かという整理があった方がいいという感じがしました。 ○諏訪座長  ありがとうございました。非常に重要かつ共感するところの多いご指摘でした。 ○北浦委員  今の高橋委員のお話は、本当にそのとおりだと思うのですが、2番目のマネージメン トスタイルの問題も非常に大きいと思っておりますが、1番目と3番目に関係するの で、これについて、考えを述べさせていただきます。私は、やはり教える人の力が落ち ているのがとても大きいかなという感じがしています。上司から部下に対しての指導も ジョブアサインメントもそうですが、結局どういう仕事をさせるか、どのようにさせる かというところの教え方が弱くなっている感じが非常にするのです。それは、今まで企 業の中で、いわゆるリーダー研修などのレベルでやっていた話なのですが、それが少し 変わっている。その背景はいろいろあるのだとは思うのですが、1つ大きいのは、上の 世代は、集団的に仕事を回す中においての教え方をずっとやってきたところに、今度は 個別の仕事の流れで仕事の仕組、流し方が全然変わってきたときに、今までの教え方と 違う教え方をしなければいけなくなってきているところの戸惑いがあるのかなと思うの です。  そこで、単にコミュニケーションギャップだけではなく、新しい教え方についていけ ない・追いつかない現象があるような気がしていて、結局今のお話を聞いていますと、 人数の問題もありますが、やはり私は今の中間層の間で、どうやって教えるかの認識が 全然変わっていることに、自覚がある人とない人の差が激しくなっているところが大き いのかなという感じがしています。そういった意味では、おっしゃったことも、これは 他にも通ずるのですが、能力開発の問題で、ずっと論点整理の中で出ている、教える 人、インストラクターの資質の問題も、もう少しクローズアップされてもいいのかなと いう感じがしています。後で出てくる外部の教育機関などでもそのような声があるわけ で、その辺りの問題にも関連してくると思うのです。教え方の問題なども1つのポイン トかなと思います。 ○上西委員  少しまた違う話になるのですが、これまでも情報提供の重要性の話が出てきていると 思うのですが、私が今申し上げたいのは、厚生労働省の方でいろいろなプログラムをや っていますが、それがなかなか周知されないという問題があると思うのです。いろいろ な所に相談機関を作っていると思うのですが、これまでは、相談窓口を作っても、そこ に相談窓口があることがなかなか認知されないことがあると思うので、ホームページ上 に、もう少しユーザーの視点に立ったサイトを作っていただけないかなと思っていまし て、今もある程度、事業主向け、能力開発をしたい在職者向けのものはあるようなので すが、それをもう少し拡充させて、さらにその中身を読みやすいものにしていただけな いかなと思います。例えば先ほどの税額控除の話なども、とてもややこしいですね。そ れを提供側からの説明文書で書くと、要するにどうなのかというところがよくわからな い。もちろん、そういうきちんとした情報も必要なのですが、一方でそれを噛み砕い て、要するにこういう場合だったらこうですよ、こういう場合だったら駄目ですよ、と いうものの説明が必要ではないかと思うのです。  例えば教育訓練給付金であれば、中央職業能力開発協会のホームページでかなり噛み 砕いた説明が提供されていまして、またこういうプログラムだったらここの訓練機関で 提供していますよという紹介もなされています。記憶が定かではありませんが、3年以 上の資格がないと駄目ですよというのは、裏を返せば3年に1回しか使えませんよとい うことですね。このようなことは、たぶん書いてなかったと思うのです。それは言われ てみればわかるけれど、言われてみなければわからないことだから、3年経ってから、 では何回も使えるのかなと思ってしまうと思います。そういうユーザー側の視点に立っ た情報提供の在り方を工夫していただけないかなと思っています。アメリカのETA (エンプロイメント・アンド・トレーニング・アドミニストレーション;雇用訓練局) のサイトでは、今は変わっているかもしれませんが、前に見たときは求職者向け、事業 主向け、能力開発に携わるコミュニティなどのプロフェッショナル向けという大きく3 つの対象に分けて、制度やプログラムが紹介されていました。日本の場合であれば、求 職者向け、在職者向け、事業主向け、民間教育訓練機関やNPOなど支援する人たち向 けの4つぐらいにカテゴリーが分けられると思うのですが、それぞれについてユーザー の立場に立った情報提供を工夫していただけたらと思っております。 ○総務課長(妹尾)  それは、たぶんご指摘のとおりかと思います。我々が慣れていない面もあるのです が、まさに上西委員が今おっしゃった視点でもう少し見やすくしようということと、全 体的にリンクと言いますか、お互いに相互検索ができるようにできないかを考えており ますが、発展途上であるということです。 ○諏訪座長  私は、今、能力開発の在り方を考えるときに、もう一度原点に立ってみますと、教育 訓練が1つあって、実は若者の場合は訓練よりは教育の部分、本来文科省の領域が非常 に大きいことがある。それ以上の社会人になってくると、今度は我々が議論しているよ うな領域が大きくなっていくのですが、ともかく併せて教育訓練の議論が欠かせませ ん。大学生などで調査をしてみると、一番よく勉強している学生は文系では資格を取ろ うとしている学生です。公務員試験を含めてなのですが、資格試験などを通ろうとして いる場合、授業外の勉強時間がグンと延びる傾向があります。そうなりますと、社会人 の場合でも、やはり資格制度は人々の自己啓発やOff−JTやOJT、いろいろな部分 にかなり影響してきますので、資格、認定評価の部分を2つ目に見なければいけない。 最後に、折角やったのに評価されない、処遇でちゃんと対応されないとなれば、誰もや らなくなりますから、こうした処遇につながる面の検討も要ります。言葉を変えて言う ならば、世の中から求められないことで一生懸命やってもなかなか評価されないわけで すから、逆にどういうものが評価されるかはっきりわかるように、評価と処遇が然るべ くあることがわかるようにしてあげるのも大事なのかなという感じがしております。こ うしたサイクルが、今までの雇用慣行あるいは能力開発慣行の中で一定のパターンがあ ったのに、先ほど高橋委員や北浦委員がおっしゃったとおりで、従来型だともう弱くな ってきて、現状に合わなくなってきているのかもしれない。ところが、新しいタイプは なかなか育ってこない。そうすると、この端境期にある人々の能力開発が劣化してしま って、中長期的に見ると大変な問題を呼び兼ねないのが現状ではないか。  そこで、さらに皆様にご議論いただきたいのですが、とりわけ職業能力評価制度の在 り方に関して、こういう観点からしますと、今まで十分議論をしてきませんでした。そ こで、もう少しご示唆をいただければと思っております。 ○北浦委員  評価制度の前に、少しよろしいでしょうか。そもそも教育訓練は諏訪座長が今整理さ れたとおりだと思うのですが、そのときに範囲をどの程度まで考えるのかを少し考えて おいた方がいいと思います。つまり、官・民と考えたときの民間の場合の教育訓練の担 い手は誰なのか。企業というのはいいのですが、外に「教育訓練機関」と書いてあるも のがその範囲だけでいいのかどうか、そこは考えておいたほうがいいと思っておりま す。というのは、今専修学校を中心に考えているわけですが、例えば株式会社で行う教 育のものがありますが、それもやはり教育を行っているものです。そういった形態別に いくと、学校法人ではない形での教育を行っている所、いわゆる通信講座なども教育講 座になっているわけで、ビジネスキャリアなどでは対象になるようなところもあるわけ です。また、ビジネスキャリアの対象にならないものもある。  もう1つは、内容において職業に結びつくことが、この職業能力開発政策のときの1 つの縛りになっているわけです。そうすると、その内容からいくと、極めて教養的なも の、例えば文化的なもの、紙加工、折り紙を作るなど、そのもの自体はたぶん文化的な ものになって対象にならない。しかし、それは意外と何かの下地になるものであったり するとなると、無関係ではない。そういったことを考えると、能力開発の範囲は一体ど こまで広げて考えていくのか、今までは官が中心だったのでいいのですが、民間を対象 にしていった場合は幅広さがあるし、実際に勉強する方は意外といろいろなものを組み 合わせながらやってきている。そうすると、そこの範囲をどう広げていくかも含めて考 えていかなければならないと、これが1点です。そういう意味では、その辺りの実態は ここにあまり出ていませんが、その辺を整理していくことが1つあるし、それを政策の 範疇としてどこまで取り組むか、もう少しウィングを広げることをそろそろ考えてもい い時期なのではないかということです。  もう1つは専修学校です。専修学校のウエイトは非常に高いと思うのですが、この出 ている数字では卒業生とそれに対しての就職者の割合が出ているのです。入学や在校は あるのですが、残存率がどのくらいなのか。入ったけれど脱落をしていくことも結構多 いわけです。すると、やはりそこも見ておいてあげないといけないと思うのです。なぜ 脱落しているのか。それは本人がいけないといえばいけないのですが、脱落していく理 由が何なのか。もしミスマッチだとしたら、大変な投資をしているのです。高い入学金 を払って、授業料を払って、アルバイトをしながらやっているわけです。そういうもの は大変な損失になってしまう。もしそれも教育機関であるならば、そこをどういう形で 考えていくのかも、1つ議論になっていいのかなという感じがするのです。特に専修学 校の場合にはそういう形で、専修学校になってくれば問題ないのですが、専修学校にな っていない部分になりますと、もっとその傾向ははるかに強いところもあると思うの で、入ってはいるけれど、結局最後までいかないケースも非常に多いのではないか。  いずれにしても、今申し上げたのは、今までの政策でいうと、どちらかというと民間 の教育訓練機関は十把一絡げで見てしまうのですが、そこのウエイトが高まっています ので、やはりそこをもう少し整理をして、問題点を何か政策につなげるところがあれば 考えていく。学校も大事ですが、もう1つのセカンドスクールの部分も考えたらどうか と思っております。 ○職業能力開発局長(上村)  前段の部分は悩ましく、社会に余裕がないところもあるのでしょうが、常にそんな一 般教養みたいなのに金を回してどうするのだとか、遊びに金を回してどうするのだと、 非難が起きるぎりぎりのところなものですから、委員がおっしゃるように、私も遊びの 部分と言いますか、少し余裕があった方が、長い目ではいいような気がするのですが、 それを許さない世間の状況なので、そういう議論をしていただければいいと思います。 あとは取り組む側の姿勢だと思うのです。そうなると、非常に難しい話になってしまい ます。教育訓練給付は、作ったときから悩ましく言われている話ではあるのです。  後段のほうは、ダブルスクールというか、大学に行っていて専修学校に行っていると いうことはないのでしょうか。そういうものは、たぶん卒業しない場合もあると思うの です。どの程度行っているかにもよりますが、私も少し関心があります。大学4年間の うちに行っていて、別にそこで技術・技能、知識さえ身につければいいという層がどの くらいいるか、学校基本調査でわかるのかどうかわからないのですが、それがかなりい るのであれば、卒業しない人がかなりいても問題があるのかないのか。特にないのでは ないかという気もするのですが。 ○北浦委員  実態がわからないので、まあいいと言ったのですが、大学か何かのダブルスクールだ ったら、どちらかという選択はいいのだろうと思うのです。それでもお金を使ってしま うこともあるのですが。もう1つは、就職に直結する形で入ってきますね。そうする と、君は向いていない、そこで諦めろと言われてしまって、それで卒業しても無駄だと いう感じになって辞めてしまうという話も、何人か聞いたことがあります。それが全体 的な実態かどうかはわかりませんが、それも含めて結構高いお金を出して入ってきてい るわけですから、そこのところをちゃんと投資したら、やはりそれに見合う形になって あげないと、おそらくフリーターの人たちなどはそういう形でやっていることも多いと 思うので、そこがどうなのかを問題意識として持ったらどうかと、それだけなのです。 ○職業能力開発局長(上村)  実態を調べようと思います。 ○諏訪座長  今の点で、私も2点ほどありまして、1つは、ダブルスクールは想像以上に多いだろ うと思うのです。特に語学学校まで含めればかなりの数字で、ダブルスクールは今流行 りなのだろうと思います。と申しますのは、札幌へ行っても、あるいは福岡に行って も、大学の傍へ行くとそこにニョキニョキと資格の学校がたくさん建っています。まさ に、学校のすぐ前にできている。つまり、補完関係がそこに生まれているのだなという ことです。東京では、御茶ノ水や神田などへ行けば誰でも知っていたのですが、これが 全国的に展開しているのは、間違いなく、かつて小・中学・高校生向けの塾が学校や駅 のそばにできたのと同じ補完関係が、高等教育にも生まれてきたのではないだろうかと いう感じがします。  もう1つ、専ら専修学校へ入る子供の適性や就職の可能性を第三者的に判定できない だろうかということに、私は前から非常に関心があります。なぜかというと、専修学校 などはかなりビジネス志向で、受講生の数を集めなければいけないものですから、就職 状態や将来性を誇大に言って集まる傾向がなくもありません。例えばアニメ産業など で、かなり誇大であり、現実には就職が難しかったりしています。アメリカのコミュニ ティ・カレッジなどでは、最初に登録する前に各種の適性テストを行って、キャリア・ アドバイザーが経歴や希望などを聞いて、いろいろなことを見ながらアドバイスをして あげる。この過程が大学にも欠けているのですが、専修学校などの場合には、かなりピ ンポイントである方面に向けての訓練をする以上は、本当はもっと必要なのでしょう。 したがいまして、ミスマッチの度合が大きくなる可能性があるにもかかわらず、キャリ ア・アドバイザー、我々でいえば、キャリア・コンサルタントの関与がそれほどでない ことをどうみていくかなのです。  では学校に雇われたキャリア・コンサルタントは、結局は甘く判定するのではないか というときに、1つの考え方は、不動産業界に問題のある取引形態があったものですか ら、宅地建物取引主任という資格を作って、契約を結ぶときに必ず本人の免許証を出し て、見せながらやるようにさせたわけです。そうすると、まず会社はその人を置かない と的確な紹介ができないようになっており、もしそこで間違ったことをやると、資格を 持つ本人も自分の資格を失ってしまう仕組みが注目されます。キャリア・コンサルタン トもしかるべき、こういう形でいきますと、仮に学校の中であっても、後々苦情処理で とんでもないことをやったことがわかると本人も困る形にすれば、今のようなやり方よ りは少しよくなるかもしれない。これからは、組織だけをコントロールするのではな く、組織で働く個人との両方をうまくコントロールするメカニズムを、能力開発にも入 れていく必要があるのではないかという気がしております。 ○黒澤委員  私も次に行く前に、「能力開発の現状と課題」の所で、もうすでに議論に上がってい るとは思うのですが、この項目になかったので、頭に上がったものを2つ付け加えさせ ていただきたいと思います。1点は、先ほど高橋委員から、Off−JTは日本はそもそ もあまり得意ではなかったというお話がありましたが、その中での変化としては、昔は やっていたとすれば底上げ型といったものだと思うのですが、それがどんどん金額も少 なくなっていますし、対象がだんだん選抜型になってきていることと、この能力開発基 本調査で、2年間の流れを見てみますと、特に新入社員に対するOff−JTが極端に20 %ポイントくらい低下している状況にありますので、その辺りは非常に危惧すべきこと ではないか。  なぜかと申しますと、今私は日本の製造業の工場を中心に調査をいたしまして、そこ での訓練の生産性への効果を計測しようとしているのですが、回答率が非常に低く、サ ンプル数があまりなくて判断の仕様がないのですが、それでもやはりOff−JTが効い ているのです。先ほど高橋委員がおっしゃったように、OJTを測るのが非常に難しい ので、結局アメリカなどでの事象研究の主流でもあるのですが、OJTの部分を人事雇 用管理制度の工夫と言いますか、そういった特徴的なものをどうにか指標として捉える ことを通して、OJTの度合を代理する形がとられているので、我々もそちらにフォロ ーしたところ、やはり従業員を参加させるマネジメントの在り方をとっている方が生産 性が高いことも、もちろん出ている。つまり、それはきっと先ほど高橋委員がおっしゃ った、OJT的なものを頻繁にやっている所のほうが生産性が高いという意味なのだと 思われます。しかし、一方ではOff−JTが効いている所もある。ですので、やはり Off−JT自体が下がっていることも危惧すべきものだし、きちんと把握しておくべき だろうと思います。もう1つは、すみませんが、忘れてしまいました。 ○高橋委員  先ほどの黒澤委員のお話で、Off−JT、OJTで、OJTでもいろいろあるとか、 いくつか分けて、その中で何がどう機能しなくなってきているかを、どういう問題意識 なのかを最初に整理してあった方がいいと思うのです。その中でも、例えば自己啓発な どは少ない、少ないと言われていますが、もう少し具体的にいうと、中国は私も何度も 調査に行くのですが、ものすごい数の人が夜間の大学院大学などに行っています。働き ながら大学院大学に行っている人の割合が、欧米と中国に比べて、日本は数字的にこん なに低いというインパクトのある数字も含めて、問題意識を並べていく。あるいは、今 までやってきたものが劣化している。それは、やはり最初のところで整理されていた方 がいいと思うのです。  もう1つ、勤めてからの問題以前に、先ほどずっとディスカッションされている中の いわゆるスクール・トゥ・ワークの話があって、その仕組が崩壊してきていることはと ても大きな問題として、やはり最初に問題意識として入れておくべきだと思いますが、 この新しい形をどうやって作るのか。  先ほどから就職率の話や正規雇用の割合は出ているのですが、私が見たデータです と、大学卒の正社員への就職者数は数でいくと、過去10年ぐらいであまり減っていない のです。率でいうと、確かにフリーターは昔5%だったのが25%になった。なぜかとい うと、大学進学数が圧倒的に増えているのです。大学院に行く人の数は多少増えている けれど、そんなに多くなっていない。なぜかというと、ある人によると、高校での就職 がない、高校での正社員の就職が減ったのが間違いなく事実で、そこで就職で、モラト リアムではないですが、決め切らない。どうすればいいかわからないので、モラトリア ムのまま大学に流れ込む。それだけ大学の数が増えて入りやすくなったことも含めて、 とりあえず大学に入ってしまう。とりあえず行ってしまった人が、大学を出るころまで 結局わからず、そのままフリーターになっていく。だから、高校でフリーターになるの ではなく、大学卒でフリーターになっている人だけであって、もともとの大学新卒者数 の正規社員は、アップダウンはありますが、過去10年で確かにそんなに減っていないの です。来年の就職が始まりますが、特に2006年4月1日の新卒者の採用は、いろいろな 業界のうわさを聞くと、結構増えそうだという話もありまして、結局新卒の採用者数自 体がガクンと減っているわけではなく、やはりアップダウンで景気が悪かった部分で、 またよくなってくると多少上がってくる。  だとすれば、即戦力と見るようになったのが違うのかとなると、これはわかりません が、企業の方もそんなに新卒者を即戦力として見ているのかというと、例えば先ほどの ダブルスクールの問題もそうですが、私の認識ですと、諏訪座長が言われるように、学 生の方々は皆行くのです。慶応の日吉にも、「慶応の学生の皆様」と某資格専門学校の 宣伝が出て、慶応の学生も行くのかと思ったのですが、企業の人事をした人と話すと、 新卒の採用要件の中で、資格は非常にプライオリティが低いのです。にもかかわらず、 学生が取りに行っている。悪く見れば、それは意味のないことをそのように煽っている のではないか。非常に極端にいいますと、そういうこともあるのかもしれない。そんな に資格を取って、新卒者もすぐ即戦力で使えるようになるのだという幻想は、多くの会 社は意外と持っていないのではないかという気もするのです。そこで、何か世の中のニ ーズと供給側と需要側がうまくマッチングしない誤解や、いろいろなことの中で起こっ ているスクール・トゥ・ワークの問題を、何がどうなって、どういう問題が起きている のかを、少し綺麗に整理していただいた方がいいのではないかと思うのです。  例えば私はむしろ中途採用の即戦力採用は増えている感じがするのです。それは企業 の方々のアンケートなどをやってもわかるのですが、なぜかと聞くと、やはりいちばん わかりやすいのは、変化が激しくて読めないということです。端的に言いますと、悪い ことで言えば、事業売却撤退。特に商法が変わって事業継承に関するもので、事業売却 をするときに個別の同意なしにできるようになった話があります。あの辺りから、事業 ポートフォリオの入れ替えを頻繁にやる企業が増えてきて、その中で、いい方で言う と、突然必要になったりする。あまりに事業ポートフォリオの変化が激しくて、育成し ている暇はない。だから、そういうときは即戦力で中途を採ってこざるを得ないという 意味での即戦力重視は間違いなくあるのですが、企業が新卒にどこまで即戦力を求めて いるのかがわからない気がするのです。  そこでもう少し別の問題意識、どうしてこんなに新卒から社会に向けて、今までの日 本の新卒が大学を出て社会へ出て、ゼロから社内でOJTでやっていった仕組が崩れた としたら、新しい仕組はどうなっているのか。海外でも、やはりヨーロッパのデータな どをいろいろ見せていただきますと、イタリアは大学在学年数が平均7年と、各国がそ れぞれのスクール・トゥ・ワークの再構築に悩んでおられるのだと思うのです。そこを きっちり整理し直すのも、1つ大きなポイントかなと思います。 ○諏訪座長  スクール・トゥ・ワークとかスクール・トゥ・ソサイアティでは、上西委員は専門家 でいらっしゃいますから、何かご意見がありましたらどうぞ。 ○上西委員  即戦力に関して言えば、高橋委員がおっしゃるとおりで、新卒者の即戦力は中途採用 の即戦力と意味が違うのだと思うのです。何でも教えてもらってからできるようになる のではない、ちょっと教えてもらえばすぐにできるようになるという、立ち上がりの早 さといいますか、修得能力の高さ、変化への対応力の大きさ、そういうものが新卒の即 戦力だと思うのです。ですから、それは資格の学校で身につくものではなく、むしろ大 学教育をきちんとしたり、インターンシップを経験したり、学生生活の充実そのものが 鍵なのではないかと思うのです。それは、なかなか学生には理解されにくいですね。 ○高橋委員  職業能力の評価の話につながるのですが、確かにスキルも専門性もそれぞれ専門の分 野、専門的な分野でどんどん内容も変わって重要ですが、今もおっしゃったように、例 えば自分で考える力、先ほどのスターバックスの話などもそうですが、要はそうなので す。中高年の問題にも関係しますが、自分で考える力、自分で学習し続ける力、この手 の話は行動特性・思考特性のような能力で、資格には馴染まないと思うのですが、そち らがかなり重要になってきていることと、でもやはりスキルで専門性の部分がとてもあ るので、職業能力評価は資格だけでは到底全部カバーできない。しかし、逆に言うと、 資格でカバーできる分野はもっとスペシフィックにやった方がいいような気もします。  ホワイトカラーの資格認定というのは、私の印象かもしれませんが、人事や職種別に その仕事をする人のレベルを認定しようというイメージを感じたのですが、それは明ら かに無理があって、そこには行動特性や思考特性などいろいろなものがあるので、もう 少し要素技術的、要素専門性的に、何の職種ではなく、「これ知ってる」みたいな分野 要素的に、細かく言えば、確定拠出年金アドバイザーのような、そのくらいのピンポイ ントの新しい専門性でこういうものを知っているか知っていないかというものがあっ て、社会保険労務士もそうだと思うのですが、資格を持っているから人事をできるわけ ではないし、でもあの人事の中である種の部分について非常に重要な知識になるのだと 思うのです。職種という風に大括りしないで、できるところだけをピンポイントでやっ ていって、そうでない部門、行動特性・思考特性的な部分をどう評価するか、私もなか なか思いつかないのですが、難しい問題だと思います。 ○北浦委員  今までの議論に関連して言いますと、やはり評価につながると思いますが、ビジネス キャリア制度の起こりのときにもそうだったわけですが、結局あのようなもので示せる のは知識や技能などの形式的に出てくるところをせいぜい整理するだけで、その人の実 際の職業能力となると、今までおっしゃっていたような、コンピテンシー的な世界まで 入り込んでいかないと完成しない。いま即戦力のお話があったわけですが、確かに学校 教育をきちんとやっていればいいのだという考えもあるのですが、それだけでできるの かというと、やはり最終的には仕事の経験の中でしか身につかないことなので、どうも ステップがある。素質と言ってしまうと、これはまた運命決定論になってしまうのであ まりよくないのですが、大学教育で多少素地を作る部分と、仕事の中で形成していく部 分と2つあるわけですから、その後の部分が企業は弱くなっているというか、時間のゆ とりがなくなっている感じがします。昔は下積み的な苦労が結構多くて、それは素地が あったのですが、今はそういうものは流行らないわけで、わりと最初から専門性でバチ ッときてしまいます。それでも今言ったような能力がちゃんと育てばいいのですが、そ のときに先ほど来高橋委員の言うような、仕事の与え方のところで、いい仕事の与え方 をすることがメカニズムとしてちゃんと与えられていないと、たぶん完成しないので、 そこが今の若い人のところに十分効いているのかという議論があるのかなと、1つ感じ ます。  それから職業能力評価のことでいえば、評価体系で考えると、知識や専門的なスキル となると、やはり学習体系という性格が第一義的で、その次に学習したことがどれだけ 身についたか、学習の成果の測定になってくるかなって感じがするので、まず学習体系 としてきちんとできていくかがポイントになるのですが、どうも職業能力評価と言う と、すぐに資格の議論に結びついてしまうところがまだまだあるので、そもそも論はど ういうものを学ぶべきなのか、どこを学んだらいいのか、それをやらなければいけない のかなという感じがしています。その意味では、今の資格制度は放っておいても山のよ うにあるわけです。別にそれはそれで構わないと思うのです。しかし、すでにいろいろ なものが出来上がっているので、それを「この資格はこういうことが学べるのだ」とい うことがきちんとわかるような整理をするだけでも、随分いいのではないかという感じ がしています。  もう1つ、ついでに申し上げますと、別の話にずれてしまうかもしれませんが、職業 能力の問題といったときに、技能検定もそうですが、ビジネスキャリアの方がホワイト カラー系なので、それを例にすると、あそこにあるものは非常にクラシカルに、よくで きていると思います。ですが、この中の問題意識に出ているように、IT化を前提とし たら、おそらくあの知識では現場では全然役に立たないし、姿も違ってしまっている。 IT化を前提にしたときの今までの専門、例えば経理やマーケティングは全然やり方や 手法によって違ってきているところがある。それは現場の中でつなげればいいのだとい うこともありますが、しかし、ワークスタイル、仕事のさせ方が変わってしまっている わけですから、最初からITスキル的なものとそういうものをもっとマッチングした形 で、学習の目標などを示してやらないといけない時期にきたのではないかという感じが しております。皆、それぞれたくさん充実してしまっているのですが、結局、後はどう やって結びつけて現場で活かすか、これは個人の裁量で、それが能力だと言われてしま えばそれっきりなのですが、最初のところでやらないと、クラシカルな部分がどんどん 古くなって、あまり見向きもされなくなるのではないかという感じがします。 ○諏訪座長  ありがとうございます。非常に有益な評価制度の再設計を巡ってのご指摘などいただ いておりますので、続けてお願いしたいと思います。 ○黒澤委員  今の北浦委員のお話で、やはり知識や専門的スキルについては学習体系プラス成果評 価が必要で、それを作るに当たって、できれば業界での学習内容の確立を支援するよう なことも、これからの公的な支援の在り方ではないかなという気がしています。もう少 し言うと、何が必要とされている知識ミックスなのか、行動特性や思考特性という測る ことが難しい部分を抜いて抽出化させた形で企業のニーズに合致する訓練や、学習体系 のコーディネート的なことを、公共職業訓練機関などが行う余地も十分にあるのではな いかという気がしています。 ○高橋委員  職業能力の評価をどこでするかと言いますと、アメリカのようなすぐROIをうるさ く言う国でも、社員に対する研修投資がどれだけボトムラインにインパクトがあるかの 評価は、理屈では昔からカークパトリックモデルとか4段階モデルなどがありますが、 私の印象では、もう半分ぐらい諦めているのかなと。要するに、もうこれはインプット で測るしかない、信じてやるしかない。本当にそれでアウトプットが明確になるまで評 価できないと言ったら10年かかって、そうすると結局もうフィードバックとして回りま せん。モデルとしてはすぐにできるものもあるのですが、アウトプットの評価にこだわ れば、短期的なスキルの獲得の部分で半年や1年勉強して、「はい、スキルが付きまし た」というのはいいのですが、そこから先の行動特性、思考特性の部分はインプットで 測るしかないのではないかと思います。  そのようなことを強めるようなことをやっているのか。本当に強めてどこまで企業の 業績に寄与したかは、10年ぐらい後に学者の方々が一生懸命整理して証明しなければい けないのですが、証明されるまではやらないというのでは難しいと思います。インプッ トをどう評価するかなのですが、例えば会社のマネージメントスタイルなども客観的に 100%やるのは難しいのですが、やはりマネージメントスタイルによって考える力に差 が出ることだけでも整理して見せて、場合によっては評価することがある程度可能だと 思います。  それから、先ほどのジョブアサインメントなどは、例えば組織によって育成的なジョ ブアサインメントが何件あったのか、あるいはなかったのかは、1つずつその組織にお いてプロジェクトや異動が過去100件あった中で、初めての人間に思い切って育成的に やらせたものが何件あったのか、もちろん定性と定量の合間ぐらいのところですね。相 手に協力していただいて徹底的に調べれば、ある程度私はインプットの部分については 測定できないことはないのではないかなと思います。それを例のベストプラクティスと か何とかの形に反映させていって、「こういうことなんですよ、こういう会社はそうい う意味でやっているんですよ」と結びつけることは可能だと思います。行動特性のとこ ろはですね、個人個人について、それを測って比較するのはちょっと難しいかと思うの ですが、そういう、よりインプットをしている組織を評価することは可能かなという気 もします。  先ほどからお話に出ている言葉の使い方ですが、それを「コンピタンシー」と呼ばな い方がいいのかなと私は思います。コンピタンシーの元々の定義は、ハイパフォーマー の持っている能力がそうでない人たちとどう違うかというところからきていますので、 ここで今申し上げている、考える力、学習する力をもって、一部のハイパフォーマーが 一般とどう違うかというよりは、全ての人間にとって継続的にキャリアを構築して、仕 事をやっていく上で必要な基礎職業能力みたいな、特に学校と職場の20代後半ぐらいま での間にかなり形成される基礎職業能力、あるいはキャリア開発能力も含めたものです ので、イメージが少し違います。コンピタンシーというのは元々の語源でいくと、ある 種のハイパフォーマー、例えば営業のハイパフォーマーはそうじゃない人間とどこが違 うか、みたいなところから出てきたので、これはむしろコンピタンシーをどう日本語に 訳すかではなく、新しい日本語を作った方がいいのではないかと思います。ちょっと元 々のコンピタンシーのイメージと違うと思うので、基礎職業能力という感じがします。 ○上西委員  資格についてはいろいろあり、交通整理が必要だというお話がありましたが、資格や 民間の教育訓練などを国の側でどのぐらいの整理をすべきかというのは難しいと思いま す。例えば、いろいろある教育訓練のプログラムを国の方からどのぐらい情報提供する かというと、なかなか評価ができないので、信頼できる情報として提供できない。だか ら教育訓練給付金制度などで認定した教育訓練機関しか紹介しないという話を聞いたこ とがあります。  先ほど学習体系の話がありましたが、1つの情報のフォーマットのようなものを作っ ておいて、この資格はどのような人を対象にして、どのような知識を修得しているかを 見るもので、受験料はいくらで、年間の受験者と合格者は何人で、更新の制度の有無、 あるいは更新のときにお金がかかるかというような共通のフォーマットを作って、それ に対するきちんとしたデータを出した業者についてはその一覧表を載せる。それはあく まで業者の提供によるものであって、国としてそれ以上オーソライズしているものでは ありませんという形で、何かポータルサイトのようなものを作ることはできるのではな いかと思います。  いろいろな業者がいろいろなPRをしていますが、その中では、例えば受験者と合格 者がどのぐらいかを公表しているところはほとんどありませんよね。そのようなものも 合わせた必要な情報のポータルサイトの形になれば、ある程度それを見た人が自分なり に交通整理ができるのではないかなと思います。 ○北浦委員  今、上西委員がおっしゃったように、私もディレクトリを作っていくのが1つの方向 かなと思います。ディレクトリを作っていくと、多分その後の中身の信頼性など、すぐ 格付けという議論になりますが、それはあまりやるべきではないのだろうと思います。 少なくとも中身の信頼性のチェックとそれに該当するところぐらいは、ややパブリック な役割になるかもしれません。しかし、それも余計だというのかどうかについては、少 し議論があるところではないかと思います。  もう1つ、能力評価の関係で、先ほど学習のことで申し上げましたが、そのときに考 えられることはその結果が1回到達すれば二度と変わらない形がいいのかどうか。1 級、2級、3級というやり方で、2級になったらもうそれでいいということになる。例 えば今はTOEFLやTOEICは点数が変動します。知識は変わっていくものですし、衰えるか もしれませんし、そしたら、それは変動していくのが自然な姿で、それが見えるから、 継続学習が出てきます。初期に大変高い点数を取った人が、中高年になった時点での点 数は低いが2級、1級のままということがあります。ですから、そのような固定になっ てしまうことがいいのかどうか。それも一種の評価の仕方なのですが、それを少し現代 的に考える。学習と割り切ってしまえば、それは本当は点数でしかつかないというのも 1つの考えですし、常に厳しいですが、継続学習がないといけません。ただそのような ものは資格ではないので、意味がないということになってしまうと思いますが、どれだ け一生懸命学習したかという学習歴や点数を上げる努力をしたことが、社会的に評価さ れるようになれば、もう少しいいのですが、現状はなかなかそこまではいっていません ので、やはり、そのような評価の仕方の考え方が変わっていかないといけないという気 がします。 ○高橋委員  今の継続教育の話は重要ですよね。それこそ厚生労働省がどう考えているのかです が、医師免許なんて昔取った人は明らかに陳腐化している人がたくさんいますよね。例 えば教師も同じだと思います。特に経理や財務などはどんどん変わっていきます。継続 的に学習しフォローするような体制を定期的にとっておいて、1年後、3年後それにあ る程度参加していないと、資格は賞味期限がありますよというような形を含めて、そう いうやり方での資格の考え方をもっと促進させていくことが重要だと思います。そうす ると、中高年になって資格を持っていて経験があるといっても、「最近5年間は勉強し ていないでしょう、それなら駄目ですよ」ということにできるようなものがあるといい のではないかと思います。 ○諏訪座長  重要なポイントだと思います。日本では継続教育の仕組をそういうところに盛り込ん でいないことでも、他国に比べて中高年で負けてしまう。資格では何年かに1回ずつ車 の免許の書き替えのようにきちんと講習を受けて、継続学習をやらないと駄目だという 体制ですとか、継続教育を評価するような仕組の方が、個別に出てきた成果を評価する 仕組よりはいいのかもしれないという皆様のご意見です。そのときに重要なことは、先 ほど「基礎職業能力」とおっしゃいましたが、こういう職業に入り継続してキャリアを 発展させていく上で、非常に重要な要素をもっと重視していく必要があるのではないか と思います。  学校教育でもそうですが、知識は陳腐化しますが、基礎的に身につけた各種の数値処 理能力や図形処理能力あるいは言語処理能力、コミュニケーション能力などは、かなり の程度我々の血となり肉となって一生を助けてくれるわけです。教育訓練においても、 長い間なんとなく教育の上に乗って、目の前のものに対応するというイメージでした が、それではうまくいかないということが最近ますます見えてきた以上は、もう少し訓 練の中にも基礎的な能力をどのように支援していくか。そのためには評価制度や資格制 度だけでは難しいとなると、継続学習をしていく中で徐々に伸びていくものをどう評価 するか。それから成果がどのように出たかをマクロで見るときには、先ほど高橋委員が おっしゃったように、インプットで見る。そうすると日本は対GDP比で見て職業訓 練、能力訓練、特に高等教育などへの支出割合には見劣りすることも見えています。  それからもう1つ、インプットの測り方は時間ですよね。一体ある年齢層がどれぐら い勉強のために時間を使ったか、実はこういう調査が日本にはないので、どれぐらいや ったのかわかりません。自己啓発でも何でも、やったかやらないかの調査はあります が、どれぐらいの時間やったかというものはありません。おそらく私が知らないだけか もしれませんが、こうしたものをきちんと取っていって継続学習をはっきりさせていく ということでしょうかね。 ○高橋委員  行動特性、思考特性的なことと知識の両方とで言いますと、社会に出てから重要です けれど、大学や高校でももちろん意味があるというお話がありましたが、昨年経済産業 省の調査で名前は忘れたのですが、本当に半年ぐらいでササッとやったので深くはでき ず、多摩大の前の学長をやっていた野田さんが座長でしたが、社会側、企業側から見た 大学教育に対する注文をつける研究会がありました。そこで1つおもしろい調査をやり まして、入社して6、7年の20代後半の社員にいろいろな会社でインタビューをしまし た。「今この会社で5、6年経ったところで、大学時代に習ったことで、今役に立って いることは何ですか」という調査をしました。いろいろある中で圧倒的に「ゼミ」が多 かったのですが、「何でゼミなのですか」と言うと、「自分で考える力がついた、問題 を発見する力がついた」という回答がすごく多かったです。それに対してやはり評価の 低いものもあります。その調査は単発でたまたま限られた予算と時間の中でやったので すが、あのようなフィードバックが、定期的に職業能力開発に代わって大学に対するイ ンプットとして何かできないかなということを少し感じました。会社に入ってから学ん で今仕事に結びついている能力と学校時代の知識の部分と、両方の面で結びついている 部分があると思います。 ○諏訪座長  そういう単発調査はいろいろあります。例えば、数学者がやった、例の分数や小数の できない大学生といった一連の調査の中に、数学ができたら世の中に出て何の役に立つ かということを年収で見ました。数学が得意か、得意ではなかったかを回答させてい て、大学卒業後の何年か経ったところで見ると、数学ができた人は年収が相当にいいと いう手前味噌のような調査があります。あの類は、職業基礎能力の中身でもっと必要な のかもしれません。コミュニケーション能力も一体何で測るのかよくわかりませんが、 例えばサークル活動を熱心にやったとかでしょうか。 ○高橋委員  それがおもしろいのですが、その研究会に東京工科専門学校の校長先生がおられまし て、専門学校の中では結構有名な方で、その方が一生懸命研究をして、就職のときに、 「うちの専門学校を出る人間で企業の人事の人たちに何が重要ですか」と聞いたのです が、やはりコミュニケーション能力と言うというわけです。プレゼンテーション、自己 表現力のある学生を採りたいということで、大学の中で、「プレゼンテーション&コミ ュニケーション」という講座を1つ作って取らせたのですが、大失敗だったそうです。 それだけを取って付けたようにやっても難しいと。ただそれは、むしろ授業の形態の中 で自然となるようにやらないと駄目だというように、一部の学校では試行錯誤されてい ます。一生懸命聞きに行って、それをどうやって大学教育の中に入れるかということ で、「何かが必要だから何々講座を1つ作ればいいとそんなに簡単にはいきませんよ、 失敗しましたから、うちも」とおっしゃっていました。けれども、定期的にフィードバ ックしていく。厚生労働省自身が大学教育そのものの内容に云々というのは他省の問題 になると思うのですが、少なくとも今役に立っていることはこれで、役に立ってないこ とはこれで、こういうことをもっとして欲しいと。職業能力という観点からのニーズを 定期的に大学側にフィードバックしていく仕組があってもいいのではないかという感じ はします。 ○諏訪座長  そういう意味では、本当に学校教育の中での調査と、社会へ出てからの調査が、省庁 が中央官庁で言えば分かれているせいもあるのかもしれませんが、両方リンクした調査 は意外と信頼に足るものはないのですよね。学生時代に何を一生懸命やった子が、10年 後、20年後に社会へ出てどうなったかという話を、きちんとフォローする息の長い調査 がないものですから、皆たまたま自分が知っている例や自分の例から、ああだこうだと 言っていて、なかなか説得力のあるデータに基づいた議論ができないところがあるよう な気がしています。 ○北浦委員  今のお話は大変興味深かったのですが、そのように考えていくと、例えばインターン シップの在り方なども随分変わってくるのだろうと思うのですね。受け入れている立場 の人に聞くと、よく何でもいいからやってくれと言われることも多いようです。しか し、きちんと考えていらっしゃる学校もあるのですが、例えば今言ったような、こうい うところを見てこいよとか、こういうところをどこか体験させてくださいというピンポ イント的なことを何か言ってくれれば、例えば簡易なところのロジはどうなのかから始 まって一緒に体験させることが、今言った基礎力のようなものがかなりつく1つの有益 な材料にもなると思います。ですから、そのようなところを学校の方も意識してやって いただくと、多分企業側はその注文に応え、素材提供という形で繋がっていくのかなと いう感じがしますので、今のような指摘は非常に重要だと思います。その中にインター ンシップの役割がかなりあるのではないだろうかという感じがします。 ○黒澤委員  今のことにちょっと関連し、能力評価制度の在り方からは外れてしまうのかもしれま せんが、これを日本での転職や就職をするときに、相手の能力がわからないというよう なことのミスマッチ、情報の非対称性を緩和するためのやり方という風に考えますと、 先ほど出たように資格を交通整理することももちろん必要だと思います。それと同時 に、資格という形にしなくても、もう少しアドホック的にそのときに必要なものを、先 ほど私は業界団体という風に申し上げましたが、業界団体あるいはその地域に限定し て、そこのいくつかの事業所がこういう人がいま欲しいというような、特に中小企業と か、いくつかの事業所のニーズを吸い取って1つの訓練のパッケージにする。それを修 了した人たちは、その訓練を提案した事業主にとっては、自分が提案して作ったわけで すから、こういうことを身につけているのだということがわかるわけですよね。そうす ると、こういう学習体系を修了した人ならばこういうことができるだろう、ということ で採りやすくなるというような可能性もありうるのではないかなと。  例えばアメリカなどを見ますと、まさにコミュニティ・カレッジがそういったコーデ ィネーター役として機能しています。向こうの場合は、例えばオラクル社でこういう訓 練をやったといいますと、今度は他の中小企業などがうちの地域でもやってくれという 形で、その中小企業の場合は従業員にそういった訓練を受けさせたり、あるいはまだ採 用していないけれども、この訓練を受けた人だったら採用するよ、というような予定見 込みで訓練を受けさせたりといったようなさまざまなことがなされているわけです。そ のような意味においては、資格化という形にしなくても学習体系を提供したりコーディ ネートをすることによって、能力、情報の非対称性を緩和することは可能ではないかな と思いました。  それと同時に、先ほど北浦委員がおっしゃったインターンシップ、いわゆるトライア ル雇用といった体系も、実はまさに能力がわからない、何ができるのかわからないとい うようなものの情報の非対称性を緩和しながら、就職に結びつける1つの重要な在り方 ではないかなとも思います。 ○総務課長(妹尾)  今の黒澤委員のご指摘の前段に関していえば、我々も今オーダーメード訓練という形 でやり始めていまして、特に業界団体を通じてなんとか企業のニーズを把握しようとい うことも考えていますが、なかなかうまくいかない面もあり、ちょっとまだ研究中で す。 ○黒澤委員  非常に重要だと思います。ただ、知名度がまだ低いですね。もっと知ってもらって活 用できればいいのではないかと思います。いろいろな自治体でもなさっているとは思う のですが。 ○総務課長(妹尾)  知名度というか。 ○黒澤委員  知らないっていう企業さんが多いですね。 ○職業能力開発局長(上村)  評価については、資格でなくて履修をしたとか、履修を最後までやり遂げる必要があ りますが、そういうことを見て、この人はこういうことをやり遂げていますということ を証明するという仕組で、今動き出しているものはあります。若い人を相手にしたYE S−プログラムというものです。やり始めつつあり、まだ知名度は本当に低く、もう少 し学校にもPRしろといろいろな人から言われています。 ○諏訪座長  まだちょっとご意見がなかったように思えたのが、資料1の2頁の2「今後の課題の (5)「労働組合等」なのですが、高橋委員がいろいろとなさっていますので、ご意見を どうぞ。 ○高橋委員  私は最近かなり労働組合から自立的キャリア形成について講演してくれという話が、 ここ1、2年結構増えています。私の印象ですと、そういう問題意識を持っている会社 は、圧倒的に電機系かサービス流通系に限られると。それ以外からはまず声が掛かった ことがありません。ただこの2つは、結構そういうお話があり、組合の幹部の方も結構 問題意識をもっておられる。  端的に言いますと、今は給料が上がっていくような簡単な世の中ではないとすると、 組合の存在意義は何かと言うと、雇用の問題です。しかし雇用の確保が可能か、あるい は賃金カットや雇用の確保ができないような状況の中でせめぎ合いをする前に、元々そ うならないように普段から中長期的に組合として何をしておくべきなのかと言います と、やはり自立的キャリア形成の支援だったり、人材育成ということに対して、会社側 にそれなりに訴えていくという役割は大きいのではないかという意識は出始めていま す。しかし、何分特に会社と違うのは専従が1、2年で非専従と入れ替わる組合と、1 回専従になると長くやる組合と、その辺がすごく違うと思うのですが、長く専従をやっ ていると現場のことがわからなくなってしまいますよね。その中で、昔の春闘の賃金に 関する専門性を組合の幹部が持っていたとしても、キャリア自立とか、場合によっては メンタルという話についてはちっともわからないこともあります。最近やっと年金のこ とは大分勉強し始めている感じはします。意識は一部出始めていますけれど、組合にも そういう啓蒙活動をして、むしろ人材育成の支援のようなものを、もっと企業に対して 個人の職業人としての幸せの視点から会社側に対して交渉していくような形があったら いいのかなと。それを少し勉強という意味で支援してやる部分も必要なのかなという気 がするのですが、まだ知識がなく、問題意識が出始めたぐらいの感じですね。 ○諏訪座長  全く私も同感です。キャリアを支えるような法的な基礎概念のようなものを提案して いる観点からも、こういうことにもっと組合が飛び付いてくれるかと思ったら、重厚長 大を中心としてあまり関心を示してくれませんでした。例えば中高年や若者も含めて、 社会へ出てしまうと勉強したいと思ってもなかなかできないことの1つは、ワーク・ラ イフ・バランスの問題にも関わるのですが、ともかく平日の時間外労働がやたら長過ぎ る、サービス残業がかなりある、休日出勤がある。何か役所の話みたいですが、こうい うことがものすごく多過ぎて、これをコントロールできるのは現実には組合しかないの だろうと思うのですね。  本当に無駄な、コアでない仕事をどんどん切っていって、重要なものに限っていき、 中長期的に見て効率を高めない、生産性を高めない、キャリアを発展させていくことが できないようなものをできるだけ抑えていくというバックアップ機能は、公共政策とし てやるか、あるいは労使が自治で自覚的にやっていくしかありません。その推進役が今 までなかなかなかったことに問題があると思っています。このようなことが課題の1つ かなと思います。 ○高橋委員  経営層や人事が一生懸命キャリア自立育成が重要だと例え言い始めたとしても、ライ ンの人たちの意識はすごく遅れています。例えば社内公募で手を挙げて動く人間に対し ても、快く送別会をやるかというと、あんな裏切り者のために送別会をやるか、という 雰囲気だったり、あるいは毎週水曜日のアフターファイブにビジネススクールに行くた めに仕事を早く終わらせて行こうとするのに、「皆が残っているのに行くのか、お前に はチームワークという言葉がわからないのか」と。「チームワーク」という美名を使わ れてしまうとどうしようもなくなってしまうというようなマネージメントスタイルを要 求する現場管理職が歴然としていると、もう先に進まなくなってしまいます。それに対 して、組合がものを申していくというのは、大きな役割の1つではないかと思うのです ね。 ○諏訪座長  今は忘年会のシーズンですが、時折、卒業生から朝早くにメールが来ます。「今朝帰 りです。なぜかというと、三次会までやって、その後カラオケで朝まで歌おうと上司に 言われて付き合った。こういう会社だとは全く思わなかった。先進企業だと思っていた のに…」と、こういう体質なんでしょうね。ですから、単にサービス残業だけではな い、日本の組織によくある思いっきりの体育会的体質は、これに頼らないと教育訓練で も何でもできないというような発想が相当に幅を利かしています。こういう卒業生たち からは、しばらく経つと、「転職しました」というメールが来るのです。 ○北浦委員  労働組合の役割と言いますか、私も少し関わっているのでお話をしますと、労働組合 の役割とか機能にはワーク系とライフ系があるのですね。意外とライフ系が多く、ワー ク系は欠けていました。それは集団的な労使関係の中で処理をしている。ところが最近 見ていますと、おっしゃったようなところが多分一番最先端なのですが、仕事基準とい う考え方が徐々に浸透してきますと、ワーク系についての問題意識がかなり出てきま す。ですから、そこのところの話の中に諏訪座長がおっしゃっているキャリア権的なも のが生まれる素地が出てきているのかなと思いますので、これはどうもその問題と一緒 に解決していくような話かなと。ですから、あまり集団的な労使関係だけでいって、例 えば職種独占的な形であれば供給力ということで、多分能力開発が出てくるわけで、今 までは労働者供給事業などがそうなのですが、そのような形ではなくて、今度は個別の 労働関係というところに焦点を当てると、否応でも今度は能力開発の意味がようやく組 合にも見えてくるのかなという感じがしています。ですから、今おっしゃったような流 れは、多分個別労使関係の動きがこれから強まっていく、その動きの中にきちんと位置 づけて、まだそこがよくわかっていないというところがあるので、その意味で啓発をき ちんとやっていくとこれはかなり支えられてくるかなと。  ついでに言えば、ワーク系とライフ系で、ワーク系が出てくると、初めてワーク・ラ イフ・バランスという意識も出てくると。今までライフ系だけで考えていたことが、今 度はワークとライフという両方の視点で出てきますので、その意味でも今素地は出てき ているのかなと思いますので、そこのところは1つあるのかなと思っています。 ○上西委員  企業が行っているOff−JTの中には、その企業に特化したものもあると思うのです が、ある程度業界に共通しているようなものもあると思います。業界あるいは職種に共 通しているようなベーシックな部分は、本当はその企業が独占するというよりも、他の 同じような業界あるいは同じ職種の人たちも利用できるような形になれば、現在専修学 校等が提供している教育訓練よりも、実はもっと仕事と密接に関係した能力が形成でき るのではないかと思います。詳しくは知りませんが、多分電機連合などは業界としての 教育訓練体系のようなものを摸索されていると思うのですが、外の事業に提供するとい うことは企業にとってはある意味では損失なのかもしれません。それを企業としては事 業化して教育訓練のところである程度儲ける。こちらの従業員がそれを受講するに当た っては、教育訓練給付金のような補助金を使って受講できるような仕組を作れば、他の 企業が持っている教育訓練リソースを利用できる仕組ができるのではないかなと思うの ですが。 ○高橋委員  今のお話に関連して言いますと、先ほど申し上げた専門学校の校長先生がおっしゃっ ていましたが、いろいろな企業の実務家に先生として来てもらう。実際にはもう辞めて しまって、専任で来るケースが多かったようです。それもいいのですが、やはり最大の 問題は、その人たちの教え方がうまくない。要するに自分の長い経験談をベラベラと喋 って、「どうだ、こんなもんだい」で終わってしまう。そうすると、実務家を連れてく ればいいというものでもありません。先ほども話にあった、教える力が失われていると いうことが根本的にありますと、実務家教授さえ増やせばいいという話では済まないと いう問題があります。もちろん専任の教授が教えるのがうまいのかというと、そこも結 構問題があり、研究者としてはすばらしくても教える方はどうなのかということはある のですが、実務家向けの教え方教室ではないですが、きちんとノウハウをうまく教育す る。その辺はアメリカではきちんと鍛えられていてうまい人が多いと思うのですが、面 白くうまく教えるようなトレーニングを受ける。実はそういうところで教えたいと思っ ている実務家で経験の長い人がたくさんおられます。それを資格なのかどうなのかあれ ですが、やって送り込むような基盤に対する投資はあってもいいような感じがします。 勿体ないですね。 ○諏訪座長  実務教育を行う実務家向けに、先生になるための教育実習ではないですが、一定の体 系的プログラムと実践教育をして教え方をうまく学習してもらう。これは大事ですよ ね。 ○職業能力開発局長(上村)  先ほど先生がおっしゃったような話は、ホワイトカラーのアビリティガーデンでやっ ているのはそういう話でしょう。ある程度業界団体に来てもらってカリキュラムを作 り、それを個別の企業やいろいろな業界の人に集まってもらって、それぞれの企業の知 恵も出してもらう。それを踏まえてカリキュラムや教材を作ってフィードバックする。 かつ業界だけではなく、もっと他にも使ってもらえるところに広報をしています。土、 日と空いていて、市場化テストの対象になってしまいましたが、アビリティガーデンは 土、日の需要が少ないという非難は受けています。このようなことをやり始めています ので、意見を言っていただくと心強く感じます。 ○高橋委員  教え方の問題は重要だと思います。昔ある方が、アメリカはベスト・ティーチャーと ワースト・スチューデントで、日本はワースト・ティーチャーとベスト・スチューデン トなんだとおっしゃっていました。要するに日本は勉強する方が熱心で何でも吸収する ので、教え方が下手でも成り立ってきた。しかし、アメリカは学生が机の上に足を乗せ て授業を聞いたりしているが、教え方がうまかったのだと。やはり、教え方のノウハウ を定型化するというか、ヴィジブルにして教えるというのは、それこそアビリティガー デンでやっていただいてほしい。ビデオで撮って自分で見たりすると、すぐわかります よね。「ここはこれではわかりにくい」「うーん、なるほど」などと言いながら。もう 20年大学教授をやっている方にそういうことをやると失礼かもしれませんが、これから そういうところで教えたいと思っているような実務の方々にはすごくいいのではないか と思います。 ○諏訪座長  20年やっていてもやるべきだろうだと思います。確かにそういうところはありますよ ね。 ○高橋委員  今のお話に限定せずに、先ほどからOJT等で出ていますが、教える力が弱っている という問題意識がどこかに明確に入れられて、それを全体として教える力を上げること も1つの項目として独立してあったらいいのではないかと。その1つとして、今のよう な議論があってもいいのではないかと思います。 ○黒澤委員  ちょっと組合の話に戻るのですが、先日東京都の研究会で百貨店組合の方のお話を伺 いました。現在の労働組合の1つの課題は、どうしても企業内組合で正社員を対象にし て、非正社員がエクスクルードされているようなところがあると思うのですが、百貨店 などは、もうほとんどそういった非正社員に頼っているところが多くなってきていま す。特に主婦の方が非常に多く、入れ替わりが非常に激しい中で、再就職する場合に、 これまでの経験が全くカウントされないで、またゼロから始めなくてはいけないと、ど うにかして防がなくてはいけないということで、今回紳士服売場や婦人服売場といった 非常にスペシフィックなところでの経験を資格化しようということを始められたという お話を伺いました。まさにそういった方向に、組合の活動が広がっていけばいいと思い ました。 ○諏訪座長  まだいろいろ意見があろうかと思いますが、本日これまでにあまり意見が出ていなか った部分もそれなりに先生方からご意見をいただけました。そこで、本日の議論はこの 辺りで終わりまして、事務局には意見の整理をしていただいたうえで、次回は具体的に 今後の施策の方向性などを議論をしていきたいと思います。その際には、職業能力開発 の必要性の意義や教育訓練機会の提供の在り方などの問題についても、是非議論いただ ければと思っています。  それでは、事務局から日程等についてよろしくお願いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  次回の日程ですが、1月31日(月)の18時から20時ぐらいまでで開催したいと考えて いますので、よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  次回は久しぶりといいますか、この研究会ではあまりやっていませんでしたが、どう も日程の関係で夕刻になりますが、ひとつよろしくお願いします。ほかに何か事務局へ の注文等ありますでしょうか。よろしいですか。  それでは、本日の研究会は以上で終了させていただきます。年末のお忙しいところご 参集いただきまして、熱心な議論ありがとうございました。