04/12/02 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会（循環器ワーキング・グループ）
         第１回議事録


胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会（第１回循環器ワーキング・グループ）議事録


１　日時　　平成１６年１２月２日（木）１４：３０～１６：４５

２　場所　　厚生労働省専用第１７会議室

３　出席者　医学専門家：奥平雅彦、笠貫宏、髙本眞一、西村重敬、横山哲朗
　　　　　　　　　　　　（５０音順）
　　　　　　厚生労働省：菊入閲雄、渡辺輝生、神保裕臣、菊池泰文　他
 
４　議事内容

○職認官（菊池）
　前回までは「胸部臓器部会」ということで検討をお願いしてきましたが、循環器と呼
吸器とを分け、今回から「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会第１回循環器ワー
キング・グループ」として始めさせていただきます。本日は１回目ということで、座長
をどなたかにお願いしなければなりません。誠に僭越ですが、事務局としては笠貫先生
に座長をお願いできればと思いますが、いかがですか。
　　　　　　　　　　　　　　　　　（異議なし）

○職認官
　恐れ入りますが、先生、そういうことでよろしくお願いします。会議の名称が変わり
ましたが、運営は基本的に胸部臓器部会と同一ですので、この先は笠貫座長に進行をお
願いします。よろしくお願いします。

○笠貫座長
　それではご指名ですので、進行を務めさせていただきます。全体の検討会で横山座長
に教えていただきましたので、今回はワーキング・グループということで、私が進行さ
せていただきます。よろしくお願いいたします。討議に入る前に、事務局から提出資料
についてご確認をお願いします。

○障害係長
　資料１は「第１回循環器ワーキング・グループの主な検討事項」。資料２は「胸部臓
器分野の障害認定に関する専門検討会報告書（たたき台）」。以上です。

○笠貫座長
　それではペースメーカ等を植え込んだ場合の取扱いに関する報告書のたたき台につい
てご確認いただきたいと思います。ペースメーカについては、かなり整理が進んできた
と思いますが、各先生方からご意見をいただく前に、事務局からご説明お願いします。

○職認官
　前回、字句修正の類いのご指摘も含めてご意見をいただいております。そういう状態
ですので、今回はこういうふうに直させていただきました、あるいはこういうことで確
認させていただきましたということを簡単にご報告します。
　まず、報告書のたたき台では、11頁からがペースメーカ等の場合の部分になります。
前から見ていただくと、表題の「植込み型」で、体言止めの場合は「植え」の「え」は
送らない。「植え込む」という場合は「え」は入るということで、そこの送り仮名の使
い分けを整理しました。（３）の第２段落の「これについては」で、「補装具等」と書
いてありますが、この位置づけについてご指摘がありましたので、書き方を修正いたし
ました。これで補装具の評価に齟齬を来すことはなくなったのではないかと思います。
　11頁のいちばん最後の行に「また」ということで、次の頁にかけて３行の文章を新し
く入れました。これは生理的ペーシングを行う機器がだんだんと増えてきていますが、
それでも強度の高い運動をした場合は、必ずしもペーシングが追いつかず、息苦しさ等
が生ずる場合もあるというご指摘もありましたので、その点を障害の内容として加筆を
したということです。また、この文にも出てきましたが、「ペースメーカが作動する」
の「作動」の文字の使い方についてご指摘がありましたが、いくつかの本を見ても、こ
の文字を使っている例がいくつも確認できましたのでこのまま使わせていただきます。
本の中の用例としては、「作動」より「ペーシングをする」という書き方のほうが多い
のですが、作動は作動で使える用法ではないかと思います。
　12頁の（５）のイの１行目の最後ですが、前回までは「原疾患」と書いていたのを、
「虚血性心疾患」と直しました。ウでは、リード、電池を交換する場合の取扱いに関
し、「再発にする」という行政内部の慣用語のような言い方をそのままこの報告書で使
わせていただいていましたが、「再度、労災保険における療養補償を行うこととする」
と表現を変えました。13頁のイの（ウ）の最後のフレーズの「そうすると」の２行目の
後ろに「常時、座位で行う」という表現が出ていまして「座位」の文字の使い方はこれ
で正しいのかというご指摘がありました。これも確認させていただいております。ご指
摘をいただいたところのご報告は以上です。

○笠貫座長
　ただいまのご説明にご質問、ご意見はございますか。前回ご指摘いただいたところ
は、かなり加筆、修正していただいていると思います。11頁の最後の行、「比較的激し
い運動時に徐脈が出た場合」とありますが、運動時に徐脈が出ることはあまりありませ
んので、「比較的激しい運動時にペースメーカが作動しても、ペーシングの限界から必
要な心拍数が得られないこともあり」ということで、意味は通じると思います。13頁の
上から５行目の「心筋梗塞において検討したように」というのは、ここで出てきてもよ
ろしいのですか。

○職認官
　各項目の順番としては「心筋梗塞」が先に来る予定ですから、現時点では先走ったよ
うな形になっています。そういう点を含めて、最終確認は別途、改めてお願いしたいと
考えています。

○横山先生
　いまの「心筋梗塞において検討したように」は、心筋梗塞そのものにおいて検討した
ものではないですから、文章を直したほうがいいと思います。

○笠貫座長
　第何項心筋梗塞かという意味ですね。よろしくお願いします。

○横山先生
　11頁のいちばん下の行の「徐脈が出た場合」は取ってしまうのですか。

○笠貫座長
　取らせていただきます。

○横山先生
　それではいいですね。

○笠貫座長
　前回、奥平先生からご指摘をいただいた基礎疾患に関しましてはなしでお書きいただ
いたと思います。それでよろしいですか。

○奥平先生
　はい。私の理解がきちんとしていないのかもわかりませんが、「第１回循環器ワーキ
ング・グループの主な検討事項」で、資料１の１頁です。

○職認官
　これは事務局が説明する際の便宜上の資料として作ったものですが、ペースメーカに
ついては、只今のようなご確認の問題が中心かと思います。心筋梗塞については、この
後にご説明を申し上げた上で、ご検討いただきたいと思います。

○笠貫座長
　次の心筋梗塞のについてご説明をいただく際に前回の検討結果と、今回の論点をまと
めるために、事務局で準備していただきました。

○奥平先生
　心筋梗塞は今からですか。

○笠貫座長
　これからのところでご指摘いただけたらと思います。

○西村先生
　13頁のイの（ウ）の「除細動器を植え込んだ者については、一般に、自動車の運転を
行う業務は勿論、ほとんど立位で作業する業務等も制限され」は、ガイドライン、ある
いは法的に何か規制があるのですか。

○職認官
　この文章は、事務局が考えたものです。もし心室細動が起きて、その場合に除細動器
が遅れて失神をしてしまうこともあるということからすると、当然に車の運転は制限さ
れるべきでしょうと。それは我々が常識的にそう考えましたということです。同様に、
立って行う仕事のうち、この会議室のような所で立って仕事をする分には、転んでも大
事には至らないと思いますが、周りに危険なものがあるとか、あるいは高い所で落ちる
危険のある作業は、基本的には就くことができないと事務局としては考えたわけです。
医学的な常識からはずれているということでしょうか。

○西村先生
　常識的な意見だと思いますが、これを入れることがかえって足かせになるとか、そう
いう懸念が。

○笠貫座長
　これは自動車の免許証で除細動器をどう扱うかという検討をし、許可することになっ
たのです。それは条件つきで、６カ月間作動しない場合にはいいとしたもので、日本循
環器学会が中心になってまとめたものがあります。いろいろな条件を満たした場合には
運転もできるということですので、「制限されることとなる」というと表現が強過ぎる
かもしれません。「制限されることもある」とすれば、ケースによっては制限されるこ
ともありますし、そのまま運転もできます。通常の軽・中作業ぐらいはできる人もいま
すから、そういう表現でも、医学的にはよろしいと思います。事務局として、この表現
を緩めると問題は出ますか。解釈上非常に混乱を招くようなことはありますか。よろし
いですか。

○職認官
　はい。

○笠貫座長
　デリケートな所かと思いますので、「ほとんど立位作業する業務等が制限されること
もあり、さらに座位で行う業務等の軽易な労務に限定されることさえある」とすれば、
そういうものもあり得るという指摘にはなるかと思います。

○西村先生
　そのほうがいいと思います。先生方、学会のガイドラインが出ていましたし、何か準
拠するものがあったほうが、より加筆点も明らかで、根拠が明確だと思います。

○横山先生
　「自動車の運転を行う業務は勿論」という「勿論」という言葉が、いまの先生のお話
だと、きつ過ぎるのではないですか。

○笠貫座長
　そうですね。この「勿論」も考えていただき、文章は、ガイドラインに則って検討し
ます。一方で、患者サイドの権利の問題、保護の問題もありますから、この表現を現実
に沿って緩めさせていただきます。髙本先生、ペースメーカの項目はよろしいですか。

○髙本先生
　はい。

○笠貫座長
　ご指摘いただいたことは、事務局で再修正をお願いすることにしまして、ペースメー
カの章を終わりにさせていただきます。全体の検討を終えたときに、呼吸器と一緒に、
心筋梗塞の項目も含めて、全体の見直しをもう一度していただきます。そのときにご指
摘いただけたらと思います。次に心筋梗塞の項目に入りますので、事務局からご説明を
お願いします。

○職認官
　前回、心筋梗塞の治ゆについてご検討をいただきまして、一定の合意点というか、ま
とまりをいただいたところです。基本的にはそれを踏まえつつ、その後事務局で検討し
たところ、この点はこういうふうに考えたらいかがでしょうかということで、前回と少
し違う形で書いた所が治ゆに関して１点あります。資料１の１頁です。
　心筋梗塞の治ゆは、大きく分けて、心機能が低下していると、その後、さらに心機能
がその程度によって一層低下する。低下する傾きが一定以上であれば、これは症状が安
定しているとは言えないでしょうということで、症状の安定に当たらない類型がそうい
う形で１つあります。もう１つは、不整脈、あるいは虚血が残っていると、症状は安定
している場合でも、突然に重篤な発作を起こして、場合によっては亡くなることもあ
る。確率がそれほど高いというわけではないが、健常人に比べれば、明らかに有意に高
いという問題があります。後者のほうはどうするかということでございますがこれにつ
いては、前回、不整脈では、心室性期外収縮が1時間に10または20個程度以上ある場合
には、突然死の可能性が高まる。したがって、このような場合症状の安定とみるべきで
はないかとご議論をいただきまして、結論としては、「軽度の不整脈にとどまるものだ
けを治ゆにする」としたらいいということであったと理解しております。
　ただ、その後の事務局での検討で、将来の重篤な発作が発生する確率そのものを治ゆ
の成否に関係させることは、やはり確率の大小にかかわらずいかがなものか、それは現
に発作が起こった、あるいは亡くなったという場合、労災保険ではその亡くなったこ
と、あるいは治療が必要になったことに対して保険給付を行う仕組が用意されています
から、治ゆそのものは判断する時点において、症状自体が安定していれば治ゆは治ゆだ
と整理させていただいたほうがいいのではないかと考えております。これにより、結果
としての治ゆの範囲も少し変わってくるのかもしれませんが、整理の仕方としては、そ
ういう形にさせていただきたいということで、本文もそういう案にさせていただきまし
た。
　ただ、むやみに治ゆの範囲を広げようという趣旨では勿論ありません。外科的な治療
のほか、投薬のみの場合でも、単に再発防止ではなく、一定の改善を目指している場合
は、あくまで治療中ですから、当然そういうものは治ゆになりません。そう考えていく
と、治療効果がもう期待できない、改善に向けての治療は終了しました、かつ、自覚症
状があるような発作はほとんど出ませんということが症状の安定の観点から要件となっ
てきますので、軽度なものという要件は、治ゆに関してはわざわざ設けなくても済むの
ではないか、ということで本文を整理いたしました。前回のご議論とは少し違ってきま
すが、具体的な支障といいますか、不当な結果が起きないか等ご指摘をいただきたいと
思います。
　本文は５頁からが心筋梗塞の記述ですが、治ゆを論ずるには、心筋梗塞の病態などを
最初に書いたほうが何かとわかりがいいということで、６頁の終わりのほうまで、「心
筋梗塞の概要」「生命予後」「治療」について書かせていただきました。先生方から
は、いろいろご指摘をいただくべき点があると思いますが、この部分は、基本的な事実
であり、ご議論をいただくような趣旨の記述ではありませんので、時間の関係もあり別
途機会を設けてご確認をいただきたいと思います。ご検討をいただきたいのは、７頁の
「労災保険における治ゆと心筋梗塞」から、いま申し上げたような書き直しをいたしま
したので、ここを改めて読み上げさせていただきます。

○障害係長
　（資料読み上げ）

○職認官
　治療の方法で、外科的治療と対症療法の２つしか書いていませんが、種類として補充
して書くべきものは補充したいと思います。また、結論をまとめて書いていないのでわ
かりにくいかと思いますので、そうした修正はしていきたいと思います。以上です。

○笠貫座長
　最初に治ゆについての検討をいただいて、障害等級はその後でよろしいですか。

○職認官
　障害等級は、一段落した後でお願いしたいと思います。

○笠貫座長
　わかりました。

○横山先生
　これは奥平先生がご専門かもしれませんが、「心筋梗塞」というと、病理形態学的な
変化を言っているわけです。ですから、この場合は本当は「心筋梗塞症」という言葉で
表すべきなのです。ただ、これだけいろいろ書いてあって、いまさら直すのも大変でし
ょうから、いちばん最初のところだけ「心筋梗塞症（以下心筋梗塞と略す）」という方
向でいいと思いますが、心筋梗塞の病変が治ったとか、何とかというような矛盾したよ
うな印象を受けるのですが。

○奥平先生
　これは慣習だと思います。肝硬変、肝硬変症のときも、実際には臨床的に肝硬変とし
か言われていません。ですから、横山先生がおっしゃるように、最初に一応断っておけ
ば問題はないかもしれません。病気を扱っているのだということが明記されることにな
ります。

○横山先生
　俗な使い方では、「心筋梗塞」と言えば、「心筋梗塞症」のことを言っていると思い
ます。こういう改まった規則などには、一応厳密にとっておいたほうがいいのではない
かと思います。

○笠貫座長
　そうですね、西村先生、これはそれでよろしいですか。

○西村先生
　はい。

○笠貫座長
　治ゆについての考え方については、前回のご議論と違うところがあると思いますの
で、この点についてご議論をいただきたいと思います。１頁の「治ゆ」、本文では７
頁、８頁にわたっていますが、ご意見はありますか。

○西村先生
　症状の安定ということの意味がきちんとあったほうがいいと思います。１つは、症状
が横這いということが１つの要素で、６頁の「治療」のところで「日常生活が概ね支障
なく送ることができる程度まで改善」というような言葉が出てきますので、症状の安定
もそれを言外に含んで、それができて症状がなければ症状の安定、ある程度日常生活が
できるというレベルを維持して、かつ横這いになったという状態です。横這いになるの
は、外を歩行したり、あるいは階段、坂道を登ると苦しくなるという場合も、じっとし
ていれば症状は出ませんので、症状は安定しているように見えますが、日常生活には差
し障りがあるが、症状は横這いです。「安定の要素」の程度をどういうふうにするかは
大事だと思います。あとは、健常者と比べてどうかということになると、当然ある程度
制限は出ていると思います。全体としての考え方は、ペースメーカと非常によく似てき
たので整合性はとれていると思います。

○笠貫座長
　これ以上の治療効果は期待できないことと、症状が安定していることは、横這いでそ
れ以上はよくならないという、イメージとしては、臨床のほうから見ても受け入れやす
い表現だと思います。こういう考え方でいかがですか。前回の、突然死等の生命予後か
ら規定するのは少し問題があるのではないかということから、こういう考え方のほうが
実際的ではないかと感じました。髙本先生、いかがですか。

○髙本先生
　日常生活は何とか安定して、比較的長期間やれるというのが普通の感じです。治ゆと
いうか。将来の10年後、20年後はわからないですから。

○笠貫座長
　心筋梗塞で急変するかもしれないと考えると、心室期外収縮の数をどうするか、虚血
の程度をどうするかという細かい設定が非常に難しくなるかもしれません。「これ以上
の治療効果は期待できない」「日常生活での症状が安定する」ということを「治ゆ」と
いう考え方を基本とすることについてはご了解をいただいたことにしたいと思います。
　７頁の上から３行目の「治ゆと判断すべき状態があるのか」の「すべき」と言うと、
難しいので「判断可能な状態があるのか」とか、その後の「考えるべきか」の「べき」
までは言えないかもしれませんので、表現を変えていただければと思います。
　７頁の下から６行目に、「療養を継続することとしてもその意義は小さく」ではなく
て、意義が大きいか、小さいかをここで論じることは必要ないかもしれませんので「療
養を継続することとしても、そうしたものについては、むしろ治ゆとして」ということ
で、言葉としてはなくてもよいと思いますのでご検討ください。
　８頁の「治ゆの判断の基準」について、安定しているかどうかの判断はいかがです
か。心機能40％以下の場合は、それで安定していても、この文章でいくと、治ゆには入
れないと考えることになりますか。

○職認官
　治ゆについては、明確な一義的基準でなくてもいいと思いますので「40％程度」と書
きましたが、それ以下であれば、通常は治ゆにならないというつもりの文章です。

○西村先生
　これは、ここだけ数字がポッと出てきて違和感もありますから、例えば「左心機能障
害軽度にとどまるものは」とか、定性的な表現にしたほうがいいかもしれません。

○課長補佐（渡辺）
　軽度というのは、大体こんなものということは何かあるのですか。

○西村先生
　人によって５％ぐらい差は出ると思います。そこは少し違います。45％ぐらい、50
％、40％、その辺を基準で、医者によって少し認識は違うかもしれません。

○課長補佐
　例えば50％にして、いまの考え方でいくと、10％違うのですが。そうなると、かな
り。

○西村先生
　駆出率はいろいろな検査法で計測できます。検査法によっての値の正常範囲も違った
りしますし、それが一人歩きする心配もあります。医者同士で議論するときは、40とか5
0とか言うのですが、こういう文章の場合は「軽度」「中等度」「高度」障害と分けた場
合、３段階表示でやることも１つの方法だと思います。

○笠貫座長
　40％以下だと症状が安定して、日常生活も普通にしていても、絶対治ゆはないという
ことになってしまいますが、臨床の現場としてどうでしょうか。

○西村先生
　40％以下でも元気な方はたくさんいて、若い人では、ほとんど症状なく生活できてい
る方も結構います。

○笠貫座長
　この文章でいくと、心機能が40％以下になると、心機能はもっと悪くなることになり
ます。これは肝硬変などと同じかもしれません。悪くなっていくという前提で心機能を
特別に取り上げたわけですが、それをどうするかが問題だと思います。

○西村先生
　入れられれば勿論いいのですが、いろいろ議論も一部出てきますし、先ほど言ったよ
うな例もあります。他ではあまり数字がたくさん出てきません。一方、判断基準を明確
にという考え方を出すのであれば、数字を出すことも１つの方法ですが、なかなか難し
い面もあります。他の項目でも数字があまり出てこないのであれば、定性的な３段階評
価ぐらいにとどめておくことも１つの考え方だと思います。

○課長補佐
　私どもの考え方としては、数字を出せるのであればできるだけ出したほうがいい。勿
論出せないものを無理矢理、これでエイヤと割り切ってしまえという気持はありません
が、出せるものならば、そのほうが全国で同じような判断ができやすいものですから。

○職認官
　40という数字は、ケースによっていろいろで、決していい状態ではないが、かと言っ
て本当に病的かというと、そんな訳でもありませんと。若い方は当面全然平気でやって
いますという方も多いですと。若い方と言うと、例えば50歳ぐらいを想定して、その方
が他の条件によりますが、35ぐらいになりましたという時に、概ね安定した治ゆ時の状
態を保てるのは、何年ぐらいかという推定をすると、大雑把に言うとどのぐらいと言え
るものなのですか。

○西村先生
　難しいですね。例えば最大限の薬を飲んでいて、50代の人が、10年間ぐらいは30何パ
ーセントは治ゆの状態を保てるかもしれませんが、高血圧などの負荷要因を持っている
と、もっと早く心不全を起こしてくるかもしれません。加齢の影響が加わってきます。
それはマイナス要因になるのです。40歳あるいは、60歳で心筋梗塞を発症したかで、そ
の後の経過は違います。

○職認官
　やはり40で切ってしまうと、治ゆになっておかしくない人が、はじかれてしまうこと
になるということですね。

○西村先生
　そうですね。40代、50代ぐらいでしたらね。

○笠貫座長
　前回は期外収縮の数だけでは難しいという話が出たように、心機能評価を左室駆出率
だけでいいかというと、いろいろな考え方があります。心機能のパラメーターをどうす
るかという問題になると、議論も出てきてしまうので、軽度心機能のものまではいいと
して、中等度以上の心機能低下がある場合には、治ゆは難しいのではないかという言い
方ぐらいにとどめると、実際の患者さん、あるいはドクターサイドとしては、裁量性発
揮できるので、それぞれの総合判断で心機能が中等度以上低下したときは、難しいので
はないか、というのが現実的だと思います。そこまで広げるのは、西村先生どうです
か。

○西村先生
　いや、私もそれでいいのではないかと思います。例えば対象が非常に多くて、迅速な
判断を求められているとか、公平性が要求されているという。例えば過重労働の問題の
場合は、数値で示した基準があったほうがいいでしょうが、そうでない場合には、個々
の判断を重視するという立場もあるのではないかと思います。

○課長補佐
　治ゆの判断基準というのは、設けるべきものではないという感じにして、そして考え
方としては、軽度の心機能低下に当たるかどうかということで、治ゆは判断するという
ことでしょうか。

○西村先生
　そうですね。どうでしょうか。

○笠貫座長
　髙本先生どうでしょうか。

○髙本先生
　数ではなかなか言い表せないことがありますね。検査によって、42％と出て、別の検
査で38％と出るのは、これでもあるし、なかなか。

○笠貫座長
　40％切ったら心機能が悪くなるということは必ずしも心臓の場合には言えないという
ことだと思います。それは肝臓とは違うかもしれません。ここはもう少しご検討をいた
だくことにします。
　これについては心臓専門家の立場からも考えてみていただくようにします。これで安
定かどうかの判断基準として、心機能は唯一残ることになりますので、慎重に検討して
いきたいと思います。
　「不整脈や虚血に対する外科的治療や対症療法が終了したもの」、これは、虚血です
と冠動脈バイパス手術と経皮的冠動脈形成術、不整脈ですと、薬物療法、ペースメー
カ、植込み型除細動器とか、個々に詳しく書くかどうかお話になったのでしたか。

○職認官
　「カテーテルアブレーション」は、外科的治療とは言わないのでしょうか。

○笠貫座長
　言うこともあります。「経皮的冠動脈形成術」を「外科的治療」と言うかというと、
あまり言わないかもしれません。ペースメーカは外科的手術に入りますね。

○髙本先生
　はい。

○笠貫座長
　ここは具体的に書きましょうか。

○職認官
　わかりました。一切の改善に向けての治療が終わったということが明確になるように
したいと思います。

○笠貫座長
　そういうことですね。「対症療法が終了した」ということは、具体的に不整脈、虚血
に対して存在する治療としていま言ったようなものを挙げていただいたほうがいいかと
思います。

○奥平先生
　治ゆに関係するのですが、７頁の（イ）「『症状が安定している』状態について」の
８行目ですが、「変動する見込みが少ないもの等については、十分に症状の安定に当た
り得ると考えることができる」、「十分に」という言葉は必要なのかどうか。「症状の
安定に相当すると考えることができる」という表現のほうが、もしかしたらいいかもわ
かりません。
　いまご議論のあったところですが、「40％程度以下のものがこれに当たると考えられ
ることから」に「40％程度以下のものの多くが」という言葉を入れると、すべてではな
いということで、ここの問題はもしかしたらクリアできるかと思ったのです。もう１つ
は、他の部会でも出てくると思いますが、「薬物」「薬剤」という言葉が出てきます
が、これもできれば最初に統一したほうがいいと思います。

○笠貫座長
　先ほどの「40％以下の多くが」という表現も、魅力ある表現だと思います。これも併
せてご検討をいただきたいと思います。先ほどの「十分に」は「症状の安定に相当する
」でご検討をお願いします。外科治療に戻りますが、「ほとんどの場合は重篤な不整脈
は残すこともないし、虚血について残っているものは安定したものである」は、ここま
で虚血について言っても構わないですか。

○西村先生
　この部分がいるかどうかですね。

○笠貫座長
　「重篤な不整脈」も気にかかるものですから、あえてなくてもいいという印象です。

○課長補佐
　（ウ）の治ゆの判断のところですか。

○笠貫座長
　はい、そうです。

○課長補佐
　いまの「40％以下の多くが」をどのように考えたらいいのか。そうでないとすれば、
先ほど申し上げたとおり、「判断の基準については基準を設けるべきではない」という
ことを入れ、そしてあえて言えば「心機能が軽度の低下を示すものが治ゆに当たる」と
いうことだけが、ここに書かれるような形になるのか。ですからここは「以下」からバ
サッとなくなる形をとるか、それとも40を先ほどのように残した形をとるか、ここで大
きく全体像が変わってくるものですから、先ほどの「40」を出すか、出さないかについ
てはご議論をいただき、結論を得ていただいたほうがいい気がします。

○笠貫座長
　西村先生にお願いします。

○西村先生
　難しいですね。確かにいろいろな要素で考えてくる考え方は大事だと思います。40を
多く出したら、あと文章が消えてしまうのですか。

○課長補佐
　消えてしまいます。要は基準は作らない、ということが結論になるだけの話です。あ
えて言えばという、つなぎの言葉は何にするかは別にして、いわゆる「心機能が軽度の
低下と判断されるものだけが治ゆに当たる」という、極めて定性的な内容です。

○西村先生
　しかし、不整脈や虚血については、患者さんはそれが残存していることは確かですよ
ね。それも一切問わない。

○笠貫座長
　基準というか、考え方としては残るわけですよね。

○職認官
　当然、不整脈や虚血についても、症状の治療効果の観点と、症状の安定という観点か
らの記述は必要なわけです。例えば「軽度の虚血」「軽度の不整脈」と書くか、発作が
頻発しない程度のことをどこかに書いておくだけにするか、書き方はいろいろあると思
いますが、不整脈、虚血についての症状の安定、治ゆに関する記述を一切書かないこと
ではないと思います。

○笠貫座長
　不整脈、虚血に対して、先ほどの冠動脈バイパス手術、経皮的冠動脈形成術、ペース
メーカ、植込み型除細動、薬物療法等が行われ、症状が安定しているということが１つ
の考え方です。心機能に関しては、中等度までの心機能の低下を判断の１つの基準と言
ってもいいのかもしれません。そのような考え方として示していただいてもよろしいと
思います。

○西村先生
　はい、そうです。

○横山先生
　いまのことは私も賛成です。他にちょっと申し上げたいことがあります。７頁の一連
の文章を書いた人の姿勢の問題になると思います。（ア）のすぐ上のところは「検討す
る」となっています。検討するというのは将来のことですね。これは検討したではない
かと思います。この頁のところだけに限って、「考える」という言葉が「あるべきと考
える」「あると考える」「考えることができる」とたくさん出てきているのです。なぜ
ここのところだけ「考える」という言葉が残ってしまったか。検討したことを書くのだ
ったら、ある程度検討した結果を断定してしまっていいのではないかと思います。ここ
に限ってなぜ「考える」が出てきたのか、ちょっと疑問が湧いてきます。

○笠貫座長
　今回は、前回と違う議論になりましたということで、このような表現になったと考え
てよろしいのですか。

○課長補佐
　この辺の表現ぶりは統一しなければいけないと思っています。最終的には、統一がな
されるとご理解いただいて結構だと思います。

○笠貫座長
　それについては検討が終わりましたら、表現を直していただきたいと思います。先ほ
ど３カ月ということが出たと思うのですが、治ゆを判定し得る時期について、西村先
生、いかがでしょうか。

○西村先生
　奥平先生にお伺いしたいのですが、心筋梗塞１カ月ぐらいで瘢痕化している。臨床的
にも１カ月過ぎたら、もう安定した状態となっています。安定期をみて、さらにプラス
２カ月で３カ月ということで、常識的な意見かなという気がします。

○奥平先生
　私は１カ月で線維化が完成するとは思っていません。臨床的に判断なさっているので
したらそれはそれでよろしいのですが、１カ月で線維化が完成するというような判断は
できないと思います。まだ、肉芽組織に置き換わっている最中だと思います。いわゆ
る、瘢痕化の完成は３カ月とみるのがよろしいのではないかと思います。

○笠貫座長
　そうすると、治ゆの判断は３カ月遅らして、６カ月ということですね。私も瘢痕とい
うことだけではなくて、臨床的にも症状が安定して治ゆということでは、半年でもいい
と感じましたが、西村先生、いかがでしょうか。例えば会社に戻っていい、普通の生活
に戻っていい時期は。

○西村先生
　幅を取って、６カ月はより慎重に判断できる時期ではあります。

○笠貫座長
　髙本先生、オペではどうでしょうか。手術の場合は３カ月たったら治ゆでいいでしょ
うか。

○髙本先生
　大体元の職場へ復帰していますよね。２カ月ぐらいで復帰していると思います。あと
は不整脈が出たり、そういう治療したり。

○笠貫座長
　薬でも３カ月ぐらいで微調整して、３カ月ぐらいすると安定しますね。

○西村先生
　冠動脈インターベンションして、６カ月後に再狭窄がないことを確かめているから、
６カ月ぐらいで、大丈夫ですよと判断できる。

○笠貫座長
　大体６カ月ですね。

○西村先生
　いまのところはドラッグ・エルティング・ステントを用いないのであれば、６カ月ぐ
らい、ドラッグ・エルティング・ステントを使用した場合もっと先に再検査が必要かも
しれないという意見があります。

○職認官
　ウの「治ゆを判定し得る時期」という項目を設けた趣旨なのですが、普通の障害に関
してわざわざこのようなことを書くことはなく、治ゆの考え方が決まれば自ずと時期も
決まってくる。時期があって、治ゆを判断するということでないのですが、何分、心筋
梗塞も含めて、胸腹部臓器の障害の運用基準が極めて貧弱なものですから、この検討会
を始める前に集めた事例でも、何年もたってから治ゆにした、あるいは、逆に非常に早
期にしたりというバラつきがあるのは、結局具体的な考え方を示していない中で運用さ
れているのでそういうことが起こっているわけです。そこであくまで１つの標準という
か、参考として、医学的に無理のないところを書けるのであれば、職員の役に立つので
はないか。理解の促進になるのではないかということですから、決まりを作っていただ
くものではありません。
　しかも、あまり縛りがかかるようなことになっても具合が悪いという面もありまあ
す。早く治ゆにしたいというわけではありませんが、６カ月と書くと、軽い人で３カ月
で「この人はもう治ゆでもいいのではないか」というものを無理に療養を継続するよう
なことになってもまずいですから。要するに、もっと幅のある感じで書いたほうがいい
ということであればそうさせていただきます。

○笠貫座長
　「通常２～４週間」と書いてあるように、「３～６カ月」というように書いておいて
いただければ問題はないかと思います。

○課長補佐
　事務局サイドもそうですし、先生方ともあまり意思疎通が図られていない部分もある
のですが、ここの項目はどんなに軽いものでも最低限、この間を治ゆにしてはいけない
というものです。軽いといっても、ここまではやってくださいというものを設定してお
くほうがむしろいいのかなと私は考えていました。そういうものが必要ないのであれ
ば、この項目はあまり意味のない話になるのではないかと思います。

○笠貫座長
　最初に西村先生がご指摘になった安定、横這いをどのぐらいに見るかという目安です
ね。いまのご説明ですと発症後３カ月以上ということになるわけです。３カ月以内を治
ゆとするのは困るという表現をするのでしたら、９頁の最初のところを「したがって、
発症後３カ月以上を経過し」とすることになります。あるいは、横這いの目安を付ける
なら「３カ月から６カ月」と書くか。

○課長補佐
　横這いの目安というのは、多分安定しているかどうかを判定する期間ですね。それは
むしろ、その上のほうで判断できると思います。ここではなかなか、「治ゆを判定し得
る時期」の意味がつかみにくいのだろうと思います。それで多分、いろいろな意見が出
てきているのだろうと思っています。ここでは軽いものでも、それよりも前に治ゆにな
る判定はできませんという項目だとご理解いただければと思います。そういう理解のも
とでは、どういう観点でどのような記述をしたほうがいちばんいいのかということで考
えていただければと思います。

○笠貫座長
　そうすると、治ゆの判断の基準のところに「３カ月以上」と入れることでよろしいで
すね。

○課長補佐
　安定というものを判断し得るのは、例えばどういう状態をして６カ月間みればいいの
か、という点をもし記述できるなら記述したほうがいいかなと思っています。例えば、
何とかという薬剤の投与だけで６カ月間様子を見て、何とかの状態が変動しないことを
確認できれば安定していると言えるとか、そういったことがもし言えるならありがたい
というか、判断がしやすくなるのではないかと思います。もちろん、そういうことが可
能ならという話でございます。

○笠貫座長
　西村先生、どうしましょうか。

○西村先生
　難しいですね、ケースによっていろいろありますので。かえって、入れることによっ
て縛られるという危険もあるかもしれません。幅が出てしまうような感じがします。

○笠貫座長
　先ほどお話のように、３カ月以下は駄目、３カ月以降という考え方と、あまり長くな
っても困るというご説明と２つありましたね。後者は１年たっても、２年たっても、３
年たっても症状をなかなか判断しない場合です。早く判断し過ぎる場合、長くてもまだ
安定だと判断しない場合の両方があるので、１つの目安を入れるかどうかの判断だと思
います。どうしましょうか、西村先生。

○西村先生
　いまおっしゃったように、例えば会社での普通の仕事に戻ったときがどうか。それと
自宅療養を少しやっている状態で落ち着いているように見えるけれども、元の仕事に戻
って通勤を始めたら、やはり階段などがつらいことを自覚し、薬を増量してみる。その
人の生活のパターンなども加味しながら診ていきますので、何カ月間安定したらいいと
いうことは言いづらいかもしれませんし、判断しにくいかもしれません。それはもう医
者の総合的な判断でしょう。

○笠貫座長
　あまりここはつめないほうが無難ですね。早くし過ぎるのを心配しないで、遅過ぎる
のは例外だと思うので、最初の判断で「安定した」ということをどこで考えるかは職場
復帰して、日常生活に戻って、症状が安定しているということになります。そうする
と、ケース・バイ・ケースがかなり出てくるかもしれないというご指摘だと思います。

○医療監察官（神保）
　ちょっと教えてください。いままである議論は、治ゆとの関係なのですが、もう１
つ、私どもが気にしているのが、今度治ゆにしたときにいつ障害認定をすれば適正にな
るのかということです。これをどういう作りにするか。障害等級が１つだけしか設定さ
れなければ、障害認定の時期は、どうでもいいと言うと語弊があるのですが、例えば先
ほどのご議論でいくと、40を切るような方でもしていくというときに、３段階とか作る
とすると、あまり早過ぎると、それこそ本来良い人が悪く評価されてしまうというよう
な問題が起きるのではないか。先ほどの症状の安定という点ともからんでくるのです
が、大体、この時期に判定すれば間違いはないという時期があるのかないのか。
　例えば耳の検査というのは、一応有害業務からばく露して、何回か間を置いてやりま
す。治療が終わった時期と障害等級を認定する時期が必ずしも一緒でなくてもいいとい
うか、逆に傷病の性質によっては変えていいということになっています。この場合、例
えば何も書かないとなったとき、基本的には症状が安定していれば、そのときに等級に
ついても同じように障害認定をするということであれば、何も決めなくてもいいという
ことなのです。その辺は問題ないという理解でいいのでしょうか。

○西村先生
　例えば症状が安定という項目と、横這いになるという項目があれば、虚血性心疾患を
診療している医師は１カ月、２カ月みて、横這いになったのではないかと判断をする気
がします。３カ月ぐらいが一つの目安の時期です。

○医療監察官
　要は病態の性質として、２カ月安定していても、次の１カ月でそれなりの確率で大き
く変動することもあるというのだったら、一般的に３カ月たってからやりなさいという
話になる。

○西村先生
　あまり、そういうことはないと思います。リハビリしていって、自宅に帰って、それ
から会社に戻るという形態を取るわけで、この経過が人によっていろいろ違う。途中で
障害因子が出てきたら、それに対して対策を取って、それにはちょっと時間がかかるか
もしれません。横這いということが１つの条件ならば、いろいろな障害因子を解消して
いって横這いになりましたという判断になると、平均的には３カ月から６カ月ぐらいだ
と思います。平均から外れる人たちについてもいろいろ考えるということになれば、難
しくなると思います。

○医療監察官
　そうすると、平均はこうだということだけ書いて、それ以上は書く必要はない、参考
情報程度に書けばいいということでしょうか。

○西村先生
　「３～６カ月ぐらい」としますか。ここに「一般的」と書いてありますから。

○笠貫座長
　いまのご指摘では、障害等級の問題も関係するとなると、どうしましょうか。障害等
級についてのご議論は次回でということでしたが、簡単に説明していただいて、それも
加味して、時期については最終的にまた検討するということにしたほうがいいかもしれ
ません。障害等級についての問題点だけご説明いただいてもいいかと思います。

○職認官
　事務局で、「主な検討事項」という要約版を作らせていただいております。その２頁
をご覧下さい。
　（２）の「障害等級」では、障害等級の格づけとその判断要素の問題と、ペースメー
カ等を心筋梗塞後に植え込んだ場合にどう評価するか。この２つの問題があろうかと思
います。
　まず１つ目の障害等級につきましては、心機能の低下が心筋梗塞による後遺障害の中
核的なものと捉えて、残りの主要な要素とされている不整脈と虚血のうち、不整脈とい
うのは大抵の場合残るとされており、一定以上のものは治ゆにならないということにな
ると、不整脈の程度で区分けするのはなかなか難しいかなということで、心機能の低下
とセットで捉えてみる。
　虚血は残らない場合もあるものですから、一定以上の虚血が残る、自覚症状のある軽
い発作が強い労作によって出るというような場合には等級に反映させるというのはどう
かということでございます。
　具体的には、２頁に書いてあるとおり、９級は心機能が一定以下に低下した場合、50
％未満で区切るのがいいのかどうか、先ほど、40％以下でもという話が出ましたので、
50％という切り方をいじることも十分あり得るのかと思いますが、いずれにしても、心
機能の程度で１つ区切る。もう１つ、自覚症状のある虚血発作というか、狭心痛といっ
たほうがいいかもしれませんがそういう症状が出るものを9級とする。そして、11級は
そうした条件に当てはまらないものという切り方で等級の格づけを設けることはいかが
かというものです。
　もう１つはペースメーカ、除細動器を植え込んだ場合の障害等級なのですが、胸腹部
臓器の障害等級については基本的な認定の仕方として総合評価することになっていま
す。総合評価というのは、胸腹部臓器の障害が複数ある場合、１個１個の障害の等級を
足し上げるような方式で評価するのではなくて、複数の障害を全体として評価した場合
にどういう支障がありますか、その程度はどの程度ですかということで評価をするとい
うことです。障害等級表の作り自体がそういうことを前提にして出来上がっています。
　等級は具体的には１、２、３、５、７、９、11の各等級が設けられています。「障害
認定必携」の191頁に胸腹部臓器の障害等級表が載っていますのでご参照いただければ
と思います。ペースメーカ、除細動器については、これまでの検討で９級および７級と
されていますが、ほかの胸腹部臓機の障害も残したという場合に、総合評価をして等級
が上がるというためには、ペースメーカであれば７級と評価すべき状態であるか。除細
動器であれば、ほかの障害も含めて５級と言えるかどうかということが基本的な判断と
して出てくるのかなと思います。
　具体的に、心筋梗塞の場合、併せて７級になるか、５級になるかどうか。事務局とし
ては、それは少し評価し過ぎかなと思っています。この辺は感覚的なところもあります
が、結論として、案としては等級はそれぞれ9級、7級のままということで作ってみまし
た。この点はまさにご意見をいただければと思っています。以上です。

○笠貫座長
　ここについては、次回ご検討いただくということでよろしいわけですか。少しご意見
を聞いておいたほうがいいですか。

○職認官
　詰めるのは難しいと思うのですが、ご意見は今日伺えればと思います。

○笠貫座長
　障害等級については、サマリーのご説明でしたので、細かい点の文章は抜きにして、
考え方について少しご議論いただきたいと思います。障害等級のところで心機能をどの
ように評価するかということ、それから不整脈については重症不整脈があったときに等
級として上げるかどうか。それから、虚血については中等度以上の虚血にするのか。こ
の心機能、不整脈、虚血ということから９級、11級に分けるという考え方だと思いま
す。これについて西村先生、いかがでしょうか。

○西村先生
　９級は通常の労働を行うことができるが、就労は相当程度制約されるものということ
です。私はこの２段階はかなり妥当ではないかと思います。あと、基準で先ほどの「虚
血発作」を「狭心痛等」にするか、「狭心痛」にするか。あるいは、左心機能の評価の
ところはもう少し詰めたいと思います。

○笠貫座長
　髙本先生、例えば「いま冠動脈バイパス移植術をしました」とか、いろいろなことの
前提でこのような評価をして11級、９級にするのは妥当でしょうか。

○髙本先生
　９級というのは、治療しているから一応治ゆしたのがこうなるわけでしょう。労作に
よって虚血発作が起こるというのは治ゆにはならないですね。

○西村先生
　それが先ほどの症状の安定、最大限の治療をして、症状の安定というところと関係し
てくるわけです。

○職認官
　どの程度の労作で起こるかというところはなかなか具体的に示しにくいのですが、一
切自覚症状が出ない、発作が出ないという水準はちょっと厳し過ぎるかなと思います。
心電図をとって、初めて虚血があるのがわかりますというものだけが軽度の虚血と言い
ます、というのは、虚血の治ゆの範囲としては狭過ぎるのかなという感じがしていま
す。発作と言うと大げさな気がしますので、「軽い狭心痛が起こる」ぐらいの言い方に
するとまだご理解をいただきやすいのかなと思いますが。

○西村先生
　内科でこういうグループの人がいらっしゃいます。例えば、朝、通勤のときに坂道が
あって、そこを登ると狭心症が朝１回だけ出る。いちばん寒いときの朝、最初の運動で
すから。普段、仕事中は何もない。帰りは同じ道を通っても大丈夫という人がこれに入
るのかなと、私のイメージですが。日常の仕事では全然出ない。ただ、という書き方で
す。そうしたら、割方、パーセントとしては内科で結構診ているということがありま
す。

○職認官
　労作により狭心痛が起こるものということでしょうか。

○西村先生
　軽度の狭心痛が出るもの。

○職認官
　「ときどき」、いや。「たまに強い労作で起こる」というところでしょうか。

○笠貫座長
　無症候性心筋虚血も症状があるのと同じように重篤だという考え方があります。その
無症候性心筋虚血の範囲をどう評価するかになってしまいますが。

○西村先生
　「虚血」という言葉を使うと、虚血を見て、程度という言葉が出てきますので、それ
なら「狭心痛」ということにしてしまおうかということが一方であるのです。

○笠貫座長
　障害等級になると細かい議論が必要かもしれません。どうしましょうか、もう少し詰
めますか。多分、虚血がいちばん難しいと思います。

○奥平先生
　私もそう思います。「虚血」という言葉がポンと出てきて、これは何を指すのか。内
容と、先ほどお話に出ましたが重症度の問題もあります。「虚血」という言葉は何とか
変えないと、なかなか障害認定のときに目安にならないのではないかと思います。

○西村先生
　ずっと「症状の安定」という言葉で来ていますので、症状ということになれば「狭心
痛」、軽度まで入れるのか、なしにするのか。ほかで先生がおっしゃったように、無症
候性の虚血が証明されるけれども、狭心痛がないものの扱いも決めておいてという線切
りを考えないといけないかもしれません。

○笠貫座長
　難しいですね。バイパス手術をして、無症候性心筋虚血が残りました。そうなると、
治ゆにはしないのですか。

○髙本先生
　重篤だったら何か治療します。

○笠貫座長
　そうすると、また経皮的冠動脈形成術する。「症状の安定」というのは、いろいろな
意味が入るのでしょうね。

○西村先生
　虚血性心疾患だと、どうしても虚血が残ってしまう人もあるのではないか。血行再建
ができない人も一部想定されるのではないかと思います。そういうことで先ほどの「最
大限の内科治療と血行再建術」という言葉が出てきて、その後に症状が残る方はあるで
しょう。

○笠貫座長
　奥平先生がご指摘になった、症状のある狭心症が軽度かどうかという問題と、無症候
性心筋虚血も軽度にするのか、あるいは除外するのか、その表現の仕方を検討させてい
ただくということでよろしいでしょうか。11級、９級という２つに分けてという、障害
の程度は妥当だろうと思います。
　もう１つ、ペースメーカ等を植え込んだ患者で、２つあった場合にどうするか。７級
から５級とすると、その内容を見ると非常に強い障害になってしまいます。これは合わ
せるというより、９級か７級が妥当かと思います。ペースメーカと虚血性冠疾患、植込
み型除細動器と同じということです。基礎疾患に心筋梗塞がある・なしは関係なく、心
筋梗塞後の合併症としてペースメーカ、植込み型除細動器を入れたときには、ペースメ
ーカ・植込み型除細動器を単独で考えるということです。

○職認官
　全体として治ゆになるためには、心筋梗塞も治ゆになっていないと仕方がありませ
ん。心筋梗塞が治ゆになった場合には９級か11級になるとして、そういう状態の人がペ
ースメーカ、もしくは除細動器が植え込まれましたというときの評価をどうするかとい
うことです。確かに、心筋梗塞の後遺障害が上乗せにはなるわけですが、それこそ制度
上の割り切り、線引きの話で、うまく上位の等級にポンと飛び移れるか、そこまで行か
ないかという性格の問題ですので忸怩たるものもないではないのですが、２級上げるの
はちょっと厳しいかなと思っています。何か知恵を出せないかとも思いますが。

○笠貫座長
　７級を５級、９級を７級というように、いまの考え方だと２級上がるのですね。１級
だけ上がるということはないのですか。

○西村先生
　５級というと重度が高いですね。

○笠貫座長
　そこまでいくのはどうかなと現実的に思うのです。横山先生、いかがですか。

○横山先生
　私の感じでは、９級というのは一時金なのでしょう。７級になると年金になるわけで
す。９級か７級かというのは大変な違いが出てくると思います。

○笠貫座長
　５級になりますと、かなり。奥平先生、いかがでしょうか。

○奥平先生
　ペースメーカを入れることによって、あとにより良い健康状態が保証されて、患者自
身にとっても良い状態になるわけですから、マイナス要因として評価することにならな
いのではないかという感じがします。

○笠貫座長
　そのような考え方かなと思いますが、これについてはまたご検討いただくということ
でよろしいでしょうか。

○職認官
　今日は大筋についてご意見をいただいた上で、次回は少し文章を見ていただけるよう
なものを用意させていただきたいと思います。先ほどの心機能と不整脈の評価の話なの
ですが、40以下も治ゆになり得るということだとすると、40を切るような場合にだけ９
級で、それよりも軽度なものは11級で十分ということであれば、40で区切るというのも
手かもしれません。
　正直、私も50で区切る案を作ったのですが、50を割ったから９級というのは少し無理
があるかなとも思っていたのですが、40以下も障害になり得るということであれば、40
で区切るのが収まりがいいかなという感じがしますがいかがでしょうか。

○笠貫座長
　11級を「心機能が正常」としてしまうかですね。

○職認官
　正常だと障害として評価できなくなってしまいますから。

○笠貫座長
　しかし、心筋梗塞後も駆出率は正常という人がたくさんいます。

○西村先生
　落ちているけれども正常範囲内という人は。

○笠貫座長
　心機能全体としては正常であるが部分的に心臓は壁運動が悪いところがある場合です
ね。

○西村先生
　全体としての左心機能は正常範囲にとどまっている。９級は40未満。

○職認官
　基準の具体的書き方としては、高いほうの９級は40以下で、11級はそれ以上と書け
ば、別にわざわざ正常と書かなくても済むと思います。その関連でもう１つ、心機能低
下が正常範囲内というか、ごく僅かの場合に、心機能低下の程度そのものでもって11級
に相当する障害であるというのは、これもやはり少し無理があるところがあります。例
えば、心筋梗塞発症後はその後の、例えば心機能の一層の低下を防ぐため等の理由で、
こういう活動・運動の制限をする必要がある、あるいは、再発を防ぐために必要である
ということを言えれば、それが障害の内容である。したがって、11級なり９級に相当し
ますというほうが素直かなと思います。そのように言ってよろしいのでしょうか。

○医療監察官
　お手許の「必携」の192頁、11級というのはどういうものなのですかということが出て
います。９級というのは先ほど出たように、就労可能な職種が相当程度制約される。11
級というのが労働に障害を来す、機能の障害の存在が明確で、かつ労働に支障を来すと
いうのが11級ということです。本来から言うと、機能の障害の存在が不明確で、労働に
支障を来さなければ11級でもない、要するに傷が付いているだけという説明になってし
まいます。
　いやいや、傷が付いているだけなのだけれども、実はもう少し無理をするとその後の
心機能が低下してしまう。だから、無理をすれば動くのですが、無理をさせると落っこ
ちてしまう。だから、ちょっと過激なことはしないでくださいという制約が普通の人と
違って起きるという説明ができれば、「通常と変わらないではないか」と言われても、
「いや、本当はそんなことではないのです」というようなことが出来れば、正常範囲に
あっても11級なのです。しかし、「そんなことない。いくらバンバンやってもかまわな
い」と言うと、「障害です」という点がなかなか説明がつきにくいものですから、その
辺について先生方にご教示をいただけないかと思っています。

○笠貫座長
　駆出率が正常でも壁運動異常が残っている場合、過激な運動をすると、リモデリング
という現象が起こって、だんだん心機能が落ちてきます。心筋梗塞の人の場合には薬で
ある程度抑えることと、過激な運動というものは制限するということが必要になります
から、11級は十分になります。心筋梗塞を起こしてしまった場合には、そうなると思い
ます。西村先生、そういうお考えでよろしいですか。

○西村先生
　いいと思います、先生のお考えに賛成です。

○職認官
　先ほど、重篤不整脈というお話があったのですが、治ゆになると考えられる中でそう
いうものが残るということなのでしょうか。

○笠貫座長
　正常な人でも何らかの不整脈を持っているので、「不整脈は正常な人でも８割持って
います」という書き方になってしまうわけです。心筋梗塞後に、例えば心室期外収縮
が、241個以上頻発するとか多形性とか連発するとか、そういうものを「悪性不整脈」
とも呼びます。通常でない不整脈が出てずっと持続する場合には、定期的にチェックは
しなくてはいけないし薬も増やさなくてはいけません。そういう場合は、９級になるの
ではないかと思います。不整脈があったらすべてというのではなくて、不整脈の中でも
悪性のものについては９級にし、特に、「心機能の低下」と併せていますから、心機能
の低下があって、不整脈が頻発していることになると治ゆにしてもいいけれども、11級
ではないかもしれません。

○職認官
　そこはなかなか難しいところで、多分いまの重篤不整脈を高く評価しますというの
は、結局、将来の発作の確率をみているような気がしてしまいます。不整脈によって自
覚症状のあるような発作が出るかというと、多分それには直結しないのですよね。

○笠貫座長
　先ほどの虚血と同じだし、心機能が悪くなっていくのと同じように、無理な荷重がか
かれば、不整脈も悪くなるということでは、仕事上の制限をするのは、不整脈を目的に
する場合も、虚血を目的にする場合にも、心機能を目的にする場合にも、いずれでもあ
りますということにする。

○職認官
　そのように書けば。

○笠貫座長
　それでは、ここはいまのご意見をもとにして、事務局で文章の検討をいただくことと
したいと思います。
　次に、「大動脈解離について」お願いしたいと思います。

○職認官
　事務局から資料の２頁、「主な検討事項」に基づいて簡単にご説明し、ご意見をいた
だくぐらいで時間かと思いますので、そのように進めさせていただければと思います。
　論点は大きく２つかなと思っています。髙本先生からいろいろご指導いただき、事務
局なりに整理をさせていただきました。昔の感覚だと、大変な病気ということなのです
が、最近はだいぶうまく治療ができるようになっているようで、アとイ、２つの場合が
治ゆになるのではないかと考えております。
　１つは、偽腔が閉塞しているもので、そこは当然血栓になって次第に退縮していきま
す。最終的には解離部が線維化してしまいましたという状態については、これは治ゆと
していいのではないか。
　もう１つは、人工血管に取り換える手術をすることも当然あります。解離した部位の
大きさによって、すべてを取り換えられる場合と、解離部を残してしまわざるを得ない
場合がありますが、すべてをきれいに取り換えられた場合には、手術中の事故もないで
はないようですけれども、手術が無事済んで、手術の傷もふさがって状態が安定してく
れば、その段階で十分に治ゆと判断できるのではないか、治ゆと捉えてよろしいかどう
か。
　もう１つ、障害等級ですが、これは大動脈という血管の病気なわけです。血管が病気
になって、治療したものによっては治ゆになりました。治ゆになったということは、必
要な量の血液を流すことができるようになりましたということだろうと思います。そう
すると、どうも、大動脈自体には障害が残っているとは言いにくいのではないか。人工
血管が入っている場合には、元の状態に復しているとは言い難いわけですが、機能が損
なわれているとは言いにくいのかなと思います。もちろん、発症時等々の虚血で、臓器
に障害が残るだろうということはありますので、それは臓器の障害として個々に評価を
することは当然出てまいります。ただ、大動脈自体の障害が残るとは言えないのではな
いかというのが事務局の理解です。以上について、ご意見をいただければと思います。

○笠貫座長
　髙本先生からご意見をいただきたいと思います。

○髙本先生
　心臓は血液を運ぶファンクションを持った単純な臓器というか、物ですから、治ゆと
いうのは、解離の状態が治ったというのは、ここにある２つの偽腔閉塞型が治った状
態、それから手術で局所的な解離があるものですから。それとドベイキーII型という上
行大動脈だけ、あるいはIII型というのも割と狭くて、全部換えてしまったということ
もあり得ます。そのような場合には、大動脈解離に関しては治ゆと言えるのではないか
と思います。
　残された障害というのはあるのですが、腎不全、肝不全、それぞれの臓器の障害にな
るわけです。大動脈の障害があれば必ず手術しなければいけませんから、大動脈の障害
としては一応ないと考えていいのではないかと思います。

○笠貫座長
　先生、ハでもイでも起こってしまった場合、先ほどの心筋梗塞もそうなのですが、過
重な負荷が加わった場合に解離がさらに起こる。解離の原因もまだわからないわけです
から、そこで別な解離が起こってしまう。解離を１度起こした人はまた解離を起こす可
能性がある。こういう場合は別な病気と捉えますか。

○髙本先生
　それは別な病気でしょう。

○笠貫座長
　不整脈のときに基礎疾患としての心筋症は別な問題とわかりましたが、もともと大動
脈瘤解離という病態が起こって、また再発しやすい。その病気に対して過重負荷がかか
ったらいけない、という意味の制限が加わるということは、障害等級を判断するときに
は入らないのでしょうか。奥平先生、どう思われますか。

○奥平先生
　術後、他臓器障害の有無というのはどうしても評価せざるを得ないのではないかと思
います。大動脈病変の病変部は人工血管によって置換されて、それが治ったとしても、
手術自体がいろいろな枝を無視しているわけです。それによる術後のいろいろな臓器障
害というものは評価せざるを得ないのではないか。
　もう１つ、先生にお聞きしたいのは（ア）の項目、「偽腔閉塞型で血栓が退縮」とい
う記載があります。「退縮」という言葉をこういうときに使うのかどうか。

○髙本先生
　線維化ですね。

○奥平先生
　「器質化する」、あるいは「縮小する」ですね。「退縮」という言葉は必ずしも適当
ではないのではないかと思いました。それから、「繊維化」の「繊」は「線」とすべき
です、人体ですから。「退縮」という言葉はもう臨床的にお使いになっているのです
か。

○髙本先生
　いや。

○奥平先生
　融解ということもありますね。

○髙本先生
　融解というよりは治ゆの過程というのは、器質化か線維化ですね。実際は、完全に治
るのはもう血栓が全くなくなってしまうわけです。通常、こういうものは非常に少な
い。むしろ、上行だけ手術して、下行の解離が残っていて、２、３年後にまた手術する
という症例のほうが多いのです。

○笠貫座長
　残存解離がある場合には治ゆにはしない。そういう意味でいくと、心筋梗塞で心筋虚
血がまだ残っている場合を治ゆにするかどうかが、いつも心筋梗塞で気になっていると
ころです。

○髙本先生
　基準の整合性がまた揺らぐという。例えば先生、III型だとまだ解離があって、偽腔を
流れているという人は治ゆに入らないわけですね。見た目は症状は安定して、日常生活
はできて、仕事に復帰していますよね。でも、それは治ゆにはならない。症状は安定し
ているけれども、広がる危険性があるので。

○西村先生
　５年も６年も安定している人がいます。いつ拡大するかわからないというのが。

○笠貫座長
　心筋梗塞後心筋虚血が残っていて狭窄は残っているわけですから、また心筋梗塞を起
こすかもしれないという問題に似ているのです。そこの整合性をどうとるかというのは
難しくなりますね。

○髙本先生
　難しいですね。

○職認官
　偽腔に血流があっても、結構安定しているという場合もあるのでしょうか。

○髙本先生
　下行だけだと数年安定している人もいます。だけど、数年が例えば２年後かもわから
ないし、５年後かもわからないし、10年後かもわからない。やはり徐々に大きくなっ
て、手術するという人のほうが多いですね。

○職認官
　決して確率を取るのではないのですが、大雑把なイメージでいけば、やはり５年ぐら
いは大抵の人は状態は変わらないというぐらいを治ゆにすべきではないかと思っていま
す。10年ぐらいというのはちょっと欲張りかどうか、微妙なところだなという感じがし
ますが。一方、大抵の人は２、３年ぐらいは大丈夫だけれども、５年も経つと結構悪く
なっている人が多いというのは、症状の安定に当たるかどうかという判断のときに、や
はり下り坂の傾斜が一定以上であって症状の安定とは言いにくいのではないか。先ほど
横這いという話もありましたが、症状が安定と言うときの事務局としてのおおよその目
安かなと思っています。１年、２年は平気ですというだけだと、それはさすがに安定し
ているとは言わないのではないかと思います。

○西村先生
　髙本先生がおっしゃるように、ある確率で拡大していく。あれは一定の傾斜ですよ
ね。横這いになったりしない。

○髙本先生
　横這いの人も中にはいるのです。大きくならない人もいますが、やはり大きくなる人
のほうが多いですね。

○課長補佐
　例外的な感じですか、横這いと言えるような人は。

○髙本先生
　いや、例外でもないと思います。多いと言うけれども、ある程度は手術しなくて済む
人もいることはいるのです。それをどこで区別するかというのはなかなか難しい。私が
先ほど言った偽腔閉塞と書いたけど、開存したら治ゆにしないとなればこちらは気が楽
なのですが。

○笠貫座長
　かなり心筋梗塞と似たところがあって、非常にデリケートですね。ある意味では、
「アとイ以外は治ゆとしない」という捉え方としては単純化してあるのですが、それ以
外の人たちはみんな治ゆでない、ということに全部持っていけるかどうかのご判断をし
ていただくことが必要かと思います。

○髙本先生
　労災になるのは、症例としてはそう多くないと思います。希だと思います。心筋梗塞
のほうが多いのです。

○笠貫座長
　いまの問題点は事務局でご理解いただいたでしょうか。障害については、奥平先生の
ご指摘がありましたように、解離で臓器障害が起こった場合は、その臓器障害について
の障害はみるべきだというご意見だと思います。いかがでしょうか。髙本先生、手術し
た側としては。

○髙本先生
　障害が残っている人がたくさんいます。脊髄のマヒ、あるいは腎障害になる人もいま
す。中には心筋梗塞になる人もいます。

○笠貫座長
　そうすると、この場合の障害はかなり評価はしなくてはいけないということでしょう
か。

○職認官
　当然、その臓器についての障害等級の認定基準に照らして、障害として認定をする。
大動脈解離によって、あるいはその手術によって起きた臓器の虚血であれば、業務上の
虚血、臓器障害になります。ご覧いただいた２頁のコンパクト版のほうには、その点は
書いてありませんが、本文の。

○医療監察官
　16頁、最後の「なお」書きのところ、「なお、解離発症時あるいは手術時に起こった
臓器不全が遷延して障害が残ることがあるが、それぞれの臓器に関する障害等級認定基
準により、障害を認定することとなる」と書かせていただいています。ただ、このよう
な場合当然、肺や心臓にもいろいろ負担がかかってくるのだろうと思いますので、障害
ということで評価できるものなのか。場合によっては、かなり多臓器にわたるようなも
のだと、ずっと治療するような気もしないでもありませんが、この辺はもう、治るもの
もそれなりにあるという理解でよろしいでしょうか。

○笠貫座長
　それも含めて、「症状が安定して」ということの判断になると思います。

○職認官
　「臓器に虚血が起こり、治ゆした場合には」と一言入れておけばよろしいでしょう
か。

○髙本先生
　腎不全になった場合、透析になるわけでしょう。透析になった状態で落ち着いている
のをどうするか。

○医療監察官
　こちらについては、実は泌尿器の部会で既にご検討いただいています。もう透析療法
をされている場合には、やめてしまうと安静時にも尿毒症になるような状態ということ
ですのでやめるわけにはいかない。治療によってやっと症状が保たれているようなもの
は治ゆとは言えない。これはずっと労災のほうで、業務上の原因で腎不全になって、透
析療法が必要だということであれば、ずっと労災のほうで見させていただくということ
になります。

○髙本先生
　その場合、大動脈は手術して治ゆした。全部リプレースしたけれども、腎不全が残っ
た場合はどうなるのですか。メインの疾患では治ゆだけれども、合併症で治ゆでない。
そうすると、全体としては治ゆでないということになるのですか。

○医療監察官
　はい、そういうことになります。

○笠貫座長
　透析をした場合は治ゆがないのは、透析をしなければ死んでしまうためですね。逆に
いうと、植込み型除細動器でもペースメーカでも、植え込んだものを取り除いてしまっ
たら死んでしまうというのも治ゆにしているわけです。透析とペースメーカ、植込み型
除細動器の違いは、体内に植え込んでいるものと植え込んでいないものとの違いです
か。その整合性はどのように見るのですか。

○医療監察官
　体内というより、療養の範囲としての給付が必要かどうかであると考えます。

○課長補佐
　早く言ってしまえば、治療と考えられるかどうかということになると思います。

○笠貫座長
　植込み型ではないときも治療ですよね。

○課長補佐
　治療というように評価をするとすれば、いままでの議論としては、治療が終わった段
階という評価で考えていました。これが治療だということであれば当然治ゆにはならな
い、という整理になるのだと思います。

○職認官
　医学的にはもちろん治療なのだろうと思います。

○課長補佐
　そうですね。労災の制度の中で考えると、植え込んで、それは治療行為ではなくて、
別のものということで評価ができたから。

○笠貫座長
　腎臓を移植したら治ゆになるのですか。

○医療監察官
　腎臓を移植すれば治ゆになるということです。ただ、腎臓移植というのはほとんどや
られていないそうなのです。

○笠貫座長
　腎移植は普及してきていますから、そうすると、ここのところでは植え込まれている
か、植え込まれていないかということでの治療の違いが治ゆとして判断するか、しない
かというように捉えておいていいのですか。

○職認官
　ペースメーカのところでは補装具に触れているところがありますが、おおよそはそう
いう区別だということです。植え込んでしまっているか、あるいは脱着したり、日々何
かしら手がかかるものかどうか。その違いは、事実上、埋めてあるか、そうではないか
ということになるのではないかと思っています。そのような区別を公式に示せるかどう
かは別ですが。

○笠貫座長
　大動脈解離については、ほかにご意見、ご質問はありませんか。

○横山先生
　論点１の「治ゆについて」の「極めて悪いが」という「極めて悪い」という表現を文
章の中に入れてしまうことがいいかどうかご検討いただきたいと思います。それから、
そのあとの（２）で「治ゆしたときに」という言葉が入ってくるわけです。「極めて悪
い」ということとのお互いの関係はどうなのか。それから、これは先ほど私が申し上げ
たことですが、「ついて検討する」というのは、この文章が表に出るときには検討が終
わっているはずなので「検討した」と過去形にすべきではないでしょうか。「ついても
検討をした」という表現でどうでしょうか。

○笠貫座長
　大動脈解離については治ゆの範囲を髙本先生とご検討いただき、障害についても、先
ほどご指摘いただいたところを整理していただけたらと思います。
　全体を通しまして、今日は主として心筋梗塞についてご議論いただいたと思います。
特に追加のご意見がありましたら、最後に承りたいと思います。よろしいでしょうか。
　たくさんのご意見をいただきましたので、心筋梗塞についての細部の詰めについては
事務局でまた十分ご検討いただけたらと思います。また、大動脈解離については今日た
たき台をいただきましたので、今日のご意見をもとに次回はご検討いただきたいと思い
ます。
　時間がまいりました。次回もまた、事務局から修正したものの提出をお願いして、今
日の議事は終わらせていただきます。次回の日程についてよろしくお願いします。

○職認官
　既にご予定をいただいておりまして、１月27日（木）16時から18時、時間が普段と異
なりますがお願いしたいと思います。会場は手続きの関係で、まだ押さえられない時点
ですので、決まり次第またご連絡申し上げます。以上です。

○笠貫座長
　どうもありがとうございました。私はまだまだ労災については知識がありませんの
で、今日は皆様にご迷惑をかけたかもしれません。横山先生、奥平先生のお助けを得
て、一応今日の会は無事に終らせていただきたいと思います。長時間ありがとうござい
ました。

照会先　　厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係
　　　　　ＴＥＬ　０３－５２５３－１１１１（内線５４６８）