04/12/02 労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会第5回議事録        第5回 労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会                       日時  平成16年12月2日(木)                           14:00〜16:00                       場所  専用第16会議室 ○企画課長  定刻となりましたので、第5回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会を始 めます。  はじめに、本懇談会の座長でいらっしゃいました日高委員におかれましては、本年7 月28日にご逝去されました。ここに改めて生前のご貢献に感謝申し上げるとともに、謹 んでご冥福をお祈りしたいと思います。  座長が空席になっておりますので、座長が決まりますまでの間、私が進行役を勤めさ せていただきます。まず、勤労者生活分科会の委員に異動がありましたのでご紹介いた します。公益委員の日高委員の後任として村井委員に、労働側委員の宮野委員の後任と して新芝委員に、荻原委員の後任として末永委員に、山口委員の後任として田村委員に ご就任をいただいております。  本懇談会の委員は、勤労者生活分科会運営規程第9条第2項の規定によりまして、分 科会委員のうちから分科会長が指名することとされています。過日分科会長のご指名に より、公益委員として齋藤委員が就任され、また、労働側委員の宮野委員と山口委員が 辞任され、その後任として田村委員と南雲委員が就任をされております。本日は本懇談 会の委員につきましては全員ご出席をいただいております。また、分科会の委員につき ましては、どなたでもご出席をしていただけるということになっておりますが、本日は 村井委員、新芝委員、末永委員もご出席をいただいております。  本日の会議を始めるに当たりまして、新たに座長を選任していただく必要がありま す。懇談会の座長は、勤労者生活分科会運営規程第9条第3項の規定によりまして、懇 談会に属する公益を代表する委員のうちから、懇談会に属する委員で選挙をすることに なっておりますので、どなたかご推薦をいただける者はいらっしゃいませんでしょう か。 ○藤田委員  これは是非、齋藤さんにお願いしたいと思います。 ○企画課長  ほかにございませんでしょうか。それでは齋藤分科会長に座長をお願いすることとい たします。以後、会議の進行につきましては、齋藤座長にお願いをいたします。 ○齋藤座長  齋藤でございます。どうかよろしくお願いをいたします。今日の議題はお手元の議事 次第にありますが、財形貯蓄について(2)となっています。前回、少し議論をいたし ましたが、それに引き続いての議論ということになります。事務局から資料の説明をお 願いいたします。 ○企画官  論点のペーパーを中心に説明いたします。論点を説明するに当たり必要な部分だけを 参考資料の中から説明をしたいと思います。 ○齋藤座長  よろしくお願いいたします。 ○企画官  前回(7月)にご検討をいただいた際に、たくさんのご意見をいただき、再度整理い たしました。  また、前回(平成8年)の財形法の改正以来、多くの構造改革が進められ、財形法に 関連する内容もたくさんありますので、そういった構造改革の視点も踏まえながら整理 いたしました。  資料3です。「財形制度の検討に当っての視点」のタイトルペーパーです。前回、平 成8年の財形法の改正以来、多くの構造改革が行われていますが、財形法に関連する主 なものとして5つピックアップいたしました。  1つ目は、社会保障制度の構造改革です。公的年金の給付水準が今後、少し引き下げ られる形で制度改正が行われたりするということで、老後の所得保障の面でも、私的年 金の役割が高まっていく可能性が出てきているという状況の変化が見られると思います  2つ目は、1つ目とも関連するのですが、確定拠出年金の制度が平成13年に設けられ ました。この制度は自助努力で老後資金を積み立てていく制度で、施行後5年の見直し が平成18年10月から始まることになっています。  3つ目は、住宅政策がいま大きく変わろうとしています。国民が住宅を取得するに当 たって、国はいろいろ支援を行ってきたのですが、民間でできることは民間に任せると いうことで、住宅政策としては個別の住宅の取得の支援は基本的に行わない、民間の住 宅ローンの活用とか、中古やリフォームの市場を整備する方向へ、今大きく変わろうと しています。こういった状況も踏まえながら財形制度をどうするか考えていく必要があ ると思います。  4つ目は、税制改革の関係で「貯蓄から投資へ」という動きがあります。また、「金 融所得一体課税」という話が出てきています。こういったことも踏まえながら検討をし ていく必要があると思います。  5つ目は、金融システム改革の動きがかなり激しくなってきています。平成9年の金 融ビックバンの総理の指示からいろいろ改革が始まったわけですが、業態間の規制の緩 和が進み、これまでできなかったサービスがいろいろな業態でできるようになったり、  また、ペイ・オフが平成17年4月から完全実施されるという状況も出てきています。  こういった構造改革がいろいろ行われているわけですが、これはたくさんの項目の中 の一部にすぎません。構造改革が全体として目指している社会としては、国民の一人一 人の自助努力を基礎として、その自助努力を最大限に引き出すことによって、活力ある 社会を作っていこうというものです。そういった意味では、財形制度は、勤労者一人一 人の貯蓄をしようとする自助努力を事業主が支援し、国が非課税措置を設けるという支 援をすることによって、自助努力を引き出していく制度なので、この必要性は、こうい った構造改革の中でもより一層高まってきているのではないかと考えられます。  こういった視点に立って財形貯蓄についての論点を再度整理したものが資料4です。  前回、7月の会議の際にたくさんのご意見をいただきましたので、それをできるかぎ り盛り込む形でまとめました。  1つ目の論点が企業の福利厚生と財形制度との関係です。現行の制度は勤労者の自主 的な資産形成の自助努力に対して企業が協力し、それに対して国が支援をするという、 三者協力の原則が基本となっています。最近の状況を見ますと、企業の福利厚生の縮小 が見られることから、こういった原則を今後とも維持していくこととするかどうかとい う論点です。それとは逆に、企業の法定外の福利厚生とは切り離して、勤労者の自主的 な資産形成を、企業の福利厚生の支援の有無を問わず、国が支援する制度にするかどう か、その辺りをご検討いただきたいと思います。また、勤労者の資金需要にも年齢階層 別にさまざまなものがあるので、財形制度においては、どの資金需要を支援していくか についても、ご議論をいただきたいと思います。  参考資料の1においては、この論点との関係では、1頁から3頁までです。財形制度 においてはここにあるような3つが基本的な原則とされています。1つ目が自主性の原 則、2つ目が三者協力の原則、3つ目が勤労者への貯蓄還元の原則です。2つ目の三者 協力の原則が関係してくるのですが、これは勤労者の財産形成の自主的な努力に対し て、事業主や国が援助・協力をするということで、勤労者の自主的な努力がまずあっ て、それに対して事業主が一定の協力をし、それに対して国が更に支援をするという原 則になっています。  勤労者の自主的な努力が基本となるわけですが、企業の福利厚生が縮小していく中 で、この原則を引き続き維持していくこととするかどうかが1の論点です。事業主の協 力としては、貯蓄に関しては賃金から天引きをするという部分とか、事業主が拠出して 基金を作るような拠出金の部分とがあります。融資については負担軽減措置として、1 %の利子補給とか年3万円の負担軽減措置を講じていただく部分があります。この原則 を今後とも維持するかどうか、こういった事業主の協力がなくても国は支援していくと いう制度の建て前にするかどうかが1番目の論点です。  年齢階層別の資金需要についてですが、参考資料1の中では、勤労者の資金需要を7 つ取り上げており、どの資金需要を支援をしていくかについて少し触れたいと思いま す。  1つ目は、14頁で育児の関係の資金需要です。こども未来財団の子育てコストの推計 によりますと、下の表にあるように、妊娠・出産のコストとして約50万円、上の表にあ るように0歳児の子育てコストとして50万円ということで、0歳児で100万円ぐらいの コストがかかることになっています。15頁は1歳から6歳の子育てコストです。この表 にあるように各年齢ごとに約50万前後のお金がかかり、1歳から6歳までを合計すると 340万円ぐらいのコストがかかることになっています。  子育て支援の分野については、行政としていろいろな施策の充実が大幅に図られよう としています。16頁ですが、出生率が大幅に低下する中で、少子化の流れを変えるため のいろいろな施策が今大幅に充実されようとしています。平成15年には少子化対策の基 本法が制定され、また次世代育成対策推進法が制定されています。次世代育成支援の推 進法に基づいて、平成17年度から10年間、地方公共団体や企業で、少子化対策の取組を 自主的に進めていただくことになっています。平成17年度から新エンゼルプランに代わ る新たなエンゼルプラン(新新エンゼルプラン)が策定されて、各種の子育て施策に取 り組んでいくことになっています。こういった施策が充実される中で、子育てコストに ついて、財形制度としてどう考えていくかを検討いただきたいと思います。  19頁は、子どもの教育資金です。上の表で、子どもの教育資金については、国公立の 学校に行くのか、私立の学校に行くかによって、コストがかなり違ってきます。ケース 1では、国公立の学校にずっと行くという前提で計算した文部科学省の試算ですが、そ の場合793万円ぐらいかかることになります。ケース5の幼稚園は私立、小学校は公立、 中学校以降は全て私立という場合には、1,500万円ぐらいかかることになります。教育 資金としてはこのぐらいのお金がかかることになっているのです。この分野の支援策と しては、22頁にあるように、文部科学省において、最近、奨学金の充実がかなり図られ ています。平成10年には2,500億円程度の奨学金だったのですが、急激に奨学金の額は 増加しており、平成15年には6,320億円の奨学金が用意され、教育資金についても奨学 金の支給で大幅な施策の充実が図られている状況にあります。  24頁は、3つ目の資金需要です。住宅資金についてですが上の表、住宅金融公庫利用 者の平均の住宅取得額が、個人住宅の場合には建設費が約2,500万円、マンションの場 合には3,200万円となっています。そのうち手持資金として、最初に払われる額は、個 人住宅の場合には760万円、マンションの場合には670万円程度のお金がかかることにな っていて、残りのお金は住宅ローンで借りることになっています。下の表は各年ごとに 年収のどれぐらいのお金が、住宅取得に当たって必要になっているかを見たものです。 平成2年が年収倍率で見るといちばん高く、マンション価格が6,100万円ぐらいで年収 の8倍ぐらいのお金が要った状態でしたが、最近、住宅の価格が下がってきて、平成14 年はマンションの価格は約4,000万円、年収倍率で4.9倍になっています。そういう意味 では、平成の初めのころと比べて住宅は少し取得しやすくなってきているのではないか と思います。  26頁は、4つ目の資金需要である自己啓発の資金です。勤労者が会社に勤めている間 にいろいろな勉強をするための自己啓発の費用ですが、費用そのものについては28頁で す。どういった自己啓発をするかによって、費用の額が多かったり少なかったりするの ですが、かかった費用の総額としては、男性で7万4,000円余り、女性で6万7,000円余 りということで、約7万円ぐらい年間自己啓発に使われています。この7万円ぐらいの 費用のうち、教育訓練給付で一部費用の補助が受けられたり、会社から補助があったり するということで、4の表で自己負担の部分だけを見ると、約5万円になっており、こ れぐらいの費用がかかっているわけです。  29頁ですが、この分野の行政の支援策としては、平成10年に教育訓練給付制度がで き、雇用保険から自己啓発のために教育訓練を行った場合に、現在はその要した費用の 4割、20万円を上限に費用を給付する制度ができています。指定講座数としても今年の 6月現在で、約1万2,000講座が指定されています。こういった支援策がある中で、財 形制度においては、自己啓発資金について、どう扱うかをご検討いただきたいと思いま す。  5つ目の資金需要は医療資金です。31頁の(1)の総数のところですが、国民一人当た り平均で24万4,000円程度かかっています。若い年齢の間はそれほどたくさんはかかっ ていないのですが、高齢になるほどたくさんの額がかかることになっています。これに ついては医療保険制度において、サラリーマン本人と家族については、かかった額の3 割が自己負担となっており、老人については1割、3歳未満の子どもについては2割が 自己負担となっているので、自己負担の額としてはかなり少ない額になっています。こ ういった資金を財形制度の上でどう扱うかが論点になります。  33頁は老後の生活資金です。これは家計調査で、60歳以上の夫婦2人、無職世帯の家 計収入と支出を見たものです。支出については、消費支出が25万円余り、非消費支出は 主に税金ですが、これを合わせると、28万円ぐらいのお金が要ることになっています。 それに対して収入は年金の給付も含めて、実収入としては23万円ぐらいということで、 支出と比べると収入は約5万円ぐらい不足していることになります。これは月単位のも のですが、60歳の世帯が平均余命ぐらいまで生存することを前提に考えると、老後の生 活資金としては月28万円ぐらい要るということから、約8,000万円程度必要ということ になります。また、月単位で5万円ぐらい収入が不足している部分については、平均余 命まで生存することを考えると、約1,500万円貯蓄が必要ということになります。この 老後の生活資金をどうするかについても後ほどご議論をいただきたいと思います。  35頁は介護費用です。介護費用については、平成12年に介護保険の制度ができまし て、要介護度に応じて必要なサービスが行われることになっています。その自己負担は 1割になっています。36頁の上の表ですが、被保険者1人あたりの支給額は全国平均で 19万3,000円ぐらいです。1割が自己負担なので、自己負担額は約2万円になります。 こうした中で、財形制度として、この介護費用をどう扱うかについて、ご議論をいただ きたいと思います。以上が1番の論点です。  2番の論点です。2番は社会保障制度全体の中で、財形年金貯蓄をどう位置付けてい くかという論点です。これは公的年金の給付水準が下がってきたり、企業の退職金や企 業年金の給付水準が下がってきたりする中で、財形年金貯蓄は老後の必要な資金を貯め るための貯蓄ですが、この制度を社会保障制度全体の中で、一定の役割を果たしていく ように位置づけることが必要かどうかということについての論点です。その際、老後の 生活資金を自助努力で積み立てる制度として、確定拠出年金の制度が既にできています ので、これとの関係をどう整理するかも1つの論点になります。  参考資料2の3頁です。年金の支給開始年齢がそれぞれ改正のつど引き上げられてき ており、平成6年の改正では、基礎年金が60歳から65歳に引き上げられ、平成12年の改 正では厚生年金が60歳から65歳に引き上げられています。4頁は、平成16年の年金の改 正で、65歳時点でもらえる標準的な年金の給付水準が、平成16年時点では現役の最後の 時の所得の59.3%でしたが、平成35年以降、50.2%まで下げられることになっていま す。これは65歳時点での給付水準ですが、年齢が高くなればなるほど下がっていくこと となっており、75歳時点では45%、85歳時点では40%という水準となり、給付水準が下 がっていくことになっています。  7頁は、企業年金制度についてです。平成13年の企業年金の制度改正で、適格退職年 金の制度は平成14年以降は新設は認められないことになり、10年間かけて廃止されてい くことになっています。その関係でいまは左側の制度から右側の制度に、企業年金の制 度が移っている状態です。このような状況の中で、それぞれの企業年金の制度がどうな っているかですが、8頁が適格退職年金で、加入者数や契約件数は年々下がってきてい ます。9頁が厚生年金基金で、これも平成9年をピークに下がってきています。11頁 は、確定給付年金についてです、新しく制度が出来たもので、年々増えてきています が、平成16年8月現在で650余り、厚生年金基金や適格退職年金が減っていくほどには、 増えていない状況にあります。12頁は、退職金のある企業の割合です。年々、退職金の ある企業の割合が減ってきています。13頁の退職金の給付額そのものも平成9年と平成 14年を比べると、下がってきている状況にあります。  15頁ですが、現在、政府部内で内閣官房長官主催で、社会保障制度の在り方に関する 懇談会が開催されています。この中では、社会保障制度の給付と負担の在り方とか、年 金の一元化の在り方などについて議論が行われております。17頁にスケジュールがあり ますが、平成16年の年末に論点整理を行い、平成19年度末までに結論を何らかの形でま とめていくことになっています。この検討にあたりまして、18頁から21頁にかけて、日 本経団連や経済同友会、連合などから、いろいろな意見が出されています。  22頁ですが、政府与党の中でも、この問題についての小委員会を設けて、検討するこ ととれています。このような年金制度全体の見直しの動きがあるので、財形の老後の生 活保障をどうするかという問題も、公的年金全体の制度の見直しと合わせて検討をして いく必要があるのではないかと思います。  33頁は、確定拠出年金についてですが、確定拠出年金の加入者は、今年の9月現在 で、企業型が約100万人、個人型が3万5,000人で、個人型の加入者はあまり増えていな い状況です。39頁は、どういう形で運用しているかについてです。39頁の中程、加入者 の運用状況の表ですが、いちばん多いのが預貯金約33億円、次が投資信託約23億円、そ の次が損害保険12億円の形で、元本確保型のほうが少し多くなっています。41頁は、確 定拠出年金の運用をしている運営管理機関が、どのような商品を加入者に勧めているか についてです。運営管理機関は、平成15年度末現在で162社ありますが、元本確保型の 勧めている商品数が548、その他の商品が1,428となっています。運営機関1社あたりで 見ると、3.4対8.8の形になっています。44頁は、確定拠出型年金の個人型に加入する場 合の手数料です。下の表をご覧ください。年間で国民年金基金連合会に支払う手数料が 1,200円、運営管理機関に支払っていろいろな投資サービスを受けるための手数料が 5,040円。資産管理機関に払う手数料が756円で、合計で約7,000円手数料が必要となっ ています。  3番目の論点は住宅政策の転換についてです。これまで国の住宅政策は新規住宅の取 得支援が中心でしたが、住宅金融公庫も独立行政法人化され、新規住宅取得支援の住宅 ローンは大幅に縮小されることになっています。そういったことから、今後の住宅政策 としては、民間の住宅ローンの活用と、中古・リフォーム市場の整備を中心とした方向 への政策転換に向けて検討が進められています。また、都市再生機構についても、一歩 先に住宅分譲は行わないこととされています。このように、住宅政策としては、国民個 人の持ち家の支援は直接は行わないことになっている中で、財形貯蓄をどう扱っていく かということについて、ご議論をいただきたいと思います。  4番目の論点です。制度の対象者についてです。制度の対象者は財形制度の創設時に は、住宅や預貯金の面で、自営業者と勤労者の間で格差があるということで、勤労者の みを対象に制度が作られた経緯があります。老後の生活資金の保障とか、住宅取得の問 題については、勤労者も自営業者もほぼ同じような状態にあることから、今後の制度の 対象者として、自営業者も含めて考えていくこととするかどうかについてご議論いただ きたいと思います。また、もう一つ、貯蓄率の低い若年者が増えてきている問題やフリ ーターの問題があるので、その辺について財形制度として、どう対応していくかについ てご議論をいただきたいと思います。  5番目の論点として税制改正の関係です。税制の関係では「貯蓄から投資へ」が基本 的な方向になっていますが、財形制度の上では、安定確実な運用ができるものが対象と する金融商品となっていることから、今後の制度としては投資性の高いものも含めてい くかどうかについて、ご議論をいただきたいと思います。  税制関係の2つ目です。金融所得課税の一体化の議論が進められています。この一体 化として課税方法を統一することが前提になっていることから、金融所得一体課税が実 施される時には、課税方法の統一の議論の中で、財形の利子非課税措置の廃止の議論が 出てくる可能性があり、その点についてどう対応していくかご議論をいただきたいと思 います。  6番目の論点は、金融システム改革の進展との関係です。業態間規制が緩和されて、 どの業態でもいろいろなサービスができるようになってきています。また、来年の4月 からはペイオフが完全実施されることになっています。こういった中で財形制度におい ては、年金と住宅の財形は一旦商品を決めて預け始めると、新しい有利な商品が出てき ても、あるいは金融機関の破綻の恐れがある場合でも、預け替えができないという問題 があったりすることから、今後、この問題についてどう対応していくか、ご議論いただ きたいと思います。  7番目の論点は、ポータビリティの問題です。離転職者の割合が増えてきています。 いまの財形制度は離職して失業期間を経て再就職する場合に、再就職先に財形制度があ れば財形は継続できることになっていますが、失業期間が2年を超えると転職先に財形 制度があっても継続できないことになっています。その失業期間はこれまで半年であっ たところを1年に延ばし、1年であったところを今年度から2年に延ばしました。2年 以上の失業期間の者もまだたくさんおられて、そのような者については転職先に財形制 度があっても財形が継続できない状況になっています。こういった中でポータビリティ の問題については、失業期間を2年から3年、4年と延ばす形で対応していくこととす るのか、それとも確定拠出型年金のように、公的な機関で失業期間について預かっても らいその後、再就職をした場合に継続できるような仕組を考えていくこととするかどう か、その辺りについてご議論をいただきたいと思います。  8番目の論点は、払い込みの仕方についてです。現行の制度は事業主が給料から天引 きする形で払い込みを行っていますが、この払い込みの事務が負担になるということ で、中小企業には財形制度はあまり普及していません。こういったことから給料天引と いう制度を前提としながら、事務コストをできるかぎり低くする工夫をして、中小企業 に普及させていく方法を今後検討することとするか、それとも事業主が給料天引の仕組 みをやらない場合には、勤労者が自分で口座を開くような仕組みを考えることとするか どうか、その辺りについてご議論をいただきたいと思います。  以上、ご検討をいただきたい論点について説明いたしました。 ○齋藤座長  少し議論をしていきたいと思います。論点が細かいところから、理念的なところま で、いろいろ混ざっているようなので、最初に1番目から4番目までのところ。財形制 度の狙いとするところは、今までどういうところにあって、これからもどういうところ を狙いとしたような制度を構築すればいいのかが、おそらく1から4までの論点だろう と思います。その辺を中心にして、今日ご説明のあった資料への質問でもいいですし、 何かお考えがあればお聞かせいただいても結構ですので、ご自由にご議論をいただきた いと思いますが、いかがですか。 ○南雲委員  その前に、私もこの基本問題懇談会の委員としては、初めて出てきているわけです が、入口の論議からで申し訳ないのですが、この基本問題懇談会なり勤労者生活分科会 で、いつごろまでに何を方向づけしなければならないのかというところ、その辺のとこ ろをこれからいろいろ議論をしていく上で、少し頭の整理をしておいた方がいいのかな と思うのです。これまでの整理された論点がこういうところかな、ということで伺って いたので、しからば何をどこまで、いつまでにこの懇談会として方向づけをしていくの かを、大筋ご説明いただけますか。 ○企画課長  この基本問題懇談会ですが、6月から議論の進め方を新たにいたしました。その中で 財形について制度論を含めた基本的な問題を議論していただくということで、6月に説 明したときには、来年の春ぐらいまでを一応のスケジュールとして、検討をお願いした いということで始めたところです。ただ、前回、財形貯蓄の第1回でご議論をいただい たときに、ここにまとめたような8点、非常に根本的な財形はかくあるべきかというこ とに立ち戻ったような議論を含めて、さまざまな意見が出てきました。それらがいずれ も法改正を含む、根本的な制度の見直しを含むような事項でした。  そういうことから、従来予定をしていた3月とかではなくて、もう少し時間をかけて 議論をせざるを得ないのではないかと思っています。こういったことから議論をするに は、例えば来年の秋・冬ごろまで時間を取っていただいて、少し財形の基本問題に立ち 返った、じっくりした議論をしていただきたいと思います。今後の構造改革もあるとい う説明をしましたが、そういったことにもフィットするような基本的な視点を含めたご 議論をまとめていただき、根本的な意味を含めての制度論について、ご議論をいただき たいということです。 ○齋藤座長  何かございますか。 ○田村委員  私も初めて出させていただいて、過去のものは記録を読ませていただきました。今日 の論点の整理などを見ても、財形貯蓄には年金、住宅といろいろありますが、いわゆる 勤労者、これからは自営業者も入れるかどうかは論点なのでしょうが、この人たちを含 めて、こういう将来のいろいろな不安、あるいはお金の使途の問題を考え、この整理の 仕方を見ると、こういうものは拡大して残す必要がある、という視点でいいのだろうと 思っているのです。  その中で使い勝手の悪さだったり、運用で限定されているところがポータビリティー の問題だとか、あるいは解約するときに、住宅貯蓄でしたら住宅以外の支途の場合に は、非課税の部分が課税扱いになるのだと、こんな理解でいいのではないかと思ってい るのですが。その辺また、元へ帰って議論が始まるのでしょうか。 ○齋藤座長  私が言うのはどうかと思うのですが、いま資料の説明を伺っていろいろ考えると、そ う物事は単純ではないだろうと思います。いろいろな基本問題をもう1回考え直してみ ると、制度自身存続すべきというか、残しておいた方がいいのか、あるいは全く別のも のに切り替えてしまうのか、あるいはなくしてしまったほうがいいのか。その辺の判断 はなかなか難しいのではないかという感じが、私自身はしたのです。  例えば住宅だって国の関与なり何なりから、できるだけ手を引こうという動きのとき に、国が関与する制度で残していくのかということは、基本的問題として当然残ってく るだろうと思います。そういうことをいろいろ考え合わせると、そう単純ではなく非常 に複雑な議論がいろいろあるのではないかと、私のイメージとしてはそういう感じがす るのです。 ○勤労者生活部長  課長が少し説明いたしましたが、当初この基本問題懇談会を立ち上げたときの事務方 が考えていたやり方と、今議論していただこうと考えている内容は、実は少し変わって います。立ち上げたときには基本問題懇談会という名前でありながら、従前の財形制度 の改正部分はないだろうかと皆様方の合意を得て、早急に直せるような部分を洗い出す ぐらいの作業をすることで、セミ基本問題ぐらいで議論できるのではないかということ で、提案したつもりだったのです。  ところが議論をしていただくと、自分が受け止めたかぎりでは、財形制度の在り方そ のものにかかわるようなご意見ご質問が出ました。そこを議論しないで部分修正といい ますか、ここをこういうふうに改良するというご意見は、仮に受け止めたとしても、こ こに挙げた政府全体のいろいろな政策との整合性から実現するかどうかもわからず、仮 にできたとしても、長い意味で政府全体の政策との整合性が取れるかどうかを検証しな いと、不発に終わるというか無駄に終わることになりそうなものが、非常に多かったの です。  この制度の成り立ちについての理解を深めていただきながら議論をしたい、というこ とで付け加えました。その時に申し上げたのですが、だからといって現段階でわかる個 別改良部分の議論を否定するものではない。二兎を追う者一兎を得ずということになる かはわからないのですが、短期的な問題意識もテーマ設定で出していただきながら、同 時により基本的な部分のご意見をいただきたいのです。  普通であれば審議会などで、ある程度着地点を考えて、それについての賛否を得なが ら改良型のものを得ることが普通の手順なのですが、ここは基本に立ち返って、この名 前にあるとおり基本問題を懇談していただいて、政府全体との整合性がある意見を複数 でもいいから出していただく。それをベースに素案をもう1回作って、今度は審議会に 諮るくらいにしたいと思うのです。この会議は先ほど言いましたように1年ぐらいかけ て、もう少し全体を鳥瞰した皆様方のご意見を、それぞれ専門がありましょうから、こ ういう目から見ると財形のここのところは変えてもいいのではないかとか、場合によっ ては財形は要らないという議論もあり得るかもしれません。  そこで、事務局としては財形は要らないと議論されると議論が成り立たないものです から、とりあえずこの1枚紙(資料3)をお示ししました。財形を取り囲む5つの状況 がいろいろ変わっていますが、財形の基本コンセプトである自助努力を涵養するという ことは、ある程度重要だし、成果があったことを納得していただいて、とりあえずその 目線で組み替えが可能かどうかを検証していただく。もちろんそれを超えるご議論を出 していただいても結構です。そういう意味で、本当に懇談をしていただきたいという気 持で、いろいろな施策についてご迷惑かもしれませんが、事務方も十分整理し切れてい ないものですからご紹介したという、それが本当に正直なところです。  さらにもう1つ、ここで説明を付け加えなければいけないのは、財形制度が昭和46年 にできましたが、当時は、我が国における勤労者、中所得層の方々の生活をよくすると いうイメージも、同時に兼ね備えていました。貯蓄ができるというのは、生活をして貯 めるお金がある方なのです。その貯めるお金がない方までを対象にするかというと、申 し訳ないですがそれは切り、それは社会政策で別途やっていただく。そして、良い生活 を目指す方について、努力すれば金も貯まる、フローもストックも貯まるということを 使用者と政府が一緒になって作るという仕組みができないか。それで諸外国、ドイツな どの例も参考にして導入しました。そういう意味で、中所得者層が広がる、それを広げ るという政策がまさにフィットしたのです。それでここまできたわけですが、いまの自 助努力という同じコンセプトの中での構造改革が最終局面を迎える中で、政府の諸施策 の基本的方向が変わっている中で、本当にそれだけでいいのだろうか。現象面としては グローバル化する中で、いわゆる所得の階層化、二極化が起こっている中で、本当に中 間層を狙った政策があるのだろうかということもあり得ると思うのです。  厚生労働省としてやる政策であれば、低所得者、つまり収入のない層のほうの政策に むしろシフトしていって、所得のある方の政策のウエイトをもう少し軽くして、という 議論があるかもわからない。しかし、それをやってしまうとこの議論はできませんから 、最初にも申しましたように、この制度の自助努力、事業主も協力する、政府も協力す るというこの3点を押さえた上で、支援の仕方や枠組みを、政策と整合性のとれる組み 替えが可能かどうかを是非とも教えていただきたい。その方向性である程度合意できれ ば、それに向けて個別の制度改造をするといった整理を是非ともしたいということです 。  非常に大風呂敷で恐縮なのですが、それぐらいやらなければいけないくらい、財形制 度というのは年月は経っているし、政策の中でもいわば存否が問われている状況ではな いかと、ある意味では危機意識の現れだとご理解いただきたいと思います。 ○齋藤座長  どんな論点でも結構ですのでどうぞご自由にご発言ください。一義的に回答を出すの が難しいものですから。 ○勤労者生活部長  どんなご意見でもいただいたものを組み直して、またご意見をいただくということに したいと思います。 ○南雲委員  そういう意味では、先ほどいろいろ説明を受けて、特に今日いろいろな構造改革が目 白押しの中で、特にバブル崩壊以降いろいろな形で変わってきている中で、結論的には 自助努力をする、あるいは支援する。この勤労者の財産形成促進法の役割は、より強ま ってきているだろうと思います。特に構造改革等々、今日までの状況を見ると、より強 いものは強くなって、弱いものはより弱くなる二極化の現象は余計強くなって、弱い勤 労者はどんどん厳しい状況に追い込まれてきています。さらに、特に若い人などは企業 が正社員を採用しないものですから、やれニートだ、やれフリーターだということで。 こんなことが続いていったら日本の社会はどうなっていくのか。今日の社会現象、社会 問題として出てきていることを考えると、もう少し昔の日本の雇用関係なり、雇用形態 に戻しながら、勤労者の財産形成を計画的にやっていく制度は、必要性がより高まって きていると思います。論点の基本的なそもそも論からいってもそう思います。そういう 点では、いまは雇用の流動化等で、一般財形は3年、財形年金、財形住宅は5年以上続 けて実施しないとこの制度の対象にならないということで、どんどん対象が減ってきて います。しかし、一方では、前回の議論を聞いていて変な発言をしたかもしれません が、よく見ると、労働組合がある所は、まだ企業と財形制度をやろうということで、比 較的この財形制度を推進しています。ところが、労働組合のない所は、企業がやらない といったらやらないわけです。また、中小の50人以下の企業では経営者の皆さんは自分 を含めてあまりやりたがらない。そういう所は全くやられていないのではないか。した がって、そういう弱い所ほど、この制度が浸透していかないところに問題があります。 今日のような状況だったら、そういう所へどう普及なり拡大をしていくのかというとこ ろで、お互いに努力をしていくということが求められているし、強めていかなければな らないのではないかと思います。 ○松井委員  南雲委員の言われたことは大変重要な指摘だと思います。中小企業にいままで普及す るための努力は、おそらく厚生労働省としてもずっと取り組んできたわけですが、現実 を見てみるとそれがうまくいっていない。いちばん最初に「三者協力の原則が基本」と 書いてあり、中小企業ですと正直言って、三者協力の原則が、なかなか成り立ちにくい という実態があると思います。そういう実態がある中で、原則は原則だと言い続けてい くと、おそらくどのようなことをやっても、普及しにくい部分もあるのかもしれない。 そうすると、座長が4番くらいまでというお話だったのですが、金融システムの改革や 参考資料の8に、勤労者自身による払込みなどで、自分の預金口座から積み立てるよう な仕組みも十分できるようになってきたので、あえて原則ということを言い続けないで もやっていく、そういうことも1つのオプションとして考えていかなくてはいけないの ではないかと思います。  ただ、そうすると、自営業者との区別はどうなのかというときの、何らかの仕掛けが 必要になってくると思うのですが、勤労者からは「あの人はうちで働いているよ」と金 融機関にお知らせをするのか、あるいは金融機関にそういうものを届け出たら、「あな たの所で働いていますか」とか、何かそのようなことの確認をしていくなど、フィージ ビリティを十分に考えて作っていかなければいけないと思うのです。例えば年金の基礎 年金番号で厚生年金にちゃんと入り続けているのかどうかとか、少し従来とは違うこと も考えて、できるところはそのままでいくのか、できるところは優遇措置をなくしてし まうのかどうか、それはもっと先になって議論しなくてはいけないと思うのですが、で きないところに焦点を当てるならば、何がやれるのかというのも、大変重要なのではな いかと思います。 ○勝委員  いまのお話に関連するのですが、南雲委員が言われたように正社員の数は急激に減っ ていて、また、実態的には中小企業ができないことから考えれば、財形貯蓄の対象者の 範囲が減っていっている。まさに実態面で動いていることなのではないかと思います。 そのように考えると、これも前の懇談会でも申し上げたことですが、誰もが同じような サービスを受けることが非常に重要になってくるのではないか。大企業あるいはある程 度の大きさの企業に関しては、福利厚生と切り離して考えられないと思われる。1番の 論点であったように、福利厚生とは切り離した自助努力を主体とする制度にすべきとい うことであれば、福利厚生と絡めて考えるべきなのではないか。問題はそれ以下という か、小さい規模の勤労者、あるいは自営業者で、4番の論点にもかかわるわけですが、 アメリカではIRA制度というのがあって、誰でも就労者であれば貯蓄を増大させられ る機会があるといったことを考えると、やはりここで審議することは、下の階層の部分 で、こういった財形貯蓄を増強するような仕組みを考えるかということだと思うので す。  それとの関係からすると、3番で住宅政策の転換への対応とあります。これを見ると 住宅財形は要らないような感じに受けられるわけですが、制度をより簡素化する。例え ばいまは一般と住宅と年金の3つに分かれていますが、これを全部一緒に財形としてし まい、払出しをするときだけ特例で、例えば先ほどのお話にありました子育てや介護、 自己啓発であるとか、教育、住宅などさまざまな資金がかかるとすれば、その払い戻す ときに非課税にするということで、もう少し簡素化することも考えていいかと思いま す。  もう1点、全体の議論との関連からいうと、部長からお話があったわけですが、例え ば政府全体の議論との整合性を考えると、税調なら税調で金融所得一体課税の話が進ん でいる、社会保障制度に関してもまた違うところで進んでいるし、年金制度の改革もま た進んでいるということになると、ここで何某かの結論が出て、あるいはこの審議会で 結論が出た場合に、その実効性から考えると、政府全体の議論との整合性の中では、こ こで議論されたことが反映されるのか反映されないのか、といったことはどのようにお 考えになっているかお聞かせください。 ○勤労者生活部長  最後の部分だけの話ですが、概ね1年間というスケジュールを申し上げたのは、政府 がやっていく住宅政策であれ金融政策であれ、長くみて1年半ぐらいの間に、それぞれ のセクションで方向性が出るというスケジュール感覚があり、こちらの仮置きの議論で 先ほど言いましたように2〜3案を出していただく。そうすると、そこで政府の流れを 見ながら、再度整合性のあるものにしてお諮りするという感じでいます。ここで出して いただく案が、1つでは逆に困りまして、2〜3案こんな形でという意見があれば、ほ かの住宅政策、金融政策その他一連のものが、この冬から来年の夏ぐらいまでにかけ て、必ずスケジュール的には出る読みになっています。それを見ながら整理し、もう一 度それらと整合性があるものを提示して、次に議論をしていただく進め方をとれば、相 当実効性あるものに近いものになるのではないかということです。 ○奥村委員  いまの議論に関連して申し上げますが、財形制度を利用してきた立場の我々として は、制度として勤労者が公平に利用できることが建て前としてあると思います。しか し、中小企業になかなか普及しないという意見があるのですが、実はそれを考えてみる と、財形だけの問題ではないのです。財形を使いにくいということがあるとしても、中 小企業は財形以外のことを、大企業並にやっているかというと決してそうではない。だ から、財形だけをみんなが利用できるようにするということは、逆にあまり意味がない かと思います。そうすると、どうなるかというと、いま老後の資産形成や住宅取得に関 する支援はあまり強くやるべきではないのではないかという議論が出ています。支援す べき対象のものがあって、そういうもののために財産形成するということがあるので す。振り返ってみると、そういう制度を作っても利用できるのは大企業だけかなという ことで、全国民的に見ると、一部の大企業にいる貯蓄をする余裕のある勤労者が使う制 度になってしまってもまずいかなと思います。そういう意味では、少し今までの発想と 変えて議論しないといけないかなと思います。  我々は一時一般財形というのはあまり意味がないと考えていました。貯蓄として考え ても、非課税貯蓄の優遇制度の対象にならないですから、手間ばかりかかって、企業と してもコストはかかるし、社員にとっても非常に不便だと。今度ペイ・オフなどが完全 に実施されるようになると、ますますそういうことがあると思うのですが、やめようか と考えていたときに、マル優に匹敵する活用給付金、助成金という制度が作られたわけ です。それは中小企業にも広く財形を浸透させて、利用してもらおうという趣旨だった のですが、成果は出なかった。だから、どうすれば、あまねく勤労者が利用できるよう な制度になるのかということを、もう1回考え直さないといけないのではないか。その ときに、勤労者が利用できる、もしくはほかの自営業者とのバランスもとれるというこ とにならないと、全体的コンセンサスは得られないのではないか。それについてはいろ いろ考えていることもあるのですが、急にこうしたらどうこうという議論が出始めてい るので、もう少し制度としての意味みたいなことを考えなければいけないし、勤労者と しての制度は何かという視点が要るのではないかと思います。 ○新村委員  以前にも申し上げたと思いますが、いつも基本に立ち返ることばかりを申し上げて大 変恐縮しています。今回の論点ペーパーはそういう意味からすると、大変網羅的にまと めていただいています。30年前に発足したこの財形制度が、いまここにある論点のよ に、多分存続が問われているのだと思うので、この1つずつに誠実に応えていかない と、財形制度は自らつぶれてしまうようなものになってしまっているという認識です。 その中でも大きな問題は、いま議論になっていたように、勤労者一般に網をかけて、そ のすべてに対して利用可能ということは、おそらくもう意味がないことではないかと思 います。その背景には、1つは日本全体が大変豊かになってライフスタイルが多様化し ている中で、財形制度は非常に標準的な勤労者を対象として考えている、しかも相対的 に勤労者は自営業に比べて資産が足りなかったという状況の中で創られた、すべてがい ま変わってきていると思うのです。  勤労者のライフスタイルも決して一様ではないし、企業との関係でも先ほど古き良き 姿に戻されたいとおっしゃったのですが、戻されたいという希望があっても、多分それ は前提としてはいけない、今後はさらに流動化が進むのではないか。そういうことを前 提に考えなければいけないのではないかと思うのです。したがって、勤労者全般にすべ ての人にいいような制度を作るのは、今度はもう1つ、財政の厳しい状況があって、非 常に限られた資源を一体国がどこに優先的に使うかというときに、これまた時代的に無 理ではないだろうか。そうすると、この制度が一体どういう者にどういう形で役に立て ると国民経済的合意が得られるのだろうかということを考えなくてはいけないのだと思 います。  そうすると、先ほどなるべくすべての勤労者がという発想は、もし財政資源の配分と いう意味からすると、それはこんなに豊かになったのだから、ご自分でおやりください ということになって、それでもリスクが人生にはある以上、それへの備えが個人である 程度できなくてはいけない。それが自助という部分だと思うのです。その部分に、制度 の本来からいって社会政策の対象になるような方は、もちろん対象にしませんが、そう ではなく、非常に資産形成が困難な方にターゲットを絞って、その者が使いやすいよう な制度になったらいいのではないかというのが私の全体を伺った感想です。あまねく勤 労者ならすべてが利用できる制度ということだと、財政資源を配分することに、国民的 合意が得られないのではないかと思います。そうすると、もう少し困難であるターゲッ ト、しかし、自主努力をしたいという意識の高い者に対して、ちょっとお手伝いをする ような制度になったらいいなということで、いつも基本がちょっと違うのではないかと いうことを申し上げたわけです。  雇用の流動化に関して言うと、いま、企業からの天引きということが大きな前提で原 則の1つになっていますが、これもいまのように自動振込など、さまざまな機能が整備 されてきた中では、使える企業は使ってもいいと思うのですが、それを必ずしも原則と する必要はないのではないかと思います。私はこの委員会は随分長いのですが、いつも いつも中小企業がなかなか入ってくれないのですよと資料をたくさん見せられて、今度 はこういうことをします、今度はこういうことをします、そして、次のときに、まだ中 小企業が入っていないんですよという繰り返しだったのです。これはどこか制度に抜本 的な欠陥があるのではないかと思いまして。それなら天引きをやめてしまったらといっ て、いまやっているところまで否定するものではなく、天引きだからできないようなと ころがあるならば、それを原則にする必要はないのではないか。これは第1番の論点に 関連しますが、企業が関与することを否定するわけではないが、それを要件としないと いう原則に変えてもいいのではないかと思ったりもします。とにかく私はもう少しター ゲットを絞らないと、なかなか国民的合意が得られない。特に大企業の相対的に資産形 成をやりやすい者が多く加入しているという結果を見ますと、やはりちょっと変かなと 思わざるを得ないのです。それで、いつも基本的な議論をして、また同じことを申し上 げました。 ○勤労者生活部長  その点は、自分もこの制度に関して痛感していることなので、現行の制度だけで解説 を申し上げますと、財形制度の生い立ちに問題というか根っこがあり、比喩的にいうと 財形制度を作るころの大企業というのは、バラ色の企業だったと考えていただいていい と思うのです。つまり、法定外福利も従業員のためにたくさんやる。勤労者もどんどん フローが増えてきて、ストックに変えたいという中で、それをさせてあげようという大 企業が相当にいる。そのいいバラ色のモデルに向けて中小企業群を誘引したい。まさに 誘引政策として導入したのです。そして、さらにその時の読みも、中小企業群も大企業 並みに法定外福利費をもっと出してくれるであろう。そうすると、その出したいという 動機付けがあるから、それをさらに刺激して、もっとやるために国としてどういう政策 が要るだろうかと仕組んだわけです。そのときに、最小限、さらに労働者についても自 ら一定の資産にフローがあって、それをストック化したいという意欲ある労働者がい て、民間の金融機関などをうまく使おうとしても必ずしもネットワークができていない から十分でない。だから、そこを助げてあげるために仕組もうではないか。その最低限 の使用者の支援が天引きという手間をかけること。さらには法定外福利費でいろいろな 費目を見ると、相当コストをかけているので、貯めるとお金をあげるという給付金でも いいではないかと導入しました。さらに、給付金というシステムだと、税制上必ずしも うまくいかないから、厚生年金基金みたいなものがあるのだったら、法人化してあげる ともっと合理化して食い付くではないかというのでやりました。  そして、貯蓄などについては住宅取得控除という税制だったのですが、それを貯蓄の 中に取り込んで、目的非課税化するということで、ある意味では労使ともによりお互い が緊密にトリパターンで三者関係を組んで、法定外福利費を増やし、それがいいことだ というコンセプトがあってはじめて成り立ったものですから、制度全体が誘引政策だっ たのです。そして、いつもいつも政府部内で、なぜこんな誘引政策がいつまでも要るの かと言われたときに、これは即効薬ではないけれども、漢方みたいに自助努力、つまり やりたいという者についてはそれができる手段を政府が提供し続けることが、勤労性と いうか、勤勉性を培うための根元なのですという言い方をしてやっていたのが、まさに この「自助努力支援」という位置付けだったのです。  ところが、いま言った前提が少し変わってきている中で、いま言われたように、その 仕組みをもう少しきちんと説明しないと、何か宙に浮いてしまうのではないかというこ とです。全くご指摘が当たっているものですから、それを乗り越えたい、そこで止まら ずに、どう組み換えるかということを是非、もう1つお願いしたいというところです。 ○齋藤座長  財形制度ができたのはいつでしたか。 ○勤労者生活部長  昭和46年です。 ○奥村委員  高度経済成長期に乗ろうとしているときですよ。 ○齋藤座長  それで思い出しました。財形ができたときに我々の職場まで証券会社からはじまっ て、銀行から大量にやってきました。ものすごい勢いで回っていました。あれはなぜか というと、ちょうど我々の月給がドンと上がったときなのです。 ○新村委員  いざなみ景気のころで、入口でしょうか。 ○齋藤座長  初めて貯蓄する余裕ができるかなという感じにみんながなった時期だと思うのです。 いままでカスカスでいたのが、若干余裕が出たときに証券会社の人がくるから、皆が乗 るかということだったのではないかと思うのです。 ○奥村委員  初任給が2倍、3倍と上がっていたときなのです。 ○齋藤座長  そうですね、急に上がった時ですよね。 ○勤労者生活部長  そういう意味では多分に時代背景を背負っている部分があるという要素と、しかしな がら制度のコンセプトの良いところは十分にあると思うのです。それを活かすためにと いう議論を、何とかお願いできないかということなのです。 ○齋藤座長  ほかに何かご意見はございませんか。 ○藤田委員  今ご意見を伺っていて、感想めいたことを申し上げます。まず、普及について厚生労 働省をはじめ、各企業は普及に対する多大の努力をされてきたということなのですが、 私もそのとおりだと思います。ただその場合、どの程度のニーズを勤労者が持っている のか。そのニーズの把握と、制度論として使い勝手が悪いというご指摘がありますが、 そのニーズを十分に汲み上げていない。ですから、ニーズそのものの問題と、汲み上げ 方の問題があると思うのです。それを分けて考えなければいけない。ニーズそのものが 変わってきているのであれば、制度も根本的に変えていかなければいけないだろうと思 うのです。普及させるということは、ニーズに対してどう対応するのか。私は社会政策 の研究者なのですが、もしこれが社会政策でないとすれば、そんなに普及させる必要が あるのかという議論も当然出てくると思うのです。つまり、ニーズを持っている人は十 分にこの制度を活用できるはずで、それ以上のニーズのないところまで掘り起こして与 える必要があるのか。それは今、新村委員が言ったように、あらゆる人を対象にしてい くということではないだろうという議論と結び付いてくるかもしれない。とにかく、ニ ーズがある人はこの制度で拾っていくということであれば、あえて普及していないとい うことを問題にすべきかどうかということが論点として浮かび上がってくるのではない か。ですからその点を2つに分けて、議論をしていただきたいということが1点です。  そのニーズについても、例えば今日出されたペーパーによれば、財形制度の根本的な 問題、あるいは基本的な目的を、長期プログラムとして財産を形成していく、その途中 でさまざまな資金需要があって、それを還元していくのだというこの2つのニーズがあ るわけです。まず、我々が議論すべきは、財形そのものの基本目的は何なのか、これが 満たされているのかどうか、目的として十分に機能しているのかどうかということだと 思います。還元融資の話やさまざまな副次的なニーズについてはもちろん議論は必要だ と思いますが、まず順序として、基本的な論点として老後の問題、住宅の問題、そのニ ーズはどうなっているのかということを是非考えていただきたいと思います。  また、今日の論点は非常に重要な点を出されていると思うのです。これは今日1日で はとてもこなしきれない論点だと思うので、是非このお出しになった4点については時 間をたっぷりかけて、議論させていただくことをお願いします。 ○奥村委員  普及するということについて、全員が利用するというニュアンスにとられているとす ればちょっと遺憾なので、訂正ください。これまでの分科会等でもずっと言ってきてい るのですが、それぞれの勤労者の多様なライフプランがある。そういったライフプラン に応じてそれぞれの人が設計して財産形成をするのか、どういうように生活資金を作っ ていくのか、求めていくのか、使っていくのかいろいろある。そのときに制度として意 味があるものは何かというと、自分なりのライフブランに応じていろいろチョイスして 選別できるということです。一律に入れという意味で普及するということは言っていま せん。財形制度のいまの問題は、かつて入っていた人たちがやむを得なくやめざるを得 ないこと、例えば転職したときがそうなのですが、若い人からすると非常にリスキー で、今のいろいろな経済情勢や金融情勢を見て、とても手を出しづらい。将来の転職を 考えている人などは特に長期の財産形成などは、こんな制度ではできないということが あって入らなくなっている。だから、どんどん落ちこぼれが出ている上に、さらに入ら ない。当然中小企業などはもっと使いにくい。それだけの話だと思うのです。だから、 中小企業への普及というのは1つの制度全体として勤労者として利用しやすいのか、選 択肢の1つとして十分意味があるのかという意味で言っているつもりです。全勤労者が 100%財形をやっているなどというのは、ちょっと信じられない話です。我々の企業の 中で制度を作って、いろいろな社員がいますが使い終わって、もう今は利用していない とか、そういう人はいっぱいいます。意味があって利用できる、ライフプランに役立て るということが当然普及する意味なのだろうと思っていますから、それは誤解のないよ うにお願いします。 ○村井委員  今日は財形貯蓄の2回目の懇談ということで感想ですが、私の理解が間違っているか もしれませんが、議論を伺っていますと、もう少し基礎的なところの詰めはどうなって いるのか、今、藤田委員からもお話がありましたが、そもそもこういう制度ができて何 十年という歴史を持っているわけですが、足元の評価がどうなっているのか、そういう 印象を受けました。制度ができて時代背景に対応しながら改正されて今日に至っている ということですから、そういう状況の下で、いまの段階でそれをどう評価するのか。ま ず客観的事実の評価があって、さはさりながら時代は大きく変化をしていきますし、こ れからも変化しようとしています。社会保障制度も変わろうとしている。いろいろなも のについてのあり方が変わろうとしているときに、そういう目で見たときに、もう一度 この制度を評価してどういうふうに見るのか。しからば将来見通したときに、どういう あり方が望ましいのか、そういう議論であれば非常にわかりやすいのだと思うのです が、私の場合、そもそも制度を知らないということもありますし、懇談会に出席させて いただいたのも今回が初めてですので、何かそういう違和感があります。  今日の論点は8つ挙げていただいていますが、私どもが議論をするときに、勤労者と いっても、多分前回もお話があったのだろうと思いますし、今回も関係するようなお話 が出ていましたが、随分いろいろな方がいると思います。例えば昭和46年でいいます と、私が就職した年ですが、そのときは基本的には終身雇用が前提でした。いまはもう 終身雇用前提ということではなく、もちろん終身雇用を大事にされている会社もあるわ けですが、基本的に社会人として就職している人たちの意識自体が、終身雇用からかな り変わりつつあるという印象を私自身は持っています。これは非常に私の個人的な経験 で恐縮ですが、私どもの会社は中小というのか、中堅というのか、難しい規模の会社な のですが、業容の拡大に応じて中途採用をやっています。いわゆる中途の転職は、大学 卒の方で私どもの社員の半数という状況です。彼らの経歴を見ますと、初めての転職が 私どもという形ではなく、3社目の転職という方もいます。そういう人たちはある程度 年齢が高いのですが、彼らは何のために転職したかというと、本人のキャリアアップの ために転職をしているという、非常に明快な意識でもって転職しているのです。ですか ら、今後私どもは財形貯蓄だけに限らず、勤労者全体の制度がそうだと思うのですが、 そういう就労行動なりあるいは意識の変革が厳然たる事実である。しかも、これが終身 雇用の方向にもう一度振れ直すということは、残念ながらといっていいのかどうかわか りませんが、おそらくないのだろうと思います。そのようなことも十分に念頭に置いた 上で議論をしていくべきではないかと思います。 ○勤労者生活部長  最初の点はこちらのほうの不手際で十分にご説明できていませんでした。とりあえず 資料9が財形制度の貯蓄の数年間の推移で、問題意識は貯蓄の件数、額がやや右肩下が りになりつつあるとご理解いただきたい、要するに伸び悩みであるし、ひょっとすると もっと減っていくのではないか。そうすると、そこで本当に財形をどうするかという、 1回目でそのような現状認識をした上での話です。それともう1つは、制度導入におい て、中小企業の導入具合と大企業はどうか、いま言われたように中小企業はほとんど入 っていないではないかということが、実はこの議論のスタートだったと思います。  今言われた終身雇用については全くおっしゃるとおりで、財形制度のその後の変遷 は、終身雇用1社で最後まで、新規から定年まで働くというやり方が難しくなって、転 々としながらも、職業生活はありますからある意味では仕事をするのですが、その間に 任意の財形制度をどう渡り歩くかということです。任意ですから各企業に強制できない 中で、やっていれば引き継ぎができるようにということで部分修正をして、例えば失業 期間が長くても引き継げるようにとか、手間を惜しまなければやれるという、「れば」 「たら」をずっとやってきました。ですから修正が相当限界になってきているというこ とで、改めていま出た問題をもう少し正面からとらえないと、もう部分修正では間に合 わないだろうというところまで、多分皆さんの意識は共通になっているのではないかと 思っています。 ○南雲委員  私などは個人的には若いころ、この制度が始まった当時に財形制度に入って、十分こ の制度を使ってきた者の1人ですから、そういう面では先ほどの話ではないけれども、 古き良き時代にいたのかと今思っています。ただ、奥村委員からも出ていましたが、勤 労者あまねく全部にということではなくて、大手の企業はそれなりにいろいろな制度が 社内にあったりしますから、むしろ中小企業の勤労者の皆さんに必要だと私は思いま す。そこのところが調査結果などを見ると、勤め先に制度がない、あるいはこうした制 度があること自体を知らなかった。そうした制度に関する情報提供や普及に対する啓発 のあり方に問題があったかどうかはわかりませんが、本来は加入してほしいし、利用し てほしい、そういう所の勤労者が入っていないことが、やはり問題ではないかと思いま す。それと、最近、特にいまの議論にも出ていますが雇用の流動化の問題に対して、私 は基本的にはいまはこういうときですが、また終身に近い制度に戻っていくような気が 個人的にはします。アメリカとは違いますし、日本が今のような状況をさらに拡大して いって、成り立つとは思わないし、昔に戻ってとは言いませんが個人的にはそれに近い ものでないと日本の社会はどうなるか、という思いがあります。現在、雇用の流動化が 起こっていますから、それに対する国の支援ということ等、もっといろいろな工夫をす べきだろうと思います。中小企業では、こんなことができるのかどうかとは思います が、場合によれば300人未満の中小企業はある面でこの財形制度を、極端な話ですが、 義務化するとか、きちんと啓発なり情報提供なりを行うことによって知らしめる。こう いうことを今以上にやって、中小企業に働く勤労者層がこの制度を知って利用してい く。考えてみれば大手に多く入ってもらえば入ってもらったなりに、今度は供給の面も 資金がまた潤沢になるのでしょうから、ある意味ではみんなの助けになるのかもしれな い。そういうことも含めて、中小企業のいちばん利用してほしい皆さんに、どう支援を していくのかというところを工夫しなければいけないのではないかと思います。 ○勝委員  私は今の南雲委員のお話を伺っていて、先ほども奥村委員も言っていたように、対象 はニーズがどこにあるかというのはもちろん重要ですが、すべての人がそういったサー ビスを、貯蓄ができるかできないかは別として、そういう機会があることが重要なので はないか。先ほど日本が豊かになったというお話があったわけですが、むしろミクロの 労働者レベルで見れば、所得の格差は確実に広がってきています。教育費や特に老後の 資金、あるいは介護といったものは寿命が長くなっていることの絡みから見れば、資金 ニーズはどこの層も非常に大きくなっていることを考えなくてはならないだろうと思い ます。もちろん先ほど新村委員も言われましたが、一般の財形がかなり普及している大 企業以上は別として、その下のところで同じような機会をと思います。予算制約という 重要な問題がありますし、政府の税調で金融の面での税制がどうなるかとも絡むわけで すが、そういった階層でも貯蓄をしていくようなインセンティブを高めるという意味で も、広げて考えていくことが必要なのではないかと思います。もちろん高所得者に限っ ていえば、例えば所得制限を設ける形でやることも1つのアイディアとして考えられま す。アメリカなどではそういった形のIRAなどがあるわけですが、そういった工夫も していく必要があるのか。これは年金が基礎年金が中心で個人の自助努力がもし前面に 出いるのであれば、そういった自助努力を促すような制度の拡充が必要なのではないか と思います。 ○田村委員  この勤労者財産形成制度のコンセプトは何か、は私ども労働組合の立場でいくと、仕 事と家庭と社会生活という、地域生活の3つぐらいのコンセプトの中で、この家庭生活 を維持するための財形だという気がするのです。仕事は職場の中でいろいろあると思い ますし、地域生活もそれぞれの立場であって、その家庭生活の中にある、将来や健康、 子供のことなどが心配になってきています。先ほど勝委員が言われたように、最初から 目的を決めて20年後、30年後というのはわからないわけですから、そういう家庭生活全 般を補完する意味での制度に変えていくと、ニーズという意味でのつながりが出てくる のではないかという気がします。そのときに、目的として、使われ方によっていろいろ 優遇措置があっていいのではないか。単に貯蓄として扱っている人は金融の課税対象に なってもいいのではないかと思っていますので、家庭という大きなコンセプトでやって いくのがいちばんニーズに近いものだという気がします。 ○新芝委員  私も数年前に財形に入り、最近通知がきて自然に貯まっているのを見ますと、非常に いい制度だったと心から思っています。資料にもありますが、これだけ社会保障制度が 不安というか、全体的な枠の中で縮小が避けられない中では、自助努力を充実していく ことは賛成です。その中で財形については3点ぐらいの視点があると思います。まず入 りたい人が入れること、2つ目が続けたい人が続け得ること、3つ目がさまざまな自助 努力の制度があるので、ほかの制度との違いというか、特色を明確にしていく必要があ るということを考えていくべきかと思います。  もう1点、税の関係もいくつか論点がありました。貯蓄から投資へという流れはあり ますが、そういう中でどちらにいくのかという部分が不明確なので、この自助努力の制 度を充実し、支援する制度についても充実していくべきだと思います。その辺もこうし た税制改革の論議の中では、是非反映をしていただければと思います。 ○松井委員  自助努力を支援していくことは大変重要だと思うのですが、今日さまざまな資料が出 されたところを考えてみると、財形の中だけで継続していくことが本当にいいのか、ほ かにもいろいろありますが、それとの関係をどのように見ていくのかという視点は、根 本の論議をしていくときに欠かせないのではないかと思います。自助努力支援というこ とと、それが財形の枠組みのみなのか、財形以外のところで同じようなものがあるの に、それを本当に続けていくべきなのかということを両にらみで合わせて議論していっ て、先ほど部長からありましたが、2つか3つ案を出して、政府のほかの施策との整合 性を取りつつ、財形として残せるところはどこなのかということです。全部税制の支援 をしていかなければいけないということで、最終的にいくら取りまとめても、私はもう 駄目なのではないかと思っています。これは非常に重要なことですから、全体に横にら みもしつつ議論をしていかないと、いくら財形の中で立派なものができても、外から叩 かれて倒れてしまうのではないかと思っています。その意味で、自助努力そのものが重 要であることには変わりはないですが、繰り返しになりますが、ほかとの整合性を見て ということが欠かせないと思います。  今日配られた資料の中で、どこかに書いてあるかもしれませんが、中小になかなか普 及しないのは金融機関も努力しても、メリットが少ないのではないか。金融機関を悪く 言うつもりはないのですが、そこも言っておかないと公平性が欠けるかという感じがし ています。 ○奥村委員  話が個別にいったりマクロにいったりで非常に興味深く聞いているのですが、自然に 貯まったということはどういうことかというと、その方は多分財形がなくても計画的に 貯蓄した方なのだろうと思うのです。積立額をいくらに設定するかというのは自主判断 で自己責任だと思います。ですから、定期的に貯蓄する癖がついたという人はどういう 人かというと、毎月1,000円、ただ天引きでずっと続けているだけというのとも話が違 う。自然に貯まったというよりは、今後の財産形成という目的があって、計画的にライ フプランに応じてやっていくというのが本来だと思うのです。とにかく何か貯めればい いということだけでは、そういった制度を国の政策として支援してやるべきとは多分な らないと思いますので、その辺は整理されて考えた方がいいのではないかと思います。 ○新村委員  今の話に関係すると思うのですが、還元融資についてです。やはり30年前とはだいぶ 事情が違い、金融機関がかなり個人向け融資に一生懸命である。多分30年前は私みたい な低所得の公務員には金融機関は貸してくれなかったのではないかと思います。ところ が今はそうではなく、結構個人向けローンという商品が出てきている、そういう環境の 変化も大きく考えなくてはいけない。ただ貯めろ、貯めろという昔とは違って今は貯蓄 を奨励するという時代ではなく、自分のライフプランとして生涯では収支は償わなくて はいけないわけです。そのときに、赤字の期間と黒字の期間がありますね、貯蓄はその ためのバッファーであるけれども、いまはかなり金融機関が貸すので、自分でそこは生 涯計画はできると思うのです。ですから、あまり還元融資は私は要らないのではない か。むしろリスク対応が必要ではないか。特に流動化した中で、失業のリスクに対して この制度がどのように、要するに簡単におろせるとか病気をしたときにおろせるなど、 そういうリスク的なものへの対応を図るほうがいいと思うのです。当然計画できる結 婚、出産、その他については、私はあまり考えない方がいいのかなという意見を持って いますが、その辺は先ほどのご意見などとは抵触する部分だと思います。 ○松井委員  資料4の2ですが、確定拠出年金の個人型がすでに創設されていますが、なかなか普 及が進んでいない。金融機関、あるいは産業界としても非常にこの部分は期待をしてい たわけですが、普及が進んでいないのは一言で言ってしまえば、予定より加入者がいな いので、1人当たりの運営コストがかかっているということに尽きると思います。まず 財形年金を確定拠出型に変えていこうという議論が当初、厚生労働省内にあったわけで す。最終的にはもう少し全体的な動きに変わった経緯もありますので、財形年金を確定 拠出年金との関係で統合していくのか、あるいは財形年金だけを4階建てでそのままで いくのか。仮に統合するならどういうことでいくのか、もう1つ、確定拠出年金の企業 型の方はマッチング拠出が認められていないので、自助努力というと本来は企業型に従 業員のマッチング拠出ができる、そういうものが本来は望まれる姿ではないかと思って います。そういう点も視野に入れて、どういった形で制度設計をしていくのか。一方、 新村委員が言ったように自由な引出しが今はほとんどできなくて、スイッチングはでき るのですが、若年世代で自由な引出しが基本的にできないというものすごい制約がある ので、そこがどこまで将来変わるのか、今のままなのかという前提も含めて、議論をし てもらえると大変ありがたいと思います。 ○齋藤座長  議論を混乱させるつもりは毛頭ないのですが、ここの論点の中にもありますが、貯蓄 率の低い若年者が増えてきている問題をどう考えたらいいのかということがあります。 村井委員が言われたように流動化についての拒否感が働く人になくなって、流動化がど んどん進んでくるということのほかに、カード社会ではないのですが、必要とするもの を手に入れようとすればすぐ手に入るのです。その資金をどうすればいいかというと、 後でローンで順番に返済していく。今まではあらかじめ少しずつお金を天引きでも何で も貯めておいて、それから買いましょう。だけど、今度は逆で物を最初に手に入れて、 その経費は後で順番に少しずつ返していくという考え方が、おそらく若い人の通常の考 えになってきているのではないかと思うのです。だから、貯蓄自身が流行らないという か、貯蓄から投資へというのは政府の政策かもしれませんが、むしろある程度そういう 意識が若い人の中に出てきている。若いといっても20代だけではなく、40代ぐらいの人 までそういう意識になってきているのではないかと思います。いざというときもまたい ろいろ手に入る道が現実にはあるのです。そこは今までとはちょっと違うところだと思 うし、それを考えておかなければいけないのではないかという感じがします。 ○勤労者生活部長  精神論で恐縮ですが、この「自助努力」という4文字に収斂していまして、いわば貯 蓄して必要な物を購入するなり財を入手するというのは、ある意味で先憂後楽の思想だ と思うのです。ところが今言われたのは世の中は先楽後憂で逆転しているという。この 財形制度をその逆転している現象に合わせて見直すのか、自助努力という先憂後楽思想 はやはり政府としても、なにがしかを持っていて、それを具現する政策として、コアと して残すべきではないかというぐらいから始めないと議論できないと思います。  貯蓄政策全体は省庁的には財形制度を作ったころは貯蓄増強委員会を日銀の中に持っ ていましたが、今はそういう組織も看板をおろし解体してしまいました。だから貯蓄増 強というコンセプトももういいではないか。それから今やさらに進んで貯蓄から投資へ と、これがマクロで見ると日本全体は活性化することは間違いありません。だけど、童 話ではないけれども、『アリとキリギリス』的なものでみんなキリギリスにいくのか、 アリのような政策としてというのもあっていいのではないか。先ほど言われた昔がいい という部分になるのですが、それぐらいのところからやらないとこの議論は成り立たな いのではないかと思っています。ということで、是非とも両にらみでお願いしたい、現 状もわかったつもりですし、そういうことなのです。 ○齋藤座長  議論は中途半端ですが今日はこの辺にしておいて、また引き続いて次回にほかの論点 も含めてお願いしたいと思います。 ○奥村委員  次の基本懇はいつかというと、前回が7月で随分流れてしまって、何か前にどんな議 論をしたかわからなくなってしまいます。今日初めてという方がいらっしゃったのです が、そういう意味ではもともと分科会が基本で、この基本懇は5回目で、いろいろ幅広 い意見が出ていて、論点が整理されているのではないかという意見もありました。そち らの方で基本懇がどんな方向で進んでいるとか、新しいメンバーが加わったこともあっ て、そういうことを確認することも必要ではないかと思うのですがいかがでしょうか。 ○齋藤座長  もう1回この続きをやって、その後で考えたほうがいいのではないかと思うのです。  だから忘れてしまわないように、もう少し早い時期にもう1回やってみてはどうか。 ○勤労者生活部長  言い訳になりますが実務の事情を申しますと、我が部では今、次の国会に向けて法改 正作業に入っていまして、その加減でスタッフが足りなくて申し訳ありません。なるべ く開催頻度を高めます。 ○松井委員  お願いしたいことは、今日も議論が整理されていなかったかもしれませんが、こうい う論点に対してどういう意見があったかということを書き加えたメモを、是非要約的で 結構ですので、作っておいていただけますか。ここで意見が対立しているなとか、わか るようなものを是非作っていただけると大変ありがたいです。 ○藤田委員  今日出された自営業への対象拡大という問題なのですが、それは財形制度の根幹にか かわる問題です。是非自営業の実態を、勤労者とどこが違うのかどこが同じなのか、そ ういう点をきちんと示していただければ、議論に入っていけると思うのです。これは非 常に重要な問題だと思いますので、是非お願いしたいと思います。 ○齋藤座長  わかりました、それでは事務局で調整していただいて、なるべく早くもう1回ぐらい はやりたいと思います。本日の議事録の署名委員は座長の私と座長が指名する委員とい うことですので、労働者側委員では田村委員に、使用者側委員には松井委員にそれぞれ お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは今日はこのくらい で、どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課財形管理係 (内線5368)