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付加退職金支給率の算定のための会計基準について(案)


案1.時価で算定する方法

メリット:
 (1) 実際の利益の大きさに基づいて付加退職金が配分されることとなり、累積欠損金の拡大を防ぐことができる。
 (2) 決算と整合的であり、実態から乖離しない。
 (3) 独立行政法人勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)の事務の簡素化に寄与する。
デメリット: 機構の利益の見込額の精度を高めるため可能な限り直近の運用データの実績値を用いて算定することが必要。

案2.引き続き現行どおり簿価で算定する方法
メリット: 時価変動を加味しないので機構の利益の見込額の誤差が小さい。
デメリット: 機構の会計は原則として時価で計算しているため、簿価上は黒字、時価上は赤字、あるいはその逆といった実態から乖離した事態が生じるおそれがある。

 なお、デメリットである実態乖離を縮小するために、簿価を基準としつつ、時価も計算し、両方黒字が計上された場合に簿価を基準とした剰余金を基に付加退職金を支給する方法も考えられるが、時価で算定されているのにあえて簿価で算定する必要性がなく、また、年度末を控えた1月〜2月の時期に機構の事務負担が大きくなる問題がある。


時価基準、簿価基準による会計の相違点


1.簿価、時価の意味

時価: 公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場に基づく価格をいう。
簿価: 資産を取得した価格(取得原価)から各年度の減価償却額を加減して得た額

時価基準による収益の評価:実現収益+評価損益
簿価基準による収益の評価:実現収益
実現収益:利子・配当、売買による収益

 (参考)TOPIX(月次データ)の推移

図


簿価基準、時価基準による会計の相違点

(単位:億円)
  平成15年度決算数値
簿価基準 時価基準
収益 掛金収入等 3,483 3,483
運用収入等 512 1,026
費用 退職金支出等 3,928 3,928
責任準備金等純増
(付加退職金配分前)
-139 -139
利益 当期利益金
(付加退職金配分前)
206 720


付加退職金支給率算定のための損益計算の実績について

(単位:億円)
  平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度
〔簿価基準〕
収益 (1)掛金収入等 決算値 3,074 3,075 3,216 3,483
推計値 3,082 3,088 3,191 3,429
(2)運用収入等 決算値 716 545 479 512
推計値 702 511 454 455
             
費用 (3)退職金支出等 決算値 3,715 4,093 4,292 3,928
推計値 3,725 4,077 4,428 4,039
(4)責任準備金等純増
(付加退職金配分前)
決算値 283 -106 -426 -139
推計値 361 -8 -573 -299
             
利益 当期利益金
(付加退職金配分前)
(1)+(2)−(3)−(4)
決算値 (A) -207 -368 -170 206
推計値 (B) -302 -471 -211 144
(A)−(B) 95 103 41 62
             
(参考) 掛金収入等       −
退職金支出等     −
責任準備金等純増
   (1)−(3)−(4)
決算値 (A) -924 -912 -650 -311
推計値 (B) -1,005 -982 -665 -306
(A)−(B) 81 70 15 -5


時価を基準とした損益計算による付加退職金原資の算定について(案)

 平成17年2月または3月の中退部会において諮問する平成17年度の付加退職金の支給率の算定にあたっては、以下の1〜3の項目についての推計を基に、平成16年度の予定財務諸表を作成し、損益計算における当期利益金を基本として行う。なお、時価を基準とした運用収入の推計にあたってはベンチマークを使用する。


1.掛金収入、退職金支出等
 平成16年11月末までの掛金収入、退職金支出等の実績値に12月〜平成17年3月の推計値を加算する。推計値については、過去3カ年の平均値を用いる。

2.責任準備金額
 1の推計結果から平成17年3月末に見込まれる各被共済者に係る責任準備金額を算定し、すべての者について合計する。

3.運用収入
 (1)自家運用
 平成16年12月末時点において保有する資産について1月〜3月の利払日や償還日のデータから利益金を推計する。掛金収入や償還額等から退職金等の支出分を除いた残額は、10年国債及び金融債に充てると仮定し、その利回りについては、12月末の数値を用いることとする。
 (2)委託運用
 1月末時点の時価に、2月の1ヶ月間のベンチマークの収益率を使用して2月末時点の時価額を推計し、その額を3月末時点の時価とする。
 このとき、推計値よりも実績値が下落する可能性を考慮し、過去の統計的な傾向から一定の安全率を見込むことも考えられる。


ベンチマークについて


 ベンチマークとは、運用成果を評価する際に、相対比較の対象となる基準指標のことであり、市場の動きを代表する指数を使用している。

【国内債券】
NOMURA−BPI総合
 野村證券金融経済研究所が作成・発表している国内債券市場のベンチマーク。国内債券のベンチマークとしては代表的なものである。

【国内株式】
TOPIX(配当込み)
 東証一部上場全銘柄の株価を株式数で加重平均して算出したもの。国内株式市場の代表的なベンチマークである。

【外国債券】
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円貨換算、ヘッジなし)
 日興シティグループ証券株式会社が作成・発表している世界国債のベンチマーク。時価総額につき一定基準を満たす国の国債について、投資収益率を指数化したもの。国際債券投資の代表的なベンチマークのひとつである。

【外国株式】
MSCI−KOKUSAI(円貨換算、配当込み、グロス)
 モルガン・スタンレ−・キャピタル・インターナショナル社が作成・発表している日本を除く先進国で構成された世界株指数。対象国の包括性、切り口の多様性等の点で国際株式投資のベンチマークとしては代表的な存在である。


ベンチマーク収益率の推移(年度初来累計)


有価証券の評価基準及び評価方法



区分 評価方法 評価差額の処理等
売買目的有価証券
 時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券
時価 評価差額は当期の損益として処理する。
満期保有目的の債券
 満期まで所有する意図をもって保有する国債、地方債、政府保証債、その他の債券
取得原価
(償却原価法)
債券を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基いて算定された価額をもって評価額とする。
関係会社株式
 特定関連会社及び関連会社の株式
取得原価 当該会社の財務諸表を基礎とした純資産額に持分割合を乗じて算定した額が取得原価よりも下落した場合には、当該算定額をもって評価額とする。
評価差額は当期の費用として処理するとともに、翌期首に取得原価に洗い替える。
その他の有価証券
 売買目的有価証券、満期保有目的の債券、関係会社株式以外の有価証券
時価 評価差額はその全額を資本の部に計上し、翌期首に取得原価に洗い替える。

 ※語句の定義
 時価とは、公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場に基づく価額をいう。
 償却原価法とは、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。


(参考)償却原価法
 償却原価法とは、債券を債権金額より低い価額又は高い金額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。

図


付加退職金支給率の検討スケジュール(案)


一般の中小企業退職金共済制度における年度末のベンチマークの収益率について


  12月末から3月末までの
3ヶ月間の収益率
1月末から3月末までの
2ヶ月間の収益率
2月末から3月末までの
1ヶ月間の収益率
国内債券 平均 1.34% 1.02% 0.63%
標準偏差 2.34% 1.60% 1.08%
国内株式 平均 4.56% 3.17% 2.26%
標準偏差 12.98% 10.14% 7.12%
外国債券 平均 0.96% △ 0.03% 0.17%
標準偏差 4.49% 4.50% 3.86%
外国株式 平均 2.47% 0.90% 0.46%
標準偏差 8.71% 8.34% 4.93%
全体 平均 1.68% 1.21% 0.94%
標準偏差 3.83% 3.39% 2.15%

ベンチマークは、以下のとおりである。
国内債券:NOMURA−BPI総合
国内株式:TOPIX(配当込み)
外国債券:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円貨換算、ヘッジなし)
外国株式:MSCI−KOKUSAI(円貨換算、配当込み、グロス)

使用したデータは、以下のとおりである。
国内債券、国内株式、外国債券:昭和59年度から平成15年度までの20年間のベンチマーク収益率
外国株式、全体:平成2年度から平成15年度までの14年間のベンチマーク収益率

全体の欄は、平成16年10月末の資産構成割合に基づいた算定値である。


運用資産状況

(単位:億円、%)
  評価方法 平成16年3月末 平成16年10月末
資産額 利回り


15年度
後期


資産額 利回り
  構成比   構成比
自家運用 財政融資資金預託金 簿価 5,845 19.6 1.61 5,250 17.6 1.50
有価証券 簿価 10,541 35.4 2.64 11,226 37.7 2.50
預金 簿価 774 2.6 0.01 575 1.9 0.01
長期貸付金 簿価 17 0.1 2.00 15 0.1 2.00
投資不動産 時価 37 0.1 3.18 37 0.1 2.85
生命保険資産
(新企業年金保険)
簿価 2,452 8.2 1.09 2,581 8.7 0.76
小計 19,666 66.0 2.03 19,684 66.1 1.94
金銭信託 時価 9,465 31.7 12.66 9,411 31.6 △1.02
生命保険資産
(新団体生存保険)
時価 686 2.3 6.09 687 2.3 0.21
小計 10,151 34.0 12.30 10,098 33.9 △0.94
合計 29,817 100.0 5.37 29,783 100.0 0.98

利回りは年利率に換算している。
平成16年10月末の資産については、自家運用の有価証券は償却原価を含まない利回り、金銭信託・新団体生存保険は費用控除前の利回りである。
数字の単位未満は、四捨五入しているため計と内訳の計が一致しない場合がある。



○金銭信託及び新団体生存保険 (単位:億円、%)
  (平成16年10月末) 平成16年4月〜10月の累積収益率
資産額
(時価)
時間加重
収益率
((1))
ベンチマーク
収益率
((2))
超過収益率

((1)−(2))
国内債券 4,081 0.78 0.72 0.06
国内株式 3,086 △7.22 △7.51 0.29
外国債券 1,216 6.73 6.72 0.01
外国株式 1,652 4.89 6.06 △1.17
短期資産 63 - - -
合計 10,098 △0.52 - -


標準偏差について


図


国内債券・ベンチマーク収益率(月次)の分布(1984.4〜2004.10)

図

※使用ベンチマーク: NOMURA−BPI総合



国内株式・ベンチマーク収益率(月次)の分布(1984.4〜2004.10)

図

※使用ベンチマーク: TOPIX(配当込み)



外国債券・ベンチマーク収益率(月次)の分布(1985.1〜2004.10)

図

※使用ベンチマーク: シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円貨換算、ヘッジなし)



外国株式・ベンチマーク収益率(月次)の分布(1990.2〜2004.10)

図

※使用ベンチマーク: MSCI−KOKUSAI(円貨換算・配当込み・グロス)


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