04/12/10 第21回社会保障審議会介護保険部会議事録           社会保障審議会 第21回介護保険部会議事録 1 日時及び場所:平成16年12月10日(金) 16:00〜18:00          社会保険診療報酬支払基金 会議室 2 出席委員:貝塚、上田、市川、小川、喜多、木村、京極、見坊、潮谷、田近、        対馬、永島、野中、秦、花井、矢野、山崎、山本の各委員        漆原、大村、中田の各委員は欠席 3 議題    :報告の取りまとめ ○貝塚部会長  本日は、9月以降の本部会において議論を行ってきた被保険者・受給者の範囲に関す る審議の取りまとめを行いたい。審議を円滑に進めるため、事務局に報告書案を用意さ せたので、案の朗読をお願いしたい。 ○渡辺企画官より資料の朗読。 ○貝塚部会長  それでは、ただいまの報告書案について修正等の意見があれば伺いたい。 ○市川委員  私たちとしては支援費よりも7月30日の介護部会報告書において指摘されているとお り、ヘルパーの質の問題についてもう少し検討して頂きたい。 ○木村委員  介護ニーズの普遍化については賛成であり、8ページの「給付に関する論点」の二つ 目の丸の「最若年層の要介護認定や若年層のケアマネジメントについて検討する必要が あるという意見があった」との記述に関連して、いつからやるかは別としても、若年要 介護者のケアマネジメントに関する養成研修に関しては法成立後約3年かかるというこ とであるので、早く取り組むということをお願いしたい。  また、9ページの最後の「特に40歳以上の末期がんで介護を必要とする者について」 とあるが、今回は40歳以上の末期がんを対象とする、さらに今後の改正で若年層へと一 気に拡大すべきではないか。  さらに、若年層に対する保険料負担についての説明の仕方であるが、例えば交通事故 による脊髄損傷等で車いす生活になった場合や若くしてがんになった場合の介護ニーズ に対応するといった、具体的な説明を通じて国民に理解を頂くために、早い時期から説 明を開始して頂きたい。 ○京極委員  社会保障全般の中の見直しという点で、介護保険についてもう少し議論を詰める必要 があるのではないか。企業負担にしても、若い人の負担にしても、統計的な数字の中で 議論をする必要がある。例えば、企業負担については、社会保障全体を見ると年金では 約13兆円、医療保険では約7兆円、労働関係では約2兆円である一方、介護保険は現在 約0.5兆円に留まっており、マクロ的な視点から、こうした議論をもう少し詰める必要が ある。  それから、障害者部会長の立場としては、ここにきてやっと障害者団体の意見がまと まってきて、これをもう少しお伝えしたかったし、また障害者団体の意見を聞く機会を 与えて頂けなかったので、その点は残念に思う。障害者施策の改革については、保険で やるか、税でやるかは別として大きな動きがあり、これと介護保険の見直しの議論とが ちぐはぐにならないようにしなければならないと考えている。 ○田近委員  10ページの「今後の進め方」の一つ目の丸に「本年9月以降、被保険者・受給者の範 囲の拡大を巡り、本部会においては、精力的に審議を行ってきたが、その結果について は」とあるが、この部会で精力的に審議を行った気はしないので、これは削除しても良 いのではないか。  また、「円滑な制度改革を図ることが重要であり」との記述は、「これらの状況を踏 まえ、社会保障制度の一体的見直しの中でその可否を含め」としている結論とややそぐ わないことから、削除すべきではないか。  この問題についての賛否は、7月30日の報告書で整理され、多くの人の間で合意され ている。7ページには、この問題についてこれまでの慎重意見が要約されて記載されて いるが、当該報告書の記述をそのまま記載した方が良いのではないか。  最後に、障害者を介護保険に入れて地域保険が維持できるのか。1号被保険者の場合 には、地域ごとに保険給付にかかる費用をそれぞれの地域の1号被保険者に反映させる 仕組みとなっており、この点は、介護保険が日本の社会保障の中でユニークな非常に特 色のある、重要な側面である。障害者を介護保険の対象とする場合に、地域の介護サー ビスと保険料のリンケージがないまま行われれば、地域保険ではなくなるのではない か。 ○対馬委員  報告書については、概ねこれで良いのではないかと考えるが、被保険者、事業主に御 理解頂くためにはまだまだ議論なり、具体的なデータの裏付けが不足しているのではな いか。  若干ニュアンスとしては気になるところは、介護の普遍化について多数意見だったと いう表現があるが、これだけを取り出して議論をするのはいかがなものか。例えば、医 療保険の分野でも医療の質なりサービスが向上するということであれば誰も反対しない が、コストとの関わりになると、この程度で我慢せざるを得ないといった具体的な話と なる。介護の普遍化だけを取り出して賛成が多いといった言い方はいかがなものかと考 える。  また、今後、具体的に検討するに当たっては、例えば介護予防や地域支援事業につい ても、PDCAないしはPlan・Do・Seeと言われるように、実際に行ってみ て、それを踏まえて、さらに検証をすることが非常に重要である。検証をして、それを またつなげていくということを是非お願いしたい。 ○秦委員  本日、ここに緊急アピールを提出したので、目を通して頂きたい。ここにいる全員や マスコミの方々も含めて、皆、年も取れば障害を持つおそれもある。これは我が身の問 題だと考えなければならない。  また、年齢の拡大については、段階的に行うべき。一遍に全部出来るとは考えていな い。  それから、保険料の未納問題については、若い人たちに対して、どのように考えるか 尋ねると、保険料を支払いますと言う。未納が多くなると後ろ向きに考えるのではな く、積極的にそういった人たちを仲間にして、一緒に参加してもらうようにして欲し い。 ○花井委員  被保険者・受給者の範囲については、制度発足時からの検討課題であり、今回の介護 保険部会で結論と実施時期等々を明確にすることが役割であると考え、この部会に参加 してきた。その意味では、今回の報告書については正直、残念であると思う。  ただし、10ページの「したがって」以降で「社会保障制度の一体的見直しの中で」と している点、「速やかに検討を進め、結論を得ることが求められる」としている点、そ れから、普遍化について賛成意見が多かったという点が記載されており、基本的にはこ の文章を修正しない形で了解をしたい。もし、修正ということであれば、個別に修正を して欲しいところもあり、今日この段階でそれを言い出すと大変であるので、これで了 解したい。  最後に、現実的な対応を考える際に、社会保障制度の一体的見直しの中で結論を得る よう努力して頂きたいし、私どもとしても努力をしたい。また、実施に当たっては、障 害者サービス福祉法など、明らかに制度発足時と状況が変わっていることも踏まえ、第 4期の平成21年から実施できるよう、是非ともそういう方向で進めて頂きたい。 ○山崎委員  基本的な方向としては「今後の進め方」で良いのではないか。社会保障全体の改革の 中で、将来的に介護保険を普遍的な制度へ見直すことが重要であるということは、この 部会でも共有化できたのではないか。  ただし、「できる限り速やかに検討を進め」とある点については、拙速ではなくきち んと議論をして今後に向けて頂きたい。  また、障害者の問題については、先送りせず、きちんと国の責任において障害者施策 を進め、失望を与えることのないようにお願いをしたい。 ○山本委員  社会保障制度は種別に設けるのではなく、やはり一本化が必要なのではないか。特に 国民健康保険の加入者は約5,000万人となり、財政事情が非常に厳しくなっているが、 健保も政管も一緒にすれば財政的に安定するのではないかと思う。現在、国保はせめて 県単位で一元化が出来ないのかという議論があるが、少し途絶えてから余り進んでいな い。  介護保険と障害者の人たちが一緒になることは、何も異種のものではなく、一緒にし ても一向に差し支えないのではないか。  私たちは現場で今の介護保険制度や支援費制度を実施している責任者の一人であり、 これは介護保険で、あるいは支援費をこういう風に変えていけば介護保険に入ってしま うのではないかとか、度々こうしたことに逢着することが多い。  一元化できるようなものについては一元化した方が良いと思うが、ただ問題は、障害 者の人たちを介護保険に入れるということになると、何で障害者ということの対策につ いて、支援費制度も創って時間も経ってないのに、何故もう1年くらいでまたこんなこ とをやるのかと、やっているほうは一体何をしているのかと、こういうふうに言われが ちであることが一点目。  それからもう一つは保険料を負担するほうが、年齢が下がってくると、皆さん方何で 健康なのにこんなものを創って今更何をするのかというような反発があるということで ある。そういうものを新たに創ると、本人の負担はさることながら、事業主が、経営者 が負担しなければならない、新たな負担を経営者の立場から行くと、今のような厳しい 会社経営の状況から考えてこういうものが出たら益々経営が苦しくなるというような見 方もあるということである。  介護保険の給付対象年齢を0歳に下げることには皆さんは余り反発はしないと思う が、負担については、申し上げたような諸々の問題がある。事務局が資料を提出すると きに20歳と書かなければ良かったのではないか。将来の希望として20歳位にしたいとい うことは分からないでもないが、少し現実から離れたような感じがする。  議論不足は確かにあると思うが、0歳まで介護保険の対象年齢を下げることは、私は 必ず日本はやらなければならないと思うし、いつまでに実施するといったことを考えな がら、方針だけはこの部会で決めておく必要がある。ただ賛否の両論併記で流すという やり方は適当ではないと思う。ある意味では政府側でやろうとしていることに対して、 部会の結論が賛否両論となると、足を引っ張っていることになる。そのようにならない ためにも、大体こういう方向で検討を何年かやって、そして何年後かにはこれを実施す るといった基本的な将来の方針くらいは決めるべきである。  そういう意味から、私は現場で実施している一人として、今の対象年齢を0歳に下げ ることについて明記するとともに、その負担年齢については、一挙に20歳ということで はなくて段階的にやっていくといった書き方をすることが望ましいと思う。  是非とも皆さんがそういった方向で検討頂きたい。 ○矢野委員  お手元に意見書を提出したので、ご覧頂きたい。  これは、日本経団連、商工会議所、経済同友会、関西経済連合会の4団体連名のもの で、内容は4項目あるが、範囲の拡大の問題の部分のみここに記載している。  一つ目は、介護保険制度の被保険者範囲は現行を維持すべきであること。二つ目は、 障害者支援費制度の介護保険制度への組み入れは各制度の趣旨が異なることから適当で はないこと。中身については、これまでここで私が主張してきたことなので繰り返し説 明をする必要はないと思っている。  参考までに、その他の項目が何であるかについて紹介すると、一つは介護保険施設入 所時における居住費と食費については、低所得者に対する配慮をした上で実費を徴収す ることとすべきであること、もう一つは地域支援事業を安易に介護保険制度に組み入れ ることについて反対であることが記載されている。  では、報告書について、まず「普遍化」の定義について、十分掘り下げがなされてお らず、今後の検討課題の一つとして、これを残しておく必要がある。「年齢や障害に至 った理由を超えて、介護を必要とする全ての人にサービスの給付を行う」という意味の ようであるが、実際に具体的事例として挙げられたのは障害者福祉施策の中で要介護の 若年障害者への適用の問題や、制度の谷間として難病、末期がん患者等への適用問題で あり、それだけで済むのかという素朴な疑問を持っている。しっかりと検討をしていか なければ、「普遍化」という言葉は適当ではないということになり、今後の検討課題で ある。今回のこの部会では問題解決しなかったと思っている。  次に、6ページの「という意見が多数であった」という二つ目の丸であるが、私があ えて今日意見書を出したのは、日本のほとんどの企業が加入している団体の共通の意見 が少数意見であるのだろうかということであり、多数であったというのは、この介護保 険部会の中でそういう意見を述べられる方が多かったという意味だと思う。今までの報 告書のまとめに合わせて、「こういう意見があった」と言っても少しもおかしくないの ではないか。  それから、最後のページで、社会保障全体についての一体的な見直しの問題が出され ているが、これは非常に大事な点であって、ここに書かれた意義は大きいし、これは大 いに尊重していかなければならない。  この関連で、ホテルコストの負担については、私どもの主張ではやはり医療でも同じ 考えを持つべきだと思う。これは介護保険部会で議論すべきテーマではなく他の審議会 ということになると思うが、そこでの審議をこの機会にお願いしたい。  それから、10ページの最後の丸の「円滑な制度改革を図ることが重要であり」という 言葉には少し違和感がある。田近先生の意見と同様で、表現として全体のトーンの中で ここだけが突出しているのではないか。また、「できるだけ速やかに」とあるが、これ は全体のトーンの中で、特に三つ目の丸に時間感覚を示すものが一つの例として出てい ることから、下の文章の「できる限り速やかに」というのは要らないのではないか。 ○野中委員  私はこの部会には途中から参加したので、ある面ではこれが本当の見直しだったかと いうことに対して内心忸怩たるものがあり、やはり本来、社会保障である介護保険制度 は国民全員にとって大事であり、特に障害や病気を抱え、介護を必要とする方々に対し て、もっと質の高いサービスをどうやって提供するかという議論があるからこそ、国民 がもっとこの制度に理解を示して、保険料も支払おうという気になるのではないか。  しかし、そういった議論がなく、ただ単にこれだけの予想でこれだけの費用がかかる といった議論がなされ、介護保険制度を必要とされる方がつまはじきにされている状況 が何ら変わりないということは、この議論に参加していて非常に悲しく思うし、もう少 し議論が違う展開をされていれば介護保険制度がさらに良く見直されたのではないか。  現場で特に介護を必要とされる方々とお付き合いさせて頂いていると、病気や障害を 抱えた方々が、自分はもうだめなんだ、家に閉じこもっていた方が良いという方々が非 常に多い。そうではなくて、国民の中でもう一回生きていける現状を作るのが本来の介 護保険の目的であろうし、医療保険も同じであろう。  そういう視点で考えたときに、なぜその中の質を考えないのか、そのためには徹底し たケアマネジメントが必要であるということを理解すべきであり、介護保険制度がうま くいかないのは徹底したケアマネジメントがないからである。その辺りは、今後、介護 予防という部分の中で、もう一度介護を適切に提供する仕組みが再構築されることを期 待したい。  もう一つは、支援費制度は始まったばかりであり、支援費制度にも徹底したケアマネ ジメントの視点が今後必要であろうし、その辺を今後とも考えていくべきであろう。  それから、確かに介護保険では65歳以上の3障害の方々が対象となっており、介護保 険が優先するが、そういった方々に必要なサービスは支援費制度でも上乗せ横出しとし て追加されており、そういう部分において支援費制度の整備がもっと検討されるべきで ある。  時間がない中で、障害者の方々に対して適切なサービスをどのように提供するかにつ いてはもっと前から検討すべきだったのになぜしなかったのか。あのスケジュール案が 今ごろになって出てきたことを非常に寂しく思うし、そのことが問題であろう。  また、さらにもう一つは9ページにあるように、いわゆる制度の谷間である40歳以上 65歳未満のがん患者の方々が介護が必要なときに使えないというのは、どうか速やかに 検討して頂きたい。  それから、少なくとも介護サービスを必要とされる方々はやむを得ずくサービスを受 けるのであるから、その方々にやみくもにホテルコストと食費を二重に負担させるとい うことは、幾ら年金の問題があったとしても必ずしもそれは適切ではない。  それを医療の中にまで入れるということは、むしろ病気や障害を抱えた方々に対して 負担を求めることであり、これは本当の社会保障制度と言えるのか。社会保障制度を運 営する方にとってはそういう部分が必要であろうと思うが、国民から負託を受けて社会 保障制度を作っているのであるから、もう一回検討して頂くことを強く要望したい。 ○永島委員  10ページの「今後の進め方」の最後の丸の「社会保障制度の一体的見直しの中で」云 々というところは、これで良いと思う。  私は自分が呆けているわけではないが、今回いわば当事者として参加したが、2015年 には250万人の人が認知症になると言われており、最近では、40歳と言わず、30代の後 半ぐらいから発症する人も出てきて、今まで考えていたよりずっと早い時期にそういっ た方たちが出てきている。それから、前にも申し上げたように高次脳機能障害の人や、 制度の谷間にある人を救済できないということを踏まえて、10ページの意見に賛成した い。ホテルコストについては、老夫婦で夫の年金に頼って夫婦2人が生活しているよう な場合、例えば奥さんの方がホテルコストを納めるとなると、結局自分の住んでいると ころの家賃と、それから入所したところと、2軒分の家賃を払わなくてはならない。低 所得者と言われているが、低所得者以外でも二重に住居費を払わなくてはいけないのは 非常に大きな問題であり、実際にお金を払う人にとってはとても苦しい。 ○潮谷委員  10ページの「今後の進め方」については、概ね賛成である。ただし、この中で二つ目 の丸に「相当な準備が必要である」とあるが、9ページと関連して制度の谷間の問題に も相当な準備が必要であり、ここだけはできるだけ早急に踏み出していく姿勢が大変大 事ではないか。  それから、障害者サービスの機能再編・分化の状況を踏まえる必要があるが、様々な 整理すべき課題について、まずモデル事業、あるいは研究事業といったものを通して、 この準備期間の間でも検証を行うといった視点が大事ではないか。普遍的な制度とする ことについて、委員の方々からも相当色々と意見が出てきており、まして国民的な議論 となると、私どもも含めて努力を重ねていかなければならない。  それから、高齢社会がこれから進んでいくということは、とりも直さず障害者が増え ていくという問題であり、私たちは今後、「普遍的に」という観点の中で社会構造的に 考えていくという視点もたいへん大事なことではないか。  この問題は、支援費制度と介護保険が抱き合わせのような形で理解をされてきたとい うことがあるが、「普遍性」を考える際には、制度の谷間の人々をどのように洗い出し ていかなければならないのか、また、将来的に増えていく障害者の問題について、今後 の介護保険を展望するという観点から考えていけば、今この時期に取り組んでいくべき ものではないかと考えている。  それからもう一つは、今回私たちが議論した中で、今後の介護保険を考えるときに、 予防重視型システムへの転換は非常に大事な視点である。予防重視型システムがうまく 機能するために地域包括支援センターがどんな役割を果たしていくのかということも、 10ページの準備期間の中でしっかりと見えるように整理をしなければならないのではな いか。  それから、7ページの(2)で、税なのか、あるいは保険なのかという議論の中で、給 付と負担の対象範囲の問題があるが、社会保険で支える「介護」とは何なのかというこ とを明確にしておく必要がある。今後、「普遍化」の中で0歳児を対象にするという整 理がされた場合には、特に0歳児の介護とは何かを明確にする必要があるのではない か。  最後に、介護保険制度は利用者が中心であるという視点で整理をしていくべきであ る。ケアマネジャーの問題あるいはサービスメニューの問題、色々とあるが、ともかく 利用者が介護保険制度を理解できる、利用者が分かる言葉でしっかりと伝えていくとい う利用者中心主義での制度の構築をお願いしたい。 ○見坊委員  今日の案全体については、特にここをこう直して欲しいと強く言う点はない。こうい う議論であったと思うし、大筋は大体これで良いのではないか。  高齢者は保険料を低くするために加入年齢の引下げを主張しているわけではない。支 え手を増やすことによって財政的に少し楽になるとか、そんな考え方で申し上げたこと は一度もない。介護の問題、障害者の問題、福祉の問題、年金の問題はもちろんのこ と、医療の問題、特に今、議論になっている障害児・者の問題は全く我が身の問題であ り、自分たちの子どもや孫の問題でもある。21世紀の日本がどういう国になるかが高齢 者の一番の関心事であり、自分の負担のことよりはむしろそういった視点に立って、考 え方を強めている段階にある。  老人福祉法は、戦後18年経って昭和38年に制定されたのに対し、障害者の法律はどう であったかというと、戦後2年目に身体障害者福祉法が制定され、肢体不自由児その他 知的障害児も含めた児童福祉法が制定されたのは戦後4年目で、非常に早い。  しかし、この障害者問題はなかなか前進せず、結局部分的な縦割り行政に頼らざるを 得なかった。そうした中で、障害者自身もそれぞれの主張があって足並みが揃わなかっ た。それがこの半世紀のことであった。日本身体障害者団体連合会は日身連と称して、 戦後早くから結成され、また、手をつなぐ育成会も戦後数年経って設立された。ところ が、この両団体は考え方に異なるものがあって強く対立してきた。最も対立したのは、 「心身障害者対策基本法」が出来た昭和45年で、「心身障害者基本法」というタイトル に対して、身体障害者、知的障害者の団体がそれぞれの立場から意見を主張したときで ある。  この秋、長い間解け合わなかったこの二つの団体をはじめ、多くの障害関係の団体が 協力して、連絡協議組織を立ち上げている。画期的なことである。  昨年以来、介護保険との関係や支援費制度の運用・財政をめぐって、障害者の方々 は、何千人となく上京しては、国会、厚生労働省に訴えてきた。その問題点は財政にあ る。  財政の裏付けのない制度は役に立たない。障害者施策は、いつも財政の裏付けが不十 分なままにやってきたように思う。  本日、身体障害者と知的障害者の団体が、足並みを揃えて、介護保険制度の活用と、 支援費制度を中心とした障害者福祉サービスの体系をしっかり作って欲しいということ を主張して意見書を提出してきた。  障害者団体が介護保険部会に意見を提出したというのは、介護保険制度の門を開いて ほしいということと思う。育成会の要望書には、また置き去りにされるのではないかと いうことが書いてある。短い言葉であるが、切実な思いが込められている。  制度の門戸を開くべき段階にあると考える。  次に、経済団体の意見についてである。  いま日本の政治・社会を動かしているのは経済界であるが、経済三団体は制度の充実 に対して消極的な意見を提出して、これが国民の多数意見であるとのことである。  世論調査では、国民の九割近くが社会保障の充実に関心を寄せている。経営者の家族 や、従業員も介護や障害の問題で苦労している人は少なくないと思う。  経済不況と言われる今日、戦前のような社会不安の騒動も起こらず、リストラを行っ て、企業の再建ができるのも、公的社会保険制度あればこそでないか。  経営者側の理解協力を望むものだ。  以上のことから、方向性をはっきりさせて頂きたい。詰めるべき問題点をしっかり詰 め、障害者も安心して介護保険を活用しながら、併せて支援費制度を中心とした障害者 福祉サービスの確立を願いたい。 ○小川委員  10ページについては、全体的にはこう書かざるを得なかったのであろうが、もう一歩 踏み込んで、これ以上先送りは出来ないと本当は書くべきであると思う。できるだけ速 やかにではなく、これ以上先送りには出来ない。  日本の少子高齢社会の進行は、世界でも希有なものと言われていて、これからはまさ に大変な時期に入ってくる。ましてや、経済が上向きになる方向にはない中で、私たち はどのように高齢社会、そして少子社会を生きていくのかという問題をこれ以上先送り できないと思っている。  先ほど「精力的」という箇所についての議論があったが、やはり書いておくべきであ り、この部会の中で出来る限りの情報を得て、できる限りの努力をして、「精力的」に 議論をしてきた。そうでなければ、税金を無駄遣いする会議をしていたことを自ら認め るようなものではないか。  ここに余り書き切れなかった問題としては、高齢者であれ、障害者であれ、子育ての 人であれ、住まいの問題があり、これは非常に深刻だと思う。この住宅問題が小規模多 機能という表現でしか書き切れていない。もう少し既存の住宅も含めて国交省との関係 で住宅政策を書くべきであると思う。ただ、事務局方に聞いた際、かなりそういった取 り組みが進みつつあるということであり、是非積極的にお願いしたい。  それから、私はまだまだ世の中に障害者や高齢者に対する偏見や差別があると思う。 介護保険は少なくとも高齢者問題を社会化して、その差別や偏見をなくすきっかけにな りつつあると思う。経団連の意見書によれば「若年層はまだ介護に直面する状況はなく 」と書かれているが、介護に直面するというよりも、教育問題として社会保障を若い層 から一緒に考えていくシステムが必要ではないか。これは現場に立っていて、あるいは 権利擁護の活動をしていてしみじみ思うことであり、今、総合教育で教育が福祉の現場 に随分入ってきてはいるが、そういう形だけではなく、教育問題との一体化、一本化が 必要である。  また、地域ケアについて、従前は私たちの暮らし、あるいは必要なサービスを使うと いうことは、国が決める制度に自分を合わせていくことであったが、措置制度が終わ り、地域ケアシステムを作る時代に入っていると思う。そういう意味では、地方分権が 必要で、地域の中で福祉の支え合いのシステムをどう作っていくかということについ て、是非地方6団体が、分権推進とそれに見合った三位一体改革論を積極的にして頂く ことを切に望みたい。日本の北から南まで、やはり状況は異なり、様々な格差があり、 地域ケアシステムを作るためには、地方分権が必要である。  最後に、現場あるいは市町村、都道府県にもっとヒアリングをして、もっと詳細に検 討して頂きたいのが、包括支援センター及び在宅介護支援センターのこれからである。 それからケアマネの質の問題について、かなりこの部会ではケアマネジャーのことが議 論をされ、そのことが全体の中では際立って進んだと思っているが、是非ケアマネジャ ーが疲れることなく、憔悴し切ることなく、より利用者本位のケアマネジメントが出来 るよう、その質の確保のためにもう一歩踏み込んで全体的な議論が進むことを望みた い。 ○喜多委員  本日話題となっているまとめについては色々申し上げたいことが多々ある。大きな議 論をしたとか、議論を行ったと書いているが、本当にそうだったのかと思う。例えば 「普遍化」について、「普遍化」とはどんなことかという共通の認識を得るための議論 はなかった。それから、今日の資料に出ている25歳や30歳の表についても、保険料が足 りなくなるからこうするとか、どれにお金が要るからどうするといった議論はなかっ た。その辺があいまいに進んだために、議論が集約できず意見が二つに分かれたのでは ないか。  もともとそうなってきたのは何かと言えば、被保険者の範囲と受給者の範囲を純粋に 介護保険の理念からではなく、「支援費の失敗を統合で」という格好で入ってきたこと にあり、切り口をやはり間違えていたのではないか。  前々回に「普遍化」について反対ではないと言ったら後で新聞社の皆さんに囲まれ て、いつから考えが変わったんだと言われてしまったが、これは反対するものでも何で もなく、誰も反対をする方はいないと思う。ただし、そこへ行き着くまでの色々な過程 の意見は、全部違うはずであるにもかかわらず、それを議論したかと言えば議論してい ない、または議論が非常に足りなかったと言わざるを得ない。  したがって、10ページについて、田近先生から4つ目の丸の「これらの状況を踏ま え、円滑な制度改革を図ることが重要であり」を消してはどうかという意見があった が、私も消した方が良いのではないかと思う。  また、法律の附則に5年後に見直すと書いたからこれを見直すということではなし に、悪いときは走りながら見直すと審議会が初めにそう決めてやってきたように、悪い ことはどんどん直していけば良いし、良いと思うことはどんどん入れていけば良い。余 り日付にこだわるとか、時期にこだわるということではなく、時期に応じた審議の仕方 をして頂くということをお願いしたい。 ○上田部会長代理  制度の普遍化に賛成する立場から発言させて頂きたい。  「普遍化」といった場合、二つの面があり、今まで年齢に関する「普遍化」ばかりが 論じられてきたが、もう一つ、全国どこでも権利としてサービスが受けられるという意 味での「普遍化」がある。これは介護保険においては基本的に約束され、また実現され つつあるが、例えば支援費制度においては、必ずしもそういった地域差が除かれる制度 となっておらず、この「普遍化」は他の色々な制度について、これから十分考えていく 必要がある。  介護保険の話に戻るが、私はリハビリテーションの医者としてあらゆる年齢層、例え ば生後3か月の0歳の子どもから98歳の高齢者まで、様々な方を見てきた。その中で痛 感したのは、介護の負担というものは年齢を問わないということであり、特に0歳の場 合には、親、特に母親の負担が非常に大きく、母親がキャリアを持っている方であれば その人生は全く変わってしまう。そうでない場合でも、障害児が生まれたということで 離婚となり、母子家庭で母親が何とかケアをしなければならないといった場合もしばし ば起こる。もう一つ、私が東京という比較的福祉に恵まれたところにいて痛感したの は、障害児のある家庭で父親が転勤になると、東京とは全く違って障害児に対する福祉 のレベルが極めて低く、やむを得ず母親が子どもとともに東京に留まって二重生活をし なくてはいけなくなるというような事例がある。  そのような点から、介護保険の創設の際には、諸手を挙げて賛成するつもりであった が、実現したのは「高齢者介護保険」であり、その点では極めて失望した。今回、本当 の介護保険にする良いチャンスであると思っていたが、どうも今回は実現しないようで 甚だ残念である。  また、年齢に関して「普遍化」するときの一つの理由を追加したい。20代、30代は自 分が障害を持ち、介護を必要とする確率が低いことが反対論の一つとして書かれている が、障害児が生まれるのはまさにこの年齢層であって、この年齢層に与える負担は非常 に大きい。確率は低いかもしれないが、その場合は人生が全く変わってしまう。こうし たことから、この年齢層の相互の支え合いという意味で、費用の負担があっても良いの ではないか。  それからもう一つは、障害児が生まれてそれにかかりきりになれば、次の子どもを作 らない、あきらめるといったこともしばしば起こることであり、少し大げさに言えば少 子化を促進している面も持っている。社会保障全体として国民のニーズに応えるという 意味で、「普遍化」は十分根拠があると思う。  それから、これからの進め方について希望を言いたい。一つ目に、今後できる限り 「普遍化」が実現できるように法律の附則という形で努力して頂きたい。  二つ目に、これからでも技術的な準備は始められるので、対象年齢を引き下げる場合 の問題について、色々な形で研究を始めるべきではないか。  最後に、制度の谷間の問題については、医学的な根拠から見て、現在指定されている 老化に伴う疾病だけで良いかどうか、見直すことを是非、検討して頂きたい。 ○貝塚部会長  意見を伺っていると、まだ相違がそれなりに残っていることは確かである。文言上の 修正をどうするかは、私に一任して頂ければありがたい。それから、最後の10ページの 「今後の進め方」は、実質的に今後の介護保険制度をどのように変えていくかという記 述であるが、全体の4つの丸は多少の修文はするかもしれないが、基本的にはそのまま 残したいと考えている。 ○中村老健局長  本日は、報告書の取りまとめについて座長に一任頂いたので、よく座長と相談しなが ら取りまとめ、後日、報告書は送付したい。  10ページに書いてあるように、被保険者・受給者の範囲については、平成17年度、18 年度の社会保障全体の一体的な見直しの中で、もう一回議論の組み立て方について省と して考えさせて頂きたい。  御案内のとおり、社会保障全体の見直しについては、内閣でもきちんと取り組んでい こうということで、内閣官房長官が主宰する「社会保障の在り方に関する懇談会」が開 かれており、そちらの議論が現在進行中である。そこでの整理を踏まえ、年金の問題、 医療の問題、介護の問題を総合的に考えるということはどういう切り口なのかというこ とを整理しながら、「時期を明記すべき」であるとか、「できる限り速やかに」といっ た御指摘に対して、私どももしっかり取り組んでまいりたい。  また、介護保険法案については、来年の通常国会に提出するが、この被保険者・受給 者の範囲については議論が残ったため、法案の中で40歳以上とされているものを拡大す ることはないが、今後の取扱いについては、現在与党の中でも検討中の段階であり、政 府としては、法案の原案を作り、与党の審査を経て国会に提出するということになる。  そのように進めさせて頂きたいと考えているので、よろしくお願いしたい。 ○潮谷委員  これまで財源の在り方、要介護認定の仕組み、あるいはケアマネジメント、サービス の範囲の問題などを議論してきたが、「今後の進め方」の中で今、申し上げたことが連 動して初めて制度設計が成り立つので、その辺りを局長からもう少し触れて頂きたい。 ○中村老健局長  準備作業としては、28ページに書いてあるように要介護認定、ケアマネジメント、ケ アプラン、市町村の事業計画などの問題がある。効率化することによりある程度準備期 間を短縮することも可能であるが、法律成立後4年程度はかかる。  今日の御議論では、こういったことについてモデル事業や研究事業でもっと先行して 出来るのではないか、また、こういうことが明らかにならないと議論が先に進まないの ではないかという御指摘もあったので、私どもとしても出来る範囲内で色々な研究を し、検討の素材という形で提供してまいりたい。  ただし、全市町村を巻き込んでのシステム作りなどは、やはり意思決定がないと犠牲 も大きく、法律を変えないと準備できないこともあるが、それまでに出来ることを良く 考え、分けていきながら、前向きかつ積極的に研究作業は進めさせて頂きたい。 ○貝塚部会長  大変多くの方々に関心を持って議論をして頂き、どうもありがとうございました。 (照会先)  老健局総務課企画法令係   5253-1111(内線3919)