04/12/17 労働政策審議会労働条件分科会第38回議事録            第38回 労働政策審議会労働条件分科会                    議事録                     日時 平成16年12月17日(金)                     10:00〜                     場所 経済産業省別館8階 827会議室 ○西村分科会長  ただ今から、「第38回労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。本日 は、荒木委員、和田委員、谷川委員が欠席です。  本日の議題は、「今後の労働時間対策について」です。前回までの議論を踏まえ、事 務局から「今後の労働時間対策について(報告)(案)」の資料が提出されておりま す。本日は、報告の取りまとめに向けて議論していただきます。最初に、事務局から説 明をお願いいたします。 ○企画課長  報告案を、課長補佐から読み上げさせていただきます。 ○企画課長補佐  報告案を読み上げさせていただきます。  (「今後の労働時間対策について(報告)(案)の読み上げ」)  以上です。 ○西村分科会長  今読み上げられました報告案について、御意見などがありましたらお願いいたしま す。 ○小山委員  確認ですが、改正法に基づき厚生労働大臣が定める指針については労働条件分科会で 検討することになるということでよろしいのでしょうか。 ○企画課長  そういうことになろうかと思います。 ○小山委員  衛生委員会と労働時間等設定改善委員会の関係について確認しておきます。従業員代 表という観点でいくと、当然パート労働者、有期契約労働者、契約社員といわれる人た ちも含まれると思うのです。衛生委員会とのかかわりで、労働時間等設定改善委員会の 委員は派遣労働者や、業務請負で実質派遣に近いような労働者を代表するかしないかと いうことが1つです。  労働時間の在り方を議論するときは、それらの様々な雇用形態の労働者についても議 論の対象とするべきだろうと思うのです。その考え方についてもお聞きします。 ○企画課長  一定の衛生委員会を、労働時間等設定改善委員会とみなす場合もありますが、もとも との労働時間等設定改善委員会は、事業主が雇用する労働者についての委員会というこ とですので、過半数代表を判断する場合は雇用する労働者をベースにして考えるという ことで、派遣労働者など、委員会の設置されている事業場の事業主に雇用されていない 者は入らないことになります。  また、委員会での議論の対象も同じような考え方になるわけです。委員会の設置され ている事業場の事業主が雇用する労働者の労働時間について、いろいろ議論していただ くことが基本です。ただ、派遣労働者の問題について議論することが法律上許されない ということにはならないと考えております。 ○小山委員  衛生委員会は、派遣労働者も構成メンバーになり得る条件を持っていますね。 ○企画課長  そのとおりです。 ○小山委員  衛生委員会は、職場の労働安全衛生を考える上で、派遣労働者を含めて議論し、それ ぞれの対策をとるわけです。そういう意味では、労働時間も同じ職場で働いていて、例 えば有給休暇取得の問題にしても、派遣労働者などについても、どのようにその職場を 運営していくのかという工夫が、実務的に現場では必要になってきます。  そうした中で衛生委員会では議論の対象に派遣労働者が入るけれども、労働時間等設 定改善委員会では入らないということに矛盾は生じないかという心配をしているのです が、その点についてはいかがでしょうか。 ○企画課長  衛生委員会を、労働時間等設定改善委員会とみなす場合であっても、それは、あくま で雇用する労働者についての労働時間等の設定について議論していただくために、衛生 委員会を活用するということであれば一定の要件の下、みなすことができるようにする わけです。みなすときの要件としては、その委員全体の半数が、雇用されている労働者 の過半数代表の推薦に基づき指名されていることなどの要件を満たしていることが必要 となります。  議題も雇用する労働者の労働時間等の設定の改善について議論していただくというの が基本です。雇用する労働者の労働時間等の設定を改善するためにいろいろな手段があ ると思います。派遣労働者との関係をどうするかについても、手段として検討しなけれ ばいけないということであれば、そういう観点からの検討がなされても構わないという ことではないかと思います。それはもともとの労働時間等設定改善委員会の取扱いの考 え方と同じになるものです。 ○田島委員  今の点ですが、選出の母体、あるいは母数そのものが違うのに、そういう形で本当に いいのかと感じています。これはどういうことかというと、例えば労組法においては労 働組合役員の選出方法などについて、会社側が介入したら不当労働行為に当たるのです が、労組法のような規制のないところでの労働者の過半数代表や委員会の委員の選出に ついては、本当に労働者の意見が反映できる代表者あるいは委員を選べるのでしょう か。  全国一般労働組合でこういう事例がありました。36協定を締結する際の労働者の過 半数代表について、会社側の意向と労働組合側の意向が違って対立し、結果的に全国一 般が負けました。その後、経営者が推薦した人に投票した人に商品券が配られていたこ とが判明したのですが、これは不当労働行為に当たらないということでした。また、買 収に当たらないかという点についても、事前に依頼していたら買収だけれども、代表者 の選出後に与えたということで、そのまま不問になってしまいました。  本当に民主的にしっかり選ぶことができるのかという問題があります。また、その母 数そのものが違う委員会を、みなすというのはちょっと無理があるのではないかと思う のです。その辺は厳格に考えて、委員会の委員を選ぶに際しては、労組法第7条の不当 労働行為の規定を準用するような形を、これからの労使委員会といいますか、労働者代 表制度が広がっていく中で検討する時期に来ているのではないかと思うのですが、その 点はいかがですか。 ○勤労者生活部長  今のお話は、2つの問題点を含んでいると思います。第1に今回の労働時間等設定改 善委員会と衛生委員会の関係と、第2に一般的な労働者の代表制、適正な代表制の基本 論の2つがあったと思います。  前者については、多少法律論的で恐縮ですが、衛生委員会の方は現行の規定上「事業 主が使用する者」という「使用」という概念で安全衛生法上は貫かれています。雇用関 係の有無を問わず、その現場で使っている者について、きちっと安全管理や衛生管理を しろという法体系で通しています。  一方、労働時間関係の方はそれと違ってベースとなるのは「雇用契約」です。つま り、雇用している労働者についての時間管理をきちんとしていきましょうということに なっています。時短法もそうなっていて、これまでの議論では、その体系をそのまま引 き継いで、労働時間短縮推進委員会を労働時間等設定改善委員会に改めるという議論で した。これまでの経緯に照らして、そこは御理解いただきたいと思います。そんな中 で、衛生委員会について労働時間等設定改善委員会とみなすことができるのは、労働時 間等設定改善委員会についての要請に合っている場合に限るということでギリギリの調 整を行うという枠組みにしております。  また、当然同じ作業場なり事業場で働きますから、そこで働く場合に雇用関係にある 方・ない方が、例えば交替で働いていたりするということがあれば、雇用関係のある方 ・ない方の両方とも委員会の議論の対象となり得ると認識しています。そこまでが大前 提です。  もう1つ適正な労働者代表者制の話は、まさに言われたように労働時間等設定改善委 員会だけではなくて、いわゆる労働者の過半数代表について、その選出過程が公正かど うか、また、本当に事業場でそういうルールが確立できるのかという本質的な問題を含 んでおります。そういう意味ではまだ力が及んでいませんけれども、基本的に検討しな ければいけない時期に来ているという認識は持っています。 ○田島委員  最初の認識のところですが、報告書案の1のところで「『年間総実労働時間1,800 時間』という数値目標は、完全週休2日制の下で年次有給休暇を完全に取得するような 働き方を、労使はじめ国民に認知させる上で大きな役割を果た」したとありますけれど も、こういう認識でいいのか。最近、有給休暇の取得率が低下している現状の中で、こ の数値目標にはまだまだ役割が大きいというふうに思うのですが、本当にこういう認識 でいいのか。  報告書案の2のところでもふれられていますが、一般労働者は未だに2,000時間 を超える現状にあります。つい最近、新聞記事で見つけたのですが、10月28日付の 日経新聞に、ILOのデータで、週50時間以上の労働者が全労働者に占める割合につ いて、日本は、4人に1人が50時間以上でダントツのトップだというのが出ていまし た。アメリカでは20%、イタリアでは4.2%、スウェーデンでは1.9%という数 字を見ると、国際的に見ても明らかに日本は長時間労働の実態があるのではないか。そ の意味で、一般労働者の総実労働時間が2,000時間を超える現状では、一般労働者 とパート労働者を合わせた1,800時間目標は時宜に合わなくなっているということ だと思います。  一般労働者にとって、時短の目標値はこれからも有効ではないか。年休の取得率の面 からも、年間の総実労働時間から見ても、そういうことをしっかり謳うことが必要では ないかと思うのですが、その点についてはいかがですか。もう1つは、日経新聞に掲載 されていたILOのデータがありましたらお示しいただければと思います。 ○企画課長  田島委員がおっしゃいましたことは、本日建議の形でまとめていただくことであり、 報告書案の7頁の「今後の目標の在り方について」のところに考え方としてまとめられ ているのではないかと思います。  国際比較の件ですが、今おっしゃられました日経新聞の資料は手許にありません。9 月28日の第35回労働条件分科会で配付した資料を再度机上に配付しておりますが、 その6頁を御覧ください。国際的な労働時間の比較というのはどのように取るかという 点で難しい面もありますが、比較できる資料ということで、お示ししております。 ○勤労者生活部長  田島委員が言われた1,800時間目標のところでは、完全週休2日制や、年休を完 全取得する働き方が効果的であったかどうかという指摘もあります。以前に労働条件分 科会でもお示しした資料にあるかと思うのですが、時短法ができたのが平成4年です。 例えば、平成4年から平成8、9年までは、年次有給休暇の取得率は上がってきていま す。ところが、平成10年辺りからちょっと右肩下がりになって、また落ちているとい うことです。これは経済的な要因などいろいろあるし、確実な分析はできていないので すが、少なくとも平成4年から平成8、9年までは上がったということを踏まえると、 この法律の成果ということでいいのではないかということで報告書案の1のような書き ぶりにしています。週休2日制については、確実に右肩上がりに増えているということ で、そこの評価についてはお許しいただきたいと思います。  また、1,800時間という目標数値を掲げるという手法の有効性について御発言い ただきましたが、これについては、今言ったように一定のテーマをターゲットにし、 1,800時間などいろいろな時間を掲げてやることが、確かに効果があることは今ま での成果の中で間違いなく言えると思います。  しかし、ここでの議論を通じて言えることは、少なくとも今のような掲げ方は時宜に 合わなくなったというのが、労働条件分科会の委員の皆様方の御意見ではなかったかと 思います。その後の扱いについて、今の御質問は、行政当局はどう考えるのかというこ とだと思うのです。これについては、この報告書案の中の先ほど紹介した部分にも書か せていただきましたように、対立した考え方がありますので、その点について、今後十 分意見交換をしていただいた上で、我々として措置すべき対応を考えさせていただきた いということでお願いいたします。 ○奥谷委員  報告書案の2頁に「過重労働による脳・心臓疾患の労災認定件数が310件以上を記 録し、精神障害等の労災認定件数も増加」と書いていますが、そのデータをきちんと出 していただきたい。現在、人材の質がかなり変わってきていて、ストレス耐性のないス トレスに大変弱い人たちが企業に入ってきています。  過去10年、20年前の人材と、現在の人たちとは人材の質がかなり変化してきてい るわけです。精神障害等の労災認定件数が増えているというのは、人材の質が変化して きていることも加味しつつ、数字的なものを入れていただかないと、ただ過重労働によ ってすべてこういうことが起きる、という誤まった認識が広がってしまいます。  また、報告書案に「家庭や地域の再生、ひいては少子化の緩和に資する」と書いてあ りますが、少子化の問題は、単に労働時間が多いというような簡単な問題ではないと思 います。ここの「少子化」という言葉は書かないでいただきたいと思います。そういう 単純なものではないと思います。 ○新田委員  今までの話にもかかわるのですけれども、労使が目標を持って取り組んできたという 意味合いについての効果といいますか、双方が一生懸命やろうではないかという意味合 いのことは私も最初に申し上げました。そういう意味でこのような2,000時間を超 えている一般労働者の現状に照らして、1,800時間目標をどのようにするのかが問 題となります。今後、法律の名前が変わったり、改正されたりしていく中で1800時 間目標を労使の間でどのように持ち続けるのかというのは大変大きな課題だと思ってい ます。  それが、今回まとめられた文章にありますように、時宜に云々という言い方もあるの ですけれども、そういう書き方によって、もう1,800時間はいいのだよ、というこ とになり、まさにここに書かれている「労使はじめ国民に認知させる上で大きな役割を 果たした」というようなところが全く飛んでしまうのではないかと思えてならないわけ です。  私は最初にも申し上げましたように、時短促進法がなぜそのまま延長できないのです か、ということをまだ思っています。今回、こういうふうに変わっていくとしても、そ このところを双方きちんと持ち合っていくのだということがないと駄目だと思います。  長時間労働の弊害といいますか、長時間労働が諸悪の根源であるとずっと言っていま すけれども、長時間労働があるという現実や、あるいはそのことから派生してくる職場 の実態から、気を使うというようなさまざまな理由で、年休を取りにくいということが 起こっていると思います。働きにくさの問題が、女性たちが子供をつくることを考え込 まざるを得ないことの大きな要素であるという調査もあります。  今回の改正が目標とするのは、健康や生活ということを全部ひっくるめて、この先私 たちがどのような働き方をしていくのかを決めていこうということであります。今のま まではとても駄目なのだということを認識し合った上で、必要なところはここではない かというところがしっかりと確認されないと、多様な働き方が求められているとかいろ いろなことを言われるのだけれども、根本のところで何を変えなければならないのか、 というところの共通認識がなければ、法律を改正しても、実効を伴わないのではないか という気がしてならないわけです。  そういう意味で、変えなければならないところについての意味合いをどれだけしっか りと言っていけるのか、というのは大きな要点だと思います。まず、ここで双方の認識 をもっと共通のものにすることが大切ではないか。そういうことがあってこそ法律改正 の方向性を提起していけるのだと考えているわけです。 ○企画課長  過重労働による脳・心臓疾患の労災認定件数のデータについての御質問がありまし た。9月28日の第35回労働条件分科会の資料3−1の30頁に「過重労働メンタル ヘルス対策に対する検討会報告書の概要」を付けています。この中にも、「年間310 件」という数字が入っています。  最近の状況を見ると、平成15年度は脳・心臓疾患で312件労災認定がなされてい ます。平成11年度は81件、平成12年度は85件、平成15年度は312件になっ ています。こういうデータですので、必要があれば補足資料として、報告の中に付けて いくことは考えられるのではないかと思っています。  もう1つの問題については、報告書案の2頁の3の中で、少子化のことについて労使 各側の委員から御指摘がありました。労働時間の問題と少子化の問題については、例え ば少子化対策大綱など、ほかの少子化や子育ての促進について議論する場でもいろいろ な課題が指摘されているわけですけれども、そうした課題の1つとして労働時間の問題 も指摘されております。  そうしたことを踏まえ、ここでの表現は、こういった家庭や地域で過ごす時間が増加 することは、家庭とか地域の再生、ひいては少子化に資するということが期待されてい るということでまとめさせていただいております。 ○勤労者生活部長  今の点については、日本経団連が14日に新聞発表された2005年版の「経営労働 政策委員会報告」にも、そういう部分があります。「人口減少時代の経済運営」という 項目の中に「少子化対策」という項を立て、そこに「企業においても、子育て支援への 取組は人材確保や従業員の働きやすさの向上、多様な働き方の実現などを通じて、従業 員の意欲向上や生産性、業績の改善につながる可能性が高い」と述べられております。  それぐらいの関係はある、ということはある程度共通の認識があると思い、そういう 意味で「資する」としております。全面的ということではなく、関係があるというぐら いの書き方をさせていただいております。 ○田島委員  報告書案の3のところで「時間ではなく成果によって評価される仕事が拡大する中 で、・・・企業側にとっても期待される」と結論付けてあります。これは、「企業側に とっても」ではなくて、「企業側にとって」ということで、「も」は取ってもいいので はないかと思うのです。この考え方は、企業側の意向だろうと思いますし、「期待され る」というのは、企業側にとって期待されることではないでしょうか。時間管理は時間 管理でしっかりしなくてはいけませんし、先ほどのILOのデータでも、長時間労働の 実態があるわけですので、そういう意味ではこの「も」がすごく気になるのです。 ○企画課長  そこのところは、労働者が職業生涯を通じて意欲と能力を十分に発揮できるような環 境の整備が求められるということについては、労使とも共通であろう、ということでこ のように書かせていただいているところです。もう1段上の「環境の整備」を受けてい ることになります。 ○渡辺(章)委員  最初の衛生委員会の方に議論を戻して申し訳ないのですけれども、報告書案の5頁の 下から5行目に、「新設が困難な事業場については既存の委員会で、差し当たっては衛 生委員会が労働時間等設定改善委員会と同等のものとして取り扱えるようにすることが 考えられる」とし、その際の条件として2つの事項が書いてあります。今、衛生委員会 の設置が義務付けられているのは従業員規模が50人以上の事業場です。そうすると、 中規模以上の事業場では、衛生委員会を設けることが義務付けられています。  そうすると、かなり多くの事業場で、2つの要件を満たした上で衛生委員会が労働時 間等設定改善委員会を兼ねることで、この法律が独自に設ける今後の取り組むべき課 題、具体的には、指針に示されるような課題を進めていこうということですけれども、 従業員規模が50人以上の事業場で、労働時間等設定改善委員会の設置が「困難」とい うことの意味がどのようなことなのかはさらに検討が必要でしょうし、衛生委員会が労 働時間等設定改善委員会を兼ねた場合、労働時間等設定改善委員会としての意義や機能 が薄められていくおそれはないかという感じで読みました。  併設してもいいし、兼ねてもよいということなのだと思いますが、ただ、「困難」と いうのはどういうことを言うのか今のところわからないので、衛生委員会が労働時間等 設定改善委員会を兼ねる場合に、労働時間を家庭、地域、企業という広い面から仕事と 生活を調和できるような体制に改善していこうという大変良い目標を持った法律による 事業場での実施体制の整備という意味合いがぼけてしまうような感じがしてしまいま す。従業員規模が50人以上といったら、結構な規模の事業場なので、むしろ労働時間 等設定改善委員会は労働時間等設定改善委員会として設立することとしてはどうかとい う思いつきのような意見ですが、その点についてはどうなのでしょうか。 ○勤労者生活部長  ここの書きぶりは、「具体的には」以下と「新設が困難な」というのは、委員御指摘 のような読みにくさがあるかという感じはしたのですけれども、やや端折って書いてい るということが1つあります。「具体的に」以前の文章の構成のイメージは、9月28 日の第35回労働条件分科会の資料3−1の37頁の各種の専門委員会を頭に置いて書 いております。  労使協議の場の設置というのは任意でして、これは決して強制ではございません。 37頁の下の表を見ますと、労働組合の有無別に、例えば、休日・労働時間委員会とい った各種委員会がいろいろ設けられている状況が書かれております。ここで、労働組合 の無い事業所ではあまり各種委員会は設置されていない状況も伺われることから、労働 組合がないといったことを「困難な」という概念で捉え、困難な場合でも既存の委員会 などがあれば、それをコアとして、労働時間等設定改善委員会としても活用してもらえ ないかというのが前半の論理構成です。  こうした考え方から、従業員規模が50人以上の事業場で設置が義務化されている衛 生委員会については、法律で手当てしておかないとうまくいかないということで、説明 を省略して「具体的に」と書いたわけです。ですので、第35回労働条件分科会の資料 3−1の37頁をイメージして考えていただくのが基本です。具体論のところは、法律 のテクニカル論を展開させていただいていると御理解いただきたいと思います。 ○小山委員  関連してお聞きします。衛生委員会と労働時間等設定改善委員会では委員の構成が違 います。例えば、衛生委員会の委員の推薦を行う労働者の過半数代表者の母数には派遣 労働者も入っていますが、労働時間等設定改善委員会を兼ねるとすれば、派遣労働者等 を除いた、雇用されている労働者の過半数ということで組み換えなければいけない。そ の場合には、衛生委員会を新しく作ることになるのか、あるいは労働者の過半数代表者 を選び直すのか。  そうすると心配なのは、衛生委員会が労働時間等設定改善委員会を兼ねることによっ て本来衛生委員会が持たなければならない機能が、委員構成の点等で変質してしまうよ うなことも心配するわけです。そういうところの歯止めはきちんとしておかないと、衛 生委員会と労働時間等設定改善委員会ではそれぞれの役割が全く違うわけですし、委員 構成が異なるところでの混乱が起こらないような措置は十分にしていただきたいという ことが1つです。  もう1つは、今までの時短推進委員会については、その設置に当たって運営規程や議 事録を作成するといった規定がありました。これらは、新しい制度の中でも、そのまま 引き継ぐ方向で検討されていくと考えてよろしいのでしょうか。 ○企画課長  衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなす場合において、元の衛生委員会に影 響はないかということですが、労働時間等設定改善委員会とみなした場合でも、元の安 全衛生法上の衛生委員会の要件は当然かかるわけですので、御懸念のようなことについ ては十分それで担保されているということであります。  今の時短推進委員会の設置については議事録の作成などの規定がありますが、それは 新しい労働時間等設定改善委員会にも引き継ぐことを現在考えておりまして、そうした 方向で検討していきたいと考えております。衛生委員会を労働時間等設定改善委員会と みなす場合も当然同じルールが適用されることになろうかと思っております。 ○石塚委員  先ほどの小山委員の意見と重なる点はあるのですが、また、この段階ですから文章表 現をどうこうしろというつもりはないのですけれども、労働条件分科会における議論に ついてのここのところの新聞報道は、私どもの組合員の反応を見ていると、1,800 時間目標がなくなるというメッセージがすごい強烈に出てしまっているように思いま す。  この審議会の場ではかなり真面目な議論をして、今後とも労働時間対策は重要だ、と いう共通認識の下で議論してきて、そういう観点からこの報告書案のようなまとめ方が されているのだけれども、一般の方々には、とにかく1,800時間目標はなくなるん だというメッセージとして強烈に伝わってしまっています。私みたいに審議に参加して いる人間は経過が分かっていますし、法律の狙いもよくわかるので、この段階で反対す る気は全くないわけですが、要望として申し上げたいのは、この報告書案が審議会の建 議としてまとまった段階での一般の方々に対するメッセージの出し方に気をつけていた だきたいということです。具体的には、1,800時間目標はなくなってしまって、労 働時間対策はすべて不要だみたいなイメージにならないようにしていただきたいという ことです。ここで確認すべきは、今後とも労働時間対策は依然として重要だけれども、 画一的な1,800時間目標ということに関しては、時宜に合わなくなっているという 主張ですから、労働時間の短縮というのは今後とも必要なのだという基本スタンスは変 わらないということです。具体的な方法論として少し変えていくのだということの意味 合いをはっきりと伝えていただかないと、私たちとしても立つ瀬がなくなってしまいま す。これは要望ですけれども、十分気をつけていただきたい点として強調しておきま す。 ○紀陸委員  指針の審議検討のスケジュールは今後どのようになるのかお尋ねします。また、指針 の内容についての要望ですが、報告書案の4頁に内容の一端として(1)から(4)まであり ますが非常に細かいという印象を受けました。個別企業の取組について、ここまで行政 から言われる筋合いがあるのかなということを感じます。指針であまり細かいところま で決めるよりも、個別企業の労使でいろいろ応用動作ができるようなものにしていった ほうが、現実には意味があると思っております。  企業の実態は、業種、業態、規模によってさまざまですから、あまり一般的にいろい ろ書き込んでも意味がないと思っております。ですので、指針については、あまり細か い点まで立ち入らないような形でお願いしたいと思います。 ○勤労者生活部長  石塚委員から御指摘のあった労働時間の問題が重要だということはおっしゃるとおり であります。そのことは報告書をしっかり読んでいただければ自ずと分かっていただけ るようにしているつもりです。ただ、1,800時間目標のところについては、マスコ ミはニュースバリューを高くするためにキャッチフレーズとして書くのでしょうけれど も、記事としては、労働時間問題こそ重要だという言い方を徹底していただけるように したいと思います。  指針のスケジュールについては、建議を出していただき、これをベースにした法律案 が次の国会に出て成立した後ということになりますので、通常であれば5、6月ぐらい から、国会等の議論も踏まえた上で指針づくりに入ることになろうかと思います。  指針の中身についての紀陸委員からの御指摘は、指針はあまり細かいものとするので はなく、できるだけ現場の労使に委ねるような形にすべきという御意見だということは わかったのですが、もう一方ではしっかりした労働組合のないところもあるし、中小企 業の事業主の方などから、指針で項目だけ立ててもどんなことをやればいいかわからな いということも、よく耳にする話ですので、まさにここは指針づくりのプロセスにもか かわるわけですが、労使にしっかりした意見を出していただいて、どんなものにするか ということも併せて御議論していただく中で、自ずと解決するのではないかと思ってい ます。決して行政が一方的にやる類のものではないと思っています。 ○須賀委員  先ほどの労側の意見と、今お答えいただいた内容にかかわるのですが、報告書案の7 頁の「今後の目標の在り方」で労側がずっとこだわってきたところなのですが、2行目 の後半から3行目にかけて、「従来どおりの目標値として用いることは時宣に合わなく なっている」とありまして、この内容を確認しておきたいと思います。従来どおりの目 標値というのは、全ての労働者を対象とした目標値という意味で、当初この目標を設定 したときは、今のように多様な雇用形態が出てくることは想定されておらず、パートタ イム労働者などの比率がどんどん増えることも想定できていなかった中で設定された目 標値です。この当時の想定としては一般労働者を想定していたと思うのですが、この想 定が現在の状況に合わなくなってきている中で、1800時間目標を従来どおりの目標 値として用いることは時宜に合わなくなってきているという趣旨と、理解してよいの か、ということです。  ここからは繰り返しの主張になって申し訳ないのですが、すでに我が国の経済計画な り、経済政策の運営の基本方針に、労働時間が1,800時間であるべきだということ がなくなっているのですが、私どもは経済計画から1800時間目標をなくした閣議決 定そのものが間違いだと思っております。そういう中であえて時短促進法について、労 働時間にスポットを当てて、働き方あるいは仕事の在り方、生活の在り方までを含め た、少し幅広い視点で方向転換し、臨時措置法から恒久法にしていこうということに は、私どもは異論のないところですが、前段にもあるように、目標が果たしてきた意義 は非常に大きなものがあったし、現に一般労働者は労働時間が1,800時間などとは ほど遠い状況にあるわけです。したがって、一般労働者以外の労働者という言い方をし ますが、そういう人たちの労働時間短縮をどうするのかが一方でありながら、いちばん のキーになる一般労働者の労働時間を1,800時間台に近づけていく、あるいは 1,800時間を実現することについては、国全体を挙げての大きな目標にして然るべ きだと、今でも思っています。したがって、この目標の在り方については、本分科会の 結論としては、個別課題ごとに検討していくことが適当であると考えるということだと 理解しております。報告書案の表現について、この場に及んでどうにかしてくれとは申 しませんが、今後の目標の在り方の検討に際しては、ぜひこの点をもう一度主張させて いただきたいと思いますし、私ども労働側全体として、1,800時間の目標は非常に 重要だと今でも認識しているので、この点については意見として申し上げておきます。 ○勤労者生活部長  今の御意見はしっかり受け止めたいと思います。前半部分についてのコメントになる のですが、平成3年から平成4年当時は、皆さん御存じのように、労働基準法の法定労 働時間は1日8時間でしたが、週の法定労働時間は原則44時間だったのです。そこで この1,800時間という目標を掲げました。さらにいうと、猶予対象事業所について は週48時間という例外的な時間法制も存在する中で、1,800時間目標を掲げたの です。  それから、パートタイム労働法もその少し後に制定したのですが、その当時増えてき たとは言いながらパートタイム労働者は500万〜600万人だったのです。ですか ら、今言われた点についてはいずれも当時の事情、背景を踏まえて、まさに「従来」と いう言葉に全部入れているつもりです。そうした事情や背景が変わった中で、こういう 目標設定はどうだろうかというのが今回のスタートでした。  そして、御意見はまさに今後の在り方についての部分ですから、個別にやるべきこと についてそれぞれ個別に議論をしていただくことが基本であると思います。しかも、労 働時間の問題は恒常的に重要だということで、恒久法にしていただきますが、労使の自 主的な話合いを促進するという性格は変えておりませんので、目標の在り方についても 労使で議論をしていただくことが重要だということを御理解いただきたいと思います。 ○山口委員  先ほどの意見と重なるのですが、今回このまとめが偏ったメッセージにならないよう にご留意いただきたいと申し上げておきたいと思います。労働時間に縛られない働き方 をする労働者が増えてきた事実はあったとしても、労働時間管理に問題がなくなったわ けではありませんし、大きく時短が進んでいるわけでもないです。まだまだ労働時間の 短縮は必要なのだというところが見えるようなメッセージを送っていただきたいと思い ます。  また、メッセージの中に、今後の労働時間管理については労使自治に委ねるというと ころが強く出ると、労働行政のかかわり方が薄くなるように思うので、そこの部分は強 調していただきたくないと考えます。労働行政が指導に入ったことがきっかけで、労使 が労働時間について真剣に取り組むようになるなど、行政による労働時間対策の効果は 大きいわけです。  さらに、労使自治が確立しているようなところであっても、多くの不払い残業が起き ていたりすることがまだまだあるわけですので、労働行政として手を緩めることなく取 り組んでいただきたいということを重ねてお願いしておきたいと思います。 ○紀陸委員  確認をさせていただきたいと思います。指針の性格ですが、今の松井部長のお話です と、労使が論議をする場合の参考の材料のようなものだということですよね。この指針 に基づいて、いろいろな形での行政が指導する際の根拠に使うものではないと理解して よろしいのですね。 ○勤労者生活部長  行政の指導をどのようにイメージされているかですが、時短法に基づく行政の進め方 は、適正な労使自治をやっていただくように、我々としてお勧めするというのが基本で す。そのときに労使自治をしっかりやっていただくために、指針について本分科会で議 論していただき、いいアイディアが出れば、それを委員の皆様にしっかりと受け止めて いただき、指針の内容に反映したいと考えております。それぞれ労使を代表にする委員 の皆様からこの場で出てくる意見ですから、それをつつがなく全国に広めることは肝要 であるので、そういった視点での行政の立居振舞は必ずやりたいと思います。ただ、そ れを強権的にやるのかと言われれば、多分そこまではしません。時短法はもともと労使 の自主的な取組を推進する法律であって、罰則付きの強行法規ではないので、物事の進 め方は今言ったことを基本に置きながらやるということです。そういう意味で、それを 指導と言うか、普及とか啓蒙啓発と言うかの違いだと思います。 ○須賀委員  その点に関してですが、確かに部長がおっしゃるような位置づけの法律ができるのだ と思います。ただし、これは私どもにも責任の一端があるのですが、労働組合の組織率 は19.2%と引き続き低下傾向にあります。そうすると、本当の意味での労使自治が きちんと機能する割合が2割にも満たないような状況の中で、残り大半の8割を超える 労働者が、きちんとした労使自治、あるいは労使の話合いの枠組みを享受できない可能 性を秘めているわけです。  法の枠組み上そうした内容にならざるを得ないことについては理解しますが、ここで 果たす労働行政の役割は非常に大きいのだと思います。強行法規でない限りは指導とい う形にはならないと思いますが、労使自治といっても限界がある環境に置かれている労 働者がたくさんいる中で、特に未組織の労働者の皆さん方に対して、きちんとした労使 が話合うための枠組みを被せていく、きちんとした指導まではいかないにしても、労働 行政が役割を果たすことは非常に重要だと考えています。  先ほど労側委員からも不払い残業の話がありましたが、先ほど松井部長がおっしゃっ た日本経団連の「経営労働政策委員会報告」の51頁に、不払い残業に関して、「事実 上労働者が企業の管理施設内にいる時間を全て労働時間として取り扱おうとするなど、 それが実態に即しているかどうかという意味で、監督行政全般に対する企業側の不信を 招いている。このような行政による規制的な指導は、労働者の自律性、多様な働き方や 生産性向上、ひいては日本の企業の国際競争力の維持・強化の阻害要因となりかねない 」とあります。私はこのことを批判しているのではありません。労働時間管理は非常に 難しいのです。難しい中で、さらに労使自治に任せることの難しさ、そしてその埒外に 置かれる人が、いかに多いかを意識していただいて、今後とも労働行政がきちんとした 役割を果たす、その決意だけはこの中で明らかにしていただきたいと思います。 ○勤労者生活部長  決意は十分あるのですが、先ほどもありましたように、決意を実現するための手段が ほしいと思っています。1つが労働組合がない事業場での労働者代表者制です。必要な ものであれば法律できっちりつくることが必要です。そうすれば行政として、立法府の 意思を受けて、組合のないところでもしっかりとした代表者を出すという話になってい くでしょうし、今のいろいろな労働条件は、どちらかと言うと集団的な労使交渉の中で 設定するという枠組みで労働基準法等はできているので、集団的な労使交渉の枠組がな いところで個別に労働契約をどうするか、まさに個別の労働契約法制といった課題にシ フトしていくと思うのです。これは現在別の場で議論をしていただいています。そうい ったものも踏まえながら、決意をしっかり持ち続けたいと思います。 ○奥谷委員  今の労働行政をもっと強くしろということについては、労働組合の組織率が低くなっ ているという御心配の中から出てきているのかもしれませんが、労働組合の組織率が低 くなってきているというのは、現在の組合運動は画一化されており、組合に入ってもメ リットがないことを一般の働く人たちがわかってきたということだと思うのです。です から、組合の組織率低下の問題は組合側の問題であって、むしろこれから個別的な契約 関係がどんどん広がっていく中で、業種、業態で事情は全く違うわけですから、個々の 事情に応じて労使で解決していく方向で考えるべきであり、そこに労働行政が細かく噛 んでどうのこうのとやったら、却ってマイナスになっていくと思います。  労働行政にやっていただきたいことはチェックです。どうしても悪徳経営者みたいな のは出てくるわけですから、そういったものに対してどういうチェックを入れて、どう 処罰を行っていくか、そこに力点を置いていくのがこれからの流れだと思います。今ま でどおりに、組合と会社で集団的に交渉をやっていく時代ではなく、個別に分かれてい くわけですから、そういった方向で考えていただけないかと思っています。 ○新田委員  今の御発言について、受け取るところは受け取りますが、労働組合といってもいろい ろな仕事をしているし、フレックスや裁量労働等、いろいろな働き方があって、労働組 合も職場の実態を見て、どう議論をして、働きやすい職場をどうつくり上げていくかと いうことをやっているわけです。メリットがないから、加入しないという部分は当たっ ている部分もあると思うものの、それ以外の御指摘は当たっていないと思うのです。私 はそう思っています。  こうした法律がつくられて施行されていくときには、その心は何であるかが非常に大 事ではないかと思います。この時代において、どのように社会に製品やサービスを提供 して、どのように利潤を上げるかということを経営側は考えられるのだろうと思います し、私たちの方は、働くことに生き甲斐も求めたいし、生活もよくしていきたいと考え ています。そういう中で、この時代に働く現場はどうあるべきかということが労使で議 論されて、つくられて、提示されていくことが必要です。その辺についてまだ議論不足 ということもあると思います。確かに、おっしゃったような悪徳な経営者もおります し、労働側にもずぼらな者もいるかもしれません。しかし、そんな議論をしているとあ まりよくないと思っています。今後、働く現場はどうあるべきか、その議論を行うとき に労使がどう向き合うのかということが大事なのではないかと考えています。 ○紀陸委員  奥谷委員の言われているのは、一般論の原則的なお考えで、労使自治であるならば、 労働組合とか、労使協議制を会社の中にきちんとつくって、広げていくということが大 事で、その努力をまずやった上で、法律や行政の力を借りるべきだということだと思い ます。労使がやれることをやらないで、仕組みがないから法律でやってくださいという のでは、自分たちの役割放棄になるのではないかという趣旨だと思うのです。 ○新田委員  おっしゃることはわかるのです。企業内というか、業界内というか、労使で決める範 囲というのは存在します。しかし、この時代、この世の中で、社会としてどうあるべき かということが労使を超えてあるのではないかと思います。そこにどう近づくかも含め て、法律というものは提起されていくのではないかと思っているのです。よく言うので すが、労使で決めるべき範囲はありますが、一方で、使側がそんなことまで求められて も答えられないし、答える責任もないということもあるわけです。そんなことは私らも 了解しながら議論はしています。  だから今回提起されている時短法の見直しについても、今後、少子高齢化が進む中で どういう社会を築くべきかという視点から、いろいろなことが考えられる中の1つとし て考える場合、どうすべきかといった観点も含めて議論してきたと理解しています。少 子高齢化への対応など労使の自主的取組の範囲を超える問題を含む場合には、法律に基 づき行政が対応する必要があると思っています。 ○須賀委員  今の労使自治の関係なのですが、目標の在り方も含めて労使が自主的に決めることに は意義があると思います。企業なら企業内、業界となれば業界内の目標を労使が自主的 に決めるという話になると思います。報告書案には、効率的な働き方ということも書い てありますが、働き方をどうするか、あるいは自分の時間のつくり方をどうするのかと いうことをよく労使が話し合って、その上で目標をつくっていくべきであるというのは そのとおりだと思います。一方、そうした労使の自主的取組を枠組みとしてできるだけ 法が支えていくというのが、本来の法の趣旨だと思います。そういう意味から、報告書 案でいわれていることは、労使に全てを任せなさいという趣旨ではないということであ ると私どもは理解をしていますし、例えば、労働組合のない事業場など任せようにもな かなか体制が取れないところも結構あるのだということを理解していただきたいという のが1つです。  それから、労働組合の力が弱いから加入するメリットが感じられないため、組合員が 減っているというのは、ごくわずかです。これは間違いないですから、誤解のないよう にお願いをしておきたいと思います。今組織率が落ちているのは、高齢者が定年で辞め ていった後に若年者の採用が控えられ、正社員が少なくなっていることによるもので す。もう1つは、依然として中小企業でのリストラが進んでいることが挙げられると思 います。そうしたことに原因があるのであって、労働組合のメリットがないから組織率 が落ちているというのは、ちょっと誤解があるので訂正お願いしたいと思います。 ○田島委員  衛生委員会にこだわりたいと思うのですが、報告書案の5頁の下から5行目に新設が 困難な事業場について、衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなすことができる こととするといったことが書かれていますが、この衛生委員会の設置義務が課せられて いるのは常時50人以上の従業員を使用する事業場です。しかし、50人以下の事業場 の方が新設の困難性があるのではないかと思います。したがって、あまり衛生委員会の 活用といった方向に流れないように、中小企業も含めて、労側からすると労働時間の短 縮なり、不払い残業などをやめる、有給休暇の取得率を増やす、そういう時間管理のた めに、労働時間等設定改善委員会を設置していくよう啓蒙啓発や指導することを基本に 置いてもらいたいと思います。衛生委員会はあくまでも従業員規模50人以上の事業場 で設置されるものですし、委員を推薦する労働者代表の選出母体も違うので、私らから 言うと、言葉は悪いのですが、衛生委員会の活用に逃げ込むようなことがないようにお 願いしたいと思います。あと、従業員規模50人未満の事業場対策については何か考え ているのでしょうか。 ○勤労者生活部長  今の御趣旨は、この下の段の「これまでの時短委員会をはじめとする」のあとに、労 働組合があるところとないところでの設置状況は違いますが、労働時間に関する労使協 議機関が必ずしもしっかりしていない事業場については、先ほど申し上げた9月28日 の第35回労働条件分科会の資料3−1の37頁を抑えつつ、まずもって労働時間設定 改善委員会の設置の促進を、啓蒙啓発を含めてしっかりやりたいということを全面に出 しています。その上で労働時間等設定改善委員会の設置が困難であったとすれば、労働 時間にかかわりそうな委員会があれば、それを活用できるようにしたいということであ って、それを頭に置きながら、啓蒙啓発をやるというのが基本です。  「具体的に」以降の記述は、衛生委員会の設置は法律事項として義務化されているも のですから、これとの間の調整を明らかにしておかないと、法条文はできないことから 取り上げているだけであり、衛生委員会に逃れるために書いているということではあり ません。他のものは任意のものですから、法律の規定はなくてもできるのですが、ここ は明確にしておかないと困るから挙げたものであるということを御理解いただきたいと 思います。 ○須賀委員  ちょっと補足的な説明をお願いしたいのですが、報告書案の6頁の(3)の「事業主 に対する支援の在り方について」の後段のところで、「必要な範囲に絞って効果的・効 率的に実施することが適当である」とありますが、もう少し具体的な状況がわかる御説 明をいただけないでしょうか。 ○企画課長  「一方」以下のところですが、これは新しい時短法に基づく法律の援助というより、 新たに予算面での措置を法律外のものとしてやっていくことを検討するという意味で す。そうした際に、これは第36回労働条件分科会の御議論でも出たかと思いますが、 予算を使う以上はできるだけ効果的・効率的に使っていくことが求められます。そうい ったことを踏まえて、必要な範囲に絞って効果的・効率的に、予算を使っていくことを 目指していきたいということで、このように書かせていただきました。 ○勤労者生活部長  具体的にはちょっと書けないのですが、言い改めますと、現政府の基本の方針におい ては、助成金や補助金などのいろいろな行政客体に対する支援措置は、一般財源であれ ば、それを負担する国民の観点から、雇用保険や労災保険であれば、保険料を負担する 側の立場も考えて、そういったものが本当に効果的なものになるようにしなさいという 命令が出ており、それをしっかり受け止めてやるという決意表明と考えていただきたい と思います。  その上で、支援を行う場合にはその力点を「事業主の意識面の啓発に置いてやるべき ではないか」という御意見があったので、添えさせていただきました。 ○原川委員  質問ですが、4頁に指針の具体的な内容が書かれていますが、あえて具体的内容を報 告に書く必要があるのかが気になるのです。というのは、法律が成立すれば指針の審議 に入るという話ですが、「現段階で盛り込むことが考えられる内容の一端として」、こ のように具体的に書くことにより、指針の内容や、指針はこういうものだというイメー ジが、後の審議を拘束するようなことになるのではないかという心配があります。  これは意見ですが、いろいろと中小企業の話は出ましたが、景気がだいぶ上向きにな ったと言われる中で、景気の回復の効果が中小企業のすみずみまで十分に行き渡ってい ないのが現状で、地域や業種によって、また、同一地域や同一業種であっても各企業に よってバラつきがあるという状況があります。そういう中で、「参考となる事項」とい っても、指針であまりハイレベルなものを掲げると、対応できないということで実質的 な効果が得られないおそれもあると思います。したがって、中小企業の実情を踏まえ、 労働時間の設定改善が可能となるように、身の丈に合った内容も改善策として指針の中 に入れて、実際に改善することができるようにしていただきたいと思います。 ○企画課長  前段についてですが、先ほども御説明しましたが、指針にはできるだけ労使が労働時 間の設定の改善を円滑に進められるように、という意味で参考となる事例を書いていく ことを考えており、そういうものの一端として、4頁にある(1)から(4)を挙げていると ころです。いずれにしても、指針の具体的内容については、今御指摘の点も踏まえて、 改めて法律成立後にこの場で御検討をいただくことになると考えています。 ○西村分科会長  その他に何か御意見はございますか。ほぼ意見も出尽くしたようですので、他の御発 言がなければ、今後の労働時間対策については、本分科会として、提出されている報告 案のとおりに取りまとめることとしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○西村分科会長  それではそのようにしたいと思います。労働政策審議会令第6条第9項及び労働政策 審議会運営規程第9条の規定により、「分科会の議決をもって労働政策審議会の議決と することができる」とされております。この報告のとおり厚生労働大臣あてに建議を行 うこととしたいと考えますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○西村分科会長  それではこの報告のとおり厚生労働大臣あてに建議を行いたいと思います。建議の文 書については、お手元に配付された案のとおりとしたいと考えますが、よろしいでしょ うか。                  (異議なし) ○西村分科会長  それではそのようにしたいと思います。今後の労働時間対策について精力的に御議論 いただいた委員の皆様の御協力に感謝したいと思います。それでは西川労働政策審議会 長に代わって建議を提出したいと思います。厚生労働大臣の代理として、青木労働基準 局長にお渡ししたいと思います。                  (建議手交) ○青木局長  ありがとうございました。 ○西村分科会長  それでは労働基準局長より挨拶があります。 ○青木局長  この分科会におきまして、今後の労働時間対策について、今年の9月から4回にわた って大変熱心に御審議いただきました。毎回毎回、大変貴重な御意見をいただきまして ありがとうございました。今日報告をいただきましたことに心より感謝申し上げます。  この建議を基にいたしまして、早急に所要の法案を作成しまして、本分科会にお諮り した上で、次期通常国会に提出したいと考えております。委員の皆様方にはこれまでの 御協力に大変感謝申し上げます。今後とも労働基準行政はじめ、厚生労働行政に対しま して一層の御支援、御協力をお願いしたいと思います。どうもありがとうございまし た。 ○西村分科会長  その他に御発言がないようでしたら、本日の審議はこれをもって終了したいと思いま す。事務局におかれては、この建議に基づき法案作成作業を速やかに進め、本分科会に 法案要綱を諮問していただくよう、よろしくお願いいたします。最後に今後のスケジュ ールについて、事務局より説明があります。 ○企画課長  次回の日程ですが、現在委員の皆様方の日程をお伺いしておりまして、それを踏まえ て調整したいと考えています。1月下旬から2月上旬にかけて、今、分科会長からお話 のあった法案要綱について御審議をお願いしたいと思っています。日程が確定次第御連 絡を申し上げたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。 ○西村分科会長  それでは本日の分科会はこれをもって終了したいと思います。今回の議事録の署名は 田島委員と平山委員にお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございまし た。                (照会先)                  労働基準局勤労者生活部企画課(内線5349)