04/12/10第4回 医業経営の非営利性等に関する検討会 議事録           第4回 医業経営の非営利性等に関する検討会 日時    平成16年12月10日(金)16時30分から18時30分 場所    厚生労働省共用第7会議室 出席委員  石井孝宜、川原邦彦、品川芳宣、武田隆男、田中 滋、豊田 堯、       西澤寛俊、松原由美、三上裕司、山崎 學                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから、第4回医業経営の非営利性等に関する検討会を開催いたします。委員 の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ、当検討会にご出席いただき、まことに ありがとうございます。まず委員の異動についてご報告いたします。大道委員が辞任さ れ、代わって、日本病院会から武田副会長に新しく委員にご就任いただきましたので、 ご紹介いたします。 ○武田委員  武田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○田中座長  本日は真野委員より、ご欠席との連絡を受けております。西澤委員は、後ほどお見え になると存じます。  初めに岩尾医政局長より、一言ご挨拶をお願い申し上げます。 ○岩尾医政局長  医政局長の岩尾でございます。今日は第4回となっております。この検討会は、今年 6月に出資額限度法人についてのご議論をいただきまして、その普及定着に向けての報 告書をいただきました。委員の皆様方には多大なご尽力、ご協力を賜りまして、ありが とうございました。8月に出資額限度法人の制度化を行ったところでございます。  一方、いま規制改革・民間開放推進会議において、医療法人を通じた株式会社等の医 療機関への経営への参入のご提言とか、公益法人制度改革に関する有識者会議のご報告 など、医療法人に関する制度を取り巻く状況が大きく変わってきております。こういう 中で、変革期における医療の担い手として、医療法人を中心とする医業経営のあるべき 姿として、非営利性、公益性の徹底による国民の信頼の確保、変革期における医療の担 い手としての活力の増進の2つが柱でございます。  医療法人制度について1番として「非営利性の徹底」、2番として「公益性の確立 」、3番目に「効率性の向上」、4番目が「透明性の確保」、5番目が「安定した医業 経営の実現」、この観点から、そのあるべき姿を目指した改革について、この検討会で ご議論いただきたいと考えております。今後、この検討会の検討を踏まえて、現在考え ている平成18年の医療法改正を視野に入れた医療制度改革につなげていければと思って おります。  そういうことで、スケジュールは大変厳しゅうございますが、委員の皆様におかれま しては、この新しい非営利の医療法人制度のさらなる運用などについて、ご提言を賜わ ればありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○田中座長  ありがとうございました。併せて事務局でも異動がありましたので、ご紹介をお願い します。 ○谷口指導課長  審議官と総務課長が来ておりませんので、私、指導課長の谷口でございます。どうぞ よろしくお願いいたします。 ○梶尾企画官  総務課企画官の梶尾と申します。よろしくお願いいたします。 ○田中座長  早速議事に入りたいと思います。先般6月に、出資額限度法人の制度化に関する報告 を、皆様のおかげでとりまとめました。今回より、いま局長のご挨拶にもありましたよ うに、新たなテーマである「医業経営の非営利性の徹底方策について」を議題としてい きたいと思います。  初めに事務局から、資料の確認をお願いいたします。 ○山下指導課長補佐  資料ですが、まず「第4回医業経営の非営利性等に関する検討会議事次第」が1枚。 続いて委員名簿、座席表、それと資料ですが、1枚紙をめくっていただいて、「医療法 人制度改革の基本的な方向性について(主な論点の整理)」と書かれたものが1セッ ト。続いて「今後の進め方について」という1枚紙。  参考資料1−1「医療法人の非営利性の確保状況等に関する都道府県等調査の結果に ついて」。参考資料1−2「医業経営の非営利性に関する調査報告」は、松原委員の資 料でございます。  また、それについて、厚生労働科学研究研究費補助金の資料。参考資料2−1、社団 法人経済同友会が2004年4月にまとめられた「『医療先進国ニッポン』を目指して」。 参考資料2−2、平成16年8月に規制改革・民間開放推進会議がまとめた、「中間とり まとめ」の概要。参考資料2−3「公益法人制度改革に関する有識者会議」、これが今 年11月にとりまとめられましたが、その報告書で、参考資料3「これからの医業経営の 在り方に関する検討会」最終報告書、以上の資料でございます。 ○田中座長  総務課長がお見えになりました。初めてになりますので、一言お願いします。 ○原総務課長  総務課長の原でございます。遅刻しまして申しわけございません。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○田中座長  では、非営利性の確保についての現状等について、事務局、それから先ほどご紹介の ありました厚生労働科学特別研究班の松原委員から説明をお願いします。前者は、平成 15年3月にまとめた「これからの医業経営の在り方に関する検討会」報告書の提言に基 づいて、1つは、医業経営の近代化・効率化に向けた今後の取組みとして、各都道府 県、地方厚生局に作業をお願いしたものです。  もう1つは、厚生労働科学特別研究事業として、分厚い報告書にありますように、私 が信頼する学者たちに集まってもらって検討したものですが、この説明を松原委員にお 願いいたします。それでは山下補佐のほうから先にお願いします。 ○山下指導課長補佐  まず、参考資料1−1「医療法人の非営利性の確保状況等に関する都道府県等調査の 結果について」について説明させていただきます。この調査は、47都道府県と7つの地 方厚生局を対象にして、平成15年8月末を現在の基準として、1つは、非営利性の確保 に関する指導状況、もう1つは、理事長要件緩和後、非医師の理事長の認可状況、最後 に3番目で、経営情報の開示状況、これらについて調査を行い、その結果をまとめたも のでございます。  2頁目ですが、この非営利性の確保に関する1番目の調査に関して、参考までに紹介 しますと、役員報酬の把握状況、把握しているところが1県、把握していないところが 53県・局でございます。  また、非営利性の確保、指導・監督を行う際に、個別にどういう資料を求めているか ということで、3.(2)ですが、役員報酬の内訳、関連営利法人との契約書などを個 別に求めているということです。  2頁下の4.ですが、非営利性の確保に関して、そういった都道府県や厚生局が指導 ・監督を行うに当たって支障となる事項、また改善が望まれる事項として、非営利性の 基準が不明確であること、また、会計に精通している都道府県や厚生局の職員が必要だ ということが挙げられています。  3頁目のIIは2番目の調査である非医師理事長に関しての調査です。非医師を理事長 としている法人数は、把握していない4道府県を除きますが、367法人あります。この 「非医師理事長」とあるのは、真ん中の点線の(参考)の2つ目の・の所で、平成14年 4月に、都道府県知事が個々のケースで、理事長をしっかり見た上で、適正かつ安定的 な法人運営ができるということを判断した場合には認可を行えるというような規制緩和 をした、その結果でございます。  3.では、各都道府県や都道府県医療審議会において、こういった医師ではない方が 理事長になるときの認可に関して、独自の基準を定めているものについては、47都道府 県中15県という結果が挙がっております。  4頁のIIIは3番目の調査である「医療法人の経営情報の開示状況」に関しての調査 ですが、自主的に決算書類の開示を行っている医療法人数は、特定医療法人、これは調 査当時356中12、割合でいうと3.4%です。また、そういった決算情報開示を推進するた めに必要と考えられる事項として、17の県・局が、義務化すべきというようになってい るところでございます。私からの説明は以上でございます。 ○田中座長  続けて松原委員から、20分ほどで説明をお願いいたします。 ○松原委員  明治安田生活福祉研究所の松原です。よろしくお願いいたします。では早速本題に入 らせていただきます。お手元の参考資料1−2をご覧ください。医療事業の営利参入議 論が相変わらず活発なわけですが、その過程で、営利論者が盛んに主張する論拠の1つ として、現行の医療機関の非営利性は形骸化しているとの指摘があります。この点につ いては、皆様すでにご承知のとおりです。  そこで、昨年度実施されました医業経営のあり方検討会の最終報告書におきまして、 医業経営における非営利性の徹底が謳われました。そこで、この非営利性の徹底議論の ベースとすべく、私は厚生労働省より、厚生労働科学研究費で実施した「医業経営の非 営利性に関する調査研究」について発表するよう依頼されました。本日の私の発表は、 その報告でございます。  本日の発表の全体の構成は、全部で3つの部分から成り立っております。第Iは「非 営利性について」。第IIは「現状の医業経営で非営利性の侵食が想定される現象および 局面」。第IIIは「医療法人のガバナンス」についてです。  本日第IIの、現状の医業経営で非営利性の侵食が想定される現象および局面のお話 は、非営利性の形骸化の恐れについて述べるものですけれども、その目的はここでこん な事例がありました、あんな事例がありましたと、形骸化の事例を挙げることではあり ません。あくまでも、現行法規の下で放置しておきますと、非営利性の形骸化が進む恐 れがありますので、ここで非営利がよいとか悪いとか、または営利がよいとか悪いと か、そういうことを言うのではなくて、現在、医業経営では、非営利性を徹底するとい う前提の下で、現行法規では非営利の形骸化が進む恐れがある、そこで想定される現象 と局面を指摘するものであります。ただ、場合によっては若干きつい話も出るかもしれ ませんが、この本日の趣旨をご理解いただいて、ひとつ大らかに聞いていただければと 思います。よろしくお願い申し上げます。  では第Iのテーマである「非営利性」について説明いたします。本日のこのお話の初 めに、「非営利」とは何か、その定義を一通り整理しておきます。その前に、「非営利 は営利に非ず」ということですので、「営利」の定義を確認します。法学上の定説で は、営利とは、利益の獲得を追求し、その結果獲得した利益を出資者に配当、残余財産 の分配などで配分することを言います。  この結果、1番目の、出資者との間に持ち分関係が存在する。所有者が存在する。言 い換えますと、財産が個人に所属する。2番目は、出資者は利益の配分を受ける。これ が営利だと言えます。  さて、「非営利」については、営利要件の反対ですので、1番目に、出資者との間に 持ち分関係がない。所有者がいない。2番目に、利益の配分がないということになりま す。  非営利の定義を簡単に押さえましたので、次に2つ目のテーマである、現状の病院経 営で非営利性の侵食が想定される現象および局面についてご説明します。  いま述べました非営利の要件を、現行の我が国の医療機関に当てはめてみると、我が 国の医療機関の多くが、持ち分ありの医療機関で、これら医療機関は、第1の点で出資 者との間に持ち分関係が存在するということで、非営利組織の定義との対比で見る限 り、大きな課題が残ります。  2つ目の利益の配分については、すでに現行法で禁じられていますので、この点は我 が国の医療機関はクリアしています。ただし、この点についても、実質的に配当とみな されるようなケースが想定されるという問題を残しています。ということで、医業経営 において非営利性が侵食される現象としては、1つは、実質的には配当を行ったとみら れるケースを取り上げます。もう1つは、医療機関が営利企業に実質上支配されるケー スです。  このような現象が、一体どういう局面で起きるかというと、第1は、営利企業との取 引きを通じてであります。医療法人は、医薬品会社、医療機器メーカー、コンサルタン ト会社、病院給食会社など、さまざまな営利企業と日々取引きしておりますが、それら 営利企業との取引きを通じて、非営利性が侵食される局面が生じる可能性が考えられま す。  第2は、金融取引、つまり金融機関から医療機関の資金調達の場面で、これまでの金 融取引ですと、金融機関からの借入れがほとんどですので、このような従来型の金融機 関からの借入れでは、よほどのことがない限り、非営利性が侵食されるようなことはあ りませんでした。  しかし近年は、資金調達の多様化傾向を背景として、金融技法にもさまざまなものが 登場して、そのスキームのいかんによっては、やはり非営利性が損われる恐れが想定さ れますので、この面での取引きを取り上げます。  第3は内部取引です。これは理事長などの役員と医療法人間の取引きのことで、例え ば理事長が医療法人へ、病院が使用する土地・建物を貸し付けているケースなどです。  それでは以下に、これら3つのケースについて説明いたします。2頁目の下のほうに なります。1番目は、営利企業との取引きです。営利企業との取引きは、MS法人な ど、系列営利企業、つまり身内の企業との取引きと、身内外との取引きがありまして、 これら2つは取引きの意味合い、取引きの時の支配関係が違うので、分けてご説明いた します。  まず、系列営利企業との取引きについてです。系列営利企業とは、当該医療法人の理 事長などの役員が所有、または支配している企業を指します。例えばMS法人などがそ の代表例です。この場合想定される現象は、実質配当行為として表れます。これは医療 法人が、先に述べたとおり、医療機器メーカー、医薬品会社などと取引きする際に、M S法人などを間に介在させて仲介料を取る場合。あるいは医療法人が行う業務を形式 上、MS法人に移管して、そこへ業務委託という形でフィーを支払う場合などです。こ れらを通じて、本来医療法人が得るべき利益をMS法人に移転させて、MS法人におい てそれを財源として、理事長などの役員やその親族などに配当金として支払うか、また は給与の形で支払うかの現象です。  3頁で、具体的に申しますと、病院の医事課の職員を、形式上すべてMS法人の職員 として、この結果、MS法人が形式上の人材派遣会社となり、人材派遣料の受け取りを 通じて、医療法人からMS法人へ利益が移転されるケース。または、医療法人の理事長 が病院を経営しているわけですが、その同一理事長が、MS法人に所属して、MS法人 が当該医療法人の経営コンサルタント会社となって、コンサルタントフィーを受け取る などの場合です。  これらの取引きで注意すべき点は2つあります。1つは、MS法人が仲介または委託 業者となる場合で、この仲介手数料や委託料が市場相場であるか否かです。市場相場よ りも著しく高い場合は問題になります。  もう1つは、コンサルタント会社の例で申し上げた場合ですが、この場合は、コンサ ルタントフィーの多寡というよりも、文字どおり利益移転行為とみなされる恐れがある のではないかと思われます。  このような系列営利企業への利益移転の事例として、ある医療法人で医療機器を納入 している系列営利企業が、医療機器リース代を通常より高く設定して、病院の経費を水 増しして、利益を外部に移転し、当該系列営利企業が国税局から財務調査を受け、追徴 課税されたケースがございます。  次に、非系列営利企業との取引きについてです。非系列営利企業との取引きでは、互 いが独立した組織同士ですので、系列営利企業との取引きにおいて見られるような利益 移転の問題はあまり想定されません。この非系列営利企業との取引きで問題となるの は、営利企業による経営支配です。こうした現象が起こるきっかけは、病院が経営困難 に陥ったような場合、またはPETのような高額医療機器を導入したいとか、あるいは 新たなデラックスな病棟を建てたいなど、積極経営指向をとっている病院が、金融機関 からの借入れがスムーズにいかないことなどによって、一般事業者に金融支援を仰ぐと きです。  具体的な支援方法としては3つほどあって、1つは、営利企業が自ら融資する。2つ 目は、病院が金融機関から借入れをする際に、債務保証をする。3つ目は、土地・建物 といった現物を営利企業自らが提供するといった形がとられます。  経営が立ち行かなくなったとか、身分不相応の投資をしたなどとなりますと、そうい った医療機関の弱い立場を突かれて、経営トップである理事長そのものが送られてくる か、あるいは理事長まではいかなくとも、幹部職員が送られて、実質的な経営支配を受 けることとなります。  こういった例でもわかるように、経営支援を行う企業というのは、経営戦略として、 病院業界に進出を目指している企業が考えられます。このほかに、近年は医療と介護の 連携が進行中ですが、医療・介護の連携を進めるうちに、株式会社である介護事業者側 が医療機関を支援して、経営支配に至るケースも想定されます。  次に非営利性が侵食される2番目の局面として、金融取引、つまり資金調達の局面に ついて説明します。先ほどの非系列営利企業との取引きで、非営利性が侵食されるケー スは、病院業界に進出する、つまり経営権の掌握が目的で行われますが、これに対し て、これから述べる金融取引では、経営権掌握は目的ではなくて、あくまで金融取引が 目的として行われます。  先にも述べましたとおり、これまで行われてきた従来型の借入れでは、金融取引を通 じて、非営利性が侵食される恐れはほとんど考えられませんでしたが、近年は金融手法 が進化して、中には、スキームの組み方いかんによっては、非営利性が侵食される恐れ がなしとはしないスキームも登場するようになってきました。  そこで、そういったタイプの金融スキームについて、4頁の下の図に従ってご説明し ます。この図に示した金融スキームは、非営利性との関連で問題となる箇所をわかりや すく明示するために、要約化しておりますので、正確なスキーム図ではありません。こ の図が示すとおり、医療法人は病院の土地・建物をSPCに売却して、SPCから土地 ・建物を賃借し、SPCに賃借料を支払います。SPCは土地・建物の購入資金を、右 に示す資金提供者から借入れ、または出資を受けるという形で調達します。当然のこと ながら、SPCは借入れについては、元利金を支払い、出資受入については配当を行い ます。  この借入れには、シニアデッドとサブデッドがあります。シニアデッドとは、通常の 銀行借入と理解していただいて結構です。つまり、金利は原則として市場金利レベルで 固定制です。  これに対してサブデッドとは、劣後借入、劣後債務のことで、倒産などの場合に、元 利金の返済は劣後するほかに、毎期の金利支払いについても、事業の開始直後の収益が 上がりづらい数年間は、金利の支払いはゼロまたは低利にする。その代わりに、収益が 出るようになった時点から、その分金利を高く取ろうとするものです。要するにサブデ ッドは原則として、借入れの対象となった事業の収益状況に応じて金利を変動させる借 入れです。  このスキームで非営利性との関連で問題となるところは、5つあります。第1は、事 実上、株式発行による資金調達が行われて、これに伴って利益の配当が実施されてしま うことです。SPCは、先に述べましたとおり、必要とする資金を借入れ、または株式 発行という形で調達できます。ただ、この場合のSPCは、Special Purpose Company と言われるだけに、医療法人の資金調達のためだけにつくられた会社です。このSPC が、株式で資金調達するということは、医療法人そのものが、株式発行しているわけで はないとはいえ、実質、医療法人が株式を発行して資金調達したと同じことだと解され るとも限りません。むろんこれに伴う配当実施も同様です。これが問題点の第1です。  第2は、サブデッドの金利の決め方です。先ほど述べましたように、サブデッドは劣 後借入で、何かあれば元金返済が劣後する。儲からないうちは金利の支払いは要らな い。または低利にする。その代わり、儲かってきたら、その分大きく払ってねというリ スクマネーであるだけに、原則として金利は収益力に応じて、変動的に決められるもの です。それだけに、収益連動型となる可能性が否定できません。収益連動型で金利が決 められるとなると、事実上の利益配当だと言われかねません。  問題の第3は、医療法人がSPCに支払う賃借料の決め方です。すでに触れたよう に、SPCの収入は医療法人からの賃借料のみです。一方、SPCが必要とする資金、 これは資金提供者に対する金利支払、配当金のことですが、この資金は、仮にサブデッ ドが変動金利型と決められて、また配当も行われるとすると、期ごとに所用資金は変動 というより、漸増となる公算が大きいと言えます。このため、必然的にその財源となる 受取賃借料も変動、つまり漸増する形となることが想定されて、賃借料が結果的に収益 連動型となることが考えられます。  第4は、コベナンツや財務制限条項の中身です。コベナンツとは「契約」という意味 です。こういったタイプの契約では、通常、債権保全のために、いろいろな取決めが行 われるのが一般的です。このコベナンツや財務制限条項は、債権保全のための取決めを するもので、例えば新規の借入れは抑制するとか、新規大型事業を行う場合は、必ず債 権者の事前の了解を必要とするといった事項をとり決めることです。別に経営の支配を 目的としたものではありませんが、病院と資金の出し手との力関係によっては、債権保 全という名目の下で、実質的に経営が縛られる恐れが否定できません。  以上4つの問題のほかに、5番目の問題として、このスキーム全体の問題がありま す。このスキームがどのようにして始まるかというと、医療法人側がこのスキームを持 ちかけることは考えにくく、コンサルタント、つまりアレンジャーが営業活動をして、 このようなスキームが使える医療法人がないか、探し出してくると思われます。こうし た経緯で出会いがあると、医療法人とアレンジャーは、対等な立場で医療法人に最も適 したスキームを、文字どおりビジネスライクに仕立てていくわけですので、この過程な いし段階で、経営支配などは考えられません。  ただ、多くの場合、こういったスキームを使うのは、経営が立ち行かなくなったと か、どうしても新規事業をやりたいけれども、銀行が貸してくれないとか、医療機関側 の立場が弱いケースが多いと思われますので、そうなりますと、医療機関が主体的に、 こういったスキームを利用するのではなくて、医療機関がスキームの中に埋没して、こ のスキームのために、医療機関があるようになってしまい、主体性を失って、実質的に 資金の出し手に支配される可能性が考えられます。  次に第3として、非営利性が侵食される局面として、内部取引が挙げられます。これ は理事長などの役員と医療法人間の取引きです。理事長など役員への給与、理事長から 法人への金銭貸付・私募債購入などにかかわる金利、理事長から法人への土地・建物賃 貸などの賃貸料で、これらが市場価格よりも著しく高い場合に問題となると考えられま す。  なぜなら、これらの価格は、内部取引のため、理事長が恣意的に決められますので、 場合によっては実質配当につながりかねないということです。以上で、非営利性侵食の 可能性についてご説明いたしました。  最後に、医療機関のガバナンスについてご報告いたします。ガバナンスは他産業にお いても問題となっておりますが、医療法人においても、非営利性の問題や医療過誤の問 題などがあります。それでは、医療法人において、このガバナンスが発揮されているの かというと、正直なところ、心もとないというのが現状のようです。  もっとも、こうした事情は何も医療法人だけではありませんで、ほかの一般企業にお いても、一部の上場企業を除く大多数の中小企業以下においては、ガバナンスが発揮さ れているとは言えません。ただ、一般産業の中小企業の場合は、消費者や取引先、債権 者といった外部から、常に厳しいチェックを受けています。例えば、製造する製品また はサービスに問題があれば、消費者にすぐソッポを向かれてしまいますし、企業対企業 の取引でも、納入先企業の基準に合わなければ、取引が中止されてしまいます。とりわ け下請企業ともなれば、親企業から常にコストカットを迫られて、効率化を進めざるを 得ない状況にあります。金融機関からの監視も厳しいものがあります。  これに対して医療法人は、こうした消費者(この場合患者)、取引先、債権者といっ た層からもチェックされる度合いが、相対的には少ない傾向にあります。例えば、医療 提供者と患者の間には、情報の非対照性があるなどから、患者からチェックされる度合 いは、他産業と比べては少ないといえます。取引先も、医薬品会社や卸、病院給食、リ ネンなどと取引きがありますが、いずれも納入業者の立場にあるので、これらから病院 がチェックされるとは考えにくいです。  金融機関についても、医療機関経営者というと、地域の名士たることが多く、特に地 方においては、銀行にとって大きな貸出先もなく、預金獲得先としても重要顧客なの で、怒らせては怖い存在と思われており、よほど経営が悪化しない限り、経営内容が厳 しいことを指摘しないと考えられます。  もちろん個別ケースでは、銀行にきついことを言われている例もあるでしょうけれど も、一般の中小企業との相対間で見ると、病院はやはり比較的強い立場にあると思われ ます。このように、患者、取引先、債権者といった、医療法人外部のステーク・ホルダ ーにもチェックする人がいないということが、このガバナンスを考える際の医療法人の 特徴です。また、医療法人内部から見ると、出資者については、これは所有と経営が分 離していませんので、ガバナンスは働きにくい環境にあります。  次にこれを、介入ないし管理する、監視するとなると、その対象をどうするのかとい う問題があります。例えば、一人で開業している開業医と、500床以上の大規模病院に、 同様のガバナンス、例えば外部監査を受けさせるとか、情報公開するといったことを画 一的に強制するのは、小規模医療機関にとっては酷だと思われますので、その対象を線 引きする必要があります。  最後に、ガバナンス発揮の具体的方策としては、いろいろ考えられると思われます が、例えば病院は地域産業と言われておりますので、地域住民との理解を深めることは 重要と思われます。そのために、これは地域の病院だ、自分たちの病院だという意識を 持ってもらうために経営に参加してもらう。または、そこまでいかなくても、監視して もらう体制をつくることなどが考えられます。ほんの1例を挙げさせていただくと、地 域住民が医療法人の理事になり、経営に参加する。地域住民による評議員会を開催す る。地域住民との連絡会議を制度化する。平均在院日数などの医療情報を情報公開する ことを義務づける、または促進する。そのほか、ピアレビューを実施する。業務監査な どの、業者のかかわり方を検討することなどが考えられます。  以上で、非営利性の定義、医業経営において非営利性が侵食されるケース、医療法人 のガバナンスについてご説明いたしましたが、このように、非営利性を徹底させたガバ ナンスを確立させるということは、医業経営者にとってはかなりの手かせ足かせとなる ことは事実です。民間組織に対して、公平・平等な医療の実現、職業倫理を徹底するた め、こういった取組みをしていただく以上、それらに対する見返り、つまり何らかの公 的支援、例えば、税減免、債務保証などといったことが、非営利の徹底とセットで検討 される必要があると思います。以上で発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがと うございました。 ○田中座長  ありがとうございました。ただいま岡島審議官がお見えになったので、ご挨拶をお願 いします。 ○岡島審議官  遅くなりました。岡島と申します。よろしくお願いいたします。 ○田中座長  それでは、山下補佐及び松原委員の発表に対して、ご質問でもご意見でも結構ですの で、ご自由にどうぞ。 ○品川委員  資料1−1の3頁で、「非医師理事長に関する調査」というのがありますが、この調 査の内容は、原則的に医師が理事長になることを前提にしていて、理事長が死亡等し て、その子女がまだお医者さんになれないような、非常時のときにだけ、非医師の理事 長就任という想定で、何か資料が求められているようですが、先ほどの松原委員のご報 告にあったガバナンスの問題を考えると、本来、理事長は医師でないほうが、ガバナン スの能力があるという場合も当然考えられるわけですが、そういう、本来のガバナンス の観点から、理事長を選定するということは、いままでは考えているのですか、考えて いないのですか。あるいは、認可の対象にしているのですか、していないのですか。 ○山下指導課長補佐  これはちょっと経緯がございまして、実は、医療法ができたのは昭和23年で、医療法 人制度ができたのは昭和25年です。それ以降長らく、医療法人の理事長の要件というの は、全くなかったわけです。  ところが、私もちょっと記憶は定かでありませんが、昭和50何年かに、大きな社会問 題となった、富士見産婦人科事件というのがあって、医師ではない理事長の方が、非常 に乱診乱療をして、女性の子宮をどんどん取っていくという治療をすることで利益を上 げていく。そういう事件があったことから、昭和60年に医療法の改正があって、医療を 行う医療法人というのは、やはり経営というだけではなくて、適切な医療を行うことと セットになって、理事長に「医師でないといけない」という原則が付け加わった次第で ございます。  そういった面でいいますと、品川先生がおっしゃったような、ガバナンスという観点 と比べると、確かに我々としても、ガバナンスで見ているのかというと、それ以上に、 医療が適切に行われているかという観点で見ているほうが高いのではないかと思われま す。 ○品川委員  プロ野球の場合は、名選手、必ずしも名監督に非ず、ということがよく言われて、名 医師、必ずしも名管理者に非ず、ということはいくらでもあり得る話で、そういう観点 からのチェックはしないということですか。 ○谷口指導課長  チェックをしないということよりも、医療を行う医療機関を統括するトップとしての 理事長たる者は、医療がどうあるべきかという視点からまず考えると、やはり医師とい うのがまず優先されるべきではないかというところから始まっていると理解していただ ければよろしいと思うのです。 ○品川委員  そうすると、367法人に非医師の理事長がおられるのですが、これはどういう観点か ら認可するのですか。前の理事長の身内の人とか、そういう観点からですか。ガバナン スとか、そういうことはあまり考えないということですか。 ○谷口指導課長  これまでのという前提つきでお聞きいただければと思うのですが。 ○品川委員  ええ、もちろん367法人ですから、いままで認可した法人でしょうけれども。 ○山下指導課長  今後の話はちょっと別にして、これまでの視点からいたしますと、先ほど申しました ように、医療はどうあるべきかという視点から、まず、できれば医師が理事長になって もらうのが望ましいのではないかという視点で行ってきておりまして、この367の事例 については、今後、望ましい方が理事長になるまでの間という意味での、緊急避難的な 部分というのは、結構ここに出ているように多いのです。だから、望ましいというの は、何らかの形で将来医者になることが確実であるとか、引き継ぐことが確実であるこ とが担保される場合には、それまでの間、非医師でもよろしかろうという意味での、要 件緩和の実例として挙がっているものです。  繰り返しますが、これまではそういう形で、医師が望ましかろうという視点でやって きたのですが、おっしゃるとおり、ガバナンスという視点で考えると、これからの問題 として、従来の考え方のままでいいのかというのは議論の対象になり得るのではない か、というのが我々の問題意識でございます。 ○川原委員  いまの話に若干関連するのですが、先ほど参考資料1−1のご説明を受けて、私自 身、正直申し上げて、大変驚いたわけです。というのは、非営利性の確保に関する調 査、これは各都道府県で調査をしたということですが、実態的に、非営利性というもの が明確なまでに守られていない。逆な言い方をすれば、各都道府県でバラバラに放置さ れているような感じで、適正な行政指導にかなりブレーキがかかっているのではない か。  特に、この2頁の4番目ですが、非営利性の基準が不明確であると、先ほどもおっし ゃっていましたが、すべてがこれから発生しているのかなと思います。地方自治体が管 理・監督すべき監査そのものが、非営利という基準がないがゆえに、管理・監督ができ ない状況に立ち至っている。このような状況というのは、私は速やかに解消すべきもの であると考えます。そういうことで、私が大変驚いたというのは、表現としては好まし い表現でないかもしれませんが、可及的速やかに、こういう実際の第一線現場での障害 になっている部分は除去すべきというのが、私がいまお話を伺っていて、率直に感じた 点です。これが第1点です。  第2点は、松原委員から、いま非常に詳細かつ適正な、わかりやすいご説明を受けま した。あの中で、最終的に一言だけ非常に重要なことをお話されていたので、あえて私 からお話をさせていただきたいと思いますが、いわゆる非営利性というものを今後押し 進めていく。あるいは、制度の上でより強いものを持たせていくということになった場 合、税の減免とのセットで、きちっと考えないといけない。これは、私は、いまの医療 法人制度の中で、例えば特定であるとか特別であるとか、特に特別の場合を例に取って 申し上げると、出資持分がないですから、当然に非営利ということは、ある意味におい ては、医療法の上でも立証されているわけです。  しかしながら、一般企業と同じような法人税率を課せられているということが、今 後、非課税とまではいかないまでも、やはり何らかの形で軽減をすることによって、こ の非営利性の確固たる裏付けというものをなすべきではないか。おそらく、松原委員の 発言は、そういうことを意図してご発言なさったと思うのですが、以上、いまのご説明 の中で感じたことを発言させていただきました。 ○田中座長  ご意見ですね。 ○川原委員  私の意見ということです。 ○田中座長  都道府県がしっかり監督できるように、非営利性の要件をちゃんと定めよという点 と、税のことまで考えて、非営利の問題は討議すべきだということでございました。  ほかにいかがですか。なければ、私から松原委員に口頭試問をしようと思います。非 営利性について、持ち分の話と配当の話を1頁目で整理していただいていますが、非営 利組織自体による利益獲得行動と、配当もしないし持主もいないけれども、利益獲得行 動するということと、非営利性と、どう整理されますか。 ○松原委員  営利も非営利も利益を獲得する点では共通しています。これが営利と非営利を曖昧に させている最大の要因です。営利・非営利に限らず、どのような組織でも、その維持継 続のためには、最低限の財政基盤を確保しなければならないからです。したがって、非 営利は利益を上げてはならないとか、利益を上げているから非営利ではないといったこ とは当りません。 営利・非営利では獲得した利益の結果である配当の有無で相違がある点についてはよく 理解されていますが、利益獲得のプロセスあるいはレベルに相違があることが理解され ていません。このため非営利も、営利と同様にせっせと利益を獲得し、資本蓄積に努め ているではないかといった主張を生んでいます。しかし、あくまで概念的なことです が、プロセス、レベルにも営利・非営利間では大きな違いがあると思います。 ○田中座長  そういう整理で、それも1つ言っていただくと、まとめがよくなると思いました。 ○品川委員  松原委員の資料の5頁のところで、ほかの資料をざっと見ながら、ちょっと考えさせ られたのですが、要するに、理事長と役員と、医療法人間の取引きで、この「理事長と 役員の高額給与支払い」ということが問題提起されているのですが、そもそも、この報 酬の支払いというのは、医師の能力に対する支払いと、管理能力に対する支払いと、両 方あるわけですね。そういうのは区分できるのですか、できないのですか。  非常に名医を医療機関に招待しなければならない場合には、理事長よりも何倍も給料 を払っても、引っ張ってこなければ、その名声を上げることはできないですね。そうい うことで、当然、役員の給与が高いか安いかという問題は、医師の能力としての給与な のか、管理能力としての給与なのか、その辺の区分をきちんとしておかないと、本当に 高いのか安いのかということはわからない。そこはどこまで区分できるのですか。 ○松原委員  明確な線引きというのはなかなか難しいと私は思うのですが、ただ、それが問題だ、 とここで思うのであれば、どこら辺が妥当な線なのかを、この会で検討していくのも1 つだと思うのですが。私は別に、5,000万円ならいいとか、6,000万円ならいいとかと いう、そういうものをもっているわけではございません。  ただ、一般的に、いくら配当を禁止している、だから非営利だと言っても、やはり何 億も給与をもらっているとなると、本当に非営利ですかと言われてしまうのは仕方がな いのではないかと思います。と言って、どこから線引きできるかというと、それはまた 難しい問題ですが。 ○品川委員  私自身、法人税法で、不相当な高額な役員報酬というのは、全部損金算入になるとい うことで、税務的な争訟事件については、私はほとんど悉皆的に調べて、何冊か本を出 しているのですが、そういう営利会社における報酬の支給方法とか、支給が適正かどう であるとかということは、それなりに分析しているのですが、医療法人の場合は、通常 はお医者さんが役員を兼ねているわけです。その場合は、医師としての能力と管理能力 と、当然2つの機能があって、それで、どういうふうに適正額のようなものを特定でき るのかなという、そういうことを、常々ちょっと考えていたものですから、そういう分 析をしないで、ただ1億円の給与が高いとか安いとかというのは、ちょっと問題がある と思うのです。それは、命を預かる人ですから、プロ野球の選手だって何億円ももらう ので、それ以上もらっても、別に、本当の名医であったら、それは堂々ともらえるのが 本来の医療のあり方ではないかと思うのです。そういう分析の仕方を、もっときちんと しないと、ただ金額だけでどうこうといっても、意味がないように思います。 ○田中座長  そうですね。医師としての給与と管理者としての給与は、分析上分けるべきであると いうご提言でした。ほかにはよろしゅうございますか。松原委員、ありがとうございま した。  次に、医療法人制度をめぐる最近の状況について、事務局から説明をお願いします。 ○山下指導課長補佐  参考資料2−1についてご説明いたします。これは、社団法人経済同友会が2004年4 月にまとめた「『医療先進国ニッポン』を目指して」という資料です。1枚繰って、下 に11とある頁ですが、多様なサービス提供者の活躍を可能にする株式会社参入と医療法 人制度改革について提言されております。  2段落目に、太字で、「株式会社の参入を制度上禁止することに合理的な理由を見出 すことは困難」。4段落目に、「よって、株式会社による医療機関の開設を可能とすべ き」。最後の段落で、「これに合わせて現行の医療法人制度に関しても見直しを進める こと」。最後のほうで、「医療法人に関しては、出資持分の放棄など、明確な基準を定 めた上で、それを満たした場合には税制などの面で一定の優遇措置が講じられるべき」 ということが提言されております。  最後の頁は、「改革のプロセス」ということで、プロセスI、II、IIIとありまして、 プロセスIについては、まず非営利の原則条件を明確化した上で、これを満たした医療 法人に対しては、学校法人等と同様の税制優遇を認める。またプロセスIIでは、複雑化 した現行の医療法人制度を整理・再編する。また、非営利の原則、条件を満たさない 「出資持分のある医療法人」については、出資持分に対する配当を認める。最後にプロ セスIIIとして、営利法人による医療機関設置を解禁する。このような提言をされてい るところです。  参考資料2−2は、「中間とりまとめの概要」ということで、平成16年8月に、政府 の規制改革・民間開放推進会議がまとめたものです。いわゆる規制改革会議のほうで何 を提言したかというと、V.「主要官製市場の改革の推進」の(2)「医療法人を通じ た株式会社等の医療機関経営への参入」ということで、3つ提言されています。1つ目 は「出資者たる株式会社に社員としての地位を付与。社員総会における議決権取得を容 認」。2つ目は「医療法人による他の医療法人の出資を容認」。最後に、「出資額に応 じた社員総会での議決権を容認」。これは、いままでの規制改革会議で、私どもが認識 しているところでは、医療ということに対して、株式会社で参入させてほしいという提 言だったのですが、この提言ではそうではなくて、医療法人に株式会社が入っていっ て、それでたくさんの出資をした人が、それだけの発言権を得るという形を提言されて いるということでございます。  参考資料2−3、「公益法人制度改革に関する有識者会議」報告書についてというも のです。これをそのまま裏返していただくと、公益法人制度改革に関する有識者会議の メンバー表があります。いまの公益法人、社団法人と財団法人について抜本的に改革す るということで、こういったメンバーがまとめた報告書でございます。  また元に戻って、2枚繰っていただくと、これが平成16年11月19日に報告書としてま とめられたものです。概要よりも報告書の中身について、それぞれちょっと詳し目に説 明させていただければと思います。  4頁、「基本方針」の(1)とありますが、法人格の取得と公益性の判断を分離しては どうか。法人格の取得については簡便に取得ができて、一般的な非営利法人制度を創設 する。(2)ですが、一般的な非営利法人のうち、一定の要件を満たすものを、公益性を 有する非営利法人として、新たな主体が判断する仕組みを創設とあります。これを見る と、1階建ては非常に簡単な非営利法人、また、その中から2階建てで公益性の高いも のは、公益性を有する非営利法人というものを、1階と2階というイメージだろうと思 います。  次は6頁の(2)「営利法人との区別」です。社員の権利・義務の内容として、ア)出 資義務を負わない、イ)利益(剰余金)分配請求権を有しない、ウ)残余財産分配請求 権を有しない、エ)法人財産に対する持ち分を有しないこととして、営利法人制度との 区別を明確化する、というのがあります。  6頁のイ「社員」で、「社員は、定款の定めに基づき経費支払義務を負うこととする が、法人の対外的な債務については、責任を負わないものとする」ということで、無限 責任ではなくて有限責任だということが書かれております。  続いて7頁です。「ガバナンス」ということで、(イ)「理事」の2段落目のところ で、「法人運営の適正を確保するため、理事の法人又は第三者に対する責任規定を設け ることとする」。また「さらに、他の理事によって理事の法人に対する責任が不問に付 され、法人の利益が害されることを防ぐため、株式会社制度と同様の社員による代表訴 訟制度を新たに設けることとする」。この(イ)の最後の段落ですが、そういった代表 訴訟の濫訴防止の観点から、代表訴訟の制限に関する規定についても、同様の検討を行 う必要があるというものを掲げております。  8頁のエ「計算等」の2段落目に、「また、法人の財務状況を適切に開示するため、 社員及び法人の債権者は、計算書類の閲覧又は謄抄本の交付を請求することができるも のとするほか、理事は、社員総会の承認を得た貸借対照表若しくはその要旨を公告し、 又は、公告に代え、インターネット上のウエブサイトに表示しなければならない」とい うことが書かれてあります。  続いて11頁のいちばん下で、「大規模な法人に関する特例」というのがあって、12頁 で、「一定規模以上の法人については、大規模な株式会社に関する規律を参考にしつ つ、法人の実態も踏まえ、会計監査人による監査を義務付ける方向で検討する必要があ る」ということが書かれています。  続いて13頁、いままでの説明は1階建ての非営利の法人の話で、13頁以降は、2階建 ての公益性のある法人に関する指摘ですが、(1)の「判断主体のあり方」の2段落目 に、「また、判断主体は、主な機能として、(1)法人の公益性に係る判断、(2)いわゆる 事後チェック(監督)、(3)不服申立の処理を担う必要がある」ということが書かれて います。  続いて、公益性の「判断要件」について14頁以降から書かれていて、主なところだけ を説明しますと、17頁の(イ)に「営利企業の行う事業との関係」ということが書かれ ていて、2段落目に、「その際、基本的な考え方としては、営利企業として行うことが 社会通念上適当と認められる事業を主たる事業として行う場合には、営利法人として行 うことが法人制度上望ましく、これを、公益性を有する法人の主たる事業とすることは 望ましくない」。また、ウ「収益的事業の要件」とありますが、「公益性を有する法人 が、その健全な運営を維持し、十分な公益的事業を行うための収入を確保するために、 付随的に収益を目的として行う事業については、次の要件を満たすことが必要」という ことで、18頁で、「収益的事業に伴う利益の公益的事業への使用」ということが書かれ ています。  19頁で、「規律」ということで、ガバナンスに関することも、公益性を有する法人に ついては書かれています。ア「理事構成及び評議員構成の制限」ということで、1段落 目の後段ですが、「このため、公益性を有する法人については、理事のうち、例えば、 同一親族が占める割合を理事現在数の3分の1以下とするといった規律を設けることが 必要」。またいちばん最後で、「評議員構成について、例えば、同一親族等の特定関係 者が評議員に占める割合を一定程度に制限することが適当である」。  続いて同じ頁のイ「役員報酬等」の2段落目、「しかしながら、適切な役員報酬等に ついて、すべての公益性を有する法人に対し一律の基準を設けることは困難であり、法 人運営に必要な有能な人材を確保する観点からも、適切な役員報酬等のあり方について は、公益性を有する法人の自律性を尊重することが望ましい。役員報酬等については、 例えば、役員に対する報酬等の支給基準の開示を求めるなど、国民一般に対する情報開 示を通じた社会監視の対象とすることが適当である」。  ウ「残余財産の帰属」の3段落目です。「このため、公益性を有する法人の残余財産 に係る定款・寄附行為の定めの内容については、例えば、帰属者となり得る者を他の類 似目的の公益性を有する法人や国・地方公共団体等の一定の範囲に限ることとすべきで ある」ということが書かれています。  21頁のカ「財産的基盤の確保」ということがありまして、22頁に「多様な形態の法人 活動を促進すべきといった観点からも、適切な財産的基盤の確保のあり方については、 公益性を有する法人の自律性を尊重することが望ましいと考えられ、財産的基盤の確保 については、例えば、財務書類の開示を求めるなど、国民一般に対する情報開示を通じ た社会監視の対象とすることが適当」と書かれています。  25頁のウ「定款で拠出金の拠出を求める法人の取扱い」について、「定款の定めると ころにより、社員又は第三者に対し、拠出金の拠出を求める法人についても、判断要件 を満たせば、公益性を有する法人とすべきである。ただし、拠出金の金額と議決権とを 連動させることができない方向で今後検討をする必要がある」。  (3)「適正運営確保のあり方」の(1)「ガバナンスのあり方」のア「意思決定機関、 執行機関及び監事のあり方」ですが、「公益性を有する社団形態の法人にあっては、3 人以上の理事を置かなければならない」というのがあります。  26頁、「役員の責任及び寄附者・国民一般による代表訴訟類似の制度等」ということ で、これは端折って説明しますが、「役員の法人に対する責任制限に関する規定を設け る方向で検討をする必要。さらに、社団形態の法人の場合については、社員による代表 訴訟制度を設けることとしている」。  (2)情報開示のあり方は27頁にまで渡ります。「公益性を有する法人の適正な運営の 確保を図る観点から、原則として広く国民一般に対する情報開示を求め、社会全体によ り当該法人の活動を監視することにより、当該法人の公益性にふさわしい規律を前提に した自律機能の適切な発揮を促すべきである。また、公益性を有する法人は、不特定多 数者から寄附や労務の提供を受けること等が想定され、その活動を広く国民一般に対し 説明することが望ましい。さらに、積極的な情報開示を通じて、公益性を有する法人の 活動内容の透明性が高まることにより、公益性を有する法人のサービスを国民が適切に 選択し、享受することができるようになることが期待されるほか、公益性を有する法人 の活動に対する国民の理解を深め、そうした活動への協力・参加を促進すること等を通 じて、民間非営利部門による公益的活動の一層の発展が期待される」と書いてありま す。  簡単に主な部分だけを説明しましたが、公益法人制度改革、これは社団法人・財団法 人についての改革としてはこのような報告書が出ているという紹介です。説明は以上で す。 ○田中座長  参考資料2−1、2−2、2−3について、何かご意見がありましたらお願いいたし ます。 ○豊田委員  松原委員のまとめられた資料に関連しますが、昭和25年に医療法人制度ができまし た。いまいろいろ医療法人が問題があって、そこまで遡らなければならないと思うので す。そもそも医療法人の成り立ちが、積極的な公益性は求めないけれども営利法人では ないと。中間的な医療法人であるということでスタートをしているわけです。  最初に設立をした人から、医療法人というのは、あくまでも医療というものはある程 度の公益性というのは当然であると、特別に意識しなくても医療というのは、医倫理に 基づいて仕事をするのだと。したがって、言葉で言えば自分たちは公益的な仕事をして いるという自負は、当時問題にならない時代にもこういうことは意識していたと思いま す。  一方では、そういうことは例えば私どもの医療法人協会でいえば、私どもが公益的な 仕事をしているのに、株式会社と同じように扱われるのはどうであろうか。例えば税の 問題は法人制度ができてから言ってきた。つまり、医療法人で働いている人たちは、自 分たちは株式会社と同じ仕事をしているのではない、非営利の仕事をしているのだとい う自負心があったと思います。ただ、一方では、今回の出資額限度で国税庁が明らかに したように、持ち分のある社団は同族会社として、営利と一括したようなグループの中 に入れられていたという事実があります。  先ほど理事長要件の中にも出てきましたが、理事長が亡くなった後、その子女が学校 にまだ入っている間は、理事長の奥さんが理事長を務めてもいいというのは、ある意味 で一方では医療法人をそういう私的な法人というふうに容認してきた背景もあります。 そういった中で、持ち分のある社団の医療法人は、医療法人の97%を超えるわけです。 その中でいろいろな問題が生じてきているのは最近のことです。松原委員が営利と非営 利を分けられました。ある意味では、それが非営利ではなく営利側のこういう問題を抱 えている医療法人も生じてきたということも否定できませんが、多くの医療法人は決し てそういうことではない。  私どもが最近取り組んできた形からいえば、特に株式会社参入の問題が起こってか ら、医療法人の非営利性ということが非常に意識されるようになりました。では、どの ようにするのかという立場で非営利医療を行う法人は、やはり非営利、公益性を高める べきではないか。そういう形でずっと皆さん議論をしてきたわけです。その中の1つの 形が出資額限度ということでした。一気に持ち分の問題がここに出てきますが、現在あ る医療法人の97%が持ち分のある法人です。これが一気に全部持ち分を放棄できるかと いうと、それは現実的ではないです。これから始まるのならいざ知らず、すでに50年と いう長い経過、その中でいろいろな医療活動、経済活動をやってきているわけですか ら、これを一気に持ち分のないということは、なかなかできかねる。それで出資額限度 が中間のステップであったわけです。  株式会社というのは営利ですから、松原委員が言われた非営利と営利に分けられまし た。これは良い悪いの問題ではないということで、公平な立場で松原委員は発表された のでしょうが、松原委員が指摘された非営利でない部分が医療で行われることは、我々 は医療を行うわけですから、患者を診て、患者の健康、命を対象にして営利を行うこと になるわけですから、これは現在の医療界が挙げて反対している。医療の非営利、こち らのほうが正しいわけです。理論的には両方論じられていますが、そうあってはならな い形なわけです。ですから我々は営利の参入に反対しているし、反対をしている以上は 我々は少しでも非営利、公益性を高める形で医療法人改革をしなければいけないという 立場に立っているわけです。  大事なことは先ほどから言いますとおり、ある程度の長い歴史がある。いま簡単には 動けない、そういう現実も見ながら、同時にそうは言っても、とにかくこの状態を加速 的に改革をするためには、川原委員が言われましたが、制度と税制の問題が一体でなけ ればいけない。制度面でギューギュー締め上げる、規則を厳しくする、これは簡単だと 思うのですが、現在の医療法人が日本の国民医療の中でどういう役割をしているかを考 えれば、決してその他大勢ではないと思います。中核的な仕事をしている。これをきち んと永続できるように、安定して経営できるような形で、なおかつ公益性、非営利性を 高めるためには、経営の安定ということが非常に大事なのです。  これは単に収益を上げるという話ではなくて、税制の面できちんと裏付けをする。こ れからいろいろ議論をされると思うのですが、医療法人制度をどうするかというときに は、常にそれが成り立っていくような税制を念頭に置きながら議論をしないと、空論に なってしまう恐れがあります。私どもは医療法人の非営利性、公益性を高めることには 大賛成です。営利の参入は絶対に反対である。その場合に税制の裏付けを常にセットで 考えていただきたいと思います。 ○三上委員  いまのお話と大体同じなのですが、非営利に関する考え方は医療法上では、持ち分に ついては定められていなくて、医療は非営利であって、営利のものは許可しないという ことが1つと、配当をしないということだけが定められています。ここに医療について も持ち分があれば営利であり、非営利でないという前提で議論をしていくと、いまある ほとんどの医療法人が営利であると決めつけてしまうことになりますから、医療法に違 反するということになって、非常にややこしい。営利であるということが、持ち分があ って配当ができるということであったとしても、配当ができない持ち分のあるものが営 利であるという決めつけは、ここでは避けるべきであって、やはり中間法人である。こ れは先ほど言われた税制面でも営利法人でもない、完全な非営利でもないという部分 で、ある部分減税というか、軽減された税率が適用されるというほうが、わかりやすい のではないかと思います。  実際の医療非営利の原則は、医療で上がった利潤が医療の再生産に使われるというこ とであり、なるべく少ない経費で、国民に十分な医療を提供するための非営利原則だと いうことですから、最終的には法人が解散をして剰余金を分配することを想定してつく ったものではない。その場合には当然、解散時に税なり何なりで補捉をすればいいとい うことであって、医業が継続している限りは非営利といってもいいのではないかと思っ ているのです。 ○田中座長  ただいまのご意見も今後の議論に関係しますので、最後の議題である「医療法人制度 改革の基本的な方向性」について説明を伺って、さらに議論を続けたいと存じます。こ れは先ほど説明がありました非営利性の確保についての現状とか、医療法人制度をめぐ る最近の状況、それから、これからの医業経営のあり方検討会最終報告書などに沿っ て、事務局において論点を整理していただいたものです。これを基に最後の時間、討議 をしたいと存じますので、説明をお願いします。 ○山下指導課長補佐  「医療法人制度改革の基本的な方向性について(主な論点の整理)」につきまして事 務局でまとめたものについて説明いたします。そもそもこの論点整理については、勝手 に我々が適当にまとめたというよりは、3つ背景があります。1つは医療法人が営利法 人ではないかという指摘を受けている点。2つ目は公益法人改革で、いままでは設立し にくい公益法人が、設立しやすい新たな非営利法人制度を創設しようという動きがある 点。これがいちばん重要なのですが、3番目に平成15年3月にまとめられた「これから の医業経営のあり方に関する検討会」最終報告書、これを見て、我々のほうでまずは医 療法人制度改革がどうあるべきかを論点として提示したものです。  最初の頁の医療法人というのは、主として医療を提供する方々である。その時に医療 とは何ぞやということで、原点に戻り社会保障制度の中で、医療法人がどういう役割を 担っているのかについてのことを1頁目に書いています。  3つ目の○の所で、社会保障は、個人の自立、自助努力を基礎として、国民連帯の中 心として位置づけられている。個人の責任や自助努力では対応し難いリスクに対して、 個人の自立や家庭の機能を支援し、健やかで安心できる生活を保障するという高い使命 を果たすものである。  4つ目、一方で社会保障のサービスを提供する医療法人を初めとした多くの主体は、 自ら雇用の市場を創出しているというだけではなくて、消費活動も支えているので、経 済が悪化した場合においても、医療は経済に大きく左右されるものではないので、それ を安定化させる効果もあるのではないか。つまり、社会保障を提供しているこういった 主体は、我が国の経済にも多大に寄与しているのではないか。  5つ目、将来にわたり、望ましい社会保障制度を維持し得る活力ある経済の実現が求 められるので、そういう面で社会保障というのは、どういう提供主体であるべきかと考 えると、民間活力を基に活性化に寄与できるようにする必要があるのではないか。こう いったことを考えると、今後の地域医療提供体制の有力な担い手としての、民間非営利 の医療法人については、引き続き非営利として社会保障制度の一翼を担っていただき、 地域で質の高い効率的な医療を提供することが求められる、これが将来像ではないか。  6つ目、このためにも、制度創設50年以上経過した医療法人については、(1)として、 非営利性・公益性の徹底による国民の信頼を確立すること、(2)として、効率的で透明 な医業経営の実現による医療の安定的な提供を柱に、改革を推進する必要があるのでは ないかということをまとめています。  これらを踏まえると5つの論点があるのではないかと我々は考えました。その1番目 が非営利性、2番目に公益性、3番目に効率性、4番目に透明性そして5番目に安定 性。この5つの観点からそれぞれ論点をまとめたのが2頁以降にあります。  まずは、I.非営利性を徹底することについて最初の○ですが、簡単に言いますと、 現在ある特定医療法人と特別医療法人制度に関して、抜本的な改革を通じて、より移行 しやすい新たな持ち分のない医療法人制度を創設してはどうか。これを我々、仮に「認 定医療法人」と付けていますが、そういうものを創設することでどうか。  2番目の○、医療法人剰余金の使途については、医療法に明確に規定することによっ て、医療法人の非営利性をより鮮明にし、剰余金はすべて医療に再投資することによっ て、地域に還元することとし、特定の個人や団体に帰属させるものではないということ を明らかにしてはどうか。  3番目、医療法人の非営利性をより鮮明にするため、株式会社など営利法人や個人か ら資金の支援を受けている場合、医療法人はそういった支援を受けた者の名称等を開示 することとしてはどうか。  4番目、医療法人の解散の場合の残余財産の帰属先については、他の医療法人、国ま たは地方公共団体であることを原則としてはどうか。特に認定医療法人の場合について は、他の認定医療法人、国または地方公共団体でなければならないとしてはどうか。  5番目、認定医療法人の経営を実質的に担う役員の報酬については、報酬の支給基準 について開示することとしてはどうか。  次に、II番目の論点である公益性を確立することに移ります。1番目の○、住民にと って望ましい医療については、都道府県が作成している医療計画に位置づけ、その医療 を認定医療法人が担うことで、認定医療法人の公益性、またそれをやっている医療の公 益性を確立させることとしてはどうか。  2番目、医療計画に位置づけられる医療については、民間である認定医療法人の積極 的な役割を期待してはどうか。効率性が向上して透明性が確保された民間非営利組織で ある認定医療法人が担う医療については、認定医療法人だけではなくて、いまでは公的 医療機関が担うということになっていますが、そういった公的医療機関が担う公益性の 高い医療と、望ましいといわれる認定医療法人の医療と違いがないのであれば、認定医 療法人が公的医療機関の経営を積極的に担うことができるようにしてはどうか。  3番目、認定医療法人が行う公益性の高い医療については、事業規模のうち、一定の 範囲以上を占めることとしてはどうか。  次は、III番目の効率性の向上を図ることの論点です。最初の○、医療法人の経営管 理機能の強化を図るべきではないか。  2番目、医療法人の理事会の役割を強化すべきではないか。また、その理事会を支え る事務部門の役割を強化すべきではないか。  3番目、医療法人の経営を実質的に担う役員について、それぞれの役割を明確にして はどうか。  4番目、医療法人の利益が害されることを防ぐためにも、社団医療法人の社員による 役員に対する代表訴訟制度を公益法人の改革を例にしながら検証してはどうか。  5番目、理事については、例えば同一の親族が占める割合を理事数の3分の1以下と するといったことを検討をしてはどうか。  6番目、住民が望む公益性の高い医療を担う認定医療法人に関しては、より効率的な 経営管理体制のあり方として、理事長要件の更なる緩和を検討してはどうか。  7番目、認定医療法人については、医業経営に貢献すると考えられる外部の専門家の 知識や経験を経営に反映させる方策として、評議員会の設置をしてはどうか。  4頁、IV番目の「透明性を確保する」という所の論点です。1つ目の○、医療法人に ついては、医療法人会計基準を作成し、医療法人の提供する医療サービスの基盤である 財務の透明性を確保することとしてはどうか。  2番目、医療法人の財務については、医療法人のグループ全体の状況を表わすものと してはどうか。  3番目、住民に対して医業経営の情報の公開を推進することによって、医療法人の住 民に対する信頼を高めることとしてはどうか。  4番目、医療法人の財務状況に関する情報。最近の格付け情報なのですが、そういっ たものを広告できるようにしてはどうか。  5番目、認定医療法人に関しては、公益性の高い住民に支えてもらうためにも、法人 の提供する医療サービスに係る事業計画や、その結果である事業報告を住民に公開する こととしてはどうか。  6番目は再掲なのですが、そういった認定医療法人については、外部の専門家の知識 や経験を経営に反映させる方策として、評議員会を設置してはどうか。  7番目、評議員会を構成する評議員については、同一の親族が評議員会を実質的に支 配することのないようにしてはどうか。  最後に認定医療法人については、住民に対し透明性のある経営を行っていることか ら、現在、行政において自己資本比率20%としている規制を行う必要性について検討を してはどうか。  V.の「安定した医業経営を実現すること」です。  1つ目の○、認定医療法人については、証券取引法に基づく有価証券としての位置づ けである公募債が発行できるものとしてはどうか。  2番目、こういった債券を発行することができるような認定医療法人については、公 認会計士等の財務監査を行うこととしてはどうか。  3番目、認定医療法人については、税制上の優遇措置を検討してはどうか。  5頁の1つ目の○、認定医療法人については、住民参加の機会を高めるということか ら、住民や地域企業から寄附を受けやすいような税制上の措置を検討してはどうか。  2番目、認定医療法人が行う事業については、利益を医療機関の事業の充実に当てる ことを目的として、収益事業ができるようにして、例えば特別養護老人ホームの設置と か介護福祉事業や、そのほかの多様な事業展開ができることにして、住民サービスの向 上につなげてはどうか。  3番目、認定医療法人については、他の医療法人に対して運営面や資金面で支援する ことができるようにして、地域で医療機能に応じた幅広い連携が推進されるようにし て、認定医療法人を中心とした効率的な医療提供体制の実現を図ってはどうか。  最後に認定医療法人が保有するキャッシュフロー、いわゆる現金なのですが、こうい った預入れ先の規制を実は我々はしていて、国公債とか確実に換金できる、リスクの少 ない有価証券であることという規制をしていますが、そういった規制について緩和する ことにしてはどうかということを論点として挙げています。説明は以上です。 ○田中座長  医療法人制度の改革の方向、その中でも認定医療法人というものを作ってはどうか。 先ほどの局長の挨拶にございましたが、医療法の改正につながる大変重要な問題の提起 でした。今日1回ですむわけではありませんが、ただいまの発表を基に30分弱をメドに 皆様方のご自由な意見を伺いたいと思います。 ○山崎委員  本日の討論を聞いていると、医療法人ということで、一緒くたに討論をしちゃってい るのですよ。本来は医療法人は特別医療法人、特定医療法人、一般の医療法人で持ち分 のない医療法人財団があって、持ち分のある医療法人、社団があるわけです。4つを全 部一緒くたに討論しているので、非常に話がこんがらがっている。  例えば特定とか特別については、理事会もあるし評議員会も確か設置が義務づけられ ていますね。税法上の措置も違うし、医療法で規定している特別医療法人もあるし、租 税特別措置法で作っている特定医療法人があるわけです。その辺をきちんと一覧表で作 って、こういう法人はこうなのだというのをきちんと整理したもので、ここで討論をし てくれないと、これでは全部が一緒になっているという気がするのですが、どうでしょ うか。 ○川原委員  いまの山崎委員のご意見はもっともなお話に私は感ずるのですが、私の先ほどの発 言、他の委員の方のご発言を聞いていますと、いままで我々が発言させていただいたの は、まず医療法人制度の本質論です。医療法人制度がどうあるべきかというのをまず先 に、本質的に決めて、それから次のステップとして山崎委員が言われたように、特定医 療法人、特別医療法人、それから出資持ち分の有り無しとか、あるいは小規模である医 療法人など類型化ごとの各論論議に入っていくべきであって、最初からそれぞれの類型 化別の議論を進めていくことになると、いつまでたっても制度に係わる本質が明確なま でに出ないままで終わってしまうのかなということが、いまのご発言に対しての私の感 想です。 ○西澤委員  全く同じことなのですが、論点整理の中で書いているのは、新たな提言をしている認 定医療法人と、ただ医療法人と書いているのが全部混じり合っていて、これがわかりづ らいので、この辺りを整理して、医療法人と認定医療法人と分けて出していただきたい と思います。 ○田中座長  非営利性、公益性、効率性と要件ごとにまとめられているので、これは更に。 ○西澤委員  そうですね、ある所は認定医療法人の条件を書いていますが、ある部分は医療法人の 改定で、サッと読むと、全部が認定医療法人の条件のように見えてしまうので、整理し たほうが。 ○田中座長  その辺をきちんと整理してほしい。また、このいちばん最初の所に、医療法人制度創 設50年が経っているとありますが、特定医療法人はそんなに経っていないし、特別医療 法人でもまだ作って数年という制度であって、その辺の整理が全然ついていないこと を、きちんと整理してほしい。論点として考えるのならば、持ち分の有る医療法人と無 い医療法人という、大きな類型で考えて討論をしていかないといけない。この話では特 定医療法人と特別医療法人だけを、認定医療法人という類型でまとめていくのか。ある いは同じ持ち分のない医療法人財団も含めての認定医療法人制度と考えるのかも、はっ きりしていないと思うのですがいかがですか。 ○谷口指導課長  ご指摘もっともなところがあると認識をしております。我々もいろいろなものを欲張 って書いたところが実はございますので、ご指摘のとおり整理できるものは次回整理し まして、もう一度プレゼンテーションをさせていただければと考えています。 ○武田委員  医療法人のカテゴリーについての話ですが、医療法人の内容を見せていただきます と、認定医療法人というのは、どちらかというと社会福祉法人に近いというのか、公益 法人という形になりますので、そういうものとの比較もやりながらやっていただくほう がいいのではないかと思います。 ○田中座長  それは事務局で次回、社会福祉法人の比較をお願いいたします。 ○豊田委員  いま提言されています認定医療法人というのは、特別医療法人と現在ある特定医療法 人を一緒にする話だと思うのです。先ほど意見が出ましたが、特定というのは昭和39 年、特別というのは平成10年に制度化されたわけですが、370と30いくつで、合わせて も両方で400です。制度はあるのですが、実際上は制度としてはあまり機能していない と言えるので、今回これを1つにして、認定医療法人というものを作ろうと、その内容 を説明されましたが、私はそれには異議はないです。そういうものを積極的な、公益性 的な活動をする医療法人として1つ要件をもっている。  現在、医療法人制度ができて50年経っているいろいろな医療法人があります。いちば んの問題は、営利、非営利の問題で、先ほどから問題になっているターゲットは、おそ らく、持ち分のある社団、医療法人の97%以上を占める社団が非営利とかいろいろなこ とでターゲットになっていると思うのですが、その部分について改善していこうという のが、このところの医療法人改革です。少しでも公益性を高め、非営利性を高める方向 で我々はしてきたわけです。そういう中で今回の認定医療法人というのは、いちばん公 益性の高いものとして位置づける。  一方で、50年の歴史があって、いろいろな経済活動をしている医療法人を一気にそれ に持っていけるかと、そういう制度ができるかというと、それは現実的ではないです。 ですから、これを最終的には、理想としてみんなそういう法人になってほしいというこ とであったとしても、いまはそのプロセスを合理的に考えないと、また現在の特別・特 定みたいなことになるのです。  現在ある持ち分のある社団を少しでもそちらのほうに移行するために、まず、医療法 人制度の中でいろいろな分け方があるでしょうが、1つはいまここで提言されている公 益性、非営利性の形で分ければ認定医療法人になって、そして出資額限度法人があっ て、持ち分のある医療法人のグループという分け方もできる。徐々に公益性を高める観 点からすれば、まずそういう分け方をして、そして少しでも認定医療法人のほうに行け るように配慮。それは先ほど私が言った税制の配慮なのです。そういう形で議論をして いかないと、ただ、絵を描くだけの話になると思います。いろいろな分け方があります が、医療法人というものを公益性、非営利性の形である程度グループ分けをして移行し ていく形をどう作るかということを、まず基本に考えていただきたいと思います。 ○田中座長  川原委員が言われたように、まず医療法人制度全体を種別に分ける前に、公益性と非 営利を高めましょう、組み分けるとそう書いてあるのです。順番としてその上で更にと いうことだと思うのです。医療法人制度がいまのままで新たに認定医療法人制度を作る との提案ではなくて、医療法人制度そのものを非営利性、公益性等々を高め、更に作ろ うと読んだほうがよさそうです。 ○川原委員  私はいま座長が言われたとおりの考えで発言いたしました。現実にこれをまず固めま しょうと。次に山崎委員の言われたのも、まさにそのとおりなのです。皆様方が言われ ているのもそのとおりなのです。  具体的な事例をいままでの発言の中から取り上げてお話すれば、特定・特別医療法人 を認定医療法人に統合する。その後、統合に向けてのインセンティブをどうやって与え ていくのかという各論のほうに入っていくと思うのです。しかしながら、その大前提は すべて医療法人というのは非営利であるという大原則の下で今度、法人類型ごとの個別 議論に入っていきます。すると特定・特別医療法人でない医療法人、これをどうするの かというのと、次のステップとして、そういう医療法人の公益性を高め、非営利性を高 めていく方法として具体的に何があるのだろうかという形で、それぞれが、類型別にク リアにされていけばいいのではないかということで発言しています。 ○品川委員  豊田委員からご発言があるかと思って考えていたのですが、先ほど豊田委員は、いき なり持ち分のない認定医療法人、いまの特定・特別医療法人に移行するのは非常に困難 であると、出資額限度法人の存在を強調されていたわけですが、まさにこの中間的な存 在としては、出資額限度法人というのは、それはそれで機能をするはずなのです。た だ、6月に決めたあのやり方では、はっきり言っていかにも中途半端で役に立たない。 私もいろいろな医療法人の関係者から聞いて、折角やりかけて、こんないい加減なので どうしてくれるのだというのが率直な意見なのです。  そうするとこの中間的な移行過程の中に、出資額限度法人のような持ち分を保証しな がら、公益性を高める法人制度をこの論点の中でなぜ設けなかったのか。医師会は医療 法の改正の中で出資額限度法人をオーソライズしてくれということを、もう何年も要求 をしてきているのですが、それが論点にも当たらないというのは、要求をする側として は非常に寂しいかぎりですね。そこはもっと豊田委員からはっきりご発言があるのかと 思って、私が言う必要もないのかと思っていたのですが、いかがですか。 ○豊田委員  医療法人が行っている医療については、私は何ら特別問題がないと思うのです。国民 医療に対して、きちんとした医療を行っていると。ですから、現場の先生方、医療の現 場でやっている仕事については、私は官公立であろうと医療法人であろうと、そう問題 はない。ただ、問題は先ほどから言っている経営の問題、姿勢の問題です。非営利とか いう問題で議論されているわけですが、その制度として組織としてどうあるべきかと、 非営利、公益の問題を問われているわけです。  1つは理想論ばかりを言ってもしようがないので、50年の歴史があるということを抜 きにして絵を描いても現実的ではないですね。ですから出資額限度法人というのはたく さんある持ち分で、いろいろ問題を抱えている持ち分のある社団を、少しでも公益性の 高い方向に持っていって、最終的には持ち分のない社団に揃えば、これは理想です。そ ういった長期的に考えれば、いまここで一足飛びというわけにはいかないのです。そう いう形で出資額限度法人を医療法人業界では、まず持ってきたわけですが、折角のいま のお話ですので、言わせていただきます。  私はこの後発言しようと思っていたのですが、そういう形で出資額限度法人に対して は、これから医療法人改革の中で重要な位置を占めると思っています。ところがこの前 の整理された、私は整理されたと思っているのです。現在の税制下において、出資額限 度法人というものを選択した場合にはこうなりますよと、いままで不透明であった税制 の問題を厚生労働省と国税との間できちんと明らかにした。その点は非常に良かったと 思うのです。良かったという意味は、そういうことが全くわからないで出資額限度を選 択している人たちが既におりましたし、それを考えている人はたくさんいるのです。あ る意味では出来ませんよという意味で、ある意味では出来ますよという形ではっきりし たので、それは良かった。  しかしながらいま医療法人制度改革をするときに、この前、整理された出資額限度法 人でいいかといえば、全然あれは駄目です。あれは厚生労働省が駄目だというのではな くて、要するに現行の税制下でああいう制度を作っても、とてもそれが実際の形で一般 的に普及するとは考えられないのです。あれは何が間違っているかというと、私どもは 法制化を期待しました。法制化されていない、そもそも定款を変更しても課税されない というときの説明の中に、「また戻るかもしれないのだから」と、こういうのがありま すね。これでは制度としてはあり得ないです。そんな曖昧な形で捉えられているわけで すから、国税庁としても現在の持分の定めのある医療法人は、やはり同族会社だろうと いうことで、現行の税制下では、ああしかなりませんという形になっている。  私が先ほど言ったのは、仮に認定医療法人です。そして出資額限度法人があって、持 ち分のある社団があって、こちらから流れがそういう形になって、だんだん公益性が全 体が高まっていく形を想定したときに、いまの出資額限度法人でいいとは思っていませ ん。私どもはあの後、6月に整理されたときにも発表をしましたが、これはきちんとし た法制化された出資額限度法人を作って、出資額限度法人というのはどういう医療を行 うのかを、きちんと内容まで詰めた形で法制化しなければ、私は出資額限度法人とは言 わない。  6月のは単に、現在の税制下で出資額限度法人という、ああいう定款を作ったとき に、あの4つの条件がクリアすれば、税制で配慮されますよ。その税制で配慮されると いう問題の中には、実際にその税務当局とその現場で判断されることが非常に多いので す。ですから医療法人の経営の安定と永続性を考えるのなら、これほど不安定な話はな いわけです。私は出資額限度法人を私がいま言った類型の出資額限度法人とは考えてい ません。認定医療法人を作るのなら、同時に法制化した出資額限度法人をきちんと作っ ていただかないと、また特別医療法人、特定医療法人の二の舞だと思います。 ○品川委員  いまのことですが、去年から出資額限度法人について、いろいろ議論をされていて、 前の課長のお話では、当面、医療法関係の法改正は非常に困難であると。ほかの多事考 慮があってのことで、何とか医療法を直さないで税務当局と折り合いをつける方向で、 取り合えずは修正したいのだというお話で、それで6月のような形にならざるを得なか ったと理解しているのですが、もしこれが平成18年にかけて、医療法を本格的に改正す るということであれば、いま豊田委員の言われたようなことは、是非検討材料に上げて いただきたいですね。 ○三上委員  出資額限度法人については非常にファジーなところがあって、いまでも問い合わせが くる。同族比率を落とすために増資をしなければならないときの、見なし贈与税の扱い がどうなるかとか、さまざまなケースがあって非常にややこしいことは事実です。た だ、ここでは医療法人と認定医療法人の両方が書いてあるようですが、事務局の気持は すべて認定医療法人のつもりで書いてあると思うのです。いまの特定・特別がなかなか 進まないというのは、税制上の優遇があまりないということがあって、相続税について はまあいいのですが、経営上のメリットがあまりないということがあって進まない。そ れを認定医療法人を作ることによって、非課税というか、免税という状態にまでもって いければ、かなりいくのではないかということが1つです。そのときの医療法に書く操 作の中で、出資額限度法人を医療法の中に位置づけて、剰余金、持ち分についての取り 扱いについてもきっちり書くことによって、見なし贈与税のことなどが問題にならなく なる状況は、これから考えることができるのではないかとは思います。  ここに書いてある認定医療法人の項目の中では、住民参加のことが非常にしつこく書 いてあるのですが、これは別に地方公共団体がやるものではないので、住民が、住民が と書くのは全くナンセンスではないか。住民が評議員に入ったり理事に入ったりするよ うな医療法人というのは想定もできないのですが、どういう意味合いでこういうことを 書かれたのかはわかりません。 ○石井委員  あり方検討会の医業経営のほうから通算をして、もう3年近くになるかと思うのです が、当初は通知議論というのでしょうか、通達改正議論をずっとしていたような気がす るのですが、今日この論点整理を拝見すると、医療法そのものの改正議論のようであ る。中身を初めて拝見すると、まさに医療法人制度の社会における位置づけを全部見直 しますということが底流にあるのかなと。そうなってきますと50年に一度の改革という ことで、関連当事者にとっては極めて大きなさまざまな影響があると思います。  その当事者の最も中心におられるのは医療を直接行っている医療法人の社員や理事に なっている方たちです。医療法人が既に3万数千ありますが、その方たちにどのような 影響があるのかに関しては、本当にきちんと検討をしなければいけないのだろうなと思 います。そのためには十分な議論は、スケジュールを拝見するとあまり時間はないよう なのですが、少なくとも時間はきちんとかけて、非営利の議論等はしていただければな と思います。  実はこの底流には医療の非営利組織そのものだけではなくて、全体の非営利組織に対 するところの、日本における社会的議論がどうしても影響を及ぼします。三上先生が住 民参加は云々という議論がありましたが、先ほどのように国全体としての非営利組織に ついては、実は住民参加議論があるのも事実です。それについてもきちんとした認識を していく必要がある。必要だと言っているのではなくて、議論をする必要があると言っ ているのです。すべての背景を見直すと、結局は情報開示議論につながっていくのだろ うと。情報開示に対しての意識を医療法人がきちんと持ち得るかどうかが、実は非常に 大きな問題なのかと思います。  この5頁に及ぶ論点整理をざっと拝見しただけでも、私は個人的にはかなり衝撃を受 けています。これから法改正が係わりをもつようなので、十分な検討と議論を、特に影 響のある領域の方たちの議論をしていただければと思っています。 ○山崎委員  先ほどもお話のあった住民参加、これは非常に強調されているのですが、住民参加と いうことで考えるならば、国立病院の運営、自治体立病院の運営のほうが、病院経営に ついても住民参加は最優先だと思うのです。地方自治体病院の経営実態が先週か先々週 に発表になりましたが、あれを見ると、もうほとんど破綻状態の病院経営をしていま す。かつての国鉄の赤字ローカル線の発表を聞いているような話で、100円の収益につ いて人件費を150円も使っているような自治体立病院というのはたくさんあるわけです。 医療法人制度の論点でそういう要素を検討するのはいいのですが、そういうものはここ に入る論点の前に、国立病院とか自治体立病院に入る話だというのが1点です。  もう1点は、そういうふうな自治体立病院についても、この認定医療法人制度を作っ たときに、こちらのほうに集約してくるという考え方はあるかどうかをお聞きしたいと 思います。 ○谷口指導課長  どこまで満足いただける回答になるかはわかりませんが、覚えている最後からお答え いたします。自治体立病院等について、認定医療法人のほうに移行というか、そういう ご趣旨ですね。厚生労働省の立場からいいますと、起こり得るだろうと思っています し、それは当然認定医療法人が受皿になっていただければいいのではないかというよう に、逆に思っています。それは総務省がどう考えるかということで別問題としても、受 皿としては認定医療法人になるという類型ができるのであれば、それは是非そこで公立 病院などを受けていただくというのは、非常に良いことではなかろうかと私は考えてい ます。とりあえずそれでお答えさせていただきます。  あといくつかのご質問がありましたが、住民参加を強調し過ぎているというご指摘が ありました。これはいくつか要素がありまして、1つには私どもの潜在的な意識の中 に、アメリカの医療においてでさえも、株式会社というよりも民間非営利の医療が主と して行われている。そういった中で、アメリカの住民が求めている医療を行う際に、非 営利の医療機関において、住民も参加しているという実態があると私ども聞いているの で、そういうのも1つの望ましい姿かなという潜在意識があったのは事実です。  もう1つは、先ほど山下補佐から説明いたしましたが、政府全体で公益法人改革が進 んでいます。そういった中で1つ平仄を合わせて、我々もその制度に向けて医療法人制 度改革を行わなくてはいけないということを考えているので、今後の公益法人改革にお いても、おそらくそういった部分はまず議論に当然なるでしょうし、そういうことを考 えると医療法人改革においても、住民参加は無視できないだろうということも考えてい るのが1つです。大体、住民参加についてはそういうことです。 ○山下指導課長補佐  出資額限度額法人について品川委員からの、なぜ論点に書かなかったのかということ についてです。私どもの考えですが、やらないということではなくて、書くとどうなる かなというところがあったのを説明したいのです。今回の改革はまさしく1階建ての非 営利の医療法人。その中から公益性の高いものについて2階建て。いま特定・特別とい うのがいろいろあるので、2階なのか中2階なのかがあるので、そこをきちんと整理し ましょう。そうすれば公益法人のやろうとしていることと、ある程度イコールになるの ではないかということがあります。つまりその2階建てのところを少し整理しましょう ということです。  ところが、出資額限度法人をどうするかという議論をするときに、1階建てのところ を議論しなければいけない。そうすると逃げ場がなくなるといったら言い方が悪いので すが、すべての医療法人について、1階に全部医療法人がまずはあるわけです。そこの 土台について、全部出資額限度法人、医療法というのは規制法ですから、医療法の改正 を視野に入れると、すべていま一人医療法人から財団、社団とか、それぞれについて、 すべて出資額限度法人ということを財団型もあり社団型もあり、また理事が1人の医療 法人もありの中で、どうするかということについて、私どものほうで迷いがあったこと は確かです。 ○品川委員  1階建て、2階建てというお話はわかりやすいのですが、私自身、国税庁にいるとき は医師の税務調査も結構やりましたし、医療の問題についてはいろいろな実態について 承知をしています。この3年間は日本医師会でいろいろと医師の税制問題を検討させて いただいて、両面から、いろいろな意見があることを承知した上で、その中で俗に言う 医は仁術か算術かという、いわばその中間的な存在というのは、現実問題として認識を せざるを得ないのです。  その中間的な存在は1階、2階というふるいの分け方からすれば、どうしても中2階 の議論をしないと、現実的な解決ができないのではないか。2階の議論だけやると先ほ ど豊田委員が言われたように、結局は300か400か、極めて数からいったら少数的な問題 しか発展しないではないか。中2階議論を是非医療法の中に持ち込まないと、2階部分 もうまくいかないのではないかという感じはするのです。それは私の両面の体験から、 そういうふうに感じざるを得ないということだけを申し上げます。 ○田中座長  1階と2階があれば、中2階の議論も必要だということですね。 ○三上委員  住民参加の件ですが、非常に気になったのは、今日ここに出る前にもう新聞発表され ています。新聞にも認定医療法人を厚生労働省が考えていて、住民参加をした評議員会 を作るというのが書かれていたのですが、いまのお話でも、アメリカの非営利について は、確かに住民に支えられている。アメリカの非営利は資金調達の大きな部分がフィラ ンスロピーというか、寄附で賄われていることから住民参加があるのですが、日本の場 合にはそういった制度がいまのところありません。当然、寄附をする人たちが出れば、 そういう人たちが経営なりに参加してくるというのは、当然あるだろうと思いますが、 それを要件にするということ自体が非常に違和感を感じます。  現在ある公益法人の済生会とか日赤であるとか、あるいは社会保険関係の厚生年金で あるとかいう公のお金でやっているような所でも、住民税を払っている住民が参加して いるという事例は全くありません。こういう所に書き込むこと自体が問題かなというふ うに私は感じています。 ○品川委員  それをお伺いしたいのですが、住民参加を取り上げる問題は、いわば株式会社参入論 をブロックする1つの材料なのですか。 ○谷口指導課長  そのお答えはストレートにお返しするのは難しいのですが、大体意のあるところをお 読み取りをいただければというように、その点についてはお答えしたいと思います。三 上先生の言われたお話の延長線で申し訳ないのですが、住民参加という言葉の捉え方と いうか、実際に具体化するやり方はいろいろあると思うのです。公益法人改革の話も申 し上げましたが、情報開示というのは、かなりこちらではっきり言っています。そのレ ベルでも住民参加は十分あり得るだろうと、私はある部分は思います。医療法人もいろ いろな類型がもちろんあるわけですが、それがすべて一律に同じレベルの住民参加でい いのかどうかという議論も当然あるでしょうから、そこのところはもっとフレキシブル な議論の中でご検討をいただいてもいいのではなかろうかと、私自身は思っています。  1点言い忘れましたが、私どもの住民参加ということの1つの狙いの裏には、今回は 医療法人改革なので、医療計画の話はあまり出てきませんが、今後地域において、住民 が望む医療を、医療計画の中にきちんと知事に書き込んでいただいて、それを実践する という医療計画の仕組も、医療法改正の中でやりたいと思っているわけです。そういっ た医療を担うのが医療法人、特に認定医療法人だとなれば、住民がやってほしいものを 担う医療法人の運営の中にも当然、住民の参加があってもいいのではないかという立場 もあったものですから、そういうものを込めて住民参加という言葉を使ったということ だけ、ご理解いただきたいと思います。 ○田中座長  活発なご議論をありがとうございました。今日は結論を出すための会ではありません ので、まず最初の論点整理について、皆様から貴重なご意見を伺いました。医療法人制 度改革の中身だけではなくて、石井委員が言われたように、株式会社のことがあり、一 方で公益法人改革という社会全体の動きの中というのも、いつも忘れないようにしなが ら議論を何回かしてまいりたいと存じます。次回は本日ご議論いただいた基本的な方向 性に関するご意見を踏まえて更に議論を深める会合にしたいと存じます。次回の日程と 今後進め方について事務局から説明をお願いします。 ○谷口指導課長  次回以降の日程につきましては、改めて各委員からご意見を伺いながら日程調整をさ せていただいた上で、今後の進め方という1枚ものの資料にありますように、医療法人 制度改革の議論の根底となります医療法人に求められる役割、今日も大変ご議論をいた だきました非営利性の問題について、ご議論を深めていただきたいと考えています。医 療法改正を睨みますと、非常にタイトなスケジュールなのですが、2か月に一遍という 感じで進めていただき、8月までにはなんとかご議論をいただきたいと思っておりま す。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○田中座長  本日はこれにて終了いたします。お忙しいところご出席いただきましてありがとうご ざいました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 大門 龍生(内線2560) 医療法人係長  伊藤 健一(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194