04/12/07 第1回女性の坑内労働に係る専門家会合議事録            第1回女性の坑内労働に係る専門家会合 1 日時: 平成16年12月7日(火)15:30〜17:30 2 場所: 厚生労働省 専用第13会議室 3 出席者:小畑委員、櫻井委員、鈴木委員、長井委員、中窪委員、名古屋委員 ○事務局  ただいまから「女性の坑内労働に係る専門家会合」を始めさせていただきます。本日 は、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。第1回目 の会合ですので、座長選出までの間、事務局で司会を務めさせていただきます。よろし くお願いいたします。それでは、開催に当たり、雇用均等・児童家庭局長からご挨拶を 申し上げます。 ○雇用均等・児童家庭局長  本日は、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。女 性の坑内労働につきましては、昭和22年に制定されました労働基準法によりまして、禁 止という規定が設けられており、これまでに何度か法令改正によって、一部規制緩和が なされてきたところですが、現在でも若干の例外を除いて、原則として女性の坑内労働 は禁止となっております。  一方、本年9月から男女雇用機会均等の観点から、労働政策審議会の雇用均等分科会 において、いろいろ幅広い検討をしていただいておりますが、こういった中でも、女性 の坑内労働に関しては、東京都あるいは日本経団連から内閣府が実施した全国規模の規 制改革要望に、女性技術者が監督業務に従事できるようにすること、などを内容とする 規制の見直しが要望されており、政府としての対応が求められているという状況です。  それから土木技術者として働く女性労働者自身からも坑内労働が禁止されているのは キャリアの形成の観点から障害になるということで規制の見直しを求める声が届けられ ているということです。  こういったことを踏まえて、厚生労働省としては、医学、工学、法学などの専門家の 方々にお集まりいただき、現在の坑内労働の作業の形態、坑内労働が女性の健康などに 与える影響などを踏まえた適切な規制のあり方について、専門的見地からのご検討をお 願いいたしたいということで、こういう会合を開かせていただいた次第です。  ご意見をとりまとめていただく時期としては、来年の夏ごろまでにお願いできればと 考えております。大変お忙しいと思いますが、何卒よろしくお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、本専門家会合にご参集の皆様方のご紹介をいたします。資料2です。この 専門家会合は、小畑先生、櫻井先生、鈴木先生、長井先生、中窪先生、名古屋先生の6 名の方に参集をお願いしております。  続きまして、本会合の開催要綱について、資料1でご説明いたします。 ○事務局  それでは、開催要綱についてご説明いたします。1の趣旨ですが、労働基準法第64条 の2の女性の坑内労働の禁止については、昭和59年の婦人少年問題審議会の建議におい て「一時的に入坑する者等我が国が既に批准しているILO第45号条約において入坑の 認められている者については、禁止を解除すること」とされ、昭和60年、さらに平成6 年に、法令改正により、一定の規制緩和がなされたことを述べております。  今般、男女雇用機会均等のさらなる推進について、労働政策審議会雇用均等分科会に おいて、幅広い検討が開始された中で、全国規模の規制改革要望等において、規制の見 直しが要望されていることなどを踏まえ、女性の坑内労働の規制のあり方について、専 門的見地から検討を行うということとしております。  ここで専門的見地としておりますが、この会合で専門的な見地からの結論を出してい ただき、その結果を受けて雇用均等分科会で具体的な政策の方向性について、また議論 していただくことになるかと思います。  2の検討事項ですが、(1)坑内労働の作業態様、(2)坑内労働が女性の健康等に 与える影響、(3)その他としております。  3は運営についてですが、専門家会合は雇用均等・児童家庭局長が、有識者の参集を 求めて開催すること。必要に応じて関係者の出席を求めることができること。座長は互 選により選出すること。庶務は雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課で行うことを書い ています。 ○事務局  それでは、この開催要綱に即して、今後会議を進めたいと思っております。まず開催 要綱に基づき、座長の選出をお願いしたいと思います。いろいろな決め方があると思い ますが、事務局からの提案として、櫻井先生にお願いしたいと思っておりますが、いか がでしょうか。                  (異議なし) ○事務局  それでは、櫻井先生に座長をお願いすることにいたしまして、以後の議事進行をお願 いいたします。 ○座長  一言ご挨拶を申し上げさせていただきます。できるだけ多くの労働者の方々が安全で 健康な環境の下で能力を発揮し、活き活きと働くことが望ましい姿ですし、女性労働者 が不必要な保護によって能力を活かして働く機会を失っているとすれば、当然修正され なければいけないと思います。検討課題はそういうことですが検討の過程でさまざまな 問題はあろうと思います。各方面のご専門の方々のご参集をいただいておりますので、 座長として至らぬ点もあろうかと思いますが、皆様のご協力を得て、科学的に妥当な結 論がまとまることを願いながら、進行役を務めさせていただきますので、どうぞよろし くお願いいたします。  それでは、議事に入ります。まず事務局から、専門家会合を進めるに当たっての公開 の取扱いについてご説明をお願いします。 ○事務局  資料3です。会議の公開の取扱いについてお諮りいたします。この種の会議は公開が 原則であり、したがって、本専門家会合においても、会議、議事要旨、資料を公開とす る取扱いで進めていただければと思っております。  ただ、これも通例、いま具体的に想定しているものではありませんが、どの会議、あ るいは審議会等においても、特段の事情がある場合には非公開とすることができる、と いうのを大体設けており、この専門家会合においても、その例に倣い、以下、挙げたよ うな4つの具体例に当てはまる場合には、会議を非公開とすることができるという形で 運営をしていただければいかがかということでご提案いたします。 ○座長  ただいまの件について、事務局の提案について何かご意見がございますか。特段ご異 議もないようですので。この会合の公開については、事務局案のとおりに取り扱うこと にいたします。  それでは、次に議題1と2について、事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局  議題の1と2について、資料4〜6に基づいてご説明いたします。まず資料4です。 この会合で検討いただく検討事項(案)で、大きく4つに分けています。1は「坑内労 働の概況と特徴」で、(1)坑内労働の概況。(2)坑内労働の特徴、特殊性です。  2は「坑内労働に係る規制の現状」で、(1)我が国における坑内労働規制の現状。 (2)諸外国における坑内労働規制の状況です。  3は「女性の肉体的、生理的特殊性と坑内労働との関係」で、(1)妊娠中・出産 後。(2)妊娠・出産機能。(3)それ以外です。  4は「坑内労働に係る規制の課題」についてご検討いただきたいと考えています。な お3で(1)〜(3)に分けていますが、これについては後ほども触れますが、労働基 準法上の現行の規定の考え方として、妊産婦の保護と妊娠・出産機能の保護、それ以外 の一般的な女性保護という類型で、規制の度合いを変えています。  また考え方の流れとして、要綱にもありましたが、昭和59年の審議会の建議におい て、女子保護規定については、女性が妊娠・出産機能を持つことにかかわる母性保護規 定を除き、見直すことが必要であるという方向が示されております。そのようなことか ら、このように段階を分けて検討していただく必要があるのではないかと考えて、項目 を整理したものです。本日検討事項(案)の1及び2の(1)に当たる資料を用意して おり、早速これらについてご議論いただければと思います。  資料5ですが、坑内労働の概況をまとめています。ずい道工道等、すなわちトンネル 工事や地下鉄などと鉱山とに分けて整理しています。  1頁を見ますと、ずい道工事等における坑内労働の概況ですが、まず図1は、平成15 年12月1日現在の手持ち請負額の比率を示しています。手持ちということで12月1日現 在施工中のものという意味で、年度全部ではないそうです。道路が41%、鉄道24%、水 路21%等となっています。  図2は、施工法の比率で、山岳工法44%、シールド工法28%、推進工法17%、開削工 法10%となっております。先生方のほうがお詳しいかと思いますので、後ほど補足して いただければと思いますが、施工方法については6頁に簡単な説明を載せており、先に そちらをおさらいいたします。  山岳工法は地山を発破、機械、その他の方法で掘削して、内側から支保し、適当な時 期に覆工するもの。支保方式としては、在来工法である矢板工法という地山加重を支保 工で受け止めるものと、現在では標準的施工法として位置づけられているNATM工法 があって、NATMというのは、吹付コンクリート、ロックボルト、鋼製支保工を組み 合わせて、地山の有する支保機能を発揮させるものです。  シールド工法については、トンネルの外径より多少大きめの径の筒を地盤内に入れ、 その内部で地山を安全に掘削する。その上でセグメントを組み立てる。常にシールド内 部で作業が行われるので、落盤や肌落ちに対する安全性が高いとされています。  推進工法は、推進ジャッキで管の後方を押して推進させるもの。開削工法は地表面か ら掘り下げていき、あとで埋め戻す方法です。  2頁に戻りますと、図3として山岳工法の掘削方式の比率があります。先ほど全体の 44%を占めるとあった山岳工法ですが、そのうち発破が約5割、機械による掘削が約3 割となっています。  図4はシールド工法の型式比率です。シールド工法は先ほどの図では、全体の28%を 占めるということですが、そのうち泥土圧によるものが6割、泥水によるものが約3割 となっております。  3頁は、各年12月1日現在の工事の現況の推移を示しています。図5は手持ち請負額 の推移、図6は工区数の推移となっています。傾向を見ますと、近年、全体の傾向とし て請負額、工区数とも減少しておりますが、その中で道路のシェアが増加しているよう です。  4頁は、災害についてまとめています。(1)は、ずい道工事における災害の種類とし ては墜落、飛来・落下、倒壊、土砂崩壊、落盤、建設機械などによる災害が挙げられま す。  (2)は災害の発生状況ですが、労働災害動向調査報告という、各業種について統計的 な調査を行っているものですが、その数字を挙げており、その中からずい道新設事業と 地下鉄建設事業を抜き出しています。  なおこれについては、安全衛生のうち、遅発性の疾病は含まれていないことになって います。「度数率」という文言と「強度率」という言葉が出てきますが、度数率という のは、100万延労働時間当たりの労働災害による死傷者数を表しています。強度率は 1,000延労働時間当たりの労働損失日数で、災害の重篤度を示しています。  表を見ますと、ずい道新設事業については、昭和30年と平成15年の死傷合計の度数率 を見ますと、143.98が0.31になっており、強度率では10.29だったのが0.01になって、 大幅に減少しています。  地下鉄建設事業についても、昭和40年と平成15年を比較すると、度数率で27.26が 1.96、強度率では5.61が1.16と大幅に減少しています。  8頁は、「鉱山における坑内労働の概況等」です。これについては経済産業省の鉱山 保安課から資料提供をしていただいたものです。最初に、稼行鉱山数と鉱山労働者数の 変遷ですが、昭和39年と平成15年を比較しますと、鉱山数は約4分の1、鉱山労働者数 は約20分の1に減少しています。なお、鉱山労働者数ですが、坑内で働く者と坑外で働 く者を合計したものです。ちなみに労働者の構成を見ますと、昭和39年においては、石 炭が約6割、金属・非金属が約3割、石灰石が約1割となっていますが、平成15年の構 成を見ますと、石炭の労働者が6%程度、金属・非金属が約3割で横並び。石灰石が約 5割という構成になっています。なお石灰石は露天掘が主流です。  9頁は、「鉱山における災害の発生状況」です。最初の表は災害件数の全数を示して おります。昭和39年と平成15年を比較しますと、99.9%減少しています。そのうち坑内 災害についても、昭和39年と平成15年を比べて99.9%以上減少しています。  下半分の表は、ずい道工事で示した統計的な調査による災害率を示しています。昭和 40年と平成15年を比較しますと、度数率、死傷合計では104.14だったものが、1.03に、 強度率では11.92だったのが0.75に大幅に減少しています。  10頁は、「鉱山における坑内労働の作業形態の変遷」を示しています。運搬機器の発 達、支保材の変遷、保安上のことから採掘方法も整理統合されていること。特に人力を 主体としたトロッコの時代から、トラックレスと呼ばれる無軌道、いわゆる車両系の機 器が著しく発達している。そのため、人員の縮小や作業能率の向上が図られているとい うことです。  その次に、鉱山における坑内労働の特殊性を挙げていますが、(1)一般産業との相違 としては、外部要因として予測することが難しい自然条件があります。(2)として、ト ンネル工事との比較ですが、鉱山の場合には、鉱石を取り出すことが目的であるため、 必ずしも安定した岩盤を選べない。また坑道は鉱石を取り出す期間維持すればよいとい った点の相違があります。  (3)は鉱山特有の災害を挙げていますが、落盤、側壁の崩壊、浮石の落下、ガス又は 炭じんの爆発、ガス突出、山はね、自然発火、出水、坑内火災等となっています。  山はねというのは、深い所を掘っている間に、岩盤の一部が突然破裂、突出する現 象。蓄えられたエネルギーが放出されるものだそうです。  先ほどトンネルのほうの類型もご覧いただきましたが、落盤などはトンネルとも共通 するかと思われます。ガス、炭じんの爆発や山はねなどは鉱山特有かと思います。  11頁は、主な坑内掘りの鉱山を紹介しています。(1)石炭鉱山としては、釧路炭鉱が あります。(2)の金属鉱山としては豊羽鉱山、菱刈鉱山があります。非金属、石灰石の 鉱山としても小規模ですが、10数カ所存在します。  資料6は「我が国における坑内労働規制の状況等」です。これは大きく4つに分けて おり、女性の坑内労働禁止規定とそれに関連する規定をまとめたものです。「1.」に ついては、この会合のテーマである女性の坑内労働の禁止の規定です。女性であること と坑内であるという場所に着目した規制になっています。  「2.」は、女性であることに着目した規制ですが、ただし、女性一般ではなく、母 性の保護のための規制となっています。「3.」「4.」「5.」は坑内という場所に かかわる規制を整理してまとめたものです。ここまでは国内規制で、「6.」は国際条 約の紹介です。  1頁は、まず女性の坑内労働禁止規定についてです。労働基準法第六十四条の二の規 定は、「使用者は、満十八歳以上の女性を坑内で労働させてはならない」としていま す、なお、18歳未満は別の条文で男女とも禁止しています。  次に但し書で例外規定を設けており、「臨時の必要のため坑内で行われる業務で、省 令で定めるものに従事する者については、この限りでない」としています。その省令で 定める業務は、女性労働基準規則に規定している医師、看護師、新聞・出版・放送の取 材、自然科学に関する研究などで、これらは例外となっています。  さらに括弧書きがあって、例外規定が適用できない範囲を定めています。(次条第一 項に規定する)とありますが、これはあとで出てくる第六十四条の三のことです。そこ に規定する妊産婦で厚生労働省令で定めるものを除くとしていますが、省令で定めるも のというのは、女性労働基準規則の第二項、下の3行を見ますと、「妊娠中の女性及び 坑内で行われる前項各号に掲げる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経 過しない女性」となっています。これらの妊産婦については、臨時であっても入坑する ことができないとなっています。これが基準法の規定ですが、坑内労働の禁止の「坑」 の範囲とはどういう範囲かを示したのが次の頁の「解釈」です。  1では、いわゆる鉱山の坑道が坑に当たるということを言っております。2を読み上 げますと、「当初から地表に貫通するためにつくられ、かつ、公道と同様程度の安全衛 生が保障されており、かつ、坑内夫以外の者の通行が可能である地下の通路は労働基準 法上の坑ではない」としています。ですから、鉱山以外について、例えば、建設中のず い道内部が坑に該当するか否かは、こうした条件に該当するかどうかによって判断して おります。  3頁の「女性の坑内労働禁止規定の変遷」を整理したものです。この表は労働基準法 の制定時からの変遷を整理したものです。それ以前の経緯に触れますと、最初に女性の 坑内労働の禁止が設けられたのは、1928年の鉱夫就業扶助規則の改正によってです。そ の後、戦中にかけて特例で女性の坑内労働も認められるようになりました。戦後になっ て昭和22年の労働基準法の制定時には、この表の左の欄のように、全面禁止規定が設け られております。  その後、下の※の3つ目の昭和59年の建議で、一時的な場合など、ILO条約で認め られている場合は禁止を解除することとされ、真ん中の欄にありますように、下線部を 追加し、例外規定を設けました。さらに右の欄で、平成6年に省令の改正によって、例 外規定の適用範囲を自然科学の研究にまで広げております。  4頁は、妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限についての規定です。労働基準法第 六十四条の三は「使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性を、重量物を 取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務、その他妊産婦の妊娠、出産、哺 育等に有害な業務に就かせてはならない」としています。また、これらの業務のうち、 「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、妊産婦以外の女性に関し て、準用することができる」としています。  具体的な規制の範囲については、6頁の表に一覧としてまとめております。1〜24号 までありますが、この中には坑内作業と関連のありそうなものもあります。この規制の 範囲について、いくつか拾って触れさせていただきます。  例えば、1号は重量物を取り扱う業務で、7号は動力で駆動させる土木建築用機械と なっています。13号では、土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5メートル以上 の地穴における業務。18号では、鉛、水銀、クロムといった有害物のガス、蒸気又は粉 じんを発散する場所における業務。20号では、著しく暑熱な場所における業務。24号で は、さく岩機、鋲打機等著しい振動を与える機器を用いて行う業務について制限をかけ ております。  これらのうち例えば、18号では、有害物については、表に3つの欄がありますが、妊 婦、産婦、その他の女性とも全面禁止です。20号の暑熱な場所を見ますと、妊婦につい ては全面禁止、産婦については申し出たものについては禁止、その他の女性については 制限なしとなっています。24号の振動は、妊産婦については全面禁止、その他の女性に ついては制限なしとなっています。  8頁は坑内労働の安全衛生確保に係る規制の変遷をまとめたものです。左から右に時 間の流れをとっています。上のほうのずい道等の建設関係ですが、労働基準法昭和22年 の法律に、当初、安全衛生関係の規定が含まれていました。それが拡充して独立する形 で昭和47年に労働安全衛生法が成立しており、その下で施行令や労働安全衛生規則とい った規制が設けられています。昭和55年にはずい道工事に係る改正が行われています。  下半分の鉱山保安関係は、昭和24年に鉱山保安法が制定されています。その下に金属 鉱山、石炭鉱山、石油鉱山のそれぞれについて、保安規則が設けられていました。この 規則については、平成6年に鉱山保安規則として統合されています。またさらに来年4 月施行予定の鉱山保安法施行規則ということで、さらに整理統合されています。  鉱山保安法については、労働安全衛生法の鉱山における保安関係の特別法とされてお り、鉱山における保安については鉱山保安法が、それ以外については労働安全衛生法が 適用されることになっています。  鉱山における保安というのは、鉱山における人に対する危害の防止、鉱物資源の保 護、鉱害の防止などとなっています。  真ん中にじん肺法がありますが、これはずい道工事、鉱山のいずれにも適用されるこ とになります。1枚紙の上半分については、9〜16頁に、下半分については17〜22頁に 細かいものを載せています。  9頁です。4は「坑内労働に係る主要な規制について」で、労働基準法又は労働安全 衛生法令において、坑やずい道について、特別の内容を定めている主要な規定を抜き出 したものです。左側は基準法制定時(昭和22年)の内容、右側は現行規制の内容となっ ています。全体としては右側の現行の規定のほうが充実していることがご覧いただける かと思います。この表については、主な危険要因に触れながら、ごくかいつまんでご説 明します。  同じ頁の右下の枠を見ますと、4行目に「落盤等による危険の防止」というのがあり ます。ずい道等の建設の作業を行う場合に、落盤、肌落ちによる危険を防止するため、 支保工やロックボルト、浮石を落とすなどの危険防止措置を講じなければならないとい う規定があります。  また11頁を見ますと、建設機械による事故があることも先ほど触れましたが、現行の 規定としては、建設機械による危険の防止のために、軌道装置を設けるときの間隔を一 定程度開けなければならないと規定されています。  粉じんについても、粉じん障害防止規則やじん肺法があって、さらにトンネルについ ては12頁の(4)にあるように、「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイド ライン」が平成12年に定められています。この中で、例えば粉じん濃度の目標レベルと して1m3当たり3mg以下と定められています。  13頁では、特別規制がありますが、現行条文で、ずい道等についての措置としていま すが、これは先ほど落盤等の防止措置というのがありましたが、こちらは事業の一部を 下請けに出す場合の落盤等の防止措置について義務づけたものです。  14頁は、安全衛生管理体制についても、現行のほうが充実している規定になっていま す。内容としては、例えば(1)では、500人以上を使用する事業場で、坑内労働に30 人以上を使用する場合は、専任の衛生管理者を置かなければならないとしています。通 常は1,000人以上の場合となっています。(2)以下についても、坑内について、より 厳しい特別の基準が設けられています。  15頁には、4は、健康の保持増進のための措置として、作業環境測定や健康診断につ いて規定しています。健康診断についても、坑内業務については6カ月以内ごとに1 回、通常は年1回です。  5の「監督等」ですが、これはずい道工事の計画の届出義務です。長さが3km以上の ずい道については、厚生労働大臣に、それ未満のものについては労働基準監督署長に届 けなければならないことになっています。これについて、厚生労働大臣等が審査を行う ことができることになっています。  17頁からは鉱山保安に係る主要な規制について、同じように表で整理しております。 左側が鉱山保安法の制定直後の昭和24年当時の石炭鉱山保安規則から取っており、現行 のほうは統合された鉱山保安規則を抜いております。こちらは規定数が多いものですか ら、ほぼ項目のみを抜き出しています。こちらも先ほど触れた災害要因に関して、ごく 簡単に触れたいと思います。  18頁です。右の欄は(5)として、坑内ガス、(6)ガス突出による危険の防止があ ります。例えば、坑内ガスに関しては、可燃性のガスの空気中の含有率が、石炭坑で 1.5%、石油坑で1%を超えるときは、送電停止や労働者の退避等の措置を講じなけれ ばならないという規定があります。  19頁には、右側の(1)(2)の辺りに、爆発性の炭じんに関する規制。その下の欄 で、落盤崩壊に関する規制、山はねによる危険の防止という規制があります。  21頁は、車両系鉱山機械に関する規制が現行では設けられており、これは技術の変化 に応じた追加かと思います。その下の粉じんについても、粉じんの防止、濃度の測定等 に関する規定が設けられています。大変雑駁ですが、このように坑内という場所に関し て、一般的な安全衛生規定が設けられております。  23頁のILO第45号条約ですが、これは鉱山の坑内作業における女子の使用に関する 条約です。後ろのほうに注を付けていますが、採択されたのが1935年で、発効が1937年 です。日本批准が1956年となっています。  内容は、第二条に「女子は、年齢のいかんを問わず、鉱山における坑内の作業に使用 してはならない」としています。第三条で例外規定を設けており、国内法令の定めると ころにより、次のものを除外することができるとしています。その範囲は、「管理の地 位にあって筋肉労働をしない女子、保健及び福祉の業務に使用される女子、実習の過程 で坑内で訓練を受けている女子、その他筋肉労働の性格を有しない職業のため随時坑内 に入る必要がある女子」となっています。労働基準法と比べますと、ILO条約の対象 は鉱山となっていること、例外規定の範囲が広いという相違があります。  24頁、25頁は、ILO条約を現在批准している国で、84カ国となっております。  26頁については、この条約を現在までに廃棄した国で、イギリスやオランダ、スウェ ーデンなど、13カ国です。  最後に参考資料を付けていますが、女性の坑内労働に係る要望の例です。下の注にあ りますが、内閣府が実施した規制改革等の集中受付月間において、東京都、日本経団連 から要望として出されております。  東京都を読みますと、具体的な要望内容として、「女性の雇用機会均等と職域拡大を 図るため、トンネル工事の監督業務などに従事する女性が、坑内に入ることができるよ う、法改正等の必要な措置を講じること」となっています。このような規制改革要望が あることから、政府として検討を求められているという状況になっています。  また東京都の要望については、東京都から出ていますが、その背景として、監督業務 を行う女性技術者の現場から声が上がっているとも聞いています。また日本経団連の要 望についても、同じような状況だと伺っています。以上、大変長くなり恐縮ですが、資 料のご説明といたします。 ○座長  今日用意してくださった資料について、ひと通りご説明いただきました。今日は残り の時間をすべて質疑応答、意見交換に費やせる予定になっておりますので、ご自由にご 発言いただいて、フリートーキングという形になろうかと思いますので、お願いいたし ます。 ○委員  1つ炭坑については、この前炭労が旗を燃やしたという記事もありましたが、日本で はもうなくなったのではなかったのですか。 ○委員  釧路は平成18年までやっています。 ○委員  工法の中で、上から開いていく開削工法の場合には、女性はできるのですか。それと もあれも坑に入って、現在はできないことになっているのでしょうか。 ○事務局  いずれのトンネル工事についても、個別具体的に、先ほどご紹介した安全衛生が確保 されているかどうか、一般人は通れるようになっているかといった条件に照らして、具 体的に判断されるということになるかと思います。 ○座長  我々が検討しようとするときに、まず坑内労働をどう定義するかという問題ですね。 ○委員  坑内労働の定義になるのだろうと思いますが、エンジニアの立場から1つだけ申し上 げますと、トンネルは横方向へ掘る工事ですが、いまあまり数は多くないと思います。 橋脚を縦に掘るケーソンという工事もあるのです。そういうところは坑内に当たるのか どうかというのは、検討が必要なのかなという気がします。 ○委員  それはNATMのときでも、ケースによっては当然縦坑を掘っていって、NATM工 法をやりますから、縦坑を掘る場合はケーソン作業になれば圧損がかかりますからシー ルド工法と同じになります。開放型の坑内と違い圧気がかかる状態ではありますが、坑 内には入るのではないでしょうか。 ○委員  もう1つ大変マイナーな、どうでもいいと言われれば、どうでもいいのかもしれませ んが、資料6の10頁の鉱山における坑内労働の特殊性ということで、トンネル工事との 相違でご説明があったかと思いますが、(3)ガスの突出、流出ということがあったのです が、トンネル工事でもメタンガスが出てくるという工事は実際にありますし、何年か前 に山形で大きな爆発事故を起こした事例もありますので、必ずしもガスに関しては鉱山 だけの問題ではないということだけはコメントさせてください。 ○委員  トンネル工事でもガス抜きしますよね。いま九州北新幹線を掘っていますが、あそこ はもともと炭層があるところですから、炭層があればガス抜きをしながら掘らないと行 けません。ガスは鉱山ばかりではなく、日本は炭層がありますから、そういう所はガス 抜きをやらなければいけないと思っています。 ○事務局  いまの話を合わせますと、ずい道工事等における災害ということで、4頁の(1)に災 害の種類ということで整理をしていますが、ずい道と鉱山と分けてみて、鉱山で挙がっ ている災害の種類は置いておくとして、ずい道においてもガスの関係は挙げておいたほ うがいいという認識ですか。 ○委員  事例としては少ないのではありませんか。申請をする際は岩盤の地層全部を探査しま すので、クラックが入っているかどうか、岩層を見る。そのあとで例えば、炭層がもし かしてあったり、メタン系のものがあったら、当然ガス抜きの措置をしますし、COと かセンサーを付けていますので、特異な例としてはあるかもしれませんが、事故に結び 付くような事例は少ないのではないかと思います。 ○委員  そうしますと、資料6の4頁の妊産婦の就業制限の業務の範囲の中で、第18号辺りの 解釈は、いつも議論になるのですが、「蒸気又は粉じんを発散する場所における業務」 という解釈で、常時そういう環境にあるという捉え方をする場合と、ごく稀であるが、 可能性としてという解釈によって、随分適用範囲が変わってくるかと思います。通常こ れはどのような解釈がなされているのでしょうか。 ○委員  炭坑の場合は、完全にガスがいつも出ていますので、当然常時作業ですから、必ず坑 内に入るときにはガス検査をしていくという形になります。トンネルの場合はある程度 予測がつきますから、それに対してガスセンサーという形で、いまのトンネル構造は、 粉じんは当然ありますが、ガスについては埋立てなどに比べると、はるかに少ないと思 います。地質の問題ですから、どう貫通させるかですので、普通のトンネルではあまり ないかなと思います。特にガスに関しては、常時ではないような気がします。炭坑とし ては完全に常時ですので、監視を付けなければいけませんし、坑内を掘って地山を作っ たときに、メタンは上にあがりますから、なるべく空間をつけないように、岩盤と支保 をくっ付けるという形です。  トンネルの場合は比較的ガスがありませんから、岩盤は開けても大丈夫という形の支 保がそれぞれ工夫されています。普通のトンネル、金属鉱山では少ないのではないでし ょうか。炭坑ですと、間違いなくガス突出がありますので、その場所によっても扱いは 違ってくるのかという気がします。 ○座長  第18号などは個別に検討するのは大変困難な課題ですよね。坑内労働という点から考 えれば、この中のごく一部のメタンなどが問題になるのです。ですから坑内労働におけ るリスクという点で絞って、ここでは検討するのかなという気がします。 ○委員  問題になるものとしては、当然鉛があります。ヒ素は当然岩石の中にいっぱい入って います。そうすると、鉛やヒ素は鉱山では当然出てくるものです。でもほかのガス的な ものはあまり出てくる可能性はない。クロムでも、いま日本にはクロム鉱山はありませ んから少ないと思いますので、出てくるのは菱刈だと金、豊羽だとほとんどは鉛、亜 鉛、石灰岩の鉱山で、坑内掘りですから、金属として考えられるのは鉛とヒ素的なもの で、あとはないのかなと思います。それ以上に粉じんの問題のほうが強いかなという気 がします。 ○座長  水銀はあまりないのでしょうか。 ○委員  イトムカが終わりましたから、ないでしょうね。 ○座長  北海道の釧路炭坑も一応考えないでいいとすると、鉛とかヒ素ですか。ヒ素はどこに でもありますね。 ○委員  トンネル工事で有害ガスが出て、事故になったのは、私の記憶ではメタンです。メタ ンも石炭系のメタンで、山形のほうは油田系のメタンです。広島のほうで亜硫酸ガスが 出て、事故になったという事例を聞いたことがあります。 ○座長  火山性で、亜硫酸ガスとか硫化水素ですか。 ○委員  たぶん掘るときに 近くに温泉があったり鉱脈があったりするときには、トンネルの 場合は、必ず常時監視のセンサーを取り付けています。例えば基準局に申請があれば、 我々はトンネルを審査していますが、そのときには、どういう管理体制になっている か、非難口はどうなっているかを検査しますから大丈夫ではないかと思います。  その意味で考えると、女性が入っても危ないような場所はそれほどないと思います。 ただ重労働は別にして、普通の重機を扱ったり、入っていく分には、全然女性は問題な いと思います。鉄骨の40kgを持つのは大変ですが、トンネルの場合は重機の運転で全部 行っていますから、従来の炭坑みたいに個別の人たちが持ってやる作業はあまりないと 思いますので、そういう点から考えると、重さに対するものは若干工法によって違うか もしれませんが、それ以外では重機で全部できるようになっていますので、問題はない のかなという気がします。 ○座長  いまおっしゃっているように、男性に比べて女性のほうによりリスクが大きいかどう かという立場で考えたとき、亜硫酸ガスとか硫化水素とか、ある程度急性に出てくるよ うなものは、コントロールされているから、多分大丈夫ということですね。それで、あ る程度フラクチェーションがあって、短期間曝露したとしても、女性に特にリスクが大 きいということはないでしょう。鉛とか、ヒ素はどうでしょうか。 ○委員  ヒ素も、水には入ってきますが、要するに、例えば岩盤掘進したときに、ではその粉 塵を採ったときに、ヒ素があるかというと、そうはなくて、やはり溶けて出てくる、水 の中に入ってくるから、水以外では、ヒ素の影響というのはそんなに考えなくてもいい のかなと思います。  鉛についても、鉛製錬で出してきますから、ではそのとき、鉛だけ特別に、じゃあ粉 じんの中に入っているかというと、やはりそうではなくて、あくまでも金属鉱山につい ては、粉じん管理ですから、粉じん濃度の管理で十分間に合うのではないかという気が します。 ○座長  鉛が非常に高濃度に含まれている鉱石を取り扱うのは別として、通常、ある程度入っ ているとしても問題はないと。 ○委員  多分品位が高くて、例えば坑内で粉砕する場合というのは、昔の神岡などでは、坑内 で粉砕していましたが、いまはほとんど全部それをトラックで運んできて、地上で粉砕 するので、それは坑外作業になりますから、坑内で粉砕することは、ほとんどないと思 います。そういう意味では、掘削していく中で、鉛を特異的に曝露するかというと、や はり、いま実際に還元されている粉じん、要するにじん肺症とか粉じん症と言われてい る、そちらの管理で間に合うのではないかと私は思いますが。 ○座長  それできちっと管理されているとしたら、その中に含まれている鉛の影響というの は、そのごく一部なので、むしろ粉じんそのものを管理すれば十分だろうということ で。  そもそも、ヒ素などは、特に男性よりも女性のほうがリスクが高いかどうかというこ とは、あるかというと、それはよく調べないといけないですが、あまりないような気が するんですよね。 ○委員  そうだと思いますね。意外と、鉱山排水の排出基準というのは、かなり厳しいです。 ヒ素の濃度は、今度管理濃度も出て、ヒ素はかなり厳しいですね。 ○座長  別の問題で厳しくしますからね。発がんとか、そういうことでね。 ○委員  坑内で特別にヒ素を扱うということはなくて、水で出てきたものを、河川に流すとき に、やはりある程度排出基準がありますと、それに沃を沈澱させて出すという意味での ヒ素であって、坑内そのもの自体のヒ素の問題というのは、ヒ素を昔みたいに掘って採 る、土呂久みたいに、掘っているときは別にしても、それ以外の所ではないと思います が。 ○座長  坑内ということに限るかぎり、こういった化学物質の問題というのは、特段ないです ね。 ○委員  熱は、多分豊羽は大変で、熱中症がしょっちゅうありますから、大変だと思います が。 ○座長  女性は特に熱中症に弱いということはあるのですか。 ○委員  どうでしょうか。それは私、わかりませんが、でもまあ、かなり大変な、豊羽だけは 特別大変な作業であることは間違いないと思います。 ○座長  要するに、男性よりも女性のほうがリスクが高いかどうかということと、それから、 絶対的なリスクの問題ですね。もし男性と女性と、全く同じリスクならOKなのか。そ れから、女性のほうが男性よりもリスクは少し大きいかもしれないけれども、絶対的な リスクとしては小さいという場合もあるでしょうし、何を考えたらいいのですかね。 ○委員  物理的因子と、例えば生体因子を考えたときに、生体因子というのは、粉じんとか、 そういうものに対しては、あまり変わらないのではないか。ただ、物理的因子になって くると、じゃあ熱だとか気圧とか寒さとか、そういう形のものが、男性・女性で決まっ てくるかというのは、ちょっといまのところ、基準の中でも男性と女性を分けていませ んよね。重量物だけですよね。  そうすると、いま思うところは、そういう物理的な因子によっても、男女の差別はな いのではないか。ただ、妊婦さんは別にして、普通の女性でしたら、多分大丈夫。  ただ、荷重については、やはり男性と女性と違いますので、そこのところの、重労働 については若干あるかなと思いますが、そこ以外は、女性と男性を特段分ける必要はな いのではないかと思います。 ○委員  データベースの中に、女性のほうに、これがより有害ですよと、この18号にかかわる ようなところも、基本的なデータの研究そのものが、非常に少ないという状況ですの で、本当はそういうことを根拠に、坑内労働も考えていければいちばんいいのですが、 今回そこまでまず揃わないだろうということが予測されますので、この点をどこまで触 れるかが、今回いちばん苦労するかなと思っています。 ○委員  我々は、許容濃度だとか管理濃度を使って管理していますから、そこに男女はありま せんから。でも、化学物質が入ってくると、これは当然女性に対する影響というのは強 いのですが、鉱山、トンネルに関しては、化学物質は入ってきませんので、そうする と、どうなのかな、ちょっと難しい部分がありますね。  例えばトラックレスとか、トンネルのときに、化学物質が入ってくるとしたら、これ はディーゼル排ガスなのですが、トンネルの場合は、今度できたガイドラインで、必ず 坑内に入るときにはマスクをしなさいということになっていますので、それでもう防げ てしまいますね。そうすると、化学物質に曝露する所というのは、若干少ないかなとい うところです。  鉱山の場合は、マスクの義務は坑内に入るまではありませんが、まあ皆さんちゃんと マスクをされていますので、そうすると、特段化学物質に坑内で曝露となるところはな いかなという気がしますが。  それから、1度、例えば坑内作業の中で、トラックレスが問題になったときに、当 然、ディーゼル排ガスが出きて、ベンツピレンとか、いろいろ測って、確かにあること はあるよ、じゃあそのときに、規制できるかというと、多分、発がん物質ですが、濃度 がそのまま出ていないので、難しいということで、できるだけ、要するに1カ月に1回 整備していって、浄化装置を使っていて、できるだけ排ガスをクリーンにしましょうと いう通達は出ていて、法律改正してもらってはいますので。そうすると、それと併せ て、マスクを付けると、とりあえず化学物質というのは、坑内では考えなくてもいいの かなというふうに、私は思います。 ○座長  粉じんはどうですか。粉じんはゼロではないわけですよね。 ○委員  粉じんは入ります。坑内の粉じん測定の義務化というのがありまして、これは、もう じき、4月から適用されます。いままで測定はしていたものの、評価がなかったのです が、じん肺に関する規制の今回の改正で、必ず測定と同時に評価しなさいというふうに 決まっていますので、そういう形になると、粉じん濃度がきちんと把握されて、そして 適正な管理が行われるという形になります。  それでできないときには、マスクを使って防御しなさいという形になろうかと思いま すので。 ○座長  男性に比べて、多分同じ程度にリスクがあると思うのですが。 ○委員  常識的には。 ○座長  特に女性がリスクが高いという根拠はないですけれども。不確実性がありますよね。 というのは、いままで女性があまり粉じん労働に就いていないから、もしそうだとする と、より低い濃度で女性にじん肺が起こる可能性というのは、完全には否定できないで すね。だから、その場合、そういう不確実性に、どう対処するかということで。 ○委員  難しいですね。マスクも、一応、百パーセントきちっとしていたとしても、一応漏洩 は5%認めていますからね。そうすると、環境濃度が高いと、漏れ込み率が結構入って くる部分があって、その濃度が、いま使われている管理濃度が下がってきたときと、石 英の濃度を考えたときにどうなるかということになって。 ○座長  基準を考える立場からいうと、通常、いままでのデータに基づいて決めている粉じん の曝露限界値に、さらに不確実係数を2分の1にするとかいうような条件があればいい かなというような考え方になるかなと思うのですが。 ○委員  その辺については、私たちも医学的なことでよくわからないのですが、工学的に、例 えばある程度の濃度の所で、トンネルも、従来ガイドラインが出る前は、かなり汚れた 環境でしたが、ガイドラインができてから、ずっと測定していますが、かなり濃度が下 がっていて、きれいになっていますので、従来に比べると、はるかに進んでいると思い ます。  ましてや、今度、坑内の測定と評価が義務づけられてくると、当然それに向かって、 努力目標ができますので、多分、粉じんの環境としては、いまよりはかなり良くなって くるのではないかと思います。  ただ、もう1つわからないのは、マスクをしたときに、呼吸の代謝がありますね。代 謝が、男性と女性の中で、多分、女性に対して負荷がかかってくるということになる と、それはちょっと、マスクだけで対応できなくなってくる部分はあるかもしれませ ん。その辺のところは、ちょっとデータがわからないので、何とも言えませんけれど も。 ○座長  呼吸量が相対的に多くなるのではないかということですか。 ○委員  最初に負荷がかかってきますね。その負荷の量が、男性と女性によって差が出てくる のかなということです。それでなかったとしたら、いいのですが。もし出てくるのであ れば、若干考えなくてはいけないかなという気がします。 ○座長  要するに、単に坑内労働だからというので、あっさり禁止というのは、いまの立場か らいくと、リスクの程度を全く考えないで処理するという行き方は、時代遅れですよ ね。 ○委員  要望書に書かれている、「監督業務での従事」ということに関しては、化学物質に対 しての防御、粉じんに対しての防御ということ、あとは、重量物取扱いの関係では、そ れもないわけですから、当然できるし、あるいは重機の運転も、いま坑外作業ですと、 発電所とか、そういう所へ行くと、坑外では女性が100トンダンプを運転していますの で、逆に言うと、器用な方は男性よりうまい人がたくさんいますので、そういう意味で は、重機を使って中に入って作業ということは、全然問題ないですし、監督業務であっ ても全然問題ないと思います。  だから、そこから考えると、坑内に入って、ほかに何があるかなと考えるとき、ここ に要望が出ていること自体については、女性が入っても何も問題ないと私は思います。 ○座長  ここに書いてある範囲なら、多分問題ない。ただ、ここで検討する鉱山労働というも のの範囲ですね。それがどこまでかということで、一応、極端な場合、全部考えないと 心配ですよね。 ○委員  だから、男性と同じように、重量物を使って本当に同じことをしたときに、じゃあど うなのかということになると、やはり若干考えなければいけないと思うのですが、普通 の重量物を扱うような所ではなくて、機械操作とか監督業務とか、そういうところです と、何も問題ないのではないかという気がします。 ○事務局  そうなってくると、まさにILO45条約が、いまの日本の法制よりは緩いわけです が、原則禁止にして、まさに重労働みたいなところは女性の労働は駄目となっています が、それは、やはり心配があるのでということになってくるのでしょうか。一応、女性 には生理的な特殊性があるということで、この手の条約、大変古い条約で、1935年に制 定されて、いまなおこれだけ多くの国が批准しているということでございます。  一方で、廃棄した国もあって、若干わかっている例からしますと、機械技術の進展に よって、あまり重労働でなくなってきている。我が国ではそういう状況だからというこ とで、廃棄している例があるというふうに聞いておりまして、その辺、ギリギリのとこ ろを考えたときに、やはりリスクというのは排除できないから、いまなおこういう状況 になっているというふうな考えかもしれないということなのでしょうか。 ○委員  トンネルでも、大きい所では、大きいというと、要するに、断面積が60平米くらいの 大きい所でしたら、当然、機械で全部枠を決められますけれども、ただ、断面の小さい 所は、要するに重機が入りませんから、そうすると、作業者が入って行って、支保を組 むような形になるかもしれないから、そのときには重量物を扱う可能性がありますよ ね。  どの断面によってという形ではなくて、やはりトンネルそのもの自体は、ゼネコンさ んが自分でどう考えて、そのトンネルを掘っていくかということですから、それは個別 の対応になってくるのかなと思いますが、普通の道路トンネル、山岳トンネルの普通の 道路をとっている所ですと、あまり大きな問題はないかなという気はしますけれども。 ○委員  ILO条約では、最初から鉱山に限っているのですが、労基法は、最初からずい道も 含めて禁止ということになっている。これは制定以来そうだったわけですか。 ○事務局  解釈としては、一応そういうことだと聞いています。ただ、主として念頭にあったの は、まさに鉱山、とりわけ石炭の労働というのが念頭にあって、規制されていた。中窪 先生のほうがお詳しいと思いますが、労基法の制定当初からある規定で、ILO条約み たいにあるということも、1つ念頭にあって、こういう規定が当初から設けられていた と聞いております。 ○委員  先ほどの昭和25年の通達ですが、それ自体から見ると、「鉱山については」と書いて あって、それから、2号が、明確に「ずい道も含む」というのに、何か若干曖昧な気も するのですが、それはまあそういうふうに解釈されているということですね。 ○事務局  大体、この手の解釈は、聞かれて、それでそうだったかなということで、中で検討し て解釈をきちっと示すというプロセスですから、やはり、聞かれて明らかになったのが この時点ということもできましょうけれども、一応解釈的にはフィックスしているとい うことになります。 ○委員  ILO条約との関連で、もし、データがおありでしたら教えていただきたいのです。 廃棄国が13カ国あるということですが、廃棄をするからには、それなりの決断のための 議論があったというふうに推測するのですが、その際に、45号条約が、原則として年齢 のいかんを問わず、女子は鉱山における坑内作業に使用してはならないという、ILO 第45条条約を廃棄した国、13カ国というのは、例えば妊産婦に関しては、もちろん国内 法においても規制を掛けているけれども、それ以外の女子については、掛けない方針に 変わったから廃棄しているのか、それとも、鉱山における坑内の作業というのが、あま りにも広いので、その中のある部分については規制を残すけれども、それ以外について 外すために廃棄をしたのかといったような、廃棄した経緯というか、廃棄した根拠とい うものが、もしわかれば、そこに何らかの科学的なデータの裏付けみたいなものがある とすれば、もしかしたら参考にすることができるかもしれないというふうに考えたので すが、その点は、何か資料やデータは、何らかの形で入手されることはできますでしょ うか。 ○事務局  可能であれば入手したいと、実は思っているのですが、現時点ではございません。い くつかの国でこの辺、一気に、廃棄といいますか、そういう動きが出てきたのは、やは り「女子保護規定」というのは、女性の就業制限になって、均等を阻害するものという ことで、その内容を仔細に見直す動きが、一時非常に強まりまして、その中で、この手 の規定が見直され、また条約についても廃棄をするというふうに進んだというのだと思 います。ただその背景、裏付けにあたるものがあると、確かにこの研究会でも非常に参 考になるのではないかと思っております。 ○座長  これは、疑問として、肉体的に、筋力は確かに男性に比べれば低いかもしれないけれ ども、それだからといって、禁止する必要というのはあるのか。それはもう、あくまで 自分で判断できる問題のような気もするのです。要するに、かつては保護するために禁 止した。そういうことをしなければ、命令によって、子供や女性をそういう職業に就け るということを避けるために禁止した。  いま、禁止する必要というのが本当にあるのかなというのが、実は率直な疑問なので す。やはり禁止、そういうもの、そういう肉体的な負荷のかかる仕事というのは、禁止 しておいたほうがいいのでしょうか。 ○委員  現実に、例えば介護の話がありますね。介護には、女性がたくさん就いていて、現 実、相手が人間ですので、重量物という扱いにはならない。それで、介護事業に携わっ ている人たちを私も知っているのですが、実際のところ、その方がやはり足腰が悪く て、立てなくなってしまって、途端に支えられなくなってしまったというときに、場合 によっては100キロの相手の方もおられるということです。こういった重労働に就いて いる現実があるのです。  そういう中で、ではその方たちをどのようにしてあげたらいいのかと聞かれたとき に、じゃあ、機械でサポートしましょう。でも相手は人間ですから、やはり介護される 側にとったら、自分は機械で扱われたということは問題ですよね。ということでは、な かなか解決がつかない場合もあります。 ○座長  難しいかもしれませんね。だけど、技術的には解決可能なんですよね。 ○委員  可能です。問題はそこに多分機械的なサポートを入れれば、女性であっても軽々と介 護者を上げられるということになります。 ○座長  そうですよね。 ○委員  それで、ベッドの移動とかは、現実にあるのですが、そういった、途端に倒れてきそ うになったとか、一気に荷重がかかるというのは、予想しないことがたくさんあります ので、そのたびに、言ったら労働災害が起こり得るんですね。 ○座長  起こり得ますね。そういうリスクを負いながらも、仕事を今しておられる。 ○委員  しておられるということです。 ○座長  それで、それを禁止してしまったら、どうなのか。そういう問題ではないでしょう。 ○委員  そうですね。禁止したら、誰も介護ができなくなる。 ○座長  できないことになってしまいますね。職場を失うし。だから、それと全く同じような 気がしますよ。こういう鉱山労働であろうと。 ○委員  もう1つには、現実に今そういった重量物に対して、パワースーツみたいなものの開 発が進んでいますから、引っ越し業界でも、女性が軽々できるのではないか。そういっ たものを装着すればというサイボーグ的なところもありますが、そうすると、世の中が 変わっていけば、筋肉労働というものをどう捉えるかということ自体、将来的には変わ ってくる可能性があるかなと思うのです。 ○座長  そうですね。 ○委員  それが本当に、近未来である可能性は十分あるかなと思います。 ○座長  十分あります。 ○委員  それから、いまこの法改正のことを言っている間にも、どんどんそういった技術が進 んでいきますので、トンネルの中が非常にきれいになったということ自体も、この10 年、15年で随分違うということですから、先を見越した上で、今回考えられたら、非常 にありがたいかなと思います。 ○委員  重量物に関していえば、多分介護よりはトンネルのほうが、重機がちゃんとしている 分だけ大丈夫だと思います。きちっとした枠をつかんでおいて、重機をちゃんと置い て、あとはボルトを締めるという形だけですから、そういう意味では実際に。  ただ、小さい所の断面ですが、重機が入らないと、どうしてもある程度、2人、3人 で曲がった支保を立てておいて、そしてその中で止めていかなければいけないというと きに、昔の炭坑ですと、そのまま1人の人が30キロ、40キロも持ってきてというふうに なりましたが、いまは当然、ある程度の物は運んでこれますから、そういう意味ではか からないと思います。  だから、介護に比べると、それほど重労働に対して抵抗がなかったとしたら、なお入 りやすくなるのではないでしょうかという気がします。 ○委員  現実問題、力の強い女性と力の弱い男性というふうに考えたときに、男性だから誰で もいいかというと、また違う現実も、本来はありますよね。 ○座長  そうですよね。 ○委員  いま見ると、本当にどうして禁止したのだろうという感じになるのですが、やはり歴 史的に見ると、昔の炭坑で、非常に暗くて、単に重量物だけではない、風紀の面でも、 こういう問題があって、昔なりに問題があったということですから、それは現在、劇的 に改善されて、明るくなって、きちんとして、トイレについても簡易トイレでできる。 そういう状況があるからこそ、いまこういう議論ができると思うのです。  ですから、仮にこれを緩和する場合においても、やはり逆に言うと男女で働くことに よって、さまざまな、セクハラ防止にしても何でもそうですが、そういった、ほかの職 場では当然やっているからということですが、それが可能な所という前提が必要ではな いかという気が若干しました。 ○委員  教えていただきたいのですが、現に妊娠していなくても、妊娠する可能性が、例えば 先ほど出てきた、ガスなどによって減ってしまうとか、そういうリスクのようなもの は、どういうふうに捉えていけばよろしいのでしょうか。炭坑労働に関係して、女性が 妊娠しにくくなってしまうようなリスクみたいなものは、考える必要があるかないかが わからないのですが、その点はいかがなものでしょうか。 ○座長  私はそういうものは、あまりないような気がするのです。 ○委員  現実に実験ベースでさえしていないと思うので、データがないということに尽きてし まうのです。 ○座長  ただ、要するに、保護する、保護するというので、そういうふうに決めてしまってい るから、だからデータも作る必要がないという。私は、保護する必要があったとして も、予測としては、一部の化学物質くらいではないかと思いますが。要するに、生殖毒 性のある化学物質以外は・・・。 ○委員  それに比べたら、やはり喫煙だとか、個人のほうの影響のほうがはるかに強くて、ト ンネルの作業によって起きてくる環境影響というよりは、逆に自分たちは喫煙している のか、例えば喫煙している人と同居しているのかということのほうが、はるかに妊娠と いうものに対して強くかかってくるほうが多くて、炭坑によって、それでは個別に、妊 娠した人たちが危なくなるかということは、私はないのではないかと思います。 ○座長  ないと思うでしょう。率直なところ、私はほとんどないと思います。  それでは責任を負うかと言われると、1人で責任を背負って頑張るというのは辛い。 ○委員  例えばいま我々も、サーベイランスで大気汚染をやっていますが、大気汚染のところ は、喘息はどうなるかということで、3歳児健診を見ていると、いちばん大きい子供の 喘息は、ほとんどお母さんの喫煙ですよね。次にお父さんの喫煙ですね。  それでは、大気汚染と喘息というのは、結び付くかというと、なかなか結び付かない 部分があって、やはり家庭内で喫煙しているかどうかということは、はるかに子供た ち、あるいは妊婦さんに与える影響は大きいですから、それから考えると、トンネルと いう所になって、先ほど言いましたように、ほとんどが粉じんというものを考えればい いだけということになると、あまり化学物質とかそういう形のものは、考えなくてもい いのかなと、私は思います。 ○座長  だから、妊産婦だけは、非常に十分考える必要はあるだろう。それは多分、誰も反対 しないと思うのです。しかし、産婦のほう、これは1年をとっていますでしょう。やは りそれくらい必要だとお考えですか。産婦人科のドクターとして。 ○委員  産科的には私は、いわゆる産休レベルでいいと思っています。ですから、育児休業と いう時期になってくると、これは、母乳を与えるとか、そのレベルは個人の、もちろん 母乳はできるだけ半年間は継続したほうがいいということがありますから、そういった ことを含めて、母乳を与えている時期だったらどうかという判断とかですね。  でも、育児休業とかで休んでおられたら、そこは関係ないわけですし、実際のところ は、1年という根拠自体は。 ○座長  1年というのは、ちょっと長いなという気がするので。 ○事務局  資料No.6の1頁をご覧いただきたいのですが、下のほうで、「女性労働基準規則」 を掲載しております。第1条2項のところで、妊産婦の扱いについて規定しております が、現在でも若干例外的に臨時の必要で入れる方々についての扱いが、妊娠中の女性と 産婦とで、書き分けております。妊娠中の女性は、絶対的に駄目ということです。産婦 については、申し出た場合についてのみということで、やはりその人の体調の状況に応 じた対応ができるような形で、少しここは柔軟になっている。現行もそうなっていると いうことを、ちょっと、交通整理の意味で補足させていただきたいと思います。  妊娠中の女性は、やはりお腹が大きくて、バランスも崩しがちで、これは、流産のリ スクが非常に高くなるという意味で、いま、例外的に認めている方々においても、禁止 をしているということだと理解しております。 ○委員  坑内労働についてはそういうことですが、さっきの18号との関係では、これは女性一 般について、いま排除しているわけですね。それで、これを例えば妊娠中のリスクと考 えた場合に、妊娠がわかっていればいいのですが、自分自身気がつかなくて、何か有毒 なガスに触れるということはあると思うのですが、そういう危険というのは、あまり考 えなくてよろしいのでしょうか。ちょっと、坑内労働から外れますけれども。 ○委員  それぞれ、よその業種でも、あるといえばあるし、ないといえばないですから。 ○委員  妊娠可能性のある人はみんな駄目だというルールを作った会社も昔はありましたけれ ども。 ○委員  それ自体は、ほかの業種に話を適用してしまうことになりますよね。坑内労働に限っ てという考え方は、やはり先ほどからのようなことはないと思うのですが。ないという か、現実問題として考えにくいですね。結局、生殖毒性ということですよね。 ○座長  生殖毒性ということですね。生殖毒性のある化学物質を、もし取扱うような、相当な レベルで、リスクのあるレベルで、曝露する可能性のあるような作業だったら、その女 性が妊娠しているかどうか、明確にすることは難しいので、妊娠可能な人だったら、予 防的に、その作業に就けないということは、あってもいいだろうなと思いますが。  でも、本当は、その環境を改善してしまえばいいんですよね。 ○委員  男にとっても、そんなにいいとは思えないです。 ○座長  ええ、同じことですよね。 ○委員  坑内労働については、では妊娠については特に問題はないということですね。 ○委員  ちょっと、いちばんわからないのは、いまの粉じんの状況とか、今度、私は視察に入 らせていただきますので、それでもまだ非常に環境のよい所を見せていただくのかなと は思うのですが、そういう所に、とにかく入って行ったことがないという現実で、デー タのないところでこの議論を進めなければいけないのですが、そういうことを想定し た、ほかの業種での、現実の女性労働を考えたときに、そことの比較でいくと、特別リ スクが高いとは、とても思えないですよね。ほかにもたくさん曝露されている。手術室 の看護職であるとか、今いろいろ言われているかと思いますので。 ○委員  濃度的にも、我々はずっと測っていますが、そんなに取り立てて高いということはな い。例えば、粉砕しているところで測ったときに、ある程度の管理区分が多分あると思 いますが、そこで測ったとしても、要するにマスクをしない環境づくりというのは、ち ょっと難しいかもしれないけれども、ある程度の環境でしたら、マスクをしていれば十 分大丈夫という環境はすべてですし、逆にマスクをしなくてもいい環境もありますしと いうことで、粉じんで、従来の、昔の炭坑とかトンネルのところで出てきたような形の 疾病が、いまから出るかといったら、まずほとんど出ないと思います。こと粉じんに関 して申し上げればです。 ○座長  20年くらい前ですか、トンネル工事でも、たくさんのじん肺の患者さんが出た。 ○委員  青函のトンネル工事のときが、トンネルの最初ですから、あれ以降、「出稼ぎじん肺 」という形のものはありますが。 ○座長  その印象が強いものですから、鉱山とトンネルは同じくらいリスクが大きいというふ うに思っていたのですが。 ○委員  鉱山とトンネルは違いますからね。 ○座長  違いますからね、名古屋先生は最近のことをよくご存じですから。 ○委員  いま、NATMになってからは、全然違うと思います。粉じんの発生量は、NATM のほうが多いのですが、ただ、重労働として考えると、NATMのほうがはるかに、機 械掘りですから大丈夫ではないかと思います。炭坑の場合も、どちらかというと、矢板 方式みたいな形で、掘進していって、自分たちで鉄を持っていって、木を組んでという 形になるので、本当にものすごい重労働でしたが、いまは、ほとんど。例えばこれから 多分行かれる鉱山などですと、まず、びっくりするくらい重機で行っていて、例えば粉 じんが立つ場所だったら、自分で自動操作していって、ショベルですくったものを、粉 じんに曝露しないように、オートマチックで運ぶ。それで自分のところにきたときに、 車に乗って行くという形で、ほとんど作業場で粉じんを曝露しない形になっていますの で、そういうところでみると、従来に比べると、随分機械化が進んできていると思いま す。だから、ある程度のじん肺が起こってきている時代から比べると、もう近年の10年 という形になったら、ほとんど起こるような形のない粉じんの管理がされているのでは ないかと思います。  先ほどご発言があったように、例えば圧気工法のときに、高圧作業場ですから、例え ば妊娠初期の人たちがもし知らずに入ったときに、どうなのか、気圧が高いですから、 ちょっとよくわからないです。 ○委員  シールドも、最近は圧気は少なくなったですね。ケーソンだけだけれども。 ○委員  どうなのかな。そこはちょっとよくわからないです。 ○委員  さっぱりわかりませんですね。 ○委員  シ−ルド工法、ケーソン工法のように高気圧作業場では、脳障害を起こす酸素中毒と か、麻酔作用を起こす窒素素酔いだとかというものはあります。それが、女性にとっ て、どういう形になるかということはわからないですが、金属鉱山とか、あるいは石灰 鉱山とか、トンネル工事というのはそれはないですから、そういう意味では大丈夫だと 思います。 ○座長  今日も、実はその件、30メートル下のシールドですね。3気圧かかっているけれど も、全然漏れない。要するに気密が非常によいから、あの中の気圧は1気圧ですね。外 は4気圧でも、ここは1気圧ということになりますね。  ところが、縦坑を掘るときに、気密性さえよければ同じことですよね。 ○委員  そうです、同じです。 ○座長  だから、気密のよくない縦坑の場合。 ○委員  圧力をかけてですね。 ○座長  圧力をかけるというのは、気密がよくないから、圧力をかける。 ○委員  やはり、それは周りの圧に耐えられるように、中で圧をかけておくという形ですね。 ○委員  そういう工法があるのです。 ○座長  人がいる場所に、当然高圧がかかっているわけですよね。 ○委員  そうです。 ○座長  そこから上がるときに、減圧して。 ○委員  当然減圧して上がって。 ○委員  出入りのときに、少しずつ上がっていって。 ○座長  段階的にね。 ○委員  出るときは、もちろん下げていって。いわゆる潜水病というものです。 ○座長  坑内労働の中に、そういうものはあることはあるんですね。 ○委員  いや、ないので、それが坑内の坑に入るかということですね。それで入るとしたら、 あまり気づいたことがないので、どうなのかなと思います。 ○座長  そういうリスクが、ないのかあるのか、それを確認する必要がある。 ○委員  海女さんたちのことを考えると、結構大丈夫かなとは思っているのですが。まさに、 海女さんと同じような状況になっている。要するに、潜水病と一緒ですから。でも、訓 練されていますから、普通の人とはちょっと違いますが。どうなのかなと思ったのです が、大丈夫じゃないかな。 ○委員  最近は、そういう圧をかけるというのは、面倒くさいこともありますし、能率も上が らないということで、少なくはなってきているのです。 ○座長  要するに、上を密閉して、下は切羽にオープンで、それを圧力をかけてどんどん、基 本的には、そのまま機械で掘ってしまうというものですよね。 ○委員  ええ、いろんなケースがあるのです。 ○座長  だから、いまのような機械を入れれば大丈夫なわけですね。縦にそういうものを入れ れば。 ○委員  ええ。 ○委員  大きなトンネルですと、坑内にちゃんと休み場所があって、空調できちっとやってあ りますし、トイレもしょっちゅう、そんなに長く入りませんから、トイレについても問 題ないし、そういう意味では、普通の所は問題ないと思いますが。 ○座長  山岳工法などで、発破を使うとき、それなどは大丈夫なものですか。 ○委員  一応発破後、15分待機してから切り羽に戻り作業をすると言うふうになっています が、待機時間が短いと高濃度の粉じんに曝露する問題が起こります。ある程度、企業自 体待機時間を決まっています。炭坑でしたら、例えば15分以上は待機して、それから入 りなさいという形になっていますから。  それから、上がり発破といって、普通の鉱山ですと、発破をかけて、そしてそのまま 坑外に出て帰ってしまう。そして次の日に来て、積み込み作業をするという形になりま す。  トンネルの場合はそうはいきませんから、多くの場合、3交替で行っていますから、 当然発破をかけて、どんどん進んでいかないといけませんから、そのときは、15分、20 分、ちゃんと待機時間を置いてから入ります。当然、発破終了後直ちに換気装置を作動 し粉じん濃度の低減化をはかります。また、ガスに問題がある場合は、ガス濃度も測り ます。そういう意味では、発破も大丈夫だと思います。 ○座長  資料5の10頁で、「鉱山における坑内労働の特殊性」というのがあります。これは、 例えば「トンネル工事との相違」と書いてありますね。これを見ると、トンネル工事に 比べて、鉱山における坑内作業のほうが、ややリスクが大きいように見えるのですが、 その点はどうですか。 ○委員  いま、石炭も釧路しかありませんし、金属鉱山が、豊羽と菱刈ということになると、 豊羽だけは特異で、掘削直後の岩盤の温度は160度くらいありますから、掘った後直ぐ に作業をするのでは無く、掘ってしばらく放熱させておいて、岩盤温度の下がるのを待 って作業を開始します。  菱刈は、これから行かれればわかりますが、坑内水がそのまま温泉になるくらいです が、坑道も大きいですし、空調、クーラーが入っていますから、快適な職場と思います ので、そういう意味で、金属鉱山というのも、いまは2つしかありませんから、大丈夫 だと思います。  ただ心配なのは、石灰のところは、大きな所もありますが、小さい石灰鉱山は、岡山 に若干あります。それでもやはり、石そのもの自体が石灰ですから、それこそ石英を含 みませんので、そういう意味では濃度が高くても、若干、生体的には大丈夫かなという ことを考えると、いまのところは、ないのではないかと思います。鉱石の運搬もほとん どもうトラックですので、トロッコを押すとか言うものはなく、運搬がほとんどトラッ クで、鉱石の積み込みも重機を使用しますので、大丈夫ではないかと思います。 ○座長  石灰岩は、露天掘りが多いという説明がさっきありましたが、ほとんどがそうです か。 ○委員  ほとんど露天掘りです。 ○座長  それは坑内労働には入らないのですか。 ○委員  入りません。 ○座長  そうですか。 ○委員  そこは、女性が働いても何も問題ありません。トラックで、実際に働いていますが、 全然問題がないです。 ○事務局  お尋ねしたいのですが、一般産業との相違で、鉱山では、外部要因として予測するこ とが難しい自然条件の下で生産活動が行われるわけですね。そこにあるものを掘るわけ ですから、場所を変えるわけにいかないということで、トンネルよりも、ある意味で、 安全な所を選びにくいという制約がかかっているということだろうと思うのですが、そ れからくるリスク度合というのは、そもそもあるけれども、いま現に日本にある、残っ ている鉱山の状況から見ると、それほどでもないと、こういうふうな感じなのですか。 ○委員  いや、そうではなくて、例えばリスク要因があったとしても、例えば、岩盤が弱い所 だったら、当然それは初めからわかっていますから、自ら、ある程度固定する。あるい は、セメントで固めておいてから掘るという形で、そういう意味での安全をクリアーし ながら掘っていける。  要するに、菱刈の金鉱脈などは、金鉱がずっとあるわけではなくて、金鉱脈などとい うのは、1メートルくらいの細い所をずっと掘っていくわけですから、そうすると、そ のうちの2メートル、3メートルの所を掘っていって、本当にある所はほんの少ないわ けです。縦に、柱状にありますから、そうすると、当然そこは避けられないわけです。  そのときには当然、鉱脈はわかっていますから、亀裂が入っている鉱脈でしたら、そ れは要するに、岩盤が落ちない形にするし、それはいつも見回って、浮石があるかどう か、叩いてみているし、それはベテランの人が全部見てくれて。やはりいちばん怖いの は崩落ですから。崩落に対してということ、それはもう、先ほど言ったように、掘って いる場所、トンネルの石すべてが、自分の進むべき所の岩質、岩層という形のもの。た だ、そこに比べても、まだ突発的な湧水が起こってしまって、トンネル工事などでとき どきありますが、湧水が起きてしまって、思いのほか水が出てくるというときもあるか もしれませんが、それでも、昔は、例えば、大清水、青函、黒部などを掘っているとき に、ものすごい湧水が出てきましたが、ああいう特殊な所ですと、いまはもう結構、そ ういうところで学んできていますので、そういう意味では、かなり大丈夫。  ただ、事故が起こるのは、カガミ吹きといって、要するに掘っていって、崩落しない ようにセメントで固めていくということになるのですが、やはり浮石があって、逃げる ときに逃げ遅れてトンネルでの事故が若干起こることがありますけれども、そういうこ とから考えると、やはりそれは、ベテランの人がその状況をどう判断できるかというこ とですので、危ないところは、やはりある程度、予測がつくので、その予測を越えたと ころで事故は起こるというふうに考えます。  あとは、重機が動いていますので、重機のところで安全確保ができずに、安全道路を 通る、決められた所を通らないで、要するに「不慮の事故」という事故はあるかもしれ ませんけれども、ごく普通のマニュアルどおりにしていけば、よほどのことがない限 り、事故というのは少ないのではないか。  それらは、「ヒヤリ、ハット」という形で、建設現場で起こっているような、不注意 という形のものの事故の起こり方であって、自然に対しての災害というのは、かなり予 測がつきますので、それに対する準備は進んでいるのではないかと私は思います。 ○事務局  坑内労働の中で、仮に鉱山とトンネルと、2種類に類型を分けたとして、特段その2 つを峻別するほどの違いもないということでしょうか。 ○委員  ただ、トンネルの場合は、ただ真っ直ぐ掘っているだけですが、金属鉱山の場合は、 鉱脈というのと、入気と通気があります。それも考えなくてはいけない。トンネルの場 合は、掘っていって、人工的に空気を入れて、空気を吸うという形で換気をして、人の 健康を守っていますが、金属鉱山ではそれはできませんから、山の温度差を利用して、 通気を使っています。そうすると、その入気・通気によって、それぞれの考え方が違う のと、金属の場合は、自然の岩そのもの自体を支柱として残して掘っていきますから、 そうすると、掘り方も違ってくるし、工法も違ってきますので。でも、いずれにして も、ずっと掘った経験のある人たちがずっとやっていますし。まあ、「鉱山屋さん」と 言われるくらいの人たちですから、事前の知識をもっていますので、崩落とか、そうい う形のものについては大丈夫かなと思います。  石炭ということになると、結構いろんなことがあるのですが、いまは逆に石炭がない ですから、そういう意味では大丈夫ではないかという気がします。石炭ですと、ガスと か、いろんな問題がたくさんあります。坑道も小さいですから、当然電灯はありません で、真っ暗です。そうすると、歩くとき、物理的な事故がたくさんありますが、金属鉱 山は、そういうことはありませんで、電灯がずっとついていて、明るいですから。 ○委員  石炭は、日本では未来永劫ないですか。 ○委員  どうでしょうね。今は釧路だけで、これはエネルギー政策の問題ですから、どうなる かわかりませんが、一応平成18年まではやるということにはなっていて、その後どうす るかなということはわかりません。 ○委員  何年か後で、またやっぱりということにはならないでしょうか。 ○委員  いずれにしても、釧路で掘っているのは、私たちが昔入ったときの、4キロとか5キ ロ海底ではなくて、かなり手前のほうを掘っていますから、かなり危なくない所を掘っ ているということはあります。そういう意味では、昔ですと、例えば坑口から入って、 坑内に行くまで1時間半か2時間くらいかかって坑内に着いて、そこで4時間くらい作 業して戻ってくるという形でしたが、いまはもう、1時間あれば着いてしまう所で掘っ ていますから、そういう意味では大丈夫ではないかと思います。 ○大臣官房審議官  やはり釧路炭坑みたいな所は、女性労働禁止という観点からすると、女性がそこで労 働することについては、肉体的な問題、あるいは生理的、風紀的な問題も含めて、仮に その釧路炭坑が未来永劫続くとすれば、やはり問題ありとお考えでしょうか。 ○委員  大丈夫だと思います。うちの学生も、女性の学生が何人も入っていますし、1カ月く らい入って測定していたりしても、何も問題ありませんし。それにこれは昔のことで す。今ではなくて、昔、炭坑の盛んな頃に行っています。  ただ、そのとき問題だったのは、風呂の問題だけです。要するに、女性が入らない職 場ですから、なかなか、上がったときに、すぐお風呂に入れないということがあっただ けの話で、そこだけの問題で、中で作業すること自体についての問題は何もありません でした。  ましてやいまは昔と違いまして、きちっとされていますので、全然、炭坑に入ろうと しても大丈夫だと思います。 ○大臣官房審議官  例えば、作業員として仮に入ることも問題ない。 ○委員  そう思います。ただ、掘進作業のときに、ちょっと最近行っていないので、よくわか らないのですが、掘進作業のときに、結構重たい重機を持ち上げますので、そのとき荷 重労働となる。断面が小さいですから、要するに重機が使えなくて、ある程度肩にかつ いで持っていく。そのままの状況が残っているとしたら、相当、かなりの重労働になっ てしまう部分はあるかなと思いますが、今どういう状況なのか、ちょっとわかりません ので、何とも言えませんけれども。  でもまあ、それさえなければ、普通に全然問題ない。まして、ここに書いてある「監 督業務」などについては、全然何も問題ないと思います。 ○委員  さっきの、炭坑では電灯が使えないというのは、燃えやすいからということですか。 ○委員  やはり、メタンの爆発がありますから。もっとも炭坑というのは、防爆構造のもの以 外は使えないのです。すべて、バッテリーも電池も防爆ですし。例えば、粉じんを測る にしても、普通の市販のものではなくて、本質安全防爆型粉じん計でないと使えない。 要するに、すべてメタンガスの問題がありますので、炭じん爆発がいちばん怖いですか ら、炭坑はそこはやはり特殊な環境だと思います。 ○座長  先ほど、トンネルは空気を人工的に送っていけるけれども、鉱山ではそれができない とおっしゃったのは、なぜですか。 ○委員  トンネルというのは、どう頑張ってもその長さが4キロか5キロですよね。例えば、 釧路炭坑ですと、地下坑道の総延長距離は約300キロくらいありますが、そうする と、すべての所で換気はできませんので、どうしても入気坑道と排気坑道をそれぞれ作 り、排気と入気を分けて、必ず入気に排気が混じることがないようにするために、戸を 閉めて、排気の侵入を遮断して、必ず粉じんは全部排気坑道に出すという形になってい ます。  先ほど言いましたように、入坑から切羽など作業現場に到達するまでに約1時間くら いかかる場合もあり、坑内作業の場合、トンネルと同じことはできません。あくまでも トンネルの環境改善は、希釈換気だけでいいですから、鉱山に比べて楽な所だと思いま す。金属鉱山は、全く違っていて、行ってみるとわかると思いますが、坑内が何キロと いう長さですので、ちょっとそれは無理だと思います。  何層にもなっています。10層、10段階にもなっています。そこに、横断、全部ありま すから。それこそ、炭坑の金属のある所、炭層のある所を掘りますので、当然そうでな い所は全部石で埋まっているわけで、そこを全部掘り抜いていかなければいけない。そ うなると、どうしても作業現場が飛んでしまいますので。 ○座長  大体予定の時間に近くなってまいりました。まだ話していれば、いくらでもあるかも しれませんが、今日はこれくらいにさせていただきたいと思います。  事務局から、現地調査の実施とか、次回会合の予定について、連絡事項をお願いいた します。 ○事務局  現地調査については、本日会合前に、シールド工事、日比谷共同溝工事の調査を実施 させていただきましたが、これに加えて、鉱山については12月14日に、鹿児島県の菱刈 鉱山、山岳トンネル工事については、12月17日に、静岡県裾野市の第二東名高速道路富 沢トンネルの工事という予定で、実施させていただくこととしております。  ご参加いただける先生方におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。  また、次回の会合の開催につきましては、日時場所が決まり次第ご連絡をさせていた だきます。 ○座長  何か最後にご質問、ご発言ございますか。よろしゅうございますか。  それでは、今日、第1回の「女性の坑内労働に係る専門家会議」をこれで終了いたし ます。どうもありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 法規係 (内線:7836)