04/12/24 「痴呆」に替わる用語に関する検討会『第4回議事録』          第4回「痴呆」に替わる用語に関する検討会           1 日時及び場所 (1)日時 平成16年12月24日(金) 13:55〜14:45 (2)場所 虎ノ門パストラル 新館5階 マグノリア 2 議題 (1)報告書とりまとめ (2)その他 ○大島室長  皆様お揃いになりましたので、ただ今から『第4回・「痴呆」に替わる用語に関する 検討会』を開催させていただきます。本日は、堀田委員が欠席でございます。それでは 高久座長、議事の進行につきましてよろしくお願いいたします。 ○高久座長  本日は、最後の検討会ということで、年末のお忙しいところお集まりいただきまして 、どうもありがとうございます。  本日、ご議論いただいて、最終的な報告書のまとめとしたいと考えています。審議を 円滑に進めるために事務局で「案」を用意していますので、委員の皆さん方のご意見を お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○大島室長  お手元に、『「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書(案)』と書いたものがご ざいます。これが報告書の(案)でございます。このほかに、参考資料というのを用意 させていただいております。これは今までの検討会におきまして、さまざまな関連の資 料を事務局で用意したもの、また、委員の先生あるいは関係の団体からいただいたもの でありますが、それを資料集として用意いたしました。 (報告書(案)を朗読) ○高久座長  どうもありがとうございました。今、事務局から「痴呆」に替わる用語に関する検討 会報告書の(案)を読んでいただきましたが、どなたかご意見おありでしょうか。長谷 川委員にご専門の立場からお伺いしたいのですが、3頁目の「アルツハイマー病につい ても薬剤が開発され、早期であれば一定期間進行の抑制や症状の改善が見られるように なった」という表現で良いのですね。 ○長谷川委員  よろしいと思います。 ○高久座長  それから、南山堂から出したものに「ときに治癒可能なこともある。」と表現してい ますが、そう書いてあるからこれは仕方ないですね。その下の松下病院長の説明の中で 「痴呆は、脳損傷によって生じることが多く」という表現がありますがこれは良いので すか。これは松下先生がそうおっしゃったのですか。何かに書いておられたのですか。 ○大島室長  教科書に書いてある表現でございます。 ○高久座長  他にご意見おありでしょうか。長谷川委員にお伺いしたいのですが、最近、アルツハ イマーのワクチン療法が話題になっていますね。それについては何も書かなくて良いの でしょうか、まだ先の話ですが。 ○長谷川委員  まだはっきり結果がでておりませんので。 ○高久座長  他にどなたかご意見おありでしょうか。事務局のほうでよくまとめていただいたと思 います。 ○長谷川委員  先ほど、座長がおっしゃいました「治癒可能なこともある」ということとか、それか ら「脳損傷」という言葉がでていますが、これも場合によっては治癒しうることもある 。例えば、頭部外傷の後に起こってきた硬膜下血腫による痴呆あるいは正常圧水頭症等 その他原因治療によって確立されたものがある場合は回復する可能性があることをさし ていると思います。 ○野中委員  日本医師会の中でも検討させていただきましたが、なかなか「認知症」という言葉に 馴染みがないのは事実でありまして、なぜ「痴呆」あるいは「痴呆症」ではいけないの かという意見があったことも事実でございます。ただ、痴呆という言葉が、ある面で侮 蔑感を与えた言葉ということに関してそういう考え方をもたれるのも仕方ない部分があ ります。「痴呆」という言葉が一般に広がりすぎているという部分もあると思います。 「痴呆」という言葉が「認知症」という言葉に変換される過程において、痴呆を抱えた 方々が侮蔑感なく人生を送れるということ、住みなれた地域で健やかに生活されるとい うことが、適切に理解される様に、行動、活動をすることが大事だと思います。その点 で「認知症」という言葉に替わることに対して異論はありません。  ただ、文章の最後の4つの考え方は、そういうふうに言われる部分もありますけれど も、専門家にはなかなか変更する部分が理解されるのに大変であり、そのへんをどうぞ ご一考いただいて替わるまでの期間を適切に活用していただきたいと思います。 ○高久座長  日本医師会の幹部の先生方にもそういう点でご了解いただければと思います。よろし くお願いします。 ○井部委員  報告書全体はとても格調高くうまくまとめていただいたと思います。14頁の下のほう に「例えば、来年4月からの1年間をキャンペーンイヤーと位置づけるなどして、効果 的な広報・情報提供が行われることを要望する。」と書かれておりますが、例えばなの で、ほんのたとえなのか、実現の可能性を含んで「例えば」を書いているのか、そのあ たりはいかがでしょうか。 ○高久座長  例えばというのを外したらどうかということですね。 ○中村老健局長  この4回の検討会でもご指摘をいただいておりますし、先ほどの野中委員のご意見で もそうですが、もちろん誤解や偏見を解くことが大事です。それはなんのためにするか というと、やはり「痴呆」を改め「認知症」対策をきちんと推進し、その状態にある方 々の状況をさらに良くするためにやるわけでございますので、一番最後に書いてござい ますように、この分野の対策を一層強力に、また総合的に進めなければならないと思っ ています。  ただ、言葉の問題も大事でございまして、改めていくということですから、それこそ ある意味で国民の皆さんに定着していることを替えていくわけですので、やはり広報が 重要ではないかと思います。せっかく委員の皆様方にお願いして替えるということにな ったわけですから、是非取り組みたいと思っております。  役所のことですので、なにぶん年度というのが越えられない壁としてあります。本格 的に取り組むために、私どもは今日からやりたいと思いますけれど、力を込めて行政と してきちんとやるためには来年の4月からにさせていただきたいと思います。ただ、そ の間にも法律も提案させていただきますし、新年に入りますと全国の担当部長さんに集 まっていただく機会、課長さんに集まっていただく機会と様々な機会が1月、2月に集中 しておりますので、その時々を通じて、まず我々としてできるだけのPRはさせていただ きます。  関係の方々にもご参加いただいて本格的なキャンペーンを来年の4月から1年間、我 々としては是非実施したいと思っておりますので、ここでお約束させていただきます。 もちろん、1年限りではありませんけれど、まず最初の1年をきちんと広報をしたいとい うつもりでございます。具体的なものはもう少し時間をかけて練りたいと思いますが、 そういうふうにさせていただきたいと思っております。 ○高久座長  よろしいでしょうか、他にどなたかご意見ありませんか。今までにいろいろとご意見 をいただきました。検討会の報告書(案)を先ほど朗読していただきましたが、井部委 員がおっしゃったように今までのご意見を収録してよくまとめていると思いますので、 「案」という言葉を削らせていただきたいと思います。「痴呆」という言葉に替わる用 語ということで、この検討会が始まったときには私自身は「痴呆」でも良いのではない か、あるいはアルツハイマーという言葉ならばハンセン症の例の様に外国語だと抵抗が ないのかなと思っていましたが、委員の皆さん方のご意見、参考人の方々のご意見、そ れからヒアリングはしませんでしたが先ほどからお名前の出ている松下先生のご意見な どをお聞きして、この報告書にありますように「認知症」という言葉が「痴呆」に替わ る言葉としては最も良いと思うようになりました。学会でも受け入れやすいということ です。  最後に、今日お話がでましたように「痴呆」が「認知症」に替わることを契機にして 「認知症」についての一般の方々の認識を変えていただく、行政としてもそれに対する 対応をしていただく、そういうふうに進んでいくならば「痴呆」という言葉を「認知症 」に替えることに意味があると期待しています。堀田委員が本日ご欠席ですが、堀田委 員からはこの報告書(案)の原文のままで良いというご意見を伺っておりますので、こ の検討会の報告書をこういう形でまとめさせていただければと思います。 ○辰濃委員  ちょっとよろしいですか。この参考資料の日本心理学会や日本基礎心理学会、日本認 知科学会、日本認知心理学会の要望でしょうか、意見書でしょうか。これに対してはど ういうふうな考え方で対処していったらいいのかということが1点です。  それから大筋としては、先ほど読んでいただいたもので基本的に賛成ですが、15頁の 認知症対策の推進ということで、これはこの検討会で行ったことが単なる名称の変更だ けではなく、施策そのものをこれから推進させていくことが非常に重要なことであると 言って、具体的なことがずっと列挙されていらっしゃって、これも非常に賛成です。し かし、現場ではどうなのでしょうか。どういう施設設備というものが不十分なのか、不 十分だとすればそれをどういうふうにしていったらいいのか。例えばどういう施設が認 知症のために必要なのか、グループホームみたいなものが必要なのかどうなのか、どう いうようなことでやっていくのかということの指針、どういうものが必要でそれは当然 予算を伴うものであって、そういう施設設備をどうしていったらいいのだろう、どうや って充実させていったらいいのだろうかというようなことが、この中に必要なのではな いかという気がいたしました。その2点です。 ○高久座長  最初の点ですが、4つの心理学会から座長あてに出ている意見書を読ませていただき ました。基本的に「認知」という言葉を入れるということには4つの学会はご賛成だと 思います。「失調症」という言葉も良いと思ったのですが、第2回目の検討会の参考人 のご意見として「失調」とか「不全」、「障害」、「低下」というような言葉はなるべ く入れないほうが良いのではないかというご意見があったと記憶しています。  「認知障害」が、パブリックコメントで一番多かったのですが、敢えて「認知症」と した理由の一つとして、「障害」という言葉は入れないほうが良いのではないかという ことと、それからもう一つは精神科の分野では「認知障害」という言葉は別な意味で使 われているので混乱を招くという2つの観点から「認知障害」でなく「認知症」に決ま った経緯があります。  そういう意味で、「失調症」という言葉を入れるよりは「認知症」のほうが良いので はないかと、この4学会の意見書が出たあとに事務局と相談をして決めさせていただき ました。 ○大島室長  先ほど高久座長がおっしゃられたのは、本間参考人がヒアリングのときに資料を用い られご説明されまして、この検討会の中でも確かにそういう言葉は避けたほうがいいと いう議論があったかと承知しております。 ○高久座長  具体的な政策についてはどうですか。 ○大島室長  痴呆のケアの中身につきましては、まさにこれから在宅系の様々なサービス、それか ら施設のサービス自体を「痴呆」・「認知症」の方に合うような形でケアそのものを変 えていくということが大きな狙いです。特にこれからは、地域密着型のサービスという ことを提唱しております。地域の中で様々な機能を持ってその中で生涯認知症の方が必 要なケアを受けられるようなサービスづくりをしていこうと、今回の介護保険制度改革 の中でも小規模多機能型のサービス拠点ですとか、そういったことを含めた地域密着型 サービスというものを新たに制度の中に位置づけをしていこうと考えておりまして、市 町村単位あるいはより小さな生活圏域単位でサービスが提供されていくようなものを新 たに構築するというのも一つのこれからの方向だというふうに考えております。  ただ、それにしましても既存のいろいろなホームヘルプサービスですとか、訪問看護 、特養、老健などいろいろありますサービス全体も認知症に切り替えたようなケアに変 えていくという、その両方が必要ではないかというふうに考えております。 ○中村老健局長  補足をさせていただきますが、参考資料をお開きいただきたいと思います。当面の痴 呆対策関係施策ということでまとめさせていただいております。費用がたくさんかかる だろうというお話もございます。もちろん報告書の15頁で列挙いたしました様々な施策 、研究費などについては厚生労働省の研究予算などが必要になりますが、参考資料に書 かれております部分のかなりの部分が介護保険制度の下でサービスとして実現されるも のだと思っております。17年度、来年度の介護保険の総費用は6兆8千億円と見込まれ ておりますが、要介護認定を受けた方の半分が実は痴呆の問題を持っておられるという ことで、正確な数字ではありませんがそういったことを大胆に仮定すると痴呆性高齢者 の方に介護保険の費用の半分は使われている、これは大胆な仮説ですがそんなような状 況でございます。そういったことでお金はたくさん使われるわけですが、今問題になっ ておりますのは、そういうお金の額ではなく同じお金を、資源を使ったとして、もっと 痴呆の方にふさわしいケアにどうやってケア自体を変えていくかといったことが課題に なっております。また、早期診断、早期発見ということになるとどうしても専門家の方 々、医療の関係者の方々のご協力が必要だということでかかりつけのお医者様、主治医 さんたちにも中心的な役割を担ってもらわなければならないと考えております。そうい ったことでどちらかというと、今あるサービスをより痴呆の方にふさわしいサービスに 組み替えていくということが課題なっているのではないかと思います。  この報告書に書くということも一つの方法だとは思いますが、まさに介護保険制度の 見直しということで、認知症高齢者対策はこれからの制度改革の基本になっております ので、具体的な改革論につきましてはそちらのほうにお譲りするということでご了解い ただければと、これは事務局のほうからでございますがそういうふうに考えておるとこ ろでございます。 ○辰濃委員  ありがとうございました。 ○高久座長  他にどなたか、よろしいでしょうか。それでは最後に中村局長さんからよろしくお願 いします。 ○中村老健局長  この報告書の最後の頁に検討経過がございますが、6月21日に始めさせていただいて 、約半年、本当に年の瀬も押し迫った今日までお煩わせをして、大変精力的にご審議い ただきましてありがとうございました。このように決めていただきましたので、先ほど 来申し上げていますように私ども全力を尽くして施策の推進、それから「認知症」とい う名前に替えた意義、それから単に名前を替えるだけではなくてそういうことが施策の 推進に役立つのだと、またこれを契機に我が国の高齢化にとって最大の課題の一つでご ざいますので、関係の皆さんと手を携えて行政としても全力を尽くしてまいりたいとこ こで改めてお約束させていただきまして、お礼の言葉に代えたいと思います。どうも本 当にありがとうございました。 ○高久座長  どうもありがとうございました。これをもちまして、半年間にわたってご議論いただ きました『「痴呆」に替わる用語に関する検討会』を終わらせていただきます。委員の 皆様方には積極的なご意見をいただき、どうもありがとうございました。  この報告書の中に、これからの対応をいろいろと述べていますが、私個人としまして も、「痴呆」という言葉を「認知症」に替えるときに、一般の方々が痴呆あるいはアル ツハイマーに持っている考え方を是非変えていただくような啓蒙活動をご関係の方々に 是非お願いしたいと思います。本当にありがとうございました。                                      以上                       照会先:老健局計画課痴呆対策推進室                            痴呆対策係(内)3869