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基準濃度等検討会報告書



平成16年12月


基準濃度等検討会


照会先 厚生労働省労働基準局安全衛生部
化学物質対策課化学物質評価室審査係
TEL 03-5253-1111(内線5512)



目次

検討の経緯及び検討結果の概要

別紙1  健康障害を防止するための指針対象予定物質の基準濃度

別紙2  基準濃度を設定する物質の作業環境測定方法

<参考1> 基準濃度等検討会開催要綱

<参考2> 基準濃度等検討会参集者名簿

<参考3> 基準濃度等検討会検討経緯

<参考4> 指針対象物質に係る作業環境測定結果の評価指標についての考え方及び基準濃度の設定の基本方針



<検討の経緯及び検討結果の概要>

 厚生労働省では、職場で問題となるがん原性が疑われる化学物質についてがん原性試験を実施し、その結果について職業がん対策専門検討会等で評価・検討を行っている。同検討会において行政対応が必要とされたものについては、関係労働者の健康障害防止対策の効果的実施を図るため、労働安全衛生法第28条第3項に基づき「化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」を策定し、公表している。

 また、当該指針には、健康障害防止対策の一つとして、作業環境測定の実施を規定しており、その結果を評価するために使用する濃度(以下「基準濃度」という。)を併せて示している。

 平成15年度に開催した職業がん対策専門検討会において、6物質について評価・検討の結果、全てのものについて「行政対応が必要」とされたことから、これら6物質のうち、法定の作業環境測定対象物質であるN,N-ジメチルホルムアミドを除く5物質(キノリン、グリシドール、クロトンアルデヒド、1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼン及びヒドラジン一水和物)について、「基準濃度等検討会」において当該物質の基準濃度及び作業環境測定方法について専門的な検討を行った(参考1、参考2、参考3)。

 本検討会においては、はじめに基準濃度の設定の基本方針について検討し、合意を得た(参考4)。そして、この方針に則って検討し、別紙1のとおり、5物質のうちの3物質(グリシドール、クロトンアルデヒド及びヒドラジン一水和物)について基準濃度の結論を得るとともに、他の2物質(キノリン及び1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼン)について当面、基準濃度を設定しないとの結論を得た。
 なお、基準濃度の検討の際には、基本方針にあるとおり、日本産業衛生学会等が勧告しているばく露限界を参考にするとともに、現在の作業環境測定技術(定量下限)にも配慮した。
 また、基準濃度を設定した3物質の作業環境測定方法は、別紙2に示す方法により行うことが適当である。



別紙1 健康障害を防止するための指針対象予定物質の基準濃度


物質名 基準濃度 産衛学会
許容濃度
(2004)
ACGIH
TLV-TWA
(2004)
定量下限 検討概要
キノリン    日本産業衛生学会(以下「産衛学会」という。)及びACGIHはばく露限界を定めていないことから、基準濃度は当面、設定しないこととする。
グリシドール
(別名 2,3-エポキシ-1-プロパノール)
2ppm 2ppm  ACGIHは2ppmを勧告しており、その理由は妥当であると考えられることから、基準濃度は2ppmとすることが適当である。
クロトンアルデヒド
(別名 2-ブテナール)
0.2ppm C0.3ppm  ACGIHは天井値として0.3ppmを勧告しており、その理由は妥当であると考えられる。基準濃度は天井値として提案されている値の2分の1程度とすることが適当であることから、基準濃度は0.2ppmとすることが適当である。
1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼン    産衛学会及びACGIHはばく露限界を定めていないことから、基準濃度は当面、設定しないこととする。
ヒドラジン、
ヒドラジン一水和物
0.1ppm 0.1ppm 0.01ppm  産衛学会は0.1ppmを勧告しており、ACGIHは0.01ppmを勧告している。ACGIHの0.01ppmは1989年に提案されたものであり、産衛学会の値は1994年に0.01ppmと提案されたものを、疫学調査の論文を踏まえて1998年に0.1ppmへと変更されたものである。産衛学会の提案理由は妥当であることから、基準濃度は0.1ppmとすることが適当である。

備考
 (1) C印は、天井値であることを示している。
 (2) ○印は、基準濃度の1/10まで精度よく測定可能な測定方法があることを示している。



別紙2 基準濃度を設定する物質の測定方法


 基準濃度を設定する3物質については、下記の表に掲げる方法又はこれと同等以上の性能を有する試料採取方法・分析方法によって測定を行うことが適当である。

物質名 基準濃度 試料採取方法 分析方法
グリシドール
(別名 2,3-エポキシ-1-プロパノール)
2ppm 固体捕集方法 ガスクロマトグラフ分析方法又は高速液体クロマトグラフ分析方法
クロトンアルデヒド
(別名 2-ブテナール)
0.2ppm DNPH誘導体化捕集方法 高速液体クロマトグラフ分析方法
ヒドラジン、
ヒドラジン一水和物
0.1ppm 固体捕集方法 高速液体クロマトグラフ分析方法

備考
 DNPH:2,4-ジニトロフェニルヒドラジン



参考1

基準濃度等検討会開催要綱

 目的
 職場で問題となるがん原性が疑われる化学物質については従来、職業がん対策専門検討会等で検討を行い、行政対応が必要なものについては労働安全衛生法第28条第3項に基づき「化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」を公表しているところである。
 当該指針には、健康障害防止対策の一つとして、作業環境測定の実施を規定しているため、その結果を評価するために使用する濃度(以下「基準濃度」という。)を定めている。
 これらを踏まえて、最近新たにがん原性が疑われている化学物質のうち、平成15年度に開催した職業がん対策専門検討会で行政対応が必要とされた化学物質について労働基準局長の下に有識者を参集し、平成16年度末を目途に、当該物質等の基準濃度及び作業環境測定方法について専門的な検討を行い、報告を取りまとめる。

 検討対象物質
 キノリン、グリシドール、クロトンアルデヒド、1,4-ジクロロ-2-ニトロベンゼン、ヒドラジン一水和物
(合計5物質)

 検討事項
(1) 検討対象物質の作業環境測定方法
(2) 検討対象物質の基準濃度の値
(3) その他

 その他
(1) 本検討会には座長を置き、座長は検討会の議事を整理する。
(2) 本検討会には、必要に応じ、別紙参集者以外の有識者の参集を依頼できるものとする。
(3) 本検討会は、原則として公開とする。
(4) 本検討会は必要に応じて関係者からヒアリングを行うことができる。
(5) 本検討会の事務は、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室において行う。



参考2

基準濃度等検討会参集者名簿


 大前 和幸  慶應義塾大学医学部教授

 木村 菊二  (財)労働科学研究所名誉研究員

座長  輿 重治  元 産業医学総合研究所長

 櫻井 治彦  中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長

 田中 勇武  産業医科大学産業生態科学研究所教授

 辻 克彦  大阪府立大学総合科学部教授

 中明 賢二  麻布大学環境保健学部教授

 名古屋 俊士  早稲田大学理工学部教授

 松村 芳美  (社)産業安全技術協会川崎試験所所長

 和田 攻  東京大学名誉教授

(五十音順、敬称略)



参考3

基準濃度等検討会検討経緯


平成16年11月15日(月)
 ○ 基準濃度の設定の基本方針についての検討
 ○ 基準濃度の検討
 ○ 基準濃度を設定する物質の作業環境測定方法の検討(定量下限の確認)



参考4

指針対象物質に係る作業環境測定結果の評価指標についての考え方及び基準濃度の設定の基本方針


I  指針対象物質に係る作業環境測定結果の評価指標についての考え方
 「労働者の健康障害を防止するための指針」の対象物質に係る作業環境測定結果の評価指標についての考え方は、次のとおりとする。

 法定の測定対象物質の場合
 管理濃度により測定結果の評価が行われているので、新たな評価指標は設定しない。

 法定の測定対象物質以外の場合
(1)  日本産業衛生学会等のばく露限界濃度がある場合
 当該値を参考にして新たに評価指標(以下「基準濃度」という。)を設定することとし、基準濃度により測定結果の評価を行うこととする。
(2)  日本産業衛生学会等のばく露限界濃度がない場合
 基準濃度は設定しないこととし、測定結果の評価は行わないこととする。

II  基準濃度の設定の基本方針
 上記Iの2の(1)により基準濃度を設定する場合、設定の基本方針は、次のとおりとする。

 基準濃度は、次の値を参考にして設定する。
(1)  日本産業衛生学会が勧告している許容濃度
(2)  米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が勧告しているTLV(Threshold Limit Value)
 なお、対象物質について(1)、(2)のうちいずれか一方のみが存在する場合には、基準濃度等検討会における検討を踏まえ、原則として存在する値を基準濃度とする。
 また、対象物質について(1)、(2)の両方が存在する場合には、基準濃度等検討会における専門家による検討を踏まえ、原則として次のように決める。
 (1) 日本産業衛生学会の許容濃度とACGIHのTLVが一致している場合は、その値を基準濃度とする。
 (2) 日本産業衛生学会の許容濃度とACGIHのTLVが異なっている場合は、いずれか一方の値を基準濃度とする。

 基準濃度の設定に当たっては、次の点に留意する。
(1)  日本産業衛生学会の許容濃度又はACGIHのTLVが「天井値」として示されている場合
(2)  当該物質の作業環境測定技術(定量下限値)


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