(1) |
「認知症」
痴呆の本質を端的に表現すると、「認知障害により、社会生活や職業上の機能に支障をきたす状態・症状」ということになる。ここで、「認知」とは、覚える、見る、聞く、話す、考えるなどの知的機能を総称する概念であり、痴呆に関しては記憶機能の低下のほか、失語(言語障害)、失行(運動機能が正常にもかかわらず、運動活動を遂行することができない)、失認(感覚機能が正常にもかかわらず、物体を認知同定することができない)、実行機能障害(計画を立てて、それを実行することができない)などの症状が見られる。こうした「痴呆」の本質に着目し、「認知」を用いることとした案。語尾を病気の状態を示す「症」とするのは、「痴呆」の中には一部治癒若しくは症状が安定するものがある一方、他の多くの場合は進行性であり状態が固定していないため。
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(2) |
「認知障害」
(1)と同様に痴呆の本質(認知障害)に着目し、「認知」を用いることとした案。語尾を「障害」とするのは、「病気の状態」であることを示す表現よりも、単に「機能低下の状態」であることを示す表現の方が、中立的であると考えられるため。
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(3) |
「もの忘れ症」
痴呆の本質は認知障害であるが、その際に記憶障害を必ず伴うことを特徴としており、この点に着目した案。記憶機能が低下した状態を和語(やまと言葉)を用いて表現した。語尾を「症」とするのは、(1)と同様の考え。
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(4) |
「記憶症」
(3)と同様に、記憶障害を必ず伴うという痴呆の症状の特徴に着目し、「記憶」を用いることとした案。語尾を「症」とするのは、(1)と同様の考え。
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(5) |
「記憶障害」
(3)と同様に、記憶障害を必ず伴うという痴呆の症状の特徴に着目し、「記憶」を用いることとした案。語尾を「障害」とするのは(2)と同様の考え。
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(6) |
「アルツハイマー(症)」
痴呆は、その原因によりいくつかのタイプに分類できるが、最も多いタイプは「アルツハイマー型痴呆」である。「アルツハイマー」とは、この病気を発見・報告したドイツの学者の名前であり、この人名をそのまま用語として用いる案。例えば、米国では、痴呆(Dementia)のことを総称してアルツハイマー症(Alzheimer Disease)と呼ぶことがあるなど、国際的に通用しやすい。語尾に「症」をつける案もありうる。 |